教育課程部会 社会・地理歴史・公民ワーキンググループ(第7回) 議事録

1.日時

平成28年3月4日(金曜日)10時00分~12時30分

2.場所

文部科学省 3階 3F1特別会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 社会・地理歴史・公民の改善充実について
  2. その他

4.議事録

【原田主査代理】  先生方,おはようございます。定刻より若干早いのですけれども,ほぼ予定された方が御出席のようですので,時間を有効に使うために,ただいまから開会したいと思います。中央教育審議会初等中等教育分科会の教育課程部会,社会・地理歴史・公民ワーキンググループの第7回でございます。本日は,お忙しい中,お集まりいただきまして,ありがとうございます。
第1回の会議において,本ワーキンググループの土井主査から御提案ございましたように,本ワーキンググループにおきましては,議論する事項に応じて小グループに分けて議論させていただいております。本日は,主に高等学校地歴科における申請科目の構成等について御意見を頂く予定としておりますので,その関係の皆様にお集まりいただきました。
また,進行は前回同様,私が務めてまいりますので,よろしくお願いいたします。
それでは,まず初めに,事務局から配付資料について御説明をお願いいたします。

【大内学校教育官】  失礼をいたします。
それでは,配付資料の確認をお願いいたします。本日は,議事次第に記載しておりますとおり,資料1から資料9,それから参考資料が1,2の二つ,その他,机上に関係する資料をお配りをしてございます。不足等がございましたら,事務局の方へお申し付けください。
また,机上のタブレット端末には,関連する資料をデータで入れてございます。詳細は次第の2枚目の方を御覧いただければと思います。
以上でございます。

【原田主査代理】  では,これより議事に入ります。本日は,報道関係者より会議の撮影及び録音の申出があり,これを許可しておりますので,御承知おきください。
さて,本日は地理科目の改訂の方向性として考えられる構成,また,「歴史総合(仮称)」,仮称ですが,方向性として考えられる構成,歴史科目の改訂の方向性として考えられる構成,そして最後に,地理歴史科全体で育成すべき資質・能力の整理,大きくこの4点につきまして,意見を交換したいと思います。
議事の流れとしましては,まず事務局から資料に基づき御説明を頂きまして,議論の内容ごとに御意見を伺いたいと思っております。
それでは,具体的な本日の議題に入ります前に,これまで事務局の方から,本ワーキンググループや,高等学校の地歴・公民科目の在り方に関する特別チームに関する検討状況について御紹介を頂きます。特に本日の議論に直接関わる内容,地理や歴史に関する科目の方向性等につきましては,後ほど議論の対象となる資料の説明に併せていただくとして,ここでは主として高等学校の公民科に置く新科目の内容・構成の考え方についての審議,また,小・中学校の社会科等で育成すべき資質・能力の整理についての審議について,意見の概要の説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【梶山主任視学官】  それでは,私の方から,今までの議論の御紹介をさせていただければと思っております。まず,資料2を御覧ください。資料2が,ワーキンググループにおけるこれまでの主な配付資料に関して,まとめたものでございます。このうち,まず資料6,ページ数でいいますと18ページを御覧いただければと思います。
ワーキンググループにおきましては,社会科における見方・考え方,それから思考力,判断力,表現力などのいわゆる3本柱というものについて,どのようなものが考えられるのかというところにつきまして,小・中を中心に御議論いただいているところでございます。そちらにつきまして,2回今まで会議が行われているところでございますが,18ページの図を,まず御紹介させていただければと思います。見方や考え方と,思考力,判断力,表現力のイメージ図ということで,前回御紹介させていただいた図を改変して,より改善したものでございます。
小学校の見方・考え方を踏まえまして,中学校の見方・考え方というものはどうなっていくかというところで,例えば,上の中学校のところを見ますと,地理は左のところでございますが,社会的事象の地理的な見方や考え方として,位置や空間的な広がりとの関わりに着目して社会的事象を見出し,地域等の枠組みの中で,環境条件や他地域との結び付き,人間の営みなどと関連付けまして,左にありますように,考えたり,考察したり,構想したり,説明したり,議論する,このようなところが地理的な分野の本質なのではないかということ。
それから,歴史に関しましては,社会的事象の歴史的な考え方,見方とありますように,推移や変化などに着目して,社会的事象を見出し,比較して相違や共通性を明確にして,原因と結果を関連付けて考察したり,構想したり,説明したり,議論する。このようなところを教科における特質として,思考力,判断力,表現力を育んでいくということを意識すべきではないかというところが御議論いただいているところでございます。
また,19ページを御覧いただけるかと思いますが,そのときに考えられる追究の視点,それから追究の視点を生かした「問い」というもの,また,先ほど御紹介した,見方や考え方というものがどのようなことで,最終的にこのような知識や概念を獲得していくのだというようなことの例を,こちらの方に御覧いただき,また御議論いただいているところでございます。
それから,次のページを御覧いただければと思いますが,社会科等で育成すべき資質や能力の整理というところで,個別の知識や技能,思考力,判断力,表現力等,情意・態度に関わるものということに関しまして,それぞれの学校段階で整理していく必要がございます。現行の学習指導要領というものを中心に,このような形でたたき台として一応御議論いただいているところでございますが,特に小学校社会の赤のところがございますが,こちらにつきましては,論点整理におきまして,このような事項について,より検討を進めてほしいというようなところを,この赤で書いてあるところでございまして,例えば,小学校の社会であれば,世界の国々との関わりや,我が国の政治の働きへの関心,よりよい社会を考えようとする態度についての検討,このようなところを,こちらの方に一応置かせていただきまして,情意・態度だけではなく,ほかのところも考えられるのかもしれませんが,このような検討が必要ではないかというところを示しております。
また,中学校の歴史分野のところを御覧いただければと思いますが,論点整理におきまして,世界の歴史の取扱いというものに関しての検討の話がございますので,このような形でここに置かせていただきまして,これをどのようにブレークダウンしていくのか,どのように考えていくのかというところを御議論いただくことになっております。
それから,その次のページは参考資料でございますので,23ページを御覧いただければと思います。このような資質や能力を育んでいく,それから見方・考え方というものを考えて指導を行っていく際に,どのようなプロセスで,どのようなところを見取っていくかというところに関しましても議論を頂いているところでございます。
例えば,中学校の学習過程において,社会的な課題について学習課題を設定し,その課題解決の見通しを持ち,様々な資料を活用した情報収集などを行い,考察,構想を行い,それをまとめ,振り返るというところ。それに当たっては,それぞれ知識・理解,技能,思考・判断・表現,主体的に学習に取り組む態度というものが,下にありますようなパートで特に見られていくのではないか。そこを評価していくということで,全体の学習プロセスと評価というものを考えていくべきではないかという,このような議論がなされているところでございます。
小・中学校関係のところで御議論されているところは,以上でございます。
それから,引き続き,公民系のところに関して御説明させていただきたいと思いますが,25ページを御覧いただければと思います。特別チーム及びワーキングにおいて,前回こちらの会議が開かれた後,2回御議論が進んでいるところでございますが,現在,「公共(仮称)」の構成を,今,御検討いただいているところでございます。まず,「公共(仮称)」の方向性としまして,25ページにあります「公共の扉」というパート,それから(2)にありますような,自立した主体として社会に参画し,他者と協働するためにというパート,それから3番目で,持続可能な社会づくりの主体となるためにという3段構成とするということに関しまして,前回で御議論の過程で御紹介したところでございますが,「公共の扉」につきまして,ア,イの中身をより詰めていただくと共に,ウという,公共な空間における基本原理というものを(1)というところで子供たちが学んでいくというのが(2)につながっていくのではないかという御議論がなされ,アイウという形で,今,御検討いただいているところでございます。
それから,次のページを御覧いただければと思いますけれども,自立した主体として他者と協働するために様々な主体になっていくことが必要だというところでございますが,このアイウエなどに関しては,前回とそれほど変わっていないところでございますが,矢印のところ,一番上を御覧いただければと思いますが,小・中学校社会で習得した知識等を基盤に,社会的事象の見方・考え方を働かせながら,「公共の扉」で身に付けた選択・判断の手掛かりとなる考え方や公共的な空間における基本的原理等を活用して,現実の社会的事象について考察,追究すること。社会的事象,様々な事象となるというところがあるのですが,そこを単に今までどおり教えていくわけではなくて,そこは追究していく,考察していくような科目ということを,より明示すべきだというところから,このようなところも明示させていただいているところでございます。
それから3番目,27ページを御覧いただければと思います。そのようなことを踏まえまして,最終的に様々な地域レベル,国家レベルや,それから世界レベルのことについて探究をしていこうというようなところでございますが,こちらについても,どのような内容が考えられるかというところについて御議論いただいているということでございます。
また,「公共(仮称)」につきまして,キャリア教育の視点も非常に重要でございます。キャリア教育として経済,法,情報発信などに対して主体的に参画する力を育む中核的機能を担うことが求められるのではないかということ。このようなところも,書かせていただいているところでございます。
「公共(仮称)」に関しては以上でございますが,30ページを御覧いただければと思います。本日,歴史と地理においても御議論いただくわけでございますが,必履修科目と新選択科目について,どのように考えていくかということに関しても御議論いただいているところでございます。繰り返しで恐縮でございますが,新必履修科目「公共(仮称)」というものが,現代社会の課題を捉え,考察するための基準となる概念や理論を,古今東西の知的蓄積を通して習得するようなものである。立場や文化によって意見の異なる様々な問題について,その背景にある考え方を踏まえて,よりよい解決の在り方を協働的に考察し,公正に判断,合意形成をする力を養うのである。それから,持続可能な社会づくりの主体となるために,様々な課題の発見・解決に向けた探究を行い,平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質や能力を養うのである。
このような「公共(仮称)」の構成を踏まえまして,中ほどにありますけれども,公共的な事柄に自ら参画しようとする意欲や態度を育み,現代社会に生きる人間としての生き方,在り方についての自覚を一層深めていくような学習を充実していくのではないかというところで,「倫理」と「政治・経済」という仮称のものを設けてはどうかという議論が行われております。
「倫理(仮称)」につきましては,自立して思索を行うと共に,他者と共に生きる主体を育むような「倫理(仮称)」である。それから「政治・経済(仮称)」については,国家及び社会の形成により積極的な役割を果たす主体を育む「政治・経済(仮称)」というものを,仮称でございますが,置いてはどうか。それぞれありますように,知識の習得に終始しないというところで,より考えていく,議論を深めていくような学習というものを期待されるのではないかというところを,ここに示しております。
それから31ページ,32ページを御覧いただければと思います。31ページ,32ページにはそれぞれ公民における改訂の方向性として考える中で,「倫理(仮称)」のパートと「政治・経済(仮称)」のパートでございます。先ほどのところで,資質や能力というものはどのようなものか,それから新選択科目の具体的な内容として,(1)としまして,自己の課題と人間としての在り方,生き方,それから,それを踏まえて,現代の諸課題と倫理ということを学習するのではどうかというところでございます。
特に「公共(仮称)」では社会との関わりが扱われるわけでございますが,それだけではなくて,「倫理(仮称)」においては自己の課題を,他者,集団,それから生命や自然などとの関わり,このような視点も捉えてやっていくというところ,より深めていくというところ,このようなところが「倫理(仮称)」になっていくのではないかという意見もございます。
それから,32ページを御覧いただければと思いますが,「政治・経済(仮称)」でございますが,「政治・経済(仮称)」でございますが,そちらにつきましては,先ほど来申し上げているところでございますが,「公共(仮称)」というものを基盤にいたしまして,現代の日本の政治とか経済の諸課題,国際社会における日本の役割などにつきまして,正解が一つに定まらない現実の諸課題を協働して探究し,国家・社会の形成により積極的な役割を果たす主体を育むようなものに発展させるものではないか。
具体的な資質や能力は,ここに書いてあるとおりでございますが,新選択科目の構成といたしまして,政治及び経済というものの基本的な原理について,それらを構成する様々な専門領域を深く追究し,複雑な現代政治や経済の特質を捉えると共に,その解決策を探究していくようなところが考えられるのではないか。
それから(2)でございますが,グローバル化が進む中,国際政治・経済というものに関してより深く考えていく,このようなところがたたき台として御議論いただいているところでございます。このことにつきましては,それぞれ特別チームとワーキングでも議論されているところでございますが,資料1と資料3におきまして,今までの主な意見というものをまとめておりますので,適宜御参照いただければと思います。
長くなりましたが,以上でございます。

【原田主査代理】  ありがとうございました。本ワーキンググループにおける検討状況につきましては,引き続き私たちも情報共有してまいりたいと思っているところです。
それでは,本日御議論いただく内容に移ります。初めに,地理科目の改訂の方向性として考えられる構成について,意見交換を行いたいと思っております。
まず,事務局から,前回会議における御意見や,特別チームにおける御意見なども御紹介いただきながら,資料についての説明をお願いいたします。

【大内学校教育官】  失礼をいたします。それでは,お手元の資料の,まずは1と2,前回のワーキンググループにおける配付資料と,その意見について御紹介させていただきたいと思います。初めに,資料2の7ページ目をお開きください。資料2の7ページ目につきましては,「地理総合(仮称)」において重視する思考力等と授業イメージということで,前回こちらが1月25日に開催されました会議におきまして,地理の関係資料として配付されたものでございます。具体的には,「地理総合(仮称)」についての項目構成,及び,その項目構成の中で重視して育成する思考力,判断力,表現力とは何か。更に地理的な見方や考え方を用いて,問いを重視した授業展開としてどのようなものが考えられるかという形で,資料としてお示しさせていただいたものでございます。
こちらにつきましての御意見といたしましては,資料1の25ページをお開きいただければと思います。資料1の25ページが,第3回1月25日に頂戴した御意見で,主なものを御紹介させていただきますと,例えば,「地理総合(仮称)」に関わっては,上から二つ目のマルのところで,問いということで,前回資料としてはお示しさせていただいておりましたけれども,問いだけで1年間の授業を組むのは困難ではないか,メリハリを付けることが必要であるというような御意見でありますとか,三つ目のマルでございますけれども,問いに対する答えを探究していくといったときにも,実際には持っている知識を確認するという意味が強かったりする。プレゼン,ディベート,ディスカッションといったものを行いながら,生徒が互いに答え合うということを進めることで,思考力を養うことができるのではないかというような御意見を頂戴しております。
少し飛びまして,二つ下,上から六つ目のマルのところですけれども,問いの授業ばかりでは難しいという見方もあるのだけれども,生徒に議論させていくことを前提として建設的に考えていくべきではないかというような御意見でありますとか,また,その下のマルでございますけれども,地理学会として,これまで地政学を議論してこなかった歴史がある。歴史と地理でタイアップして考えるべき問題ではないかというような御意見。
さらに,その下のマルでございますけれども,考えるとき,知識がないと考えられないが,その知識はどの程度のものか。中学校で学んだ内容という理解でよいか。到達の基準を考える必要があるのではないかというような御意見を頂戴しております。
また,一番下のマルでございますけれども,国際理解と国際協力,これは先ほどの前回資料の中の項目の名称でございますけれども,国際理解と国際協力は,グローバル化する社会の中で日本人にとって基本的に理解しておいてほしい事項であり,柱の一つとして含まれていることは評価できるのではないかという御意見。
26ページの方でございますけれども,一番下のマルのところで,地球的な諸課題は取上げ方によっては,自分たちには関係のない国際会議で議論されているというものというイメージになりがちである。自分たちの身近なことにもつながっているという意識を持ち,主体的に学びにつなげられるよう,地球的な諸課題を身近な問題とも関連付けて取り上げられるよう例示したらどうかというような御意見を頂戴したところでございます。
この1月25日以降に行われました特別チームでの御意見,それから資料を紹介させていただきたいと思います。配付資料といたしましては,まず資料4をお手元に御用意ください。資料4は,2月16日に開催されました第3回の特別チームにおいて,地理に関わりましては,ページ数で申し上げると4ページ目でございます。4ページ目に示されておりますのが,高等学校学習指導要領地理科目の改訂の方向性ということで,前回のワーキングにおきましては,「地理総合(仮称)」の,いわゆる必履修として取り扱う科目についての御意見を頂戴しましたが,特別チームにおきましては,選択科目としての地理の在り方ということで,資料に示しておりますような育成する資質・能力を真ん中で示しておりますけれども,必履修の「地理総合(仮称)」において,既に習得している地理的な技能であるとか,世界のグローバル化,そのような考え方などを踏まえて,新しい科目として,一番右側に示しておりますけれども,新選択科目(案)ということで,(1)(2)(3)というような項目構成で新選択科目の案を御検討いただいたところでございます。こちらについては,後ほど本日の資料でもう一度説明させていただきますので,説明は割愛させていただきます。
主な意見といたしまして,資料3でございますけれども,資料3の特別チームの,ページで申し上げますと11ページ。10ページ以降が「地理総合(仮称)」に関わるところなのですが,第3回に頂戴いたしました御意見としましては,資料3の11ページの一番下のマル以降が,2月16日に開催されました特別チーム第3回の御意見となります。
御紹介させていただきますのは,1枚おめくりいただきまして,12ページの冒頭のところからになりますけれども,前ページからに続きまして,一番上の行でございますが,「地理総合(仮称)」では,主題学習を事例地域を通して学びフィールドワークにつなぐというような扱いをされている。しかし,それだけでは取り上げられない事象や地域があって,分からないことが出てくるのではないか。それを更に広い観点から学ぶ必要が出てきて,新選択科目につながっていくのではないか。「地理総合(仮称)」で課題を発見し,それをほかの事象やほかの地域と関連付けて追究するというのが,資料として示されている新選択科目のイメージになるのではないかというような御意見を頂戴いたしております。
また,その下のマルでございますけれども,系統地理的考察,これは先ほどの地理に関する新選択科目案の大項目の(1)に置かれているものでございますが,(1)の系統地理的考察とは幾つかのテーマから考察をするもので,規則性などを見いだしていく。一方,(2)で示しております地誌的考察ですけれども,地誌的考察とは,地域ごとのその地域の特徴を見出すものであるので,新選択科目の(1)の系統地理的な考察において,記載のもの以外に,例えば今日的なものとして観光や交通・通信を加えてはどうかというような御意見を頂戴しております。
二つマルを飛ばしまして,三つ目のマルのところですが,日本人は宗教や文化に関する理解が弱い。ビジネスでも人間関係やバックグラウンドが問題になる。日本は世界の中でどのような位置に置かれているのかが分かっていないので,表層的なものではなく,本質的な部分から新選択科目を指導すべきではないかというような御意見。
さらに,その下のマルですけれども,地政学も学ぶべきとの意見もあるが,地理環境が政治や文化に影響を与えているということならば,現在の歴史教育や地理教育の中で取扱われていることだが,殊更にそれを取り出して指導するとなると難しいのではないかというような御意見。
さらに,その下のマルでございますけれども,トランスナショナル,インターナショナルの両者を考えているのが,今の政治学である。地政学というと国家戦略のように捉えられかねず,また,深い知識や論争を知らない人が教えると危険なのではないかという御意見を頂戴したところでございます。
このような前回のワーキンググループでの「地理総合(仮称)」に関する御意見,それから特別チームにおきまして地理に関する新選択科目として提示させていただいた資料についての御意見を踏まえまして,本日の資料でございますけれども,お手元に資料6を御用意ください。資料6でございますけれども,高等学校学習指導要領における地理科目の改訂の方向性として考えられる構成(たたき台)ということで,1ページ目にお示しさせていただいているのが,新選択科目の案,まだ仮称が付くまでにも行っておりませんので,仮称にもなっておりませんが,地理に関わる探究的な科目を用意するということでございます。
2ページ目以降につきましては,既に過去のワーキング,あるいは特別チーム等で配付させていただいている資料ですが,新選択科目との関係もございますので,1枚おめくりいただきまして,まず初めに2ページ目の現在検討を行っている新必履修科目について,もう一度簡単にですけれども御説明させていただきたいと思います。
右肩に12月21日特別チーム資料4と書いてある資料の方でございますが,今現在検討いただいております「地理総合(仮称)」については,中央に示しておりますけれども,育成する資質・能力として,例えば地理的な技能でありますとか,地理的な知識と地理的理解,それから地理的な見方や考え方,例えば空間概念を捉える力でありますとか,態度形成といたしまして,地域,国家的及び国際的な課題解決を模索する献身的努力,これはルツェルン宣言という国際的な宣言があるのですが,そのようなものを参考にして育成する力を整理しながら,一番右側に示させていただいております,「地理総合(仮称)」として大きく三つの柱,項目を用意しているところでございます。
具体的には(1)として,地図と地理情報システムを活用していく。これは「地理総合(仮称)」の(2)(3)での学習はもとより,この後御議論いただきます新選択科目にもつなげるような形での地理学習の基礎,基盤となるような,地理を学ぶ意義を確認すると共に,併せて地図や地図情報システムGISなどに関わる汎用的な地理的機能を,まずしっかり「地理総合(仮称)」において身に付けてはどうかということでございます。
また,こうした地理的な技能を基にしながら,(2)(3)の項目におきまして,例えば国際理解と国際協力といったようなグローバル化の視点から,多様な生活,文化と国際理解について理解する。あるいは地球規模の諸課題と,その解決に向けた国際協力の在り方について考察するというような項目を(2)として示してどうか,置いてはどうか。さらに,このような(2)で学んだ各地の諸課題への対応策とか,そのようなものについて学んだものを(3)として,防災と持続可能な社会の構築,生活圏の諸課題の解決の構想を考えていくような項目なのですが,このような中で,例えば防災やESDの視点から,実際にこれまで学習したものを日本国内に引き戻す,引き寄せて戻して考える,あるいは自分たちの生活圏に戻して考えて探究していくというような項目構成にしてはどうかというのが,今現在議論いただいておりました「地理総合(仮称)」の内容項目でございます。
この「地理総合(仮称)」の後に,選択科目として履修するであろう科目の構成が1ページ目でございます。こちらでお示しさせていただいておりますのは,新選択科目案として,「地理に関わる探究科目」ということでございますけれども,一番上の構成原理のところですが,「地理総合(仮称)」は,主題を基にした課題解決的な学習によって,社会で生きて働く地理的実践力の育成の場として位置付けている。一方で,新選択科目については,このような必履修科目の「地理総合(仮称)」で習得した地理的な技能,あるいは見方や考え方を基にして,世界の諸事象の規則性や傾向性などを系統的に,また,世界の諸地域の構造や変容などを地誌的に考察した上で,現代社会に求められる国土像の在り方について展望することにより,高等教育での学びにもつながる本格的な地理的探究の場として構成してはどうかということでございます。
中央の方に,この科目において育成する資質・能力ということで示しておりますが,上から一つ目のマルでございますけれども,世界の空間的な諸事象の規則性,傾向性や,世界の諸地域の構造や変容などについての知識理解に関わること。それから世界の諸事象を系統的地理的に考察する力や,世界の諸地域を地誌的に考察する力といった,思考力,判断力,表現力に関わるところ。また,一番下のマルでございますけれども,世界や日本の望まれる国土像や地域像の構築のため,進んで参加し貢献しようとする態度というような意欲・態度に関わるような部分を育成する資質・能力として設定し,新選択科目(案)「地理に関わる探究科目」として,右側に三つ項目を示しておりますけれども,一つは,現代世界の系統地理的な考察を行う項目。こちらにおいては,アからオに示したような諸事象についての分布やまとまりに見られる空間的な規則性や傾向性,このようなものについて,系統地理的な考察を行っていくようなアプローチをする。あるいは,それぞれアからオに関わって,環境問題,食料問題など関連する諸課題を追究していくというような項目として,現代世界の系統地理的考察というものを加えてはどうかということでございます。
また,前回,特別チームにおきまして,オ観光,交通,通信ということを入れてはどうかという御意見を頂戴しましたので,新たに加えさせていただいております。
また,(2)でございますけれども,現代世界の地誌的な考察ということで,ここは大きく二つの項目に分けまして,一つは現代世界の地域区分ということで,地域の概念,地域区分の意義を考察し,実際に国家,州,大陸,あるいは言語,宗教,文化というような指標によって,実際に地域区分を行っていく。更に現代世界の諸地域においては,アの区分を基にして,例えば地域の向上や変容などを考察していく。あるいは,取り上げた地域ならではの諸課題と地球的課題の関連性。地域によって見られる課題は様々だと思いますが,典型的なもの,あるいは類似的なもの,対照的なもの,そのようなものを追究していくというような項目として,(2)で地誌的な考察に関わる項目を用意していく。
さらに,大項目の(3)といたしまして,現代日本に求められる国土像ということで,現代世界における日本の国土の特色について多面的,多角的に考察し,我が国が抱える地理的な諸課題を探究する。そのような学習活動を通して,その解決の方向性や将来の国土の在り方について展望していくということで,(1)は事象から系統地理的にアプローチをしていく,(2)が地域から地誌的に考察をしていく,(3)は総合的にアプローチをしていくというような項目で,世界の学習を中心に(1)(2)で展開をしながら,最後に自分たちの生活あるいは我が国の様子に引き寄せて,もう1回考えてみるというような構造をとっているところでございます。
また,3ページ目以降につきましては,関連する資料として,これまでの会議で配っております資料でございます。一番最後のページにつきましては,先ほど御説明させていただいた,前回会議におけるワーキンググループで御議論いただいた資料ですので,説明は省略させていただきます。
以上,地理科目の改訂の方向性として考えられる構成についての御検討を,よろしくお願いいたします。

【原田主査代理】  ありがとうございました。
それでは,この資料6の1ページ目と2ページ目を中心に,御意見を頂きたいと思います。要するに,「地理総合(仮称)」の基本的な構成,趣旨はこれでよいのか,そして,それを踏まえて,新選択科目の地理の構成や資質・能力はこれでよいのかということです。
御意見のある方は,いつものとおり名札を立てていただいて,御発言が終わったら元に戻していただきたいと思います。
それでは,よろしくお願いします。いかがですか。
それでは,永田委員,お願いします。

【永田委員】  失礼いたします。今回初めて高等学校の方に参加させていただきます。質問等が多いかと思いますけれども,よろしくお願いいたします。
まず,2ページ目の,資料4の「地理総合(仮称)」のところについてなのですけれども,一つ目が,3番目の(イ)ところにESDというものが入っております。これは持続可能な開発のための教育でございますので,私の考え方でいきますと,(2)(3)を統括するような概念ではないかと思っております。
それと,(2)のところが,よくいわれるのがThink Globally Act Locallyなのですけれども,これは正しくThink Globally Act Locallyのところでございまして,(3)のところは特に防災等に係る身近なところでThink Globally Act Locallyにつながるようなところなのではないかと思っております。ESDの概念自体は(2)番,(3)番につながるようなことであると思っておりますので,何かしら考え方があったらお教えいただきたいと思っております。
それと,(2)のイのところの地球的な諸課題というのが,当然身近なところでも表出しておりまして,(3)で挙がっています防災というのも,世界的レベルの課題でもあります。両方で取り上げるべき課題なのだけれども,特に重点的に(3)番で取り上げるということであれば,非常にすっと入るような気がいたしました。
それと,資料6の1枚目でございますけれども,新選択科目の地理に関わるということで,「地理総合(仮称)」で考えたことが,(1)のテーマとして挙がっている。地球的課題という問題をテーマとして系統地理的に考える。(2)の現代世界の地誌的考察というところで,「地理総合(仮称)」の国際理解,国際協力のところに関連するところではないかと思っております。
そこで,私は異文化理解について特に重要視しております。「地理総合(仮称)」のところで国際理解とか生活・文化の文化,特に異文化理解のところをやっているということで,大体今までの地理でいったら,(2)の現代世界の諸地域のところであれば,地域の構造とか生活・文化でございましたら産業などが中心になってきました。「地理総合(仮称)」でやった異文化理解の文化のところは,是非内容に出していただけたら有難いと個人的には思っております。
それと,(1)(2)(3)のところで,(1)のところは「地理総合(仮称)」を受けて,一番最後のところに示してあるように,関連諸課題を追究する。何かしら課題を追究するのかなというのは分かります。(2)のところは関連性を追究する。ここは関連なので,全体像,地域の構造とか変容が中心なのかなとイメージが湧きました。(3)のところは,(1)(2)の両方のアプローチで,諸課題を探究する活動を通してという文言があります。これも諸課題を考えるような活動なのかなと思いましたので,(2)のところは諸課題の関連性の追究で終わるのか,それとも諸課題の課題を追究するのかということで,今聞いていたところでございますので,いろいろ教えていただけたらと思います。よろしくお願いします。

【原田主査代理】  ただいまのは,御意見も踏まえた御質問かと思いますけれど,濵野調査官,お願いします。

【濵野調査官】  ありがとうございました。もちろんこれはたたき台でございますので,又この場で様々御意見等頂戴できればとは思っておりますが,最初のESD関係の「地理総合(仮称)」,こちらの方は仮称ではございますけれども,そちらについてですが,これは御指摘いただいたように,ESDに関わっては全体に関わるものでございますので,グローバルについても,防災についても,その範疇かと考えております。ある意味,特徴的に最後にまとめとして,ESDというものをもって全体を整理していく,まとめていくという視点で示させていただいたものです。
したがいまして,委員の御指摘にもございましたけれども,資料8-1の方を御覧いただければと思いますが,そちらに学習の系統性,段階性というところで,一番下に補足というものが設けてあろうかと思います。正に今,御指摘いただいたように,(2)で学んだ諸課題への対応策をという形で,一番下,Think Globally Act Locallyという形で関連性をこの中でも示しているところです。
そして新選択科目に関わるものとの関連性のところでも御意見頂戴いたしましたけれども,正に御指摘のとおりでございまして,当然ながら,「地理総合(仮称)」の下で学習したものをもって,それをベースにして新たな「探究科目」においても,これは系統地理的考察もそうですけれども,地誌的考察についてもそうなのですが,関連性を持って学習を進めていただくということになろうかと思っております。
その際,御指摘いただいた諸地域のところ,(2)のイのところなのですけれども,当然ながら,そこも追究するものは地域ならではの諸課題です。課題が中心になってまいりますので,諸課題であり,また地球的課題でありというようなものを関連付けまして,最終的には,私たち,子供たちにとって身近なところで日本というような形で,どのように考えていくべきなのかということ辺りでまとめとする構造をたたき台として示しているところでございます。
以上でございます。

【原田主査代理】  そのほか,いかがですか。
では,田中委員,お願いします。

【田中委員】  ありがとうございます。
今の議論に関係しまして,国際理解と国際協力でグローバル化のところで,アの多様な生活・文化と国際理解のところ,世界の文化,多文化共生という意味で非常に重要な項目だと思います。
次の地球的な諸課題,今,議論が出ていましたけれども,この地球的な諸課題というところで,今,濵野先生がおっしゃいましたけれど,この言葉の意味ですが,普通,地球的な諸課題というと,気候変動とか災害というものをイメージしやすいのだと思いますが,しかし同時に,今世界で起きている難民の問題,紛争の問題,テロの問題等の,地域,国家的及び国際的な諸課題というような問題を,ここで取り上げていただくべきではないかと思います。
地球的諸課題という言葉が,これで本当に全部カバーしているのかどうかというのは問題かなと思っております。
以上です。

【原田主査代理】  ほかにいかがですか。
では,磯谷委員,お願いします。

【磯谷委員】  よろしくお願いします。地歴科という地理と歴史なものですから,歴史地理的学といいますか,そのようなものが「地理総合(仮称)」の中に入ってくると,歴史とつながってくるのかと思います。特に(3)の自然環境と災害対応,昨日かおととい,たまたま見ていたテレビに,富士山が宝永の大噴火をしていた。江戸時代ですけれども,火山灰が大量に関東に,東の方に流れた,このようなテレビをやっていたのですけれども,そのような歴史上の事件とか,そのようなものを地理的に分析するというか,勉強するというか,そのようなことをやっていただくと,歴史と地理がつながるのかなという感じがしております。
以上です。

【原田主査代理】  そのほか,いかがですか。幾つか細かい,もちろん基本的な考え方も含めて,細かい御質問と要望もありましたが,大きな,この「地理総合(仮称)」の趣旨,構想と,それを踏まえた新選択科目地理の在り方に関して,大きな異論はないということで,これを踏まえた今後検討,更に具体化ということでよろしいと判断してよろしいですか。
では,ここで皆さん共通理解が得られたということで,今後更に検討を深めていくことになろうかと思います。ありがとうございました。
それでは,時間の都合もありますので,引き続きまして,「歴史総合(仮称)」の方向性についても御意見を伺いたいと思いますので,まず事務局から資料についての説明をお願いいたします。

【大内学校教育官】  失礼をいたします。それでは,今のところ地理と同じように,まず前回会議から振り返っていただきたいと思います。お手元に資料1と2,まず資料2の方をお手元に御用意いただければと思います。
前回,資料2の前回の会議の際に配付をしました資料が3ページ目以降なのですが,特に確認いただきますのが,5ページ目からになります。前回の会議におきまして,5ページ目のところにお示しさせていただいております「歴史総合(仮称)」の方向性・特色・構成イメージということについて,前回御意見,御議論を頂いたところでございます。「歴史総合(仮称)」については,育成すべき資質・能力といたしまして大きく三つ示させていただいていて,一つは,歴史を考察する手立て(視点や方法)を用いて,現代の諸課題の歴史的背景を追究する。この場合の歴史を考察する手立て(視点や方法)については,下の緑色のところに書いてございますけれども,比較,因果,相互作用,類似と差異,原因と結果,関係性やつながり,このようなものを用いて多面的・多角的に吟味する,あるいは資料に基づいて解釈するというようなことが歴史を考察する手立てとして示させていただいており,これらを用いて現代の諸課題の歴史的背景を追究していくというような力を育成しようというのが一つ。
また,諸資料を適切に活用する技能,更には国際社会に主体的に生きる日本国民としての自覚と資質というような,育成すべき資質・能力についての御意見と,併せて「歴史総合(仮称)」の中で取り扱う項目といたしまして,下の構成イメージのところの表を用いて御議論いただいたところでございます。
こちらについて頂戴いたしました御意見の紹介というのが,資料1になりますけれども,ページで申し上げますと20ページをお開きください。20ページの「歴史総合(仮称)」のところの上から二つ目のマル以降が,第3回以降での御意見となっております。主なものを紹介させていただきたいと思いますが,この際に,先ほど資料を御覧になっていただきましたとおり,育成すべき資質・能力と構成イメージと,二つの柱から御意見頂戴いたしましたので,また一方で,育成すべき資質・能力に関わりましては,本日この後,別の資料で御議論いただきますので,ここでは主に構成イメージに関わるところを紹介をさせていただきたいと思います。
資料1の20ページでございますけれども,まず上から二つ目のマルのところで,「大衆化」という語句がよいのかどうか,大衆というと動かされる存在というイメージがある。併せて「市民化」という表現があると,単なるマスではなく自ら考え,行動する主体という捉え方ができるのではないかというような御意見。
その下のマルでございますけれども,身分制を撤廃し,市民ができ,19世紀後半には国民国家ができていく。その後,大衆も政治参加し,20世紀後半には国民国家が解体していくという流れがある。「大衆化」という捉え方でよいのではないかというような御意見。
一つ飛びまして,中学校の社会科歴史的分野では時系列で学ぶが,高等学校の「歴史総合(仮称)」という場合に,時系列で学ぶイメージなのかどうか,中学校の指導の繰り返しになってしまうのを避けるという観点から,市民とは何かとか,あるいはグローバル化とは何かといった問いを設定して指導するのがよいのではないかというような御意見。
少し飛びまして,一番下のマルです。一番下のマルのところで,「大衆化」なら世界大戦の時代とか,「グローバル化」なら地球規模の課題の出現というようにすることが考えられるのではないかという御意見。
21ページに参ります。上から三つ目のマルでございますけれども,中学校と高等学校の学習の連携が必要である。高等学校で追究する力を付けるために,学習課題を絞って明確にすることが必要である。2単位という時間で多くの内容をこなすのは難しく,例えば「公共(仮称)」における「公共の扉」導入部分ですけれども,このようなものにおいて内容を基に,歴史について問い掛けをしていくというような構造にしてはどうかというような御意見。
それから,その下のマルでございますけれども,神戸大学附属中等教育学校の資料を頂戴しておりましたが,生徒が課題解決的な学習など,参加型の授業を受けたことによって,知識の定着の度合いが高まると捉えているということに着目すべきではないか。このような学び方と知識の定着は相反しないことを押さえておく必要があるのではないかというような御意見。
さらに,その下のマルでございますけれども,具体的な構成イメージのところで,工業化と政治変動とあるが,テーマや課題に沿った表現にしてはどうか。例えば,日本と世界はどのように近代化を進めたかとか,近代化は世界にどのような影響を及ぼしたか,どうして世界規模の戦争が起こったのかなどが考えられるのではないか。
その次のマルでございますけれども,これからの国民を育成する教育としては内容が狭いのではないか。生徒に身近な問題として娯楽やマイノリティ,資源・エネルギー,情報通信などがある。今の国民にとってのキーワードを歴史的に考えていくことが必要なのではないかとの御意見。
さらに,その下のマルですが,これまでの歴史教育が避けてきていた戦争と和解,国境と歴史解釈などについて学ぶことにより,日本人としての自覚を高めることができるのではないかというような御意見。
その下のマル,一番下のマルですが,これまでの歴史教育や公民教育は,国際関係が抜けていると考えられる。近代化を学んでおかないと,20世紀のことは分からない。グローバル化の中で,和解やマイノリティ,災害などについて指導することが重要である。ただ,2単位となると消化不良になるのではないかという御意見。
22ページですが,近代化だけで私たちの立ち位置が分かるのかどうか。例えば,農業や水産業は,現在ある問題だが,そのことを歴史的に考察する際に近代からでよいのかどうか。現在の文化や生活につながる和風なものなど,日本文化のことを土台として,まず指導していってはどうかというような御意見。
23ページになりますが,上から二つ目のマルでございますけれども,学習指導要領の大項目・中項目の表記は,日本と世界はどのように近代化を推進したのか,近代化は日本と世界にどのような影響をもたらしたのか(因果),それから日本と世界で大衆化が進んだ要因は何か(因果),どうして世界規模の戦争が起こったのか(因果),多極化が進む世界での日本の国際的な役割は何か(相互作用)など,主題を提示した表記により叙述をしていってはどうかというような御意見。
さらに,その次のマルですけれども,教科書は現状では教える対象として教員にとってなくてはならない存在であるが,新しい科目では,教科書は生徒が主体的に活用する対象となるべきではないかというような御意見。
一番最後,23ページの下から二つ目のマルですけれども,授業は通史的な記述を理解させる部分と,それを活用した主題の設定,探究活動の部分からなる。その際,後者に重点が置かれるように配慮してはどうかというような御意見を,本ワーキンググループにおきまして頂戴したところでございます。
また,特別チームにおきましては,お手元に資料3を御用意いただければと思います。まず資料4の方でございますけれども,資料4の2ページ目でございます。基軸となる問いに着目した「歴史総合(仮称)」の構成イメージ(たたき台案)こちらの資料について御意見を頂戴しました。この資料については,後ほどこれを基にして改訂版をたたき台として御意見頂戴しますので,そちらで説明させていただきます。ここでは主な意見として,資料3の方でございますけれども,資料3のページで申し上げますと6ページ目からでございます。資料3の6ページ目の上から二つ目のマル以降が特別チーム,2月16日に開催されました第3回で頂いた主な意見でございます。
関連するものを中心に御説明させていただきます。6ページの上から四つ目のマルですけれども,「歴史総合(仮称)」で一番重要なのは,日本史と世界史のリンケージを付けて考えることではないか。その際の手立てとしては,同じキーワードで語る必要があるのではないかというような御意見。
その下のマルですけれども,世界の中の日本であり,アジアの中の日本でもある。神戸大学付属中等教育学校の歴史基礎における項目があるのですが,このような項目については,欧米と日本の置かれた立場が対照的に異なる部分である。このような内容が含んであるのは非常にいいのではないかというような御意見。
さらに,その下の部分ですが,近年,国際社会では激しい考え方のぶつかり合いが見られる。この「歴史総合(仮称)」においては,自国の歴史,文化を相対化して見ることが重要ではないかというような御意見。
6ページの下から二つ目のマルのところですが,欧米では寛容という概念で社会を構築してきた歴史がある。学習題材として,「寛容」を取り入れてはどうかという御意見。
それから,7ページに移りますが,7ページ目の一番上のマルでございますけれども,教員に足りない部分を補うために,産業界が手伝うということが進められてきたということで,産業界のお話を頂戴したのですが,その際に,どのような知識が必要か,知識をどのように使うかを伝えることにより,学ぶことの楽しさや意義を生徒に分からせることが重要ではないかというような御意見。さらに,産業界からは,概念を応用し活用できる人が求められている。「歴史総合(仮称)」では,問いを設けて学習をするが,教員の質問力といった力が問われるのではないかという御意見を頂きました。
また,7ページ目の真ん中ほどにマルが一つ付していまして,「歴史総合(仮称)」については,例えば次のような構成で考えることができるというような御意見なのですが,これは基軸となる問いの例として頂いていたもので,文書で頂いたものでございます。特別チームの会議の際ではないのですが,関連する資料,関連する御意見だと思いますので,後ほどお読みいただければと思っております。
このような御意見を頂戴しまして,本日,本ワーキンググループにおきまして御意見頂きたい資料の方でございますが,資料7をお手元に御用意ください。資料7につきましては,「歴史総合(仮称)」の具体的な内容構成に関わってくる部分でございます。基軸となる問いと獲得する概念に着目した「歴史総合(仮称)」の構成イメージ(たたき台)というものでございます。この資料には表で縦軸に,「歴史総合(仮称)」ですので,近現代の大きな流れの中で,例えば近代化という歴史の転換を捉える視点,あるいは大衆化,グローバル化というような視点を縦軸におきまして,この視点に着目しながら,横軸の中で,例えば経済に関する現代的な諸課題の背景,あるいは政治に関する現代的な諸課題の背景,国際関係,社会,文化というような現代につながるような,あるいは現代的な諸課題の背景を横軸に軸として設け,例えば近代化という視点に着目した場合の基軸となる問いとして,どのようなものがあるか。さらに,その基軸となる問いを通じて獲得する概念の例としては,どのようなものがあるかというものの整理を試みようとした資料でございます。
一番上のところに戻りますけれども,科目構成の考え方のところでございますが,今申し上げましたとおり,現代的な諸課題のおこりや,その推移に関わる事柄,これは横軸のところでございます。また,近代化の歴史の大きな転換,「~化」ですけれども,関わる事柄を中心に,その「~化」に着目し,近代化,大衆化,グローバル化という視点に着目し見ていくのが縦軸のところでございます。
三つ目の中点ですが,それを自国のこととグローバルなことが影響し合ったり,つながったりする歴史の諸相に着目する。これは論点整理の3に既に示されている事柄でございますが,自国のこと,グローバルなこととの影響,つながりです。4点目のところが,それらを基にして基軸となる問いや,また,基軸となる問いに基づいて,更に具体的な問いを設定して追究をしていくというような活動になるわけですけれども,この表で示しているのは,基軸となる問いとしてどのようなものが考えられるか。更には,概念に迫るような重要な問い,焦点となるような問いであるとか,その問いによって獲得される概念とは何かというようなことに留意をしながら,右側でございますけれども,諸資料を活用しながら歴史を考察する手立てを用いて多面的,多角的に吟味したり,資料に基づいて解釈したりするような形で追究をしていくというような歴史の学び方を身に付けるというような科目を念頭に置いているということでございます。
本日,御意見頂きたいと考えてございますのが,今ほど申し上げましたとおり,近現代の大きな流れの中で,近代化や大衆化やグローバル化というような視点に着目しながら,それぞれの現代の諸課題の背景として考えられるような基軸となる問いの例というのは何か,また,その際の獲得する概念は何か,更には現代的な諸課題の背景につながる項目というのは,どのようなものが横軸として考えられるかというような点になるかと思います。
表中の欄外のところでございますけれども,学習課題によって,取り上げられる時期や地域を広げて設定するというような工夫は,もちろん考えられますし,それから,先ほど来申し上げている縦軸のところにプロットされたものですが,近代化,大衆化,グローバル化は歴史の転換を捉える視点であって,時期の区分ではございません。
また,歴史の転換の関わりの深さというものを,この表におきましては深いものを濃い色で,浅いものを薄くというような形で示しておりまして,近現代の大きな流れの中で,近代化という観点に着目して,表としては横に見ていくような形で時代を捉えていく。横に見ていくような形で,現代につながる諸課題を,経済あるいは政治,あるいは国際関係等々の観点から,基軸となる問いを通して捉えていくというような構造になっているものでございます。
本日は,こちらの資料7の「歴史総合(仮称)」の構成イメージについて御意見を頂戴できればと思います。よろしくお願いします。

【原田主査代理】  ありがとうございました。
それでは,今,最後に御説明いただきました資料7について,特に御意見を頂きたいと思いますが,急に御意見をと言われても困るということで,事前に事務局から皆様のもとにはこの資料がめいめい送付されて,特に基軸となる問いは,このような例で,果して本当によいのか。あるいは,ここでは近代化しか示されていませんが,大衆化,グローバル化について,どのような問いが考えられるのか。また,そのような問いを通じて獲得される概念として,ここでは経済の近代化の欄に産業革命,資本主義,社会主義とあるけれども,これは本当にこのような基本概念でいいのか。あるいは空欄のところには,どのような概念が獲得されるのかといったことを含めて,また,このようなことを学ぶことが「歴史総合(仮称)」を通じて子供たちのどのような現代,そして未来を見通す見方・考え方につながって,それはその後の選択科目の日本史や世界史に生かされるのかといった三つのことが,多分宿題になっていたと思いますので,どこからでも構いませんので,御自由に御意見を頂きたいと思います。
では,よろしくお願いします。では,土屋委員,お願いします。

【土屋委員】  少し確認させてください。この近代化,大衆化,グローバル化というのは,時代区分的に考えていくということで進めていくのかどうかです。例えば,近代化が19世紀とか,大衆化が20世紀とか,20世紀の終わりからグローバル化とか,そのようなイメージでここは組み立てられていると考えていいのですか。

【原田主査代理】  先ほど説明があった欄外のアスタリスクの2点目にあるように,時期区分ではない。近現代を大きな一つの時代として捉えるときの視点としてあるのだということですが,何か補足がありますか。多分,そのようなことで,これまで議論してきたかと思います。

【土屋委員】  そうすると,大衆化という言葉の先ほどの説明は,ある意味,時代区分の中での大衆化という落としどころのような説明だったと聞いたのです。だから,市民化ではなくて大衆化というのは,ある意味,特定の時代の流れの中での大衆化という用語の使い方として,大衆化を使っている。だから,これが時期区分でないならば,近代化,市民化,グローバル化という言葉という落ちつかせ方というのも考えられるかなと,今思ったのです。その辺は,大衆化というのが,今にも通じる概念として考えていいということで捉えていいということですか。

【原田主査代理】  多分そのような議論であったと思います。その点で,もし時期区分ではない概念として大衆化をここに置いたときに,例えば,先生の場合はどのような問い,先ほどの説明が,それでは誤解を招くのではないかということでしたが,先生はどのようにお考えですか。どうしたらいいのですか。

【土屋委員】  例えば,大衆化ということであれば,政治参加の大衆化というか,ここで議論されている公共とか市民性というところとの関連を重視するならば,政治参加への大衆化,あるいは人権はどのように人々のものになっていったかというような,そのような人権だとか,政治参加というような概念での問いの立て方というようなところが出てくるのかなと思います。それから,グローバル化だと,人やものの移動といいますか,人やものの移動がどのように変わっていったかという。
ですから近代化のところで出てきている問いの立て方,基軸となる問いの例が,少し狭いというか,つまり専門的過ぎるというか,ある歴史の,ある部分を想定した問いになっていて,219世紀から20世紀,21世紀にかけた全体を通すような問いとしてはかたくなっているような気がしたのです。
ですから,これが時代と関係なく近代化,大衆化,グローバル化というように置くのであれば,それぞれの問いは,近代化はどのようにいったらいいのかなというところが,今悩むところなのです。例えば近代化だと,時間の使い方とか,私たちの生活時間が,どのように近代の中で変わってきたのか。生産と労働とか,余暇とか,そのような人間の暮らしの時間変化のようなところで近代化を語れるのかどうか。何かそのように,生徒のアクティブにつながって,かつ概念の本質につながるような問いというのは何かと,今,考えました。その前提として,これが時代的に古くから,過去,近代の時期区分ではないということであれば,もっと大きな問いを立てたらいいかなと考えました。

【原田主査代理】  非常に重要な問題提起。確かに,あくまでも事例とはいえ,最初に挙げられている近代化の問いは,一定のある時代をイメージして,もちろん歴史ですから,イメージしなければならないのですけれど,狭いのではないかと土屋委員の指摘で,もう少し大きく現代につながる近代というのはどのようなものなのかと問う視点がないと,大衆化やグローバル化とうまく調和できないのではないかという御意見だと思うのです。ですから,その辺,幾つか例をお出しいただきましたので,土屋先生自身も,もしこのような欄を埋めざるを得ないとしたならば,どのような問い,どのような概念が得られるか,是非又お考えいただければと思います。
では,羽田委員,お願いします。

【羽田委員】  今のは縦軸ですけれど ,横軸についての意見です。  経済, 政治 ,国際関係 ,社会・文化というように仮に分けられていますけれども,このように区分してしまうのは,見方を狭め,あることを総合的に捉えることを難しくするではないかという気がします。
例えば,一つ,この19世紀,20世紀ぐらいのことで考えないといけないことには,国籍という概念 があると思うのですけれども,経済の面では,国籍企業の問題がありますし,政治の分野では難民の問題がありますし,国際関係というのは国と国との関係で,今いろいろ起こっていると思います。社会,文化についても,当然人々が入りまじることによって様々な問題が起こってくるわけで,国籍という問題はどれか一つに関わる問題ではないと思います。
そのような意味で,このように分けてしまうのはいいのかどうか。もちろん,ある程度区分し ないといけないのだろうけれども,きれいに分けてしまうと, 全体をうまくつかむことができなくなるのではないかと思うのですが,いかがですか。

【原田主査代理】  これも重要な御指摘で,確かに色分けはしてありますけれども,分けると,強引でも取り入れざるを得ないということで,逆にそれが束縛してしまうということが,羽田委員の御指摘にあるかと思います。
では,大石委員,お願いします。

【大石委員】  最初,今の部分なのですが,私は濃淡があったことで変革の幅が広がったかなと,逆に思いました。その上でなのですが,転換を考えるといったときに,転換の行く先なのです。要するに,歴史はいつも変わってきているのだけれど,現在,今どこへ転換していくべきなのか,それを少し考えなければいけなくて,その際,行方のところで,今出ている文章は欧米モデルが軸であって,日本の歴史,世界の歴史を見てきたとき,仏教だとか,儒教だとか,ここで使っている漢字だとか,アジアというのはすごく大事な歴史構成要素としてあって,日本を考える場合も,世界を考える場合もあって,それからもちろん今の世界を見たときにイスラームの問題もあるとしたら,もう少し世界が共有できる,先ほど出てきたような公共とか,環境とか,人権とか,平和とか,市民とか,政治参加とか,そのようなレベルへきちんと持っていけるような変革の到達点を示し得ないと,ただ変わればいい,どう変わればいいかと,今までは確かに変わってきたけれども,その変わる先を見ておく必要があるだろうと思います。
そうしたときに,この図は何となくまだ先が見えづらいし,欧米スタンダードかなという感じがします。
以上です。

【原田主査代理】  先生の御意見もよく理解できるのですけれど,具体的に,例えばこのような歴史学習を通じて,先生のおっしゃる,どのような未来なり,どのようなところに向かうのかというのは,どのような示し方をここで議論しておけば具体的な学習指導に反映されていくか,何か先生の御意見はありませんか。

【大石委員】  逆に,そのような世界を私たちが持つことが,小学校から始まる歴史学習の基軸に据えられるべきだと思うのです。ただ,いろいろな変化をしているということを捉えたところで,それは変化の羅列にしかすぎなくて,どのような方向に向かう変化になるか分かりませんし,その変化の先に,今先生方が言われていたような国籍,難民,それらを含めたしっかりとした世界像とか,地球像を据えておく必要があるだろうと思います。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
それでは,髙橋委員,お願いします。

【髙橋委員】  ありがとうございます。私は歴史が専門ではなくて,高校で公民を教えています。宿題を出されまして一生懸命考えたのですが,先ほど羽田委員がおっしゃったように,四つに分けられているというのが結構難しくて,なかなか問いが立てられず,例えば,現代の諸課題を振り返って,その背景にある歴史を考えると,今インターネットの影響が大きいと思うのです。少し前を考えると,マスメディアの影響が,戦争等に果たした役割というものも大きいと思うのですけれども,そのようなことをどこに位置付けたらいいのか,社会や文化に関する諸課題のところに位置付けるのか,それとも,それはもともと政治から始まっているので政治的なところに位置付けたらいいのかなとか,いろいろ考えまして,なかなかこれといった問いが具体的に立てられなかったのです。インターネットの普及あるいはメディアの発展というものが,社会にどのような影響を及ぼしたのかというような問いとか,あるいは主権国家が変容していますが,主権国家というものの捉え方がどのように変わってきたのかということを,どの辺に位置付けたらいいのかよく分かりませんでした。
また,今,大変問題になっている格差の問題というのは,経済に関する現代の諸課題だと思うのですけれども,その背景には,もちろん政治や,あるいは国際的な広がりもあるわけで,それをどのような問いに落としていったらいいのかというところが大変悩ましいところで,四つに分けるというのがイメージしにくかったというのが感想です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。その辺りも含めて,もし,髙橋委員の四つの領域にこだわらない問いの立て方のようなものがありましたら,是非又事務局の方に何らかの形で御提案いただければと思いますので,よろしくお願いします。
では,磯谷委員,お願いします。

【磯谷委員】  私は頭が固いのかなと思うのですけれども,時代区分でないというのが,どう考えたらいいのかよく分からないなと思うのです。ただ,大きくは時代の区分なのではないか。ただ,問いの立て方とかによって柔軟に考えられるのかなと思います。例えば,近代化ということでいえば,ヨーロッパなどでは18世紀,19世紀,現在のアフリカなどだと,まだ近代化にもなっていないというようなことはあると思うのです。
グローバル化でも,16世紀ぐらいからグローバル化は始まっている。あるいは,第二次大戦後からグローバル化が始まったとか,あるいは1990年ぐらいからでないとグローバル化とはいえないのではないかとか,その上に柔軟性を認めるのはいいのですけれども,大きくは時代の区分というか,そのようなものでないと生徒は分からないのではないかと思ったりするのです。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
では,韮塚委員,お願いします。

【韮塚委員】  先ほど髙橋委員さんからお話がありましたけれども,私も同様に,たたき台でお示しいただいた四つの項目に,どのように当てはめていくのかということで,なかなか難しいところを感じました。
一つ,今日御提案したいと思ったのが,例えば,基軸となる問いという考え方なのですが,これは私は大変賛成いたします。それぞれの歴史の転換を捉える視点に合ったような基軸となる問いを立てる,これは大変いいことだと思うのです。それは,もう少しスパンを広げて,大きい問いという形でいいのかなと思います。
例えば,近代化に関していえば,日本と世界はどのように近代化を推進したのかという,非常に汎用性のあるような大きな問い。その下に,例えば,それに連なるような中間というのですか,それより少し小さい問いを幾つか立てる。例えば,欧米諸国と日本の近代化の相違点,類似点は何かとか,このような中間的なものを置いていく。そうすることによって,樹形図的に問いの系統性のようなものが作れるのではないかと思いました。その方向ではどうですか。

【原田主査代理】  ありがとうございました。非常に貴重な御意見だと思います。
では,仙田委員,お願いします。

【仙田委員】  よろしくお願いします。今いろいろと御意見を頂いたのですけれど,時期の区分ではないということなのですが,歴史である以上,近代化,大衆化,グローバル化の流れを,ある程度どこかで教えないと,全く別々に教えるわけにはいかない。これは現場の先生はなかなか厳しいと思います。
ですから,もちろん重複するところはあると思うのですけれど,このような流れの中でやっていくことは重要かなとは思っています。
それから,四つの基軸なのですけれど,縦軸に次いで横軸の方なのですけれど,例えば難しいいろいろな話がある中で,私は今のところは進学校ですけれど,中堅校や定時制や,それから専門高校,全部に行きました。そうなると,ある程度難しい問いを設定してしまうと,なかなか生徒が付いていけない状況がある。そのようなことを考えると,身近な問いが作れるような,そのような基軸となる問いを作っておいてもらえると有り難いと思っています。
私はこの分け方でも別に構わないと思っているのです。それは先生方の工夫だと思っています。例えば,政治に関することであれば,今の18歳主権者教育のことであれば,立憲政治の始まりから,日本はどうであって,そして世界はこうなのだということを考えさせれば,近代化のところでは立憲政治のことを考えることができる。例えばTPPのことがあるとしたらば,自国の権利についてを,例えば近代化の中で条約改正で話すことができる。それから,人権の問題であれば,女性の権利がどんどん取れてきたことについてを社会,文化の中でやることができる。だから,問いについては,ある程度身近な日本のことがあって,そしてその中に世界の背景があるのだということができる,大きな問いを設定してくれると,先生たちはその中で小さな,どこの学校でも使えるような問いが出来るのではないかと思っております。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
では,土屋委員,お願いします。

【土屋委員】  問いの話なのですけれども,どうしても,いろいろ考えると総花的になって,何でも教えなければいけないとなると思うのです。ですから,私の今から言う意見は少数意見だと思って言うのですけれども,思い切ってこのような問題こそ,この10年間に必要な問題だというところで,例示でもいいので,絞って割り切ってしまうという考えも必要ではないかと思うのです。あれもこれも,このようなこともあるということになってしまうと,教科書にそれを全部書いてしまって,結局どれもこれもやってしまって,言葉をたくさん覚えましょうというようになってしまうと思うのです。
例えば,近代化でいえば,先ほど近代化では何かと思いながら,少数派だと思って意見を言いますけれども,もしかしたら多数かもしれないのですけれども,我々が今困っているのは,教育がなかなか予算がないとか,学校が教員も少なくて困っているという,文科省も多分そのような点ではご存じだと思いますけれども,教育がもっと充実しなければならないのに,教育が充実しないという問題はあると思うのです。だから文科省が作る提案の中には,教育という言葉が絶対に必要になってくると思うのです。
だから,例えば資本主義の進展に伴って教育はどう変化したかとか,また,それによって社会はどう変わったかというような,教育と近代化がどう関係しているのか,教育がどれだけ近代化にとって必要なのか,未来にとって教育がどれくらい重要なのかというのを,世界と日本の歴史の中で確認するような,そのような問題設定というか,それはほかにもあるけれど,ここに問題性を,この会議というか,指導要領の作成の中で提案していくというか,確認していくというような方法もあるかと思います。
余り総花的になると,結局はかなり問題がぼけてしまって,学習がアクティブにならないような気がしてきました。


【原田主査代理】  ありがとうございます。
大石委員,お願いします。

【大石委員】  確かに私も問題を集中させていくのもいいと思いますが,その一つとして,先ほど言った平和という問題は,これから先,子供たちにも児童たちにも伝えたい,私たちが伝えなければいけないことだろうと思うのです。そうしたときに,近代化で平和を語れるかといったとき,日本の歴史を見たときに,100年間戦国時代というものがあって戦をしていて,その後,265年のパクス・トクガワーナがあるわけです。そこを私たちが学ぶこと,武器が蔓延していた社会から,武器が管理される社会へ,それから人を殺して出世していた時代から,人を殺すと罪に問われる時代,そのような転換というのは,もっと私たちは積極的に学んでよくて,それは先ほど,時代を超えた転換なのだ,そこまでは分かるのです。それは私も賛成なのですが,それを近代化という言葉でくくると,落ちてくる部分というものがあって,もう少しこれを幅を広げた方が,時代は問わないとは言っているのですけれど,近代化とか大衆化と言ってしまうと,少し素材が固まってきてしまうというのですか,狭くなるのではないかという気がします。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
ほか,よろしいですか。では,矢ケ崎委員,お願いします。

【矢ケ崎委員】  私は地理なものですから,歴史が時代区分をしないで歴史を語れるのだろうかというのが非常に率直な質問なのです。近代化,大衆化,グローバル化,これは世界中で時期がずれていろいろな形で進行してきたのですけれど,それはばらばらなのだよということを生徒に教えて,それで理解できるのかなと思うのです。
ですから,例えば近代化が非常に早く進んだ場所と,遅く進んだ場所では,地域の枠組みの特徴が違っていたのだと思うのです。そのような地域性を世界全体を眺めて理解して,時代がばらばらにいろいろ進行したのだ,果してそのようなことを,どのように教えるのかということが,一つ難しい点かなと思いました。
それから,宿題に関して,いろいろ考えたのですけれど,全然いいアイデアが浮かばなかったのですけれども,一つ思いましたのは,人々の生活が,近代化,あるいはグローバル化,どのように変わったのかなということを考えることで,割と歴史が身近に展開していくのではないか,そのような印象を持ちました。歴史専門ではないものですから,印象でお話をいたしました。

【原田主査代理】  ありがとうございました。
それでは,時間の関係で,この件に関しては最後にさせていただきます。田中委員,お願いします。

【田中委員】  ありがとうございます。グローバル化,特に今回,「歴史総合(仮称)」は日本史と世界史を重ねるというのが眼目だと思います。その意味で,グローバル化の柱というのは,最も日本と世界が一緒になって表れる部分だろうと思っています。その意味で二つ,宿題を頂いたので考えたのですが,基軸の問いということでは,一つはグローバル化が進む中での光と影は何か,その中で,国際社会,日本がどのような形で対応しているかというような問いで,求めるような概念というのは持続発展性,それから国家を超えて人間の安全保障というような考え方も出ていますけれども,そのような考え方を子供たちに持っていただきたいというのが一つでございます。
それからもう一つは,特に戦後70周年ですが,戦後,主語が日本が,世界,国際社会とどう変わってきたか,日本の戦後発展,国際社会への復帰を世界がどう助けてくれて,逆に日本がアジアを中心とする発展にどう貢献してきたかという問いです。そのことによって,世界,日本が相互依存,それから一国平和主義ではなくて共存共栄というような世界に生きているのだ,そのことで我々日本の責任というものがあるのだという,このような基本概念を子供たちに是非。特に戦後の日本と世界の関わりはどのようなものだったのかというような問いから,考えていただきたいと思っております。
ありがとうございます。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
皆さんから大変貴重な御意見を頂きましたが,まだ十分に御発言できなかった方もおられると思いますので,ここを全て埋めるという形でなくても構いませんので,今言い残したこと,あるいは,このような方向でもっと「歴史総合(仮称)」を充実させなければいけないのではないかということも含めて,来週の水曜日ぐらいまでに,遅くとも10日木曜日ぐらいまでに,これに関して御意見があれば事務局の方に御提案,御提出いただければと思いますので,何とぞよろしくお願いします。
今,先生方から頂いた御意見は,当然選択科目の日本史や世界史と大きく関わってまいりますので,引き続きまして,その問題を議論していただきたいと思いますから,新しい歴史科目の改訂の方向性として考えられる構成につきまして,事務局から資料について御説明をお願いしたいと思います。

【大内学校教育官】  失礼をいたします。それでは,お手元に資料3と4を御用意いただければと思います。まず資料4からでございますけれども,歴史の選択科目に関わる御議論といいますのが,2月16日に開催されました特別チームの際の配付資料として,3ページ目でございます。こちらで歴史科目の改訂の方向性の構成ということで,新選択科目としての御議論を頂戴した御意見を,まず紹介させていただきながら,本日の配付資料について説明させていただきたいと思います。
資料3の方で,前回の特別チームの際に頂いた御意見でございますけれども,具体的には8ページをお開きいただければと思います。8ページは,特別チームにおいて新選択科目についての御意見,主なものを御紹介させていただきますと,上から三つ目のマルでございますけれども,「歴史総合(仮称)」は近現代を対象としている。新選択科目である日本史,世界史は,時代をさかのぼって指導することとしてはどうかというような御意見。
それから,四つ目のマルでございますが,現行の学習指導の検討を行っていった際に,さかのぼりの指導ができるかについても検討を行ったことがある。歴史をさかのぼって検討するということは,無限の選択肢から考えることができることになる。教える人,教えられる人それぞれが歴史の分かった人同士でゼミ形式で行うことはできるにしても,全高等学校で行うのは無理があるのではないかというような御意見。
次のマルでございますが,「歴史総合(仮称)」は,歴史の転換点に着目して指導するものである。これを歴史全体に貫いてはどうかというような御意見。
それから次のマルですけれども,「歴史総合(仮称)」で世界史の中の日本を学ぶなら,新選択科目で日本史と世界史を分けるのはなぜか。理想的には,同じ考え方でほかの時代も学んでもいいのではないかという御意見。
一番下のマルですが,「歴史総合(仮称)」を設けるのはなぜか。そもそも「歴史総合(仮称)」を設けるのはなぜかといったときに,今がどのような時代であるかをつかませるためだ。国民国家,科学技術革命,産業化等や世界が一つになったことなど,それまでの時代とは異なる時代であるということを教えたい。世界史でいえば,それまではそれぞれの文明が世界そのものであった時代である。「歴史総合(仮称)」で学んだことの対象となることを教えるということではどうかというような御意見。
9ページでございます。世界史,日本史のB科目はそれぞれ4単位だが,現在の高等学校では大学受験に対応するため,選択を含めて8単位くらいで指導が行われている。そのぐらいしないと,教科書も含めて十分に出来ないのではないかという御意見。
上から二つ目のマルですが,「歴史総合(仮称)」の眼目は,現代の問題を扱うことであろう。新選択科目は日本史,世界史の区分ではなく,古代から中世,近世から現代といったような区分も,将来のオプションとしては考えられるのではないかという御意見。
次のマルです。新選択科目を3単位とすることも考えられる。地理歴史科で必履修科目各2単位に加えて,新選択科目を各3単位指導すれば,10単位におさまるのではないかという御意見。
次のマルですが,「歴史総合(仮称)」で歴史教育の押さえるべき点は押さえ,それをもって日本史,世界史を指導していく。そうして初めて深く考察させることができるのではないかというような御意見を頂戴したところでございます。
このような御意見を踏まえまして,特別チームで配付させていただきました資料を見直しをしまして,本日御議論いただきます資料が,まず資料8-1でございます。資料8-1でございますが,上側に新必履修科目「歴史総合(仮称)」について,今ほど御議論を頂戴いたしましたけれども,まずこの科目としては,現代的な諸課題の背景にある歴史というものをグローバル化につながる近現代の歴史の転換,先ほどでいえば近代化や大衆化,グローバル化というものに着目して追究していくということ。
また,単元の基軸となる本質的で大きな問いを設け,諸資料を適切に活用しながら,比較や因果関係を追究するなど,歴史を考察する手立て,歴史的な見方や考え方を用いて考察する歴史の学び方を身に付けていくというような形で,「歴史総合(仮称)」の中央部分に図式化していますけれども,問いを立て,資料を活用し,考察,話合いを行って表現していくというような学習形態を念頭に置いているということでございます。
中央矢印の部分ですが,このような「歴史総合(仮称)」で習得した歴史の学び方というものを活用しながら,新選択科目として世界史,日本史に関わる科目をそれぞれ考えてはどうかということでございます。
左側ですけれども,新選択科目(案)「世界史に関わる探究科目」,まだ仮称にまでも至っておりませんので括弧書きなのですが,世界史に関わっての新選択科目,探究を中心に行う科目として,科目構成の考え方が左側の括弧の中でございます。まず,新選択科目「世界史に関わる探究科目」としては,諸地域世界の歴史を大きな枠組みと展開を広く深く考察をしていくということ。また,新選択科目においては,前近代では「歴史総合(仮称)」で育んだ技能を生かして,諸資料を活用して歴史を考察し表現していくということ。
また,近現代につながる諸地域世界の文化の多様性,あるいは複合性を時間軸と空間軸,縦軸と横軸との変化に着目して理解をさせるということではどうかということでございます。
また,世界史に係る新選択科目の中の近現代の扱いとしては,諸地域世界の歴史を相互依存性や多元性といったものに着目しながら,諸資料を活用し,広い視野から考察し,表現する学習を通して,現代につながる諸課題を多面的,多角的,歴史的に追究,探究していくということ。さらに,「歴史総合(仮称)」で獲得した概念に加えまして,更に考察を深めるために必要な歴史的な概念を習得させるということとしてはどうかということでございます。
また,新選択科目の「日本史に関わる探究科目」としてのものでございますけれども,こちらについては,我が国の歴史の展開を広く深く総合的に考察をさせるということ。それから前近代では,「歴史総合(仮称)」で育んだ技能をより一層高め,諸資料を活用して歴史を表現し,考察する。また,各時代における重要な概念,これを習得すると共に,現代につながる我が国の伝統や文化の特色を理解する。
一方,近現代におきましては,我が国の歴史に関わる様々な分野から具体的な事柄を取り上げ,自ら課題を設定し,多様な資料を活用して歴史を解釈するなどの学習を重視して,現代につながる諸課題を多面的,多角的,あるいは歴史的に追究,探究していくというようなこと。
さらに,「歴史総合(仮称)」で獲得した概念に加えまして,前近代の学習で育成した,資料に基づいて歴史を考察し表現する力を活用しまして,更に考察を深めるために必要な歴史的な概念を習得していくというような,世界史におきましては,例えば多様性,複合性,あるいは相互依存性,多元性といったものに着目をしながら考察し,探究を深めていくというような学習活動を行う科目として,日本史に関わりましては,概念的な問いは世界史に比べてそれほど多くないというところもあるかと思います。他方で,世界史に比べまして資料がかなり豊富にあるということにも着目しながら,資料を活用しながら重要な概念を獲得していく。あるいは,自ら問いを立てて歴史を解釈するというような学習活動を重視していくというような科目として,それぞれ考えてはどうかということでございます。
欄外一番下でございますけれども,なお,歴史用語の在り方,これらの御意見を頂戴しておりますが,こちらにつきましては研究者と先生方,教員との対話を通じまして,歴史を考察する手立てに着目するなどして構造化を図っていく必要があるのではないかということでございます。
それから,資料8-2の方でございますけれども,この「歴史総合(仮称)」,必履修科目と選択科目,世界史,日本史のそれぞれの探究する科目に関わりまして,授業イメージとして,こちらを例として示しております。かいつまんでの御説明になりますが,中央が「歴史総合(仮称)」として,例えば授業における狙いとして,欧米諸国と日本の工業化の進展を比較して共通点と相違点を整理し,当時の各国内や世界の国家・諸地域間の関係にどのような影響を与えたかを考察させるということを狙いとし,その場合の問いの例としては,欧米と日本の工業化の進展にどのような違いがあるか。また,その違いは世界の情勢にどのような影響を及ぼしたか。また,獲得される概念として,その際には資本主義,帝国主義,富国強兵等が考えられるのではないかということでございます。
見方としては,「世界史に関わる探究科目」についても,あるいは「日本史に関わる探究科目」についても同じような構造になっておりまして,例えば世界史でありましたらイギリスに着目をし,17世紀を前後にして始まったイギリスの社会構造の変革が大西洋沿岸地域相互のつながりをもたらしたことをつかみ,それが世界の最初の産業革命をはじめとする前提条件を築いたということを追究させていく。
問いとしては,例えばですけれども,16世紀末から経済危機に陥っていたイギリスが,なぜ世界初の工業化を達成したのか。獲得される概念としては,「歴史総合(仮称)」に比べてはやや深いといいますか,詳細な農業革命というか,商業革命,そのようなものが考えられるのではないかということでございます。
また,日本史についても同様な形で,狙いとして,例えば日本史の場合ですので,日本の急速な産業革命の進展について,自ら問いを設けて変革前の産業段階を踏まえながら,資本の蓄積の過程,あるいは国内外の諸状況の背景としての政策,そのようなものなどについて総合的な視点から追究をさせていく。
この場合の問いの例としては,欧米で長期を掛けて進行した産業革命を,なぜ日本では短期で実現させることができたのか。その際に獲得する概念としては,豪農商,殖産興業,寄生地主制などが考えられるのではないかということでございます。
併せまして,これら関連する科目について,それぞれの授業展開の概要というものを,その下に示させていただいております。
これはあくまでも授業イメージの一つでございますので,生徒の実態に即して更に多様な例が考えられるところかと思います。
最後に,済みません,参考資料としてお配りしております参考資料の1をお手元に御用意いただければと思います。こちらが,今現在高等学校の必履修科目,「歴史総合(仮称)」,それから,それに関わりまして新選択科目案として世界史や日本史に関わって探究していく科目もお話し申し上げましたが,その以前の小学校,中学校段階における歴史学習の特色として,現行の指導要領及び解説の記述を基にして整理したものでございますけれども,まず小学校の段階におきましては,資料の内容の取扱いにも示しておるのですけれども,聖徳太子,雪舟,徳川家康,伊藤博文など,42名分の人物の例示をさせていただいていて,この人物や文化遺産に着目をさせて興味関心や,あるいは理解を深めるような学習をスポット的にといいますか,中心に行われているところでございます。
これが中学校の歴史的分野になりますと,我が国の歴史の大きな流れを,世界の歴史を背景にしながら,各時代の特色を踏まえて理解させる学習でありますとか,歴史に見られる国際関係や文化交流のあらましを理解させ,我が国と諸外国の歴史や文化が相互に深く関わっていることを考えさせる学習ということで,特に我が国の歴史の大きな流れ,あるいは各時代の特色をつかむというような形での学習が行われているところでございます。
高等学校につきましては,「日本史A」において我が国の近現代の歴史を中心に,その展開を諸資料に基づいて地理的条件や世界の歴史と関連付けながら,現代の諸課題に着目して考えさせる学習を,Bについては,それが我が国の歴史全体についての展開を,諸資料に基づいて同様に地理的条件や世界の歴史と関連付けながら,総合的に考察をさせているというような形で学習が進められているところでございます。
世界史についても,日本史と基本的には同じ構造をとっておりまして,「世界史A」については近現代を中心に,世界の歴史を諸資料に基づいて地理的条件や,今度は日本の歴史と関連付けながら,現代の諸課題に着目して考察する学習。「世界史B」については,世界の歴史の大きな枠組みと展開を,諸資料に基づいて同様に関連付け,文化の多様性,複合性と現代社会の特質を広い視野から考察させるというようなことを行っているところでございまして,小学校段階において,人物,文化遺産を中心に,中学校においては,我が国の歴史の大きな流れ,あるいは各時代の特色を踏まえた学習が行われた後に,高等学校において,先ほど申し上げましたような,新たに必履修科目として設ける「歴史総合(仮称)」,あるいは選択科目として世界史や日本史に関わる「探究科目」を考えていく場合に,どのように小・中・高等学校を通じて歴史教育を関連付けるかというようなことについても,お考えを頂ければと思っております。
長くなりましたが,以上でございます。

【原田主査代理】  ありがとうございました。
それでは,ただいまから資料8-1と8-2を中心に,皆さんの御意見を伺いたいと思います。先ほど御意見頂いた「地理総合(仮称)」と,選択科目地理の関係は,比較的内容が切り分けられていましたので,分かりやすいというか,混乱を生まないのですけれど,歴史の場合は時代を切り分けられないという難しさがありますので,その辺でどのようなアプローチの違いを付けることで先生方に御理解いただくかということが大きな課題になってくると思いますので,是非積極的な御意見を,どこからでも構いませんので,頂ければと思います。又例によって,名札を立てていただければと思います。
では,仙田委員,お願いします。

【仙田委員】  よろしくお願いいたします。私は中高一貫校なので,もう1回中学生や高校生の歴史の授業などの教科書を想定すると,どうしても「歴史総合(仮称)」については,2単位必修で行うとなると,先ほどの教科書に出ている歴史の並び方に着目するならば,焦点を当ててやらないと厳しいだろうと思います。これが1点目なのですけれど,3単位でやることは,学校でのカリキュラムを考えても,今でも非常に厳しい状況ですので,2単位でやらざるを得ないだろうと思っています。
例えば日本史と世界史を単にくっ付けた科目にしてしまったら,先ほど委員からありましたけれど,8単位ぐらい必要なのではないかと思うので,何かに少し軸を定めてやらないと,形骸化してしまうのではないかと思います。この前も言ったのですけれど,「日本史A」とか「世界史A」といいながら,違うことをやっているというようなことにならないようにしたいと思います。
そうしたときに,身近なものから,そして世界の歴史まで考えられるようなことが重要かと思います。いわゆるローカルからグローバルへという発想が必要だと思っています。例えば日本の歴史を見ながら,そこの中から世界史を見る。そうすると比較,因果,相互作用が生きてくるかと思います。
そうでないと,興味関心が薄い学校では非常に厳しい状況だと思いますし,それに加え子供たちに最後に持続可能な日本ということを,「地理総合(仮称)」などと同じように考えさせるならば,最後は日本に戻ってくるという発想が必要というのが1点目です。
それから2点目で,歴史の学び方を考えさせるのに,今言ったようなテーマで時系列に教えていたら,これも2単位では不可能となります。先ほど土屋委員も言いましたけれど,ある程度テーマ的な学習,私は通史的なものがいいかなとは思っているのですけれど,テーマ学習で大胆に切るような発想が必要かなと思います。そうすると,今,文科省からいろいろと出ておりますが,問い掛けの学習が可能になってくると思いますので,それが思考力,判断力,表現力につながるかなと思っています。
続いて3点目なのですけれど,中・高の接続を考えるに当たり,私は中学の歴史の教科書を随分見ました。結構世界史の分野も入っています。世界史を踏まえて学習するということなので,教科書の世界史分野をどのように活用するかは現場の問題と思っています。ですから,これだけ中学段階の教科書に世界史分野が載っているならば,それを踏まえて学習させれば,「歴史総合(仮称)」については先ほど言った2単位で出来るかなと思います。最後に前近代との関係なのですけれど,これについては普通に私どもが使っているような教科書でも,前近代において「歴史総合(仮称)」の趣旨に合うものが載っています。あとは「歴史総合(仮称)」で培った考え方を,どのようにその後の学習に入れていくかということについては,学習指導要領の中に仕掛けを組み込んで入れていただけると有り難いと思っております。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
では,磯谷委員。

【磯谷委員】  今,説明していただきました資料3の8ページ,9ページのところなのですけれども,「歴史総合(仮称)」が必修で,新しい選択科目も日本史と世界史を一緒にした科目にしたらどうだというのが,8ページの下から二つ目のポツとか,それから9ページの上から二つ目なのですけれども,これも新しい選択科目を古代から中世という一つの教科,あるいは近世から近代というような教科にするのもいいのではないかというような御意見があるのですけれども,文科省の提案といいますか,「歴史総合(仮称)」を勉強して,そして新しい世界史の科目,新しい日本史の科目というようにすると,生徒もそれぞれ特色のある科目ということで,よく理解できるのではないかと思います。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
韮塚委員,お願いします。

【韮塚委員】  資料8について申し上げたいと思いますが,ここまできちんとした形で既に提示されてしまうと,大変申し上げにくいことなのですけれども,基本的な枠組みについて申し上げたいと思います。例えば現行の「日本史B」の学習指導要領では,例えば導入で歴史と資料,そして歴史の解釈,続いて歴史の説明,そして最終的に歴史の論述という形で,いわゆる歴史の学び方を段階的に生徒に身に付けさせようという設計になっております。正に,先ほど歴史の学び方を活用してという表現がございましたが,それは実は現行の「日本史B」の中で制度設計されておるのかなと思っております。そしてさらに,現行「日本史B」では,そのような学び方と併せて,歴史の様々な通史的な内容と絡めながら学習させるという,正に総合的に考察させるという形になっておるかと思います。
そう考えると,例えば新選択科目と「歴史総合(仮称)」との関係で考えるならば,最初に現行の「日本史B」のような科目があって,歴史の学び方を段階的に通史と絡めながら学び,そしてその上で,現在検討していただいているような必履修科目として「歴史総合(仮称)」を,いわば歴史科目のまとめとして現代の諸課題につながるという形で位置付けていく,このような構想,枠組みにしていくのが,今回の改訂の大きな目的に沿っておるのではないかと私は考えています。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。韮塚委員の御意見は,一つの科目構成というか,分析,総合という流れからいくときの一つの方法として,当然あり得る議論だと思います。
ただ,現実なかなかそれが「総合科目」を仮に基礎的なものに置くとした場合に,どうなるのか。先ほど仙田委員の御意見にもあったように,例えば2単位という時間などを考えると,それは可能かとかいうことがあっての御意見だとは思いますので,一つの重要な御意見としては,多分御同意いただけると思いますけれど,実現は難しいかなという気が現状ではします。でも,御意見は承りたいと思います。
ほかにいかがですか。大石委員,お願いします。

【大石委員】  細かいところはさておいて,両方,世界史,日本史に関わったときに,学ぶ主体としての生徒というように,まず軸を据えたときに,恐らく「日本史に関わる探究科目」で構成される要素というのは,現代の日本市民として,現在日本社会とか日本の国家とか政治,そのようなものを知っておきたいこと,あるいは今の成り立ち,現在の社会の成り立ちに関わる歴史というものが構成要素として出てくるだろうと思います。
世界の方とすると,今度は世界市民,地球市民として生徒たちがこれから生きていくときに,どのようなことを知っておくべきか,あるいはどのような課題の解決の仕方を学んでおくべきか,そのようなレベルで見ていく必要があって,もちろん総合関係なのだけれども,二重性というのですか,そこのところをしっかり押さえておいた科目の内容構成にしていくべきだろうと思います。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
羽田委員。

【羽田委員】  基本的には私は韮塚先生の意見に賛成なのですけれど,それはなかなか実現不可能だとした場合に,次善の策として,今ここで新選択科目として「世界史に関わる探究科目」と,「日本史に関わる探究科目」というものがありますけれども,しかもそれが分かれているようになっていますけれども,ある程度オーバーラップしないといけないのではないかと思います。そのような意味では,せめて題目が,世界の歴史と日本,日本の歴史と世界というようなイメージで選択科目を作って,それによって,上の「歴史総合(仮称)」で学んだことが生きてくるような学びを,更に進めていくのがいいのではないかと思います。
そうなると,教科書の作り方がすごく難しいと思うのですけれども,今までの日本史の教科書は,現行の「日本史B」にありますように,きれいに日本の歴史だけでやっていることになっていますし,世界の方は,余り日本のことを考えずに,又別の切り口というか,枠組みでもって世界の歴史を語っていることになっていますけれども,これを何とかしなければいけないとは思いますけれども,いずれにしても,少しオーバーラップさせないといけないのではないかと思います。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
ほかにいかがですか。永田委員,お願いします。

【永田委員】  失礼いたします。「歴史総合(仮称)」について,今回初めて見ましたので,意味的なことになるかもしれません。特別チームのこれまでの意見のところで,2単位の新必履修科目のところで,「歴史総合(仮称)」を学ぶのであれば,新選択科目,世界史も日本史も,これと同じように総合にした方がいいのではないかという考え方もありました。「歴史総合(仮称)」で学んだことを新選択科目で生かさなければいけないということで,もちろん「歴史総合(仮称)」のところで世界史的な観点から見た日本,日本史的な観点から見た世界史というのを見て,それぞれについて新科目のところで総合したことで生かせるようにということで,考え方のところに比較,因果,相互作用というところがありますけれども,必履修科目のところで総合の考え方というものがきちんと生かせる,今のところ世界史と日本史に分かれている状況になっておりますので,その辺が生かせるようにということです。
例えば,資料8-2の問いのところの,「日本史に関わる探究科目」のところであれば,「欧米で長期をかけて進行した産業革命を,なぜ日本では短期で実現させることができたのか」というように書かれていて,これは世界史的な,日本のことをよく考えられるようになっています。一方世界史のところであれば,世界史だけになってしまっているということです。
先ほど,それぞれ個別のことを言われて,総合という考え方は難しいということが意見で出されましたけれど,総合から個別に行くのであれば,総合の視点をこのように生かしていくのが大事なのではないかと思っております。
それと,先ほどの資料7の近代化のところで,あくまでも事例として問いというものが挙げられておりまして,基本的には「歴史総合(仮称)」よりも新選択科目の方が難しくならなければいけないということです。問いの事例としては,どのような,どのようにということで,「歴史総合(仮称)」のところであればHowの問いです。新選択科目であればWhyの因果とか相互作用となっているので,このように行くのか。それとも「歴史総合(仮称)」のところでも最初から書かれているように,因果と結果とか,相互作用というようなものをやって,新選択科目で深くやるのかというところは考えていかなければいけないと思います。
それと,獲得する概念のところです。「歴史総合(仮称)」のところにたくさんありまして,同じ時期であるのであれば,獲得する概念というのは,それぞれ「歴史総合(仮称)」を生かして上での新選択科目ということであれば,もっと多くなるべきではないかと思っております。
それと,私は地理ですので,申しわけないです,資料8-1のところで新選択科目の世界史と日本史のところようやく分かったのが,日本史であれば我が国の歴史の展開についてやる,大体やり方は一緒だなということです。世界史のところの諸地域世界の歴史について,地理のタームとして世界の諸地域というものがありますので,世界の諸地域の歴史とか,諸地域の世界というのは,意味が分かりませんでしたので,説明をしていただけたらと思います。
言いたいことは,「歴史総合(仮称)」の学びがきちんと新選択科目で生かされる,世界史でも日本史的な視点,日本史でも世界史的な視点が必要なのではないかということでございます。
以上でございます。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
では,土屋委員,お願いします。

【土屋委員】  先ほどの韮塚委員が,「総合科目」は後ろの方に置いた方がいいのではないかという御意見,私も本当はそちらの方がいいかなと思っている立場なのですけれども,多分我々がこれを先に持ってきているのは,これが歴史基礎というイメージで議論が進んで,基礎だということで前に持ってきたという感じがしているところがあって,別に総合というように名前,仮称なのですけれども,そのようなことであれば,それこそ学習の総合性ということで,地理は先にやったとしても,歴史は後ということも考えられるかなと思っています。
ただ,原田主査がおっしゃるように,難しいということであれば,それにこだわることではないのですけれども,ただ,どこで相違性を見出すかということが非常に難しいと思います。
先ほど,「歴史総合(仮称)」の視点と,それから横に経済,政治,国際社会,社会・文化というようなジャンルがあって,あの経済とか,政治とか,国際社会とか,社会・文化という分析視点は非常に重要だと思うので,あれは否定しているわけではないのですけれども,そうなると当然,後ろに置かれるとすれば,新選択科目もそのようなきちんとした分析枠を踏まえて学習が進められていく。要するに,トピック的な,ある歴史的な出来事の単純な理解ではなくて,ある時代を経済だとか政治だとか,国際関係だとか,社会・文化というようなきちんとした分析枠で分析した上で,その時代をきちんと説明できるような,そのような置き方を丁寧にやっていくことが,正に新選択科目には求められるのではないかと思います。

【原田主査代理】  先ほど私見で述べてしまったので,誤解があってはいけないのですけれど,「歴史総合(仮称)」は必履修科目なので,多分,低学年というか,置いて必履修した上で選択科目に行くべきかなと思いましたけれど,でも,選択科目があって,その後,最後に必履修科目があってもいいのだということが,もし皆さん合意というか,そのような考えがあれば,もちろんここで決定はできないのですけれども,それを又高校部会等で議論していただくことは可能ではあると思いますので,もし,そのような意見があれば,私は,もうだめだと言っているわけではございませんので,御理解ください。
梶山先生。

【梶山主任視学官】  今の御議論でございます。御検討いただけるのは非常に有り難いと思っております。ただ,歴史以外の様々な必履修科目の単位数というものを,どう教えていくか。
それから,もし選択科目というものを何か受けた上で,必履修を受けるということになれば,全ての生徒にどこまで学ばせるかというところと,その単位数に加えて何単位か必要になるわけでございますので,ここを全体の中で見ていくということが,難しくなっていくのかなと考えます。
反対に,必履修科目について,選択のものをやらない限り出来ないという考え方は,全体の中では,どのように考えていけばいいのかなというのはあるのではないかと思っているところでございます。

【原田主査代理】  ほかにいかがですか。
それでは,浅川委員,お願いします。

【浅川委員】  今の問題なのですけれども,現場でいきますと,もし必履修が上に乗った場合,必履修科目が当初の狙いの「総合科目」にならないおそれがあると思うのです。上に二つ乗ったので,これは近現代がここで出来る。ですから歴史の単位が単に増えただけというように現場には解釈されるおそれがあると思うのです。
ですから,ここで打ち出しているように,「歴史総合(仮称)」できちんと歴史の学び方というものを身に付けさせた上で,それぞれ世界の歴史,日本の歴史を学ぶ意味があるのであって,お考えとしては分かるのですけれども,現場の感覚からすると,上に乗るということは,この科目が形骸化するおそれがあるのではないかと懸念しています。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
よろしいですか。関委員,お願いします。

【関委員】  初めて参加させていただきます。議論を聞いていて,中学校でずっと歴史を教えている立場として,少しだけ中学校の現状と感想を述べさせていただきます。中学校でずっと指導要領を改訂する度に近現代史の重視ということがいわれていて,それと今回の時数が増えたということなのですが,果して今後,時数が増えたからといって,中学校で近現代史がきちんと教えられるかどうかというのは,少し疑問に思っているのです。
というのは,難しいのです。中学校の歴史を教えている人間が,全員歴史が専門というわけではないですし,例えば,大正時代以降になると,日本の歴史と世界の歴史が,教科書でいうと交互に出てきたり,時系列で戻ったり,正直言うと,歴史事実を教えるので精一杯の先生たちもたくさんいます。生徒も同じだと思うのです。ですから,時数が確保できたからといって,定着できるかどうかというのは,今後,中学校の方の課題だと思うのです。
そのような意味で,御議論を聞いていて,必履修科目として近現代を中心に,僕のイメージは近現代化とか歴史基礎のようなイメージで捉えていたのですけれども,そのようなものが必履修として低学年で,高等学校で設定されるというのは,中学校の方からすると非常に期待をしていますし,必要なことだと思いますし,あえて中学校との接続ということも,内容的なものも含めて,今後議論していただければいいのではないかと思っています。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございました。
それでは,これに関しまして,もちろん言い残したことがございましたら,事務局の方に来週の水曜日ぐらいまでにいただければと思っております。
続きまして,地理歴史科全体で育成すべき資質・能力の整理について意見交換を行いたいと思いますので,まず事務局から資料についての説明をお願いします。

【大内学校教育官】  失礼をいたします。お手元に資料9を御用意いただければと思います。1枚目につきましては,地理歴史科で育成すべき資質・能力の整理とされておりますが,こちらにつきまして,まず一番最後のページを御覧になっていただければと思います。5ページ目になりますけれども,参考ということで仮案・調整中というクレジットが付いておるのですけれども,こちらは昨年の8月26日に中教審教育課程企画特別部会で出されました論点整理の補足資料として添付をされているものでございます。
具体的には,学習指導要領の構造化のイメージということで,学校教育においては,教科学習はもとより,総合的な学習の時間,特別活動,道徳教育と種々あるわけでございますけれども,それらの中で横軸として,教科横断的総合的に育成すべき様々な資質・能力ということで,大きく三つの柱で整理されているということでございます。既に,このワーキンググループにおける検討事項としてもお示しをさせていただいているところですけれども,個別の知識や技能,何を知っているか,何が出来るかという点,それから思考力,判断力,表現力等,教科等の本質に根ざした見方や考え方も含めたものですが,知っていること,出来ることをどう使うかという点,それから学びに向かう力,人間性等,情意・態度等に関わるものとして,どのように社会・世界と関わり,よりよい人生を送っていくかというような,この三つの軸で今回の学習指導要領を考える際に,構造化をしていってはどうかというような基本的な考え方になっているものでございます。
4ページ目のところが,実は昨年の8月の段階で既に論点整理ということで,一度,「地理総合(仮称)」,「歴史総合(仮称)」,「公共(仮称)」,いずれも仮称ですけれども,これらについてまとめた資料でございますが,各ワーキングにおきまして,例えば3ページ目のところですが,これは冒頭,小・中学校ワーキングでの紹介がございましたけれども,小・中学校に関する社会科の内容につきまして,今現在,資料7の3ページ目のとおりに取りまとめられておりますし,また一方で,公民関係について中心に御議論いただいているワーキングの方,これも2月29日に開催されましたが,2ページ目のような,それぞれ柱に沿った形で,今現在,御議論を頂いているところでございます。
小・中学校それから公民科における資質・能力の整理などとの連携も念頭に置きながら,今回1ページ目のような形で,資料9ということで整理をさせていただいたものでございます。この資料9を御覧になっていただく前に,先ほど,本ワーキンググループにおいて,前回1月25日に開催された際に,資質・能力についても御意見頂戴しておりましたので,そちらを紹介させていただきたいと思います。
資料1でございますけれども,資料1の20ページ目の「歴史総合(仮称)」に関してのところでございまして,下から三つ目のマルのところで,育成すべき資質・能力として,「国際社会を主体的に生きる日本国民としての自覚と資質」では十分ではないのではないか,国際社会とは国家が主体となっており,これに対してグローバル化は企業等が国家にまたがっている状況のことをいうのであり,そのような状況を捉えて「グローバル化に対応し」といった内容が必要ではないかというような御意見。
それから,21ページに参りますけれども,一番上のマルですけれども,考察の手立てとして「概念の理解」だけでよいのか。大切なのは,異なる複数の歴史的解釈からよりよいものを選ぶなどの力が必要なのではないかということ。
同様に,その下のマルですけれども,「日本国民としての自覚や資質」という育成すべき資質・能力に「グローバル化に対応し」という要素を入れてはどうかというような御意見。
22ページですけれども,22ページの下から三つ目のマルですが,科目の目標についての方向性としては,近現代を中心とする世界と日本の歴史を対象として,諸資料に基づき現代につながる諸課題を見出し,課題の探究を通じて歴史的な思考力,判断力,表現力を育み,国際社会に主体的に生きる日本国民としての自覚と資質を養うということとしてはどうかというような御意見を頂戴しました。
また,地理につきましては,24ページの方ですけれども,24ページの一番下のマルですけれども,3行目くらいからですが,小・中学校では課題解決といっても,幾らか夢物語的なところがあって,むしろ地理的に見ると何が問題なのかという課題の発見が重要なのではないか。高等学校では,解決策としてはどのようなものがあるか,また,解決策を講じているが,なぜうまくいかないかなどを考えることができるような力を育成してはどうかというような御意見を頂戴をしております。
これらを踏まえまして,先ほど来御議論いただきました,各科目のそれぞれの資料の中の中央部分に,育成する資質・能力を示しておったりしたわけですが,それらを統合した資料が,この資料9の1枚目ということになります。縦に全て見ていくようにしてあると思いますが,個別の知識や技能,何を知っているか,出来るかということにつきまして,「地理総合(仮称)」については地球規模の自然システム,社会・経済システムの理解,それから地図や地理情報システムなどの地理的な技能ということ。
また,地理の新選択科目案としては,世界の空間的な諸事象の規則性や傾向性,世界の諸地域の構造や変容についての理解,地図や地理情報システムなどを実践的に活用する技能。
「歴史総合(仮称)」につきましては,近現代の歴史の考察に関わる概念の理解,歴史に関わる諸資料を活用する技能ということ。新選択科目として,「日本史に関わる探究科目」については,我が国の歴史の展開を総合的な考察を通した理解,多様な資料を活用する技能。同様に世界史につきましては,諸地域世界の歴史の大きな枠組みと展開の考察に関わる概念の理解,諸資料を活用する技能というような形と,個別の知識や技能について整理をしております。
また,思考力,判断力,表現力等については,「地理総合(仮称)」については,位置や分布などの空間概念を,地理的な見方や考え方を用いて考察し,表現する力。地理の新選択科目としては,世界の諸事象を系統地理的に考察し,表現する力。あるいは世界の諸地域を地誌的に考察し,表現する力。「歴史総合(仮称)」については,比較や因果などの歴史的な見方や考え方を用いて考察し,表現する力。日本史に関わる新選択科目につきましては,我が国の歴史に関わる様々な分野に着目し,自ら課題を設定して多面的,多角的に考察し,表現する力。世界史の選択科目につきましては,諸地域,世界の歴史の多様性や複合性,相互依存性や多元性といったものに着目して多面的・多角的に考察し,表現する力を思考力,判断力,表現力等として育成していってはどうかということでございます。
また,最後,右側ですが,情意・態度等に関わるものといたしまして,「地理総合(仮称)」に関しましては,持続可能な社会づくりに向けて,地球的課題や地域的課題の解決を模索する態度など。地理に関する新選択科目につきましては,世界や日本の望まれる国土像や地域像の構築のため,進んで参加し貢献しようとする態度など。「歴史総合(仮称)」につきましては,グローバル化する国際社会に主体的に生きる日本国民としての自覚など。選択科目としては,日本史に関わる探究系の科目,あるいは世界史に関わる探究系の科目についても,態度等の育成様々あるとは考えられると思いますが,グローバル化する国際社会に主体的に生きる日本国民としての自覚ということが共通的に考えられるのではないかということで,資料9として示させていただいているものでございます。
地理歴史科で育成すべき資質・能力の整理についての御意見を,よろしくお願いしたいと思います。以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございました。それでは,資料9地歴科の各科目の資質・能力それぞれ観点が三つほどの枠組みとして示されていますが,これでいいかどうか,どこからでも構いませんので,御意見を頂ければと思います。
では,井田委員,お願いします。

【井田委員】  地理の方なのですけれども,地理の考え方の一つは,グローバルに考えるということと,先ほどもありましたが,地域的な枠組みで考えるということがあります。個別の知識や技能のところで,システムという言葉が用いられて,システムは地球規模で考えても,サブシステムがあるので,地域に落としても考えられると理解できるのですが,思考力,判断力,表現力のところで,空間的概念を用いて考えるときに,スケールに応じて考える,つまり地域からグローバルから,スケールに応じて考えるという用語が入ると,より地理のよさが出てくるかなと考えます。
以上です。

【原田主査代理】  もう少し具体的に,例えば,仮に入れるとすれば,どの辺ですか。

【井田委員】  思考力,判断力,表現力のところで,位置や分布など空間的概念を地理的な見方や考え方を用いて,あるいは地域的なスケールに応じて考察し,表現する力というようになるかと思います。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
ほかにいかがですか。
この資質・能力は,言うまでもなく各科目の基本的な性格を規定してきますし,高校の場合は,今後議論があってどうなるか分からないにしても,いわゆる指導要録等での評価の基準の一つにもなってこようかと思いますので,十分議論しておく必要があると思います。
浅川委員,お願いします。

【浅川委員】  お聞きしたいのですけれども,「歴史総合(仮称)」のところと,いわゆる日本史,世界史,目標が同じになっています。ここの階層性は必要ないのかというところが一つと,それから情意・態度に関わるものは,現行の学習指導要領だとほとんど地歴科全体の目標と変わらない。もっと歴史に絞り込んだ資質・能力の中の情意・態度というのが必要なのではないかと,門外漢なのですけれども,思うのですが,その辺はどうなのですか。

【原田主査代理】  浅川先生の方で,こうしたらいいという御提案は特に。階層性というか。

【浅川委員】  そうですね。地理の場合のように,「歴史総合(仮称)」をきちんと学んで身に付く情意・態度と,更にそれを深めていく。どのように表現したらいいか分かりにくいのですけれども,気付きと行動といいますか,そのような形で切り分けるのも一つかなと思います。

【原田主査代理】  ありがとうございます。その辺り,もう少し具体化するのも,一つの案としてあると思います。関連していても,あるいは別の点でもいいですけれど,いかがですか。
では,高木委員,お願いします。

【高木委員】  私は,この三つの資質・能力の整理で分かれているという点には非常に賛成です。特に育成すべき資質・能力の三つの点が,今回の改訂に大きく影響しているのかなと思います。これまで今日の時間は「地理総合(仮称)」,それから「歴史総合(仮称)」で,各科目の内容構成をどのようにするかということをずっとやってきたのですけれども,最終的には個別の知識や技能の育成を1年間ずっと終始するのではなくて,それぞれの科目の構成を考える際も,思考力,判断力,表現力をどの辺で入れられるのかとか,情意・態度等に関わるもの,この辺が一番大事で,生徒が主体的に学ばないと育成できないと思うのですが,その辺のところを各科目のカリキュラム構成のときに,どのように入れればいいかというところも見据えて考えていく必要もあるかと,研究開発校で地理基礎,歴史基礎をやっていて,いつも考えていることになります。

【原田主査代理】  ありがとうございます。私も一人の委員として,私見を述べさせていただきたいと思うのですけれども,先ほども浅川委員から出てきた情意・態度に関わる歴史系科目が,全部グローバル化するうんぬんということですけれど,日本国民としての自覚を最後に求めるというのは,それはそれで喜ぶ人もいるかもしれませんけれど,そのような態度形成のようなことではなくて,先ほど浅川委員もおっしゃったように,歴史を学んだことによって,歴史を通じて何か社会に参画していくというような,もう少し思考力,判断力,表現力と切り結ぶような情意・態度でないと,お飾りになるか,イデオロギーによって,私はそれは関係ないというような形になりかねないので,例えばイギリスとか,オーストラリアとか,アメリカでヒストリカル・エンパシーという概念があるのですけれども,歴史を捉えるときに,過去は現在と違う見方がある,それに対して,どう共感的に,いわゆる同一視とか,過去を現在の視点で見るというのではなくて,過去の人々の行為の背景にどのような文脈があったのかということに対して,共感的に考えていく,そのような態度も,僕は歴史の場合は非常に重要ではないかと思うので,お飾りで,誰も評価に関係ないような情意・態度ではなくて,もう少し具体的な授業を通して身に付けるような歴史へのアスペクティブといいますか,それが歴史を考える一つの態度形成になっていくようなことがいいのではないかと,個人的には思うのです。
もう少し,これを又整理して事務局にペーパーを出さなければいけないと思うのですけれど,そのようなことを思っています。
そのほか,いかがですか。では,永田委員,お願いします。

【永田委員】  失礼いたします。浅川先生が言われましたように,歴史のところで階層性というのは必要だと思っております。
それと,地理につきましても,1回目の発言のところで,新選択科目のところで,是非,生活・文化の文化のところを入れてくれということを言いましたけれども,情意・態度のところで,「地理総合(仮称)」で地球的課題,地域的課題の解決を模索する態度というのがあります。さらに,新選択科目のところは,進んで参加し貢献しようとする態度があります。これを書きますと,「地理総合(仮称)」の地球的課題とか地域的課題のところを,よりグレードアップしたような形になる。要は,テーマ学習をもっとやっていかなければいけないということです。私は古いですから,「地理A」と「地理B」というものをイメージしますので,新選択科目のところで地誌的とか系統地理的というのが出ているのは,地域像の構築とか,地域の特色をつかむというのが目的の一つだと思いますので,この表現が,内容とイメージのところでギャップがあるような気がいたします。
このように情意・態度を設定するのであれば,「地理総合(仮称)」のところの地球的課題とか,先ほどESDというのが出ましたけれども,その辺のところをもっとやらないと,参加し貢献しようとする態度までは結び付かないのではないかと思っています。
それと,いつも思っておりますけれども,地理と公民のところで,どこまでが地理で,どこまでが公民なのかということで,進んで参加し貢献しようとする態度というのが,新しい「公共(仮称)」とか公民科目との関係でいろいろ考えないといけないようなところがあると思います。
態度を前面に出されることはうれしいことなのですけれども,系統地理とか地誌というのを出したら,もう少し地域像というようなところを文言で出す,今でいったら,いい案か分からないのですけれど,「進んで考察しようとする態度」とか,「地域像の構築と地域の課題の解決のため,進んで考察しようとする」とか,その辺りで落ち着くのではないかと思っております。
今,ちょっとした考えですけれど,以上でございます。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
仙田委員,お願いします。

【仙田委員】  最初に,委員長も言われましたけれど,私も情意・態度に関わる,グローバル化にする国際社会うんぬんというところについては,もっと「地理の探究科目」と同じように,どのように参加するかや,どのように貢献するかということを意識させる文言にしていただけると有り難いと思っています。
そして,本題なのですが,「歴史総合(仮称)」のところの帯を見ますと,どこにも世界史と日本史をどのようにするかということは書かれていないということです。先ほど井田先生なども言われました,地理の方ではもっと地域からグローバルな視点にと書かれています。同じように,「歴史総合(仮称)」の例えば思考力,判断力のところについて,日本史と世界史とのつながりだとか,関わりを書いておいていただけると,有り難いです。例えば日本史だけに偏るとか,世界史だけに偏ることはしないでほしいということを,ここでくぎを打ってくれると有り難いと思っております。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
では,大石委員,お願いします。

【大石委員】  この「歴史総合(仮称)」と,それから「探究科目」の方,そちらが構造化されていないように思います。先ほど言われたように,総合が日本史と世界史を変革ということを学んだ後,それを日本史の中でどのように生かしていくのか,使う資料も基本的な資料であれば,それが更により専門的な資料になるし,使う概念も,より細かい概念になっていくだろうし,世界でも同じだと思うのです。そこを構造化しないと,一番右に出てくるような,先ほどから皆さん言われているような,同じ文章でお茶を濁すようなことになってしまって,この中の構造化,発展性というものをしっかり捉える必要があるだろうと思います。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
仙田先生はよろしいですか。そのほか,いかがですか。10時半になっていますので,なくなれば,又今後の御意見はペーパー等で出していただくことになりますけれど,もし,もう少し御意見があれば伺いたいと思っていますが,いかがですか。あるいは,少し急いでやってきましたので,前の資料の6,7,8に関わっても構いませんけれど,よろしいですか。
では,最後に,大石委員の御指摘にあったように,特に歴史科目に関連して,それぞれの資質・能力をもう少し構造化して,関連がより明確になるように,あるいは差異化が図れるように,又議論を重ねていきたいと思っています。
本日は,基本的なところで「地理総合(仮称)」として新しい地理の選択科目についての内容構成について,原案がほぼ皆さんにお認めいただけました。「歴史総合(仮称)」と,仮称ですけれど歴史の探究に関わる科目につきましては,大きな議論がまだ煮詰まっていないところではありますが,三つの転換期を捉える視点を中心に,より日本と世界を関連付けながら,あるいは身近らところから,生活からとして選択科目に無理なく総合で学んだことが活用,発展としてつながるような,そしてそれが資質・能力の各欄にうまく見える形で具体化できるようなことを,今後検討していく必要があろうかと思いますので,ここで何か完全な結論を出して,具体的な指導に持っていくには,まだ少し時間が必要かなと思っていますので,今後更に御意見を頂ければと思っております。
事務局の方に,一応今回のことに関しては,来週の水曜日か木曜日までにお願いしたいと思いますが,仮に時間が過ぎても,御意見があればメール等で,又,後であるかと思いますけれど,教育課程総括係に頂ければと思いますので,よろしくお願いいたします。
それでは,本日予定されていた議題は,ここで閉じたいと思います。最後に,次回以降の日程につきまして,事務局から御説明をお願いします。

【大内学校教育官】  長時間にわたりまして,ありがとうございました。次回以降の日程でございますけれども,今ほど原田主査代理からもお話がございましたけれども,本ワーキンググループにおきまして,4月以降も引き続き検討を進めてまいりたいと考えております。したがいまして,次回の会議の日程につきましては,現在先生方に照会を掛けさせていただいているところかと思いますが,追って調整の上,御連絡をさせていただきたいと思っております。
また,繰り返しになりますけれども,原田主査代理からお話ございましたとおり,本日の資料に関しまして,取りまとめの関係もございますので,来週の3月10日木曜日を目途に,是非御意見をお寄せいただければ大変有り難いと思っておりますので,よろしくお願いしたいと思います。
以上でございます。

【原田主査代理】  それでは,第7回の社会・地理歴史・公民ワーキンググループを終了します。ありがとうございました。

―― 了 ――

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