教育課程企画特別部会「論点整理」(国語及び言語能力に関する抜粋)

2.新しい学習指導要領等が目指す姿

(3)育成すべき資質・能力と、学習指導要領等の構造化の方向性について

1)学習指導要領等の構造化の在り方

(教科等の本質的意義)

○ 育成すべき資質・能力と学習指導要領等との構造を整理するには、学習指導要領を構成する各教科等をなぜ学ぶのか、それを通じてどういった力が身に付くのかという、教科等の本質的な意義に立ち返って検討する必要がある。

 

○ 教科等における学習は、知識・技能のみならず、それぞれの体系に応じた思考力・判断力・表現力等や情意・態度等を、それぞれの教科等の文脈に応じて育む役割を有している。

 

○ 例えば、思考力は、国語や外国語において様々な資料から必要な情報を整理して自分の考えをまとめる過程や、社会科において社会的な事象から見いだした課題や多様な考え方を多面的・多角的に考察して自分の考えをまとめていく過程、数学において事象を数学的に捉えて問題を設定し、解決の構想を立てて考察していく過程、理科において自然の事象を目的意識を持って観察・実験し、科学的に探究する過程、音楽や美術において自分の意図や発想に基づき表現を工夫していく過程、保健体育において自己や仲間の運動課題や健康課題に気付き、その解決策を考える過程、技術・家庭科において生活の課題を見いだし、最適な解決策を追究する過程、道徳において人間としての生き方についての考えを深める過程などを通じて育まれていく(注26)。これらの思考力を基盤に判断力や表現力等も同様に、各教科等の中でその内容に応じ育まれる。

 

5.学習指導要領改訂の基本的な考え方5.各学校段階、各教科等における改訂の具体的な方向性

(1)各学校段階の教育課程の基本的な枠組みと、学校段階間の接続

2)小学校

○(略)特に、国語や外国語を使って理解したり表現したりするための言語に関する能力を高めていくためには、国語教育と外国語教育のそれぞれを充実させつつ、国語と外国語の音声、文字、語句や単語、文構造、表記の仕方等の特徴や違いに気付き、言語の仕組みを理解できるよう、国語教育と外国語教育を効果的に連携させていく必要がある(注45)。こうした言語に関する能力を向上する観点からの外国語教育の充実は、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成や国語の能力の向上にも大きな効果があると考えられる。

 

○ このため、国語教育においては、下記(2)2)に示すように、国語の音声、文字、語句、文構造、表記の仕方等の仕組みについても、外国語教育と関連付けながら理解できるようにするための指導を充実させていく(注46)ことが求められる。また、外国語教育においても、(2)12)及び別紙に示すようなこれまでの成果と課題を踏まえた方向性の中で、国語教育と関連付けながら、高学年においては外国語の4技能を扱う知識・技能を学び、語彙や表現などを繰り返し活用した言語活動から、自分の考えや気持ちなどを聞き手を意識しながら伝えようとするコミュニケーション活動までの総合的な活動を展開し定着を図るため、教科として系統的な指導を行うことが、また、中学年においては外国語に慣れ親しみ、「聞く」「話す」の2技能を中心に外国語学習への動機付けを高めるための外国語活動を行うことが求められる。

 

○ その場合の外国語の授業時数については、別紙に示すように、小学校高学年において、例えば、現行の外国語活動に必要な時間の倍程度となる年間70単位時間程度の時数が、中学年における外国語活動については、現行の外国語活動と同様に35単位時間程度が必要であると考えられる。

 

○ これらの年間35単位時間増となる時数を確保するためには、高学年においては、平成20年答申の小・中学校の教育課程の枠組みに関する小学校の授業時数(年間の総授業時数)の考え方を踏まえつつ、知識・技能の定着等を図るため、ICT等も活用しながら10~15分程度の短い時間を単位として繰り返し教科指導を行う効果的な短時間学習(帯学習、モジュール学習。以下、「短時間学習」という。)として実施する可能性も含めた専門的な検討が必要となる。弾力的な授業時間の設定に関する先行的な取組の分析を踏まえつつ、教育課程全体における短時間学習の位置付けを明確化するとともに、別紙に示す課題等も含め、外国語等における短時間学習の実施に向けた課題について専門的に検討を行う必要がある。

 

○ こうした短時間学習を通じて、高学年における年間35単位時間増分を確保することが難しい場合には、外国語の指導のために必要な時数の在り方や、他教科等の時数の在り方を含め、教育課程全体にわたる更なる検討が必要になることから、上記の短時間学習に関する専門的な検討を行った上で、再度、当部会において小学校の教育課程全体を見通した観点から検討を行い、平成27年内から平成28年当初を目途に一定の結論を得る。

 

○ 中学年においても、年間35単位時間増となる時数を確保するためには、他教科等の時数の在り方を含めた教育課程全体にわたる抜本的な検討が必要となることから、高学年における時数の在り方と併せて、再度当部会において小学校の教育課程全体を見通した観点から検討を行い、平成27年内から平成28年当初を目途に一定の結論を得る。

 

4)高等学校

○ 特に、国語科、地理歴史科、公民科、外国語科、情報科における必履修科目の在り方については、各教科における現状の課題や、2.(2)2)に示した「特にこれからの時代に求められる資質・能力」を踏まえ、それぞれ下記(2)に示すとおり、共通必履修科目の設置や科目構成の見直しなど、抜本的な検討を行うことが考えられる。

 

(2)各教科・科目等の内容の見直し

2)国語

○ 国語科においては、実生活で生きて働き、各教科等の学習の基本ともなる国語の能力を身に付けること、我が国の言語文化を享受し継承・発展させる態度を育てること等に重点を置いて、現行の学習指導要領に改訂され、その充実が図られてきているところである。

 

○ 一方で、伝えたい内容を明確にして表現したり、文章の内容や形式等を正確に理解したりすること、課題を解決するために、必要な情報を収集し的確に整理・解釈したり、自分の考えをまとめたりすること、古典を学習する楽しさや学習する意義の実感等については、更なる充実が求められるところである。次期改訂に向けては、幼児期に育まれた言葉による伝え合い等の基礎の上に、小・中・高等学校教育を通じて育成すべき資質・能力を、三つの柱に沿って明確化し、古典も含む我が国の言語文化に親しみつつ、言語活動を通じて課題を解決する能力や、情報活用能力の育成、現代の文化・社会の在り方や日本人としての生き方等にもつながる古典の学習の充実、他者と異なる新たな考えや価値を創出し表現する活動の充実などを、各学校段階を通じて図っていくことが求められる。また、言語に関する能力を向上させる観点から、外国語教育と効果的に連携させ(注61)、音声、文字、単語・語句、文構造、表記の仕方等の特徴や違いに気付き、言語の仕組みを理解できるようにする(注62)ことや、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成していくことも重要である。

 

○ 特に高等学校教育においては、教材の読み取りが指導の中心になりがちで、国語による主体的な表現等が重視されていないこと、話合いや論述など、「話すこと・聞くこと」「書くこと」の学習が十分に行われていないこと、古典の学習について、日本人として大切にしてきた言語文化を積極的に享受し、社会や自分との関わりの中でそれらを生かしていくという観点が弱く、興味が高まらないことなどが指摘されているところである。

 

○ このような、高等学校の国語教育について長年にわたり指摘されている課題の解決を図るためには、科目構成の見直しを含めた検討が必要であると考えられることから、共通必履修科目については、1)実社会・実生活に生きる国語の能力を育成する科目、2)古典を含む我が国の言語文化に関する科目、選択科目については、1)近代以降の口語体の文章(現代文(注63))を中心に、古典としての古文・漢文を含めて扱うなど、総合的な国語の能力を育成する科目、2)多様な文章等から得た情報を基に自分の考えをまとめ、適切な構成等で表現する能力を育成する科目、3)文学的な文章を読んだり書いたりする能力を育成する科目、4)古典としての古文・漢文等を読むことを通して、我が国の伝統的な言語文化への理解・関心を深める科目を柱に、科目構成の在り方(注64)を検討することが求められる(注65)。

 

○ また、平成22年に常用漢字表が改定されたことを踏まえ、小学校において、実生活や国語科以外の各教科等との関連を考慮しながら、漢字の学年別配当の見直しの検討が求められる。

注26 中学校の教科構成を基に例示。

注45 国語教育や外国語教育においては、言葉の特徴やきまりに関し、音声(音韻を含む)やメタ言語の意識等を踏まえた指導が重要と指摘されており、引き続き、専門的な見地から検討を行う必要がある。

注46 前回改訂においても、例えば中学校国語科においては「他の言語と比べた国語の特質」の理解を重視することとされたところである。また、高等学校国語科においては、音韻や文字、表記等について外国語との対比から理解するようにすることや、現代の国語と外国語との関わり、言語の違いによるものの見方、感じ方、考え方の違いなどについて理解し合うことに役立つ教材が必要であることなどとされているところである。

注61 脚注46参照。

注62 脚注45のとおり、引き続き、専門的な見地から検討を行う必要がある。

注63 詩歌等を含む。

注64 科目構成のイメージについては、補足資料115ページ参照。

注65 俳句や短歌などを創作したり、文章を脚本にして実際に演じたりするなど、創作的な言語活動も重要である。なお、演劇については、国際バカロレアの芸術系科目として演劇が位置付けられていることなども踏まえ、将来的に科目としての在り方を検討していくことも考えられる。

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