(資料7)芸術系教科・科目における指導の改善・充実について

【主な論点例】

1.「A表現」の指導と「B鑑賞」の指導の関連を図ることについて

2.協働的な学びについて

3.ICTの活用について

4.学校における芸術教育の充実方策について

5.その他

(参考)芸術WGにおけるこれまで(第1~6回)の主な意見

1.「A表現」の指導と「B鑑賞」の指導の関連を図ることについて

2.協働的な学びについて

○アクティブ・ラーニングは、新たな1つの手法ではなく考え方であり、例えば、音楽の授業を考えてみると、子供たちがグループで学ぶことや集団で何かをする活動は今もたくさんあるが、先生は、その活動が学びにつながるような意識を持って指導していたかというところに、メスを入れていかなければいけないと思う。(第1回)

○音楽の本質とは少し離れるかもしれないが、力を合わせる喜びも子供達の学習には非常に大切であるため、協働で学習するということが意識できるような学習の在り方を考えていく必要があると思う。(第2回)

○書道においても、パフォーマンス書道(音楽に合わせて手拍子やダンスをしながら書く)やリレー書道(1人ずつが1点1画を書く)などが行われるようになり、書の本質からはやや離れるかも知れないが、協働的な学びや書による社会への働きかけという点で新しい流れが生まれてきている。(第2回)

3.ICTの活用について

4.学校における芸術教育の充実方策について

○学校で、音楽で学んでいることが社会に開かれているかということについて、疑問を感じる。学校では、合唱コンクールや文化祭など文化的な行事が多くあり、学校の中でも、授業から出て活躍する場面がたくさんあるが、学校の授業で学んだことが学校の中で生かされているのか、学校で学んだことが社会に生かされているのかということを、もっと考えていく必要がある。芸術教科の関係者ではない者に、芸術教科が必要である、役に立つと言ってもらいたいと強く思っている。(第1回)

○美術館に、もっと頻繁に子供に来てもらえるようにするためにはどうしたらよいかと考えている。まずは来てもらえないと、美術館側が活動を頑張ってもどうにもならないので、その点で、学校教育と美術館とでお互いに工夫が必要と感じている。(第2回)

○美術が自分にとって非常に大切であると認識してくれている人は人口の10%もいない。このため美術館は、一人でも多くの人に自分の人生に美術、芸術が必要であるということを、あらゆる方法で色々な方々と連携しながら伝えていく社会教育機関だと考えている。(第2回)

○現代美術というと、ほとんどの人が難しい、よく分からないという先入観を持っている。子供たちにはそういう先入観がないので、まず、先入観なし
に美術館に来て自分たちで考えて鑑賞するということが、子供たちにとっても非常にいい機会になっていると思う。(第2回)

○横浜トリエンナーレでのプログラムで、美術が好きな不登校の高校生が、小学生のためのプログラムを作って参加し、その参加によって、翌年、大学に入学することができたという例がある。これを考えると、美術の世界というのは、子供たちが持っている様々な可能性を引き出していく一つのプラットフォームになり得ると思う。(第2回)

○アメリカ、イギリスの美術館、博物館等は、日本と違うと思うところがある。例えば、アメリカの美術館に行くと、幼稚園児が集団で来て、ピカソや
モネやマネの絵の実物の前で寝そべって絵を書いている。アメリカの美術館は、美術館を宝物館ではなくて一つの学習の場として捉えているのではないか。文化遺産などに小さいころから触れ、それをごく自然に身近に感じている環境という点ではまだまだ欧米にはかなわないところがある。
また、学校教育の中で文化遺産、美術文化の大切さを教えると同時に、家庭や社会全体で芸術文化に対して尊重するような心を育てる必要がある
と感じた。(第2回)

○子供たちが、芸術と社会をつなげて考えることは難しいので、まずは、授業の中での学習が、学校の中の授業外のところとどのようにつながっているかを考えてはどうか。例えば、子供たちが授業で学んだことを学校生活の中で表現し、喜ばれたり言葉をかけられたりする経験ができるよう、学校現場で取り組めるといいと思う。これは、学校自体が、学校で学んでいることをいかに社会とつなげて考えていけるかという意識をもつことでもある。(第6回)

以上

(参考)現行の学習指導要領等における主な記載

1.「A表現」の指導と「B鑑賞」の指導の関連を図ることについて

・表現と鑑賞との関連を十分に図ることも大切である。(小学校学習指導要領音楽〔共通事項〕と表現や鑑賞の各活動との関連の「解説」)
・第2の各学年の内容の「B鑑賞」の指導については,「A表現」との関連を図るようにすること。ただし,指導の効果を高めるため必要がある場合には,児童や学校の実態に応じて,独立して行うようにすること。(小学校学習指導要領図画工作第3の1(3))

・指導計画の作成に当たっては,各活動を有機的かつ効果的に関連させることによって教科及び学年の目標を実現していくように,内容の構成や主題の設定,適切な教材の選択と配列などに配慮することが大切である。(中学校学習指導要領音楽 第3の1(2)の「解説」)

・第2 の各学年の内容の「A表現」及び「B鑑賞」の指導については相互の関連を図るようにすること。(中学校学習指導要領美術第3の1(1))

・内容のA及びBの指導に当たっては,A及びB相互の関連を図るものとする。(高等学校学習指導要領芸術(音楽1,美術1,工芸1,書道1)3(1))

2.協働的な学びについて

・各声部の歌声や全体の響き,伴奏を聴いて,声を合わせて歌うこと。(小学校学習指導要領音楽第2〔第5学年及び第6学年〕A表現の(1)のエ)

※〔第1学年及び第2学年〕,〔第3学年及び第4学年〕の歌唱分野,及び器楽分野においても同様の趣旨の事項あり

・新しい形をつくるとともに,その形から発想したりみんなで話し合って考えたりしながらつくること。(小学校学習指導要領図画工作第3学年及び第4学年A表現(1)イ)

・感じたことを話したり,友人の話を聞いたりするなどして,形や色,表し方の面白さ,材料の感じなどに気付くこと。(小学校学習指導要領図画工作 第1学年及び第2学年B鑑賞(1)イ)

・感じたことや思ったことを話したり,友人と話し合ったりするなどして,いろいろな表し方や材料による感じの違いなどが分かること。(小学校学習指導要領図画工作第3学年及び第4学年B鑑賞(1)イ)

・感じたことや思ったことを話したり,友人と話し合ったりするなどして,表し方の変化,表現の意図や特徴などをとらえること。(小学校学習指導要領図画工作第5学年及び第6学年B鑑賞(1)イ)

・第2の各学年の内容の「A表現」の指導については,適宜共同してつくりだす活動を取り上げるようにすること。(小学校学習指導要領図画工作科 第3の1(4))

・声部の役割と全体の響きとのかかわりを理解して,表現を工夫しながら合わせて歌うこと。(中学校学習指導要領音楽 第2〔第2学年及び第3学年〕A表現の(1)ウ)

※〔第1学年〕の歌唱分野,及び器楽分野においても同様の趣旨の事項あり

・生徒が自己のイメージや思いを伝え合ったり,他者の意図に共感したりできるようにするなどコミュニケーションを図る指導を工夫すること。(中学校学習指導要領音楽第3の2(7)ア)

・互いの個性を生かし合い協力して創造する喜びを味わわせるため,適切な機会を選び共同で行う創造活動を経験させること。また,各表現の完成段階で作品を発表し合い,互いの表現のよさや個性などを認め尊重し合う活動をするようにすること。(中学校学習指導要領美術第3の2(4))

・作品などに対する思いや考えを説明し合うなどして,対象の見方や感じ方を広げること。(中学校学習指導要領美術第2〔第1学年〕B鑑賞(1)ア)

・作品などに対する自分の価値意識をもって批評し合うなどして,美意識を高め幅広く味わうこと。(中学校学習指導要領美術第2〔第2学年及び第3学年〕B鑑賞(1)ア)

・楽曲や演奏について根拠をもって批評する活動などを取り入れるようにする。(高等学校学習指導要領芸術(音楽1~音楽3)内容の取扱い)

・音楽のよさや美しさなどについて,言葉で表現し他者に伝えることが芸術科音楽における批評である。(高等学校学習指導要領芸術(音楽1)3(6)の「解説」)

・作品について互いに批評し合う活動などを取り入れる(高等学校学習指導要領芸術(美術1~3,工芸1~3,書道1~3内容の取り扱い)

3.ICTの活用について

・コンピュータ,カメラ,コピー機などの機器を利用することについては,造形活動や鑑賞活動で用いる用具の中の一つとして扱うとともに,必要性を十分に検討して利用することが大切である。(小学校学習指導要領図画工作第3の2(3)ウの「解説」)

・指導に当たっては,鑑賞する対象や鑑賞の方法を幅広くとらえ,児童がよさや美しさ,表現の意図などを自ら感じ取り味わうようにすることが大切である。そのために,児童に対象を選ばせたり,写真やアニメーションなどの児童が興味や関心をもてる映像メディアなどを用いたりするなど,様々な方法が考えられる。(小学校学習指導要領図画工作第5学年及び第6学年B鑑賞(1)アの「解説」)

・各学年の「A表現」及び「B鑑賞」の指導に当たっては,次のとおり取り扱うこと。

イ 適宜,自然音や環境音などについても取り扱い,音環境への関心を高めたり,音や音楽が生活に果たす役割を考えさせたりするなど,生徒が音や音楽と生活や社会とのかかわりを実感できるような指導を工夫すること。また,コンピュータや教育機器の活用も工夫すること。

(中学校学習指導要領音楽第3の2(7)イ)

・各学年の「A表現」の指導に当たっては,生徒の学習経験や能力,発達特性等の実態を踏まえ,生徒が自分の表現意図に合う表現形式や技法,材料などを選択し創意工夫して表現できるように,次の事項に配慮すること。

イ美術の表現の可能性を広げるために,写真・ビデオ・コンピュータ等の映像メディアの積極的な活用を図るようにすること。

(中学校学習指導要領美術第3の2(1)イ)

・映像メディア表現の特質や表現の効果などを感じ取り,理解すること。(高等学校学習指導要領芸術(美術1)3 B鑑賞イ)

・映像メディア表現

ア感じ取ったことや考えたこと,目的や機能などを基に,映像メディアの特性を生かして主題を生成すること。

イ色光,視点,動きなどの映像表現の視覚的要素を工夫して表現の構想を練ること。

ウ意図に応じて映像メディア機器等の用具の特性を生かすこと。

エ表現方法や編集を工夫して表現すること。

(高等学校学習指導要領芸術(美術1)2(3)

・各科目の特質を踏まえ,学校の実態に応じて学校図書館を活用するとともに,コンピュータや情報通信ネットワークなどを指導に生かすこと。(高等学校学習指導要領芸術第3款2(1))

4.学校における芸術教育の充実方策について

・各学年の「B鑑賞」の指導に当たっては,児童や学校の実態に応じて,地域の美術館などを利用したり,連携を図ったりすること。(小学校学習指導要領図画工作第3の2(5))

・各学年の「B鑑賞」の題材については,日本及び諸外国の児童生徒の作品,アジアの文化遺産についても取り上げるとともに,美術館・博物館等の施設や文化財などを積極的に活用するようにすること。(中学校学習指導要領美術第3の2(2))

・各科目の特質を踏まえ,地域や学校の実態に応じて,文化施設,社会教育施設,地域の文化財等の活用を図ったり,地域の人材の協力を求めたりすること。(高等学校学習指導要領芸術第3款2(2))


※文中の科目名に付す1~3は、ローマ数字表記のもの。

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