家庭、技術・家庭ワーキンググループとりまとめ(たたき台案)

1.現行学習指導要領の成果と課題

○ 家庭科,技術・家庭科(技術分野・家庭分野)においては,実践的・体験的な学習活動を通して,家族と家庭の役割,生活に必要な衣,食,住,情報,産業等についての基礎的な理解と技能を養うとともに,それらを活用して課題を解決するために工夫し創造できる能力と実践的な態度の育成を一層重視し,現行の学習指導要領に改訂された。
○ 家庭科,技術・家庭科家庭分野では,自己と家庭,家庭と社会とのつながりを重視し,生涯の見通しをもって,よりよい生活を送るための能力と実践的な態度を育成する視点から,児童生徒の発達の段階を踏まえ,学校段階に応じた体系的な目標や内容の改善を図り,その充実が図られてきたところである。
○ 一方,科学技術の発展等により人々の生活は豊かになったが,家庭や地域の教育力の低下等に伴い,子供たちが家族の一員として協力することへの関心が低いことや,家族や地域の人々と関わり,社会に参画しようとする力の育成や家庭での実践が不十分であることが課題となっている。また,生活の利便性の向上や家族・家庭生活の多様化等に伴い,子供たちの生活体験の不足や食生活をはじめとする基本的生活習慣の乱れ等,様々な問題が指摘されている。さらに,少子高齢社会の進展など,今後の急激な社会の変化に主体的に対応することなども求められるところである。
○ このような状況を踏まえ,児童生徒が家族や地域の一員であることを自覚し,地域の人材や関係機関等との連携を図り,人と関わる活動を充実すること,生活全般に関わる原理原則の科学的な理解を深め,知識・技能を確実に定着させること,家庭や家族の機能をより深く理解するとともに,衣食住等の生活を自立して営むために問題解決的な学習をより体系的に進め,一層充実させていくことなどが考えられる。
○ 技術・家庭科技術分野については,ものづくりを支える能力などを一層高めるとともに,よりよい社会を築くために,技術を適切に評価し活用できる能力と実践的な態度の育成を重視し,目標・内容の改善が図られてきたところである。
○ 一方,様々な技術の発達は,生活を質的に変化させるとともに,産業構造も含めて社会に大きな影響を与えている。その一方で,多くの国民が求める技術の開発が促されるなど,技術と社会は相互に影響し合う関係にある。そのため,高度化,システム化された技術に支えられた社会を生きる国民には,技術が生活や社会,環境等に与える影響を評価し,活用の仕方を考えるなど,適切な技術の発達を主体的に支えることのできる資質・能力の習得が必要であると考えられる。
○ 併せて,ますますグローバル化し激化する国際競争の中で,我が国が科学技術創造立国として世界の産業をリードするためには,義務教育段階にある技術分野においても,技術革新を牽引することのできる,創造的な力の素地となる資質・能力の育成も必要であると考えられる。
○ これまで述べてきた成果と課題を踏まえ,家庭科,技術・家庭科については,2.以下に示す視点から,改善を図ることが考えられる。

2.育成すべき資質・能力を踏まえた教科等目標と評価の在り方について

(1)教科等の特質に応じて育まれる見方や考え方

〇 家庭科,技術・家庭科家庭分野においては,自立し共に生きる生活を創造することを重視しており,人の生涯において必要な家族・家庭,乳幼児や高齢者,衣食住の生活,消費生活や環境など,多様な生活課題を学習対象としている。知識・技能を身に付け,思考・判断・表現等を通して,それらを活用する学習過程において,教科ならではの見方や考え方を用いることにより,これらの課題を解決することができると考えられる。
○ このような観点から,家庭科,技術・家庭科家庭分野の見方や考え方については,「家族や家庭,衣食住,消費や環境などに係わる生活事象について,協力・協働,健康・快適・安全,生活文化の継承・創造,持続可能な社会の構築等の視点から解決すべき問題を捉え,よりよい生活の実現に向けて考察すること」と整理することが考えられる。例えば,家族・家庭生活に関わる内容においては,「協力・協働」,衣食住の生活に関わる内容においては,「健康・快適・安全」や「生活文化の継承・創造」,消費生活・環境に関わる内容においては,「持続可能な社会の構築」を主として考察する視点とすることが考えられる。
なお,これらの見方や考え方に示される視点は,相互に関わり合うものであり,児童生徒の発達の段階を踏まえ,取上げる内容や題材構成等によって,どの視点を重視するのかを適切に定める必要があると考えられる。
○ 技術・家庭科技術分野で学ぶ「技術」は,新たな自然科学上の発見の延長上にのみ存在するのではなく,目的を達成するための状況下において,安全性も含めた社会的条件,環境的条件,経済的条件などを踏まえて,適切に知識や経験を組み合わせて最適化することで生み出されている。また,新たな状況下で既存の技術を改良,応用する活動からも技術が生み出される。これらには,開発や生産だけでなく廃棄や災害等の非常事態への対処等も含まれる。
○ このような技術の開発・利用では,生活や社会における問題を技術によって解決するために,「材料,生物,エネルギーや情報の特性といった科学的な原理・法則に着目するとともに,問題を見出し,解決するに当たり,倫理観をもち,安全性,社会からの要求,環境負荷,費用等の様々な条件を踏まえつつ,材料の生成・成形,エネルギーの変換・伝達,生物の育成環境,情報の処理手順等を最適なものとなるよう考察する」という技術ならではの視点や思考の枠組みが用いられており,これを技術分野における「見方や考え方」として整理することが考えられる。

(2)育成すべき資質・能力の整理と,教科等目標の在り方

〇 家庭科,技術・家庭科家庭分野で育成を目指す資質・能力は,「家族を大切にしようとする気持ちを持ちつつ,いろいろな人と関わりながら,自分が役に立つ喜びを感じ,地域に一層親しみを持つようになる」などの幼児教育で育まれる資質・能力と関わりがあると考えられる。
〇 また,小学校低学年の生活科で示す基本的な生活習慣や生活技能,身近な人々との接し方や中学年の体育科で育まれる体をよりよく発育・発達させるための調和のとれた食事などの資質・能力ともつながるものと考えられる。
〇 次期改訂に向けては,幼児期に育まれたものや,小学校低学年・中学年における学習を通じて身に付けた資質・能力の上に積み上げる形で,小・高等学校の家庭科及び中学校技術・家庭科家庭分野を通じて育成すべき資質・能力を「知識や技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力,人間性等情意,態度等に関わるもの」の三つの柱に沿って整理することが求められる。中学校・高等学校においては,これまで用いていた「技術」は,知識を含む技能と捉えることができることから,家庭科,技術・家庭科においては,「知識及び技術」を「知識・技能」として整理することが考えられる。
1 知識・技能(何を知っているか,何ができるか)については,小学校では,日常生活に必要な基礎的・基本的な知識・技能であり,家族・家庭生活に関する理解,生活の自立の基礎として必要な衣食住に関する知識・技能,消費生活や環境に配慮した生活の仕方に関する知識・技能等が挙げられる。
中学校では,生活の自立に必要な基礎的・基本的な知識・技能であり,家庭の基本的な機能に関する理解,家族,幼児,高齢者との関わりに必要な知識・技能,生活の自立に必要な衣食住に関する知識・技能,消費生活や環境に配慮したライフスタイルを確立するために基礎となる知識・技能等が挙げられる。
高等学校では,自立した生活者に必要な知識・技能であり,家族・家庭,乳幼児の子育て支援等や高齢者の生活支援等に関する知識・技能,生涯の生活設計に関する知識,各ライフステージに対応した衣食住に関する知識・技能,生活における経済の計画,消費生活や環境に配慮したライフスタイルの確立に関する知識・技能等が挙げられる。
2 思考力・判断力・表現力等(知っていること・できることをどう使うか)について,小学校では,生活の中から問題を見出して課題を設定し,解決するために,生活をよりよくしようと工夫する能力,中学校では,生活の中から問題を見出して課題を設定し,解決するために,これからの生活を展望して生活を工夫し創造する能力,高等学校では,生活の課題を解決するために,生涯を見通して生活を創造する能力であり,生活の中から問題を見出し,解決すべき課題を設定する力,生活課題について多角的に捉え,解決策を構想し,計画する力,実習や観察・実験の結果等について,考察したことを説明したり,発表したりする力,他者と意見交流し,計画・実践等について評価・改善する力等が挙げられる。
3 学びに向かう力,人間性等情意,態度等に関わるもの(どのように社会・世界と関わりよりよい人生を送るか)については,小学校では,家族の一員として,生活をよりよくしようとする実践的な態度,中学校では,家族や地域の人々と協働し,生活を工夫し創造しようとする実践的な態度,高等学校では,共に支え合う社会の実現に向けて,家庭や地域の生活を創造しようとする実践的な態度であり,生活を楽しみ,味わい,豊かさを創造しようとする態度,日本の生活文化を大切にし,継承・創造しようとする態度等が挙げられる。
○ 技術・家庭科技術分野においては, 幼児期における物の性質や仕組み等への気付きや,新しい考えを生み出す喜びなどの,よりよいものを目指す基礎的な力や,小学校図画工作科における表したいことに合わせて材料や用具を使うといった学習活動を通じて身に付けた資質・能力等を踏まえるとともに,高等学校情報科のみならず,職業に関する教科・科目等への接続にも配慮しつつ,中学校教育を通じて育成すべき資質・能力を,以下のように三つの柱に沿って整理することが求められる。
1 知識・技能(何を知っているか,何ができるか)については,生活や社会で利用されている技術についての基礎的・基本的な知識と技能であり,材料,加工,エネルギー変換,生物育成,情報等の技術に用いられている科学的な原理・法則の知識,技術を安全・適切に管理・運用できる技能だけでなく,技術と生活や社会,環境との関わりの理解や,技術の概念の理解等が挙げられる。
2 思考力・判断力・表現力等,教科等の本質に根ざした見方や考え方等(知っていること・できることをどう使うか)については,生活や社会における問題を,技術を評価,選択,管理・運用,改良,応用するなどして,解決できる能力であり,生活や社会の中から技術に関わる問題を見出し,解決すべき課題を設定する力,課題の解決策を条件を踏まえて構想し,試行・試作等を通じて解決策を具体化(設計・計画)する力,課題の解決結果及び解決過程を評価し改善・修正する力とともに,課題の解決策を具体化する方略としての製作図,流れ図,作業計画表等に表す力等が挙げられる。
3 学びに向かう力,人間性等,情意,態度等に関わるもの(どのように社会・世界と関わり,よりよい人生を送るか)については,よりよい生活や持続可能な社会を構築するために,適切かつ誠実に技術を工夫し創造しようとする態度であり,進んで技術と関わろうとする態度,自分なりの新しい考え方やとらえ方によって,解決策を構想しようとする態度,自らの問題解決及びその過程をふり返り改善・修正しようとする態度とともに,知的財産を創造・保護・活用しようとする態度や技術に関わる倫理観,他者と協働して粘り強く物事を前に進める態度等も挙げられる。
○ 以上の資質・能力を児童生徒に育む視点から,家庭科,技術・家庭科では,次のような目標を設定することが考えられる。
(小学校 家庭)
家庭科の見方や考え方を踏まえ,生活の中から問題を見出して課題を設定し,その解決を目指す衣食住などに関する実践的・体験的な学習活動を通して,以下の資質・能力を育成する。
・ 日常生活に必要な基礎的・基本的な知識・技能を習得する。
・ 生活の中から問題を見出して課題を設定し,その解決を目指して身に付けた知識・技能を活用し,生活をよりよくしようと工夫する能力を育成する。
・ 家庭生活の大切さに気付き,家族や地域の人々との関わりを考え,家族の一員として,生活をよりよくしようとする実践的な態度を育成する。
(中学校 技術・家庭)
技術・家庭科の見方や考え方を踏まえて,生活の中から問題を見出して課題を設定し,その解決を目指す実践的・体験的な学習活動を通して,以下の資質・能力を育成する。
・ 生活に必要な基礎的・基本的な知識・技能を習得させ,生活と技術との関わりについて理解を深める。
・ 問題を見出して課題を設定し,その解決を目指して工夫し創造する能力を育成する。
・ 生活を充実向上するために進んで実践しようとする態度を育成する。
(中学校 技術・家庭 技術分野)
技術分野の見方や考え方を踏まえ,生活や社会における技術に関わる問題を見出して課題を設定し,その解決を目指す実践的・体験的な学習活動を通して,以下の資質・能力を育成する。
・ 生活や社会で利用されている技術についての基礎的・基本的な知識・技能を習得させ,技術と生活や社会,環境との関わりについて理解を深める。
・ 生活や社会における問題を,技術を評価,選択,管理・運用,改良,応用するなどして, 解決できる能力を育成する。
・ よりよい生活や持続可能な社会を構築するために,適切かつ誠実に技術を工夫し創造しようとする態度を育成する。
(中学校 技術・家庭 家庭分野)
家庭分野の見方や考え方を踏まえ,生活の中から問題を見出して課題を設定し,その解決を目指す衣食住などに関する実践的・体験的な学習活動を通して,以下の資質・能力を育成する。
・ 家庭の機能について理解を深め,生活の自立に必要な基礎的・基本的な知識・技能を習得する。
・ 生活の中から問題を見出して課題を設定し,その解決を目指して身に付けた知識・技能を活用し,これからの生活を展望して生活を工夫し創造する能力を育成する。
・ 自分と家族,家庭生活と地域との関わりを考え,家族や地域の人々と協働し,生活を工夫し創造しようとする実践的な態度を育成する。
(高等学校 家庭)
家庭科の見方や考え方を踏まえ,生活の中から問題を見出して課題を設定し,その解決を目指す実践的・体験的な学習活動を通して,以下の資質・能力を育成する。
・ 生活を科学的に理解し,自立した生活者に必要な知識・技能を習得する。
・ 生活の課題を解決するために,生活を科学的に探究し,生涯を見通して生活を創造する能力を育成する。
・ 様々な年代の人とコミュニケーションを図り,主体的に地域社会に参画し,共に支え合う社会の実現に向けて家庭や地域の生活を創造しようとする実践的な態度を育成する。

(3)資質・能力を育む学習過程の在り方

○ 家庭科,技術・家庭科家庭分野においては,生活の中の様々な問題の中から課題を見いだし,その解決を目指して主体的に計画を立てて実践する問題解決的な学習を重視してきた。このような問題解決的な学習をより充実する観点から,教科で育成すべき資質・能力を育む学習過程は,以下のように整理することが考えられる。なお,学習過程は,児童生徒の状況や題材構成,指導計画等に応じて異なることに留意する必要があると考えられる。
1 生活の課題発見
この過程では,生活経験や既習の知識・技能を基に生活を見つめ課題を設定することを通して,生活の中から問題を見出し,解決すべき課題を設定する力を育成する。自分の生活の実態に基づいて問題を認識し,解決すべき課題について考え,課題を明確化することが考えられる。
2 解決方法の検討と計画
この過程では,生活に関わる科学的な知識・技能を習得し,解決方法を立案・検討し,決定し,解決の見通しをもって計画を立てることを通して,生活課題について多角的に捉え,解決策を構想し計画する力を育成すること,また,他者からの意見等を踏まえて,計画を評価・修正し,最善の方法を判断・決定することと考えられる。
3 課題解決に向けた実践活動
この過程では,生活に関わる科学的知識・技能を活用して調理・製作等の実習や,調査,交流活動などを通して,解決策を実践する力を育成するとともに,それらの実践を通して,思考・判断・表現力を深めていくことができると考えられる。
4 実践活動の評価・改善
この過程では,実践した結果等を評価し振り返り,結果についての発表等を通して改善策を検討し,自分の活動を振り返り,改善する力を育成することと考えられる。
○ 技術・家庭科技術分野の目標とする資質・能力は,「見方や考え方」を働かせつつ,生活や社会における技術に関わる問題を見出して課題を設定し,解決方策が最適なものとなるよう設計・計画し,製作・制作・育成を行うとともに,解決結果・解決過程を評価するという活動の中で育成できると考えられる。そして,その学習過程は,以下の4つに整理できると考えられる。
1 既存の技術の理解と課題の設定
この過程では,既存の技術が,どのような問題をどのような条件の下で解決しているのかを明らかにすることを通して,生活や社会を支えている技術の価値を認識し,進んで関わろうとする態度を育むとともに,技術に用いられている科学的な原理・法則の知識を習得する。また,技術分野の見方や考え方に気付き,生活や社会の中から技術に関わる問題を見出し,それに関する調査等に基づき,現状をさらに良くしたり,新しいものを生み出したりするために解決すべき課題を設定できる力を育む。
2 技術に関する科学的な理解に基づいた設計・計画
    この過程では,課題の解決策を条件を踏まえて構想し,試行・試作等を通じて解決策を具体化(設計・計画)する力を育む。その際,解決策を具体化し実現できるようにするため,課題の解決策の方略を製作図,流れ図,作業計画表等に表す力も必要となる。
3 課題解決に向けた製作・制作・育成
この過程では,設計・計画に基づいて,問題を解決する方略を実現する活動(製作・制作・育成)を行う中で,加工や組み立て操作のみならず,点検や整備等も含めた技術を安全・適切に管理・運用できる技能の習得も図る。
4 成果の評価と次の問題の解決の視点
この過程では,解決結果及び解決過程を振り返る中で,課題の解決結果及び解決過程を評価し改善・修正する力と態度を育む。
○ なお,この学習過程は,一方向に一意的に進むものではなく,生徒の学習の状況に応じて,各過程間を往来するものと考えられる。また,このような学習過程の中で,技術と生活や社会,環境との関わりや,技術の概念を深く理解するとともに,知的財産を創造・保護・活用しようとする態度や,技術に関わる倫理観,他者と協働して粘り強く物事を前に進める態度等を身に付けることも期待できる。
○ 各内容において生徒が見出し解決する問題については,生徒がそれを解決できたという満足感・成就感を味わい,次の学びへと主体的に取り組む態度も育めるよう,既存の技術を評価,選択,管理・運用することで解決できる問題から,改良・応用しなければ解決できない問題へと,解決に必要となる思考・判断の発達の視点から3年間を見通して計画的に設定することが大切であり,この視点から学習指導要領における内容を示す順序や,各内容の指導時期等について検討する必要があると考えられる。

(4)「目標に準拠した評価」に向けた評価の観点の在り方

○ 観点別学習状況の評価の観点は,各教科等における目標と表裏一体の関係にあることから,家庭科,技術・家庭科においても評価の観点の在り方は,育成すべき資質・能力と一貫性を持ったものに改善することが求められ,今回の改訂の趣旨を踏まえ,次のような観点を設定することが考えられる。
(小学校 家庭)
1 知識・技能(何を知っているか,何ができるか)については,従来の観点「家庭生活についての知識・理解」と「生活の技能」を「家庭生活についての知識・技能」と改め,日常生活に必要な衣食住や家族の生活などに関する基礎的・基本的な知識・技能を身に付けているかについて評価することが考えられる。
2 思考力・判断力・表現力等(知っていること・できることをどう使うか)については,従来の観点「生活を創意工夫する能力」と同様であり,日常生活の中から問題を見出して課題を設定し,その解決を目指して生活をよりよくするために考え工夫しているかについて評価することが考えられる。
3 学びに向かう力,人間性等情意,態度等に関わるもの(どのように社会・世界と関わりよりよい人生を送るか)については,従来の観点「家庭生活についての関心・意欲・態度」を「主体的に実践する態度」に改め,衣食住や家族の生活などに関する知識・技能を身に付け,家族の一員として,生活をよりよくしようと工夫し,主体的に実践しようとしているかについて評価することが考えられる。
(中学校 技術・家庭)
1 知識・技能(何を知っているか,何ができるか)については,従来の観点「生活や技術についての知識・理解」と「生活の技能」を「生活や技術についての知識・技能」と改め,生活や技術に関する基礎的・基本的な知識・技能を身に付け,生活と技術との関わりについて理解しているかについて評価することが考えられる。
2 思考力・判断力・表現力等(知っていること・できることをどう使うか)については,従来の観点「生活を工夫し創造する能力」と同様であり,生活の中から問題を見出して課題を設定し,その解決を目指して工夫し創造しているについて評価することが考えられる。
3 学びに向かう力,人間性等情意,態度等に関わるもの(どのように社会・世界と関わりよりよい人生を送るか)については,従来の観点「生活や技術についての関心・意欲・態度」を「主体的に実践する態度」に改め,生活や技術に関する知識・技能を身に付け,生活を充実向上するために主体的に実践しようとしているかについて評価することが考えられる。
(中学校 技術・家庭 技術分野)
1 知識・技能(何を知っているか,何ができるか)については,「生活や技術についての知識・技能」の観点において,生活や社会で利用されている技術についての基礎的・基本的な知識及び技能を身に付けているか,技術と生活や社会,環境との関わりや技術の概念について理解しているかについて評価することが考えられる。
2 思考力・判断力・表現力等(知っていること・できることをどう使うか)については,「生活を工夫し創造する能力」の観点において,生活や社会における技術に関わる問題を見出して課題を設定し,その解決を目指して,技術を評価,選択,管理・運用,改良,応用しているかについて評価することが考えられる。
3 学びに向かう力,人間性等情意,態度等に関わるもの(どのように社会・世界と関わりよりよい人生を送るか)については,「主体的に実践する態度」の観点において,進んで技術と関わろうとする態度や,主体的に技術に関する知識及び技能を身に付けようとする態度とともに,よりよい生活や持続可能な社会を構築するために適切かつ誠実に技術を工夫し創造しようとする態度等を今後の技術に関わる問題にどのように向き合おうとしているかといった姿や心構えから評価することが考えられる。
なお,技術に関わる倫理観や他者と協働して粘り強く物事を前に進める態度等についてもこの観点で評価することとなるが,使用者のことを思いやる心情といった観点別評価になじまない部分については個人内評価を通じて見取ることが考えられる。
 (中学校 技術・家庭 家庭分野)
1 知識・技能(何を知っているか,何ができるか)については,「生活や技術についての知識・技能」の観点において,家庭の基本的な機能について理解し,生活の自立に必要な衣食住や家族の生活などに関する基礎的・基本的な知識・技能を身に付けているかについて評価することが考えられる。
2 思考力・判断力・表現力等(知っていること・できることをどう使うか)については,「生活を工夫し創造する能力」の観点において,家族・家庭や地域の生活の中から問題を見出して課題を設定し,その解決を目指し,これからの生活を展望して工夫し創造しているかについて評価することが考えられる。
3 学びに向かう力,人間性等情意,態度等に関わるもの(どのように社会・世界と関わりよりよい人生を送るか)については,「主体的に実践する態度」の観点において,衣食住や家族の生活などに関する知識・技能を身に付け,家族や地域の人々と協働して生活を工夫し創造し,主体的に実践しようとしているかについて評価することが考えられる。
(高等学校 家庭)
1  知識・技能(何を知っているか,何ができるか)については,従来の観点「知識・理解」と「技能」を「知識・技能」と改め,生活を科学的に理解し,自立した生活者に必要な知識・技能を身に付けているかについて評価することが考えられる。
2 思考力・判断力・表現力等(知っていること・できることをどう使うか)については,従来の観点「思考・判断・表現」と同様であり,家族・家庭や社会における生活の中から問題を見出して課題を設定し,その解決のために,生活を科学的に探究し,生涯を見通して生活を創造する能力を身に付けているかについて評価することが考えられる。
3 学びに向かう力,人間性等情意,態度等に関わるもの(どのように社会・世界と関わりよりよい人生を送るか)については,従来の観点「関心・意欲・態度」を「主体的に学習し実践する態度」に改め,自立した生活者に必要な知識・技能を身に付け,地域社会に参画し,共に支え合う社会の実現に向けて,主体的に家庭や地域の生活を創造しようとする実践的な態度を身に付けているかについて評価することが考えられる。

3.資質・能力の育成に向けた教育内容の改善・充実

(1)高等学校家庭科の科目構成の見直し

○ 高等学校家庭科については,自立した生活者として必要な生活を科学的に理解することや,生活課題を解決する能力を育成することについて一層の充実が求められる。また,選挙権年齢が18歳以上に引き下げられること等も踏まえて,共に支え合う社会の実現に向けて,家庭や地域の生活を創造しようとする態度や主体的に地域社会と関わり,参画しようとする態度を育成することが一層求められている。
・ 科目構成と内容
共通教科としての家庭科は,現行の「家庭基礎」(2単位)「家庭総合」(4単位)及び「生活デザイン」(4単位)の3科目から,必履修科目として1科目を選択的に履修することとしてきたが,各科目の履修状況を踏まえて,現行の選択必履修3科目を改め,内容を再構成し「家庭基礎(仮称)」「家庭総合(仮称)」の2科目とすることが考えられる。
・ 「家庭基礎(仮称)」では,高等学校卒業段階において,自立した生活者として必須となる基礎的な内容構成とする。人の一生を見通して自立して生活する力を身に付けることができるように,生涯の生活を設計するための意思決定や異なる世代と関わり共に生きる力を育成することを一層明確にし,内容の改善を図る。
・ 「家庭総合(仮称)」では,従前の「家庭総合」の内容を引き継ぎつつ,人の一生という時間軸と,生活の営みに必要な生活資源や生活活動に関わる事柄である空間軸との関連を明確にし,調査・研究,観察・見学,交流活動等の実践的・体験的な学習を充実する。

(2)資質・能力の整理と学習過程の在り方を踏まえた教育内容の構造化

○ 家庭科,技術・家庭科家庭分野の内容においては,2(2)で述べた三つの柱に沿った資質・能力や2(3)で述べた学習過程の在り方を踏まえて,それらの趣旨を実現するために,次の三点から教育内容を構造化することが求められる。
○ 第一には,家庭科,技術・家庭科家庭分野における内容の系統性に基づいた枠組の構造化である。子供たちの発達の段階を踏まえ,小学校・中学校・高等学校の各内容の接続が見えるようにするために,小・中学校においては,1家族・家庭生活,2衣食住の生活,3消費生活と環境という三つの枠組に整理することが考えられる。
この枠組の構成は,2(1)で述べた家庭科の見方や考え方とも関連している。また,それぞれの枠組に関わる知識や技能については,学校段階に応じて概念化,体系化されて身に付くことから,それぞれを適切に関連付けながら教育内容を構造化することが考えられる。
さらに,家庭・地域社会との連携を図り,学校での学習を家庭や地域社会における実践として活かすことに留意し,各学校段階に応じて内容を改善することが考えられる。
○ 第二には,学校段階に応じた学習対象の構造化である。学習対象の構造化にあたっては,家庭科,技術・家庭科家庭分野では,空間軸と時間軸という二つの視点を設定している。空間軸の視点では,学校段階に応じて,家庭,地域,社会という空間的な広がりをもって学習対象を捉えており,小学校では自己と家庭,中学校では家庭と地域,高等学校では家庭と地域,社会とのつながりや関わりを意識させることが考えられる。
また,時間軸の視点では,「生涯を見通す」という時間的な広がりをもって学習対象を捉えており,小学校では自分自身の現在やこれまでの生活,中学校ではこれからの生活を展望した現在の生活,高等学校では生涯を見通した生活(人の一生を生活の営みというライフステージで捉えること)を考察の対象とすることが考えられる。
なお,空間軸の視点と時間軸の視点は,相互に関連させ,学びが深まるよう配慮する必要がある。
○ 第三には,家庭科,技術・家庭科家庭分野の学習過程を踏まえた構造化である。家庭科,技術・家庭科家庭分野においては,生活の中から問題を見出し,課題を設定し,解決方法を検討し,計画・実践,評価・改善するといった一連の学習過程を重視している。この学習過程を衣食住などの学習に位置付けることにより,構造化することが考えられる。その際,家庭や地域社会における実践についても一連の学習過程として検討することも考えられる。
○ 現行の技術・家庭科技術分野の各内容は,それぞれの技術についての「基礎的な知識,重要な概念等」,「技術を活用した製作・制作・育成」,「社会・環境とのかかわり」という「習得・活用・探究に」に相当する項目で構成されている。今回の改訂では,これまでの項目の構造を踏まえつつ,各項目で目標とする資質・能力と学習過程の関係の明確化を図るという視点から,次の3つの項目で内容を構造化することが考えられる。
1 生活や社会を支える技術
現代社会に利用されている技術の仕組みや役割,現在に至るまでの技術の進展等を,科学的に理解することで,問題の解決に必要な技術分野の見方や考え方に気付き,課題を解決するために必要となる知識・技能を習得させる項目である。ここでは,身の回りの製品等に利用されている技術の仕組みを調べることなどを通して,技術と社会や環境との関わりについての理解と共に技術と進んで関わろうとする態度の育成も期待できる。この項目は,「技術による問題解決」の基礎となることから,学習過程のうち,主に「既存の技術の理解と課題の設定」の過程で扱うことが考えられる。
2 技術による問題解決
1で学習した各内容における知識や技能を踏まえ,実際に技術による問題解決の過程を学習する活動を通して,学んだ知識や技能を主体的に活用しながら,自らの問題解決に組み込む活動を行う項目である。ここでは,各内容に応じた知識や技能に関する確かな習得を通して,技術の見方・考え方を深めるとともに,生活や社会の中から技術に関わる問題を見出し解決することで.技術を評価,選択,管理・運用,改良,応用するなどして,解決できる能力や態度を育むことが期待できる。この項目は,学習過程の4つ全ての過程を通して,適切に扱うことが考えられる。
3 社会の発展と技術
1や2での学習を通した自らの問題解決の成果と過程をふり返ることで,身に付けた技術の見方や考え方に沿って生活や社会を広く見つめなおす項目である。ここでは,自分なりの新しい考え方やとらえ方によって,技術の役割や影響を評価し,将来への技術の活用方法について考えることのできる能力や態度を育むとともに,技術についての概念を深く理解することが期待できる。この項目は,学習過程のうち,主に「成果の評価と次の問題の解決に視点」の過程で扱うことが考えられる。
◯ なお,技術に関する教育を体系的に行うために,第1学年の最初に扱う内容の「1生活や社会を支える技術」の項目は,小学校での学習を踏まえた中学校での学習のガイダンス的な内容としても指導することが考えられる。また,教科目標の実現に向け,高等学校との関連を踏まえるとともに,現代社会で活用されている多くの技術が,システム化されている実態に対応するために,第3学年で取り上げる内容の「2技術による問題解決」は,他の内容の技術も含めた統合的な問題について取り扱うことも考えられる。

(3)現代的な諸課題を踏まえた教育内容の見直し

○ これからの社会を担う子供たちには,少子高齢化,持続可能な社会の構築等の現代的な諸課題を適切に解決できる能力が求められることから,家庭科,技術・家庭科においては,次のような教育内容の見直しを図ることが必要と考えられる。
(小学校 家庭)
〇 家族の一員として,家庭の仕事に協力する等家族の大切さに関する内容の充実,家庭生活を大切にする心情を育むことや,家族や地域の異世代の人々と関わるなど,人とよりよく関わる能力の育成を目指した学習活動を充実することが考えられる。
〇 食事の役割や栄養を考えた食事のとり方,調理などの学習活動を重視し,食育を一層推進すること,及び消費生活や環境に配慮した生活の仕方に関する内容を充実するとともに,他の内容との関連を図り,実践的な学習活動を一層充実すること,さらに,主として衣食住の生活において日本の生活文化の大切さに気付く学習活動を充実することが考えられる。
○ 学習した知識と技能などを活用し,生活をよりよくしようと工夫する能力と実践的な態度を育む視点から,問題解決的な学習を一層充実するとともに,家庭や地域と連携を図った生活の課題と実践に関する指導事項を設定することが考えられる。
〇 生活の自立の基礎を培うための基礎的な技能の習得や生活の科学的な理解を深めるために実践的・体験的な学習活動を一層重視するとともに,育むべき知識・技能を確実に身に付けるために,一部の題材を指定することについても検討することが考えられる。
(中学校 技術・家庭科 技術分野)
○ 技術・家庭科技術分野の,知識や技能(何を知っているか,何ができるか)に関して,様々な技術が複合して利用されている現状を踏まえ,技術分野で取り上げる技術に関連する専門分野の知見や考え方を十分取り入れ,教育内容を明確化することが大切であると考えられる。
○ また,技術の高度化とそれに伴うグローバル化や,産業構造の転換等の社会の変化を踏まえ,我が国に根付いているものづくりの文化や伝統的な技術の継承,技術革新及びそれを担う職業・産業への関心,経済的主体等として求められる働くことの意義の理解,他者と協働して粘り強く物事を前に進める態度,使用者・生産者の安全に配慮して設計・製作したりするなどの倫理観,安全な生活や社会づくりに貢献しようとする態度等の育成の視点も踏まえて取り上げる教育内容を検討することが必要であると考えられる。
○ 特に,高度に発達した技術の成果を享受し豊かに生活できることだけでなく,技術の発達を支え,牽引するために必要な資質・能力を育成する視点から,知的財産を創造・保護・活用していこうとする態度の育成を重視する必要がある。また,情報活用能力の育成を重視するとともに,急速な発達を遂げている情報の技術に関して,情報セキュリティ等の安全に情報及び情報技術を利用するために必要な資質・能力や,これらを活用して多様化する課題に創造的に取り組む資質・能力を育成する視点から,プログラミングに関する内容を充実することについても検討する必要があると考えられる。
(中学校 技術・家庭 家庭分野)
〇 家庭の機能を理解し,家族や地域の人々と協働するなど,人とよりよくかかわる能力の育成や,幼児触れ合い体験,高齢者との交流等に関する学習活動を一層充実することが考えられる。
〇 中学生の栄養と献立,調理や食文化などに関する学習活動を重視し,食育を一層推進すること,及び,金銭の管理に関する内容や,消費生活や環境に配慮したライフスタイルの確立の基礎となる内容を充実するとともに,他の内容との関連を図り,実践的な学習活動を一層充実すること,さらに,主として衣食住の生活において日本の生活文化を継承する学習活動を充実することが考えられる。
〇 生活の自立を促すための基礎的な技能の習得や生活の科学的な理解を深めるための実践的・体験的な学習活動をより一層重視する。また,学習した知識と技能などを活用し,生活をよりよくしようと工夫する能力と実践的な態度を育む視点から,問題解決的な学習を一層充実するとともに,家庭や地域と連携を図った生活の課題と実践に関する内容について一層充実することが考えられる。
(高等学校 家庭)
○ 少子高齢化等の社会の変化や持続可能な社会の構築,食育の推進に対応し,子育て支援等の理解,高齢者の理解,生涯の生活を設計するための意思決定や消費生活や環境に配慮したライフスタイルを確立するための意思決定,健康な食生活の実践,日本の生活文化の継承・創造等に関する学習を充実することが考えられる。これらの学習により身に付けた知識・技能を活用して,「ホームプロジェクト」や「学校家庭クラブ活動」等,主体的に取り組む問題解決的な学習を一層充実することが考えられる。
○ 「家庭基礎(仮称)」では,乳児期における内容を充実し,子供を生み育てることや子供と関わる力を身に付けること,高齢社会を支えるために必要な高齢者の生活支援技術の基礎に関わる内容を充実する。さらに,自立した生活者として必要な衣食住の生活や生活における経済の計画などの実践力を定着すること,生涯の生活を設計するための意思決定能力や消費環境に配慮したライフスタイルを確立するための意思決定能力を育成することが考えられる。また,「ホームプロジェクト」や「学校家庭クラブ活動」の問題解決的な学習については,引き続き重視する。
○ 「家庭総合(仮称)」では,少子高齢社会を支える実践力を育成するために,乳児との触れ合いや子供とのコミュニケーションに係る内容,高齢者の理解や生活支援技術等の内容を充実する。また,健康や安全等を考慮した衣食住の生活を実践する力や,生活経済,生涯の生活を設計するための意思決定能力や消費・環境に配慮したライフスタイルを確立するための意思決定能力を育成し,生活を総合的にマネジメントし,グローバル化に対応した日本の生活文化を継承・創造すること等について,内容の改善を図ることが考えられる。また,「ホームプロジェクト」や「学校家庭クラブ活動」の問題解決的な学習については,引き続き重視する。

4.学習・指導の改善充実や教材の充実

○ 家庭科,技術・家庭科の教育がより充実したものとなるよう,以下の方向からの改善の検討が必要と考えられる。

(1)特別支援教育の充実,個に応じた学習の充実

(特別支援教育の充実)
〇 家庭科,技術・家庭科における調理実習や被服製作,製作作業やコンピュータの操作などの実習等の指導においては,運動・動作の障害に応じた道具や機器を用意したりするといった配慮だけでなく,学習意欲が高まるような評価方法の工夫等,各内容及び学習プロセスの段階に応じた「困難さの状態」に対する「配慮の意図」と「手立て」を示していく必要がある。具体的には,以下のようなことが考えられる。
・ 学習に集中したり,持続したりすることが難しい場合,学習環境を整理・整頓することや活動のルールや手順を視覚的に明示して学習の見通しをもてるようにすること,見る,触るなど,体感することができる教材・教具を活用すること,こまめに努力を認める声かけをすること,スモールステップによる学習の進め方やペアやグループでの学び合い等について検討するなどの配慮を行う。
・ 同時に複数の事項に注意を向けることが難しい場合,優先順位が分かるように,活動の区切りを短く設けて同時に行う事項を減らしたり,視覚的な補助(指示事項や留意すべき事項を示したカード等)を用いたりするなどの配慮を行う。
・ 周囲の状況に気が散りやすく,包丁,アイロン,ミシン等の用具,加工工具や電動加工機器等を安全に使用することが難しい場合,手元に集中して安全に作業に取り組めるように,個別的な対応ができるような作業スペースを確保したり,集中できる時間に配慮して作業時間を設定したりするなどの配慮を行う。
・ 生徒が自分で設計・計画を考案することが難しい場合は,生徒が考えやすいように,教師があらかじめ用意した幾つかの設計・計画から生徒が選べるようにし,一部を自分なりに改良できるようにするなど,難易度の調整や段階的な指導に関する配慮を行うことが考えられる。また,図を用いた設計の場面において,立体を平面に書き換えることが難しい場合には,形や奥行きなどを捉えやすくするソフトウエア等を用いるなどの配慮を行う。
(個に応じた指導の充実)
〇 家庭科,技術・家庭科における調理や製作等の実習,観察・実験などの指導において,子供たちの生活経験の不足などから,確実な技能の習得を図るためには,個に応じた指導を充実する必要があり,ティームティーチングによる指導や,少人数による指導などの配慮が必要である。
また,児童生徒の願いや思いを生かして設計・計画させることで,より創造的な解決策が発想されることから,児童生徒の実態を生かす視点も個に応じた指導を充実する際には必要であると考えられる。

(2)「深い学び」「対話的な学び」「主体的な学び」に向けた学習・指導の改善充実

〇 家庭科,技術・家庭科家庭分野では,実践的・体験的な学習活動を通して,生活に必要な基礎的・基本的な知識及び技能を身に付け,児童生徒が学習の中で習得した知識や技能を活用し,実生活での実践につながる問題解決的な学習については従前から重視してきたところであるが,「深い学び」「対話的な学び」「主体的な学び」を以下のように捉え,その充実を図る必要があると考えられる。
・ 「深い学び」を進めるためには,計画,実践,評価,改善の一連の学習プロセスにおいて,見通しを立てたり振り返ったりする学習活動を取り入れた指導の展開を工夫することが重要である。そのためには,学習の対象となる生活事象について,健康・快適・安全,持続可能な社会の構築等の家庭科や技術・家庭科家庭分野の見方や考え方を通して,児童生徒の思考を深めることが重要である。例えば,衣食住などの生活における様々な事象や科学性を説明する活動や判断が必要な場面を設けて理由や根拠を論述したり,正解が一つに絞れない課題を設定し,最適な解決方法を探究したりする活動などを取り入れることなどが考えられる。
・ 「対話的な学び」を進めるためには,他者とのコミュニケーションを深める活動として,他者との会話を通して考えを明確にしたり,他者と意見を共有して互いの考えを深めたりするなど,協働的な関係を築く学習活動を積極的に設けることなどが重要である。例えば,グループ活動やペア学習,討議,ディベート,ロールプレイング等を効果的に取り入れることが考えられる。
・ 「主体的な学び」を進めるためには,児童生徒が様々な生活課題の解決に向けて解決方法を考える際に,解決の見通しをもち,主体的・協働的に課題の発見や解決に取り組み,学習したことを振り返る活動が重要となる。また,学習した内容を実際の生活で生かす場面を設定し,自分の生活が家庭や地域社会と深く関わっていることを認識したり,自分が社会に参画し貢献できる存在であることに気付いたりすることが,主体的な学びにつながると考えられる。
○ 技術・家庭科技術分野においては,「深い学び」「対話的な学び」「主体的な学び」を以下のように捉え,その充実を図る必要があると考えられる。
・ 技術・家庭科技術分野における「深い学び」とは,子どもたちが習得・活用・探究を見通した学習過程の中で「見方や考え方」を働かせて思考・判断・表現し,「見方や考え方」を成長させながら,資質・能力を獲得していけるような学びである。すなわち,技術分野においては,問題解決的な学習を通して,生活や社会の中から技術的な問題を見出して課題を設定し,技術がもつ特性に着目して最適解を導く見方や考え方を働かせながら,その解決策を具体化(設計・計画)して解決活動(製作・制作・育成)していき,その解決過程をふり返って評価していくことが,「見方や考え方」を成長させながら資質・能力を獲得する学び(深い学び)となると考えられる。
・ 「対話的な学び」とは,他者との協働や外界との相互作用を通じて,自らの考えを広げ深める学びである。技術分野における他者との協働や相互作用としては,生徒同士の相談活動や学び合い,教師との対話,あるいは学校外の人材や組織などとの相互作用などが考えられる。また,直接,他者との対話を伴わなくとも,既製品の分解等の活動を通してその技術の開発者が設計に込めた意図を読み取る学習活動によって,見方や考え方を成長させるといったことなども考えられる。
・ 「主体的な学び」とは,学習に積極的に取り組ませるだけでなく,学習後に自らの学びの成果や過程を振り返ることを通して,次の学びに主体的に取り組む態度を育む学びである。すなわち,技術分野においては,教師が与えた設計・計画に基づいて画一的に製作・制作・育成に取り組むのではなく,問題発見や課題の設定を重視した設計・計画によって,生徒たちが見通しをもって粘り強く解決活動に取り組むことが大切である。さらに,学習過程の最後の段階である「成果の評価と次の問題の解決の視点」だけでなく,各過程において,学習過程をふり返る活動を充実させ,次の過程の学習や,次の問題の解決につなげることが,生徒が自らの成長を自覚し,主体的に学習に取り組む態度へとつながると考えられる。

(3)教材の在り方

○ 家庭科,技術・家庭科家庭分野においては,生活事象の原理・原則を科学的に理解するための指導や学習の見通しをもたせる指導,個に応じた指導,子供たちの協働的な学びを推進するための指導において,ICTの活用を充実することが考えられる。
また,実感を伴った理解ができるようにするために,実際に見たり,触れたりできる実物や標本,高齢者疑似体験などが可能な教材を充実することが考えられる。
〇 さらに,実習・実験における用具(ミシンなど)等は,安全の確保や作業の能率,事故防止にも大きく影響することから,児童生徒数に応じた適切な個数を確保するなど学習環境を整備する必要があると考えられる。
○ 技術・家庭科技術分野については各内容に応じた教材の整備について検討することが求められる。具体的には,「情報に関する技術」について,社会において利用されている情報端末や,計測・制御されている機器等の発達に対応する視点から,授業で用いる情報端末及び模型等の計測・制御用機器を選定したり,プログラミングに関する内容の充実に対応し,必要な機能をもったプログラムの開発環境を整備したりすることなどが考えられる。
○ また,学習過程に応じて必要となる教材の整備として,例えば「既存の技術の理解と課題の設定」の過程において,生活や社会を支えている技術が,どのように問題を解決してきたのか,どのような見方や考え方が用いられているのかなどに気付かせる活動を行うために必要となる,分解用の機器等を適切に整備したり,「技術に関する科学的な理解に基づいた設計・計画」の過程において,生徒の実態に応じて適切な設計ができるよう,3DCADや3Dプリンタなど,モデル(又はプロトタイプ)を設計・試作するための教材を必要に応じて整備したりすることについても検討することが考えられる。

5.必要な条件整備等について

○ 全ての学校で質の高い家庭科,技術・家庭科を進めることができるよう,以下の方向からの改善の検討が必要と考えられる。

(1)他の教科等との連携(カリキュラム・マネジメント)

○ 家庭科,技術・家庭科家庭分野における関連する教科・科目等との連携については,例えば,以下のような事項に配慮することが考えられる。
・ 他教科等で行う実践的・体験的な学習とどのように関連を図ることができるのか,指導の時期等について検討することが考えられる。
・ 食育の推進については,小学校低学年・中学年における生活科や体育科,特別活動や道徳,総合的な学習の時間における学習を踏まえることや,高学年の他教科等の学習を踏まえ,それぞれの特質に応じた連携の在り方について検討することが考えられる。
・ 消費生活,環境,伝統文化,防災等,教科横断的に取り上げられる教育に関して,特別活動,総合的な学習の時間等,関係する教科等とそれぞれの特質に応じた連携の在り方について検討することが考えられる。また,校外での学習における生徒の安全確保や,幼児・高齢者等の安全確保等,郊外での活動を計画する場合には,校内の指導体制の充実についても検討が必要である。
○ 乳幼児との触れ合いや高齢者との交流,地域の食文化の理解,継承のための実践,地域の課題等に取り組むためには,地域の関係機関や人材との連携を積極的に図ることが求められることから,その円滑な支援の在り方についての検討が必要である。
○ 小学校家庭科においては,実習等の安全の確保や実習室等の環境の整備と管理のため,専門性の高い教員による指導が効果的であることから,例えば,教科担任制による指導や校区の中学校の家庭分野担当教員と学級担任による指導を行うことなどが考えられる。
○ 技術・家庭科技術分野においては,特に,小学校・高等学校における関連する教科・科目等との縦の連携について,例えば以下のような事項に配慮することが必要と考えられる。
・ 小学校の図画工作科における道具の操作に関する技能や様々な材料に触れる体験,工夫して製作する力,理科における技術に関係する科学的な原理・法則の知識,全ての教科におけるコンピュータ等の基本的な操作技能,生活科,図画工作科,特別活動,総合的な学習の時間におけるものづくりや作物の栽培経験等,技術分野における問題の解決に必要となる知識・技能の習得状況や生徒の興味・関心の方向性等を考慮し,技術分野で取り上げる題材を検討する。
・ 技術分野の各内容における学習が,高等学校の共通教科情報や,職業に関する科目等の学習へと繋がることを意識させる指導を検討する。
○ 中学校における他教科等との横の連携について,例えば以下のような事項に配慮することが考えられる。
・ 数学科における投影図と製作図,理科における電気・運動の内容とエネルギー変換における設計等,技術分野における問題の解決に必要となる知識・技能の他教科の指導の状況を踏まえて,技術分野の関係する内容の指導時期等を検討する。
・ 環境保全,安全,伝統文化等,教科横断的に取り上げられる教育に関しては,理科,社会,総合的な学習の時間等,関係する教科等とそれぞれの特質に応じた連携の在り方について検討する。
○ また,技術分野の内容に応じて,工業試験場や農業試験場,民間企業,博物館や科学館,関連する分野の専門高校等との連携について検討することが考えられる。
○ 他の教科等の連携に関しては,互いの教科の目標や資質・能力の育成を考慮した上で,近年の科学,技術,工学,数学等の分野を総合的に取り扱ったSTEM教育等の例のように,科学技術の発達に総合的に対応できる資質・能力を育成する観点から,技術分野で育成された資質・能力を,関連する教科等において活用するといった機会の設定について検討することが考えられる。

(2)教員の資質向上

○ 指導対象である生活や技術が変化し続けるという家庭科,技術・家庭科の特質を踏まえ,教員が常に新たな情報を入手し,教材研究や指導力向上を図ることができる研修の充実が必要と考えられる。また,臨時免許状での担当教員に対する研修の充実や,非常勤講師の確保等,家庭科,技術・家庭科教育の質の向上に努める必要もあると考えられる。


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