教育課程部会 体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループ(第1回) 議事録

1.日時

平成27年11月23日(月曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

合同庁舎第7号館東館 3F1特別会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 論点整理を踏まえた体育・保健体育の改善・充実について
  2. その他

4.議事録

【高崎学校体育室長補佐】  おはようございます。定刻になりましたので、ただいまより中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループを開催したいと思います。開催に当たりまして、スポーツ庁政策課長の澤川より御挨拶申し上げたいと思います。
【澤川スポーツ庁政策課長】  皆様、おはようございます。スポーツ庁で政策課長をしております澤川と申します。
それでは、体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループの第1回の会議の開催に当たりまして、スポーツ庁を代表して私から一言御挨拶を申し上げたいと思っております。
このたび委員の皆様方におかれましては、公私ともに御多用の中、本ワーキンググループの委員を引き受けていただきまして、誠にありがとうございます。御承知のとおりかと思いますが、文部科学省では、昨年11月に中央教育審議会に諮問いたしたところでございます。初等中等教育における教育課程の基準等の在り方についてということでございます。その後、教育課程部会の下にさらに特別部会を設けまして、今年8月になりますが、論点整理をまとめ、公表したところでございます。その論点整理におきましては、各学校段階、各教科等における基本的な方向性を示しているところでございます。これについては後ほど事務局の方から御説明させていただく予定でございます。これを受けまして、現在各部会、ワーキングチームにおきまして具体的な議論を順次開始したというところでございます。この体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループチームにおきましては、論点整理で示されました体育・保健体育において育成すべき資質・能力、内容について御審議を賜れればというふうに思っております。
あと、今後の予定でございますが、このワーキンググループ、年度末、来年3月末頃までにおおよそ8回程度の会議を開催いたしまして一定の方向性をお示しいただければというふうに思っております。また、その御議論の結果につきましては、全体教育課程部会の議論を踏まえまして、最終的には中教審におきまして平成28年度中に取りまとめの答申に反映させていただくことを予定しているところでございます。
冒頭、私ごとで申し訳ございませんが、文部省に入省いたしまして、生まれて初めて学習指導要領というものを拝見させていただきました。自分がこれまで経てきた学校教育というのはこれほど短い学習指導要領に基づいてなされていたのかということが、正直初めて見たときの率直な驚きでございました。ただ、この役所でいろいろと仕事をしてまいりますと、短い学習指導要領の背後には現場の様々な実践でありますとか、中央教育審議会などなどにおける熱心な議論があって、そういう短い文章に結晶しているんだなということを理解するに至ったということでございます。
これから中央教育審議会の答申並びに学習指導要領の改定に向けて議論全体進んでいくわけでございます。文字としては現れるところは少ないかもしれませんが、その背後にはこのワーキンググループなどにおきます熱心な議論が背後にあるんだということを、我々しっかり肝に止めながら、学習指導要領の改定なり、今後の体育・保健体育、健康、安全の様々な教育活動の中に反映させていきたいというふうに思っております。
委員の皆様方におかれましては、そういう観点でこれまでの知見並びに経験を踏まえまして、忌憚のない御意見を賜れればというふうに思っております。これから非常に濃密な御議論をいただくことで御迷惑を掛けるかと思いますが、何とぞどうぞよろしくお願いします。
私から以上でございます。
【高崎学校体育室長補佐】  議事に先立ちまして、本部会の主査及び主査代理について御報告させていただきます。資料2の初等中等教育分科会教育課程部会運営規則に基づき、本ワーキンググループは教育課程部会の決定により設置されており、主査及び主査代理は教育課程部会長が指名されることとなっています。教育課程部会長と御相談し、主査につきましては山口香委員を、主査代理につきましては野津有司委員にお願いしておりますので、よろしくお願いいたします。
それでは次に委員の皆様を御紹介いたします。資料1としまして、本ワーキンググループの名簿を配付させていただいておりますので、名簿の順に御紹介させていただきます。
青木孝子委員でございます。
【青木委員】  よろしくお願いいたします。
【高崎学校体育室長補佐】  五十嵐隆委員でございます。
【五十嵐委員】  どうぞよろしくお願いします。
【高崎学校体育室長補佐】  門田佳代委員でございます。
【門田委員】  よろしくお願いいたします。
【高崎学校体育室長補佐】  菊幸一委員でございます。
【菊委員】  よろしくお願いします。
【高崎学校体育室長補佐】  近藤浩人委員でございます。
【近藤委員】  よろしくお願いします。
【高崎学校体育室長補佐】  佐藤若委員でございます。
【佐藤委員】  よろしくお願いいたします。
【高崎学校体育室長補佐】  真如昌美委員でございます。
【真如委員】  よろしくお願いいたします。
【高崎学校体育室長補佐】  鈴木美江委員でございます。
【鈴木(美)委員】  よろしくお願いいたします。
【高崎学校体育室長補佐】  次、山口香主査でございます。
【山口主査】  よろしくお願いいたします。
【高崎学校体育室長補佐】  あと野津主査代理でございます。
【野津主査代理】  よろしくお願いいたします。
【高崎学校体育室長補佐】  高橋和子委員でございます。
【高橋委員】  よろしくお願いいたします。
【高崎学校体育室長補佐】  友添秀則委員でございます。
【友添委員】  友添です。よろしくお願いします。
【高崎学校体育室長補佐】  中村和彦委員でございます。
【中村委員】  中村です。よろしくお願いします。
【高崎学校体育室長補佐】  萩原智子委員でございます。
【萩原委員】  よろしくお願いいたします。
【高崎学校体育室長補佐】  日野克博委員でございます。
【日野委員】  よろしくお願いいたします。
【高崎学校体育室長補佐】  藤田弘美委員でございます。
【藤田委員】  よろしくお願いいたします。
【高崎学校体育室長補佐】  南砂委員でございます。
【南委員】  よろしくお願いいたします。
【高崎学校体育室長補佐】  横嶋剛委員でございます。
【横嶋委員】  よろしくお願いします。
【高崎学校体育室長補佐】  渡邉正樹委員でございます。
【渡邉委員】  よろしくお願いいたします。
【高崎学校体育室長補佐】  本日欠席は岡出美則委員、あと杉本眞智子委員、鈴木徹委員、西岡伸紀委員、森丘保典委員となっておりますが、このメンバーの方も本ワーキンググループの委員に就任されております。委員の紹介は以上でございます。
次に、文部科学省スポーツ庁関係の担当者を御紹介させていただきます。スポーツ庁政策課長の澤川でございます。
【澤川スポーツ庁政策課長】  よろしくお願いいたします。
【高崎学校体育室長補佐】  初等中等教育局健康教育・食育課長の和田でございます。
【和田健康教育・食育課長】  よろしくお願いいたします。
【高崎学校体育室長補佐】  スポーツ庁政策課学校体育室長の八田でございます。
【八田学校体育室長】  よろしくお願いします。
【高崎学校体育室長補佐】  初等中等教育局教育課程課教育課程企画室長の大杉でございます。
【大杉教育課程企画室長】  よろしくお願いいたします。
【高崎学校体育室長補佐】  スポーツ庁政策課教科調査官の高田でございます。
【高田教科調査官】  よろしくお願いします。
【高崎学校体育室長補佐】  スポーツ庁政策課教科調査官の高橋でございます。
【高橋教科調査官】  よろしくお願いいたします。
【高崎学校体育室長補佐】  あとスポーツ庁政策課教科調査官、森でございます。
【森教科調査官】  よろしくお願いいたします。
【高崎学校体育室長補佐】  私は遅れましたが、スポーツ庁政策課学校体育室長の補佐をしております高崎と申します。よろしくお願いします。
それでは、議事に入ります前に山口主査及び野津主査代理の方から御挨拶をいただければと思います。よろしくお願いします。
【山口主査】  改めまして、おはようございます。このたび主査を引き受けました山口と申します。よろしくお願いいたします。主査に指名された経緯は、先ほどもお話がありましたように、恐らく教育課程企画特別部会の方の委員をさせていただきまして、論点整理の方に参加をいたしましたので、そちらの内容を踏まえているということがあって、このたびこのような大役を仰せつかったのではないかというふうに思っております。
私は、これまでの学校教育の中におきまして体育あるいは保健体育といったものが果たしてきた役割というのは非常に大きいと思いますし、また、そのことは国民をはじめ教育界の中でもきちんと評価されているというふうに考えております。ただ、今まで果たしてきた役割と同時にこれから果たすべき役割といったことはまた少し違うのかなというふうに考えています。2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されまして、スポーツをはじめ日本という、この国の中においてこのオリンピック・パラリンピックが次の未来に向けて子供たちをどう教育していくかという大きな契機にもなると思います。そういった意味で、このワーキンググループは、これから体育・保健体育が果たすべき役割について理念は同じであっても伝え方や教え方といったやり方についてはもしかしたら変えていかなければいけないところもあると思いますので、多くの委員の皆様に忌憚のない御意見を頂きながらよりよい議論が進められますように努めてまいりたいと思いますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。
【野津主査代理】  主査代理を御指名いただきました野津でございます。ほぼ同時進行となる総則・評価特別部会におきまして委員として出席しておりますので、そこでの議論は議論としつつも、体育・保健体育という教科で引き取るべきもの、あるいは体育・保健体育でこそ引き取るべきものという点におきましても及ばずながら私なりに精一杯努力して務めてまいりたいと思っております。
また、先ほど山口主査も言われましたけども、東京オリンピック・パラリンピック大会開催という歴史的なタイミングにおける学習指導要領の改訂ということでございますので、その点を十分踏まえた議論をしつつ、かつより幅広い視野に立って、長期的な視点で議論ができればというふうに考えております。その点は非常に重要だと思っております。皆様の御協力を何とぞよろしくお願いいたします。
【高崎学校体育室長補佐】  ありがとうございました。
それでは、本部会の進行はこれより山口主査にお願いしたいと思います。
【山口主査】  それでは、これより議事に入ります。
初めに、本ワーキンググループの審議等につきましては、初等中等教育分科会教育課程部会運営規則第3条に基づき、原則公開により議事を進めさせていただきますとともに、第6条に基づき、議事録を作成し原則公開するものとして取り扱わせていただくこととなっております。よろしくお願いいたします。
なお、本日は報道関係者より会議の撮影及び録音の申出があり、これを許可しておりますので、御承知おきください。
それでは、事務局より配付資料の確認をお願いしたいと思います。
【高崎学校体育室長補佐】  配付資料の確認をさせていただきます。本日は議事次第に記載しておりますとおり、資料1から8、そのほかに机上に参考資料を配付させていただいております。不足等ございましたら事務局に申し出てくださいますようお願いします。
なお、机上にタブレット端末を置いております。台数の関係でお二人に1台ずつで置いているところでございますけれども、その中に本ワーキンググループの審議に当たり参考となるようなほかの審議会等の答申をデータとして入れておりますので、御確認の方、お願いいたします。
また、本ワーキンググループの設置に係り、新たに中央教育審議会初等中等教育分科会の委員になられた先生方におかれましては、机上に辞令を入れた封筒を置かせていただいておりますので、後ほど御確認の方、よろしくお願いいたします。
【山口主査】  それでは、諮問、教育課程企画特別部会論点整理、改訂の検討体制、今後のスケジュール等について、事務局から御説明をお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】  失礼いたします。改めまして教育課程企画室長の大杉と申します。本ワーキングの運営に当たりましては、スポーツ庁関係部局、それから初等中等教育局教育課程企画室と組織を超えてしっかりと連携させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、お手元に資料5、資料6、それから緑色の論点整理の冊子をお出しいただければというふうに存じます。まず資料5の方でございますけれども、学校段階等別、それから教科等別ワーキングの設置についてという紙でございます。資料5、1枚おめくりいただきますと、検討体制という組織図を付けさせていただいているところでございます。前回改訂におきましては400人の委員の先生方にお関わりいただきまして、延べ400時間の検討が行われたところでございますけれども、今回こういった検討体制の下、既に延べ500人の先生方に関係していただくということで、いよいよ本格的に審議がスタートするということでもあるというふうに思っております。
御覧のとおり、教育課程企画特別部会、主査も御参加いただきまして、論点整理をおまとめいただいた企画特別部会、それから全体的な審議のまとめをいただきます教育課程部会の下に22の専門部会を設けてございます。この中でまさに教科、科目、それから学校種別の議論をいただきながら、一方で論点整理にもございますように、カリキュラム全体の構造も見渡しながら御議論をいただきたいというふうに考えているところでございます。
体育・保健体育につきましては、このワーキングにおいて御議論いただきますとともに、各教科にわたる部分につきましては主査代理にも御参加いただいております総則・評価特別部会での議論もかなり密接に関連してくることになりますので、事務局といたしましてもしっかりと議論をつながせていただきたいというふうに存じます。
それから資料6の方でございますけれども、今後のスケジュールでございます。昨年11月の諮問を受けまして、8月に論点整理をおまとめいただき、これから論点整理に沿った学校段階別、教科別の御議論をいただき、冒頭澤川課長からの御挨拶にもございましたように、平成27年度末から年度明けをめどにお取りまとめをいただき、その下でございますけれども、平成28年、教育課程部会又は企画特別部会における議論全体をお取りまとめいただく議論を踏まえまして、審議のまとめ、そして28年度内に中教審として答申をお出しいただくというスケジュールでございます。
このスケジュールを踏まえますと、告示を行った後、幼稚園につきましては平成30年から、小学校につきましてはオリンピックイヤーであります2020年、中学校は翌年、そして、高校はそのさらに翌年から年次進行という形で新しい学習指導要領がスタートするというようなスケジュールでございます。
それでは、緑色の冊子に基づきまして、論点整理、時間の限られた範囲でございますので、関係する部分を中心に御紹介させていただきたいというふうに存じます。論点整理をお開けいただきますと、本文が53ページまでございまして、ページ数が振っておりませんので恐縮ですが、53ページの後、緑色の紙をおめくりいただきますと、企画特別部会の名簿、それから論点整理に至るまでの14回にわたる審議の経過、それからその後緑色のページをさらにおめくりいただきますと、そこに諮問文がございます。昨年11月の諮問文でございます。
この後ろのページに理由ということで記されてございますけれども、諮問理由でございますけれども、今の子供たち、これから誕生する子供たちが、成人して社会で活躍する頃の社会のありようを描きながら、どのような力が求められるのか、そのために教育はどうあるべきかということを描きながら、新しい教育課程の在り方を構築していくということ。現行学習指導要領、生きる力の育成の重視、各教科を超えた言語活動の重視といったことの成果が様々な各学校の真摯な取組の成果として現れてきているということ。一方で、判断の根拠や理由を示しながら考えを示したり、社会参画の意識など、子供の自身を育み、能力を引き出すというところに関してまだまだ課題も見られるのではないかということ。
さらに次のページでございますけれども、今後一人一人の子供たちの可能性をより伸ばし、新しい時代にふさわしい学習指導要領の在り方ということを考えていく必要があるということ。ESDなど様々な新しい教育の取組などの成果も踏まえながら、何を教えるかという知識の質や量の改善はもちろんのこと、どのように学ぶか、それをどのような力として身に付けるのかということを考えていく必要があるということ。三つの柱が示されてございますけれども、教育目標の内容と学習指導方法、評価の在り方を一体で捉えた新しい時代にふさわしい学習指導要領の基本的な考え方、これがまさに緑色の冊子としておまとめいただいたところでございます。
さらに次のページでございますけれども、「第二に」ということでございますけれども、新たな教科、科目の在り方につきまして、改めましてワーキングで御審議いただくというところでございます。緑色の冊子の真ん中よりも手前辺りになりますけれども、中に挟んである緑色の紙がございまして、それを二つめくっていただきますと、諮問文が記されているところでございます。カラー刷りの補足資料の手前でございます。失礼いたしました。「第二に」というところで教科、科目の在り方ということを御議論いただきたいということ。
その次のページの真ん中辺りにございますけれども、子供の体力等の現状も踏まえつつ、2020年のオリンピック・パラリンピックを契機に子供たちの関心や意欲の向上を図るとともに、運動習慣を身に付け、健康を増進し、豊かな生活を送るための基礎を培うためにはどのような見直しが必要かということにつきましても諮問文に書かれているところでございます。
そして最後、「第三に」ということで、学習指導要領の在り方にとどまらず、その理念を実現するために、カリキュラム・マネジメント、様々な条件整備の在り方がどうあるべきか、こういったことも併せて御審議いただくということでございます。
ページ数が振ってございませんで、大変見にくくて申し訳ございませんでしたけれども、それでは本文の方に移らせていただきたいと思います。冒頭、論点整理にお戻りいただきたいというふうに存じます。
論点整理、目次を1枚おめくりいただきますと、1ページというところでございます。2030年の社会と子供たちの未来。先ほどスケジュールのところで御説明申し上げましたように、例えば小学校におきましては新しい学習指導要領、オリンピックイヤーの2020年から実施ということが予定されているところでございます。学習指導要領、おおむね10年に1回の改訂ということを踏まえますと、おおよそ2030年頃までその役割を担うということが予定されるところでございます。その頃の社会の在り方、そして、その先の未来ということを描きながら新しい学習指導要領の在り方を考えていく必要があるのではないか。
そして、この論点整理で、教科、それから学校種を超えて目指すべき理念として御提示いただきましたのが3ページの中ほどにございます「社会に開かれた教育課程」ということでございます。社会に開かれた教育課程。これにつきましては、一番下にございますように、まずは社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を作るという目標を社会と共有していくという教育課程であるということ。
そして、次のページの冒頭にございますように、これから子供たちに求められる資質・能力は何かということを明確にして、それをしっかりと育んでいく教育課程であるということ。
そして3番目でございますけれども、教育課程の在り方、学校教育の在り方を学校内に閉じずに、社会と目指すところを共有しながら、地域の人的・物的資源なども活用して連携しながら、その目指すところを実現していく教育課程であるということ。こうしたことを学校種、あるいは教科を超えて実現していこうということを御提言いただいているところでございます。
4ページの下にございますように、現在、検討されている次期学習指導要領、小学校におきましては2020年から30年頃まで子供の学びを支える重要な役割を担うと。こうした将来像を描くに当たって、一つの目標となる30年の在り方、そして、その先を見通して、子供たちの学びを後押ししていくものとするということでございます。
続きまして、5ページでございますけれども、前回改訂の成果と次期改訂に向けた課題ということでございます。前回改訂、現行学習指導要領の成果といたしましては、子供たちの生きる力のより一層の重視ということ。特に学力の三要素から構成される確かな学力のバランスの取れた育成。学校、教科を超えて言語活動でありますとか、体験活動を重視していくということ。こうしたことが打ち出されたところでございます。その成果が様々な学力調査の結果等にも現れているところでございますけれども、こうした成果を踏まえれば、学力の三要素、それから言語活動や体験活動の重視等につきましてはその成果を受け継いで引き続き充実を図ることが重要であるということ。
一方で6ページ目でございますけれども、我が国の子供たちについて自分の考えを判断の理由や根拠とともに述べるということや、自己肯定感、主体的に学習に取り組む態度、社会参画の意識などは国際的に見て相対的に低いということなどが指摘されているところでございます。学力のみならず体力、それから、人間性ということを含めた生きる力の全体を教育課程、あるいは教科の授業へ浸透や具体化を図っていくということがさらに求められるのではないかということでございます。
6ページ目、一番下にございますように、教育課程の全体像を念頭に置き、生きる力の一層の浸透や具体化を図る。そのために更なる見直しを目指していく必要があるのではないかということ。
7ページ目の一番上にございますように、これまでの学習指導要領は知識や技能の内容に沿って教科等ごとには体系化されているが、今後はさらに教育課程全体で子供にどういった力を育むのかという観点から、教科を超えた視点を持ちつつ、それぞれの教科等を学ぶことによってどういった力が身に付き、それが教育課程全体の中でどのような意義を持つのか、こういったことを整理し、教育課程の全体構造を明らかにしていくことが重要ではないかということでございます。
7ページ目、一番下にございますように、何ができるようになるのかという観点から、8ページ目上にございますような、何を学ぶのか、そして、どのように学ぶのかという姿を考えながら構成していくということ。その中で、学ぶとはどのようなことか、知識とは何かといった知見の蓄積を生かしていくということ。8ページ目下にございますように、芸術やスポーツ等の分野における学びということからも参考になる知見がたくさんあるのではないか、そういったことも踏まえながら、学習のプロセスやそれを通じて身に付く力の在り方も含めて構造化していくことが必要であるということでございます。
実際に育成すべき資質・能力についてでございますけれども、11ページ目の下にございますように、特にこれからの時代に求められる資質・能力、予測が困難で、複雑で変化の激しい社会、グローバル化が進展する社会の中で、例えば12ページ目にございますように、変化の中に生きる社会的存在として様々な情報を受け止め、主体的に判断しながら、社会をどう描くかを考え、他者と一緒に課題を解決していくための力、情報活用能力でありますとか、様々なクリティカル・シンキングということも含めた、思考し、判断し、表現していくための力、そういったこと。また、12ページ目下にございますように、情意面や態度、自己の感情や行動を統制する能力、よりよい生活や人間関係を形成していく力なども必要ではないかということでございます。
また、13ページ目ございますように、グローバル化する社会の中で、言語や文化に対する理解を深め、自国の文化を語り、継承すること。異文化を理解し、多様な人々と共同していくこと。また、オリンピック・パラリンピックも契機としながら、スポーツへの関心を高め、「する、みる、支える」などの多様なスポーツとの関わり方を楽しめるようにしていくということ。スポーツを通じて他者との関わりを学んだり、ルールを守り、競い合っていく力を身に付けたりすること。多様な国、文化の理解を通じて、多様性の尊重、国際平和に寄与する態度、共生社会の実現に不可欠な他者への共感や思いやりを育んだりすることなども重要であるということでございます。
こうした資質・能力は数多くあるところでございますけれども、これらを教育課程の構造に落とし込んでいくという中では資質・能力について一定の構造化ということが必要ではないかという御提言を頂いたところでございます。
冊子の後半が補足資料ということでカラー刷りのページになってございますけれども、大体緑色の冊子の真ん中辺りになります。カラー刷りのページのスライド27というところでございますけれども、育成すべき資質・能力の三つの柱ということで、補足資料の27というところに掲載させていただいてございます。育成すべき資質・能力の三つの柱ということでございます。一つは何を知っているか、何ができるかということ。そして、知っていること・できることをどう使うかということ。そして、どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るかということ。この三つの柱ということを中心に各教科の構造の構造化を図っていくということ。そして、各教科の間をつないで、教育課程全体としての姿も明らかにしていくということでございます。スライドの27というところになってまいります。そちらの左下のページになってまいります。この三つの柱ということを大事にしながら、資質・能力の構造化ということを目指していくべきではないかということでございます。
それでは、本文の方にお戻りいただきまして、本文の13ページでございます。こうした三つの柱をイメージしながら、本文の13ページ、幼児教育から高等学校までを通じた見通しをもって資質・能力の在り方を整理していくということ。
そして、14ページでございますけれども、近年、特別支援学校だけではなく、小中高等学校におきましても発達障害を含めた障害のある子供たちが学んでいることを踏まえまして、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった連続性のある多様な学びの場において、子供たちの十分な学びを確保していく必要があるのではないかということ。こうした発達、成長段階のつながりということもしっかりと考えていく必要があるということでございます。
そうした中で、15ページにございますように、教育課程の総体的構造の可視化ということでございます。各教科の文脈の中で育まれる力と教育課程全体として育まれる実社会の中で生きる汎用的な力、これをしっかりとつないでいく教育課程上の構造上の工夫が必要になってくるということ。15ページ目の一番下にございますように、各教科を学ぶ本質的な意義ということ。それから、各教科で育成される資質・能力の間の関連付けや内容の体系化を図っていくこと。そういう中で資質・能力の全体像を整理していくということでございます。例えば思考力につきましても様々な教科、保健体育において、例えば自己や仲間の運動課題、健康課題に気付いてその解決策を考える過程、こういったことも汎用的な思考力ということの育成に大きく影響してくるということでございますので、各教科で育むべき力と、それをしっかりとつないでいくという教育課程の全体の構造の工夫ということをしっかりとしていくということでございます。
16ページからはアクティブ・ラーニングということで、それをどのように身に付けるのかということでございますけれども、アクティブ・ラーニングにつきましては特定の方ということだけではなく、深い学び、対話的な学び、主体的な学びという18ページ目の三つの柱ということを意識しながら、視点として授業改善を図っていただく。単なる型ではなくというようなことを御提言いただいているところでございます。
続きまして、20ページには評価の三つの観点ということ。21ページ目からはカリキュラム・マネジメントなど、それから教員の養成、採用、研修、ICTも含めた様々な条件整備ということがまとめられているところでございます。
ここまでが総論部分でございまして、26ページ目から各学校段階、それから、教科等における改訂の具体的な方向性というところでございます。幼児教育、小学校教育、中学校教育ということで、それぞれおまとめいただいているところでございますけれども、特に本ワーキングに関係深いところといたしましては、例えば32ページ、33ページ目に特別支援教育、特別支援学校ということでございますけれども、33ページ目の上にございますように、幼小中高等全ての学校段階におきまして、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催等も契機としながら、共生社会の形成に向けた障害者理解の促進を明確に位置付け、交流及び共同学習の更なる充実を図るということ。
それから34ページ目、これは総則の部分でございますけれども、34ページ目の二つ目の丸でございますが、学校の教育活動全体を通じて実施することが求められる体育、健康や安全等に関する指導につきましては既存の記載事項を踏まえつつ、総則において育成すべき資質・能力や各教科との関係性をより明確に示していくことが求められることなどが記されているところでございます。
それから、より直接的に本ワーキングの中心的な御議論になるところでございますけれども、41ページ目でございます。41ページ目、マル11、体育、保健体育というところでございます。現行の学習指導要領の様々な成果ということも踏まえながら、体育におきましては学習したことを実社会や実生活で生かし、運動の習慣化につなげること。技能や知識、思考力、判断力、表現力等、公正、協力、責任、参画等の態度をバランスよく育むことなどについて更なる充実が求められるということ。次期改訂に向けて幼児期に育まれた健康な心と体等の基礎の上に小中高を通じて育成すべき資質・能力を先ほどの三つ柱に沿って明確化し、バランスよく育成していくということ。2020年を契機といたしながら、各学校段階を通じて、運動、スポーツへの関心を高め、それを見る、支えるなど多様なスポーツとの関わり方を楽しめるようにしていくこと。また、パラリンピックも含めて、国際的なスポーツ大会の役割について学ぶこと。他教科とも連携しながら、未来への遺産としてオリンピック・パラリンピックの成果をつないでいくということ。
また、保健につきましては、様々な現代的な健康課題の解決に役立つ内容の学習、健康情報を分析・活用する学習、自他の健康課題を発見し、解決していく学習、危険の回避や事故の防止等につながる学習などについて、更なる充実が求められるということ。次期改訂に向けて、幼児期の健やかな心と体の基礎の上に小中高を通じて育成すべき資質・能力を整理し、現代的な健康に対する課題解決的な学習、自他の健康の保持・増進を目的とした主体的、協働的な学習の充実を図っていくことなどが求められるというところでございます。
いずれにいたしましても、48ページ目にございますように、論点整理の議論を踏まえながら、各教科、学校段階ごとの議論もしっかりとしていただきながら、カリキュラム全体としての構造ということも念頭に置いて、その中で各教科が果たすべき意義とは何かということも踏まえながら御議論をいただければというふうに存じております。
大変長くなりまして恐縮ですが、私からは以上になります。ありがとうございました。
【山口主査】  ありがとうございました。論点整理と言いながら非常にボリュームがありますので、なかなか御説明をいただいた中では分からない部分もあると思うんですが、何か今の説明につきまして御質問等がありましたらお願いしたいと思いますが。後ほどまた何かありましたら御質問いただければと思います。
それでは続きまして、本ワーキンググループにおける検討事項について、事務局から説明をいただきます。
【高崎学校体育室長補佐】  失礼いたします。資料7を御覧ください。資料7につきましては本ワーキンググループにおける検討事項の案としてまとめさせていただいております。一つ目としましては、体育・保育体育を通じて育成する資質・能力についてでございます。体育・保健体育を学ぶ本質的な意義や教科との関連性について。三つの柱に沿った育成すべき資質・能力の明確化について。先ほど大杉室長の方からも御説明がございましたが、何を知っているのか、何ができるのかということで、個別の知識・技能についてのこと。知っていること・できることをどう使うか、思考力、判断力、表現力等について。どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るのかということで、学びに向かう力、人間性などについてでございます。
続いて、幼稚園、小学校、中学校、高等学校を通じた体育・保健体育において育成すべき資質・能力の系統性についてでございます。また、体育・保健体育において育成すべき資質・能力とその指導内容との関係性について。あと、オリンピック・パラリンピック大会を契機として育成すべき資質・能力について。
2としまして、アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた資質・能力の育成のための重視すべき体育・保健体育の指導等の改善充実の在り方について。
三つ目としまして、資質・能力の育成のために重視すべき体育・保健体育の評価の在り方。
四つ目としまして、必要な支援、特別支援教育の観点から必要な支援も含んだ形でございますけれども、条件整備等についてでございます。
五つ目としまして、健康・安全における資質・能力についてでございます。
以上のような形で今後検討を進めていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
【山口主査】  大杉さんの方から補足説明はございますか。
【大杉教育課程企画室長】  ありがとうございます。こうした柱、各教科共通にワーキングで御議論いただいているところでございますけれども、そういった共通性と各教科の特性ということ、今回の議論というのを各教科の本質的意義と教育課程全体の在り方、その双方を大事にしていこうということでございますので、その双方の観点から御議論をいただきたいと思います。それから、例えば幼小中高を通じたという観点でございますけれども、本日、資料8ということでお手元にございますけれども、資料8の11ページ目辺りからが幼稚園教育のところでございます。例えば12ページ目にスタートカリキュラムというのがございますけれども、幼小の連携の中でスタートカリキュラムということが、生活科、技術系教科なども中心につながれているところでございますけれども、今回は全ての教科を通じて、しっかりとスタートカリキュラムということを考えていこうということであるということ。
それから、同じく資料8でございますけれども、14ページ目、15ページ目と幼児期の終わりまでに育ってほしい幼児の具体的な姿ということでございますけれども、現在幼児教育部会におきましては5歳児の終わりまでにこういった子供たちの姿を実現したいということで御議論をいただいております。そうしますと、小学校段階からはこれをつないでいくということが考えられるところでございますので、例えば(イ)にございますような健康な心と体というところ。幼児期で育まれたこういったところをいかに小中高とつないでいくか。そういった観点からも是非御議論いただければというふうに存じます。ありがとうございます。
【山口主査】  ありがとうございました。
それでは、ここから意見交換に移りたいと思います。本日は第1回目ということで初めての顔合わせということもありますので、皆様から自由に御意見を頂戴したいというふうに思います。先ほど御説明のありました教育課程企画特別部会論点整理、あるいは本ワーキンググループにおけます検討事項などを踏まえて意見交換をお願いできればと思います。各先生方の日頃からお考えのあること、御専門に関して自由に御発言をいただきたいと思います。御意見のあられる方は札をこういうふうに立てていただきますと、私の方で御指名をさせていただきます。御発言につきましては人数の関係と時間の関係がありますので、お一人3分以内ぐらいでお願いできればというふうに思います。発言が終わりましたら札を戻していただきますと分かりやすいというふうに思います。
それではいかがでしょうか。どなたからでも口火を切っていただけるとありがたいんですけれども。では、友添先生、よろしくお願いいたします。
【友添委員】  友添でございます。今、山口先生と顔が合いまして、アイコンタクトがありましたので、最初に口火を切る形で幾つか問題提起をさせていただければと思います。
今、非常に丁寧な説明をいただいて、どういう議論が行われているかということがよく分かりました。一番最初に考えておかなければいけないのは、現状の課題を整理しておく必要があるのではないかということだと思います。現行の学習指導要領は、それ以前の学習指導要領と比べて指導内容を明確に盛り込んだということが大きな特徴であったと思います。それから、4・4・4制を採用して小学校、中学校、高校の発達段階を区分しています。残念ながら幼稚園との連携はその時点では考えてはいたんだけれども、反映はできなかった。ただ、現在の幼児の状況を考えると、自分の靴ひもを結べない子供たちが生まれてきたり、あるいは小学校の段階で、例えばロコモティブシンドロームの問題が出てきたり、特に中学校期では運動する子としない子の、特に女子の問題等、幾つかの課題が大きく出てきています。それから、アクティブ・ラーニングについても実際のところは体育の実技、つまり運動学習の中では「できる・わかる・かかわる」という三位一体の学習活動をやっていますので、これはそういう意味ではアクティブ・ラーニングを先取りしていると考えていいように思います。ただし、OECDの学力論に沿って言えば、具体的に体育の授業で学んだことが日常生活に本当に発展できたのかという問題をやっぱり考えておかなければいけないと思います。具体的には体力の下げ止まりと言われている中で、日常生活の中で運動やスポーツを楽しむということが本当にうまく実現できているかどうか。この辺りも課題として整理しておかなければいけないとも思います。今、お話しましたように、課題や問題点を挙げてみること、そして多分それぞれの先生方がそれぞれの持ち場で感じておられるような問題点があれば、それを指摘していただくという形で課題を最初に提出していただくというのが議論の筋道としてはいいのではないかということを提案させていただきます。
【山口主査】  ありがとうございました。札が立たないようでございますけれども。
それでは私の方から、今、友添先生の方から口火を切っていただきましたが、近藤先生、現場で実際、小学生を見ておられる立場から、現状などについて何か御意見がございましたらお願いできますでしょうか。
【近藤委員】  すみません。横浜の潮田小学校の校長をしております近藤と申します。丁寧な説明、ありがとうございました。
実際に子供たち、私、自分の学校も含めて、いろいろな学校の体育の授業を見させていただく機会が多いんですけれども、体育の授業を見る、その授業については、一生懸命現場の先生方が今の学習指導要領の内容の実現のために力を尽くしているということが見て取られて、すばらしいなと思う反面、研究授業を見ますね。隣のクラスの体育の授業はどうなんだろうなとか。私の学校で言えば、体育部の先生の授業、体育って校庭でやるので、職員室から見えるんですね。どうなんだろうなといったときに、私は、今回の改訂で、大きな流れはあまり変わってないところで、それを現場の人間としてどう実現していくかというような問題意識を持っています。実際に小学校で言えば、どの職業もそうですけれども、団塊の世代の先生方がどんどん退職されていって、若い先生、経験の浅い先生がたくさん入ってきます。それから、例えば横浜で言うと、3年未満の先生が3分の1、10年未満の先生が半分以上です。だから、職員室が大学のサークルみたいになっちゃうんですね。だから、すごい先輩たちが築いてきた指導方法とか、学習指導要領の内容を実現する授業がなかなか伝わっていってないということをすごく感じています。
また、きょうも鈴木先生、いらっしゃっていますけれども、他府県の状況を聞くと、いろいろな財政難の中、正規職員じゃなくて、臨任・非常勤の先生も増えている。臨任・非常勤の先生や初任の先生も同じように体育の授業を持つわけですね。そうすると、そういう部分で、どうこの学習指導要領、生きる力、体育としての体力も含めて実現する授業を広げていくかということはすごく現場の人間としては課題だなと思っています。ここで話されていること、これまでもすばらしい、いろいろな充実した議論がされていると思うんですけれども、学校又は教室でそれをどう実現していくかということに、今私は課題を感じているところでございます。
以上でございます。
【山口主査】  ありがとうございました。今の御意見を踏まえてどなたか何か御意見ございませんか。ないと、私がどんどん指名するという恐ろしい状況に入ってまいりますが、大丈夫でしょうか。それでは、藤田委員、中学校はいかがでしょうか。
【藤田委員】  はじめまして。福岡の藤田と申します。よろしくお願いいたします。
今、小学校の方から色々と御意見を頂きました。私が友添先生から出された中学校における現状の課題というところで感じているのは、現行の学習指導要領は、非常に指導内容が体系化されて、教える内容がとても明確化されてきていると思います。しかしながら、果たしてその内容が全国津々浦々、しっかりと同じ質で、「等質でその意義や趣旨が浸透しているか」、というところに疑問を感じています。それは地域のいろいろな学校に行く中で、指導者によって授業の質が変わってしまう。特に体育の場合は、たとえば、入試に直接関わりません。国語とか英語とかだった場合にはある程度ここまで教えないと入試に導かれないというところがあって、いろいろな教え方はあるのでしょうけれども、ある程度質が、担保されているところがあるのかなと思うのですが、体育の場合は指導者によって授業の質にばらつきがあるのではないかなと。せっかく学習指導要領があれだけしっかりしたものになったんだけれども、それが果たして定着しているのかなというところが一つです。
というところで、課題としては、「教師の意識」でしょうか。現実として、学校の中で体育教師が生徒指導に追われ、部活動に追われ、果たしてそれと同じ、あるいはそれ以上の意識、労力を使って、授業づくりに励んでいるのかなというようなところを課題として感じています。
先ほどありましたように、体育教師として「教科の特性」は感じているんですけれども、「教科としての本質的な意義」をもっと私たち現場のレベルで認識して授業に取り組んでいくというところが課題じゃないかなというふうに感じています。
以上です。
【山口主査】  ありがとうございました。確かに現場の先生方、指導要領をどのようにというのは非常に、そこは論点整理の中でも議論になったところでもございました。小学校、中学校と来ますと、予測されていると思いますので、佐藤先生、お願いいたします。
【佐藤委員】  山形中央高校の佐藤若と申します。
先ほどから多分指名が掛かるのではないかとどきどきして、何をお話ししようかというふうに思っていました。高校の現場としては先ほど小中というふうな話を受けて、似ているところがあるなというふうには感じております。授業の質については今回の学習指導要領で内容が盛りだくさん書かれて、具体的に何をどう教えればいいのかということについて、明確になったと感じております。その内容に向けてしっかり努力しようという教員も非常に増えている反面、高校になると、そうではない部分もあります。
中学生の女子の運動率というようなことがありましたけれども、高校は特にそれがはっきりしてくるのかなというふうには感じています。自分から運動しようということよりも、ほかに楽しいことがあるということで、なかなか運動への意欲が見られない部分もあります。けれども、体育の授業を自分で省みますと、楽しいこと、できなかったことができるようになったというふうに楽しめることに対しては意欲が増してきているなと感じております。男の子もそうですけれども、そういったことをしっかりこれから意識して授業作りをしていけば、もっと高校現場もよくなっていくのではないかなと感じております。現状と課題のところに焦点を当てたお話ができたかどうか分かりませんが、また後ほどお話しさせていただきたいと思います。
【山口主査】  ありがとうございました。それぞれのお立場で現状の問題提起というか、課題についてお話しいただきました。日野先生、突然申し訳ございません。現行の指導要領の課題とか、そういったところについて、もし日野先生の方で現状調査等も踏まえた上で御意見がありましたらちょっと一言御発言いただけると助かります。
【日野委員】  愛媛大学の日野と申します。
突然の指名ですけれども、私自身、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、そして特別支援学校の体育授業を参観させていただいております。それぞれの先生方は、それぞれの校種での指導を本当に一生懸命やっていただいています。けれども、どうしても自らの校種に特化する傾向がありまして、どう接続するのか、つながりをどう持たせるのか、どのような見通しを持って指導にあたるのかについての課題を感じます。今回、4・4・4という話もありましたけど、例えば中学校ですと、小学校とのつながりと高等学校とのつながりを踏まえた中での4をどう位置付けるのかということがあります。また、トータルとしては豊かなスポーツライフの実現が目標にされており、先ほど友添先生が言っていただきましたように、最終的には卒業後もスポーツとの豊かな関わりをどう継続していけるのか、ライフステージに応じてスポーツとどう関わっていくのかが重要な視点じゃないかと思います。そういった意識とそれに向けた授業ですね。
ちょっと外れるのですが、現状分析とともに、今後、新しく求められるような現代的なニーズや、今日的な課題についても対応していく必要があると思っています。例えば今回パラリンピックも注目されていますが、特別支援学校の体育の授業や、特別支援学級や健常者と障害者が一緒に行う授業もあります。そういったところでも体育が果たす役割はあるのではないかと思っています。私自身、関わっていると、健常者に障害者スポーツを教える機会をもっと増やしてもいいと思っています。障害者が健常者に向かうベクトルはありますが、健常者がもっと障害者と一緒に障害者スポーツをするようになれば、共生社会を築けるのではないかと思っています。今後求められてくることも検討していく事項の一つとしてあるのではと思っております。
すみません。こんなことですけれども。
【山口主査】  ありがとうございました。私が一方的に指名する形で……。ありがとうございます。五十嵐委員ですね。お願いいたします。
【五十嵐委員】  今まで体育のお話が中心でしたが、保健の方についてお話をさせていただきます。私、もともと小児科医です。保健体育の教科書の内容を審議する第8部会の部会員を10年間務めさせていただき、気が付いたことがあります。日本というのは世界的に見ても体育の授業という極めてユニークな全ての子供たちがある一定の時間運動するという、非常にユニークな国です。一方、保健につきましては、広い意味で健康教育という点から見ますと、子供が大人になっていく過程において、自分の体に関する知識を持って健康を守り増進するという目的のためにはあまりにも教えている内容が少な過ぎる点です。つまり、現在の保健の教科書では子供が大人になっていく過程において自分の体を守るだけの知識は与えられていないと思います。
健康教育という点から見たときの保健の内容についてはまだまだ改善すべき余地があるのではないかと長い間考えております。一例をあげますと、お子さんをお持ちの方は、自分の子供が予防接種を受けるときに保健所から予防接種の通知が来るまで予防接種について十分な知識をお持ちではありません。つまり、多くの人たちは何で予防接種が必要であるかのついて、具体的な病気の危険性などについて御存知ありません。はしかなどの感染症がどうして恐ろしいのか、なぜ予防接種が必要なのか、子どもたちに知らせる必要があると思います。これは一つの例で、子どもの健康に関して教えるべき問題はほかにも多々あります。子供が大人になる過程において必要な保健に関する知識を充実させるべきと、考えております。
【山口主査】  ありがとうございました。非常に大きな課題であると思います。
それでは、萩原さん、お願いいたします。
【萩原委員】  日本水泳連盟の萩原と申します。よろしくお願いいたします。
先生方のお話を聞いていて、私も日々思うことがいろいろあります。きのうですか、朝日新聞のスポーツ欄に、女性アスリートの無月経からの疲労骨折という記事が載っておりました。私も実は婦人科系の病気を経験しまして、考えるところがあります。女性アスリートは、現役を終わってからの人生の方が長いですので、体、心の教育も行っていきたいなと思っております。
婦人科系の病気について、女性だけが知っていればいいというわけではなく、男性の教育者という存在もいらっしゃいますので、男性にも女性にも同じ教育が必要になります。小学校時代のときに月経について男女分けて教育を行うというのも、今後、見直しが必要だと思います。私も小学校時代男女別で行っていたんですけれども、そういうのも男女一緒に教育を行って、一緒の気持ちで成長していけるような環境を作るということもすごく大事なんじゃないかなと思っております。
次に、私は、水泳の出身です。水泳は小学校で習う習い事ナンバーワンですが、そういった意味では水泳出身者のラグビー、バレー、陸上、サッカーなど、いろいろなスポーツにつながっていく方がいらっしゃいます。そういった意味では、水泳はベーススポーツだと思います。そういった意味で考えると、体育の存在意義というのは、いろいろな科目に対してのベース教育になるのでは、と思っております。健康に対してはもちろん保健体育。体育をするためには体が必要で、それが食育、家庭科にもつながりますし、オリンピック・パラリンピックの教育をするといった意味ではいろいろな国の現状を知る社会科の授業にもなりますし、平和とか感謝ということに関しては道徳教育にもつながります。豊かな環境があるからこそスポーツができるといった意味では理科、そして、性教育といった意味では生物であったりとか、そういった本当にベース教育になる体育なので、そういったことを踏まえて教育を進めていくと、いろいろな視野を広く持った子供たちが育つんじゃないかなというふうに思っています。
ただ、これを現場の先生に全てゆだねるのはすごく酷だと思いますし、私もいろいろな現場に行っていて、オリンピック・パラリンピックの推進校というところにも行ってお話をしたりしますけれども、現状先生たちが置かれている重圧というか、プレッシャーというのはすごいんだなというのを感じました。どういうふうに教育をしていいのか分からないという先生がすごく多かったので、そういった意味では、外部指導者の力を導入することも大切だと思います。先生たちの負担を少しでも減らすような教育をするのもいいのかなというふうに思います。
もう一個いいですか。
【山口主査】  どうぞ。
【萩原委員】  すみません。中学生とか、高校生になると女性があまりスポーツをしないという現状があると思うんですが、それはきっとスポーツが苦手だったり、体を動かすのが苦手だという子が多いんですけれども、世界ゆるスポーツ協会というのがありまして、手錠バレーや、ベビーバスケなどいろいろなスポーツを企画しています。身体能力が高い低い関係なく、本当にみんながハンデを持ってやっているので、すごく盛り上がって楽しい。遊びながら体力を向上できるという、本当におもしろいスポーツの団体で、私も注目して、今拝見しています。一度ホームページを見るとおもしろいと思います。そういったところも学校教育に含めていくとおもしろいのかなと思います。長々すみませんでした。
【山口主査】  ありがとうございました。トップアスリートとして活躍された方からゆるスポーツという、対極にあるところが。だからこそそういったところにも目を向けられるのかなというのがとても印象的でございました。
それでは、高橋先生、お願いします。その後、青木委員、お願いいたします。
【高橋委員】  横浜国立大の高橋です。大学では教科教育と舞踊教育を専門にしています。
3点お話をさせていただきたいと思うのですが、今、萩原委員がおっしゃったみたいに、体育が全体のベースになって、いろいろな教科につながっていると。先ほど大杉企画室長も、共通性と特性というお話をされたと思うんですが、共通性ということをどのように私たちが認識しながらしていくのかと。大きな柱というものを絶えず意識しながらいかなければきっとならないんだろうというふうに思うと、その共通性ということは上から降ってきて、私たちがするのか、それともこういうことも大事なんじゃないかというふうにするのか。先ほど小児科の先生もおっしゃったように、体育と保健という、体を資本にしながら──資本というか、体をベースにしながらある教科でありながらも、縦割りのような部分を絶えず歴史の中で感じたりしています。ですから、今回の指導要領の改訂の中に共通と差異化みたいなところをどのようにしていくのかというのが大きな議論になるのかなって思います。それが一つ目、お話ししたいことです。
それから二つ目は、アクティブ・ラーニング、友添委員もおっしゃったように、体育は前からそういうことをやってきたよと。改めてすることではないかもしれない。大学は割に遅れていたから、そういうことを大事にしなきゃならないって。でも、小学校に、おとといも見に行きましたけれども、どのクラスでもそういうことを大事にした実践をしています。附属でもなく、普通のところです。私は、今の指導要領の解説等にも協力させていただいたときに、解説を書くときに、方法というのをどのように学ぶのかというのは絶対書かないんだというふうに意識して書きました。なぜかというと、目の前のお子さんが大分違ったり、4月の段階と12月の段階で、単元が進むとまた違うし、そういう段階で一つの方法を規定することがどうなんだろうということが議論にあったんだと思うんです。今回、アクティブ・ラーニングという、売りかなというふうに思いますけれども、それを掲げるアクティブ・ラーニングそのものは、私、賛成なんだけれども、指導要領の中に書き入れていくんだと思うんですが、その弊害というか、その辺りをどのように認識しながら、この議論も進めていくのかということが気掛かりになっています。先日、教員の数をあまり増やさないという。予算を付けないということも出たと思うんですけれども、そういう中でアクティブ・ラーニングを進める上では教員の資質というのが非常に問題になると思うんですね。その場合に、今まだ日本の児童を持つ数というのがクラスで大分制限がありますので、それをも考えながら、方法というのをどういうふうに考えていくのかということは気掛かりになっています。
三つ目は、ダンスと武道が中学校で1、2年必修になりまして、昨年、今年、私はダンスの方が専門なので、3万人ぐらい全国調査をいたしました。中学生、それから、教員。そうした結果を見ますと、ダンスはリズム系、エグザイルのような、ああいう格好いいダンスを求めている中学生が多くて、振り付けダンスのようなことをしているという現状が見えてきました。最も基本的なものとして私たちが考えた、指導要領の解説に書いたものは自由に弾んで踊るんだと。でも、それよりも振り付けで、カウントで縛られたというようなことが見えてきて、戦後70年たつ中で、例えばダンス教育に限ってみれば、運動会でおしまい、振り付けダンスでおしまいというような指導要領の解説で書かれているものがどれだけ浸透力があるのかということも責任を思いながら非常に感じた次第です。
感想と意見と三つお話しさせていただきました。ありがとうございます。
【山口主査】  ありがとうございました。
それでは青木委員、お願いいたします。
【青木委員】  葛飾区小中一貫教育校新小岩学園新小岩中学校の青木と申します。現状をちょっとお話しさせていただきます。
6・3制を残した小中一貫校なので、私の校長室から小学校の体育と中学校の体育が両方眺められるような環境におります。そういう中で、小中、もちろん幼・高も入れて、連携した継続的な運動とか、健康教育、保健学習がとても大事だなということを日々感じております。そういう中で本校は、オリンピック・パラリンピックの教育推進校を今年受けておりまして、昨年から女子体育の方にコーディネーショントレーニングを取り入れております。コーディネーショントレーニングだけじゃないと思うんですけど、いろいろな意味で女子の体育のスポーツテストの結果が全国平均を、前は全部下回っていたのが全部上に上がっていったという成果が出てきております。取り組むことというのはとても大事だし、オリンピック・パラリンピック教育の取り組みもアスリートに来て、お話をいただりしています。先日は、パラリンピック、車いすテニスプレーヤーの斎田さんに来ていただいて、お話と、実際に車いすに乗って、健常の子供が車いすで相手をしていただきながらテニスをやりました。今度は違うアスリートの方に来ていただいてということで、うちの学校は推進しています。子供たちの目の輝きが違うんです。子供たちが一生懸命その種目に取り組んで、成果があるんだなということを感じています。
それで、体育だけじゃだめだということで、校内で組織を作りまして、例えば国際理解とか、日本伝統文化、そして、体育と健康教育という四つの柱を立てて取り組んでおります。全員の教員がどこかしらに入って、それこそ日本伝統文化では茶道の先生に地域から来ていただいたりとか、国際理解ではユニセフから募金がどう使われるかというお話をいただいたりして、幅広くオリンピック・パラリンピックの教育を進めていこうと思っております。
そういう中で、先ほど五十嵐先生からありましたけど、どうしても保健体育の保健の授業になると後回しになっている感じがあります。私も学習指導要領等の作成に、2回関わらせていただいて、保健の授業をどう推進してもらうかということを非常に課題として取り組んできたのですが、雨降り保健とか、寒いときに保健をやるとかとよく言われますが、以前に比べたら随分保健の授業もしっかりと位置付けられて、計画的にやられるようになりました。ただ、まだ体育分野ほど教師の意識が高まっていないのが現状です。体育の方が得意なんですよね、体育の先生ってどうしても。保健の授業って難しいし、自分で教材研究をいっぱいしてこないといけないというところで、なかなか取り組むのが苦手な先生もおります。そういう中で、いかに保健の授業をたくさんしていただくか。
でも、健康教育の課題って山ほどあるわけです。喫緊の問題で、本当に心の問題、いじめ、自殺、本当に自殺が減らない状況もあります。そして食育なんかでは、女の子のやせ志向が、結局、貧血だとか、今度はその後の大人になってからの生殖の問題なんかも出てくると思うのです。あとがん教育とか、今3人に1人ががんにかかるような、国民的疾病というか、そういう現状の中で、もっと子供たちに知らせていかなきゃいけない、あるいは学ばせていかなければいけない、そして、スキルを身に付けさせていかなきゃいけないような保健の内容というのは山積しているわけです。中学校の場合は、その授業を3年間ですが48時間でやっていくわけです。もっと内容を精査しながら、48時間でしっかりとした実力まで養えるぐらいの保健の授業ができるよう、今後もっと改善されればいいななんて思っております。
まとまりませんけれど、そのようなことを考えておりますので、是非保健の授業の方もよろしくお願いしたいと思います。以上です。
【山口主査】  ありがとうございました。非常に重要な点を御指摘いただいたというふうに思っております。渡邉先生、お願いいたします。
【渡邉委員】  私も青木委員のお話をいただいたところで、ちょっと関連して発言させていただきます。私も保健、安全のことに関わっておりまして、健康教育は、教育課程全体で行うということにはなっていますけれど、やはり保健や安全のことも確実に指導していくということになりますと、教科が核になるわけですね。もちろんほかの保健指導とか安全指導の時間もありますけれど、それぞれの学校に任されているということになると、教科の中でしっかりと位置付けていくという意識を考えていかなきゃいけないということがあるかと思います。
そうしたときに、難しい問題としては、私は、特に東日本大震災以降では、防災を中心に安全のことに関わってきていたんですが、特に安全のことなんかは保健だけではなくて、理科をやったりとか、社会科であったりとか、技術家庭とか、ちょっと近い領域にもかぶるところなんかもあります。そういったところを考えたときに、これからの今回の検討課題の事項にも挙がっておりますけれど、資質・能力の重視ということと併せて他教科との関連とかといったときに、全体として共通する汎用性のある資質・能力ということを考えていかなければなりませんが、やはり保健でなければ身に付かない資質・能力とは何かということを明確に議論していく必要があると思います。この教科でなければ身に付かないことは何かということが明確になっていくことが、教科自身が社会の中で認知されて、生き残っていくためのすごく重要なことだと思うのですね。ですから、これまでだったら、例えば学習内容のすみ分けという感じで、教科で分けているなんていうこともあったかもしれませんけれど、やはり保健でなければならない資質・能力は何かということを、しっかりと明確にして主張していくということが今回の改訂では非常に重要になってくるかと思いますので、慎重かつしっかりと考えていきたいと思っております。
【山口主査】  ありがとうございました。委員の先生方から保健の重要性といいますか、他教科との体育・保健体育との共通性とか、あるいは独自性というところはこれまでも議論されていたんですけれども、実は体育と保健というところは意外と一体になっているような感覚を受けていて、実は、体育と保健との共通性とか、そこのところは意外と盲点だったかなという印象を私も受けておりまして、その辺りのところも今後議論を深められればというふうに思っております。
野津先生、何か一言ございますか。保健について。
【野津主査代理】  最後に一言と思っていたんですけども。会議の一番初めに友添委員が現状分析、そこから課題を明らかにしてということをおっしゃいまして、非常に重要な点だと思いました。それぞれの委員の方におかれる現場での、あるいは周囲の状況などを見ての現状についての御報告、それは非常に貴重なご指摘だと思います。もう一つは、学術上の成果として、エビデンスとかいう言い方をよくされるわけですが、その辺の学術知見がどうなっているのかというところからの分析、課題ということも次期改訂に向けては非常に重要だと思っております。
例えばですが、前回の改訂におきまして、4・4・4ということを導入したことはどういう成果があって、それを継続なのか、見直すのかというようなことも一つあるかもしれませんし、幼稚園と小学校の連携というような話が先ほど出てきているわけですが、実は、小学校1、2年には健康に関することの学習というのは位置付いていなくて、ですが、やはりそこも大事だということで、1、2年生は前回の改訂においては、運動を通して健康の大切さについて気付くということが位置付けられました。それが10年弱やってきて、うまくいっているのかどうか。幼稚園には健康というところがありますので、それが1度、1、2年生の低学年での授業という点では切れて、3、4年生から保健の授業が開始されます。ただ、時間数は限りがありますし、小学校1、2年生の運動領域は非常に重要です。そうしますと、運動を通して健康の大切さということをもう少し掘り下げて改訂、改善の余地はないのかというような議論も出てくるかと思います。その辺、是非次の会なりに、体育の授業におけるエビデンスといいますか、学術的な知見を御紹介いただければありがたいと思います。
保健に関しましては、先ほど青木委員が少し言われましたけれども、学校保健会の調査等で、改善の傾向が示され、また、課題も見えてきているところがあります。エビデンスに基づく議論ということが非常に重要だと思います。
【山口主査】  ありがとうございました。
それでは、横嶋委員、お願いいたします。
【横嶋委員】  ちょっとまた戻る感じなんですけれども、現場の先生方から現状を御説明いただきましたけれども、現場の教員からよく聞く話としては、二極化の話というのは今でも加速しているように認識しています。体力もそうなんですけれども、運動技能などもかなり差が以前に増して出てきている。そのような中、それプラスバランスの悪さというんですかね。各種目とも非常に低年齢化が加速しているような状況がありますので、小学校入学前から専門的な種目に取り組まれているお子さんがかなり増えてきていると思うんですね。そういった中で、例えばサッカーをやらせたらすごくピカ一なんだけれども、全然投げられないとか、昔は体力がある子というのは大体満遍なくできている子が多かったんですけれども、そこのバランスの悪さというのをよく話に伺うことがあります。
保健に関しても、どうしても家庭環境に非常に差がありまして、指導する内容を、どういう内容を指導していったらいいのか。どういうところに配慮していったらいいのかという、そういう部分で非常に苦慮しているというような話も伺っております。
小学校、中学校で申し上げますと、小学校については個人的個人的に頑張られている先生というのは非常に多く見受けられますけれども、それが学校として機能しているかどうかというふうになると、どうしても自分の学級だけとか、自分の学年だけにとどまって、それが全校に広がっていないというような状況があったり、中学校で申し上げますと、どうしても自分の部活の専門種目に重きを置くがあまり、教科の方にはあまり力が入らずに、それがどういうところで見受けられるかというと、研究授業というふうになると、自分が専門でやってきた種目を研究授業でやる機会が非常に多いんですね。逆に私どもは自分が専門でない種目をやられたらどうですかというふうに助言したりしているんですけれども、そういう部分では、教員の意識が自分の種目だけではなくて、保健体育科として全て満遍なくやるんだというような意識がちょっと足りないかなというような気もいたします。
また、小中高の連携という部分については、小学校の先生が中学校の授業を見る機会、逆に、中学校の先生が小学校の授業を見る機会というのがなかなかないものですから、それぞれ異校種でどのような授業が進められているかということが実感としてわかないような中で授業を進めているというような現状があるかと思います。
最後に、先ほど萩原委員の方から話がありましたけれども、体育の中で保健の知識を持って体育の指導もするということは私は非常に有効であるというふうに思っていますので、是非保健体育科の教員として、教員がそういう認識を持って授業に当たっていただければなというふうに思っております。
以上です。
【山口主査】  ありがとうございました。1回発言したからもうしてはいけないというルールはございませんので、何か気付いたときにはすぐ……。それでは、中村委員、そして友添委員に行きたいと思います。
【中村委員】  山梨大学の中村と申します。
私は発育発達を主に研究していますので、その観点から、先ほど野津先生からエビデンスの話が出ましたので、最初に二つ紹介したいんですけど、一つは、15年ぐらい前からアメリカで始まった研究なんですが、持ち越し効果という研究が盛んになっています。日本だと順天堂大学に移られた鈴木宏哉先生が中心にやられていますけれども、幾つかの論文が出ているんですが、そこで分かっていることは、小さい頃から特定のスポーツをやった人とか、あるいは部活をやっている人が、必ずしも大人になってから運動を続けていないということが明確なんですね。じゃ、何で運動を続けるんだろう。運動を続けた人の要因は何だろうというところを分析していくと、体を使った遊びをいっぱいやっている人、いろいろな運動、スポーツの経験がある人というのは意外と大人になってから運動を続けている。その根底には、多分おもしろさとか、あるいは運動することがおっくうではないとか、そういった意識が非常に強いだろうというふうなことが最近分かってきています。
もう一つは、先ほど御発言の横嶋先生のお話の中にも出てきましたが、これは東京学芸大学にいられた杉原隆先生とか、今いられる吉田伊津美先生の御研究ですけど、東京とか埼玉の幼稚園、保育園で、先ほどお話が出ているように、かなり特定のスポーツだけをやってしまっている。遊ばせない。指導してしまったという場合が多いんですけれども、そういった園の子供たちと、一方で全くそういった指導ではなくて、保育士や幼稚園の先生が子供たちと一緒に遊ぶような、そういった運動体験をしている。その二つの幼稚園、1万人ぐらいの子供を対象としているんです。幼児の運動能力調査をやってみますと、特定のスポーツとか、あるいはそういうところでやっている、指導されている子供たちの運動能力が低いということが分かっています。それを追い掛けていくと、そういった子供たちが小学校に行ってから運動をあまりしないですね。体育の授業はやりますけど。そういったことも分かってきました。
ちょっと御紹介した二つのエビデンスなんですが、その続きで二つお話をしたいのは、生涯にわたる健康の保持とか、豊かなスポーツライフの実現というのは、基本的には体育・保健体育の目標でしょうけれども、でも、なぜか日本はこんなにすばらしい学習システムがあるのに、生涯スポーツの観点から見ると、今回、また成人人口の運動実施率が下がってしまったという。非常に不思議なんですね。私なりの観点で分析してみると、体育の授業作りは、先ほど言われたけど、先生方、非常に一生懸命やっていて、こんなにすばらしい体育の授業をやっている国はなかなかないと思うんですね。それがその後の生涯スポーツにつながらないというところの一つの問題点というのは、総則に書いてあるような教育活動全体を通して行うというところがちょっとまだ薄いのかなという気がします。日常化、生活化の部分ですね。さらに今幼児期のお話をしましたけれども、部活の在り方も含めて、地域とか家庭との連携というのが非常に薄いのかな。こんなにすばらしい体育をやっているのに、でも、それが運動実施につながらないというところが非常に問題だと。
例えばさっき萩原さんがゆるスポーツという話をされましたが、まさにそうで、やはり競技性の志向だけの部活ではなくて、もうちょっと例えば文化部の子供たちも週に1回ぐらい運動できる、そういった仕組みを作るとか、あるいは様々なスポーツを経験できるような、総合的な部活を作るとか、これからはそういったことも必要になってきて、二極化がだんだん解消されていけばいいかなと思っています。
最後ですけど、幼児期の連携というのは非常に大事だと。文部科学省の施策の中に、保幼小連携があるわけですから、これは我々のここでやっている体育とか、あるいはさっき出ましたが、健康という領域ですね。幼稚園、あるいは保育士の。そことの連携って非常に大事になってくるというふうに思います。今、4・4・4ですけど、先ほどのスタートカリキュラムという話からすると、ひょっとすると5・4・4かもしれないし、6・4・4かもしれない。発育発達の観点からいくと、さして変わらない。年中さんから小学校3、4年生ぐらいまではほとんど同じ発育発達段階なので、ここと絡めながら体育を考えていくことというのは非常に必要なのかなというふうに思います。
長々すみませんでした。
【山口主査】  ありがとうございました。それでは友添先生、お願いいたします。
【友添委員】  2巡目に入っていいのかどうか分からないんですけど、何人か、菊先生など、まだ発言されていないので、期待しているところが若干あるのですが。
大体、今機能的な方法で具体的な現場の中で何が問題になっているのかということが挙がってきたように思います。教師の資質・能力の問題が一ついずれの先生方からも挙がってきているということ。これは検討していかなければいけないだろうということと、保健と体育の連携をどうしていくのかという問題。今までの学習指導要領の作成過程では、保健と体育というのは、文科の担当の課が違ったものですから、意外と学習指導要領を作るときに最初は合同でやるんだけど、実はその後、あまりどちらも何をやっているかよく分からないというので、最終的に解説書の文案を作るときにそれぞれ主査やおもだった委員が集まって内容を検討して、すり合わせするということを主にやってきたんだけれども、やはりこの会議でのように十分に意見交換していくことが大切だと思います。幸い、今度は学校体育室の中で一貫してやっていただけるということで、この辺りはうまくクリアしていくことができるだろうというふうに思っています。
あと指導内容の問題ですが、これは系統性の問題だとか、あるいは内容そのものが本当に妥当するのかどうかという、今中村委員がおっしゃられたこととの関連でいえば、内容そのものは本当に今までのままでいいのかということだと思っています。そして、内容を考えるに際しては、エビデンスをしっかり集めてみる必要があるんじゃないかという提案というふうに聞いていました。
学習指導要領を作っていく、カリキュラムを作っていくときに、幾つか確認しておかなければならない条件があって、2030年ということであればそのときの社会像をある程度イメージしておかなければいけないだろうと思います。特に体育に関わってくるような社会像で言えば、高齢化率が25%を超えています。その中で、実はこれからの子供たちに何が求められるのか。どういうことを知識として知っておかねばならないか、また、保健体育という教科がその中で何ができるのかは意識しておく必要がある。
それから、地域がますます消滅という警鐘も発せられていますけれども、地域そのものがどういう状態なのかということを少しイメージしていく必要がある。その中で、スポーツがどういう役割、あるいは健康の問題がどういう意味を持つのかということは、しっかりと意識しておかなければいけないだろうというふうに思うわけなんです。
もう一つは、山口主査にも確認なんですが、実は学習指導要領が出るときには、オリンピック・パラリンピックは終わっています。つまり、オリンピック・パラリンピックがほぼ終わった段階で指導要領が実際に出て、そして、それが学校の中でどうなるのかということを考えたときに、言い古された言葉の感はあるんだけれども、レガシーというところに観点を置いたときに、この保健体育、あるいは体育という教科はオリンピック・パラリンピックが終わった後を見据えて、どういう学習内容や指導内容を設定していくべきなのか。つまり、ポスト・オリ・パラの問題も十分に踏まえて、この委員会の中で検討していく必要があるのではないかというふうに感じてきたところです。
すみません。雑駁ですけれども、今そういう感じがしています。
【山口主査】  ありがとうございました。確かにオリンピック・パラリンピックが終わっているというのは非常に重要な観点だと思いますし、ただ、それだけに何か今は一般的な風潮がオリンピック・パラリンピックを目指してと。そこから後のことはあまり考えていないような傾向もございますので、そういった意味では指導要領を通じて、オリンピック・パラリンピックは通過点として、そこから何を作っていくかということを、もしかしたら示していけるのかなというふうに思いますので、また、その観点も議論していただきたいと思います。
それでは、真如委員、鈴木委員と続きたいと思います。その後、菊委員上がっているんですが、実は南委員がちょっと先に御退出ということですので、南委員を挟んで菊委員に行きたいと思います。
【真如委員】  東大和の真如でございます。隣に埼玉県の先生がいらっしゃるんですけれども、埼玉と東京の境目のところにおりまして、一つ湖を越えると埼玉なんですが、さっき話をしていたら、埼玉というのは非常に横に長くて、千葉の方まで埼玉なんですね。ですから、近いなと思いながらも、随分離れたところで仕事をされているんだなというようなことを考えながら聞いておりました。
さて、私の方から非常にハイレベルな話になってきたので少し落とすような感じになってしまいますけれども、幾つか話をさせていただきたいと思います。
まず子供たちが変わってきているというのはそれぞれの立場でいろいろな捉え方があるので、それぞれ違うんでしょうけれども、今、市役所の方では、私、教育委員会ですから、市の職員を採用する論文やら面接やらをやっているところなんですけれども、論文を見てみて強く感じるのは、文章になっていないというか、短文。段落がない。そういうものが本当に多いんですよ。これをスマホですよと言えばそれで終わりなんですけれども、スマホの影響かどうか分かりませんけれども、行間を読むという、そういうすばらしい言葉がありますけれども、そこには到底たどり着かないような文章の書き方になっています。
今私たちが連絡をとるについても、はがきを書くでもないし、手紙なんかほとんど書かないという、そういう状況の中で、スマホなり、携帯なりを使って、途切れ途切れの文章をつなぎ合わせて送っているわけですけれども、あの影響があるとしたら大変だなというようなことを一つ考えております。それは国語の内容ですけれども、ちょっと置いておいて。
それから、子供たちの生活の様子も変わってきていますね。男女共同で参画していくという、そういう時代になってきて、お父さんもお母さんも両方働く。そんな中で、豊かな生活を目指していこうというような、そういうところがあるんですけれども、お母さんが働き出してくると、子供を預かっているのが大変なことになるんですね。ですから、お母さんも帰りが7時ぐらいになってくるとする。そうすると、学童はどんどん子供たちが増えてきて、学校の教室が足りなくなるほどになっているという。それでもお母さんからは、お父さんもそうですけどね。お父さんやお母さんからは、もっと長い時間預かってくれないだろうかということで、8時までお願いしたいという、そういう話があるんですね。でも、それほどどんどんやっていくと、こちらの方も大変ですから、7時までとか、6時までということでやっているんですけれども、今はそれでも大変なので、聞くところによると、10時、11時だったですか。それまで預かってくれるところが民間の企業で出てきているんだという話を聞いてびっくりしました。この間豊島区に行ったら、そんな話をしましたね。食事も付くし、子供たちの宿題の面倒も見てくれるという、そういう時代になってきているんです。それから家に子供たちが帰っていくと、ほとんど寝るしかないですね。ですから、早寝早起き朝御飯なんていう言葉は、それはそれで大変立派な話なんですけれども、現実はそうならなくなりつつあるという、そういうことも私たちは認識しておく必要があると思います。
そうすると、家庭環境ということを今度振り返ってみますと、お父さん、お母さんと一緒に家で食事をするという時間がなくなってくるわけですね。かつて、居酒屋で子供たちの姿を見ると、何という親だというふうな感じで言っていた時代がありました。ところが、今は居酒屋も、私は居酒屋によく行きますから、個室になっていまして、個室の中で家族団らんをしているんですよ。ですから、一概に何という親だろうなんていうことで切り捨ててしまわないで、この保護者たちも、何とか子供たちとの時間を作りたい。自分たちも飲みたいから、居酒屋に行って、個室に入って、一緒に楽しくやろうという、そんな感じになってきているんですよ。部屋の中も、ちゃんと子供が座って楽しめるようなところがありますし、本も置いてあるんですね。そういう時代になってきているということが一つあります。
それから、保護者について。保護者について、非常に学校教育に協力的になってきています。土曜日も子供たちの面倒を見てくれる保護者の方、それから、地域の方がどんどん増えてきています。教育に対する関心が非常に高まってきています。これは一つには学力調査の結果を結構公表していますから、そういったところから、うちの子供もうかうかしていると大変になるな。うちの市も全体的にも厳しい状況になるんだったら、私たちの力をどんどん学校のために提供できますよという、そういう保護者がどんどん増えてきています。これはありがたいなというふうに思っているところであります。
今度は体育の方に話を移しますけれども、体育については、私も体育をずっとやってきたものですから、いろいろと気になるところもあるんですけれども、体育の授業をやるにはいい食材を探し求めて、調理の仕方をしっかり身に付けなきゃいけないですよね。子供たちも、先ほど言ったように、随分変わってきていますから、調理の仕方をそれなりに変えていかないと、おいしいなと思って食べてくれないんだと思います。大事なところは残しつつも、今の子供に合った授業展開、指導法の工夫をしていく必要があるなというふうに思います。
きのう、おやじの会と一緒にソフトバレーボールをやってきたので、きょうは疲れてて発言する気もないんですけれども、終わった後、おやじたちが、ああ、楽しかった、またやろうよと言うんですよ。ソフトバレーボールを。あの「またやろうよ」という気持ちにさせるような授業を学校も先生方も工夫していく必要があるなというふうに思います。ただ、学校は忙しいです。間違いなく。新聞でもいろいろ取り上げていましたけれども、非常に忙しいです。小学校は体育だけやっているわけではありませんから、体育だけやっていないけれども、全科持っていますから、いろいろなところから情報も来るんですよ。だから、見よう見まねで何とかやってくださっているので、かなりいい授業を展開しているんだろうと思うんですけれども、そういうような状況にありますから、全て学校に押し付けてしまうのも、非常に厳しいなというふうに思います。たくさんやっています。
この間、中学校に行ったら、給食の時間、「いただきます」と言ってから食べ終わるまでに10分あるかなかったか、そのぐらいでしたものね。ですから、いろいな環境も変わってきているということをしっかりこちらで受け止めながら、体育の授業、保健の授業をどうやって進めていくかということを考えていかなければならないなというふうに思っています。外で飛んでいる言葉が、今は現実はそうじゃないんだということも認識していきたいと思います。
ちょっと長くなりました。すみません。
【山口主査】  ありがとうございました。それでは、鈴木委員なんですけれども、南委員、先に御退出ということですので、是非一言言い残して。何か一言御発言いただければと思いますので、先にお願いいたします。
【南委員】  すみません。ちょっと考えがなかなかまとまらないもので、この棒を立てられずにおりましたけれども、幾つか気付いたことなどを申し上げたいと思います。
私は今回初めて中央教育審議会関係の会議に出させていただくのですが、なぜここに、ということを申し上げるに当たって、私自身のことを申し上げた方が早いかと思います。私は、実はもともと精神科医療をやっておりました。短い期間ですが、精神科臨床をやりましてから読売新聞に転職いたしまして、以来記者として仕事をしてまいりました。読売新聞での仕事の方がはるかに長く、30年になりました。直近の15年ぐらいは主に厚生労働行政とか、医学教育のこととか、医学、医療、保健に関わるようなことを報道解説しております。
それで、先ほどの五十嵐先生のお立場とちょっと似ているのですが、私は、率直にこの国の国民の保健や医療の知識、つまり健康にかかわる教育に問題を感じてきました。体の仕組みと病気の起こり方といったことに対する知識が、少なくとも学校教育においては非常に乏しいということを実体験として感じております。それを埋めるために、報道や、健康に関わる様々な情報が社会に流れるという現実がある。ただ、世の中に流れる情報は全て客観的に正しいといえるのかどうかというと、商業主義に基づくようなとても客観的にはどうかと思うような健康の情報も極めてたくさん出ている。さらに近年情報が極めて多様化、かつ大量化しまして、現在のネットで流されるような情報まで含めると、国民が直接それらに触れるときにどういうことが起こるかということです。客観的に見たらどうして、というような偏った治療法に向かって行ってしまうというようなことも起こっている。それは現代の医療の在り方の問題とも裏表だとは思いますけれども、そのことをつくづく感じております。
そういう中で、この前、「がん教育の在り方に関する検討会」に出させていただいたときに、がん教育という前に健康教育、保健教育と呼べるものをきちんとした方がよくはないかということをたび重ねて申し上げたところ、今回こういう会議に入れられたと思うのです。ただ、私はたしかに30年来、ずっとそう思ってはきているんですけれども、一方で学校教育において、健康や医療のことをその専門家が教えればいいのかというと、全然そうではない。学校という場は、何を教えるかだけではなくて、誰がどのように教えるかということが極めて重要であるということを折に触れつくづく感じてきました。一つは学校に学校カウンセラーというものが導入されたときですね。私は精神科をやっていましたので、心のケアということが強調されて、「心のケアの専門家」を学校に配置しないといけない、となった時、いじめのことが主なテーマだったと思いますが、その議論の中で、こどもには専門家が教えるのか、教諭が教えるのかという議論があった。それから次に、食育という話が起こったときにも、教諭が栄養のことを勉強して教えればいいじゃないかという議論がある一方、栄養学は高度に進歩発展しているので、栄養の専門家が教えないとだめだという議論がありました。これらの件を通して学校教育では子供の前に誰が立つのかということが極めて重要だということが非常によく分かりました。それぞれ、客観的には望ましいところに落ち着きつつあるとは思いますけれども、こと健康や保健、それから生涯にわたって健康を保持するための体育ということで考えますと、何を、誰が、どのように子供に教えるのかということは、極めて複雑で、難しいテーマだということを実感しております。
ですから、今はまだ感想しか申し上げられないのですが、一つ言えることは、子供は確かに変わってきているとは思うのですが、変わらないこと、守らねばならないこともあるということです。小児科の先生などがよく言われるのですが、発育とか発達の途上にある子供が対象だということは絶対に無視してはいけないことであって、それを無視して合理化して、社会の変化と合わせられるかというと、決してそうではない。そこのところを学校教育の中でどのように折り合いをつけるのかということが大きな問題です。教育の時間がないということをがん教育の会でもさんざん聞いてきましたので、時間がない中で、何を誰がどのように教えるのかというところをよく検討して解につなげていかないといけないと思います。次の10年間、生きる力を涵養するための体育及び保健の教育にするためにはそれが不可欠ではないかと感じる次第です。まとまりがなくて、申し訳ございません。
【山口主査】  どうもありがとうございました。
それでは、鈴木委員、お願いいたします。
【鈴木(美)委員】  埼玉県の幸手市立八代小学校の鈴木でございます。
いろいろな方々の意見を聞いて、私が最後になるんでしょうか。体育と保健が両輪でという話も先ほど出てまいりましたが、昨年までいた学校は、体力課題解決校ということで県の委嘱を受けた学校でした。体育の学習、技能を高めること、体力を高めることはもちろんのこと、健康教育の方にも両輪で進めてきた学校です。そういった学校が体育と保健と健康教育とどこを接点としてきたのかと申しますと、子供の生活習慣といったところでした。先ほど日野委員さんの方から今後求められる今日的な課題という話もございましたが、全国の学力学習状況等調査のアンケート結果の中から子供たちがどのように日常を過ごしているのかというのを洗い出して検討して、それを子供たちの生活習慣を見直すという方向でやってきました。
まずその視点が大事かなと思っていますのと、今新しく学校に新任校長として着任したわけなんですけれども、まず一番最初に、私のところに教員が来まして、実は、昨年なんだけれどもということで、ネットトラブルによる子供の人間関係がよくなくなってしまったので、早々に教育をした方がいいという話がそのとき出ました。それを事前に子供たちの中に教育されていて、子供たちが自分たちの問題として解決できるような、そういった資質・能力が備わっていればこんなことには多分ならないんだろうなと常々思っていまして、教科の中で全ての子供たちが学習する指導内容、教科としての学習にそういったところが小学校にはどこがあるんだろうなと思ったときに、そういう教科で教えるところはないんだな。学校として計画を立てて、子供たちをどう育てるかという中でいろいろな教科の中にちょっと入れながら、領域の中にちょっと入れながら、学校として構造化していかなくてはいけないんだなというのを感じたところです。そうしたときに、保健学習の中に生活習慣を学習する場面とかがございますし、小中高と系統的にそういったことが学習できれば、すごく子供たち──10年前に無料アプリとか、オンラインゲームとかで子供達がこんな遊びをするようになるとは思ってもみなかったこの時代なので、今後のことを考えるとそういった学習というのが例えばゲーム依存とかネット依存にならない健康との関連という中で話し合われていくと、子供たち、今後今日的な課題としていいのかなというのを先ほど何かないかなと思ったところで、考えたところです。
以上です。
【山口主査】  ありがとうございました。本当にネット社会がこれからますます問題といいますか、子供たちと向き合っていかなければいけないという、そこは保健体育だけではない共通の視点なのかなと思いました。
それではお待たせいたしました。菊委員、お願いいたします。
【菊委員】  いや、待っていたわけじゃないんですけど。(笑)すみません。
幾つか論点があるかなと思ったんですけど、一つは、きょう検討事項の案を見させていただいて、これは教育課程ですから、当然教科をまたがった検討の中でおりてくるものですね。片や現実の問題として、小中高、いろいろなところで生活のリアリティーといいますか、子供の実態というものがやっぱりあると考えます。そこをつないでいくのが指導要領であろうと思います。
そうしたときに、一つ考えられるのは、先ほどの御説明の中にもあったのですが、カリキュラムを社会に開かれたものにしていくことが大切になってくる。具体的には恐らく地域の課題であるとか、実際の現実の問題に開かれたカリキュラム、つながっていくカリキュラムにするのだといったときに、トップダウンというのは変ですけれども、教科を超えた教育全体のテーマの設定の仕方とそういう地域が求めている問題というのは必ずしも一致しないわけですね。それを最大公約数という形で示すというのが多分指導要領だろうと思うのですが、そうしたときに片や体育の問題で言うと、どうも現行の指導要領というのが、よく言えば指導内容を明確化しているんだけれども、それは果たして現場のニーズに合っているのかという問題があると思います。つまり、それは果たして現場にとって適正なものなのかどうかということですね。量的には明確化が必要ですから、どんどん区切って要素として示すんだけれども、それが本当に質的に具体的に言うと、先生たちをやる気にさせるとか、もっと自分たちで工夫してみたいとか、もっと自分たちでカリキュラムをベースにして授業を作っていきたいんだというような、そういう起爆剤になっているのかどうかということですね。そこら辺のところはしっかり内容を精査していく必要があると思っています。最初友添委員がおっしゃったような、今の現行指導要領についての問題点といいますか、課題というようなものをそのように押さえていく必要があるのではないかと考えます。
それから二つ目に、やはり子供たちというのは、今の大人もそうですけど、電車に乗っていると、スマホを開いて何をやっているのかというと、ゲームをやっているんですね、みんな。ほとんどゲームをやっていますね。やっぱり楽しいことというのは、みんなを引き寄せていくわけで、恐らくそこから出発して、どういうふうにそれを望ましいものにしていくのかというのが教育の在り方なんだろうと思います。それは逆さまにしてはいけない思うんですね。
そういう意味で言うと、きょう御提示になった育成すべき資質・能力、三つの柱というのは、先ほどの図を見させていただきましたけれども、確かに構造は示している。仕組みは分かった。問題は、それらをどう機能させるのかということだと思うんです。機能の仕方が今の現実のリアリティーに合っているのかどうか。構造は示せるんだけれども、要素は示せるんだけれども、それをどういうふうに機能化させていくのか、働かせていくのかというところ。その辺のところが順番が逆になってしまうと、またせっかくいいものが提示されていても、現場にはなかなかつながっていかないということが起きるんじゃないかなという気がいたします。
あと幾つかあるんですけれども、全体として私自身が思うのは、生涯スポーツ、スポーツライフということを考えたときに、学校期におけるスポーツ経験、あるいは健康に関する知識の経験というのがベースになっていくわけですね。そうしたときに、どうしてもスポーツなんかで言いますと、この時期にすべてを完成させてしまおうという目標を立ててしまう。つまり、青少年期モデルという形で、その内容を完全に完成させてしまうということをどうも教育者というのはやりたがるように思います。例えば、ここまでだよ、達成したね、よかったねといって、それで逆上がりができてよかったねと指導者は満足するのだけれど、それに反して、子供は「もう逆上がりをやらなくてもいいんだよね」ということをぼそっとつぶやく。そういうことじゃなくて、何というんでしょうかね。もうちょっと余地を残すといいますか、日本人というのは俳句の世界でもそうですけど、言葉を少なくして余韻を残すといいますかね。その余地の中に何か工夫したり、もう一回やってみたいとか、いろいろなモチベシーョンというのが起きるわけで、この関連性をもうちょっとライフテージ全体として健康の問題だとか、スポーツの問題を体育がどう引き受けていくのかというところで考えられないのかなというふうに思いました。
それからもう一つ、最後にすみません。オリ・パラの問題ですけど、日本人というのはイベントが大好きで、とにかくイベントに向かって一致結束、頑張るんですね。問題はその後なんですね。花火を上げた後にしゅるしゅるしゅるっと花火がただ落ちていくのを見ているだけというような、そういうことではまずいわけで、日々日常的にやられている教育の営みに対して、イベントというのは一つの核であることは確かなんだけれども、ポストイベントといいますか、その後の見通しというものをちゃんと考えた指導要領の作成をめざす必要がある、何がイベント後に起きるのか。特に日本人は先ほど言いましたように、すうっと引いていきますので、そこを引かないようにさせていくような、そういう内容やレガシーというものを我々体育の方で、あるいは保健の方でどう考えていくのか、保健体育全体でどう考えているのかということを是非考えてみたいなというふうに思います。
以上です。
【山口主査】  ありがとうございました。全ての委員ということで言うと、門田委員、一言最後に御発言いただければと思います。
【門田委員】  失礼いたします。愛媛県教育委員会保健体育課の門田佳代と申します。皆さんのお話を聞きながら情報が多過ぎて処理し切れない状況なんですけれども、話を聞きながら、今の業務にちょっと関わりがある2点についてお話をしたいと思います。
一つは、中村先生も言われましたように、幼稚園から小学校への継続ということで、今4・4・4でカリキュラムが、高校までの12年間、区切られていますけれども、正直言うと、小学校の1、2年って○○遊びで区切られているものですから、そこは幼稚園とつながった方がいいなとか、あと小学校も1、2、3、4と5、6で分かれているんだけれども、器械運動などは3年生からとか、区切りによって差もあったりするので、難しいなというのを日頃から感じていつつ、一番の課題は幼稚園から小学校という4年なのか、6年なのか、5年なのか分かりませんが、その辺の区切りの仕方とか学ぶべきことというのがもう少し明確になってくると、先生方ももっとすっきりと、評価という言い方はおかしいんですけど、見通しのある指導ができるかなというのを感じております。
もう一つは先生方の資質の問題ということで、体育もですし、健康教育の面もなんですが、1人の先生は本当に頑張ってやっていらっしゃって、一生懸命教材研究もされているんだけれども、単独で終わってしまって、学校全体に広がってこないとかいう話もよく聞きます。そんな中で、特に小学校は学級担任制なので、学級王国といいますか、ひとり孤軍奮闘するような状況も生じてしまうんですが、そんな中で学校全体を体育・保健体育、健康教育も含めてコーディネートできる方がいるのはいいんじゃないかなというのをつくづく感じておりまして、小学校体育指導コーディネーターとかいう名前がちらっと出たこともあったり、体育専科教員というような名前が出てくることもあろうかと思うんですが、そういうふうなコーディネートする存在があれば、もっと隣同士のクラス、それから学年全体、高学年の前後の学年のつながり、そういったこともすっきりと分かってきて、子供たちも明確に目標を持って学習できるのかなというようなことを感じたりしています。
以上です。
【山口主査】  ありがとうございました。委員の先生方には本当に多岐にわたって様々な御意見を頂戴いたしましたけれども、この会議、第1回目で頂いた御意見の中には、恐らく2回目以降のワーキングで話すべき、議論すべき重要な論点が多く含まれていたと思います。こういったことをたたき台にしながら、2回目以降も議論を進めてまいりたいというふうに思います。
それでは、時間も参りましたので、第1回ワーキンググループはここまでといたしたいと思います。
最後に第2回ワーキンググループの日程などについて、事務局より説明をお願いいたします。
【高崎学校体育室長補佐】  すみません。第2回目のワーキンググループにつきましては、本日午後13時から、既に御案内でございますけれども、させていただきます。その次、第3回につきましては12月10日の午後を予定しております。正式な日程等々は、また改めて御連絡させていただきたいと思います。
本日第1回で、第2回の方を御欠席される委員の方もいらっしゃいますが、資料等、多種にわたっておりますので、机上に置いていかれれば、こちらの方で後日郵送させていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
以上でございます。
【山口主査】  ありがとうございました。
本日、限られた時間内での討議でしたので、さらに御意見、あるいはお気付きの点等がございましたら、午後から、申し訳ございません。午後からの第2回ワーキンググループ若しくは後日、第3回というふうに続いてまいりますので、その中でまた御意見を頂戴できればと思います。
それでは、第1回体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループを終了させていただきます。ありがとうございました。

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