教育課程部会 芸術ワーキンググループ(第3回) 議事要旨

1.日時

平成28年1月22日(金曜日) 13時00分~14時55分

2.場所

文部科学省3階3F1特別会議室

3.議題

  1. 芸術教育の改善充実について
  2. その他

4.議事要旨

1.芸術系科目を通じて育成すべき資質・能力について

三つの柱に沿った育成すべき資質・能力の明確化について

 資質・能力の三つの柱に沿った整理について、大事なことは、現場の先生たちに分かりやすいものとすること、他教科において育成すべき資質・能力との関連性・整合性を考えることの2点だと思う。

 三つの柱は並列ではなく、例えば資料を山折りにして立体的に考えるといいと思う。左から順に並列で捉えるのではなく、【個別の知識や技能】は、学びや人間性に広がっていったりつながっていったりするのではないかと思う。

 他教科では、知識・技能の習得だけではなく、それらを生かして活用しなければならないという課題から、「知っていることやできることをどう使うか」という【思考力・判断力・表現力等】という枠組が出てきたと思う。しかし、芸術科では、これまでも思考力・判断力・表現力ということそのものも、知識・技能と関わっていると捉えてきた。今回の三つの柱という枠組において、芸術科における【個別の知識や技能】にはどういうものが位置付けられるのか、【思考力・判断力・表現力等】にはどういうものが位置付けられるのか、改めて考えていく必要がある。

 単なる技能ではなく、思考をしている「創造的な技能」が、【個別の知識や技能】に位置付けられているという辺りに、ヒントがあるのではないか。

知識・技能

 今までの音楽教育の歴史の中では、知識偏重とか技術偏重ということが問題視されてきた経緯がある。次期学習指導要領でも、現行と同様に、【個別の知識や技能】の枠にある「音楽表現するための基礎的な技能」の中に、【思考力・判断力・表現力等】の枠にある「音楽を形づくっている要素の聴き取りと、それらの働きが生み出すよさや面白さなどの感じ取り」といった共通事項に関わることも含まれているということを、引き続き押さえていく必要がある。

 “音楽の技能には2段階あり、小学校では第一段階を、中学高校では第二段階を身に付けるものだ”といった誤解を与えないように、“思考・判断・表現の知覚・感受がベースとなった技能”という考え方が分かるよう、書き方を工夫してほしい。

 図画工作科でいう技能には、材料や用具の扱い方に慣れる、習得するという側面だけではなく、表し方を子供自ら工夫してつくりだしていくというようなクリエイティブな技能の側面があり、それをどう入れ込んでいくかが課題だった。その技能が、【個別の知識や技能】の枠に置かれるのは、他教科との関連性が保たれるので、現場の先生にも分かりやすいと思う。また、技能の前に「創造的な」という言葉を入れることで、クリエイティブな側面が理解できるようになっていると思う。

 材料・用具の扱いに慣れて習熟していくという側面だけでなく、子供自身がつくりだす新たな技能で表現がより広がっていく、そんな様子を指導者は捉えて指導してほしいと考えている。現場の先生も、そういう意味で「創造的な」という言葉が技能の前に付いていることを分かってくれると思う。

 単に用具を使えているというのではなく、子供が考えて工夫してその用具を活用しているというところがあって初めて、「創造的な」技能に行き着く。現場の先生たちにとっても、「創造的な」という言葉があることは大きな意味があると思う。

 個性を育てるために一人一人が持っている技能を創造的に働かせなければ、美術、工芸の表現ではないと考えている。このため、「創造的な」技能は、個性を育てるための一番根源のところだと思う。

 「創造的に表す技能」には、子供が半知の状態からそれを更新し、技能として膨らましていくというニュアンスが、「創造的な技能」には、子供たちに既にあるものというニュアンスがあると思う。この「に」と「な」の違いをもう少し考える必要がある。

 音楽においても、単に正しい音程で歌えるとか、正しいリズムが打てるとか、そういったことを技能と言っているのではなく、こういう表現をしたいという思いや意図を実現するための技能である。図画工作や美術の「創造的な技能」と音楽の「技能」が同じなのかどうか、言葉の整理が必要だと思う。

 書道においても、1本の線を表すのにも、きちんとした角度で入ってきちんとした直線を引くだけでなく、例えば遅速緩急の差を付けて色々な表現をすることができるというものが、豊かな表現をするための技能の一つの要素である。技能を生かしながら創造的に発展させるところを、技能として評価するのか、思考力・判断力・表現力等の表現力として評価するのか、整理が必要だと思う。

思考力・判断力・表現力等

 中学生、高校生くらいになれば、人間にとってどうして音楽は必要なのか、時代によってどうして音楽は変わっていったのかなどといった疑問を持って、それについて音楽を聴いたり表現したり、交流しながら考えて解決していくということができるようになってくる。このような芸術に携わる上での課題を解決する力は、社会に出て行くときに必要なものなので、こうしたことに取り組んでいくことも求めていいのではないか。

 「思考力・判断力・表現力等」の「表現力」は言語表現のことと捉えているが、これと「音楽表現」がどう整合するのか、整理してほしい。

 美術教育では、これまで育てるべき資質・能力が示されながらも、現場では、作品制作主義、知識偏重に陥ってしまっているという問題がある。そうならないためにも、性質の異なる表現の能力と鑑賞の能力を注意して位置付けていく必要がある。

 図画工作、美術において、「発想や構想をする」ことと「作品などのよさや美しさなどを感じ取り味わう」ことを一つの柱に入れることは、慎重に考える必要がある。

 「~しながら」ということが小学校図画工作科では大切なことである。ここには、「活動をしながら自分で思いを膨らませていく」ということが書き込まれているので、大切にしていきたいと思う。

学びに向かう力、人間性等

 これからのグローバル社会において、多様な価値や音楽文化を知っていくと思うので、【学びに向かう力、人間性等】の枠に、多様性の理解、それぞれの文化の理解といったものを入れてほしい。また、小・中学校と同様に、高等学校にも「協働」を入れてほしい。

 音楽を通して子供たちが生活を豊かにしようとする意識や態度、授業で学んだことが授業外で、学校で学んだことが社会でというふうに、音楽の良さを発信していこうとする意識、また、それが社会との音楽を通したコミュニケーションにつながっていくような意識も、【学びに向かう力、人間性等】に含まれるのではないか。

 感情を表現、または、コントロールしながら表現していくことの良さや価値も、【学びに向かう力、人間性等】にあるといいと思う。

 三つの柱のそれぞれが独立しているような印象を持ってしまう。評価の観点のことを考えた時に、【学びに向かう力、人間性等】という大きなものが、単純に、今の評価の観点の「関心・意欲・態度」というものだけでいいのか疑問がある。

学習のプロセスのイメージ図

 一番上に、「音や音楽の出会いと特徴の把握」とあるが、まずは直感で音楽を捉えるということは、これから音楽や芸術と出会っていく上で非常に重要なものである。

 「音や音楽の出会い」は非常に大事であり、イメージ図によく示されている。さらに改良を加え、「音や音楽の出会い」を基に思考・判断して表現していくということが、もう少し重点的に示せるとよいと思う。

 まず音を聴くところだけをスタートとするのではなく、音を出して感じることから始まることもあるので、学習の始まりには、その両方の場合があることを示した方がいいのではないか。

 音楽の学習において、知覚・感受のときの活動と、それを思考の深まりにつなげるときの活動は、どちらもグレーの箱で示されているが、質に違いがあると思う。また、その中身には言語活動が含まれているが、「言葉で表す」というと一方的なものに感じる。子供たちが協働することを大事にして、言葉を整理すると良いと思う。

 音楽の学習において、知覚・感受は学習の始めにだけあるのではなく、子供たちが、色々と思考・判断して学習を進めていく中でも、常に知覚・感受が関わっているということを示せるとよい。また、知覚・感受は、表現領域にも鑑賞領域にもあることなので、知覚・感受が表現と鑑賞に分かれていくと誤解されないように示してほしい。

 音楽のプロセス図について、個人の中での学習プロセスと、他者との関わりの中での学習プロセスを整理するといいのではないか。例えば、個人の中で、学習の見通しを持ち、振り返り、また見通しを持つといった軸を通した上で、他者との関わりにおいて多様性に気づくという広がりが示せるとよいと思う。

 図画工作科、美術科等のプロセス図について、「発想や構想をする」「創造的に技能を働かせる」「作品などのよさや美しさなどを感じ取り味わう」の3つの力が相互に働き合っていることを示している灰色の矢印が一番大事なところで、この部分を先生たちに理解してもらうことが重要である。創造的な技能を働かせながら、発想や構想をしたり、また方法を考えてやってみたりといった繰り返しが、課題解決に向けた主体的な学びであると思う。

 図画工作科、美術科等の現場の課題の一つとして、表現と鑑賞の活動で発揮される子供の資質・能力が、別々に捉えられる傾向が挙げられる。このイメージ案で、3つの資質・能力が相互に関連しながら一体的に高まっていくということが分かりやすく示されていて良いと思う。

 図画工作科、美術科等のプロセス図のうち、「言語表現、言語活動」の大きな矢印について、働きかける、発信するイメージだけではなく、働きを受けるという往還的なイメージも示せるといいのではないか。

 「創造的な技能を働かせる」場面でも、協働的な活動は起こると思うので、その点も示せるといいのではないか。

 図画工作科、美術科等のプロセス図について、スタートが書かれていないところが、子供たちが自分の学びとして、どこからでもスタートできるので、非常に良いと思う。逆に、目標やねらいであるゴールはあった方がいいと思う。

 書道のプロセス図について、表現領域と鑑賞領域が互角に示されているところが良いと思う。書を書くということは、先人たちのいいものをたくさん見ることが非常に重要であり、そういう点で、鑑賞を重視することは大変良いことだと思う。

 学習の見通しを持つことや、学習を振り返り、学んでいることの意味や価値の自覚を持たせることは、一つ一つの学びの中で行われていることであるので、プロセスの中に位置付けてほしい。

 見通しと振り返りに関連して、子供たちが、自ら課題を発見して解決していくプロセスなども盛り込めるといいと思う。

 実際にいろいろ活動していく中で、思考・判断して、それが深まっていって最後の学習の振り返りにつながっていくという形になる方がいいのではないか。

幼稚園・小学校・中学校・高等学校を通じた芸術系科目において育成すべき資質・能力の系統性について

 書道は、小・中学校国語科の書写を基盤にしているため、その円滑な連携が求められている。小・中学校では国語科で学習する「書を構成する要素やその表現効果に関する知識・理解」が、他の芸術系科目と同じように、高等学校芸術科(書道)の【個別の知識や技能】として位置付けられたのは、教科を超えた連携を考える上で重要である。

芸術系科目において育成すべき資質・能力と指導内容との関係について

 小・中学校では、現行学習指導要領において〔共通事項〕が置かれ、教員にとっても児童生徒にとっても、音楽を捉えやすくなった。高等学校においても、同様に、〔共通事項〕を置いてもいいのではないか。ただ、その際、発達段階を考慮する必要はあるが、共通した言葉があった方が分かりやすいのではないか。日本語は、一つの音をとっても色々な表現があるため、音楽の授業で音楽用語をどう使うかが難しいと感じている。

 小・中学校に置かれている〔共通事項〕は、幼児からプロの音楽家まで、まさに共通して必要なことが書かれている。高等学校だけそれがないのは違和感がある。その際、例えば、小学校で示されている強弱と、高校生に対して教えていく強弱との扱い方の差異を示していく必要があると思う。高校生には、高校生ならでは学習の支えとなるものとしての〔共通事項〕の示し方ができればいい。

 高等学校の芸術科(美術、工芸)の問題として、授業で作品をつくることが目標になってしまっていて、プロセス図の真ん中の紫色で示されている、すべての学習活動に共通に働く資質・能力を育成するということが、不明確になってしまっている点がある。小中学校では〔共通事項〕として示されているので、高等学校芸術科においても、〔共通事項〕のようなものを明確にするべきだと思う。

2.アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき芸術系科目の指導等の改善充実の在り方について

言語活動について

 言語活動に関し、優れた教員とそうでない教員とでは、指導の際の言葉がけの仕方が非常に豊かであるか、あまりそうではないかという差が明確にある。例えば、こういう弾き方をしなさいという時に、「遠い遠い空に向かって羽ばたくように弾くんですよ」というような言葉がけをする教員もいる。芸術による言語活動は非常に特徴的だと思う。

 芸術の教科における言語活動の特性として、目に見えない抽象的なものを言葉で表すということ、芸術においての言語というのは、何かに例える、何かに置き換えるといったアナロジーであるということの2点だと考える。

 本当は音だけで対話ができれば素晴らしいが、それができないので、表現活動では、補足的に言葉を使っているのではないか。また、音楽を聴く活動では、その音楽をどう価値付けしたかは、言葉でしか表せない。価値付けたものを相手に伝えるために言葉を使うということは、非常に大切なことだと思う。

 音でコミュニケーションすることが音楽活動の究極とよく言われるが、それを補足するために言語活動をするということでは、言語活動が手段の域を脱せなくなってしまう恐れがある。現行の学習指導要領において、全ての教科に言語活動が位置付けられたのは、私たちが言語で思考しているからである。音楽を表現するときも、音楽に感動するときも、実は言語で物事を捉えた上で、言語で感じていると言える。したがって、音楽表現を“サポートするために”言語活動するというのではなく、音楽表現の際の思考・判断と言語活動をもっと一体化させていくことを考える必要がある。

 言語は単なる手段ではないと思う。美術や工芸においても、ぱっと見て、いいなと思い、何がいいのか、なぜいいのかと深めていくために言語というものが重要である。

 音楽の学習において、言葉で表現することの重要性と、音楽の表現の重要性というものを比べた時に、言葉の方にウェートが置かれることは、本来のあり方ではないと思う。

 表現したいが技能が伴わないことがある。そこで、発達段階を考えたときに、音楽でいう音声と言語を関連付けながら学習していくことが非常に大事だと思う。また、音はすぐ消えてしまうので、言語を通して感動を共有していくことも大切であり、音だけで学習していくのではなく、言語を重ねていくことが重要だと思う。

 芸術教育における言語の在り方は、幼稚園からの発達段階に応じ、論理的思考ができるようになるにつれて、どのような時期にどのような言語活動が適切なのかということと深く関わってくると思われる。

 アクティブ・ラーニングの視点がどこに現れているかと考えたときに、例えば図画工作科の授業では、一人一人が孤独に頑張るのではなく、友達との交流活動を通して、表現活動の途中で生じてくる課題を協働的に解決していくといった場面が想像でき、イメージ案では、菱形の「他者への働きかけ、協働」が当てはまるのではないかと思う。

 書道は、文字や言葉が素材なので、鑑賞領域にも表現領域にも言語活動が位置付けられていることは、音楽や美術、工芸との違いという点で、分かりやすいと思う。学校の教育活動の中でも、言語活動を重視している実践事例が多いので、この点が強調されて良かったと思う。

 書道は、基本、字を書くことなので、言葉に対する意識が強い。このため、言語活動が鑑賞にも表現にも出てくることは大変良いと思う。

以上。

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-- 登録:平成29年04月 --