教育課程部会 特別支援教育部会(第3回) 議事録

1.日時

平成27年12月16日(水曜日) 13時00分~15時00分

2.場所

スタンダード会議室 虎の門ヒルズFRONT店 5階小ホール

3.議題

  1. 幼稚園、小学校、中学校、高等学校等における特別支援教育について

4.議事録

中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会特別支援教育部会(第3回)


                                                                        平成27年12月16日


【宍戸主査】  皆さん、こんにちは。定刻となりましたので、ただいまより中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会特別支援教育部会を開会させていただきます。
本日は、報道関係者より、会議の撮影及び録音の申出がありました。これを許可しておりますので、御了解いただきたいと思います。
なお、本日は、野口委員が第3回、第4回とも御欠席です。小枝委員は、第3回は御欠席ですが、第4回から御出席予定です。はじめに、事務局より配付資料の確認をお願いします。
【太田特別支援教育課課長補佐】  事務局をしております特別支援教育課課長補佐の太田でございます。今日もよろしくお願いいたします。
配付資料の確認をさせていただきます。本日は、議事次第に記載しておりますとおり、資料1から資料6、それから、参考資料、第2回の配付資料の抜粋でございますが、御用意しております。不足等ございましたら、事務局にお申し付けいただければと思います。
以上でございます。
【宍戸主査】  それでは、これより議事に入りたいと思います。前回は、幼稚園、小学校、中学校、高等学校における特別支援教育ということで、山中委員、大谷委員から御発表いただき、それに基づいて議論をさせていただきました。今回は、金谷委員から御報告いただき、前回に引き続き、幼稚園、小学校、中学校、高等学校における特別支援教育について議論を深めていきたいと思っております。
なお、高等学校における特別支援教育については、第5回以降で御報告いただきたいと思っております。
では、配付資料につきまして、事務局から説明をお願いします。
【太田特別支援教育課課長補佐】  資料について御説明させていただきます。
最初に、資料2を御覧ください。幼稚園、小学校、中学校、高等学校等における特別支援教育に係る検討事項(案)でございます。これは前回、第2回でもお配りさせていただいたものと同じものでございます。今回は、ここに掲げております検討事項のうち、丸1の各教科等の目標を実現する上で考えられる困難さに配慮するために必要な支援の改善・充実ということにつきまして、各教科等の指導において、どのような困難さが表れ、どのような指導上の配慮や支援が必要と考えられるか、それから、各教科等の授業における必要な支援をどのように示していくことが考えられるのか、それから、幼稚園や幼保認定型子供園において、総合的な指導を行っているという幼児教育の特性を踏まえ、どのような指導上の配慮や支援が必要か、また、どのように示していくことが考えられるのかといったことについて、先生方から御意見をいただければと思っております。
それから、1ページめくっていただきまして、今回の第3回では、丸5の共生社会の形成に向けた障害者理解の促進及び交流及び共同学習の一層の充実につきまして、交流及び共同学習の一層の充実を図るために、どのような方策が考えられるか。例として、居住地交流の充実ですとか、副次的な籍の活用、間接的な交流及び共同学習でのICTの活用などを示させていただいております。さらに、教育活動全体で、障害者理解教育の一層の充実を図っていくため、どのようなことが考えられるかということを示させていただいておりますので、このようなことを踏まえて、御意見いただければと思います。
また、今回も全体を通じて、最後の枠囲みで囲んでおりますとおり、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校等の間で、子供たち一人一人の学びの連続性を実現するための教育課程の円滑な接続の実現などについても今後検討としております。このことも視野に入れて、いろいろ御議論いただければと思っております。
続きまして、資料3を御覧ください。資料3も、これまでこの会議でお配りさせていただいた資料を少しリバイスしたものでございます。特に発達障害に関することを中心に加えてございますので、その点を少し補足を説明させていただきたいと思います。
1ページ目でございますが、これまでの経緯を書かせていただいております。平成17年に発達障害者支援法ができて以来、通級による指導にLD、ADHDを追加したりですとか、平成20年・21年に、現行の幼稚園・小学校・中学校・高等学校の学習指導要領の改訂の際に、学習指導要領の解説の中に、通常の学級におけるLD、ADHD、自閉症のある児童生徒への適切な指導ということを明記したところでございます。
1ページめくっていただきまして、2ページ目以降でございますが、これは学習指導要領告示後の動きでございますが、さらに、特別支援学級の対象に自閉症を加えたりですとか、政府全体の動きとしても、障害者基本法を改正したりですとか、文科省としても、中教審の初中分科会報告、さらに、近年、差別解消法の制定ですとか、障害者権利条約の批准などの大きな動きがあります。また、文部科学省でも、後ほど御紹介しますが、平成24年度に調査を実施したところでございます。
3ページ目以降は、発達障害者法のことを紹介しております。4ページ目に、発達障害者支援法及び、その後、文部科学省で協力者会議の報告において、自閉症、高機能自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害について、定義したものをここに御紹介しております。
すみません、駆け足で御紹介させていただきますが、8ページ目を御覧いただければと思います。これも一度御紹介させていただきましたが、平成24年度に文部科学省で行った調査でございまして、公立の小中学校の通常の学級に在籍している児童生徒のうち、学習面又は行動面で著しい困難を示すと考えられる子供の割合が6.5%、推定値でございますが、そういった調査結果が出ております。
さらに、10ページ目から様々な事例を紹介させていただいておりますが、10ページ目は、日野市の第三小学校における取組で、一斉指導における全ての子供たちにとって分かりやすい授業ということで、工夫している様子を御紹介させていただいております。
それから、13ページでございます。国立特別支援教育総合研究所におきまして、発達障害教育情報センターというものを開設しておりますが、ここでもホームページなどを通じて、各教科の指導上の配慮事項ということで、自閉症や学習障害、ADHDの事例などを、「文章やことばの意味理解が困難なのですが」といったような質問に対する手立てを紹介するというような取組を行っております。
また、さらに、17ページ以降でございますが、モデル事業の実践事例なども、こちら、特総研の方で紹介しておりまして、幼稚園・年少の幼児の事例から、小学校、中学校での事例なども紹介しているところでございます。
続きまして、資料4-1を御覧ください。4-1は、現在の学習指導要領・教育要領、学習指導要領解説でどのように記述しているかを抜粋したものでございます。簡単に御紹介しますが、真ん中あたりにございますとおり、幼稚園教育要領においても、学習指導要領の中で、障害のある幼児の指導に当たっては、個々の幼児の障害の状態などに応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的、組織的に行うというような規定を設けております。それを踏まえて、解説の中で、ちょうど中段ぐらいに下線を引かせていただいておりますが、例えば、弱視の幼児がぬり絵をするときには輪郭を太くするなどの工夫、難聴の幼児に絵本を読むときには教師が近くに座るようにして声がよく聞こえるようにしたりですとか、肢体不自由の幼児が興味をもって進んで体を動かそうとする気持ちがもてるように工夫など、障害の種類に応じた配慮の例を示しているところでございます。
2ページ目が、小学校の学習指導要領の方でございますが、同じように、学習指導要領でも(7)というような形で規定しておりまして、小学校学習指導要領解説の総則編において、幼稚園と同じように、弱視の児童ですとか、難聴や言語障害、肢体不自由、それから、LD、ADHDや自閉症といったような形で、障害種別にこういったような配慮を少し紹介しているのが現状でございます。これは中学校、高等学校でも同様な記述をしているところでございます。
続きまして、資料4-2について説明させていただきます。今、紹介させていただきました現行の学習指導要領、それから、学習指導要領解説での記述などを踏まえて、これまで教育課程企画部会や前回までのこの部会での御意見などを踏まえまして、これから各教科等における障害に応じた配慮事項について、このような考え方で示していくことが考えられるのではないかということで、事務局として整理させていただいたものを今日御用意させていただいております。
左側のこれまでの示し方につきましては、今御紹介させていただきましたとおり、現行では学習指導要領の総則に記載して、解説の中では、障害種別の配慮の例を示しているのが現状でございます。右側の方の青い部分でございますが、改善の方向性ということで、これまでの総則に加えて、各教科等別に示すことによって、各教科での授業でのそれぞれの先生方が、その授業の中で配慮ができるようにということで、各教科等別に示すことを考えていってはどうかということで、まず書かせていただいております。
実際に、詳しくは学習指導要領解説の中で、これまでは障害種別に書いていたところでございますが、これからは、よりいろんな場面での活用を考えて、学習の過程で考えられる困難さごとに示してはどうかということで、ここで例を示させていただいております。困難さの例としまして、これはまだまだ十分精査できていないもので、現時点でのものということでお考えいただければと思いますが、大体いろんな認知の特性とかを踏まえて、五つぐらいの分類をさせていただいておりますが、見えにくい、聞こえにくいですとか、体験が不足、それから、色(・形・大きさ)、位置や時間を把握することが困難ですとか、短期記憶、ワーキングメモリー、継次処理が困難ですとか、注意をコントロールすることができないといったようなこと、それから、話すこと、書くことが困難、表情や動作が困難といったような、子供の学習過程で考えられる困難さをまず示した上で、それに対する配慮事項ということを示してはどうかというように考えてみました。
下の段でございますが、ページがなくて恐縮でございますが、幼稚園でも現在、教育要領で、同じような形で、幼稚園教育要領及び解説の中で障害種別に書いているのを、今度の改訂において、解説の中で、幼児の活動を通じて考えられる困難さごとに示してはどうかということで紹介させていただいております。なお、やはり幼児段階の特性ということも踏まえて、これは現時点では小学校のものを参考にして作ったものでございますので、今後、幼稚園段階にふさわしいものを作っていくことが必要なのかなと考えております。
1ページめくっていただきまして、ここからは、その具体例を少し考えたものをイメージとして御覧いただければと思います。それに当たって、枠囲みで上の方に示させていただいておりますが、基本的な考え方として、資質・能力の育成ですとか、各教科等の目標の内容の実現を目指すということと、それから、児童生徒の十分な学びが実現できるということを前提として、その際に学習の過程で考えられる困難さ、それに対する配慮の意図、それから、手立てを含めて示していってはどうかと考えたところでございます。その裏には、ここにも書かせていただきましたが、安易な学習内容の変更や学習活動の代替にならないように、教員が今後国で示すものを参考にして、きちんと子供の状態に応じて配慮の意図を持って配慮を考えていくために示していくことが必要なのではないかと考えたところでございます。以下、小学校の例ということで示させていただいておりますが、また今後、中学校や高等学校についても、こういったものを整理していきたいと考えております。
簡単に御紹介しますが、国語の例ということで、太字の部分が、委員の皆様のところにはカラー刷りのもので赤字になってございますが、文章を目で追いながら音読することが困難な場合には、これが困難さの状態ということで、いろんな要素が入っているかもしれませんが、視覚や言語理解などが含まれているのかなと考えておりますが、それに対する、自分がどこを読むか分かるように、これが配慮の意図というような形で、教科書の文を指で押さえながら読むよう促したり、行間を空けるための拡大コピーをしたり、語のまとまりや区切りが分かるように分かち書きをしたり、読む部分だけが見えるスリットを活用したりするなどの配慮をするというようなことで、手立てを最後に、これは見えにくさに対する情報保障の手立てを文章で書くというようなことを考えてみたところでございます。
全教科、例を典型的なものを作って今回示しておりますが、時間の都合で一つ一つ御説明できませんが、例えば、このページの下の方の算数科の例では、下から二つ目の丸でございますが、四則の混合した式や括弧を用いた式について理解し、正しく計算することが難しい場合には、計算のきまりを理解させるために、計算の順番を示した手順書を手元に置かせたり、式を分解してそれぞれを計算させて、混合式との比較をさせるなどの工夫を行うなどを示しております。
あと、最後のページの真ん中より上ぐらいに、外国語活動の例ということで、音声を聴取することが難しい児童の場合、外国語の音声(音韻)やリズムと日本語の違いに気付くことができるよう、音声を文字で書いて見せる、リズムやイントネーションを記号や色線で示す、指導者が手拍子を打つ、音の高低を手を上下に動かして表すなどの配慮をするといったような例を示させていただいております。
最後に、幼稚園の例も、三つぐらいですが、見えにくく、行動が制限される場合、聞こえにくく、言葉の習得が困難になる場合、身体の動きに困難がある場合というようなもの、三つを例を作って示させていただいております。
こちらについては、また先生方から御意見を今日賜ればと思っております。
本当に駆け足で申し訳ございません。続きまして、資料5-1と5-2を御覧いただければと思います。
5-1の方は、障害者理解の促進や交流及び共同学習についてということで、資料を用意させていただいております。障害のある子供とない子が活動を共にすることに意義ということで示させていただいております。また、交流及び共同学習につきましては、障害者基本法の中にもきちんと位置付けられているところでございます。3番以下が、学習指導要領上の規定でございます。
3ページ目に、具体的な数値としまして、これは特別支援学校側のデータでございますが、学校間交流をしている特別支援学校の割合などを紹介させていただいております。
資料5-2でございますが、参考資料として用意したものでございますが、これまで文部科学省でまとめてきた交流及び共同学習についての学習指導要領の解説の中での記述ですとか、3ページ目は、文部科学省では、かつて交流及び共同学習のガイドを出させていただいております。また、事例といたしまして、千葉県の事例をお借りしまして、ここで紹介させていただいておりますが、特別支援学校と小学校がそれぞれ教育課程上にきちんと位置付けて、計画的に実施している例ということで御紹介させていただいております。
また、下の段の5ページでございますが、東京都や埼玉県、横浜市では、副次的な籍を設けて、交流及び共同学習を実施しております。
6ページでございますが、テレビ会議システムを活用した前籍校の例を御紹介させていただいております。
7ページは、これは今年度から私どもの方で実施している事業でございまして、学校における交流及び共同学習を通じた障害者理解(心のバリアフリー)の推進といったような事業を開始しておりまして、これは障害者スポーツを通じて、障害のある子供とない子供が共に体験して交流するというような事業を今年度から実施しているところでございます。
最後に、8ページでございますが、障害者理解に関する取組ということで、宮城県の例を御紹介させていただきましたが、障害者理解について、教育委員会の方で全体計画を作って、具体的に総合的な学習の時間や特別活動、道徳、各教科でどのようなことをやるのかということを、目標を掲げて、具体的な活動を参考として示して取り組んでいるというような例を御紹介させていただいているところでございます。
駆け足でございますが、まず私の方からの資料の説明は、以上でございます。
【大杉教育課程課企画室長】  続きまして、私の方から、総則・評価特別部会からお伝えいただきたいという事項がございますので、お伝えさせていただきます。
先日開催されました第2回の総則・評価特別部会におきまして、各教科ワーキング、校種別ワーキング等の検討状況を御報告させていただいたところでございます。総則・評価特別部会におきましては、各教科等の本質的な意義でありますとか、資質・能力といった観点から御検討の手続に沿った形で進めていただいていることに感謝の意が述べられますとともに、以下の5点を各専門部会の方にお伝えいただきたいということでしたので、羽入主査に代わりましてお伝えさせていただきます。
1点目でございますけれども、御検討いただいている検討事項のうち、他教科の検討にも関わるような重要な内容に関しましては、可能な限り早い段階で議論を行い、総則・評価特別部会及び各教科等ワーキングにおいてしっかり検討できるようにしていただきたいということでございます。本日御議論いただく内容にも関わることでございます。特に、資料4-2のような各教科に関わる事項をこれから各教科につないでいく必要がございますけれども、スケジュールといたしましては、今月12月22日にまた総則・評価特別部会がございますので、本日のこの部会における議論の状況を総則・評価特別部会12月22日にお伝えさせていただき、そこからまた各教科のワーキングに今日の御議論の状況をしっかりつないでいきたいと思っております。
それから、2点目でございます。「社会に開かれた教育課程」という観点から、学習指導要領の法的な性格を踏まえつつも、教員や学校のみならず、例えば、教職課程で教員を目指している学生さんでありますとか、学校に関わる地域の方々といった方々が指導要領を読んで、趣旨が十分伝わるような構成や文章とするという方向で御検討いただきたいということでございます。
それから、3点目でございます。発達に応じた目標・内容の系統性というような軸と、現代的な課題に教科横断的に対応していくという軸の双方を意識しながら、資質・能力の在り方について検討を進めていただきたいということでございます。
4点目でございます。卒業後、子供たちが特定の学問分野や職業に進む場合だけではなく、どのような職業に就くとしても生かすことができるような教科の本質的な学びを御検討いただきながら、資質・能力を検討していただきたい。これは本部会というよりは、各教科ワーキングに関することでございますけれども、こういう御指示もございました。
それから、各部会において、様々な教育内容の特性・独自性を踏まえた検討を進めていただく一方で、総則部会や校種別部会、全体的な構成に関わる議論の状況を踏まえながら議論を進めていただきたいということでございました。
本部会は、校種別という意味と、あとは教科横断的ということと、それぞれの細めについて詰めていくという様々な要素が絡んでおりますので、必ずしももう当てはまらないといいますか、既に御検討いただいている部分もたくさんございますけれども、総則・評価特別部会からの伝達事項として、以上、お伝えさせていただきました。失礼いたしました。
【宍戸主査】  事務局の方から、それぞれ説明がありました。
それでは、本日は、幼稚園における特別支援教育の現状について、金谷委員の方から御発表をお願いしております。10分から15分程度でおまとめいただきますようお願いいたします。金谷委員、お願いします。
【金谷委員】  それでは、幼児期の特別支援教育ということで、タイトルを付けさせていただきました資料1を御覧ください。
先生方、幼稚園は皆さん御存じだとは思いますが、幼稚園、保育園の中身といいますか、見ていただきますと、やっぱり小学校や中学校とは形態も、それから、行っている方法も違うということが大きな特徴としてあるかと思います。それから、幼児期ですから、発達がまだ十分でないといいますか、幼いといいますか、そういう部分の幅を多く持っている時期でもありますし、個人差が大きい時期でもあります。例えば、幼稚園は3歳から入ってきますけれども、3歳児で入ってきても、3月生まれか4月生まれかで大きな違いがあります。小学校の1年生での3月生まれと4月生まれでもかなり違う印象だとは思いますが、3歳児ですと、片や生まれていた、片や生まれていなかったというようなぐらいですから、その生まれた時期というものも大きく考慮してあげて、個人差というものを考慮してあげなければいけない時期だということも踏まえながら、幼児教育はしていかなければいけないということがあると思います。
それから、あとは、そういう子供たちへの配慮といいますか、その辺がいろいろしなければいけないという現状にあるということと、それから、園によって保育形態が実態としてはいろいろで、小学校でやるような一斉形態、スクール形式でやるというような幼稚園も中にはありますし、もっと自由遊びといいますか、そういう形態でやっていらっしゃるところもありますしということで、実態はいろいろ、形態もいろいろであるということ。そして、特別支援という観点からしても、その配慮の仕方ということもいろいろであるということが実態としてはあるということですね。特別支援などとは言わずに、もう個人差が大きい段階ですから、そういう意味での配慮としてまとめてしまうというような園も中にはあるということです。そんな前提を踏まえながら、今、現状と課題、それから、考えられる対応、対応の方はすごく大ざっぱに書きましたけれども、そんなものをちょっと御紹介したいと思います。
まず、今もちょっと申しましたけれども、まず早期発見、早期支援という意味で、なかなか難しい段階で、アセスメントが難しいという特徴があると思います。ただ、もう3歳になっていると、ある程度の行動特徴というのは出てはくるとは思うんですけれども、それでも3歳で入園したばっかりとなりますと、まだ環境に慣れないこととか、そういうものも配慮しなければいけないということがあって、なかなかアセスメントが難しいです。そこで、一つ、例えば、その前の段階の3歳児健診とか、1歳半健診とか、そちらとリンクできるというか、情報交換ができるといいますか、そういうものもあると、3歳から早く早期支援ができるのではないかなとは思っていますが、現状では、やっぱり個人情報の問題とか、そういうことがあって、なかなか連携が取りにくいというところが一つあるかと思います。
さっきも申しましたように、3歳の時点でこうだったからといって、ずっとそれが固定化するわけでもないので、やっぱり継続的にフォローアップできるということが大事かなと思っています。その継続的にフォローアップできる視点を持った特別支援コーディネーターでも結構なんですけど、そういう視点を持った方がいてくださって、その子の様子をフォローアップしていけるということがかなり大事になってくるだろうと思っています。
ということで、今、早期支援コーディネーターというのを配置して、福祉とか教育、いろんな分野のことを総合的に見る方を配置するということがもう行われているということなんですけれども、まだそれの数も少ないし、それから、どこに置かれているかとかって、自治体によって、教育委員会だったり、違うところだったりということがあるので、相談する側から見ると、早期支援コーディネーターがどこにいて、どこへ相談していいのかが分からないという状況があるかと思うので、その辺の整備もしていただけると、園とか保護者も含めて、利用者側も分かりやすくなるのではないかなと思っています。
それから、支援手帳、支援ファイルなんかですけど、親御さんによっては、もう早くからそういうものを母子手帳のごとく活用しようという方もいらっしゃるんですが、まだやっぱり自分の子はどうなんだろうという、受容がまだそこまで進まないという方には、それはなかなか難しいとは思うんですけれども、支援手帳というその形ではなくても、親御さんにやっぱり行動の記録を取っていただくとか、何かそんな形でのものを園の先生たちも勧められて、そして、お互いに、例えば、ほかの機関なんかに接続したときもそれを活用できる。それが支援ファイルとなってしまうと、なかなか抵抗があるという場合もあると思うんですけれども、やっぱりそういう行動の記録を取るといいますか、そういうシステムといいますか、そういうものを園でも心がけてやっていただけるといいかなと思っているところです。
特別支援コーディネーターの配置とか園内委員会、そういうものは、資料を添えていただきましたので、それで見ていただけると分かるんですが、ほかの小学校や中学校に比べて設置率は非常に低くなっております。まだまだ特別支援としてコーディネーターが何をすべきかとか、それから、コーディネーターを本当に置いたらいいのかというあたりが、園の中でまだ疑問を持っていらっしゃる方もいるのではないかなとは思っているところです。なので、その辺の理解をどうやって進めていくかという問題もあるかなと思っています。
次に、保護者との関係ですけれども、保護者が障害理解をなかなかできにくいというのが、この幼児期の特徴でもあるかなと思います。3歳になれば言葉が出ると思うからとか、それから、学校へ行くぐらいには何とかなるからということで思ってしまう方も多いかと思います。なので、そこで園の先生が、下手すると、「いや、このお子さんは何とかの障害なので、絶対どこどこ機関に行った方がいいんです」などということで、「うちの園にいるよりは、ほかの園に行った方がこの子の幸せのためです」と言って、ある意味排除といいますか、そんなふうにされてしまうこともあるので、例えば、私なんかが巡回相談に行くときは、まずレッテル貼りではなくて、さっき困難さの指標で見ていこうという話もありましたけれども、お子さんの行動特徴でどう見ていくかというあたりを親御さんと協議していくといいますか、そして、その子の行動変化をしっかり見ていくというあたりが非常に必要かなと思っています。そういう視点で見るための研修も、保育者には非常に必要かなと思っています。
それで、ちょっと言いにくい話ですけれども、さっきの困難さの問題にも関わるんですが、困難さはどこから起因するかといったときに、例えば、そのお子さんが本当に視覚障害があられてとかいう場合ですと、本当に見えないわけですから、それははっきりしているので、それの手当てということはあると思うんですけれども、例えば、これはもしかしたら小学校にも通じるかもしれないんですけれども、保育の仕方で困難さを生み出してしまっているということも、中にはあるかと思うんですね。なので、その困難さというあたりの基準というか、そこら辺をどう考えていくかという問題も、非常に大きな問題だと思っています。それで、その辺の保育そのものの在り方、その辺も十分検討しながら、要するに、後でも出てきますけど、集団の中の一員として違いのある子をどう育てるかという、その視点。
例えば、幼稚園ですと、設定保育なんていうのがあるんですけれども、いわゆるスクール形式でお子さんを集めて、「じゃ、絵を描きましょう」とか、「この絵を描きましょう」なんてやったりとか、そういうことがあるんですけれども、でも、それからちょっと外れるような絵だと、「この子は困難ですね。この保育にはついていけませんね」というので、「うちにいるよりはほかに行った方がいいんじゃないでしょうか」というようなことが始まってしまったりするということがあって、合理的配慮ということと関わってきますけど、そこにいらっしゃる方にどう配慮していくかという、そちらの工夫の問題、そちらができるような保育者の力量の育成といいますか、そういうものは非常に大事だろうなと思っています。
保護者とは、やっぱり認識がどうしてもずれてしまうということがあって、保育者が保護者とどうコミュニケーションを取っていくかというあたりも、どこでも苦労されていることで、最近は保護者の方も、もう1歳半とか2歳で、「うちの子は発達障害じゃないですか。なぜならば、インターネットを調べてみました。そうしたら、ぴったりなんですね。ですから、うち、そうでしょう。じゃ、この子、いじめられないようにするにはどうしたらいいでしょう」みたいなことをもう相談で言ってくるという方もいらっしゃいますので、親御さんたちもいろんな情報を入手していらっしゃいます。その辺も鑑みて、保育者は、うちの保育園での保育としてはこうしていきたいんですというあたりのコミュニケーションをどう取っていくかというあたりの保護者との連携の問題というのも、研修等で更に高めていく必要があるんだろうと思っているところです。
3番の合理的配慮については、今申し上げたことにも関わってきますので、いいかと思うんですが、もう一つ、保育者の研修と言いましたけど、私のところも養成校なので、自分のところにも降りかかってくるんですが、やっぱり教員養成のところから、こういう特別支援とか、子供たちへの配慮とかいうことをしっかり勉強するチャンスがあるとよろしいかなと思っています。なかなか学生の頃ですと、上の空になってしまうということもあるかとは思うんですけれども、それでもやはりどこかできちんとこういうことを知識としては聞いたということがあるとないでは随分違うのだと思います。
あと、保育者サイドからの問題として、4番ですが、保育者、特に私立幼稚園なんかではよく言われることなんですけど、人手不足の問題ですね。加配といって、例えば、手帳を持っていらっしゃるお子さんとか、そういうもう診断がしっかりついているお子さんには、補助を取ったり、それから、一人プラスしていただくというようなことがあるんですけれども、クラスに一人もう先に付いていると、更にプラスはできないということがあったりとか、いろんな問題があって、なかなか、特にスクール形式でしている授業のような形とは違いますし、子供たちは自由に動き回るといいますか、そんな中での保育ですから、ある意味人手が要るといいますか、目が行き届かないといけないという問題があって、そういう意味では、できれば人手をもう少し楽に取れるようなシステムがあるといいというのは、現場からよく聞く話です。
ただ、これも、すごく人数がたくさんいればいいという問題ではないので、やはりそこら辺の連携をうまく取れるようなことになっていないと、それは園内の体制づくりの問題ですけれども、ついこの間行った、それは保育所でしたけど、クラスに4人も先生がいて、それは3歳児以上のクラスだったんですね。それはいいんですが、結局、うまく連携が取れていないので、せっかく子供が何かしようとしていたところに、ほかの先生が、そこにいなかった先生がぱっと声を掛けて全然違う文脈になってしまったとか、そういうことがあります。だから、やはり連携がきちんと取れていないと駄目という、その連携を取る研修といいますか、その辺も、保育者同士のコミュニケーションの取り方といいますか、そういうものも勉強していかないといけないのではないかと思っています。
それから、次、5番ですけど、個別の教育支援計画ですが、これもグラフを見ていただくと分かりますが、まだ立てているところは幼稚園の場合は非常に少ないということですが、幼稚園には、もちろん教育課程があって、年間指導計画があって、それから、月間指導計画があって、週案と言われる週間指導計画があって、日案というものがあってというふうになっておりまして、その中で個別に、この子には配慮しようというようなことで、日案の中で書いていらっしゃる園も結構ありますので、もしかしたらそういうのでやっているからということで、特に特別支援として教育計画は立てていませんというところも多いのではないかなと、これはデータを取っていませんけれども、想像しています。いずれにせよ、配慮の要るお子さんに関して――私、個人的には、その子ばっかりではないとは思っているんですが、やっぱり教育計画をしっかり立てていただくというのは必要なことかなとは思っています。
次へ行きます。6番目ですが、外部専門家、例えば、巡回相談の活用ということですけれども、幼稚園教育要領には、小学校にも書いてありましたかね、特別支援学校の先生を利用して、コーディネーターを利用してと書いてあるんですが、特別支援学校でも、幼稚部を経験されている先生であれば、その助言は多分有効になるだろうと思っているんですけれども。先ほどから申していますように、幼稚園と小学校と様態も随分違いますので、小学校でやっている教科別の何々、それから、こういう指導法ということで、スクール形式のそれをこうしたらいいというのをそのまま幼稚園に当てはめられてしまうと、とても先生たちが困惑してしまうという状況になりますので、もし特別支援のコーディネーターの先生がいらっしゃるんでしたら、やっぱり幼稚園の特徴というのをしっかり押さえて、それから指導していただきたいなと思っているところです。
あと、巡回相談も、実施主体が今のところいろいろでして、教育委員会がやっているものもあれば、保健所関係、厚労省関係からやっているところもあればということで、本当に特別支援としてといっても、クラス全体のことを考えたことを助言していらっしゃってくださればいいんですが、そうでなくて、この子のためにということで、個に焦点が当たり過ぎて、保育の場ではちょっとそれは無理でしょうなどというようなことも平気で助言されていく場合があったりということもありますので、やはりその幼稚園、保育園の特徴をしっかり、保育を知らない方が巡回相談をやると、保育者はとても困惑するという状況が現実、今ありますので、その辺も学習した上で、こういうのは巡回に出ていただけるといいかなと思っています。こんなですから、比較的保育形態とか内容も幅を持たせてやれるところですから、ユニバーサルデザインといいますか、そういう配慮の要るお子さんに工夫した指導法が、ほかのお子さんにも役に立つということは比較的しやすいところかなと思っていますので、是非、そういう視点で保育者の先生たちもいろんな工夫をしていただけるといいかなと思っています。
私なりに、最後に、特別支援教育の目標ということで、このほかにもあるとは思うんですけれども、考えていることを挙げてみました。
一つは、「共に育ち合う」インクルーシブ教育システムの理念の実現を目指すということで、個なら個のことだけに集中するのではなく、集団なら集団のこと、うちの集団にはついていけませんみたいなことではなくて、個と集団の関係性を大切にしながらクラス運営の中で障害のあるお子さんもどう育てていくか、その違いをどう認めながら共に育ち合えるかということが大事かなと思っています。
それから、やっぱり発達の可能性というのが非常にお子さんはあると思うんですけれども、幼児期からもう「このお子さんはこうなるでしょう」、「これしかできませんでしょう」みたいなことではなくて、発達の可能性はどのお子さんも持っていらっしゃいますから、やはり長期的展望に立ちながら、小学校に行くためにこれはどうしましょうというだけでなく、その先のことも親御さんと一緒に考えながら移行支援をしていくということが非常に大事かなと思っています。
そんなところですが、すみません、お時間を取りまして。
【宍戸主査】  金谷委員、ありがとうございました。幼稚園の教育の特色を踏まえて、様々な現状と課題を御説明いただきました。
それでは、金谷委員の御発表に対して、まず御質問のある方から御発言をお願いしたいと思います。前回と同様に、名札を立てて御発表していただき、終わりましたら名札をまた戻していただければと思います。
じゃ、最初に、横倉委員からお願いします。
【横倉委員】  金谷先生、ありがとうございました。
本当に私の学校は、ろう学校、聴覚に障害のある子供たちが通ってきている学校なんですが、幼稚部と小学部がある学校で、都内に四つのキャンパスを持っているんですけれども。一つ、その中で、「きこえとことば」相談支援センターという、新生児スクリーニングで再検査になったお子さんが、産科医に、あるいは耳鼻科のお医者さんから、うちの相談支援センターが紹介されて、乳幼児期のお子さんと、それから、赤ちゃんとお母さんが一緒に週に何回か通ってきて、その中で、聞こえない子供たちのコミュニケーションの方法とか、そういうようなことをその中で支援をしていく、そういうセンターを持っているんですが、今の金谷先生のお話を伺っても、非常に共感できるところはたくさんありました。0歳から2歳だと、聞こえないプラス肢体不自由であったり、あるいは、割と重い知的障害であったり、明らかに発達障害があったり、そういう乳幼児期から幼児に関して、重複のお子さんをどういうふうに考えていくかという。逆に言うと、0歳から2歳までの「きこえとことば」相談支援センター、うちの学校にあるところは、行くところがないから来ているという状況があるんですね。そのまま幼稚部に上がっていけるかというと、例えば、手話の理解とか、そういうコミュニケーションが取れるかどうかという部分が、つまり、保育、療育、教育に適応しているかどうかという部分で、なかなか難しくて、違う就学前の機関に行ったり、そのまま相談支援を続けていったりということなんですが。幼稚部あるいは幼稚園の中で、重複のお子さんをどういうふうに扱っていくかという、それは在園をして、どういう指導をしていくか、保育をしていくか、そういうことも含めてなんですが、先生のお考えなり、そういう事例がありましたら、教えていただけますでしょうか。
【宍戸主査】  金谷委員、お願いします。
【金谷委員】  重複のお子さんでも、ただ、その場合、例えば、嘱託医がいて、医療面での配慮が必要でとかいう場合があるとか、それから、器具を使わなければならないとか、そういう条件で受け入れてくださる幼稚園がどれだけあるかという問題はあるとは思うんですけれども、実際に受け入れていらっしゃるところも確かにあります。肢体のお子さんで、聞こえがちょっと難しいとか、知的に難しいというお子さんも受け入れていらっしゃるところも実際にはありますので、やはり親御さんと、どこまで器具を整えたりするかということで、そこは幼稚園がどこまでその配慮ができるかということによって違ってくるかなとは思うんですけれども。そこら辺の配慮ができれば可能である、医療系施設へ行かないと無理でしょうとは私は思わないんですけれども、そういういろんな器具とか、医療面とか、本当に必要な専門的な療育の面とか、それとの連携が取れるか取れないかで、ただそこにいていいですよというわけにはいかないと思うんですよね。だから、その辺次第だろうとは思うんですけれども。そんなことでお答えにはならないかと思いますが。
【横倉委員】  ありがとうございます。
【宍戸主査】  よろしいですか。
じゃ、続いて、村上委員、お願いします。
【村上委員】  よろしくお願いします。実は私、教職大学院を担当していますので、現職の教員が入ってまいります。昨日も、実は附属の幼稚園の教員と議論していたことと非常に重なりまして。あと、私、個人的には、小さい子供たちとやりとりするのが大好きなものですから、保育園まではなかなか行けないことがあるんですけれども、そういう関わりをしてきたので、先生がおっしゃっていたことがストンと落ちちゃったということです。
そんな中で、ほとんど各項目について質問はあるんですけれども、とりあえず一つです。アセスメントのところ、これはもうとっても難しいという。ある種、発達の差がありますし、しかも、先生たちにしてみると、経験則の部分が――やっぱり保育、幼稚園の中には長い伝統がありますから、なかなかそれを明確に、経験則とある種の発達的な知見を分けるというのは非常に難しい部分があるなというふうには感じています。
そんな中で、一つは、質問としては、保育、あるいは幼児教育の中で、幼稚園、保育園の中でもいいですけれども、ある種の、例えば、「遠城寺」とか、「津守」とか、そういう小さい子供を対象にした発達検査とは言わないまでも、そういう項目をどれだけ日頃から理解しながらと言ったらいいですか、頭に置きながら子供たちを見ているのかなというふうな部分ですね。これは多少、私、行くと疑問があります。そういうことにばっかり気になさっている先生もいらっしゃるし、逆に、「まあ、そのうち育つんじゃないですか」という。ただ、そのうち育つんじゃないですかという中には、時にはもう遅くなってしまうという。そういう場合は、大体親御さんにもうまく伝わらない。ある種、ある程度の、ある枠組みの中で伝えないと、親御さんも、そのうち育つからという、先ほど先生がおっしゃったようなことのままで3歳になったり4歳になったりしちゃってということが多々あることがあります。そういうところには、どのようなアドバイスを先生が日頃なさっているのか伺えればと思います。よろしくお願いいたします。
【宍戸主査】  金谷委員、お願いします。
【金谷委員】  3歳、4歳、私も、様子を見ましょうねというのでほったらかすということは、それは絶対しないですね。そういう言葉は使わないようにしています。なので、お子さんの困っている、さっき困難度ということで、もしかしたら、だから、お子さん自身がこういう点で苦労されているかもしれない。お父さん、お母さんが困るじゃなくて、お子さんがこういうので、こういうことがちょっと難しいかもしれませんねということで、実は行動チェックリストのようなものは私なんかは使っているんですけれども、「遠城寺」とかの発達検査よりも、もう少し園の生活の中で、どういう点でお子さんが困難を示したりするかということでのを扱っているんですけれども。やっぱりそういう発達も、まず保育者が発達をしていないと駄目ということが一つあるとは思いますけれども、その中でも、お子さん自身がこういうときにこう困ります、困っていますよということが伝えられるようなことというのがすごく必要かなとは思っています。
だから、例えば、もう小学校も通常級でいいですとおっしゃって、どう見てもこのお子さんは行ったら苦労するだろうということがあっても、そうおっしゃる方もいるんですけれども、そのときに親御さんにお伝えするのは、「お子さんが困っているかどうかということを見てください」ということだろうと思いますね。だから、そこら辺が、例えば、ADHDタイプのお子さんなんかは、おうちでは大抵いい子ですよね。というのは、1対1で関わっていたりというので、刺激が少ないから。ところが、集団に行くと、もう刺激が多いので、とても大変になっている。やっぱりそういうところを一つ一つ見ていただきながら、お子さんがこういうところで苦労されていますよというところを見ていただくというのをするというふうにはしているんですけど。
今、幼児期の簡易検査的なものが、すてきなものがないので、なかなかこれですと公式に言えるものがなくて、難しいところなんですけれども、そういう意味では、独自の行動チェックリストみたいなのを作って、一緒に協議するというふうにはしています。
【宍戸主査】  村上委員、今のお答えについて、何か意見等ありましたらお願いします。
【村上委員】  やっぱり院生たちと話をしていても、3歳ぐらいですと、後でキャッチアップしていく子供たちがいます。でも、その時点で誰も気にしなかった子供が、後で障害の問題が明らかになるような、そういう子供さんもいますので、ある、先生がおっしゃるような、簡易的でも枠組みを作らないと、ここは特別支援学校と違って集団ですよね。先ほどおっしゃるように、個々の関わりというのが非常に薄いですから、共通理解を周りの先生や親御さんにもしてもらうためには、簡易的でもそういうものがないと、非常に情報が伝わらないですし、親御さんの受容とおっしゃった点も難しいんだろうなということを、今、先生のお話を伺って理解しました。
【金谷委員】  そういう意味では、例えば、行動チェックリストなんかを作るときには、そのお子さんの時間的経過、時間軸だけの問題ではなくて、関係性の問題といいますか、そこをやっぱりしっかり捉えるような視点というのがすごく必要だということと、クラスそのものの、保育所の保育そのもので、配慮の必要なお子さんだけではなくて、ほかのお子さんたちもどうかというあたりも見ていく必要があるかなと思います。だから、こういう環境だから、このお子さんはこういうふうになりやすいんだというあたりもアセスメントしないといけないかなとは思っています。
【宍戸主査】  それでは、もう一人、時間の関係で、加藤委員までお願いします。
【加藤委員】  すみません、最初に説明していただいた資料のところで、ちょっと気になることが一つあります。そこからよろしいですか。その後、今の発表について。
【宍戸主査】  はい。
【加藤委員】  一つは、資料4-2、これまでの示し方から改善の方向性ということで、困難さの例を具体的にということで説明がされているんですが、ここで情報処理のところで、継次処理が困難というふうに書いてあります。上も下も。確かにシリアルな処理が苦手、もちろん苦手もあるんでしょうけど、もっと彼らの場合に苦手なのは、同時処理ですよね。同時にマルチにいろんな処理をしなきゃいけない、対応しなきゃいけないというところの方が、むしろ苦手感が高いのではないかと思うんですね。ですから、あえてここで継次処理が困難と特記するのであれば、私はむしろ同時処理が難しい、困難と言った方が、より現実的ではないかなというふうにちょっと思った次第です。
【宍戸主査】  その点については、また今後の議論の中で取り上げたいと思います。質問の方で、まだありますか。じゃ、どうぞ、お願いします。
【加藤委員】  もう一つ、すみません。その同じ資料の幼稚園の例のところで、見えにくく行動が制限される場合とあるんですが、彼らの場合に、Visual Acuityといいますか、視力の問題ではなくて、Visual Abilityがむしろ課題になっている子供が、むしろそっちの方が多いんじゃないかと思うんですね。ですから、そういう意味では、Visual Abilityの方をどうするかということを、もう少し幼児期から押さえないといけないんじゃないか。視力の問題ではなくて、いい視力を十分に上手に機能的に使えていないという、学習が成立していないというところに彼らの適応の困難さみたいなものが潜んでいるような気がするんですね。ですから、そういう意味でも、そこをしっかり押さえないとというのが一つです。すみません、本題に入ります。
【宍戸主査】  後ほどの議論の中で、また取上げさせていただきたいと思います。
【加藤委員】  あと、金谷先生の中で早期支援コーディネーターという話が出てくるんですが、実は私は福祉系の人間で、この言葉、こういう人は知らないんですが。いずれにしろ、今、世の中、いろんな意味で、私たちがそんなこと心配する必要はないのかもしれないんですけど、財政不足の中で、いろいろ苦慮しているわけで、そういう意味では、例えば、幼児なら幼児のときに、福祉と教育がもう少しリンクすべきじゃないかと思うんですね。
例えば、福祉の方では、平成24年から障害児相談支援事業所というものが立ち上がっているんですね。これは平成24年スタートですから、まだ決して十分ではないとしても、徐々にこれが充実する方向に向かっているわけで、だから、やっぱりそういう人たち、地域の中にそういう子供の育ちに関して相談に乗ってくれる人と場所があるという、そういうものを作っていこう、縦横連携というんですけれども、厚労省ではそういうふうに呼んでいるんですけれども、そういうことが今、積極的に進められようとしているときに、そのことと、今、幼児期の教育支援という問題が、それぞれ非連続に進められているということの効率の悪さ、コストの問題も含めて、やっぱりロスは大きいだろうと。
そういう意味では、是非その辺をリンクさせながら、いい意味で競争もあるんでしょうけれども、やっぱりそれぞれが勝手勝手に知らないところでやっているという話じゃなくて、やっぱりリンクしていくべきだろうなと思うんですけど、その辺は、例えば、金谷先生はどういうふうに思われているのかということをちょっとお聞きしたいなと思います。
【宍戸主査】  それでは、その早期支援コーディネーターのところだけでも、よろしくお願いします。
【金谷委員】  これ、課の方で早期支援コーディネーターの資料ありますか。
私も、福祉とか、医療とか、とにかくいろんな機関が連携しながら、特に小さいときは必要と思っていて、そういう連携が取れるシステムを是非作るべきですというお話をして、特にそういう情報ネットワークがあって、教育ができるようにしてほしいというのを言いましたら、早期支援コーディネーターというのが、平成25年からでしたっけ、もう設置されているということで。ただ、全国で140何か所でしたか。
【丹野調査官】  モデル事業で。
【金谷委員】  モデル事業でということですよね。というので、140何人でしたっけ、そのぐらい今いらしてということで、ちょっとずつそういうことが始まっているということで、次年度予算でももう少し増やすということでされているということで、大いに期待したいなとは思っているところなんですが。ただ、それが、今はモデル事業でしょうから、どこにいて、どういう人で、何をやっている人かというのは、どこか、相談する側が分かりやすいようにしていただきたいというのは、私の要望です。
【加藤委員】  これ、コーディネーターの資格はどうなっているんですか。
【宍戸主査】  それでは、事務局の方で、分かる範囲で補足説明をお願いします。
【太田特別支援教育課課長補佐】  事務局から若干補足をさせていただきたいと思います。
文部科学省では、国の事業といたしまして、早期からの教育相談支援体制事業というものをモデル事業として実施しております。現在、40地域を指定しまして、各地域で、それぞれの地域の状況に合わせて、教育と保育、福祉、保健、医療などと連携しながら、その際の連携推進の在り方ですとか、情報提供の在り方、相談会の実施ですとか、就学移行のための支援の充実方策などについて取組を行っていただいているところでございます。
今、金谷先生からおっしゃっていただきましたが、各自治体の方で、いろいろ地域の実情に応じて工夫してやっていただいておりますので、就学相談に関わる専門的スタッフを早期支援コーディネーターとして例示をしておりますが、いろんな役割に応じて、その専門の方に来ていただいているというような形で、各地域によって様々な方が活用されるというふうに把握しております。具体的な事例は今日は持ってきておりませんので、紹介はできませんが、次回また御紹介させていただきたいと思います。
【宍戸主査】  何か形が決まっているものではなくて、まだ試行的に各地域で実践を試みているというふうに御理解いただければと思います。
でも、加藤委員がおっしゃったように、福祉と医療が効率的にそういうサービスを利用できるように、しかも、そのサービスがあるということも分かるように現場に伝えるとか、そういうところは、今とても求められていることかなと思います。
それでは、金谷委員の御発表についての質疑は、ここで一旦終了させていただきます。
続きまして、今日の検討課題であります、今まで資料2の中にあります検討事項(案)の中の丸2、丸3、丸4については一通り触れていただきましたので、本日は丸1と丸5を中心に御議論いただきたいと思います。
丸1につきましては、先ほども話題になっておりました、各教科等の指導上の配慮ということで、これまでと違って、小中学校の各教科の方にも何らかの示し方ができればいいのではないかということで、案の案の段階だと思いますけれども、出ているということです。それについては、継次処理よりも同時処理的なことの方がいいのではないかという御意見もありましたけれども、そういうことも含めて御議論いただければと思います。
この第3回の方は3時までの予定ですので、これから時間を有効に活用して、多くの方の御意見を頂ければと思います。どうぞよろしくお願いします。
じゃ、安藤委員、お願いします。
【安藤委員】  ただいま議長の方から、各教科等における障害に応じた配慮事項についてということで、私の方から、意見になるかと思うんですけれども、申し上げたいと思います。
資料で今回御提示いただいたことについて、基本的に私は賛成する立場にございます。例えば、一番上の、これまでの示し方が、それぞれ障害による考え方でありますけれども、例えば、私の立場から申し上げると、肢体不自由においては、体育館における実技の指導、これは確かに難しい。肢体不自由だから。家庭科における実習、あるいは、音楽においてリコーダーをどううまく押さえられるか。多分、こういうことは、小学校の先生方が指導するときに非常に大きな課題であるから。そういう意味では、非常に重要な視点だと思うんですけれども。
しかし、逆に見ると、肢体不自由でも、特に脳レベルの疾患である脳性麻ひ、脳性疾患の子供たちが非常に多うございまして、こういう子供たちは、当然、肢体に不自由がありつつ、例えば、知覚や認知などの課題であるとか、あるいは、行動上の様々な特性を有すという、様々な障害を随伴することが考えられます。そういうことについては、じゃ、従来の障害別で見た場合には、どうしても落ちやすいということですね。
加えて、通常学校の先生方は、やっぱり障害がある子供たちを理解するときに、まず何を手掛かりにするかというと、可視性なんですよね。この子は肢体に不自由がある、だから、学習の困難は肢体不自由との関係で理解する。それは当然だと思うんです。ところが、今申し上げたような観点で申し上げると、実は、肢体不自由に起因する問題もあるんだけれど、むしろそうでないところに多くの課題がある。例えば、国語とか算数とかということにも当然あるわけですね。知覚や認知の課題がある子供、どうしても、そういうところに目が行かない。つまり、困難さに気付かないということなんですね。先生方が困難さに気付く場合は、恐らく指導上の困難さで見ていきますから、子供の学習上の困難さにやっぱり目を向けてもらわなければならないということを考えたときに、今申し上げたように、右側のように、例えば、困難さ、子供が学習上、あるいは生活上、どんな困難さがあるのかという視点で変えていくことで、多分、ステレオタイプ的な障害の理解に基づくものではなくて、やっぱり困難さに着目した捉え方ということの視点を提示するという意味では、非常に有効だと思います。
ただ、これも、この中身というのは、実は、いわゆる困難さの問題と、それから、困難さがどういう背景から来るのか。つまり、先生方は、その困難さの背景の問題をどう捉えるかということと、その困難さの原因に応じた手立てという、今度は困難さをこの三つの階層で捉えて整理する必要ということもあるので、示し方は、そこは微妙だなと思います。
ただ、一番重要なのは、まず子供の学習の困難さに気付いてもらう。それは、従来の障害のカテゴリーによらずに、やっぱり子供の一人一人の実態に基づく困難さですね。そういうことに是非変えていっていただくと、より子供の立場に立った見方というのが先生方に提供できるのかなと思いますし――最後になります、ごめんなさい、長くなりまして。
ですから、そういう意味でも、例えば、今、各教科等における障害に応じた配慮事項という言い方も、これも変えなきゃならないんじゃないかと思うんです。障害に応じた配慮事項になっちゃうと、どうしたって障害そのものに注目してしまうので、そういう修正も要るのかなと思いました。
以上です。長くなりました。
【宍戸主査】  はい。困難さの捉え方もいろいろあると思いますけれども、その困難さで示すということにまずチャレンジしてほしいという御意見かなと思います。
川合委員、お願いします。
【川合委員】  失礼いたします。私も、今、安藤委員がおっしゃったように、やはり困難さに対してどういうふうに対応していくかという観点で物事を捉えられるようにしていくやり方って非常にいいなと思っております。
一方で、いわゆる困難というところだけが前面に出てしまうと、じゃ、今まで障害がある子に対してというところの観点というのが、ひょっとしたら学校の先生方からドロップする可能性もあるのかなというところがありまして。ですから、障害というところも含めて、障害があるかないか分からないんだけれども困難があるよねというところと、その両側が何かうまく記載できるような形というのも、何か工夫が必要かなというふうに感じました。
例えば、障害の有無にかかわらず、何か困難がある場合であるとか、そういうような表現であるとか、あとは、どうしても一人一人の先生がこういうふうに対応しますよというところと、あとは、やっぱりチームとして特別支援教育コーディネーターなんかにも相談しながらというところの話というのも、どこかに明記するという必要もあるのかなという感じがしました。
そういうふうに困難な場合にはいろいろやるんだけれども、でも、これだけいろんな困難の子が学級にいて、じゃ、それぞれの困難に対して、私はどこまで対応したらいいんだろうかみたいなところで悩まれる先生もひょっとしたらいらっしゃるかもしれないのでというところで、自分だけではなくて、チームとしてどういうふうに取り組んでいくのかというところの観点というのも大事ですよねという話は、どこかで入れる必要があるかなと思いました。
あとは、やはり安藤委員もおっしゃったんですけれども、表面上に出てくる困難と、その背景にある困難というところですよね。このあたりをやはりうまく表現できる必要があると思いますし、あとは、最近、私が巡回なんかで特に思うことなんですけれども、ある程度目立つお子さんについての対応というものは、学校の先生方、結構上手にやられているところ――もちろん、体制いかんにもよりますが、あるんですが、例えば、いわゆるスローラーナーぎみのお子さんであるとか、例えば、私、言語障害ですけれども、言語障害、例えば、吃音(きつおん)があって、言語能力はあるんだけれども、うまく表現できないであるとか、やはりそういったところで、一次的な障害として困っている部分と、例えば、吃音(きつおん)であれば、からかわれてという経験があって、何か私がしゃべったときに、また変な目で見られるんじゃないかというところの心理的な二次的な部分ですね。そういったところへの影響というところも、やはり何らかの形で考慮する必要があるだろうと思いますので、そのあたりも含めて、困難さというところに含めるといいますか、そういった形での検討というのも必要かなと思いました。
以上です。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
それでは、幾つか名札が立っていますので、順番をつけたいと思います。大内委員、それから、村上委員、尾崎委員、そして、中田委員、そんな順番でお願いしたいと思います。
【大内委員】  それでは、お願いします。安藤委員、川合委員が述べられたことと重なるところがあるんですが、学習の過程で考えられる困難さを示すということは、第一義的には、小学校の学習指導要領ということでは、適切ではないかなと思います。
ただし、お二人の委員がおっしゃっていましたように、やはり同じ見えにくいということでも、その原因というか、背景は様々異なっていますので、その背景が分かっていないと適切な対応はできないということで、機械的に見えにくいということだけを捉えてしまうと、生半可な知識で間違った対応をしてしまう可能性というのは十分あるわけです。ですから、そこのところをどういうふうに対応していくか。そういう意味では、障害別の配慮の仕方とリンクさせていくような仕方も必要かと思いますし、又は、もう少し別のガイドブックのようなものを用意して、見えにくさについても、いろいろ背景はあるのだ、それに応じた対応ということが必要なのだということを丁寧に示していって、小学校の担当する先生方にもそれなりの力を付けていただくような方向を示していく必要があるのではないかと感じています。
以上でございます。
【宍戸主査】  大内委員、先ほど加藤委員からありましたVisual Abilityということもありましたけれども、何かその辺で御意見があれば、補足してください。
【大内委員】  例えば、弱視(low vision)と言われているお子様でも、見えにくさと言われているお子様でも、単に視力が弱くて、低視力のために見えないのか、昨日も知ったケースなんですけれども、読字障害があるようなお子さんで、よく文字が読めない、しっかり判別ができないというお子さんですが、頭を固定してあげたらしっかり見えたと、その子が持っている相応の視力値が出たというようなケースがあって。ですから、単に視機能だけの問題ではなくて、体の動きの問題とか、それから、脳内での処理の問題とかも様々あるわけですので、その辺がうまく判別できないと、結果として同じような対応をすることもあるかもしれませんけれども、まさしくそのとおりの適切な対応がなされているとは言えないような指導をしてしまうことも出てくるかなと思っています。ですので、見え方でもそんなふうにいろいろ違うということです。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
それでは、村上委員、お願いします。
【村上委員】  2点ほどです。
一つは、今までの委員の方々がおっしゃっていたように、背景にある病理的なものとか生理的なものをある程度教員も理解しておかなくてはいけないということは、どうしても外せないと思います。かつての国際障害分類と今の生活機能分類からすると、どうしても生活機能分類の方が表に出てきて、背景にある様々な機能・形態障害と、そこから出てくる能力障害との関係が最近どうも十分に議論されない、そういう印象を持っています。これは養成課程でも同じことが言えると思っております。ここについては、やはり教員の方々にも理解していただくということが必要だと思います。
もう1点は、様々な困難さということなんですけど、病弱教育の立場からいきますと、実は、子供たちの様々な教科における困難は、その方の日内変動も含めた病状によってかなり変化するという、そういう様相を持っています。例えば、糖尿病的な様相を持っている方ですと、朝ならば調子はいいんだけど、その後、だんだん昼にかけて低血糖症状が出てきたり、逆に、高血糖の状態になってくると、今までできていたものができなくなっていくと。その逆もあります。そうなると、それを見ている教員の方は、さっきまでできていたのに、今はどうしてできないんだというような、変化の様相が背景にあるメカニズムとの関係で理解できていないと、誤った対応をしてしまう、そういう可能性もありますので、困難さは固定したものではなくて、それが変化するという様相について、やはり考えていただけるような内容が欲しいと思います。
以上です。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
じゃ、尾崎委員、お願いします。
【尾崎委員】  今度の学習指導要領の改訂で大きなことは、通常の教育の場合、何を学ぶのかとか、どのように学ぶのかということも含めて一体的にというようなことをよく言われているように思います。配慮事項についても、何を学ぶのか、どのように学ぶのかということにも関連するような内容も必要ではないかなという意見です。特に、どのように学ぶか、例えば、アクティブ・ラーニングということが言われているんですが、これは活動させればいいというものではないということは、もう十分皆さん分かっているんですけれども。でも、アクティブ・ラーニングがあった場合、障害に応じてはいろんな困難が生じるというふうなことを考えた場合に、その際の配慮はどういうふうにしたらいいのかとかいうことも考える必要があるのかなというのが一つ目です。
それから、もう一つ、準ずる教育の場合は、特に、インクルーシブ教育システムにおいては、全く同じ内容の教科とかものを学んで、いつでも、講習を分けてもつながりのある教育ができているというようなことが重要かなと思うんですが、そのときに重要なのは、やっぱり教科の学びをその教科の目標に沿ってどれだけ学んでいるかと。子供たち一人一人が、障害のある子が学校で。そこをきちっと見ていかないと、どういう学びをしたから、次の別な場所に行っても、次の学びとして、こんな学びが必要だという連続性というか、接続性とかいうのができないんじゃないかなというふうに思うんですね。そういうことも含めて、これから育成すべき資質・能力を中心に教科の目標・内容が定められていくんですが、どのような学びをしたか、それをどう評価するのか。多分、学習評価をするというふうになっていくんですが、この学習評価の工夫も、障害種によってはなかなか見えにくい部分というのがある。でも、それも、じゃ、見えないからしなくていいということではなくて、やっぱりそれは学習評価は学習評価としてきちっとしなければいけない。そのときの配慮事項もあってもいいんじゃないかなというふうなことでございます。
以上です。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
じゃ、中田委員、お願いします。
【中田委員】  お願いします。高等学校については、今後整理予定ということなので、ちょっと先走ったことかもしれません。
高等学校でやっている経験からしますと、教員からの相談で、こういう生徒がいて困っているという、教員の困り感みたいなことが出てくると、教室に行くと、確かに、学習状態に入っていないということがありまして。先ほどから出ている意見と同じところは、その行動の裏側ですね。やる気がないとかという、そういう否定的な定義ではなくて、何かやろうとしているんだけど、うまくいっていなくてという、その背景に障害があるのか、家庭的な状況があるのかという、複数の要因をきちっと分析して、最後なんですけれども、こういう配慮が必要ですよというところもあるんですが、私の場合には、こういう配慮をして、こういうふうにうまくいった例があるというところまで出さないと、教員としての動きはなかなか難しいと。その配慮があることは知っているんだけど、手を出せないと。しかし、うまくいったという教員に聞いてみたらという形のつなぎ方でいくといいと。つまり、こういう配慮によって、こういうふうに意欲が出てきたというところまである程度示せることが原動力になるのではないかなと思いました。
以上です。
【宍戸主査】  学習指導要領で記載するか、解説で記載するか、今度は指導資料で記載するか、その辺も含めて考えていく必要があるのかなと思います。
じゃ、一木委員、金谷委員の順でお願いします。
【一木委員】  今まで各委員がおっしゃっておられましたように、今回の子供の困難さに対応して工夫を示していくという示し方、また、その考えられる背景に対応させながら示していくということについて、私自身も賛成の立場です。
それに加えまして、今回、こちらにお示しいただいているものは、あくまで例示ですよね。この例がどのように導き出されるのかということをしっかり示すということが大事だなと思っています。つまり、各教科における配慮ですので、各教科の目標が何なのか、この授業の中で子供から引き出さなくてはいけない姿が何なのか、いわゆる規準の理解を教員がしっかりしているかどうか。その規準に照らしたときに、この子の実態を照らしたときに、どのような学びにくさが生じるのか、それを踏まえ、どう手立てを講じるのか。その結果、導き出された例がこちらですというようなところを、何らかの形で示していく必要があるなと感じています。
と言いますのも、例えば、肢体不自由のお子さんですと、体が動きにくいので、体育は全般的に難しいだろうというような構えが学校の現場の先生にあられたり、いやいや、実は体育の目標をしっかり分析すると、肢体不自由の子供でもしっかり学ぶことができるというものもたくさんあるわけですね。
それから、こちらの例の中にも、例えば、算数科ですか、目的に応じて折れ線グラフで表すことが難しい場合、こういうふうな対応をしますよという例示をされていますけれども、これは算数の授業の中で、子供自身がグラフに表記できるということが非常に重要な活動である、目標達成に必要な姿であるという場合、こういう対応になっていきますけれども、算数の目標は別にある、その過程でグラフを活用するという場合においては、別の手立てを講じることがより目標達成に迫るという場合もあるわけです。
ですので、規準を踏まえて学びにくさを把握していくんだ、背景を踏まえて手立てを講じていくんだという考え方を示した上での例示になるといいなというふうに考えていたところです。
以上です。
【宍戸主査】  例示をするということでも、読み手はどういうふうに受け止めるかということで、もしかするとワンパターンで受け止められたら弊害も生じるかもしれないということがあるかもしれません。
金谷委員、お願いします。
【金谷委員】  障害別にという場合は、例えば、弱視の方とか、難聴の方という場合は、学校外で多分診断を受けられてとか、そういうことでいらっしゃるという場合になるんだろうと思うんですけど、困難さといった場合には、誰がアセスメントするんでしょうかという問題になるかなと思うんですね。そうすると、多分、現場の先生たちが、今のこの状況で困難がということを見いだしていくということになるんだろうと思うので、そこら辺の見立ての仕方の問題が非常に難しいだろうと。こういう考え方でいくということに対しては賛成なんですけど、その見立てに関する注意といいますか、それをきちんとしておくことが必要ということと、それで、現場の先生がなさるときに、ここばっかり強調されると、悪いとこ探しみたいになってしまってということがあるので、中田委員がおっしゃったように、やっぱりうまくいく、その子の強みといいますか、そちらにも焦点を当てられるようにということを、きちんとどこか注意書きではないですけど、入れておくということが必要かなと感じました。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
続いて、山中委員、お願いします。
【山中委員】  調和小学校の山中です。小学校の立場からなんですけれども、このように各教科の中で対応を示していただくというのは、今後もこういうことになれば、とても大きいことだと思うんですね。これ、小学校の例で、私も、済みません、時間がなくて、あんまり十分に見られていないので、こういう場合はどうなのかというのは、もう少しあるのか、整理の仕方というのは、もう少し具体的に読ませていただいて考える時間が欲しいなと思うんですけれども。
小学校と中学校、これから中学校ということですけど、違うのは、小学校の教員というのは、全部の教科をほとんど一人が教えるわけなんですね。中学校の場合ですと専科制ですから、社会の先生は社会を見ればいい、国語の先生は国語を見ればいいということなんですけれども、小学校の場合は、社会も国語も体育もやるというのが一応前提なので、一人の先生が見て分かるような、一人が全部やっても分かるというような考え、そこが小学校と中学校が違うかなと思います。
このように示していただいて、困難のところの、何人かの委員がおっしゃいましたけれども、この状態ということだけだと、それがもともと出てくる原因というのがどういうことなのかということが分からないと、もしかして適切な対応ができない、もしかして反対に不適切な対応になる場合というのがあるかなというのは、私も往々、今、学校の現場にいて、子供が出している状態だけで何か対応を考えようとしたときに、深くアセスメントができていないで教員だけが対応すると、ちょっと違うよというようなことが間々あるというようなことがあるということだけ、ちょっとお伝えしておきたいなと思います。
【宍戸主査】  それでは、田中委員、堀江委員の順でお願いします。
【田中委員】  田中です。まずは、この丸1の各教科等の困難さについてなんですけれども、先ほども出ていましたように、やはりアセスメントと裏返しの記述が必要なのではないかなと思います。ただ、総則等にどういうふうに載せていくかということに関しては、例示を頂いたような形になるのも仕方がないかなとは思うのですが。例えば、資料4-2の国語科の例示の中の最初の、文字を目で追いながら音読することが困難なお子さん、これらについては、かなり若手の教員でもすぐに分かると思うのですが、3番目の、自分の立場以外の視点で考えたり、他者の感情を理解したりするのが困難な場合、これは、よく子供を見ていないと、例えば、自閉的な特徴のあるお子さんの心の理論の課題であるとかにまでは行き着かないのではないかなと思います。むしろ、文の理解ができていないのではないだろうかだとか、そういう、もうちょっと違う次元のところで考えてしまったりするのではないかなと思いますので、各教科で出てくる困難さの見え方をまず例示し、そして、それから考えられる背景であったり、特にこれは通常の学級の困難を抱えている子供たちを指導する場合に、そういう裏返しの記述が必要なのではないかと思います。これを、先ほども申し上げたように、総則に出していくのか、それとも、全然別のところで付録のようなもので出していただくのかというようなことがあるかと思います。
それから、検討事項の丸5についてもお話ししてもよろしいでしょうか。
【宍戸主査】  はい。
【田中委員】  共生社会の形成に向けた交流及び共同学習の観点から、二つお話ししたいと思います。
私は市の教育委員会に勤務しておりますので、教育委員会と、それから、例えば、都立の特別支援学校との副籍事業等を担当しています。そこで感じましたことは、副籍事業ということで、かなり障害の重いお子さん、公立の小中学校にいらっしゃらないで特別支援学校に行っているお子さんたちの事業を始めて、その中で双方の保護者と子供の理解ももちろん進んでいったと思います。
こんな事例がございました。非常に重いお子さんでして、私どもの市の中にある就学支援の施設ではフォローできなくて、市を離れて都の入所・通所施設を利用していたお子さんが、副籍事業を6歳、小学校入学から始めたんですけれども、空白の期間がございました。やはりゼロ歳から5歳までの間に地域を離れていて、その間に公園などにいても誰からも声を掛けられなかった、そういう空白の時間がございまして、やはりそこからフォローしていかないと、6歳からこういう副次的な籍を置くような事業を始めても、それは遅いなと思いました。そうしたときに、では、どんな解決方法があるかということなんですが、例えば、フィンランドでやっているような新しい形の乳幼児支援、そのような前提があって、地域との交流を図りながら義務教育段階を迎えていただければよいのではないかなと思いました。
それから、このことに関しての二つ目ですが、公立学校の特別支援学級では、かなり教育委員会が主導いたしまして、交流及び共同学習を必ずやっていくようにというふうにしています。そうしますと、通常の学級に併設した特別支援学級では、通常の学級の中に交流委員会というのを設けまして、そこで子供たちとの生活場面での交流、それから、子供によっては、算数とか、数学とか、英語とか、得意な教科の交流ができるというような実態がございます。ですので、その先には、場合によったら、通常の学級から特別支援学級、また特別支援学級から特別支援学校、さらに、その逆、特別支援学級から通常の学級への転学というようなことも見据えたときに、この交流及び共同学習は不可欠ではないかと思います。
そのようなことと、それから、全体についてなんですが、これは教育課程の委員会ですので、先ほどのお話も、幼稚園を中心としたお話になっていく、これはもう仕方がないことだとは思いますが、私は小学校の教員から自治体の職員になったときに非常に感じましたのは、自治体の行政の中では、やはり福祉との連携というのが比較的やりやすくて、三鷹の場合も、公立の保育園は持っているのですが、公立の幼稚園が今はございません。そういう中で、やはり就学前の子供たちの支援を考えていったときに、保育園と幼稚園の連携というのが非常に大切なのですが、なかなかアプローチしにくい現実がございました。ですので、ここでの議論とはまた違うとは思いますが、特に就学前から子供を考えるときには、やはり文部科学省と厚労省との連携の中でのこういう委員会というようなものが是非設けられたらよいかと思いました。
以上です。
【宍戸主査】  先生、フィンランドの乳幼児支援というのを、簡単に概要だけ。
【田中委員】  ネウボラでしたっけ。これはもっと詳しい委員さんがいらっしゃると思いますが、ある乳幼児に対して、特定の保健師なり人物が担当者として付くそうなんですね。それで、就学後までの接続のところも決まった担当者の方が保護者と一緒に考えてくれますので、例えば、そのお子さんに障害があるとかないとかというようなところで、日本の場合には、保護者が一人で直面しながら、それぞれの場面でそれぞれの専門家とやりとりをするのですが、フィンランドの場合には、特定の方が一緒に考えてくれるので、保護者も客観的な意見を取り入れやすいというふうに聞いたことがございます。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
議論の中では、1番と5番を意見を頂きたいと思うんですが、時間の配分がうまくいかなくて、5番についても、併せて意見を頂きたいと思います。
堀江委員、お願いします。
【堀江委員】  先生方のお話を聞いていまして、就労支援の立場というか、現場でも同様のことが起きているなと思います。企業の方が採用されるときに、障害種別でその方を理解しようとすると、非常に困難さが出てくる。身体障害ということで理解したけれども、実は認知的な課題があるとか、そういうところで非常に共通性があるなと思ってお話を聞いていました。
視点としては、どんな配慮があれば、その人が力を発揮できるかというようなところで共通しているなと思っているんですけど、この各教科における障害に応じた配慮事項の次のページ、困難さの状態に対する配慮の意図プラス手立てということで、例示が書いてあるんですけど、この事例は、今後収集はまたしていかれるんでしょうか。この事例については、何かアンケートとかして、もっと取っていかれるんでしょうか。
【宍戸主査】  事務局でお願いします。
【太田特別支援教育課課長補佐】  事務局から失礼いたします。今回、あくまでもこれは例という形で示させていただきましたが、また中学校、高校についても検討する必要がございますし、教科の内容というのは本当に多岐にわたっておりますので、これから、この審議会の議論、その後、また学習指導要領の改訂作業、それから、学習指導要領の解説の執筆というような形で、少し長い期間をかけて作業していきますので、その中で教科ごとに、私たち特別支援教育だけではなくて、文部科学省の中でも教科指導の側とも連携しながら、具体的な例を作っていきたいと思っております。
もう1点だけ補足させていただきますと、本当にこれはあくまでも例ですし、先ほど委員からおっしゃっていただいたように、見えにくいにもいろいろ背景があるということで、そこももう少し分析的に、情報入力の段階で見えにくいのか、その次の過程で見えにくいのかといったことももう少し詳しく考えながら、やっぱり一番大事なことは、全ての先生に理解していただくということだと思いますので、その際に、どれぐらいの分量で先生方に伝えたらいいのかというような制約の中で示していく必要があるかと思っておりますので、これから、今日頂いた意見も踏まえながら、今後検討していきたいと思っております。
【堀江委員】  これを拝見していて、今おっしゃったように、障害のことを特に学ぶ機会がなかった先生方も従事していかれるということを考えると、例えば、体育科のところで見たときに、勝ち負けにこだわって、感情を抑えられなくなったというところが、本人の育ちの問題とか性格の問題ではなくて、実は脳の問題があるだとか、ワンクッション、先生たちの中に、こういった背景があるんだよという、こういうものが示されているだけでも、その行動の背景にどんな障害があるかという気付きにつながるので、こういったテキストを是非充実させていただけるといいなと思って拝見しておりました。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
幾つか名札が立っていますので、順番を決めたいと思います。大谷委員、加藤委員、尾崎委員、川合委員、そして、安藤委員の順でお願いしたいと思います。ごめんなさい、品川委員のが見えませんでした。品川委員も、最後になりますけれども、お願いします。
じゃ、大谷委員からお願いします。
【大谷委員】  中学校を代表してきております。今までの議論は、中学校の先生がどう思いながらというような思いで聞いていました。やはり先ほども出ていましたように、中学校は特に指導上の困難という目で見がちです。そういう意味で、困難度の背景ということをきちっと示していただくことは、中学校の我々としても、教師が大きな理解をする一つの大きな指針になるかなと思っています。
我々も、校内研修の中でも、背景を是非考えろというふうな言い方はもちろんしているわけなんですけど、特に中学校では、やっぱり二次的な障害がかぶさってきてしまうというのが、一つ、本来の障害として特性が隠れてしまうという、この辺についても、やはり背景の中で、今、事務局の方からありましたように、どういう背景の中で記述すべきかというようなこともあったかと思うんですが、中学校としても、困難の背景が更に複雑になってしまっているということも、やはり中学校の中では記述はそういう部分も必要かなと思っています。特に、気付きが必要だという意見もあったと思うんですが、どう気付くかという先生方のものを一つ、こういう場の中で、こういう困難背景があるということを是非とも、そういうことが示されれば、気付きの一つの材料になると思っています。
それから、金谷先生の方から出たと思うんですが、強みというものは、それもやっぱり大事じゃないかなという。困難性だけでなく、こういう良さを十分引き出してほしいと。困難よりも、そういう強さを持って困難性を薄めていくということも、これから中学生が世の中に出ていくためには、そういう強みを持って、自信を持ってやっていけるんだぞという部分も必要かなと思いました。
それから、5番目の方の障害者理解について何ができるかということになりますが、今回、教育委員さんの不適切な発言が本県であったかと思うんですが。教師自身の障害の理解というのがどれほど本当にあるのかどうかというのも大事かなと。やはり教員の姿を見て子供たちは理解をするわけです。教員がどういう対応をしていくか、それが一番子供たちの障害者理解というのには一番身近で、大事なものだというふうに思っているんですよね。もちろん、それはもう既に教員というのはそうできているという前提のもとでの話はあるかもしれませんが、もう一度我々も障害者に対してきちっとした理解をしなくちゃいけないということも、やっぱりあるんじゃないかという。今回の発言を聞いたときに、大人があの程度なのかと。教師自身がきっちりと理解をして、子供にきっちりと対応する、その手本を見せるということが、子供にとっての大きな障害者理解だというふうに思います。そういうことも、我々教師自身もきっちりとやれよと。障害者についての理解を示すべきだというふうに思いました。意見です。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
加藤委員、お願いします。
【加藤委員】  ありがとうございます。5番について、ちょっと私の見解を申し述べさせていただきたいと思います。
今、大谷委員がかなりオーバーラップした形でおっしゃっていただいたのであれですが、まさに交流とか共同学習というのは、子供の育ちに是非資するものであってほしいと願うわけですけれども。ところが、子供の年齢が低ければ低いほど、まさに大人自身――大谷委員は先生の話をされましたけど、私はもっと親がどういう見解を持っているか、そういう出会いをポジティブに捉えているような親のもとでこういう経験を子供が積んでいけば、間違いなくそれはポジティブな意味を持っていくと思うんですが。当然、子供はあったことを家で親たちに語るわけですよね。そのときに、親がどういう姿勢でそれを受け止めるのか、ポジティブに受け止めているのか、ネガティブに受け止めているのか、それによって、子供の今日一日あった出会いだとか気付きの意味が全然違ってくると思うんですね。ですから、そういう意味では、やはり周りの大人、教師もそうですし、保護者にまでそのことのポジティブな意味をしっかり伝えた中で、こういうことをやらないと、それこそ取り返しのつかないダメージを、かえって偏見・差別を根付かせてしまう、そういうことにもなりかねないと思うんですね。ですから、そういう意味では、そこの部分にも是非触れていただきたいなと思います。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
じゃ、川合委員、お願いします。
【川合委員】  失礼します。5番の方で意見を申し上げたいと思います。
交流及び共同学習についてなんですが、ほかの委員の先生がおっしゃっているように、いわゆる障害のない人たちが、障害のある人たちと関わることでの学びというのは非常に大きいと思いますので、これはやはりインクルーシブ教育システムの構築の上からも非常に大事なことだろうと思います。
一方で、ふと立ち止まって考えたときに、じゃ、この障害のある子にとっての交流及び共同学習って何なんだろうみたいなところですよね。ですから、障害のある子供にとって、この交流及び共同学習の機会ってこういう学びなんですよというところが余り全面的に出ていないような気がしまして、障害のない子にとっては、こういうちょっと多様性のある子と関わって、こういう学びになったってあるんだけれども、それを逆転して考えたときの、障害のある子にとっての学びって何なんだろうというのは、ちょっと考えていかないといけないことかなというふうに一つ思います。
あとは、交流及び共同学習、以前は交流教育というふうに言われてたわけなんですが、いろんな取組例なんかを見ましても、かなり交流の部分に重きが置かれているように思われます。もちろん、交流の部分というのも大事ですし、例えば、特別支援学校との交流となりますと、やはり学校が離れていて、どうしても物理的な距離等から、交流ということが年に数回しか行われないということもあるかと思います。その中でのICTの活用は非常に重要だと思いますが、一方で、例えば、特別支援学級のお子さん、同じ学校の敷地内にいるお子さんの中でも、やっぱり交流にとどまってしまって、なかなか共同学習、例えば、教科であるとか、そういったことでの共に学ぶという観点というところがなかなか育っていないといいますか、根付いていないのかなという気がいたします。ですから、例えば、交流及び共同学習と考えたときに、もちろん一つのものではあるんですけれども、より重いお子さんについては交流メーンというところ、あるいは、軽いお子さんに関しては共同学習メーンというところで、ある種のスペクトラムとして考えられないだろうかということも思いますし、共同学習という言葉を前面に出すと、通常の学級の先生方に非常にファミリアリティのある言葉なんですよね。ですから、「あ、共同学習か」ということで、通常の学級の先生に非常に理解されやすい部分かなというふうに思われますので、そういった、いわゆる内容の部分もそうですけれども、特別支援ではない先生方にもより理解していただくには、ある種分けて考えるということも、より強く考えていくといいのかな。特に共同学習の在り方というところをどうするのというのは、これから更にインクルーシブ教育システムの構築に向けては、重要なポイントになるかなと考えております。
以上です。
【宍戸主査】  それでは、尾崎委員、お願いします。
【尾崎委員】  一部川合委員と同じような意見になりますけれども、交流及び共同学習等、5番についてお話をさせていただきます。
まず、交流及び共同学習も含めて、特別支援教育を受けて特別支援学校で受けた場合、12年間受けていくわけで、その地域にまた戻っていくということを考えたときに、交流及び共同学習の目的の一つの中に、その子は地域の中にいますよと。そして、また12年後、地域に戻って生活しますよと、これが共生社会ですよということを、どういう形で交流及び共同学習も使って地域の方等にも知らせていくかという、構成員の一人であるということをお互いに学んでいくという要素があると思うんです。ですから、現行の学習指導要領にも、交流及び共同学習のところに、地域の社会との交流というのも必ず入っているというのも、そういう意味かなと私は思っています。ですから、是非今後は、学校同士の交流及び共同学習だけではなくて、地域の社会の中での共同学習というか、そういうものに対する在り方、そういうものを大いにまた知らしめる必要があるんじゃないかなと思います。
そのときに、今なされている重要な点は、ここにもありますけれども、居住地校交流、これは是非全国に広まっていけばいいかなと思います。特に、その子がその学校にいるんだよということをずっと分かっていれば、将来的にも、「その子、いたんだよね」という話になろうかと思います。
それから、副次的な籍という中で、埼玉県でしょうか、通常の学校の児童生徒が特別支援学校に副次的な籍を持つという逆パターンですか、そこで支援を受けるというようなやり方をしているということも、これは資源の利用ということで言えば、これも有効なやり方かななんて思うので、そういうのも全国的に広がっていく必要があるのかななんていうことを思っております。
それから、最後に、交流及び共同学習の今後の進め方で、一番充実してほしいということでお話ししますと、先ほども川合委員の方からありましたけど、交流及び共同学習してどういう学びがあったのというのを、特別支援学校の方からも通常学級の方からも言えるような学びがないと、これはやらなければいけないとか、基本法に決まっているからとかということだけでは、いい学びには私はならないと思います。
そのいい学びの一つの例としては、例えば、特別支援学校の高等部で最近よく知的障害で行われているんですが、小学生とか中学生を対象に、自分たちがやっている作業学習の中身を中学生とか小学生に教えるということをやるんですね。そうすると、何がいいかというと、教える側の特別支援学校の生徒にとっては、教えることの難しさを通して自分の学びを高めることができるということがあるんですね。それから、もう一つ、小学生、中学生にとっていいことは、教え方がすごく練られていますので、とても分かりやすい学びになると。この本質が一番分かりやすいような学びになるという、そういう両方のメリットがあるということがあります。そんなことも含めて、交流及び共同学習の様々な形の中で、お互いが学び合える、いい例を紹介していくのも今後必要なのかなと思います。
以上です。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
それでは、安藤委員、お願いします。
【安藤委員】  私も、5について、ちょっと踏み込んだお話をさせていただきたいと思いますけれども。どういうことかと申し上げると、やっぱり学習指導要領、これは小学校等においても特別支援学校においても共通するんですけれども、やはり現行の交流の機会あるいは共同の学習の場を設ける、機会を設けるという、そういう記述になっているわけですけど、もうそろそろ、ただ設けるだけではなくて、活動についてきちっと評価をするとか、改善をするという書きっぷりをもう入れてもいいんじゃないかなと、個人的には思っております。
というのも、御承知のように、交流教育については、養護学校教育の義務制が実施される段階で、これは盲・聾(ろう)・養護学校の学習指導要領に盛り込まれました。それ以降、しかし、なかなかそれが浸透せずに、平成11年の学習指導要領の同時改訂ですよね。このときに何とか特殊教育サイドから通常教育サイドへとメッセージを送れないかという中で、この交流教育に規定が盛り込まれたという経過があると思いますね。で、現在に至っているわけですけど。
その間、何が行われたかというと、かなり交流の場は増えましたよね。場を共有する機会、それから、活動を共有する機会が間違いなく出てきています。先ほどちょっと紹介あったように、実際、その成果って何なのかということもいろいろ出されてはいるんだけれども、必ずしも一様でないし、そのことが、実は、意識の共有というんですか、これから先、共生社会を実現する上では、場や活動を共有するだけではなくて、やはり意識を共有していくという展開に行かなければならないことを考えたときに、やはりどうしてもやったことをきちっと評価すること、改善していくこと、意識を共有するためにどうあるかということを、やはりもうそろそろ盛り込んでも僕はいいのではないかなと思っております。
以上です。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
幼稚園、小学校、中学校、高等学校に関する議論につきましては、第3回までということで考えていますので、ちょっと時間を延ばして、まだ名札が立っていますので、意見を聞かせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
お待たせしました。品川委員、お願いします。
【品川委員】  ありがとうございます。
まず事務局におかれましては、非常に詳細な資料を作っていただきまして、ありがとうございます。
実は、私が申し上げようと思ってメモしていたことを皆さんが大体おっしゃっていただいたのですが、改めて何点かお話ししたいなと思っています。
実は、これは先ほど村上委員がおっしゃっていたICFモデルのことなんですが、今更ながらなんですが、実は、私、学習指導要領の総則において、しっかりとICFモデルのことを整理して、明言化、言語化しておく必要があるというふうにずっと考えております。というのは、取材しておりますと、現場の先生で、あるいは保護者の方で、お子さんが障害がある方も含めて、ICFモデルのことを知っていらっしゃる方はまだまだ非常に少ないと痛感しております。やっぱり意識はまだまだ、先ほど可視化のお話がございましたけれども、見える障害については非常に理解があるけれども、それ以外については、先ほどの金谷委員のお話ではないんですが、ちょっと様子を見ましょう的な形で、どうしても先送りにしてしまう。ですから、やっぱり障害種別だけではないんだという発想をしっかりと言語化しておく必要があるのではないかなと思っています。
これはちょうど先ほど大杉室長がおっしゃっていた、一般の方が読んでも分かるような書きぶりにするということを踏まえたときにも、ちょっと共通するのではないかなと思っています。要は、ICFモデルに変えることによって、実は、この5の交流のありようも変わってくると思うんですね。先ほど来、川合委員もおっしゃっていましたけれども、障害のある子供にとって、障害とはっきり分かる子供さんも分かりやすいですよ。でも、そうじゃない子供たちの中でも、実はICFモデル的に見れば、障害というふうにちゃんと考えられるケースは幾らでもあるわけですが、どうしても医学診断があるお子さんだけがターゲットになってくるという、ここを変えていかないと、幾らインクルーシブ社会にどうのこうの言っても、なかなかそれは難しいだろうなと思うんです。
中教審で、尾崎先生もいらっしゃいましたけど、私たちが特別部会をどうするかというときに、ちゃんとICFモデルのことを言ってはいるんですが、本当に講演していても思うんですけど、御存じない方ばっかりなんですね。だから、そこははっきりと、もう概念は変わっているのだということを、まず教員から、そして管理職から分かっていただく必要はあるだろうなと思っています。
それを踏まえた上で、じゃ、5番についてなんですが、どうするかというと、やっぱり大事なことは、到達目標を明確にすると同時に、やっぱりいかに組織経営をしていくかということだと思うんですね。それが学習指導要領に書くことではないのかもしれないんですけれども、多様性がある異質集団の中で学べることというのは、障害のある子供さんも当然あるし、定型発達と言われている子供たちの中だって当然あるわけですから、そういったことを踏まえて、ただ場を共有すれば理解し合えるということはまずないので、そこを踏み込んだことをしていく必要があるだろうなと思っています。
それから、二つ目は、先ほどの皆さんが御議論いただいている資料4-2についてなんですが、これは通常学校における指導要領をお書きになっているんだというふうに判断してお話しするんですけれども、ここに書かれている、こういった発達特性から見ていかないと指導効果は上がらないので、私は非常に賛成で、是非とも、この書きぶりは何らかの形で、先ほどからこれがあくまでも例だというふうに皆さんおっしゃって、事務局もおっしゃっていますけれども、要は、こういった発達特性を見て指導を考えていくというやり方をちゃんと明示していくということが本当に必要だなと思っています。
それと、障害特性ですよね。肢体とか、盲とかということと、これはやっぱりちゃんと分けて考えていくことは必要かなと思っています。特に、通常学校においてなぜ必要かといったら、それは私が申し上げるまでもないですが、例えば、まだまだディスレクシアの子供たち、あるいはLDの子供たちというのは、本当にクラスの中で置いていかれている子供たちですから、ただ勉強ができないわけではない、怠けているわけではないというところをどうやって見ていくか。その背景から見ていくということをこういった形でするのはすごく大事だなと思っています。
そのときの書きぶりが皆さんいろいろとおっしゃっておられて、それは私も結構共通するんですけれども、それは指導要領に今までの書き方とは違うというふうに言われるかもしれないんですが、マトリックスにしたらいいんじゃないかなといつも思うんですね。例えば、行動観察から見える課題とか、その課題の背景の可能性は何があるのかとか、アプローチはどういう可能性があるのかというような形でのマトリックスにしていくことが、教科ごとで結構使えるのではないかなと思っています。
というのは、先ほど加藤先生おっしゃっていたVisual Abilityの問題だとか、例えば、情報入力がどうかということ自体が、一般の先生には多分すごく難しくて、そもそもそこの段階で、そういう専門用語を書いた瞬間に、皆さん、まずぱたっと閉じてしまうのではないかなと。いや、実際に学習指導要領をお読みになった方と言って、講演するたびにお聞きするんですけど、本当に悲しいことに、手を挙げる方が半分もいらっしゃらないのが現実なんですよね。そうすると、やっぱり読んでもらってなんぼだというふうに考えたときには、いろんな行動分析から、行動観察から分かること、そういう可能性としての背景、発達特性から見える背景プラスアプローチの方法、それが駄目だったら、要は、仮説の立て方、実践して、検証してという方法論をもう少しここの指導要領に書いていくことが、より具体的に使えるのではないかなと思っています。
3点目は、これは、ここも配慮と書いてあるんですけど、配慮なのか、指導方法なのか、ここがやっぱり結構現場では混乱があるんだろうというふうに痛感しているんですね。それから、配慮と合理的配慮を、皆さん、すごく一緒くたにして語られていて、やっぱりこれはもう本当に明確に言語化していただきたいと思っています。合理的配慮というのは、何でもかんでも言いなりになってやることではなく、このためにちゃんと、さっきの最終報告でも、ちゃんとこの六つの教育を実践した上で合理的配慮してくださいよと言っているにもかかわらず、もう本当に取材していると、いや、それは合理的配慮ではございませんみたいなことまで配慮と言ってやっているので、やっぱりここは、例えば、これは指導方法案なのか、あるいは、配慮、つまり、気を使うべきことなのか、それとも、ちゃんと合理的配慮、つまり、必要かつ適切な変更及び調整なのかというところを分ける必要はあるだろうなと思っています。
最後は、これは先ほど安藤先生もおっしゃっていたんですが、私もいつも思うんですけれども、やっぱり到達目標をまずしっかり明確にしていただき、その上で、どう成果を評価していくかということも書いていかないと、実はそこを明確にしておかないと、合理的配慮につながらないんですよね。今、学校の先生は、どう指導したらいいかということはとても熱心で、皆さん、非常によく授業研究もされていらっしゃって、それは本当に頭が下がるんですが、一方、それが子供の血肉になっているかといったところに関しては、「いや、学べない子もいますから」とか、「あれはあの子の問題で」と、なぜかそこですり替わってしまうんですね。やっぱりそれでは駄目だということを是非しっかりと分かっていただけるようにするためにも、到達目標――その目標が到達していないのであれば、指導方法を変える、あるいは、成果をどう判断するかというようなことも書いていただきたい。
これは、もう一つの理由は、例えば、今、ここには教科別のことをずっと書いていて、これは教科なんだからしょうがないんですけれど、例えば、LDとかADHDの子供たちは、学べても思い出せないわけですよね。そこに課題がある。だから、思い出せないからしょうがないねではなくて、でも、ここまでは頑張って思い出そうよねというところも踏まえて、やっぱり評価をしていかなければいけないわけですよね。その最終的な課題が、実は学びの仕方だけではなくて、ワーキングメモリーにあるところを踏まえた評価をどうしていくのか。それを踏まえて初めて合理的配慮というのは成立してくるのかなというふうに思いながら、これを読みました。
以上です。
【宍戸主査】  本質的な意見も含めて、ありがとうございました。
今、3時5分ですので、あと5分、15分ぐらいまでには第3回の方を終了したいと思います。全体を含めて、もし意見があればということで、砥抦委員、村上委員、大内委員、それで、最後に古川委員にお願いしたいと思います。
【砥抦委員】  帝京大学の砥抦です。私、小学校で教員を長くやっていたものですから、最初の、各教科の形で配慮事項のところに意見を述べたいと思います。
もしこういう形で出されるとすれば、これはもう非常に大きな一歩だというふうに私は捉えています。というのは、特に小学校の方で、子供たちの指導の困難さの問題が出ましたけれども、各教科、あるいは領域も含めて、その場面でその子にどういうふうに理解して指導したらいいのか、そこでやっぱりみんな戸惑っているといいますか、そういうことがあるんですね。そうすると、一般的な障害別の配慮事項は当然必要なわけですけれども、それはまたちょっと後で述べますが、各教科の中で、じゃ、具体的にこの時間の中であの子にどういうふうな配慮が必要なんだろうかという発想で、授業づくりをしたり、個別の配慮を当然やっていきますから、これは非常に分かりやすい例になってくるんじゃないかなと思います。そういう意味で、大賛成です。
それで、あと、例示ですから、自分が担当している生徒の場合とちょっと違った例が出てくるというのは、当然、障害によっても多少違いますし、障害の程度によっても違いますから、むしろそこが大事というか、これはあくまでも例示だから、実際に目の前の子供からいろいろものを教わりながら、それをまた計画を立て直したり、配慮をいろいろ考え出すこと、そこが大事だよというところは、やっぱりどこかで示しておく必要があるのかななんていうふうには思います。それが1点目です。
それから、2点目ですが、今度は5番の交流の方に参りたいと思うんですが、私自身も小学校の校長時代に、交流教育というか、東京都でしたから、副籍の形で進めておりました。これは今からお話しするのは失敗事例なんですが、ある肢体不自由のお子さんを受け入れる段階で、担任がいろいろ配慮して、この子の場合には、少し楽しい音楽的な活動を入れようよというので、最初の段階でそれを企画しました。そうしましたら、ドンチャカドンチャカ音がいっぱい鳴るものですから、その子自身が廊下から教室に入れなくて、1回目はちょっと失敗した例なんですね。それで、担任の先生なりに、いろいろその子の状態を配慮してやったつもりだったんですが、実際に子供が来ると、ほかのクラスの子供たちがその子の周りにわーっと集まって、握手したり、いろいろ求めちゃうものですから、それもまた威圧的な感じで本人は受け止めちゃって、引いてしまったというような、そんなことがあって、1回目はちょっとうまくいかなかったねというようなことが実はありました。
でも、その後、担任を中心に、じゃ、Aちゃんのどういうことに配慮しながら今度やろうかというので、何回かそういうことを繰り返しながら、2年目に、たまたま私、図工の工作活動の時間に見たんですが、もう参加がすごく楽しそうに本人もやっているんです。周りの子も受け入れて。だから、やっぱりこれは何回か繰り返す中で身に付けて、周りの子供たちもそうですし、その子自身もだんだん前に出ていく。少し長い目で見ていく必要はあるのかななんてことを感じました。だから、成功事例ばかりではなくて、こういうところに失敗しちゃったんだけれども、でも、こんな配慮をまた重ねていってやっていますというような、そんな事例の示し方も大事なのかななんて思って、ちょっとそのことだけ申し上げたかった。
以上です。ありがとうございました。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
じゃ、村上委員、お願いします。
【村上委員】  交流及び共同学習について、丸5についてです。1点お願いします。
先ほど教職大学院の学生の話をしましたが、やはり小学校から来ている教員が障害理解という観点から取り組んだものがありました。そんな中で感じたのは、障害のある子供さんを受け入れる側の小学校、中学校の意識の濃淡と言ったらいいんですか、それがすごく大きいなというのは、まず1点ありました。
そんな中で、一気に子供さんを障害のある子供さんと交流するというのは、もしかしたら難しいのかなという、そういう感じがあって、その実践の中では、最初は、視覚障害の子供さんを対象にしましたけど、視覚障害の大人の方に来ていただいて、様々な適応の状況のようなものを、通常の学校の子供さんたちとやりとりをする。たとえ見えなくても、こういう行動パターンを取れば、あるいは、こういうことをすれば普通に生活できるのだとか、あるいは、むしろ自分たちが知らなかった様々な仕組み、あるいは、認知的な課題をクリアしているのだということを理解して、その上で、そういう対象の子供さんと出会うというような、そういう段取りがあってもいいのではないかという。事前的な学習と、それを踏まえた事後的なものという流れもある程度必要ではないかなというふうに考えた次第です。
以上です。
【宍戸主査】  大内委員、お願いします。
【大内委員】  よろしくお願いいたします。既に各委員の方から出てきていることもありますので、簡単に私の意見を述べさせていただきたいと思います。
5の交流及び共同学習に関連してですが、5点ほどあります。
一つが、保護者の参画といいますか、保護者の関わりということですが、これは何人の委員から出てきましたけれども、非常に大事なことで、通常の小学校、中学校の中に、要するに、健常なお子さんを持つ保護者の方の理解を広めていくということは非常に重要なことだと思うんですが、これはやっぱり組織的にやっていく必要があると思う。例えば、校内にインクルーシブ委員会というようなものを設けて、その中に健常の保護者の方も入ってもらって、学校の中の環境改善をどうしたらいいかとか、地域の障害のある子とともに生活していくためにはどうしたらいいかとか、そのようなことも保護者の方とともに考えていくような仕組みを校内に作っていくというようなことができると、広まっていく可能性があるのかなと思っています。
それから、海外の取組の事例ですが、学校群という仕組みを使って交流及び共同学習。つまり、小学校、中学校、あるいは、入れば高等学校ですけど、それと特別支援学校が一つのグループを作って、その特別支援学校にいるお子さんは、その地域の小学校、中学校、高等学校に継続して交流をするというようなことになると、時間軸、長い時間、その地域の人たちと触れ合うというようなことができるということで、そのような取組をしている国もありますので、そのようなことも考えられるかなということです。
それから、3番目としては、特に義務教育の段階ではもう丁寧に考えられてきているかなと思いますが、競争の在り方ということをやはりもう一回見直すといいますか、メリハリをつけるといいますか。例えば、デンマークでは、義務教育の段階は、一切子供の序列を付けてはならないと。序列を付けるのは高等学校以上の教育ということで、もう徹底してやっています。そういう状況の中にあると、様々課題を抱えているお子さんも、取組の中に入りやすくなるのかなという。日本の教育の中では、全てそれをなくすことは難しいと思いますが、やっぱりメリハリをつけて、丁寧な対応をしていくということはできるのではないかなと思っています。
それから、4番目は評価ですね。やはりきちんと量的な評価から質の評価へと入っていく段階にもう入っているのではないか。90何%以上実施率があるような状況については、実施していますということでは、もう十分ではなくて、その中身がどれだけきちんとできているのか、どういうことがどれだけできているのかというようなことを見ていく。例えば、これを学校評価の中に取り込むとか、そういうようなことで対応ができるのではないかなと思っています。
それから、最後は、ここの話題として望ましいかどうか分かりませんけれども、小中学校等での特別支援学級とか通級指導教室とかの配置ですね。校舎の隅の方にその居室とかがあれば、当然、子供たちにはなじみがなくなるわけですが、これがもし中央とか、子供の動線の非常に頻繁なところにそういうところがあると、そことのつながりとかは大きくなると思うんですが、そういうようなことも配慮していくというようなことは、交流及び共同学習をする上で大事なことではないかなと思っています。
幾つか思い付くまま述べさせていただきました。以上です。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
司会の不手際でちょっと時間が延長しましたが、3回目、小・中・高、幼稚園も含めて、特別支援教育の課題につきまして、まとめるということになるかもしれませんが、古川委員からお願いしたいと思います。
【古川主査代理】  学習指導要領からちょっと離れるかもしれませんけれども。各教科でいわゆる配慮事項等を示していく、小学校の学習指導要領の中に示されていけば、非常に画期的だなと思って見ています。
ただ、小学校サイドから見たときに、先生たちの専門性の問題が、やはりそこに必要になってくるんだろうという気がしています。今、教員養成課程の中で、実際、教職に関する科目の中で、特別支援教育に関する基礎理論科目というんですか、1単位かなんかあると思うんですけれども、全部、全ての時間かどうか分かりませんけれども。やはりベースになるところの特別支援教育に関する基礎的な理論については、養成課程の段階できちんと位置付けて、全ての免許を取ろうとしている先生方に基本的なこととして、やっぱり押さえていかないといけないんじゃないかなと思っています。この辺はあと免許の関係になってくると思うんですけれども、是非、そういう発信をしていかないと、逆に、学習指導要領上はこう書いたんだけど、実際、現場に当たる先生たちの中にそういう素質がなければ、そういう見方ができなければ、やっぱりなかなか進んでいかないんじゃないかなと思っていますので、そこら辺も含めて、是非発信をしていただければなという思いがあります。
もう一つは、これも学習指導要領とは直接関係しないんですけれども、ただ、多様な教育形態を求めている特別支援教育を推進するということは、通常の学級でのいわゆる指導、あるいは、通級、特別支援学級、特別支援学校という多様な教育形態ということを言っているわけですね。そういう意味からすると、現在の状況で見ていくと、やはり通級の指導というのが、加配の配置で、非常に現実的には、各自治体はこれだけ人が欲しいんだけれどもということを上げても、まだまだ頂けない現実があります。
私は一つの考え方として、これは現実的にどうなるかというのは分かりませんけれども、多様な教育形態があるんだというのであれば、一つの――これはいいか分かりませんけれども――定数の話でもいいのかなということも考えたりするんですが。例えば、小中学校の中に特別支援学級、あるいは、通級による指導の枠というのが本当に必要じゃないかということも今後考えていただかないと、通級が、今、現実的にも加配というのがなかなか増えていっている状況ではありません。でも、現場は非常に通級の指導の必要性はあるんですね。あってももらえないから、自治体で我慢せざるを得ない現実というのも多々あります。その状況の中で、じゃ、どういうふうに工夫していくかというのは、もちろんそれも必要なんですけれども、条件整備ということを考えていったときに、例えば、通級の指導の加配なのか、あるいは、一つの形態として、それは教室だから無理だとは思うんですけれども、定数上の話で議論できれば、非常に条件整備としては整っていくんじゃないかと。基礎的環境整備ということを言っていく中では、どうしてもやはりそこのところが小中学校の中では非常にネックになっていくところかなと。今後増えていけばいいんですけれども、なかなか現実はそうではないので、その辺も含めて、条件整備ということで考えていただければ、多様な教育形態ということを考えていく中で、小学校の学習指導要領にも、特別支援からの発信というのは、そこで一つ大きくできる部分かなというふうに感じたところでございます。その辺は条件整備の話で、難しい話なんだろうと思うんですけれども、是非、この議論と一緒に検討していただければなという思いで考えているところでございます。
以上でございます。
【宍戸主査】  司会の不手際で、3時20分になってしまいました。それで、一応第3回の方はここでけじめをつけたいと思います。休3時35分から第4回を再開するというふうにしたいと思います。よろしくお願いします。

――了

お問合せ先

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電話番号:03‐5253‐4111(代表)

(初等中等教育局特別支援教育課)