教育課程部会 高等学校の数学・理科にわたる探究的科目の在り方に関する特別チーム(第4回) 議事録

1.日時

平成28年4月13日(水曜日) 17時00分~19時00分

2.場所

文部科学省 旧庁舎6階 第二講堂
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 新科目において育成すべき資質・能力等について
  2. 新科目の実施に際し必要と考えられる諸条件等について
  3. 新科目の名称・位置づけについて
  4. その他

4.議事録

【岡本主査】    それでは、定刻になりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会高等学校の数学・理科にわたる探究的科目の在り方に関する特別チームの第4回を開催いたします。本日はお忙しい中、御参集いただきまして、まことにありがとうございます。
  まず最初に、事務局から配付資料について確認をお願いします。
【金城教育課程課長補佐】    4月の人事異動で米原の後任としまして教育課程課課長補佐を拝命いたしました金城です。どうぞよろしくお願いいたします。
  それでは、配付資料の確認をさせていただきます。本日の議事次第に記載していますように、資料1から資料4、そのほか机上に参考資料を配付させていただいております。不足等ございましたら、事務局にお申し付けください。
  なお、机上にタブレット端末を置いておりますが、その中には本ワーキンググループの審議に当たりまして参考となる関係する審議会答申や関係資料等をデータで入れております。
  以上でございます。
【岡本主査】    ありがとうございました。
  初めに、毎回のことですが、本ワーキンググループの審議等につきましては、初等中等教育分科会教育課程部会運営規則第3条に基づきまして、原則公開により議事を進めさせていただきます。また第6条に基づきまして議事録を作成し、原則公開するという取り扱いをさせていただきます。よろしくお願いいたします。
  なお、本日は報道関係者から会議の撮影及び録音の申し出がございますが、これを許可しておりますので、御承知おきいただければと思います。
  さて、きょうは最初に総則・評価特別部会の検討事項等について御報告を頂きます。その後、議題1として、新科目において育成すべき資質・能力等について、議題2について、新科目の実施に際し必要と考えられる諸条件について、議題3として、新科目の名称・位置付けについて御議論いただきたいと思っております。
  それでは、総則・評価特別部会の検討事項等について、事務局より説明をお願いします。
【大杉教育課程企画室長】    失礼いたします。それでは、資料2をごらんいただけますでしょうか。各ワーキング等におきまして、資質・能力等に関する議論を深めていただいていることを受けまして、改めて総則・評価部会としてアクティブ・ラーニング、特に深い学びの視点から、そして学習評価についておまとめいただいたものが資料2になります。一部の先生方には重複しての御紹介になってしまうかもしれませんけれども、御了承いただければと思います。
  資料2をおめくりいただきますと、1ページということで、アクティブ・ラーニング、特に深い学びを実現する観点からということでございます。1ページ目1ポツは、8月の論点整理のおさらいでございますけれども、社会に開かれた教育課程の理念の下、資質・能力を育むという観点から、深い学び、対話的な学び、主体的な学びの三つの視点ということを整理していただいたところでございます。こうした視点に基づき、各教科等の内容的な理解を深めながら資質・能力を育んでいくということ、またそうしたことが子供たちの学習に向かう内発的な動機を高め、生涯学び続ける力の獲得にもつながるということでございます。
  さらに論点整理にも書かれておりますけれども、アクティブ・ラーニング、型に着目した理解がなされているとの懸念もあるところを、特定の学習指導の型や方法の在り方ではなく、学習過程全体を見通した授業改善の視点であるということでございます。
  一方で学校現場からは、理念は分かるけれども、具体的な実践例をとの声もあるところでございます。こうした実践例については、片や方法の紹介ということではなくて、アクティブ・ラーニングの視点に基づいて授業が改善され、それが子供たちのどのような変容につながったかという授業改善の実践例の蓄積と普及ということでお願いしたいということで、事務局としてもこれを教育委員会等、様々なところでお伝えしていきたいと考えております。
  2ページ目でございますけれども、指導の型や方法は、授業改善の一つの手段として効果が検証され、不断に見直されていくべきものということでございます。
  また、続きまして深い学びの視点ということでございますけれども、アクティブ・ラーニングの三つの視点のうち、対話的な学びと主体的な学びについては理解しやすいということの一方で、深い学びということがなかなか分かりにくいというような声もあるところでございます。現在、深い学びの在り方、各教科の特質に応じてワーキングでも議論いただいているところでございまして、具体的なイメージがつかみにくいということであろうかと思います。
  深い学びにつきましては、その三つ目の丸にございますけれども、現在、教科別のワーキングにおきましては、資質・能力の育成や学習の深まりの鍵となるものとして、教科等の特質に応じ育まれる見方や考え方ということの整理をしていただいているところでございます。こうした見方や考え方を習得・活用・探究を見通した学習過程の中で働かせながら、思考・判断・表現し、見方や考え方そのものも成長させながら、資質・能力を獲得していくということが深い学びではないかということでございます。
  先生方には、この深い学びということを通じて、子供たちの教科等の内容的な理解にも責任を持ちながら指導内容を組み立て、先生方がしっかりと教えるということも含めて、子供たちに関わっていっていただきたいということでございます。
  この見方や考え方でございますけれども、これ自体は新しいものではないということは御承知のとおりでございますけれども、現行指導要領においても科学的な見方や考え方も含めて使われている言葉であるということ。一方で、その具体的な内容については必ずしも具体的に説明されているというわけではないということでございます。
  3ページ目、見方や考え方とは何か改めてということでございますけれども、様々な事象を捉える各教科ならではの視点、あるいは思考の枠組みであるということ、そしてこれを働かせながら知識・技能を構造化して身に付けたり、思考力・判断力・表現力をより豊かなものにしていったり、あるいは学びに向かう力、人間性を育んでいくという、この三つの柱全てに関わってくるものであるということでございます。こうした見方や考え方を働かせながら、深い学びということを実現していくということ、そして子供たち一人一人の見方や考え方の困難さということも捉えて支援していくという視点も必要であるということであります。
  3ポツは、こうした各教科等の特質に応じ育まれる見方や考え方が相互に影響し合いながら成長していくものであるということ、そして特に総合的な学習の時間や特別活動などの領域におきましては、各教科の見方や考え方を総合・統合させるということを通じて、より広範な事象を捉えたり、複雑な文脈の中で考えたりということを可能にするものではないかということでございます。数理探究につきましても同様の考え方であるかと存じます。
  それでは、続きまして学習評価についてでございます。同じ資料の後ろの方、24ページでございます。目標に準拠した評価ということでございまして、現在、育成すべき資質・能力を三つの柱に基づき構造化していただいておりますけれども、それに基づき教科目標を明確化するということ自体が学習評価の改善に資するということでございます。
  一方で、その三つの柱というのは相互に関係し合いながら育成されるということも明確にしていくことが必要でありますので、この点については総則などで示していくという方向性でございます。
  そして観点別評価につきましては、前回改定時に学力の3要素との関係が整理されたことを踏まえ、実施率自体は高い状況でございますけれども、質的な面からはまだまだ改善の余地があるのではないかということ、目標に準拠した評価の実質化や教科・校種を越えた共通理解に基づく組織的な取り組みを促すという観点から、27ページ目にございますような知識・技能、思考・判断・表現、主体的に学習に取り組む態度、この三つの柱で観点を整理していくということでございます。具体的な書きぶりについては、各教科の特質を踏まえた書きぶりを御検討いただいているところでございます。
  次に、25ページ目でございますけれども、知識・技能につきましては、事実的な知識のみならず、これまで「理解」という言葉で整理されてきたような構造化された概念的な知識の獲得ということも含んでいくということでございます。
  また、思考・判断・表現につきましては、これが成長に一定の時間がかかるというようなことも踏まえながら、学年等を越えた整理ということも視野に入れながら、目標や指導内容の構成の中でそれが何かということを明確にしていくということでございます。
  また、主体的に学習に取り組む態度につきましては、資質・能力の柱との関係性の整理でございます。資質・能力の柱の方では、学びに向かう力・人間性というふうにされておりますけれども、この中には、主体的に学習に取り組む態度として、観点別評価で見取る部分と、評点等になじまず個人内評価を通じて見取る部分があるということでございます。このうち、主体的に学習に取り組む態度の部分を観点別評価では見取っていくということではないかということでございます。
  また今回、「関心・意欲・態度」が「主体的に学習に取り組む態度」に改められておりますけれども、これにつきましては、挙手の回数やノートの取り方などの形式的な活動ではなく、粘り強く取り組む資質・能力を獲得していくという意思的な側面を捉えて評価していくこと。このこと自体は現行も同様ではございますけれども、なかなか誤解が払拭し切れないという問題点が長年、指摘されて、現在に至りますことから、「関心・意欲・態度」を改め、「主体的に学習に取り組む態度」としているというところでございます。
  そのほか、26ページ目にございますように、指導要録の在り方、また指導要録に加えて、みずからの学習状況やキャリア形成を見通し振り返ることができるような仕組みの在り方、学びのポートフォリオや個々の学びの特性が校種を越えて共有されるような仕組みの在り方などなど学習評価に関する残された論点については引き続き総則・評価部会で議論させていただくということでございます。
  私からは以上になります。
【岡本主査】    ありがとうございました。それでは、今の総則・評価特別部会の検討事項等についての御報告があったんですが、何か御質問等ございますでしょうか。よろしいですか。
  では、また後ほど少し議論が深まってくると、これに関係することが出てくると思いますので。どうもありがとうございました。
  それでは早速、議題に入ることにして、事務局から議題1、新科目において育成すべき資質・能力等についてについて、説明をお願いします。
【平野教育改革調整官】    失礼いたします。それでは、資料3に基づきまして、議題1の関連の説明をさせていただければと思います。
  まず資料3、1枚おめくりいただきまして、ページ番号2というところでございます。前回、この新しい科目の基本原理について御意見を頂いたところでございますが、それを踏まえて修正した主な修正部分を赤字にさせていただいております。基本原理の1のところにつきましては、知的好奇心を持って様々な物を見るというようなところをやはりきちんと大事にしていくべきじゃないかというような御意見がございましたので、そういったところを加えさせていただいたというところと、それから「教科・科目の枠にとらわれない自由な視点で」というような書き方をさせていただいていたんですけれども、「自由な」というと少し抽象的で分かりにくいのではないかというような御指摘も頂きましたので、ここでは多角的・複合的な視点というような形で、代替案を書かせていただいたというところでございます。
  それから二つ目でございますが、「科学的な見方・考え方」のところでございますけれども、ここは「理科的な見方・考え方」ではないかというような御意見も前回頂いたところでございます。それで検討させていただくとその際、お答えさせていただいたところでございますが、実際、これがどう使われるかということを考えますと、学習指導要領という形で、現場の高等学校できちんと受け止めていただくということがまず第一でございますので、そうなりますと、これまで高等学校の理科の分野におきましては、科学的な見方・考え方を養うということを掲げてやってきたという経緯がございますので、そういった点をまず考慮させていただきたいという点が1点でございます。
  それから、理科の手法というよりは、そのまさにバックグラウンドとなっております各ディシプリンの手法というものをやっぱり高校で使っていくというような考え方も重要ではないかと思いますので、そういった観点からも、「科学的な見方・考え方」というような用語にさせていただければと。
  あともう一つ加えますと、「理科」といった場合に、初等教育的なイメージというのもかなり強いというところもございますので、やはりここは事務局としては「科学的な見方・考え方」ということでさせていただければと思います。
  また、その「科学的な見方・考え方」といった場合に、数学も入るのではないかというような考え方もあろうかと思いますが、ほかの様々な用例ですとか、例えばアメリカなんかの使い方を見ますと、通常「Science」といった場合に、必ずしも数学が入るというのは明確ではなくて、「Science」といった場合には、いわゆる物理と化学と生物を指すようなものとして、科目構成として立てて、それとは別に「Math」を立てているというような。例えばアメリカの大学入試の共通試験であるSATなんかの教科別試験なんかですと、そういうような区分になっていますし、アメリカの小学校・中学校のカリキュラムを見ましても、やっぱりMathとScienceとに分けていて、教科として、普通「Science」といった場合には数学は入らないというような考え方が一般的であろうかと受け取れますので、これもこれまでの学習指導要領上の用例も踏まえて、「科学的な見方・考え方」、「数学的な見方・考え方」というこの二つで整理させていただければと思っております。
  それから、2の2行目の「豊かな発想で」というところにつきましては、ここも前回、「柔軟な発想で」とさせていただいていたところを、少し表現を、分かりにくいということでございましたので、とりあえず「豊かな」ということで置かせていただきましたが、これについてはもっといい表現があるということであれば、是非、御指摘いただければと思っております。
  それから、もう一枚おめくりいただきまして、3ページ目、育成すべき資質・能力について、三つの柱で整理したものでございますが、真ん中の思考力・判断力・表現力のところの上の二つの黒ポツのところは、今の表現に合わせて修正させていただきました。
  それ以外の修正点としては、課題解決を、思考力・判断力・表現力の最後の黒ポツ、四つ目の黒ポツでございますけれども、論文、文章という形でまとめる力というのがやはり必要ではないかという御指摘が前回ございましたので、それを加えさせていただいたというところ。
  それから技能のところでございますけれども、データの処理や分析というところがやはり明確じゃないんじゃないかというような御指摘ございましたので、それを入れさせていただきました。
  それから、知識・技能の四つ目の黒ポツ、研究倫理のところについては、前回、生命倫理だけ特出ししているのはどうかというような御意見、頂いたわけでございまして、当然ながら生命倫理以外にも情報倫理ですとかほかの要素もあるだろうということでございますので、とりあえず「等」とさせていただいておりますが、我々のほうであえて生命倫理について括弧書きで書かせていただいたのは、今のSSHで行われているような課題研究の実例を見ますと、かなり生物を対象とした課題研究が多ございます。その場合に、やっぱり生命倫理の点でちょっとどうかなというような例も幾つか見られるというところでございまして、特にこの生命倫理のところについては注意してやっていただく必要があるんじゃないかということで、今回こういう形で書かせていただいておりますが、その点についてももう十分、「研究倫理」と書けば生命倫理が含まれるというのは明らかだと、削除していいというようなことであれば削除させていただければと思っておりますので、その点についても御意見を賜れればと思っております。
  それから、もう一枚おめくりいただきまして、4ページ目、3、新科目の学習過程のイメージということでございます。前回は理科の学習プロセスのイメージを掲げさせていただきましたけれども、基本的にはそういったところをベースとしつつも、一番上にございますように、様々な事象を知的好奇心を持って観察すると。その観察を通じて多角的・複合的な視点で事象を捉えて、その中から問題を見出すと。その問題に対して、今度は科学的な見方、数学的な考え方というのを活用して、数学的あるいは科学的な課題として設定をしていくという、このプロセスがやっぱり重要だろうということでございまして、そこを強調したような形に変えさせていただいております。
  その後は基本的に数学や理科と同じような探究のプロセスに入っていくということになろうかと思いますが、その過程できちんと見通しを立てたり振り返ったりというような、行きつ戻りつというようなところはやはり重要視していきたいと思いますし、最後に報告書の作成や発表というような形で、外に対して示していくというのも重要だろうと。
  これで終わるのではなくて、やはりそのまとめていく過程で、次の課題というものを見出したり、あるいはそれをもとに次の探究のプロセスにつながっていくというような、循環するようなイメージが出せればいいんじゃないかというような前回、御指摘もございましたので、そういった要素をこの右端のところに入れさせていただいております。
  それから、5ページ目、新科目の構造についてのところは、若干、用語の修正をさせていただいておりますが、大きな修正はございません。研究倫理のところについては「研究倫理等」とさせていただいたというような状況でございます。
  6ページ目、5、実施に当たっての留意事項というところでございますが、前回の御議論の中で、ここに掲げさせていただいた三つの点が特に御意見が多かったと考えております。まずテーマの設定に関する考え方で、自分で選ばせるのではなくて、教員がもうテーマを与えてはどうかというような御意見があったかと思っております。これについてでございますけれども、生徒の実態を踏まえつつ、やはり生徒が主体的にテーマを設定するということを重要視したいと考えております。もちろん実現の可能性というようなものも加味しつつ、教員が適宜アドバイスを与えるというようなことも必要でしょうし、場合によっては選択可能な形でテーマを、例を示してあげるというようなこと、あるいは先輩たちがやった研究をもっと深掘りしたいというような要望が出てくるということは十分考えられますので、そういったものを排除するものではございませんけれども、適宜、教員がアドバイスをしつつ、できるだけ主体的にテーマを設定させるというようなことを方向性として示してはどうかと考えております。
  また、そのテーマについては、必ずしも数学とか理科というようなものに限定する必要はなくて、もっと幅広く社会事象を見て、自分の関心のあるところにテーマ設定をしていただくというようなことは認めていいのではないか。ただそこで使う探究の手法というのは、基本的には数学とか理科というところで培われるような手法を用いるということにしてはどうかと考えております。
  それから、先行研究についてでございますけれども、先行研究については、こんなものはやらない方がいいんじゃないかというような御意見も確かにあったとは思うんですが、先行研究のやはり意義というものは十分理解した上で探究を進めていただくということが必要ではないかと考えております。したがいまして、ここではあくまで高校生に可能な範囲、図書館を使ったりとかインターネットで検索するという範囲で、できる範囲でやっていただいて、探究を進めていくにおいて先行研究をすることの意義というものを理解させるというようなことを目的としてやってはどうかということでございます。
  それから、評価の考え方ということでございますが、前回もペーパーテストというものにはなじまないというような御意見もあったかと思います。またその探究の成果について、新たな知見があったかどうかというような探究の成果についての評価というよりも、むしろ失敗してもいいんだから、そのプロセスを評価すべきだというような御意見も多数あったかと思いますので、そういったところをやはり重視すると。あとは探究のプロセス全体のプロセスがどういうような流れで流れていって、自分が今どこをやっているのかと、あるいはどこでつまずいて、どこまで戻ってここから始めようとか、そういうメタ認知ができるようなところを重視したような評価にしてはどうかというのが1点でございます。
  それから、研究報告書や発表というものもやっていただくというような方向で考えておりますけれども、その内容はもちろんなんですが、そういった内容だけではなくて、探究を行っていく過程での思考ですとか態度というものも十分評価していくような形、あるいは自己評価や生徒同士の評価というようなものも取り入れるというようなことが考えられるんじゃないかと。
  こういったことを実際やっていこうとすると、本日、左側の資料、机上配付資料のところに、第1回目でもお配りさせていただきました倉敷天城高校のルーブリックの例がございますけれども、各学校ではこういったものもある程度、参考にしながら、実際はルーブリックを作って、ポートフォリオ的な評価をやっていくというような作業が必要になってくるのではないかと思いますので、我々としてもこういったような評価の参考になるような資料というものを今後、考えていかなければいけないと思っているところでございます。
  それから、もう一枚おめくりいただきますと、7ページ目、評価の観点(案)ということでございます。先ほど大杉の方から説明させていただきましたけれども、今回、教科の評価につきましては、現在3本柱で議論させていただいております資質・能力に即した形で観点別評価というものも同じように知識・技能、思考・判断・表現、主体的に取り組む態度というふうに整理するというような方向性で全教科、進めてはどうかということになっているわけでございまして、これについても数理探究においても、数理探究で育成したい三つの資質・能力というものに沿って、この三つの観点で整理してはどうかというところでございます。
  ただ実際のところ、この細かい文言につきましては、実際これから学習指導要領を書いていったり、解説書を書いていったりという中でさらに表現を練り上げていくような部分があろうかと思いますので、本日これを見ていただいて、特に重要な要素として抜け落ちているような点がないかというような点について、是非、御意見を頂ければと思っております。
  それから、評価に関連しまして、じゃあ、入試でどうなるのかというようなところがあろうかと思います。その点については、きょう資料4で用意させていただいておりますものをちょっとごらんいただけますでしょうか。先般まとまりました高大接続システム改革会議の最終報告の関連部分の抜粋でございます。新しい大学入学希望者学力評価テスト、センター試験の後継とされるものでございますけれども、そういったところが平成36年度から実施されるという見込みになっております。
  その中で、新学習指導要領に対応したものが平成36年度から実施されるという見込みになっておりますが、その中で、この数学と理科の知識や技能を総合的に活用して主体的な探究活動を行う新たな選択科目(「数理探究(仮称)」)に対応する科目を出題するというような方向性が出されております。これについては、中間取りまとめの段階の文章も第1回目で御紹介させていただいたと思いますが、最終取りまとめについてもこういった方向性になっております。
  ただ、ここにも書いてございますように、今まさにこの特別チームなどで検討しております科目の性格・在り方、そういったようなものを十分踏まえた制度設計とすべきだというようなことになっておりまして、この点については、こういった議論、ここでの特別チームの議論を踏まえて、きちんとした制度設計がなされるように、我々の方で今後、引き続き高等教育局と十分連携をさせていただきながら議論をさせていただきたいと思っているところでございます。
  それから、8ページ以降につきましては、先ほど御紹介させていただきました三つの論点、テーマの設定、先行研究、評価という以外にも、いろいろその指導に当たって留意すべき点と考えられるものを御意見いただいておりますので、こういったものについて少し細かいものも含めまして入れさせていただいております。まず7、指導の視点の例1でございますけれども、これは実際、テーマを選択していく場面ということでございますが、常に知的好奇心を持って、様々な視点から社会事象や自然事象等を観察して、その中で得た様々な気付きから疑問を形成させるような指導に心掛けるべきではないかということでございます。
  それから、各科目の内容のほか、先端科学や学際領域の内容からもテーマを選択することができるようにすること、あるいはその最後の四つ目でございますけれども、二つのサイクルのうちの最初の基礎段階のプロセスでは、現在あるいは過去の研究者の方々がどういった姿勢で研究に取り組んできたか、あるいはどういった発想で物事を考えてきたか、あるいはそのテーマにたどり着くのにどういった経緯を経てきたかというような、ある程度、物語的なものも含めて紹介するということを通じて、探究に対する視点の持ち方や意義というようなものを教授するようなことを基礎の内容として含めてはどうかということでございます。
  それから、次でございますけれども、7、指導の視点の2でございます。これは実際に数学や科学的な課題として設定するという段階でございますが、一つ目にございますように、課題を解決するための手法については、数学や理科の分野に係るものをということで冒頭申し上げましたけれども、必ずしも既に習った手法というものに限定する必要はなくて、もう少し高校の後の段階、あるいはこれはもう大学レベルだというようなものも含めて活用するということを認めてもいいだろうということでございます。
  それから二つ目でございますけれども、ある課題を設定した場合に、それを解決するための手法というのは、必ずしも1対1に対応するわけじゃなくて、物理的な課題なんだけど、これを化学的にアプローチするとか、そういうような組み合わせというのは幾らでも考えられると思いますので、そういった柔軟な発想を教員の方も意識して指導すべきではないかということでございます。
  それから、課題の設定をする際に、今、自分が身に付けているような手法を適用できるようなやりやすい課題を見つけてしまうみたいな方向が一部見られるそうなんでございますけれども、そういったようなことにならないように注意して指導すべきではないかというようなことでございます。
  それから、10ページ目、実際の探究活動に入っていく段階でございますけれども、指導の視点の3でございますが、先ほど示させていただいたように、仮説の設定、実験の計画、実験による検証、データの分析・解釈、推論と、そういうようないわゆる探究の手法というのをきちんと用いて、自分でこれを回せるようになるということを目指して教育するということが必要であろうということでございます。
  それから、探究の途中の過程で、生徒同士で互いに探究の内容等について議論したり協議したりする場を設けて、自分の探究のやり方というのが妥当なのかどうなのかという振り返るような機会というのを与えることが重要ではないかと考えているところでございます。
  そういった中で、一つのやり方に拘泥するのではなくて、どうもこれはうまくいかなそうだなと思ったら、別のやり方を考えてみるというようなところに生徒の視点を向けさせるというような指導も必要であろうと思います。
  それから、実際にやっていくに当たりまして、生命倫理、情報倫理等を含む研究倫理というのを十分留意して、教員の方もそういった点について十分留意しながら指導していただくということが必要だろうと思っております。
  それから、後で条件整備のところにも出てきますけれども、大学、企業等のやはり外部のアドバイスなどを得られるような仕組みというものは必要だろうと思いますので、それはきちんと求めていきたいと思っているところでございます。
  それから、11ページ目、指導の視点の4でございますが、実際にその成果をまとめていく段階でございますけれども、きちんとその探究の成果については研究報告書をまとめていただくということ、その探究の研究報告書をまとめていただく段階の指導を通じて、論理的な思考・判断・表現、そういったような力も育成も十分注意して育成するように指導していただきたいということでございます。
  それから、発表会などについては、これも基本的にはやっていただくというようなことで求めてはどうかと考えておりますし、その際、大学、企業など外部の有識者の方からの御意見などを頂くような機会の設定というものにも留意していただくということが必要ではないかと考えているところでございます。
  12ページ以降はまた議題2ということで御紹介させていただければと思っております。
  それから、これに関連いたしまして、同じように左側の机上配付資料として、本日御欠席でございますけれども、塩瀬委員から1枚、資料を提出いただきました。これにつきましては、スーパーサイエンスハイスクールなどの探究的な学習をやっている学校の高校の現場の先生方に、今度こういう数理探究的な学習というものが導入されるとすると、どう考えますかというようなことをざっくばらんに意見交換したときに、高校の先生側から出てきた反応の主なものをまとめたというようなものでございまして、きょうの議論の参考になるのではないかということで御提出があった資料でございます。
  簡単に一、二点だけ御紹介させていただきますと、探究活動を校内に普及していく上で、前向きな教員に共通するとおぼしき点ということで、最初の黒ポツでございますけれども、探究活動が結果を追い求めないものと理解している教員ほど、やはり高い評価を持っていると。また最後の黒ポツでございますけど、細かな計算力より概数で対象を捉えるモデル化の力というようなものこそ、探究を通じて備えさせたい力ではないかというようなことが出ております。
  それから、探究活動の評価については、何々ができて、かつ何々ができるというようなandではなくて、むしろorで評価していくべきではないか。あとは抽象化して理解できているかどうかはシステム図、モデル図が描けるかどうかというような観点で評価していってはどうかというようなこと。
  それから、最後の黒ポツでございますけれども、探究活動がどうあってほしいかという点については、以前、たしか小玉先生からも御指摘があったかと思うんですが、教員自身がやって楽しいと思えるようなものにするべきじゃないかというような御意見が出ているというような状況でございます。
  それから、同じく関連いたしまして、机上配付資料で左側に同じく置かせていただいておりますが、この探究的な学習活動を通じてどういった成果が出ているかというようなデータを示せないかということで、前回、竹内委員から御指摘がございまして、まだ済みません、途中段階ということでございますが、こういった横の資料を1枚用意させていただきました。
  日本国内で申し上げますと、やはりグループを、こちらは何か詰め込み型の学習をやったもので、こちらは探究的な学習をやったもので、どれぐらい成績が向上したかみたいなのをなかなか、探そうと思ったんですがなくて、これはスーパーサイエンスハイスクールの指定校で実際3年間の探究的な学習をやることを通じて、どのぐらい批判的な思考・態度というものが変わっていったかというようなものをお調べになったデータというものが京都大学の楠見先生の研究であるということで、一つ御紹介させていただきます。
  それから、これはアメリカの例なんでございますが、しかも大学生、学部生の例なんでございますけれども、これは生物学の入門の授業をかなり一こま一こま詳細に設計された授業でやるというやり方と、ある程度、課題を与えて、自分たちで試行錯誤させるというようなやり方、二つのグループ、これはまさに対象を二つに分けてやったのですが、1,300人ぐらいで2セメスターに分けてやって、セメスターが始まる前と後で科学的リテラシーについてのテストをやったら、これぐらいトラディショナルな方とインクワイアリーの方で成績に違いが出たという数値なんですけれども、実際のところはそれほど大きな差は実はこれでは見出せないというような状況でございまして、もう少しこういったデータについて引き続き調べて、見つかればまた御紹介させていただくということにさせていただきたいと思います。きょうは途中段階ということで御紹介させていただきました。
  それから、済みません、あちこち飛んで恐縮でございますけれども、きょう資料1として御用意させていただきました第1回から第3回における主な意見というものを、かなり事務局の方で意見を概要化させていただいて、まとめさせていただきました。これ、ざっとごらんいただきますと分かりますように、7ページのところに評価の観点というのがあるんですが、やはり評価のところの議論がまだ不十分かなというところですので、きょうは少し議題の1、もちろん資質・能力全体的な御意見も賜りたいのですが、評価の観点について是非、御意見を頂ければと思っているところでございます。
  説明が長くなって恐縮でございますが、議題1に関しての説明は以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【岡本主査】    ありがとうございました。それでは、これから意見交換の時間とさせていただきます。御意見のある方は、いつものようにあらかじめ名札を立てていただきますと、私の方で順次、指名させていただきます。発言が終わりましたら元へ戻してください。
  あんまりこれ議論すると果てしなくなるんだけど、さっきの「科学的」というこれなんだけど、多分、違和感があるのは、理科の中で科学的な見方を取ると。数学の中で数学的な見方を取るというふうに、分かれて教科でやるときは誰も気が付かないけれども、こういう統合的な教科になると、数学的な学力、科学的とかいうふうになると、きっといろんな意見が出てくるのかなと思いますが。
  では、いかがでしょうか。御意見等ございましたら。どうぞ。
【石井委員】    それでは、失礼いたします。私も評価のあたりを、目標論であるとか評価を専門にしている観点から、少し感じたことといいますか、お話しさせていただけたらと思うわけですけども、今、目標論と評価論と言いましたが、目標と評価は一体のものであって、評価を問うということは結局、資質・能力であるとか目標の核心をどこに置くのかということを問うことになってくると思うんですね。
  そういったことで、この資質・能力の中身であるとか、そこで少し気付いたことをお話しできたらと思うんですけれども、まずこの新科目の学習過程のイメージと、この探究プロセスといったもののポイントをどこに置くのかということでいうと、やっぱり調べ学習ではなくて探究学習であることはどこが違うのかということだと思うんですね。
  それでいうと、観点で挙がっているのでいうと、まず一つは、思考・判断・表現のところで、課題として、課題設定の部分と、それから課題を解決するというのがあるわけですが、これを強調し過ぎると、結局、手際よく問題を立てて解決するという方向に行かないかということが少し心配なところなんですね。だからむしろ探究の伸び代であるとか、そういったものを大事にするのであれば、その問いが深まっていくというあたり、ここがもう少しこの思考・判断・表現、あるいは態度の部分にそういうニュアンスが入ってくると、結局、手際よく調べ学習をして終わりということではなく、分かっていたつもりのものが分からなくなってくるような、まさにそういう探究の醍醐味というのが味わえるのではないかなということを感じました。
  ですので、この課題を設定するということと解決するということではなくて、まさにそこから新たな問いが立ち上がってくるような、そういうニュアンスを、思考・判断・表現で入れるのは難しくても、態度の部分であるとかそういったところにそういうニュアンスが入るといいのかなということをまずは思いました。
  それともう一つ、観点の問題と評価方法の問題というのは、これは表裏一体の関係になってくると思うんですけれども、それで申しますと、6ページのところに評価の方法で成果報告書と発表、これはまさに課題を立てて、それで解決するというふうな、今回、提案いただいている思考・判断・表現の観点とまず直結するところかなと思うわけですね。
  もう一つは、その後に「のほかに」とあるので、研究における生徒のその研究の過程における態度を重視するであるとか、相互評価を取り上げる。これはオンゴーイングな評価を想定していると思うわけですけれども、その中で態度を見ていきたいと。だからこの観点でいうと、態度の部分にかなり密接に関係する部分かなと思うのですけども、余りでもそこを、態度の部分というのをオンゴーイングな評価というところに全部負わせてしまうと、授業の過程でずっと評価し続けるというふうな、そういう非常に窮屈で大変なことになりはしないかなということを思うわけですね。
  これは先ほど塩瀬先生の方から出された資料にもありましたように、その結果、探究として、例えばレポートをきっちりまとめるというだけではなくて、そのレポートをまとめるに至るジグザグの探究のプロセス自体をメタ認知的に内観して、そのある種、研究体験記ではないですけれども、探究体験記的なものを添えるというか、そういう形で、後に残るものとして研究報告書と何かセットで残していくというふうなこともあるのではないか。
  実際、それは堀川高校というふうな探究でかなり先進的にやられている学校でも、そういった形での評価がなされているかなと思いますので、そういったまさに研究のクオリティーと、それから学習のクオリティーといったことを分けて考えるということからすると、その探究学習としてのクオリティー、それが少し残るような形で成果物を残していく。それは研究体験記的なものを併せて考えるという形でフォローできないかなということを感じました。
  以上です。
【岡本主査】    どうもありがとうございました。塩澤先生、同じような意見でも結構です。どうぞ。
【塩澤委員】    評価というよりも、今お話がありました指導の視点に関わるところで、この4月から各学校が論点整理を踏まえて幾つかの実践的な例が今、出ているんだろうと思っています。ここで3校、ちょっと御紹介できればなと思います。
  一つは、石川県の学校ですけれども、4点指摘していますけれども、課題発見能力の育成のためには、第1学年からの探究活動の充実が必要だということで今、取り組もうとしている。二つ目として、課題研究を充実させるためには、先ほど報告があった大学・企業との連携を拡大し、システム化させることが必要だと。特にここでは必要なときに必要な支援を企業や大学から受けるための全校でのシステム作りが必要ということで今、取り組んでいるということです。三つ目としては、探究力を育成し、さらに大学での学びにつなげるには、習得した知識・能力を様々な領域で活用する融合科目が必要だということで、特に課題研究において領域を越えた研究を経験し、その上で基礎学力が十分に定着した第3学年に融合科目を学ぶことが必要だということで今、設定しているということです。4点目に対しては、評価の問題で、生徒に対してよりフィードバックをできる評価方法を開発しなければならないということで、特に生徒の学習の目標を明確化することによって、自己評価能力を育成したいということを今やっています。
  二つ目には、滋賀県の学校ですけれども、今、検討にまさに入っているところで、運営指導委員会からの指摘もあって、ここは3点、今取り組もうとしています。一つは、数学の授業の導入時に、理科分野と関わりを持たせると。二つ目に、実験を教員提示型ではなくて、自分たちで最適な実験モデルを検討し実施させ、レポートさせると。場合によっては論文形式も視野に入れると。3点目には、理科実験を現象の取り扱い中心から実験を数学に融合することによって、数式で一般化していく手法を学ばせたいと。
  3校目ですけども、長野県の学校ですけども、特に基礎的な段階についてですけれども、探究の対象として、地域素材に徹底して対応していくということで、地域素材による課題発見能力の育成を図って、特にテーマ設定期のプログラムに重点を置いて主体的に取り組む課題研究につなげるということで、様々な論点整理を踏まえた上での新しい取り組みが今スタートしようとしているのかなと思っています。
【岡本主査】    ありがとうございます。議論を続けるんですけど、ちょうど今、浅田審議官がお見えになったので、どうぞ、一言。
【浅田大臣官房審議官】    いいですか。済みません。4月1日から初中局の担当の審議官と、ほかの仕事も兼ねているんですが、やらせていただくことになりました浅田と申します。
  4年前まで3年間、都内の中学校の校長もやっておりました。そういった経験も生かしながら、先生方にまた御指導いただいて、一緒に仕事していきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【岡本主査】    どうもありがとうございました。よろしくお願いします。
  では今の話に戻りますが、ちょっと評価のことが出てきたんですが。じゃあ、大路先生。
【大路委員】    ありがとうございます。評価のほうはあんまり、これは難しいなと考えていたんですけど、その前に資質と能力についてちょっとコメントさせていただいて、評価についてはその後でまたしゃべりたいんですけど、何を求めるかというところについては、余り私は多くを求めない立場なんですね。
  どういうことかというと、それまで受け身的な学習をずっとやってきた方々が、急にみずから主体的に課題に取り組んで、悩みながら答えを出すというのはすごく大きな変化であって、今までもそういう議論が何回もあったんですけど、その切り替えができるか、できないかというところがすごく大きなところだと思います。ですから大学生を見ていても、それがまだできていない人がいるぐらいで、高校の段階でこれをやって、そういうことが身に付いたというだけで、これはもう大成功だと私は思っています。
  じゃあ、どういうふうに評価すればいいかというと、やはり課題に対して適切な解決法を見出す能力、それから先ほどレポートにありましたけど、答えがたとえあったとしても、それを批判的に見て、本当なのかと疑問を持つような能力、それで仮に答えが出たとしても、その次に出てくる疑問というのは必ず研究すると出てくるわけで、その新たな疑問を提示できるかというところを見ていくというのが評価につながるだろうと。ですからそれは発表会なり課題レポートの中で、そういう今言った適切な解説法を見出したか、それから批判的な考えができたか、それからその次に新たな課題が発見できたかどうかと、そういう3点を例えば私は見て、評価の項目に挙げればと考えています。
【岡本主査】    ありがとうございます。いかがでしょうか。じゃあ、先生お願いします。
【丸山委員】    高校でこういう勉強をして、将来、大学なり社会に出たときにということを考えますと、大学でもなかなか、今お話しありましたけれども、そういう能力を持っていない方もまだ多いんですけれども、簡単に言いますと、いわゆるアクティブ・ラーニングと関係すると思いますが、いわゆるグループで作業していくと。そうするとテーマ設定についても自分はこういうテーマがいいとかいろんなことを、複数の人たちで集まっていますからあろうかと思いますが、でも協力して、まずどのテーマをみんなでやろうとか、そういうようなコミュニケーションだとか、それから1個のものをやるにしても、それぞれ生徒によって得意、不得意があるということで、要は作業分担しながらやるというような共同作業の中で、いわゆる自分の能力はどこが得意かとか、他者はどんなところが得意でというようなことを考えながらやっていくということが、いろんな意味で、この探究教科を通して、ほかの一般の授業に対しても非常に大きな影響が出てくるのではないかと思います。
  そういう意味で、1人に対して資質がどうこうという、最終的には個人の能力になりますけれども、全体としてグループワークということをメーンに考えて、そうすると今ここで考えているような資質が、全部自分が得意というわけではなくても、ある人はこういう得意がある、ある人はこういう得意があると、そういうものを総合しながら物を解決していくんだというような、そういう能力というか、そういうことを理解するというのが大きな意味があるんじゃないかと思いますけれども。
【岡本主査】    ありがとうございます。じゃあ、大島先生。
【大島委員】    ありがとうございます。ちょっとまた評価の点に戻るんですけれども、探究活動で取り組むテーマというのは、恐らく答えは一つではないものだと思うんですね。それでやはり今、議論にも出ていますように、どういうふうなプロセスでその結論に至ったかということを知るということと、あとそれが評価につながると思うんですね。
  先ほどちょっと御指摘もありましたけれども、やはりレポートの最終だけではなくて、その途中課題をきちんとノートの形で何らかの形で残すというのは非常に重要だと思っています。それは3点ありまして、一つは、プロセスでのどういう形でそれがその個人を含めてどのような考えに至ったかということをきちんと整理するということが一つと、あともう一つは、これは倫理とも関係するんですけれども、最近やはり実験ノートを残して、それをまたデータとして保存していくというのが今も大学で研究倫理の授業でも行われているので、データも含めて、どういう形でそれぞれのプロセスになってきたかということを記録としてやはり残していくというのは、研究倫理の観点でも非常に大事だと思います。あと最後に、そういう過程を通して、自分でそれを分析して振り返る題材にもなりますので、最後のレポートだけではなくて、やはりその過程のレポートというものもきちんと残していただいて、それを評価の一つにしていただきたいなということを、できましたらこの指導の視点ですかね、の手立てのところになるかと思いますけれども、加えていただけたらなと思います。
  あと、一つ質問がありまして、細かいことなんですけれども、資料3の5ページの新科目の構造についてというところで、上の探究を深める段階の考え方の二つ目の黒丸の点なんですけど、括弧して「共通ではない学び」と書いてあるんですけど、これは非常にミスリーディングというか、少し混乱するのではないかなと思っていて、これについて御説明いただけないでしょうか。
【平野教育改革調整官】    失礼いたします。この部分は、この実施、探究を深める段階ですと、それぞれ、個人なのかグループなのかというのはありますけれども、それぞれが設定した研究課題に応じて、それに必要な知識なり技能を身に付けていく、深めていく、それから探究のプロセスをやっていくということですので、教室内でみんな同じ内容を一斉に学ぶというものではないという趣旨で、「共通ではない学び」と書かせていただいたんですが、趣旨がもう少し分かりやすくなるように、表現を工夫させていただければと思います。
【大島委員】    ありがとうございます。
【岡本主査】    個別の課題に対する学びと、そういう感じなんですよね。個別の課題の。
【大島委員】    はい。今の御説明で分かりました。いわゆる生徒さん共通ではないという意味なんですね。ちょっとそこが私自身が理解できていなかったので、今の御説明で分かりました。ありがとうございます。
【岡本主査】    ありがとうございます。
【熊倉委員】      細かい意見になるのかもしれないんですけど、冒頭で石井委員の方から出た意見を伺って、私も同じように感じまして、それに関わってなんですけど、7ページのところの評価の観点で、特に二つ目のポツのところの「課題を解決することができる」というふうに言ってしまうと、その前の趣旨の、例えば5ページのところで、「分析自体の成否よりも、試行錯誤し失敗のリスクも引き受けながら」というようなことと矛盾したりとか、要するに解決することができるということではないんだというニュアンスを、やはりここは出した方がいいと考えたときに、「解決するために、探究のプロセスを通して分析・推論・推測することができる」とか、「探究的な学習ができる」とか、その解決するために何々ができるというふうにすればいいのかなと思いました。
  以上です。
【岡本主査】    課題の解決に向けて学びを進めるとか、そういうことでしょうね。評価に関しては、多分これは今までの普通の高等学校なんかで学校が授業科目で数学だとか物理だとかを評価していたのと違う評価軸というのかな、例えば実験ノートという話が出ましたけど、例えば普通の言葉で、大学なんかでいうとポートフォリオですね。ラーニング・ポートフォリオとかいうようなものをみずから作って、それをためていくと。それを先生方がどういうふうにコミットするかというのは当然いろいろな経験もあるでしょうし、そういう基軸で行くというのが皆さんの大体の意見だと思うんですけど、そうだとすると、結局、今まで普通に我々がこの評価というときに使っていた、テストで丸付けて何点というのじゃないものが入ってくるというわけですね。新しい評価と。そうすると、恐らくそういうのは、私はこういうのを履修して、こういう探究をしましたというノートを、仮に「君は高校時代、何やったの」と言ったら、大学に入って、先生に見せると、こういう感じのことになってくるんですかね。
  ということで、先生、済みません。
【小林委員】    余り役に立つことが言えるような気がしないんですけれども、評価のことについて、どうしてもこの書きぶりは、やっぱり個人の評価に持っていかなくてはいけないからということで、なかなか難しいんだろうと思いましたけども、丸山委員もおっしゃっていたように、現代の探究というのは一種の社会的なアクティビティーという側面が非常に強いので、そういう部分を意識的に個人の評価に持っていくというのは、実は大学でも苦しんでいるところで、私が担当している科目でも、グループでやらせますと、それを個人の評点にしろと言われたら、どうしようもないわけですね。そこは大変苦しいと。
  それで今おっしゃったように、そのプロセスをきちっと記録を取っていくという形でチェックをするというふうにすれば、ある程度のことはできるかもしれませんが、グループダイナミクスをちゃんとカウントしてあげないといけないことが結構起こるんですね。そういったことも含めて、相当に教員の負荷が掛かるだろうということです。
  そしてさらにテーマを自主的に設定するということをやっぱり大事にしたいというのが原案として出ております。それは抽象的には非常に結構なことなんですが、先行研究なども調べるときも、いともたやすく、インターネットがあるということでいろいろ調べます。それをやると何が起こるかということも、やっぱりリアリティーを持っておきたいわけで、要するにトンデモ情報のところにも行くわけですね。そこから様々な問題を、これをやりたいというふうに言われたときに、教員がきちっとそこをコントロールするというのは結構大変なことで、しかも専門分野についてはやはり高校の先生もそんなに幅は広くないはずです。だから高校の理科の先生でいわゆる研究をどのぐらい経験された方がこの理科の先生をしているのかというのはちょっと気になるところです。それはどうやっても、人間ですからすべてを知ることはできないので、先生が自信を持って担当できるのは、ある程度狭い分野ですよね。生物学全般の研究をしたなんていう人は絶対いないわけで、生物学の中のこんなことかこんなところで一つ論文を書いたというような形の経験で高校の先生をやるわけですから、大学だって同じであって、私は専門じゃないって先生方はすぐに言うわけです。だから学生の自由なテーマと言っても、やっぱりそれは教師としては怖くてやれないということになりかねないですね。
  ですから、自由な問題設定をさせるときに、大学はどうやっているかというと、「君はこの研究室に来ているんだから、この研究室の扱っているテーマの幅の中で自由に」という「自由」なんですよ。現実に起こっていることは。それが高校の場合にはそういうことが利かなくなったときに、教員の負荷は相当上がるだろうと思います。その意味でのフィージビリティーがちょっと心配な気がします。
  それから、社会的プロセスという意味では、「批判的」というのはいろんな形でキーワードでさっきから出てくるんですが、これ、どうも孤立した個人が自分の考えを批判的に反省的に考えているというニュアンスに聞こえます。そういうふうな批判的思考は当然大事なんですが、それではだめだというのが科学の経験だったわけで、だからレフェリード・ペーパーで、他人が査読をするというチェックを掛けるわけです。
  つまり批判というのは、社会的なチェックという側面がもともと強くて、個人だと、自分の書いたものというのはよく見えるんですよ。だからほかの人に見てもらって、粗探しをしてもらうというのが批判なので、そういう意味での社会的なプロセスはどこかにあってもいいのかなということです。
  それから研究倫理も、「生命倫理等」というふうにお書きになっていましたが、現実に高校の理科で生命倫理がもろに問題になるようなテーマができるのかというと、どうですかね。どんな事例をお考えになったのかなと思いまして。それよりも、大島委員がおっしゃったようにデータをインチキしないとか、コピペで勝手にデータをでっち上げるとか、そういうことをやってはいけないというところ、あるいは結論に合わせてデータを調整するというようなことをやってはいけないとか、そっちの方が大事なんですね。
  それから、思い付きばっかりですけれども、塩瀬委員の中でもありましたけれども、数学的なものと、それから科学的なもののかみ合わせというのが意外と現場ではできていなくて、例えば微分・積分の数学の授業と力学の授業がつながっていないということが現場では行われていて、私はびっくりしたんですが、ニュートン自身がそれで見つけていったわけですから、そういうところのつながり方は数理探究は意識すべきだろうと思いますし、フェルミ推定とか、それから社会現象を対数で表すとか、こういう問題部分をやらせると、実はうちの大学の理工系の大学院生でもぼろぼろなんですね。だからこういうのは高校時代から訓練すれば私は身につくことだと思うので、そういうものができるような表現にしていただいたほうがいいかなと思います。
  ちょっと余計なことも言いました。
【岡本主査】    ありがとうございました。竹内先生、お願いします。
【竹内委員】    竹内幹です。よろしくお願いします。評価を軸にしたことでの意見を申し上げます。
  今、横長の資料3を見ていると思うんですが、資料3の3ページに、3本柱で、一番右の柱、学びに向かう力、人間性等を見て、様々な事象に対して知的好奇心を持っていろいろ考え抜いて行動する態度と、新たな価値の創造に向けて積極的に挑戦する、自律的な探究、これは本当にみんな大学の教育現場は分野を問わず、こうありたい、こうあってほしいとすごく強く願っていることですし、本当にすばらしいと思います。
  とはいうものの、皆さんもそうですし、私もそうですけど、大学入試問題を作ったり、いろんな試験問題を作ると、これをダイレクトに、1日ぐらいでは問えないわけですよね。そこで出てくるのは、どうしてもこういう態度を持っている人とコリレーションのある何か試験問題をなるべく苦労して作るわけなんですけど、これはコリレーションで因果関係ではないので、試験対策をされちゃうと、こういう力はなくても試験対策をすればある程度できちゃう問題ができて、常にイタチごっこですよね。こういう本当の人間性を問いたい問題出題側と、これはとにかく受験に合格しさえすればいいのを作り出す予備校側、ないしは受験生本人たちとのイタチごっこであると。でもそういうことも受けて、やはりこの新しい科目、探究的科目を作ろうという流れなんだと思います。
  これで見ますと、やはり恐らくあんまりこういう言葉はこういう現場では使いたくないんですけど、いわゆる偏差値60超えみたいな、それこそいい大学というか――こういう言い方はちょっと語弊がありますが――ですと、かなりチャレンジングで、本当にダイレクトに一番右の柱を問う。それでドンとチャレンジ、受験生にしてきて、受験生もがっぷりそれに組む。2時間かもしれない、あるいは3時間ぐらい取ってもいいと思うんですけど、そういうことはできると思います。
  ただいわゆる必ずしもそうではないレベルの大学という――現実なので、そういうことをあえて指摘します――ですと、やはりメソッドの部分から例題、練習問題ができてきちゃう気がするんですよね。例えば何かサンプルデータを見せて、このデータの本質を可視化するようなグラフはどんなグラフを作ればいいか。例えば棒グラフではなくて、これは時系列なので線グラフだとか、そういう本当にメソッド、知識の詰め込みが可能な問題が作れちゃうところがあるんです。
  ですから例えば左の方を見ますと、一番左の柱、知識や技能。例えば例でこれ、全部方法、方法、方法となっちゃっていて、一番最初の基本原理、つまり2ページ見ると、赤い字で書いてありますけど、「様々な事象に対して知的好奇心を持つ」という、この我々、多分みんなで共有しているこうあってほしいというのが、結局は全部方法になってしまうというのが残念であると。
  そういう現象を受けると、皆さんおっしゃったとおり、やはり評価というときに、これをやったんだ、もしかしたらただやっただけで何も結局、身に付いていないのかもしれませんけど、恐らく表を見せてどんなグラフがいいですかと問うのでも同じようなことが起きるのであれば、やはりそれこそスタンプラリー的に、もちろんかなり空虚なものがあるかもしれません、その辺はある程度、クオリティーコントロールは必要ですが、スタンプラリー的にやってきた、それでもうある程度、評価はよしとしようというぐらいの方が、もしかしたら、何か試験対策を立てられちゃうのにすれば、結果的にはそのスタンプラリーを通じていろんなことを見聞きする、それこそが学習なのではないかと思うので、余り既存のいわゆる方法論とかを、知識問題が作れちゃうような分野でなく、もうあきらめて、本当かどうか分からないけどスタンプラリー10個集めたら10点、20個集めたら20点ぐらいの方が実は結果的に見ると20点集めたお子さんというのは10年後にはすごい何かを持っているかもしれないという気がします。これは一つのアイデアです。ですからその辺は目をつぶって、スタンプラリー式に評価をするというのも一つ。
  もう一個ですけど、関連してです。大路先生おっしゃったとおり、自由に発想してほしいといっても、なかなか大学にずっと詰め込み教育した時点でできてこないということで、やはりリフレッシュするというか、1回いい意味でリセットする必要があって、教材作りに関係すると思うんですが、最初の方で、私も全く科学史等々は分かりませんが、恐らくいろんな発明の多くが、多くか分かりません、済みません、専門家の方にゆだねますが、当時そうじゃないと思われていたものに対してのブレークスルーがあったはずなんですよ。もちろん奇をてらったものばかりという、何か今、ちまたではスティーブ・ジョブズみたいな、ああいうふうになっちゃうのかもしれませんが、そうじゃなくて、やはり着実な積み重ねによる成果というのもたくさんあるとは思うんですけど、特にリセットして自由にというのも取り戻すのであれば、実はそうではない。当時常識には明らかに反していたけれども、何かに着目して、こういう研究が出て、100年たった今ではもう当たり前と信じられていますとか、そういった事例集を学生さん、生徒さんに、授業1回分ぐらいでもいいので、やれば。それで、あなたもこれをやっていいんですよぐらいにやってもいいのかと。
  と同時に、教員向けの指導資料としても、本当にそこのブレークスルーというのはできなくても、そういうものがあるという事例集、科学史のほうですか、があったらより自由に考えることの取っ掛かりになるのかなということで、済みません、ちょっとベラベラ話しましたが、以上、基本的には2点。スタンプラリー式の評価でもいいんじゃないかということと、ブレークスルー、過去の本当の事例集というのがあれば。科学史においてです。100年、200年、300年ぐらいのスパンであればいいかなという以上2点でした。失礼しました。
【岡本主査】    ありがとうございました。この後、岩田先生、井上先生、小玉先生と発言いただいて、1回ここで切って、次の議題に入っていきたいと思います。
  じゃあ、まず岩田先生から。
【岩田委員】    やっぱりこれ、現場で本当に評価するというのは大変なことかなとしみじみ思います。ただ私自身、ある程度レベルが高い学校に勤めておりまして、本当にこれがいいのかという疑問はあるんですけれど、生徒自身の探究心を養うといった観点で、専門の化学を教えていますが、実験結果の後処理というのを追究させると、基本的にそのことがほとんど評価につながるかなと思っているんですね。
  どういうことですかというと、例えば単純な燃焼分析して、酸化して何が何グラムできたといったときに、それがうまくいかないわけですね。そのうまくいかないのを例えば誤差論で論じて、じゃあ、その誤差論が何%になったときに、人為的な操作ミスなのか、あるいはもっと違う原理が何か潜んでいるのか、結構そこに気づかせるとすごい探究心が出てくる。それを例えば班ごとの対抗戦にしてみるというと、理論値と全然違うデータが出てきて、生徒が共通してまちがえることと気づきます。例えば化学実験で、試験管の中で沈殿を生成させて、その生成した沈殿の重さを量れといったときに、試験管の振り方一つで全然データ、違います。
  そういうふうなところに、どうしてそうなるのかというやはり先ほどから出ていると思いますけど、何か探究する心の中に疑問点を抱かせられれば、それを口頭表現で生徒が表してくれれば、こちらはやっぱり高評価したいなというのが現場の感覚なんですね。
  ですからレポートにせよ、今の生徒さんたちは、特に本校なんかはそうなんですけど、定期考査とかそういう方をやる方が逆に楽で、そのレポートを出させるというのは、非常に生徒にとって負荷が大きいことで、このこと自身が実はある程度求める評価項目にやっぱりなっているんじゃないかなという気がするんですね。
  例えば数理という分野の方にかかわらず、探究心を仰ぐといったときに、生徒がどういうふうなプロセスで、どのような実験をこういうふうにやったといったときに、それを相手に伝えられるようなレポートをちゃんと表現してくれるというと、これはもう本当にすごい高評価、私はあげたいと思うんです。
  ですから数理探究全体に及ぶことで、前回も言いましたが、本当にいろんな学校に採用していただくというのであれば、もっと泥臭いところの公理の証明のときに出てくる誤差論とかからはじめ、高校現場の欲するところからやって、数値データが比例関係になるのか、一次式になるのか、指数関数になるのか、その法則性を追えるということ自身が非常に生徒にとっては発展的なレベルに映ると思うんですね。
  ですから、全国の高校に広めるのであれば、数理探究の最先端研究は確かにその一部分、ほんの上澄みの一握りだと思います。もっとファンダメンタルな生徒像を抱いたところで、本当に探究心を養うとはという、まさに探究心のリテラシー、そこのところをここでしっかり入れていただかないと、科目として何なんですかというふうな現場からの厳しい批判が来るような気がします。
【岡本主査】    じゃあ、井上先生お願いします。
【井上委員】    済みません。井上です。手短にお話を、2点だけさせていただきますけれども、先ほど石井先生とか熊倉先生がおっしゃったように、非常に本来は継続的な評価というのが一番望ましいんでしょうけども、やっぱり労力という点から考えますと、非常に難しいという点で、是非、現場で取り入れていただきたいのは、これが数理の複合教科でございますので、是非、評価の方も複合的に、いろんな先生が関わって、要するに数学と理科の先生が複合的に是非、評価をしていただきたいと思っております。
  その中で、そういうことをやっていくと、当然のことながら高校の現場ではこの科目に対する評価に対してFDをやらなきゃいけないとか、そういう話が初めて出てくるんじゃないかと。そういう、生徒も発展していかなきゃいけないんですけれども、高校の先生も是非、発展していただくという意味で、是非、複数の評価を頂きたいと。複数の先生による評価を頂きたいということでございます。
  もう一点なんですけれども、小林先生がおっしゃるように、生命倫理は今、ほとんどありません。高校で生命倫理が必要なのは、大学とコラボレーションしているところのみでございます。ただ一方で、SSHとか、あるいはリケジョの大会とかに行きますと、植物とか無脊椎動物の細胞を使ったものというのがたくさんございます。ですからそういうことをやった高校生というのは、必ず先には脊椎動物、哺乳類が目の前にございますので、ごめんなさい、私、促進する方なので、研究倫理を促進したい方なのであれですけれども、是非、植物とか無脊椎でやっている間に、生命倫理、情報倫理というのも入れていただきたいと思っております。
  以上でございます。
【岡本主査】    じゃあ、先生。
【小玉主査代理】    小玉です。資料の3ページに、育成すべき資質・能力というものが整理されておりまして、これはおおむね私はこれでいいんじゃないかなと思っております。
  ではその育成すべき資質・能力をどう評価するかということが今、話題になっていますけど、7ページ目になりますが、大路先生がおっしゃったように、学びというものがこの(仮称)数理探究では全く今までと変わるということが非常に大きいと思います。
  例えば受け身の学びということであれば、これは教師が教えたことを忠実に知識ないしは理解していることをペーパーでテストできます。どこまでやったかというのはできます。ところがこの受け身の学習から主体的な学びになった途端、評価が極めて難しくなる。本人しか基本的には分からないんですね。それを、じゃあ、どう評価するということですごく難しくなるということを先生方がいろんな観点からおっしゃっているかと思います。基本的にはペーパーでそう簡単に調べることはできないということかと思います。
  そういう中で、大島委員が御指摘されましたけども、実験ノートというのがありましたけれども、私が思うには、実験ノートというよりは、さらに探究ノートといいましょうか、頭脳の中で、この探究の活動の中で頭脳でいろんなことを考えたのを記録させる。試行錯誤も全部、記録させていくと。汚くてもいいので、とにかくノートに記録させていく。その記録させていったことが、こちらが評価する材料になる。
  ただし字の汚い生徒も結構いますので、そう簡単に、それをぱぱっとめくって評価はできない。そういうときには、資質・能力の幾つかの視点がありましたけれども、それに対する評価の視点も明確にして、みずからこの部分はこれをクリアできたものですよということをきちっとマーカー等、あるいはそういうものできちっとやって提出をさせれば、こちらも非常に見やすいということになります。
  ですから一番大事なのは、大島委員がおっしゃったように、きちっと記録を付けさせるということかと思います。それで、その記録を付けたことに対して、教師の方がルーブリック的なもの、ちゃんと基準を達成できたかどうか、これはルーブリック何段階も分けると評価はできないです。非常に難しい。ところが例えば逆上がりができた、できなかったというような基準ならすごく簡単に付けられます。もうちょっとやりたければ、逆上がりができた、懸垂逆上がりができたというふうなルーブリックであれば、非常に明確に評価ができる。そして生徒にそれを講評して提示しても、生徒が自分の探究活動の記録ノートで、この部分はこれをクリアできました、この部分はさらに上の段階クリアできましたというのを付けさせることもできる。
  1人の教員が40人付けるというのは、至難のわざなんですね。今、私は普通の教員に戻りまして、週16時間、地学基礎という科目を教えております。300人以上教えております。どう評価するか。至難のわざです、これは。そこで今いろいろ考えているんですけれども、生徒みずからにもう評価基準を明確に示して、生徒みずからがこれがクリアできたということをちゃんと示して、それを提出させるということならば、できるかと思います。
  それからもう一点、重要なのは、高校の教員の意識改革かと思います。高校の教員の場合は、大学入試があるので、序列を付けるための5、4、3、2、1に当てはめるための評価をしがちなんですけれども、それを全く変えて、これをちゃんと、例えばさっきの逆上がりでいえば、逆上がりがクリアできたかどうかと。ですからこの子はこれだけのことができますよというふうな形の評価に変えて、そういう意識を高校の先生が変えていかないといけないかなと思っております。
  以上です。
【岡本主査】    じゃあ、ここで1回議論を切って、今度は議題2の方入りましょう。よろしくお願いします。
【平野教育改革調整官】    失礼いたします。それでは、資料3の12ページからごらんいただけますでしょうか。8、新科目に係る全体像というところ。
  これは前回お示しさせていただいた資料、特に左側の諸条件のところを若干、整理させていただいたものでございます。この諸条件について、少し細かく書かせていただいたのが13ページ以降ということになります。
  前回、この必要と考える諸条件のところに、具体的にどういった生徒像をターゲットとするかというようなのを入れさせていただいていたんですが、諸条件というとちょっとニュアンスが違うかなというのがありましたので、今回はそれは省かせていただいて、この13ページ、上の方に別に用意させていただいたというところでございます。
  まず13ページのところでございます。カリキュラムの難易度等の設定についてというところでございますが、数理探究のこの選択科目として構想しているこの新科目でございますけれども、どういったレベル感を想定するかというところで一つの案を提示させていただいたところでございます。生徒の到達度のイメージというところでございますが、この学習を通じてみずから探究のプロセスを一貫して回すことができる能力を最終的に身に付けるというような生徒像ですね。まさに探究を自分で回して、そのプロセスをメタ認知できるような生徒像、そういったものをイメージしてはどうかというところでございます。
  それから進路先につきましても、できれば高等学校を卒業した後に、大学、大学院に進学して、特に今、理数系の研究に大学・大学院で従事していくと、そういう勉強を続けていくというような生徒像をイメージしたものとしてカリキュラムを、内容ですとか難易度というものを考えてはどうかということでございます。
  もちろんこれはカリキュラム設定に際してのイメージでございますので、それぞれの学校や生徒の状況に応じて、対象を少し調整するというようなことは実際の実施の場面ではあってしかるべきだと思いますが、主にその科目をこれから具体化していくに当たって想定する生徒像としては、こういうものを想定してはどうかということでございます。
  それから、特に分野を限定することなく、探究的な学習活動を行うものといたしましては、現在、総合的な学習の時間というものが設定されておりますので、議題3にも関連するんですけれども、そことの関係も踏まえつつ、ここでは少しこういった具体的な生徒像をイメージしながらカリキュラムを考えていった方がよろしいのではないかという御提案でございます。
  それから、14ページ、諸条件の整備について1ということでございますけれども、これまで頂いた御意見を踏まえつつ、こういったものを条件として考えていってはどうかということでございます。
  指導体制としては、数学・理科の教員を中心に、そういった全校的な指導体制というものを考えていただく必要があるだろうと。特に探究を深める段階の指導に当たりましては、40人の1クラスを1人で見るというのはもう不可能でございますので、複数の教員が対応するというような体制を組んでいただく必要があるだろうということでございます。
  それから、教材とか指導事例集ということでございますけれども、特に基礎を習得する段階の指導に当たりましては、探究のプロセスや手法などについて、教科書あるいは副教材といったような形で適切な教材を用いて指導することが必要だろうということでございます。
  本日、机上配付資料でお配りさせていただいております、第1回の会議でも配らせていただきましたが、千葉大学が名義でまとめられました探究の副読本的なものがございますが、こういったものを参考に、教科書なり副読本というような形で、やはり提供していくというようなことを考えていく必要があるのではないかということでございます。
  それから、指導のノウハウというのがかなりSSHで蓄積してございますので、そういったものをきちんと事例集というような形でまとめて、情報提供していくというのも考えていかなければいけないと思っております。
  それから教員の指導力という関係で、先ほども研究をしたことがある、あるいはそれを指導できる教員がどれぐらいいるのかみたいな御指摘もございましたんですけれども、やはりそういったところについては、養成と研修と両方で対応していくことが必要であろうかと思います。特に研修をやっていく仕組み作りについては、国も中心的に考えて、今後、仕組みを考えていく必要があろうかと思っているところでございます。
  それから、15ページ、諸条件の整備2のところでございますけれども、必要経費、特に生徒たちが実際に探究をやっていくに当たって、どうしても実験に使うような機材ですとか資料というようなものを購入する必要が出てくるような場合もございますので、それなりの金額、前回、SSHの事例ということでいいますと、大体1学年100万ぐらいを措置しているところがかなり多かったというところでございますので、そういった部分の経費というものは何らかの形で考えていく必要があるだろうということでございます。
  それから、環境整備ということでいいますと、基本的な実験器具等については整備するということになっているわけでございますが、かなり学校の状況によって違いもございますので、そういったところ、今、国の方でも、補助金など、理振の補助金などございますけれども、そういったものもなかなか実際活用されていないというような状況もございますので、そういったものをもっと活用していただくような仕掛けというのも引き続き考えながらやっていきたいと思いますし、特にコンピューターを含めたICT環境、ネットワークも含めたICT環境がまだまだ不十分というところがございますので、そういったところについては国としても引き続き推進をしていきたいと思っているところでございます。
  それから、企業ですとか研究機関、大学、そういったところからきちんとアドバイスを受けられるような仕組み作りというのも必要でございますので、こういった点については、特に遠隔地でなかなか周りに適当な企業ですとか大学がないというようなところに対して、どういった枠組み作りが考えられるかというようなところについては我々としても引き続き考えていきたいと思いますが、是非、アイデア等あれば御提案いただければと思っております。
  こういったほかに、こういった諸条件の整備という観点から、必要ではないかというような御意見ございましたら、是非賜れればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【岡本主査】    ありがとうございます。今の点について御意見等いかがでしょうか。今度は条件の問題なんですけれども。
【丸山委員】    今、御説明ありましたけれども、教員というんですかね、いわゆる生徒に対して複数の、多くの教員が関わらないと、実質的な効果はないんじゃないかと。という意味で現場では大変だと思います。
  例えば一つの例として、私どもはもう10年ぐらい特別選抜ということで、大学に入れるときにペーパー試験なしで、夏休み2泊3日ぐらい高校生を合宿させて、そのときに、高校では習わない、つまり準備ができないような内容を大学の先生がその場で講義しながらグループワークをさせたりということをやって、それについて、例えば5人のグループについて1人の先生が脇でずっと見ているんですね。それで、ポートフォリオではないですけど、カルテみたいなのを付けたり。そうすると3日間全部同じ人だと偏ったことになると困るので、途中で先生を替えながらやったりして、そうしますと、全くペーパー試験やらないので、大学入ってから付いてこられるかどうかって非常に心配なところがあるんですけれども、でも実際やってみますと、そういうところで非常に大学入ってポジティブな勉学活動ができそうな能力・資質のある人というのを採るわけですけれども、そういうことをやったりする。そうしますと、非常にちゃんと大学へ入ってからも、ペーパー試験やらなくても、ちゃんとリーダー格になったりしてやっていくという経験があります。現在でもやっております。
  それから、いわゆる本来の多様な入試ということで、30分ぐらい何か物を与えて、それを見て、それに対してどういう性質があるかということを、渡す材料なので、そういうのを渡したときに、金属とかいろんなのがありますけれども、どんな性質があるかと自分で判断して、ですから解答は間違っていてもいいんですけれども、それを考えるということをOHPでまとめて、面接で発表すると。そうするとプレゼンテーション能力も全て見られますので、そんな形で、ペーパー試験なしで入れても、きちんとした逆に非常に能力のある人が採れるという経験をしております。
  ちょうどそれを高校3年間使ってやるというような形に私、これを感じたんですけど、そうすると、やっぱりものすごく労力が必要なんですね。だからそういう意味で言うと、この対象とする人がどれぐらいの数なのかということと、それこそ近くの大学院生をTAで使って、少し教育をして、先生と同じような形でグループをアドバイスしながらやれるかとか、そういうことがないと、なかなか。高校生も父兄も入試に結び付かないととか、あとは本当に興味を持つということになると、高校の科学クラブとか、そういうようなイメージで、実際、別に評価とか関係なく興味で楽しいというような形に持っていかないと、長続きしないと思います。そういう意味で言うと、人的なソースというかバックグラウンドを十分考えないと、なかなか難しいんじゃないかなという感じがいたします。
【岡本主査】    ありがとうございます。この後、じゃあ、塩澤先生、石井先生という順番でお願いします。
【塩澤委員】    条件整備のところでいうと、大学との、先ほど言いましたけど、システム化が必要だということですけれども、各高校でこれを実現するというのは極めて困難な状況にありますので、是非、管理機関の役割というものをもう少し打ち出していただいてもいいのかなと。管理機関がそれぞれの地方にある国立大学、あるいは私立大学等との協定を結んで、明確に支援体制ができる、あるいは企業との役割がどうできるのかということを是非、実現していただければありがたいなと思います。
  もう一つは、特に遠隔地のところでいうと、なかなかなやっぱりそうはいっても支援できる体制がないという中で、先ほどの御意見にもありましたように、卒業生を中心とした組織化、ファシリテーターとしての、場合によってはある学校ではお盆のお休みのときに帰省するわけですよね。卒業生、院生も含めて。そういった学生、卒業生を中心としたところをしっかりとそのときに連絡を取ってまとめて、2泊3日とかそういうところで徹底したやりとりをその先輩と在校生がやって成功している学校もあると聞いております。
  ただ問題点としては、そういう特に大学生を呼んだときに、それに関わる費用、その辺がどう担保できるのかというところが極めて難しいところにあると思います。
  もう一つは、先ほどの評価の問題とも若干関わるかもしれませんけれども、こういう主体的な、特に基礎の習得段階のところでは、場合によってはこの1年生だからこそ1人1研究をして、生徒個人の主体的な学びをまず磨いた上で、共同的な段階に入っていくとか、そういうような伏線的な工夫なんかもすることによって、探究を深める段階が深まっていくのではないかなと思っています。
  いずれにしても、それぞれ費用が関わるということで、先ほど言った備品とかそういう消耗品のところはあるんですけれども、人件費のところでの支援というのはなかなか難しいところがあって、そこら辺の工夫も是非していただければありがたいなと思います。
【岡本主査】    ありがとうございます。石井先生、どうぞ。
【石井委員】    この条件整備で、特に前回に引き続いて、教師をどう育てるのかという観点で、それと実は評価の問題というのは密接に関わってくるんじゃないかということを、少し意見を述べさせていただけたらと思うんですが、その前に、先ほどこういうふうに探究の評価と言ったときに、グループの活動として探究活動を進めていくことと、その評価というか個々人の評価をどう両立させるかということですけれども、これは手立てはあると思うんですね。
  結局のところ、グループでやっているときに、フリーライダーがいるということが一つ問題になるわけですけれども、そこでグループとして、例えば研究成果の報告書をまとめ、発表すると。でもそれが本当に自分のものになっているかどうかということを確かめるような個別のレポートを併せて課せば、そうするとグループでの活動というか、そのプロジェクトと、それから個人ベースのそういった、先ほど探究のプロセスを自分でちょっと振り返ったものを載せるということも言われましたけれども、そういったものを併せて見ることで、グループでやるというふうな活動のダイナミクスと、それから評価ということを見た場合には、一人一人についてどうかということを確かめざるを得ないところもありますので、そこを両立するという部分はできるのかなと思います。
  これは実は卒業論文であるとか卒業研究の口頭試問の発想に学べばそうなるんだろうと思うんですね。だから、あれは指導を受けながら結局、論文作成するわけですから、その論文は誰の論文かということで言われると、教師であるとか先輩の指導を受けながらですから、その共同作品であると。しかしそれが口頭試問があることによって、そこで本当に自分の作品になっているかどうかということを試していると、そういう関係にあると思うんですね。
  ですから、そういう発想を引用すれば、その個人ベースということと共同ベースにするということの両立は可能なのではないかなというふうな、完璧ではなくても、そういうふうなことを思いました。
  あとその本題のところの評価と、教師の力量ということですけれども、評価について考えるときに、今、議論を伺っていても、やはり少し区分けした方がいいのかなと思うのは、やはり学習の改善に生かすような、そういう形成的評価という部分と、それから評定につながる部分ですね。これは評定の部分は入試ということにつながってきますけれども、ある程度ここはつながるけども、分けた方がいいだろうと。
  まさにこのレポートを作成する云々、あるいはそういった学びのプロセスをメタ認知して、あるいは実際に探究する力があるかどうかというのを、実際の生徒の姿で見取っていく。これは指導の改善のプロセスの中には絶対に入っているものなわけですね。評価というのは、実は指導ともともと一体のものとして内在している部分があると。だからそれが、先ほど岩田先生がおっしゃったことはまさにそこだと思うんですね。実験をやって、その後処理をする、そこでの生徒の姿を見ることで、ああ、大体そういう力が育っているんだなということを見ると。だからそれは指導の中に埋め込まれている評価なわけですよね。
  そのときに、やっぱり大事になってくるのは、最終的にはその指導の中に埋め込まれている評価といったときには、教師の見る目が確かかどうかということが問われてしまう。その教師の見る目が確かかどうかというのは、結局のところ探究の評価であれば探究することのよい探究であるとか、探究が深まるとはどういうことかという教師の具体的なイメージであるとか、その感性がどこにあるのかというところですね。そこが問われてしまうんだろうと思うんですね。
  ですから、どこまで行ってもペーパーテストによらず、ある種、パフォーマンス評価というかでやっていく上では、最終的にはルーブリックであるとかポートフォリオというふうにツールをいろいろと工夫するとしても、最終的には人間である教師が判断する。だからその資質的評価でやるというふうなことは逃れられないと思うわけですね。
  ですからこの教師の見る目をどういうふうに育てていくのかということと結び付けて、この評価の問題は考えていく必要があるんだろうと。それでいうと、実際に先ほどルーブリックというふうなことも出てきましたけれども、あともう一つは、複数の先生方が複合的に評価するということも出していただきました。これは実はつながってくる話で、実際の出てきた子供たちの作品というかレポートとか成果報告書を複数の先生方で見て、それでどういうふうに評価したかということをすり合わせていく。これ自体、評価の力を高めていく、そういう手立てになってくると思うんですね。
  ですので、この評価の問題というのは、ある種そういった教師の力量を育てていくということと、その研修のいい機会になると考えていくこともできるのではないか。特に学習に寄り沿っていく上では、評価しつつ指導していくというふうな、ある種、受けの指導というのが大事になってきますので、そういう観点からも、その評価ということと教師の現場での研修というか、そこは結び付いてくるのではないかなということを思います。
  あともう一つだけ。前回も言ったことなんですが、養成段階において、その研究の経験をした教員が今、現場にどれくらい高校にいるのかというあたりは、これはつまり開放制の教員養成の在り方のメリットをどう生かしていくかということなんだろうと思います。つまり一般大学において、理学部であるとか文学部であるとか工学部とか、そういったところの学生とか院生が教師になる、そういう閉鎖制ではない、開放制の中での教員養成の、その逆にメリットというか、そのポテンシャルをどういうふうに生かしていくのかという視点で考えていくことが必要なのかなと思うのですけども、そのときに、研究する経験があるからといって、研究することを指導する力があるとは限らないというあたり、そこを埋めるような、そういう手立てが必要なのかなと思います。
  だから狭い範囲での研究、でも研究するプロセスを狭くても一度はくぐっている。だからそこを内観することによって、その研究するとはどういうことなのかということの知見が加えられてくることで、研究することを適切に指導する力につながってくるのかなと思うんですね。ですから、そういった観点から教員養成の在り方も考えていけたらと思います。
  以上です。
【岡本主査】    この議題、だんだん話が大きくなってきたんですけど、じゃあ、熊倉先生、大路先生、ここでちょっとまた1回切って、もう一つ議題があるので、そういうことにさせていただきます。
【熊倉委員】    時間もないようですので、手短に行きたいと思います。実は塩澤委員と同じところを私も意見を申し述べさせていただきたいと思います。
  やはりこういったものを推進していくに当たって、経費というのは大変重要な視点で、これがなくて、じゃあ、高校の先生に、あとは頑張ってねというふうになってしまうと、なかなかこういうのというのは前に進まない。そういう意味では、経費というのはとても重要な視点だと思います。
  そのときに、1点ちょっと感じることは、特に人件費に関わることで、大学や研究機関、企業等からというところの部分ですけれども、これ、今のこの書き方であると、受けられる体制を確保することが必要というふうに書いてあって、この科目をやる以上は、必ずこういうところと推進しなさいというような、そういうふうに受け取られてしまう。そうなるとかなりハードルが高くなるなと。お金の問題もあるのですが、そこのところを進めていくというだけでも結構ハードルが高くなる。そうじゃなくて、そういうことじゃなくても学校の中で探究的な活動をやるということで、もちろんあるレベルは維持しなきゃいけないということはあるとは思うんですけれども、必ずしも大学や研究機関、企業からの助言を受けなきゃいけないというふうに縛りを掛ける必要はないんじゃないかと。その意味においては、例えばこの辺の文言については、「可能な範囲で」とか「必要に応じて」とか、もうちょっと和らげるような表現にするという考え方もあるかなと思いました。実際、理数科で課題研究なんかを進めている現行の学校の中では、そういう形で進めているところもあるので、そういうふうに思った次第です。
  以上です。
【岡本主査】    ありがとうございます。大路先生。
【大路委員】    またちょっとピントがずれた発言かもしれないんですけれども、教える立場の議論が結構多いんですけど、生徒さんの立場に立って、これ、新しい科目をやって、何かメリットというか、おもしろいと思って、それで馬にニンジンをぶら下げるじゃないですけど、何か御褒美みたいなものはないかなと思って考えてみますと、SSHの場合は、夏に横浜とか神戸とかで大きな大会をやって、ほかのSSHの人たちと交流したりしますね。その後に、何とか賞とか、大々的に賞を与えたりします。あれはすごいそういうプライドというか誇りになるわけですね。
  それで、これはそんなにSSHほど大きな研究とかそういうことはできないんでしょうけど、数多くいろんなところでやれば、その中にはすばらしい何かいろんなきっかけとなるものができてきて、それを発展させたいという生徒さんも出てくるんじゃないかと思っているんですね。
  そういう場合に、校内の発表会だけで終わって、それでパチパチパチで生徒さん、ああ、やってよかったと思えばいいんですけど、何かそういう甲子園じゃないけども、そういう横浜とか神戸でやっているような機会が作れれば、ああ、そういうところに行って、こういうことを発表してきたぞというところで、ほかの人とディスカッションしたりというのはすごくいい体験になると思いますので、生徒さんにとって何かそういうあめみたいなものを考えられないかなと思って、発言させていただきました。
【丸山委員】    なお、先ほど合宿で特別選抜をやっているというのは、高大連携の試験的なということで、正式に入試としてやっているわけではございませんので、その辺だけ補足させていただきたいと思います。
【岡本主査】    はい。
  次の話題に入らせていただきます。
【平野教育改革調整官】    失礼いたします。それでは、16ページ以降、新科目の位置付けについてということでございます。
  これまで数学・理科にわたる探究的科目ということで、仮称として数理探究という名称でさせていただいたんですけれども、今回、その名称、それから教育課程の中でどのように位置付けるかということについて案を示させていただきました。
  まず教科でございますが、今、数学と理科にまたがる科目としては、理数科というものがございます。これは昭和45年からある教科でございますけれども、これについては、主として専門学科において開設される科目で現在は構成されているという状況でございます。したがいまして、主として普通科ではなくて、理数科とされているところで主に開設されておりますが、もちろん普通科でこういった科目を開設することもできますので、やっているところもあるというような状況でございます。
  今回はこの新しい科目について、教科理数に位置付けた上で、主として専門学科というわけではなくて、ほかの普通かも含めて全ての学科、各学科に共通する科目として位置付けてはどうかというのが一つ目の御提案でございます。
  それから、科目の構成として、案の1、案の2とさせていただきましたが、案の1としては、一つの科目として大体、SSHでやっている場合の単位数が3単位程度というのが平均的な数字で、前回お示しさせていただいたと思うんですけれども、大体3単位から6単位ぐらいの幅を持たせた科目として、一つの科目としてまとめて開設するという案と、もう一つ、案の2でございますけれども、基礎を学ぶ部分と、さらに探究を深める部分とを分けて、2段構成にして、基礎の部分は例えば1単位程度、実際に探究を深める過程については2から5単位程度というふうに分けるという二つの案が考えられるのではないかということでございます。
  案の1の方は、その基礎の部分のボリュームというものをかなり学校の裁量で自由にできるというメリットはあるんですけれども、ある程度まとまった単位数を確保しなきゃいけないというので、ちょっと学校によっては開設しにくいという部分も出てこようかと思います。
  案の2の方は、二つに分けることによって、例えば総合的な学習の時間と組み合わせて、総合的な学習の時間を1年目にやって、2年目から例えばこの基礎は省いて、理数探究に行くというような開設もできるような形が想定されますので、こういった形も一つ考えられるのではないかと。
  ただ当然その基礎の部分というのはしっかりやっていただくということが大前提だと思いますので、やはりあくまで総合的な学習の時間ですとか、他の数学とか理科の科目できちんとこの探究の基礎的なことを学んでいると判断される場合には、この基礎を飛び越して、探究の部分に直接入っていけるような柔軟なカリキュラム設定を考えてはどうかということでございます。
  それから、名称のところは、次の17ページ、18ページ目でございます。「理数」か「数理」かというところでございますが、今、教科としてございます理数科の「理数」というのの意味は、理科と数学を対象とするという両方にまたがった科目という意味で使われているというのが現状でございます。それから辞書的な意味で申し上げますと、「理数」といった場合は、理科とまさに数学だというのが大体共通して書いてあるわけでございますが、「数理」といった場合は、かなり数学的な意味合いが強く出てくるというところがございます。
  特に「数理科学」というような場合には、完全にこれは数学を指すという用語として定着しているというような状況がございまして、これまで「数理探究」という言い方をさせていただいていたんですが、数学というのがどうしても前面に出にくかった今の課題研究の課題を見ますと、これは数学をかなり重点的に扱うんだというニュアンスが出てきたという、そういうふうに受け止められるというメリットが考えられる一方で、逆に数学の科目じゃないかと思われる可能性があるというところがちょっと懸念されるところでございます。
  それから現在、「理数科」というものがございますので、そことの関係について、なかなか説明がしにくいというような状況もございまして、「数理」ではなくて「理数」とさせていただいたほうがいいのではないかという御提案でございます。
  それから、次の18ページ、最後でございますけれども、「探究」か「研究」かというようなところでございますが、特に現行の学習指導要領の中でも、「探究」というような表現を使う場合には、やはり過程を重視するというような場合にこういう「探究的な学習」という表現を使わせていただくことが多いというようなことでございまして、これに対して、「研究」ということですと、かなり成果を重視するような場面で多く用いられるのではないかというようなことも考えますと、今回、特に成果よりもプロセスを重視するという科目の性格を表すという観点からは、「探究」という形の方がよろしいのではないかということを考えまして、名称としては「理数探究」というような形で教科、理数科の科目として位置付けるということで御提案させていただいたという状況でございます。
  また実は総合的な学習の時間との関係については、本日午前中に行われました高校教育部会におきまして、数理探究との関係を踏まえて、総合的な学習の時間の方についての議論を少しすべきではないかというような御意見もございましたので、またそういったところの状況については次回、御報告させていただきながら御意見を賜れればと思っておりますが、とりあえずきょうはこの御提案させていただいた内容について御意見を頂ければと思います。
  よろしくお願いします。
【岡本主査】    これについて、主査みずから言いたいことはいっぱいあるんですけど、どうぞ。
【小玉主査代理】    じゃあ、簡潔に。今、平野調整官おっしゃったことは非常にごもっともだと思います。16ページについては、佐倉高校の例を見ても、案の2がベストです。案の2だと非常にやりやすい。明確にその趣旨が基礎と実際の探究で分かれるということ、非常に案の2を推します。
  それから、「研究」よりも「探究」の方がいいというのは、「研究」となると、本当に誰もやっていないことをやらなくちゃいけないという足かせがすごく来るんですけれども、「探究」の場合はその過程を重視するというのが非常によく分かりますので、「探究」で非常にいいと思います。
  以上です。
【岡本主査】    どうぞ。どうでしょうか。「数理」か「理数」かという話もあるんですけれども。意外と意見ないですね。
  ただ、難しいですね。この前、これは前もって伺っていて、この前、小林先生の議論で、やっぱり「数理」という言葉がどういうふうにできてきたか。さっきの「Science」を「科学」と訳したのは誰かとか、いつどういう文脈で訳したかとか、「数理」とかいうのを、ちょっとはまってしまって、歴史を調べたんですけど、これはどこかで割り切らないとだめだなというのが今のあれですね。
  だから、ただもともと「数理」というのは、もちろん今は「Mathematical」の形容詞の訳を「数理」と使うんだけれども、もともとは数学的な手法でもっていろんなものを調べていくというのだから、ある意味では、いわゆる精密科学、Exact sciencesというのがありますよね。だから物理とか、そういうのも含んでいたんだろうというようなことなんですね。
  それからもう一つ、ただそうして見ると、必ずしも「探究」というのは、数学を使った探究というのは理科だけではないので、それはいろいろもうちょっと統計とかになってくれば、もちろん出てくるので、その辺は難しいなと思いつつ、これは割り切るしかないかなと思っているんですけど、その辺、どうなんですかね。やっぱり「理数」というのは使いやすいんですかね。高校現場だと。「数理」って高校の科目はないんですよね。やっぱり理科と数学という感じになりますかね。「数理」というと、やっぱり数学ですかね。どうなんですかね。ちょっとこれ、どっちにするかというのは、きょう欠席の委員の意見も聞いてみます。それで、ここでは割り切りの問題と説明の問題だと理解してよろしいでしょうかね。
  というわけで、結構あっさり、何かまとまりそうになっちゃたんですけど、これでいいのかなとふと不安に思いながら、ぴったり時間となりました。
  ただ一言だけ言わせてください。僕、大学からちょっと離れたので、学生とか高校生と話していることがいっぱいあるんですね。ただ大学にいないで話をすると、大体、私のところへ来て話をするような高校生とか大学生というのは、かなり限られた人たちなんですよ。要するに例えば探究というレベルでいったら、もちろん主体的にどんどんやる。そういう人たちを見ていると、恐らくこれは彼ら、若い人たちのそういう人たちというのは、好奇心、探究する力というのはもともと持っていて、場を与えてあげればできる。
  ただし若いから、要するに間違っちゃうことをいっぱいやるわけですよね。あっち行っちゃったりこっち行っちゃったり、方法が間違ったり。それをどういうふうに指導するかというところがきっと現場では難しいんだろうなと。
  でもそういうことができて、また評価となると難しいと思うんだけど、ただその若い人たちを見ていると、要するにできていないのは、発揮する場所がなかったからかなという気もしないでもないという危ない発言をして、一応きょうは時間なので、切らせていただきますが、何でも結構ですけど、ございませんでしょうか。
  それでは、議事はこれまでということで、次回以降の日程等についてよろしくお願いいたします。
【金城教育課程課長補佐】    次回の日程でございますけども、5月中旬を予定してございます。時間及び場所が決まりましたら、また事務局の方からご連絡差し上げたいと思います。
  また、このほか御意見等ございましたら、ファクスまたはメール、郵送でも結構でございますので、事務局にお寄せください。
  なお、本日の配付資料につきましては、机上にございます封筒に入れて、そのまま置いていただければ後ほど郵送させていただきます。
  以上でございます。
【岡本主査】    ありがとうございます。後で気が付いたとかいうことがあれば、ペーパーでいただければと思います。
  本日はどうもありがとうございました。

――  了  ――

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