教育課程部会 芸術ワーキンググループ(第5回) 議事要旨

1.日時

平成28年2月23日(火曜日) 13時00分~14時55分

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.議題

  1. 芸術教育の改善充実について
  2. その他

4.議事要旨

1.芸術系科目を通じて育成すべき資質・能力について

三つの柱に沿った育成すべき資質・能力の明確化について

 資質・能力の整理は評価と関係するため、学校現場に対して分かりやすさというものが非常に大事になってくる。現場の先生方がきちんと把握できるような形で、資質・能力の整理ができるといいと思う。

 カリキュラム・マネジメントを行う際、各教科等にそれぞれ違う特性があるからこそ、創造的で幅広い資質・能力の育成につながっていくと感じている。そのような各教科の特性ということが、今後も生かされるような資質・能力の示し方を工夫していくことが大切であると考える。

 この3つの柱は、それぞれ個々別々ではなく、【個別の知識・技能】も、【思考力・判断力・表現力等】や【学びに向かう力、人間性】と関連付けて捉える視点が最も大事である。資質・能力は一体的に働いてこそ意味があることを、もっと強調する必要がある。

知識・技能

 資質・能力を三つの柱で整理するという方向性については、基本的には大賛成である。これまで、知識・技能が膨らんできたのではないかという懸念があり、今回の整理によって、【個別の知識・技能】が、高校生なら高校生、中学生なら中学生が、芸術教科を理解していく、あるいは表現・鑑賞していく際に本当に必要なものだけになっていくのではないか。

 美術や工芸における技能は、工夫するということを含む創造的な技能であるべきであり、それを位置付ける項目名に書かれている「何を知っているのか、何ができるのか」という言葉が創造的な技能とは意味合いが違うので、学校現場において誤解が生じる危惧を感じる。学校現場や社会にうまく伝わるような工夫が必要だと思う。

 書道において、「創造的な」という言葉が、美術と同じように“技能”に付くものなのか、【思考力・判断力・表現力等】の中に入るものなのか、非常に迷うところである。

 図画工作科においては、これまでも、体験・経験を通して知り得た知識や技能を使って、新たに資質・能力を向上させていくという新しい学力観をもっていたので、今回の改訂においても、【個別の知識・技能】については、実際に体験・経験した、自分の手や体で知り得た知識・技能というものに特化できるように強調しておく必要がある。

 知識と思考・判断・表現とは切り離せない関係にあるし、学びに向かう力とも切り離せない関係にあることを、もっと強調する必要がある。【個別の知識・技能】が、どのように子供の思考・判断・表現と関わるのか、どのように学びに向かう力を引き出すのかという視点で、知識・技能を捉えることが大事だと思う。

 「論点整理」において、知識については、各教科等に関する個別の知識や技能と、これらを体系的に育んで、社会の様々な場面で活用できる知識・技能という2点が書かれているように、音楽科においても、知識を、表現や鑑賞のために必要な知識と、人間や社会にとって、音楽や芸術というものがどういう機能を果たしていくものなのかといった知識の2つに分けて捉えてはどうか。

 例えば、楽曲の背景や多様性の理解について、音楽における楽曲の背景、音楽における多様性とすると、非常に狭く、音楽だけの切り離された知識として扱われていく可能性があるので、これらを人間との関わりという意味で捉え直し、生涯にわたって生きて働く知識となるように位置付けてはどうか。

 「音符・休符・記号や音楽に関わる用語の意味や働きを理解し」が最初に出てくると、共通事項イの事項が強調されすぎて、最初に知識の習得ありきというような印象を与えるので、順序を入れ替えるなどした方がよいと思う。

 技能について、小学校では、「音楽表現をしたりするために必要な技能」と「自分の思いや意図を音楽で表現するために必要な技能」というように、1つの技能を表と裏の両面から見ているような表記になっていて良いと思う。これらは、中学校、高等学校でもらせん状に発展していくような内容だと思われるので、中学校や高等学校でも両者が含まれるような表記になるといいのではないか。

 小学校で書かれている「音楽表現をしたりするために必要な技能」は、小学校の段階でこのような技能を身に付けて、それを中学校で活用しながら…という意味だと考えれば、中学校や高等学校の段階では書かなくてもいいと思う。そういった趣旨から、小学校のこのような技能を「基礎的な技能」と表記して、違いを出してはどうか。

 中学校の「楽曲における働きと関わらせて理解したり」や高等学校の「音楽表現上の働きと関わらせて理解したり」は、音楽活動を通して理解することが前提になっている。これに合わせると、小学校の「音符や休符、記号や音楽に関わる用語の意味や働きを理解したり」を「…働きについて音楽活動を通して理解したり」とすると、現行の意図を踏まえた理解の内実が具体的になると思う。

思考力・判断力・表現力等

 高等学校段階では、「感性や想像力を豊かに働かせ、造形的な特徴などからイメージを捉えるなどして」とあるが、鑑賞において、作品の中からメッセージをいかに読み取るかということも思考力を鍛える意味で重要だと思う。

 知識も大切であるが、発想を硬直させないこと、柔軟な発想というものが芸術全体に関わって非常に重要であると思う。

学びに向かう力、人間性等

 芸術系教科における“豊かな情操”というものを、それぞれどこに位置付けられるのか、あるいは、芸術系教科として統一できるのか、検討してはどうか。

 世界がグローバリズムやコンピューターの普及によって小さくなってきたからこそ、違う世界や違う価値観が日常に入り込み、理解することが難しくなってきており、自分たちの考えだけでまとまってしまうという傾向が社会的にあると思う。その中で、芸術が私たちに届けてくれるのは、柔軟な発想や包容力であり、そういった表現がどこかに入ると、芸術の持つ価値がより伝わるのではないか。

 「協働して」ということばが最初に出てくるが、音楽活動をする際に大切なことは、必ずしも協働することだけではないので、音楽よりも協働自体が大事という偏ったメッセージにならないよう、順序を変えるなど表記を工夫した方がいいと思う。

学習のプロセスのイメージ図

 現場では「書に対する感性」を育んでいくのだという認識で教育活動を行ってきたが、この非常に大事なものが根底にあるということを、この資料1‐2のイメージ図はきちんと示している。

 資料2‐2の2枚目については、一番下の水色の部分(学習のプロセス図)がこれまでの4観点で見取っていた関心・意欲・態度のようなものとして、授業レベルで対応しているので、先生方が毎日の授業で、上部に向かうように丁寧に指導することによって、子供たちの感性や創造性、文化理解が進んでいくというように示せるといいのではないか。

 資料3‐2の左右の知識・技能/知識の矢印の文言について、理解だけで止まるのはどうかということと、理解(習得)と活用はどちらかだけではないということから、例えば「関連付けたり、組み合わせたりしながら、習得・活用する」「習得・活用し、定着を図る」などとしてはどうか。

 資料3‐2の紫色の部分について、「一体感を味わったり」「要素の働きを理解したり」「他者と共有・共感したり」と3つ併記されているが、「要素の働きを理解して、一体感を味わったり共有・共感したり」というように、「要素の働きを理解する」は、ほかの2つよりも、前に持ってきてはどうか。

 資料3‐2の上半分(出会いから知覚・感受して…)が下半分(表現する、鑑賞する)よりも見た目の幅が広いが、前者が後者よりも大切という誤解が生じないよう、両者の見た目のバランスをよくしてほしい。

 今回の改訂の議論で新しくでてきた「学びに向かう力、人間性」「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」ということを、音楽に関わらず全ての教科の中で、学習のプロセスの中にどう表していくか、検討する必要がある。

 資質・能力の3つの柱の整理と学習のプロセスはリンクするので、キーワードとなるような文言は、どちらでも使われるように整理する必要がある。

芸術系科目において育成すべき資質・能力と指導内容との関係について

 我が国全体として一定の水準に上げていくためには、枠とまでは言わないが、こういう題材を行うと、こういう知識や技能を身に付ける入り口になるということを示すこともあり得るのではないかと考えている。

 今回の改訂では、これまで一方的に教師が与えていた題材を、児童生徒が自由に自分でこれをやりたいと思う気持ちを大切にする方向に、舵が切られていると考えているが、一方で、最低限必要な能力を付けるためにこういう題材をやらせた方がいいという、教師として主体的に児童生徒を引っ張っていくということも必要であるため、両方をバランス良く示すことが必要だと思う。

 図画工作や美術は、身に付ける資質・能力を題材によってパターン化できないという教科の特性がある。資質・能力の3つの柱が順序性をもって展開するのではなく、題材の中で相互に関連し合うものであることが示せると、具体的な授業のイメージがしやすくなるのではないかと思う。

2.アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき芸術系科目の指導等の改善充実の在り方について

 もともと芸術系教科は、資質・能力を育む教科という特性があるため、資質・能力が学習のプロセスの中に表れてくる。それを突き詰めていくとアクティブ・ラーニングそのものの学び方につながっていくと考える。

以上。

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