(資料5)「知識」についての考え方のイメージ(たたき台)

※審議のまとめに向けては、「社会に開かれた教育課程」の観点から幅広い理解を得られるよう、用語の整理を行っていく予定。

(芸術分野における「知識」とは何かを、なぜ明確化する必要があるのか)

○「論点整理」にあるように、次期改訂の検討の方向性を底支えしているのは、「学ぶとはどのようなことか」「知識とは何か」に関する知見であり、芸術やスポーツ等の分野における学びについてもあてはまる、とされている。

○また、「主体的な学びの過程」を実現する中で、子供自身が、獲得された知識・技能や育成された資質・能力を自覚したり、共有したりすることも重要、とされている。

(次期改訂における「知識」とは何か)

○「知識」については、事実的な知識のみならず、学習過程において試行錯誤をすることなどを通じて、新しい知識が既得の知識と関係づけられて構造化されたり、知識と経験が結びつくことで身体化されたりして、様々な場面で活用できるものとして獲得される、いわゆる概念的な知識を含むものである。

○「学ぶとはどのようなことか」「知識とは何か」を重視する次期改訂においては、学びのプロセスを通じて、発達の段階を踏まえながら、このような構造化された概念的知識の獲得に向かうことを重視するものである。

○なお、「技能」についても、一定の手順に沿った技能のみならず、変化する状況に応じて主体的に活用できる技能の習熟・熟達に向かうことが重要である。

(「知識」を「思考・判断・表現」と区分して明確化する理由)

○いずれの教科においても、資質・能力の三つの柱はばらばらに育まれるものではなく、学びのプロセスの中で相互に関係し合いながら育成されるものである。特に、「概念的な知識」は、「思考・判断・表現」を通じて獲得されたり、その過程で活用されたりするものであり、「思考・判断・表現」との結びつきは事実的知識よりも強い。

○一方で、資質・能力の三つの柱や評価の観点をそれぞれ明確にすることの意義は、指導の中でそれぞれの要素が確実に育まれたり、子供自身がその獲得を自覚できるようにしたりすることを保証していくことにある。

○次期改訂の理念である「社会に開かれた教育課程」の実現のためには、各教科の学習を通じて獲得される知識とは何かが明確化され、それを自覚的に獲得していけるようにすることにより、子供たちが、そうした知識が社会の様々な場面で生きることに気付いたり、教科の活動以外の様々な生活の中でも、そうした知識を積極的に活用していこうとし、知識が生きて働くことの喜びを感じたりするようになることが重要である。

(参考:スポーツの分野における「知識」とは何か、どのように評価するのか(検討中))

○体育における見方・考え方として、スポーツを「する、見る、支える」のみならず、「する、見る、支える、知る」などのスポーツとの多様な関わり方に
ついて考察すること、を明確化する。

○「知識・技能」については、豊かなスポーツライフを実現する観点から、発達の段階に即して、運動やスポーツの特性に応じた行い方や一般原則などの知識及びスポーツに関する科学的知識や文化的意義を理解するとともに、各種の運動やスポーツが有する特性や魅力に応じた動きや技能を段階的に習得できるようにすることが重要である。

○評価にあたっては、「各種の運動やスポーツの行い方を知るとともに、その運動やスポーツをできるようにする」と捉える。その際、それぞれの習得に順序性を決めるものではなく、「知ってからできる」「できた上で知る」等、運動やスポーツの特性及び児童生徒の実態等により一様ではないことに留意する。「知っていること」と「できること」のどちらも重要であることを示すものである。また、豊かなスポーツライフを実現する観点から、スポーツに関する科学的知識や文化的意義及び一般原則等の理解について評価することも必要である。

(芸術分野における「知識」とは何か)

○芸術分野における「知識」は、一人一人が感性を働かせて様々なことを感じ取りながら考え、自分なりに理解し、表現したり鑑賞したりする喜びにつながっていくものであることが重要である。身体を動かす活動なども含むような学習過程を通じて、知識が一人一人の個別の感じ方や考え方等に応じて構造化・身体化されることや、さらに新たな学習過程を経験することを通じて再構築され、知識が更新されていくことが重要である。

(なお、いわゆる「概念的な知識」の獲得が一般概念の獲得に留まるものではないことに留意する必要がある。)

○具体的に「知識」の内容として重要なことは以下のようなことであり、発達の段階に即して整理していく必要があると考えられる。

・〔共通事項〕を表現や鑑賞の基盤として、諸要素(音楽を形づくっている要素、形や色、書を構成する要素など)の働きによって、どのような雰囲気
を生み出したり感情をもたらしたりするのかの実感を伴いながら、表現や鑑賞などに生かすことができる形で理解すること

・芸術に関する歴史や文化的意義を、表現や鑑賞などに生かすことができる形で理解すること

○これらの「知識」の内容は、「思考・判断・表現」を経て育まれたり、「思考・判断・表現」において活用されたりすることが重要であるが、「知識」においてはその内容の理解の質に主眼があり、「思考・判断・表現」においては、それらを活用した表現意図や構想、鑑賞の質に主眼がある。

○なお、小学校段階においては、こうした働きや意義の理解まで至ることは難しいと考えられることから、「気付く」「大切さがわかる」といった発達の
段階に応じた表現を工夫するなどの必要があると考えられる。

(評価の観点について)

○他教科との関連も考慮しながら、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点で整理することについて検討してはどうか。
・「評価の観点」の表記については、芸術系教科を通じて育成する資質・能力を踏まえて今後検討する。
※資質・能力の三つの柱を明確にしつつ、「目標に準拠した評価」を実現すること

※観点の数を三つに合わせていくこと

(評価の観点を踏まえた、指導上の改善点や留意事項)

○知識の教え込みにならないようにする、ということはこれまでと同じ

○「知識」を明確化することの意義や、表現領域と鑑賞領域の双方に関わるものであるということをどのように伝えるか

○全ての知識をペーパーテストで測るような偏りがないようにするため、どのような見取り方の工夫が考えられるか

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