教育課程部会 家庭、技術・家庭ワーキンググループ(第1回) 議事録

1.日時

平成27年11月30日(月曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省東館3階 3F2特別会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 家庭、技術・家庭の改善充実について
  2. その他

4.議事録

【大内学校教育官】  失礼いたします。定刻前ではございますけれども、委員の先生方、皆様お集まりでございますので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会家庭、技術・家庭ワーキンググループを開催いたします。
開会に当たりまして、文部科学省初等中等教育局教育課程課長の合田哲雄より、御挨拶申し上げます。
【合田教育課程課長】  失礼いたします。本日、中央教育審議会家庭、技術・家庭ワーキンググループの第1回目開催ということでございますけれども、大変お忙しい先生方にお集まりをいただきまして、心から感謝を申し上げたいと存じます。一言御挨拶を申し上げたいというふうに思っております。
学習指導要領の改訂でございますけれども、2008年、2009年と小・中・高と指導要領を前回改訂いたしましたけれども、この次の改訂、10年に一度の改訂ということでございますので、現在、検討をいただいているところでございます。
本年度及び来年度の2か年掛けまして指導要領を改訂する。先生方、御案内のとおり、通常の政策形成の中では比較的長い方でございますけれども、全ての教科、全ての学校種につきまして御議論いただくということでございますので、前回の改訂におきましては400人に及ぶ中央教育審議会の委員の先生方に400時間御議論いただきまして、指導要領を作らせていただいたところでございます。
今回も、このワーキンググループをはじめ、17の教科等に分かれたワーキンググループ、それから、5つの学校別の部会というところに470名の先生方にお加わりいただいているところでございまして、10年に一度の改訂というのも、とにかくそれだけの先生方にお集まりをいただいて現状を認識するとともに、20年後、30年後を見据えて、それぞれの分野についてどういう展開をしていくのかということを真剣に御議論いただき、私どももいろいろなことを学ばせていただくという大変重要な機会だというふう思っているところでございます。
こういう枠組みでございますので、作業としては、建築物を造るようなものでございまして、まず基礎工事をさせていただきまして、その上に柱を立てて、構造物を組み立てていくという作業でございます。
現在の段階でございますが、この夏に中央教育審議会教育課程企画特別部会というところで、後ほど御説明をさせていただきますが、論点整理というものをおまとめいただきました。これが、いわば基礎工事ということになるわけでございます。これから、このワーキンググループも含めて、具体的な議論というものをいただきながら、建築物を建ち上げていくということになろうかと思っております。
この論点整理でございますけれども、家庭、技術・家庭の家庭分野につきましては、幼児期に育まれたいろいろな人との関わりや健康な心と体などの基礎の上に、小・中・高等学校教育を通じて育成すべき資質・能力を明確にする。その上で、家庭や社会とのつながりを重視し、少子高齢化社会、資源や環境に配慮したライフスタイルの確立や持続可能な社会づくりのための力の育成、他者と共生し、自立して生活する力の育成、生涯を見通して生活を設計し、創造していく力の育成といったような御提言を頂いているところでございます。
私自身、様々なところで消費者教育の文脈でありますとか、主権者教育の文脈などで、家庭科の教科書が今こういうふうに変わっていますよという御説明を申し上げますと、大変驚かれる政治家の方や経済界の方が多いわけでございまして、本当にこれは日頃、そういった教育にお取組をいただいている先生方の御尽力のたまものだと思っております。
また、技術・家庭の技術分野におきましては、小学校図画工作科、高等学校の情報科、職業に関する科目と連携を図りつつ、育成すべき資質・能力を明確化し、技術に関する科学的な理解のもとに、技術を適切に評価・活用し、安心・安全な生活の位置付けに貢献できる力の育成、技術を創造し、より良い社会を構築できる力の育成などの御提言を頂いているところでございます。
実際に研究大学等では、理学部の研究が工学部を経て社会実装に展開するということだけではなくて、理学部の基礎的な研究がそのまま社会実装に結び付くという時代になっております。
そういった中で、他教科との比較において、技術科でなければできないことということを是非深めて御議論いただければと思う次第でございます。
このワーキンググループの議論でございますけれども、大変お忙しい中、恐縮でございますが、本年度末までに8回程度開催をいただきまして、一定の方向性をお示しいただきたいというふうに思っておりまして、それらの議論を踏まえて、来年度、先ほど申し上げましたように中教審でお取りまとめをいただいた上で、特に小・中につきましては改訂をさせていただく。
そういたしますと、小学校は32年度から、中学校は33年度から、高等学校については34年度から新しい指導要領になっていくというイメージになろうかと思っております。
大変重要なワーキンググループだと存じておりますので、それぞれの先生方の御見識、御経験を踏まえた忌憚のない御意見を賜りたいというふうに存じております。何とぞ、よろしくお願いを申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。
【大内学校教育官】  議事に先立ちまして、本部会の主査及び主査代理について御報告いたします。
資料2の初等中等教育分科会教育課程部会運営規則に基づきまして、本ワーキンググループにつきましては、教育課程部会の決定により設置するというふうにされております。主査及び主査代理につきましては、教育課程部会長が指名することというふうにされております。
教育部会長と御相談をいたしまして、橋本都委員を主査に、古川稔委員を主査代理にお願いしておりますので、よろしくお願いいたします。
次に、委員の皆様の御紹介をさせていただきます。資料1に基づきまして、本ワーキンググループの名簿を配付させてございますが、こちらに基づきまして名簿順に御紹介させていただきます。
荒井紀子委員でございます。
【荒井委員】  荒井と申します。よろしくお願いいたします。
【大内学校教育官】  池田敦彦委員でございます。
【池田委員】  よろしくお願いいたします。
【大内学校教育官】  奥山千鶴子委員でございます。
【奥山委員】  奥山です。よろしくお願いいたします。
【大内学校教育官】  橘川睦子委員でございます。
【橘川委員】  橘川です。どうぞよろしくお願いします。
【大内学校教育官】  神山典子委員でございます。
【神山委員】  神山です。よろしくお願いいたします。
【大内学校教育官】  杉山久仁子委員でございます。
【杉山委員】  杉山です。よろしくお願いします。
【大内学校教育官】  鈴木明子委員でございます。
【鈴木(明)委員】  鈴木でございます。よろしくお願いいたします。
【大内学校教育官】  鈴木佳子委員でございます。
【鈴木(佳)委員】  鈴木です。よろしくお願いいたします。
【大内学校教育官】  曽我部多美委員でございます。
【曽我部委員】  曽我部です。どうぞよろしくお願いします。
【大内学校教育官】  長澤由喜子委員でございます。
【長澤委員】  長澤でございます。よろしくお願いいたします。
【大内学校教育官】  中原秀樹委員でございます。
【中原委員】  中原です。よろしくお願いいたします。
【大内学校教育官】  長谷川洋委員でございます。
【長谷川委員】  長谷川です。よろしくお願いします。
【大内学校教育官】  藤木卓委員でございます。
【藤木委員】  藤木でございます。よろしくお願いいたします。
【大内学校教育官】  本日は御欠席でございますが、中林由美子委員が本ワーキンググループの委員に就任をされてございます。
委員の御紹介は以上でございます。
次に、文部科学省の関係者を御紹介させていただきます。
文部科学省初等中等教育局教育課程課長の合田でございます。
【合田教育課程課長】  合田でございます。よろしくお願いいたします。
【大内学校教育官】  教育課程課教科調査官の上野でございます。
【上野教科調査官】  よろしくお願いいたします。
【大内学校教育官】  教育課程課教科調査官の筒井でございます。
【筒井教科調査官】  筒井でございます。よろしくお願いいたします。
【大内学校教育官】  教育課程課教科調査官の市毛でございます。
【市毛教科調査官】  市毛でございます。よろしくお願いいたします。
【大内学校教育官】  教育課程課教育課程企画室専門官の小野でございます。
【小野教育課程企画室専門官】  よろしくお願いいたします。
【大内学校教育官】  また、本日遅参でございますけれども、初等中等教育局主任視学官の梶山も関係者としてございます。
それから、私でございますけれども、教育課程課学校教育官の大内でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、議事に入ります前に、橋本主査、古川主査代理から御挨拶を頂戴できればと思います。
【橋本主査】  橋本都と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
これまで教育行政を長らく担当しておりまして、現在、技術の教職課程があります工業大学に勤務をしております。皆様方の御支援を頂きまして、何とか務めさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【古川主査代理】  主査代理を仰せつかっております古川稔と申します。
現在、日本の国際競争力というのは、15年前に比べますと随分低下しております。そして、今後、少子高齢化ということで困難な状況を迎えますけれども、こういった中で日本を活性化する、人々が希望を持って生活できる、持続可能な社会をもたらす、そういったことができるのは、生活に直面した問題、主題を取り扱う技術・家庭科であるというふうに思っております。この教科の重要性が増すものと思っております。
先ほどお話がありました、8月に出されました論点整理の内容、趣旨を十分踏まえて、技術・家庭科の方向、それから、内容を明確に整理できたらと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
【大内学校教育官】  ありがとうございました。
それでは、本部会の進行は、これより橋本主査にお願いをいたします。
【橋本主査】  これより議事に入らせていただきます。
初めに、本ワーキンググループの審議等につきましては、初等中等教育分科会教育課程部会の運営規則第3条、資料2の方にあると思いますが、原則、公開により議事を進めさせていただきますとともに、第6条に基づき議事録を作成し、原則、公開するものとして取り扱うこととさせていただきます。よろしくお願いいたします。
なお、本日は、報道関係者より会議の撮影及び録音の申出があり、これを許可しておりますので、御承知おきください。
それでは、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。
【大内学校教育官】  配付資料の確認をさせていただきます。本日は、議事次第に記載しておりますとおり、資料1から資料10、その他、机上に参考資料を配付させていただいております。不足等がございましたら、事務局にお申し付けください。
なお、机上にタブレット端末を置いておりますが、その中には本ワーキンググループの審議に当たり参考となる審議会の答申等のデータを入れてございます。
また、本部会の設置に係り、新たに中央教育審議会初等中等教育分科会の委員になられた先生方におかれましては、本日、机上に辞令をお入れした封筒を置かせていただいておりますので、御確認のほど、よろしくお願いいたします。
【橋本主査】  それでは、諮問、教育課程企画特別部会の論点整理、改訂の検討体制、それから今後のスケジュール等について、事務局から御説明をお願いします。
【小野教育課程企画室専門官】  失礼いたします。事務局から、資料4、5及び資料6の緑色の冊子に基づきまして、これまでの検討経緯、論点整理等の概要をお時間の許す限り御説明させていただきたいと存じます。
まず資料の4でございますけれども、この家庭、技術・家庭ワーキンググループも含めました次期学習指導要領の改訂に向けた検討体制でございます。
1枚めくっていただきまして、2枚目に縦長の表で次期学習指導要領改訂に向けた検討体制ということで、中央教育審議会教育課程部会のもとに教育課程企画特別部会というものが設置されまして、後ほどまた御紹介をさせていただきます論点整理というものを方向性としてまとめていただいております。
この論点整理の方向性に基づきまして各教科等別、また学校段階等別の議論を行い、専門的な検討を深めるために、別紙にありますようなワーキンググループ及び校種別部会を設置するということになっております。
なお、本家庭、技術・家庭ワーキンググループという位置付けになっておりますけれども、前回改訂の際には、ここに情報というものが加わっておりました。今回、情報のワーキンググループは、別の、1つのワーキンググループとなっておりますけれども、前回改訂以上に、教科等ごとに内容や目標とする資質・能力等で重なり合う部分、関わり合う部分がたくさんございますので、それぞれのワーキングごとに検討の状況を随時御紹介させていただくなどして、横の連携をしっかりとった形で御議論が進むような形で事務局としても工夫をさせていただきたいと思います。
それから、資料5の方をごらんいただけますでしょうか。先ほど課長の挨拶の中でも、ほぼ概要を御紹介させていただいておりますが、今回の改訂に関するこれまでのスケジュール及び今後のスケジュールの概要でございます。
8月に教育課程企画特別部会で論点整理として方向性をまとめていただきましたものを踏まえまして、10月以降順次、教科等別・学校段階等別のワーキンググループを設置し、専門的な検討を進めていただいております。
おおむね27年度末、あるいは年度明けにかけまして、それぞれの議論を取りまとめていただきまして、全体としますと、平成28年におきまして審議のまとめ、それから年度内に答申をいただき、改訂に進めていくというようなスケジュールで進めさせていただければというふうに考えております。
続きまして、資料6、番号振っておりませんが、緑色の論点整理の冊子に基づきまして御説明をさせていただきます。
この論点整理の冊子の中には、冒頭から論点整理の全体の説明を入れておりますけれども、お手元、附箋で耳を付けさせていただいておりますが、この論点整理の議論の始まりとなりました昨年11月の中央教育審議会の諮問を載せております。2つ目の緑色の仕切りの後に、附箋で耳を張らせていただいた部分でございます。
冒頭、諮問しますという文科大臣名の1枚の紙がありまして、2枚目から、その理由が説明されております。
これまでの改訂の経緯なども踏まえまして、今回の諮問の概要が説明されておりますけれども、2ページ目の真ん中あたりでございますけれども、これからの時代に、子供たちに必要な力を育むためには何を教えるかという知識の質や量の改善はもちろんのこと、どのように学ぶかという学びの質や深まりを重視することが必要であり、課題の発見や解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習、いわゆるアクティブ・ラーニングやそのための指導の方法等を充実させていく必要があるということ。こうした学習・指導方法は、知識・技能を定着させる上でも、また、学習意欲を高める上でも効果的であるということが言われているということ。
そして、学習・指導方法の改革とあわせて、どのような力が身に付いたかに関する評価の在り方についても、同様の視点から改善を図る必要があるという基本的な考え方を諮問の際に述べさせていただいております。
以下、これに基づきまして3つの観点で諮問の概要を入れております。
まず、ページの下のところに、「第一に」としまして、教育目標・内容、学習・指導方法、学習評価の在り方を一体として捉えた、新しい時代にふさわしい学習指導要領等の基本的な考え方についてという観点から。
また、1枚めくっていただきまして、次のページの真ん中の段からでございますけれども、「第二に」としまして、育成すべき資質・能力を踏まえた新たな教科・科目の在り方や既存の教科・科目等の目標・内容の見直しについてという観点でございます。
それから、3つ目の柱といたしまして、次のページの一番下の段になりますけれども、次期学習指導要領で目指す理念を実現するためにどのような方策が必要かということで、各学校におけるカリキュラム・マネジメント、学習・指導方法及び評価方法の改善を支援する方策についても御検討をお願いします、という大きな3つの観点を上げさせていただいているところでございます。
この諮問に基づきまして、教育課程企画特別部会を中心に議論いただき、教育課程部会でまとめていただきましたものが、本論点整理でございます。
順番が前後して恐縮ですけれども、冊子の冒頭に戻っていただきまして、残りのお時間が許す限り、論点整理のポイント等を御紹介させていただきます。
最初のページに目次がございまして、めくっていただいて1ページ目、2030年の社会と子供たちの未来というところから文章が始まっております。
今回の学習指導要領の改訂がスケジュールどおりに行きますと、2020年、平成32年から小学校で実施というところから順次実施を図ることになりますが、これまでの学習指導要領の改訂のスケジュールのサイクルからいたしますと、おおむね10年に一度見直しをするというタイミングを考えますと、今回議論していただきます学習指導要領は、おおむね2020年から2030年の社会を視野に入れながら御議論をいただきたいということで、2030年の社会と子供たちの未来ということを冒頭に上げさせていただいております。
そして、考え方の中に入ってまいりますけれども、めくっていただきまして3ページのところでございますが、ここからは社会に開かれた教育課程ということで、全体を通じての考え方を紹介していただいています。
この社会に開かれた教育課程として3つの点を御指摘いただいています。
1つ目には、3ページ目の一番下の段でございますけれども、「よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創る」という目標を持って、教育課程を介して、その目標を社会と共有するということ。
それから、めくっていただきましてマル2というところでございますが、これからの社会を創り出す子供たちが、社会、世界に向き合い、関わり合い、みずからの人生を切り拓いていくために求められる資質・能力とは何かを教育課程において明確化すること。
3つ目に、教育課程の実施に当たりまして、学校教育を学校の中に閉じるのではなく、その目指すところを社会と共有・連携しながら実現させていくことが必要であるという観点が上げられております。
続きまして、5ページ目以降に前回改訂の成果と次期改訂に向けた課題ということがまとめられております。
5ページ目の真ん中から下段にかけてでございますけれども、前回の改訂におきまして、子供たちの生きる力の育成をより一層重視するという観点、それから、改正された学校教育法を踏まえまして、いわゆる学力の三要素から構成される確かな学力をバランス良く育くんでいくということ、あるいは体験活動、言語活動といったものを重視していくということ。こうしたことを踏まえまして、各学校で真摯な取組が重ねられておりまして、その成果は、近年、改善傾向にある国内外の学力調査等の結果にも表れているということが述べられています。
前回改訂で重視された、これらの学力の三要素のバランスや各教科を貫く言語活動や体験活動といったことにつきましては、引き続き、その成果を受け継いで充実を図ることが重要であるということがまとめられております。
一方で、めくっていただきまして6ページ目で、次期改訂に向けての課題ということでまとめていただいております。
前回の改訂を踏まえました取組が着実に成果を上げつつ一方で、課題として、例えば子供たちは判断の根拠や理由を示しながら自分の考えを述べることが苦手であるということ、あるいは自己肯定感や主体的に学習に取り組む態度、社会参画の意識などが国際的に見て相対的に低いといったような課題が上げられています。
こうした状況から考えますと、みずからの能力を引き出して主体的に判断し行動するというところまでには、必ずしも十分に達しているとは言えないということが上げられております。
このことは、社会において自立的に生きるために必要な力として掲げられた生きる力を育むという理念につきまして、これを具体的に各学校の教育課程、あるいは各教科の授業に浸透、具体化させていくというところまでは、必ずしも十分ではなかったところに原因があるのではないかという考えをまとめていただいております。
7ページ目の冒頭のところでございますけれども、これまでの学習指導要領は、知識や技能の内容に沿って教科等ごとには体系化されていますが、今後は、さらに教育課程全体で子供にどういった力を育むかという観点から、教科等を越えた視点を持ちつつ、それぞれの教科等を学ぶことによって、どういった力が身に付き、それが教育課程全体の中でどのような意義を持つのかを整理し、教育課程の全体構造を明らかにしていくことが重要となってくるのではないかということを上げていただいております。
7ページ目の下段以降で、新しい学習指導要領等が目指す姿ということについてまとめていただいております。
7ページ目の下から2つの段でございますけれども、学習指導要領に基づく指導を通じて子供たちが何を身に付けるかを明確に示していく必要がある。学習する子供の視点に立ちまして、何ができるようになるのかという視点から育成すべき資質・能力を整理し、その上で整理された資質・能力を育成するために何を学ぶのかという必要な指導内容等の検討。そして、その内容をどのように学ぶのかという子供たちの具体的な学びの姿を考えながら構成していく必要があるのではないかということが上げられています。
それから、その下の学習プロセス等の重要性を踏まえた検討というところの最初の柱で、こうした検討の方向性を底支えするのは、学びや知識等に関する科学的な知見の蓄積であるということを上げていただいております。
それから、次のページの9ページ目以降に育成すべき資質・能力についてということで、その考え方を整理していただいております。
若干ページが前後して恐縮ですけれども、お手元の資料の附箋を張らせていただいております資料全体の後半でカラー刷りの、いわゆるスライドの資料を1つのページに2つずつ並べているところがあります。その中で附箋を張らせていただいているページでございますが、スライドの右下に27と振ってある大きな赤い三角形の形がある図でございます。
今後育成すべき資質・能力を、このような3つの柱に基づいて整理していくことが必要ではないかということで、左下の青い部分、「何を知っているか、何ができるか」という個別の知識・技能という観点。右下の「知っていること・できることをどう使うか」、思考力・判断力・表現力というべき観点。それから、上の部分の「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」という主体性・多様性・協働性、学びに向かう力、あるいは人間性といった形で整理される力、こういったものをバランス良くどのように育んでいくかということ。これについて、この論点整理の中でまとめていただいたところでございます。
御説明の順番が前後しますけれども、もとの本文に戻っていただきまして、10ページ目から11ページ目は、今の3本柱の観点を文章で御説明させていただいた部分でございます。
12ページ目、13ページ目は、これから求める様々な力の中でも、特にこれからの時代に求められる資質・能力として幾つかの観点から御紹介をいただいております。
12ページ目には、変化の中に生きる社会的存在としてということで、複雑で変化の激しい社会の中で求められる資質・能力として、例えば情報活用能力のようなもの、物事を多角的・多面的に吟味し見定めていく、いわゆるクリティカル・シンキングといったような力が必要になるのではないかということ。
それから、13ページ目にはもう一つの観点で、グローバル化する社会の中でという観点で、グローバルな視野で活躍するために必要な資質・能力ということで、言語や文化に関する理解を深めること、古典や芸術を通じて学ぶべきこと、日本文化を理解して自国の文化を語り、継承することができるようにするとともに、異文化を理解し多様な人々と協働していくことができるようになることが重要である、こういった観点がまとめられているところでございます。
こうした資質・能力につきましても、先ほどの3つの柱に沿って整理していくということが述べられておりますけれども、13ページ目の下のマル3というところでは、この育成すべき資質・能力につきまして、幼児教育から高等学校までを通じた見通しを持って育んでいく、系統的に示されなければならないということを上げていただいております。
14ページ目、15ページ目にかけてでございますけれども、学習指導要領の構造化の在り方ということで、15ページの上の段落でございますが、教科等の本質的意義としまして、学習指導要領の構造の整理に当たりまして、各教科等をなぜ学ぶのか、それを通じてどういった力が身に付くのかという教科等の本質的な意義に立ち返って検討する必要があるということ。
教科等における学習は、知識・技能のみならず、それぞれの体系に応じた思考力・判断力・表現力等や情意・態度等を、それぞれの教科等の文脈に応じて育む役割を有しているということが上げられています。
例えば思考力はということで、思考力について各教科の中のどのような過程で育まれるかということで上げていただいておりますが、技術・家庭科におきましては、生活の課題を見出し、最適な解決策を追求する過程、こういったものを通じて育まれていくということが上げられておるところでございます。
それから、またページが飛んで恐縮でございます。17ページ目以降のところでございますけれども、学習活動の示し方やアクティブ・ラーニングの意義ということで、17ページ目にアクティブ・ラーニングの意義というところでまとめております。この具体的に意義として指し示している内容につきましては、18ページ目に大きく3つの柱を整理しております。
今回、学習・指導方法の見直しというところにつきましても御議論いただいておりますけれども、この改訂につきましては、18ページ目の一番上の丸にありますとおり、特定の学習・指導方法の型を普及させるということではなくて、以下に述べますような視点に立って学び全体を改善していくということ、こういった観点から充実を図っていくべきであるということが述べられております。
3つの観点につきまして、1つ目は、習得・活用・探求という学習プロセスの中で、問題発見・解決を念頭に置いた深い学びの過程になっているかどうかという観点。
それから、2つ目には他者との協働、外界との相互作用を通じまして、みずからの考えを広げ深める対話的な学びの過程が実現できているかどうか。
3つ目には、子供たちが見通しを持って粘り強く取り組み、みずからの学習活動を振り返って次につなげる、いわば主体的な学びの過程が実現できているか。
こういった3つの視点に立って、学び全体を改善していくことを目指すべきであるということでまとめていただいているところでございます。
そして、この学び方の改善ということとあわせまして、19ページ目の真ん中以下のところで、学習評価の在り方についてということで、教育課程や学習・指導方法の改善と一貫性を持った形で学習評価の在り方についても改善を進めていくことが求められるということが述べられております。
またページが飛んで恐縮でございます。21ページ目以降に、学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策ということで、幾つかの観点を上げていただいております。
1つ目にカリキュラム・マネジメントの重要性ということで、これも3つの側面から、その重要性を説明していただいております。
22ページ目の真ん中に1、2、3と上げておりますけれども、学校の教育目標を踏まえた教科横断的な視点で、その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していくということ。
2つ目の視点としまして、教育課程の編成・実施・評価・改善という一連のPDCAサイクルを確立することが必要であるという観点。
3つ目に、教育内容と教育活動に必要な人的・物的資源等を地域等の外部の資源も含めて活用しながら、効果的に組み合わせることが必要であるという3つの観点から、カリキュラム・マネジメントを捉えていくことが必要であるということを上げていただいております。
それから、めくっていただきまして24ページ目以降に、学習指導要領等の理念の実現に向けて必要な支援方策ということで、この教育課程に関する議論と並行しまして中教審の中で議論していただいた観点も、あわせましておまとめいただいているところであります。
24ページ目には、教員の国際的評価と課題ということで、この点につきましては、同じく中教審の教員養成部会の中で御議論いただいた今後の教員の資質・能力の向上についての議論を踏まえまして、養成・採用・研修等の在り方についての充実と合わせて進めていくことが必要であるということ。
それから、24ページ、25ページ目にかけての環境の整備というところにつきましては、同じく中教審初等中等教育分科会の中で議論していただいておりましたチームとしての学校・教職員の在り方に関する議論、ここの中で上げられております教員以外の専門スタッフの参画によりまして、チームとしての学校の実現を通じて問題解決に臨んでいくこと、子供と向き合っていくことが必要であるということが上げられていることと、あわせて推進していくことが必要だろうということを上げていただいているところでございます。
それから、ページをめくっていただきまして、26ページ目からでございますが、こちらに5ポツとしまして、各学校段階、各教科等における改訂の具体的な方向性ということでまとめていただいております。
ここで上げている具体的な方向性ということに基づきまして、具体的にその中身を検討するということが、現在、この本家庭、技術・家庭ワーキンググループも含めまして、教科等別・各学校段階別のワーキンググループ、部会に検討をお願いしたいことでございます。
まず、この中で、26ページ目の下段でございますけれども、各学校段階の教育課程の基本的な枠組みと学校段階間の接続ということで、26ページ目の幼児教育以降、学校段階ごとに課題を上げていただいております。
27ページ目のマル2というところでは小学校、28ページ目、29ページ目にかけて小学校の話が続きまして、30ページ目に中学校、高校について、学校段階別の課題ということが上げられているところでございます。
いずれの学校段階につきましても、先ほど図の形で御紹介させていただきました資質・能力の3つの柱に沿って、それぞれの学校段階を通じて身に付けるべき資質・能力を検討するということ。その前提としまして、それぞれの現行の学習指導要領の各教科等の授業時数や指導内容を前提としつつも、教科等の関係性を可視化していく、改善を図っていくことが必要であるということを上げていただいているところでございます。
それから、33ページ目以降に、(2)で各教科・科目等の見直しというところを上げていただいております。
済みません、1点飛ばしてしまいました。学校段階ごとの最後のところ、32ページ目でマル5、幼稚園、小学校、中学校、高等学校等における特別支援教育、特別支援学校という項立てをしております。
こちら、特別支援学校だけではなく、幼・小・中・高における特別支援教育の在り方ということを含めて議論をしていただくということ。これは、今回の各教科等別の御議論の中でも御配慮いただきたい事項ということの中に上げております。特別支援教育の観点を上げておるところでございます。失礼いたしました。
33ページ目の下段、(2)の各教科・科目等の内容の見直しというところ以降に、教科等ごとの課題を整理していただいております。
33ページ目から34ページ目にかけましては、総則として全体に係る考え方がまとめられております。
以下、マル2の国語以降、各教科等の観点をまとめておりますが、家庭、技術・家庭につきましては40ページの中頃の段、マル10のところでございます。
40ページ目のマル10のところに、これまで家庭、技術・家庭科において取り組んできたこと、果たしてきた役割や充実を図ってきたこと、あるいは課題となることなどについて整理いただいているところでございます。
40ページ目の下から2番目の段落で、家庭科及び家庭分野につきましては、次期改訂に向けて、幼児期に育まれたいろいろな人との関わりや健康な心・体の基礎の上に、小・中・高等学校教育を通じて育成すべき資質・能力を、先ほど紹介した3つの柱に沿って明確化し、各学校段階を通じて家庭や社会とのつながりを重視するとともに、少子高齢社会、資源や環境に配慮したライフスタイルの確立、持続可能な社会づくりのための力、他者と共生して自立して生活する力、生涯を見通して生活を設計し創造していく力の育成などを図っていくことが求められるということ。
また、技術分野においても、特にということで上げていただいていますのが、次期改訂に向けては、小学校図画工作科、高等学校情報科、職業に関する教科・科目等との関係を図りつつ、こちらも3つの柱に沿って育成すべき資質・能力を明確化しまして、高度な技術製品が普及する社会において、技術に関する科学的な理解をもとに、技術を適切に評価・活用し、安心・安全な生活の実現に貢献できる力、あるいは技術を創造し、より良い社会を構築できる力の育成等を図っていくことが求められるという観点を上げていただいております。
この点につきましては、後ほど検討事項の紹介と合わせて御説明させていただければと存じます。
最後に、48ページ目でございます。6ポツとしまして、本文の最後に今後のスケジュール等ということで上げていただいております。
先ほど御紹介させていただきましたように、平成28年度中を目途に答申がまとめられるよう御審議をお願いしたいということと、最後の段落でございますけれども、各学校段階・教科等別の検討におきましては、教育課程企画特別部会の議論を踏まえつつ、各教科等や学校段階に閉じた議論ではなく、カリキュラム全体としてどのような資質・能力を育成すべきか、その中で各教科等が果たすべき意義とは何かといった点を踏まえた上での検討をお願いします、ということでまとめていただいております。
是非、こういった観点を踏まえまして、ワーキンググループにおける議論を深めていただければと存じます。
大変駆け足の説明で恐縮ですけれども、以上でございます。
【橋本主査】  大事な論点整理のところを御説明いただきまして、我々は、ここを十分読んで理解して進めなければならないわけですけれども、きょう、第1回目ということで、これから少しまた宿題というような形で、ここを読み込んで進めてまいりたいと思います。
それでは、今までの説明につきまして、どうしてもという御質問等ありましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
それでは、続きまして本ワーキンググループにおける検討事項、家庭、技術・家庭における目標、指導内容等につきまして、事務局の方から御説明をお願いいたします。
【大内学校教育官】  それでは、御説明させていただきます。お手元に資料8、それから、資料9、資料10の方を御用意いただければというふうに存じます。
こちらの資料8につきまして、本ワーキンググループにおける検討事項ということでおまとめをさせていただいております。この資料8でございますが、先ほど教育課程企画室の小野の方から説明がございましたが、中教審の論点整理の緑色の冊子の附箋の付いております箇所で、パワーポイントの資料が上下段に2段に組まれておりまして、スライド番号で申し上げますと26、27のスライドが表示されているページがあるかと思います。附箋が付いている箇所なのですけれども、そちらもお手元に御用意いただきながら、こちらの資料8の方の御説明をさせていただければというふうに思っております。
資料8でございますけれども、本ワーキンググループにおける検討事項といたしまして、今、お手元に御用意いただきましたスライドのナンバー26、上段の方になりますけれども、こちらの方に書いてございますのは学習指導要領の改訂の視点ということで、先ほど説明させていただいた論点整理の、特に指導要領改訂に係る視点の部分を重点的にまとめているスライドでございます。
実は、このスライドと資料8というのが基本的にリンクをしている形になっておりまして、資料8で1、2、3、4と4つ示しておるのですけれども、まず1点目の家庭、技術・家庭科を通じて育成すべき資質・能力というのを示してございます。この部分というのは、スライドの26の一番上の段にある新しい時代に必要となる資質・能力の育成、ここの部分に対応している形になってございます。
具体的には、資料の8とスライドと行ったり来たりしますが、資料の8については、まず1点目として、中点になりますけれども、家庭、技術・家庭科を学ぶ本質的な意義や他教科との関連性についてということで、先ほどの説明の中にもありましたが、この教科を学ぶ本質的な意義、この教科でなければ学べないことって何だろうということを是非このワーキンググループの中で明らかにしていただきたいというのが、まず第1点でございます。
また、他教科との関連性ということに触れられてございます。学校段階別に見ましても、小・中・高ということで、関連する教科というのは様々入ってまいります。例えば家庭科でありましたら社会科、あるいは公民科等との関連というのが出てまいりますし、特に技術・家庭科技術分野におきましては中学校のみに設置されているというような現状もございます。
家庭分野との連携はもとより、技術・家庭科における他教科、この場合でありますと、論点整理にも示してございますけれども、小学校の図画工作科でありますとか、あるいは高等学校の情報科、それから、各種の専門教科との関係性、こういったことについても検討していただきたいというのが、1ポツ目の1つ目の中点でございます。
それから、2つ目の中点でございますけれども、3つの柱に沿った育成すべき資質・能力の明確化ということで、これも先ほど来説明申し上げたとおりなのですけれども、スライドの方で申し上げますと、26のスライドの一番上の「新しい時代に必要となる資質・能力の育成」の中に入っているマル1、マル2、マル3が、この1、2、3に対応しているということでございます。
さらに、申し上げれば、スライドの27、26の下のスライドになりますけれども、こちらの方で示している三角形の3つの頂点に当たる部分、これが1、2、3に該当しているものでございますので、この関係性を踏まえた形で資料の8にお示しをさせていただいているローマ数字の1、2、3の観点からの御議論をお願いしたい、この観点に沿った形での明確化というのをお願いしたいというふうに思っております。
それから、資料8の1ポツの3つ目の中点でございますけれども、幼稚園・小学校・中学校・高等学校を通じた家庭、技術・家庭科において育成すべき資質・能力の系統性ということで、先ほどのスライドで申し上げますと、26、上の方のスライドにございます左下の部分に「何を学ぶか」というのがございます。特に育成すべき資質・能力を踏まえた教科・科目等の新設や目標・内容の見直し、こちらの方が技術・家庭科については該当してまいると思います。
小・中・高等学校を通じた形での家庭、技術・家庭科における資質・能力の系統性に付いての御議論をお願いしたいというのが、1ポツの3つ目の論点、検討事項になります。
そして、最後の検討事項になりますけれども、こうした育成すべき資質・能力の明確化と合わせまして、当然のことながら指導内容についての系統性というのも御検討いただきたいということで、これが4つ目の検討事項ということで掲げさせていただいております。
次に、資料8の2の方でございますけれども、アクティブ・ラーニングの3つの視点を踏まえた資質・能力の育成のために重視すべき家庭、技術・家庭科の指導等の改善・充実の在り方ということで、こちらについても資料8の下段の方に米印で示しておりますが、アクティブ・ラーニングの3つの視点というのは、先ほども説明がありましたけれども、本文の18ページ及び今ごらんいただいておりますスライド、今度は26の右下の方になりますけれども、「どのように学ぶか」というところを受けた検討事項が、こちらの方になります。
スライド26の右下の部分です。「どのように学ぶか」という中で、「アクティブ・ラーニングの視点からの不断の授業改善」、指導方法の改善についてということで、その際には、こちらの1、2、3で示しておるような、3つの視点を踏まえた形で指導の改善・充実の在り方について御議論、御検討いただきたいということでございます。
3点目といたしましては、指導と評価の一体化の観点から、これも先ほど説明がありましたけれども、家庭、技術・家庭科の評価の在り方についてということで、スライドの26の真ん中のところに「学習評価の充実」というのがございますので、これを受けた形での検討事項というふうになっております。
最後に、4ポツといたしまして必要な支援、先ほど特別支援教育の観点も含めてという説明がありましたが、必要な支援等条件整備等についてということで、こちらは本文の方になりますけれども、21ページ以降が必要な支援について、先ほども説明があったとおり、教員の養成・採用・研修なども含めまして、支援体制の在り方について御議論いただきたいということで、本ワーキンググループにつきましては、この4つの大きな軸をもとに御検討いただきながら、特に1の資質・能力に関連をいたしまして幾つか細分化して御検討いただく視点というのがございます。こういった視点を参考にしながら、本日以降、御議論を重ねていただければというふうに思っております。
こういったことを御議論いただく観点といたしまして、資料の9-1、それから資料の10-1のところで、家庭、技術・家庭科の技術分野、それから家庭分野についての現状の資料を御用意させていただいております。
まず、資料の9-1をごらんいただければと思います。資料の9-1につきましては、学習指導要領の変遷というのが、スライドの2ページ目の方にございますけれども、学習指導要領の改訂は、過去6回改訂を行ってきておるわけですけれども、今回は7回目の改訂ということになってございます。
1枚おめくりをいただきまして、スライドの3のところですが、現行の学習指導要領の理念ということで、2つ前の学習指導要領、平成10年から平成11年に改訂されました学習指導要領で示された「生きる力」という理念がございます。こちらを踏まえつつ教育基本法の改正等を受けまして、現行の学習指導要領、平成20年、平成21年に改訂された学習指導要領におきましては、これまでの理念を継承しながら「生きる力」を育成する。その際に「ゆとり」か「詰め込み」かということではなくて、これからの社会において必要とされる知・徳・体のバランスとれた「生きる力」を効果的に育成しましょうというのが現行学習指導要領の狙い、理念ということで継承されておるということでございます。
具体的に技術分野の変遷につきましては、シートの4で示されているとおりなのですけれども、技術・家庭科につきましては、資料が行ったり来たりして恐縮なのですが、資料の9-3をお手元に御用意いただければと思います。
中学校の技術・家庭科につきましては、技術と家庭という2分野にまたがる内容で構成をされておりまして、大きく変動がございましたのは平成元年の頃でございます。
具体的には平成元年に入りましてから、平成元年に告示をされた学習指導要領におきましては、男女ともに技術に関する内容、それから、家庭に関する内容が必修として位置付けられたということがございます。
それ以前がどうだったかと申しますと、昭和52年までの改訂におきましては、中学校男子であれば技術分野の内容を中心に、女子であれば家庭分野の内容を中心に行ってまいりました。
平成元年の学習指導の改訂の際に、技術と家庭の内容が、それぞれ男女ともに必修で学習をするというふうに改めまして、また、その際に、選択領域などが平成元年の際には設けられておりましたが、必要な内容をそれぞれの学校、又は生徒において選択をしていくというのが中学校の技術・家庭科の基本的な構造となっておりました。
平成20年、現行の学習指導要領におきましては、この中で技術分野、家庭分野ともに必修の内容で構成をされておりまして、技術分野につきましては大きく4分類、Aからごらんになっていただければと思いますけれども、材料と加工に関する技術、エネルギー変換に関する技術、生物育成に関する技術、情報に関する技術の大きく4つの学習領域が設けられているところでございます。
資料の9-1に戻っていただきまして、こういった形で構成されている現行の学習指導要領でございますけれども、現行学習指導の技術分野におきましては、シート番号が振っていなくて申し訳ありませんけれども、シートの5になると思います。技術・家庭科(技術分野)の今次の改訂の趣旨といたしまして、先ほど来申し上げているとおりなのですけれども、技術を適切に評価し活用できる能力と態度の育成を重視するということであるとか、社会の変化に対応して内容の充実を図る。さらには、情報通信ネットワークの観点から、あるいは製品の安全性に関するトラブルへの対応、こういった観点を重視して指導内容についての改善がなされたところでございます。
下の技術分野の学習活動例については、省略させていただきます。後ほどごらんになっていただければと思います。
そういった中で、現時点での現状をどう捉まえているかというのがシートの7枚目になりますが、技術・家庭科(技術分野)に関する現状についてというところになります。
大きく4点整理をさせていただいておりますけれども、まず第1点目としては、技術と社会や環境との関わりの理解に対して課題があるのではないか。これは、前々回の改訂のときの指導要領ベースなので、やや古い情報になりますが、特定の課題に関する調査というのを実施しておりまして、その際に表れている課題ということで、ここに書き添えさせていただいております。
また、平成25年度に実施されました情報活用能力調査の結果からプログラミングや情報セキュリティなどを含めました情報活用能力について課題があるのではないかというのが2点目。
3点目といたしまして、高度な技術製品の普及が進んできているというような現状を受けた考え方が必要ではないかというのが3点目。
4点目といたしましては、科学・技術イノベーションや持続可能な発展を担う人材の育成という観点から、日本学術会議でありますとか、日本産業技術教育学会から要望をいただいておりますので、こういった観点を受けた改訂の視点が必要ではないかというのが、私ども現状として捉えているところでございます。
また、諸外国におきましても、英国や米国におきましてSTEM教育、理科、テクノロジー、エンジニアリング、それから数学というような形で、どの分野の人材を育成するということではなくて、これらの視点を踏まえた形で統合的に人材を育成すべきではないかというような御提言が、世界各国におきましてもされているところでございますし、また、スライドの9の方になりますけれども、日本産業技術教育学会におきまして、技術分野の学習活動と他教科との関連を踏まえながら、技術的課題解決力を育成するための方法と過程ということで、図にお示しさせていただいているような学習サイクル、学習プロセスのようなものを御提案いただいております。
また、技術教育に関する学習活動の特徴ということで、これも先ほど来ございましたけれども、関連する教科、あるいは学問分野ということで、技術に関しましても科学や芸術分野、そういった分野との関連性をより積極的に図っていくべきではないかというような御提言をいただいております。
最後のスライドになりますけれども、技術分野の教育を充実する取組ということで、教員研修制度の充実でありますとか、あるいは企業等と連携をして、本日も神山委員に御出席いただいておりますけれども、ダイソンなどの企業等と連携した取組というようなことも技術教育の中で展開をしているところでございますので、引き続き、こういった取組を踏まえて次期学習指導の在り方について御検討をお願いしたいということでございます。
それと、資料の10-1の方になりますけれども、家庭分野の方になります。こちらの方を御用意いただければと思います。
家庭分野につきまして、技術・家庭科(家庭分野)につきましては、小学校の家庭科、それから、中学校の家庭分野、高等学校の家庭科とございますので、小・中・高一貫した形での家庭科教育が現在なされているところでございます。
現行学習指導要領について申し上げますと、平成20年に改訂をされました小学校の家庭科、それから中学校の家庭科につきましては、小・中の学びの系統性ということに配慮をいたしまして、内容の領域の示し方というのを基本的に統一しております。
具体的には家庭生活と家族に関することが1つ。2点目として日常の食事、衣食住のうちの食を中心とした観点が1つ。それから、Cとして快適な衣服と住まいということで、衣食住のうち衣と住についての観点が1つ。それから、Dとして身近な消費生活と環境ということで消費者の視点、それから持続可能な開発、環境の視点というので構成をされております。
こういった観点については、中学校の技術・家庭科(家庭分野)についても同様の構造になってございまして、小・中での学びの系統性に配慮されているというような状況でございます。
なお、高等学校につきましては、スライドの3になりますけれども、先ほどの中学校の技術分野の方で申し上げましたが、高等学校についても平成元年の改訂の際に、それまで女子について必修であった家庭科というものを平成元年の学習指導要領の改訂より、全員必修、男女隔てなく家庭科の学習をするという形で改訂がなされておりまして、現行の学習指導要領におきましては、家庭基礎2単位、又は家庭総合、生活デザインの4単位のうちから1科目を履修するということで、全ての高校生について必修とされているところでございます。
それから、スライドの4の方ですけれども、家庭科、技術・家庭科の改訂の趣旨、改訂の基本方針でございますけれども、現行学習指導要領での改訂の基本方針といたしましては、家庭と社会とのつながりを重視するという点、それから、生涯の見通しを持ってより良い生活を送るための能力を育成するという点、さらに、家庭科として特に大事にしておりますけれども、実践的な態度を育成するというような視点、こういった視点を中心に内容の改善が図られているということでございます。
また、家族と家庭に関する教育、それから子育て理解、さらには高齢者との交流、こういった点について重視をして、改善が図られております。
また、消費の在り方でありますとか、資源や環境に配慮したライフスタイルの確立を目指す指導の充実、こういった点を重視して改訂が図られておりまして、小学校におきましては生涯の家庭生活の基盤となる能力を育成するという観点、中学校においては中学生として自己の生活の自立を図るというような視点、高等学校においては生涯設計、キャリアプランニング、そういった学習を通して次世代を担うこと、あるいは生涯を見通すような視点を重視した形で改善が図られております。
資料の6ページ目、スライドの6、7、8でございますけれども、それぞれの学校段階において今現在取り組まれております実践的・体験的な学習の例をスライドとして御用意させていただいております。説明は時間の関係で省略をさせていただきます。
スライドの9でございますけれども、家庭科、技術・家庭科(家庭分野)に関する現状について、取りまとめてございます。
まず1点目といたしましては、小・中・高等学校のいずれも家庭科学習への関心や有用感というのが非常に高うございます。そういったデータが複数のデータから出ておりまして、家庭科学習についての子供たちの関心の高さが伺えるところでございます。
また、社会の変化に対応する能力も身に付いてきているというふうに評価されておりまして、ただ、その一方で課題を解決する能力でありますとか、実践力を身に付けるというような点について課題があるのではないかというようなこと。さらには、家庭や社会とのつながりを考えて、人との関わりを高めることについて課題があるのではないかというような御指摘を頂いているところでございます。
一番最後のスライド、10になりますけれども、こちらは、先ほど取りまとめをさせていただいた中教審の教育課程部会の論点整理の中にも検討素案として示されておるものでございます。こちらの内容については、高等学校の家庭科を念頭に置いて取りまとめた資料でございますので、高等学校の家庭科の検討素案ということでごらんいただければと思いますが、その中でも中ほどで改善の視点ということで赤枠で囲われております。
家庭科で育成する資質・能力の育成ということで、具体的には少子高齢社会に対応する力であるとか、社会参画力、コミュニケーション能力の育成、持続可能な社会を構築する力、そして、グローバル化に対応する力というような点が家庭科で育成する資質・能力の視点になるのではないかということでお示しをさせていただいておりますので、こういった点も踏まえながら、この後の議論の方をお願いしたいというふうに思ってございます。
資料の説明については以上でございます。
【橋本主査】  それでは、あと予定されております会議の時間、1時間ぐらいございますけれども、本日は第1回目ということで、また、初めの顔合わせということですので、皆様方から自由に御意見をいただきたいと思いますけれども、さりとて、やはり限られた時間でございますし、先ほど御説明がありました教育課程企画特別部会の論点整理に掲げられたことを踏まえて、そして、家庭、技術・家庭のワーキンググループでの検討事項ということを資料8で示していただいたということ、この辺を踏まえての意見交換を進めてまいりたいと思います。
先生方、もちろんそれぞれ御専門のお立場ということがあって、日頃から様々お考えのこともあると思いますけれども、御発言をいただきたいと思います。
御意見のある方は、名札を立てていただきますと、順次指名という形をさせていただきたいというふうに思っております。できれば、きょうは全員にお話をしていただきたいと思いますので、2、3分に区切ってまとめていただきたいと思います。
やり方なのですが、1時間ほど時間がありますが、このワーキンググループの難しいのは家庭分野と技術分野があります。しかし、1つのワーキンググループということですので、まず10分ほど、このワーキンググループに課せられました家庭、そして技術、両分野を踏まえて、共通に育成すべき資質・能力ということ、独自性というものは何なのかというところを少し出していただき、その後、家庭分野に関して、そして技術分野に関してと。家庭の方は小・中・高ありますので、少し時間を多くとりたいと思いますけれども、そういうことで3つに区切って進めさせていただきたいと考えております。
それでは、まず共通というところで10分ほどと考えておりますけれども、家庭、技術・家庭全体にわたって、こんなところを重視してというふうなことで、先ほどの資料8などをお手元に置いて御発言をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
まず、きょうは1回目ですので、思われていることをおっしゃっていただければと思います。中原委員。
【中原委員】  中原です。私は、環境の専門家なもので、そちらの方から簡単に意見を述べさせていただきたいと思います。
なぜ2030年なのかということの意味が大事だなと思います。中にはOECDとの政策議論の話がありますけれども、9月に発表になった国連のSDGs、これは2030年までの到達目標について書かれている。貧困問題をはじめ、ガバナンスも含めてどうあるべきか。その中に、この部会でも大事な、いわゆる持続可能な消費と生産についてもきちっと触れているという意味では、グローバルな社会というふうな文言もあるだけに、そこのくだりを少し入れると非常に分かりやすいのではないか。
文科省は、これまでESDについて力を注いできたわけですから、それの具体的な到達目標として出てきたSDGsというのは参考になるだろうと思います。
ひとつ御議論いただきたいなと思うのは、倫理や公正さについて全く触れられていない。未来の社会に対して次の子供たちがどういう人間に育ってほしいのかといったときに、直近の問題としては、18歳選挙権というのが出てくるだろう。そうすると、自分たちの一票を投じるという、まさに教育の効果が、どういうふうな世界を、社会を自分たちは選んだらいいのだろうかという視点の、これは、あらゆる教科に通じる問題だと思いますけれども、特に昨今、フォルクスワーゲンの事件であるとか、若しくは、これは日本の企業ですけれども、くい打ちをしたけど届かなかったとか、余りにも倫理観に欠けるようなことが社会で行われ過ぎている。そういうときに子供たちは、そういう事実を目の前にして、どう思うのだろうか。そして、公正さとは一体何なのかということに大人たちがきちっと回答を与えていかないといけないのだろう。導くということでは、きちんとしないとまずいのかなと。でなければ、より良い人生を送るとかという結論へとは行かないのではないのかなというのが、先ほど説明を伺った意見です。
【橋本主査】  ありがとうございます。大変重要な御指摘をいただいたというふうに思います。ほかの皆さん、いかがですか。
それでは、それぞれのお立場もあるということもありましょうから、そこのところで言っていただくということで、まず家庭分野の方に進めさせていただきたいと思います。
では、家庭分野、小学校から高校までの家庭科、家庭分野について、本質的な独自性といいましょうか、そういうふうな意義とか、あるいは様々な指導方法等、ここで掲げられたことについて日頃のお考えやらあると思いますので、よろしくお願いします。
では、橘川委員、お願いします。
【橘川委員】  橘川です。よろしくお願いします。
私は、高等学校の担当をしておりますけれども、高等学校の家庭科教育というのは、やはり現代社会が抱えている課題、例えば少子高齢化とか、環境問題とか、グローバル化とか、家族のこととか、本当にそれぞれの時代が抱えている課題を非常に鋭く捉えながら課題解決していく力を育んでいく、そういう教科なのだろうなと思っております。
高等学校におきましては、ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動というものがありまして、これは、家庭科で学んだ知識や技術を生かして、家庭やそれぞれの地域、それこそ正解のない課題に向き合って解決していく、そういった力を養成しているものなのですけれども、今年度も北海道で全国高等学校家庭クラブ研究発表大会がありましたけれども、全国の高校生が家庭や地域の人と人をつなぎながら、本当に地域を動かしているエンジンの役割を果たしているような、そういう姿の発表の場だったのです。
やはり、こういうふうに学んだことをそれぞれの地域の中で課題解決していく力を養成している。恐らく小・中・高の流れがあって、それだけの力があるのだと思いますけれども、これは、ますます重要なことなのではないかなと思っています。
また、学校経営者の立場から考えますと、これからの学校というのは、地域に開かれた特色ある学校づくりをしていかなくちゃいけないということで、本当に学校家庭クラブ活動が地域の中で、生徒が生き生きと活動する場にもなっておりますし、また、それを授業で取り扱っているということで、非常に科学的な視点なども入って、やはり今後、学校経営の視点からも重要なのではないかと思っています。
ただ、高校の場合については、先ほど御説明にもありましたように、家庭基礎2単位設置校が増えていく中で、授業時間が非常に少なくなっている中で、指導をどう充実させていくか、これが非常に大きな課題となっております。
【橋本主査】  ありがとうございます。学校経営という全体的な教育課程を編成する立場からの御発言をいただきました。
ほかにいかがでしょうか。奥山委員、お願いします。
【奥山委員】  ありがとうございます。横浜で子育て支援の活動をしておりますNPOです。今、橘川委員より高校側からのお話がございましたが、私どもの方は、逆に受け入れをするような立場になっております。もう10年、親子の交流のひろばというところを運営しておりまして、子供たちは、まだ幼稚園や保育園に行く前のゼロから3歳のお子さんが多く、ほぼ保護者、母親が多いですけれども、父親が連れてきたり、場合によっては地方ですとおじいちゃん、おばあちゃんが連れてこられたりというような場所になっております。
また、地元の県立高校と連携をしておりまして、家庭科の授業での連携、それから、今、ボランティアでの単位取得も可能となっています。今、全国大会の話がありましたが、全国大会でもちょっと何年か前でしたけども、全国入賞を果たした高校です。
そうしますと、年間を通じて私どもの施設との関わりを学年ごとに決めていらっしゃいます。メーンの学年は、赤ちゃんが遊ぶおもちゃなども手作りをして持ってきてくださるというようなことがあります。
それをきっかけにボランティアで単位を取得したいという学生も何人かいらっしゃいまして、毎年、その単位を取得した学生は、大学の進学にも生かし、また、大学に入ってからもボランティアで戻ってくるというような形で、学校と地域側との連携という形で、この10年進めてまいりました。
今、橘川委員からもございましたが、取組の非常に盛んな高校と、そうじゃない高校とかなり差があるなという感覚を持っております。
また、中学校においては、職業体験等での受け入れも非常に多いです。今は赤ちゃんとのふれあい体験ということで受け入れが非常に多いのですけれども、この背景は、今、乳幼児を育てている御家庭にアンケートをいたしますと、横浜のケースでは、自分の赤ちゃんが産まれる前に赤ちゃんのお世話をした経験があるかどうかを聞いたところ、4人に3人がないと答えております。つまり、赤ちゃんのおむつを替えたり、ミルクをあげたりという経験なしに母親になる人たちが4人に3人ということです。
従って、今、赤ちゃんを抱っこしたりする経験というのは、この教育課程の中でかなり実施されてきていると思いますが、本当はもう一歩踏み込んだ関わりが求められるというふうに、そのようなデータを見ると感じたりするところです。
少子高齢化ということは、身近に小さい子と関わりという体験、それから観察するということも含めて、そういったことがなかなかできない社会です。家族責任だけでなかなか難しいという中で、やはり学校教育の力をかりざるを得ないというようなところまで来ていると思っています。
そういうことで言えば、2030年、年少人口の割合ですとか、合計特殊出生率だとか、生涯未婚率、これは男性20%を超えておりますので、やはり家族を持つという価値観のようなもの、そういったものも家庭を通じて体験、学んでいく必要性があるのではないかと現場からは感じております。
以上です。
【橋本主査】  ありがとうございます。今、積極的に取り組んでいる学校もあれば、そういうことのない学校もあるというふうな御指摘もいただきました。
ほかにいかがでしょうか。それでは、鈴木佳子委員、お願いします。
【鈴木(佳)委員】  今、幼児との触れ合い体験のようなお話がありましたので、ちょっとそれに関連して、私、中学校の校長をしておりますので、中学校の幼児との触れ合い体験のこととかをお話しさせていただければというふうに思います。
今、私が勤めている学校でも、やっぱり核家族化とか少子化とか、あるいはひとり親家庭ですとか、いろんな御家庭の状況がありまして、本当に家庭の中に高齢者がいない、幼児がいないというような家庭も多くなってきている状況もございます。
そういったときに、やはり本校でも近くの保育園に行って、おもちゃを持って子供たちと触れ合うというような活動をしているのですけれども、やっぱり今までどうしても面倒を見てもらっていた立場から、幼児と触れ合うことによって面倒を見る立場みたいなことに変わって、そして、基本的には中学校3年生とか2年生とかというふうに、同じ年齢の子供たちで学校というのはなっていますので、その同じ年齢の子供たちの中でリーダー的な子もいれば、ついていくような子もいるのですけれども、保育園に行ったりしますと、みんな自分の方が上になりますので、面倒を見る立場になって、そして、その中で頼られたり、子供の面倒を見たりすることによって、どの子も自己有用感というか、今度、自分が支える側の立場になるような、そういう意識が持てるのかなというふうに思っているところがあります。
やっぱり幼児との触れ合い体験というのは、教育的効果が非常に高いかなと。ふだん、学校では見ることのできない、その子の良さとか、特徴といいますか、すばらしいところをたくさん見ることができるかなというふうに思っています。
もう一つ、ちょっと話は違うのですけれども、今お話をさせていただいているので、違う点で少しお話をさせていただくとすれば、やはり、そういったいろんな家庭があって、概して言えることは、いわゆる専業主婦と言われるようなお母さんが大分少なくなっていて、何もしなくて家庭の中で生活の自立に必要ないろんなものが伝承されていくかというと、今はなかなか難しいような状況にもあるかなというふうに感じています。
つまり、学校の家庭科の中で、小学校で初めて5年生で家庭科が入ってくると思うのですけど、そうなって初めて、例えば針と糸を持つとか、初めて包丁を持つというお子さんが中学校に上がってきているような状況がございまして、そういう中で、やっぱり家庭科の授業の役割というのはすごく大きくなっているのかなと。
先日も中学校2年生で洗濯機を使ったことがありますかと、あるクラスで聞いたときに、3分の1の子は洗濯機を使ったことがない。家庭科で洗濯機を使うという学習をするので洗濯機を使うみたいな、そのような機会になっているというようなところで、家庭科教育の果たしている役割は多いのかなと。
ですから、家庭の中で、例えば昔だったら当たり前であったような、うどんを手打ちで打つだとか、ミシンで何かを作るだとか、あるいは、だしをとるというようなことも、なかなかなされていないというようなことで、生活文化みたいなものを子供たちに継承させるという意味でも家庭科の果たしている役割は大きくて、そういうことをするためにはやはり地域人材の活用がすごく必要になってきていて、本校でも例えば浴衣の着付けに婦人会の方に来ていただいたりとか、あと、イワシの魚を手開きするときに地域の魚屋さんに来ていただいたりとか、手打ちのうどんを作るときに食生活改善推進委員さんに来ていただいたりして、先ほどからある地域人材とか、外部人材の活用というのが家庭科教育の中ですごく図られていて、社会と関わっていける、そんな教科かなというふうに思っています。
まとまらないのですが、よろしくお願いします。
【橋本主査】  ありがとうございます。生活技術の伝承、それから生活文化の伝承というような視点でお話をいただきました。
小さい方のお子さんの話とかもあると思いますが、いかがですか。では、曽我部委員、お願いします。
【曽我部委員】  私は、小学校の現場で子供たちを預かっている校長です。小学校は6歳から12歳の子供がいて、発達段階が違います。小学校教育で私が一番大切にしているのは、子供たちを健全な社会人として育成するための素地を養うことです。学力の充実、社会や生活のルールとか、規範意識の育成、食育や、体育等を通して、生涯を健康な体で生活できるよう願って教育を進めています。この健全な社会人という視点では、家庭科教育はとても重要な教育です。自分の生活を通して社会にも目を向けることができるため子供たちにとって最も大事な教育になります。
家庭科を学ぶ本質的な意義とか、他教科との関連では、例えば家庭科で買い物の学習をして、毎日お店に行って何かを買う。そうすると、物の値段が毎日変わっている。それを見ると、どうして同じ商品が今日と次の日では値段が違うのかという問題意識をもったときに、他教科との関連から、生活を通して具体的に社会科で学んだ流通とか、日本の農業
等の在り方に目が広げられていきます。
家庭科教育を通して、子供たちに問題意識や、課題意識をもって生活を見詰める目を養うことが大変重要になります。
また、3つの柱は、子供たちの生活には大変重要で、どのように社会と関わるかとか、より良い人生を送るかということは、健全な社会人として子供たちの素地をつくって行く上で深く関わっているところです。この3つの柱から家庭科教育をさらに深めていくことができると思います。
【橋本主査】  ありがとうございます。
ほかにいかがでございますか。大変大事なことがたくさん出てまいりました。それでは、長澤委員、お願いします。
【長澤委員】  今、曽我部委員から小学校の実態に基づいての御意見がありましたので、実は小学校の実現状況調査に少し関係していましたので、その立場から意見を言わせていただきたいと思います。先ほど来、少子高齢化ということと関連して保育体験であるとか、高齢者体験であるとか、そういった体験を重視することの教育効果について皆さんから御意見として出されていますけれども、小学校の研究会などに行きますと、岩手は経済格差がすごくありますし、東日本大震災もあって、経済的にかなり困難な状況にある家庭もたくさんございますので、特に沿岸部からいらした先生がおっしゃいますのは、家庭科は家庭との連携ということを一生懸命おっしゃるけれども、家に持って帰って実際に実践できない子供がうちの学校の場合には半分あるのだという先生も中にはいらっしゃるのです。
家庭科というのは、実践化しないと教科としての本質は成り立たないわけですから、その実践化に当たって家庭が非常に多様化している中で、家庭の機能というのはもう昔のようには回復しないということを言い切っている方もいらっしゃいますので、そうすると実践化するためにはどうしたらいいかということを、小学校でまた改めて考えなければいけないのではないかと思っています。
ですから、簡単に家庭との連携、家庭との連携といいましても、連携できない家庭のためにどう受け皿を作っていくかということで言いますと、これからもう高齢化社会で、高齢者が地域にたくさんあふれています。先ほど地域の人材活用ということもありましたが、どういう内容で入れるかということは、またこれから検討していくべきだろうと思いますけれども、中学校で生活の課題と実践という高校のホームプロジェクト版のような活動が入っていますので、そういった形を地域におろして実践できるような機会が小学校でも位置付けられたらいいなということを考えているところです。
もう一つ、実践化ということが小学校でも、中学校でも課題になっていると思いますが、実践化については、やはり価値観を持っていないと、分かった、できただけでは実践につながらないので、そのための生活価値観をどうやって作り上げていくかということが今回の大きい課題だろうと思っています。
家庭科も技術科もそうですけれども、実践的、体験的な活動を通してということになり、各教科がそれに近いことをやっていきますと、教科の特徴が薄らいでいくかなという懸念を持っているのですが、京都大学の松下先生などはディープ・ラーニングということをおっしゃっています。そういった意味でのディープ・ラーニングという形のアクティブ・ラーニングの在り方、それこそ家庭科で取り上げて、生活価値観をきちんと作っていくことで実践化につながっていくのではないかと思うのです。
ですから、そのための時間数が足りないということで、本当に中学校の学習内容が多過ぎると私は思っています。そのために学習内容も大綱化していただきたいという思いもありますし、時間数は教科の力関係があってなかなか難しいと思いますけれども、それこそカリキュラム・マネジメントの在り方を少し見据えて、学校の先生たちに共通理解を図るような形での提言ができればいいのではないかと思っています。
以上です。
【橋本主査】  ありがとうございます。
いかがですか。荒井委員、お願いします。
【荒井委員】  先ほどから家庭科って何だろう、ほかの教科と違うところは何だろうと考えていたのですが、他教科と違うところというのは、実生活から離れないというところかと思います。生活から見ていくというところがあります。生活から離れない、生活から見ていくというのは家庭科の大きな特徴だと思います。
昨年、プロシューマーについて、スクールシューズをテーマにした授業を中学校の先生と一緒に考えました。スクールシューズは選択肢があるわけではなくて、決まったものを買うわけですが、履いていくと、いろんな問題が出てくる。履きにくさとか、汚れ、足の疲れもそうですし、湿気のこともあります。
それなら、どういう靴が欲しいかを考えてみようと。足裏の長さや幅を測ったり、消費者情報も見ながら、生徒それぞれが履きたい靴をデザインしました。そうしましたら社会科の先生が、家庭科っておもしろいことをやっていますねとおっしゃるのです。家庭科の消費者分野では、子供たちが自分で商品情報を読んだり、いろいろ観察をしたり、スーパーに出かけていって値段を見たりしながら、自分の判断力を養っていくのですよと伝えて、「社会科は消費者分野では何をやっているのですか」と伺ったところ、「そうですね、契約のところをやっています」というお話でした。
消費者教育にもいろいろな分野があると思うのですけれども、生徒自身が選択眼を付けていく、批判的な思考力を付けていくというのは、家庭科がやっているのだなという思いを新たにしました。そこが家庭科の持っている強みであり、ほかの教科にはない、独自の点かなと。
中学生が自立して育っていく、判断力を付けていくということは、自尊心にもつながっていきます。そういう意味でも生徒とかなり関わっていける教科ではないかなということを感じております。
それから、中原委員がおっしゃったような持続可能とか、倫理や公正という点については、中学校、高校の家庭科の教科書に出てまいります。フェアトレードや、児童労働のこともやります。そういういろいろな知識をどのように生活とつなげていって、そこでみずからの問題解決とつなげていくか。現場の先生たちはそれをやりたいと思っているのですが、なにせ時間が足りない。その辺をどうするか。時間数の問題は、ここで審議できる問題か分かりませんけれども、そういうことと実はとてもつながっている。
アクティブ・ラーニングというふうに今、新しく出てきましたが、家庭科はずっとやってきております。この問題解決をどういうふうに丁寧にこれからやっていくか。今回の論点の整理でもありましたけれど、プロセスを重視するとか、そういうようなことが大事だと思うのです。結果だけではなくて、プロセスの中で何を生徒たちが考えているか、そこを丁寧に追っていくことが家庭科の課題ですし、それができる授業時間の確保の問題も課題かなというふうに思っています。
今回出てきた思考力、判断力、問題解決力を付けるというのは、本当に家庭科はやっていきたいことですし、望むところだなと。それを生活という視点から実際にやっていって、他教科とつなげていくかということは楽しみでもありますし、可能性もあるところかなというふうに思っております。
【橋本主査】  ありがとうございます。
ほかに。杉山委員、お願いします。
【杉山委員】  済みません、私は食物が専門ですので、ちょっとそちらの方からお話をさせていただいて。現在の学習指導要領のところから、先ほども論点整理の中の総則のところに健康に関する指導ということが書かれていて、今の学習指導要領の総則にも書かれているのですけど、食育の推進ということが現行のものから入っています。
食に関しては、家庭科では昔からずっと扱ってきたもので、教科としてきちっとした体系を持って、小・中・高のつながりの中で健康で豊かな食生活を営むための力ということを育成しているのですけれども、教科横断的なという話も先ほどの論点整理の中で特に言われていると思うのですが、食育というのは本当に教科横断してやっていかなくてはいけないことで、小学校では、大分いろんな実践をしていただけるようになってきて、中・高がなかなか追いついていかないような部分がありますけれども、きょう来る前に附属小学校の方に行っていたのですが、いろんな活動の中で食を扱ってきていて、小学校5、6年生のところで、いろんな教科で扱ってきたものを自分の家庭生活をベースにして、総合的にもう一度捉え直して、自分たちの生活の中で食を本当にどう考えていくのかということをきちっと整理できるのは、やっぱり家庭科ならではのところなんじゃないかな。
より教科としての食ということを現行の学習指導要領から約10年たった時点で、また先を見据えた形で考えていくこともとても重要だなというふうに思っています。
食は、本質的には健康になるために食べるのですけど、食べ方を間違えると命を失ってしまう、そういう大事なもので、例えば食に携わる人たちは、そういう意味では、そういうものに責任を持っている。倫理的な観点も、食べるということを通していろんなことを学ぶことができると思いますので、私は食が専門ですので、特に食育に関しては教科横断ですとか、若しくは、そこで私たちは実践力というのを付けたいわけですけれども、先ほども家庭によっていろんな事情があって、実際には違いますので、そこではやっぱり評価みたいなことも、では、何がどうできるようになって、それを評価していくのかというところが、個々が持っている課題が違うということもありますので、その中で共通的な何を評価するのか。
すごく難しいのは、特にお料理みたいなものはこうしなきゃできないというものではないので、どういうふうにするかということを、理由を持って、理論的にきちっと考えて実践することができる力みたいなところをきちっと評価できるようになれるといいなというふうに、その辺の検討がしていけるといいなというふうに思っています。
【橋本主査】  教科の独自性としての評価のところまで踏み込んでお話しいただきました。
ほかにいかがでございますか。では、鈴木明子委員、お願いします。
【鈴木(明)委員】  杉山委員の方から食の方のお話が出たところで、私は、衣を媒介とした生活である衣生活の学習を通して家庭科が担い得る資質・能力の育成ということについて述べさせていただきたいと思います。
先ほど荒井委員の方から家庭科の独自性は生活から離れないことだと言っていただきましたけれども、加えて私は、さらに非常に身近な衣食住という視点、媒介から、それを考えていける、そういう特徴を持った教科であることが家庭科の独自性だと考えています。
衣は、どちらかといいますと、今、食育が華やかな中で、教材としても非常に難しいところもありますが、衣は、食とも住とも異なる生活教材としての特徴があって、生活を多面的に学習する上で意味を持っていると考えています。衣服というものをどのように選び、管理し、そして、自分のライフスタイルに適した表現手段として生かしていくのか。それについて考えることは、家庭科の目標にもつながっていくものであると考えています。
衣だけでなく、食もそうだと思いますが、子供たちはあふれるいろいろなものの中で生活しながら、ただ、それらをしっかりとみつめているかというと、そこになかなか問題があるようにも思います。当たり前にそれらが存在しているという意識の中で、その背景に多くの人々の長い年月を掛けて受け継がれてきた文化だとか、生活の発展に寄与してきた科学や技術といったものを、ただ、受け身的に受け入れているような、そういう課題もあるかと思います。
衣で言いますと、自分の着ている衣服がどこでどのように作られているのかとか、なぜその形で、なぜその素材なのかといったような、そういう事実や理由、根拠を持って選んでいくこと、これが家庭科で大事にしている生活をみつめていく、そして、自分と社会とのより良い関係を作ることにもつながっていくと思います。
自分の意思乏しくして、安価なものを好きなだけ購入することによって、何かしら大切なものを見失っていたり、人としての能力が退化していたり、それから、環境に負荷をかけていたりというようなこともあるかもしれません。
そのような大切な教材として身近な衣というものをみつめていきたいと思っています。
ただし、身近であるがゆえに、学習する価値ある教材としてアクティブ・ラーニングの対象とするためには難しさがあり、思考力等の育成を意図した問いと題材構成、題材レベルでの工夫が必要になってくるということもあると思います。
一方で、衣に関することで言うと、布を用いた物づくりという学習内容が家庭科の中にはございますが、私は、衣生活の学習の活用にとどまらず、家庭科という教科の本質的な意義を展開できる場であるというふうにも考えています。
これは、先ほど杉山委員もおっしゃったように、食がそうであるように、また、教科の枠を超えて、いろいろな体験活動にもつなげていける活動であると思いますが、それがゆえに、やっぱり基本を家庭科の中できっちりと学習させていきたい、そういうふうに思います。
提案されている資質・能力の三要素をバランス良く育成する場として生かすことができる、そういう物づくりの場は技術分野にもございますけれども、そちらとも連携しつつ、学校教育における物づくりの意義というものを考えていくべきであろうかと思います。
この物づくりのプロセスで、一人一人の子供たちの中から湧き上がってくる思いというのは、学習を前向きに捉える力になって、自分の生活感の土台ともなる感性を育むものになると思います。
家庭科が担う生活課題を解決したり、生活実践力を身に付けたりする資質・能力育成のために衣食住、具体的な題材のあるべき姿を考えて、生活力の根っことなる力の育成を大切に考えていきたいと思っています。
以上です。
【橋本主査】  ありがとうございました。ちょうど技術にも関わるところを出していただきましたので、それでは残りの時間、今度は技術分野の方に入りたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。
では、藤木委員、お願いします。
【藤木委員】  失礼いたします。私は、大学で技術教育を担当しております。私の方からは技術のガバナンスというのでしょうか、私が考える国民的に必要とする能力として技術に関するガバナンス能力があるのじゃないかというふうに考えているところであります。
例えば夏になると暑いからエアコンを使う。エアコンをたくさんつけると快適であります。うちに帰って、すぐ快適に過ごせるように、職場にいるときから家の中を冷やすとか、それは、生活上はとても快適なのですけれども、その結果、電力消費は上がっていく、電力消費が上がればCO2の増加を招く。こんなふうな、快適さの裏腹にCO2の増加を招いたりとか、そういうトレードオフのような関係があるのが実際のいろんな技術の場面で出てくるのじゃないかなと考えているのです。
今のは発電というようなところに切り口を置いたところですけれども、では、そのときに日本国民として、日本に住む一人の人間として、夏の過ごし方はどんなふうにしないといけないのかとか、あるいは古い性能の悪いエアコンをずっと使い続ける。物を大事にするという意味では非常にいいと思うのですけれども、今の新しいエアコンは消費電力がかなり低減していますし、そういう意味では、思い切って新しいのを買うことが世界全体のCO2の削減にもつながるとか、そういうふうないろんな視点が、そこには盛り込まれるかと思っているのです。
そういう意味で、そういう新しい技術をどう導入するのか。原子力発電がまずかったら、では、どういう発電がいいのか。そういうことを考える場面が大変重要になってくるのじゃないかなと思っているのです。2030年がターゲットになっているということでもありますけれども、恐らくこれから10年、20年、30年たっていくと、今存在している仕事に就かない子供たちがどんどん増えていく、今ない仕事がどんどんできていく、そういうふうな話が出てきておりますよね。
そのときに、新しい時代に新しい生活が出てくる。そこに新しい技術がどんどん登場してくる。では、新しく出てくる技術の中でどれをピックアップするのか。これからの私たちにとってどんな技術が必要なのか、どういう技術を使うと地球に優しい、人にも優しい、そういう暮らしができるようになるのか。何か、そういうことを考えさせる場面というのは、私の感覚ではやっぱり技術しかないのじゃないのかなと思っているのですよ。
それは発電に限らず、情報関係でも同じなのです。私は、情報の方も少し得意としているのですけれども、例えばインターネットの活用とか。インターネットは便利ですよね。恐らくここにいらっしゃる先生方、皆さん、スマートフォンとか携帯電話とかをお持ちだと思うのですけれども、では、インターネットで例えば子供がSNSとか、いろんな場面で何かマイナスの影響を受けていっている。インターネットに写真が公開されたことによって、もう一生日陰で生活していかないといけなくなるとか、そういうふうな場面が非常に心配されております。
では、インターネットという技術は、これからどう取り扱っていけばいいのかとか、新しく出てくるインターネット上の新しいサービス、そういうのもこれからどんどんたくさん出てくると思うのですが、では、どういうサービスは取り上げた方がいいのか、使っていった方がいいのか。でも、多分、手を付けない方がいいサービスも出てくるはずなのです。そういうのを誰が、どこで、どんなふうにして選ぶのか。やっぱり選ぶ場面は、一人一人の国民であるべきなのじゃないかなと私は考えております。
もちろん、どこかの技術者が作って、どこかの工場で生産をして、それが世の中に普及していく、出回っていくということになるのだとは思うのですけれども、ただ、出てくるものを無条件で何でも使えばいいのかというのじゃなくて、国民の側に使うためのちゃんとした知識なり、判断力なり、そういうものをしっかり身に付ける必要があるのじゃないかなというふうに考えているのです。
そういうところで、これから先の国民に必要な能力の1つとして技術に関するガバナンス能力、こういうのが非常に重要になってくるのじゃないかなと私は考えているところであります。学会でも、そういう側面を打ち出しているところでもあります。
以上です。
【橋本主査】  ありがとうございます。
ほかにいかがですか。池田委員。
【池田委員】  2030年を意識したときに、技術はかなり進化していると思います。産業構造も変わっていると思いますし、社会構造もかなり変わっているでしょう。人工知能もかなり進んでいる状態になると思われます。そういった高度な技術が子供たちの周りで、身近な存在となっているわけです。それをどのように使いこなしていくのかということがとても重要なことです。当然のことながら倫理やモラルの問題も含まれます。
そういった意味では、先ほど技術の授業が少ないという話が出ましたけども、この少ない授業時数の中で子供たちに身に付けさせていくためには、やはりアクティブ・ラーニングの視点である深い学びの過程であり、対話的な学びの過程であり、主体的な学びの過程を重視することで、短い時間でも資質・能力を育成するためにできるだけのことをさせていく必要があるだろうと思います。
産業競争力会議の成長戦略を見ていて思いますけれども、ハイレベルなIT人材が必要であり、育成をしなければいけないということに関連して、技術の授業で行っている情報に関する技術と高校で指導している情報の内容が意外に子供たちにつながっていない状況です。ですので、指導する側として具体的に子供たちに、中学校ではこの内容を指導し、高校ではこの内容を指導するということを理解した上でお互いに連携を保っていく必要があるだろうと思います。学びの連続性です。どの教科も、それは同じだと思います。小学校から中学校への学びの連続性もとても大事だと思いますので、そこまで意識した内容を組み込んでいく必要があると思います。
例えば情報については、情報をどのように使っていくのかということも含めて、中学校と高等学校での連携が必要だろうと思います。そのためには学習指導要領で具体的に指導すべき内容を記載する必要があります。最終的には知識の習得が目標ではないので、技術の中でしかできない指導をもっと深めていく必要があるだろうと思います。
以上です。
【橋本主査】  ありがとうございます。
神山委員。
【神山委員】  済みません、初めまして、ダイソンの神山といいます。皆さん、御専門の中で意見を申し上げさせていただくのは大変恐縮なのですけれども、私どもダイソン社はジェームズ・ダイソンというエンジニアが立ち上げた会社なのですが、ジェームズ・ダイソン財団というものが10年以上前から存在しておりまして、その財団はイギリスで発足いたしまして、今、アメリカと日本でやっております。
目的は、主に次世代のエンジニアリングを育てるというのを目標にしております。この考え方は、エンジニアリングこそが未来を創っていく。技術を考えて、その技術は問題を解決していくという考えなのですけれども、今の若い人たちにとって技術というものがどういうことかというふうに考えたときに、意外と生活の中の一部という考えが余りないようなのですね。
ですので、では、日本ではどのようにして、この財団の活動を広めていくかということをいろいろ検討した結果、義務教育の中のたった3年しか技術教育が日本には存在していません。イギリス含め、ほかの各国では小学校高学年ぐらいから、まして高校に至るまで長期間にわたって技術というものを学んだり、デザイン・アンド・テクノロジーという考え方で、技術とアートというよりは、どちらかというとデザインですね。この2つの融合性でクリエイティビティのあるエンジニアリングというものを学んでいます。
そこの中で私どもは、技術の先生方に理解と協力を大変頂きまして、問題解決ワークショップというものを今、全国の学校で、約50校でさせていただいているのですけど、4,000人を超える生徒さんが体験されました。
ワークショップの仕組みなのですが、実際の掃除機そのものを分解いたしまして、その中身の仕組みをまず学びます。その後に、それをもう一度組み立てて、その中で、まずドライバーの使い方、あとはねじをしっかりと見極めて付けるというようなことも含めてやります。
その仕組みを学んだ後に、では、どうしてこういう考え方の掃除機が生まれたかというエンジニアの考え方を学ぶのです。それによって問題をどこで見付けたから、こういう製品が出来上がったのかということを、実際に存在するエンジニアから学びまして、では、みんなの学校の生活の中で自分たちでまず問題を見付けてくださいというところから、具体的な体験ワークショップを始めていきます。
今まで何校かでやらせていただいて、私どもが一番つかえたのが、まず問題を見付けるということです。これが非常に難しいということに気付きました。また、先生方が問題を見付けるということを指導していくことに大変困っていらっしゃるということにも気付きました。どうやって導いていけばいいか、よく分からないということです。
そこを私どもも先生方と一緒に何校かで試させていただいて、実際には生徒さんにオープンに、では、生活の中で自分たちの問題を見付けてきてくださいというと、びっくりするような問題が上がってくるのです。だから、先生たちの方が少し怖がって、自分たちのクラスじゃ、これはちょっと難しいなというふうに尻込みされる先生が非常に多いということで、そこが私たちの今後の技術教育の中ですごく重要だと思っていますし、やっぱり技術教育こそが問題解決ということを総合的に学べる。
あと、ハンズオンという言葉を使っていますけれども、手を使って物を作って、自分たちの考えたものを実際に段ボールで作るのですけれども、段ボールで作ることによって頭で考えていたものが、実際に手を使って作ってみると、ちょっと仕組みが違ったなとか、思ったように動かなかったというようなことを学ぶところまでワークショップでやっています。
技術は、最終的にはチームワークでないと製品も作れませんし、物も生まれませんので、そういう総合的なことを学ぶには、私どもがやってきた中で非常に残念だと思っているのは日本の技術教育の時数の少なさです。これがもう少し何とかならないのかということを常に感じております。
もう一つは、先生方が非常に孤独感を持って仕事をされているということです。専科でいらっしゃるということもあって、幾つかの学校をまたいでいるということも私どもも入り込んで初めて気付きました。教育員会の先生方が努力されてワークショップ等をされているところにもお邪魔させていただきましたけれども、実際に先生方が集まると、先生方はいろんな意見をお持ちなのですが、一人で生徒さんの前に向かって新しい授業を考えて展開していくのがどれだけ難しいことかということを、私どもも一緒になって今考えさせていただいておりますので、今回のワークショップを通して皆さんの御意見を伺いながら勉強させていただければなと思っております。よろしくお願いいたします。
【橋本主査】  ありがとうございます。教員の問題にまで触れていただきました。
長谷川委員、お願いします。
【長谷川委員】  失礼します。長谷川でございます。
まず初めに、育成すべき資質・能力の検討開始から論点整理につながるまでの検討内容について拝見させていただいておりました。こうした、新学習指導要領改訂の基本方針につながる議論に参加させていただけることに感謝申しあげます。説明のあった論点整理は、教育課程が目指す方向性がよく分かります。技術・家庭科も、3つの柱に則って教科の中で身に付けていく力についてワーキングの中で議論させていただき、本教科の発展というか、先ほど神山委員さんの方からもお話しがありましたが、やはり子供たちが、大好きな教科なので、そういったところをより多くの皆さんに、御理解いただけるような議論になればなと思っております。
特に3つの柱の中で、私が教育委員会に勤めていて現場の先生たちとやりとりする中で、技術・家庭科の得意分野だなと実感するのが、3番目の、どのように社会、あるいは世界と関わってより良い人生を送っていくかという点です。
子供達は技術・家庭科が大好きです。これ、なぜかなとずっと長い間思うに、できなかったことができるようになることが実感できる。それを周りのみんなも認めることができる教科だからではないかなと思っています。このあたりは、しっかり委員の皆様方の御意見を伺って、私も勉強したいなと思っていますし、それが次期学習指導要領につながればと感じております。
アクティブ・ラーニングについては、皆さんが、我が教科では得意分野だとか、いろいろやっているという御意見もあるのですけれども、私は、慎重に諮問や論点整理で言われているアクティブ・ラーニングというのはどういったものなのかを捉えていく必要があると思います。軽い経験とか、あるいは集まって何人かで話をしただけのことをもってよしとしてはいけない。どういったところを目指しているのかという方向性を示すことが大事だと思います。
私は、知・徳・体の次に技を加えて子供達の人格を高めていく必要があると思うくらい人が育っていく中で大切な教科だなと感じています。
以上でございます。
【橋本主査】  ありがとうございます。
それでは、もう時間も迫ってまいりましたので、最後に古川代理の方からお願いいたします。
【古川主査代理】  私も技術ですので、技術のことについてお話しさせていただきたいと思いますが、技術分野の教育内容と申しますと、家庭分野も同じですけれども、時代とともに非常に大きく変化するというところにあるのだろうと思います。ほかの教科ですと、ここを押さえていればという内容がかなり固定された部分が長い時間続くのですが、技術だとか家庭というと、時代がどんどん変化していきますので、教育内容がかなり変化する、変化のスピードが大きい。
20年前、10年前というように、教育の内容、タイトルそのものまで、材料とか加工だとかエネルギー変換だとか、そういうふうに大きく変わってくる、そういう宿命的なものがあろうかと思います。その教育する内容をどういうふうに、その時代その時代、必要なものを捉えていくかということが非常に重要だろと思います。
ただ、藤木委員がおっしゃいましたが、技術科で変わらないものというのは、いろんな制約条件の中で最適解を求めるというトレードオフのことだろうと。その能力をいかに付けさせるかということが最も重要だろうと思っております。
それから、技術分野を通じて育成する資質・能力ということにつきましては、私どもの学会では10年、20年ずっと議論しておりまして、そこでは変わらず6つのことがございます。技術では、技術的なことに関する課題解決と新しい価値を創造する、そういったことに取り組む態度である、それから、それを解決する力である。これは、イノベーションに結び付く力だと思っております。
それから、技術的なことをいろんな点で評価する、あるいは倫理の話が出ましたけれども、評価力、道徳的、倫理的なことも含めて、技術をガバナンスする能力というのが全体としては2つ目であるというふうに思います。
それから、そういったことを技術的に解決するためには、やはり手先の器用さだということでの巧緻性が必要であると思います。私、金属加工なのですが、大学生に竹とんぼを作らせたりしますと、スポーツが物すごくできる子でも、非常に不器用なのです。ですから、運動能力と手先の器用さというのは随分違う。これはこれで独自に学習してもらうことが必要だろうというふうに思います。
それから、社会参画ということが最終的に大人になってから非常に大きいわけですが、キャリアをどういうふうに積むか。それについて世の中にどういった仕事があって、工学的な、あるいは技術的な分野に関してですけれども、そういったことを常に考えていく。私どもがずっと考えておりますのは、今申し上げたようなことで、学習する内容は変わったにしても、技術分野で育成する資質・能力というのは変わらないものだと思っております。
それから、荒井委員がおっしゃいました技術においてもアクティブ・ラーニングというのは以前からやってきたという自負があります。長谷川委員がおっしゃいましたように、課題を見付けるということ、アクティブ・ラーニングを問題発見・解決、他者との協働、対話的な学び、主体的な学びというふうに定義されておりますけれども、問題の発見が難しいと神山委員がおっしゃいました。問題を解決していくということはずっとやってきました。しかし、もう一つ、やはり他者との協働だとか、主体的な学び、そういうことでは、もう一歩この際に考えてみる必要があるのではないかなというふうに思っております。
私からは以上です。
【橋本主査】  ありがとうございました。
様々な御意見をいただきましたけれども、時間も参りましたので、本日はこの辺でと思っております。
きょうお出しいただいた意見につきましては、事務局で整理をお願いいたします。また、限られた時間内での討議でございましたので、さらに御意見とか、お気付きの点などがあればペーパーで事務局の方にお送りいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、本日予定されております議題はここまででございます。
最後に、次回以降の日程などにつきまして、事務局の方から御説明をお願いいたします。
【大内学校教育官】  熱心な御議論ありがとうございました。
机上に次回以降のスケジュールにつきまして、配付させていただいておりまして、こちらにございますとおり第2回のワーキングでございますけれども、12月15日火曜日、13時~15時というのが1つございます。また、同日になってしまうのですが、同じ12月15日火曜日の15時半から17時半、これが第3回というふうに考えておりまして、内容として、第2回は主として技術・家庭科の家庭分野を中心に、同じく第3回の方でございますけれども、15時半からの時間帯につきましては技術・家庭科の技術分野を中心に集中的に御議論いただきたいというふうに考えてございます。
場所は、いずれも本日の隣の方になりますけれども、3F1という会議室がございまして、同じ建物の3階の3F1会議室の方で予定をしてございます。
いずれも、正式な日時等は改めて御連絡をさせていただきたいというふうに考えております。
また、主査からもお話がございましたとおり、ペーパーによる御意見等も受け付けております。ファクス又はメール、若しくは郵送で結構でございますので、本日の論点に従った形での御意見等がございましたら、引き続きよろしくお願いしたいというふうに考えてございます。
なお、本日の配付資料ですけれども、机上に置きおいていただければ、こちらの方で郵送させていただきたいというふうに考えてございます。
以上でございます。
【橋本主査】  次回、主に家庭分野とか、主に技術分野ということですけれども、1つのワーキングですし、多面的にまた御議論いただくということも大変重要なことというふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。
それでは、本日のワーキンググループ、これで終了させていただきます。ありがとうございます。

―― 了 ――

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