教育課程部会 社会・地理歴史・公民ワーキンググループ(第11回) 議事録

1.日時

平成28年4月27日(水曜日)10時00分~13時00分

2.場所

文部科学省 3階 3F1特別会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 社会・地理歴史・公民の改善充実について
  2. その他

4.議事録

【館委員】  定刻になりましたので,ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会社会・地理歴史・公民ワーキンググループの第11回を開催いたします。
本日は,お忙しい中,御参集いただき誠にありがとうございます。
まず,会議に先立ちまして,14日より続きます熊本県を中心とした九州地方での一連の地震によって尊い命を落とされた方々の御冥福をお祈り申し上げますと共に,被災地の皆様に心からお見舞い申し上げます。
現在,我が国では,被災地において昼夜を分かたず救命・救助活動を行っておられる関係機関の方々をはじめとしまして,国を挙げて多くの人々がそれぞれの持ち場で支援に当たっておられます。被災者の方々の一刻も早い救援を心からお祈り申し上げます。
本日は,主に小・中・高等学校を通じて育成すべき資質・能力等について御議論いただく予定としておりますので,その関係の委員の皆様を中心にお集まりいただいております。また,進行は前回と同様に私が務めてまいりますので,よろしくお願いいたします。
それでは,最初に配付資料の確認をお願いいたします。

【大内学校教育官】  おはようございます。どうぞよろしくお願いします。
配付資料の確認をさせていただきます。議事次第に記載しておりますとおり,配付資料1から資料18まで,参考資料につきまして資料1から資料8まで御用意させていただいております。また,関連するデータにつきましてはタブレット端末の方に格納してございまして, 3枚目以降に次第がございますので御参照いただければと思います。
資料等について,不足等がございましたら事務局の方へお申し付けください。

【館委員】  それでは,よろしいでしょうか。これより議事に入りたいと思います。
本日は報道関係者より会議の撮影及び録音の申出があり,これを許可しておりますので御承知おきください。
それから,本日は12時前に少し休憩の時間を取りたいと思っております。3時間の長丁場ということですのでよろしくお願いします。
さて,本日は,小・中・高等学校を通じて社会,地理歴史,公民で育成すべき資質・能力等について,これまでの御意見を踏まえ,本ワーキンググループとしての取りまとめなどについて意見交換を行いたいと考えております。記事の流れとしましては,事務局から資料に基づき説明を頂いた後,議論の内容ごとに御意見を伺いたいと思います。
これに先立ちまして,教育課程部会の下に置かれた小学校部会における議論について,事務局から御紹介いただきます。小学校部会においては,授業時数増を踏まえた今後の時間割設定の在り方に関して議論がなされておりますが,本ワーキンググループにおける審議を深めるため,これらの状況について事務局から説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【大杉教育課程企画室長】  失礼いたします。それでは資料3と参考資料8がございますので,併せて御参考までに御紹介をさせていただきます。
まず,資料3からでございます。「小学校部会におけるこれまでの議論の取りまとめ(案)」ということです。小学校部会,今回,小学校における言語能力の育成,それに伴う国語教育の充実,外国語教育の充実,それに伴う時間時数増ということが見込まれるということを踏まえて,少し先立って様々な議論を行っていただいたところでございます。各教科等にも関連するということで一定の取りまとめを先んじて行っていただいております。その資料がこの資料3になってまいります。
おめくりいただきますと,1ページ,これまでの議論の状況,取りまとめの位置付け,論点整理において,時数に関する事項を先んじて取りまとめるようにという宿題を頂いていたことを踏まえまして,この中間的な取りまとめを頂いております。
2ページ目以降,「社会に開かれた教育課程」の実現に向けた小学校教育ということで,特に3ページ目,小学校6年間という期間は子供たちにとって大きな幅のある期間であるということから,低学年,中学年,高学年,それぞれにおける発達の段階に応じた課題,そして,それに対応した教育課程の改善の方向性が必要ではないかということでございます。
そして,4ページ目が「カリキュラム・マネジメント」,そして5ページ目以降が「言語能力の育成と国語教育,外国語教育の改善・充実」ということでございます。言語能力特別チームにおいて取りまとめていただきました言語能力の考え方,そして,6ページ目にございますような資質・能力の育成の基盤となるという言語能力の位置付け,そして,その基盤を形成する7ページ目,国語教育の小・中・高を通じた充実ということ。そして,9ページ目,多様なコミュニケーションも可能とするための外国語教育の充実ということでございます。特に小学校教育につきましては,11ページ目でございます。小学校段階,子供たちの学習に対する知的欲求が高まっている段階であり,聞く,話すに加えて読む,書くということもやっておきたかったという子供たちの声も様々な調査から浮かび上がっているということ。また,国が掲げた高校卒業時の生徒の英語力,高校卒業時点で英検準2級から2級程度を50%以上という目標の実現ということも踏まえまして,小学校における外国語教育の充実を考えていく必要があるのではないか。
具体的には,11ページ目の下の方の少し小さな字ですけれども,なじみのある表現を使いながら,身近なことについて質問したり答えたりするということの姿を描きながら,高学年において,聞くこと,話すこと,読むこと,書くことの4技能を扱う教科的な学習,そして,それに伴い,中学年から体験的な活動ということで導入すべきではないかということ。
そして,12ページ目にございますように,その充実ということを考えますと,これは具体的にこの時数内でどんな指導を行うのかという積み上げも作っていただいておりますけれども,それぞれ,中学年,高学年で年間35時間の時数の増が必要になってくるということでございます。これに伴い,短時間学習も含めた柔軟なカリキュラム設定を考えていく必要があるということ。
13ページ目にございますように,小学校における弾力的な時間割編成の現状ということでございます。14ページ目に調査の抜粋がございますけれども,小学校においては,授業時間の弾力化,あるいは,土曜日の活用なども含めて,様々な創意工夫が行われており,多様な実態があるということ。
14ページ目にございますように,他教科の指導内容や授業時数の削減という選択肢をとることは困難でありまして,この年間35時間増ということをどのように実現していくかということ。
その中では,15ページ目にございますように,多様な選択肢,短時間,あるいは長時間,長期休業期間中の学習活動,土曜日の活用や週当たりコマ数の増など,こうしたことを子供たちや地域の実態に合わせながら学校で実現できるようにしていく必要があるのではないかということでございます。
いずれにしましても,学校現場にとっては大きな負担の増になるということですので,こうしたカリキュラム・マネジメントの具体的なイメージでありますとか,教材開発,指導者の確保ということについて国,教育委員会,学校現場が連携してしっかりと当たっていく必要があるということでございます。
こうした形になりますと,外国語教育のみならず,全ての教科を見通したカリキュラム・マネジメントということが必要になってくるということでございます。
そういたしますと,例えば,社会科においても短時間学習ができるのか,あるいは,長時間学習として効果的な部分があるのか,こうしたことは外国語のみならず議論が出てくる可能性があるということでございます。これに関しましては,小学校関係者に別途,専門的にお集まりいただきまして,2020年に向けて具体的なこの17カリキュラム・マネジメントの姿が描けるようにしっかりと調査・研究・普及をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
続きまして,参考資料の8でございます。「小学校段階における論理的思考力や創造性,問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議の設置について」ということでございます。様々な人工知能の進化ということを踏まえまして,私たちがしっかりとコンピューターを使いながら様々な創造的な活動をしていかれる,人間ならではの様々な能力を発揮していかれるということを目指していかなければいけないということで,その中で,現在,プログラミング教育ということに光が当たっているところでございます。
参考資料8の2ページ目の下を御覧いただきますと,現在,様々な民間とも連携しながら小学校でのプログラミング教育というのが実質的な形で進められつつあるところでございます。このプログラミング教育には,論理的思考力など様々な資質・能力を育むという側面と,プログラミング言語に触れるという両側面があるわけでございますけれども,果たして小学校段階でどこまでを求めるのか。また,社会教育として実施されているものを公教育としてそのまま導入していいのかどうか。時代が変化して,プログラミング言語が変化しても生かせる能力を身に付けるためにはどのようなことが求められるのか。また,日本のカリキュラムに合った教材ということが新たに開発できないかというようなことでございます。
こうした中で,日本の小学校教育の強みを生かしながら,教科の様々な学びの中でプログラミング教育の必然性がある形で取り入れていくためにはどうしたらいいのか。例えば,理科における様々なシミュレーションの中でプログラミングが活用できるのかどうか。あるいは,音楽,図画工作などの創造的な活動の中で無理のない形で生かせるのかどうか,こうしたことを,この資料の一番最後にあるようなメンバーで,学校現場,プログラミング関係者,情報技術関係者共に集まって,教科の本質的な学びとプログラミング教育ということをしっかりかみ合わせるための議論を行う予定でございます。
社会科に関して直接に授業の中にということは恐らく余り考えられないとは思うのですけれども,一方で社会の中で情報化が進む中でプログラミングがどのように生かされているのかということを,こうした具体的なプログラミング学習と同時並行で学んでいくことは大変重要になってくるというふうにも考えられますので,そうした形で少しこの議論を見守っていただければというふうに思っております。
いずれにいたしましても,この有識者会議,6月中には一定の報告をまとめ中教審に櫓を引き継ぐ予定でいるところでございます。
以上です。

【館委員】  ただいまの説明につきまして,御質問等おありでしょうか。
では,次に移りたいと思います。事務局から本ワーキンググループにおける地理歴史及び公民について,これまでの検討状況について御説明いただきます。よろしくお願いします。

【梶山主任視学官】  それでは私の方から,資料2を御覧ください。資料2の62ページ以降を御覧いただければと思います。前回,小・中・高の資質・能力の御検討を皆様方にいただいた後に,まず,高校の歴史に関する御議論が行われました。資料62に,その「歴史総合(仮称)」の方向性ということで新たな資料を御検討いただいておりますので,まずそれを御紹介したいと思っております。
「歴史総合(仮称)」につきましては,現代的な諸課題の背景にある歴史をグローバル化につながる近代の歴史の転換に着目して追究するということで,近代化,大衆化,グローバル化,ここに着目するということを大前提としたわけでございます。御議論の間で,現代的な諸課題につながる歴史的な状況,これに着目してやることによって,より学習が深まっていくのではないかということ。そのため,このaからeにあるような状況というものを使って深めると共に,学習内容の焦点化を行うことができるのではないか,このようなところが御議論いただいているところでございます。
また,一番左のところで,近代化,大衆化,グローバル化というところに関して,歴史に重要な時系列といいますか,時代の流れというものがあるというところでございます。時代の流れというところに関して,例えば,近代化であれば18世紀の後半から現在につながるというようなところ,こういうことをより明確にしたほうが全体の構成として分かりやすいのではないかというような御議論も踏まえて,このような構成というものにつきまして御議論を頂いているところでございます。
また,次に,その新必履修科目である「歴史総合(仮称)」を受けまして,新選択科目をどうするかという議論でございます。この資料10は,大まかなものに関しては皆様方に御紹介したところでございますが,その次のページを御覧いただければと思います。具体的に,それぞれの改訂の方向性として考える構成として,世界史,日本史に関わる「探究科目」として前近代,近代,近現代においてどのようなことをやるかというところ。例えば,世界史でありましたら,多様性,複合性,相互依存性,多元性,こういうところに着目してやっていくということ。それから,「日本史に関わる探究科目」につきましては,様々な諸資料を活用すると共に,それぞれの時代について,「歴史総合(仮称)」で学んだことを生かして追究・探究を深めるということ,このようなものについて御議論いただいているところでございます。
それから,次のページを御覧いただければと思います。これについては,後ほど具体的に御覧いただきますけれども,「社会的な見方や考え方と思考力,判断力,表現力等」のイメージでございます。前回の時点で地理歴史科の見方や考え方というものに関して入ってはいなかったわけですが,地理歴史科における見方や考え方というものについても御議論いただいたところでございます。
併せまして,社会的な見方や考え方の例というところで,考えられる追究の視点の例でありましたり,その構想に向かう問いの例,思考力,判断力,それから,構想した結果,獲得した知識や概念の例,このようなものに関しても,具体的に学校現場で分かりやすく,それから,今回の学習指導要領の意図が分かるような例を持っていくことを考えられるのではないかというところでございますが,この内容についても御議論いただいているところでございます。
それから,次のページを御覧いただきたいと思います。これも後ほどまた御覧いただければと思いますが,育成すべき資質・能力の部分に関して,いわゆる学力の三本柱というものに着目したものがどういうものかということに関して,この71ページにあります地歴科の高等学校の部分に関して御議論を頂いたところでございます。
それから,最後に,資料15でございますが,資料15のイメージ図,全体の目標にもつながる部分でございますが,これについても御検討いただいております。ただ,これについては,後ほど御紹介いたしますが,少しこれの修正をしたほうがいいのではないかというところから,別途,後に資料が出ておりますので,それを御覧いただきたいと思います。
それから,その次に,74ページ以降でございますが,高校における公民科の検討も行われたところでございます。高校における公民科につきましては,75ページ以降の資料で御検討を頂いていたところでございまして,これについては御紹介させていただいていたところでございます。
こちらの1ページにつきましては,用語というものをより正確に使っていくという観点から,ある程度,修正をしたところでございますし,76ページを御覧いただきたいと思います。76ページにつきましては,(2)というところに関して,「政治的主体となる私たち」というところがちょっと薄いという状況がありましたので,その例などを追加すると共に,77ページの「持続可能な社会づくりの主体となるために」というところに関しても例というものを追加する,このような修正を行ってはどうかというところ。
それをまとめて,戻っていただいて恐縮でございますが,74ページのような,1枚で表現するとどういうふうになるかというようなものに関しても御覧いただいているところでございます。
このような結果を踏まえて,公民における御検討におきましては,78ページを御覧いただければと思います。今回のこの会議における検討においても,小・中・高の資質・能力の御検討において同じような形でおまとめいただきたいというふうに思っているのですが,このような資料というだけではなくて,文章の形でそれをまとめていくということが今後求められているというふうに考えております。
その文章に関して御覧いただいているところでございまして,まず,78ページを御紹介いたしますと,1番上のマルが科目構成というものの在り方,「公共(仮称)」と選択科目の二つを置く,「現代社会」については置かないことが考えられるのではないかということ。それから,「公共(仮称)」でどういうことをやるかということ,これはその論点整理を踏まえて今まで御検討いただいていた内容をそのまま書いているところでございます。そのため,項目を三つの大項目で構成するということで第1の扉,「『公共の扉』では」というところは,先ほど御紹介した資料というものを基本的にそのまま写しているような形が二つのマルで続きまして,その次のページの第2の「自立した主体として社会に参加し,他者と協働するために」というところ,こちらにつきましても先ほどの図を引き写していくということ。それから,第3の「持続可能な社会づくりの主体となるために」ということ,こちらにつきましてもそれを写していくという形。それか,一番下にあります「『公共(仮称)』の指導に当たって」というところでございますが,様々なところを考えていただく際に,「多面的・多角的な議論が深まるような様々な見解を提示するというようなこと」,これはプロセスの方に書かせていただいたところでございますが,そういうところを入れているところでございます。また,最後に,キャリア教育の点もこちらの方で触れさせていただいているところでございます。
次の81ページを御覧いただければと思います。ちょっと前後になって恐縮でございますが,こちらが必履修科目の「公共(仮称)」と併せて,新選択科目である二つの科目についての関係図でございます。これについても,基本的には前回御紹介したものと大きく変わるものではございませんが,82ページ,83ページを御覧いただければと思います。この内容につきまして,様々な御意見を踏まえて,内容を修正したり,例を書き換えたということがございます。
これを踏まえまして,84ページを御覧いただければと思います。84ページに関しましては,新選択科目の構成ということで,先ほどの再掲になりますけれども,「公共(仮称)」と共に,「倫理(仮称)」,「政治・経済(仮称)」の設置という話を,一番上に再掲した上で,「倫理(仮称)」というものの性格として,必履修科目で習得した個人が判断するための手掛かりとなる考え方を基盤とし,古今東西の幅広い知的蓄積を通してより深く思索するための概念や理念を理解し,それらを活用して現在の倫理的課題を探究すると共に,人間としての在り方生き方についてより深く自覚し,人格の完成に向けて自己の生き方の確立を図る主体を育む倫理について発展させる。そのために,思想史の断片的な知識の暗記中心から,倫理的価値の理解を基にした考える倫理に展開することを考えるという倫理に関してのこと。
それから,次のところでございますが,「政治・経済(仮称)」におきまして,同じく「公共(仮称)」で身に付けた人間と社会の在り方を捉える見方や考え方を基盤に,選択判断の基準となる概念を活用し,現代日本の政治や経済の諸課題や国際社会における日本の役割など,正解が一つに定まらない現実社会の諸課題を協働して探究し,国家及び社会の形成に,より積極的に役割を果たす主体を育む「政治・経済(仮称)」に発展させる,このようなところを,このような形でまとめて御議論いただいているところでございます。
それから,85ページについては,基本的にこちらのところで御議論いただいているところでございます。こちらにつきましてもちょっと修正がございますが,それは後ほど御紹介させていただければと思います。
また,12につきましても,先ほどの高校のところをまた御意見を踏まえまして修正をさせていただいたものということで,このようなものを御議論いただくと共に,次の社会的な見方や考え方,追究の視点や方法につきましても,内容というものに関して,より修正を加えているところでございます。
それから,次のたたき台のところ,90ページでございますが,「社会,地理歴史,公民で育成すべき資質・能力の整理」ということ,こちらにつきましても,92ページの高等学校公民科の部分,こちらを中心に御覧いただいているところでございます。
また,93ページにつきましては本日御議論いただくことになりますので,これもまた御紹介は省略させていただきまして,94,95ページ,これもいずれも同様でございます。
最後に,そういうところで,95ページを御覧いただければと思いますが,公民科というところで資質・能力を一たんこのように整理できるのではないかというところが,96ページのものでございます。高等学校ということの公民科において,小・中・高を通じて育成すべき資質・能力を整理すると共に,現行の指導要領における教科目標の趣旨を勘案しつつ,広い視野に立ってグローバル化する国際社会の主体的に生きる,平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力を養うために,社会的見方や考え方を養い,三つの柱に沿って資質・能力を育成する,これは前回こちらで御議論いただいたところでございます。
これは,現在の公民科の目標に示されているこれこれということの趣旨を一層明確化すると共に,人,商品,資本,情報,技術などが国境を超えて自由に移動したり,企業など,国家以外の様々な集合体の役割が増大したりして,グローバル化が一層進むことが予想されるこれからの社会において,法律の規定を踏まえて,国家それから社会の形成者として必要な資質・能力を育むことの大切さの意識を持つことを期待してこのような表現とすることが考えられる。これは,このようなところで,より詳しく説明をここに加えさせていただいているところでございます。
その上で,育むべき資質・能力の第1,第2,第3というもので,先ほど空いていましたところを基本的に引き写すということ,このようなところを素案という形で御整理いただくことを御議論いただいております。
また,97ページを御覧いただければと思います。こちらも,今ワーキンググループにおきまして,専門家と連携でありましたり,様々な支援というもの,こちらにつきましては御議論いただきたいと考えておりまして,そちらに関しての資料ということで,今までの御意見をこのような形でまとめております。これも含めて,本日御議論いただければと思っております。
私の方からは以上でございます。

【館委員】  ありがとうございました。本ワーキンググループにおける検討状況につきましては,引き続き共有してまいります。
それでは,本日御議論いただく内容に移りたいと思います。
初めに,小・中・高等学校を通じて育成すべき資質・能力や見方・考え方,目標に関わる事項について意見交換を行いたいと思います。
今ほど事務局より高等学校公民について説明がありましたが,小・中・高等学校を通じて育成すべき資質・能力等に関わるこれまでの議論を取りまとめとして整理していただいておりますので,事務局から,この資料及び関連するこれまでの資料について変更点を中心に説明をお願いいたします。よろしくお願いします。

【大内学校教育官】  それでは,まず,お手元に資料5を御用意いただけますでしょうか。資料5は,「次期学習指導要領改訂へ向けた検討の進捗状況について」ということで,去る4月15日に開催されました教育課程部会教育課程企画特別部会の資料として出されているものでございます。左側に論点整理における指摘事項というのが示されておりまして,右側 に「現在の検討の進捗状況」というのがございまして,その下に「以下の項目について学校段階等別部会・各教科等別ワーキンググループ等で検討中」という記載がございます。本日御議論いただきますのは,この枠組みで示されております1から6の部分について,これまで本ワーキンググループにおきまして,各種の資料を基にしまして資質・能力について御議論いただいておりましたので,それを文章化して取りまとめたものを中心に御意見を頂戴するという形でございます。
特に,本日この後御説明させていただきますのは,1番「成果と課題」,3番「目標と評価の在り方について」,このうち,今ほど館取りまとめ役の方から御説明がありましたけれども,3の(1)(2),すなわち,見方・考え方の部分と,育成すべき資質・能力の整理と目標の在り方,ここまでについてまず御議論をちょうだいしたいということでございます。
次に資料6を御用意いただければと思います。資料6につきましては,今申し上げました目次,見出しに沿いまして整理をし,文章化したものでございます。まず,1番のところですけれども,本ワーキンググループの取りまとめといたしまして,現行学習指導要領の成果と課題というところが1ページ目にございます。これは昨年8月に論点整理の形で取りまとめられた際に,現行学習指導要領の社会科,地歴科,公民科における成果と課題というものを基に整理しております。また,関連するデータを,本日も机上に御用意しておりますけれども,こちらの論点整理という緑色の冊子の後ろの方にファクトになるデータが掲載されております。これらを基にして,1ページ目の1で示しております四つのマルで整理をさせていただいているということでございます。
具体的には,一つ目のマルのところで,社会科,地歴科,公民科において現在,多面的・多角的に考察し公正に判断する能力・態度や見方・考え方を成長させることに重点を置いて現行指導要領というのは改訂されて,その充実が図られてきている。一方で,主体的に社会の形成に参画しようとする態度等の育成でありますとか,資料から読み取った情報を基に社会的事象について考察し表現すること,これは,その充実が必要なのではないかという各種の調査データがございます。
また,3点目として,特に高等学校段階については,国際的に見て,自分の参加によって社会をよりよく変えられると考える若者の割合が低いことでありますとか,先哲の考え方を習得し,それを手掛かりとして自己の生き方や考え方を錬磨するようなことに課題があることとか,近現代に関する学習の定着状況が低いというような各種の調査結果がございますので,こういった指摘を受けまして,四つ目のマルですけれども,これからの時代に求められる資質・能力を視野に入れれば,国家社会の形成者として必要な知識や思考力等を基盤とした選択判断を行い,課題を解決していくための必要な力,あるいは,自国の動向とグローバルな動向を横断的,総合的に捉えて,現代的な諸課題を歴史的に考察する力,持続可能な社会づくりの観点から,地球規模の諸課題や地域課題を解決していく力というような力を,ここは高校生のことですが,全ての高校生に共通に育んでいくことが求められるのではないかというような形で現状と課題を整理させていただいております。
また,2のところですけれども,「育成すべき資質・能力を踏まえた教科等目標と評価の在り方について」というところで,まず,一つ目は,(1)で教科等の特質に応じ育まれる見方や考え方ということでございます。こちらにつきましては,本日の配付資料の7と8が見方・考え方に関連する資料でございます。この7と8につきまして,前回の資料からの主な変更点だけ簡単に御紹介させていただきますと,前回の配付資料につきましては,資料2の,4月6日なのですが,第8回の資料で,こちらが48ページから,資料2につきまして,前回の本ワーキンググループで御意見を頂戴しました際に配付をさせていただいた資料が順次,掲載されてございます。
まず,本日配付をしております資料7,こちらが,見方や考え方と思考力,判断力,表現力を1枚にまとめてイメージ化して資料でございまして,前回資料の資料2で申し上げると48ページが該当いたします。大きな変更点といたしましては,前回のこの小・中・高を通じた資質・能力のワーキンググループを開催した後に,地歴関係,それから公民関係につきまして先ほど御紹介させていただいたとおり,ワーキンググループを開催しております。その中で,公民科に関わる御意見といたしまして,本日の資料7のところで中央に,社会的な見方や考え方が例としてそれぞれの科目について記載があるわけですけれども,「人間と社会の在り方を捉える見方や考え方」,ここの表題自体は変わらないのですが,この見方・考え方の定義の仕方といたしまして,「人間と社会の在り方を捉える概念的な枠組みに着目して課題を見出す」と。従前は,「人間と社会の在り方を捉える諸概念に着目して社会的事象を見出し」という形だったのですが,まず,概念的枠組みを押さえるというのが公民科の学習スタイルとしてこれまで行ってきていたところでしたので,それを踏襲するような形で「概念的な枠組みに着目し課題を見出す」という形での見方・考え方の整理を行っております。
また,これに併せまして,その下のところでございますけれども,それらの課題の解決に向けて選択判断の基準となる考え方などを関連づけて見る見方や考え方ということで,従前でありますと,「それらの事象を選択判断の基準となる考え方と関連づけて」ということで,今回,公民科におきましては,「概念的な枠組みに着目し,課題を見出し,その課題の解決に向けて」という形での見方・考え方を働かせるという形での修正を図っております。
また,地歴科におきましては,前回はまだ示し切れていなかったのですけれども,今回は公民科の横に併置するような形で,左側に地理的な見方や考え方,右側に歴史的な見方や考え方を示させていただいております。この際,少し細かいことになってしまうのですが,「社会的事象等の地理的な見方や考え方」,あるいは,「社会的事象等の歴史的な見方や考え方」ということで,「等」という言葉を補う形での修正を図っております。これは,中学校地理的分野,あるいは歴史的分野につきましては,社会的事象の地理的,あるいは歴史的な見方や考え方ということでむき出しで使っていたのですが,この「等」に込めた意味というのは,見方・考え方は,高等学校段階になりますと,必ずしも社会的事象のみを対象としていないのではないか。例えば,公民科におきまして,人間としての在り方,生き方,倫理において,人間としての在り方,生き方を対象にするケースもありますし,また,社会における課題というものを対象としていくようなケースもございますので,そういったところを少し広く高等学校段階において読めるようにしたほうがよいのではないかという御意見を頂戴しまして,高校段階における科目の見方・考え方の部分に,地理と歴史につきましては「社会的事象等」という形で,その言葉を補う修正を図っております。
また,この資料の7としては,イメージ図でございますので,両脇に考察する力,構想する力,説明する力,議論する力を従前示しておりましたが,これまで各段階ごとの力を更に分解した図を掲載しておりましたので,それを文章化してここに掲載したというような所要の修正を図っております。
資料8でございます。資料8につきましては,具体的な社会的な見方や考え方の追究の視点や方法の例ということで,前回の資料で申し上げますと,資料2の49ページ以降,2枚がついております。こちらにつきましても,前回の本ワーキンググループにおける御意見,それから,この間に開催されました地歴,あるいは公民における議論を踏まえまして修正が図られております。
具体的には,特に社会的事象の見方や考え方につきまして,今御説明申し上げた点,すなわち,中学校の公民的分野についても,先ほどの高等学校公民科と同じように,例えば,資料8で申し上げますと,一番下のところが公民的分野の見方・考え方になりますが,現代社会を捉える見方や考え方,ここはそのままですが,「現代社会を捉える概念的な枠組みに着目して課題を見出し,その課題の解決に向けて」という形で公民科と同様の見方・考え方の修正が図られてございます。
また,各学校種,あるいは中学校における各分野の中で,特に考えられる追究の視点の例,一番左側にありますけれども,こちらが児童生徒の発達の段階に応じて成長していく部分であろうということから,追究の視点の例について幾つか追加がなされております。例えば,小学校段階でありますと,位置や空間的な広がりの視点といたしまして,土地利用に関する部分でありますとか,時期や時間の経過の視点ということで,少し表現を変えまして,従来は時間的な経過の視点だったのですが,時間の経過の視点というような表現の修正,あるいは,事象や人々の相互関係の視点に関しては,業績,働き,仕組み,こういった事柄を考えられる追究の視点の例として追加をさせていただいております。また,中学校の社会科につきましても,例えば,社会に見られる課題の解決を構想する視点ということで,「民主主義」というような言葉を追加させていただいているところでございます。
また,これに併せまして,中学校の歴史的分野の獲得する知識の例,あるいは考察,構想した結果ということで,一番右側に示される視点に着目し,視点を生かした問いを踏まえて見方・考え方を働かせ獲得する知識,あるいは考察,構想した結果,獲得する知識の例のところの表現ぶりとして,中学校の歴史的分野に示されております箇所,上から三つの中点の部分について修正が図られております。その他,所要の修正を図っておりますので,後ほど御覧いただければと思います。
また,2枚目以降でございますけれども,2枚目につきましては,前回はお示ししておりませんでしたが,高等学校の地理歴史科に関わる追究の視点の例等でございます。こちらについては,地歴を中心にして御議論いただいたワーキンググループにつきまして,更にこの資料から御意見を頂戴しているところでございまして,まだ修正が反映されておりませんので,こちらの資料自体は,前回4月11日に開催されました地歴関係のワーキンググループの資料と同じものが添付されております。
また,3枚目につきましては,高等学校の公民科を中心とした関連する資料でございます。こちらにつきましても,先ほど申し上げました「概念的枠組み」という表現でありますとか,あるいは,例えば,「倫理(仮称)」の中で追究の視点の例として,善悪,生死,正義,保全,多様性,そういったような,御議論をちょうだいしての視点の例の追加ということをこれまで行ってきてございます。これら,社会的な見方や考え方につきまして,これまで御議論いただきました御意見を参考にしながら,資料6の方に戻っていただければと思いますが,文章として,1ページ目の一番下のマルから整理をさせていただいております。
資料6の1ページ目ですが,(1)教科等の特質に応じ育まれる見方や考え方ということで,各教科等を学ぶ意義というのは,各教科等において身に付ける資質・能力を三つの柱で整理されるということです。これらの資質・能力の中核というのが,これまで御議論いただいておりますとおり,各教科等の本質に根差した見方や考え方である。この「見方や考え方」というのは,様々な事象を捉える教科等ならではの視点と,教科等ならではの思考の枠組みと,こちらにつきましても前回も少し御紹介させていただいておりますけれども,総則・評価部会において全体にわたっての見方・考え方の整理をされておりますので,そういった部分を参考にしながらの文章記述とさせていただいております。
また,各教科等の多様な見方や考え方が総合的に育成されることによって,社会や世界の様々な事象を捉えたり関わったりすることが可能になってくる。多様な見方や考え方を総合的に働かせるようにすることによって,一つの事象を多様な角度から捉えたり考えたりすることができるようになるというような形で,まず,見方や考え方の全体にわたっての定義づけのような形での整理をさせていただいております。
2ページ目以降のマルでございますけれども,社会科,地理歴史科,公民科において培う見方や考え方については,これまでの学習指導要領においても記載があったということでございます。その重要性は指摘されておりましたが,一方では,社会的な見方や考え方の全体像が示されるには至っていなかったのではないかというのが,2ページ目の一番上のマルの趣旨です。そのため,今次の改訂におきましては,これらの変遷や趣旨を踏まえて社会的な見方や考え方の性格を以下のように明確化し,その充実を図ることを考えてはどうかということでございます。
2ページ目の中点のところです。まず,一つ目の中点ですが,社会的な見方や考え方は,「深い学び」を実現するための思考力や判断力の育成や獲得する知識の構造化に不可欠であること,さらに,主体的に学習に取り組む態度や学習を通して涵養される自覚や愛情などにも作用するということなどを踏まえると,まず,1点目としては,資質・能力全体の要であるというふうに考えられるのではないかということでございます。
また,2点目としまして,社会的な見方や考え方は,小学校社会科,中学校社会科地理的分野及び歴史的分野,高等学校地歴科においては,先ほど御紹介したとおり,「社会的事象の見方や考え方」,高等学校の方は「社会的事象等」になりますけれども,その「社会的事象の見方や考え方」という形での整理ができる。一方で,中学校の社会科,公民的分野における現代社会を捉える見方や考え方,あるいは,高等学校公民科における人間と社会の在り方を捉える見方や考え方という形で,小学校社会科と中学校地歴,あるいは高校地歴に関わっては社会的事象の見方や考え方として,まず大きな整理の仕方がある。一方で,公民科,あるいは中学校公民的分野については,「現代社会,あるいは人間と社会の在り方を捉えるという形での見方や考え方」というふうに整理してはどうかということでございます。
また,次の中点ですが,社会的な見方や考え方は,課題解決的な学習における追究の視点や方法である。また,小・中・高等学校と校種が上がるにつれて,先ほども御紹介しましたが,追究の視点や,それを生かした問いの質が高まることで成長するものではないかということで整理をいたしました。
これらの社会科,地歴科,公民科における見方や考え方を整理すると,例えば,以下のように整理することが考えられるということで,これは資料の8に中心部分で,これまで何度か御紹介してまいりましたことを文章化したところでございます。
例えば,小学校社会科では,位置や空間的な広がり,時期や時間の経過,事象や人々の相互関係などに着目して社会的事象を見出す。それを比較・分類したり総合したりして国民,あるいは人々の生活と関連付けて考察,構想する,思考判断していくということが考えられるのではないかということでございます。
中学校地理的分野から公民的分野についても同様の形での整理で記載させていただいております。ここまでが見方や考え方に関わることでございます。
次に,(2)ですけれども,小・中・高を通じて育成すべき資質・能力の整理と,教科等の目標の在り方ということです。こちらにつきましては,資料9から資料13までになると思います。ちょっと長いのですが,変更箇所を中心に,まず資料の方を確認,御説明させていただきたいと思います。
資質・能力の整理と,教科等の目標の在り方に関わりましては,まず,本日配付しております資料9ですけれども,こちらについては,地理歴史科,公民における教育のイメージということでこれまで本ワーキンググループにおいて御意見を頂戴してきておりました。前回の資料で申し上げますと,資料2の60ページが前回の配付資料でございます。
まず,資料9については,社会,地理歴史,公民における教育のイメージということで,幼児教育から高等学校段階までを見通した形での整理となっておりまして,特に本ワーキングにおいては小学校社会科3年生から高等学校までを御確認,御議論いただいてきたところでございます。構造としましては,これは確認ですけれども,菱形の部分で全体に関わるリード分的なところがございます。例えばですけれども,小学校段階で申し上げると,「グローバル化する国際社会に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者を目指す公民的な資質・能力を養うために,社会的事象の見方や考え方を培い,以下の三つの資質・能力を育成する」ということで,菱形で公民的な資質・能力を養うために社会的事象の見方や考え方を培いながら,以下のマル三つで示した資質・能力を育成するという構造になっております。これが中学校,高等学校も同じ構造になっております。
一つ目のマルといたしましては,「知識や技能」に関すること。二つ目のマルとして,「思考力・判断力・表現力」に関すること。三つ目のマルが,「学びに向かう力・人間性」に関わることというような整理がなされてきておりました。
  今回,これまでのワーキンググループでの御意見を踏まえ,まず,1点目としては,小・中・高いずれもそうなのですが,先ほどの菱形のところの最初の部分に「社会的事象の見方や考え方を培い」という表現がございます。前回の資料で確認していただきますと,「社会的事象の見方や考え方を用いて」という形で表記させていただいておりましたけれども,社会的事象の見方や考え方は用いるには用いるのでしょうけれども,これ自体も成長するのだろうと,これ自体をしっかり培っていく必要があるのだろうという御意見を頂戴いたしましたので,本日配付しております資料9においては「培い」という形で表現を修正させていただいております。
また,右上に公民科がございます。公民科以外の教科,あるいは小・中学校段階もそうなのですが,ちょっと例示的に公民科を参照していただければと思います。菱形のリードの部分,全体にわたって育成する資質・能力についてのリード分の下にマルが三つございます。このマル三つの部分が,前回までの資料を御覧いただけるとお分かりになると思うのですが,前回までは非常に長く,かかり方もちょっと分かりにくいという御意見を頂戴しておりましたので,マルの示し方,マル三つの示し方をそれぞれスリム化,省力化をさせていただいております。具体的に公民科で御確認いただければと思います。
一つ目のマルのところで,「選択・判断の手掛かりとなる概念や理論,及び倫理,政治,経済等に関わる諸課題に関して理解すると共に,調査や諸資料から様々な情報を効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする」ということで,一つ目のマルは,知識・技能に関わること。その知識も,理解を通してえられる知識ということもございましたので,表現の部分を,従来ですと,そのまま「知識・概念を理解させる」,その知識・概念を理解させるというのは何を理解させるかというと,様々な主体となるために必要な知識・概念を理解させるというような書き方でありましたので,ここが分かるように,例えば,中学校でこれまで示してきたように,中学校の一つ目のマルで見ていただきますと,「我が国の国土と歴史,現代の政治,経済,国際関係等に関して」というような形で,内容事項の大枠みたいなものが示されておりましたので,それを参考にしながら,公民科におきましても,倫理,政治,経済に関わる諸課題という形での修正を図らせていただいております。
また,二つ目のマルのところでございますけれども,ここは,思考力,判断力,表現力,社会科で申し上げますと,考察したり,構想したり,議論したりする力というような形での表現のところなのですが,ここにつきましては,従来,多少長かったところがございましたので,文意が通じるような形での修正を二つ目のマルのところでさせていただいております。
また,三つ目でございますけれども,学びに向かう力,人間性,態度に関わるところなのですが,こちらについても,従来は,「調べ,分かろうとしたりする態度や意欲的に考察,追究したりして社会に参画し,よりよい社会を形成しようとする態度」とやや長かったものですから,これらを少し統合するような形で「人間と社会の在り方に関わる課題を主体的に解決しようとする態度を養うと共に」というような形での修正を図らせていただいております。これは,ほかの校種,あるいは地歴科につきましても同じような観点からの修正を加えさせていただいているところでございます。
また,資料9の2枚目に,資料9補足資料ということで,「公民的な資質・能力」,「公民としての資質・能力について(たたき台)」という資料がございます。こちらは,資料9の菱形のリード分のところで示されておりますが,「公民としての資質・能力」,あるいは「公民的な資質・能力」という表現を用いて今回,教育のイメージの部分の菱形のところを整理させていただいています。
この説明についての補足ということで,若干触れさせていただきますと,小・中学校社会科で養う資質・能力というのは,一つ目の上のマルのところですが,小・中学校社会科で養う資質・能力というのは「公民的な資質・能力」,地理歴史科,公民科で養う資質・能力は,「公民としての資質・能力」ということで今回,菱形の部分の書きぶりを分けて整理をさせていただいております。これは,四角の枠組みの中に,資料9と同じ文言,菱形の部分,ここはマルにはなっておりますが,マルで入れさせていただいております。小・中学校の違いで見ていきますと,「公民的な資質・能力」のマルの二つ目のところが小学校なのですが,「グローバル化する国際社会に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者を目指す公民的な資質・能力」。これが中学校になりますと,「広い視野に立って」というような言葉を追加しているということでございます。さらに,これが高等学校段階になりますと,「公民的な資質・能力」から「公民としての資質・能力」と,下から上に上がっていく感じで「広い視野に立ってグローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力」という形で,ここの校種のグレード分けというのを整理させていただいているということでございます。
これは,従前ですと,ちょっとあちこちに飛んで恐縮なのですけれども,本日の配付資料の参考資料1,後ろの方になりますけれども,参考資料1で,現行の社会科,地歴科,公民科の目標を示させていただいております。例えば,参考資料1の小学校段階でありますと,「社会生活についての理解を図り,我が国の国土と歴史に対する理解と愛情を育て,国際社会に生きる平和で民主的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う」という形で,公民的な資質の基礎という形で,これを小・中学校を踏襲した形で整理をされておりました。
今回は,資質・能力の明確化の点からずっとこれまで御議論をちょうだいしておりまして,特に(1)としては知識・技能,(2)としては思考力,判断力,(3)として学びに向かう・人間性というこの三つの柱で整理して,これら三つの柱全てが,いわゆる目標に関わる規定に結び付いているという形の構造を図ったのが,ちょっと回りくどくなりましたが,先ほどの資料9の菱形とマルの関係になっているということでございます。現行ですと,そういった形での資質・能力全てが教科目標に入っているわけではありませんでしたので,今次の改訂の大きな方向性として三つの柱,「知識や技能」,「思考力・判断力・表現力」,「学びに向かう力・人間性」を総合化して,全てを結び付けて,ここで目標規定を整理をさせていただいたと。その際に用いた表現といいますのは,小・中学校段階では,「公民的な資質・能力」,高等学校段階では「公民としての資質・能力」と分けて整理をしたということでございます。
なお,四角の枠の中でございますけれども,「公民的な資質・能力」と「公民としての資質・能力」の違いの部分としては,基本的には,中央で書かれております四角の枠組みの中の(3)「社会,地理歴史,公民で養われる学びに向かう力・人間性」,これにつきましてはこれまでも御議論をちょうだいしておりますとおり,一つは,マル2の方ですけれども,主体的に学習に取り組むという態度の部分であるというのが一つ。もう一つが,マル1の部分の,多面的・多角的な考察や深い理解,すなわち,(1)や(2)を通して涵養される自覚や愛情と,この二つでここの部分は構成されているということで,これらについては,ちょっと下の方の中点にも書いてあるのですけれども,(1)の知識や技能,(2)の思考力・判断力・表現力,(3)の学びに向かう力・人間性の全てを結び付けて関わらせると。その際には,これまで見てきていただいた社会的な見方や考え方を培いながら積み重ねていく,図の右側の方に書いてありますけれども,課題解決的な学習,すなわち,「社会との関わりを意識した課題解決的な学習」,これを通して実現されるのではないかという形で,ここで目標と育成する資質・能力の三本柱の関係,それから,見方や考え方の関係,更には,この後御説明しますが,学習プロセスに出てくる課題解決的な学習との関係性というのを,まとめて今回,再整理をするというのが,今,御確認いただいております目標に関わる部分での整理の仕方ということでございます。
なお,公民的な資質の部分ですけれども,その下の中点のところにございますが,上記の資質・能力のうち,(3),先ほど来,申し上げております,学びに向かう人間性のところですが,これについては,他教科等が育成する資質・能力に共通する要素があると考えられる。その中で「公民的な資質・能力」,あるいは「公民としての資質・能力」,小・中学校,あるいは高校段階でのそれぞれの公民としての資質・能力を,社会科,地歴科,公民科の教科固有の目標としている理由としては,教科固有の知識を柱の一つとしている。すなわち,図で言うと(1)の部分に当たるような知識を柱の一つとしていることや,図の左側にございます「社会的な見方や考え方」を通じて育成する(2)の部分,すなわち思考力,判断力,表現力に関わる部分,これらを用いて,多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される資質・能力を含んでいるからだという形での「公民的な資質・能力」,あるいは「公民としての資質・能力」として整理をさせていただいているということでございます。目標と,それから「公民的な資質・能力」,あるいは「公民としての資質・能力」の関わりについては以上でございます。
資料10でございます。資料10につきましては,大きな変更はございません。こちらについては,「思考力,判断力,表現力等の育成のイメージ」ということで,前回の資料で申し上げますと51ページに掲載しておりますが,大きな変更はなく,今ほど申し上げました思考力,判断力,表現の中で,社会科としては考察する力,構想する力,説明する力,議論する力の四本柱で力を各学校種の段階ごとに整理しているということでございます。表現の所要の修正だけ,例えば,「社会的事象等」とか,そういったところの修正だけはしてございます。
それから,資料11でございます。資料11につきましては,今ほど見ていただきました資質・能力の部分の小学校,中学校,高等学校ごとに「知識や技能」,「思考力・判断力・表現力等」,「学びに向かう力・人間性」の三本柱で整理した資料でございます。こちらについては,前回の資料が資料2の54から56ページを御覧いただければと思います。主な変更点といたしましては,表現ぶりのところもございますけれども,一つは,「知識や技能」の枠組みのところでございますけれども,従来ですと,「社会生活についての知識・理解」という形で中点で結び示させていただいておりました。これは,今次の改訂が「知識や技能」という大きな一つの枠の中に納められ,すなわち,従来の知識・理解に関することが「知識や技能」という大きな枠組みで整理され,かつ,この知識の定義としては,何度かこれまで御議論の中で出ておりますが,個別の事実的な知識と思考力・判断力・表現力を働かせながら獲得する概念的な知識と二通りの知識がある。これらの理解を通じてそうした知識を獲得していくという整理を行いましたので,ここの「知識や技能」の枠組みの中の,従来,「知識・理解」というふうに併置されていた表現は,全て一度「理解」という形で再整理をさせていただいております。すなわち,小学校社会科で申し上げますと「社会生活に関する理解」,中学校でありますと,「我が国の国土と歴史や現代社会の政治,経済,国際関係に関する理解」のような形での整理ということとでございます。これが大きな1点目でございます。
また,2点目でございますけれども,これも前回の会議の配付資料の際には入っていて,前回の会議の際に御紹介し,御議論していただいた点なのですが,真ん中の「思考力・判断力・表現力」に関わるところです。従来でありますと,「社会的事象についての見方や考え方」,「思考力・判断力・表現力」と密接に関わらせながら働かせると。先ほどの資料の6の文章でも少し御紹介させていただいていたのですが,その部分が入っておりました。他方で,「社会的事象の見方や考え方」,あるいは,「現代社会等を捉える見方や考え方」については,「思考力・判断力・表現力」により多く作用はすると考えられますが,それ以外の部分,すなわち「知識や技能」であるとか,「学びに向かう力・人間性」にも作用するということから,ここの箇所から「見方や考え方」を外して整理をさせていただいております。他方で,先ほど御覧になっていただいたような資料9のイメージの部分で,「社会的な見方や考え方」に係る部分が全体に関わるような形での修正をさせていただいているということでございます。資質・能力の整理,資料11についての主な修正箇所は以上でございます。
長くなって本当に申し訳ございません。資料12ですが,技能の部分です。技能につきましては,前回御意見を頂戴いたしまして,特に情報を読み取る技能の中の四角の3番目,【3】「複数の情報を見比べたり結び付けたりして」ということで,従前の表現が,若干,思考的な要素も含まれているようなニュアンスがございましたので,表現の適性化を図らせていただいております。
それから,続きまして,資料13でございます。こちらについては,「資質・能力の構造化のイメージ」ということで,これまで,るる,御確認を頂きました「知識や技能」,「思考力・判断力・表現力」,「学びに向かう力・人間性」の三つの力がそれぞれどう関係性,関わりを持って作用するかということの図でございまして,図自体についての大きな変更はございません。また,要素としても大きな変更はなく,表現の適正化ということで,例えばですけれども,社会的事象等に関する知識,ここで,従前は「知識・理解」だったところを「知識」に修正をしているとか,そういった所要の修正を図らせていただいております。
それから,表題のところで,「グローバル化する」という言葉をちょっと補わせていただいておりますので,目標のイメージ等でも使っている表現でございましたので,こちらにそろえた修正ということで,平仄の修正をさせていただいております。
こうした,育成する資質・能力と目標に関わる規定についての文章化をしたものが資料6の3ページ目以降に整理をされているということでございます。これを文章で御確認いただければと思います。資料6の3ページ目の(2)のところでございます。「小・中・高等学校を通じて育成すべき資質・能力の整理と,教科等の目標の在り方」ということで,一つ目のマルについては幼児教育の部分,これは先ほど御覧になっていただきました資料9で出てきます幼児教育の部分を例示的に引き合いに出させていただき,書かせていただいております。
また,次のマルにつきましては,小学校低学年の生活科,これも資料9の方で記載させていただいておりましたけれども,こちらについて例示的に示させていただいております。こうした幼児教育や生活科で育成した資質・能力の上に小学校社会科が成り立っているというのが三つ目のマルの説明で出てくるところでございます。
次の四つ目のマルでございますが,社会科,地理歴史科,公民科における育成する資質・能力は,従前の教科目標の趣旨を勘案すると共に,改めて三つの柱に整理し直す観点から,これまで申し上げてきましたが,小・中学校社会科におきましては「公民的な資質・能力」,高等学校の地理歴史科,公民科においては「公民としての資質・能力」とすることが考えられるのではないかということでございます。この「公民的な資質・能力」とは,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者を目指す資質・能力であり,「公民としての資質・能力」とは,すなわち高等学校段階のところですが,それを発展させ,選挙権を有する18歳に求められるグローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力であるというふうに整理してはどうかということでございます。
「公民としての資質・能力」については,現行学習指導要領の公民科の目標にも示されております。その趣旨の一層の明確化をすると共に,人,商品,資本,情報,技術などが国境を超えて自由に移動したり,企業など国家以外の様々な集合体の役割が増大したりしてグローバル化が一層進むことが予測されるこれからの社会において,教育基本法や学校教育法の規定を踏まえ,国家及び社会の形成者として必要な資質・能力を育むことの大切さへの意識を持つことを期待してこのような表現とすることが考えられるのではないかということで整理をさせていただいております。
4ページ目以降ですが,これまでの学習指導要領の解説では,小学校社会科で公民的資質というものについての説明をしてきておりました。その中で,「平和で民主的な国家・社会の形成者としての自覚」,「自他の人格を互いに尊重し合うこと」,「社会的義務や責任を果たそうとすること」,こういったことは,「公民としての資質・能力」,あるいは「公民的な資質・能力」に引き継がれているというふうに考えられるのではないかということでございます。この「公民的な資質・能力」,及び「公民としての資質・能力」は,以下の三つの柱に描かれる資質・能力全てに結びついて育まれることを通して養われるものであると考えられると。
なお書きが入りますが,「なお,小・中学校社会科で扱う学習対象は」,これは先ほど来,少し御説明しましたが,小・中学校は「社会的事象」,地理歴史科,及び公民科で扱う学習対象は,社会の在り方や人間としての在り方,生き方に関わるものを含むことから,社会的事象のみでなく,「社会的事象等」と表現することが適当ではないかということを挟ませていただいております。
その下のマルでございますけれども,ここが資質・能力の柱との関わり,関係性です。まず,資質・能力の柱の第一のところでございます。これは,資料11の方でも記載させていただいていたとおりです。資料11を基に整理していたものを踏まえて記述をしております。第一の柱は,社会科,地歴科,公民科で獲得する知識・技能である。この「知識」は,社会的事象等に関する知識であり,主として用語・語句などを含めた個別の事実等に関わる知識と,主として社会的事象の特色や意味,理論などを含めた社会の中で汎用的に使うことのできる概念等に関わる知識とに分けて捉えることができると考えられるのではないかということでございます。それは,社会生活に関する理解,我が国や世界の地理に関する理解,世界や歴史に関する理解,現代社会の政治,経済,国際関係に関する理解などを通して身に付けた知識である。その後に,技能についての記述を,資料を基にしながら,こちらに収集する・読み取る・まとめる技能という形で整理をさせていただいております。これが知識・技能に関わる点でございます。
また,資質・能力の柱の第二としては,社会科,地歴科公民科で育成する思考力・判断力・表現力等でございます。これについては,先ほども御説明申し上げましたけれども,社会的な見方や考え方というのは思考力・判断力を育成する要であるというふうに位置付けてはございます。この社会科等で育成する思考力・判断力・表現力は,社会的な見方や考え方を用いて,社会的事象の意味や意義,特色や相互の関連を考察する力,あるいは構想する力といったことであると考えられる。これは先ほど整理をしました社会的な見方や考え方と,思考力・判断力との関わりの部分でございます。また,社会科,地歴科,公民科で育成する表現力については,説明する力,あるいは議論する力,これもこれまで整理をされてきた定義に基づいた形での所要の記述をしたということでございます。
続きまして,5ページ目のところですが,一番上のマルです。資質・能力の柱の第三は,社会科,地歴科,公民科で養われる学びに向かう力・人間性である。それは,「主体的に学習に取り組む態度」と「多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される自覚や愛情など」であると考えられる。「主体的に学習に取り組む態度」のうち,学んだことを社会生活に生かそうとして更に調べたり分かろうとする態度や,社会に見られる課題についてよりよい社会を目指して解決しようとする態度などは,よりよい社会の形成に主体的に参画しようとする態度の中に含まれているものだというふうに考えられるのではないかということで整理をしまして,ここまでが,資質・能力,それから教科の目標,見方や考え方を整理した文章,それとその関連する資料ということでございます。
大変長くなりまして申し訳ございませんが,こちらにつきまして御意見を頂戴できればということでございます。
以上です。

【館委員】  ありがとうございました。たくさんの資料の説明ということでしたが,資料6の成文化されたものが一つ,今までの説明と併せ持ったもの,あるいはそれを整理したもの,まとめたものと考えられますのでこの資料6も含めまして意見交換をしたいと思います。御意見のある方は,いつもどおりあらかじめ名札を立てていただきますと,私の方で順次指名させていただきたいと思います。では,御意見がある方,是非お願いいたします。この委員会等もかなり終盤にかかっておりますので,自らの御意見という形で発表していただけるとよろしいと思いますので,お願いいたします。村松委員,よろしくお願いいたします。

【村松委員】  確認というか,質問なのですけれども,資料9の補足資料と,資料6の3ページ目の一番下のマルの「公民としての資質・能力」と「公民的な資質・能力」について定義していただいているところです。資料9を見たときには,私のザクッとしたイメージで言うと,「公民としての資質・能力」には「主体的に」という言葉が入っていて,一方,小・中学校の「公民的な資質・能力」には「主体的に」という言葉がないのです。これは恐らく,高等学校の「公共(仮称)」のところで,「主体的に生きる私たち」というところを意識されてこういう表現ぶりに変えたのかなと思ったのです。一方で,資料6の一番最後のマルの中で言うと,「公民的な資質」の中にも「主体的に生きる」という「主体」が入ってきているのですけれども,これは,どちらかが誤記なのか,どう理解したらいいのか教えていただければと思います。

【館委員】  お願いいたします。

【村松委員】  ごめんなさい,該当箇所は分かりますか。

【大内学校教育官】  確認いたします。

【館委員】  資料6の「主体的に」と入っている箇所を,もう一度,村松委員,場所をお願いできますでしょうか。

【大内学校教育官】  誤字ということで確認がとれました。誤字というのは,すなわち,資料6の本文中に記載されております3ページのところの一番下のマルの4行目のところに,小・中学校の育成すべき公民的な資質・能力として記載されているところですが,「グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者を目指す資質・能力」というところの「主体的に」というところは,小・中学校段階では入れていないということでございます。

【館委員】  よろしいでしょうか。
では,ほかにありますでしょうか。永田委員,お願いします。
【永田委員】  失礼いたします。大きく2点あります。今回,先ほどおっしゃいました「知識・理解」の点についてでございます。知識・理解について,今日配られた資料の11のところで,「知識・理解」のところを「理解」にされたということで,断片的な知識とか観念的な知識等で概念に近づく知識があるので「理解」ということですけれども,まずもってパッと表を見る側,その視点から見ても,「知識や技能」ということで項目が書かれていますので,普通で考えたら,「知識」という言葉がどこかにこないといけないということです。言った意味としては,「知識を基にした理解」とか,何か「知識」というタームが小学校社会科とか中学校社会科でも要るのではないかということです。「思考力・判断力・表現力」の項目では,「思考・判断」とか,そのような言葉が入っておりますので,知識や技能で何を知っているかということだったら,「知識」という言葉が要るのではないかということでございます。
先ほど,「知識・理解」のところで,資料6の4ページのところの上から四つ目のマルのところで説明していただいたのですけれども,ここでは,「用語・語句などを含めた個別の事実等に関わる知識」ということと,その後で,「それは,社会生活に関する理解,我が国や世界の地理に関する理解,我が国や世界の歴史に関する理解,現代社会の政治,経済,国際関係に関する理解などを通して身に付けた知識である」と,ここでは「理解を通した知識である」と書いてあります。私の考えで言えば,一つ文言を書くのであれば「知識」を残す。「理解」というのを書きたいのだったら,「知識を通した理解」とか,そういったものが分かりやすいのではないか,そのように1点目,思いました。
2点目です。「思考・判断・表現」の部分でございます。今日お配りいただきました資料7と,今日お配りいただきました資料8のところでございます。この資料7というのは,「思考力・判断力・表現力」というところを全体で表されているということで,このことについてはずっと議論があって,非常に申し訳ないのですけれども,今,気付いたので申し上げます。
真ん中のところに,社会的な見方や考え方,地理で言えば地理的見方や考え方,歴史で言えば歴史的見方や考え方というところが入っております。その思考・判断の部分が矢印,今回,詳しく入れられたということで,思考のところが矢印の一番左の矢印だと考えております。判断のところが左から2番目だと考えております。それを受けて,私が思ったのは表現力のところが,青で書かれている,説明する力と議論する力となります。一つ確認したいのは,このような社会的な見方や考え方というのは,思考力・判断力・表現力のどの部分に当たるのか。
  先ほど説明があったときに,社会的な見方や考え方について「要である」とか,資料の8だったら「追究の方法」というところがあるのですけれども,これが思考力なのか,判断力なのか,それとも基本なのかということです。私の考えは,思考と判断のところと表現のところは,今,分かれていますので,少なくともここのところ,思考・判断のところを一つでくくって表現をする,私はそのように捉えていました。資料7で「思考・判断・表現」の順を示すか,若しくは「見方・考え方」のところを一番左に持ってきて,そこから思考・判断をやって表現と示すとか,何か順序が違うような気がいたしました。今回の気付きなのですが,現状では,思考・判断と表現がちょっと分断されているような形になっていないか,そのような提示でございます。
以上でございます。

【澤井視学官】  はい,ありがとうございました。「知識・理解」につきましては,なかなかこれも悩ましいところでありまして,資質・能力で考えると,恐らく身に付けているものという捉えをしますと,やはり「知識」という言葉の方が当てはまるだろうと。知識と理解というのは非常に似ている概念ではありますが,「理解する」という動詞で使われる理解と,名詞的な知識と,従来もこれが併置されていたのですが,ここで,30条も含めて,視野に入れながら,「知識」という言葉に,タイトルは代表していると。ですから,おっしゃるように,理解を通して育まれる知識なのですが,両方使うことになってしまわないようにというところです。
一度,「社会生活に関する理解」を「社会生活に関する知識」と直して考えてみたのです。しかし,社会科においては,やはり,「知識」という言葉だけで説明してしまうと,なかなか用語・語句等の基礎的な知識にばかり目が行ってしまったり,あるいは,理解が大事であると言ってきたこととの整合といいますか,そういうものがなかなか図りづらいのかなということで,また「理解」の方に戻してみているところです。これも,最終的に他教科等との兼ね合いといいますか,横の連携なども見ながら,どういう言葉を使っていくかということについては,今後も検討していきたいと思います。「知識」だけにしてしまうことに対する社会科の授業観といいますか,指導観が変わってしまうことへの懸念が今のところあるということでございます。
それから,見方や考え方,思考力の関係はおっしゃるとおりです。そもそも,思考力・判断力・表現力は分断しないで,相互関連的な能力であって,一体的に子供から表出されるとこれまでも言ってきているものです。これは,見方や考え方を用いて,それを使いながら思考・判断したり表現したりするということをイメージとしてお伝えしているものですから,確かに,補足資料と並べて考えると順番を少し変えたほうがいいなというところがあります。それぞれの資料の意味合いが,補足資料の方は左から右に流して見ていただくと分かりやすくて,資料7の方は相互関係を見ていただくような,そういう資料の機能が違うというところで今のところ整理をしておりますが,その辺も併せてもう一度検討したいと思います。
以上です。

【館委員】  桐谷委員,よろしくお願いします。

【桐谷委員】  よろしくお願いします。私,3点ありますが,なるべく短く済ませたいと思います。まず1点目は,これは,村松委員の御指摘の資料6の3ページから4ページにかけて,それから補足資料9の「公民的な資質・能力」,それから「公民としての資質・能力」の件なのですが,よく読んでも私がなかなかわからなかったのは,なぜあえて言葉を分けて変えなければいけないのかというのが,どうしても分かりにくかったのです。先ほど言った「主体的に生きる」という言葉が違う,それから「有為な形成者」の「有為」というのが高校で公民としての方に入っていると。ただ,それの違いで,本質的な部分はほぼ共通していて,グローバル社会や国際社会の中で平和で民主的な国家,社会の形成者を目指すわけです。ここが共通しているのを,あえて二つのことに分けると,より分かりにくくなってしまうのではないか。今までの学習指導要領の作り方としては,ある意味,小学校,中学校とバラバラで作っていたので用語が統一されていなかったものが,今回は小・中・高を一貫して資質・能力を考えようと,あえて今回そういうことをしていると考えるならば,ここはやはり統一した言葉で捉えたほうが分かりやすくなるのではないかと思います。
そういう意味では,公民としての資質・能力というところに書かれた文言が,ある意味では,共通して求めるべき,目指すべき最終的な資質・能力の姿として,これは私はすばらしいと思うんです。ただ,学校段階によって,それぞれグレードが違うと言ったらいいのでしょうか,違うというふうに考えたほうが,説明が非常に明確になるのではないかと思います。そういう意味の言葉で言うならば,「公民的な資質・能力」,若しくは「公民的資質・能力」といったのが今までの,従来の言葉の使い方として近いので,そこに統一して学校段階ごとに少しポイント,若しくは重点が加わっていくというような構造で示すと趣旨が非常に明確になるのではないかと思っておりますので,是非御検討いただきたいというのが1点です。
2点目は,永田委員の方から先ほどありました資料7と資料10の件です。これはやはり,資料7がなかなか分かりにくくなっているのは,思考力・判断力・表現力等に関して言うと,その本体はマル1,マル2,マル3,マル4に書かれている考察する力,構想する力,説明する力,議論する力ですよね。そうなんですが,やはりこれが横に置かれていて,真ん中に見方・考え方がドンと大きく細かく書かれているので,今回,それぞれのマル1からマル4の段階が書かれているので分かりやすくなっていると思うのですが,主客が転倒してしまっているように見える図になってしまっていて,本来の趣旨が伝わりにくくなってしまっているのではないかと思います。
ですから,形としてこれをどう直すのかというのは,私もセンスがなくてなかなかわからないのですが,イメージで,この相互関係を構造的に示そうとするのなら,私は,一番右側にある「社会との関わりを意識した課題解決的な学習の充実」というのが一番真ん中に来て,その周りにマル1からマル4の力が真ん中に来て,それを貫いていくようなものとして,3分野でありますけれども,社会的見方・考え方というのが重要な学習の方法,若しくはツールとして機能するのだという構造を示したほうが,本当の意味としては伝わりやすいだろうと。ここにいる委員の先生方は今までずっと議論を聞いているので,この図を見てもそう読めるのですが,これが出たら,やはり誤解されてしまうのではないか。そういう意味で考えると,今のような形で示したほうが意図としては非常に明確になるし,現場の先生にも分かりやすくなるのではないかというふうに考えています。そういう意味では,ここをそのような形で書いていただければ非常によくなるのではないかと思います。
3点目ですが,済みません,これはしつこいようですが,どうも「参加」とか「関わる」というのをもうちょっと前面に出したほうがいいのではないかというふうに考えております。これは,資料10や資料7に関わる部分なのですが,見方・考え方だけでは,どうしても子供たちは社会の形成になかなか向かわないという現実が今までずっと指摘され,批判されてきて,そこに切り込むというのが今回の改訂の中で考えられてきたことだと私は理解していました。私は,小学校,中学校,高校で授業作りに参加していますし,そういう授業をやった生徒や大学生にも聞いていると,そういうふうな構想で終わっていると,あくまでも授業の中のことであって,いわゆる実現可能性というものは考えなかったという言葉が非常に多く聞かれます。
それに対して,社会参加型のような授業をやったときには,やはり,そのようなものと質的に全く趣向が変わった,違っていたということをよく聞きますので,構想だけではなくて,有為な形成者ということを目指すのであるならば,「参加」ということ,若しくは「協働」という言葉でもいいと思います。「参加」だとちょっと強過ぎるかもしれないのですが,そういう形で,そこまでを最終ゴールとして示していく,能力として示していくことが必要だと思っております。そういうものを視野に入れてということだろうと思うのですが,視野に入れるだけだとなかなかいかないというのが現実の学習の実態だろうというふうに考えていますので,そういうことを,是非考えていただきたい。
また,それは,資料2の74ページから76ページにかけて,「公共(仮称)」という新科目の中で,やはりかなり「参加」「参画」という言葉が出てくるわけです。こういう内容には入っているのだけれども,能力としては入っていないとすると,これは,こういうふうに参加することが必要だという知識で終わっていて,そういうふうに参加する主体としての学習がなかなかしづらくなるのではないかということを危惧します。
例えば,74ページの「公共の扉」の(2)では,「自立した主体として社会に参画し,他者と協働するために」ということの中で,政治的主体とか,いろいろあるのですけれども,やはりこれはあくまでも参画して,協働するためにやる学習です。小学校,中学校まででいいんですから,高校まで見通していくとするならば,こういうことをきちんと位置付けていかないと,なかなか難しいのではないか。(3)でも,アで「地域の創造への主体的参画」,イでは,「よりよい社会の構築への主体的参画」,ウでは,「我が国と国際社会への主体的参画」と「参画」をこんなに押しているわけですので,やはり能力でも位置付けないと整合性がとれなくなってしまうのではないかというのを非常に危惧しておりますので,そこのところをお考えいただければと思います。
以上です。

【館委員】  棚橋委員,お願いいたします。

【棚橋委員】  私も2点,意見がございます。1点目は今の桐谷委員と非常に近い疑問を持っております。「公民としての資質・能力」と「公民的な資質・能力」という使い分けをされたという点,これが必要があるのかどうかということを少し疑問に思っております。桐谷委員のおっしゃるとおりで,小・中・高で一貫し,目指すべきものは同じなのに,あえてこれを使い分けをしたことは,いかがなものでしょうか。これは多分非常に御苦労があったのだと思います。普通,「公民」という言葉はいろいろな意味を持っておりますがここでは非常にシンプルに,いわゆる参政権を持った社会の構成員ということを,市民よりも狭義で捉えていると思います。,そのため,今まで「公民的資質」と言ってきたのはあくまで公民としての基礎であり,それは,小・中・高はずっと参政権を持たないからそれで行けたのでしょう。しかし,18歳選挙権で,いわゆる公民という立場の高校生がいることになったときに,それまでの基礎という言い方だけでいいのかというところで御苦労されたということは,非常によく理解できました。
ただ,難しいのは,そういうことにこだわると,同じ公民科を受けている高校生でも,誕生日によって18歳になっている者となっていない者がいることになり,では,地歴を1年生,2年生でやるときに,それは「公民として」と言っていいのかというような,ある意味で,本質と違う議論に陥ってしまうのではないでしょうか。ですから,確かに18歳で実際に参政権を持つ高校生が出てくるというのは具体的な教育の在り方に関わってきますけれども,この小・中・高を通じてこの社会科,地歴科,公民科が目指す資質・能力というときに,そういうところで無理に使い分けするよりも,実際に18歳で選挙権を持つ高校生も含めて育成しているのは今までの公民的資質と言ってきたことには変わりないのだと言っているのであれば,この資質・能力のところで,あたかも違う資質・能力があるかのごとく受け取られるように使い分けをしないほうが,むしろいいのではないかというような気がしております。
2点目は,資料6の2ページのマルの二つ目辺りのところにございます。ここも,今まで「社会的な見方」とか「社会的事象の見方・考え方」と言っていたものについて,今までもほかの議論のところでは,「これはあくまでも総括して言うのであって」というような表現をされてきましたけれども,ここで,小学校社会科と中学の地理的分野,歴史的分野というのと,それから,中学校公民的分野,高校公民的分野に微妙な使い分けをされています。これも,例えば高校においては,倫理的な人間として在り方というのが「社会の見方・考え方」では隠れてしまうのではないかということに対する表現の御苦労だというお考えは非常によく分かるのですけれども,ただ,それはいかがでしょうか。例えば,中学校の場合,公民的分野は「現代社会を捉える」で,地理的分野と歴史的分野では「社会的事象の」という使い分けをされていますけれども,例えば,地理的分野で扱っていることも,結局,日本,あるいは他国の現代社会の様々に起きていることを地理視点,例えば,空間配置の視点から見ているのであり,あくまでも,これも現代社会を見ているのではなでしょうか。公民では,現代社会の捉え方といって,地理は現代社会の捉える見方とは言わないのかという議論になってしまうような気がします確かに高等学校の公民科で「人間の在り方」というのをどこかに入れるというのは大事だと思うのですけれども中学校で分野によって見方・考え方の表現を変えるとかというのは,かえって分かりづらくしないかなという意見を持っております。
以上でございます。

【館委員】  はい,ありがとうございました。土屋委員,お願いいたします。

【土屋委員】  先ほどの資料11の知識や技能とか,思考・判断・表現の中を開いた理解の問題に関係して意見を言います。先ほど,「知識」というものを中で使わなくてもいいのかという永田委員からの御意見がありましたけれども,私は,この「理解」という形で知識・技能をきちんとまとめられたことを,ある意味,評価します。というのは,今日の説明の中にもあったように,知識というのが個別事実に関わる知識と,概念等に関わる知識と二つあるということの問題をどうクリアするかということです。ここでは,正に知識というものを概念的な知識として使っているという,新しい知識の使い方,個別的な知識という使い方ではなくて概念的知識を学習させるのが社会科の大きな知識・技能なのだというコンセプトで作られているわけです。それが正に個別的な事実の羅列にならない社会科として必要なことなので,今回そこを明確に「理解」という言葉で示されたこと,これは非常に重要な今回の我々の主張だと思います。
では,それを今まで使っていた事実的な知識はどうなるのかという問題なのですけれども,正にそれは,用語のレベルの問題とか,専門用語とか,社会科的な用語,それは多分,思考・判断・表現の方にかかってきて,説明するときに適切に用語を使ってとか,社会的な適切な用語を用いて説明するとか,そういう形になってくるのであって,我々が言っている知識・技能は,そのレベルではなくて,概念としてきちんと関係性だとか,総合性のあるまとまった思考としての知識・技能,それを見つけ出すような技能であったり,だから,高校までの知識・技能を一つのコンセプトできちんとつなげているという意味では,この「理解」という表現は非常にいいと思います。
ただ,それが,そういうものだというふうに分からないと,どうしても,言葉はどうなるんだ,あの用語はどうなるんだという話になりかねないので,正にそこを,今回,事実的な知識と概念的な知識とに分けたところで,概念的な知識のことを,それを「理解」ということで知識・技能のところに入れて考えたということをどう説明するかということが課題だと思いますので,これ自体をまた戻して「知識」という言葉を使ってしまうと,また今の課題がぶり返されてしまうのではないかと思います。
なので,分かりやすく自分で整理して,これは今,瞬間に考えたことなので適切かどうかは御検討のたたき台の意見として聞いていただければと思いますが,ここで言っている「知識・技能」というのは,正に今の概念とか,今の通説をきちんと理解しているかどうかということかなと。では,その思考・判断・表現というのは何かというと,子供たちが新しい概念とか,新しい説をここで作り出すような,そういう力です。だから,今までとは違う新しい時代を作っていく彼らが,我々が考えてきた正しいと思っていることとはちょっと違っているかもしれないし,それ以上にまた深い考えをここで作り出していかれるかということが,未来志向の活動が思考・判断・表現であって,そのときに適切に用語が使えればいいかなということは,どこかで補足する必要はあると思います。
では,学びに向かう力・人間性というのは,そういうことを他者と協働してやっていかれるような態度であったり,そういう行動ができるような人間力といいますか,そういうものになっていくということになれば,これが非常に今と未来と,それに向かう人間性ということできれいに整理されて理論化できているというふうに私自身は考えましたので,その部分をもっと明確な形でどう説明するかによって支持される考えになるのではないかと思います。
以上です。

【館委員】  ありがとうございました。時間もかなり押してきているのですが,よろしくお願いいたします。矢吹委員,お願いします。

【矢吹委員】  済みません,私の方も,今までの委員の方々が御発表というか,お話しされたことと似ているのですけれども,2点ありまして,まず,1点目が「公民的資質」と「公民としての資質」の違いについて,最終目標が一緒ならば,やはり同じものにしておくほうがいいのではないかということ。
それともう1点は,資料11と資料6の4ページの,先ほど来,土屋委員や永田委員がお話しされている点です。知識というのを,事実等に関わる知識と概念等に関わる知識というふうにお分けいただいたのは分かりやすいので,とてもはっきりしたと思うのですが,資料11のところに,その部分が出ていないのではないかというふうに思いました。それで,技能のところはきちっと技能のところで,「社会的事象に関する情報を適切に集める・読み取る・まとめる技能」というふうに括弧書きであるわけですが,知識のところが,そういったところで,小学校の部分ははっきりと概念的な知識の部分のことが書かれていないような気がします。中学校,高校になると「概念的枠組みの理解」というふうになっているので,この辺りを工夫していただいた上で,概念等に関わる知識というふうにこれを考えていいのかなという思いです。そこのところをそういうふうに分けていいのかどうかというのが,私はこれを見させていただいたときには分からなかったので,御意見としてお伺いできればというふうには思っております。
以上です。ありがとうございました。

【館委員】  それでは,続きまして村松委員,お願いします。

【村松委員】  私からは,「知識・技能」の技能の点について少しお話しさせてください。資料9になります。9の高等学校の公民科のところにマルが三つあって,一つ目のマル,ここに「知識・理解」のまとめがあります。ちょっと読んでいきますと「選択・判断の手掛かりとなる概念や理解,及び倫理,政治,経済等に関わる諸課題に関して理解すると共に」とあり,ここが「理解」です。続いて「調査や諸資料から様々な情報を効果的に調べ」とある次に,「現状や諸課題を把握する技能を身に付けるようにする」という記述を挿入するのはどうだろうか,と私は考えています。
なぜそう考えるかというと,現状をどう把握するのかによって,その後の諸課題を解決するための思考や判断の方向性というのは決まってきます。それは強く影響を及ぼすのだろうと思うからです。実際に,このたたき台,資料9の二つ目のマルで,現代の諸課題についてうんぬんと記載され,諸課題を解決するための学習をしていくわけなのですが,原案ではそもそも諸課題をどう把握するのかというところが余りはっきりしていないという気がしました。情報をまとめて調べた上で現状や課題を把握するということは,自分自身で今の社会と正面から向き合うということだと思うんです。それは,恐らく子供たちが社会に参加していくための一歩になるのかなと思っています。
法教育をやっていると,弁護士ですから,学校の先生からいろいろ学校のトラブルについて相談を受けることがよくあります。私からは,トラブルに対してアドバイスをするのに,この点はどうなっていますか,ここはどうですかと事実関係を先生方に聞くのですけれども,学校の先生方というのは,課題を解決しようという思いはあるのですが,その前提として事実がどうなのか,今,何が問題になっているのかという事実把握を余りされていないというのを,何人かの先生とお話しして共通して感じるところなのです。つまり,課題を解決するためには前提として事実が何なのか,状況が何なのか,そこを把握しないと適切な課題解決にはならないのだろうと思っています。
頂いている資料を見ていくと,「現状を把握する」とか「課題を把握する」とあります。これは,法律の世界で言うと「事実を認定する」になるんですけれども,事実は何なのか,そこを意識した技能というのがどこかにあってもいいのかなと思うのです。ただ,それは発達段階の中で小・中でもできるのか,高校だけにするのか,そこは私は専門ではないので,必要であれば御議論いただきたいと思いますが,そんなことを考えています。
それから,社会の事実関係を判断する上で重要になってくるのが,情報の信用性なのだと思うのです。模擬裁判の指導をやっていて思うのは,生徒たちというのは,書いてあることは全部正しいと思うのです。だけど,本当はそんなことはなくて,この人が言っていることが本当に正しいのか。この証拠,物を見たときにどういう見方ができるのか。それは多面的な見方ができるわけであって,そういうトレーニングは余りできていないのかなということを感じます。この情報の信用性をしっかり意識して教育をするということは,最終的には,18歳選挙権のところの主権者教育につながっていくと思ったりしています。ですので,事実を把握するとか,現状を把握する,こういう視点を入れたらどうかと思うので,ちょっと御検討いただければと思います。

【館委員】  ありがとうございました。仙田委員,お願いします。

【仙田委員】  私はもう少し具体的なことで,資料8についてです。いつもこれを見させていただいて,特に,右側の「考察,構想した結果,獲得する知識の例」ということについて話をさせていただいていました。資料2を見ると,今までより相当考えていただいて,工夫をされて変えていただいている面が見受けられて本当に有り難いと思っています。ただ,地理とか公民とは違って歴史のところが,中学校の歴史的分野の右側の箱を見ると随分変わっています。実際に,ここまでできるかなというのが現場の考え方です。特に,資料11で新たに「我が国の歴史」のところに「直接的な関わりや間接的な影響を及ぼす世界の歴史を含む」というように書いてありますので,日本史と関わりがある場合にはできると思います。しかし,例えば,資料8の右側の歴史的分野の一番右側の箱の三つ目のポツ「豊かなアジアの富に対する関心やイスラム諸国との接触を背景にヨーロッパ人が海外に進出した」について,私が今,中学と高校の両方の授業を見ていると,なかなかここまでは踏み込めないだろうと思います。やはり,自国から見てどういう関わりがあるのかというところを教えないと,中学生段階では厳しいと思っています。多分,こういう事例が出れば,そこまでやらなければいけないと先生方は考えるので,もう少しこの辺のところを工夫していただけると有り難いと思います。
その際,資料8の右側は,今まで議論されているように「考察,構想した結果,獲得する知識の例」になっています。そうすると,先ほど言った「知識」や,「理解」はどうなのだろうと先生方は考えてしまいます。考えた挙げ句,やはり「知識」なのかというふうに考えるので,この辺のところも工夫していただければ有り難いというふうに思います。
以上です。

【館委員】  ありがとうございました。廣嶋委員,お願いします。

【廣嶋委員】  時間がないところ済みません。簡単に言います。1点は,「公民的な資質・能力」と「公民としての資質・能力」についてたくさんの方々から意見がございましたけれども,私も,できるならばそろえていただいたほうが,小・中・高とつながる資質・能力の意識が非常にすっきりしてよろしいかなというふうに思っています。
もう1点,今日の資料7から8,9,10,11と資質・能力の整理に関わる資料がずっと出てきているわけですけれども,これ,例えば,その中で,思考力・判断力・表現力が核になると思ってずっともう一回改めてながめているのですが,最終的にどのペーパーが中心になってくるのか。例えば,資料9については,目標との関連でお話しされましたので,もし資料9が最終的な各校種別の目標として示されるとしたら,ほかの資料にあるものと比べて言葉が省略されているものが幾つかあって,微妙に言葉が違っているのです。細かく指摘していると時間がありませんのでやめますが,どの言葉が最後に残るのかという辺りのところの検討が必要ではないかと思います。そこのところがちょっと今,気になっています。
以上です。

【館委員】  ありがとうございました。岡崎委員,お願いします。

【岡崎委員】  ありがとうございます。皆さんが御意見を出されているところの「公民的資質・能力」の表現の統一につきましては,皆様仰せのとおり,大いに賛成いたします。
それから,桐谷先生のおっしゃいました「参画」というのをもっと明示的に入れてほしいということにつきまして,誠にそのように思います。そのような観点から,これまでも何回か発言させていただき,大分取り入れていただいていると思うのですが,重要な資料にそのような観点が統一されるとよろしいかと思います。
そのほか,手短に4点ほど申し上げます。
資料6の5ページですけれども,5ページの一番上のマルのところで,3行目から「『主体的に学習に取り組む態度』のうち」として,3行記述があるのですが,この「『主体的に学習に取り組む態度』のうち」の後の記述につきまして,特に次の行の中ほどからの「社会に見られる課題についてよりよい社会を目指して解決しようとする態度などは,よりよい社会の形成に主体的に参画しようとする態度であると考えられる」,この辺りが社会科,小・中・高を通じて目標とする非常に重要な態度であるというふうに思います。
前回,22日の議論でも大分御議論いただくことができたのですけれども,この内容を包摂する言葉として,「主体的に学習に取り組む態度」という言葉が重要なキーワードになっています。ただ,この言葉そのものを普通の日本人が聞くと,一生懸命に生徒が勉強しているなということを表現した言葉なので,「主体的に学習に取り組む態度」という言葉は何とかしていただけないかという思いでございます。そこに包摂されると定義をしていただいている,その後,三,四行の内容を踏まえますと,「主体的に課題に取り組む態度」としてはいかがというふうに御提案申し上げたいと思います。包摂していると明確に,丁寧におっしゃっていただいていることには大いに賛成いたしますので,その包括する言葉がいかがなものかという素朴な意見で恐縮でございますけれども,申し上げたいと思います。
資料の順番に,次に2点目ですが,資料8の3ページ目が高校公民のところになります。これについて2点ございます。「公共(仮称)」のところの一番右の枠のところの2項目目,ほかの資料にも出てくるのですけれども,「行為の結果として個人の幸福と共に,社会全体の幸福を重視する考え方」という表現がございます。これは前回拝見したように思ったのですが,意見は申し上げませんでしたが,どう考えても,個人の幸福と共に社会全体の幸福を重視する考え方は全く賛成なのですが,その前段,枕詞として付け加わっております「行為の結果として」という表現に違和感があります。幸福というのは,行為の結果として生じたものに対して味わうものなのだろうかというふうに思うところです。この「行為の結果として」というのが要らないのではないかというところです。
次の行の「(行為の結果よりも,)」となっているのですが,この前段のフレーズ,「行為の結果よりも」も不要なのではないかというふうに感じているところです。
そして,この資料の2点目です。下に移動しまして,次の黒い枠,「公共(仮称)」の二つ目の右の端の枠です。この中の二つ目の「選択・判断の手掛かりとなる」という表現で始まる項目です。この最後の行に「地域づくりに向けた役割を担う」とありまして,ここは「社会づくりに向けた」の方がいいのではないかと前回,22日に申し上げたのですが,同じ点を申し上げたいと思います。高等学校段階になりますと,この持続可能なということを考えるときに,地域社会に引きつけて考えることが代表的な事例として適切なのかどうかということはちょっと疑問がありまして,社会全体というふうに考えたほうがよいのではないかと思うところです。
それから,桐谷先生がおっしゃいました論点と関係するのですが,資料11の3ページ目,「公共(仮称)」の右の枠のところなのですが,二つ目の一番右の「学びに向かう力・人間性」のところです。「公共(仮称)」に関しまして二つ目の項目,「その解決に向けて他者と協働して意欲的に考察・構想し,説明・議論することを通して社会に参画し,よりよい社会を形成しようとする態度」となっております。大分いろいろと取り入れていただいたようにも思うのですけれど,やはり,「説明・議論することで社会に参画し」だと一つ足りないような感じを受けまして,ここのところに,例えば,「説明・議論し,試行的に実践することを通して」というふうに入れていただけると大変よいと思います。小・中,高,高校も含めましていろいろと事例を収集しておりますが,シミュレーション的に教室の中で行う,あるいは,学校の学習として,模擬企業を作るなど,社会に参画するいろいろな活動をされている事例がありまして,それを通じての学習効果は非常に高いと思っております。
それから,資料16につきまして,最後ですが,右下の方に水色のタイトルを網かけしていただいている項目があります。「主体的に社会的事象(等)に関わろうとする態度」としています。こちらが,前回の会議の資料では,この水色の少し濃い網かけのところが,「主体的に学習に取り組む態度」となっていまして,ここに関しても最初に申し上げた観点と同様,中に包摂されている項目は非常によいのですけれども,「主体的に学習に取り組む態度」だとちょっと違う感じがしますと申し上げました。大分変えていただいているのですが,もう一押しという感じです。「主体的に社会的事象(等)に関わろうとする態度」としますと,せっかくこの中の下の方の二つ目のマルを「課題を意欲的に解決しようとしている」としていただいていることが減殺してしまうように思います。この前段は「学習対象(社会的事象(等))について主体的に調べたり分かろうとしたりしている」とされており,調べたり分かろうとする対象としては社会的事象がよろしいのでしょうけれども,「事象」というと,どうしても自分の外にある事柄であるとか,もう発生してしまっている事柄であるように思われるので「課題」の方がいいのではないでしょうかというふうに申し上げてまいりました。その点は,ほかの資料では大分反映していただいていると思うのですけれども,この資料では,観点別評価の,この水色の濃い網かけを左に目を移していただいても,3項目とも「社会的事象(等)」について」ということでくくられております。この中の水色のところ,それから,その左の紫色のところは,「等」もつけていただいてはおりますけれども,「社会的事象」よりも「社会的課題」としていただいたほうがより適切ではないかと思うところです。ありがとうございました。

【館委員】  では,加藤委員,お願いします。

【加藤委員】  失礼します。時間がないと思いますので,1点だけです。今までたくさんの資料,図などの資料を出していただき私自身も非常に勉強になっているところです。資料8についてですが,これまでこの見方や考え方の例についての資料がずっと出てきていて,会議ごとにブラッシュアップされていると思います。今日の取りまとめの中にはも,見方・考え方は追究の視点・方法であって,学校段階が上がるにつれて追究の視点や問いの質が高まる,成長するのだと,そういうふうに説明されています。今回,小・中・高と縦のつながり,系統性を重視されてきているわけですが,この追究の視点や問いの質が高まるということが実際にどういうことなのか。これを一番表現するのがこの資料8になるのではないでしょうか。十分御配慮いただいて作成されていると思いますが,もちろん,この資料8が表に出る資料なのかどうかも分かりませんが,今まで何回もこの場で出てきた資料ということで非常に重要な資料だと思います。そこで,視点,あるいは問いの質が高まる,さらに,知識のレベルが変わってくる,レベルが上がるということを,より明確に示してもらえると,この資料8の意味がより大きくなるのではないかと思いました。
以上です。

【館委員】  ありがとうございました。予定ではもう一つ議題を入れてから休憩という段取りだったのですが,もう12時を回ろうとしておりますので,本当に短時間だけ少し休憩を取ります。一応5分を目安にしたいと思いますので,しばらく休憩ということで,時間をお守りしてお戻りください。よろしくお願いします。

( 休憩 )

【館委員】  それでは再開させていただきたいと思います。
続きまして,資質・能力を育む学習過程の在り方及び「目標に準拠した評価」に向けた評価の観点の在り方等についての議論に移りたいと思います。
かなり時間が押してきておりますので,端的に説明と御意見をよろしくお願いします。

【大内学校教育官】  失礼いたします。それでは,学習過程,それから評価の観点ということで,本文としては資料6の5ページ目以降,関連する資料といたしましては,資料14,15が中心になるかと思います。
まず,学習過程についてですけれども,資料14を御覧ください。主な変更点だけ確認していただければと思います。前回会議資料といたしましては,資料2の52ページが該当ページになります。学習過程の例につきましては,課題把握,課題追究,課題解決,新たな課題に沿った形で,小・中・高等学校いずれの校種においても,基本的に課題追究を行う際のプロセスとして,上の学習過程の例にも示しているような形での流れをとるということで,これまで整理してきていただいたところでございます。
具体的な変更箇所といたしましては,まず,一番左側の方に「主な評価とその場面の例」ということで,従前,能力の育成と評価場面とやや分かりにくく書かれていた箇所もありましたので,今回,左側に主な評価とその場面の例ということで,評価場面だということを明らかにすると共に,軸の名称を評価の観点に変えました。従前,知識,理解,技能,思考,判断,表現,主体的に学習に取り組む態度という育成する資質の方で書かれていたのですが,評価の観点で修正をし直したと。この評価の観点につきましては,先ほど岡崎委員からも少し御意見があったのですけれども,今回,資料15の方で改めて修正をして提案させていただいておりますので,そちらでまとめて御説明させていただきます。
また,前回頂いた御意見を踏まえて,その帯の示し方,例えば,主体的に社会的事象に関わろうとする態度について,情報収集に関わる部分がないのはおかしいのではないかとか,それから,いわゆる社会的事象についての知識・理解に関わるところについては,事実関係,実質的に知識がなければ,その方向付け等が定まらないのではないかという御意見を踏まえての帯の修正をしております。その他の文言の所要の修正をしてございます。
資料15は評価の観点でございます。こちらにつきましては,各教科の科目等の目標や内容に照らしまして,生徒の実現状況がどのようなものであるかということを観点ごとに評価をして,生徒の学習状況を分析的に捉えるため,観点とその趣旨を示させていただいております。
前回会議資料につきましては58ページで示させていただいております。評価の観点の,観点の名称について種々御意見を頂戴しておりましたので,今回改めまして,育成する知識・技能に関わっては,評価の観点としては,社会的事象(等)についての説明は先ほどのとおりです。「社会的事象(等)についての知識・技能」,それから,思考・判断・表現力については,社会的事象(等)についての思考・判断,表現。それから,学びに向かう力・人間性については,主体的に社会的事象等に関わろうとする態度ということで,評価の観点を社会科の視点から少し観点の名称を整理し直すと共に,従前,主体的に学習に取り組む態度の観点の中の観点の趣旨の中に,「学習状況を分析的に捉える評価になじまないものについては個人内評価が適当てある部分があることに留意」と,これは留意事項的なところでもありましたので,ここの枠の中からは今回削除しております。
現行の評価の在り方を考えますと,多面的・多角的な考察であるとか,深い理解を通して勧誘される自覚や愛情ということも含めまして,この「主体的に社会的事象(等)に関わろうとする態度」の中で,関連する資質・能力の趣旨を総合的に評価するということが,ここの枠組みであろうかというふうに考えておりますので,そういった形での修正を今回させていただいたということでございます。
また,資料15の補足資料として,現行の学習指導要領におきます評価の観点とその趣旨を,次の資料で添付させていただいております。
また,資料16でございますけれども,こちらにつきましては,大きな変更はないのですけれども,これまで御議論,御確認を頂いておりました見方や考え方,それを用いて活用しながら思考・判断・表現力を育成すること,あるいは,知識・技能に生かしていく,あるいは,知識・技能を活用しながら思考・判断・表現を重ねていく,見方や考え方を生かして主体的に学習に取り組む態度を育成していくことなどについての整理と,併せて,観点別の評価をする際の具体的な例として示した1枚物です。こちらについては所要の修正は図っておりますが,内容的に大きな変更ということはございません。以上が関連する資料でございます。
これらを基にして,学習過程の例と評価につきまして,資料6の5ページ目でございます。(3)資質・能力を育む学習過程の在り方というところからでございます。まず,学習過程の方についてですけれども,一つ目のマルのところで,「三つの柱に沿った資質・能力を育成するためには,課題解決的な学習の一層の充実」と,その一層の充実の際に,知識,あるいは概念や技能を習得,あるいは活用して思考・判断・表現しながら課題を解決する一連の学習過程において効果的に育成するということが,この三つの柱に沿った資質・能力を育成する際に,この課題解決的な学習過程での関連性を重視すべきではないかということが1点目でございます。
また,社会科については従来から,そういった問題解決的な学習の充実,それから,中学校では,適切な課題を設けて行う学習の充実が求められておりまして,今回そういったものを,その趣旨を踏襲するという方向で考えてはどうかということでございます。
二つ目のマルですが,学習課題の例としては,先ほど資料14の上段の方で確認していただいた,大きく三つの課題把握,追究,解決というプロセスで,その中に更に細分化すると,動機付け,方向付け,あるいは情報収集,考察,構想,まとめ,振り返りというようなものが入っているということです。さらに,中学校や高等学校の地歴科においては,こうした資料14で示したものをベースとしつつも,中・高等学校の発達の状況を踏まえまして,自ら問いを立てたり,仮説や追究の方法を考えたりするなどの課題解決的な学習の過程を,より発展させた学習過程も考えられるのではないかということです。
そういった,発展させた中・高等学校段階における学習過程というのは,その学習場面というのを資料14のような形での細分化をせずに,生徒の主体性を更に生かすことを想定しつつ,学習内容や社会に見られる課題等に応じて展開していくというような学習過程もあるのではないかということをまとめさせていただいております。
次のマルです。論点整理で示された「アクティブ・ラーニング」の三つの視点。具体的には,「深い学び」の過程,「対話的な学び」の過程,「主体的な学び」の過程,ここと,この資料14の学習の過程,学習のプロセスの中での関わりとして,まず一つ目としては,習得・活用・探究という学習のプロセスの中で,問題発見・解決を念頭に置いた「深い学び」の過程は上記の学習過程全体を通して,すなわち,資料14の学習過程全体を通して育成される。また,2ですけれども,他者との協働や外界との相互作用を通じて,自らの考えを広げ深める,「対話的な学び」の過程は,主として情報収集や考察・構想,あるいはまとめの学習場面において育成される。また,3でございますけれども,子供たちが見通しを持って粘り強く取り組み,自らの学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」の過程ということについては,主として動機付けや方向付け,振り返りなどの学習場面において実現することが考えられるのではないかということで整理をさせていただいております。
5ページ目の下,(4)「目標に準拠した評価」に向けた評価の観点の在り方ということでございます。従来より目標と評価の観点というのは表裏一体の関係にあるということを改めて押さえると共に,評価の観点の在り方は,育成すべき資質・能力と一貫性を持ったものに今回,改善すべきではないかということでございます。
三つの柱に沿った資質・能力と観点別学習状況の評価の観点,これにつきましては,先ほど御説明させていただきましたとおり,資料15の育成する資質・能力が上段に,その下に評価の観点として,それぞれ今回示させていただいたような表現の改善を図ってはどうかということでございます。
なお,学びに向かう力・人間性に関する評価の観点として,今回,「主体的に社会的事象(等)に関わろうとする態度」という形で変えているところでございますけれども,これにつきましては,社会科,地歴科,公民科において,学習対象である社会的事象等に積極的に関わろうとすることが重要であることから,この資質・能力の趣旨を総合的に評価するために,こうした観点とすることが適当であると考えられるというふうにまとめさせていただいております。
次のマルですけれども,「社会的事象(等)」についての知識・技能,一番左側のところですけれども,こちらについては,学習成果として身に付けている状況を評価する趣旨ということで,資料15の中の例示で記載されている,マルで示されているような部分についての文章化を行っております。
先ほど来,御意見として頂戴しておりましたが,今のマルの中の中段のところに,「主として用語・語句などを含めた個別の事実等に関わる知識と,主として社会的事象の特色や意味,理論などを含めた社会の中で汎用的に使うことのできる概念等に関わる知識とに分けて捉えることができると考えられる」ということです。「それらについて,学習過程に応じて『何々は何々である』と理解し,その知識を身に付けているかどうかを評価することが考えられる」ということで文章化をさせていただいております。
また,技能につきましては,先ほど来,見ていただいているとおり,収集する技能,読み取る技能,まとめる技能の三つに分けて,それらが身に付いているかどうかを学習過程に応じて評価をしていくということが考えられるのではないかということです。
次のマルですけれども,「社会的事象(等)についての思考・判断・表現」の観点でございますが,これについては,課題解決に向けて追究していく状況を評価する趣旨の観点ということで整理させていただいております。具体的には,思考・判断・表現ですので,社会科としてこれまで御議論いただいておりました,考察している状況,構想している状況,説明している状況,議論している状況,こういった思考・判断・表現力を評価する場面を学習過程に応じて,例えば,中段の当たりで,「多面的・多角的に考察しているかどうか,身に付けた判断基準,複数の立場や意見などを踏まえて構想しているかどうか,適切な資料・内容や表現方法を選び,趣旨が明確になるように内容構成を考え,自分の考えを論理的,効果的に説明しているかどうか,合意形成を視野に入れながら,他者の主張を踏まえたり取り入れたりして自分の考えを再構成しながら議論しているかどうかというような基準で評価することが考えられる」ということで,これにつきましては,資料16の下段に観点別評価の例を示させていただいておりますので,こちらを整理する形で文章化をさせていただいているところでございます。
資料6の7ページです。「なお,社会的事象等を取り扱う場合」については,これは学習のプロセスのところでも書き添えさせていただいていることですけれども,特定の事柄を強調し過ぎたり,一面的な見解を十分な配慮なく取り上げたりするなどの偏った取扱い,こういったことがないように留意する必要があるということをここで記載させていただいております。
また,その下でございますけれども,三つ目の観点であります,「主体的に社会的事象(等)に関わろうとする態度」,これについては,学習対象や学習内容に対する主体性を評価する趣旨の観点でございまして,主体的に調べたり分かろうとしたりしている状況であるとか,学習上の課題や社会に見られる次第を意欲的に解決しようとしている状況,こういったものを評価するということで整理をしております。前者,主体的に調べたり分かろうとしたりすることにつきましては,問いや追究の見通しを持っているかどうか,振り返り学んだことの意味に気付いているかどうかというようなこと,あるいは,学んだことを社会生活に生かそうとしているかどうか,こういった基準で評価することが考えられるのではないか。
一方で,意欲的に解決しようとしている状況,こちらについては,粘り強く試行錯誤しながら解決しようとしているか,他者と協働してよりよい結果を得ようとしているか。更には,先ほど来,これも御意見を頂戴しておりますけれども,よりよい社会を目指して解決しようとしているかといったような基準で評価することが考えられるのではないかということで整理をしております。こちらも資料16の下段で例示的で示させていただいておりましたものをまとめて表現したということでございます。
以上でございます。

【館委員】  はい,では,御意見がありましたらお願いいたします。井田委員,お願いします。

【井田委員】  先ほどの議論からの続きになるのですけれども,先ほど,村松委員の方から御指摘があったことですが,そう言われてみてずっと見てみると,クリティカル・シンキングの考え方がちょっと欠けているかなと。それは,技能になるのか,思考力になるのかちょっと難しいところがあるのですけれども,資料を批判的に読んで,そこからどの資料を選ぶか,あるいは,考え方,事実に対してそれが本当によかったのかどうかという思考後に入るというところ,そこら辺はどこに入るかちょっとあれですけれども,そういう考え方がちょっと入っていいかなと。そうすると,評価のところにも,そのような観点が少し入って評価されて,ちゃんと資料を吟味して考えたかどうかという評価が入ってくるのではないかと感じました。ですから,いわゆるクリティカル・シンキングをもうちょっと入れたほうがいいかなというところです。

【館委員】  井田委員,ありがとうございました。ほかに御意見ありますでしょうか。では,永田委員,お願いします。

【永田委員】  失礼いたします。資料14と15に関わって,前回,多分,岡崎委員が言われたところなのです。資料15の社会的事象(等)に関わろうとする態度のところの2個目の課題の,学習上の課題と社会に見られる課題というのはレベルが違うのではないかということを前回言われまして,私も全くそのとおりだと思っております。それを資料14の課題追究のところの考察・構想のところで見ますと,一つ目の黒マルのところ,そこが社会的事象(等)の意味や意義,特色や相互の関連で,これが大体,思考に当たる部分だと私は考えております。二つ目のところが,社会に見られる課題を把握して解決に向けて構想する,選択・判断するということで,言われている社会参画に関わるような問題であると考えます。できれば,資料15のところのマルを一つ増やしていただいて,ちょっと学習上の課題というのもわからないので,思考・判断・表現の紫色の真ん中,資料15の真ん中の項目に合わせていただくのだったら,「社会の意味や意義」とか,そのように項目として出させてもらって,もう一つが「社会に見られる課題」の項目をおく。それで「粘り強く」の文言は共通して位置付け,「他者と協働して」というのを「社会の意味や意義」のところで,よりよい社会を目指してというのが「社会に見られる課題」の項目というふうに分けていただくと,思考・判断・表現と関わる評価について,社会的事象に関わろうとする態度ということで,より分かりやすくなるのではないかというふうに思っています。
そして,ちょっと前の資料に戻って申し訳ないのですけれども,資料8のところで,最初に社会的な見方や考え方というのはベースではないかということで,資料8の思考・判断・表現力の考察と構想というところで,考察のところが,正に前者,学習上の課題,今,言ったように,「社会の意味や意義」なのではないか,構想のところが,「社会に見られる課題」に一致するところではないかということです。これらは一つの項目で一緒にされていると,パッと見たときに何のことかわからないというふうにイメージが湧きましたので,よろしくお願いいたします。

【館委員】  ありがとうございました。ほかに御意見ありますでしょうか。では,よろしいでしょうか。それでは,今の点に関しましては以上にします。
続きまして,教育内容の構造化や教育内容に見直しについて意見交換を行いたいと思います。先ほどのことで補足等がありましたら,まとめてお願いいたします。

【大内学校教育官】  それでは,資料6につきましては,少しページが飛びますが,10ページからになります。10ページの下の方に,(2)資質・能力の整理と学習過程の在り方を踏まえた教育内容の構造化というところでございます。そこと,11ページの(3)現代的な諸課題を踏まえた教育内容の見直しという箇所が該当してまいります。関連する資料といたしましては,本日お配りしております資料17で,こちらについては変更箇所はございません。基本的に前回と同じものでございます。これを基に資料6に(2),(3)を御確認いただければと思います。
まず,(2)の方ですけれども,10ページのところですが,「資質・能力の整理と学習過程の在り方を踏まえた教育内容の構造化」ということで,一つ目のマルは,従来より,内容について三つの柱に沿った資質・能力や学習過程の在り方,今まで御議論を頂いたところですけれども,これらを踏まえて,その趣旨を実現すべく,次の2点から改めて構造化をしてはどうかということでございます。
まず,一つ目でございますけれども,視点の第一は,社会科における内容の枠組みや対象に基づいた構造化である。小学校社会科では,これは本日の資料17の「内容の枠組み」という横軸のところに当たるところなのですけれども,小学校社会科では,中学校社会科の分野別構造とは異なり,社会的事象を人間(人々)の働きや生活を軸にして時間的(歴史的)にも,空間的(地理的)にも,あるいは相互関係的にも捉えるべく総合化された内容として構成されている。そのため教師は,指導している内容が社会科全体においてどのような位置付けにあるか,中学校社会科とどのようにつながるかといったことを意識しづらいという点が課題として指摘されているのではないかということでございます。小学校社会科の特性を生かしつつも中学校社会科の分野別の内容との接続が見えるようにするためには,マル1として,地理的環境と人々の生活,マル2として,歴史と人々の生活,マル3として,現代社会の仕組みや働きと人々の生活ということで,資料17の内枠組みの下に出てくる横軸のところを少し書き添えております。
また,マル1,マル2,すなわち地理的環境と人々の生活,あるいは,歴史と人々の生活については,空間的な広がりを念頭に地域,日本,世界というような対象分けを,マル3の現代社会の仕組み,働き,人々の生活については,社会的事象について経済・産業,政治及び国際というような枠組みで区分して整理してはどうかということが資料17の横枠組みの説明でございます。
また,視点の2点目,すなわち,教育内容を構造化するに当たっての視点の2点目といたしましては,これまで御議論いただいております社会的な見方や考え方に基づいて構造化してはどうかということです。社会的な見方や考え方は追究の視点や方法であり,社会的な見方や考え方を用いた学習は,時間,空間などの追究の視点に着目して,事実等に関する知識を習得し,それらを比較,関連付けなどして考察・構想し,特色や意味,理論などの概念等に関する知識を身に付けるという学習であるということができる。このことを踏まえて,学習指導要領の内容については,例えば,追究の視点や方法と具体的な事実等に関する知識,概念等に関する知識を構造化して示していくことが考えられるのではないかというような形で整理をしております。
次に(3)でございますけれども,現代的な諸課題を踏まえた教育内容の見直しでございます。一つ目のマルですけれども,これはリード文として,社会に見られる課題を把握して,これからの時代は将来の予測が非常に困難な時代であるわけですが,そういった中で,グローバル化,持続可能社会の構築,情報化等による産業構造の変化,それから,将来につながる現代的な諸課題を踏まえた教育内容の見直しを図ることが必要ではないかということで教育内容の整理をしたところでございます。
括弧書きで,まず,グローバル化への対応のところでございますけれども,グローバル化する国際社会を主体的に生きるための資質・能力の育成の観点から,日本と世界の生活・文化の多様性の理解や,地球規模の諸問題や地域的な諸課題の解決について,時間的・空間的など多様な視点から考える力を身に付けていくことが求められる。このため,資料17のところにも記載しておりますけれども,次のマルで,小学校の社会科においては,市役所など行政機関が行う地域社会の国際化への対応や,世界の歴史に関する地図などを使った我が国の歴史的事象の理解など,世界の国々との関わりへの関心を高めるよう教育内容を見直すことなどが考えられるのではないかということです。
また,次のマルですけれども,中学校社会科歴史的分野では,高等学校で新必履修科目「歴史総合(仮称)」が設置されることを受けまして,我が国の歴史事象に直接関わる世界の歴史に加えまして,間接的な影響を与えた世界の歴史の学習を充実させ,より広い視野を持って,我が国の歴史の理解を促すことが考えられるのではないかということでございます。例えばですけれども,世界で行われていた異なる文化との接触や交流が日本に影響を及ぼしていることに着目して,ムスリム商人の活動をはじめとした交流などを取り上げることなどが考えられるのではないかということでございます。
次のページですけれども,持続可能な社会の形成への対応の観点です。グローバル化への対応の観点も含め,持続可能な社会づくりの視点が一層大切になると考えられる。例えばということですけれども,中学校社会科地理的分野におきましては,引き続き「世界の諸地域」の学習においてその地理的な認識を深めることを重視し,その際,国境を越えた地球規模の課題等を主題として取り上げ,持続可能な社会づくりの視点を生かした学習を充実させることなどが考えられるのではないかということでございます。
次の視点として,情報化の進展等による産業構造の変化への対応です。前回の学習指導要領の改訂におきましては,知識基盤社会の時代に対応した改訂が行われたところでございますけれども,この間,知識基盤社会の流れが非常に加速しているところでございまして,社会の変化に伴う産業構造の変化が生じていることに鑑みて,例えば,情報化の進展は,地理的・空間的な制約を軽減させてきており,ネットワークの発達,あるいは世界的な情報量の増大ということを引き起こしており,IoTであるとか,ビッグデータ,人工知能ということなどと結び付いて,その付加価値を生み出してきているということを踏まえて,情報化など知識基盤社会化による産業や社会の構造的な変化,こういったことに関する取扱いを充実させてはどうかということでございます。これは小学校5年の産業学習との関わり,あるいは中学校の公民的な分野のところで考えてはどうかということで資料17で示しているところでございます。
次に,防災・安全教育への対応のところです。こちらについては,本ワーキンググループでは,既に防災安全関係の取りまとめ,提言の一部を参考資料として説明申し上げたところでございますけれども,防災教育を含む安全教育の重要性に鑑みまして,例えば,小学校社会科,中学校社会科地理的分野,公民的分野,それから高等学校公民科におきまして,それぞれの児童生徒の発達の状況を踏まえまして必要な内容が整理されたところですので,こうしたものを踏まえながら指導の充実を図っていってはどうかということがここのマルで書かれております。
なお,こうした既に提言をされている点も踏まえて,これらの教育内容につきましては,我が国の国土において発生する自然災害ということを対象としておりますので,我が国の国土の様子を理解する学習の充実ということも併せて検討してはどうかということで記載させていただいております。
次に,12ページの一番下のマルですが,選挙権年齢の18歳への引下げに伴う政治参加への対応のところです。こちらについては,御案内のとおり,18歳に選挙権年齢が引き下げられることを踏まえまして,高等学校公民科での学習の充実につながるように,小学校や中学校における政治や社会に積極的に参画する資質・能力の育成という観点から,例えば,小学校の社会科におきまして,地方公共団体の政治の働き,選挙の意味などについての充実を図るというような形で教育内容を見直すことなどが考えられるのではないかということでございます。また,中学校の社会科でございますけれども,こちらについては歴史的分野の学習で,例えばですけれども,民主政治の来歴や人権思想の広がりなどに着目して,古代ギリシャ・ローマの社会やアメリカ合衆国の建国における自由や平等への動き,そういったものなどを取り上げながら参政権の扱いを充実させること,公民的分野の学習においては政治参加の扱いを充実させること,こういったことを通して高等学校公民科における学びにつなげていってはどうかという内容の改善の整理,提案でございます。以上,12ページまでが内容の改善に関わる文章化の整理でございます。
以上でございます。

【館委員】  ありがとうございました。では,御意見等を伺いたいと思います。石上委員,お願いします。

【石上委員】  それでは,3点お願いいたします。まず,1点目になりますが,資料17のところの中学校地理的分野のところ,ちょうど「国土や防災に関する内容を充実」というのが赤い小さい字で入っているかと思います。やはり,国土認識を培うというのは,私も非常に大事な学習の一つだと捉えているところです。特に今回,グローバル化がますます進展していく中では,領土に関する学習というものを充実してもらいたいと思います。いわゆる,北方領土,竹島,尖閣諸島がございますが,そういう領土学習と絡めながら,海洋について,きちんと学習する必要があるのではないかと思っているところです。これが1点目になります。
2点目ですが,資料6の11ページの一番下のマルになります。先ほど説明がありましたように,中学校歴史的分野,「我が国の歴史事象に直接関わる世界の歴史に加え,間接的な」ということで,前からも,ISの問題を含めて世界史をもう少し充実するというような話がありました。私も確かにそのとおりだと思うのですが,日本史を理解するための世界史学習という視点もあるかと思いますが,現代社会を捉える,これから生きる子供たちにとって必要な歴史学習というものはどういうものが必要なのかという観点からも御検討いただきたいと思っております。
現在でも歴史的分野が地理に比べて時数が多いというようなことがありまして,地理,歴史,公民のバランスを大事にしてほしいと思います。やはり,せっかくパイ型学習で培ってきたこれまでの経験が十分に生かされていかないと思います。また18歳選挙権もあり公民学習も充実することが必要です。高等学校だけではなく,中学校でもその辺はきちんと学習していく必要があるというふうに考えております。これが2点目になります。
それから,3点目は,資料6の12ページの真ん中に防災・安全教育への対応というところがございます。正に防災教育はきちんとやるべき学習だというふうに私も捉えています。「地理的分野において地域社会における安全,防災上の災害要因」という部分がありますが,私は,地理的分野の「身近な地域の学習」が大事だと思います。現地観察を伴う身近な地域の学習をしっかり行い,自分の住んでいる地域を,地理的に歴史的に捉えることが必要だと思うからです。自分の目で見て確認する,そういう学習がもっともっと必要ではないかというふうに思っております。
以上3点です。よろしくお願いいたします。

【館委員】  井田委員,お願いします。

【井田委員】  私も地理的分野のところなのですけれども,先ほど石上委員からも指摘がありましたけれども,海洋について今までも扱っていましたけれども,より充実させる必要があるかなと思っています。というのは,一つは,領土の問題というのを挙げられましたけれども,漁業に関しても地下資源に関しても海洋というのは重要なもので,それと領土は関わるとは思いますけれども,そういう意味では一つ,国としては重要だということです。
  もう一つは,グローバルな観点からも,今の水産資源なり地下資源なりをどう扱うか,それが持続可能な社会にも結び付いてくるということで,地球の7割を占める海洋というものを,もう少し充実させる方向が考えられるかなというふうに思っています。
以上です。

【館委員】  桐谷委員,お願いします。

【桐谷委員】  済みません,私は2点です。1点目は,資料6の11ページの現代的な諸課題を踏まえた教育内容の見直しというところで,グローバルへの対応というのは非常に重要な指摘で,これを入れていただいたのは非常に有り難く思います。それで,こういうふうに書かれている中で読みますと,やはり,グローバル化というのと国際化というのが,ある意味ではほぼ同義のように使われていて,外国との関係をどう考えるか,若しくは,外国の影響を日本が受けたということをどう理解するかというところが,ここではグローバルの対応というふうに中心に書かれているのですが,これは非常に重要な視点だと思います。これは欠かせないのですが,ただ,今現在のグローバル化は,グローバル化が進むことによって,ちょっとありますけれども,日本そのものの諸地域が多文化化している,こういう社会の変容みたいなものを,この中でもう少し明記していただくとよくなってくるのではないかと思います。
例えば,事例で言いますと,資料17の方で,身近な地域や市の様子が,多文化化していくと国際化への対応という行政の働きだけではなくて,地域そのものが,住民が抱える課題みたいなものが多文化問題として成立していたり,それが恐らく,廃棄物の処理の問題であったり,インフラのフリーライダーの問題等に絡んできて,これは小・中,高を通して考えるべき問題ですし,若しくは,そういう言語の問題を含めて,地域でどうやって共生していくのか,これは恐らく資料6の12ページにあります持続可能な社会の形成という観点につながっていく重要な見方として,多文化化という概念と言ったらいいでしょうか,用語はもう少し明確に,グローバル化と多文化化は遂になる概念として捉えてくると,これからの社会のありようを考えていくことに意味があるので,是非,そういうことを御検討いただければと思います。これは,地理でも,歴史でも,公民でも必ず入ってくる,要は,日本の歴史も多文化化してきた歴史でもありますし,地理では,多文化状況は地理的に当然分析されますし,今度は,公民では,そういう多文化的な社会になったことの様々な課題をどのように公民として解決していくのかということが学習内容になってくると思いますので,共通するような社会の捉え方として御検討いただければというふうに思います。
それから,しつこくなるようですけれども,12ページになると,防災・安全教育の対応,それから,18歳への政治参加ということで,参加が大分出てきているので,繰り返しになりますけれども,この辺りを,態度ではなくて思考・判断・表現の中で位置付けないと,きちんとした社会参加できない子供を育ててしまうリスクがあるので,そこを考えていただきたいです。
3点目です。中学校の歴史に世界的な内容が入ってくるということで,これは私も非常にすばらしいと思うのですが,時間的にかなり厳しいのではないか。こうするとしたときに,中学校の歴史的分野の時間数を増やすというのはなかなか難しいと思うのです。そうすると,歴史の内容の,いわゆる強調点の置き方というものをどういうふうにしていくのかということが非常に重要な課題だろうと思います。そういうことについて,現場の先生が実践しやすい形で内容の整理について御検討を頂きたいと思います。
以上です。

【館委員】  はい。矢吹委員,お願いします。

【矢吹委員】  済みません,桐谷委員と同じ意見のところもあるわけなのですけれども,2点あります。資料6の12ページの情報化の進展等による産業構造の変化への対応ということで,これは,私は思うのですが,すぐ産業構造の変化というふうにするよりも,やはり「身近な」というのが先ほど来,言われているように,自分の生活というものが情報化社会の進展によってどう変わったのかということから関連付けて,それが産業構造の変化にどう変わっていっているのかというのと対比させながら考えていくことがやはり大事ではないのかなというふうに思っております。
児童生徒に教えるときに,絵空事ではなくて,身近な自分の生活がどう変わっているのか,それが社会とどうつながっているのかというのを考えるときに,やはり,身近な毎日の生活というものがどう変わっているのかというところからこういった記載をしていただけたらなというふうに思っております。
以上です。

【館委員】  岡崎委員,お願いします。

【岡崎委員】  ここで幾つかの切り口を提示していただいていまして全て重要だと思いますけれども,一つ,金融経済教育の充実というのを入れていただければと思います。当たり前のように聞こえるかもしれませんが,冒頭のところで述べていただいています変動する社会,社会は大きく変動して予測が困難になっていくということなのですけれども,その中で,自立して他者と協働しながら生きていく力をつけることが非常に重要であるわけです。本日も社会的な課題の解決に向けて学習していくことが論じられているわけですけれども,その力が今,学生たち,児童生徒に十分ついているかというと,非常に心配な状況であるからこそ,このような見直しが行われようとしているものだと思います。そのような観点は共有されているわけですが,その点を明示的に取り上げておきませんと非常に心配な状況になるのではないかと思います。経済的な社会の中で生きていくということが基本でありまして,お金や金融経済と関わりなく人は生きているわけではありませんので,そういったことがどうなっているのか,社会保障や年金,労働市場,金融市場,資本市場はどうなっていくのかということについて理解をしなければいけないと思います。
ちなみに,22日にも申し上げたのですけれども,日本人の金融リテラシーにつきまして,現在行っている調査と,まだいずれも公表しておりませんけれども,それからOECDがただいま行っている24か国参加している調査と比べてみますと,日本人の順位は非常に低いところにございます。これは,大人,18歳以上の調査ですけれども,その時点で非常に低いということは,18歳,高校を卒業するまでに力をつけなければならないということを意味すると思います。諸課題がございますし,さらに,難しい状況になっていくことが考えられるわけで,その課題に直面して生きていっていただく力や,日本を,あるいは世界をよくしていただく力を子供たちにつけなくてはなりませんので,そのために金融経済教育の充実というのを入れていただきたいというふうに考えます。ありがとうございました。

【館委員】  ありがとうございました。
では,次の議題に入りたいと思います。残すところ時間が10分ほどです。できるのが,次の「学習・指導の改善・充実や教材の充実や条件整備等について」,ぎりぎりなのかなという感じですが,その辺りの進行も含めまして,13時は余り超えたくないので,その辺りも含めてよろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  失礼いたします。それでは,構造だけ御説明させていただきまして,後ほど,それぞれお読みいただくということで,ペーパーによる御意見をいつものように頂戴するという進め方でもよろしゅうございますか。
では,残りの部分の構造だけ説明させていただきます。資料5をお手元に御用意いただけますか。資料5と資料6です。資料5は,冒頭,本日の会議に先立ちまして御説明申し上げた各ワーキンググループ等で検討しているところということで,実は,本日御議論いただきましたのは,資料の5の右側ですが,1番,3番の育成すべき資質・能力のところ,それから,目標と評価のところ,すなわち,3の(1)(2)(3)(4)まで文章を御覧になっていただきました。それから,今ほどですけれども,4の教育内容の改善・充実のところの(2)と(3)を今,御覧になっていただいたというところです。
冒頭,梶山主任視学官からもお話がありましたけれども,地歴科,あるいは公民科で文章化しているもの,特に御説明申し上げませんでしたが,文章として今,公民科の分については,一度御議論しておりますので入っております。それが4の(1)に当たるところです。これは,この場では御議論を頂戴しませんでしたが,もちろんペーパーによる御意見を頂戴したいというふうに思っております。この後,御説明し御議論を頂戴しようと思っておりましたのは5と6のところです。
5と6につきましては,資料6で御覧いただきますと,今ほどの資料の後ろ,番号が一つずれているのですけれども,13ページの4,学習・指導の改善・充実や教材の充実というところから始まります。これは資料5で言うところの5.のところです。(1)が特別支援関係,(2)が「深い学び」,「対話的な学び」,「主体的な学び」に向けた学習・指導の改善・充実に向けての記載。それから,(3)については,教材はまだ十分整理できていないので,ここでは省略されています。ですので,13ページ以降で,先ほどの見出しで参りますと,5の(1)と(2)の部分が,それぞれ,本来,御説明申し上げようと思っていた点です。
それから,その後ですけれども,14ページの5,必要な条件整備等についてというところで,こちらについては,先ほどの小見出しで行きますと,6,必要な条件整備等についてに当たりまして,こちらについては,本日配付しております資料18がありまして,これまで本ワーキンググループ,それから特別チームにおいて一部,条件整備に係る部分の御意見を頂戴しておりましたので,そういったものをまとめつつ,本日,14ページ以降で再整理をさせていただいたという構造になっております。一文一文,御説明申し上げられず大変恐縮でございますけれども,構造としては,13ページ以降で4,5,学習指導の改善・充実,それから必要な条件整備というところが,先ほどの資料5に照らして,残りのところで御議論いただく予定としていた点でございます。こちらにつきまして,もちろん,この前の部分も含めてですが,ペーパー等で御意見を頂戴できればということで御説明を省略させていただきます。失礼いたします。

【館委員】  はい,ありがとうございました。では,時間も足りなくなってきておりましたので,その辺りのペーパーは読んでいただいて,御意見がある方は,是非,事務局にお送りいただければというふうに思っております。
それから,「公民的資質の問題」,あるいは「公民としての資質の問題」などもかなり今後大きな問題になるかと思いますので,その辺りの資料等についても熟読していただき,御意見を整理しておいていただければと思っております。

【廣嶋委員】  済みません,一言だけ。

【館委員】  はい,では,廣嶋委員,お願いします。

【廣嶋委員】  済みません,ギリギリになって。先ほど,グローバル化への対応のところで申し上げようかと思っていたのですが,後で条件整備の話が出てくるかなと思っていたのでちょっと控えました。地図帳のことなのですけれども,これは今,4年生から配付しているのです。3年生から配付できないと,グローバル化への対応といっても,恐らく市の関係については3年生でやることがほとんどだと思うんです。そうすると,市町村における国際化の関係等を扱ったときに,地図帳で確認する学習ができません。それと地図がもともとかなりいいかげんに使われているところもあるので,地図帳を3年生から配付し,きちんと使える体制にしてもらったら,社会科がもっとよくなるのではないかと思っています。
併せて,地球儀も今は活用が5年生からになっていますけれども,地球儀に,1年生,2年生ぐらいからさわる,そのぐらいの感じじゃないとグローバル化への対応になかなかなっていかないのではないか。子供たちは地球儀を見ると物すごく喜びます。特に小さい子ほど喜びますので,そういうことも併せて検討していただけると有り難いと思います。よろしくお願いします。

【館委員】  はい,ありがとうございました。では,よろしくお願いします。

【仙田委員】   私は学校現場にいて,ここにある11ページ,12ページの現代的な諸課題の見直しと,13ページの「アクティブ・ラーニング」の「深い学び」は,両方やるようにと言っても無理だと思っています。これだけの内容を短い時間で「深い学び」ができるわけがないのです。今,委員の先生方が言われたのは全部もっともなことだと私は思います。しかし,現場では全部できないと思います。どれを,どう精査していくのかということを考えないと机上の空論に終わります。私はこれだけは警鐘としてお伝えしたい。どういうふうにしたらこれがうまくできるのかということを考えていくことが,私は一番大事だと思います。
以上です。

【館委員】  岡崎委員。

【岡崎委員】  済みません,今後の作業日程につきまして冒頭に御説明いただいたのかもしれませんが,ちょっとよく理解できていないので御説明いただければ幸いです。資料6を今後完成して教育課程部会に提出すると共に公表するという御予定でしょうか。また,資料6と共に本日の資料のうち,いずれを完成して公表するのかを併せて教えていただけたらと思います。これに付随して,5の(3)教材の在り方のところは非常に重要だと思っているのですけれども,どのようなプロセスで議論を進め,仕上げていくのかということを教えていただければ有り難く存じます。

【館委員】  では,文科省,お願いいたします。

【梶山主任視学官】  本日の御議論を踏まえましてこちらをブラッシュアップしていくことは当然でございますが,まず,高校の地歴科に関する御議論というのがあるのだと思っております。それを御議論いただいて,併せた形で,高等学校の地歴科と公民科を御議論いただく特別チームがございます。まず,特別チームに御意見を頂いた後に,もう一回,皆様方に御議論を頂くことを今,考えております。
それから,最終的には各ワーキンググループ,社会だけではないですが,国語とか算数,様々ございますが,それをまとめた形で最終的なものが出てくるというように考えております。それは,私どもだけではなくて全体の教育課程部会の横串的な調整とかが行われた上で文章というのが確定していくのだろうと思っております。その際,ここで御紹介している,また皆様に御議論いただいている資料というものに関しては,基本的にはほとんどのものを付属資料みたいな形でついていくのかなと考えております。一番分かりやすいものだけ,重複しているものは付けないとか,そういうことはあるのだと思いますが,要素,要素の主要な部分については付けていくというイメージで今のところ考えております。
以上です。

【岡崎委員】  ありがとうございました。

【館委員】  基本的には,資料6辺りが中核にはなっていくということで考えてよろしいでしょうか。

【梶山主任視学官】  資料6を中核に,その他の資料も付属資料みたいな形になっていくことを想定しております。

【館委員】  では,よろしいでしょうか。今,少し言及されましたけれども,本日及び今後開催予定のワーキンググループにおいて頂いた御意見を踏まえまして,5月に開催予定の高等学校地歴,公民科科目の在り方に関する特別チームにおいて,社会・地歴・公民ワーキンググループにおけるこれまでの議論について報告する予定でおります。また,本ワーキンググループにつきましては特別チーム等の御意見などを受け,その後開催させていただきたいと思います。
本日予定されていた議題はここまででありますが,最後に次回以降の日程について説明をお願いいたします。

【大内学校教育官】  ありがとうございました。今ほどスケジュールについては共有いただけたかと思ってございますけれども,改めまして,特別チームが終わった後に開催日程を調整させていただきまして,どういう形で開催できるかということもまたあるのですけれども,特別チームでの御指摘を踏まえた修正に当たっての開催を念頭に置いているということでございます。改めましてスケジュール,日程調整につきまして別途,御連絡を申し上げたいと思います。
以上です。

【館委員】  基本的に,このワーキンググループ等は,次回が最後になるということでしょうか。それとももう少し何回か続くということでしょうか。

【大内学校教育官】  この後,先ほどもちょっと梶山主任の方からも話がありましたけれども,まだ地歴を中心としたワーキンググループの議論が残っておりまして,これは5月に入ってから行う予定です。その議論も踏まえて最終的に特別チームの方にどこまでの時点で上げられるかということにより決まってくるかと思います。その後になりますので,ほかのワーキングの議論や審議の状況も踏まえた形で,最終的にその後,何回できるかということになろうかと思っております。

【館委員】  はい,ありがとうございました。それでは,第11回の社会・地理歴史・公民ワーキンググループを終了いたします。ありがとうございました。

── 了 ──


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