資料4  産業教育ワーキンググループ(第5回)における主な意見

1.育成すべき資質・能力


(1)個別の知識や技能

○ 産業教育を学ぶ生徒たちには早い段階で、日本のものづくりに誇りを持って支えていく、そのような人材であってほしいということを、生徒たちに自信を持たせるという意味で伝えるべき。
○ 多面的、グローバルという面から、日本の島国独特の歴史や、例えば、自然や水が豊富にあること、他国とは異なる部分をしっかりと学び、そのような土台の上に初めて産業についての独特なものがきちんと作り上げられているという、基礎的な部分についても学んだ方がよいのではないか。
○ 各省庁の補助金政策と教育が、マッチしているのかと思うような部分があり、教科の中で学ばれていることが、ほとんど今、現実としてないと思われる。例えば、青年就農給付金は5年間150万円給付されるが、農業大学校に進学しても給付が可能であり、各高校は、奨学金みたいな形で使えるということは知っている。しかし、その政策目的は、そこできちんと研修してもらった人たちに農業に就いてもらうということである。そういった部分は、新しい科目など検討する上で、少し幅広く入れていくことも考えられる。

(2)思考力・判断力・表現力等

○ 職業人としての倫理観というのは、それぞれの職業に、より厳しい倫理観が求められる職種があるということ。例えば同じ会社の中でも、経理の人間にとって、数字の上での失敗は許されない。ところが、営業マンだと、数字で何かあったとしても、失敗したねで許される部分もあるなど、同じ会社でも部門によって違うところがある。
○ 選挙権が18歳に引き下げられ、選挙権を行使する上では、権利と義務というところをどこかの共通項目の中できちんと教え込んでおいてもらいたい。あわせて、倫理観について、現在、世の中で起きている不祥事は、恐らく知りながらそこへ手を染めたか、あるいは看過したか、見ないようにして起きているのかというようなことだと思われる。知っているのであれば止めることも必要だということを指導しておいてほしい。
○ 「合理的かつ創造的に解決する」の「合理的」については、資料7の「科学的原理、経済性、社会資源及び環境への影響等を踏まえ」などが含まれるということだが、具体的にもう少し表現を工夫した方が一般の方には分かりやすいのではないか。
○ 合理的という文言は、一般の方や初めて見た人が、すぐ理解ができるかどうかというのが気になる。
○ 「合理的」という部分が、これからの時代は合理的にいかない部分も多く、例えば、消費者ニーズ等を考えたときに、エモーショナルな部分など、そういうものも価値を創造するという意味では大変重要になってくる。そういう視点も入れたときに、それについても触れるのかどうか。
○ 産業教育においては、経済的なことが必ず関係するので、最終的にどのように経済と結び付くかという観点が一つ欠けており、言葉で入れてもいいのでは。
○ 資料7について、「個別の知識や技能」のところで、理解をして、それを活用する力、それはその次の「思考力・判断力・表現力等」に掛かってしまうかもしれないが、理解だけではなくて、それを活用するという部分も入れてはどうか。
○ 社会に出れば、答えがないものに対して課題解決、実践力を持って対応していかなければならないので、「基礎的・基本的な知識や技術を習得させる」だけにとどまらず、応用力を持って生活、職業に生かすなどとしてはどうか。
○ 専門高校は基本的な知識に加え、技術や技能をしっかり教え込んでいるので、採用した後のルーチンワーク的な業務はそつなく無難にこなすが、イレギュラーなことが発生すると、臨機応変な対応ができないことが多い。あらゆる教科指導を通じて応用力を育成していただきたい。
○ 専門教育において、やはり最終的に重要なのは実践力だと思っており、主体的・協働的に取り組んで合理的かつ創造的に解決する能力というのがイコール実践力かなと思うが、「実践力」という文言で出てくるような形も検討いただけるとありがたい。
○ 「思考力・判断力」にも関係して、実践力とは、基礎的資質を持って社会に出て、仕事の中でそれを深化させていく、応用させていくとか、そういう力かと思われるが、高校の段階でどこまでそれが力として言えるのか。
○ 産業界では、技術が分かる技能者の育成、技能が分かる技術者の育成に注力をしている。機械は動かせるけれども、逆に技術的、科学的な背景が分からない。もしくは、科学的には頭の中で整理ができるけれども、実際の現場でそれが役に立っているのかどうか分からないということで技能と技術を使い分けている。

(3)学びに向かう力、人間性等

○ 異質なものを取り入れる、そういう柔軟性も必要だと思うので、多様性への対応というようなものもどこかで示せたらよい。
○ 現在の産業界を見ると、グローバル化と技術革新、イノベーションなど非常にドラスティックに展開している。海外への事業展開や、あるいは国内でも、外国人労働者が非常に増えている。また、女性、高齢者、障害をお持ちの方等も、ともに働くという協働が現実に起こっている。そういった意味から、多様性を尊重し、それから、異文化を受け入れながら組織力を高めるといった視点も必要なのではないか。
○ これからの世界は、多様な人たちや多文化と関わりながら働いていくということになると思われるので、ダイバーシティ、多様性を尊重する心なども必要ではないか。
○ 「学びに向かう力、人間性等」のところにある「貢献」という言葉は、これまでも工業でも言ってきたが、自分たちが学んできた技術・技能を社会のために役立てようとする力が必要なのでないかと思う。
○ 貢献しようとする態度の育成というのは現行の学習指導要領でもやっており、世の中を自分たちで作っていく、変えていくというようなチャレンジ精神のような気概を持った高校生の育成が示せるといい。
○ 「社会の変化に対応して学び続ける態度」について、社会の変化だけではなくて、その変化を起こす人材、新しい時代を切り開いていくという、そういう創造性豊かな実践的な技術者、職業人、そういったところまで踏み込んでいくことができるならば、さらに産業教育のイメージを一歩進めることができるのではないか。
○ 産業教育を学ぶ高校生が社会の大きな変化をきちんと理解して、広い視野から自分でどう生きていくのかを考えていくことが必要。変化をどう捉えていくのかという積極的な理解を深めていくことが必要。
○ 「社会に貢献しようとする態度」「変化に対応して」というような文言はあるが、「社会の課題を解決する」「よりよい社会を創造していく」というような、さらに一歩踏み込んだ表現にした方が良いのではないか。
○ 「学び続ける態度」に関して、これから、職業や仕事の内容がどんどん変わっていく時代が来るだろう。そのような時代において、自分が学校で学んできたことしか応用できずに終わってしまうのではなくて、やはり基礎をもってして常に新しいものに挑戦していく、新しいことを学んでいく、そういう力は非常に大事である。
○ 普通に経済を成長させていくイノベーションというのは誰でもできるんだという自信を生徒にまず持ってもらいたい。例えば、宅配便は単純な組み合わせの発想、あるいは文字が消えるボールペンも発想の転換でやっぱりイノベーションが起きている。それが出てきた過程を考えたら、生徒は、私にもできるかもというように思う。そういった考えを展開していくためには何が必要なのかとなると、基礎的・基本的な知識や技術だけでなく、それを駆使して何ができるか。仮説を立て、自分なりの真理を探究し、そしてそれを人に納得してもらい、納得してもらったら説得をして現実のものにしていく。知識や技術が世の中に出てきている背景には、こういうものがあるということを、全ての教科にわたって教えていくと、生徒たちは自信もつくし、イノベーティブな能力がついてくるのではないか。

(4)義務教育、共通教科

○ 産業教育のイメージの【義務教育】において、「家庭や個人の生活上等」としているが、中学校段階になれば、社会的な視点がここに必要ではないか。また、実践できる力が必要であるし、中学生が自ら、家庭や個人の生活における課題を発見して変えていくということが、生活上必要になってくる力だと思う。
○ 共通教科のところで「家庭や個人の生活上等の」となっているが、例えば家庭科などでは社会生活の課題解決を目指すという内容もある。

(5)その他

○ 産業教育として、必履修科目を新たに設定する必要性があるのではないか。例えば評価をする場合においても、農業科、工業科、商業科、それぞれの教科での評価はあるが、それぞれの学びの中で共通する部分をどう評価するか、そういうことにもつながっていく。
○ 介護福祉士については、高校3年生で受験し資格を取得するので、かなり多くの単位数を修得しないと、国家試験が受験できないという現状がある。福祉科の場合、53単位必要であり、そのような中で、産業教育で共通となる科目が新設されて履修することは厳しい。現在、課題研究、各教科の基礎科目が原則履修科目としてあり、そのような科目の中で、倫理観のことであるとか、伝統文化の継承であるとか、ものづくりの心を育てるとか、そういうことを意識的に入れていくべきだと思う。
○ 家庭科についても、調理師養成があり、福祉科と同様に多くの単位数が必要であるため、これ以上原則履修科目を増やすことは難しい。8教科共通して今後必要となるものについては、現在もある原則履修科目の中に位置付けると良いのではないか。
○ 1年から2年、2年から3年に進級するときに、その科目が将来どのような学びにつながっていくのか、系統的な仕組みを明らかにし、そして新しいものを学ぶときに、前と関連があって学んでいるという学びのループによって次第に資質・能力も高まっていく。次期学習指導要領に向けて、専門科目における系統性についても明らかにすることが必要ではないか。


2.資質・能力の育成のために重視すべき指導等


○ 現在、複雑で様々な教育方法論などがある中で、体系化していくには非常に分かりやすく簡単に考えていけることが大切である。例えば、ICEモデルは、Ideaを、Connection=つないでいって、Extensions=広げていくというもので、この理論はどの教科でも適合するのではないか。
○ 企業側も若年者を育成、長所を見いだしてあげるというような努力をすべきだが、学校教育の中でも、教師が生徒の長所を発見、発掘、育成し、この生徒はこういう能力を持っているというようなメッセージを企業側に送ってもらいたい。


3.資質・能力の育成のために重視すべき評価


○ 「多様な評価手法」について、高校で学習していることと産業とのつながりを考えると、産業界と共通した評価軸のようなものがあってもよいのでは。
○ 「多様な評価手法」について、例えば、資格取得や検定試験合格をめざすプロセスにおいて生徒がどのような力を実際に身に付けているのか、そういったことをメタ認知しながら、記録に残していく方策について検討する必要がある。仮に検定試験には今回は合格していないけれども、準備のプロセスの中ではこういった力が身に付いた、こういう学びがあったということがきちんと記録され、そういったものが就職や進学に何らかの形で活用できるような方策、システムが作られれば、今後、学びの多様性や生徒たちが頑張ってきたことが評価されるのではないか。


4.必要な支援、条件整備等


○ 特別支援教育は、社会的自立をより促すというような教育が求められる。社会的自立を促すということでは、産業教育は適した環境であると思う。岐阜県の場合も、工業高校、農業高校、商業高校から、教員を派遣して積極的に社会的な自立を促すような教育の支援をしている。これは全ての産業教育8教科の中で、障害のある生徒が、いずれ社会人として自立できる、生活できるような教育を提供する、さらに、それをどのように教育課程に位置付けるか等の検討が必要ではないか。
○ 現在、産業界は、多様性という中で、障害者の方々が全く違う能力を持ち、それをきちんと新しい価値に転換していく、インクルーシブな職場環境を整えていこうという気運が盛り上がっている。50社程度の企業が集まり、障害者の方々が活躍しているロールモデルを発掘しており、例えば、聴覚障害の方がスマホを購入する時に、同じ障害を持った方が説明すると全然違う。携帯各社でも行っており、そのお店にそういった方々が集まり、実際にそれは現実のものとして売れていく。特別支援教育の中で一番大事なことは、障害をお持ちの方々に自信を持ってもらうことであり、こういうロールモデルがあると教科の中でどのように示せるかというのがあるが、学校現場でも取り組んでいただきたい。
○ 職業学科で学んだ子供たちが多く進学していけるような、そういう制度を作っていくとか、水産で言えばマリンマイスターのような制度が本当に社会の中で評価されていくようなことが必要。

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