資料2 特別支援教育部会における議論の取りまとめ(案)

特別支援教育部会における議論の取りまとめ(案)

(はじめに)
○ 特別支援教育における教育課程の改善・充実については、平成26年11月に中央教育審議会に対して行われた諮問において、全ての学校における発達障害を含めた障害のある子供たちに対する特別支援教育を着実に進めていくための見直しや、特別支援学校における自立活動の充実や知的障害のある児童生徒のための各教科の改善などが求められたところである。
○ 中央教育審議会に設置された教育課程企画特別部会においては、教科等の枠を越えた視点から、教育課程の総体的な構造の在り方など、改訂の基本的な考え方について議論が重ねられ、昨年8月に「論点整理」が取りまとめられた。
○ この「論点整理」においては、特別支援教育について、全ての学校や学級に、発達障害を含めた障害のある子供たちが在籍する可能性があることを前提として、幼稚園教育要領、小・中・高等学校学習指導要領において特別支援教育に関する記述の更なる充実や、障害の状態の多様化に対応した特別支援学校学習指導要領の改善・充実、さらに、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校等との間での教育課程の円滑な接続などについての検討の必要性を示している。
○ 特別支援教育部会においては、この「論点整理」を受けて、平成27年11月より、具体的な改善・充実の方策について専門的な議論を開始した。
○ 幼稚園、小学校、中学校及び高等学校における特別支援教育の在り方、特別支援学校の教育課程の改善・充実について検討を行うとともに、幼稚園、小学校、中学校及び高等学校と特別支援学校との教育課程の連続性について検討を行った。
○ 同年12月より、高等学校における特別支援教育の推進に係る調査研究協力者会議において、高等学校における通級による指導の在り方についての制度設計についての検討と並行して、本部会として、高等学校における通級による指導に係る教育課程の論点について検討を行った。

1.特別支援教育の意義
○ 我が国が平成26年に批准した、障害者の権利に関する条約においては、人間の多様性の尊重等を強化し、障害のある者が、その能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするとの目的の下で、障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組みとしての「インクルーシブ教育システム」の理念の実現を目指している。
○ 特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、障害による学習上又は生活上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものである。
○ 平成28年4月より、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下、「障害者差別解消法」という。)が施行され、国・地方公共団体等や民間事業者が行う事業において、障害者に対する不当な差別的取扱いは国公私立を問わずに法的に禁止され、合理的配慮の不提供の禁止は、国・地方公共団体等では法的義務、民間事業者では努力義務となっている。
○ 合理的な配慮については、障害者が社会的障壁を除去するような具体的な変更や調整(合理的配慮)を申し出ることを保障し、事業者等が、過重な負担でないと考えられる範囲で、合理的な配慮を提供することとしている。教育分野では、学校等の関係者が障害のある児童生徒等や保護者と建設的な対話を行い、合意形成を行うことが求められている。

2.幼稚園、小学校、中学校及び高等学校における特別支援教育
(1)現状と課題
1  幼稚園
○ 特別支援教育コーディネーターを中心とした園内の支援体制を構築するとともに、個別の教育支援計画や個別の指導計画を作成・活用して、一人一人の教育的ニーズに応じた教育・支援を行う園が増えている。
○ 半面、乳幼児健診などの情報を得ることが難しく、入園当初からの支援に苦労している園もある。
○ 幼稚園においては、発達が途上で個々の成長の幅が大きい年齢期であるため、実態把握が難しいことや、幼児の園の集団生活における行動と家庭での行動との違いが生じやすいために幼児の困難さを保護者が理解しにくいケースがある。

2  小学校、中学校
○ 特別支援学級が設置されているほか、通常の学級に在籍し「通級による指導」が行われるなど、一人一人の障害の状態等に応じた特別支援教育の充実が図られてきている。
○ 近年、特別支援学級に在籍する児童生徒数や通級による指導を受けている児童生徒数の増加が続いている。通常の学級においても、発達障害の可能性のある児童生徒が在籍している(平成24年調査で6.5%(推計値))ほか、学校教育法施行令第22条の3(特別支援学校に就学できる障害種・障害の程度)に該当する児童生徒も在籍している。
○ 特別支援学級や通級による指導を受けている児童生徒数が増加している理由として、それぞれの指導について一定の成果があがっていることや、保護者の理解が得られていることなどが挙げられている。

[特別支援学級]
○ 小・中学校における特別支援学級では、小・中学校の学習指導要領に基づいて教育課程を編成することを基本としながら、必要に応じて、特別支援学校小学部・中学部学習指導要領を参考にし、在籍する児童生徒の実態に即した教育課程を編成することが可能となっている。
例えば、障害による学習上又は生活上の困難の改善・克服を目的とした「自立活動」を取り入れたり、各教科を、知的障害のある児童生徒のための各教科に替えたりする教育課程が編成されている。
○ 一方で、特別支援学級の教育課程の編成については、小・中学校学習指導要領解説において、特別支援学校小学部・中学部学習指導要領を参考とするとしているが、例えば、各教科の指導内容を精選する手続きがわかりにくく、児童生徒の障害の状態等に応じた教育課程を編成するのが難しいことなどが課題として挙げられている。

[通級による指導]
○ 小・中学校における通級による指導は、通常の学級に在籍し、各教科等の授業は通常の学級で受けつつ、障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服するための指導、すなわち、特別支援学校における自立活動に相当する指導を、例えば「通級指導教室」といった特別の指導の場で受ける形態である。
○ 通級による指導においては、個別指導を中心とし、個々の児童生徒の有する多様な課題に即して、障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服する指導が行われている。
○ 通級による指導を受ける児童生徒数の増加に伴って、通級による指導に携わる教員が、自立活動の視点で児童生徒の実態を捉えることや、自立活動の目標、指導内容の設定などの手続きを十分に理解し、指導に生かすことが課題となってきている。
○ 中学校における通級による指導を受けている生徒数が小学校から比べて割合的に低い。背景として、小学校での通級による指導の成果がある一方で、中学校から他の生徒と同じスタートラインで出発したいという生徒本人や保護者の気持ちもあることなどが指摘されているが、中学校段階でも継続して通級による指導を受けられるようにすることが求められている。

[通常の学級]
○ 近年、通常の学級に在籍する、様々な障害のある児童生徒にとってもわかりやすい授業の在り方についての研究授業なども進んできている。
○ 一方で、医学的な診断はないが、例えば、音韻認識や視覚認知の弱さ、協調運動の困難さ、対人関係、コミュニケーションの課題などが顕著になり、通常の学級での学習が困難な児童生徒への早期の対応が必要となってきている。また、障害や困難さそのものだけではなく、そこから派生する可能性のある二次的障害にも留意しながら指導を行うことが求められてきている。
○ さらに、医療の進展により、例えば、肢体不自由、病弱や身体虚弱の児童生徒が通常の学級に在籍し、他の児童生徒とともに学ぶために必要かつ適当な学習内容の変更・調整を行うなど、児童生徒の障害の状態等に応じた指導の工夫などが必要となってきている。

3  高等学校
○ 高等学校では、現在、発達障害等に起因する学習上又は生活上の困難のある生徒が入学し、これらの生徒に応じた指導及び支援が行われている。
○ しかし、中学校から引き続き通級による指導を必要とする生徒や、これまで適切な支援を受けてこなかったことにより、困難を抱え続けていたり、自尊感情の低下等の二次的な課題が生じていたりする生徒に対して、適切な指導及び必要な支援を行うことが課題となっている。
○ 文部科学省では、これまでに高等学校における特別支援教育の充実に関する事業や、平成26年度からは「高等学校における個々の能力・才能を伸ばす特別支援教育」事業を実施し、学校教育法施行規則第84条に基づき、通常の高等学校の教育課程によらない特別の教育課程を編成し、障害に応じた特別の指導を行うための教育課程の編成や具体的な指導内容や指導方法等についての実践研究に取り組んでいる。

4  交流及び共同学習
○ 交流及び共同学習は、幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の各学習指導要領等に位置付けられ、各地域・学校において、障害のある幼児児童生徒と障害のない幼児児童生徒が学校行事等で交流したり、教科等の授業を一緒に行ったりする取組が積極的に行われている。
○ 交流及び共同学習の成果として、障害のある幼児児童生徒の経験を広めて積極的な態度を養い、社会性や豊かな人間性をはぐくんだり、障害のない幼児児童生徒や地域の人たちが、障害のある幼児児童生徒とその教育に対する正しい理解と認識を深めるための機会となったり、同じ社会で生きる人間として、互いを正しく理解し、共に助け合い、支え合って生きていくための基盤づくりとなる重要な活動として捉えられるようになってきている。
○ 近年は、小・中学校の児童生徒と特別支援学校の児童生徒が、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催等を契機に、障害者スポーツを一緒に行うなどの取り組みが活発に行われるようになってきている。
○ 課題として、交流及び共同学習が活動にとどまり、どのような力が身についているかを評価し、指導の改善につながっていない例も指摘されている。

5  個別の教育支援計画、個別の指導計画の作成・活用
○ 障害のある幼児児童生徒一人一人について、家庭や医療、福祉、保健、労働等の業務を行う関係機関と連携し、長期的な視点での教育的支援についての取組を示した計画(個別の教育支援計画)や、各教科等の指導に当たって、指導の目標や内容、指導方法などを示した計画(個別の指導計画)の作成が進んできている。
○ 個別の教育支援計画は何を根拠に検討し作成されているのかということが重要であり、多様な子供の育ちに関わる専門家が参画し、多面的に実態把握を行った中で、児童生徒一人一人の教育的ニーズを明らかにしていこうというのが今日的な動向となっている。
○ 個別の教育支援計画を活用し、それを評価し、計画の見直しに生かすことが課題である。また、就学前から、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校等へと、支援の円滑な引継ぎが強く求められている。

6  特別支援教育の支援体制
○ 各学校においては、校長のリーダーシップの下、全校的な支援体制を確立し、発達障害を含む障害のある幼児児童生徒の実態把握や支援方策の検討等を行うため、校内に特別支援教育に係る校内委員会を設置している。
○ 校内委員会・校内研修の企画・運営、関係諸機関・学校との連絡・調整、保護者からの相談窓口などの役割を担う、特別支援教育コーディネーターが指名されている。
○ 自治体によるが、特別支援教育コーディネーターを専任で配置している例は少なく、特別支援学級や通級による指導担当の教員が特別支援教育コーディネーターを担当している場合や、教頭や養護教諭が担当しているという場合もある。学校の規模にもよるが、一人ではなく、複数の特別支援教育コーディネーターを配置する必要がある学校もみられる。

(2)改善・充実の方向性
1  改善・充実の基本方針
○ 障害者の権利に関する条約に掲げられたインクルーシブ教育システムの構築を目指し、子供たちの自立と社会参加を一層推進していくため、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった、連続性のある「多様な学びの場」において、子供たちの十分な学びを確保していく必要があり、一人一人の子供の障害の状態や発達の段階に応じた指導を一層充実させていく必要がある。

2  幼稚園における特別支援教育
○ 幼稚園において、インクルーシブ教育システムの構築を目指し、個と集団の関係性を大切にしながら学級運営の中で障害のある幼児をどう育てるかを考えていく必要があることを示す。
○ 気になる幼児の課題を総合的観点から継続的に実態把握していくための視点を整理する必要がある。
○ 個々の幼児の障害の状態などに応じた指導が一層充実されるよう、障害別の配慮のみならず、障害による、日々の幼稚園等の活動で考えられる「困難さ」とそれに対する「指導の工夫の意図」と「手立て」についての例を示す必要がある。
○ 将来の発達の可能性を前提に、長期的展望のもとに必要な支援を行いながら、小学校教育への円滑な移行支援及び保護者の子育て支援をしていく必要がある。

3  特別支援学級(小・中学校)、通級による指導(小・中・高等学校)
○ 小・中学校における特別支援学級について、学級の実態や児童生徒の障害の状態等を踏まえた、実情に合った教育課程を編成するとともに、小・中学校と特別支援学校小・中学部との教育課程の円滑な接続を図ることが重要である。このため、特別支援学級における教育課程の基本的な考え方や、各教科等における前各学年の目標・内容を適用する際の内容の精選、知的障害のある児童生徒の教科の適用など、教育課程の編成の視点や例を具体的に示す。
○ 小・中学校における通級による指導について、その意義、基本的な考え方、児童生徒の実態把握から具体的な指導内容の設定、評価・改善までの手続等について具体的に示す。
○ 通級による指導の目標及び内容について、障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服するための指導であることをより明確にするとともに、「通級による指導」と各教科等の授業における指導との連携が図られるよう、「通級による指導」と各教科等との関係性をわかりやすく示す。
○ 高等学校における通級による指導について、高等学校教育の特徴を踏まえ、次のような基本的な考え方をもとに、制度化を図ることが適当である。
・高等学校において、障害に応じた特別の指導を行う必要がある生徒を教育する場合には、特別の教育課程によることができるものとし、この場合には、当該生徒の障害に応じた特別の指導を、高等学校の教育課程に加え、又はその一部に替えることができることとする。ただし、高等学校の生徒に最低限必要な知識・技能と教養の幅の確保のために必履修教科・科目等が設けられた趣旨に鑑み、「通級による指導」を行う場合において、必履修教科・科目等の単位数を学習指導要領の規定を超えて減らすことを認めることは適当ではないことから、これらについては替えることができないこととする。
・生徒が高等学校の定める「個別の指導計画」に従って履修し、その成果が個別に設定された目標からみて満足できると認められる場合には、当該高等学校の単位として認定することを可能とする。
・生徒が障害に応じた特別の指導を2以上の年次にわたって履修したときは、年次ごとに当該特別の指導について履修した単位を修得したことを認定とすることを原則とするが、通級による指導は特に1年次においては年度途中から開始される場合が多いことが想定されることから、特定の年度における授業時数は1単位(35単位時間)に満たなくとも、次年度以降に障害に応じた特別の指導を設定するような場合などにおいては、2以上の年次にわたる授業時数を合算して単位の認定を行うことも可能とする。また、単位の修得の認定を学期の区分ごとに行うことも可能とする。
・高等学校においては、通級による指導により修得した単位数を、卒業のための必要単位数に含めることも可能とすることが適当である。
・小・中学校における指導時間の標準(年間35単位時間(学習障害者及び注意欠陥多動性障害者を除く)から280単位時間まで)としていることも踏まえ、高等学校において卒業のために必要単位数に含める上限は年間7単位とする。
○ 高等学校における通級による指導については、平成30年度から実施できるよう速やかに所要の省令や告示を整備するととともに、高等学校及びその設置者が、高等学校における通級による指導の実施に向けて円滑に準備が進められるよう、実施のための校内体制及び関係機関との連携体制、通級による指導と各教科等の指導に関する教師間の連携の在り方、通級による指導に関する指導内容や指導方法などの実践例を紹介することが必要である。

4  通常の学級(幼稚園、小・中・高等学校)
○ 全ての教科等の授業において、資質・能力の育成を目指し、一人一人の教育的ニーズに応じたきめ細かな指導や支援ができるよう、障害別の指導の工夫のみならず、各教科等において、学習プロセスにおける、考えられる困難さの状態に対する指導の工夫の意図、手立ての例を具体的に示す。
(例)国語科の例  ※今後、各教科等WGにおける「議論の取りまとめ」と調整予定
・ 文章を目で追いながら音読することが困難な場合には、自分がどこを読むのかがわかるよう、教科書の文を指で押さえながら読むよう促したり、行間を空けるための拡大コピーをしたり、語のまとまりや区切りが分かるように分かち書きをしたり、読む部分だけが見える自助具(スリット等)を活用したりするなどの配慮をする。
・ 考えをまとめたり、文章の内容と自分の経験とを結び付けたりすることが困難な場合には、児童がどのように考えればよいのかわかるように、考える項目や手順を示したプリントを準備したり、一度言葉で表現するように促したり、実際にその場面を演じさせたりしてから書くようにしたりするなどの配慮をする。
・ 自分の立場以外の視点で考えたり、他者の感情を理解したりするのが困難な場合には、相手の立場で考えたり、感情を理解したりできるように、児童が身近に考えられる主人公の物語や生活経験に即した教材を活用し、行動や会話文に気持ちが込められていることに気付けるようにしたり、気持ちの移り変わりがわかる文章のキーワードを示したり、気持ちの変化を図や矢印など視覚的にわかるようにしてから言葉で表現させたりするなどの配慮をする。
・ 声を出して発表することや人前で話すことへの不安を抱いている、自分が書いたものを読むことに困難がある場合には、自分の考えを持つこと、表すことに対する自信を持つことができるよう、紙やホワイトボードに書いたものを提示させたり、ICT機器を活用して発表するようにしたりするなど、児童の表現を支援するための多様な手立てを工夫する。

5  個別の教育支援計画、個別の指導計画の作成、活用
○ 通級による指導を受ける児童生徒及び特別支援学級に在籍する児童生徒については、一人一人の教育的ニーズに応じた指導や支援が組織的・継続的に行われるよう、「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」を全員作成することとする。
○ 「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」の作成・活用の留意点(実態把握から評価・改善など)を示すことが必要である。その際、障害者差別解消法に基づく合理的配慮やその他指導上の配慮についても記述することが必要である。

6  交流及び共同学習
○ グローバル化など社会の急激な変化の中で、一人一人が、多様性を尊重し、協働して生活していくことができるよう、学習指導要領の中で、多様な人々が共に生きる社会の実現を目指すことを示すとともに、学校の教育活動全体で、障害者理解や交流及び共同学習の一層の推進を図る。
○ 具体的には、例えば、保健体育における共生の視点にたった関わり方、生活科における身近な人々との自分との関わり、音楽、図画工作や美術における表現の相違や共通性の視点に立って、それぞれの良さに気付きながらの自己や他者理解、道徳科の中で、地域や学校の実情に応じて、正義、公正、差別や偏見のない社会の実現、特別活動におけるよりよい集団生活や社会の形成など、各教科等の見方・考え方と関連付けた、交流及び共同学習の事例を示す。
○ さらに、学校の教育課程上としての学習活動にとどまらず、地域社会との交流の中で、障害のある子供たちが地域社会の構成員であることをお互いが学ぶという、地域社会の中での交流及び共同学習の在り方を広めていく必要がある。
○ その際、今日の「心のバリアフリー」の推進の動向も踏まえ、障害等の有無に関わらず、地域の中で共に生活し、関わり合っていることを実感し、多様性を尊重する態度を育成する。

7  校内体制
○ 特別支援教育は特定の教員一人では対応できず、学校をあげた体制の下で中心的な役割を担う、特別支援教育コーディネーターの業務や、特別支援教育コーディネーターを中心とする校内体制等の在り方(特別支援教育に係る校内委員会の設置、教務主任や生徒指導主事等との連携など)を示す。

3.特別支援学校
(1)現状と課題
○ 特別支援学校においては、障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服するため、自立と社会参加を目指し、一人一人の幼児児童生徒の障害の状態等に応じた指導を行っている。
○ 近年、特別支援学校に在籍する幼児児童生徒数が増加傾向である。特に、中学校に在籍した者が特別支援学校高等部に入学するケースが増加している。
○ また、重複障害者の割合が増加傾向であり、例えば、自閉症を併せ有する者や視覚と聴覚の障害が重複する者など、幼児児童生徒の多様な重複障害の種類や状態等に応じた指導が求められている。
○ 前回改訂で、すべての幼児児童生徒に「個別の教育支援計画」を作成し、関係機関等と連携した組織的、継続的な指導や支援を行うとともに、各教科等にわたって「個別の指導計画」を作成し、指導の改善が行われるようになっている。
○ こうした我が国の特別支援学校の専門性やきめ細かな指導は国際的にも高い評価を受けている。

[特別支援学校における教育課程(重複障害者等に対する教育課程の取扱いを含む)]
○ 幼稚園、小学校、中学校及び高等学校に準じた教育課程を編成、実施している。
○ 児童生徒の障害の状態等に応じて特に必要がある場合、1 各教科の各学年の目標及び内容の全部又は一部を、当該学年の前各学年の目標及び内容の全部又は一部によって、替えることなど、2 知的障害を併せ有する児童生徒の場合には、各教科又は各教科の目標及び内容に関する事項の一部を、当該教科に相当する特別支援学校(知的障害)の各教科又は各教科の目標及び内容の一部によって替えることなど、3 重複障害のうち、障害の状態により特に必要がある場合、各教科、道徳科、外国語活動若しくは特別活動の目標及び内容に関する事項の一部又は各教科、外国語活動若しくは総合的な学習の時間に替えて、自立活動を主とし指導を行うことなど、の教育課程を編成することが可能である。
○ 学年が進むにつれて、小学校等の教科の目標・内容の一部を、前各学年(部)の教科の目標及び内容の指導に替える児童生徒が存在している。その際、各学部間で学ぶ教科の連続性の整理等が課題として挙げられている。
○ 特別支援学校から小学校等へ転学する場合や、中学校卒業者が特別支援学校高等部へ入学する場合などにおいて、異なる教育課程間で学ぶことから、子供の学びの連続性を確保するための工夫が必要となっている。

[知的障害のある児童生徒のための各教科]
○ 知的障害のある児童生徒の学習上の特性(学習によって知識や技能が断片的になりやすく、実際の生活の場で応用されにくいこと、生活に結びついた具体的・実際的な学習活動の下では指導内容が身に付く、など)を踏まえた目標・内容で構成している。
○ 一人一人の児童生徒の障害の状態等に応じた教育課程を編成できるよう、学習指導要領においては、各段階共通の目標及び段階別の内容を示している。
○ 各教科の目標及び内容が大綱的に示されているため、各教科等を合わせて指導を行う場合、各教科の目標・内容を関連づけた指導及び評価の在り方が曖昧になりやすく、学習指導の改善に十分に生かしにくい、という指摘がある。
○ 評価規準を設定し学習評価を行うことにより、学習指導の改善に生かす、先行的な取組が行われるようになってきている。

[自立活動]
○ 個々の幼児児童生徒が自立を目指し、障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識、技能、態度及び習慣を養い、もって心身の調和的発達の基盤を養うことを目的に、「自立活動の時間」の指導を中心に、学校の教育活動全体で指導を行っている。
○ 高等部の生徒数が増加し、社会に出てからも、自己理解し、得意不得意を伝えることが苦手なこと、進路先で人間関係を築く力などが十分に育っていない、などの課題が指摘されている。
○ 一人一人の幼児児童生徒の障害の状態等に応じた、自立活動の指導目標や指導内容の設定、指導方法について、教員の理解が十分ではない。
○ 児童生徒の実態把握から導かれた指導目標と到達状況との乖離している事例が指摘されている。
○ 通級による指導や特別支援学級で学ぶ児童生徒の増加により、「自立活動」を行う場が拡大している。

(2)改善・充実の方向性
1  改善の基本方針
○ 今後、インクルーシブ教育システムの構築を目指す上でも、一人一人の障害の状態等に応じた「多様な学びの場」を確保することが必要である。そのため、高い専門性を有する、特別支援学校の役割はますます重要であり、特別支援学校の専門性を一層発揮していくことが求められる。
○ 世界保健機関(WHO)が採択した「国際生活機能分類」(ICF)の視点を踏まえ、生活機能や障害、環境因子等を的確に把握し、相互の関連性について一層考慮することが必要である。
○ 今回の改訂で目指す、社会に開かれた教育課程、育成すべき資質・能力、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導方法の充実、カリキュラム・マネジメントなど、初等中等教育全体の改善・充実の方向は特別支援学校も同一である。特に、特別支援学校においては一層重視することが必要である。
○ 社会に開かれた教育課程を目指し、幼児児童生徒が卒業後に社会で生活する姿を描き、個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成・活用を通して、保護者や地域社会、関係機関と共有し、長期的な視点に立って、調和のとれた育成を目指していくことが不可欠である。
○ 教育課程の適用、教科等の指導内容の精選、自立活動の目標・内容の設定など、特別支援教育におけるカリキュラム・マネジメントが重要であることを明確にすることが必要である。その際、教育課程の編成・実施・評価のPDCAサイクルと授業のPDCAサイクルをつなぐ手続きを示すことが重要である。

2  小学校等に準じた教育課程
○ 小学校の中学年に外国語活動、高学年に外国語科が導入されることに伴い、小学部(視覚障害者、聴覚障害者、肢体不自由者又は病弱者(以下、「視覚障害者等」という。))において、授業時間数の確保など、教育課程編成の工夫が必要となることから、基本的な考え方や具体を示すことが必要である。
○ 特別支援学校に在籍する児童生徒に対する学習評価は、小学校等の各教科等の学習評価の考え方に準ずるため、今後の学習評価の改善を踏まえつつ、児童生徒の障害の状態等を十分理解し、児童生徒一人一人の学習状況を一層丁寧に把握する工夫が必要である。

3  重複障害者等の教育課程の取扱い
○ 学習指導要領及び学習指導要領解説において、重複障害者等に関する教育課程の取扱いを適用する必要がある場合についての基本的な考え方や留意点などを具体的に示すことが必要である。例えば、
・学習指導要領解説に示されている重複障害者等の教育課程を適用する際の基本的な考え方やその適用に当たっての留意点について、更にわかりやすく示す。
・現在、学習指導要領で障害種別に示している「指導内容の精選等」について、精選する際の基本的な考え方を更に具体的に整理して示す。
・各学校(部)段階間における各教科等の「学びの連続性」の考え方について整理して示す。
・自立活動を主とした教育課程を行う際の心身の調和的発達、全人的な発達を促すための系統的な指導の在り方についての考え方や、教科と自立活動の指導目標設定の関係性を具体的に整理して示す。

4  知的障害のある児童生徒のための各教科
○ 知的障害のある児童生徒が、将来、自立し社会に参画していく上で、意思の表明や、表明しようとする能力が重要であり、幼稚部、小・中学部、高等部の各部段階を通して育成していく必要がある。
○ 技術革新や情報化などの進展で、社会への関わり方が大きく変わっていく可能性があり、2030年の社会の姿を描きながら、18歳の段階で必要となる資質・能力を具体化していく必要がある。
○ 小学校等との各教科を通して育成される資質・能力と知的障害のある児童生徒のための各教科を通して育成される資質・能力は同じものとして、小学校等の各教科の目標・内容と関連付けて整理することが必要である。その際、各教科の目標の系統性を重視し、連続性のあるものとして整理する。
○ 各教科の目標は、各段階共通の目標を示しているが、今後、各段階においても資質・能力を育成することを意識した指導が行われるために、各段階の領域ごとに目標を具体に示すことが必要である。
○ 段階ごとの目標を整理しながら、小学部、中学部及び高等部の段階の内容とのつながりを整理する。特に、中学部の段階を充実させ、各学部・段階の連続性のある学習内容を設定し、学部間等の円滑な接続を図るため、新たに第二段階を設けることが適当である。
○ 小学部の第一段階については、第二段階の目標との系統性や、幼稚園教育要領に示すねらいとの関連を踏まえ、発達の初期段階に関する研究なども参考にして、目標を整理することが必要である。その際、第一段階の目標と自立活動の目標との関連などを具体的に解説することも必要である。
○ 各教科の内容について、小学校等の教科の内容の改善を参考に、社会の変化に対応した各教科の内容や構成の充実を図る。例えば、高等部社会科においては、高等学校公民科の内容の改善を参考に、現代社会の諸課題の解決に向けて、自立するとともに他者と協働して、公共的な空間をつくる主体として選択・判断の基準を身に付け、考察することが重視されることを踏まえた充実を図る。
○ 小学校における外国語教育の充実を踏まえ、小学部において、実際の児童の実態等を考慮の上、特に必要がある場合には、外国語活動を加えて指導ができるようにすることが妥当である。
○ 既に各学部の段階の目標を達成している児童生徒のために、特に必要がある場合には、個別の指導計画に基づき、各学部に対応した学校段階までの各教科の目標及び内容について、小学習指導要領等を参考に指導できるようにする。
○ 特別支援学校(知的障害)などにおいて、各教科等を合わせた指導を行う場合においても、各教科等で求められる資質・能力を育成することを明確にすることが必要である。このため、教員が、教科別や領域別に指導を行う場合の基本的な考え方を十分に理解し、その上で、各教科等を合わせて指導が行われるよう、学習指導要領等における示し方を工夫することが必要である。
○ 知的障害の児童生徒にとっても、教科の指導は、将来の生活に必要な、豊かな見方や考え方を育む機会であり、児童生徒の日常生活と直接つながる活動のみにとどまらず、将来の自立や社会参加に向けて必要な資質・能力を育成する視点が重要である。
○ 実社会や実生活に関連した課題に注目して、基礎的・基本的な知識・技能等の確実な定着や活用を図る学習活動の充実を一層重視して、主体的に学ぶ意思や意欲を喚起することが必要である。
○ 各教科の評価の観点による学習評価を導入し、学習評価をもとに、教育課程のPDCAサイクルを確立することが必要である。

5  自立活動
○ 自己の理解や自尊感情を高めるような内容の整理、主体的に学ぶ意欲の一層の伸長など、発達の段階を踏まえた自立活動の内容の改善・充実が必要である。
○ 実態把握、指導目標・指導内容の設定までのプロセスを結ぶ要点をわかりやすく記述ことが必要である。
○ 自立活動で行う指導については、○○的自立活動など学習活動を広げ過ぎるのではなく、自立活動の目的を踏まえた指導目標や指導内容を設定するとともに、各教科等と関連を十分に図ることが重要である。
○ 自立活動における多様な評価方法をわかりやすく記述することが必要である。
○ 児童生徒本人が、自立活動を通して、生活上又は学習上の困難をどのように改善・克服できたかを実感できるような自己評価を工夫することなども重要である。

6  指導方法の改善・充実
○ 視覚障害者等である児童生徒に対して、小学校学習指導要領等に示す各教科等を指導する際には、小学校等の各教科等の指導方法の改善・充実の方向性と同様に、主体的・対話的で深い学びである、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた指導を重視することが必要である。
○ 現行の特別支援学校学習指導要領で示している、視覚障害者等である児童生徒に対する、各教科の指導計画の作成と内容の取扱いについて、求められる資質・能力を育成する視点を一層重視するとともに、医療や支援機器等の進展も考慮し、児童生徒の障害の状態や特性等を踏まえた指導上の留意事項を示す。
○ 重複障害者に対する指導については、前述の教育課程の取扱いのみならず、例えば、自閉症を併せ有する者や視覚や聴覚の障害が重複する者に対する指導方法について、その基本的な考え方や留意点などを具体的に示すことが必要である。
○ 一人一人の児童生徒の障害の状態等に応じた効果的な学習指導や、児童生徒のコミュニケーション手段として、コンピュータ等の情報機器を一層活用する。

7  キャリア教育・職業教育の充実
○ 幼稚部、小学部段階から、自分らしい生き方を実現していく過程であるキャリア発達を促す「キャリア教育の推進」を明確にする。その際、
・キャリア教育は、キャリア発達を支援する教育であることの考え方の具体を示す。
・キャリア教育は、育成すべき資質・能力を踏まえ、幼稚部、小・中学部、高等部段階から実施するものであることを踏まえ、展開例や留意点を示す。
ことなどが必要である。
○ 障害の程度が重度の児童生徒のキャリア教育の考え方について、キャリア発達の視点から示す。
○ キャリア発達を支援するためのカリキュラム・マネジメントの具体を示す。(教育活動全体への働きかける仕組み)
○ 高等部における専門教科、専攻科における教育については、あん摩マツサージ指圧師、はり師及びきゆう師、歯科技工士等のカリキュラムに関する制度改正をめぐる動向を踏まえ、教育内容の改善・充実を図る必要がある。
○ 企業や労働関係機関等と連携した就業体験の実施、就労先・実習先の開拓、小学部・中学部からのキャリア発達を支援するプログラムの開発への協力などを行う、就労支援コーディネーターの配置や養成が必要である。


4.幼稚園、小学校、中学校及び高等学校と特別支援学校との連続性
(1)現状と課題
○ 学校教育法施行令の改正により、平成25年より、障害の状態の変化のみならず、本人の教育的ニーズなどを総合的な観点から、小・中学校等から特別支援学校への転学や、特別支援学校から小・中学校等へ転学の検討がされることになっている。
○ また、中学校の特別支援学級に在籍し、中学校卒業後に、特別支援学校高等部に入学する生徒数が増加している。
○ 特別支援学校の教育課程(特別支援学校学習指導要領を参考として教育課程を編成、実施している小・中学校の特別支援学級の教育課程を含む)においては、重複障害者等である児童生徒に対して、各教科等における前各学年の目標・内容の適用、知的障害のある児童生徒の教科の適用などが可能であるため、小・中学校と特別支援学校の間で転学する場合、児童生徒の学びの連続性を確保することが求められている。

(2)改善・充実の方向性
○ 前述の、3 の重複障害者等の教育課程の取扱いに関して、重複障害者等の教育課程を適用する際の留意点、特に、指導内容を精選する際の基本的な考え方などを具体的に示すことや、4 の知的障害のある児童生徒のための各教科に関して、小学校等の各教科の目標・内容と関連付けて整理することを踏まえ、小学校等と特別支援学校との教育課程の連続性をわかりやすく整理し、示すことが必要である。
○ こうした教育課程の連続性の考え方を示した上で、各学校において、前籍校から引き継いだ個別の教育支援計画及び個別の指導計画をもとに、児童生徒の障害の状態等や学習履歴等を踏まえた、継続的な教育支援や指導が行われるよう、個別の教育支援計画及び個別の指導計画の引継ぎ、活用についての考え方や留意点を示すことが必要である。


5.特別支援教育の改善・充実を支える方策について
(1)教員の専門性向上
○ 中央教育審議会「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について(答申)」(平成27年12月)を踏まえ、次のような、教員の養成、採用、研修の各段階において特別支援教育に関する内容を充実することが必要である。
○ また、都道府県教育委員会等による研修や校内研修等を一層充実していくために、国立特別支援教育総合研究所において、教育課程編成や指導方法等に関する調査研究を行いその成果を普及するとともに、地域において指導的立場に立つ指導主事や教員を対象とした専門研修等を実施する。

1  大学の教職課程における教員養成
・発達障害を含む特別な支援を必要とする幼児、児童、生徒に関する理論及びその指導法は、学校種によらず、教職課程において独立した科目として位置付け
・上記科目のみならず、各教科の指導法や生徒指導、教育相談をはじめとした他の教職課程の科目においても、特別な支援を必要とする幼児、児童、生徒への配慮等の視点を盛り込む

2  現職教員(初任者を含む)、管理職に対する研修機会の充実
(校長等管理職)
・校長等管理職が特別支援教育に関する認識を持ち、リーダーシップを発揮するための研修

(幼稚園、小学校、中学校、高等学校教員)
・全ての教員が特別支援教育に関する基礎的な知識・技能を身に付けるための研修
・小・中学校の特別支援学級担任の所持率も現状の2倍程度を目標として、特別支援学校教諭免許状の取得を進めることが期待

(特別支援学校教員)
・障害の多様化や重度・重複化への対応、特別支援学校のセンター的機能を発揮するための地域における小中学校等との効果的な連携手法等を身に付けるための専門的な研修
・教育職員免許法附則第16項の廃止も見据え、平成32年度までの間に、おおむね全ての特別支援学校の教員が免許状を所持することを目指し、国が必要な支援

(2)学校の指導体制
○ 特別支援教育コーディネーターは、障害の多様化や重度・重複化への対応、地域における他の学校、関係機関との効果的な連携手法が求められてきており、特別支援教育コーディネーターの役割を紹介するとともに、その専門性を高めるための研修等の充実などを図ることが求められる。
○ 特別支援教育コーディネーター、特別支援学級担任や通級による指導担当など、各学校における特別支援教育に対応した教員定数等の改善が求められる。
○ 例えば、小・中学校に在籍する難聴のある児童生徒に対する巡回による指導や通級による指導など、特別支援学校の教員の専門性の活用や、聴覚測定等の専門的な施設・設備の利用など、特別支援学校における、幼稚園、小学校、中学校及び高等学校等への相談や支援体制(特別支援学校のセンター機能)の充実が求められる。

(3)家庭や地域、関係機関等との一層の連携、国際化への対応
○ 学校運営への参画はもとより、各教科や自立活動の指導など学習指導の場面でも、「開かれた教育課程」にふさわしい、専門家や支援団体、地域住民、保護者との連携、協力が求められる。
○ 障害のある児童生徒への教育支援に当たって、医療、福祉、労働などの専門機関等との連携は不可欠であり、医療、福祉、労働行政の協力や支援が一層求められる。
○ 国際化の進展に伴い、海外から帰国した児童生徒、外国人児童生徒など、日本語指導が必要な児童生徒が増加傾向にあり、特別支援学校においても、地域や学校の実態等に応じて、指導体制を構築したりすることが求められる。

(4)高等学校入学者選抜や大学入学者選抜、企業等の雇用における取組の充実
○ 障害者差別解消法の趣旨を十分に踏まえ、高等学校入学者選抜や大学入学者選抜において、障害を理由とした不当な差別的取扱いが行われないようにすることはもとより、試験において、本人・保護者の希望、障害の状態等を踏まえ、別室での受験、試験時間の延長、点字や拡大文字、音声読み上げ機能の使用を許可することなど、障害のある生徒への適切な対応が求められる。また、全ての学校に障害がある児童生徒が在籍する可能性があることを前提として、高等学校入学者選抜や大学入学者選抜における調査書の様式等の改善も求められる。
○ 障害のある児童生徒の継続的な就労に向けて、障害者雇用促進法の趣旨を踏まえた雇用の改善が求められる。

(5)教科用図書、教材、支援機器等の充実
○ 今次の学習指導要領の改訂に対応し、これまでと同様、文部科学省は視覚障害、聴覚障害及び知的障害のある児童生徒者のための教科書を作成するとともに、教科書会社により拡大教科書の作成が求められる。また、今日、民間団体等による教材も大きな役割を果たしており、これらの教材の充実が期待される。
○ 障害のある児童生徒の特性等に応じて、その持てる力を最大限に発揮させ、また、学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服することを目的に、学校教育の場面で活用される、支援機器等教材の充実が求められており、文部科学省「学習上の支援機器等教材活用促進事業」で開発した支援機器等教材の積極的な活用の促進することが望まれる。
○ 各学校現場で一層の活用が図られるよう、国立特別支援教育総合研究所が運営する「支援教材ポータル」を通じて、支援機器に関する情報やこれらを活用した実践事例などを提供することが必要である。

(6)全国的な実施状況の把握
○ 新しい学習指導要領の着実な実施を図るため、文部科学省、国立特別支援教育総合研究所、特別支援教育に関する研究団体、都道府県等教育センターが連携し、特別支援教育に係る教育課程の編成・実施についての実態把握、教育課程の改善・充実のための研究開発等に取り組み、各学校での教育課程編成や学習指導の改善・充実を支援していくことが重要である。
○ さらに、将来の学習指導要領の改訂に資するよう、教育課程の編成・実施状況について全国的な状況を把握・分析することが重要である。


お問合せ先

特別支援教育課指導係

電話番号:03-5253-4111(代表)

(初等中等教育局特別支援教育課)