教育課程部会 芸術ワーキンググループ(第2回) 議事要旨

1.日時

平成27年12月21日(月曜日) 13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省3階3F1特別会議室

東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 芸術教育の改善充実について
  2. その他

4.議事要旨

1.芸術系科目を通じて育成すべき資質・能力について

芸術系科目を学ぶ本質的な意義や他教科との関連性について

 将来、音楽が役に立つかという問いには、子供達も、必ずしも肯定的に答えることができないかもしれないが、実際の生活では、音楽や芸術に触れることで生活が豊かになっていく。そういう意味では、将来、生活を豊かにしていく上で、美しいものを見て美しいと感じる、美しい音楽を聴いて美しいと感じる、という芸術を感じ取っていく力を教育で培うことが重要。

 「豊かな感性や美術を愛好する心情をもつ」というものを、教育の現場で形にして子供達に伝えることは一朝一夕ではできないが、それが大切であることをどこかに据えて、そのプロセスにいるということを、学校教育の中で子供達に伝えて行ければいいと思う。

 ものを実際に触りながら感じながら、失敗しながらつくっていくという体験が、子供達にとって自分を確かめていく時間になると思う。芸術教育の中で、そうした経験を通して育まれた感性、創造性、知性などは、色々な教科で学んだ知識や方法を使いながら課題を設定したり、解決したりするときにも生きてくると思う。

 児童生徒が、芸術と人間の関わり、つまり芸術は人間や社会、そして自分にとってどういう意味があるのかということが分かって、学校教育を終えさせていくことが、芸術教育の究極のねらいだと考える。それは経験をさせなければ分からないので、表現や鑑賞の活動があり、その経験を通して、創り出すこと、感動すること、音楽や美術といった芸術と関わって自分の感情がどのように変化したのか、などを認識することが大事になる。
 創り出す、あるいは感動するためには、感性と知性の両方を働かせて対象を捉えることが必要になってくる。これからの子供達には、物事を感性だけで捉えたり、知性だけで捉えたりするような人間になってほしくないわけであり、知性的な側面と感性的な側面の両方でできている芸術を扱うことで、知性と感性で対象を捉えることができ、自分の感情の在りかやその原因を自分で認識できる人の育成を目指すのが、芸術教育の求めるところだと考えている。これは、やがて将来、どのような職業に就いたとしても生きていく上で必要となる汎用的な能力であると思う。

 芸術教育は、知育・徳育・体育のうち、徳育の部分、特に、感性を磨くというところを担っていると思う。感性がどのように磨かれるかは非常に難しいが、憧れを持つことも感性を働かせるというところにつながっていくと思う。

 感性とは、受動的なことだけではない。感じ取って自分を変革していく、価値に関わって新しいものを創造していくというものも含めて感性だとしていいのではないか。

 人間の持つ諸感覚全体を働かせた創造する力が、文化や文明を築いてきたものであり、これからの教育においても重視すべきものである。また創造する力は、知性と一体となって築き上げられていくが、感性そのものが基盤となっているため、特に芸術教育において根幹に据えられるべきものである。これらの育成に当たっては、手や体全体を使って材料を変化させ直感に訴える造形活動、造形教育が大切である。作品主義にならず、形を作るプロセスを重視し、造りながら描きながら、子供達が創造性を育んでいくと考えている。

 小学校では、図工の時間に、感性を働かせながらつくりだす喜びを味わい、創造性の基礎を培っていく子供の姿がよく見られる。例えば、図工カードに「きょうの図工の時間、私は頭で考えないで手で考えました。」と書いてあった。また、色づくりの授業では、友達の作った色に感心し、その作り方を教えてもらって、今度は自分で作るなど、コミュニケーションを通して課題を解決したり、友達と協働して新しい意味や価値を創り出したりしている。これからの社会を支えていく人材として、主体的に学び、創造する力が求められているが、これらの姿から、芸術教育はその根幹を担っていると思うことができる。また、そうした資質・能力は、ばらばらにではなく、一体的に育まれていくものと考えている。

 知性だけでは理解できないことがあり、身体性や芸術的な思考と言われるような“身体を使って分かっていく”ということは、これからの子供達にとって非常に重要な能力であると考える。知性と感性の融合・統合は、そういう行為によって初めてなされるものであり、他教科以上に芸術教育が担っていると言っていいと思う。

 人との関わりの中で見出したものはなかなか忘れないし、体の中で覚えて経験したことは、後になっても自分の中によみがえってくる。そうした観点からも、図画工作科において、人との関わりや、心と体で実感を伴って自分で感じ取る体験を大事にしていきたいと改めて思う。

 子供たちが置かれている生活環境が昔とは違うことをもっと認知すべき。例えば、カラオケは文字を追っているだけで、歌詞が体の中に染み込んでいて、そこから歌っている訳ではないので、本当に歌を歌っているとは思えない。また、音楽情報も映像で説明されるため、音楽も“見る”時代になってしまっている。国語の授業で、音読すること、詩を暗唱して発表することと精神的に近いものがあるが、日本語の抑揚と句読点を意識して相手に伝えること、言葉を聞いて想像する経験が、今の子供達には少ないと考えている。

 デジタル社会において、実はますます芸術が必要だと感じている。オンとオフで全てが簡潔にスピーディーに変化していく社会において、人間性を回復するために、五感をフル回転させる芸術の世界が重要だと考えている。芸術の世界というものは、人間の質を高めるために、どのような分野で働いている人にも必要である。

 学校生活の中で、生徒が自己表現できる時間や場というものは、あるようでいてあまりないと思う。自分で何かを構築して作っていくという経験は、与えられないとできないし、その経験は成長につながると実感している。

 学校の図工の授業の中で、子供は作品ができあがることがうれしいだけでなく、その作品を、つくったり表したりした自分を認めてほしいと思っている。子供が作品をつくりだす行為は、自分を創り出していく、自分を更新していくことでもある。つまり、新たな価値を自分で見付けていくことであり、これが、育成したい資質・能力であると思う。

 芸術教育の本質には、感情の表現とコントロールがあると思う。自分の感情をコントロールしながら表現したり、作品に自分の感情を投影しながら自己理解を深めたりするなど、メタ的に自分を見ながら自分の感情を捉えていく側面がある。子供達の感情に関わることを強く捉えて指導できる芸術教育は、非常に意味があると思う。

 今の社会の子供達にとって必要な想像力は、他者を思いやる力だと思う。美術の世界は一つの正解がある世界ではないので、世界や社会は、違う考えの人たちでつながっていて、それを排斥するのではなく、自分が受け入れられない価値もあるということを知っていく、違いが大切だということを教えるきっかけになる。個々の子供達が、それぞれ自分たちにとって大切なものが何かを考え、人とは違うことを大切にするような学習が芸術の教科でできれば、他教科にはない意義が出てくるのではないか。

 特別活動における音楽や美術の活動は、そういった場での活躍が、子供達の達成感や満足感、充実感などを生み、自己肯定感につながっていくという効果がある。また、より良い人間関係づくりなどの生徒指導的な側面もある。子供達の社会へとつながる自己肯定感や、社会の人とのつながり、集団形成などの観点からも、芸術教育の可能性が考えられるのではないか。

 学校の実践を見ると、特別支援学校で車いすを使いながら素晴らしい作品が生まれたり、課題の多い学校で書道の授業を通して学校生活へ向かわせていくという実践が行われたりする。そのような点が、学校教育の中での芸術の役割ではないかと思う。

 例えば、不登校の子供達を対象としたサポートセンターでは、音楽や美術、その他の興味があるものに打ち込める環境を用意したりしているが、芸術教育は、小中高校生にとって居場所づくりとしても機能していると思う。

 資質・能力を説明する際に、「いろいろな」「様々な」「多様な」という言葉が使われているが、例えば特徴が多様なのか、背景が多様なのか、認知や思考のプロセスが多様なのかなど、何が多様なのかを整理する必要があると思う。

 美術において、作品の鑑賞は、自分が思ったことや感じたことを言葉で表現していくことである。これは国語の力を付ける一つのきっかけにもなる。

幼稚園・小学校・中学校・高等学校を通じた芸術系科目において育成すべき資質・能力の系統性について

 前回改訂で図画工作科と美術科に共通事項が定められたことで、小学校と中学校のつながりができてきたと思う。

 幼児教育との接続について、更に検討する必要があると思う。例えば音韻の意識や伝統文化といった点が、幼児教育においてどのように位置付けられるのか。例えば、わらべ歌など、日本人が培ってきた自然に対する感性や感覚に関することが、もっと表面に出てきてもいいのではないか。

芸術系科目において育成すべき資質・能力と指導内容との関係について

 授業の中では得られない達成感などを得られるということで、授業の成果発表の場としての合唱コンクールや美術展などがあるが、逆に、合唱コンクールの練習のための授業、美術展への出品のための制作を行う授業というような逆転現象が起きてしまっている。こうした現状については、芸術教育の本質に立ち返って考える必要がある。

 音楽は、かつては何かを歌う、何かを演奏すること自体が目標になっていたような気がするが、現行の学習指導要領から、共通事項が示され、それから教師の意識が変わったと思う。授業においても、何々を歌ったではなく、どういうことを考えながら歌ったとか、どういうことを工夫して勉強したとかいうような意識付けをするようになった。この点は、次の学習指導要領においても引き続き大事にしていって欲しいと思う。

 高等学校段階においては、伝統と文化について「理解する」に留まらず、もう一歩踏み込んで、子供達が文化の担い手であるという意識や使命を持つという観点が欲しいと考える。表現する者だけが文化の担い手なのではなく、鑑賞する側が積極的に享受、感受していくことも文化として必要であるため、その両面から子供達が自分にできることは何かを考える意識を強く持ってもらいたい。

 学校に童謡を歌いに行く活動の応募がかなり減ったという経緯がある。おそらく、教員の世代交代が進み、昔から歌い継がれてきた日本の歌に興味を示さない先生が増えたからではないか。音楽の教科書にも何曲か載るようになったが、若い先生たちは知らないし、示された教材から何を扱うのかは先生たちに任されているので、昔からの日本の歌を歌い継いでいくところの困難さを感じる。

 日本語はリズムではなくメロディーであるにも関わらず、今の若い世代の音楽は、リズムによって相手に強く伝えようとする作り方をされている。これらは日本語のアクセントに沿っておらず、句読点がないため、そこから日本語をキャッチすることが難しい。子供達に興味を持ってもらうために、若い世代の歌を教材とすることがあってもいいが、学校教育の中では、先人達が残した日本の音楽教育の基となる歌を取り上げて欲しい。
 また、今は、濁音と鼻濁音の使い分けが失われてしまっている。音楽の先生達も知らないので、ぜひ検討いただきたいと思う。

 日本は、例えば海外から色々な音楽が入ってきて、自分たちなりに変化を加えて、それが根付いてきたという歴史がある。音楽以外の芸術であっても変化をしていくものなので、伝承することだけを固く考えるのではなく、変化が起きることを前提に、何を変えてはいけないのか、何を大事にしたいのかという視点で、児童生徒が伝統的なものにアプローチできるようにするといいのではないか。

2.アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき芸術系科目の指導等の改善充実の在り方について

 音楽の本質とは少し離れるかもしれないが、力を合わせる喜びも子供達の学習には非常に大切であるため、協働で学習するということが意識できるような学習の在り方を考えていく必要があると思う。

 単に音楽や美術が生活の中にあるというだけではなくて、そこで周りとの関わりを子供たちに実感させるという意味で、この教科をこれからどうしていくかということが、次の学習指導要領の中に反映される必要があると思う。

 書道においても、パフォーマンス書道(音楽に合わせて手拍子やダンスをしながら書く)やリレー書道(1人ずつが1点1画を書く)などが行われるようになり、協働的な学びや書による社会への働きかけという点で新しい流れが生まれてきている。

3.資質・能力の育成のために重視すべき芸術系科目の評価の在り方について

 小学校図画工作科においては、鑑賞の中で話したり聞いたり話し合ったりするという言語活動が位置付けられているが、それとともに、子供は、形や色、材料などを自分で感じ取り、操作しながら、行為を通して、自分と向き合って言葉を交わしているところがあるので、そうした点も大事に見取っていくことが重要だと考える。

 小中学校に比べて、高等学校における観点別評価の推進がなかなか進んでいない。また、アクティブ・ラーニングの視点から取り組まれた授業において、どのように評価していくのか、難しいことが予想されるので、その点も検討していく必要がある。

 パフォーマンス書道やリレー書道などの新しい取組を取り入れたときの評価の在り方も考えていく必要があると思う。

 感性について定義されていないので、感性の豊かな生徒とそうでない生徒の違いが何か、明確になっていない。それを測るスケールがないと評価ができないのではないか。芸術教育にはどのような効果があるのかというところを、例えば科学的な研究の成果などを参考に明らかにすることはできないか。

4.必要な支援(特別支援教育の観点から必要な支援等を含む)、条件整備等について

 教員の声として、授業時間数についての心配がある。授業時間数が減ると、正規の教員ではなく講師でもいいとなったり、音楽か美術かどちらかの教員だけでいいとなったりという現状がある。

 学習指導要領では、各学校で各教員が創意工夫して授業できるよう、題材等を具体的に示さないできたが、一方で、若い世代の教員は、何をやったらいいかが分からないでいたりする。学習指導要領は大綱的なものを示すものではあるが、その生かし方という面では、具体的な授業の道筋のようなものが示されると、学校現場としては助かるのではないか。

 学校の先生は、生徒に大きな影響力を持っている。ぜひ、一人一人の子供の特徴を生かすことを先生が助けてくれるような環境にしていってもらいたい。

以上。

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-- 登録:平成29年04月 --