教育課程部会 芸術ワーキンググループ(第7回) 議事録

1.日時

平成28年4月26日(火曜日) 13時00分~15時30分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 芸術教育の改善充実について
  2. その他

4.議事録

【福本主査】
 それでは定刻となりましたので、ただいまより中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会芸術ワーキンググループの第7回を開催させていただきます。
 本日は、お忙しい中、御参集いただきまして、まことにありがとうございます。前回は2月23日に5回、6回を開催いたしました。少し時間がたっておりますので、どういうことを議論していたか、リセットされておるかもしれませんが、きょう熱い議論を期待しております。よろしくお願いいたします。
 会議に先立ちまして、4月14日より熊本県を中心として九州地方の一連の地震でとうとい命を落とされた方々、50名近くおられますけれども、御冥福をお祈り申し上げるとともに、被災地の皆様に心からお見舞いを申し上げたいと思います。
 現在、被災地において昼夜分かたず救命救助活動を行っておられる関係機関の方々をはじめまして、国を挙げて多くの方々がそれぞれの持ち場で支援に当たっておられます。被災者の方々の一刻も早い救援を心からお祈り申し上げます。
 それでは、事務局から配付資料について御確認いただきます。

【小林教育課程課課長補佐】
 それでは、配付資料の確認をさせていただきます。本日は、議事次第に記載しておりますとおり、資料1~8、そのほか参考資料1~3、その他、机上に参考資料を配付させていただいております。不足等ございましたら事務局にお申し出ください。
 なお、机上にタブレット端末を置いておりますが、その中には、本ワーキンググループの審議に当たり参考となる、関係する審議会の答申や関連資料等をデータで入れております。詳細は次第の裏面の目次をごらんください。
 また、芸術ワーキング第5回、6回の主な意見等につきましては、昨日メールで送付しておりますので、期限までに御確認ください。
 また、本日、学習指導要領見直しに関しまして、各団体から届けられました要望の一覧を机上の紙ファイルにて配付しております。昨年6月に教育課程企画特別部会にお示ししたものと、それ以降届けられたものを一体にして1つのファイルにしております。
 以上でございます。

【福本主査】
 ありがとうございました。
 それでは、ここから議事に入っていきたいと思いますけれども、本ワーキングの審議等について、初等中等教育分科会教育課程部会運営規則第3条に基づきまして、原則公開により議事を進めさせていただくとともに、第6条に基づきまして議事録を作成し、原則公開するものとして取り扱うこととさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 なお、本日は、報道関係者より会議の撮影及び録音の申し出があり、これを許可しておりますので、御承知おきください。
 本日の第7回アクティブ・ラーニングの視点と資質・能力の育成との関係、学習評価の改善に関する今後の検討の方向性について等に関して意見交換をお願いしたいと思います。
 まず、事務局の方から関係資料、特に資料1~3について御説明をお願いいたします。

【大杉教育課程企画室長】
 失礼いたします。それでは、私の方からまず資料の1に基づいて御説明を申し上げます。資料の1、アクティブ・ラーニングの視点と資質・能力の育成との関係についてということでございますけれども、特に今回、見方や考え方ということを各教科共通に整理していただくという方向性でございますので、それについて御説明を申し上げたいと思います。
 資料の1、表紙をおめくりいただきますと、1ページでございます。アクティブ・ラーニングの視点と資質・能力の育成との関係について、今回、特に「深い学び」を実現する観点からということでございます。
 現在、各教科で資質・能力の3つの柱の整理ということをしていただいております。これが全ての教科共通の構造化の視点でございまして、後ほど御説明申し上げるような教科目標の構造、あるいは指導内容の構造ということにも、これが反映されてくるわけですけれども、こうした資質・能力の3つの柱を育むためのアクティブ・ラーニングの視点、これについて補足的な説明資料を総則・評価特別部会で御議論をいただいたところでございます。それが本資料になるところでございます。
 まず、アクティブ・ラーニングの視点と資質・能力の育成についてということで、ほぼ論点整理のおさらいでございます。8月の論点整理におきましては、社会に開かれた教育課程の理念の下、学びの量とともに、質や深まりが重要である。そのために「深い学び」「対話的な学び」「主体的な学び」の3つの視点に立って学び全体を改善していくことが重要であると提言されたところでございます。
 こうした視点に基づく授業改善ということが教科の本質的な深い理解、それから資質・能力の獲得ということにつながっていくということ、また、学びへの動機付けにもつながっていくということでございます。既に論点整理にもございますように、アクティブ・ラーニングの視点ということで、型に着目した理解ではないということ。特定の学習指導の型や方法の在り方ではなくて、ふだんの授業の改善の視点であるということの再度の確認でございます。
 一方で、1ページ目一番下にございますように、現場からは理念だけではなく具体例が欲しいという声もあるところでございます。今後、教育委員会、国等で実践例ということも考えていく必要があるかとは思いますけれども、その際には様々な指導の型や方法のカタログのような種類紹介ということではなく、アクティブ・ラーニングの視点に基づきどのように授業が改善され、子供たちのどのような変容につながるのかという授業改善に関する実践例の蓄積と普及がなされるべきということでございます。
 2ページ目にございますように、様々な型や方法ということは、そうした授業改善の一つの手段として不断に見直されるべきではないかということでございます。
 そして、「深い学び」の視点についてでございます。アクティブ・ラーニング、3つの視点がございますけれども、比較的「対話的な学び」あるいは「主体的な学び」ということは現場にとっても理解しやすいという声の一方で、「深い学び」ということの具体的なイメージが湧きにくいという声もあるところでございます。
 これは、現在、各教科の特質に応じて深い学びとは何かを御議論いただいている最中でございますので、まだなかなか具体的なイメージが示しにくいということも、それについてはあると考えられます。
 総則・評価特別部会におきましては、共通的な視点としまして、3つ目の丸のように整理をいただいております。現在、複数の教科等別ワーキングにおいて、資質・能力の育成や学習の深まりの鍵となるものとして、各教科等の特質に応じ育まれる見方や考え方が重要ではないかとの検討がされているところでございます。様々な事象等をどのような視点で捉え、そしてどのように思考していくかという、そういった思考の枠組みということでございますけれども、こうした見方や考え方を学習過程の中で働かせながら、思考・判断・表現し、見方や考え方自体もさらに成長させながら資質・能力を獲得していくということが深い学びではないか。そうした学びと資質・能力の関係を示していく必要があるのではないかということでございます。
 アクティブ・ラーニングの視点、深さを欠くことによる失敗事例ということもあるところでございまして、先生方に、その深い学びを通じて、子供たちの教科の資質・能力の獲得ということに責任を持っていただきながら、子供たちに関わっていくということが求められるのではないかということでございます。
 見方や考え方、既に美術においても「独創的・総合的な見方や考え方」というような言葉で使われておりまして、必ずしも新しいものではないわけでございますけれども、今回のこのような文脈の中での見方や考え方であるということ。また、その具体的な内容についての説明ということが、今後必要になってこようかと思います。
 3ページ目にございますように、見方や考え方、様々な物事を捉える教科ならではの視点や思考の枠組みということであろうかと考えられますけれども、そうした見方や考え方が3つの資質・能力の柱の育成に関わっているということでございます。
 知識・技能を構造化して身に付けていくために必要であるということ。今回、知識につきましても、構造化されて様々な場面で使える知識ということにしていく必要があるということでございますけれども、こうした知識を獲得するためには見方や考え方を働かせながら学習していくというプロセスが大変重要であるということ。そして、見方や考え方の成長により、思考力・判断力・表現力も豊かなものとなっていくということ。
 また、学びに向かう力・人間性ということに関しましても、どのような見方や考え方を通じて社会や世界に関わっていくのかということが大きく作用しているのではないかということでございます。
 こうした見方や考え方を通じた深い学びの実現、そして、子供たち一人一人の見方や考え方ということを捉えていくことも重要ではないかということでございます。
 また、3ページ目下にございますように、各教科の見方や考え方は相互に影響し合っているということ。また、総合的な学習の時間というのは、各教科の見方や考え方を総合的に活用しながら、様々な事象を捉えたり、多面的、多角的に考えたりということとして重要になってくるのではないかということでございます。
 こうした横断的な整理を踏まえながら、芸術系教科・科目における見方や考え方、あるいは資質・能力の柱に基づく教育のイメージということを御議論いただければと思います。
 続きまして、小林補佐からお願いします。

【小林教育課程課課長補佐】
 続きまして、資料2、3を説明いたします。あと、参考資料1も活用いたしますので、よろしくお願いいたします。
 まず、今の見方・考え方の話から、実際に芸術系科目におきまして、深い学びというのを、見方・考え方というキーワードを使ってどのように説明できるかということで、このような表にまとめさせていただいたところでございます。各教科・科目等ごとに、学校種ごとに並べておりまして、実際の中身につきましては、現行であります共通事項、小学校の音楽ですと、音楽を形づくっている要素とその働きの視点で音楽を捉えといった共通事項等も踏まえまして、また生活などとの関わりといったことで、社会につながる視点等を取り入れる形で記載ということで、実際にこのような考え方での整理をした表が資料2でございます。
 また、これらがどのようになっていくかということで、資料3‐1、2、3とありますが、ホチキスでとじておりますが、資料3についてでございます。主に見方・考え方については、これ、学校種ごとにそれぞれ出口のイメージとしての資料でございまして、3‐1については音楽科、芸術科(音楽)における教育のイメージということで、学校種ごとにそれぞれ二重丸、マル1、マル2、マル3というものが入っているというものでございます。
 見方・考え方等については、二重丸のところに入ってくるのではないかということと、あとマル1、マル2、マル3という部分でございますが、今まで検討をいただいてきた参考資料1‐1に資質・能力の三本柱がございます。個別の知識や技能、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性等ということで、特にマル1の部分は個別の知識や技能、マル2については思考力・判断力・表現力等、マル3については学びに向かう力・人間性等という部分で整理しておる表でございます。これが出口のイメージという表になります。
 今回、特に見方・考え方、資料2につきまして芸術系教科で整理いたしましたので、ちょっと細かい文言等については、また今後直していく形にはなりますが、本日は特に資料2につきましての御意見というものを頂ければというふうに思っております。
 以上、よろしくお願いいたします。

【福本主査】
 ありがとうございました。
 それでは、これから意見交換に移っていきますけれども、従前でもう御存じのとおり、御意見のある場合には名札の方を立てていただきまして、私の方で順次指名させていただきたいと思います。発言が終わりましたら、元に戻していただくということで、よろしくお願いいたします。
 今、説明がございましたように、資料1がアクティブ・ラーニングの視点と資質・能力の育成との関係について、それから資料2が芸術系教科・科目における見方・考え方、それから資料3が芸術科の教育のイメージということです。
 これまで、一応、芸術教科の3つの柱で構造化する中で、この3つの柱の関係性について主に議論をしていたと思います。そのことと併せて、資質・能力の質保証をアクティブ・ラーニングということを通じて授業改善をしていく。それを今度は、またさらに深い学びにどういうふうにつなげていくのかということが求められていると思います。
 こういうことで、まず資料1の方に関連しまして、このアクティブ・ラーニングの視点で、どういうふうに芸術教育の中でアクティブ・ラーニングと呼ばれるような方法を展開すればいいのか。また、それを深い学びという視点に基づいて改善を行っていくのかということで、御意見等をお願いできればと思います。自由に御発言願えばいいかと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 資料1の4ページの後に、資料1‐2のところにアクティブ・ラーニングの視点と資質・能力に関する参考資料が付いております。カラーページです。その3ページに、このアクティブ・ラーニングの3つの視点ということが明記されておりますけれども、1というところが習得・活用・探求という学習プロセスの中での問題発見・解決を念頭に置いて深い学びの過程が実現できているかどうか。2のところが対話的な学びの過程が実現できているかどうか。3が主体的な学びの過程が実現できているかどうかということで、協働的な学び、それから主体的な学び、それから深い学び、この3つの視点がございます。こういったこととして、特に深い学びというものをどういうふうに実現していくのかというところを今回、このアクティブ・ラーニングの検討を通じて考えていくということになっておりますので、よろしくお願いいたします。
 すいません、阿部先生、よろしくお願いいたします。

【阿部委員】
 それでは、話題提供かどうかちょっと分かりませんけど、図工で例えば低学年が色水遊びをするときに、子供たちはきれいな色ときれいな色を合わせていくときれいな色になるということで、初めは思いながら色水を混ぜていって色がきれいになった。そうすると、もっと混ぜて、また新しい色を混ぜたらもっと美しくなる、きれいになっていくと思っているんだけど、どんどん色を混ぜていけば混ぜていくほど、今度は俗に言う濁色になる、汚い色になる。でも、子供たちは、そこにコーヒー色とか、いろいろな名前を付けて喜んだりする。その中で、きれいなものときれいなものを合わせればきれいになるというだけじゃなくて、今度はだんだんと色がくすんでいく、濁っていくということを学んでいく。
 その遊びを通して低学年で学んでいくと、今度は逆に3、4年生でパレットの中で色を混ぜていくとか、そういったことを試しながら、試す活動があることによって、基本的に、ここで言う深いということになるのか。
 子供にとって学ぶ過程を通して、自分事として捉えていって、それが次への動き出しのための知識や技能になっていくというのは、往々にして、そういう試す活動がある図工の活動なんかには特に多く見られるなと思っていますので、単なる知識を組み合わせていって新たなものができるというよりは、活動というか、体験的な身体化されたものがとても大事になってくるんじゃないかなというように思います。

【福本主査】
 それに関連してでも結構です。
 副島先生、よろしくお願いします。

【副島委員】
 この見方・考え方を見せてもらっての感想ですが、芸術科目における見方・考え方の特徴というのは、やっぱり感性と知性。例えば、音楽で考えると、知覚・感受をするということと、それを基に思考するということの両方がきちんと明記されているのが、芸術科目における見方・考え方であると感じました。
 その中でキーワードは、恐らく「関連性」ということですね。全ての見方・考え方の案の中で、「関わり」とか、「関係」という言葉がたくさん出てきますが、そのあたりをまず、自分は読み解きました。音楽で言う知覚・感受というのは、当然、体験活動、例えば、歌うとか、演奏するとか、作るといったような表す活動、又は聴く活動を通しての知覚・感受、それを基にした思考。それらの知覚・感受や思考をつなぐものとして、例えば言語活動などが関わっているということを考えました。、自分は、これを読ませていただいて、大変分かりやすくまとまっているなという感じがしました。
 先ほどの知識ですが、例えば音楽で知覚・感受したことを基に思考するときに、いろいろな事実的な知識が子供たちにとって思考するときの支えとなって、その思考の結果として構造化された概念的な知識が子供たちの中に定着していくということで、思考の中に知識というのも関わっていくのかなと思ったところでした。
 音楽では、もう一つ「多様性」というのが、この後にも非常にたくさん強調されて出てくるんですけども、例えば、関連性を非常に明確に書いてある見方・考え方の中で、例えば小学校の音楽科でいくと、2行目の音楽的な特徴の前に、例えば、「様々な音楽の」など、「多様性」をイメージできるような言葉を入れれば、「多様性」と「関連性」ということで、音楽科の特質に応じた見方・考え方に近付くのではないかという感想を持ちました。
 以上です。

【福本主査】
 今、資料2の見方・考え方のところに入っていますけども、副島先生、もしこのアクティブ・ラーニングの方でも深い学びを実現していくための何か手掛かりになるようなお考えとかございましたら、お願いしたいと思うんですが。

【副島委員】
 アクティブ・ラーニングの深い学びに関わっていくと、この資料に出てきていないことで、「課題の発見」、「課題の解決」という言葉が使われています。「課題の解決」ということについては、たくさんの教科で取り組まれているのですが、その課題が教師から与えられた課題なのか、子供にとって自ら発見した課題なのかということは大きな違いがあると思います。この課題の発見というところを、我々も非常に大切にしていかなくてはいけないかなと思っているところです。
 教師が知っていることを子供たちに教える、若しくは知っている範疇の中で子供たちに考えさせるということが往々にしてありますけども、もしかしたら教師もよく分からないことを、子供と一緒に探求していくというようなことも大切なのかなということで、「課題の発見」というのが自分の中では非常にキーワードではないかなと思っているところです。
 以上です。

【福本主査】
 ありがとうございました。そのほか、いかがでしょうか。
 では、長野先生、お願いします。

【長野委員】
 きょうの資料1の2ページ目の上に、「学習や指導の型や方法は、そうした授業改善の一つの手段として、その効果が検証され不断に見直されていくべきものと考える」ということなんですけれども、アクティブ・ラーニングということと授業改善ということ、これ、考え方、方向はいいと思うんですけども、やはり今やっていただいている、あるいは今までの授業改善ということの延長に、果たしてアクティブ・ラーニングがあるのかどうかという感じが私はちょっとします。もう授業改革じゃないかなと。改善にとどまらないというイメージが私には、先ほど大杉さんの説明、あるいは今までの説明を聞いていて思いました。
 ですから、余り理念が飛び上がってしまって現場に対してというのが戸惑ってもあれなんですけども、考え方とすれば、授業改善というよりは授業改革みたいな取組でいかないと、こういうものは実現できないかなということが1点です。
 もう一つ、芸術教科というか、芸術で音楽、美術、工芸、書道といったときに、高等学校の問題かもしれませんけども、美術でやっていることと、もしかすると書道でやっていることが結構高い学習の高まりになっていったときに共通した物の見方とか、考え方ができるということを現場にいたときに感じたことがあります。ですからというわけではないんですけど、ちょっと言葉尻を捉えて申し訳ないんですけど、深い学びというよりは、スパイラルで上がっていくということを考えたときに、深い学びより高い学びというか、上に上昇していって相互に触れ合ってくる、美術も工芸も書道も音楽もという。
 それは、深い学びという行き着く先は、教科の枠を超えてしまう、あるいは小学校も中学校も、そういうことも視野に入れていったときに、深い学びという掘り下げるというよりは高まり、言葉尻で申し訳ないんですけども、そういうイメージの方が、最後というか、それは教科・科目の枠を飛び越えて、芸術で学んだことということが感性も含めて構造的に高校生に定着していく。
 ですから、深い学びがいけないと言っているわけじゃないんですけど、先ほどの大杉さんの御説明では高い学びというふうに、学びの高まりという感じに捉えております。
 以上です。

【福本主査】
 深い学びというのが学習の進化というイメージよりも、何か昇華していくような、そういうイメージで捉えられているような感じなんですが、この資料の説明にもありますように、対話的な学び、あるいは主体的な学びというのが、どちらかというと教科に通底するような概念であるのに対して、この深い学びというのが教科特性を反映させて、その内容を深く理解していくということであったり、その特徴をしっかり理解していくというふうなことになると思うんですけど、中下先生、お願いします。

【中下委員】
 学校の中で研究授業というのをよくします。各学年が、こんなふうに子供たちに力を付けたいということで、それぞれの研究教科で授業をしたりするんですけれども、よく授業の研究の協議の中で、今日は子供たち、たくさん活動していたよねとか、グループでいっぱい話し合っていたよねとか、また、こんな資料に興味を持って生き生き活動していたねというような話題が出るんですね。
 その中で、先生たちはもう一歩踏み込んで、活動はたくさんしていた、いっぱい話はしていた、けれども、目標に挙げていることが本当に子供たち一人一人に身に付いているのかということを、やはりそこが授業の中では一番大事ではないかということで協議の中心になるわけです。
 ですので、ここの資料の中にも指摘されているように、対話的な学び、主体的な学びというあたりについては、比較的子供たちの姿で評価としても捉えやすい、あるいは見取る場面がはっきりしているというような状況があったりしますけれども、深い学びについては評価の仕方も多様ですし、1時間の中で学びが子供たちに確実に保証されていなければならない大事な部分であるかと思います。
 そういった意味で、この深い学びが各教科で見える形で、こうして示されていこうとしているということ、そして、それがきちんとふだんの授業の中の目標であり、教科としての目標につながっているんだというあたりを先生たちが意識していくというのは、今の教育の授業での営みと実は密接につながっているところで、大変大切ではないかと考えます。この深い学びについて、教科で掘り下げていくことが、教科の目標をきちんと見据えること、指導の在り方を考えることにつながるのではないかというふうに思いました。
 以上です。

【福本主査】
 何か具体的な、見える化というふうな言葉だったと思うんですけど、評価をするときにどういった姿なり、あるいは活動を捉えて、その深い学びというのを見取っていくのかというのを、何かヒントになるようなことがありましたら。

【中下委員】
 ここの資料の中にも評価の中でありましたように、活動を評価する際、子供たちが例えば絵に表すとします。描き始めのとき,白い画用紙の中でパスを持ってぐいぐい描き出している子供たちが、興味、関心を持ってねらいに向かって活動しているかといったら、それだけではないんですよね。描き出しのところでじっと考えている、いろんなものを見ている、友達の活動も見ている。そして、自分の中でめぐらしていって、描き出しは遅いけれども、自分で確かめながら満足しながら色を選んで描いている。どこに何を描こうか考えて、形にしていっている。
 そういったプロセスを形成的に評価して、ある時間の中で何度も子供の活動の流れというか変化、そういったものを見取っていくのが大切で、例えば絵を描いたときに最後に、「もうできた。これでいい、描くことない」ではなくて、「僕、ここにこんなことを描いて、こんなことを思い出して描いたんだよ」というふうに、子供が自分の思いを持って活動したことを言葉で発せられる、伝えられるというようなことが一例として、あるかなというふうに思います。

【福本主査】
 ありがとうございました。
 関連してほかに。宮﨑先生、お願いいたします。

【宮﨑委員】
 少し関連した考えになると思うんですが、音楽で言うと、極端な話を言うと、音楽は楽しくていいね、楽しく活動していたね、楽しく歌っていたねと、そういう活動があるんですが、では、そこに本当に学びがあったかというと、あったとは思うんですが、そのことを教師がどれだけ意識していたのか。また、学びがあったことを教師が意識して子供たちにしっかりと評価し、それを意識付けていたかという点では、非常に課題があったと思うんですね。
 この資料の2ページ目の「深い学び」の視点の最後の丸に、教師は責任を持ちというところが非常に重い言葉だなと思うんですが、やはり活動と学びが一体化していて、最後の評価に関連すると思うんですが、学習の終末の場面では、きょうはこういうことができたね、できていなかった、こういうことができるようになったねというふうな、そういう評価をしっかりと位置付けていく、そういう学習をしていかなくてはいけないんじゃないかなというふうに思いました。
 音楽で見方・考え方という余り使わない言葉かもしれませんが、感じ方とか、そういう言葉になるかと思うんですが、そういうことを今後しっかり意識して授業をしていく必要があるなというふうに感じます。
 以上です。

【福本主査】
 ありがとうございます。
 ほかの方、アクティブ・ラーニングの中の深い学びというところ。では、横田先生、お願いします。

【横田委員】
 すいません、図画工作、美術というようなところでの深い学び、深化というところを考えるときに、確かに小学校から中学校、やはり子供たちがどんどん発達段階を積んだ、変わってくる中で、図画工作、美術で学びというのも確かにどんどん深化していくのはよく分かるんですけれども、私、高等学校の美術なり、工芸なり、そういうところで研究していく中で、中と高の違いみたいなところで、先ほど長野先生からもございましたけれども、中学校から高等学校へのさらに深化していく、深まりというのが、もちろん学びというのは深化していけるんだろうけれども、ただ、現場の先生方の深まりというのは、ともすれば学びの深まりではなくて、芸術の中での美術なのに、専門教育のようなことをするのが深い学びだというような取り違いを結構されている方もたくさんございます。
 そんな中で、今、見方・考え方の案のところを見せていただきますと、音楽も美術も工芸も書道も、高等学校のところは、芸術としての音楽、芸術としての美術、芸術としての工芸、芸術としての書道というふうに挙げてありますけれども、長野先生がおっしゃるように、確かに高まりであったりとか、好事家なのかどうなのか分からないですけれども、本来、高等学校の深まりというのは、そこにつながるようなものでないといけないなと。
 見方・考え方のところは、こういうふうになっていくんだろうけれども、それが本当に現場の先生方に伝わっていくような工夫をしないと、学びの深まりなんだからという取り違いが起こらないかなと、そういう懸念をちょっと感じております。

【福本主査】
 なるほど。何か同様の視点で、関連して御質問等ありましたら。どうぞ。

【伊野主査代理】
 私も御指摘のとおりじゃないかなと思います。資料2に関しては、今の見方・考え方の基本的に非常に重要なことを指摘されている内容だと思うんですけれども、これがどのように成長し、あるいは更新していくかというあたりのものが、仮にここに書くかどうかは別にして、それが成長、更新していくんだということが先生方の中に共通理解していかない限りは、短時間、あるいは一つの題材の中で常に終わりを告げて、また次の、あっ、この見方でいけばいいのかなというような授業にどうしてもなる傾向になるんじゃないかなと、その点、すごく重要に私は思いました。

【福本主査】
 それから、副島先生が先ほど触れていただいていましたけども、見方・考え方というところ、資料2のところにも包括的にまとめてありますけれども、こちらの方で何か御意見。こういう見方・考え方の提示の仕方でいいのかどうかであるとか、いかがでしょうか。
 では、中村先生、お願いいたします。

【副島委員】
 それでは、ICT機器の活用について教育センターでいろいろな情報収集をしている中で、音楽科に関わって効果を上げていることについて、幾らか御紹介したいと思います。
 主に電子黒板とデジタル教材に関わることと思いますけれども、、音楽の学習における視覚と聴覚ということに関わって、聴いたことを目で確かめる、テキストとしての楽譜を提示できるといったよさがあります。子供たちの楽譜離れが進んでいる中で、現状では、電子黒板等を使って子供たちが聴いて感じたことを、実際に楽譜を通して視覚的に確認ができるとか、いろいろな音楽の構成に関わることを図式化して見ることができるなどのよさを生かした指導が充実してきているようです。特に〔共通事項〕で言うとテクスチャの学習や、構成に関わる学習において、視覚と聴覚を関連付けた指導を行う際に、ICT機器の活用が効果的に進んでいるようです。
 また、子供たちの音楽表現を高めていく中で、タイムリーなフィードバックというのは非常に大事です。子供たちが演奏した後に、すぐ、それを実際に聴いて確認をするといったときに、非常に音質のいい録音ができ、その場ですぐ再生できるようなシステムが整っていて、そういったことは子供たちにとっても恵まれた環境になっていると思います。子供たち自身が自らの演奏を聴いて、それについてディスカッションをするような学習がスムーズにできているところです。
 ICTそのものは、基本的にツールですので、必要な場面で使うということが大切にされなくてはいけないと思いますけども、現状では、電子黒板等が導入されれば、それをどのぐらい使ったとかという調査等もあって、電子黒板を使うことが目的化されているようなところが見られるというのは課題かなと思います。
 それから、ICT機器の活用に関わっては、電子黒板だけではなくて、タブレットPCなどの普及が非常に進んでおり、教師がどこで、どのように使うかということだけではなくて、子供たちにどのように使わせるのかということを考えることが、大切になってきています。
 佐賀県では、高校生は全てタブレットPCを持って授業を受けている状態になっています。子供たち自身がタブレットを使って、学習をするといった状況が生まれていますので、教師がどのように使うかだけではなくて、子供たちにどのように使わせるのかということも含めてのICT機器の活用を考える時期に差し掛かっているのかなと思っているところです。
 以上です。

【福本主査】
 ありがとうございました。
 では、逢坂先生、お願いします。

【逢坂委員】
 私自身は、社会教育施設の美術館ですので、学校教育とは若干違うと思います。アクティブ・ラーニングのことをまずお話ししますと、対話的、主体的、そして深い学びというのが段階でステップアップし、絡み合っているという御意見には私も賛成です。
 ただ、皆さんの小学校、中学校、高校のときの芸術の授業でちょっと思い出していただきたいんですけれども、そこで御自身が深い学びを得ることができたという経験があるかどうかなんです。私自身は、深い学びというのは、実は学校だけではなくて、授業を受ける子供たちの自主性、モチベーションを学校側が後押しすることによって、その子供たちが社会と何からの形で密接に関わっていく段階で深化していくものじゃないかと思うんです。
 学校だけで全部深化させようということですと、そこには限界があるのではないかなと思います。つまり、子供たちにとって、発達していく成長の過程の中でいろいろなことを受け止める場面がどれだけあるかによって深化していくんじゃないかなと思うんですね。
 1つの事例として、今、美術館でも様々な教育活動を行っているんですけれども、特に小学生たちは、絵を描いたり、何かを作ったりということを本当に素直に喜ぶというところからスタートします。けれども、中学校ぐらいになると、大体、みんな、スポーツとか音楽に行ってしまって、美術をずっと生涯学びたいなと思う子供たちは少なくなってくるんですね。
 その中で美術に関わっていきたいと思う子供たちというのは、大体、先生が何らかの形で後押ししてくれているというのがすごく大きいです。学校で美術を学ぶだけではなくて、美術館に自発的に来ることができるようになって、美術の世界というのがまた一気に広がっていく部分があるんです。そういうこともありまして、美術館では鑑賞教育という対話式の言葉を発して、自分の考え方や見方を検証していくということをやっていますけれども、それを全部学校で完結するのはなかなか難しいことだと思うんですね。
 なので、この「深い学び」というのは非常に大切な言葉で、子供たちにとって、中学生や高校生の生徒たちにとって、自分の印象に残るような、記憶に残るような、若しくは1つのことを自分が進んでいくときのターニングポイントになるような経験をどこまで与えることができるかだと思うんです。それは、言葉で言うと非常にきれいなんですけど、この深い学びを得ていくことは、現実的には学校の先生にとってはとても大変なことで、非常に総合的なものではないかなというふうに思います。
 ちょっと私も、今、皆さんに参考になる明確なことをきちっと伝えることができないんですけれども、学校だけではなくて、子供たちがどこかに自分たちで自発的なものを得て、広がっていくためのきっかけを学校がどこまで作っていくことができるかということなんじゃないかなというふうに思います。

【福本主査】
 よろしいですか。ありがとうございました。
 八巻先生、お願いします。

【八巻委員】
 同じく深い学びというところについての考えといいますか、今、先生がおっしゃっていただいたように、学校だけでは、この深いというところまでやるのは非常に難しいことだなというふうに感じております。
 ただ、アクティブ・ラーニングの方法については、私は大阪なんですが、大阪の書道の教員の中では、この言葉が出てきたときに、これは既に書道ではやれているよねというようなことが多かったわけです。すなわち対話的といいますか、お互い対話をしながら、お互いの作品を批評し合いながら作品を改善していくであるとか、あるいは主体的というのは、これは、芸術どの科目でも主体的にやらないと作品制作というのはおぼつかないところだと思います。
 深い学びというところになると、どの辺まで迫れるのかなというふうに思うんですが、ただ、それをするためには2ページの4つ目の丸の下の方ですが、教員が基礎的な事項を教えるところが基本になっているというところなんですが、書を深める上でもやっぱり基礎的なこと、例えば墨色を考えてみましょうというヒントを教員が与えても、墨のすり方を実際知らないと深まりはなかなかできない。ですから、淡墨というか、薄い墨を使うときにはどういう墨のすり方をするのか。あるいは線質を変えてみましょうというときには、筆の使い方、例えば筆を寝かせてなでるような書き方しかできない子供にとっては、それ以上、線質はなかなか変化することができないわけで、筆の持つ機能である筆の毛の弾力を使って書くといろいろな表情の線が出るというところ、この基礎的な知識・技能というところをしっかり押さえた上での深まり、深い学びというところになるのかなと思いますので、そこがあってアクティブ・ラーニングは深い学びへつながっていくのかなというふうに感じております。

【福本主査】
 それでは、続きまして宮﨑先生、お願いします。

【宮﨑委員】
 お願いします。深い学びというと、何かすごく大変といいますか、重いような印象を受けるんですが、そうではなくて、ふだんの授業の中で学習していくこと、表面的なことではなくて、それまでのいろんな資質・能力を生かしながら、さらにそれを少しずつ高めていく。そういう細かなステップをしっかり積み重ねていくことが深い学びなんじゃないかなと思うんですね。
 ですから、学年が発達して、音楽で言うと表現がすごくよくなったとか、そういうことではなくて、1時間1時間を大切にしながら、そういう深い学びということを意識しながら、教師が授業を構築していくことが大事じゃないのかなと思いますので、「深い」という言葉の考え方をしっかりと把握、共通理解を図る必要があるかなと思って発言させていただきました。

【福本主査】
 ありがとうございました。資料2は、先ほどの繰り返しなりますけども、見方・考え方ということで案として示されています。こちらの方は芸術系教科・科目における見方、こちらの方に移していきたいと思うんですけども、資料の後半で色刷りのページに行きますと、見方・考え方のところで後ろの方になりますか、10ページぐらいからは理科の領域の特徴的な見方の整理というのが出てきたり、あるいは次の11ページは技術・家庭科の見方や考え方の整理というふうなページが例として載っています。
 これを見ていただいて、芸術の方で示している見方・考え方の案なんですけども、こちらの方は、技術や理科の方のどちらかというと内容、コンテンツの方をある程度カテゴリーとか、単元というふうな見方で整理するような、要素的な見方をしているのに対して、芸術系の方は、見方・考え方というのが、そういうビューポイントではなくて、ビジョンというふうな見方・考え方という整理になっているかと思います。
 こういった視点で、芸術の方でのこういった案という形がいいのかどうかというか、こういった形で示していくことがより望ましいというふうにお考えになるかどうかというところで御意見を伺いたいんですが、この辺はいかがでしょうか。
 いかがですかね。芸術教育の方は、こういった見方・考え方の整理の仕方でいいというふうな考えでよろしいでしょうか。御意見がない。中下先生。

【中下委員】
 失礼します。図工の場合、創造的に考えることというようなことで見方・考え方がくくられているんですけれども、以前も図画工作の中で子供たちがどんな活動をしているかという話をさせていただいたときに、作品をつくったり、こんなふうに見たよというふうに鑑賞したり、そのことだけではなくて、その表現や鑑賞の活動を通して自分自身をつくり出していく、それも活動のプロセスの中で自分自身を更新していっている、そういうお話をさせていただいたことがあるかと思います。創造的に考えるということで、形や色、そして自分のイメージを持つ、そういった図工ならではの特性を大事にしながら、子供が自分と向き合い、自分と対話をしていく。そのことが友達とともに活動することであったり、材料や用具に関わり続けていきながら、表現したり、鑑賞することであったりという、先ほど中村委員もおっしゃったように、深い学びだけではなくて、主体的な学び、それから対話的な学びと相まいながら、創造的に考えるという活動につながっていくのかなというふうに思います。このときに大事にしなければならないのは、やはり子供自身が実感を持つということかなと。
 感性や想像力を働かせてというふうにありますが、表面的な活動で終わらず、これができたとか、砂でこんな形をつくった、その形をつくることを考えたのは僕、一緒に見て、一緒に触って、味わってというような実感を持った子供の満足感というか、そういうものが深い学びにつながっていくのではないかというふうに思いました。
 以上です。

【福本主査】
 いかがでしょうか。
 では、市川先生、お願いします。

【市川委員】
 実際に生徒が授業ということになりまして、何か題材が与えられますと、とにかく今の時代は深い学びの過程のために私は必要だと思う時間的なもの、何でも物をスピーディーにスピーディーにという時代ですので、すぐさっとスマホが出まして、文言を検索すれば、あっという間に様々なアイデアが出てきて、それを自分でいろいろと取捨選択してということは上手なんです。
 ただ、深い学びにさせるために教師がどういう働きかけをして、時間を掛けて、自分の頭と自分の体験、経験のものと結び付けて情報を整理していくかというあたり、そのあたりがすごく大切なのかなというふうに思います。
 それで、並べ方としては、1、2、3は深い学び、対話的な学び、主体的な学びとありますけど、やはり授業の通常の組み立てから言えば、順序は逆なのかなと。子供たちが主体性、それから対話的な力が付いて、さらにいろいろ自分で考えながらという深い学びに行くのかなと思います。
 美術としてまとめられている見方・考え方は、やはり主体的に美術の活動に取り組み、とにかく活動に取り組みということを大切に最初の方に取り上げている、これは非常に重要なことではないかなと思いますので、主要例として適切でしょうし、この後も、恐らく改訂を進められても、この活動をまず全ての授業の重要なところに置いているということは変えられないのではないかなと思います。

【福本主査】
 ありがとうございました。
 それでは、もう1時間ほど過ぎましたので、いよいよ次、学習評価の改善についても検討していかないといけませんので、次の議題の方に入らせていただきます。資料の方は4、5、6をお手元に御用意ください。
 それでは、これについて資料説明の方を、また事務局よりお願いいたします。

【大杉教育課程企画室長】
 失礼いたします。それでは、資料の4と5について、私の方からまず説明をさせていただきます。その後、小林補佐の方から6に基づき御説明をさせていただきます。
 まず資料の4でございますけれども、学習評価の改善に関する今後の検討の方向性ということで、現在、資質・能力の3つの柱に基づき教科目標の構造化ということを御議論いただいていることを踏まえながら、総則・評価特別部会におきまして共通の学習評価の改善の方向性について考え方を示していただいたものが資料の4でございます。
 表の紙をめくっていただきますと、1ページ目でございます。学習評価の改善に関する今後の検討の方向性ということで、「目標に準拠した評価」を資質・能力の育成の観点から実質化していくということでございます。現在、育成すべき資質・能力を踏まえた目標や指導内容の明確化ということを、資質・能力の柱をベースにしながら御議論をいただいていること、このこと自体が学習評価の改善ということにつながるわけでございます。
 一方で、4つ目の丸にございますように、これを整理してはいただいておりますものの、これは相互に関係し合いながら育成されるということも一方では重要でございますので、こうしたことは総則などでしっかりとその関係性を示していくということについて、引き続き検討してまいるということでございます。
 こうした全体の検討の方向性を踏まえた観点別評価の方向性についてでございます。1ページ目の真ん中にございますように、観点別評価、前回改訂時に学力の三要素と評価の観点の関係性というものが整理され、それを踏まえた各観点の趣旨というものも明確化されたところでございます。これを踏まえて観点別評価の実施率は高い状況であるということ、また、思考・判断・表現の評価、見取ることがなかなか難しいと言われる一方で、様々な実践も進展しているということで、様々な工夫が普及してきているということでございます。
 その一方で、子供たちの資質・能力の育成に向けた指導と評価の一体化という観点からは、まだまだ質的な改善の余地があるのではという指摘もあるところでございまして、こうした指摘を踏まえながら改善に取り組んでいきたいということでございます。
 2つ目でございますけれども、「目標に準拠した評価」の実質化、あるいは教科・校種を超えた共通理解に基づく組織的な取組というものを促していく観点からは、別添ということで、4ページにございますけれども、知識・技能、思考・判断・表現、主体的に学習に取り組む態度、この3つを踏まえた観点別評価の観点とその趣旨の検討ということが必要ではないかということでございます。
 具体的な観点の書きぶりや趣旨の記述については、教科の特質を踏まえた表現ぶりを検討いただきたいということでございます。
 そして、下の丸でございますけれども、観点別評価、当然のことながら毎回の授業で全てを見取るということではなく、カリキュラム・マネジメントの考え方の下、単元、あるいは題材を通じたまとまりの中で、学習指導内容と評価の場面を適切にデザインしていくことが重要であるということでございます。教科で検討いただいている学習プロセスの中で、評価の場面との関係性も明確にできることが望ましいということで、当然のことながら、複数の観点を一体的に見取るということも考えられるということでございます。
 そして、2ページ目の知識・技能についてでございます。知識・技能についてということで、まず知識について記述がございますけれども、これについて、資料の5で後ほど詳しく、芸術系教科の特質に即しながら少し整理させていただいたものを御説明させていただきますけれども、共通的な考え方としては、事実的な知識のみならず、構造化された概念的な知識の獲得に向かうことや、一定の手順に沿った技能のみならず、変化する状況に応じて主体的に活用できる技能の習熟・熟達に向かうことが重要であるということ。各教科等の特質、あるいは発達の段階に応じて、どのような知識・技能を獲得することが求められるのか、目標や指導内容の構成の中で明確にできるように工夫していただきたいということでございます。
 思考・判断・表現につきましては、各教科の特質に応じ育まれる、先ほどの見方や考え方、これを用いた学習のプロセスを通じて評価していくということではないかということ。各教科等の特質や発達の段階に応じて、どのような思考・判断・表現が求められるかということを、目標や指導内容の構成の中で明確にできるよう工夫していただきたいということ。
 その際、思考力・判断力・表現力の成長というものは、一定の時間を掛けてじっくりと成長していくということでもあることから、学年を超えた整理というものも御検討いただきたいということでございます。
 そして、主体的に学習に取り組む態度と資質・能力の柱である学びに向かう力・人間性の関係性でございます。学びに向かう力・人間性には2つの要素、主体的に学習に取り組む態度として観点別評価を通じて見取ることができる部分と、思いやりなどの観点別評価や評定にはなじまず、こうした評価では示し切れないことから、個人内評価として見取っていく部分があるのではないかということ。
 そして、主体的に学習に取り組む態度でございますけれども、学習前の診断的評価のみで判断したり、挙手の回数、あるいはノートの取り方といった形式的な活動で評価したりするのではなく、子供たちが学習に対する自己調整を行いながら、粘り強く取り組んでいるかというような、意思的な側面を捉えて評価するということでございます。
 本来、関心・意欲・態度につきましても同趣旨であるべきでございますけれども、なかなか性格・行動面の傾向が一時的に表出された場面を捉える評価であるような誤解が払拭し切れないということが長年指摘されておりますことから、今回、関心・意欲・態度を改め、主体的に学習に取り組む態度という形で設定をさせていただいているところでございます。
 こうした趣旨に沿った評価が行われるよう、単元や題材を通じたまとまりの中で、子供が学習の見通しを持って振り返る場面ということを適切に設定していくことが必要であるということでございます。
 なお、現行の観点別評価の観点において、先ほどの3つの観点のうち示していない要素がある教科については、知識、あるいは技能の在り方、技能と表現との関係等について、各教科等の本質に照らして御検討いただき、3つの観点が相互に関係し合いながら育成されるものであることを前提としつつも、それぞれの観点や趣旨が明確に示されるように御検討いただきたいということでございます。
 その他、3ページ目にございますような指導要録の在り方、あるいは子供一人一人がみずからの学習状況やキャリア形成を見通し、振り返ることができるようにするための仕組みの在り方、これ、恐らく芸術系科目における様々なポートフォリオということも含めてですけれども、こうしたものがしっかりと見通し、振り返ることができるようにするための仕組みの在り方、学びのポートフォリオや個々の学びの特性、これが校種を超えて共有されるような仕組みの在り方などを検討していくということでございます。
 こうした点を含めて、残された論点につきましては、総則・評価特別部会において引き続き検討していくということでございます。
 こうしたことを踏まえつつ、資料の5、関係する先生方に少し話を伺いながら、事務局としてまとめさせていただいたものでございます。芸術系科目における知識についての考え方のイメージということでございます。資料の5をごらんください。
 硬い表現がたくさんございます。まだこれからかみ砕いて、社会に開かれた教育課程という観点からも幅広い理解を得られるように言葉の整理を行っていく必要がございますけれども、まずは1つ目のたたき台ということで、少し御理解をいただきながらコメントを頂ければというふうに考えております。
 先ほどの総則・評価特別部会の資料にもございましたように、示していない観点がある教科については、その観点を明確にしていただきたいというリクエストでございました。なぜ、こうした芸術分野において、特に知識ということも含めて明確化していく必要があるのかということでございますけれども、これは、論点整理から言葉を拾わせていただいておりますが、次期改訂の検討の方向性を底支えしているのは、学ぶとはどのようなことか、知識とは何かに関する知見であるということ。そして、こうした考え方は芸術やスポーツ等の分野における学びについても当てはまる、これは論点整理の表現でございます。
 そして、次も論点整理の表現でございますけれども、主体的な学びの過程を実現する中で、子供自身が獲得された知識・技能や育成された資質・能力を自覚したり、共有したりできるようにしていくことも重要であるということ。子供自身に学びの中で身に付いた知識・技能や様々な思考・判断・表現、人間性ということを自覚化させながら成長を促していくということ、これが大変重要であるということ。
 また、1つ目の丸にございますように、各教科等における知識とは一体何なのかということをしっかりと明確化していくことが、今回、改訂の方向性を底支えしているということでございます。
 そして、2つ目、次期改訂における知識とは何かということでございます。知識についてでございますけれども、先ほどのペーパーにもございましたように、事実的な知識のみならず、学習過程において試行錯誤することなどを通じて、新しい知識が既得の知識と関連付けられながら構造化されていくということ。あるいは知識と経験が結び付くことで身体化されて、様々な場面で活用できるものとして獲得される、いわゆる概念的な知識、これを含むということでございます。
 学ぶとはどのようなことか、知識とは何かを重視する次期改訂におきましては、学びのプロセスを通じて、発達の段階を踏まえながら、このような概念的知識の獲得に向かうということを重視する。これは、芸術系教科のみならず、全ての教科に当てはまる考え方でございます。
 また、技能についても一定の手順に沿った技能のみならず、変化する状況に応じて主体的に活用できる技能の習熟・熟達に向かうことが重要であるということでございます。
 こうした知識に対する考え方を少し転換していく必要がある、あるいは更新していく必要があるということでございますけれども、知識を思考・判断・表現と区分して明確化していく理由についてでございます。
 いずれの教科においても、資質・能力の3つの柱、先ほどのペーパーにもございましたように、ばらばらに育まれるものではなく、学びのプロセスの中で相互に関係し合いながら育成されるものであるということ。特に先ほどの概念的な知識は、思考・判断・表現を通じて獲得されたり、あるいは、その過程で活用されたりするものであるということ。したがいまして、思考・判断・表現との結び付きは事実的知識よりも強いと考えられるものでございます。
 その一方で、資質・能力の3つの柱や評価の観点をそれぞれ明確にすることの意義は、先ほど冒頭にもございましたように、指導の中でそれぞれの要素が確実に育まれたり、子供自身がその獲得を自覚できるようにしたりする、これを今回保証していくということにあるということであります。
 2ページ目でございますけれども、次期改訂の理念である「社会に開かれた教育課程」の実現のためには、各教科の学習を通じて獲得される知識とは何かが明確化され、それを自覚的に獲得していけるようにすることにより、子供たちが、そうした知識が様々な社会の場面で生きることに気付いたり、教科の活動以外の様々な生活の中でも、そうした知識を積極的に活用していこうとし、知識が生きて働くことの喜びを感じたりするようになることが重要であるということでございます。
 こうしたことを先ほどの総則・評価特別部会のペーパーには直接記載はございませんけれども、本ワーキングで御議論いただきました上で、また全体の議論の中にも反映していくことが重要であろうかと考えております。
 芸術系科目の中で育まれる知識が社会のあらゆる場面で活用されていることに私たち自身が気付き、積極的に活用していける、また、その喜びを感じたりしていける、そうしたことが社会に開かれた教育課程の観点から極めて重要であろうということでございます。
 そして、次はあくまで参考でございますので、このとおりということではございません。あくまでスポーツの分野における現在の議論をまとめさせていただいたものでございます。こうしたことが体育・保健体育ワーキングのまとめには表れてくる予定でございますけれども、スポーツの分野における知識とは何か、どのように評価するのかでございます。
 体育における見方・考え方、スポーツをする、見る、支えることの重要性はこれまでも述べられてきておりますけれども、今回、する、見る、支えることに加えて、スポーツの価値や意義などを知るということも含めて、スポーツとの多様な関わり方について考察することを明確化するという議論をしていただいております。
 知識・技能については、豊かなスポーツライフを実現する観点から、発達の段階に即して運動やスポーツの特性に応じた行い方や、一般原則などの知識及びスポーツに関する科学的知識や文化的意義を理解するとともに、各種の運動やスポーツが有する特性や魅力に応じた動きや技能を段階的に習得できるようにすることが重要であるという整理をしていただいております。
 評価に当たっては、各種の運動やスポーツの行い方を知るとともに、その運動やスポーツをできるようにするというふうにスポーツの分野では捉えることとしております。その際、それぞれの習得に順序性を決めるということではなくて、知ってからできる、あるいは逆にできた上で知るということなど、運動やスポーツの特性、児童・生徒の実態により一様ではないことに留意するということであります。知っていることとできることのどちらも重要であることを示すということでございます。また、豊かなスポーツライフを実現する観点から、スポーツに関する科学的知識、文化的意義及び一般原則等の理解についても評価していくという方向性でございます。
 このようにスポーツの分野におきましても知識とは何かということを明確化し、それを評価の対象としていく、様々な留意点ということが極めて重要でございますけれども、というような検討が現在なされております。
 一方で、芸術分野における知識とは何かということ。これは、これからきっちりと示していく必要がある点でございまして、様々な方の御意見を伺いながら事務局としてまとめてみたものでございます。本日、積極的に御意見を頂ければというふうに存じます。
 芸術分野における知識とは何か。知識とは、一人一人が感性を働かせて様々なことを感じ取りながら考え、自分なりに理解し、表現したり、鑑賞したりする喜びにつながっていくものであることが重要であるということではないか。身体を動かす活動なども含むような学習過程を通じて、知識が一人一人の個別の感じ方や考え方に応じて構造化、あるいは身体化されること、さらに新たな学習過程を経験することを通じて再構築され、更新されていくことが重要ではないかということです。
 なお、いわゆる概念的な知識ということが、ステレオタイプの一般概念の獲得にとどまるものではないということに留意をする必要がある。上の文章でも、一人一人の個別の感じ方、一人一人の感性としっかりとつながっていることが重要であるということでございます。
 3ページ目、具体的に知識の内容として重要なことは以下のようなことではないか。発達の段階に即した整理が必要であろうということでございますけれども、共通事項、今回、高等学校についても整理してはどうかという御意見を頂いておりますけれども、共通事項を表現や鑑賞の基盤としながら、諸要素、音楽であれば音楽を形づくっている要素、あるいは美術であれば形や色、書道であれば書を構成する要素など、こうした諸要素の働きによってどのような雰囲気を生み出したり、感情をもたらしたりするのかの実感を伴いながら、表現や鑑賞などに生かすことができる形で理解するということ。あるいは芸術に関する歴史や文化的意義を、表現や鑑賞などに生かすことができる形で理解するということではないかということでございます。
 これらの知識の内容は、思考・判断・表現を経て育まれたり、思考・判断・表現において活用されたりすることが重要であるということでございますけれども、特に評価の場面を念頭に置いたときに、知識においては、その内容の理解の質に主眼あり、思考・判断・表現においては、それらを活用した表現意図や構想、鑑賞の質に主眼を置いていくということではないかということでございます。
 なお、発達の段階に応じた整理が必要であろうと考えられます。例えば小学校段階においては、こうした働きや意義の理解まで至ることは難しいのではないか、気付く、大切さが分かるといった発達の段階に応じた表現を工夫することなどの必要があるのではないかということでございます。
 こうした知識に関する整理、まだまだ深めていく必要もございますけれども、こうした一定の考え方に基づきながら考えたときに、評価の観点については、先ほどの知識・技能、思考・判断・表現、主体的に学習に取り組む態度の3つの観点を基に整理することを検討したらどうかということでございます。
 一方で、評価の観点の具体的な表記については、芸術系教科を通じて育成する資質・能力を踏まえて、今後検討していく必要があるのではないかということでございます。ここで重要なことは、資質・能力の3つの柱を明確にしつつ、目標に準拠した評価を実現するということ。また、観点の数としても3つということに、他教科の関連も考慮しながら合わせていく必要があるのではないかということでございます。
 一方で、こうした観点にするということを考えていきますと、様々な指導上の改善や留意事項ということを併せて示していく必要がございます。知識の教え込みにならないようにするということは、これまでと同じであるということ。あるいは知識を明確化することの意義や表現領域と鑑賞領域の双方に関わるということ、知識や鑑賞でということではなくて、双方に関わるものであるということをどのように伝えていくかということ。
 また、全ての知識をペーパーテストで測るような偏りがないようにするために、どのような見取り方の工夫が考えられるか。これは、今後、調査協力者の先生方の御協力なども頂きながら、しっかりと詰めていく必要があるというふうに考えられますけれども、こうした方向性、あるいは、その方向性に基づく留意事項等について、本日、様々な観点から御意見を頂ければありがたいというふうに思っております。
 それでは、続いて資料6の方に移らせていただきます。

【小林教育課程課課長補佐】
 続きまして、資料6‐1、6‐2、6‐3、あと参考資料1‐1もごらんください。
 資料6‐1、6‐2、6‐3については評価の観点についてです。先ほど大杉の方から説明がございましたが、3つの観点の整理ということで、芸術科、音楽科等において実際3つに分けた形の観点のイメージということでございます。実際当てはめ方というか、整理の仕方でございますが、参考資料1‐1にございます個別の知識や技能、思考・判断力・表現力と学びに向かう力・人間性等ということで、実際、個別の知識や技能については資料6にございます知識と技能に当てはまる。思考力・判断力・表現力等については思考・判断・表現、また、学びに向かう力・人間性等につきましては実際に主体的に学習に取り組む態度、観点別評価を通じて見取ることができる部分は、一応こちらということと、あと、観点別評価になじまない一人一人のよい点、可能性、進歩の状況について評価する個人内評価で見取る部分は、別の見取り方ということになります。そういったことで、この3つに分かれるという形になります。
 また、実際の評価に当たりましては、知識・技能、思考・判断・表現、主体的に学習に取り組む態度ということで、それぞれで見取っていくという形になります。
 また、今回、このように整理させていただいたところでございますが、今回で決定ということではございませんが、内容的に見て評価の観点、こういった当てはめ方をした場合、実際に過不足等というか、そういったものがないかどうかといったことについて是非とも本日、意見等を頂ければというふうに思います。
 以上、よろしくお願いいたします。

【福本主査】
 ありがとうございました。学習評価に係る部分というのは非常に関心が高い部分かと思います。1つは、この評価ですけども、資料の4、学習評価の改善に関する今後の検討の方向性、ここで特に構造的な視点として3つの柱と従来の評価観点との関係であったりとか、実践的な視点だと、複数の視点を一体的に評価する場合の是非であるとか、課題とかが挙がってこようかと思いますけども、こういった視点も含めていろいろと御意見があろうかと思いますので、順次、御意見等を頂ければというふうに思います。よろしくお願いします。
 では、阿部先生、お願いいたします。

【阿部委員】
 最初の口切りという形で、知識のたたき台、先ほどの資料の5の方の芸術等の私たちの分野においての知識というのは、大変上手にまとめてあるなというのが感想です。まずは一人一人のとか、個別であるというようなこととか、それから、再構築されるという中に身体性とか、感覚を生かしてというような部分が網羅されているので、単なる暗記するための知識ではないということが明確に出されているので、その辺のところ、ほかの教科との差として、区別として伝えていくのかとか、又はそういったことが我々の教科にとっては、子供にとっての表現する喜びとか、鑑賞する喜びにつながっていくことによって情操も高まっていくというか、養われていくというようなことも、教科目標とも大変リンクした形のまとめになっているので、逆に言うと、よろしくお願いしたいなというのは、ひとつ思っているところです。
 あと、項目的にも実現状況ということで評価するということで、3観点ということについて、今までずっとやってきて、態度面というんで、なじみにくいものについては個人内評価に、文字表記等にしていくということも、そうだろうなと思います。
 そういったことを考えていくと、3観点に変わったことによって、今まで伸ばそうと思っていた、高めようと思った資質・能力と基本的に変わっていないということは、現場の先生方についても理解していただけるんではないかな、誤解のない理解に進んでいくんじゃないかなと思っています。
 ただ、先ほどの3‐1とか3‐2の方の資料、教育の出口として、こういうふうにしてほしいということで練られたものがあるんですが、その表記の最後が、できるようにするということが全体にわたって、全ての教科がそうなんだろうと思うんですが、この言葉は、基本的に指導する側となると、できるようにしなければならないというようなことにつながらないかとか、いろんなことを思いますと、指導と評価の一体なので、果たしてできるようにならなかったらどうするんだとか、そういったことの論議にならないように、持つようにするとか、捉えるようにするとかというような、表記の方法もいろいろ考えられると思いますので、まだまだこれは、この後の検討かなというふうには思って見ておりました。
 以上です。

【福本主査】
 ほかにいかがですか。山田先生とか、指名してあれですけど、この評価の問題、いろいろ御意見等あろうかと思うんですが。

【山田委員】
 いつだったか、この会議でも申し上げたと思うのですけれども、やっぱり子供が学んだときに、一生懸命頑張れば頑張っただけ伸びるんだというものをきちっと我々は評価すべきであって、先ほど測れるもの、測れないもの、少し整理するというお話をお聞きしましたので、そこはとてもいいなというふうに思いました。
 あとは、これはこの先の話になりますけれど、やっぱり得意不得意、一人一人の子供を見たときに、個として見たときにいろいろな持ち味があって、よさがあって、それが一人一人違うんだと。芸術に関しては、まさに一人一人を大事にしていく、着目していくということで、そこはとてもありがたいなと思うのですけれども、例えば3つの観点にしても何にしても、意外と子供たち、親御さん、社会が観点別について大事にしてくれない、結果として総括された評定と言われているものだけで見てしまっている。そうすると、同じ4でも、どのところが得意でよかったのか、頑張ったのか、だから4なのかと。こっちの子も同じ4だけど、実はちょっと違っている。そういったところを本当は社会全体が見てくれるような示し方といいますか、発信が今後は大事なのかなというふうにずっと思っていました。
 いろいろな話をさせていただいて、そのときには皆さん分かってくれるのですけれども、ちょっとたつと、すぐ国語は幾つです、だから僕は何とかですとか、私は何とかですという話になってしまっている。これは、日本がずっとこれまできていた評価観があると思うのですけれど、せっかく今回こういった形でいろいろ整理されていますので、是非そのところまで踏み込んで、国がこれからの、1つの教科であっても、本当に一人一人のどういうところを見ているんだ、伸ばしているんだ、だから、あなたはこういうところが得意なんだ、すばらしいんだというあたりをみんなで共有できるような発信をしていただけたら、ありがたいなと。
 若干ずれてしまったかもしれませんけれども、そんなことを感じました。
 知識に関しましては、とても整理されていていいなと。やっぱり一人一人違うということと、生きて働く知識であるというあたりを強調していただいていますので、図工、美術に関してはありがたい、恐らく芸術全体についてもありがたいのではないかなというふうに思いました。
 以上でございます。

【福本主査】
 ありがとうございました。
 そのほかいかがでしょうか。市川先生。

【市川委員】
 私たち東京都でも、実は教員採用の問題って非常に大きいんですね。実際に子供たちを教える立場になる新規の教員を採用して、その後、立派な教師として独り立ちさせるために研修をしたりということがあるわけですけれども、全校長が集められて、現在の先生たち、非常に優秀であるけれども、象徴的に例えばマッチをすろうとさせたときに、マッチがすれないんです。マッチの箱が飛んでいってしまうとか。つまり、今は着火するいろんなシステムがありますから、マッチがすれなくても火は付けられる、体験しなくても、別にそういうシステムが使えればいいわけですけれども、実際に身体操作、体にしみ込ませるということでは、一番基本的なところができない人がかなりいるんですね。そうすると、また一からマッチのすり方を教えたり、そういうことをせざるを得ないようです。
 何を申し上げたいかといいますと、やはり美術の場合、美術の創造活動を通してという、そういうことを必ず頭に持ってきた上で、知識がそのために必要である、技能もそのために使われる。そういうところと必ず結び付けて、体得していくというものでなければ、やはりこの後、より深いものにしていくというところで、先ほども申し上げましたけれども、システムがあって、スピーディーにスピーディーにはなっていきますけれども、人から人へ物を伝えていくということは、そういう体得をして伝えていかなければいけないということは、あらゆることに関係しているのではないかなと私は思います。

【福本主査】
 そのほかはいかがでしょうか。副島先生、すいません。

【副島委員】
 知識の考え方のイメージについては、自分も非常に賛同するところがあります。この観点のイメージとして、例えば中学校で考えたときに、「多様性について理解する」とありますが、子供たちが最初に得た、事実的な知識を鑑賞の学習であれば解釈したり、価値を考えたりしてといったような行為の中で、結果として、子供たちがそれぞれに自分の経験、また自分が知覚・感受したことと関連付けながら、個別に概念的な構造化された知識を持つということになると思います。
 ただ、個別に持った知識を評価するということを例えばワークシートを工夫するとか、子供たちの発言に耳を傾けていくなどの工夫をしなくてはいけないということについて、非常に難しいことになるのではないかなという心配もあります。
 同様に技能についても、先ほどの中学校音楽の資料では、「自分なりに音楽表現を創意工夫したり、自分の思いや意図を音楽で表現したりするための技能」ということになっています。その1枚前の小学校の基礎的な技能が、小学校段階で身に付けた技能として、中学校の基盤になると思います。その上で、子供たちが創意工夫をしたり、自分の思いを実現するための技能が必要になると思います。子供たちによって、その思いや意図を表現する技能というのも個別に違ってくるのではないかなと考えるところです。最低限の基礎というのが、小学校の基礎的な技能だとすると、中学校で求める技能のレベルはいろいろ変わってくると考えたときに、それぞれの子供たちの思いや意図と関連付けて、その子に応じた技能が身に付いているかということをきちんと評価していくということを求めるとすれば、かなり分かりやすい説明であるとか、実際の事例とかも必要になってくるんじゃないかなと思います。
 もう一点、技能に関わっては、先ほど小学校段階での基礎的な技能が基盤になるという話をしましたが、現状で言うと、小学校の6年間の教育がなかなか積み上がっていない状態で中学校に来ている段階で、中学校の教員が例えば小学校の学び直しをしているとか、若しくは中学校の教員自身が小学校で学んでいること、身に付けた技能というのをよく把握できないままに指導している、そういった現状もあるんじゃないかなという心配もあります。
 今後、そういった意味では、知識・技能についても、小・中・高一体的に示していくようなことも必要になってくるんじゃないかなと考えているところです。
 以上です。

【福本主査】
 ありがとうございました。
 そのほかの先生、山下先生。

【山下委員】
 お願いいたします。知識についての考え方は、私もほかの先生方がおっしゃったとおり、よく練られていて、必要な要素がしっかり網羅されているという印象をもっております。ありがとうございます。
 評価について1点申し上げます。現行の評価では、音楽の場合、味わって聴くという鑑賞の能力は第4観点で評価するようになっておりまして、知覚・感受の部分、つまり思考・判断・表現に当たる部分と味わって聴くという最終的な目標の両方を第4観点で評価するようになっております。共通事項が導入される以前は、感受に当たる内容を第2観点で見て、そして味わって聴くという内容は第4観点で見るというように、2つの観点に分かれており、非常に評価しづらいという現場の声を受けて、現在の形に変更されたと記憶しております。
 今回の改訂では、「思考力・判断力・表現力」のところに「味わ」うという言葉が含まれているので、現行の形に近いという意味では、混乱が少なくてすむのかなと思いました。
 ただ、小学校音楽科の知識の例に「音楽的な特徴及び構造と、曲想との関わりについての理解」が挙がっています。この知識が、「思考力・判断力・表現力」に示されている「楽曲の特徴や演奏のよさなどを考え味わ」うという鑑賞の能力とどういうふうに関わるのか。同じなのか、違うのか。別々に読み取るべきものなのか、一体的に読み取るべきものなのか。また、知覚・感受の基礎となるものなのか、それらの先にあるものなのか、などについて熟考する必要があり、評価の方法論とともに、しっかりと検討して発信していく必要があると考えました。
 以上です。

【福本主査】
 次、中下先生、中村先生の順番でお願いいたします。

【中下委員】
 知識という言葉を現場の先生はすごく敏感に捉えると思うんですね。そこで、ここに挙げられているように、知識とは何かのところで、「学習過程において試行錯誤することなどを通して」という観点のイメージにもありますけれども、創造活動を通して子供たちが実感を伴いながら身に付けていくものだと思います。私は、先生方に、子供に例えば表現したり鑑賞したりするときの自分の引き出しをたくさん授業の中で作っていけるように、子供がこのときは用具をこんなふうに使ってみようかな、この材料をこんなふうに用いてみようかなとか、ほかにもこんな表し方があるよとかいうような、子供自身の中でイメージしたことを活動の中に移していく、そして、そこで知識や技能を獲得していきながら、それを創造的な技能に高めていくことが大事だという、そのあたりをきちんと説明をしていく必要があるかなというふうに思いました。
 それと、子供たちが、その獲得を自覚するということが述べられていますけれども、いわゆる自己評価になると思うんですが、その視点というのを、子供たちが授業の中で教師の目標と重ねて実感していかないといけないんですが、図工の場合は、先ほどおっしゃったように個性であったり、多様性であったりということがあるので、そこのところを一律化するのではなくて、多様に認めていくということも教師の中で共有していくことが大切ではないかというふうに考えました。
 以上です。

【福本主査】
 ありがとうございました。
 では、中村先生、お願いします。

【中村委員】
 失礼します。この評価の考え方、知識も含めて示されたものについては、先生方が御発言されたように本当によく考えられ、そしてまとめられていると思っています。
 その評価の考え方は、とてもよく分かりますが、基本的に評価について生徒はとても大きな関心を寄せているし、また保護者も多大な関心を寄せているのが現実です。特に、中学校の場合には上級学校への進学の資料として活用するなど、いろいろな活用の仕方がされています。そういう意味からも、生徒に何が身に付いて、何がまだ十分定着していないのか、つまり学習課題をきちんと説明する機会にもなるし、学習意欲を高めていく上でもとても重要な要素であることは、改めて語る必要はないことかもしれません。
 ということは、最終的に総括された評定や、そこに至る過程としての観点別評価ということが、一人一人の学習状況をきちんと示すものでないと、いけない訳で、構造的には学力の3つの要素に整理されて、とても分かりやすいとは思いますけれども、ただ、個々の学習の内容に合わせて評価を伝えていくには、これから後、考えていくことになるだろう評価項目や評価規準などを、目標に準拠したものとして作成していくことが大きな課題として、投げかけられているように思います。評価をする立場から考えると、とても大きく重いことだと受け止めさせていただきました。
 そこのところがきちんとしないと、思考力・判断力・表現力が身に付いたといっても、教科の学習内容のどの部分で身に付いたものか、理解は十分にされないでしょう。そこを具体に落とし込んでいく過程が大事だろうと思います。
 評価の課題のもう一つは、主体的に学習に取り組む態度の評価という点について、確かに観点別の評価で見取れる部分と、そうした評価がなじまない部分、個人内評価の部分があるのは、そのとおりだと思います。前に、文章表記などの話があったと記憶しておりますが、評価する指導者は一人なので、例えば東京都の現実で言えば、週28時間の授業で1人が最大24時間の授業を担当していて、そうすると1人が約550人ほどの生徒を評価していくことになります。これが物理的に可能なのかということも含めて、評価の問題を考えていただく必要があるのではないかと思います。
 考え方はとてもよく分かりますが、実際にそれを進めていくということを考えると、現実的には無理に近いことがここで要求されているんだろうなというところを感じます。そうした点が今後どのように進められるのか、まだ私には見取れないので、このデータを受け止めるしかありませんが、評価は理論のみでなく、実務を伴うという側面からの心配ということをお話しさせていただきたいと思って発言させていただきました。

【福本主査】
 そのほか、この評価に関連した御意見等ございませんでしょうか。山田先生、お願いします。

【山田委員】
 すいません。先ほど阿部委員さんの方から資料3‐1の表現の文末の表現でしたでしょうか、できるようにするという言葉が続いていてという御意見がありました。私の方は、ちょっと違った意見になってしまうかもしれませんが、平成10年改訂の中学校美術の学習指導要領だけが「次の事項ができるよう指導する」という文末だったと思います。ほかは、みんな「次の事項を指導する」という表現の中で、中学校の美術だけがあの当時、たしか「次のことができるよう指導する」と。要するに教員の責任をそこで明確にしたということで、当時かなり評判になって、現場にいた者とすると、これはしっかりしなきゃいけないなという記憶を今思い出しました。
 その後、現行の改訂においてはそれが消えて、ほかの教科とそろえる形になったのだろうというふうにいますが、今回、こういう形でまた改めて教員の責任の重さを明らかにしたということは、私は、これはこれでいいのではないかなと個人的には思ったところです。
 繰り返しになってしまって恐縮ですけれど、やっぱり子供が一生懸命頑張る、それを教員が支える、できるようになる。せめてスタートラインはそろえてあげる。最初から、私は何もできませんというような子を放っておかないような意味での教員の在り方みたいなものを示すのも、もしかすると必要なのかなというふうに感じました。いわゆるほかの教科と比べると、この芸術教科の先生に対する見方、子供が好きにやっていればいいんじゃないのというふうに見られているものを、ある意味では、こういう言葉できちんと示すことも1つなのかなというふうに思いました。
 以上でございます。

【福本主査】
 ほかにはよろしいでしょうか。一応、ここまでのところですと、先ほどの知識の問題については、3つの柱で整理する中で、これまでの議論を含めた形で表記がされて、合意形成もされてきたのかなというところです。先ほどいろんな意見が出ておりましたけれども、この評価の問題についても、評価の伝達の問題であったり、一人一人の評価ツールの工夫、あるいは小・中の一体的な連携を考えた知識・技能の示し方の方法についても工夫がされてもいいんではないかであったり、それから、3つの柱の関係性が従来の評価観点とも関係はしますけれども、関係性をどういうふうに考えていったらいいのかということと、現行の複数の観点の一体的な評価であるとか、評価基準の作成の進め方、個人内評価の問題、あるいは先ほどの3‐1に関わりますけれども、文末表記の問題等がずっと意見の中で出てきておりましたので、こういったことをまた検討していただければというふうには思っております。
 それでは、一応、ここで意見交換について、4、5、6については一旦閉じさせていただきますけれども、続きまして資料7の方を御用意ください。こちら、芸術系教科・科目における指導の改善・充実についてということで、幾つかの論点が整理されております。これについて、事務局の方から説明をお願いしたいと思います。

【小林教育課程課課長補佐】
 それでは、資料7をごらんください。芸術系教科・科目における指導の改善・充実についてという資料でございます。
 今まで芸術ワーキングで特に扱っていない論点につきまして、今回是非とも意見を頂ければというふうに思っております。1枚目なんですが、主な論点例として、5つほど挙げさせていただいております。「A表現」の指導と「B鑑賞」の指導の関連を図ることについて、2が協働的な学びについて、3がICTの活用について、4が学校における芸術教育の充実方策について、5がその他ということでございます。
 2枚目以降ですが、実際今まで1回目から6回目開催いたしまして、それぞれ意見等も伺っておりますので、そういった意見等を参考に意見を頂ければと思います。
 1の「A表現」「B鑑賞」の指導の関連を図ることについては、特に意見というのはなかったんですが、2の協働的な学びにつきましては、グループで学ぶことや集団で何かをする活動は今もたくさんあるが、先生は、その活動が学びにつながるような意識を持って指導していただくということにメスを入れていかなければいけないといった意見。また、協働で学習するということが意識できるような学習の在り方を考えていく必要があるんではないかといったこと。また、パフォーマンス書道というものも紹介いただいたところでございます。
 また、3のICT活用については、特に意見は今のところなかったというふうになっております。
 4につきましては、学校における芸術教育の充実方策についてということで、実際、合唱コンクールといったことや文化祭、文化的な行事が多くあり、それが学校の授業で学んだことが学校の中で生かされているのかといったこと。また、学校で学んだことが社会に生かされているのかということをもっと考えていく必要があるんではないかといったこと。そのために芸術教科が必要である、役に立つと言ってもらいたいと強く思っているといった意見もございました。
 また、その下でございますが、学校教育と美術館とでお互いに工夫が必要であるというふうに感じているといった意見も伺ったところでございます。
 1枚おめくりいただきまして、真ん中より下の部分でございますが、学校教育の中で文化遺産、美術文化の大切さを教えると同時に、家庭や社会全体で芸術文化に対して尊重するような心を育てる必要があると感じたといったこと。
 また、一番下でございますが、学校自体が、学校で学んでいることをいかに社会とつなげて考えていけるかという意識を持つことでもあるといった意見を頂いております。
 また、次のページ以降につきましては、今の学習指導要領に書かれております主な記載を抜粋させていただいております。「A表現」の指導と「B鑑賞」の指導の関連を図ることについて、特に小・中の抜粋でございます。
 また、協働的な学びにつきましても、声を合わせて歌うことであったり、みんなで話し合ったり、考えたりしながら作ることといったこと、そういった協働的な学びについての記載があるということでございます。
 1枚おめくりいただきまして、特に中学校でございます。真ん中、上から5つ目ぐらいのポチでございますが、作品などに対する自分の価値意識を持って評し合うなどして美意識を高め、幅広く味わうことといったこと。批評といったものが入っているということでございます。
 また、下の方に行きまして、3ポツ、ICTの活用ということでございますが、これらも指導要領の記載というものがございます。特に一番下の部分でございますが、コンピューターや教育機器の活用も工夫することといったこと。
 また、次のページでございますが、特に美術については、美術1、映像メディア表現というものも入っているということでございます。
 最後の4番でございますが、学校における芸術系教育の充実方策ということでございます。特に一番上の部分でございますが、児童や学校の実態に応じて、地域の美術館などを利用したり、連携を図ったりすることといったこと。これは鑑賞の指導です。また、一番下の部分でございますが、地域や学校の実態に応じて、文化施設、社会教育施設、地域の文化財等の活用を図ったり、地域の人材の協力を求めたりすることといったことが取り扱い等に入っております。
 ちょっと参考にしつつ、今回、是非とも、この中の論点で意見等を伺えればというふうに思っております。どうぞ、よろしくお願いいたします。

【福本主査】
 そうしましたら、ここに示されたもの、これまでにいろいろ意見が出たものもまとめてございます。「A表現」の指導と「B鑑賞」の指導の関連を図ることについて、一応、これまで意見が特になかったというふうになってはいますけれども、この3つの柱で、評価の問題と関わりますけれども、従来の評価の観点が少し別枠で整理されるということになると、改めて「A表現」と指導と「B鑑賞」の指導の関連を図ることについても、逆に重要になってくるのかなというふうにも考えます。
 こういったことも含めて、ここに例示として挙げられたような項目について、自由に少し意見を言っていただければと思います。よろしくお願いいたします。どの観点からでも結構ですので、御自由に発言していただきたいと思います。
 副島先生、お願いします。

【副島委員】
 それでは、ICT機器の活用について教育センターでいろいろな情報収集をしている中で、音楽科に関わって効果を上げていることについて、幾らか御紹介したいと思います。
 主に電子黒板とデジタル教材に関わることと思いますけれども、、音楽の学習における視覚と聴覚ということに関わって、聴いたことを目で確かめる、テキストとしての楽譜を提示できるといったよさがあります。子供たちの楽譜離れが進んでいる中で、現状では、電子黒板等を使って子供たちが聴いて感じたことを、実際に楽譜を通して視覚的に確認ができるとか、いろいろな音楽の構成に関わることを図式化して見ることができるなどのよさを生かした指導が充実してきているようです。特に〔共通事項〕で言うとテクスチャの学習や、構成に関わる学習において、視覚と聴覚を関連付けた指導を行う際に、ICT機器の活用が効果的に進んでいるようです。
 また、子供たちの音楽表現を高めていく中で、タイムリーなフィードバックというのは非常に大事です。子供たちが演奏した後に、すぐ、それを実際に聴いて確認をするといったときに、非常に音質のいい録音ができ、その場ですぐ再生できるようなシステムが整っていて、そういったことは子供たちにとっても恵まれた環境になっていると思います。子供たち自身が自らの演奏を聴いて、それについてディスカッションをするような学習がスムーズにできているところです。
 ICTそのものは、基本的にツールですので、必要な場面で使うということが大切にされなくてはいけないと思いますけども、現状では、電子黒板等が導入されれば、それをどのぐらい使ったとかという調査等もあって、電子黒板を使うことが目的化されているようなところが見られるというのは課題かなと思います。
 それから、ICT機器の活用に関わっては、電子黒板だけではなくて、タブレットPCなどの普及が非常に進んでおり、教師がどこで、どのように使うかということだけではなくて、子供たちにどのように使わせるのかということを考えることが、大切になってきています。
 佐賀県では、高校生は全てタブレットPCを持って授業を受けている状態になっています。子供たち自身がタブレットを使って、学習をするといった状況が生まれていますので、教師がどのように使うかだけではなくて、子供たちにどのように使わせるのかということも含めてのICT機器の活用を考える時期に差し掛かっているのかなと思っているところです。
 以上です。

【福本主査】
 山下先生、どうぞ。

【山下委員】
 今の副島委員のお話とも関わるので、発言させていただきます。
 楽譜を読むときに、子供たちが、まずどこに難しさを感じるかというと、音楽は動いているのに、楽譜は固定されているため、時間の流れがつかめないということがあるようです。しかし、ICTを導入することによって、今、音楽のどこを聴いているのかとか、歌っているのかということを楽譜上に動的に示すことができるようになります。その意味では、拡大楽譜以上に、ICTの活用の場面が増えるだろうと思っております。
 それから、主体的に学習に取り組むということに関して申しますと、タブレットなどを授業時間の中で用いることに加えて、各自が放課後などの自由な時間を使って、授業で学んだことを活用しながら、いろいろな音楽に親しむということも、今後どんどん広がっていくとよいと思います。もちろん学校の授業時間は十分に確保していただかなければ困りますけれども、このような機会を設けることにより、様々な音楽に触れる時間を補うことができると思います。
 ただ、どうしてもICTといいますと、身体性ということと対極にあるようなイメージがありますので、知的な理解だけに走らないような工夫も必要だと考えております。
 以上です。

【福本主査】
 じゃ、中下先生。

【中下委員】
 今、ICTのお話が続きましたので、私も図画工作の中で感じていることをお話しさせていただきます。
 子供たちにとって、例えばデジタルカメラを1年生から、生活科だとか日常の活動の中で身近に活用するような場面はあります。コンピューターにしても毎日触れるような子供たちが教室の中にいますので、身近になってきているので、それを授業の中で活用するというのは大変大事なことではないかなというふうに考えています。
 今、体験と対極しているようなところもあるのではないかなという話題も少しありましたけれども、そのあたりがとても大切で、子供たちが使っている、例えば映像であったり、機器であったり、そういった中で感じたり、捉えたりしていることが、実は形や色があったり、風があったり、匂いがあったり、空気があったりと自分の中でしっかり感じながら、それが映像と結び付いていたり、その機器の活用と結び付いていたりするんだよという実感と結び付け活用していくことがとても大切だなというふうに思います。
 あと一点は、いろんな授業の中で、図画工作でしたら、題材として有効に実現できないかなということを、私自身も授業研究をしてきたことがあるんですけれども、ともすれば、やはり使うことに目的を置いていたわけではないんですが、結果として授業の中で、それを使うことに子供たちは一生懸命になっていて、こっちの方がおもしろそうで、授業の狙いがややそれてしまったというようなことも実際にありました。ですから、そこのところは、あくまでも、その教科であったり、授業のねらいであったりということをきちんと見据えた上で、それを達成するためのICT機器の効果的な活用というのを踏まえなければならないなというふうに感じています。
 以上です。

【福本主査】
 ICTが……宮﨑先生、どうぞ。

【宮﨑委員】
 表現と鑑賞の関連を図ることについてお話ししたいと思っているんですが、ICTのこともありますので、発言させていただきます。
 共通事項が設定されてから、音楽科ですけど、鑑賞の授業に対するハードルが随分下がって、鑑賞の授業の充実、そして関連が図られるようになったと思うんですが、今回、アクティブ・ラーニングの視点もありますし、もっともっと表現と鑑賞の関連を図っていくことが大事だというふうに思っています。
 その手法の中にICTをうまく活用して見えるようにするとか、見えるようになったことで鑑賞の曲、耳からしか聞けなかったものが、目に見えて、それをまた表現に生かせるというふうなこともありますので、この表現と鑑賞の関連を図るということも今後ますます考えていく必要があるかなというふうに思います。
 以上です。

【福本主査】
 そのほか。では、逢坂先生。ごめんなさい、横田先生、先でよろしいですか。横田先生、それから逢坂先生。

【横田委員】
 すいません。高等学校の美術、映像メディア表現という内容が、もうずっとあるわけなんですけれども、実際、これまで映像メディア表現が作られたときには、それなりの話題にはなったんだけれども、それは、地域によってはすごく先進的な実践をされているところもあるようですけれども、やはり全国的に見ると、実際なかなかできていない。やはり先生方のお話を聞きますと、高等学校の美術の授業でコンピューター室を使いたいけれども、コンピューター室を使えるような状況ではない。
 そんな中で、先ほど副島委員の方からもありましたけれども、タブレットPCが入ってきたときに、これは、うちの研究室でもタブレットPCの活用なんかは研究を進めているんですけれども、現状では、高等学校の美術とか工芸でICTの活用というと、鑑賞でプロジェクターを使ったりというような、そういう教材提示というような形に使われていることがほとんどなんですけれども、タブレットPCが入ってまいりますと、それを表現の1つのツールとして、電子教科書というようなことで、いろいろなことが言われていますけれども、やはり美術では、単に情報を得る側よりも、タブレットPCが持っているカメラの機能であったりとか、編集する機能であったりとか、そういうものが生かされて、今後、すごく変化をしてくるんではないかなというふうに思っております。
 もちろん、その使い方であったりとか、いろんなことには、これから課題もあるんだろうけれども、ただ、そういうようなものが入ってきたときに、先生方が、それを使って本当に活動できるのかどうかというような研修のことであったりとか、そういうようなことも含めて、一気にタブレットPC、今後、教育現場に入ってきたときに、活用の可能性というのはすごく高いんだけれども、それが本当にうまく展開できるのか、ちょっとそういう危惧みたいなものも感じられるところでございます。
 ただ、コンピューターの操作みたいなところがネックになっていたところもありますけれども、子供たち、高校生になりますと、みんなスマホを持っていたりとかして、ほとんどそういう操作のメタファーは持っておりますので、ほとんど何もしなくてもどんどんとツールとして使えるような状況になってきている中で、教師が、それになかなか追い付けないような状況も少し危惧されるなと。
 可能性としては、次の改訂されて実施をされる段階で、こういうものが一気に展開されるんではないかなと、期待と少し不安も含めて発言させていただきました。

【福本主査】
 そうしましたら、逢坂先生、それから長野先生の順番でお願いいたします。

【逢坂委員】
 今のことにも若干関連すると思うんですけれども、学校における芸術教育の充実方策についてというところで、やはり各学年の「B鑑賞」で美術館、博物館の施設や文化財などを積極的に活用する方針の中で、美術館が学校とどういうふうに連携できるかというのは、これから非常に大きな課題だと思うんですね。
 そのときに、まず一つ、学校の方から美術館に出向いて、そこで時間を過ごすという時間を作ることがなかなかできない。若しくは先生方が、そういった時間を割けないほど、実は日々忙しくてできないということも伺っています。
 ですけれども、私たち、こういうデジタル社会の中で、美術館が果たす役割の1つは、アナログであることをきちんと伝えていくことだと思うんですね。PCを使っていろんなことができる可能性は広がっているんですけれども、私たち一人一人、個人が持っている身体性ですとか、実際に自分たちの手を使ったり、聴覚、視覚を刺激して、そこで本物を見ていく。そして、そこでアーティストに出会ったりして、学校の中ではなかなか実現できない、非常に難しいコンピューター操作なども、そこで表現に結び付けていくような活動をアーティストとともに行っていくということも可能性としてはあると思います。
 ですけれども、本当に現場の中で、そういった時間を過ごすことが捻出できるのかどうか。それは、すごく大切なことだと思うんですね。時間の問題というのは、実は非常に重要でして、芸術というのは、時間を掛けて、じっくり育んでいくという意味では、ほかの教科よりも時間というものがすごく大切だと思うので、具体的に落とし込むときに、きっちり考えていく必要があるのではないかというふうに思います。
 あと、自分の価値意識を持って批評し合うというような言葉が、今、学校における芸術教育の充実方策の中にも入っています。今、現代美術の世界では、いろいろな世界と結び付いていますので、医療ですとか、自然科学、宇宙科学、それから、料理なんかもアーティストと一緒にやるというようなことが表現活動にもなっています。そういったいろいろなチャンネルを結ぶということを、美術を核としてやることによって、そこで自分たちの価値、それから、自分たちとは違う価値を持っているというようなことを多角的、多様的に知っていくという1つのきっかけを作ることが、学校と美術館が連携することによってできるのではないかなというふうに思います。
 学校と美術館は、両方ともすごく忙しいので、どうやったら一番いい形で双方のいいところを合体させることができるかなというのは、本当に具体的に考えていく必要がある。アクティブ・ラーニングとなっていますけれども、私たちとしてはアクションプランがすごく必要だと思います。実際のプラン、実現可能なプランを考えていくことがすごく大切だと思います。

【福本主査】
 じゃ、長野先生、お願いします。

【長野委員】
 ありがとうございます。2番、3番、4番について、ちょっと申し上げたいと思います。
 まず、協働的な学びについてでございますけども、書道の例も挙げていただいて、ありがたいんですが、書道という科目の持っている特性というか、宿命といいますか、高等学校からスタートするということ、それは、もちろんそうなんですけれども、やはり古典の美を学んでから発信していくという、芸術も、そういう部分はいっぱいあると思うんです。特に書道は、そういう隘路といいますか、そういうものが宿命的にあるということになりますと、このマル3の書道においてもパフォーマンス書道云々ということになるんですけれども、こういうことを教育課程の中に取り組むような高校の先生がいらっしゃるならばいいんですけども、どうしても時間を掛けて活動したというと、こういう活動は文化活動というか、いわゆる教育課程ではない活動が多うございます。
 私も、授業の中でこれをやっているというのは余り聞いたことがないもんですから、ここで取り上げていただくということの、表現と鑑賞の関連という意味では1つの例かもしれませんけれども、教育課程としてもう少し取り上げていく、どなたが発言したか忘れましたけども、もし、そういうことならば、その裏付けをとっておく必要があるかなという気がします。それが1点です。
 それから、ICTの活用につきましては、今、先生方がおっしゃったように、やはりタブレットで見るという、あるいは映像を流すということは、もちろん大事なんですけれども、実験するというか、ものを見るということがやはり鑑賞の原点だと思うんですね。それは、国宝であろうが、地域の文化財であろうが、私は、そのレベルはいいと思うんですけれども、やはり、そこに飾られていたり、置いてあったり、そのものの持っている空気とか、全体を包む空間というものをタブレットで感じるということもできるとは思いますけども、やはり書で言うと、あるいは絵画ということでも、軸とか、きれとか、軸先とか、象牙に茶色い線が入っていて、これは少なくとも江戸でないと、このぐらい茶色い斑は入らないだろうとかという、書のものとか、美術の作品だけではなくて、総合的に捉えていくということを、表現と鑑賞の中で必要だと私は思いますので、ものの質の高さ云々というよりも、ものをその場で見る環境を学校教育でどう作っていくかということ。
 ICTも大事だと思いますけれども、そのことに少し反するかもしれませんけれども、それをやはり高等学校の先生方に強くお願いしていきたいなと思いますと同時に、4番でございますけれども、どうしても書道の展覧会というのは非常に少のうございます。大阪府の先生が放課後、近鉄特急を使って、正倉院展に往復で急いで行って帰ってくるなんてことを聞いたことがあります。
 ちょっと極端な言い方ですけれども、やはり書道という、どの時代であっても美術館とか、数は少ないですけれども、そういうものに刺激を受けて自分の表現というものを作っていかせたいということがありますので、芸術教育における、あるいは書道教育における鑑賞ということは、もう少し書道の本物というものを展示する機会を我々も探していかなきゃいけないと思いますけれども、それがちょっと少ないなということでございます。
 以上の3点です。

【福本主査】
 阿部先生、お願いします。

【阿部委員】
 1番の方、Aの表現とBの鑑賞ということで、こちらの方についてお話を少ししてと思っています。
 今回、評価の観点も含めて、思考・判断・表現の中に考えたりするとか、それから、気付いたりするというような、感じたりするという鑑賞と表現、思考のところまで踏み込んで、同じ枠の中に収まっていますので、資質・能力を育てるという面で、関連を図るということがより明確にされなければならないのかなと。鑑賞は鑑賞とか、表現は表現というふうにして分断される授業もありますので、より子供の側が実感を伴って、味わったりとか、そして、作ることに移行していくとか、作り出す喜びを感じ取って、さらにまた味わうとかということで、一連の流れの中にAの表現と鑑賞というのがあるんだということを、さらにもう少し整理した段階で書いていかなければならないのかなということは思っています。
 例えば道具、用具のよさです。のこぎりで切るときに、引いて切れるというのは、言葉上は知っていたりするけど、実際に使ってみて、なるほどと思う感覚、こういった感覚をさらに大事にしていかなきゃならないとか、いろいろ具体的には出てくる。それが、先ほどの知識との融合というか、関連性もさらに出てくるかと思うので、そういった意味合いの観点で、関連性を書くというようなこともできるのかなというふうに思っています。

【福本主査】
 ありがとうございました。
 時間の関係で、名児耶先生を最後にしたいんですけど、よろしいですか。では、名児耶先生、市川先生の二人でよろしく。
 じゃ、名児耶先生。

【名児耶委員】
 3番と4番、ICTと芸術教育の充実というところで、先ほどから意見を聞いて、逢坂さん、それから長野先生と同意見なんですけども、美術館に勤めていますと、やはり実際のものを見ていただきたいということが第一です。学校から美術館に出向くのが難しいという問題もあると思いますけども、ICT、私も大学の授業等でプロジェクターとかよく使います。書道なんかでも、作品をたくさん見せるためには必要ですから使います。いろいろと納得してもらいますけど、やはり実物を見ていただかないと線質がよく分からないとか、それから、実際の大きさが分からないというのが非常に大きな問題で、自分がそういう書を書くとか、絵を描くとかというときに、本物を見ていくと、それがいかに重要かということが理解できると思います。
 そのためには、是非美術館を利用していただきたいと思うんですけども、ちょっとここで外れるかもしれないですけど、私、書を中心にやりますが、美術館で書のものを解説したりするときに、この書がいいですかとか、子供たちに感想を聞くんでもそうなんですが、そういうことを聞いても経験がないと、なかなか分からなかったりすると思います。ただ、非常に自分たちと考えているのと違う意見が出てきたりして、おもしろい意見が出てくることもありますんで、やはり生の教育というのは大事なことなんじゃないかなと思っています。
 そのときに、作品について分からなくても、例えばさっき長野さん、表具の話ちょっと出ましたけど、表具とか、その美術品を取り巻いている環境とか、文化的な財産というのかな、そういうのがいっぱいありまして、それを理解してもらうと、初めにありました美術の深い理解にもつながるのかもしれないんですけども、興味を持てるものはいっぱいありまして、そこに日本の伝統的な文化とか、培われてきたいろんなもの、伝統が詰まっていることがあるんですね。それを理解することにもつながるので、是非、中の作品だけ見るというんじゃなくて、周辺の文化、包む文化とか、それから、表具をして着飾る文化とか、どうやってしまったら安全に物がしまえて、長く美術品を楽しめるのかという、そういうところもちょっとあって、それはちょっとずれますけども、興味を持たせるという点では、小さいときからでも、そういうものだったら興味を持てるんじゃないかという気がちょっとしましたので、別に高校に限らず、小学生でも中学生でも、そういうところから出発できるきっかけがあるのかなと。
 そうすると、単一教科でなくて、前回も申し上げたと思いますけど、いろんなものがつながって、絵と書がつながるとか、立体ともつながるというようなことがあるのかなと思いましたので、周辺の文化、もうちょっと頭に入れていただけるといいのかなという、現場で教える先生に、そういうところを反映すればいいのかなということをちょっと思いましたので、それだけです。

【福本主査】
 市川先生。

【市川委員】
 私も、ICTがすごく大切なものだというのは自分自身でも非常に理解しているつもりです。人間として情報の共有とか、今のICTがすごく力のあるところについてはどんどん活用すべきだと思うんですね。
 ただ、一方で心配なのは、ロボットがこれだけ進んで、人工知能が進んで、いずれ芸術的なものもICTそのものが生み出す時代が来るのかなと。教育そのものもICTを活用してではなくて、ICTが中心になって行われるようなときも来るのかなと。別に、その時代はすぐ近くに来たとしても、それはいたし方ないことだと思うんですが、私は、電源を失っても、自分の力で芸術ができる、芸術の教育ができる、そこのところは人間でしかできないことだと私は信じているんです。つまり、電源を失っても、子供と向かい合えるという強さというのもどこかに必要かなと。土くれを持ったときの原始の時代の力強さみたいのも必要かなと思います。
 それから、4番目のところで1つ申し上げたいのは、ICTからちょっと外れます。これまで学習指導要領で、私たちは、地域の特性、実態をかなり踏まえて、自由に創意工夫をして教育ができるようにということで、文部科学省に、そういう課題の与えられ方をしてきて自由にできてきたんですね。
 ただ一方で、私は不安があるのは、その地域の実態、地域の特性を踏まえては、もちろん大切なことなんですけれども、そこの地域で現実に教育をしている教員の力、あるいは学校のそれぞれの力に、果たして地域を、本当に自分たちのことを理解して、自分たちの特性を知り尽くして教育ができているのか、不安なところもあるんです。
 例えば標準的なところで、先ほど美術館との連携、実際に時間がない、忙しいとは言っても、1年間にただ一度でもいいから、必ず美術館に何時間行きなさいということを必修で設定していただければ、これは、何とかしてでも創意工夫してつながろうとできるんですね。
 この芸術という教科・科目も、恐らく全ての教科・科目を自由履修選択教科にされた場合、芸術そのものが選択されるかどうか、私は、今の時代の状況だと危ういと思っています。必要性を幾ら叫んでも、じゃ、国・社・数・理・英より芸術がというふうになりませんか。ですから、必修として必要なものは、ある程度、題材としてでも、これとこれとこれは最低限2単位程度はやりなさいとか、こういう内容はやったらどうでしょうかという提示はしていただいた方がいいかなと私は思っています。その上での各地域の特性、創意工夫、自由度ということで置いていただけるのが一番いいんではないかなと考えております。

【福本主査】
 中村先生、最後に。

【中村委員】
 すみません。全体的な意見というか、感想ということでお話しさせていただきたいんですが、今回のように、資質・能力という観点から学習の中身を整理していったという点から考えていくと、どの教科も共通すると思いますが、学習の内容、中身といったところからもう一度考え直すというプロセスが必要になってくるように思います。とすると、やはり、この芸術教科の表現と鑑賞という今までの柱も、もう一度新たに捉え直しながら、そこで一体化というか、統合したような動きというのが次期の学習指導要領の中では考えていく必要があるのかなと感じているところです。
 それから、もう一つ、協働的な学びとか、美術館との関わりとかというお話がされてきました。きょう頂いた資料の中で、資料3‐2の図画工作、美術、芸術科の教育のイメージという中で、例えば、中学校美術科を見てみると、とてもよく整理されているという感じがしまして、マル1、マル2、マル3、これが知識・技能、それから思考力・判断力・表現力、それから主体的に学ぼうとする態度といったことに整理されるかと思いますが、その中で、「生活や社会の中の美術の働き」という部分がマル3の主体的に学ぼうとするという部分に入っているということは、これは、大きなくくりではないかなというふうに読ませていただきました。
 今まで生活の中の美術の働きといった内容は、美術の中では鑑賞の学習に位置付られていましたけれども、より主体的に関わろうとするということの中で、ここへ位置付られてきたということは、今回、前提になっている社会に開かれた教育課程というところの1つの表れなのかなというふうに読ませていただきました。そうすると、学校としては、社会に教育を開いていくということになる訳ですが、この点で、先ほどの美術館のお話は大事な部分だと思います。これは、文部科学省ではなくてむしろ文化庁の話になってくるのかもしれませんが、やはり学校がそのような動きを加速化させようとしたときに、その受け皿として受け止めていく社会の動きといったことについても、やはりこの次の改訂の中で少し前進ができると、本当に社会に開かれるベースができていくのではないかという印象をもちました。
 以前、私が勤務していた府中市では、小学生全員、市の美術館にバスを借り上げて行って鑑賞教室を行っていて、中学校では、発達段階も踏まえながら、主体的に夏季休業日に美術館で鑑賞をするスタイルとをとっています。市の美術館で本物の作品に触れる、そのような機会を必ず義務教育の中で2回、行っていることは、将来に向けての児童、生徒の美術への親しみや感性を育む上で、とても貴重な機会だと実感していました。
 これは、学校の努力のみでなく、行政がどのように予算化をしていくか、そうした話にもなっていくので、美術館と学校との連携が、なかなか一歩先に進まない大きな要因があるように思います。そこが整理されていかないと、なかなか進められないのが現状だと思います。何かそうした社会全体のバックアップが教科されていくと、それこそ音楽、書道も含めて、社会と学校、そして芸術というものがもっと充実し、社会に開かれたものになるのではないかと感じています。
 以上です。

【福本主査】
 ありがとうございました。
 逢坂先生、手短にお願いしてよろしいでしょうか。

【逢坂委員】
 すいません。中村委員の御意見を受けて、最後にちょっと、これは要望なんですけれども、実は手前みそになりますけど、横浜美術館というのは、小学生までの子どものアトリエと大人の造形活動を支援する市民のアトリエと、あと、鑑賞を支援するチームでエデュケーターが9人いるんですね。9人配置しました、3人、3人、3人。全国の美術館の中でも、学芸員と別にエデュケーターといいますか、そういった教育担当者、専門の担当者が、それだけ配置されている美術館はすごく少ないんです。
 そういうことをきちっと積み上げていかないと学校との連携もできなくて、学校の方も、やはり美術だけでなく音楽、書道、全てきちっと子供に向き合って、それなりの成果を出していくためには専任の先生が必要だと思います。
 だから、学校側も美術館側も、芸術を、これからの未来を支えていく人間にとって不可欠なものだと位置付け、しかも、デジタル社会になっても、人間は最終的に、市川委員がおっしゃったように自分たちの力で何かを作り、切り開いていくためには、芸術が持つ力というのをもっともっと強調していかなければいけないということを考えたら、それを支える人材といいますか、先生と美術館側の教育専門家を常に配置する。それをどんどん広げていく。
 欧米の美術館はみんなやっているけど、何で日本でできないかとよく言われるんですけど、それの最大の原因はそこです。すいません、最後にアジテーションしちゃいました。

【福本主査】
 ありがとうございました。いろいろとちょっと進行がまずくて、時間がもう3時半になってまいりました。
 貴重な御意見を頂きましたが、ここまでとしたいと思います。事務局の方で、また整理していただければと思いますけれども、あと、資料の8と参考資料の3について、ごく簡単で結構ですので、大杉室長の方で紹介の方をお願いいたします。

【大杉教育課程企画室長】
 すみません、それでは2分だけ頂きたいと思います。
 まず資料の8でございます。小学校部会の議論の取りまとめということで、小学校部会、特に言語能力の育成、外国語教育の充実ということを踏まえて御議論をいただいております。
 結論だけ簡単に申し上げますと、中・高で35時間ずつ年間増になっていくということ。そして、それを一律の扱いではなく、各学校の柔軟なカリキュラム・マネジメントの工夫として実施していただくという方向性でございます。そういたしますと、外国語教育における短時間学習のみならず、全ての教科のカリキュラムを見渡したカリキュラム・マネジメントということになってまいります。
 そうした場合に、例えば芸術系教科においては短時間学習ということはあり得ないということでありますとか、一方で、長時間、45プラス15でありますとか、もう少し長い時間もあると思いますけれども、長時間の中での様々な学習の工夫ということは、むしろ芸術系教科、たくさん蓄積があると思いますので、そうしたことも含めて、少し専門的な検討がさらに必要になってこようかと思いますので、そういった場も今後、別途設けていくというような方向性でございます。
 それから、参考資料の3でございます。本日頂いたICTに関する様々な御指摘も踏まえながら進めていかなければいけないと思いますけれども、プログラミング教育、特に小学校教育においてどのような進め方が望ましいのかということでございます。
 1つには、先ほども御意見がございましたけれども、コンピューターに使われるというのではなくて、人間がしっかりとコンピューターを使いこなせる存在になっていかなければいけないということは、今後の人工知能の進化の中であるということ。そういった中で、プログラミングの教育ということに光が当たっているという状況でございます。
 一方で、現在、子供たちに興味を持たせるという観点から、プログラミングを通じて、少しゲームを作るとか、アニメーションを作る、音を出すというようなものが多い中で、であれば図画工作ですとか音楽で、そのまま取り入れられるというようなことも少し見受けられるような中で、その学習がしっかり図画工作なり、音楽の本質的な学びということとしっかり絡まっているのかということを見ていかないといけない段階にあるかと思います。
 そういうことで、参考資料の3をめくっていただきますと、趣旨がございまして、一番下にプログラミング教育、様々な資質・能力を育むという側面とプログラミング言語という側面があるわけでございますけれども、意欲的な取組が広がりつつある一方で、学校教育として進める場合に社会教育と同じでいいのか、小学校段階で子供たちにどのような力を求めるのか、時代とともに技術が変化しても生きる力に結び付いているのか、日本のカリキュラムに合った教材を開発していく必要があるのではないかなどなど、実体験ということとしっかり結び合わせるということも含めて、様々な課題がございますので、一番最後のページにございますように、芸術系教科の先生にも少し御協力を頂きながら議論を進めることといたしております。この成果は、小学校部会などにも反映していきたいと思いますし、必要に応じて、ここのワーキングにつながせていただくような状況であれば、またつながせていただくようなことも考えてまいりたいと思います。
 以上です。

【福本主査】
 ありがとうございました。
 それでは、次回の予定を事務局の方からお願いいたします。

【小林教育課程課課長補佐】
 次回日程につきましては、5月26日木曜日10時から12時、場所は3F2特別会議室です。また、主査からもお話がありましたように、ペーパーによる御意見も頂戴したいと考えております。ファクス又はメール、郵送でも結構です。
 なお、本日の配付資料は机上に置いておいていただければ、後ほど郵送いたします。
 以上でございます。

【福本主査】
 ありがとうございました。
 それじゃ、第7回の芸術ワーキンググループの方、終了させていただきます。どうもありがとうございました。

―了―

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課教育課程第三係

電話番号:03-5253-4111(代表)(内線3706)