教育課程部会 体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループ(第6回) 議事録

1.日時

平成28年2月10日(水曜日) 10時00分~12時30分

2.場所

合同庁舎7号館東館 3F1特別会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 特別支援教育の観点から必要な支援等について
  2. アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき学習過程について

4.議事録


【山口主査】  おはようございます。定刻となりましたので、ただいまより中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループ第6回を開催させていただきます。


本日は、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本日、私もそうだったのですが、電車があちこちで若干遅れているようでございまして、委員の先生には、遅れられている方もおられますけれども、始めさせていただきたいと存じます。


まず最初に、事務局から配布資料につきまして御確認をお願いいたします。


【髙﨑学校体育室長補佐】  失礼いたします。本日の配布資料について説明させていただきます。議事次第に記載してありますとおり、資料1、第5回ワーキングの委員からの主な意見、資料2といたしまして、体育・保健体育における特別支援教育の観点から必要な支援等について、資料3といたしまして、体育科・保健体育科におけるアクティブ・ラーニングのイメージについて、資料4につきまして、資質・能力の三つの柱に沿った、小・中・高を通じて育成すべき資質・能力の整理のイメージ、資料5といたしまして、情報に関わる資質・能力に関する議論について。


以上でございます。その他、机の上に参考資料を配布しております。不足等ございましたら、事務局まで御連絡いただきたいと思います。よろしくお願いします。


【山口主査】  ありがとうございました。これより議事にはいりますが、初めに、本ワーキンググループの審議等につきましては、初等中等教育分科会教育課程部会運営規則第3条に基づきまして、原則公開により議事を進めさせていただきますとともに、第6条に基づき議事録を作成し、原則公開するものとして取り扱わせていただきます。よろしくお願いいたします。


なお、本日は報道関係者より、会議の撮影及び録音の申出があり、これを許可しておりますので御承知おきください。


それでは、本日の議題に入ります前に、ほかの専門部会などで議論されている状況等を含め、伝達事項、報告などを大杉室長から御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。


【大杉教育課程企画室長】  失礼いたします。前回のワーキングでは、本ワーキングで御議論いただいた、健康・安全に関する資質・能力ということを総則・評価部会で御了承いただきましたという御報告をさせていただきましたけれども、同様に、情報に関わる資質・能力、これは情報ワーキングで御議論いただいた内容を総則・評価部会にお諮りまして御了承いただき、現在、順次各ワーキングにつながせていただいているところであります。これにつきまして御紹介、御報告をさせていただきたいと思います。


資料5を御覧いただけますか。資料5情報に関わる資質・能力に関する議論についてということでございます。2点ございまして、一つは、各ワーキングで御議論いただいております各教科の学びのプロセスの中で、いかに効果的にICTを活用していけるかどうかということ。もう一つは、情報に関わる資質・能力をカリキュラム全体でいかに育んでいくべきかということでございます。


まず1点目でございますけれども、お開きいただきますと、1ページ目、情報に関わる資質・能力について、2ページ目にICT活用の特性・強みについてという整理をした表がございます。ICTの特性といたしまして、多様で大量の情報収集、整理、まとめ表現できるといったカスタマイズが容易であるということ。こういったことにより、例えば試行錯誤を繰り返しできたり、調べ学習、ドリル学習、プレゼン、情報共有などに生かせるというICTの特性が導けるということでございます。


2点目は、時間や空間を問わずに様々なデータ等を送受信、蓄積等をできるという、時間的、空間的制約を超えることができるということ。こうしますと、児童生徒の思考の過程や結果を可視化するということで、様々な学習過程の記録ということにもつながってくるということでございます。


3点目は、距離に関わりなく相互にやりとりができるという双方向性を有することということで、地理的な状況に左右されずに、様々なインタラクティブなやりとりが可能になるという3点の特性がございます。


こうしたことを、下の赤い部分にございますように、深い学び、対話的な学び、主体的な学びの実現、あるいは個々の能力や特性に応じた学びの実現、あるいは地理的環境に左右されない教育の質の確保、このようなことに効果的に生かしていけないかという視点でございます。


具体的には3ページ目を御覧ください。アクティブ・ラーニングの視点に立った学習プロセスにおけるICTの効果的活用ということでございますけれども、ここでは理科の問題解決の例が示されてございますけれども、現在、本ワーキングも含め、各ワーキングでこのような学習プロセスの在り方を御議論いただいているところであります。こうした中で、ICTを効果的に活用することによって、豊かな学びを実現していく。そして、それを情報活用能力の育成にもつなげていくという視点であります。


4ページ目でございますけれども、より具体的に効果的活用の例ということで、情報ワーキングにおまとめいただいたものでございます。アクティブ・ラーニングの三つの視点、対話的な学び、深い学び、主体的な学びというそれぞれの観点から、例えば他校との交流、海外との交流、協働での意見の整理や、プレゼンテーション、課題を把握しやすくすることや、データの分析、記録の活用により自らの学びを振り返るといったこと。あるいは、左下にございますけれども、個に応じた学習など、このようなことに効果的に活用していけるのではないかということで、それぞれのワーキングにおいて更に教科ごとに効果的活用の在り方を深めていただきたいということでございます。


2点目でございます。資質・能力についてでございます。5ページ目ですけれども、5ページ目の上に情報活用の実践力、情報の科学的な理解、情報社会に参画する態度、これがこれまで情報活用能力の3観点ということで整理されてきたものでございます。これを、より各教科で御議論いただいている資質・能力の議論につなげやすくするために、情報ワーキングにおきまして再整理をいただいたものが、下の三つの柱。これは資質・能力の三つの柱に沿った整理でございますけれども、こういったものに再整理をしていただいたものでございます。


情報活用能力、単にICTを使える力ということではなくて、様々な情報を、問題解決や自分の考えを深めることに活用していけるといった幅広い力として捉えられているものでございます。


更に7ページ目でございますけれども、そのような資質・能力を、小・中・高といったそれぞれの発達の段階に応じてどのように育んでいくかということでございます。今回、中学校では技術科において、これまで計測・制御にのみプログラミングの学習がございますけれども、これをコンテンツに関する学びに広げていくということでありますとか、高等学校において情報科、現在二つの科目から選択ということになっておりますけれども、これを1本の共通必履修科目にすることによって、様々な問題解決の考え方、その中で情報や情報技術を活用していける力を育むといった改定がなされる方向性でございます。


このようなことも含めまして、小・中・高それぞれの段階に応じて情報活用能力、これからの時代に求められる能力の一つとしてしっかりと育んでいくということ。


また、なかなか学校だけでは、教材ですとか、人的リソースという面で用意し切れないというような部分もございますので、右側にございますように、社会との連携の中で、それをしっかりと確保していくという視点でございます。


8ページ目からは、それぞれの教科で具体的にどのような御検討をお願いしたいかということでございます。まず、全体の方向性、総則などでございますけれども、教育課程全体を通じて、このような情報に関わる資質・能力を発達の段階に応じて育成するということ。各教科の特性に応じた指導内容の充実を図るということ。アクティブ・ラーニングの視点に立った学習活動においてICTを効果的に活用した学習を行うようにしていただくということ。


また、特に小学校段階ですけれども、現行の学習指導要領でも情報手段の基本的な操作、文字入力でありますとか、データ保存ということは、できるようにということにはなっているのですけれども、様々な調査結果を見ますと、なかなか定着していないという状況でございます。


今後は、各教科の学び、例えば国語における3年生のローマ字学習でありますとか、総合的な学習の時間の中で、学び方を学ぶという中、あるいは社会科、算数、理科など、それぞれの学習としっかりと関連付けながら、カリキュラム・マネジメントの中で情報手段の基本的な操作ということができるようにしていくことが重要であるということであります。


また、学校だけでは指導体制の確保が難しい課題やテーマについては、社会に開かれた教育課程の観点から、社会人講師の活用や、外部のプログラムとの連携といった社会との連携を図ることということでございます。


体育、保健体育に関しましては、10ページ目にございます。先ほど申し上げましたように、情報活用能力、単にICTを使いこなせる力ということだけではなく、様々な情報を適切に処理して課題解決に活用していく、このようなことを含むということでございます。


そのような観点から、10ページ目の下から2段目、体育、保健体育にございますように、必要な情報を基に、生涯を通じた運動やスポーツとの関わり方を見付けていくために必要な力や、仲間と協力して課題を解決するために必要な力、健康に関わる情報を収集・選択し、健康の保持増進を目指して意思決定、行動選択していくために必要な力、このようなこと。加えて、様々な情報機器の使用と、欲求やストレスを含めた健康との関わり、これはネット依存ということもあることを踏まえてですけれども、このようなことに関して理解を深め、自分に合った対処法を見付けられるようにすること。そして加えて、学習活動においてICTを効果的に活用した学習が行われるようにすること。


これらは現在、資質・能力の在り方、あるいは学習プロセスの在り方の中で既に御議論いただいている内容と整合するものでございますけれども、今後とも、このような検討の方向性の中で、情報活用能力ということも念頭に御検討を進めていただければということでございます。


以上でございます。


【山口主査】  ありがとうございました。大杉室長から、主に情報に関わる資質・能力に関する議論について御報告をいただきましたが、今、御報告いただきました件について、何か御質問等ございますか。大丈夫ですか。


それでは、早速、本日の議題に入りたいと思います。本日は、前回のワーキンググループで事務局から御説明をいただきました、総則・評価特別部会より検討の依頼がありました特別支援教育の観点から必要な支援などにつきまして、また、体育科・保健体育科におけるアクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた資質・能力の育成のために重視すべき学習過程について議論をしていきたいと思います。


まずは、特別支援教育の観点から必要な支援などについて議論をしていきたいと思います。進行の仕方といたしましては、前回説明はいただいておりますけれども、少し時間も空きましたので、改めて事務局から説明をいただいた後、意見交換をさせていただきたいと思います。


それでは、事務局の方から配布資料の説明をお願いいたします。


【高橋教科調査官】  失礼いたします。資料の2を御覧ください。体育・保健体育における特別支援教育の観点から必要な支援等についてす。平成28年4月から、いわゆる障害者差別解消法が施行されることに伴いまして、合理的配慮の提供について、国や地方公共団体は法的義務、民間事業者は努力義務が課せられていることとなっております。


また、共生社会の推進や、オリンピック、パラリンピック・レガシーの観点からも、学校教育の中で対応していくことが求められると考えているところです。


ピンクの部分になりますが、体育・保健体育における資質・能力の育成並びに体育・保健体育の目標の実現を目指し、障害の有無にかかわらず児童生徒の十分な学びが実現できるようにすることが必要であるということです。これにつきましては、特別支援教育部会においても議論をいただいているところですが、本ワーキングの事務局といたしましては、課題として、1ポツ、体育活動による事故を恐れるが余り、十分な活動の機会を与えていないのではないか。2ポツ、他の児童生徒と円滑な関係を構築するための指導が十分になされていないのではないか。3ポツ、安易な学習内容の変更や、学習活動の代替になっていないか、と示させていただいておりますが、その他様々な課題があろうかと思いますので、そのような点につきましても、是非御議論をいただきたいと考えているところです。


改善の方向性でございますが、資料の18ページをお開きください。一番上の部分ですが、黄色の部分、これまでの示し方としましては、総則の中で、障害別の配慮の例を示しているところでございますが、右側の青い部分、改善の方向性として、総則に加え、各教科等に示すとしております。更に、下の四角の部分ですが、学習の過程で考えられる困難さごとに示すとしているところでございます。困難さの例としまして、ここに太字で示しているところですが、これらの手立てについて御議論を頂戴できればと考えているところです。


次のページからは、特別支援教育部会で、各教科ごとの例を示していただいているところです。体育・保健体育に関しましては21ページをお開きください。一番上の部分になりますが、赤の部分が困難さの状態、緑の部分が配慮の意図、青の部分が手立てというように示しているところです。


読ませていただきます。1ポツ、複雑な動きをしたり、バランスを取ったりすることに困難がある場合には、極度の不器用さや動きを組み立てることに苦手さがあると考えられることから、動きを細分化して指導したり、適切に動きを補助しながら行うなどの配慮をする。2ポツ、勝ち負けにこだわったり、負けた際に感情を抑えられなかったりする場合には、活動の見通しが持てなかったり、考えたことや思ったことをすぐ行動に移してしまったりすることがあることから、活動の見通しを立ててから行動させたり、勝ったときや負けたときの表現の仕方を事前に確認したりすることなどの配慮をする、という例が示されているところです。


最初のページにお戻りいただきまして、一番下をご覧ください。体育・保健体育の学習の過程において考えられる困難さごとに例を示していきたいと考えているところですが、ここの例につきましては、21ページの1ポツをそのまま転記をさせていただいているところです。様々な課題につきまして、困難さの状態に対する配慮の意図及び手立てについて、御議論をいただきたいと考えております。また、困難さを克服する手立てと併せまして、得意な分野を伸ばす配慮や手立て等につきましても御議論をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。


以上でございます。


【山口主査】  ありがとうございました。


それでは、体育・保健体育における特別支援教育の観点から必要な支援などについて、これから1時間程度時間を取りまして意見交換をさせていただきたいと思っております。では、御意見のある方は、あらかじめ名札を立てていただきますと、私の方で順次指名をさせていただきたいと思います。また、発言が終わりましたら、元に戻していただきたいと思っております。


また、本ワーキンググループといたしましては、なるべく事務局に対する質疑応答のような形ではなくて、事務局からの今頂きました説明を踏まえまして、委員による意見の議論の深まりがあると考えておりますので、どなたか委員の方が御意見を頂きましたら、それに対して又御意見を頂くというような形も活発に行われるようにと思っております。


特別支援教育、今、御説明がありましたけれども、困難さの状態と一言で言っても、非常に個々のケースが考えられると思いますので、そのようなことにつきましても議論を深めていきたいと思いますが、どなたかいかがですか。


鈴木委員、お願いいたします。


【鈴木(美)委員】  今回の体育科の例の中に、保健の分野の一例がなかったのですけれども、知的障害のある子に対する保健学習の意義というのは非常に高いと感じております。例えば、危険回避能力や危険予知能力であるとか、自分の発達や成長について事前に知っておくとか、そのような健康について事前に学んでおく、又、学習しておくというのはとても大切なことだと考えています。


ですから知的障害のある子というところで今回は限定させていただくと、そのような障害がある子に対しては、学習内容の理解が不十分であることから、自分の生活と関連させて学習していく、また、指導していくことが大事になってくるかと思います。自分の生活というのは身の回りの生活であって、実生活と関連させてとよくいうのですけれども、実生活だと少し遠かったりするのですけれど、自分自身の生活、身の回りの生活といったところで理解を深めていくことが大切かと感じております。


以上です。


【山口主査】  ありがとうございました。


藤田委員、いかがですか。


【藤田委員】  失礼いたします。通常の学級においても、たくさんの配慮を要する生徒がおりますので、そういった「通常の学級における特別支援の視点」というところでいいますと、「教えやすく学びやすい」と言うどの子にとっても学びやすさを感じられるところが大切だと思います。つまり、「ユニバーサルの視点を生かした授業づくり」という視点が一つのポイントかと思います。


それからもう一つは、指導内容として先ほどの中にも出てきましたけれども、いろいろな人が世の中には存在するのだ、多様性があるのだということを知識として知っておくというところも指導の場面で、大切にしたいと考えます。体を動かすときや健康を保っていくときに、多様な人たちがこの世の中には共存しているのだと言うことを前提に、そのような知識として子供たちに提供していくところも大切な視点かと感じております。


【山口主査】  ありがとうございました。


【西岡委員】  それでは、保健の点から少し意見を述べさせていただきます。障害を持っている子供たちにとって、先ほどのお話ですと、学習における困難さというのは様々あるかと思います。情報入力で見えにくいとか、聞こえにくいとか、あるいは情報統合などの色の区別が困難であるとか様々な困難さを抱えているのではないかと思います。そのような点につきましては、指導の方法とか教材の在り方を、まず工夫しなければならないかなと考えております。


その際に、先ほどありましたICTの活用が、特別支援教育などでも身近なICTがかなり活用されていると伺っております。そのようなICTの活用なども含めて検討が必要なのではないかと考えます。


それから、先ほどの藤田先生の御意見と重複するのですが、障害のある子供たちの健康課題とか、健康特性、あるいは行動の特性はかなり様々であって、ほかの子供たちがなかなか理解できない。場合によっては指導者もなかなか理解できないのではないかと思います。これは健康関係の情報ですから、プライバシーの問題もあるのかもしれませんけれども、ほかの子供たちが、そのような行動特性があるということ、例えば地域で聴覚に障害のある人たちですと自転車の方向に対して非常に脅威を感じるとか、車両の方向などについてもそうです。そのような弱者的な特性を持っている。そのようなことを子供たちも含めて理解する必要があるのでないか。


あるいは、突発的な事態があって避難行動などするときに、パニック状態になってなかなかうまく動けないというようなこともあるかと思います。このようなことに対する理解をして、障害のある子供たちへの支援方法について考えていくことも、指導として必要なのではないかと考えています。


以上です。


【山口主査】  ありがとうございました。


個々のケースについて、教員も全てを把握しているというわけではないので、そのようなところは本当に教員自身も勉強しなければいけないし、外部の方にそのような知識を提供していただくことも、これからは必要なことかもしれないですね。


【西岡委員】  そうですね。保健についてはデスクワークとかグループワークが多いので、ほかの教科でのこれまでの指導の方法などの経験とか知見などが、結構使えるのではないかと考えます。


【山口主査】  ありがとうございました。


それでは、岡出委員お願いいたします。


【岡出委員】  すみません、お時間を頂きます。実際に小学校で授業をされる方は、クラスの中にその子供さんたちがいて、全ての教科も持ちながら体育の授業も持てるという環境条件におられるわけです。中学校、高校の教員の方たちからすると、学級担任のケースもありますけれども、基本的に体育の授業のところだけで、保健体育の授業のところで対応されるということを考えると、実際に子供さんたちをケアできる時間的な条件がかなり違うということが、まず話の前提になってくるのだと思うのです。


中学校、高校であっても、学級経営等に関してはいろいろなサポートができれば、当然そのクラスの中にいる人たちと一緒にやることが前提、インクルージョンしていくことを前提にして考えていくのであれば、子供さんたちに合った教材等を出していくことも当然必要だろうと思いますし、同時に、先ほど来お話しになっているように、体育の授業の場合、どこの指導内容に入れるかということだと思いますけれども、多分アメリカのナショナルスタンダード等だと、小学校の1年生ぐらいで異なる者と関わるということは書かれているわけです。当然、人は違う、そのような人たちとどのように関わるのかということは、人間関係に係るような学習の指導内容として明記されていて、そのようなところから、いろいろな人たちとどのように関わるのかということが学習できるような教材分は子供さんたちに出していく。このようなことは、多分いろいろな形で既に展開されていると思うのです。


他方で、そのようなアイデアは当然いろいろ蓄積していくことは必要だと思うのですけれども、実際のところ、例えば小学校であっても、体育の授業は母学級に戻ってくるけれども、ほかの授業は特別支援学級に戻っていて、そちらでやっているので、子供さんたちも、体育の授業だけ急に友達が来たような感じになっている子供さんたちがいます。それは多分、中学校、高校でも全く同じ現象が起こる。そのような点からすると、現実的にどれがいいのか、よく判断はつきかねますけれども、子供さんたちが通常ごく当たり前に関われるという状況が学校の中にあるかないかで、実際の授業の仕方はかなり変わっていってしまうのではないかと思います。


特別支援学校は特別支援学校で、また閉じて、そこは皆さん、かなり丁寧にやっていられます。子供さんたちに対応される先生方はチームを組んでやっておられるので、子供さんたちの障害に個々に応じた情報は共有されて、そこでいろいろな配慮をされる。


それが小学校のケースだと、学級担任で閉じると、今度その子の情報をほかの担任となかなか共有しにくいと、お互いのサポート体制がつらくなるところが逆に出たりするので、そういう意味での教員サイドの情報共有のシステム、それから子供さんたちの中でのお互いの理解を促すようなしつらえ、そこをうまくかみ合わせておかないと怖いかなとは思います。一緒にやればいいとは考えますが、場合によっては、むしろ危ないケースが考えられないわけではない。そのバランスをうまく取れるような項目が、うまく盛り込めるかどうか。これは例示なので、その例をベースにして先生方が考えられるようなものとして挙げるべきものが何なのかということが、論議の中で具体的に出てくれば話は展開しやすいのかなと思います。


すみません、お時間を頂きました。


【山口主査】  ありがとうございました。今、岡出委員の言われたことは、なかなか一つの教科だけを取り出してというよりは、全体で、まず学校経営とかそのようなところで、どのように特別支援教育を捉えるかという前提をまずした上で、各教科に具体的にどうしていくというように入っていくと、やりやすいともいえるということかもしれないです。ありがとうございました。


それでは、日野委員、お願いいたします。


【日野委員】  失礼します。今回の与えられているテーマと少しずれるのですが、今まで資質・能力について,小学校、中学校、高等学校で検討してきました。特別支援学校にも体育の授業があり、その授業をどうするかも大きな課題ではないかと思います。この部会で扱うのではないかもしれませんが、この部会での議論を反映して頂いたり、あるいは他の部会で議論していることを、こちらに教えていただく機会があればいいと思っております。


実は私の大学ではフィールド演習という授業があり、大学院生に特別支援学校の体育の授業づくりを経験させています。特別支援学校の先生方と一緒に授業実践をするのですけれども、障害の種類や程度に応じて支援の仕方はいろいろあって、本当にケース・バイ・ケースです。例えば、伴走するにしても、ある子は前を走った方がいい、ある子は横に並列で走った方がいい、ある子は後ろからぽんぽんと肩をたたきながら走った方がいいなど,個に応じた支援が求められます。


そのような点で、特別支援学校は既に合理的配慮で授業をされていますので、そこからいろいろなものを吸収していくことが重要だと思いました。


調査官の説明からは,困難さの例の具体例をどう出すか、手立てをどう出すかということでしたので、例えば、理解に時間がかかったり、すぐ忘れてしまう、なかなか記憶に残らないこともありますので、ユニバーサルデザインがいわれていますが、視覚支援が大切だと思います。どうしても運動の姿はすぐ消えていきますので、写真とか掲示をずっと見せたり、活動の動きも全体を見せながら、特別支援学校でよくやられていることを一般校でも手立てとしてやっていく必要があると思います。あちらとかこちらと言っても分かりませんから、指さしてとか、動きを見せてとか、そのような手立て等を取り入れていくことが一つあるかと思います。


また、特別な支援をする子供たちにとってみると、運動は難しくて、ルールが複雑で、いろいろな配慮が必要だと思います。必ずしも一緒にすることはできなくても、課題と条件と評価のように分けていくと、課題を変えるのか、課題は同じだけれど条件は易しくしてあげるとか、あるいは課題と条件は同じだけど評価のところはやさしくしてあげるとか、いろいろな配慮の仕方があると思います。そのようなことも踏まえながら、今、障害者スポーツのことをアダプテッド・スポーツと言いますが、アダプテッドというのは適合するとか適応するということですので、スポーツの方に子供たちを寄り添うようするのではなくて、子供たちの実態にスポーツが寄り添っていくような、そのような教材やルールの工夫等をしていくことも一つの支援かと思いました。


もう1点、このような手立てや手順とは違うのですけれども、共生社会ということを考えていくと、健常者も障害者も一緒になってスポーツを楽しむことが求められていると思います。特に健常者が障害者スポーツに対する意識とか、先ほど岡出委員さんが言われました、本当にともに楽しむとか、相手の立場を思うということを伝えていかないと、経験していかないと、なかなかそのような気持ちにならないと思います。障害者がスポーツをやろうというベクトルはあるのですけれども、もっと健常者が障害者スポーツを経験する機会を増やしていけば、そのような考えや意識も広まっていくのではないかと思います。特にコミュニケーションを高めるという意味でも、障害者スポーツは、身につけるというよりも、それを手段としていろいろなものを学ぶ機会もあると思いますので、障害者スポーツを取り入れていくのも一つの方向性してはあるのではないかと思いました。


以上です。


【山口主査】  ありがとうございました。今も、実際に学校などによっては、そのような障害者スポーツを取り入れて経験させるという試みも、体育の授業とは別な形で、オリンピック教育の一環としてされているところもあるようで、そのような事例も是非紹介できればいいかと思います。


それでは、友添委員、お願いいたします。


【友添委員】  済みません、大分意見が出てきたかと思っているところなのですけれども、多分、障害の内容に応じて、かなり扱いが違ってくると思うのです。知的障害の場合と身体障害の場合ももちろん入ってくるし、それから最近の子供さんに多い内臓疾患の問題も、例えば心臓病の子供たちをどう扱うかということも、特別な配慮を必要とするということで、アメリカの事例などにもよく出てくるわけですけれども、それに応じて配慮の仕方、つまり先ほど日野委員が言われたように、教材をどう工夫するのか、あるいは藤田委員が言われたように、指導内容をどうやるのかということの対応で、かなりの部分カバーはできると思うのです。


ただし、ここで問題になってくるのは、学習指導要領上の縛りをどうするのかという根本的な問題と関わらざるを得ない。今、座長が言われたように、オリパラの教育の中でやっている。つまり、総合的な時間の中で扱えたり、あるいはほかの時間を使って、これはやれるのだけれども、実は学校体育という学習指導要領の中で教材を自由に組み替えることが、教材自体はもちろん可変性があるということで、子供たちに合わせてという範囲なのだけれど、あくまでも今の指導要領上では健常児に合わせた発想なので、そこをどのように特記事項として書き加えていくかというテクニカルな問題が一つ出てくるだろうと思っていました。


二つ目ですけれども、一つは、特別支援学校では具体的に多様な実践の積み重ねが行われてきているのだけれども、特に採用当初の若い時期に特別支援学校に体育の専科の人たちは行って、その後、普通の健常者を対象とした学校に赴任するときに、そのような情報の持ち込みがうまくできていない部分が実はあって、それを具体的に共有していくような手立てを、現実的な問題として教育委員会の中で少し工夫していく必要があるのではないかと思うのです。若い時期にかなり多様に、例えばユニバーサルスポーツなどを経験しても、それが学校に持ち込めない、体育の授業にそれがそのまま活用できないというのは、学習指導要領上の縛りがあることが一つあるのではないかと考えてきたところです。


それと、もう一つ、三つ目ですけれども、介護実習の時間をうまく活用できないのだろうかということをいつも考えるわけです。介護実習に今、大学生は行って、大学のレベルからいうと勉強してくるのだけれども、高齢者の介護のところに行く学生もいれば、あるいは特別支援学校に行く学生もいるのだけれども、それは学生の意思とは関わりなく現状では配置されるというところの問題。それは実は問題意識に応じて介護実習が機能していないという問題も含まれてくる。


教科別に、ある程度学生に、これを有効な機会にする。介護実習の目的はそうではないといわれれば、お叱りを受けるわけですけれども、もう少し効果的にこれを活用していけば、特別支援教育の体育の中での配慮、あるいは他の教科も恐らくこれが使えるのではないかとふだんから感じていたということです。


それから最後ですけれども、日野先生が今おっしゃられたように、アダプテッド・スポーツということと同時にアダプテッド・フィジカル・エデュケーション、つまり特別支援体育なわけですけれども、大学に目を転じると、実はこれの授業をやっている大学は全国にほとんどないという現状です。保健体育科教育法でやってきた体育科教育法だとか保健科教育法はあくまでも健常児、健常者の学校を対象とした教育法をやってきたわけで、全国の大学の科目やシラバスを見てみたら、あまり行われていない。それは人材の不足があるわけですけれども、もう一つは、これは教育職員免許法の専門科目との関係があると思います。もう少し政策的に進めていってもいいのではないかということを感じながら今聞いていました。


以上です。


【山口主査】  ありがとうございました。今、友添先生が言われた、指導要領上の縛りというところでいいますと、ここを少し何とかしなければいけないというところでいうと、友添先生、何か具体的にここをこのようにということが、もし、あれば、伺いたいと思います。


【友添委員】  先ほど日野委員が言われたように、特別支援学校などでやっている教材を、そのまま体育の授業の中でやるというのは、学習指導要領の取り決めがあって現実的には無理です。中学校の授業で球技領域で、例えばベースボール型だとか、そのほかの型のベースの中でもやろうとしても、現実的にブラインドベースボール、鈴を付けてやるようなゲームは中学校などでは難しいと思います。小学校の早い段階の中であれば可能であっても、現実にはなかなか厳しいというのが実態だと思います。


つまり、それは体育ではないという、体育大学だとか体育学部、体育学科だとかを出てきた体育の教員たちの常識を崩していかなければいけない問題ではないかと思っています。


【山口主査】  ありがとうございました。


それでは真如委員、お願いいたします。


【真如委員】  初めに、特別支援教育については、具体的な手だてを示すことは、指導者にとっては非常に大事であると感じております。現在も個別指導計画の記述を見ていますと、ほとんどここに資料で頂いた内容のことについては書かれております。ですが、それだけ学校の先生方はどのように指導したらいいのかというあたりについて、十分な知識を持たないまま学級に入ってきているという場面があるのです。ですから、できるだけそのような具体的な例を示していただきながら、更にそれが自分たちで受け止めたときに、新しいものとして生み出すような記述があるといいなという気がいたしました。


それから、小学校のことを考えますと、通常の学級と関わるような場面が多くなると、今、岡出先生や友添先生から話がありましたけれども、そうであれば、なおさらともに学習する場面における配慮についても、通常の学級の先生も勉強するという機会も、もっと持たなければいけないという気がします。意外と通常の学級の先生と特別支援の学級の先生との間の交流というのは、あるようでないのです。具体的に言うと、これは東京の場面ですが、職員室そのものが離れていたりする場面もあるので、いざ一緒に何かやろうといっても、十分な意見交換があって共通の理解をしながら何かに取り組むというところまでの時間が十分取れていないところもあるのかもしれません。ですから、そのようなところも考えていく必要があると思います。


併せて、小・中・高という子供たちが育っていく過程がどのようになっているかというのも、それぞれの通常学級の先生もそうですし、特に特別支援の学級の先生方もしっかり押さえておいて、前回もなめらかという話が出ていましたけれども、なめらかにずっとつながっていけるように考えていく必要があると感じております。


以上です。


【山口主査】  ありがとうございました。


それでは菊委員、お願いいたします。


【菊委員】  私が最初に申し上げたいのは、おそらく特別支援教育というように「特別支援」という言葉に変更になったのは、それほど古いことではないということです。それまでは障害者と言っていました。つまり、ものの見方が何か否定的な切り口から入っていくことに対して、もっと肯定的に見ていくという、そのような見方への変更があったのであろうと思うのです。


こうした背景から基本的に学習のコンセプトを考えると、健常者と障害者とをこれまで一応対立的に見てきていたわけですが、恐らくこれからはみんなそれぞれ出来る力があるということが前提で、出来ないのではなくて、出来ないというのは、ある共通の目的があって、それに対して出来やすい子と、出来にくい子と区別しているだけであって、その子供の今そこにいる人間の存在から考えれば、必ず何か出来る力はあって、その出来る力がたまたま学習指導というこちらの方で与えられた課題に対して、これは出来にくいとか、出来やすいという見方をしていく必要があるのではないかということだと思うのです。


体育の場合には、特に体を動かす技能というものを求められるので、それはなかなか難しいでしょうということになるのだけれども、よく考えてみると、以前の学習指導要領もそうですけれど、我々は観点別評価をやってきているのです。つまり、例の乙武君でも技能は確かに「1」かもしれないけれども、戦術を考えたり、いろいろなものを観察して非常にするどい分析をしたり、いわゆる興味関心があって、いろいろなゲーム分析をしたりと、多様な関わり方があるわけです。いろいろな関わり方に対して評価をしていこうというのが観点別評価ですから、そのようなことでいえば、それこそ技能だけに焦点化して評価するのではなくて、いろいろな観点でその子のいいところを評価していけばよいことになります。


例えば、知的障害の子供さんでいえば、非常に集中力があるとか、我々以上に何か物事に集中してこつこつとやっていくといったような、特異な才能を持っているということを、我々はよく見聞きします。そのような一人ひとりの何かいいものを引っ張り出していくような見方というのは、今の授業の現場の中でも、見方さえ変えればいろいろ出てくるのではないかと思うのですけれども、その辺のところの開発といいますか、ものの考え方を変えていくことの方が、実は特別支援だけではなくて、普通に我々が保健体育の授業をやっている中でも応用されていく部分があるのではないかと思っています。「特別支援」という考え方の中からそのようなことを、まず指導者、先生方が共有することが大事なのではないかと思いました。


以上です。


【山口主査】  ありがとうございました。どうしても指導要領に落とし込んでいくと、具体的に例示というか、このような場合にはこうしなさいという、そちらが先に行ってしまうので、今、菊先生が言われたような大事なところ、考え方というところが、落とし込むのが実はこのような会議の中では共有できているのですけれど、それをどのように現場の先生たちに伝えていくかという方法は、なかなか難しいところではあるのですけれども、その方法をなるべくこのような議論の中でも見付けていければいいとは思います。


それでは渡邉先生、お願いいたします。


【渡邉委員】   先ほど、友添委員からもお話がありましたけれど、例えば心臓病であるとか、腎臓病であるとか、あるいはアレルギー疾患とか、障害者差別解消法で扱ってはいないのだけれどハンディキャップのある子供は、当然学校の中にはたくさんいるわけです。例えば、体育であれば、学校の生活管理指導表に沿って運動させるということなど、もう既に行われていますけれど、そのような個々の慢性的な疾患というところにも、ほかの障害と同じようにもっと焦点を当ててもいいのではないかと思っています。


そうしますと、指導だけではなく指導内容の中にも入ってくるかもしれませんけれど、例えば食物アレルギーのある子であれば食育の内容は当然それを考慮して考えなければいけないということもあります。また宿泊行事とか、ほかのアレルギーのある子供の場合もある。ですから保健体育ということに限らず、恐らく総則全般に関わってくることかと思うのですが、ここで挙がっているような障害だけではなくて、慢性疾患というようなことを抱えたハンディキャップの子供もいて、そのような子供を考慮した指導も一緒に考えていただきたいということです。


以上です。


【山口主査】  ありがとうございました。


それでは五十嵐先生、お願いいたします。


【五十嵐委員】  渡邉先生が、私が言おうとしていることの半分ぐらい言っていただいたのですが、特に先進諸国は小児の医療の質が非常に向上しまして、はっきり申し上げて、死亡する子供が非常に減ってきている。例えば、左心低形成症候群といいまして、私どもが医者になった30年以上前は全例亡くなっていたような心臓の左側の形成が悪いようなお子さんたちが、2回手術しますと、今は60%ぐらいが大人になっているのです。それから小児期発症の急性白血病は、5年生存率が8割。二十歳まで行く人が7割以上になっています。昔は全員亡くなっていましたけれども、そのような時代に比べますと、子供たちが病気を持って、それが完全に治らないまでも、病気を抱えながら大人にまでなっていくという方たちが非常に増えてきている。そのような方たちを含めて、例えば心の問題だとか、あるいは思春期に発症するいろいろな病気だとか、それらを全部ひっくるめてChildrenandyouthwithspecialhealthcareneedsという概念がありまして、これがいろいろなところで調べられていますけれども、アメリカでは17歳の時点で17%いるといわれています。子供たちのポピュレーションの17%が何らかの障害や医療的ケアが必要な人たちだという、先ほどアレルギーというお話も出ましたけれども、重症の方はそれに入るのだと思いますけれども、そのような時代なのです。


しかも、それが程度、心の問題も含めて、体も心もいろいろな障害、千差万別の状況があるという中で、そのようなお子さんたちに資料2の10ページの下の段にあるような合理的配慮をしようということで、学校教育をそのようなお子さんたちにもきちんとしようと言っていただいていることは、大変私はありがたいことだと考えています。


それで、お願いは、要するにそのような障害や慢性疾患を持っているお子さんたちの状況はみんな違うのです。ですからなるべく一つの病気の程度に応じてプロトコール、ガイドラインを作るようになりまして、日本全国一定の基準で対応することに努めていますけれども、是非、医療提供者側と教育の先生方とが密接な連携を取っていただきたいということが、一つお願いしたいことだと思います。


それから、10ページにあるように、均衡を失した、又は過度の負担を学校に課さないようにという注意書きもあるわけですけれども、そのようなことをする場合には人的支援が、多分学校側にも今まで以上に厚くすることが求められているのではないかと思いますので、その点も是非お願いしたいと思います。


以上です。


【山口主査】  ありがとうございました。今、五十嵐先生が言われたように、非常に多様な形で障害もそうですし、慢性疾患というものが増えてきているということで、特に体育活動の場合には身体活動を伴うので、現場としては事故に対するといいますか、専門的な知識がない状態でどこまでやらせることができるかというのは、本当に大きな問題だと思うのです。


そのような意味では、友添先生も言われましたけれども、教職課程といったところで、どのような学びをさせていくかというところから、本来は考えていく必要があることなのかもしれないのです。ありがとうございました。


それでは髙橋委員、お願いします。


【髙橋委員】  自らの体を考えますと、見えなくなっている、聞こえなくなっている、すぐ記憶を失ってしまう、私自身が支援が必要かなと思いながら、人ごとではないと思っておりますけれども、まず1ページで、例えば安易な学習内容の変更や学習活動になっていないかというのは、例えば普通の授業の中でも見学者を、ただそこで見ていなさいというような、まだ配慮をしていないような授業がある。そのようなことを、支援が必要だということは教育の原点だと思うのですけれど、そのようなことを教えてもらえることだと思っています。


改善の方向性で、どれだけ例示を挙げるのだろうかというのは疑問なのですけれども、今一番お話ししたいのは、得意な分野をどのように伸ばすのかということで、ダンスのお話をさせていただきたいと思います。30年前ぐらいに、ダンスは本当に必要なのだろうかと、物すごく悩みまして、特別支援の学校に授業をさせていただいて半年通いました。ダウン症の子、音を掛けるとすぐリズムに乗って動いてくれる。又先生、来週来てねと言って、このように役に立っているのかもしれない。大学では、ダンスですかという感じだったのですが、そのようなときに到達目標を特別支援の先生方は、ここまでやってほしいという願いを大分強く置いていたような気がします。菊委員がおっしゃったように、本当にどこに設定するのかということを改めて感じた出来事でした。


その後、大野一雄さんという70歳で世界デビューした舞踏家がいるのですけれども、捜真女学校という中学校、高校の先生で、ダンスをしていました。彼のすばらしいところは、動けなくて、恥ずかしくてという子も、ずっと待っているのです。健常者ですけれども、その引き出す教育ということを、彼は戦前の明治39年生まれですから、戦前の教育を受け、なおかつ戦争に行き、捕虜になり、それでも一斉指導だとか、切った張ったというものではなくて、本当にその子の可能性を引き出すという、特別支援云々ではなくて、教育の原点だと私は思っているのです。そのようなことがきちんと私たちもやれているのだろうかというのを教えていただいた出来事でした。


彼は70歳を過ぎてデビューして、世界各国で踊るのですけれども、動けなくなったら車椅子でも踊っています。その後、寝たきりになっても、手だけで踊る、目だけで踊る。つまりダンスという領域とか、体ほぐしというような領域は、どのような子であっても出来る領域だろうと思います。なかなか動けない子でも、見学の子でも、先ほど乙武さんの話が出ましたけれども、そのようなことが出来るのではないかと思います。


また、障害を持った、例えば耳が不自由な子も、余り恥ずかしくなく動いていたり、車椅子でダンスというのも当たり前に今世の中でやっています。そのようなことから私たちはいろいろなことを学ばせていただいていると思います。


あと2点ですが、授業をするときに、今日はこのようにやりますよ、このように掲示してということが見える化をすることによって、このようなことを学ぶのだということを明確に示すことによって、不安にならないような子も多くいるかなと思います。


それから大学の授業なのですが、地域の方と一緒に授業をしているというこまを作りまして、18歳の男の子と八十何歳の方が一緒に。私がいくら人に優しくなどと言ってもだめなのです。実際目の前にそのような方がいると、おばあちゃん、僕と一緒にやりましょうなどとすごく優しく豹変するのです。だからクラスの中にそのような子がいることによって、協働というのを打ち立てて、今、指導要領が変わろうとしていますが、本当にそれはその場にいることによって学べることがあるのだと思います。


一番最後に、見えないとか、あのような表示でなるということはすごいなと感心して見ています。


以上です。


【山口主査】  ありがとうございました。


それでは横嶋委員、お願いします。


【横嶋委員】2点申し上げます。まず、一番上の一番表の「課題」のところですけれども、「事故を恐れるが余り、十分な活動の機会を与えていないのではないか」という表現がありますけれども、私、これを見たときに、まず特別支援の中にも、特別支援学校と特別支援学級と通常学級での通級など、指導環境は非常に大きな違いがあるのではないかと感じました。そのような中で、十分な活動の機会を与えていないのではないかということが、このまま現場に下りて行ったときに、障害の特性等を十分理解していない通常学級のレベルで、必要以上なこと、やれること以上のことをやらせて、けがをしてしまうというようなことも心配されると思いますので、指導環境の整備も同時に行うことが必要になってくるとおもいます。特に体育の場合は、けがの危険性が大きいことから,十分な準備が必要であると感じております。


特別支援学校の場合は、もう既に合理的配慮が十分行われている中で、進んでいくと思うのですけれども、特別支援学級や通常学級の場合は、どちらかというと新しい部分かと思いますので、十分な配慮が必要かと思っております。


そういう意味では、困難さの状態とか、配慮の意図、手立てなどの例を具体的に示していくことは非常に意義があると考えております。


21ページの方なのですけれども、体育科の例として2点挙げられておりますけれども、このポツの二つ目の勝ち負けへのこだわりについてですが、体育の授業の中で、特に集団的スポーツではどうしても勝った負けたということが付いてくると思います。これは本人に対しての指導の視点で書かれていますけれども、これからは本人だけではなくて、それを取り巻く子供たちへの指導、勝ち負け以外の部分の価値を見出すような学習活動を行うという視点も必要かと思っております。


以上です。


【山口主査】  ありがとうございました。非常に的を射た御指摘だと思います。


岡出委員、お願いします。


【岡出委員】  せっかく出していただいたこの資料がありますので、改めて確認をさせていただきたいと思うのです。大体お話が出ているところは、インクルージョンということを前提にして、どの教科でも考えないとだめなことがあります。これは個々の教科の学習指導要領にも再掲されることになるのかどうか。


個々の事例で考えれば、いろいろなものは出てくると思うのですけれど、別に体育の授業だけではなくて、どの教科でも皆さんに知ってほしいことですという心構えのようなものがあります。ものの考え方のようなもの。この手のものは各教科に共通して載せることが前提であれば、重複することは書く必要がないという話になると思うのです。


18ページのところで、例えば小学校のところで、困難さの例と書かれているものがあります。これは情報入力、イメージ化、統合、情報処理、表出・表現、これが授業のところで発生する典型的な問題文だということであれば、体育の授業で発生する問題文も大体これに集約するのか、これ以外のもので発生するものがあるのかということの確認は、多分必要だと思うのです。


これ以外のもので発生するものがあれば、そのようなグループを作って例示項目を入れないと、実際に授業される方たちは大変困ることになってしまいますし、大体これに収まるのであれば、この該当項目で例示項目を挙げて、それをベースにして授業の展開方法を考えていただければという話で、多分終わってしまうような気がするのです。その例がいいもの、あるいは典型的なものであれば、学校の先生方は具体的に考える材料が多分増えるということだと思いますので、今ここに挙げていただいた困難さの例に関して、皆さんが見られて、これでは足りないだろうというものがあるかないかということも確認していただければと思います。


【山口主査】  ありがとうございます。


大杉室長、この点について少し補足をいただいてもよろしいですか。


【大杉教育課程企画室長】  失礼いたします。是非そのような視点からも御覧いただきたいということと、一方で、この困難さの例が仮に網羅されたとしても、現場の先生方にとっては、これを見ただけでは、具体的に自分の教科でどこで何を配慮したらいいのかイメージしにくいということもあるかと思います。そのようなつなぎをしっかり指導要領でやっていくという観点からも、是非アドバイスを頂ければと思います。


【山口主査】  ありがとうございました。


困難さということでは同じであっても、教科に落とされたときの困難さとは、又少し違うということだと思うのです。ただ、おおむねここで総則ではこのようなことが事例としては挙げられて、それをどのように体育・保健体育の方には落とし込んでいくかということだと思うのです。


今皆さん御覧になって、このようなところがというところが、もし、この時点であれば、それも含めて伺いたいと思います。


岡出委員。


【岡出委員】  ごめんなさい、今、大体書かれているのは、先ほど来お話があったように、問題を抱えている子に、どのように手立てしますかという対応策を書かれているケースが、ほかの教科のものを見ても多いです。でも、先ほど来の話は、その本人に対する対応の問題もありますけれども、周囲の子供さんたちにどのような対応策を取ればいいのかという、双方向で手立てを書いておかないと、多分問題を起こした子には先生が何かいつも言っていて、周りの子は、あいつが何とかというような話になってしまうと、その子の居場所がなくなってしまうという気がするのです。


そういう意味では、この手立てを書かれるときには、御本人の問題と同時に、周りの子供さんたちにもどのような働き掛けをすればいいのかということを盛り込んでいただいた方が、授業のところでは教員は打つ手が増えるのではないかと思います。


【山口主査】  ありがとうございました。その点は、手立てのところに、先ほど横嶋委員からもありましたけれども、恐らくチームでスポーツをするときの、喜んだり悔しがったりというところもチームとして対応していくというところでは、恐らく同じような内容なのかなと思います。ありがとうございました。


それでは近藤委員、お願いいたします。


【近藤委員】  今、いろいろお話を聞いていると、すごく私も勉強になったのですけれども、まず今日、事務局の方から示された改善の方向性ということについては、先ほど横嶋委員もお話ししましたけれども、障害者差別解消法が出来て合理的配慮が求められる中、このような方向で示すことは必要だと思います。だから、とてもいいことだと思います。


ただ一方で、先ほどからお話が出ているように、この示し方は、困難さがあって、このような配慮があって、このような手立てを打つ。その困難さというのは、先ほど菊委員が言ったように、ある学習指導要領に示される目標内容があって、それを身に付けるために、このような困難があるからというベクトルの話です。


一方で、体育科・保健体育科のワーキングなので、体育、スポーツは、先ほども出ていましたけれども、PEとか、それから健常者のスポーツから障害者のスポーツの方に行くベクトルであるとか、今持っている力で、みんなが楽しめるというスポーツの文化的な価値があるということを、どこかで示したいと思っています。


なぜかというと、一つは、前にもお話ししたのですけれど、スポーツ基本法が出来てからの初めての改訂であるということが一つ。それから、この学習指導要領の改訂が行われて学ぶ子供たちは、オリンピック、パラリンピック、特にパラリンピックのレガシーを活用して障害体育を実現していく子供たちであるということです。そうすると、そのタイミングでいうと、今回の指導要領の改訂の中で、特別支援教育を学習指導要領の内容を身に付けるために合理的な配慮が必要、そのような方向も必要だけれども、スポーツにはそれだけではなくて、スポーツそのもの、今持っている力で、みんなが楽しめるという文化的価値があるのだということを、体育・保健体育の部分で何か示す手立てがあればいいなと。


先ほど岡出委員が言ったように、共生社会の実現というのは、どの教科にも関わることなので、そのようなことがベースとしてどの教科にも頭書きとしてあるならば、そのようなところに一つ、体育の部分は書き加えることができるのかなと考えました。


以上です。


【山口主査】  ありがとうございました。本当に御もっともだと思います。ただ一方で、体育が目指すところ、健常者の子も含めて、そこも担保しなければいけない中で、どちらに合わせるということではないのですけれども、例えばオリパラ教育も含めてどちらに書き込むかというところも併せて議論をしていく必要、もしかしたら今回の改訂では必要なことも出てくるのかなと、お話を伺っていて感じました。


それでは青木委員、お願いいたします。


【青木委員】  では、現場の状況を少しお話しさせていただきます。現場では特別支援の子供たちというか、グレーゾーンの子供たちが普通学級にいることがとても大きな課題です。特別支援学校は、それなりの教育課程がきちんと組まれていて、対応されていますが、通常学級の中にいろいろな検査をしてもはっきりは出ないけれども、いろいろな発達障害など抱えている子供がたくさんいます。


そういう中で、自校は小中一貫なので、小学生を見ていると、体育の授業そのものに最初から参加しない。集合しても、どこかに行ってしまう。走ってどこかに遊びに行ってしまう。それを呼び止めるのが、また一つの体育の授業の大きな課題という状況もあります。


そういう中で、小学校から情報をきちんと中学校に伝えていただければ対応の仕方も多少違うのですが、きちんと伝わってこないこともあるということです。


中学校は、今、組織的に取り組まなければいけないので、特別支援の部会を毎週やっていて、子供たちの情報交換を、各学年から担当者に出てもらって、スクールカウンセラーを含めて、特別支援コーディネーターがおりますので、自校は養護教諭なのですが、そのような部会を毎週開いて子供の情報交換と対応策をいろいろ考えて、それぞれの担任に下ろす。それから個別支援計画、指導計画を必ず立てて、教科ごとに教科の場面を実際イメージしながら、この子には、国語のときにはこのような、体育のときにはこのような支援計画を作って、それを親御さんに見せて了解を得て、実際の授業を実践しています。


そのような中で、教員たちは大分勉強しました。私たちも特別支援教育に変わってから大分校内研修もやりましたが、大学の時点でこのような教育をしっかりと受けて入ってくれれば大変ありがたいと思います。でも目の前に子供たちがいるわけですから、何とかしなければいけない。毎日戦っている状況です。


中学校の場合は特別支援教育からだんだん非行性に走っていったりすることがあるから、小学校のうちから何とかしようとお手伝いしています。例えば組体操のことが今日話題になっていますけれど、普通の子たちと一緒にやるわけです。健常者の子と特別支援の子。集中力に欠けるし、そのような子がけがしやすいし、このような最初の文章にあるような、事故を恐れる余りというのは、確かにあるのですけれども、それでもいろいろ工夫しながら、現場は一番安全なところとか、このようなところであれば何とかなるだろうと工夫してやってはいますが、そのような現場の状況があるということ。


それから、違う話ですが、パラリンピックのアスリートをお呼びしたときに、子供たちの感覚が変わりました。とても特別なことではないのだ、健常者と同じように、たまたま障害を持っている子がいるだけであって、特別な感じではないのだということを、講演からとか、実際の御指導から学びました。


もっと健常者が障害のある方たちと一緒にスポーツをする。例えばマラソンの伴走とか、あのようなことで喜びを感じたり、何か一緒にやることで健常者の方が喜びを感じるようなことがたくさん増えていけばいいなと。そのためにはパラリンピアのお話とか体験が、とてもプラスになっている感じがします。


それから21ページの二つ目の体育のところですが、子供たちは傷害の種類もいろいろ違うのです。いろいろ違うのですけれども、共通していえることは、ここに書いてあるような手立ての中で、見通しを持たせるというのが子供たちにはとても有効だと思います。特別支援の子供たちに、この時間はこうやって、こうやると先のことまで分かっていると、かなり落ちついて授業に取り組む感じが私はしておりますので、このような文章を入れていただいてありがたいと思います。是非お願いしたいと思います。


それから、先ほどから岡出先生もおっしゃっていましたけれども、支援が必要な子供たちだけではなくて、周囲の子供たちに理解できるような内容が、例えば保健の中でそのようなことが、このような子たちに対して支援をするとか、もっとこのようにやりましょうということの内容がどこかに、総則でもいいので、どこかに入っていると、もっと健常者の子供も、自分に出来ることは何だろうというところで考えることができるのではないかと思いますので、是非そのような文面を入れていただければありがたいと思います。


以上です。


【山口主査】  ありがとうございました。


それでは鈴木徹委員、お願いいたします。


【鈴木(徹)委員】  失礼いたします。私は、岡出先生がおっしゃっていましたインクルージョンということは、すごく大きなテーマであると思いますし、また私も障害者という立場で申し上げさせていただきますと、健常者が障害者に合わせるというように教材を組み込みますと、どうしても体育の質が下がってしまうものだと思うのですが、逆に、健常者に合わせると同じように出来ないという現状があると思うのです。実際、私、今大学院の方でアダプテッド研究室で1年間運動教室を、週に1回月曜日に1時間ほどやっていまして、そこに10名前後の知的障害を持つ子供たちが来て、我々はいろいろな種目を提供させてもらうのですが、僕らの一言で大きく変わっていくということがあって、並んでと言うと、並ばないのです。ただ、緑のマットに座ってと言うと、座るのです。それは知っているか知らないかということが、多分大きくありまして、現場の先生は健常者の方々をずっと教えてまいりますと、なかなかそのようなところまで指導しなくてもいいという判断もあると思います。そこまでやってしまうと大変だということもあると思うのですが、そこでスタート位置を、ここがスタート位置と言ってもだめなのです。フラフープを置いて、そこからスタートしようと言うと出来るので、そのような手立てといいますか、そのような配慮が初めからできるといいのではないかと思いますし、実際に我々がやっていまして注意しているところは事故とかけがなのですが、倉庫が開いていると、中に入ってしまうのです。そこを閉めておくと行かないようになりますので、大体先生が目を離したときに事故とかけがは起きるものだと思いますので、そのようなことを知っているのと知らないのでは、先生方も違うと思いますし、そのようなことを、先ほど青木委員も言っていましたが、大学とか、そのようなところで先生になる方々が事前に知っていただくと、また違うのではないかと思いますし、健常学校の先生方が特別支援の学校に研修などに行くのは、すごく難しいことだと思いますので、せっかくICTの利用を含め、子供たちだけではなくて先生方がインターネットを通して見ることが、このようなことがあるということがなかなか活動状態が分からない部分もありますので、そのような映像の利用もいいのではないかと感じました。


以上になります。


【山口主査】  ありがとうございました。今言われたように、子供たちも何か前提があると見通しが効くというのと同じで、教員も正にそうです。このようなやり方があれば、このように出来るということが事前に分かっていれば、非常に効果的かと思いますし、そこにICTを利用するというのはすばらしいと思います。


それでは杉本委員、お願いいたします。


【杉本委員】  共生・協働やインクルーシブ教育が叫ばれている中、このような形で示していくのはとても大切なことだと思っています。先ほど来からもお話しで出ているように、支援を要する子供たちというのは、種別もそうですけれども、多岐にわたっています。そのような中で、どのような子供たちを想定して例示の中に盛り込んでいくのかということでは、慎重にしていかなくてはいけないと思います。21ページの方では、二つのポツがありますが、例示として、一つは身体操作とか動き作りが困難な場合の手立て等が書かれておりますし、二つ目は情緒的な感情をコントロールできない子供の場合として挙げられています。18ページの困難さにも関連してきますけれども、今、支援を要する子供たちの中で、コミュニケーション能力が欠如している子供たちが見られます。そういった子は、周りの状況がわからず、決まりが守れなかったり、順番を守れなかったり、また、ほかの子供の行動を遮ってしまったり、衝動的に自分が先にやってしまったりという場合もあります。その下の、道徳の二つ目のポツとも関連するような内容なのですけれども、「ほかの児童からも許容してもらえる」ような、周りの子供たちの雰囲気や学級作りということも関連していくことと思ったところです。


また各学校では一人一人の子供たちに応じて個別指導計画というものが作成しています。それに基づいて一人一人の子供の状況によって「何を身に付けさせられるのか」、「子供たちは通常級の子供たちと一緒になってどのようなことができるのか」ということを考えていることと思いますので、最終的には、各学校が例示を参考にしながら一人一人に応じたものを作っていかなくてはいけないのだと思いました。


【山口主査】  ありがとうございました。各教科も大事ですけれども、今言われたように、総則のところのただし書きというか、前提のところがかなり重要になってくる項目かなという印象を受けております。


中村委員、お願いいたします。


【中村委員】  三つお話ししますが、一つは、先ほどお話が出ているのですけれど、今、特別支援学校とか、特別支援学級にいる子供たちが、将来に向いてどのように運動、スポーツと関わっていくかという、そこが一番大事だと思います。そのための、先ほど寄り添うということが出ていますけれども、アダプテッド・スポーツも含めた教材が必要なのだろうというのは、すごくいいと思いました。


二つ目は、たまたま7年ほど前から特別支援学校の先生方と、体育の授業作りとか、授業内容の勉強をやっているのですけれども、私などが知らないことがたくさんあって、いわゆる教科の枠を超えた形で、個々の障害の特性による指導方法、例えば見通しを持った課題の提示の仕方とか、あるいは学習段階の組み立てのようなことはかなり研究されている。


ある意味、体育の今までの指導と併せもって合体することは比較的可能だし、それはとても有効な手段になっていることは感じています。


最後は、友添先生をはじめ、先ほどから意見がたくさん出ていますけれども、大学の中でこのことに関してきちんと指導して、体験していくことが必要なのかと思います。うちの大学は介護実習の中に特別支援学校を入れてはいるのですが、ただ入れているだけで、きちんとした内容の整備をしていないのです。そこは非常に反省すると思いますし、そのようなことの可能性はすごくあるのかなと思います。


あるいは免許更新講習とか、様々な機会で特別支援の子供たちに対する対応を、体育としてもきちんと捉えてやっていく必要があると思いました。


以上です。


【山口主査】  ありがとうございました。


それでは友添委員、お願いいたします。


【友添委員】  一つ、気になっているところがありまして、例えば21ページの体育科の例ですけれども、これは、いわば困難さの状態ということですけれども、例えば複雑な動きをしたり、バランスを取ったりすることが困難な子供というのは、どこにでもいるわけなのです。つまり、何が言いたいかというと、ここを書きぶりをうまくしないことには、混乱を起こしてしまう可能性が出てくるのではないかと思ってしまいます。


それから、勝ち負けにこだわったり、負けた際に感情を抑えられなかったりする場合、例えば、特に小学校の授業などで勝ち負けにこだわりなさいということを一生懸命教える先生方がいるわけです。その中から自分が成長するのだというような授業構成を取られる先生方も結構いるわけです。そのときに、感情を抑えることが学習だというように授業をジレンマ学習などに組み込んだりする先生もいる。これが一つの例を構成していくということを考えたときに、書きぶりをかなり工夫しなければいけないだろうということ。


もう一つ、例えば18ページの上の改善の方向性のところで見ると、例えば小学校でもそうですけれども、体育別でどのようなことが書けるのかということを少し考えてみたら、例えば、小学校でいうと側転をやったときに自分の身体感覚、位置感覚が取れない子が結構多くいるわけです。自分が逆さ感覚になったとき、どのように手が動いて、動作がどう動いているかということは身体認識ができない子供が結構いる。


ところが、自分の体の身体認識がうまく取れない子供と書いてしまうと、先生方は誤解する可能性が出てくるだろうということと、もう一つ、例えばルールに関しても、ルールが理解できないという子供たちも、健常児の子供の中にも結構多いわけです。例えば、極端に言うと、勉強はすごく出来るのだけれど、体育が苦手だという子供たちがいて、その子たちの事例も、実はこれに該当してくる可能性がある。もちろん、先生方自身は間違えません。よく了解するのだけれど、この指導要領が、例えば表に一人歩きしたときに、体育という教科は一体どうなっているのだというお叱りを受ける可能性が出てくるので、ここの書きぶりは本当に慎重に慎重を重ねて書いていかなないと、なかなか厳しいなということをずっと考えていました。


以上です。


【山口主査】  ありがとうございました。


それでは萩原委員、お願いいたします。


【萩原委員】  萩原です。よろしくお願いします。電車が遅れて遅刻しまして、申し訳ありませんでした。


私は数年前に知的障害者水泳の合宿を母校で行いました。付き添いで来られた支援している先生方や保護者から、先にそれぞれの選手の特性や運動活動レベルの説明を受けました。私も含め、大学水泳部の学生がお手伝いをさせていただきました。練習や、運動、活動レベルというものを、先に情報として入れていただいたのはよかったのですが、その先入観に捉われ過ぎていました。実は出来ることもたくさんあったのです。運動活動レベルを測る機会というか、チャンスというか、そのような機会も設けるべきなのかなと思いました。


以上です。


【山口主査】  ありがとうございました。


日野委員。


【日野委員】  関連した話なのですけれども、先ほど中村委員さんも言われていましたように、特別支援の子供たちが将来にわたって自立していくことを、どう支援していくかということですけれども、最大支援から最少支援へというのが特別支援学校でもよく言われています。いってみれば支援がなくても出来るようになるような支援ということです。まずは手厚い支援をしながら、最終的には自立していくことも大切ですので、そのような子供たちの発達や程度に応じて徐々に変えていくという考え方も一つあるかと思いました。


【山口主査】  ありがとうございました。皆さんから大変貴重な御意見を頂きまして、おおむね方向性は見えてきたという感じはいたしますけれども、ただ、これを現場の先生たちに分かるように、先ほど友添先生からもありましたけれども、どう書き込んでいくかというところが、支援を必要とする子供たちも多岐にわたってきているというところから考えると、まだ議論は尽きないところはあるかと思っておりますので、ここで一旦締めさせていただきますけれども、落ちついて考えたら、このような書きぶりがいいのではないかとか、あるいは、このようなところを総則ではもっと触れてもらいたいというところを、是非事務局の方に御意見を頂戴できればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。


ありがとうございました。


それでは、特別支援教育の方は、ここで一旦切らせていただきまして、この後、体育・保健体育におけるアクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき学習過程についての意見交換に移りたいと思っております。アクティブ・ラーニングにつきましては、今回の改訂については非常に大きな柱となるところだと思いますので、是非議論をいただきたいと思いますが、まずは事務局より配布資料について御説明をお願いいたします。


【高田教科調査官】  よろしくお願いいたします。お手元の資料3と併せて資料4を御覧ください。前回のワーキングの中で、学習プロセスについての議論をたくさんさせていただきました。先生方から共通したご意見としては、学習プロセスは、もちろん一つではないため、例示をする上でも、型にはめてしまうことは避けなければならないので、慎重にするべきであるとのご意見があります。


また、各教科等によって、それぞれの特質に応じた学習プロセスがあるという理解の元、保健体育においても、一つに決めることはできないこと。また、同様にアクティブ・ラーニングの捉え方も一つではないということは、事務局として承知しています。


アクティブ・ラーニングは、資料3の基本的な考え方の記述にあるように、一つ目として、特定の型や方式化された授業の方法や技術ではなく、授業改善の考え方として捉えていくということです。現場の先生方はアクティブ・ラーニングと聞くと、授業形態と捉えて、どのような授業をすればそれがアクティブ・ラーニングなのかということで、つい型に捉われてしまいがちです。私たちもこのワーキングの議論の中で、アクティブ・ラーニングは特定の型や方式ではないということを、まず踏まえた上で議論したいと考えています。


基本的な考え方の二つ目として、子供の学びへの積極的関与と深い理解を促すような指導や学習環境を設定することにより、子供たちの自信を育み、必要な資質・能力を身に付けていくことができるようにすることです。


三つ目としては、具体的な学習プロセスは限りなく存在し得るものということで、現場の教育的なニーズ、学習内容、単元構成など様々な状況に応じて研究を重ね、ふさわしい方法を選択しながら工夫して実践できるようにすることが重要であるとしています。この考え方に立って体育・保健体育におけるアクティブ・ラーニングについてご議論いただきたいと思います。


初めに、運動領域、体育分野、科目体育について説明させていただきます。アクティブ・ラーニングの視点として、深い学び、対話的な学び、主体的な学びという三つの視点が示されているわけですが、これらについても、深い学びとはこれで、対話的はこれで、主体的な学びはこうですと切り分けて考えられるものではありません。それぞれが重複したり、また関連し合ったりするので、これは深い学びではなくて対話的な学びではないか等の議論ではなく、実際の授業でアクティブ・ラーニングを実現していくために、子供たちにどのような資質・能力を身に付けていくのかという観点で議論を深めていきたいところです。


一つ目の深い学びとは、習得、活用、探究という学習プロセスの中で、問題発見、解決を念頭に置いた学びへの過程の実現と捉えます。この過程においては、運動やスポーツの楽しさや喜びを見出すとともに、豊かな関わり方について考えること。運動の行い方を理解し、自己の能力に応じた課題を見付けること。課題の解決に向けて習得した知識を活用して運動の行い方を工夫し、運動に取り組むこと。ICTの活用等により、課題の到達度を確認し、必要な知識を収集するとともに実践すること。自己やチームの能力に応じた運動の楽しみ方を見付けること。知識と技能を関連付けて学習することにより、その重要性を認識し理解を深めること等が考えられます。


二つ目の、対話的な学びとは、他者との協働や外界との相互作用を通じて、自らの考えを広げる学びの過程の実現と捉えます。この過程においては、運動についての課題と、その解決方法を仲間と共有すること。課題の解決に向けて、仲間の感情に配慮し、助け合ったり、教え合ったりしながら運動に取り組むこと。仲間と認め合い、励まし合いながら運動に取り組み、運動の楽しさや喜びを味わうこと。言語活動の充実やICTの活用等を通して、仲間の学びを理解するとともに、運動についての自己の課題の解決に生かすこと等が考えられます。ここでは、一人で学ぶのではなくて、仲間と対話的・協働的に学ぶという観点で捉えています。


三つ目の、主体的な学びとは、見通しをもって粘り強く取り組み、自らの学習活動を振り返って次につなげる学びの過程の実現と捉えます。この過程においては、運動の楽しさに気付き、自ら進んで運動に取り組むこと。目標をもち、目標の達成に向けた課題の解決に向け、意欲的に取り組むこと。学習の見通しをもつとともに、自己の課題の解決に向けて粘り強く運動に取り組むこと。ICTの活用等により学習を振り返り、課題の修正をしたり、新たな課題を設定したりすること。公正、協力、責任、参画、健康・安全の大切さや意義を理解し、運動の楽しさや喜びを味わうこと等が考えられます。主体的な学びは態度の形成にも関連し、子供たちが自ら進んで意欲的に学んでいくという観点で捉えています。


続きまして、保健領域、保健分野、科目保健の説明をさせていただきます。


【森教科調査官】  それでは、1枚めくっていただきまして、アクティブ・ラーニングのイメージについて保健の資料を御覧ください。体育とほぼ同じような図になっていまして、イメージの基本的な考え方は同じです。御議論いただくときに是非御配慮いただきたいのが、この後にある資料4の育成すべき資質・能力を目指した学びになっていますので、資料4と関連して検討してほしいということです。


また、次回以降、内容や評価についての話が出てくると思いますが、そことの関連もありますので、本日の学びについての御議論は非常に重要な位置付けになることを、御確認いただければと思います。


前回、学びのプロセスについて御議論いただきましたが、保健については、このアクティブ・ラーニングの中の「深い学び」を学びの中心と考えています。今回のイメージについては、更に対話的な学び、それから主体的な学びという視点からも内容が入っておりますので、それらを踏まえて総合的に見ていただけるとありがたいです。


まず、保健の「深い学び」についてですが、これは前回のプロセスに示させていただいたように、健康課題を解決していくという学びを示しています。一つ目が、課題発見。二つ目は、健康情報を収集することで、ICTの活用等も含めて示させていただいております。そして三つ目は選択した健康情報や習得した知識と技能の活用ということで、ここは課題解決の場面になりますが、ここでは特にリスクを減らしたり、対処法を選択したりするというようなことを具体的な学びとして提案させていただいております。最後は、課題解決の方法を生活に生かしていくというところが、保健では重要ですので、学んだものと自他の生活を比較し、関連付けたりし、最終的に意思決定・行動選択につなげていくというような形で示させていただいております。


次に、「対話的な学び」についてですが、この内容については、特に言語活動に示されているコミュニケーション能力等との関わりから、四つ示させていただいております。一つ目は、健康課題、健康情報を仲間と共有する。そして二つ目は、多様な解決方法というものを仲間とともに生み出していくことです。三つ目については、それぞれの健康に関する学び、提案を相手に伝えていくという、コミュニケーションに関わるところを提案させていただいております。そして四つ目ですが、ここは自他の学びに対するよさを認めるという自尊感情に関わるところと、自己の健康の回復に関わることで、レジリエンスに関わる内容も示させていただいています。


具体的には、小学校では話し合い、中学校になるとディスカッション、そして高等学校になると、例えば模擬的なリスクコミュニケーションなどの活動が考えられるのではないかと考えております。


それから三つ目の「主体的な学び」についてですが、ここは健康に関心を持ち、課題解決に意欲的な取り組むということ。それから健康課題の解決というのはなかなか難しいものもありますが、それに対して粘り強く取り組んでいくということです。そして最後に、学習の成果を確認するということを掲げさせていただいております。特に、よさを認めるとか、目標達成の成就感というものが主体的な学びの中心になると考えておりますので、その三つについて具体的に示させていただいているところです。


これらはあくまでもたたき台ですので、本日、委員の先生方から、このような学びもあるのではないかということを、それぞれのお立場から御議論していただけるとありがたいです。


【山口主査】  ありがとうございました。


それでは、体育・保健体育におけるアクティブ・ラーニングの、今御説明のありました三つの視点を踏まえた資質・能力育成のために重視すべき学習過程について御議論をいただきたいと思いますが、これは私の私見というか感想ですけれど、運動領域、体育に関しては、もう既にアクティブ・ラーニングをしてきたのではないかと思うので、これは教科横断的に出てきたことですから、体育、運動領域でもこれから話をしていくことは必要だと思うのですが、先生方にすると、今までやってきたことに、更にアクティブ・ラーニングという言葉が加わったことで、現場の混乱がだからこそ予測されることもあると思いますので、このあたりはきちんと整理をして落とし込んでいく必要があると思います。


ただ、今、御説明あったように、保健領域においては、恐らくこのアクティブ・ラーニングというところが、実は他の教科と同様に生かされていく部分なのかなと私は勝手に考えておりますが、先生方から運動領域、体育、それから保健領域について、自由に御意見を頂戴したいと思いますが、いかがですか。


岡出先生。


【岡出委員】  済みません、論議に入る前に、共通で確認させてください。言葉に捉われるといけないのですけれども、この深い学びというように単純に深いというと、浅い、深いがあると感じるとします。そうすると、ここに深い学びと書いてあるものは、例えば体育でいうと、運動やスポーツの楽しさや喜びを見出すとともに、豊かな関わり方について考えるといわれるものの中に、まだこの深さというものが出てくると考えるのか、それとも、ここに挙がっているものの中に、深さのレベルの違いのようなものがあると想定して書かれているのか。これは保健も体育も全く一緒だと思うのですけれど、そのイメージの持ち方で多分ここからの話が全然変わってしまうような気がするのです。


これは対話的な学びに関しても、例えば体育のところで、運動についての課題と、その解決方法を仲間と共有するといったときにも、例えば小学生レベルであれば、このようなことを期待しますとか、中学生レベルであれば、このようなことを期待しますというと、そこに深みのようなものが出てきたりします。ここに書いてあるもの自体に、もう一度深みというものが今後作られていくという意味でいいのか、おのおのが階層関係のようなものを持っていると想定しているのか。それとも、これはおのおのは個別の例で、例えば分析するとか、それから理解するというのは、いわゆる認知的な活動としては違うタイプのものなので、おのおの独立して学習の過程としては想定する、これはタクソノミーのところで、多分そのような形で出てくるので、そのようなものとして出てきているのか。


今、聞きながら、最初に確認しておいた方がいいかと思ったので、伺わせてください。


【山口主査】  ありがとうございます。事務局の方で、今、持たれているイメージが、もし今の御質問であるのであれば、そこも含めてなのかお聞かせいただきたいと思います。


【高田教科調査官】  ありがとうございます。「深い学び」の深さについての尺度は特にないというのが共通の認識です。「深い」と言えば「浅い」というものがあって、「浅い学びとは何か」ということをイメージしがちですが、そういうことではなくて、これは三つ構成要素を捉えましたけれども、アクティブ・ラーニングという視点で授業を捉えたときに、例えば子供の課題を先生がすべて提示し、子供はその課題をただ繰り返し行っている授業や、課題解決のための方法が決まっていて、課題を達成できたかどうかで子供を評価しているというような授業は、深い学びの視点から考えていかがなものか、という授業評価ができるのだと考えます。


したがって、階層的にまず第一段階としてやや深い学びがあって、次にもっと深い学びがあるというようなことを考えるものではないと思います。しかしながら、いくつかの階層で考えた方がわかりやすいということであれば、他の委員の先生方からご意見を頂戴したいところです。


答えになっているか分かりませんが、以上です。


【山口主査】  保健領域はありますか。


【森教科調査官】1番目の「深い学び」についてですが、運動領域と保健領域の両方に共通したリード文があります。そこでは、習得、活用、探究という学習プロセスの中で問題発見、解決を念頭に置いた深い学びの過程の実現とされており、その問題発見、解決を念頭に置いた「深い」というところの具体例を提案させていただいているということなのですが、それで大丈夫ですか。


【岡出委員】  大丈夫です。


【山口主査】  ありがとうございました。


それでは髙橋委員、お願いいたします。


【髙橋委員】  この深い学びというものは論点整理の資料の21ページですか、27年度の学力学習状況調査の結果の中の質問にも、自分の考えを深めたり広げたりすることができますかという質問が、もう既にあって、それを受けてのことなのかと思ったりしています。


今、御質問、もう1点別のことなのですが、保健の自尊感情とレジリエンスにずっと興味を持っているのですけれども、これも論点整理の22ページに日本の子供たちは自尊感情が他国と比べて低い、そのためもあって、このような項目を入れてくださっているのかも分からないのですが、1教科でこのように書いたとしても、日本人の特性というか、性格、気質というか、自分の捉え方というか、大きなことになっているのだと思うのです。そうしたときに、総則とかもっと大きなレベルで、そのようなことをしていかないと、ここで書いたからすぐ自尊感情が上がるかとか、自尊感情とレジリエンスはとても相関がありますので、これが低かったら回復もしないということもいわれているので、どのようにこれを押さえていたらいいのか、調査結果に基づくと、もともと特質的に私たちは低いのだ、それをここでどうするかということも疑問に思いながら、これを目標にすることは大事だとは思っています。


【山口主査】  ありがとうございました。


それでは青木委員、お願いいたします。


【青木委員】  質問なのですが、対話的な学びの中での他者との協働というのは、仲間と一緒にいろいろ話し合うとか、よく分かるのですが、外界との相互作用、「外界」というのは例えばICTを使う、ネットを使うということの「外界」なのか、この「外界」の意味が捉えにくいのですが、どのように捉えればよろしいのですか。


【高田教科調査官】  ありがとうございます。この「外界」というのは自分以外のということですから、全てのことです。自分の環境もそうですし、もちろん先生もそうですし、自分の外に向けたということですから、自分の中だけで学習は進めるのではなくて、外界との相互作用で学習を進めるという意味の「外界」です。広い意味で、少し抽象的になっていますけれども、そのように捉えています。


【山口主査】  ありがとうございます。何かほかの適した、分かりやすい用語があれば御提示いただければ、それも検討を併せてしていきたいと思います。


それでは森丘委員、お願いいたします。


【森丘委員】  先ほど習得、活用、探究という学習プロセスのお話がありましたが、深い学びというからには深まっていくプロセスについてある程度イメージできないと、具体的な学習活動につながりにくいのではないかと感じます。健康の方は学習の順序性が示されているような印象を受けるのですが、体育の方は順序性を意識されているのか、それとも単に網羅的に示されているのかが分からなかったので、その点について教えていただければと思います。


【高田教科調査官】  ありがとうございます。特に順序性は意識しておらず、それぞれ個別に列挙していますが、まず課題を見付け、次にその解決の仕方を工夫するという過程中で、深い学びが実践されるのだと思うので、今は列挙していますけれども、順序性をもって示した方がよいということであるならば、そのように修正を加えていきたいと思っていますので、順序を入れ替えた方がよいのであればご教示ください。


【山口主査】  森丘委員、何かこれに対して、書き方について御意見があれば伺います。


【森丘委員】  プロセスを余り具体的に示すと、それに捉われてしまうという議論もあったかと思いますが、ある程度順序性を意識した課題の示し方というのが分かりやすいのではないかと個人的には思います。


【山口主査】  ありがとうございました。


では、藤田委員お願いいたします。


【藤田委員】  失礼します。先ほど調査官の方から、このような学び方もあるというオーダーのお答えにはならないのかも分かりませんけれども、現場の感覚として、お話をさせていただきたいと思います。先ほど山口主査も言われましたが、体育はアクティブ・ラーニングが先進的というか、老舗というか、そのようなところがあると思います。それは、体育が身体を動かすことが短絡的にアクティブ・ラーニングになるという意味ではなくて、前回の1。17答申の中で示された、「身体を動かすことが・・・」という箇所。『学習指導要領』の冒頭にも示されているフレーズの中には、教科としての意義が記されていますが、正にあれはアクティブ・ラーニングではないかと思っています。


特に「対話的な学び」については、「競争」と「協同」というところを実際の活動の友達との関わりの中、それから先生との関わりの中で深めていける・・・これまでも、アクティブ・ラーニングを実践してきた教科ではないかと考えています。


その中で、どのように学ぶかという考え方としてアクティブ・ラーニングがあるのであれば、学校現場の感覚としては、その考え方の、どのように学ぶかの前と後ろ、つまり、「学びの方向性をきちんと示しておくこと」とか、学んだ後の「成果をきちんと子供にフィードバックしてやること」とか、そのようなことがとても大切になってくるのではないかと思います。


どのように学ぶかというアクティブ・ラーニングはいろいろ考え方としてはあるとは思うのですけれども、より深い学び、より主体的な学びに向かわせるために、一つの授業の中でも、今日学ぶ内容、目当てをきちんと提示することであったり、授業の終わりに、今日学んだことをしっかりフィードバックさせて子供にもう1回返していくことであったり、そのようなことがセットになって初めて効果が出てくるのではないか、本当に学力や体力が高まり、授業の質が高まっていくのではないかと考えます。


また、体育の場合は、学びの成果がどうしても技能に偏った、「今日楽しかった」とか、「今日はとても上手になりました」とか、そのようなところが多いかと思うのですけれども、そういった技能はもちろんのこと、思考・判断であったり、態度であったり、いろいろな知識であったり、そのような観点からも子供たちの伸びを評価して生徒に返していくことが、さらなるアクティブ・ラーニングの深まりになっていくのかと考えています。


【山口主査】  ありがとうございます。恐らく現場に落としたときに、アクティブ・ラーニングというのは改めて何をしたらいいかという混乱があるので、今言われたように、具体的に、今までここまで出来てきたけれども、更にこのようなところを付け加えてほしいとか、多分、小学校、中学校、高等学校でも違ってくるとは思うのですけれども、そのあたりのところも御意見を頂戴できればと思います。


それでは真如委員、お願いいたします。


【真如委員】  午後から会議があるので、先に失礼させていただきます。深い学びについては大変興味深い言葉だと感じております。これが世に出ていくと、まずもってここのところからいろいろな喧々諤々の話し合いが始まって、そして、そして研究が進んでいくのかと思いますけれども、なかなか理解しにくい、それこそ深い項目になっていると思います。自己の能力に応じた課題をもって学習するステップが示されているというのも、今聞いていて少し分かるのですけれども、それだけではなくて、アクティブ・ラーニングとなると個ではなくて、ほかの子供たちと一緒に協力、協働して何か学んでいくという、その学び方を学ぶということにも大事なところがあると思っておりますので、その辺について、こちらもいろいろな意見を出しながら方向性をはっきりさせていかないと、今、主査が言ったように、研究会でそちらの方にばかり力が行ってしまって、最も大事な子供の体育の特性に触れていくという部分については行きつかないような心配もありますので、これから少し時間を掛けてやっていった方がいいと思います。


それからもう一つ、今の話と離れてしまうのですけれども、先ほどから大学の役割について非常にありがたいお話をたくさんいただきました。大学でいろいろな仕事、役割を担っていただけるのは大変ありがたいと思うのですけれども、私たち振り返ってみると、大学で学習する学生さんももちろん大事なときではあるのですけれども、教員に採用された学校に行くまでの間の、その時間の使い方は非常に大事だということを痛感しました。特別支援教育もそうですし、今話し合われているアクティブ・ラーニングもそうです。ですから、そのようなことも教育委員会としてはしっかり考えていく必要があるのだということをお話し申し上げて、今日は失礼したいと思います。


以上でございます。


【山口主査】  ありがとうございました。


それでは近藤委員、お願いいたします。


【近藤委員】  よろしくお願いします。今の話につながるのですけれども、まず一番初めに主査がお話ししたように、これまでも方法は示されなかったけれども、体育の目標内容を実現するために現場で一生懸命いろいろな学習過程やプロセスなどを研究し、実践をしてきました。それが十分に実現できているかどうかは別にして、そのような方向で進んできた。


つまり、これまでやってきたものと、ここでいわれているアクティブ・ラーニングということが大きくは変わらない。結果として、大きくは変わらないのだということを私も強く感じていますし、是非ここではそれは私も同様の感覚を持っているということをお話ししたいと思っています。


一番心配なのは、今アクティブ・ラーニングという言葉がはやり言葉というか、次の目玉だというような形で出されたときに、特に小学校の先生方は、私も含めてとても真面目なので、次はアクティブ・ラーニングなのか、ではアクティブ・ラーニングをしなければいけないのだとなるのが、とても怖いことです。例えば、今回の学習指導要領の今次の改訂のときに、言語活動かといって、動かないでみんなで話し合っている体育の授業が出てきてしまったり、そのようなことにならないようにすることがとても大切かと思っているので、アクティブ・ラーニングが目的化するのではなくて、今次の改訂でいえば、ここで示されている資質・能力を身に付けさせる方法としてアクティブ・ラーニングがあるのだということを、どこかで発信しなければいけないし、それは論点整理にも繰り返し書いてあるので、特に先ほど来お話があるように、体育の学習はもともとがアクティブ・ラーニングなので、そこを押さえていかないと間違ったメッセージになってしまうのではないかと思っています。


以上です。


【山口主査】  ありがとうございました。これは本当に論点整理のところでも何度も議論もありましたし、同様の意見が出されたところですので、そこは踏まえていく必要があると思います。


それでは菊委員、お願いいたします。


【菊委員】  今の近藤委員の話とも関連するのですけれど、日本の戦後の体育というのが、ある意味では学習の仕方、学び方をめぐる攻防のような部分もありまして、要するに産業型社会というか、一つのことを真面目にこつこつと積み上げていって、最終的にはものが生産されたり、大量にものを作ったりと、そのような時代には、とにかく我慢強く、きちんと言われたことをやっていくのがいいのだという方針もとでは、たくさんの教授内容というものが出てくるわけです。これが恐らく昭和30年代、40年代ぐらいの日本の教育状況だったのだろうと思います。しかし、昭和50年代あたりから、これは実は体育が一番最初だったと思うのですけれど、「運動に親しむ」という言葉が出てきて、まさに子供を主体にする、子供の学びを大事にしましょうということが言われ始めます。


恐らく、その流れは基本的には底流に流れているから、皆さん、もう30年、40年たっているので、ある程度イメージがあるのだろうと思うのです。そのようなことも踏まえて、これまで積み重ねてきたものと、今回出されてきたものとの関係をうまく整理する必要があると思います。


例えば、「対話的な学び」というのは、これまで言われてきた「学習形態」に焦点化されるように思います。要するに、グループ学習だと、対話的な学びというものは必然的に生まれてきます。もちろんそれだけが生まれてくるわけではありませんが、人と人との関係性というものを常に重点に置いた学び方が、指導の工夫としては出てこざるをえません。


それから、「深い学び」というのは、まさに先ほど調査官がおっしゃった習得、活用、探究というものに関連しています。以前の学習指導要領を作ったときにもそうだったのですけれど、習得、活用、探究というと、何か習得して活用して探求するのだというような流れが出てくるわけです。私はその当時、そうではなくて、いろいろな学び方があって、活用から習得に行く場合もあれば、さらに探究、活用、習得というのもあるでしょうという話をよくしていた覚えがあります。恐らくそのような多様なプロセスの中で、問題発見、問題解決を念頭に置くということはどういうことなのか、その辺のところは、習得、活用、探究という学習のプロセスの中で、どのような要素がここでは強調されていくのか、その辺の整理はしておいた方がいいのではないかという気がするのです。


それから、「主体的な学び」というのは、これはまさに「学び方」そのもので、これまでの体育の学習の積み重ねでは、常に強調されてきたところだと思います。そうなると、今回の指導要領におけるsomething new は一体何なのか、アクティブ・ラーニングを強調する中での something newは何なのですか、ということになります。先ほど近藤委員がおっしゃったけれど、現場サイドとしては何がプラスアルファとして加わったのか、あるいは何が、今までどおりやって別に構わないことなのだとメッセージとして発信できるのかというのが、今回の、ある意味では重要なポイントなのかと思っております。


それぞれの要素というのは現実には同時に出てきますし、これがあって、次にこれがあってという、いわゆる時間性というか、順序性で考えられるものでもないように思うのです。そのような点から、現場の先生方に対するメッセージとして、先ほど言ったような、まさに論点整理を示してアクティブ・ラーニングのイメージについてより明確にしていく必要があるのではないか、今のところはそのようなに考えています。


【山口主査】  ありがとうございました。ずらずらと書いてあるので、どれもという感じですけれど、ここまでは出来てきて、ここは特に更に力を入れてやってほしいとか、更にここがもう少しというところを、例えば赤字にするとか、そのような分かりやすさも示し方としては必要になってくるかもしれないと思いました。


萩原委員、お願いいたします。


【萩原委員】  私がアクティブ・ラーニングのイメージを拝見したときに、一番初めに頭に浮かんだのはスポーツ・レクリエーションという言葉でした。子供の体力向上推進事業、レクで学校丸ごと元気事業の一環で、子供たちが各グループに分かれてスポーツ・レクリエーションを考えたり、ルール作りをしたり、グループで考えて、それを発表して実践に移すというような発表会がありました。私も出席させていただきましたが、それがすごくすばらしい内容でしたし、大人の考えようもないようなルールがあったり、激しい運動などもあったりして、スポーツ・レクリエーションを自ら生徒たちが考える時間というのもアクティブ・ラーニングに通じるものがあるというのをすごく感じました。


それは山梨県で取り組んでいた事例で、中村先生がもともとお詳しいと思うのですが、きっかけ作りとしてプレーリーダーや、サポーターとして地域の方々の学習支援ボランティアの方が入ってくださったり、保護者の方が入ってくださったり、学校外の方々とのコミュニケーションも図れるということで、私はそれがイメージ的にぴったりとはまったという思いです。


【山口主査】  ありがとうございました。確かに論点整理のところでも、このアクティブ・ラーニングの話が出たときに、学校内だけではなくて、地域との関わりとか、そのようなところも議論された記憶がありますので、体育・保健体育といったところでも、そのような論点が、もしかしたら必要になってくる可能性があると思います。


それでは野津委員、お願いいたします。


【野津主査代理】  このアクティブ・ラーニングという言葉が出てきて、いろいろ議論を聞いていますと、ますます難しくなってきて、本質が見えにくくなってきているという感想を持っております。できるだけ整理して考えたいということで、少し私の考えを述べたいと思います。


本来あるべき授業というものを、これまでも目指してきているのだけれど、なかなか十分うまくいかない中で、アクティブ・ラーニングという考え方を切り口にして、よりよい優れた授業を実現していこうとするものだと思っております。


アクティブ・ラーニングの本質は何かというと、受け身的な学習を、もっと積極的に、主体的に、創造的に学ぶ姿に変えていくことで本来の学びにつながげていくという論理だろうと思うわけです。そうしたときに、体育は元々既にアクティブ・ラーニングだというのも、そう安易に言わない方がよくて、私の見ている授業が余りよくないのかもしれませんが、強制とか、目先の懲罰のようなことで子供たちがやらされているような体育の授業も少なくはないわけです。そのような授業を改善するための一つの切り口としてアクティブ・ラーニングがあるということで、この機に体育の授業の授業でもアクティブ・ラーニングの考え方を謙虚に受け止めて、よりよくしていく必要があろうかと思うわけです。


アクティブ・ラーニングは、そもそも大学の授業の改善というところから出てきたもので、大学の講義がひどい状況であるということなのかもしれませんが、小学校では多分アクティブ・ラーニングが、かなり出来ているのではないか。保健に関していえば、おそらくだと思います。問題は中学校と高等学校での保健の授業においてアクティブ・ラーニングが非常に求められていると感じております。


そのようなところから見て、保健に関して示されている資料の内容は、よく出来ていると思います。ただ、先ほど岡出委員も問題にされましたけれども、深い学びの「深い」は、少し引っ掛かります。学びというのは、深くあってこそ学びであって、そこに「深い」を付けるのもよく分からないのです。


主体的な学び、対話的な学びという並びにおいても、それはみな深い学びのためにするのでしょうから、ここは並びが悪いのではないか。あえて言えば、創造的な学びなどという言葉でもいいのかと思いました。


あと一つ、表現という用語がもっと出てくるといいなと思っております。例えば、対話的な学びのところで、考えて伝え合うということがあるのですが、このようなところに表現というキーワードも入れておくなど、もう少しクローズアップしてもいいのではないかと思いました。


以上です。


【山口主査】  ありがとうございました。


それでは門田委員、お願いいたします。


【門田委員】  失礼します。皆さんがおっしゃるように、私もアクティブ・ラーニングは体育ならではの活動かと感じておりますし、実際に進められていると思っております。ただ、こうして取り上げられ、では、いかに質の高い効果的なアクティブ・ラーニングを今後広めていくといいますか、学校に定着させるのかということを考えたときに、先ほど藤田委員もおっしゃいましたが、体育の授業で今、出来ていないと思うところは、目標をしっかり設定することと、その目標がしっかり到達できたかどうか、授業の終わりに振り返る学習を取り入れているかどうかというところで、何か差があるような気がしております。


全国体力・運動能力、運動習慣等調査においても、報告書の関係で上位校の質問に出てくるのですが、目標を授業の始めにしっかりと明示している、授業の終わりに必ずその目標が達成したかどうかを振り返る活動を行っているという学校が、上位校に多いという結果が得られております。本県をそれで調べてみますと、小学校は比較的そのようなことが全国水準に近いレベルなのですけれども、中学校に行くと、少ししんどい数値が出てきておりまして、その辺が改善できれば、本来やっているアクティブ・ラーニングが、実は質の高いものになり、質の高い授業がなされれば、子供たちの学びも深まると考えておりますので、どうアクティブ・ラーニングをうまくするのかと思ったときに、学校の先生としては、目標を明示するとか、振り返りの活動をするということをしっかりとやっていただきたいので、何らかどこかにその言葉を入れていくといいのかなと考えておりました。


以上です。


【山口主査】  ありがとうございました。


それでは友添委員、お願いいたします。


【友添委員】  済みません、議論を差し戻すような話をしてしまうかも分からないのですが、関係のない話だとお叱りを受けるかも分からないのですけれども、議事録からこれは除いてもらわなければいけなくなる可能性もあるのですけれども、今、大学はちょうど論文の提出審査の時期で、留学生が非常に多いですから、私が勤めている大学は留学生が多くて、指導していて、その国のお国柄がよく分かることがあるのです。一概には言えないのですけれども、ある国から来た人たちは入学試験の成績は非常にいいのです。指示したことは完璧にやってくる。では修士論文を書こう、博士論文を書こうと言ったら、何を書いたらいいですかという話になってしまう。


つまり、既存の知識をうまく活用して、そこから自分で問題を引き寄せて、それを総合的にトータルに考えて、そしてそれをうまくコーディネートしながら論文を書き上げるという能力が、多分余り教わっていないのです。恐らくかつての日本が、そうであったのだろうと、今の日本もそうかも分からないのですけれども、そう思ってしまう事例も非常に多くある。


そういう意味でいうと、アクティブ・ラーニングが求められるというのは、正に時代の趨勢で、特に先進諸国の中で日本が国際競争力を付けていく上では、これは必須の方法論だということは、日々仕事をしながら感じているところなのです。


そう考えてみたら、先ほど主査がおっしゃったように、体育はアクティブ・ラーニングをやっている。確かに活動形態とか方法論のレベルは実はやってきたのだけれども、アクティブ・ラーニングの本質は何かと考えたときに、汎用力だとか応用力だということ、ここを確認しておかなければいけない。そのような能力を身に付けさせていくということだと思うのです。


つまり、教えたことはしっかりやってくれるし、しっかり学ぶし、知識はたくさんあるのだけれど書けない、分からない、どう書いたらいいか。又教えたらしっかりやるのだけれど、一向に書かない。結局こちらが半分書いてあげるような形でしか作業が進められないというような状態は、まずい状態なわけです。


現実にアクティブ・ラーニングを方法としては採用してきたのだけれども、体育の今の究極の目標は何かといったら、生涯にわたって運動やスポーツに親しんで実践できるということを目標に置いているわけです。ところが、各種の調査を見てみると、データが間違っているかも分かりませんけれども、中学校2年生の女の子などは1週間の活動時間が90分未満が10%を超えるような現実があるということ。それから、旧総理府から出てきているような運動調査を見ても、成人男性、女性含めて、成人の1週間の運動の参加率は決して伸びているわけではない。


そう考えてみると、決定的に何が欠如してきたのかというところは考えておかなければいけない問題だろうと思うのです。特に日常生活へ転移する能力をどう培っていくのかということが、先ほど菊先生が言ったサムシングニュー、転移をしていったり、汎用能力を身に付けさせる、そこのものを究極的なところに今回置いてもいいのではないかと思っているところなのです。それが一体何かといったら、資質・能力論を今、我々は議論してきたわけで、その資質・能力というものが、例えば知識、技能、あるいは思考判断、表現力、それから学びに向かう力、人間性ということでずっと議論を重ねてきたわけです。例えば、出来ることの保証、技能がきちんとしっかり出来るということの保証と、それから、どうやったらその運動が、あるいは技能が出来るかということを、きちんと分かるという認識的な内容の保証もしてこなければいけない。それから、プレーする能力だけうまくなっても、実は人と関わってクラブをうまくマネジメントしたり、あるいは地域の中でそのスポーツの活動の機会をうまく自分たちで創造していけるような能力を身に付けさせてやらなければいけない。


そう考えたときに、深い学びと、対話的な学びと、主体的な学びという、この構造の中で、今我々が議論している資質・能力論がどう絡んでくるのかということを明確に打ち出していった方がいいのではないのか。調査官の御苦労は非常によく分かるし、特に私が専門にしている体育のところでいうと、現行の学習指導要領をうまく構造化されていることは、非常に評価は高くすべきだと思うのだけれども、菊さんが何がサムシングニュー、あるいは近藤先生が何がといったときに、今言った資質・能力論から、もう一度この3層の構造の中にプラスアルファ、何が出来るのかということ。実はここの委員会あるいは部会なりを作って検討してもいいのではないか。あるいは、それは学習指導要領の作成協力者会議の中で深めていただいてもいいのではないかということを感じています。


もう少しお時間を頂ければ、それについては少しお話をしたいのですけれども、あと十何分で終わらなければいけないので、まずはこのような形で話を終わらせていただきます。


ありがとうございました。


【山口主査】  貴重な問題提起をいただきまして、ありがとうございます。先ほど、生徒たちに目標を設定させてということもありましたけれど、教員が何を目標にするのかというところが、もしかしたら、ここのところでは具体的にサムシングニューというところをどう示すかということなのかと思いましたが、それも含めて議論を進めたいと思います。


日野委員、お願いいたします。


【日野委員】  今回提示していただいた資料と、前回の資料を踏まえて、例えば今回の資料ですと、タイトルがアクティブ・ラーニングのイメージと書いています。これがアクティブ・ラーニングですよというイメージとして伝えていくのか、アクティブ・ラーニングの視点に立った学習のプロセスを提示していくのか、アクティブ・ラーニングの要素としてこのような学びがあることを示すのかによって、伝わるイメージが変わっていくのではないか思います。


例えば学習過程ですと、やってみて、考えて、やってみるという学びが連携することによって深い学びになったり、対話的な学びになると思います。実はこの要素がどのように並ぶのか、オプションとしてパーツをあわせてことによって、どのような学びが成立するのかというのが学習の過程であって、そのモデルは次の段階か、もしくは前の資料に当てはまる気もします。


ですから、テーマとしてアクティブ・ラーニングのイメージとすると、これがアクティブ・ラーニングとして発信してしまうので、そのあたりが現場の先生への示し方としていいか、あるいは基本的な考え方というのも、アクティブ・ラーニングの視点に立った学習過程、学習プロセスを考えるときの基本的な考え方ではないかという気もしますので、そのあたりの伝わり方をきちんと整理した方がいいのではないかと思いました。


【山口主査】  ありがとうございます。


岡出委員、お願いいたします。


【岡出委員】  済みません、いろいろ論点が出ているのですけれども、改めて書き方の問題でもう一度整理した方が、ある意味、スマートに行くのかと思います。この資料でいいますと、基本的な考え方、ここのところは、なぜアクティブ・ラーニングをしないとだめなのかとか、それから今、何がアクティブ・ラーニングの新しさなのか、そこが強調して書かれようとすると、友添さんが言われたように、保健体育の授業でこのようなことを目指す、その達成のためにはこのようなやり方が必要なのだ、このような説明文が書かれることになると思うのです。今ここに書かれている文章は、そのような側面と、誤解を避けるためにこのようなことを言っておかなければいけないと思われるところも配慮されて、多分書かれていると思うのです。それは二通り必要だと思うのですけれど、どちらを出すかという問題が出ますし、それから深い学び、対話的な学び、主体的な学び、これは僕は最初に御質問しましたけれど、アクティブ・ラーニングが実現していると、このような現象が起こってくるのですという例示項目で挙げていただけると、もう少しイメージが分かりやすい。


例えば、語尾の問題だと思うのですけれども、深い学びの一番上、豊かなかかわり方について考えると書いているよりは、そのように考えているとすると、このような現象が起こればいいのねというイメージは、読む方としては持ちやすい。そのような資料としてこれが作られるかどうかということだと思うのです。


1点気に掛かるのは、深い学びのところは問題発見・解決と書いています。下のところの文章を見ていくと、課題に変わります。課題発見とか課題解決とか、そのような言葉に変わっていきます。課題という言葉と問題という言葉は分けて使うのか、使わないのかということは、どこかで確認しておかないと、上と下と表現はどうなっているのかと、読み手が混乱するのではないかと思います。


以上です。


【山口主査】  ありがとうございました。


鈴木委員、お願いいたします。


【鈴木(美)委員】  ほかのプロセスで何か方法論はないのかという、先ほど教科調査官からの質問等に関わってなのですけれども、体育や保健学習の中で、既存の知識や技能と、新しい知識や技能を関連付けたり、組み合わせたりして、活用可能な知識や技能になるプロセスというのが一つあるかと考えます。


具体的には、器械運動で今出来る技に、新しく出来た技を組み合わせて、新しく組み合わせ技を作っていく方法だとか、保健でいえば、既存の知識でブレーンストーミングをして、そこから原理原則を導き出して活用可能な知識になるといった形で、そのようなプロセスが一つ考えられるのではないかと思います。


以上です。


【山口主査】  ありがとうございました。


渡邉委員、お願いいたします。


【渡邉委員】  全体に関わることと、あと保健について1点あるのですが、委員の皆さんのお話を伺っていて、それとほとんどかぶると思うのですけれど、今日、示されています資料も資質・能力と、アクティブ・ラーニングのことなのですけれど、これは言ってみれば両方とも子供の話であって、アクティブ・ラーニングも全部子供の指導として書いているわけです。


ですが、例えばこれまでの学習指導要領もそうですけれど、どう指導するかという先生の話、これは先ほど主査が、教員は何を目標にするかと同じだと思うのですけれど、先生は何をするのというところが見えてこないような内容になっていると思います。極端な例ですと反転授業のような、全部自分たちで勉強して、あとは質疑だけやってというようなことも一つあるかもしれませんけれど、それはほとんど例外的なものであって、先生が何をするかというのが見えるようなものでないと苦しいかなと思いました。この辺が全体のお話です。


保健のイメージのところで、すごくうまく絶妙に書かれていると思ったのが健康課題のところなのですけれど、健康課題ということが何度も出てくるのですが、これは自他の健康課題もあるし、もっと広い社会の健康課題もあって、両方とも読めるように書かれているというところなのですが、ただ、実際に身近な健康課題というのは高い関心を持ちますけれど、社会全体のというと、少し関心が下がってしまうということもあると思うのです。


そのようなときに、主体的な学びの最初のところに、健康に関心を持ちというところが余りにもさらっとし過ぎているのではないか。もう少し関心を持つということがないと、健康課題に取り組まないというところがあるので、例えば、このような例も考えたのですが、自他の健康はもちろん、社会の健康課題に高い関心を持ちとか、もう少し強く言った方がいいかなと思いました。これは意見としてお話ししました。


以上です。


【山口主査】  ありがとうございました。


では西岡委員、お願いいたします。


【西岡委員】  保健に関わって3点ございます。一つは、深い学びとか対話的な学び、主体的な学び、これの扱いは、まだこれから議論されるのかもしれませんけれども、この中で、対話的な学びにおいて、小学校だと話し合いとか、あるいは更にはディスコミュニケーション、この基本的な考え方の中にある発達段階、発達の特性を踏まえたようなアクティブ・ラーニングの例が紹介されまして、これは分かりやすいと思いました。


ただ、私、ここで対話的な学び以外の深い学びとか、主体的な学び、もちろん他人と協働でということもあるのかもしれませんが、どちらかというと、自分で考えて課題解決していくような一人で活動するようなものもアクティブ・ラーニングとして例示されていることも、私は大きな意味があるのではないかと思います。


ただ、先ほどの例が対話的な学びのみに限ると、どうしても外から見えやすいような、それがアクティブ・ラーニングの典型例だと捉えられるのではないかと思いまして、個人が頭の中で活動していくようなことも、その例が、できれば示されるとよろしいのではないかと思いました。


それから、ここの中身の細かい話になっていくのですけれども、対話的な学びの中で、取組に対するよさを認める、これが自尊感情形成の例だということとか、あるいは自己の健康の保持、増進や回復に生かすということはレジリエンスだと言われましたけれども、自尊感情とかレジリエンスに関しては、例えば主体的な学びでも関わるのではないかと思うのです。自分の学習を振り返って、自分の学習のよさを確認したりするというようなことは、自尊感情の形成に関わりますし、それから、主体的な学びの2番目の最後にあります、粘り強く取り組むなどというのも、これはレジリエンスに関わるものだと思います。


そういう点で、自尊感情とかレジリエンスというものを、どのようにここで捉えるのかということについて共通理解をしていく必要があるのではないかと思いました。


それから、3番目は、主体的な学びの最後の学習を振り返りというところです。学習の振り返りというのは従来から随分行われているかと思うのですが、しかしながら、御説明にありました学習のプロセスと学習の成果といいますか、結果と申しますか、この両方をしっかり振り返っていくというということは、余りされていないような気がします。そういう点で、ここの学習の振り返りについて、もう少し踏み込んで具体的に書くのはどうかと思いました。


以上です。


【山口主査】  ありがとうございました。


このアクティブ・ラーニングにつきましては、なかなか議論がまとまらずという感じなのですけれども、ただ、ここのところは現場の先生方にお示しするときには、非常に注意深く見ていかなければいけないところだと思いますので、一度事務局の方で先生方から頂いた御議論をまとめて、皆様の方に議事録として示していただきますので、それを見ていただいて、又更に付け加えることであるとか、先ほど用語もありましたが、「深い」という言葉の使い方、問題、課題とか、それから、恐らくこれは先生方に対しての授業評価の在り方といったところなどに関しても、どのように示していくのかという、様々な課題を今日は委員の皆様方から頂きましたので、もし、時間があれば、もう一度議論の場を作らせていただければいいかなと思いますけれども、とりあえず今日はここまでとさせていただいて、言い足りなかったところ、特に青木委員、札を出したり引っ込めたり、多分時間を見ながら気を使っていただいて、御意見頂けなかったところがあると思いますので、是非事務局の方に御意見をお寄せいただければと思います。


それでは、この後、事務局から次回以降の日程などについて御説明をいただければと思います。


【髙﨑学校体育室長補佐】  失礼いたします。次回第7回につきましては、3月8日火曜日午後を予定しております。正式な時間等、日時については、又改めて御連絡させていただきたいと思います。


主査からもお話がありましたように、又ペーパー、メール等で様々な御意見を頂ければと思いますので、よろしくお願いいたします。


【山口主査】  ありがとうございました。それでは、若干時間がオーバーして恐縮でございますけれども、第6回体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループを終了させていただきます。ありがとうございました。



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電話番号:03-6734-2674

(スポーツ庁政策課学校体育室指導係)