教育課程部会 芸術ワーキンググループ(第1回) 議事要旨

1.日時

平成27年11月23日(月曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

合同庁舎第7号館東館3F2特別会議室

東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 芸術教育の改善充実について
  2. その他

4.議事要旨

1.芸術系科目を通じて育成すべき資質・能力について

芸術系科目を学ぶ本質的な意義や他教科との関連性について

 我が国だけでなく、国際的な文脈においても、どのような資質・能力を教育の中に位置づけていくのかということが求められている。我が国での教育課程における資質・能力、特に芸術教育分野における資質・能力はどのようなものかということを、この芸術ワーキンググループで議論していきたい。

 例えば、ノーベル賞の受賞者がしばしば芸術に深い造詣を持ち、そのことについて深い言及をしていることがあるが、その例を一つとっても、芸術は人間にとって極めて重要な能力形成だと考えることができる。この芸術ワーキンググループでは、子供たちの資質・能力として、芸術、創造、伝統文化といったものの中に、どのような創造的な能力があるのかということも明らかにしていきたい。

 図画工作科は、内容を教えるというよりも資質・能力を育てる教科であると考えてきた。今回の改訂は、資質・能力をどう育てるのかを明確にしたり、深めたりすることと受けとめている。また、資質・能力を明らかにするとともに、他の教科で育成する資質・能力とどう関係づけられるのか、図画工作科で育成する資質・能力が他の教科で育成する資質・能力と一体的に育っていくことを、学校現場の先生に分かりやすく伝えることが重要である。

 美術教育については、義務教育段階では、何が身に付いたのかはっきり自覚できないが、将来、花開くものである。育成すべき資質・能力というものを、子供たち一人一人に自覚させ、また、それはいずれ花開いていくものになる、ということを理解させることができるとよいと思う。

 授業の中で言語活動が盛んに行われるようになってきたが、それは本当に本質を捉えた言語活動であるかということに関して、真剣に考えなければいけない。その際、芸術がどういう思考を持っているかということについて、深めていく必要がある。その時には「内なる言語」や、まだ言語化されない部分の言語、直感とつながっているような言語が、非常に大事になってくると思う。そこを押さえつつ、最終的に言語化も必要であるが、その部分との連携をどうしたらいいか、議論を深める必要がある。

 芸術の世界は一人一人が違う表現をどうやって作っていくかというオリジナリティが重要。違う価値観がある、違う表現があるということを伝えることによって、他者がいる、他者とどうやって共存していくかということを伝えていくことが大切だと思う。最終的には、違いを認めつつ、世界が平和に共存していくためにはどうしたらよいかということで、芸術が必要だということを伝えていくことができれば、芸術の存在価値、その社会における意義というものが、一般の人にも伝わっていきやすくなると考えている。

 芸術は平和なしには成り立たない。今の国際社会は非常に危険な状態にあり、ISの文化施設の破壊やタリバンによるバーミヤンの遺跡の爆弾破壊があったが、これは国際社会、人類に対する犯罪だと思う。学校の教育では、そういうことにつながらないように色々な教科・科目、芸術を教えながら、平和を大切にし、芸術・文化を愛好する子供を育てなければいけないと考えている。

 子供たちが、自分たちの力で考え、判断して何か形を作っていくという自主性を、芸術を通して育成することが大切だと思う。

社会に開かれた教育課程

 子供たちが身に付けていくべき資質・能力を考えること、また、そのことを子供たちも認識することは重要であると同時に、保護者や同じ学校の他教科の先生方に、芸術教育によって、どのような力が身に付いて、それが社会との関わりでどのように生きていくのかを、分かりやすく伝えられる学習指導要領にする必要があると考える。

 子供たちが学校の中の閉じられた教育課程、例えば図画工作科でやっていることが、地域の人や社会の人に分かってもらえていないのが実態である。しかし、子供自身は、身近な人や地域の人、社会とつながりたがっているので、社会に開かれた教育課程という視点は非常に大事だと思う。

 学校で、音楽を学んでいることが社会に開かれているかということについて、考えることがある。学校では、合唱コンクールや文化祭など文化的な行事が多くあり、学校の中でも、授業から出て活躍する場面がたくさんあるが、教科の授業で学んだことが学校の中で生かされているのか、学校で学んだことが社会に生かされているのかということを、もっと考えていく必要がある。芸術教科の関係者ではない者に、芸術教科が必要である、役に立つと言ってもらいたいと強く思っている。

 ユネスコでも提言されているが、子供たちに向けての芸術教育をどうするかも大事だが、市民や教員に向けて、分かりやすく芸術教育の意義や教育課程で示されている内容を理解してもらうことも、教員養成大学・学部の非常に重要な役割である。

三つの柱に沿った育成すべき資質・能力の明確化について

 資質・能力の三つの柱の根底を成す力の中に、感性があると思う。その感性をどのように働かせていくか、どのように導いていくかについては、あらゆる教科・領域で行われているが、外に発信していく力である“外なる言語”も大事だが、自分の中の対話である“内なる言語”も大事である。
 ものを見たり、聞いたりした初発の感覚というものを整理していく中で、思考力が働き、発信力になっていくものなので、友達の前で発表したり、意見を述べたりする外に向かう言語能力よりも手前にある“内なる言語”を芸術教育でどう育むのかが大事だと思う。

 学校現場の一人一人の先生に伝えるのは非常に難しいが、新しい学習指導要領が出たときには、一人一人の先生が自分のこととしてしっかりと受け止めてもらえるようになるとよいと思う。また、育成すべき資質・能力の資質・能力観みたいなものは、一人一人異なるため、一人一人の先生が共通して同じような見方や考え方ができるようになると、新しい教育の在り方が浸透すると思う。

 これまでの芸術教育は、子供たちに力を付け、子供たちの能力を高め、やがてその子供たちが幸せになる、といった視点で教育を行ってきた。しかし、これからは、芸術教育で育まれた資質・能力が子供たちの幸せとともに、その子供たちがやがて社会に出て、平和で創造的な社会や持続可能な社会を創っていくことにどのように寄与、貢献するのか、ということまでを見据えて考える必要がある。
 世界的には、2010年に世界の芸術教科の指針が出され、その柱の1つとして“世界、社会を平和にしていくための芸術教科の在り方”が論じられているところ。これは、教育課程企画特別部会「論点整理」にある資質・能力の三つの柱の3番目の“どのように社会、世界と関わりよりよい人生を送るか”に大きく関わってくると考えている。

 芸術教科における学力が何かということを考えたいと思う。芸術教科の力がペーパーテストで問えるものばかりではないというのは十分わかっているが、改めて、「音楽や美術の学習を通じて、こんな力を子供たちに育てている」と言えるものを明確にしなければいけない。

幼稚園・小学校・中学校・高等学校を通じた芸術系科目において育成すべき資質・能力の系統性について

 小学校では、専科の先生ではなく、学級担任の先生が音楽の授業を担当していることが多いため、なかなか学習指導要領の趣旨が授業の実践につながらず、6年間の積み上げが難しいことが課題になっている。その中で、専門性は専科の先生ほど高くないが、頑張っている先生たちに、どのように分かりやすく学習指導要領の趣旨を伝え、それを通して授業を行ってもらうかということが、課題の一つである。
 また、小中学校から高等学校の必履修までの10年間のスパンを考えたときに、高校の音楽の授業が学習指導要領を踏まえてどうなっているのかということを考えていきたいと思っている。

 現行の学習指導要領においては、幼児教育と小学校の間の溝は相当大きいと思う。このため、幼児教育との接続をしっかり考えていく必要がある。

芸術系科目において育成すべき資質・能力と指導内容との関係について

 学習指導要領の前回改訂の良かったところは、専門的に音楽を学んでいる児童生徒でなくても、批判的にものを見たり積極的に自分の表現をしたりと、音楽に対してアプローチしやすくなったことである。これは、〔共通事項〕の設定によって、音楽は専門家がやるもので、自分はそれを眺めたり楽しんだりすれば良いという状態から抜け出して、積極的に音楽に入り込んでいけるようになったことが大きな転換点だったと思う。今回の改訂においても、この点は引き継いでいってもらいたい。

 日本の一般の人が、美術、特に書が分かっていないことが多いと感じている。美術は日本人の一番根本的なアイデンティティであり、例えば、外国では、日本の伝統文化を語れる人間でないと、日本人だと認めてもらえない。日本人のアイデンティティを示すには、他の国にないものを学ぶことが一番重要と感じている。

 子供たちの教科を学んだときの有用感について、「音楽の学習が好きだ」という質問に68.1%の児童が肯定的に回答したが、「役に立つか」という質問には47.7%であり、図画工作も「好きだ」が80.3%に対して「役にたつ」が60%であった。これは大変大きな問題だと思う。子供たちは、図画工作や音楽の勉強はとてもよいと思うのに比べ、その勉強が役に立つと思っていないということである。
 例えば、学習指導要領の目標や学年目標レベルでは、社会や生活の中でどれだけ音楽が役に立つのかということを指導しましょうと書いてあるが、指導内容レベルになると、具体的に書かれていない。指導内容に書けるのか、内容の取扱いに書けるのかという点などを考えなければならない。

2.アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき芸術系科目の指導等の改善充実の在り方について

 「アクティブ・ラーニング」という言葉が色々なところに広がっているが、基本的には、芸術で関わってきたことはこれまでもアクティブ・ラーニングだったのだろうと思う。その中で、子供たちが何を身に付けてきたのか、何を学んできたのかというあたりの整理が必要である。

 アクティブ・ラーニングという言葉が一人歩きする懸念があったが、改めてアクティブ・ラーニングの3つの視点を見ると、「習得・活用・探究という学習プロセスの中で」と書かれており、単にみんなでやるとか活動的にやるとかではなく、「習得」が位置づけられていることが大事だと思う。

 図画工作科において、思考力、判断力、表現力を育成しようと考えている授業を改善していこうとすればするほど、例えば創造的な技能や鑑賞する態度など、それぞれの資質・能力が関連して働かないと、1つの能力だけを高めていくのは難しいということが浮き彫りになった。その意味では、アクティブ・ラーニングの3つの視点(深い学び、多用な学び、主体的な学び)について、それぞれ相互にどう関連していくのかということを、丁寧に学校現場の先生に見えやすい形で示していけるといいと思う。

 アクティブ・ラーニングは、新たな1つの手法ではなく考え方であり、例えば、音楽の授業を考えてみると、子供たちがグループで学ぶことや集団で何かをする活動は今もたくさんあるが、先生は、その活動が学びにつながるような意識を持って指導していたかというところに、メスを入れていかなければいけないと思う。

3.資質・能力の育成のために重視すべき芸術系科目の評価の在り方について

 自分の中で感じたことや考えたことなどの内面での変化をどのように評価するかということが、芸術教科の評価であり、発言や発話、対話を対象にした評価の方法を考えてきた。また、現行の学習指導要領では、言語活動と関わりから、初めて「批評」が示されたが、鑑賞の意義を満たす上で、非常に良かったと思う。

 現行の学習指導要領において、図画工作科に「感性を働かせながら」という言葉が入ったが、これは現場の先生にとって、子供たちの表したい、感じ取りたい、といった主体的な力を、より前面に押し出したところで、そこを子供の姿として見取っていきたい、見取らなければならないという大きな意識づけになったと思う。

 評価については、幼児のときに学んだこと、獲得したことが小学校にどうつながっていくのか、小学校でどのように成長したのかをしっかり見取りながら、それをまた中学校につなげていくこと、つまり、子供の姿を資質・能力に基づいて見取ることを、まずはしっかり押さえていく必要があると思う。

 感性と学力の関係をどう整理していくのか、資質・能力の三つの柱と評価の4観点との関係をどう整理していくのかについて、伝わりやすい方法も含めて、習得、活用、探究が順序性ではなくて一体的に働いているということを説明できるようにする必要がある。

 生活や人生の中でどのように音楽を活用していくのかということが、今後、問われてくると思うが、それをどのように評価していくのか、その方法について考えていく必要がある。

4.必要な支援(特別支援教育の観点から必要な支援等を含む)、条件整備等について

 美術館に、もっと頻繁に子供に来てもらえるようにするためにはどうしたらよいかと考えている。まずは来てもらえないと、美術館側が活動を頑張ってもどうにもならないので、その点で、学校教育と美術館とでお互いに工夫が必要と感じている。

 美術が自分にとって非常に大切であると認識してくれている人は人口の10%もいない。このため美術館は、一人でも多くの人に自分の人生に美術、芸術が必要であるということを、あらゆる方法で色々な方々と連携しながら伝えていく社会教育機関だと考えている。

 現代美術というと、ほとんどの人が難しい、よく分からないという先入観を持っている。子供たちにはそういう先入観がないので、まず、先入観なしに美術館に来て自分たちで考えて鑑賞するということが、子供たちにとっても非常にいい機会になっていると思う。

 横浜トリエンナーレでのプログラムで、美術が好きな不登校の高校生が、小学生のためのプログラムを作って参加し、その参加によって、翌年、大学に入学することができたという例がある。これを考えると、美術の世界というのは、子供たちが持っている様々な可能性を引き出していく一つのプラットフォームになり得ると思う。

 アメリカ、イギリスの美術館、博物館等は、日本と違うと思うところがある。例えば、アメリカの美術館に行くと、幼稚園児が集団で来て、ピカソやモネやマネの絵の実物の前で寝そべって絵を書いている。アメリカの美術館は、美術館を宝物館ではなくて一つの学習の場として捉えているのではないか。文化遺産などに小さいころから触れ、それをごく自然に身近に感じている環境という点ではまだまだ欧米にはかなわないところがある。
 また、学校教育の中で文化遺産、美術文化の大切さを教えると同時に、家庭や社会全体で芸術文化に対して尊重するような心を育てる必要があると感じた。

 芸術教育において、音楽や書道では、授業の中で活動している場合は良いが、発表する場合は著作権上の問題がある。どのように世界と関わりよりよい人生を送るか、そのために、どのように社会に発信していくかということを芸術教科で考えたときに、教育課程に使われるものに関しては、著作権上のハードルを低くして、発信できるような仕組みを考えていただきたい。

以上。

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-- 登録:平成29年04月 --