教育課程部会 社会・地理歴史・公民ワーキンググループ(第5回) 議事録

1.日時

平成28年2月8日(月曜日)13時00分~15時30分

2.場所

文部科学省3階3F1特別会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 社会・地理歴史・公民の改善充実について
  2. その他

4.議事録

【館委員】  では,定刻となりましたので,ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会社会・地理歴史・公民ワーキンググループの第5回会合を開催いたします。本日は,お忙しい中,御参集いただき,誠にありがとうございます。
第1回の会議において,本ワーキンググループの土井主査から御提案くださいましたとおり,本ワーキンググループにおいては,議論する事項に応じて小グループに分けて議論をさせていただいているところであります。
本日は,主に小・中学校社会科を中心に,社会科等における見方や考え方,育成すべき資質・能力,学習のプロセスなど,これらの社会科,地理歴史科,公民科を通じて整理すべき内容について御意見を頂く予定としておりますので,その関係の委員の皆様を中心にお集まりいただいております。また,進行は,前回と同様に私が行ってまいりますので,よろしくお願いいたします。
それでは,最初に,事務局から配付資料について確認願います。

【大内学校教育官】  失礼いたします。配付資料の確認をさせていただきます。本日は,議事次第にございますとおり,資料1から資料9,それから参考資料1から3,その他机上に関係する資料を配付させていただいております。不足等がございましたら事務局にお申し付けください。
なお,机上のタブレット端末につきましては,関連する資料等をデータで入れてございますので,詳細は次第の裏面の方の目次を御覧いただければというふうに思います。
以上でございます。

【館委員】  これより議事に入りたいと思います。
本日は,報道関係者より会議の撮影及び録音の申出がありまして,これを許可しております。御承知おきください。
さて,本日は,先ほど申しましたように,社会科等における見方や考え方と思考力・判断力・表現力など,社会科等で育成すべき資質・能力,社会科等における課題解決的な学習過程の大きく三つについて意見交換を行いたいと考えております。御議論いただく事項を考慮しまして,本日の会議時間につきましては終了時刻を30分延長させていただきましたが,議論の状況により早く終わることができるようでしたら,そのようにいたしたいと思っております。
また,議事の流れとしましては,事務局から資料に基づき説明を頂いた後,議論の内容ごとに御意見を伺いたいと思っております。
これに先立ち,事務局から本ワーキンググループにおけるこれまでの検討状況について御紹介いただきます。特に本日の議論に直接関わる内容は後ほど議論の対象となる資料の説明に併せて頂くこととして,ここでは,一つ目,1月25日に行われました高等学校の地理歴史科に置く新科目の内容構成の考え方についての審議,二つ目,1月28日に行われました高等学校の公民科に置く新科目の内容構成の考え方についての審議について,意見の概要の説明をお願いいたします。よろしくお願いします。

【梶山主任視学官】  それでは,私の方から御紹介させていただきます。
まず,資料3を御覧ください。こちらが,本ワーキンググループの第3回目というところで主に「歴史総合(仮称)」及び「地理総合(仮称)」について御議論いただいた資料でございます。
資料を1ページはぐっていただきまして,まず,「歴史総合(仮称)」の方向性・特色・構成イメージ(たたき台案)というものを御覧いただければと思っております。前回,特別チームの議論というものを御紹介させていただきましたが,改訂の方向性として,歴史の転換ということで,近代化,大衆化,グローバル化というもの,これを比較,因果,相互作用という考察の手立てを基に指導していくというようなことを特別チームの方で御議論いただいたところでございます。
それを踏まえまして,たたき台案としまして,育成すべき資質・能力,「歴史総合(仮称)」では次の資質や能力を養うということで,歴史を考察する手立てを用いて,現代の諸課題の歴史的背景を追究する力,諸資料を適切に活用する技能,国際社会に主体的に生きる日本国民としての自覚と資質と,このようなところを育んでいくのではないかというところ。それから,歴史を考察する手立てといたしまして,比較,因果,相互作用というところを用いて,多面的・多角的に吟味したり,資料に基づいて解釈していくと。このようなところが方向性・特色ということで考えられるのではないかというところをたたき台案として踏まえ,御議論いただいたところでございます。
また,構成イメージでございますが,前回,近代化,大衆化,グローバル化という転換のところをつかまえて指導していくというところでございますが,その際,例えばこの例にありますように,経済活動と生活のような現代の諸課題と通じてどのようにその構成というのを考えていったらいいのかということを整理してはどうかというところで,たたき台を出させていただきました。こういうことも踏まえて,また今後御議論を頂くことにしております。
次のページ,御覧いただければと思いますが,こちら参考でございますが,歴史系の現在の「世界史A」,「日本史A」の全体としてのまとまりでありましたり,共通する主な学習の題材としてどういうことが考えられて,今どうなっているかというところ,こういうところに関してこういうことも資料として御提出させていただいているところでございます。
こちらの具体的な議論の内容につきましては,資料1の方でまとめさせていただいております。本日,時間の関係で御紹介いたしませんが,このようなところでその御議論を頂いているところでございます。
それから次に,「地理総合(仮称)」に関して御説明させていただきたいと思っております。次のページをはぐっていただければと思います。「地理総合(仮称)」につきましては,前回,どのような資質や能力というところ,それから新必履修科目の全体の構成ということ,一番左側にあるようなものに関して特別チームで御議論いただいたわけでございますが,そのようなことを踏まえてワーキンググループにおいて,重視する思考力,判断力,表現力というのはどのようなものかということ,それから,「地理的な見方や考え方」を用いて問いを重視した授業展開を考えた際にどういうイメージが考えられるかというようなこと,こういうところに関して,たたき台案としてこちらを踏まえて御議論いただいたところでございます。例えば,重視する思考力,判断力,表現力等につきましては,一番上で見ますと,地図上に表された事象と実際の出来事を関連付けて考察する力ということ。それから,考察したことを目的に応じて地図等にまとめ,効果的に説明する力と。こういうところを,GISとかそういうところ,それから地理情報システムの活用というところで育むことが考えられるのではないかと。その際に,実際の授業展開として,マルアにありますような,なぜ出生率と人口増加率は一致しないのだろうかと,このようなところを問いを使って思考力,判断力,表現力を育んでいくような授業イメージが考えられるのではないかということ。こちらがたたき台案として議論いただいたところでございます。こちらについても,先ほど申し上げました資料1のところで具体の御議論ということが載っておりますので,またそちらの方を適宜御覧いただければと思います。
資料4を御覧いただければと思います。資料4につきましては,公民におけます「公共(仮称)」の御議論でございます。「公共(仮称)」につきましては,前回,どのような構成にするかということと,その大きな方向性についてということを特別チームに御議論いただきまして,「公共の扉」というところで特にどういうところが内容として考えられるかという御議論を頂いたところでございます。こちら,1枚はぐっていただきまして,「公共の扉」の構成案マル2のたたき台案の方を御覧いただければと思いますが,「公共の扉」ということで,「公共的な空間に生きる私たち」というところと,「公共的な空間における人間としての在り方生き方」という,この二つのパートで,子供たちに様々な,(2),(3)という後ほどにつながっていくような考え方の判断における基準,手掛かりというようなものに関して身に付けていただくということを想定しているわけでございますが,そちらについての議論を深めていただいたというところでございます。例えば御紹介いたしますと,イのマル1,マル2の下のポツのところでございますが,二つ目のポツですね,「両者共に活用し,自分も他者も共に納得できる解を見出そうと考えていくことが重要であること」というところがございました。こちらは特別チームの御議論のたたき台では,バランスを考えていくことが重要であるというようなことではどうかという話があったわけでございますが,なかなかバランスをとるということは難しいということで,「自分も他者も共に納得できる解を見出そう」と,このような方向でどうかというような,そのようなこともたたき台案というものの修正などを行って御議論を頂いたところでございます。
それから,前のページを見ていただいて恐縮でございますが,前のページのマル1の方を御覧ください。(2),(3)ということで先ほど来申し上げているところでございますが,「公共の扉」というものを活用して具体的な事象というものを考えていくというときに,ア,イ,ウ,エなどの,このような主体というところに関しては特別チームでも御議論いただいたところでございますが,具体的に,そのようなときに協働により目指すべきものは何なのかというところ,それから,取り上げることが考えられる事柄というものはどのようなものかということ,そちらについて具体的に御議論いただいたところでございます。こちらにつきましても,先ほどの資料1の方で御議論がなされている内容というのはお分かりいただけるのではないかと思います。このようなことにつきましても,次回の特別チーム,それからワーキンググループを踏まえ,より内容の検討を進めていただきたいというふうに考えているところでございます。
以上でございます。

【館委員】  ありがとうございました。本ワーキンググループにおける検討状況につきましては,引き続き共有してまいりたいと思っております。
それでは,本日御議論いただく内容に移りたいと思います。
初めに,社会科等における見方や考え方と思考力,判断力,表現力等について意見交換を行います。
まず,事務局から,前回会議における御意見なども紹介いただきながら,資料について説明をお願いいたします。

【大内学校教育官】  はい,失礼いたします。
それでは,お手元の資料の方に資料2,前回1月18日に開催されました第2回の配付資料の抜粋という資料を御用意いただければと思います。前回1月18日の際には,資料2の中に示しているアンダーラインを示した箇所,資料5,資料6について御議論を頂戴しました。具体的には,資料5につきましては,社会科・地理歴史科・公民科における特に資質・能力の中でも「思考力,判断力,表現力等の育成のイメージ」ということで,小・中・高等学校の段階において,それからまた,思考力,判断力を例えばマル1の考察する力,あるいはマル2の構想する力というような形で整理をしまして,その整理の在り方等について御意見を頂戴したところでございます。
また,1枚おめくりいただきまして,資料2の中の資料6でございますけれども,「社会科等における見方や考え方と思考力,判断力,表現力等」のイメージ(たたき台)ということで,教科の本質に基づく育成すべき力あるいは見方・考え方があるのではないかというような検討事項を踏まえまして,前回会議におきましては,社会科における見方・考え方として,中央,赤字のところにございますけれども,社会的事象の見方や考え方というもの,これを「追究の視点や方法」というような形でちょっと軟らかくは表現したんですが,社会的事象の見方や考え方というものを育成することを通して,マル1からマル4に示すような思考力,判断力,表現力等を育成していってはどうかということが,前回会議資料に基づいて種々御意見を賜ったところでございます。
具体的に頂戴した意見でございますけれども資料1をお手元の方に御用意いただければと思います。資料1の前回会議で頂戴いたしました箇所からということになりますと,4ページ目からでございます。資料1の4ページ目のところに少し太字ゴシックで,「2.社会科等で育成する思考力・判断力・表現力等の育成のイメージ」ということで御意見を頂戴いたしました。主なものを簡単に御紹介させていただきます。
まず一つ目のマルですけれども,段階的に能力が示されるというのは画期的であると。ただし,先ほどのマル1からマル4,思考力から判断力,表現力までのところですが,マル1からマル4の能力がどのように関連しているのかがはっきりしないと。ちょっと飛びまして,マル1からマル4の能力と社会的――これ,「事業」になっておりますが,誤字です。「事象」ですね。社会的事象の見方や考え方の関連性が分かる形で示すことが必要ではないかというような関連性についての御意見。
それから,その次のマルでございますけれども,育成する能力の関連性を説明する際に,事象を調べ,考察し,説明し,表現するといった学習の流れに沿って説明すると分かりやすいのではないかというような御意見。
ちょっと飛びまして二つ下のマルですけれども,社会参画の観点からアクションを起こすというような内容や,合意,社会的活動などを育成する資質・能力の中に入れるべきではないかというような御意見。
一番下のマルになりますけれども,地理的な見方や考え方として空間的な広がりとの関わりでとの説明があるが,授業での展開を考えるとまだ難しいのではないかと。例えば立地や分布など,空間的な広がりを考えるものは何かということを具体化していくことが必要ではないかというような御意見。
5ページ目に参りまして,上から四つ目のマルのところでございますけれども,現実に高等学校では主題学習と言いながら社会的な事象の確認で指導が終わっていると。このため,能力を育成する手立てということをより具体に考えていく必要があるのではないかというような御意見。
それから,ちょっと飛びまして,その下三つ目のマルのところでございますけれども,マル1からマル4の能力を1時間の授業で育むと捉えるのは無理があると。単元のレベルで捉えるべきもので,それは小学校から高等学校まで同様だと。そこでは,評価する力や課題解決的な学習が単元に位置付けられて指導されるべきであると。社会との関わりを意識して指導していかないと,社会のことは分かっても,冷めた目で見詰めるにすぎないのではいけないというような御意見。
その下でございますけれども,中学校の社会科のパイ型の構造からすると,社会に関わる要素が必要ではないかというような御意見。
6ページ目に参ります。6ページ目の上から二つ目のマルですけれども,参画する力はマル1からマル4の中に入るのか,それとも新たな項目として立つのかというような御意見を,育成する資質・能力との関係で頂戴しております。
また,同じ6ページのゴシックで「3.社会科等における見方や考え方と思考力等のイメージについて」,こちらも前回頂いた御意見でございますので,併せて紹介させていただきますが,3ポツの中の二つ目のマルのところでございますけれども,マル2やマル4の能力は重要であると。図の真ん中に見方や考え方が示されているが,ここに構想や議論,参画といった要素を入れていってはどうかと。関わる力は重要で,右側の社会との関わりを意識した課題解決的な学習の充実も大切であろうというような御意見。
その下でございますけれども,社会的事象が理解や考察の対象として捉えられているが,作っていく対象として捉える必要があるのではないかというような御意見。
6ページの一番下になりますけれども,子供たちは,歴史は歴史,地理は地理と捉える嫌いがあると。それらは連携して捉えるべきものだということが分かるようなイメージを示していくことが必要ではないかというような御意見。
7ページに参ります。7ページ目の上から二つ目のマルでございますけれども,資料に示された力というのはいずれも静的に見えるので,問題解決的に自ら動く力,動的なものも入れてほしいというような御意見。
その下のマルですけれども,物事を関連付けて考えていく力が色濃く示されるといいのではないかというような御意見。
その下のマルですが,単元を構成する際に,どのような概念にたどり着いたらその単元の狙いを実現したと言えるのかということを考えるので,小学校では授業を作るときにどう使えるかというような視点で見ると分かりやすいのではないかというような御意見。
一つ飛びまして,見方や考え方については,身に付けるのは個々の社会的事象に対するものではなくて,今の地域や社会に対する見方や考え方ではないかというような御意見。
その下でございますけれども,見方・考え方の部分がバケツに見えるのはいかがかと。作られるように見えるようにして,見方・考え方の基礎からそれぞれの見方・考え方への矢印はスパイラルで示すべきではないかというような御意見。
一番下でございますけれども,小学校3,4年で方位を学ぶが,目的的な概念なのか,道具としての概念なのかと。道具として活用し,農業や工業がどのような構造をしているかということを理解させることが必要ではないかというような御意見を頂戴してございます。
本日は,これらの御意見を踏まえまして,先ほど御覧いただきました資料2で前回お配りしたような見方・考え方と思考力,判断力,表現力のイメージの図のリバイス版ということで,資料6を御用意いたしました。資料6としまして,「社会科等における見方や考え方と思考力,判断力,表現力等」イメージ(たたき台案)ということで,前回,御指摘を頂きました点も踏まえて,例えばでございますけれども,前回は資料2の中の資料6に示させていただいているような,ややバケツのような形で閉じた見方・考え方になっていたところを,今回の資料におきましてスパイラル的に獲得した知識等を更に活用していくというようなイメージとして出せるような形で少し示させていただいております。
また,関係する力につきましても,縦軸で小学校段階から高校のちょっと手前になっておりますけれども,までを延ばすような形にさせていただいておりまして,特に社会的事象としての見方や考え方ということで,それらの見方や考え方を育成するに当たって,前回と若干違いますのが公民に関わる内容,前回につきましては,公民的分野の関係する箇所において社会的な事象の見方や考え方というのをパイ型の先の最終段階という形での構成で示しておったんですが,今回は,御意見も頂戴しましたので,現代社会を捉える見方や考え方というような形で,個人と社会との関係に着目して社会的事象を見出しながら,現代の社会生活と関連付けて力を育成していくというような形での見方・考え方に,公民的分野の箇所につきまして少し修正を図らせていただいているところでございます。
また,こうした見方と,それから育成する力の関係について,もう1枚,A3判で補助資料というのを本日御用意させていただいております。資料6の補助資料というふうに右側に銘を打っておるんですけれども,社会的な見方・考え方(追究の視点や方法)の例(たたき台案)ということで,※をしておりますけれども,社会的事象の見方や考え方というのは,社会的事象の意味や意義,特色や相互の関連等を考察する際の「追究の視点や方法」というふうに今回考えまして,以下の表のような形で整理をしていると。縦軸には小学校,中学校・地理的分野,歴史的分野,公民的分野を置きまして,横軸の方に,左側から,考えられる視点の例ということで,各学校種ごとに,それから,それに合わせた追究の視点を生かしたような「問い」を立てて,学習イメージを少し豊かにできるように「問い」を示させていただいたというのが2点目。それから,社会科における思考力,判断力という,育成すべき思考力,判断力の中で,特に社会的事象の見方や考え方とどう関わってくるかというのを枠組みの中に示させていただいておりまして,最後に一番右側の軸に習得する知識や概念の例という形で,左から右に流れていくような形での資料の構成をしております。
具体的に少し見てまいりますと,例えば小学校でございますけれども,まず,社会科における思考力,判断力として,中央部分の枠の下にちょっと書いてありますが,社会的事象の特色や意味を多角的に考察する力,あるいは社会に見られる課題について,自分たちにできることを選択・判断する力。これは,前回,育成すべき力として御議論を頂戴しておりました資料に基づいて育成する力というのをちょっと明確にしまして,こうした力を育成するために,その一つ上の枠組みのところなんですけれども,四角枠で,じゃあどういった形で育成していくのかということを分かるような形にしたのがこの四角の枠ということで,具体にこの四角の枠には追究の視点と方法,すなわち社会的な見方や考え方をまぶした形で整理をしてございます。
少し具体的に見てまいりますと,社会的事象の見方や考え方の基礎を小学校は育成するという観点で,先ほどの多角的に考察する力,あるいは自分たちにできることを選択・判断する力を育成する観点から,位置や空間的な広がりに着目する,あるいは時期や時間の経過に着目する,事象相互,立場相互の関係に着目する,こういったような追究の視点に着目しながら社会的事象として様子とか仕組みを見出しながら,比較・分類したり総合する,あるいは国民の生活と関連付けるというような比較・分類あるいは関連付け,そういったことを通じて,先ほどの考察する力や選択・判断する力,思考力,判断力の育成につなげていこうというものを示したものが真ん中の図でございます。
その際に,先ほど社会的見方や考え方,追究の視点や方法というふうに申し上げましたが,追究の視点として考えられるものとして一番左側の方に,例えば小学校でございますと,位置や空間的な広がりの視点で考えられるものとして,先ほどの分布でありますとか位置,そういった概念といいますか,そういう追究の着目するべき視点ということでの整理を一番左側にしてございます。
また,今のような視点と見方・考え方を通じて実際の授業において追究の視点を生かした「問い」を立てることによって,例えば分布に着目し,どのように広がっているのだろうか,あるいは,なぜこの場所に集まっているんだろうというような追究の「問い」を立てることを通じて,先ほどの社会的事象の見方や考え方を通して,一番右側に出てまいります,例えばですけれども,組立工場を中心に部品工場が集まっていて,そういったものの盛んな地域が形成されていることでありますとか,駅の周辺というのは交通の結節点になるので商業施設がたくさん集まるとか,そういったような小学校ならではの概念と言うとちょっと難しいのかもしれませんが,小学校ならではの習得する知識というものはやはり出てくるのではないかということを整理した図というのがこちらの方の図になってございます。
同じような見方で中学校についても御覧いただければというふうに思ってございまして,こうした社会的事象の見方や考え方と,それから,思考力,判断力,表現力の育成,これを教科の社会科らしい捉え方として関係性を示したものが,この資料6及び資料6の補助資料ということになります。
本日,御意見を頂戴できればと思っておりますので,よろしくお願いいたします。

【館委員】  補足説明はございますでしょうか。

【澤井調査官】  調査官の方から補足説明をさせていただきます。補足説明につきましては,この後,御質問を頂きながら適宜行ってまいりますが,ここでは,これらの整理の仕方の特徴について3点お話をさせていただきます。
まず1点目は,思考力等と見方や考え方の関係につきましてですが,これまで学習指導要領においては,社会科で育成する思考力等については,「社会的事象の特色を」,あるいは「社会的事象の意義を」,「意味を」と,目的語,すなわち「何を」のみが示されていたというところでございます。そこで,この度,見方や考え方を位置付けることによって,「どのように」という思考のプロセス,社会科らしいといいますか,社会科ならではの思考のプロセスを描くようにしたということ,これが1点目の思考力と見方や考え方の関係でございます。
それから二つ目,社会科で言われる知識,概念等との関係,とりわけ概念等との関係ですが,見方や考え方につきましては,従来から研究レベルでは,概念であるとか,あるいは子供が身に付ける理論であるという見解もございました。学習指導要領においても,公民的分野では「概念的枠組み」というふうに説明をしてきました。そういう捉え方と,今後,この資料で示している捉え方と共通すること,共通理解を進めていくことが当然ながら必要になってくるわけでございますが,今回,補助資料の方でお示ししましたように,「追究の視点」,これは一番左側になります。これが活用する概念のイメージです。そして,「習得する知識,概念」と書いてある,これが最終的に獲得・習得する理解・概念ということになると思いますが,これらを学習過程全てではないですが,学習過程の一部に位置付けて整理をしたというものでございます。したがいまして,左側から右側へ一通り行って終わるわけではございませんで,最終的に右側で獲得した概念をまた更に子供が使ってという成長過程はスパイラルで描けるんだろうというふうに思います。概念と見方や考え方をいったん整理した補助資料でございます。
それから最後,3点目ですが,育成すべき資質・能力の三つの柱のうちの思考力,判断力,表現力等以外の二つ,すなわち,固有の知識・技能,あるいは情意・態度との関係で申し上げますと,前者につきましては,知識を体系化して,あるいは構造化して習得する,あるいは身に付けた知識を活用するためのスキルとして,見方や考え方の意味付けができるのではないかということでございます。知識を体系化・構造化して習得する,あるいは活用する,そういうスキルとしての見方や考え方という側面と,それから,後者,情意・態度につきましては,問いの例としてお示ししましたように,学校における学習にとどまらず,児童生徒が実社会と関わっていく際に,社会的事象に問い掛けながら生涯にわたって生きて働くものとなるという,そんな関係が整理できる可能性がございますということでございます。
補足説明は以上でございます。

【館委員】  ありがとうございました。
それでは,資料6「社会科等における見方や考え方と思考力,判断力,表現力等」イメージ(たたき台案)及びその補助資料「社会的事象の見方や考え方(追究の視点や方法)の例」について,30分ほどの意見交換をしたいと思います。その際,検討すべき視点として,例えばですが,学校種や分野別の見方や考え方についてはどうか,2番目には,社会的事象の見方や考え方と思考力,判断力等の関わりについてはどうか,などが考えられると思います。御意見のある方は従来どおり,あらかじめ名札を立てていただきますと,私の方で順次指名させていただきます。また,発言が終わりましたら,もとに戻していただきますようお願いいたします。資料6及びその補助資料のどちらから御意見を頂いても構いません。
それでは,御意見の方,ありましたらよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。では,井田委員,よろしくお願いします。

【井田委員】  大分よくまとまってきて,見やすくなってきたと思います。
まず,資料6の補助資料のところなんですけれども,小学校から中学校に移るときの社会科における思考力,判断力,特にそこなんですが,思考力,判断力のところで,例えば位置や空間的な広がりが,中学校の地理的分野の一番上だと思うんですけど,そこと関連していると。そこが関連しているというふうには分かるんですが,それが地理歴史・公民のどういうところにうまく反映しているのかというのがもうちょっと分かりやすくなると,小学校のこういう基礎的なものが,中学校だとこうやってどんどんレベルアップしてくるというような関係性がもうちょっと見られるといいかなという感じがします。
それからもう1点ですけれども,今回,「問い」というものを出していただいたり,習得する知識,概念の例ということで出していただいて,分かりやすくなったんですが,結局のところ,この間,グラフを作っていただきましたけれども,到達点,どこまで到達すれば小学校としてはオーケーなのか,中学校の地理的分野としてはオーケーなのか。それが高校にもつながると思いますけれども,その辺の到達点というものがもうちょっと明確に見えると分かりやすいかなという感じがしました。
それから3点目,最後なんですけれども,最後の説明で知識の活用があって見方や考え方という御説明があったんですけれども,その方向性もあると思いますが,もう1点,知識を活用して見方や考え方を養って,更にそこから,さっき概念的という話がありましたけど,概念的知識が獲得できるというようなスパイラル的に行くような話があるといいかなと。知識の獲得があって,見方・考え方で終わるのではなくて,更に見方や考え方をそこで進めることによって更に概念的な知識を獲得していく,それでまた見方や考え方がそれに使っていけるってスパイラル的なものが見えてくるといいのかなというふうには思いました。
以上です。

【館委員】  ありがとうございました。
では,棚橋委員,お願いいたします。

【棚橋委員】  失礼します。資料6の補助資料でございますけれども,これを拝見して,私は正直,オーバーな言い方をすれば感動しているというか,大変うれしく思っています。こういう形で見方・考え方というものが具体的には何なのか,それがどのように使われるのかということをこの一覧表にされたというのは,非常に意味があると思っています。実はこれに近いものは,1960年代のいわゆる「教育の現代化」の中のアメリカの社会科では,こういう考え方で作るというプロジェクトもあります。それは,社会を見るときの見方というのは,それぞれ背景となる学問でどのような分析的な問いを事象に投げ掛けるのかということによって見方が決まってくるとされ,まずその学問における概念が出てきて,概念は概念だけでは何も分からないのであって,その概念に基づいた分析的な問いを立てることが大事だというのです。その分析的な問いを,対象となる事象これは個別の事象もあれば一般的なこともありますが,事象に投げ掛けることよって,その事象の本質や具体が説明できる命題が出来上がるという考え方をしています。これが社会科学における見方・考え方であるという理念の下のプロジェクトが当時作られていました。日本では余り定着していないのですが,実はこれを見ると,正に左から右にそのプロセスがきちっとできていると思います。ただ,当時のアメリカの場合は,一番左側が例えば地理学的な概念とか歴史学的な概念というだけのくくりだったのですけれども,今回の場合は更にその中が,地理学に依拠するものであっても,どんな視点なのかという視点に分けて書かれているというのは,当時のアメリカの考え方よりももっと使えるものになっているというので,これは非常にいいと思います。特に先ほどの御説明にもありましたように,概念というのは実際,左から2番目の分析的な問いという形をとって初めて子供たちの思考が動き出すのだということを明示していると。これは非常に有効なものであって,できれば今後,この一番左側の視点,それぞれの背景となる学問で用いられる概念というものをより充実させて,それから出てくる問いというのを,一つの概念から出る問いは一つだけではないと思うので,これを例示としてたくさん並べていくというのが実際の授業の中で使えると思います。是非この補助資料6の考え方をベースに発展させていただければなと思っています。
以上です。

【館委員】  はい,ありがとうございました。
先ほど井田委員の方から二つ,三つ御意見がありました。それに関しては文科省の方から何か説明ありますでしょうか。

【澤井調査官】  井田委員の方から御質問ございました小・中学校の関係性についてでございますが,到達点と併せてお話をさせていただきますと,見方・考え方,これは相互に深い関係があるので一つの文節で説明しておりますが,とりわけ小学校でいうところの位置や空間的広がり,時期や時間の経過,事象相互,これらは地理的・歴史的・公民的分野に直接つながることを意図して,こういうものに着目をしていくと。着眼点と言ったらいいんでしょうか,これそのものはそれほど成長するというよりは,繰り返し使っていくという大事な社会科の社会を見る窓になっていくんだろうというふうに思います。考え方といいますか,比較・総合したり,国民生活と関連付けてと,この辺りにかなり小学校と中学校の違いあるいは分野ごとの違いといいますか,特徴が表れていると。この辺りで一つ関係性をということでございます。
それから,到達点につきましては,見方や考え方で到達点というよりは,その見方や考え方を用いた思考力,判断力――ここには表現力は割愛しておりますが,思考力,判断力,表現力にそれらが用いられている姿を,前回お示ししたように能力段階で示しております。見方や考え方を用いて考え,判断し,表現する力,これの到達点というイメージで,前回,能力の図を示したということでございます。
今,棚橋委員の方からございましたように,概念は,活用する,追究する視点から最終的に獲得する概念になり,またそれが子供の中で追究する視点になって,スパイラルで成長していくと,こんなイメージはもう少し分かるように表現していく必要があるかなというふうに思います。
ありがとうございました。

【館委員】  では,続きまして,池野委員,お願いいたします。

【池野委員】  ありがとうございます。私,二つ,質問と意見とあるんですけど,一つは,前回の図の中でも使われていて,今回も説明の中では余り説明されなかったので,ちょっと澤井先生にもう少し詳しい説明が欲しいと思ったことがあります。それは,主に見方や考え方や思考や判断力の方の概念の側の説明はあったんですけど,ここである面,社会科や地理歴史科・公民科の学習の在り方を示した言葉として追究という言葉がキーワードとして出てきていて,前回も中核に書いてあったんですけど,この追究という言葉がどのように考えられるのかということです。どういうふうにイメージ的に考えられていて,先ほど棚橋先生が御説明されたような,概念を使って社会を説明すると。その説明の中で社会がどういう在り方をしていたり,どういうように作られていったり,将来こういう社会ができた方がいいよという,それぞれの個人の立場で社会が形成されてくるような方に行くこと総体を追究というように考えられているのか。社会科の初志をつらぬく会が主張しているような,個々の子供たちが社会と対する中でどういうような,社会的関係も含めて,社会の中の在り方みたいなものを考えてくるのかというような意味の追究という言葉を社会科の専門用語では使われたりするんですけど,この追究という言葉がどういうように各学校の先生方に理解できるように御説明していただけるかなというのが一つ。お願いしたいことが一つですね。
それから二つ目なんですけど,これは私の意見なんですけど,その追究というものをもしも社会的事象の追究という言葉で,真ん中の,私,前回のときはバケツという表現を使って,皆さん方にお叱りを受けたのかもしれないなと思ったんですけど,子供たちが力を付けてくるときの形のときの核になっている社会的事象あるいは社会についての追究をしてくるというときの追究というのが,概念を一定程度使えるようなものを見方・考え方の成長なりそういう形でするのか。いや,社会との関係,先ほど大内さんが御説明されたときに,地理や歴史とは違って,公民的分野は社会的事象に関する見方や考え方ではなくて現代社会というものに変えられたということですね。現代社会に対するというように,事象そのものじゃなくて,現代社会という社会そのものの大きな在り方に対して社会科なり公民科も含めて社会科系科目では一定程度,子供たちが対して自分の意見や考え方まで,次,多分問題になるであろう学習過程の在り方,社会との関係の在り方みたいなものまで考えられているのか。あるいは,もう少し狭く概念を使って説明するような段階でとどまるのかという問題が多分議論が出てくる可能性があると思うんですね。だから,資質・能力の観点からいえば,やっぱり社会との関係があって,ポジティブな,あるいは行動的な子供たちが社会の中に関わりを持って働き掛けたりいろいろするところに,一定程度見通しを持てるような学習なり社会科あるいは地理歴史科・公民科での在り方へ発展していかないと,その補助資料の一番左側の追究の視点が最終的に目的化されてしまうと,これはやっぱり左側の視点を学習するために設定されているというように理解されてしまう,狭く理解されてしまうというように思うんですよね。ですから,1番目に私が質問させてもらったように,追究というものをどういうもののイメージとして理解するのか。左から右側に説明されるときに,確かに概念的なものは組み込まれるんですけど,そっちの方に重点化されると非常に概念を理解することが目的化されて,本来,一般的な意味の追究というものが持っている社会を説明するだけでなくて,自分がどういうように対するとか関わったりするとかいうような広い意味の資質・能力育成の部分が消えていくことになるし,先生方が理解しにくくなるんじゃないかという懸念があるので,その部分の説明が要るんじゃないかというのが私の意見です。
以上です。

【館委員】  追究という言葉の意味に関わるところかと思いますが,よろしくお願いします。

【澤井調査官】  学習指導要領上,学習問題を追究・解決すると,小学校でも解説の中で書かれているんですが,対象は学習上の問題,中学校においても課題というふうに言っていますが,学習上の課題を解決する,調べ,考えるプロセスと,こんなイメージで恐らく書かれているんだと思います。池野委員のおっしゃっている大きな社会事象の追究よりも,少し狭い意味合いの追究に現状なっているのかなというふうに思います。
今回の見方や考え方の説明につきましても,いったん,社会事象をしっかりと分かるプロセスを描こうということで,そこの文言の中に散りばめられてありますが,何々に着目して,現実・事実をしっかりと見いだして,その着目は地理的・歴史的につながっていくような見出し方,そして特色や意味をしっかりと考察するという,まずはいったん,学習上の課題,学習課題,学習問題をしっかりと解決できるような,そういう追究をイメージした図でございます。したがいまして,その後の子供が実社会と関わっていく関わり方を追究していくような意味合いにつきましては,その外側にあります多面的・多角的に考察するとか,あるいは関わり方を選択・判断するとか,こちらの方にかなり傾斜が掛かってくることと,前回もお話をさせていただきましたが,資質・能力の三つの柱であります情意・態度とのつながりで見ていただくことが必要になるのかなというふうに思います。
ただ,これまで実際の指導場面においては,こういった問いは大切にされてきたんですが,問い自身が子どもにとって大事であって,問いを持たせるという意識は余りなかったんだろうというふうに思います。見方や考え方をこうやって意識して顕在化させていくことで,子供自身が社会的事象に問える,問いを持てる,見方や考え方そのものが子供に生涯にわたって生きて働くんだという,こういう捉え方は,今,御指摘を踏まえて改めて大切にしていかなきゃいけないかなというふうに思っております。
以上でございます。

【大杉教育課程企画室長】  主査,済みません,一言だけ,申し訳ございません。ちょっと他教科の整理との関係もございまして,実は見方・考え方は社会科のみならず,今,全ての教科について整理をしていただいている最中でございます。そういう意味で,この見方・考え方とは何かという説明の際に,この追究という言葉を共通的に使うのか,それとも少し別の言い回しをしていくのかというのは,他教科の整理も踏まえて検討させていただきたいということが1点でございます。
それから,先ほど資質・能力の三つの柱という話がございましたけれども,もともと見方・考え方は,真ん中の思考力,判断力,表現力のところで論点整理でも整理をしていただいて,恐らくその関係で整理をしていくのがまず第一歩目の整理になるということは間違いないのですが,一方で,こういった整理をしてみると,それが正に1本目の知識・技能のところで知識が構造化されて概念として獲得されていくということ,あるいは三つ目の社会・世界とどのように関わるかということ,これらにも大きく関わってくるということも見えてきているところでございます。したがいまして,整理の過程では真ん中の柱との関係性が中心になる。ちょっと狭いという話もございましたけれども,中心にはなってございますけれども,最終的には恐らくそれが1本目の柱にも,3本目のも柱にもつながってくる,そのような整理をさせていただくような方向性ではないかと考えております。
済みません,途中で失礼いたしました。

【館委員】  では,桐谷委員,お願いします。

【桐谷委員】  ありがとうございます。資料がいろいろ構造的なので,読むのに時間が掛かってしまって申し訳ありません。
お伺いしたい点が2点ございまして,今,池野委員からの質問に対する澤井調査官のお答えの中でも,ちょっと私,疑問を持ったのが,申し訳ありません,資料6の補助資料ですね。これ,先ほどの最初の説明では左から右へというふうに見るような流れで見る表というふうに御説明いただきました。これで見ると,先ほどの池野先生の御意見とも重なるんですが,思考,判断,見方・考え方を通して知識,概念の獲得,先ほど澤井調査官もそのような形で,社会の課題とか社会の問題じゃなくて学習課題に対してきちんと認識・理解をしていくということなんだということの御説明があったと思うんですけど,そうすると,ここで言う思考力,判断力若しくは見方・考え方といったものは,いわゆる概念獲得,知識獲得のツールという位置付けなのか,それとも,社会科で育成するべき中心的な能力,つまり,この見方・考え方そのものを育成するべき学習を考える必要があるのかどうか。その辺りが少し,どっちがどういう位置付けにして考えたらいいのかというのが分かりにくかったので,教えていただきたいなというのが1点です。
もう1点は,これも池野先生の御意見と,申し訳ない,重なるんですが,資料6の方でこういうふうにスパイラルになって非常に分かりやすくなって,私,これ,すばらしいなと。棚橋先生の言葉じゃないんですけど,感動もしているんですけど,そのように知識なり概念の獲得をある一つのゴールとして考えていくとすると,この資料6の右側にあります「社会との関わりを意識した課題解決的な学習」というのは一体どういう学習になるのか。澤井調査官のお話ですと,学習課題は学習課題で知識理解のための学習課題を設定して,きちんとそれを思考,判断,見方・考え方を通して身に付けていくという学習が中心になるというお話なんですけど,そうすると,この矢印の充実というのがどういう意味を持つのかってちょっと分かりにくくなるので,そこも含めて2点教えていただきたいと思います。
よろしくお願いします。

【館委員】  では,お願いいたします。

【澤井調査官】  御指摘のとおり,まだまだ未整理の部分が多いんだろうというふうに思います。ただ,その見方や考え方は,思考力,判断力,表現力の中にも二重四角で入っているというのは,まずはしっかりとした理解に至るプロセスを描く必要があるんだろうと。この社会的事象の見方が,前回もお話ししましたが,社会的な見方や考え方,社会的な物の見方や考え方,いろいろな言葉を換えながら,ずっと大事であると,こういうふうに言われてきて,学習指導要領にも言葉は登場してくるんですが,その説明がなかなかなかったと。なかったがゆえか,あるいはいろいろな説があるがゆえか分かりませんが,教育現場の中にしっかりと入っていかなかったということがございます。ですから,今回は,先ほどの言葉で言いますと少し捉え方を狭めて,1回,学習上で考えると。学習上の課題・問題について追究・解決する際のプロセス,頭の働かせ方として考えていくと。それを使うことで,より,その下にある多面的・多角的な思考ができるとか,社会につながるような選択・判断ができるとか,いったんそういう整理の仕方をしているということなんですね。だから,これらは恐らく子供の頭の中で明確に分かれているわけではないものを図で示すから何か狭く捉えられがちなんですが,総体で思考力,判断力,表現力を捉えていただくと,それは社会につながっていくようなイメージだということはお分かりいただけるんだろうと思います。とりわけ今回,判断ということをかなり強く能力の中にも明確に入れてございます。それは,この後,三つの柱で社会に関わろうとする態度というようなものが出てまいりますが,恐らく態度と能力をつなぐ大事なキーワードが判断ということになろうと思いますが,そんなことを併せて入れていると。すなわち,しっかりと理解して,それを使いながら思考,判断を重ねていくと。それで情意・態度につなげていくというのは,この全体像で捉えていただいた方がいいのかなというふうに思います。まだまだ関係性の整理,説明の仕方は不十分で,これ,精緻化していかなければいけないなというふうに思っております。
以上です。

【館委員】  ありがとうございました。磯谷委員,お願いいたします。

【磯谷委員】  岡崎高校の磯谷です。授業者の立場からしますと,この問いというのが非常に大事かなと思っております。社会であったり,あるいは歴史であったりから切り取ってきた事実,それがいかに生徒にとって面白い,追究したいなという問いを持っている,そういったものを授業に持ってきまして,それで一番左側の道具というか,ツールでもって,三つ目の方法ですね,これでもってその問いを解決していく。そして一番右側の,生徒が,あ,勉強したな,何か身に付いたなというような気持ちになると。こういう授業づくりのプランとしてこの表は非常に有効かなというふうに思っております。
以上であります。

【館委員】  ありがとうございます。
では,今,社会との関わりを意識した課題解決的な学習の充実等についても御意見も出てまいりました。資料7の方の説明をしていただきまして,関連するような形での議論がもしありましたら続けてお願いいたしますが……あ,済みません。

【永田委員】  よろしいですか。

【館委員】  はい。では,よろしくお願いします。気付かなくて申し訳ありませんでした。

【永田委員】  失礼いたします。主に資料6のことなんですけれども,先ほど問いを見たらよく分かるということで,私,地理専門なので,中学校地理と小学校のところで主に見ているんですけれども,中学校の方は5大概念ですね,中心的概念で書かれていて五つに分かれているもので,例えば中学校では「どのように」というのは先ほど出てきたようにありますけれども,「なぜ」というのがちょっと出てきてないので,そこら辺の整合性ですね。多分,「そこで影響を受ける」とか「関係を持っている」なら,もうそれが「なぜ」なんですけれども,それが非常に連携していたらもっと分かりやすくなると思いますので,そこら辺の整合性ですね。中学校で概念から考えるんだったら,それに対応した小学校のところを作っていただいて,小学校よりも中学校の方が数が増えるとか,そういったところを見せていただいたらもっと分かりやすいなというふうに思います。
それと,この表のところで画期的だったのが,私,地理教育なんですけれども,地理教育においては公民的資質というのをきちんと育成する,歴史においても公民的資質を育成するというところです。多分議論になっているところが社会科における思考力,判断力で,思考力のところは地理的に見方や考え方のところで事実を確認するところです。判断力でどのようにしようかということで,地理で言いましたら二つ目のところですね,「地域に見られる課題の解決に向けて,複数の立場や意見を踏まえて選択・判断する力」,歴史だったら「歴史に見られる諸課題について,複数の立場や意見を踏まえて選択・判断する力」,公民はもともと位置付いておりますけれども,そういったものが位置付いている。この判断力というのをどのように位置付けるかということで,先ほど桐谷先生が言われたように,資料6のところです。やっぱり見方や考え方,思考力,判断力,表現力のところなんですけれども,一番右端のところに「社会との関わりを意識した課題解決的な学習の充実」,その部分は真ん中のところに持ってこないとちょっと分かりにくいんじゃないかなというふうに思います。
池野先生が言われた追究のところなんですけれども,事実ですね,社会を捉えるというところの追究なのか,この追究の中に社会をよりよくする公民的資質に関わるような追究が入るのかということです。先ほどから,左から右に行ったら最初に概念が来ていて,問いのところも概念なんですね。公民のところは概念じゃない判断力に関するところも含まれていますけど。最後の項目のところも知識,概念の例というのがありますので,やはり最後のところにも知識,概念の例,その後にきちんと選択・判断した力によって付く力という項目が何か必要のような気がいたします。なので,概念のところに入って,思考力,判断力のところの一つ目の,例えば地理で言いましたら,「地理的事象の特色や相互の関連,意味を多面的・多角的に考察する力」,このところまではいいんですけど,その下の部分ですね。最初に「ここが画期的だ」と言った部分のところが,どうしても最初の視点のところから入ってない。特に一番アピールできる新しいところでありますので,この構造図のところで反映していただけたら有り難いなというふうに思います。
それと,もう長年ずっと思っていたことなので言いますけれども,小学校で「多角的」,中学校で「多面的・多角的」,これが教育現場で非常に混乱しておりますので,是非,何で小学校は多角的で,多面的じゃないのか,多面的・多角的とは何なのかということもきちんと示していただいたら,より分かりやすくなると思っています。
以上でございます。

【館委員】  今の件はよろしいでしょうか。では,ありがとうございました。
ほかに御意見はよろしいでしょうか。では,次の社会科等で育成すべき資質・能力についての意見交換を行いたいと思います。今の話とも十分関わりのあることだと思います。
まず,事務局から資料について説明をお願いいたします。

【大内学校教育官】  失礼いたします。資料7の方になります。資料7の前に,申し訳ございません。今,資料6でも種々御意見頂戴しました件なんですが,資料5のところで「社会・地理歴史・公民ワーキンググループにおける検討事項」ということで,これは第1回あるいは第2回のときにもお配りしているものなんですけれども,1.の二つ目の中黒のところで,三つの柱に沿った育成すべき資質・能力の明確化というところがございます。資料6で先ほど御意見頂戴しましたのは,特にこのうち1.の上から三つ目の中黒,資料5の1.の上から三つ目の中点のところの思考力・判断力・表現力等に関わって事象を捉える教科・科目特有の視点や考え方というのを先に議論していただきました。この後,御議論いただきますのは,その下に出てきますような,小・中・高を通じた社会科・地理歴史科・公民科において育成すべき資質・能力の系統性でありますとか,今の1.の上から二つ目の中黒で示している資質・能力の明確化に関わっての御議論ということになります。先ほど御紹介させていただきました前回会議でも,参画する力ですとか,関わる力とか,そういう点につきまして種々御意見頂戴しておりましたので,前回会議の際には,あるいは今の資料6の際には,思考力,判断力,表現力のところにスポットを当てて御議論いただいておりましたので,この後御紹介させていただきますのが,個別の知識や技能,あるいは情意・態度等も含めまして,どういった形で社会科等で育成すべき資質・能力を構成するかということについての御意見を頂戴したいということでございます。
資料7の方になります。お手元に御用意いただければと思います。資料7につきまして,先に資料7の2枚目の方を御覧いただければと思います。学習指導要領の構造化のイメージ(参考)ということで,こちらの資料は昨年8月に中教審の教育課程企画特別部会におきまして論点整理として出された際の関係資料の一部でございます。
本時の教育課程の見直しに関わりましては,三角形の頂点のところにございますけれども,人格の完成を目指し,平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質の育成を期すという観点から,教科横断的・総合的に育成すべき様々な資質・能力というのを整理していきましょうということになっておって,先ほどの検討事項のような項目が記載されているわけでございます。
その際に,教科学習においては,個別の知識や技能(何を知っているか,何ができるか),思考力・判断力・表現力といたしまして,前回来御議論いただいておりましたけれども,教科等の本質に根差した見方や考え方等(知っていること・できることをどう使うか)という視点,最後に,学びに向かう力,人間性等というところで,情意・態度等に関わるもの(どのように社会・世界と関わり,よりよい人生を送っていくか)というような三つの柱で必要となる資質・能力を整理したらどうかという御提言を頂戴しておるところでございます。
1枚目に戻っていただきまして,その観点から,今回,資料7ということで社会科等で育成すべき資質・能力の整理(たたき台案)というふうにお示しさせていただきましたが,まず,真ん中のところなんですが,思考力・判断力・表現力等,こちらにつきましては今ほど資料6で御議論いただきましたし,それから,前回会議においても御議論を頂戴していたところでございます。それらをベースにしながら,小学校の社会科において,あるいは中学校社会科,各分野ごとについては本日の資料6でも少しお示しさせていただいておりますけれども,それらを組み合わせながら,横軸の真ん中の思考力・判断力・表現力等についてのところにつきましては構成をしているということでございます。
また,個別の知識や技能の軸あるいは情意・態度等に関わるものに関しますところにつきまして,前回,参画する,あるいは社会と関わる,そういった御意見をたくさん頂戴しておりましたけれども,こちらにつきましては現行の学習指導要領の記述をベースにしながら,それを基に記載をしてみたところでございます。それが個別の知識や技能あるいは情意・態度等に関わるものについての整理ということでございます。
実際にそれらの小学校あるいは中学校の社会科ということで整理をさせていただいているわけでございますけれども,その枠の中で赤字で書かれている箇所というのがございます。情意・態度等に関わる箇所につきまして,*で,小学校の社会科の中で「世界の国々との関わりや我が国の政治の働きへの関心,よりよい社会を考えようとする態度等について検討」ということで,こちらについては昨年の8月に論点整理を出されましたが,その際に,小学校あるいは中学校の段階におきまして高等学校における科目の新設を受け,そういった中で,小・中学校段階における社会科との接続の中でどういった点を具体的に検討していくかということが示されております。こちらについては,本日の資料の参考資料2というところで,昨年の8月26日の論点整理の際に社会科に関して御指摘を頂戴したものの抜粋を付けておりますので,御参考にしていただければと思います。
これを受けまして,小学校の社会科におきましては,先ほど申し上げましたが,世界の国々との関わり,我が国の政治の働きへの関心,よりよい社会を考えようとする態度という形で,三つを情意・態度の中に入れさせていただいてございます。ただ,こうした力,情意・態度に関わる力については,思考力・判断力・表現力のところで,例えば社会に見られる課題を把握し,社会への関わり方を選択・判断していく力というのを今回お示ししておりますので,こういった力の育成と併せて情意・態度の育成というのが形成されるものというふうに考えておりますし,また,それに関わって必要な個別の知識・技能というのも考えられますが,ここでは情意・態度等に関わるものということで赤字で整理をさせていただいているということでございます。
同じような見方で,例えば中学校の歴史的分野につきましては,世界の歴史の扱いを充実させることということがございましたので,ひとまずは個別の知識・技能の中に枠組みとしては示させていただいておりますが,先ほどと同じような考え方で,すなわち,思考力・判断力・表現力の中でどう取り扱うことによって,あるいは情意・態度に結び付いて育成していくことが可能かどうか,そういった観点も含めまして,個別の知識や技能以外のところでもこういった充実を図るという方法があるのではないかというふうに思っておりますけれども,今回は個別の知識や技能のところに入れさせていただいております。
公民的分野における,政治参加も含め社会に参画しようとする関心,態度等についても同様の取扱いでございます。
これらにつきまして,社会科等で育成すべき資質・能力ということで,これまで思考力・判断力・表現力等を中心に御議論いただいておりましたが,今回は個別の知識や技能あるいは情意・態度等の面も含めまして御検討いただければということでございます。
それから,最後になりますけれど,2ページ後ろの方に参考ということで,これも昨年の8月の時点で論点整理として既に取りまとめ,示させていただいているところでございますが,高等学校における必履修科目においての取扱いということで,こちらは8月のものでございますけれども,地理・歴史・公民,いわゆる「地理総合(仮称)」,「歴史総合(仮称)」,「公共(仮称)」に関しての今の3本柱での整理をしたものということでございますので,こちらも参考にしながら御意見を頂ければということでございます。
私からは以上でございます。

【館委員】  補足説明はよろしいでしょうか。ありがとうございました。
それでは,社会科等で育成すべき資質・能力の整理(たたき台案)について,30分ほどの時間で意見交換をしたいと思います。その際,検討すべき視点としましては,例えば,各校種の三つの柱について不足している点はないか,論点整理の指摘――資料中の赤字部分ですけれども,それについてどのようなことが考えられるかなどがあると思います。小学校,中学校どちらからでも,三つの柱のどこからでも結構ですので,御意見を頂ければと思います。それでは,いかがでしょうか。
では,桐谷委員,お願いいたします。

【桐谷委員】  ありがとうございます。資料が非常に分かりやすくて,すごくいいなと思っています。というのは,三つの能力の中に今までの見方・考え方であったりとか四つの能力像というのが含まれていて,非常に構造的によく分かりやすいというふうに思っています。
ちょっと私自身がずっとこだわっているのは「関わる」なんですけれども,今回,前回からもそういうふうなお話があったと思いますが,三つ目の枠組みですよね。情意・態度等に関わるものとして参加や参画とか関わるというのが入ってくると。これそのものは私は賛成です。というのは,こういう関心ですとか態度といったものの育成は社会の中で重要です。ただ,参画や協働とか合意とかというのが出てくると思うんですが,そういったものというのは,ただ単に情意や態度,関心・態度だけではなくて,実際に表れとして表出する表現などの中に含まれる力,具体的な力を育成しないと,関心や意欲はあって知識もあるけれども,実際には参画しないというのが現在の社会状況,特に若者と言ったらいいんでしょうか,と言われている,指摘されているのはそこの問題で,そういう問題に対してこういうふうな改革が必要だということで多分進んでいると思いますので,この参画であるとか関わるということに関しては,思考力・判断力・表現力の中に含めて考える必要があるだろうというのが,私が1回目の会議のところからずっと申し上げているのはそこなんです。今回も結局は態度と関心だけで収まってしまっているので,これがどのように思考・判断に結び付いていくのかというのが見えない表になってしまうと,せっかくのものがもったいないと思いますので,是非,表現力などの中に関わる力というのを含めて,実際に判断――判断を重要視するという話が先ほどありましたけれども,判断したことを表現という形で社会に開いていくような,そういうふうな関わり方というものを具体的な力として考える必要があるんじゃないかというふうに思います。
以上です。

【館委員】  今の件で。

【大杉教育課程企画室長】  失礼いたします。是非検討をしていきたいと思いますし,是非先生にも一緒に考えていただきたいと思っておりますけれども,先ほどの物の見方・考え方の社会的事象の見方・考え方の議論とも少し関わってくるんですが,見方・考え方の整理をもう少し分かりやすくしていかなければいけないんですけれども,そもそも先ほどの広く捉えるのか,狭く捉えるのかという話の中で,概念的知識とは何なのかといったときに,恐らくその知識自体が今までの捉え方と微妙に変わってきているといいますか,その知識自体が社会や世界との関わりを念頭に置いた知識ということにしっかりと位置付けられ始めているということがあると思います。そうしますと,概念的な知識ということの観点から捉える視点,追究の視点ということには,単に知識を獲得していくという過程だけではなくて,社会・世界とどう関わるのかという観点も実際当然に含まれていかなければいけないというような考え方も出てくると思います。そういう資料になっているかどうかというのはこれからなんですけれども。そういったことを考えていきますと,例えば先ほどの資料6の補助資料で申し上げる追究の視点の中に,つながりとか関わりとか関係性を意味するような,そのような視点が少し見えているわけなんですけれども,そういった視点のことと,そういった態度の協働して参画して合意してというようなことがどういうふうに関わってくるのかということを,しっかりとお知恵を頂きながら整理していければなというふうにも考えております。
失礼いたしました。

【館委員】  では,続きまして,仙田委員,お願いいたします。

【仙田委員】  私,この資料7を見せていただいて,常々,高校のところで世界史のベースがないので,これを小学校の段階の情意・態度,それから中学校の段階の知識・技能に入れていただくことは非常に有り難いなというふうに思っています。そうなると,今度,1個戻ってしまいますが,例えば資料6にある「問い」のところで,小学校の問いと例えば中学校の問いと割と似ているようなものがどうしてもあると。そこのところが,発達段階に応じてどういうことをしていかなきゃいけないかということを割と問いの中だと明確にできると思うので,是非とも,例えばどのような変化があったのかというようなことについてこれだと非常にあいまいで,多分現場の先生だと小と中でどう違うのかなということが出てくると思うので,その辺をちょっと分かりやすくしていただけると有り難いというふうに思っています。
そして,実は私どものところは公立の中高一貫校なので,2月3日にテストをして,土曜日まで採点をしていたわけなんですが,適性検査といって,私立と違って,歴史の問題であっても,例えば徳川幕府を創ったのは誰かという問題は絶対出してはいけないというのが公立の,学習指導要領の中で作るわけなんです。そのときに,今年,東京都は歴史の問題を出しました。これは何か塾では予想外だったと。つまり,そういうふうに,資料だとか統計を出すのは割と分析ができる。ところが,この資料7にある小学校社会のところの個別の知識や技能のところに,例えば時代を比較するだとか,そういうようなところが余りやられてない。それは覚えているものだと,覚えるものだということで,そんなことは分かっているだろうということになってしまうと。そうではなくて,分からなくても,年表や資料や,それから読み取れる力を是非とも何かそういうような――ここのところだと思うんですけど,例えば観察,資料活用の技能のところにそういうような表現を加えていただけると,その時代をどうやって分かるようにするんだろうと,これは一体何時代のものだということはどうやって考えるんだろうと,そういうようなことを入れていただけると,とても分かりやすいかなというふうに思っております。
それから,先ほど桐谷委員からありました参画のところについては,是非とも割と明確に入れていただけると有り難いというふうに思っています。特に特別活動については,遠足のような校外行事だとか,それから修学旅行だとか,近隣のボランティア活動だとか,いろんなことが関わってきますので,是非ともそういうことが例として入れられると,社会科の教育の中が相当持っていくと,それがいいんじゃないかと。ただ,これは社会科に限ったことではないので,他教科との連携が大事だと。うちの学校なんかは,例えば浅草に遠足に行かせても,外人にインタビューさせて英語で全部やらせるんですけれど,そういうようなことを考えていくことが重要だと思うので,他教科との連携も中学段階では踏まえていただけると有り難いかなというふうに思っております。
以上です。

【館委員】  では,岡崎委員,お願いいたします。

【岡崎委員】  ありがとうございます。今回,ちょっと戻るんですけれども,資料6のこちらの図で,バケツではなくなったという図なんですけれども,こちらの方で「現代社会を捉える見方や考え方」のところで,「個人と社会との関係に着目して社会的事象を見出し現代の生活と関連付けて」としていただきまして,前回の議論を大いに反映していただいたと大変感謝しております。個人の生活をよりよくしていくことと社会をよりよくしていくことについて考え続ける態度を養うとか,行動する態度を養うということが非常に重要だと考えておりまして,そういったことが,今,先生方がおっしゃっていただいたこととも深く関わっているかと思っております。
この資料6の補助資料で右の方に移行していくというお話で,習得する知識,概念の例というのがあるんですけれども,ちょっと違和感がありまして,知識,概念を習得して,文化によって影響を受けていることとか,最後の項目ですけれども,経済的・技術的な協力などが大切であるということを習得して,これで目的を達したということになってしまうと,非常に静的といいますか,それを到達したんだからいいんだというふうにはとても考えられないところです。この左のところに,例えば一番最後の項目ですと,「現代社会に見られる課題の解決に向けて,複数の立場や意見を踏まえて選択・判断する力」となっているんですが,これは,複数の意見が存在して,これのどちらが正しいかということを判断する力を付けようということなんですけれども,実際,現代の社会にある問題については幾つかの意見があって,どれが正しいか判断する力を付けることができるようなものではなく,考え続けなければいけないのではないかと思います。むしろ,問いの種類は少し角度が違うかもしれませんが,左に目を移していただきまして,「世界平和と人類の福祉の増大のためどのようなことができるか」,これを一生考え続ける力を付けるということの方が大事なのではないかというふうに思うところです。一番最後の項目は,この文を読み上げましたけれども,よりよい社会とはとか,よりよい生活はどのようなものなのだろうか,どうしたらそれを実現できるのだろうかということを考え続け,また,行動する態度を養うことこそが大事なのではないかというふうに思うところです。
これに関連して,資料7の方なんですけれども,小学校社会科,それから私の方では公民的分野というところに注目をさせていただくのですけれども,小学校の方は赤い文字のところの2行目,よりよい社会を考えようとする態度等についてのところですが,「よりよい生活と社会を」というふうに入れていただきたいというふうに思います。個人の生活をよりよくしていくということを観点に入れずしてよりよい社会を考えるということは,不十分ではないかというふうに思っております。
そして,一番最後の薄いオレンジ色の公民的分野の右の項目ですけれども,最初に「個人の生活と社会をよりよくしようとする態度を養う」ということを入れていただきたいというふうに希望します。全体をよくするということ,急に国をどうするかということとか国同士のことに目線を向けさせようということが強調されているのですけれども,現代社会の問題がいろいろとある中において個人の生活が成り立っていくのかとか,一生涯を通じてどうやって生活を成り立たせていくのかということをよく理解して,その目線から社会の現象とか制度について深く理解をし,判断し,また行動していく力を付ける必要がどうしてもあると思いますので,その目線を入れていただきたいというふうに思います。
ありがとうございました。

【館委員】  ありがとうございます。
では,坂本委員,お願いいたします。

【坂本委員】  2点あります。
一つは,この三つの要素に関わる中で,先ほど社会的な事象の見方・考え方の原案をたくさん言ってもらいましたので,社会科の場合,ここを並列的に見てしまうと,こう書かれてしまうと,あ,そうかなという部分ですけれども,この考え方として,やはり思考力・判断力・表現力等のことを学習,つまり問題解決的,課題解決的に学習をしながら,この資料6の補助資料でできた習得する知識とかというところが個別の知識や技能であったりというふうに流れが入っていたりとか,思考・判断・表現する課題追究の中で情意的なこと,態度的なもの,意欲的なこととか関心とかという,そういう部分があるんだというところを見えるようにというか,ここが特に大切なんだというところを主張していただくと,小学校は問題解決の学習を重視しているところがより見えてくるなということが一つあります。それが1点目です。
2点目は,情意・態度に関わるものの中で赤字で書いたところの「世界の国々との関わりや我が国の政治の働きへの関心,よりよい社会を考えようとする態度等についての検討」ってあるんですけれども,ここは現行の6年生のところでは,世界の国々との関わり,我が国の政治の働きというのは単元としてありますし,そのほか,違う3年生,4年生,5年生の中で政治に関わるような,例えばごみ問題とか環境問題とかって,そういう問題を扱うときにそういう部分も含まれてくるのがあったりとか,世界の国々との関わりの中からも,現行でやっている内容的な部分もそういう視点から見ることができる。だから関心を高めることはできるのではないかというふうに思います。
それから,よりよい社会を考えようとする態度等についても,現在,社会参画という形で,社会科の研究会等では最終的にここを目指そうという,つまり公民的な資質の基礎の部分ですけれども,そういうところを現在やっていますので,この部分は十分入れるかなというふうに思います。
以上です。

【館委員】  ありがとうございました。
小川委員,お願いいたします。

【小川委員】  中学校の歴史的分野の個別の知識・技能の赤い文のところでございますけれども,私は高校の方のグループのところにこれまで参加してきたわけですけれども,そこで新しい「歴史総合(仮称)」が近現代に割とシフトした科目の内容を作ろうとしているときに,これまでの世界史必修の中で平和で民主的な国家及び社会の形成者として高校生を育てるために,そうはいっても,世界史の近代以前のところでみんなで学んできたものが幾つか宙に浮いてしまう可能性が出てくると。そういったことを中心に世界の歴史の扱いを充実させるというところに補い合うような形になれば,高校の教員とすればそれは有り難いは有り難いわけなんです。ただ,中学校の側から見たときに,今まで目一杯やっているところに更に上から押し出されるような形でおりてきて,それがどういうふうに結び付くのかということは,これは結構大問題になるんだろうなというふうに想像します。
ただ,そのときに,私,常々思っていたのは,公民的分野の中で学ぶ民主主義であるとか様々な権利であるとか,そういうものの歴史的な予備知識としてこの歴史的分野の中で扱うものが幾つかあっていいんだろうという観点が一つと,それからもう一つは,世界の文明・文化・宗教,これをまずしっかりここで中学生に提供するという発想があると思うんだけれども,ただ,その中で,そうはいっても,キリスト教が出てきた時代とイスラームが出てきた時代というのは,やはり歴史の中では大きな時代の差があり,それから,イスラームが出てきたことが後にモンゴルの活動や東南アジアに影響を及ぼしながら南蛮貿易にどう結び付くのかというようなことは,これまで中学の歴史というのは,世界で起こったことが直接似たような時代にどういうふうに影響を与えるかという観点から割と描かれてきたと思うんだけれども,もうちょっとワンクッション,二つ,三つの因果関係でもって日本の歴史に大きな影響を与えたという,そういう観点での描き方はもうちょっとあってもいいんじゃないかなんていうふうに思ったりするわけです。実際,学習指導要領はともかくとして,現行の様々な中学の教科書では,結構,現場のニーズに合わせてそこら辺のところが描き込まれていることは事実なものですから,そうすると,それを描いたことによって突然教科書が過重になるとか,そういうことは余り起こらないのではないかというふうに私個人は考えています。
以上です。

【館委員】  矢吹委員,お願いいたします。

【矢吹委員】  先ほど岡崎委員がおっしゃった点も踏まえて,この資料6を見させていただいているとき思ったのですが,社会科で考えるときに,私という視点がいつも抜けていて,社会的事象の見方・考え方という部分ですぐ社会に行ってしまうような気がします。まず私という視点がこの図の中に入り,それから社会と関わっていくような形で何か工夫をしていただけたらなというのは思うところです。私が社会と関わる,行動を起こすということが,この判断力とか思考力を基に行動を起こすということになっていると思います。次に,資料7を見させていただいたときに,中学の公民的分野ですけれども,「他者の主張を踏まえたり取り入れたりして社会に見られる課題についての自分の考えを再構成しながら議論する力」で終わってしまっています。これが高校になったときに課題を解決する力になり,社会の参画への意欲や態度というふうに情意・態度に関わるようになっていっています。中学のところででも,例えば生徒会活動といったものによって議論をする力から課題を解決するといった,学校社会との関わりというものを作っていくことができると考えられます。何かここのところに,「議論する力」という形で終わらせるのではなくて,議論した結果,何か変化を起こすことができる,何か自分の考えを実現することができるような力というものもここのところで入れていただけたらなというふうには思っているところです。
以上です。

【館委員】  ここでちょっと文科省の方から,今まで幾つか出てきたものについての御返答というか,御回答なり説明をお願いしたいと思います。

【澤井調査官】  はい。何名かの委員の先生方から共通して,情意・態度の手前の能力のところにもう少し,社会参画ですとか協働ですとか,あるいは直接的な関わりですとか,そういったことの要素を入れていったらどうかという御意見がございました。その辺りは能力と態度の整理をこれからしていく中で参考にさせていただかなければいけないところなんですが,現時点で,まず能力につきましては,社会に見られる課題や問題を把握して,その解決に向けて構想する力と。これは,従来,余り言われてこなかったことでございまして,これまで社会的事象の意味や意義,特色や相互の関連について考える力,考察する力あるいは表現する力というところにとどまっていた部分を,より態度に近付ける,社会に関わろうとする,つながろうとする,そういう情意・態度につなげる意味で,実社会に見られる実際の課題についても,これは小・中学校,取り上げる量とか内容,質とかはそれぞれ校種に応じてということになるんだろうと思いますが,その部分を入れたということが一つ大きな変更点であるということを御理解いただきたいというふうに思います。
それから,問いの例につきましては,これは言ってみれば柱になるものでございますので,内容に応じて恐らく細かく文言が加わりながら,小・中学校発展過程が描けるといいなと,これから検討してまいろうというふうに思います。

【大杉教育課程企画室長】  じゃあ,済みません,先生が考えていただいている間に私の方から一つだけ。
育成すべきというか,したい力と,あとカリキュラムの意図的配列ということを私たち考えていかなければいけないわけなんです。今,教科ごとに議論をさせていただいていますけれども,結局,一人一人の子供たちに総合的に必要な力として身に付かなければいけないという意味では,実践できる力といいますか,先ほども生徒会活動でありますとか行事のお話を頂きましたけれども,そういうところとつなげていかなければいけないというのは間違いないと思います。一方で,今,特別活動の方での資質・能力というのを議論していただいておりまして,その中で思考・判断・表現というのは前回改訂時も既にそうですけれども,統括の方は思考・判断・実践ということで,より自分たちの生活の改善,学校生活の改善,身近な生活の改善につなげていく力につなげていくと。それは恐らく社会科で培った資質・能力がそういった実践力ということにつながらなければいけないということで,その中でのカリキュラム全体構造というのはしっかり考えていく必要があると思います。一方で,社会科で全てを育てられるのか,それはもう社会科という教科の本質としてどうなのかということ,プラス,時間数が永遠にあるというわけでもありませんので,他教科とのいろいろな分担の中でカリキュラム・マネジメントを考えていくという中で,社会科としての役割と特活としての役割をどうつないでいくか。そういった全体像の中で御議論いただくべき点もあるなというふうに感じましたので,恐らく次回,次々回以降,そういった全体像も見えるような形で資料を用意させていただければと思っております。

【澤井調査官】  今,資質・能力,三つの柱に分けて整理している,このもう一つの背景は,能力の育成と評価を一体的に捉えていくというところでございます。したがいまして,参画あるいは協働という言葉については非常に重要なキーワードで,どこに用いていくかを考えていかなきゃいけないわけですが,しかしながら,評価ということに関して考えますと,思考力・判断力・表現力の例えば前回お示しした資料の中に,今申し上げたように,社会に見られる課題を把握して,自分たちに関われることを選択・判断するとか,あるいは合意形成を視野に入れながら,他者の主張を踏まえながら自分の考えを構成すると。随所に参画,協働に近いそれ以外の言葉を使いながら,その子に身に付く力として分解をしてちりばめているところでございます。したがいまして,参画,協働,このキーワードを評価の視野に入れて思考力・判断力・表現力にもし分けて書き込むとしたら,どんな言葉にしていったらいいのか,この辺りにまたお知恵を頂けたらというふうに思います。
最後に,私という視点とか生活という視点についてですが,小学校社会科については従来から自分との関わりとか自分たちの生活との関わり,これが出発点になって,それから中学校分野別にだんだん視野が拡大していくという,こういう構造になってございますので,原点は生活との関わり,とりわけ自分たちの生活との関わりということでございます。したがいまして,小学校の目標に,「社会生活についての理解」という言葉を使っておりますので,あえて社会と生活とを分けて使って個人,自分たちの生活との関わり,自分たちの生活を支えていること,この自分たちがだんだん地域の自分たち,市民としての自分たち,都道府県民としての自分たち,国民としての自分たち,世界の中の日本人という,こういうふうに広がっていくような捉え方で内容が構成されているということでございます。
以上です。

【館委員】  どうもありがとうございました。
じゃあ,続きまして,磯谷委員,お願いいたします。

【磯谷委員】  ありがとうございます。高校で世界史を中心に教えております。それで,資料7の中学校の歴史分野のところで赤字で「世界の歴史の扱いを充実させること等を検討」ということでありますので,是非これは充実させていただきたいなと思っております。特に私が思うのは,イスラームの歴史といいますか,それが従来ですと高校の「世界史A」とか「世界史B」で出てきたわけですけれども,「歴史総合(仮称)」になりますと近現代ということで,イスラームの扱いはほとんどないということになってしまいますので,可能性としては,ヨーロッパの来航と。16世紀ですけれども,ポルトガル,イエズス会が日本にやってくるわけですけれども,その背景といたしまして,イスラームとヨーロッパとの対立・抗争,そして文化交流というものの中からヨーロッパがアジアへやってきたり,あるいはラテンアメリカを征服,あるいはアフリカの奴隷貿易を始めるといったような,16世紀に関わってイスラームの歴史を中学生にも教えていくことが必要かなと。現在,いろんなニュースを見ておりますと,スンナ派だとかシーア派とか,あるいはカリフとか,あるいはイランとか,いろいろ中東の話題はどんどん入ってきております。そういったものを義務教育課程あるいは高校1年生の「歴史総合(仮称)」と,そこまでの間で基礎的な知識を教えていくことが必要かなと思っております。
以上です。

【館委員】  済みません,永田委員,お願いいたします。

【永田委員】  済みません,簡単に終わります。先ほど澤井先生の方から,能力について,「解決に向けて構想する力」ということを言われました。ずっと違和感があったのは,資質・能力ということで,この能力というのは何なんだろうかということで,今ので分かりました。けれども,私は不勉強で,資質といった場合に知識・技能・普通の能力です。その細かい狭義の能力だったら技能とか思考・判断・表現が含まれるんですね。だから,この資質・能力というのが非常に分かりにくい。何かお話を聞いていたら実践に関わる能力とか力とか,そういったようなものだと思います。この資質・能力のところを,能力だけ見る場合だったら,一般的にいったら技能,思考・判断・表現等になってしまうということですね。
それと,文言に関わることなんですけれども,情意・態度等に関わるもの,3番目というのはこれが一番重要なところになると思いますけれども,この情意というのが今まで出てきてない言葉で,関心・意欲とか興味というのは出てきた。情意というのは一体何なのかということですね。それと,態度のところで,昔の関心・意欲・態度のところだったら,積極的に学習に関わる,一生懸命やっているよという態度と,この態度というのは社会に関わる態度ということがあって,多分同じ態度でも二つの意味があると思います。多分二つ目の意味だと思いますけれども,そうなってくると,やっぱりここは先ほど言われた実践に関わるものとか,そのものずばり参画に関わるものとか,そういった表現の方が分かりやすいです。一番上のたたき台の文言も「社会科等で育成すべき資質」だけの方が何か分かりやすいような気がいたします。
以上,私見でございます。

【館委員】  では,その点に関してお願いいたします。

【大杉教育課程企画室長】  失礼いたします。資質・能力につきましては,様々御意見を頂いておりますけれども,8月の論点整理及びその前に資質・能力に関する有識者会議というのも開催をさせていただいております。その中で,資質と能力は分け難いものであるので一体的に扱うというような整理がなされました。まず,その資質に関してもいろいろ御意見ございまして,これは育成できるものなのか,個人が本来的に持っているものではないかというようなものもございますけれども,教育関係法令の前提といたしましては,資質を育む,資質を養うということで,これは伸ばしていける,磨いていける,含んでいけるものとして,学校教育で育成可能なものを捉えるということで捉えさせていただいております。そういったふうに考えますと,それと能力というのはなかなか分けて捉え難いというのが様々関係分野,かなり分野横断的に,教育から認知から発達から関係の先生方にお集まりいただいて御議論いただいた成果でございますけれども,その中で,資質と能力ということはなかなか分け難いということで一体的に捉える。そして,今回,その資質・能力を構成する三つの要素として知識・技能,思考力・判断力・表現力,そして最後の学びに向かう力,人間性等,情意・態度と書いてございますけれども,この三つが構成要素として捉えられるのではないかということでございます。
それから,情意につきましては,いろいろ論点整理をまとめる過程におきましてOECD等とも政策対話を行いながら議論を進めてまいりましたけれども,日本の教育が従来から重視しているところでございますけれども,思いやりでありますとか感性,優しさといったようなエモーショナル・クオリティーズに関わるものも重要であろうということで,これを仮に情意,情意的な能力に関わるものということだろうと思いますけれども,こういったことで整理をさせていただいているところでございます。
態度につきましては,御指摘のとおり二つあるのではないかと。学習に取り組む態度ということと,社会にどのように関わるかという態度。三つ目の柱全体といたしましては,その双方を含んでいるということでございます。学びに向かう力と人間性ということで双方を含んでいる。一方で,観点別評価の三つ目の観点ですね,そういった広い意味での態度というのは,観点別評価というよりはむしろ個人内評価で伸びを見ていくものであろうということがございますので,教科として育成すべき態度としては全てを含んでいますけれども,観点別評価としては主体的に学習に取り組む態度ということを捉えていくのではないかというようなことを,今,総則・評価部会で御議論いただいているところでございます。
済みません,長くなりました。

【館委員】  では,廣嶋委員,お願いします。

【廣嶋委員】  この資料の7番ですけれども,私は全体的に見ると,小学校と中学校の関係,それから小学校とそれぞれの中学校の分野ごとの関係が非常によく見えるという感じがするんですね。今までこういうのがなかなか全体に示されることがなかったというのが,小・中学校の社会科の関連性が密にいかなかった原因だと思っていて,大変いい枠組みだというふうに思います。
ただ,一つ一つ個別に申し上げていくと,ここにこれも入れてほしいとか,こう直してほしいとかというのはたくさんあるのです。せっかく言い出しましたから,ちょっとだけ幾つか考えていることを言うと,この赤字で検討事項として,小学校の情意・態度のところに世界の国々のことと政治のことが入っていますし,中学校のところにも世界の歴史のこととか入っているんですが,例えば中学校の歴史的分野で持続可能な社会づくりというのが論点整理の改善の方針の中に出ていたかと思うんですね。これはどこに当たるのか。小学校からまた中学校の地理的分野につなげていける部分,小学校の社会科も,これが逆に今度,中学校から見たときに変わってくる部分ってあるんじゃないのかなと思ったところもあり,あるいは,単に小学校で言っている世界の国々との関わりの問題というのは,今の情意とか態度とかそういう問題の位置付けだけではなくて,そもそも小学校の社会科で世界の国々を学ぶ時間というか,学ぶ中身が今までのようなものでいいのかどうか。これだけ社会が変化してきている中で5年生になるまでほとんど出てこないという,で,6年生になって割と内容的に学ぶという,そういう流れでいいのかどうかという辺りですとか,あるいは,本当言うと,地図帳は3年生から配ってもらって世界地図もきちんと3年から学べるようにしてもらった方がいいなとか,申し上げたいことは多々あります。その辺の検討のスケジュールがちょっと分かってくると,また勉強してきて物は言わせていただきたいなと思います。基本的にこういう枠組みで作っていかれて整理していただきたいなと。私は非常によく分かる形になっていると思います。
そして,最終的には,社会科の目標を「公民的資質」から「公民的資質・能力」という表記の変更があるというふうなお話もありますけれども,私はそれはそれで結構だなと思いまして公民的資質・能力につなげる形の整理が必要なんじゃないかと思うんですね。そういう整理の仕方をしていくと,今日出てきた一覧表が非常に分かりやすくて,活用できるようになるんじゃないかと思います。
以上です。

【館委員】  ありがとうございました。今の件はいかがでしょうか。

【梶山主任視学官】  ありがとうございます。おっしゃっていただいたとおり,この考え方というのを今後詰めていかなくてはいけないと思っております。本日,おっしゃっていただける範囲のことにつきましては是非本日おっしゃっていただきたいと思いますし,言い尽くせない部分に関してはメール若しくはファックス等で頂ければと思います。いずれにせよ,これをどうしていくかというのが最終的なゴールになっていきますので,そのようなことになっていくのではないかと思います。
それと,先ほどの公民的資質のところでございますが,公民的資質のところには現在の中学校の目標なり高校の目標で非常に大きなフェーズを占めている言葉だと思っております。ただ,それを公民的資質でいくのかどうか,どういう言葉でいくのか,また,ほかの言葉との関係性をどうするかということに関しては,是非先生方の御知見を頂いて,子供たち,それから先生方,それから社会に分かりやすいようなことで整理できればなというふうに考えております。いずれにしても,このところでこういうところが重要だというところに関して御意見があれば,是非頂きたいというふうに思います。
以上です。

【館委員】  では,池野委員,お願いいたします。

【池野委員】  私は二つ意見があります。先ほど廣嶋先生が言われたように,この資質・能力の整理というものはよくできていると思います。ただ,カリキュラムとして見た場合に問題は,これはある面,小学校社会も論点整理のときに出てきたようなピラミッドの三角形の中を形成してないといけないんだと思うんです。中学校社会,地理的分野,歴史的分野も,ある一定の小学校段階の,先ほど廣嶋先生が言われたように,小学校で付く公民的資質・能力という言葉になるのかどうかは知りませんけど,はこんなんですよ,中学校はこんなんですよというのが見えて,それがこういう項目やこういう内容に関してはこういう取扱いをするということになって,左から右なり,そういう三つの柱といいますか,知識・技能と思考・判断力や情意・態度に分解することができるということだと思うんですね。それをどこで重点的にやるかだと思うんです。
そのときに,例えば歴史の場合に,どうしても歴史は,いつ,どこで,誰が,何をしたかというのを小学校でもやるし,中学校でも教えるわけです。取り扱う事象が増えたりその量が格段に違うだけという形になるんだと思うんですね。そのときに,じゃ,小学校で例えば日清から太平洋戦争まで取り扱うのは,いつ,どういう戦争があったかというのをやるのか,時々,私は面白い先生がおられると,いつ,誰が,もしも戦争をやめると言ったらやめられたのかという問いを出して,じゃあ,この日清以後の戦争がどうなったんだろうと。そうでなければどういうことが日本の中で起こってきたか,戦争ってどんなんだったろうという,そういう一つの問いを作ってやる。それは確かに概念としては,歴史学の一つの概念としては,いつ,どこで,誰がという,確かに事実としてはそれは正しいと思うんですけど,我々にとって,社会を学ぶときに,歴史を通して学ぶというときには,どういう問いを立てることが本当の問いを立てることなのか,子供たちが歴史について学ぶというのは一体何かというときに,今言ったような,戦争を,誰が,どこで,どういうふうにすればあの戦争を止めることができたのかなという一つの問いもやっぱり大事な問いだと思うんです。そういう問いをどこで作ることができるのか。それは確かに概念だったらこちらから設定できるけれども,子供たちやクラスの中でそういうものをすることによって,一番右側に出てくる情意や態度の関わり,社会との関わり方からそういう問いが出てこないといけない。確かに歴史学そのものはそういう問いを出さないかもしれないけれども,社会との関わりで,今,我々が,戦争,あの時代から学び取るものがあればどんなことなのかというのはそういうことだと思うし,例えば私,広島に今住んでいますけど,元の野球場がなくなって新しいところにマツダスタジアムというのができたんですけど,その跡地はどうするかとか,新しいサッカースタジアムをどこに造るかとかいうのが問題になっていて,そういうものは子供たちでも考えることができる。ただ,創造的に考えるのか,どういう条件でやればどうなるのか。広島市の市長だったらどこに設定するだろう,広島駅の近くにするのか,あるいは,遠い遠いところだけど,そこにするとより広島市が発展するようになる。発展すると何が私たちの生活を豊かにするのかというように,どこで,何が,広島市で社会が,あるいは農業や工業や商業が行われているかというのを調べるだけじゃなくて,今の広島市がどういう社会を作ろうとしているか,どういうように変えようとしているかという非常にポジティブなものを問いに立ててくると,その小学校の学びは大分変わると思うんです。それはやっぱり世界との関わりも出てくるし,いろんなものが出てくる。その問いの立て方だとかそんなことをこのピラミッドの中で,知識・技能や思考・判断や情意や形成をどのレベル,例えば社会と個人のレベルを小学校でするのか,中学校になってきたら,個人もやるけれども,社会全体の中でどういうことが問題になるか,どういうことをよりよい社会の中で追究するのか。それは地理の場合だったら位置が問題だし,歴史の場合だったらいろいろな時間的な配列だとか因果関係みたいなものが問題だろうと。いろんな条件を整えたときに,その段階で何が問うことができたり考えることができたりすることができるかというのが,一定程度,分解してしまうと,これをこれだけにやってしまえばいいんだというふうになるんですけれども,再構成する部分,三つをもう一度再考したら,小学校ではこんなことをやらないといけない,中学校ではこんなことをやらないといけないのが見えるようにしないと,やっぱり各先生方には伝わらないし,どうしてもやっぱりお勉強になってしまう。出来事を一杯覚えることが社会科の勉強にまた戻ってしまうんじゃないかなと心配します。是非そういうものにしてほしいというのが一つです。
それからもう一つは,世界との関わりというのは,先ほど,学習の態度と,それから社会との態度というのが出てきましたけれども,この世界もある意味で,そういう難しい言葉で本当に広い意味のワールドという世界各国とかいう意味の世界もあるし,もっと広い社会的世界というような意味の世界もあって,どこまでをどういう形で取り扱うことができるのか。やっぱり小学校のときに本当に全世界を扱うなんていうことはできない。大人でもできないわけです。だけど,お隣の東アジアのいろいろな国との関係は日常生活の中で,私,きのう広島から来ましたけれども,やっぱり中国の人たちが一緒に乗ってくるんですよね。飛行機に乗ってきたりする。羽田に着くとそんな人たちがたくさんいる。何でだろうと。そうするとやっぱり,中国の今の時期のいろんな問題が関わっていてというようなことを学ぶことができる。やっぱり今の生活の中でそういうことを分かるようなことをしてほしいと思います。だから,全て世界が,全体の諸国が分かることが世界を分かることだけではないんだろうということが大事じゃないかなと思っています。
この二つです。以上です。

【館委員】  ありがとうございました。
では,大石委員,お願いいたします。
【大石委員】  資料7ですけれども,私はずっと従来,高校の方を議論していて,一番最後の参考にある――3枚目ですね,このところの議論に関わってきました。これ,高校の方から見ると,ここで最後の方に,持続可能な世界が地理であったり,それから地球規模の自然システムがあったり,歴史でも日本及び世界の歴史あるいはグローバルな歴史,国際社会に主体的に生きる,かなり現代的な課題というのを意識してここで議論しています。それで,公民がここで世界が落ちているのは気にはなるところなんですけれども,こういう視点というのは,今,小・中・高を通じて,今までの議論でもあるように絶対に必要なことで,これが一つある意味の到達点だとすると,少しここへ向けてしっかり小・中のところを連結させていく必要があるんだろうと。そうすると,そのリンクの仕方がちょっと弱いんじゃないかなという気がします。今回,慌てたようと言っちゃいけないんですけれども,赤いところで補足して世界というのが入っていますけれども,やっぱりもうちょっと今の高校の話に合わせるようなスタイルで,小学校だってもうニュースやスポーツや文化やいろんなレベルで外国と接しているわけで,そこのところなんかを強く意識したような構成がされてもいいだろうというふうに思います。
それから,2枚目になるんですが,これもちょっとこの分野で議論する場所じゃなくていけないのかもしれないんですが,一番上の三角のところに最終的な目標のところで「民主的な国家及び社会の形成者として」という言い方をしていて,一つ下の段階で「社会・世界と関わる」というような言い方をしていて,ひょっとして,これ,逆にしてもいいのかなという気もします。やっぱり今の日本が世界の中で生きていかなきゃいけない,あるいは世界と関わりながら子供たちが生きていかなきゃいけない時代というのを強く意識した方向性に少し練り直す必要があるかなというふうに思います。
以上です。

【館委員】  続きまして,小倉委員,お願いいたします。

【小倉委員】  よろしくお願いします。小学校の現場で実際に授業したり,授業づくりを共に考えている,そういう立場でこの表を見させていただいたときに,小学校,中学校,高校まで含めたつながりが分かりやすくなっているなというふうに思っているんですが,その中の一つ,今後の内容とか目標の検討の方に関わっているかもしれないので,実際ここで内容がどうということじゃないんですが,小学校の社会生活についての理解の中に,「地域や我が国の国土の地理的環境,社会の仕組みや働き,地域や我が国の歴史や伝統と文化,それらと人々の生活との関連」というふうに,およそ三つ示されていまして,これまでの小学校の社会科の学習を見ていくと,このようにある意味三つの柱のような明確な形での整理がされてこなかったというふうに思うんですが,この点に関して,一つは,小学校の学習の内容を整理していくときに,地理・歴史・公民というようなはっきりした線引きってなかなか難しい部分があるんだろうなと,そういうふうにすっぱり分けてしまうのは難しい部分があるんだろうなと思う一方で,もしかすると,小学校,中学校の中で内容的にも整理を図っていくことが可能であるならば,またがってしまう部分もあるので,なかなか小学校では難しいかと思うんですが,こういう整理の仕方も一つチャレンジしてみるのもいいのかなというふうに思っているんです。
なぜなら,最近もそうなんですが,授業づくりについて話をする機会がありまして,本時ですとか単元をどのように授業を作ったらいいんだろうかというようなことを若い先生方と少し話し合う機会がありまして,その中で感じるのは,本時とか単元の位置付けが,なかなか現場の先生方の中で全体の中の位置付けがはっきりしていないというふうに感じたんです。本時や単元自体は一生懸命作るんだけれども,それが例えば5年の学習だとすると,3,4年でどういうふうになっていて,6年にどうつながっていって,中学校へどういうふうにつながっていくのかと,そういうような本時や単元の位置付けが結構あいまいなまま授業が行われて,どうしたらいいんだろうか,どう考えたらいいんだろうかということが出てくることが最近もあったんです。私の方としても,5年の学習であれば,3,4年の学習,そして6年,中学とつながっていくような形で授業というのは作っているんですよという話をしたんですけれども,そう考えていくと,全体の中で位置付けがはっきり分かってくると,現場一人一人の先生としては,今やっていることがどうつながっていくんだ,これがどういう力になっていくんだということが見えてくるのかなと。もしそういうための整理だとすると面白い視点だなというふうに感じました。
以上です。

【館委員】  では,石上委員,お願いいたします。

【石上委員】  中学校の社会科ですが,地理・歴史・公民というふうに非常に分かりやすく書かれていて,良い思う反面,1,2年生で地歴の並行学習,そして3年生で歴史と公民学習となっています。子供の学習する場面を考えると,中学1年生というのは,どちらかというとまだ小学校7年生ぐらいの意味合いが強く,覚えることに理由をさほど必要としません。一方,中学校2年生になると抽象概念も芽生え,理屈が必要になります。「14歳からの哲学」「14歳の君へ」「14歳からの社会学」といった本もあるように,中1(13歳)と中2(14歳)とでは違いがあります。資質・能力ということを考えると,その辺の違いに留意した方が良いと思います。それを考えてくると,中学校1年生の地理・歴史をまとめた資質・能力,中学校2年生の地理・歴史の資質・能力というような形で分ける方が理に適っているのではないかと思います。
それからあともう1点,先ほどから世界の歴史の扱いを充実させることということで,個別の知識・技能のところで,歴史的分野の充実というのは,私も非常に大賛成です。やはり今の現代社会を考えるときに,中東をはじめとして世界の歴史を分かっていればこそ理解できる部分というのはたくさんあるだろうなと思うからです。ただ,昨年度,中学校の研究会で全国の加盟団体に向けてアンケート調査をとったところ,歴史的分野についてはやはり内容が非常に多くて,時間が足りなかったという意見が多くありました。そのことを考えると,指導内容をどのようにするのか,単純に増やすということではなく,三分野のバランスを考え,考えていかないといけない部分があるんじゃないかなと,そんなふうに考えています。
以上です。

【館委員】  ありがとうございました。
岡崎委員,お願いいたします。

【岡崎委員】  恐れ入ります。資料7の参考の2枚目の公民「公共(仮称)」のところに,一番下の行,中ほどですけれども,「他者と協働しながら様々な課題を解決していく力」というのがございます。こちらが今回の学習指導要領改訂の全体を通じた大きな目標とされていますキーコンピテンシーの非常に重要な核となるところではないかと思うのですけれども,このようなことを目指していく要素が小・中社会科においてもより明示的に含まれていく必要があるのではないかというふうに思います。その意味で,先ほどの池野先生のお話を伺って大変感銘を受け,また,共感したところでございます。いろいろな課題を立てて,よい問いを立てて議論をしていく中で,そういった観点で力を付けることができると思います。キーコンピテンシーが提唱されている意味合いとしましては,学校のカリキュラムは非常にタイトで時間が限られているわけですけれども,高い力を付けていかなければ日本の子供たちがこれからの社会を生きていけないという非常に危機意識があるかと思いますけれども,それを実現していくのに大変有効な手法であり,また,私どもでいろいろな事例を集めておりますけれども,その中でもそういった取り組みがあります。
そしてまた,申し上げたいことは,公民,社会科が高校になってきますと現在の状況ではどうしても知識の習得が中心であるという色彩が非常に強く,むしろ小学校,中学校ではそういった他者と協働しながら様々な課題を解決していく力を付けるような学習が行われているというのが現状で,小・中・高とも変えていきたいと思いますけれども,この公民「公共(仮称)」のところでの目標はこうだけれども,ほかのところでは余りそれが明示的に見えないということでは,今,全体で目指していることが実現されていくのか非常に不安なところです。
あともう1点,態度を評価するというところで,先ほど観点別評価としては学習に取り組む態度ということになるのではというお話がございましたけれども,つたない知見ではございますけれども,若干違和感がございまして,社会と関わる態度を重視していく必要があるというふうに感じております。この資料でも,情意・態度等に関わるものというところでは,どのように社会・世界と関わり,よりよい人生を送るかということが目標であるので,これが態度としては学習に関わる態度に限定されるということでは目標として達成されないのではないかという危惧があります。
あともう一つ,私どもで8年前に金融教育プログラムというのを作りまして,指導計画例を作っていったんですけれども,この度全面改訂をします際に,また小学校,中学校,高等学校の指導計画例をより広く集めまして,国立教育政策研究所の先生方や文部科学省の先生方の御指導も頂きながら評価の観点もいろいろ編集をしていったんですけれども,そのときに,よりよい社会や生活を作っていくということを観点に入れまして評価の項目を作りまして,多くの先生方に確認をしていただきましたけれども,違和感を呈された先生はございませんでした。そのことを目標に入れて力を付けていくことが大切だということは多くの先生に共有していただいたような実感がございましたものですから,御報告をさせていただきたいと思いました。
ありがとうございました。
【館委員】  では,関委員,お願いいたします。

【関委員】  よろしくお願いします。前回からちょっと議論を聞かせていただいて,2点ほどちょっと発言させていただきます。
1点目は先ほどから出ている部分,世界の歴史の充実についてなんですが,中学校で歴史を教えている立場として,充実させることは非常に大賛成なんですが,そのことはやっぱり歴史的分野全体の内容項目の構成とセットでの充実ということでないとまずいんじゃないかなというふうに思っています。日本の歴史を通してやるということとか,時間数の問題とか,それと,今回の学習指導要領から資質・能力の育成という部分がかなり授業でうたわれています。そういうこととセットで考えていかなきゃいけないのかなというふうに思っています。実は今回も,世界の歴史の充実ということが言われて学習指導要領が作成されたはずなんですが,実際に教科書を見るとかなり深く広く記述されております。それは,現場の先生方の要望,つまり,短い文章でなかなか背景までは教えられないということで,文章量,ページ数が増えたりとか,そういうことが現実にあるものですから,イメージ的には昔の週5時間やっていたときの世界の歴史のイメージを持っている先生方がまだたくさんいらっしゃるので,歯止めという言葉は不適切かもしれないんですが,先ほど言いましたように,歴史的分野全体のことを考えて充実ということをうたっていくべきじゃないかなというふうに思っています。
もう1点は,ちょっと感想とお願いなんですが,前回の資料,今回の資料とも,これまでのものをすごくよくまとめて,非常に整理されていて,僕らからすると余り難しい概念の列挙ではなくて,資料6にあるように,問いとか具体例とかまで踏み込んで資料が作成されているので非常に有り難いんですが,もう一歩言うと,これに授業のイメージとか,「地理総合(仮称)」の方は事例集まで作られるんでしょうか,そういうものがあると本当に現場まで届くんじゃないかなというふうに思っています。もしかすると,この先,提案されてくるのかもしれないんですが,本来は現場の僕らの仕事なのかもしれないんですが,自分の校種の研究はするんですけれども,例えば中学校の研究会で小学校の事例も考えながら小・中の連携を考えて検証授業をしていくとかということはなかなか現実的に非常に難しい部分があると思います。なので,是非事務局の方には,この先,小・中・高のそれぞれの授業イメージ,事例ということだけじゃなくて,例えば同じ内容とか同じ単元を扱った場合に,小学校の事例,中学校の事例,高校の事例みたいに,そうすると,それを見て何となく現場の人間は,今回出される各校種で育てたい資質・能力ということが本当に具体的になってくるんじゃないかなというふうに思っています。
以上です。

【館委員】  加藤委員,少し後でよろしいでしょうか。かなり時間がたっておりますので,次の社会科における学習プロセスの例,この説明をしていただきました後,加藤委員等に,御発言を頂きたいと思っています。ごめんなさい。一応,池野委員から今言いました関委員までのことに関して文科省の方から何かありましたら,それを一つの区切りとしまして,その後,説明の方に移っていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
では,資料8の方の説明,よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  失礼いたします。それでは,資料8の御説明をさせていただきたいと思います。この資料8につきましては,今ほど関先生,それから岡崎先生から少し御意見等も頂戴しておりましたけれども,学習プロセスということで,主体的・協働的に学ぶあるいは問題解決的に学ぶ際のプロセスを例示したものでございます。
本ワーキンググループの検討事項として,資料5,毎回で恐縮でございますけれども,資料5の中の2番,3番に当たるような部分が今回の資料8だというふうにお考えいただければと思います。具体的には,資料5の検討事項の2でございますけれども,「アクティブ・ラーニング」の三つの視点,これ,下の方に書いてあるんですけれども,習得・活用・探究という学習のプロセスの中での「深い学び」,あるいは「対話的な学び」,「主体的な学び」,こういったものを指しておるんですけれども,こういったものを踏まえた資質・能力の育成のために重視すべき社会科・地歴・公民科の指導の改善充実の在り方というのが一つございます。
また,3.といたしまして,資質・能力育成のために重視すべき社会・地歴・公民の評価の在り方。これ,評価の在り方そのものはまだ総則・評価部会の方でも今後御議論いただくところかと思いますけれども,今回のプロセスの中で,じゃあ具体にどういった評価場面で評価をしていくかというのを示させていただいているのが,これから御説明申し上げる資料8ということでございます。
資料8にお戻りいただきまして,社会科における学習プロセスの例(たたき台案)ということでお示しさせていただいております。上の黄色枠が主な学習過程の例ということで,小学校,中学校,下が能力等の育成と主な評価場面ということで,知識・理解,技能,思考力・判断力・表現力,主体的に学習に取り組む態度ということで縦軸を整理させていただいております。
大きくは,社会科における課題追究の学習のプロセスといたしましては,上の方になりますけれども,大きく三つに分けられるのかなと。課題の把握,追究,それから解決と。更には,新たな課題へ結び付けていくというところかと思っておりますが,具体的には,小・中学校で例えば動機付け,方向付け,問題解決に対してのそれぞれ学習問題をつかみながら,問題解決についての見通しを持つというような課題把握の部分。それから,予想や学習計画に基づいて調べていく,あるいはそういった調査を通じて社会的事象の意味や特色,相互の関連付けを考えていくというような情報の収集あるいは考察・構想の場面。最後に,課題解決,こうした学習問題を振り返ってまとめるようなこと,あるいは考察・構想したことをまとめるようなこと。最後に振り返りとして,前回,評価する力という御意見も頂戴しておりましたが,学習を振り返って考えていくというような新たな課題への結び付け。そういった流れを社会科の流れとして示してはどうかということで,たたき台案として示させていただいているものです。
また,能力等の育成と主な評価場面のところなんですが,これは色で若干グラデーションは付けているんですけれども,やや見にくくて大変恐縮なんですが,縦軸に配置されている能力というのは,今のようなプロセスの中でいろいろな形で出てまいるものだというふうに思っておりますが,一方で,評価する場面としては少し濃淡があるのではないかということで,色のグラデーションで示させていただいているのはその濃淡,評価する場面は濃い色で,学習としては成立はしているものの,そこでは評価そのものを行うことではなくて,別な場面で評価をするというような形での色の濃淡を示させていただいております。具体的に,例えば知識・理解に関しては,主に情報収集でありますとかまとめの部分で評価をしていくようなケース。あるいは,技能につきましては,情報を収集し,考察していくような部分,あるいは最後まとめるような部分でと。先ほどの思考力・判断力・表現力につきましては,情報収集,考察・構想していく中で,あるいはマル3,マル4に関わる説明や議論するということにつきましては,更にまとめの部分でというような見方になります。最後に,主体的に学習に取り組む態度といたしましては,学習の動機付けの部分あるいは振り返りの部分で特に色濃く表れてくるのかなと,評価場面としては表れてくるのかなということで整理をさせていただいておりますが,下に留意すべき点にも書いてございますとおり,あくまでこれは議論用でそのプロセスというのを例示してみたものですので,必ずしもこのとおりに全ての授業が行われるわけでもございませんし,単元あるいは内容によって当然その軽重,取扱いの仕方は異なってくるという前提で,今回につきましては「対話的な学び」,「主体的な学び」,協働的「深い学び」というような,いわゆる「アクティブ・ラーニング」の三つの視点に関わっての学習プロセスとその評価場面ということで整理をしたものでございます。
御意見を頂戴できればというふうに思っております。
以上です。

【館委員】  ありがとうございました。
加藤委員,先ほどは済みませんでした。じゃあ,続けてお願いいたします。

【加藤委員】  済みません。時間が来ているということですので,先ほど名札を立てたときに言おうと思っていたこととちょっと違う話をしたいと思います。今,資料8の説明をしていただいて強く思ったことです。今日の最初に見方・考え方の追究の視点や方法の例ということで資料6の補助資料を出してもらったところですが,結局,見方や考え方は,方法的な側面と内容的な側面から捉えられると思います。そして,方法的な側面に着目すると,ある視点を基に問いを立て,思考・判断していくという,資料6で言えば左から右の流れがそれに当たると思います。内容的な側面に着目すれば,一番右側にある習得する知識,概念という,これが内容的な部分の見方・考え方かなということです。そういう意味では,方法と内容から見方・考え方を捉えたら,今日資料8で御提示いただいた学習プロセスの例というのは,まさしく方法的な部分の見方・考え方に着目し,それを学習のプロセスとして表現するとこういうふうになるという提言だと思われます。
先ほど説明にあったとおり,これは固定的ではないということだったですけど,例示として,資料6のような左から右の流れと,資料8のような学習プロセス,こういったものをどうつなげて説明していくと実践する先生方への分かりやすいメッセージになるのかということを考えてみてはどうかなと思います。もちろん固定的ではないけれど,見方・考え方とは何ですかと問われた時,その方法的な部分を理解いただくためには,こういう学習プロセスとセットで例示するとより伝わりやすいと思いました。
併せて,見方・考え方の内容的な部分に着目すると,一つは,事実的な見方や考え方というのがあると思います。ここの資料6の補助資料に出てくる知識,概念は,その事実的な見方や考え方だと捉えられます。ただ,もう一方で,見方・考え方にも価値的な見方や考え方というのがあるんじゃないかなと。それを資料6の話合いのところで出せばよかったことかもしれないのですが,価値的な見方・考え方を入れるかどうか,この辺は検討の余地があるかなと思いました。
以上です。

【館委員】  ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。では,井田委員,お願いいたします。

【井田委員】  それぞれよくまとまっていて面白いと思うんですけれども,資料8と資料7をちょっと見比べてみると,この関連性がやっぱりちょっと難しいかなと。能力等の育成と主な評価場面というのがありますけれども,その辺で資料7の知識や技能や思考力・判断力・表現力,情意・態度等が組み込まれてくると,もうちょっと見やすいかなという感じがします。
それから,資料7の個別の知識や技能や思考力・判断力・表現力という関連性という観点から見ると,例えば地理的分野では,地図やいろんなものが個別の知識や技能にあるんですけれども,それから思考力・判断力にも一応反映されています。公民的分野だと,課題についての考え方ですけれども,それが情意・態度の方とも関連しているんですけど,これが,個別の知識や技能,思考力・判断力,情意・態度がそれぞれ小学校でも中学校でも関連してくると,その三つがうまく動いているというような説明になってきて,どれが独立しているというわけではないということが言えるのではないかというふうに思います。
全体的にはよくまとまっているんじゃないかと思います。

【館委員】  では,坂本委員,お願いいたします。

【坂本委員】  この資料8を見て,社会科における学習のプロセスの例が,小学校,中学校の中で本当に分かりやすく出ています。本当に今,実際授業で行われていることが目に見えて分かるようになっているし,今,求められている「アクティブ・ラーニング」的な考え方もそのものが本当によく分かって,非常に分かりやすいというふうに思っています。
ただ,小学校,中学校,この小と中のことを詳しく見ていくと,本当にこれをしっかりやっていくことが大事だと思うんですけれども,小と中の違いという部分がより分かるようになるといいのかなという部分と,実際これをやったときに,先ほど単元によって軽重付ければいいということだったんですけれども,実際,この形を単元ごとにやっていくと,今でもそうですけれども,内容的に終わらないとかいろいろそういう課題がありますので,是非これと併せて学習内容的なものをどうするかということ,今後検討になるかと思いますけれども,これが十分生きるようなものになっていただきたいなというふうに思っています。
以上です。

【館委員】  今の件は,文科省,よろしいでしょうか。
ほかに。岡崎委員,お願いいたします。

【岡崎委員】  手短に申し上げます。資料8について,「アクティブ・ラーニング」の体系を非常に詳細に分かりやすく展開していただいていると思います。
1点だけ,一番右下に「学んだことを実社会に生かそうとする態度」ということも盛り込んでいただいていますので,振り返りのところなんですが,「学習成果を(学校外の)他者に伝える」,ここまで入れていただいてすばらしいなと思ったんですが,更にできれば加えて,小学校であれば,「自分たちにできることを行う」。これは二つ左のこまに「自分たちにできることを選択・判断する」という言葉があります。選択・判断までする必要があるのかどうか分かりませんが,自分たちにできることをこの辺りで考えていただいて,振り返りのところで,他者に伝えるだけでなく,「自分たちにできることを行ってみる」とか「行う」というのを加えていただけたらよりすばらしいし,そういうすぐれた例もあるなというふうに思っています。
中学生のところでは,時間も限られているというお話もございましたし,この「他者に伝える」の後に「行動に移せる場面を考え,取り組んでみる」というようなことを加えていただけると,文字数増えてしまいますけれども,観点としてはすばらしいなというふうに思いました。
失礼いたしました。

【館委員】  仙田委員,お願いいたします。

【仙田委員】  この社会科における学習プロセスの例という,これは非常に典型的なとてもいい例だと思います。でも,前もあったように,「アクティブ・ラーニング」を全ての授業でできるわけがなくて,単元の中で入れていくということになりますので,そうでないときにこれを活用するとどういうふうないい学習定着が図れるというものを,ほかにも例を出していただけると有り難いと。特に,これ,多分,課題学習だとかそういうのでやれば一番いいんでしょうけど,そうでない通常の学習のときにどうしたら,ここでやるとこういう効果があると。で,定着度が図れる。我々は今,「アクティブ・ラーニング」をやったときとやらないときでどうなのかという,去年とどう違っているのかというのを学校内で検証しています。何点で違う,定着度がどれだけ図れるのかというのがやっぱり問題ですので,それは全て授業に入れられないことは絶対事実なので,そこで全部「アクティブ・ラーニング」はできないので,それじゃないときにここを入れるとこういういい面があるんだということを何か示していただける例があると,とても現場は助かるんじゃないかなと思います。よろしくお願いします。

【館委員】  ありがとうございました。
時間が少し足りなくなってきましたが,最後どうぞ,よろしくお願いします。

【栗栖委員】  失礼します。先ほど説明をしていただきました資料8ですけれども,こちらの学習のプロセスの例ということでお話を聞いていますと,本当にまさしく今,私たちが現場でしている社会科ですごく大事にしなければならない学習の進め方である問題解決的な学習のプロセスと一致をしているなと思っています。今までこのような具体的な説明がなかったので,なかなか,なぜこの問題解決的な学習が子供たちにとっていいのかという辺りが見えにくかったのだけれども,これを見ると,主な学習過程の例は,全てが「子供が」という子供が主語になっていることからも分かるように,この学びをすることで子供たち自身が「主体的な学び」を進めていくことができるということが大変分かりやすくていいなと思っております。
こちらは,先ほど検討事項の2番にある「アクティブ・ラーニング」の視点から作られたものという説明がございましたが,では,社会科においては,この問題解決的な学習を今までのように,あるいは今まで以上に進めていくことが「アクティブ・ラーニング」を取り入れた学びになるのだというふうに捉えていいのかなという辺りをまたちょっと教えていただければと思っております。

【館委員】  どうもありがとうございました。
本日頂きました御意見につきましては,事務局において整理するようお願いいたします。
それでは,次に参ります。教育課程部会におきましては,情報に関わる資質・能力,健康・安全等に関わる資質・能力など,各教科等にも関わる議論がなされております。その状況について事務局より説明をお願いいたします。

【大杉教育課程企画室長】  失礼いたします。お時間ございませんことと,あと,先生方によっては,もうこの説明を聞くのは3回目だという先生もいらっしゃるかもしれませんので,簡単にさせていただきます。
資料9でございます。教科横断的に育むべき資質・能力の例として,情報に関わる資質・能力,それから健康・安全等に関わる資質・能力に関しまして,総則・評価部会で行われております議論の状況でございます。
情報に関わる資質・能力でございますけれども,1枚おめくりいただきますと,ICTの特性等ございますけれども,こうしたことを学習プロセス,正に3ページ目,4ページ目を御覧いただきますと,今日先ほど資料8で御覧いただいたプロセスに少し似たものが載っておりますけれども,こういった議論を各教科で進めていただいておりますので,この中でICTを活用すると正に効果が見られるといったところを各教科ごとに御検討いただきながら,これまでの一般的なICTを活用しようということから一歩進んで,プロセスの中でより効果的な場面は何かということを考えながらICTの活用を考えていただきたいというような資料でございます。
また,5ページ目は情報活用能力でございます。これは単にICTを活用する力ということではございませんで,情報やICTを問題解決に活用する力ということでございます。今日御議論いただいた中身が正にそういうことであろうかと思っております。
5ページ目は三つの柱に沿った情報活用能力の整理でございまして,7ページ目がそれの発達段階に応じた小・中・高の資質・能力の育成のイメージ。
それから,8ページ目以降が各教科でございまして,特に社会科につきましては8ページ目の下にございますけれども,こうしたことを通じて情報活用能力ということの育成ということを更に御検討いただきたいということでございます。
また,安全,それから健康でございますけれども,情報の後,情報が47ページ目までございまして,その後でございます。健康・安全,特に防災の充実ということが求められてございますけれども,安全に関しましては,4ページ目の上にございますような資質・能力を,5ページ目の下にございますようなカリキュラム・マネジメントでということでございます。特に安全で安心して生きるための中核となる力を育む体育・保健体育に加えて,安全・安心な地域社会づくりに必要な力を育むという社会科・社会科系科目の重要性ということもこの中に入ってございますので,こういったイメージの中で充実をさせていく必要があるということでございます。
以下同様に,食育,保健に関しても同様の整理をしてございますので,議論の中で適宜お役立ていただければと思います。
以上です。

【館委員】  ただいまの説明,御質問ありますでしょうか。
司会不手際ありましてちょっと時間が延びてしまいましたが,本日はここまでとしたいと思います。
本日お出しいただいた御意見につきましては,事務局で論点ごとにその趣旨を整理していくようにお願いいたします。
なお,限られた時間内での討議でしたので,更に御意見やお気付きの点がありましたら,ペーパーで事務局にお送りいただければと考えております。
本日予定されていた議題はここまでです。
最後に,次回以降の日程についてお願いいたします。

【大内学校教育官】  ありがとうございました。
次回の会議の日程につきましては,調整の上,追って御連絡をさせていただきたいと思っております。また,館委員からもお話ございましたけれども,ペーパーによる御意見の方を是非よろしくお願いしたいと思っております。ふだん,私どもの総括係から会議の開催案内でメールを送らせていただいておりますが,こちらの方に御返信いただければと思っております。
以上でございます。

【館委員】  それでは,第5回の社会・地理歴史・公民ワーキンググループを終了させていただきます。どうも御議論ありがとうございました。

―― 了 ――

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