資料3 産業教育ワーキンググループ(第6回)における主な意見

1.教科横断的な事項


(1)育成すべき資質・能力

○もう少し、グローバル化に対応するような積極的な人材像ということを打ち出していくことが、農業、水産をはじめ、その他、各教科においても必要なのではないか。

○各教科において育成すべき資質・能力の整理において、学びに向かう力、人間性等は、各教科の特色を前面に出した表現にできないか。

○専門学科において最近、各学科の学習内容のすみわけがはっきりしていない部分が出てきているのではないかということが気になっている。例えば、商品開発など、各学科において同じような内容になっている部分があり、各学科の特色が薄れてしまっているように見受けられることがある。学科としてきちんとすみわけをしておかないと、各学科の特色が曖昧になってしまうのではないか。

○例えば、各教科の現状と課題を見ると、安全・安心、少子高齢化、あるいはグローバル化への対応など、産業教育に共通する現状と課題があるように思うので、共通するような学びが、学習科目としてできるのではないか。新しい教材、テキストというようなことも視野に入れて、産業教育全体に共通する必履修科目について検討できないか。

○産業教育共通の必履修科目が無理な場合は、課題研究の中に職業倫理という単元を一つ入れてはどうか。

○産業教育の横断的な内容については、課題研究の中に、同じ項目として位置付けてはどうか。

○専門学科の連携の可能性ということで、様々な学びを統合していくような営みというのも、今後考えてもよいのではないか。

○現在、情報ワーキンググループにおいて検討されている、教科「情報」の必履修科目の「情報1(仮称)」を、各教科の代替する科目で履修することになる場合は、「情報1(仮称)」の内容とその目標を十分含んだ上で、同様な成果が期待できるような科目の内容・構成にすることが必要ではないか。

 

(2)その他

○評価に関して、今後、多くの学校でパフォーマンス評価、ルーブリック、ポートフォリオ評価等が注目されるだろう。特に注目したいのは、ルーブリックだが、何々することができるというような具体的な視点で生徒を評価していこうとするときに、抽象度の高い目標の立て方から脱却して、より具体的な目標設定というものにシフトしていく必要があるのではないか。

○社会人の学び直しの機関として、専門高校の活用を考えられないか。

 

 

2.各教科に関する事項


(1)農業科

(育成すべき資質・能力)

○科目構成の方向性については、六次産業化、法人化、成長産業としての農業という部分がこれから重要になってくるため、経営感覚の醸成を図るための学習の充実が非常に重要になってくる。また、持続可能で多様な環境に配慮した学習の充実も非常に重要な位置付けとなる。

○農業科では、水産同様にTPPの問題等これから大きく関わってくる。また、日本の先進農業の技術が、特にこれから中央アジアやアフリカ地域の農業の発展に対して貢献するということも十分考えられるので、そういった将来を見据えた人材育成を考えるときに、育成する人材像及び深い学びの例や科目構成の方向性のところで、より積極的にグローバル化対応ということに関する文言や表現を工夫する必要があるのではないか。

○就業人口の減少に伴う産業自体の今後の在り方などは、非常に大きな課題になってくると思うので、そういった世界的な農業を取り巻く動向や農業の現状ということで、就業人口の問題や異常気象等による生産の難しさなど、もう少し文言に入れたほうが、特徴的に教えていけるのではないか。

○農業の企業参入が近年目立っているので、企業農業的なところの動向などを教えるような仕組みを少し文言に加えられたらいいのではないか。

○六次産業化するのが本当に大切なのかどうか。生産もやる、加工もやる、販売もやる、そんなにオールマイティな人間というのは、本当はそう数はいない。むしろ専門特化していけばいくほど、部分的なものの大事さが出てくる。会社の中にいろいろな人たちがいることによる連携であるということが重要な部分でもあるように感じるので、そういったことを教育としてどういうふうに表現していくのか、今後の課題である。

 

(その他)

○農業科の場合は、農業クラブ活動、プロジェクト学習というのが伝統的に行われており、これらを中心にして、それぞれ体験的・継続的な深い学びや対話的な学び、主体的な学びが行われると考える。


(2)工業科

(育成すべき資質・能力)

○「科学的」というキーワードがなくなっていたが、今回、「科学的根拠」といったキーワードがしっかり入っていることは、よいと受け止めている。育成する人材像として、「創造性豊かな実践的な技術者」、「時代を切り拓いていく」というようなキーワードがあり、積極的かつ前向きな方向性が見えてくると感じている。

○多くの現状と課題があり、科目構成の方向性ではそれぞれ対応が検討されているが、課題と方向性がうまく対応していけるようなまとめ方を引き続き検討してほしい。

○課題のところで、「自動化システム(人工知能等)」について書かれており、それを受けて見方や考え方では、「工業の各分野で情報化が図られている視点からものづくりを捉え、高度に発展する情報技術を製造現場等での有効な活用に向けて考察し、自動化システムの発展を図ること」とある。「有効な活用に向けて考察し、ものづくりの発展を図ること」のように、内容的にもっと大きく捉えた方がよいのではないか。

○グローバルな視点は、工業科の中でも非常に大切であり、科目構成の方向性の中に「グローバルな視点を取り入れた学習の充実」という言葉が入っていることを高く評価したい。


(3)商業科

(育成すべき資質・能力)

○今後の商業教育で重視すべき視点は、「商業教育」を「ビジネス教育」と位置付けた現行の学習指導要領の基本的な考え方を継承しつつ、グローバル化、高度情報化、サービス経済化、知識基盤社会への対応、地域創生、社会貢献、起業家精神などの人材育成の視点により、これからの時代の変化に対応するビジネス教育に発展させること、そして、職業人として育成すべき資質・能力を踏まえ、経済的・職業的自立を目的とするキャリア教育としてのビジネス教育の充実を図ることだと考える。

○教科構成上の分野及び科目構成を考えるにあたっては、重視すべき視点で示した人材育成の視点に立ち、教科「商業」の目標を達成するために必要な学習内容を網羅するとともに、各科目間で重複することなく配置すること、また、各科目間の関係や学習順序、科目名と学習内容の関係もわかりやすく整理することが必要である。現状と課題のところに、「将来の予測が困難な、複雑で変化の激しい社会」を加えてはどうか。

 

(その他)

○現行の高等学校学習指導要領 第1章総則 第3款 各教科・科目の履修等に、「専門学科においては、専門教科・科目について、すべての生徒に履修させる単位数は、25単位を下らないこと。ただし、商業に関する学科においては、上記の単位数の中に外国語に属する科目の単位を5単位まで含めることができること。」という規定がある。しかし、本規定を大学進学のために適用し、商業の専門性を薄めている状況が見受けられる。共通科目の単位数を確保するためにこの規定が使われているという事態がある。学習指導要領の解説書に、この規定を適用する場合は、外国語の重要性から設けられたという本来の趣旨を踏まえるよう示し、その趣旨に沿って規定が活用されるようにしていただきたい。

 

(4)水産科

(育成すべき資質・能力)

○例えば、食品産業の食品加工の分野で言えば、冷凍技術など世界的にも技術の高い分野を科目の中で大きく取り上げていきながら、活躍できるイノーベティブな人材を育成していくことが必要。


(その他)

○水産科においては、グローバルな社会で活躍できる感覚を持ちつつ、そして、ローカルな場面でも活躍できるような、いわゆるグローカルな人材を育成する必要があり、例えば学びの例で言えば、産業界との協働による商品開発や、あるいは実習船や産業現場における長期の実習における学びというような形で、一つ一つ身に付けていけるようにすべき。

 

(5)家庭科

(育成すべき資質・能力)

○グローバルな視点に基づいた学習内容を取り入れるということ、そして、これまでも行ってきた、伝統文化、生活文化を継承、更に発展させるような学習を充実させてほしい。

○調理師養成の関係については、法改正に対応した科目を検討し、きちんと家庭科の中で養成をしていくということで進めていただきたい。また、食育の推進といった視点からも、一層の充実が求められる。また、保育士養成は急務であり、児童虐待や子育て不安などの状況もあるので、そういったことにきちんと対応するため、保育内容の学習の一層の充実をぜひお願いしたい。

 

(その他)

○地域生活における課題解決という視点からも、ぜひ、ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動を一層充実させてほしい。

〇高校で保育を学んでいる生徒たちが、身につけた知識・技術を生かし、より質の高い保育士となることができるよう、技術検定の活用や高大連携等を積極的に進めることが必要である。


(6)看護科

(育成すべき資質・能力)

○育成する人材像については、「地域や社会の保健医療福祉を支え」ということで、医療だけではなく、この三者の連携の中での看護ということが強調されており、また、見方や考え方のところでは、当事者、クライアントとともに歩んでいく、決定していくという、今まさに求められている擁護の姿勢というのを前面に出していただいていることは今の時代のニーズに合っているのではないかと思う。



(7)情報科

(育成すべき資質・能力)

○グローバル化への対応や、将来の予測が困難な、複雑で変化が激しい社会になるので、課題を発見する能力が重要。


(8)福祉科

(育成すべき資質・能力)

○前学習指導要領では、高齢者福祉、高齢者介護が学習の中心だったが、現行の学習指導要領では、児童福祉、障害者福祉等も学んで、実習もしており、卒業後は理学療法士や作業療法士で活躍している生徒も多くいるので、「介護」ではなく、広がりがある学習内容が表現できるよう、「福祉」という表現を用いた方がよい。


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初等中等教育局児童生徒課産業教育振興室