教育課程部会 高等学校の地歴・公民科科目の在り方に関する特別チーム(第5回) 議事録

1.日時

平成28年6月27日(月曜日)17時00分~19時00分

2.場所

文部科学省 3階 3F1特別会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 高等学校の地理歴史科及び公民科の改善充実について
  2. その他

4.議事録

【田中主査】  皆様,お集まりいただきました。ありがとうございます。定刻となりましたので,ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会高等学校の地歴・公民科科目の在り方に関する特別チームの第5回を開催いたします。本日はお忙しい中,御参集いただきまして,誠にありがとうございます。もうすぐお見えになる委員の方もいらっしゃると思いますが,定刻となりましたので始めさせていただきます。
本日は,前回,本特別チームにおける意見等を受け,社会・地理歴史・公民ワーキンググループにおいて検討が必要な内容について御議論いただいておりますので,その状況を踏まえて御議論いただきたいと思っております。同ワーキンググループにおいては精力的に御議論いただきまして,誠にありがとうございます。感謝しております。
本日は,同ワーキングの主査でいらっしゃいます土井主査,原田主査代理にも御出席いただいておりますので,土井主査はもちろん当特別チームの主査代理でもいらっしゃいますので,お二人にも御参加いただいております。お二人にも,適時御意見を頂ければと思っております。
それでは,最初に配付資料の確認をお願いしたいと思いますが,大内学校教育官,よろしくお願いします。

【大内学校教育官】  失礼いたします。それでは,配付資料の確認をお願いいたします。議事次第に記載しておりますとおり,本日の配付資料につきましては資料1から資料16でございます。また,参考資料といたしまして,参考資料1から参考資料6まで御用意させていただいております。大変恐縮ではございますけれども,1点,修正をこの場でさせていただければと存じます。配付資料7,「社会・地理歴史・公民ワーキンググループとりまとめ(案)」ということで,各委員の先生方には事前に送付をさせていただいておりました,こちらの文書でございますけれども,文書の中に一部,関係のない文章が,作業中の文章が入ってございました。お気付きの先生いらっしゃったかと思いますけれども,大変恐縮でございますが,資料7の24ページをお開きいただければと思います。
資料7の24ページ目の上から二つマルが来て,その後にマル1,「主体的・対話的で深い学びの実現」というくだりがございます。この後に三つマルが付されておって,その後に同ページの(2)「『深い学び』,『対話的な学び』,『主体的な学び』に向けた学習・指導の改善・充実」というのがございまして,削除いただきますのは,マル1,ちょうど真ん中の方にあるんですが,「主体的・対話的で深い学びの実現」のマル三つの箇所までになります。マル1の「主体的・対話的で深い学びの実現」のところから三つ目のマルの終わり,すなわち「ICTを活用することも効果的であると考えられる」のところまで作業過程のものが交じってしまいましたので,恐縮でございますが削除いただければということでございます。
併せまして,机上の資料でございますけれども,これまでの関係資料をとじておりますし,また,タブレットに関連する資料を御用意させていただいております。次第につきましては,資料の裏面以降で過去の資料を添付してございますので,御確認いただければと思います。
長くなってしまいましたが,不足等ございましたら事務局にお申し付けください。

【田中主査】  どうもありがとうございました。
これより議事に入りたいと存じます。本日は報道関係者より,会議の撮影,録音の申出がありまして,これを許可しておりますので,御承知おきください。特に今日はテレビカメラはいらっしゃらないですね。それでは,そのまま続けます。
さて,本日の議事の流れとしましては,事務局から資料に基づき御説明をいただき,御議論の内容ごとに御意見を伺ってまいりたいと存じております。
これに先立ちまして,教育課程部会の下に置かれた学校段階等別部会における議論について検討が進められておりますので,これらの状況について事務局から御説明をお願い申し上げます。大杉室長,お願いいたします。

【大杉教育課程企画室長】  失礼いたします。参考資料5,6を御覧いただければと存じます。
学校段階別部会,それから教科等別部会,全て取りまとめの段階に入っておりまして,明日の企画特別部会で全てのワーキングが,校種別部会の議論の状況を一通り御紹介させていただく予定でございます。また,本日午前中には高等学校部会も開催されまして,この資料5にあります内容が高等学校部会として了承という形,主査一任という形になったところでございます。
特に本日,参考資料5は,教科・科目の構成,単位数についてということでございますけれども,参考資料6にございますような科目履修のイメージ,高等学校,多様でございますので,大学進学者が多い文系でありますとか理系,あるいは就職希望者が多い高校の科目の履修のイメージ,あるいは専門高校,そして,参考資料6の10ページ目には,学び直しを中心とした高校の履修イメージもございますけれども,こうした多様な高校の在り方を踏まえつつ,単位数の在り方の御議論をいただいたところでございます。
参考資料5にお戻りいただきまして,現状,74単位以上の履修,卒業に必要な単位数ということ,あるいは,選択必履修の教科・科目数の合計が38単位になっている現状等々,あるいは,2ページ目は各学校における実際の修得単位数の設定の状況等でございますけれども,こうした現状を踏まえて,3ページ目,4ページ目にございますような全体の単位数の考え方の整理というものをいただいたところでございます。
具体的な単位数の当てはめは,今後,教育課程企画特別部会で行っていくことになりますけれども,基本的にはこういう考え方で整理をさせていただくということでございます。
(1)卒業までに修得させる単位数については,引き続き74単位以上とすること,あるいは,必履修教科・科目につきましては,現行の単位数をベースに考えるということ,選択科目につきましては,各教科の必履修科目との関係や履修順序,生徒の進路に応じた選択を可能とすると共に,履修の負担が過大にならないようにするということ。現行の各教科における科目の履修状況等を考慮して単位数を定めるということでございます。
また,今回,「理数探究」という,理科と数学にわたって科学的な探究を主体的に行う新たな選択科目が設置されることになってございますけれども,この「理数探究」と総合的な学習の時間,それから,専門高校における課題研究ということを,初等中等教育における探究の総仕上げという位置付けで置いているところでございます。それぞれの進路の選択に応じて,主体的な探究の学びを行うこと。そうしたことから,総合的な学習の時間については,「総合的な探究の時間」ということで,高校については名称を変更するということ。また,この三つに関しましては,それらを単位の読み替えを可能とするということでございます。
また,4ページ目一番下でございますけれども,専門学科の教科・科目の履修については現行をベースにということでございまして,この基本的な考え方を踏まえまして,高等学校,今回新たな科目が,地歴,公民問わず,かなりの数に上るわけでございますけれども,その単位数の在り方については,この基本線に沿ってということで,本日御了解をいただきましたので,御報告を申し上げるところでございます。
以上です。

【田中主査】  大杉室長,どうもありがとうございました。今の御説明につきまして御質問等ございますでしょうか。学校段階等別部会における御議論を御紹介いただきました。よろしければ,本題に入らせていただきたいと思います。
御議論いただく内容に移りますが,初めに,高等学校指導要領における地理歴史科目の改訂の方向性について意見交換を行います。
まず,事務局から地理歴史に関する資料の説明をお願いいたしたいと思います。また,これに関わりまして,社会・地理歴史・公民ワーキンググループにおける小・中・高等学校を通じて育成すべき資質・能力等の検討状況についても併せて御説明いただきたいと思います。梶山主任視学官からお願い申し上げます。

【梶山主任視学官】  それでは,私から御説明させていただきたいと思っております。資料につきましては,資料2の27ページ以降,こちらが前回の特別チーム,本チームにおきまして御議論いただいた資料でございます。それに併せまして,資料9-1以降が,先ほど田中先生からお話しいただきましたが,ワーキンググループにおいて議論を踏まえた結果というところで,先生方の御議論,特別チーム,ワーキングを踏まえた結果ということで,こちらを御覧いただきながらお話を聞いていただければと思っております。
それでは,最初でございますが,「『歴史総合(仮称)』の改訂の方向性」という資料がお手元にあろうかと思います。科目の特徴というものを上に書きまして,どのような方を育てるのかというところ。それから,現代的な諸課題につながる歴史的な状況とその構成というもの,それから,題材や学び方というものを書いた資料でございますが,こちらにつきましては,前回のこの特別チームの御議論におきまして,大衆化ということに関しまして,「大衆化」という言葉をどうするのか,若しくは「参加」という言葉が概念として非常に重要なのではないかと御議論いただいたところでございます。大衆化の言葉自体は,産業などを考えた際に,このまま置くことが適当ではないかというところで,ただ,「19世紀後半~現在」というところを書いてある下に,大衆化というものはどういうものなのかというところを示す文章が書いてあります。その中に,「大衆の参加の拡大が社会全体の在り方を」というところで,大衆の参加というものが重要だというところ,そういうところを特別チームの御意見を踏まえて修正をさせていただいたところでございます。
また,同じく大衆化というときに,これに限らず全てのところでございますが,女性の観点であったりマイノリティの方々の観点というものが重要になるのではないかという御意見を頂いたところでございます。そちらに対応いたしまして,「大衆化と私たち」のところの単元例の一番上,「大衆社会の形成」の隣に「社会運動の高まり」というところで,様々な社会運動というものがこの時期に行われてきたというところ,そのようなところを明確にして,そこを取り扱うというところ,そういうところをこちらに入れたところでございます。
また,今度は上から御覧いただければと思うんですが,「歴史の扉」というところ,こちらの青のところでございますが,こちらにつきまして,前回,例というところでどのようなものを取り上げるかというところに関しまして,「近世の日本~アジアを事例」にという形にしておったわけでございます。ただ,こちらの「歴史総合(仮称)」の科目の考え方というものが,歴史と現在というものを考えていくのは非常に重要だというところで,扉の導入のところに当たっては,その課題を取り上げるところに特化した方がいいのではないかというところから,例というところで,「歴史と現在~現代的な諸課題」という形でこちらを特化させていただいているところでございます。
こちらに関しましては,併せて関連でございますが,近代化,大衆化,グローバル化というところのそれぞれの単元例の一番下のところに,「まとめ」というところで,「歴史と現在マル1~近代社会」,このようなパートを入れております。前回も,「(まとめ)近代化と私たち」となっておりましたが,それぞれのところで近代化というものを考えていくことが重要であろうというところから,このような表現にしておるところでございます。
これに関連しまして,先ほど,歴史と現在のところで,「近世の日本~アジアを事例」にという,近代化というものに関連して教えていくところに関して,単元例の中で,米印のところ,「結び付く日本と世界」,このようなものを新たに位置付けてはどうかというところ。
それぞれについての説明でございますが,一番下の米印のところを御覧いただければと思いますが,「『近代化と私たち』に例示した『結び付く日本と世界』では,近代化の前の各地域の状況について,例えばアジアを舞台とする日本と世界の商業や交易に触れ導入とすることが考えられる」というようなところ,このようなところを入れております。
また,先ほどの上記(まとめ)についても,「中学校までの既習事項を主に活用しながら,歴史の大きな転換が現在とどのように関わっているか考察する単元として構成することが考えられる」,このような説明をこちらに入れているところでございます。
それから,前回御議論で,右のところ,「考察を深める問い」というところに,「日本,アジア,アフリカ」というところ,中ポツで「アジア・アフリカ」というところがございました。アジア,アフリカと一体的に考えるのではなくて個別のものとして考えるべきだという御意見を頂いたところでございますので,「アジアやアフリカ」という言葉にさせていただいたもの。それから,その下の「まとめ/基軸となる問い」というところがあるんですが,この基軸となる問いというところで,前回,これが一番上に「近代化と私たち」の副題的なところで書かせていただいていたところと両方かぶっておりました。ここは,今回の「歴史総合(仮称)」において基軸となる問いを置いて考えていこうというところが大きな方向性として重要ではないかということから,基軸となる問いということで,「社会の近代化は何をもたらしたか」というようなところをこちらにおろしまして,上の「近代化と私たち」のところに関しましては,内容が分かるような形で一応副題を付けている,このような修正を図ったところでございます。
それから,一番右のところ,「取り上げることが考えられる題材」というところでございます。こちらにつきましては,前回,取り上げる題材というところに関しまして,少し見直した方がいいのではないかというところがございました。そのようなところから,先ほどの御説明と併せまして,「アジア域内貿易」ということを入れたところと,「議会制民主主義」というところで,代議制というところも今,非常に重要でございますので,要素が違うということで括弧を入れさせていただいております。
また,先ほど,社会運動の高まりなど,様々な方が参加していくというようなところ,そういうところも含めて,教育の果たす役割が非常に重要でございますので,上から六つ目,「マスコミ」の後に「教育」というところ,こちらを入れさせていただいております。
また,「全体主義」「ナショナリズム」,これはそれぞれ,「ファシズム」ということでありましたり「民族主義」という言葉を使っていたわけでございますが,前回,言葉として,概念としてはこちらの方がいいという御意見を頂きましたので,このようなところを入れておるところでございます。
また,最後に「ポップカルチャー」というところがありまして,ポップカルチャーも重要なんだけれども,ほかのところがあるのではないかというところで,「近代科学」というものは一番上から二つ目にあるわけでございますが,グローバル化においての科学技術という意味で,「情報通信技術」ということは非常に重要ではないかというところ,そういう観点からそのようなところを入れておると,こういう状況でございます。1枚目,変更点を中心に御説明申し上げました。
それから,2枚目,マル2というものを御覧いただければと思います。マル2に関しましては,資質・能力併せて,先ほどの四つの構成というものを説明させていただいている資料でございます。取り上げることが考えられる題材でありましたり,右から二つ目の「歴史総合(仮称)」のところ,こちらにつきましては,先ほど御説明した内容を基本的にそのまま入れておりますので,ここは説明を省略させていただきますが,「資質・能力」のところを御覧いただければと思います。「資質・能力」のところに関しまして,一番下のマルのところ,主体的に学習に取り組む態度など,社会にどのように対応するのか,向かっていくのかというところでございますが,こちらのところにおきまして,現在のを御覧いただければと思いますが,「主体的に調べ分かろうとして課題を意欲的に追究しようとしたり」というような学習面のことと共に,「よりよい社会の実現を視野に世界とその中における日本の在り方について歴史的な観点から意欲的に追究しようとしたりする態度など」ということで,両方重要だというところを明確にこちらで書かせていただいております。
こちらは「歴史総合(仮称)」だけではなく,小学校,中学校,高等学校全てにおいて,このような二つのところが明確になるようなというところで,資質・能力の整理を図った方がいいのではないかという議論がワーキングではございましたので,このような記述で整理されているところでございます。
それから,次のページを御覧いただければと思います。このようなものを踏まえまして,高等学校における歴史科目の改訂の方向性ということで,大きな歴史総合というものが上にありまして,新選択科目というところがどういう性格かというものを示したものでございます。それぞれについて,「歴史総合(仮称)」というものを踏まえて,深く意味や意義等を広く考察し探究していくと,このような内容として考えているわけでございますが,その中で,一部,次のページを踏まえて修正しているところがございます。こちらにつきましては,次のページで御説明させていただきますが,このようなところがあるというところだけ御承知おきいただければと思います。
次のページでございますが,10-2でございますが,「世界史科目の改訂の方向性」というところでございます。「世界史探究(仮称)」という仮称で,このようなものを置いていくという方向性,このようなことにつきまして御検討いただいているわけでございます。この「世界史探究(仮称)」,「日本史探究(仮称)」につきましては,前回の特別チームの御意見におきましても,基本的に総合との切り分けといいますか,総合との関係性を考えていく必要が明示されてないのではないかということ,また,「世界史探究(仮称)」というものが,探究ではなくて教えていくというような教科のようにも見えるというところ,このようなところの御意見を頂いたところではないかと思っております。
そのようなことから,まず,世界史,日本史,それぞれ共通している部分でございますが,それぞれの構成のところに,一番大きなところといたしまして,例えば,世界史の「諸地域世界の歴史的特質」というところを御覧いただければと思いますが,「探究例」というところ,こういう例を示させていただきました。実際,この科目において,どのような学習というものが考えられ,どのような探究を考えていくのかというところ,それを明示することが,この科目の性格を明確にするのではないかというところ,そのようなところからこちらを御覧いただいたところでございます。
例えば,探究例として御覧いただければと思いますが,世界史の一番上ですと,「仏像が誕生し日本に伝来した歴史を整理し地図上でわかりやすく表現したり,農民反乱や人の移動と,気候の変化を関連付けて説明したりする活動」,このようなところでございます。こちらは世界史だけにとどまらず,地理的条件や日本の歴史と関連付けて展開していると。先日,そのようなところが重要ではないかというようなお話も頂いたところでございますが,そのようなところを意識した探究例,あくまで例示でございますが,そういうところを入れております。
また,そのほかに,緑のところを御覧いただければと思いますが,「世界史探究(仮称)」というところに関しましては,やはり前近代と近現代におきまして,どのようにそこを貫いていくかというところでございますが,「歴史総合(仮称)」の一つ前近代につきましては,「近代化以前の多様で複合的な社会」でありましたり,「大衆化以前の身分や階層社会」,こういうことを視座にして,諸地域世界の歴史的特質であったり諸地域世界の接触と交流などを学んでいくというところ。
それから,それを踏まえまして,「『歴史総合(仮称)』で獲得した世界と日本に関わる総合的な視野,前近代の学習で成長させた歴史を考察し表現する力を活用」して,それぞれ諸地域世界の結合と再編,地球世界の到来というもの,このようなところをやっていくというところ,このような方向で考えられるのではないかというような御議論をいただいております。
この際,諸地域世界の歴史的特質,それぞれ四つ項目があるわけでございますが,前回の資料において,「多様性・複合性・相互依存性・多元性」というような言葉,このところをより強調した方がいいのではないかというような御議論があり,このようなところで前回は出させていただいたわけでございますが,この言葉というものが独り歩きしてしまうことは,様々な見方というものにおいて,それを阻害してしまうのではないかということ。また,それぞれの言葉というものに関してきちっと使っていくためにも,「多様性」というような言葉をここには書かずに,地の文で説明してはどうかというようなところ。そのために,例えば一番上でございますが,「諸地域世界の社会や生活,文化などの多様性を扱い」というような,対象と「多様性」という言葉をここで使わせていただいてはどうかと。
2番目のところでございますが,こちらにつきまして,接触と交流により複合性を強めていくというところ,こちらはこのまま入れております。
3番目のところでございますが,こちらは「相互依存性」という言葉を使わせていただいたわけでございますが,やはりそれよりも,結合と再編により関係性を深めていくと,「相互依存」というには,まだではないかというようなところ,そのようなところで,「関係性を深める」というような言葉でこちらを示しております。
最後に,「地球世界の到来」というところに関して,「地球規模で一体化しつつ多元的な相互依存関係を深める」というところで,「相互依存関係」を下に入れた上で,一体化させるんだけれども多元的な相互依存関係があるんだというところを見ていくというようなところ。このようなところについてここに書かせていただいております。
資質・能力につきましても,先ほどの世界史と地理,日本史という話もございますので,「資質・能力」の一番上のところを御覧いただければと思いますが,「世界の歴史の大きな枠組みと展開について,地理的条件や日本の歴史と関連付けて」というようなところ,このようなところも今回付け加わっているところでございます。
それから,引き続き日本史の方を御覧いただければと思います。日本史におきましても先ほどと同様に,それぞれのところにおきまして,「探究例」というものを入れさせていただいているところでございます。「探究例」というところで,例えば一番上は,「纒向遺跡の多様な地域的特色を持つ遺物の資料から王権の特徴を考察したり,東大寺盧舎那仏の建造技術,国際的な仏教文化,国家関係等から律令国家の特徴を考察したりする活動など」,このようなところを入れまして,右のところに,「諸資料に基づき,地理的条件や世界の歴史と関連付けて展開」するというようなところ,こちら,前回なかったところでございますので,こちらを入れさせていただいております。
また,ピンクの部分,「歴史総合(仮称)を踏まえた前近代を学ぶ視座」というところを,こちらに同様に入れさせていただいております。
また,それぞれの項目といいますか,タイトルのところでございますが,「歴史の展開と資料」「歴史の展開と解釈」,ここの三つ目までは一緒なわけでございますが,「歴史の構造と地域 日本,世界」というところで,ここはほかのところと比べてちょっと違和感があるのではないかというような御指摘も頂いたところでございますので,「歴史の展開と構造」ということで,その構造というものが地域,日本,世界なんだということを副題で分かるような形でさせていただくというところ。このようなところで修正をしているところでございます。
また,「歴史の記録と論述」というところ,こちらも同じく「展開」というところに直しているところでございます。
また,参考のところで,前回の特別チームにもありましたが,やはり日本史を考えた際に,一番上の右のところを御覧いただければと思いますが,継承や変化に着目するというところ,着目して,近現代につながるというようなところ,こういうところが重要ではないかという御指摘も頂いたところでございます。非常に大きな視点かというところで,このところを視点で入れさせていただいているところでございます。
歴史系につきましては以上でございます。
また,引き続き,地理のところも併せて御説明させていただければと思います。地理につきましては,11-1というものが今回の資料になっておるところでございます。こちらにつきましては,前回,大きな御議論はなかったわけでございますが,ただ,(3)のところに,「防災と持続可能な社会の構築」というところがございます。こちらにつきまして,ア,イのイだけに「ESD」というものが掛かっていたところでございますが,ESDというものに関しては,より地理,「地理総合(仮称)」というものを貫く概念なんではないかというところ,そういうところから,(2)(3)の両方に係るものとしてESDというものがあるんだということを明確にするような図の修正を行っているところでございます。こちらが「地理総合(仮称)」の修正でございます。
また,一つ飛んでいただきまして,11-3,「地理探究(仮称)」の部分に関して御覧いただければと思っております。「地理探究(仮称)」につきましても,先ほど,「日本史探究(仮称)」,「世界史探究(仮称)」というものに関して御説明したときに,重要な視点として,地歴科全体の総合的な乗り入れが重要なのではないかというところ,こちら,地理についても御指摘があったところでございますので,右の矢印にありますように,「諸資料に基づき,歴史的背景を踏まえて展開」していくんだというところ,こちらを入れているところと共に,(3)のところでございますが,「現代日本に求められる国土像」というところ,ここが(1)(2)というものを受けているというところをより明確にするために,「(1)(2)で学んだ世界の諸課題に対する系統地理的・地誌的な考察を踏まえ」というようなところを入れておると。このような修正が考えられるのではないかというところで入れているところでございます。
それから,資質・能力系ということで簡単に1点だけ,まず御説明させていただければと思いますが,資料14を御覧いただければと思います。資料14,A3の横に長い資料を御覧いただければと思います。「社会的な見方・考え方の例」というようなところ,こちら,小学校から高校まで御整理いただいているところでございますが,こちらについては,視点,見方・考え方があって,問いの例があって,獲得する知識の例というようなもの,このような構成であるわけでございますが,右から二つ目の「視点を生かした,考察や構想に向かう『問い』の例」というものが,中学校,高校がそんなに変わらないのではないかというようなところ。やはり発達段階を踏まえて,そこは問いというものが変わっていくことがあるのではないかというような御指摘を頂いているところでございます。
そのため,例えば,中学校の2番目の歴史のところを御覧いただければと思いますが,いつ起こったか,前の時代とどのように変わったか,どのような時代だったかとか,このようなところが中学校であるわけでございますが,その次のページを御覧いただければと思いますが,「歴史総合(仮称)」のところで,何を契機にどのように変化したとか,どのように変化して,後にどのような変化をもたらしたか,後の方にどういうふうにつながっていったかというようなところ,そのような観点も含めて,「歴史総合(仮称)」における問いというものを変えていくということ。そのようなところで整理を,このような形でまとめております。
また,その次の「世界史探究(仮称)」のところを御覧いただきますが,「歴史総合(仮称)」に加えまして,どのような意味や意義があり,後にどのような動きをもたらしたかというようなところ,このようなところが探究系のところに,今,特に関わっていくのではないか,このような整理をしているところでございます。
それから,恐縮でございますが,資料15,16というところで目標の整理もしているところでございます。目標でございますが,今回,例えばというところで恐縮でございますが,資料16の左上の高等学校の地理歴史科のところを御覧いただければと思います。高等学校の地理歴史科につきまして,だけではないんですけれども,今まで目標を整理していた中で,前回の資料でいきますと49ページを御覧いただければと思います。菱印があってマルが三つ続くということで,柱書き的なところのものと,いわゆる3本柱に沿って整理をするというようなところ。その整理というものは踏襲しているわけでございますが,全体として,見方や考え方というものに関しまして教科統一的に考えていく際に,見方・考え方を歴史的視点や枠組みとして働かせるというところを重視していくことが重要ではないかというところ。また,これは小学校などにおいて,様々な教科を一緒に教える先生を考えれば,そこはある程度統一化を図っていってはどうかというようなところ,そういうところから,「社会的な見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,広い視野に立ち」うんぬんかんぬんというところを次のとおり養うと,このような構成,書き方に修正してはどうかと,このようなところの整理をしております。
また,地理歴史科に,高校レベルにおいては広い視野に立った上で有為な形成者にするということ。それから,中学校においては,広い視野に立つということ。小学校については,そういうところは入らないのではないかと。このようなところで整理を頂いているところでございます。
特に地歴科,それから,全体に係るようなところに関しましての御説明は以上でございます。

【田中主査】  梶山さん,どうもありがとうございました。資料7から資料16まで御説明いただいておりますが,ここではまず,少し区切って御議論いただきたいと思いますが,地理歴史科の歴史科目の必修となる「歴史総合(仮称)」について,まず御議論いただきたいと思います。資料7ももちろん含むんですが,これは前回の御議論も含んでおりますので,主に資料8から資料9-2まで,「歴史総合(仮称)」についての資料を御覧いただきながら御議論いただければと思います。いわゆる最初の資料8は全体の「地理総合(仮称)」,「歴史総合(仮称)」,「公共(仮称)」,また「地理探究(仮称)」,「日本史探究(仮称)」,「世界史探究(仮称)」,「倫理(仮称)」,「政治・経済(仮称)」という全体像がありまして,資料9-1と9-2は「歴史総合(仮称)」でございます。ここまでですが,主に資料8,9-1,2を中心に,資料7も含みながら御議論いただければと思いますので,御意見のある方はあらかじめ名札を立てていただけますと有り難いと思います。どの資料についてでも結構ですので,どうぞ御議論いただければと思います。よろしくお願いします。
相当大部な資料の御説明をいただいた後ですので,なかなか整理が付かないかもしれませんけれども,資料8は全体像ですので,特にこの15分間ぐらいで御意見を頂きたいと思っていますのは資料9-1,9-2だろうと思います。「歴史総合(仮称)」の改訂の方向性マル1とマル2になります。「歴史の扉」というものを置いていただいた上で,「近代化と私たち」「大衆化と私たち」「グローバル化と私たち」となるということですね。

【辻中委員】  意見じゃなくて,先ほど,9-1のところでちょっと分かりにくかったので教えていただきたいんですが,マイノリティの話とか女性の話とかを大衆化と並べて説明いただいたんですが,それはどこに書いてあるのか教えていただけますでしょうか。

【梶山主任視学官】  申し訳ございません。大衆化のところを説明させていただいたときに,単元例というものが左上に,すぐ下にあろうかと思います。こちらのところで,前回,「大衆社会の形成」ということで入れておって,「社会運動の高まり」というのは入れておらなかったわけでございますが,この時期の社会運動において,女性の問題でありましたり様々な方の話が出てまいりますので,このようなところで取り上げるというところがより明確になったのではないかと思っております。

【田中主査】  ありがとうございました。そのほかはいかがでしょうか。
ここについても少し御議論いただきたいと思っていることがありますので,私からもちょっと申し上げますが,「近代化と私たち」「大衆化と私たち」「グローバル化と私たち」ですが,これは時代区分,プロセスを含んでいて,近代社会の到来というところで,「化ける」という字があるので,そのプロセスを意味していると思うんですが,大衆化とグローバル化に関して,私が政治学者として気になっているのは,大衆化という意味が,エリートと大衆という意味で,必ずしも歴史だけではなくて,1時点での空間的な違いとか概念的な違いを意味する。若しくは,ヒエラルキーの少数のエリートの,例えば,オリガーキーのような少数支配から大衆化になるというような意味を持つ。白石先生の御意見を頂いているんですけれども,「19世紀後半~現在」の下のところにありますのは,「大衆の参加の拡大」という言葉がありまして,大衆化というのはこういう意味であろうと,大衆の参加の拡大という意味だと思うんですね。ただ,大衆化という意味は,「化ける」を用いると,ちょっと違った政治的意味を持つような,ポピュリズム的な意味を持つんじゃないかと。
それから,もう一つ,「グローバル化」という言葉もすごく気になっておりますのは,グローバルな社会になるという意味の「化ける」という意味以外に,時間的な,時系列の変化ではなく空間的な変化,例えば,今,グローバル経済反対という方たちが言っているのは,非常にモノリスティックな画一的な経済が世界に広がることに反対している,これを「グローバル化」とか「グローバル経済化」と呼んでいる。その意味を持ってしまうので,政治学や経済学から見ると,この「化ける」という言葉が大衆とグローバルに付いたときに,近代化のときとちょっと違う意味を持つように感じてしまいます。政治学者の特徴かもしれないですが。このあたりについて原田先生の御意見も伺いたいところなんですが,古城先生が国際政治経済学の御専門ですので,少し御意見を頂ければと思いますが。

【古城委員】  ちょっと遅れてきまして申し訳ありません。確かに,「グローバル化」というのが出てくると,これに対して賛否両論が出るという状況に今なっていますので,ただ,そういう誤解は生じる可能性はあるかとは思います。ですから,「グローバル社会と私たち」とか,もうちょっとニュートラルな形でいった方がいいのかもしれないという気はしますけれど,ただ,そうすると,どんどん,どんどんグローバル,相互依存が進化していくという傾向は,「化ける」という字を使わないとちょっと表せないような気もいたしますけれども。傾向って……。

【田中主査】  プロセスというかトレンドですね。

【古城委員】  はい,プロセス。

【田中主査】  トレンドとかプロセスという意味を表すには,何か「化ける」のような字が必要であると。

【古城委員】  多分,そこで「化」と付けたような,そういう意味ではないかと思っているんですけれども。それがうまく伝わればいいとは思うんですけど。

【田中主査】  「グローバル化と私たち」というのが,すごく,あるイデオロギーを持った方たちが,文部科学省の学習指導要領がこういう方向に生徒を導くかみたいなことを言われ始めると困ると思うんですね。そういうイデオロギーの意味を持っているのではないと思いますので,原田主査は地歴の方のワーキンググループのリーダーとしていかがでしょうか。

【原田主査代理】  地歴のワーキンググループでは特段異論といいますか,これに対して御意見はなかった。多分それは,そこに参加する方々が,田中先生が御指摘いただいたような意味で,例えば,「近代社会の到来と私たち」とか「大衆社会の到来と私たち」「グローバル社会の到来と私たち」という文脈で捉えながら,そこにプロセスと現在の私たちとの関係を見ていくと考えておられたので,多分余り異論がなかったと思うんですが,それぞれの「近代化と私たち」「大衆化と私たち」「グローバル化と私たち」の単元例の最後の「まとめ」というところに,「歴史と現在マル1」「歴史と現在マル2」「歴史と現在マル3」という中で,近代社会とか大衆社会とかグローバル社会というのが書いてありますので,そこで田中先生が御指摘のようなことは含意されているのかなと私は捉えておりました。
それと,今のこのグローバル化につきましては,確かに「グローバリズム」と言ってしまうと,いろいろ異論があるかもしれませんが,「グローバリゼーション」ということであれば,いいか悪いかは別としまして,一つの流れとしてそういう傾向にあるのかなというのと,これをもし変えていくとなると,もう目標の構造からあらゆるところに波及してくるので,これはみんなで合意して,そういう意味ではないんだという形で理解できればやむを得ないのかなと思っているところです。
以上です。

【田中主査】  原田先生のお話ですと,この言葉を変えてしまうと,全てのところに,細かいところで微妙な変化が起こってしまって,全部書き直すようなことになると。それはなかなか難しいということなので。
古城先生がおっしゃるとおり,傾向とかプロセスということを示すには,「化ける」という字も必要であろうというので,確かにそういうこと。では,ある意味では,大衆化とかグローバル化が政治的な意味を持つものでないという,若しくは,経済でもそうですけれども,政治,経済的な意味で,ある主義を主張しているのではないということが必要だろうと思いますので,そこを高校の先生方に御理解いただかないと,かなり誤解を招くんではないかという。大学の中でも,「グローバル化」と言っただけで目をむくような教授も何人かいらっしゃいますので,そういう狭い視点ではないということはかなり重要な視点であろうと思っております。
ということで,この件はよろしいでしょうか。
先生,どうぞ。

【一ノ瀬委員】  ちょっと今の話とは違うことなんですけれども,私,道徳などのワーキンググループに参加していて,そのときにも出たんですが,防災,自然災害に関する問題は道徳教育などでも一つのトピックとして取り上げられて,今日御説明いただいた地理科目のところでは大きな単元として,防災と持続可能な社会の構築が取り上げられているんですけれども,歴史に関しては,自然災害についての歴史的視点からの接近については特に取り上げられていないので,例えば,もし取り上げることが考えられる題材の中に加えられるならば,自然災害というのを,当然,歴史教育の中に入れていただければなと思います。
これは実は,私の所属する学部の学部長からの受け売りなんですけれども,今,人文系の学問がどれだけ必要かということは一つの話題になっていますけれども,そのときに現代日本が抱えている必要性の一つとして,当然,自然災害が大きなものとしてあるんですけれども,自然災害,例えば,地震なんかについての資料は,自然科学的な探究では,せいぜい100年ぐらいしか,厳密なものは探り当てることができないけれども,そうなると,1,000年単位ということになると,古文書とか歴史的な人文系の学問の蓄積が地震に対する対応策というときに,どうしても求められるようになるので,必ずしも人文系の学問が浮世離れした不要なものではないということを言うための一つの根拠として,自然災害については,人文的な研究の蓄積が非常に重要な資料になるんだということを言えるという話を,私が所属する学部長からいただいたんですけれども,そういう点から考えても,歴史教育あるいは歴史研究ということが,例えば,災害,防災に何らかの手掛かりを提供し得る分野であることを言うためにも,地震だけに関して言えば,東日本大震災のときには,1,000年前の平安時代のものとして貞観地震が出されたこともありますけれども,富士山の噴火も18世紀の最初の頃に一番直近の噴火があるわけですから,そういうことも少し触れる姿勢があっていいのではないかと思いました。

【田中主査】  新しいリクエストかもしれませんが,原田先生,この点についてはいかがでしょうか。

【原田主査代理】  御指摘のとおりだとは思いますが,それをどこで扱うかということは,具体的な教育課程の編成の中で議論にはなってくるとは思うんですけれども,現時点では,いかがでしょう,特にここでということはないんですけれども。

【一ノ瀬委員】  やっぱり「グローバル化と私たち」というところの中に,「持続可能な社会を展望するために」という副題が付いておりますので,もともと国土が安定したものでなければ持続可能もへったくれもないので,やっぱりここに入れるべきではないかと思います。

【原田主査代理】  ありがとうございます。その方向で議論したいと思います。

【田中主査】  ありがとうございます。
事務局の方,いかがでしょうか。

【梶山主任視学官】  また御相談させていただきたいと思います。ただ,同じ地歴科の中で,今回,100%の方が受ける必修科目となる「地理総合(仮称)」におきまして,防災のことに関しては十分やっていくところはあろうかと思っております。そこを中心とした上で,歴史でどこまでどういうふうに扱えるかというところは,また,学校で扱うのか,教育課程として示していくかは御相談させていただく必要があるのではないかと拝聴させていただいたところでございます。いかがでございましょうか。

【田中主査】  梶山主任視学官,ありがとうございます。大事な御指摘を頂いています。私もちょっと思っていましたが,総合は「地理総合(仮称)」も「公共(仮称)」も「歴史総合(仮称)」も必修科目となるので,必ず学ぶとなれば,地理も歴史も連関性が非常に高いのが今回の学習指導要領の改訂の根幹の思想ですよね。教育思想だと思うんですが,そうしますと,地理のところで歴史的な視野も入れて,歴史的な時系列の変化も地理で学ぶことがうたわれていて,その中にサステーナブル・ソサエティーという話があり自然災害の話も入るということなので,歴史の方でも触れることはよろしいと思うんですが,「歴史総合(仮称)」でなくても,歴史的な自然災害の問題については,地理の方でも学んでいると。
やっぱり非常に大事なことは,高校生が受験科目で選択して,何々を学ばなくても卒業するみたいなことを変えていきたい,その考え方を抜本的に変えていきたいというのが今回の学校指導要領の見直しの骨子だと思いますので,地理も学び「歴史総合(仮称)」も学ぶ中で両方学んでもらえればという考え方もあるとは思います。

【一ノ瀬委員】  一言だけ。熊本のように,ほとんど地震がないだろうと思っているような地域でも出ちゃうので,いわば自然災害に囲まれている国土なんだということは,歴史的にも地理的にも倫理的にも,いろんなところから覚醒させていくというか,意識させていくことは必要なんじゃないかと思います。

【田中主査】  多角的に理解するべきであると。じゃ,これは前向きに御検討いただければと思います。ということで,ありがとうございます。
それ以外にはいかがでしょうか。はい,どうぞ。

【池野委員】  池野なんですけど,前回もちょっと発言させていただいたんですけど,「総合」という名前と「探究」という名前が地理歴史科では使われていて,それから,公民科ではそういうのは使われていないんですけど,同じ資料8を見れば,「公共(仮称)」というのは総合的な取り扱いをして,「倫理(仮称)」や「政治・経済(仮称)」は探究的な取り扱いをするという位置付けになっているので,それぞれの要素みたいなものを確認したいと思うんですよね。
一つは,総合というのは,地理や歴史の場合に,多分二つ,正確には三つかもしれませんけれども,抜かしてはいけないことになっているんだと思うんですね。一つは資料8に出てくるように,ラインが引っ張ってありますように,現代的な諸課題の形成に関わる,あるいは現代的な地理的な諸課題と言われるように,現代の課題ですよね。あるいは,「公共(仮称)」の場合だったら「現代社会」の課題なんですけど,諸課題というものに関係付けて設定されていることが一つですよね。
二つ目は,今,梶山先生が御説明していただいたように,主体的に学んでくることが二つ目の要素としては必要になっていることだと思うんですね。主体的に学ぶときに,今話題になっていた近代化だとか大衆化だとかグローバル化を教えるんではなくて,子供たちがそれについて学ぶようにすると。そのために,いろんな事例が出てきて,概念を使ったりすることだと思っています。
もう一つ大事なことは,その次の探究のところに,それぞれ,例えば,「世界史探究(仮称)」だとか地理の探究のところに赤字で,資質・能力のところの真ん中に出てくる部分なんですけど,「歴史総合(仮称)」で習得した歴史の学び方を活用して,「世界史探究(仮称)」だとか「日本史探究(仮称)」では,次の探究を行ってくるというように書いてあるんですよね。そうした場合に,歴史の学び方が,「歴史総合(仮称)」なり地理の総合の中でなされていないといけないことになるので,その歴史の学び方なり地理の学び方,地理の場合は学習の成果になっているんですけど,学び方みたいなものが見えるような形で出てこないといけないんだと思うんです。近代化だとか大衆化だとかグローバル化を通す中で,歴史の学び方が単元例や考察を深める問いの中で出てきて,行っていく。これが発展的に,例えば,日本史の例に出てくるように,資料を使って解釈をして説明して構想して論述するというところに探究の中で発展的に行われるようになってくるんだと思うんですよね。
だから,歴史の総合でやらないといけないことと探究でやらないといけないことの切り分けみたいなもの,内容の切り分けと共に,学習の仕方なり学び方の切り分けみたいなものがもう少し分かりやすく説明できるといいと思うんですよね。例えば,課題と「主体的な学び」と主体的な学び方と,それを探究の場合には,構造的に発展的に探究例が出てきたように,概念を使って行うことだとか,あるいはまた,地理のように,視点あるいはアプローチとか書いてあるんですけど,そういうものを使って,より問題を発展的に学習できるようにするということが,資質・能力の探究の説明のところに出てくると,もっと分かりやすいのではないかと思いました。それが一つです。
これと同じことで,公民科で,後ほどまた説明されるのかもしれませんけど,「倫理(仮称)」や「政治・経済(仮称)」,あるいは「公共(仮称)」というものの関係も同じように,地理歴史科と同じ形の関係が出てくると,もっと分かりやすいのではないかなというのが私の意見です。
以上です。

【田中主査】  池野先生,ありがとうございました。
今の池野先生のお話でもありましたように,「歴史総合(仮称)」のお話を御議論いただいていましたけれども,資料10-1,10-2,10-3までの「歴史総合(仮称)」から「世界史探究(仮称)」,また,「日本史探究(仮称)」へと視野を広げて御議論いただいた方がよろしい。今,まさに池野先生の御指摘はそういう御指摘なんですが,そこが必要であると。
特に,今の御指摘は,「歴史総合(仮称)」での頭の使い方とか物の見方と「日本史探究(仮称)」,「世界史探究(仮称)」での見方には,もちろん関連性はあるものの,若干違った学び方があるだろうと。そこのところを明確にできないかということでした。
「公共(仮称)」については後ほど御議論いただくことになると思うんですが,ただ,地理にしても歴史にしても「公共(仮称)」にしても,横に置いても学び方の違いがあることは最後の方で御議論いただくことになると思うんですが,歴史に絞りましても,総合と探究の違いを何か明確に示せないかという御提言でございます。この件についても結構ですが,資料8から資料9-1,2,資料10-1,2,3を通して,いわゆる「歴史総合(仮称)」から「日本史探究(仮称)」,「世界史探究(仮称)」まで,歴史について通して御議論いただければと思いますが,いかがでしょうか。
じゃ,私から,私が気が付いたことをまた申し上げますが,ちょっと古い資料を,前に非常に感銘を受けていて,いい表現だと思っていたものがありましたので探してみましたらば,1月25日のワーキングの資料で,2月16日の本特別チームの資料にございました中で,歴史の総合,もちろん探究にもつながるんですけれども,考え方として,比較ということを大事にすると。比較という視点。そこで,括弧して「類似と差異」という言葉が入っています。それから,因果の原因と結果,因果関係と言った方がいいかもしれません。因果というと若干誤解を招くのは,仏教用語で因果応報のような意味がございますので,ここはやっぱりcausal relationshipだろうと思うんですが,因果関係という意味で,原因と結果という。そして,相互作用,関係性やつながりという御説明がありました。
資料9-1の右下の四角に,黄色で囲みがあって赤い字でありますが,「比較して相違や共通性などを明確にし」というのは,まさに類似と差異を注目した比較の方法論。それから,「因果など事象相互の関連性に留意」というのは,これは因果関係の原因と結果の1方向と,それから,ダブルアローといいますか,逆の方向もあるという。相互に作用する場合も含めていますが,もうちょっと,このあたり,前に出てきた用語は非常に明確だったと思うんですね。これは,大学における社会科学の考え方とも非常につながっている。類似と差異ですね。それがカテゴリー化というものとも関係があるんだと思うんです。それから,原因と結果というのは歴史的な場合もあります。時系列の変化だけではなく,時系列の変化が主なんですが,常に物事には原因と結果があるんだということも高校のうちから学んでおくことも重要だと思います。原因と結果が単純に一方通行でないという,相互方向性ということで,このあたりは少し明確にしていただいた方が,この黄色の中の表現は非常にすっきりとはしているんですけれども,高校の教員の先生方に,ここを明確に書いていただくには,1月25日のワーキンググループ,2月16日の本特別チームの資料などにもあるような表現でも,そういうものは少し明確にあってもよろしいんじゃないかという気はしておりました。
これ,大学の社会科学の考え方と非常に近いと思っておりまして,こういうことを学ぶことが,「歴史総合(仮称)」を無視できないんだと,やっぱり高校の先生方にも理解していただく必要があると思うんですね。これは私の意見ですけれども。
磯谷先生,どうぞ。

【磯谷委員】  磯谷です。今,主査の言われたように,歴史というのは事実が一杯あるものですから,やはり観点を決めないと,ばらばらになっちゃって,結局,細かいことばっかり教えちゃって,一体何を教えたんだということになりがちだと思います。ですから,やはりそういう観点を出して,精選して教えていくと。そうすると,生徒も理解しやすくなるものですから,そういうのを指導要領へ落としていくのは大事なことだと思っております。
それと若干ずれるんですけれども,資料10-2について意見を言いたいと思っております。先ほど事務局から,「世界史探究(仮称)」につきまして,時代区分として四つあるんですけれども,今回,副題みたいなところを取ったと,そういう御説明がありました。例えば,前回ですと,一番古代的なところで言いますと「多様性」という言葉があって,中世的なところでは「複合性」,近代では「関係性」,現代では「多元性」というような言葉があったんだけれども,これが独り歩きしがちであって,いろいろ誤解も受けやすいので取りましたという御説明があったんですけれども,確かにそういう一面もあるんですけれども,先生方や生徒からすると,そういった単語があった方が理解しやすい側面も一方であるんではないかと思うんですね。
ですから,大幅にその単語が合意が得られなければ,それは外した方がいいんですけれども,大体このような感じかなというものであれば,あった方が教員も教えやすいし,先ほど言った精選の観点といいますか,教える際の視点にもなりますものですから,あってもいいのかなと思っております。
「日本史探究(仮称)」にも地理の探究にもちゃんと副題といいますか,そういうのがあるんですね。世界史だけないというのも,バランスが悪いといいますか,そんな思いもありますものですから,付ける方向も考えてもいいのかなと思っております。
以上です。

【田中主査】  ありがとうございます。
事務局からお願いいたします。

【梶山主任視学官】  ありがとうございます。実は,本日御欠席なんですけれども,白石先生と羽田先生から,この御意見があったところでございまして,今おっしゃっていただいたところで一番下のところ,特に地球規模で一体化しつつ多元的な相互依存関係というもの,こちらを言葉として表すのが非常に難しいのではないかというところ,こういうお話を頂いて,主査とも御相談させていただいて,一応ここの案からは消させていただいているところでございます。確かに適切な言葉があれば入れていくという方向性はあるんだと思いますが,一番下が事務局としても分からないというか,苦難をしているところでございます。

【田中主査】  橋本先生,お願いいたします。

【橋本委員】  ありがとうございます。前回質問すればよかったんですが,今,ちょっと分からなくなったので教えていただきたいと思います。資料9-1の「歴史総合(仮称)」の「グローバル化と私たち」のところの考察を深める問いの事例の例示のところなんですが,「a~eの幾つかから」という例示になっておりますが,グローバル化ということからすると,a,bはそういう基本的な,「近代化と私たち」「大衆化と私たち」のところもそういう焦点化ということはできるんですが,やはりグローバル化になれば,c,d,eの視点が必ず要るのかなと思ったりするんですが,それは当然でしょうということなのか,この「幾つか」という例示の表現がちょっと気になったんですが,いかがでしょうか。

【田中主査】  事務局からお答えいただけますでしょうか。

【梶山主任視学官】  ありがとうございます。こちらにつきましては,確かに「幾つか」という表現は,どれをというところはあると思います。ただ,このaからeまでを全て取り扱って大丈夫かというところがございまして,「aからeの幾つか」という表現にさせていただいたところでございます。今,先生がおっしゃっていただいたように,後ろの方に特にシフトがあるというところは,そういうところに実際なっていくんではないかと思いますが,「幾つか」という表現は,また原田先生と御相談させていただければと思います。

【田中主査】  ありがとうございました。この点について,今,資料10-3まで,「歴史総合(仮称)」,「日本史探究(仮称)」,「世界史探究(仮称)」について主に御議論いただいてまいりましたけれども,そのほか,御議論は特によろしいでしょうか。
どうぞ,古城先生。

【古城委員】  資料10-2の「地球世界の到来」のところの文言なんですけれども,以前の資料ですと,「地球規模での一体化と多元性を深める」となって,それが修正されて,「地球規模で一体化しつつ多元的な相互依存関係を深める」となっているんですけれども,一体化というのは別に平準化ではないと思いますので,これでも構わないと思うんですけれども,ちょっと違和感がありまして,地球規模で一体化しつつ多元的に相互依存が関係を深めているというよりも,多元的な相互依存関係が深まったので地球規模で一体化しつつあるということではないかと思うんですね。ですので,そこ,文言を入れ替えていただいた方が誤解がないんじゃないかと思うんですけれども。要するに,多元的な相互依存関係が深まるので地球規模でコネクトしていくという,多分そういうことだと思うんですけれども,いかがでしょうか。

【田中主査】  何か,スーパーマンみたいな方が,ユニフィケーションというような形で世界を統合する話があるのではなく,現象として多元的な相互依存関係が深まっていく中で地球規模が非常に一体化してくると。結果としてそうなるということですね。外圧のようなもので統合することではないということですね。

【古城委員】  恐らくそういうことが焦点だと思うので。そうしないと,何となく,ここ,別の分野では一体化してないじゃないというようなことが出てくると思うんですね。相互依存が深まっているというので,多分,関連性が非常に密接になっていくということだと思うので。
【田中主査】  「一体化」という言葉が「統合」よりもいいというのは,多分そこのことを示しているんだと思うんですが,確かに,より明確にするには,「多元的な相互依存関係が深まる現代世界において地球規模での一体化が進む構造的特質」とかそういうことですかね。そういうような表現になろうかと。このようなことで,原田先生,ここについてよろしいですかね。この辺はいかがですかね。

【原田主査代理】  意味するところは,今,古城先生から御指摘があったことだと思います。あとは文章のことなので,また必要であれば検討しなきゃいけないとは思います。ありがとうございます。

【田中主査】  じゃ,これは事務局とワーキングの先生方とで御検討いただければと思います。
そろそろ時間も参りましたので,この議論を一度ここで離れて,次へ……。
済みません,失礼しました。一ノ瀬先生。

【一ノ瀬委員】  先ほど,田中主査が言われた比較と因果ということに関して一言。確かに,「因果」と裸で出されると,仏教用語の「因果応報」というのを思い出す方もいらっしゃると思うので,私,哲学を専攻していて,哲学では,基本的に物理現象なんかに関わる因果性のことは客観的な世界に属するものでcausationと言って,人間の現象に関わるのはcausal explanationと普通言うので,例えば一つの例ですけれども,「因果的説明を介した事象相互の関連性に留意する」とすると,学問水準に合った形での表現になるのかなと思います。

【田中主査】  ありがとうございます。因果的説明という,ありがとうございます。そういうところで,少しずつ誤解のない形にということで,少しまとめますと,先ほどから幾つか出てきておりますけれども,「グローバル化」とか「大衆化」という言葉が,そういう特殊なイデオロギーの意味を持つのではないということの,歴史的な変化を示すということなど,また,幾つかの,一体化についてもそうですけれども,様々な御指摘を頂きましたので,それらをワーキンググループと事務局にお願いしながら,また深化させていただければと思います。ありがとうございます。
それでは,大分お時間を頂戴しましたので,次の課題へ参りたいと思います。今度は地理でございますけれども,「地理総合(仮称)」と「地理探究(仮称)」で併せて御議論いただければと思いますが,資料11-1から11-3までになりますけれども,10分程度。こちらは議論がもう固まってきていると思うんですが,なおかつ御議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。
どなたからでも結構ですが,井田先生は御専門でいらっしゃるので,何か,今までの中でお気付きの点があれば,どうぞおっしゃっていただければと思います。

【井田委員】  ワーキンググループでも随分発言させていただいて,かなり修正していきましたので,大体これで固まっているんじゃないかとは思います。

【田中主査】  ありがとうございます。いかがでしょうか。
地理の総合と地理の探究に関しては,かなり御議論を進めていただいているので,もうほぼ固まったということでよろしいでしょうか。特にお気付きの点がなければ先へ進めさせていただければと思います。どうもありがとうございます。
それでは,その先へ参らせていただければと思います。高等学校の公民科についての議論に移るべきかと思いますが,ここについて事務局から少し御説明いただけますか。梶山さん,お願いします。

【梶山主任視学官】  それでは,私から今回の案に関しまして御説明させていただきます。
まず,資料といたしましては,12-1というものを中心に,先ほど御覧いただきました特別チームの第4回目の資料ということで,資料2の35ページを両方御覧いただきながら,お話をお聞きいただければと思います。
まず,12-1の方を御覧いただければと思います。「『公共(仮称)』の改訂の方向性(案)」というところで,ワーキンググループにおいて,次にあります12-2の3ページ物の資料があるわけでございますが,その資料を1枚に説明するために作らせていただいた資料というもの,こちらでまず御説明させていただければと思っております。
こちらにつきましては,前回の御議論を踏まえ,また,ワーキンググループの御議論を踏まえて修正した箇所につきましては,左の「資質・能力」,こちらの3番目のところを御覧いただければと思います。こちらの3番目のところに,思考力,判断力,表現力,こちらのところを書いておるわけでございます。選択・判断するための手掛かりとなる考え方や基本的原理を活用して,諸課題の解決に向けてとありますが,その次に,事実を基に協働的に考察するというようなこと,それから,合意形成や社会参画を入れながら構築したことを,これこれこういうふうにして,「論拠を基に議論する力」と,このようなところが,前回ワーキンググループにおいて,ある意味,当たり前のところでございますけれども,重要なのではないかという御議論をいただいたところでございまして,こちらを入れておるところでございます。
また,(1)の「公共の扉」というところの構成でございますが,アの「公共的な空間を作る私たち」のところ,こちらのマル2のところで,2行目のところで,「自らを成長させることや,対話を通じてお互いを理解し高め合うこと」とございます。こちら,前回,特別チームで御議論いただいたところで,「高め合う」という1番のところまでにいかない場合も当然あるのではないかというところ,なかなか難しいところではないかというところもあり,お互いを通じて理解し高め合うというところで,最終的な目標としての高め合うところは残させていただきますが,「理解し」というところを入れてはどうかというところで,こちらは修正をしておるところでございます。
それから,(2)でございますが,(2)の中で,法的主体というところで,「司法参加」という言葉がございました。これは,単なる司法参加だけではなく,様々な民事,刑事の裁判制度というものを併せて司法参加というものを考えていくことが重要ではないかという御意見がございましたので,「裁判制度と司法参加」というところ,このようなところを入れ込んでおるところでございます。
また,(3)でございますが,この(1)(2)を踏まえてどのようなことをやっていくかというところで,(3)の下に,各教科,他の教科との関係性というものを明確にした方がいいのではないかということで,特に総合的な学習の時間との連携というものが重要ではないかというような御指摘を,前回の特別チームに頂いたところでございます。そのため,一番下の赤の点線のところでございますが,「横断的・総合的な学習や探究的な学習を行う総合的な学習の時間などと連携」するというようなところを,こちらを付け加えさせていただいたところでございます。
そこで,12-3を御覧いただければと思います。これが,前回の特別チームにおいて御議論していただいたときに,先ほど御覧いただいた1枚の資料では,どのような授業を行うかというようなイメージがなかなか湧きにくいのではないかというところ,また,特に(2)を中心に,ここが個別の知識を教えていくようなものになってしまうのではないか。そのようなところを中心に,全体の授業展開のイメージというものを示してほしいという話をいただいたところでございます。そのため,重視する思考力と授業イメージというものを御議論いただいたところでございます。こちらにつきましては,項目構成と,そこにおいて重視する思考力,判断力,表現力というものをまとめた際に,人間として,社会の見方・考え方を用いた授業設計として,問いを重視した授業展開というものが,やはり「公共(仮称)」において重視されるべきではないかというところ,そういう観点から作らせていただいております。問いの例と授業展開のイメージとして,(1)につきましては,こちらは「人間社会と自然環境との関わりについて判断する際,どのような手掛かりがあるだろうか」というところでございますが,全体を御議論いただく際に,この(1)を指導する際には,環境保護,生命倫理などについて概念的に考える活動を取り入れるというようなこと,こういうことが考えられるのではないかというところを御議論いただいていたわけでございます。そのために,自然環境と人間社会の関わりという例で,こちらに入れさせていただいております。
マル1として,その行為の結果である,個人や社会全体の幸福を重視する考え方に立った場合に自然環境というものをどう考えるんだというところ。また,マル2として,その行為の動機となる人間的責務としての公正などを重視する考えに立てばこういうことなんではないかと。これについて生徒たちが考えまして,1,2共に諸課題を考える際に手掛かりになる重要な考え方であるが,人が追求するものは経済的価値に限られるものではなく,多義的であるようなこと。それから,両者共に活用して,自他共に納得できるような解を見出そうとしていくこと。こういうことについて継続的に考えていくことが重要であるというようなこと。こういうことを(1)において考えていくというのが,一例でございますが,考えられるのではないかというところを(1)でこのようにまとめております。
それから,(2)でございますが,「公共(仮称)」というものを設置するに当たって,18歳選挙権というものが今回適用されるわけでございますが,それに従って副教材等を作成させていただいたところでございます。そこから引いたというようなところもございますが,政策についての選択・判断や立案・提案を通じて政治参加の意義を考えようというところで,中学校の学習を振り返り,様々な意義について考察すると共に,実際の選挙というものをイメージして,何を基準に投票するかというものを協働的に考察したり,模擬選挙を実施するというところ。また,専門機関と連携して,専門的な助言を得るというようなところ。その際,様々な資料,選挙公報などを読み取って,その表というような活動を通じて,(1)で身に付けたような考え方を活用して,具体的な政策を選択し,判断する際の投票の手掛かりとなることを身に付けること。それから,他者と協働して立案・提案することの大切さなど,こういうようなところを考えていくということ。
それから,それを振り返って,有権者になることであったり平和で民主的な国家,社会の形成者になることなどについて自覚を深めると,このようなところが学習イメージとして考えられるのではないかというところが(2)でございます。
また,(3)といたしまして,持続可能な社会で何をするかというところで,例えば,例示としてありました文化と宗教の多様性に関する課題を自ら見いだすというようなところ,そこをグローバル化,情報化などが進展する中でどのようなことを考えていくかというところ,そのようなところに関して議論したり論述したりするというところ。また,その大切さに気付き,参画していこうとする態度を養うと,このようなイメージが考えられるのではないかというところで,この「公共(仮称)」という科目がどのような方向性でいくのかというところ,どのような学習活動が行われるのかという例示を発信していくことが重要なのではないかというところから,このようなところをまとめて,その御議論をいただいたところでございます。
それから,次のページを御覧いただければと思います。先ほどもお話しいただいたところでございますが,「公共(仮称)」というものが,「倫理(仮称)」,「政治・経済(仮称)」という,資料12-4でございますが,こちらについて,どのように関係していくかというところでございます。それぞれにつきまして意欲や態度を育んで,生き方や在り方についての自覚を一層深めるという,ピンク色の部分は,「公共(仮称)」の構成を受けてというところは変わらないわけでございますが,「倫理(仮称)」,「政治・経済(仮称)」について,特により充実した見方というところを活動も含めて入れておるところが追加させていただいたところでございまして,原典も活用し様々な先哲の考え方を手掛かりとし,哲学に関わる対話的手法も活用していくと。それで,思索を行って,他者と共に生きる主体を育む倫理というものを実施するということ。
それから,「政治・経済(仮称)」につきましては,政治と経済の特質を総合的・一体的に捉えると共に,グローバルな視点をより重視していって,より積極的な役割を果たす主体を育むような教科にしていくこと。このようなところを取り掛かりとして入れております。
それから,次のページを御覧いただければと思います。12-5でございます。先ほど御説明した(1)で,「自己の課題と人間としての在り方生き方」というところ,こちらの上から,矢印の4行目のところ,「様々な先哲の考え方を手掛かりとして」云々,「思索を深める」,このような部分を,先ほどのペーパーと同趣旨のことを追加しているところでございます。
それから,次のページ,12-6でございます。「政治・経済(仮称)」につきましても同様に,(1)の矢印のところ,次の矢印のところもでございますが,様々なところを総合的・一体的に捉えて説明するというようなところ,こういうところを付け加えさせていただきまして,探究的な活動が行われるというところ,より深めていくというところ,それをこのペーパー上も明確にしていくというような御議論をいただいたところでございます。
「公共(仮称)」につきましては以上でございますが,済みませんが,併せて資料7を御覧いただければと思っております。資料7につきましては,先ほど来御説明している内容を基本的に,その内容をこの中に入れて,文章化したものでございます。後ほど御確認いただければとは思っておるんですが,1点だけ,今御説明した以外のところで,最後の27ページのところを御覧いただければと思います。前回のワーキンググループでも御議論いただいたところではございますが,この地歴科,公民科の学習内容に関しては,やはり大学入試選抜の関係が非常に重要になってくるんだというところ,そちらにつきまして,大学接続システム改革会議におきまして,学力の3要素というものを多面的・総合的に評価するというようなもの,これの具体的方策の進捗状況を勘案すると共に,それに対応して,高等学校においても指導の在り方と一体となった評価の在り方を見直すことが一層求められるというようなところ,このようなところを付け加えた方がいいのではないかという御議論をいただいたところでございます。このようなところを含めて御議論いただいたところでございます。
私からは以上でございます。

【田中主査】  梶山さん,どうもありがとうございました。最後のところ,資料7の27ページのところも,前回の御議論もあったところで非常に重要なところだと思います。これ,また後で少し御議論させていただければと思いますが,まずは,必修科目の「公共(仮称)」について御議論いただきたいと思います。資料で言いますと,12-1から12-3まででありますが,これについて15分程度御議論いただければと思います。
その後に続いて,選択科目の「倫理(仮称)」,また「政治・経済(仮称)」というものについても御議論いただければと思いますが,まずは,資料12-1から12-3までについて,「公共(仮称)」についてはいかがでしょうか。
この点について,私からも土井先生に伺っておきたいと思うんですが,個人的には聞いているんですけれども,少し御議論いただければと思っているのは,「公共の扉」の上にあります言葉があります。「グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者を育成」するということなんですけれども,ここが切り方を間違えてしまうと誤解を招いてしまいますので,グローバル化する国際社会に主体的に生きる,国家でも社会でもなく,それを作る者,すなわち有為な形成者がこの目的語なんですね。有為な形成者を育成すると。その有為な形成者というのは,グローバル化する国際社会というところで,そこで主体的に生きており,それが民主的な国家及び社会の形成をするという,非常に難しい概念だと思うんですが,土井先生に少し御説明いただければと思いますが,いかがでしょうか。

【土井主査代理】  この表現は,「公共(仮称)」に限らず地歴でも用いられており,地理歴史科あるいは公民科を通じて,どういう人材を育成していくのかを示す表現でございます。従来,この特別チームにおいても,あるいはワーキンググループにおきましても,このような社会で主体的に活躍する人の地位をどう表現するかという点についていろいろと御議論いただいたところです。その結果として,やはり教育基本法に出てきている国家及び社会の形成者という概念,これを基礎に用いて表現をしようということになりました。
しかし,どうしても「国家及び社会の有為な形成者」という順序で書きますと,国家が一番大きな単位のように見えるかもしれませんが,しかし,現在,グローバル化していく国際社会において主体的に生きるという,そういう国際社会,地球社会を形成する主体でもあることを明確にした方がよいという意見も強く,「グローバル化する国際社会に主体的に生きる」という表現はやはり不可欠だろうと思います。そこで,非常に長い文章ですので,どこかに点を入れるというのは一つの考え方なんですけれども,これは密接不可分で全体が一体化しているので,少し文としては長い,節としては長いんですけれども,こういう形で表現をさせていただいたと,そういう趣旨でございます。

【田中主査】  ありがとうございます。かなり明確になってまいりましたので理解しやすくなってきたと思います。それで,「公共(仮称)」の方では,かぎ括弧で始まって,「形成者」でかぎ括弧が閉じる形で示していただいております。「歴史総合(仮称)」,「地理総合(仮称)」の方では,それが1文なので,できれば「公共(仮称)」の方と表現をそろえていただいた方が多分,分かりやすいかと思いますので,土井先生の今の御説明でそこはかなり明確だと思いますので,そうしていただければと思います。
もちろんそれ以外の点についても,「公共の扉」から始まり,自立した主体としての国家,社会の形成に参加し,他者と協働する。また,持続可能な社会作りの主体となるということで,「公共(仮称)」も今までの,「現代社会」と言われている政治・経済社会や倫理の前にある,易しい科目というイメージとはかなり異なっている。非常にダイナミックな重要な概念。人間として今日のグローバル化された社会の中で生きていく上で非常にシステム,概念を説いていただいていると思うんですね。ワーキングの先生方に相当の御尽力をいただいたと思うんですが,このあたりについて,現場の先生もいらっしゃるので,黒崎先生や高木先生からも御意見があれば伺えればと思います。どなたからでも結構ですけれども。
黒崎先生。

【黒崎委員】  こんにちは。非常によく整理されていると思います。資質・能力のところで,「事実を基に協働的に考察し」ですとか「論拠を基に議論する」というところが,特に「公共(仮称)」に関しては重視されるべきであろうというところで,この辺が付け加わるというか,重きが置かれる,思考・判断・表現力の中核として置かれるのは非常に大切なことだと考えております。
その上で,やはり高校生が無自覚にこういったことができるかとなると,現場を見ていると,なかなか難しいかなと考えております。本校でも,議論をするってどういうことなのかですとか,こういう根拠に基づいて主張をする方法ですとか,それに対して反論をする,いわゆるスキルと言ってしまったら狭まってしまうのかもしれませんけれども,そういったところを積み重ねて学習を進めていく。そうすることによって,最終的に持続可能な,例えば,(3)の「持続可能な社会づくりの主体となるために」というところで,しっかりと課題を探して,それに対して情報収集して,最終的に根拠に基づいて自分の意見を伝えていくことができるようになると考えております。
ですので,今回,(1)「公共の扉」から見方・考え方というか,基本的原理をしっかりと習得させて,それを(2)(3)で活用させていくという流れがきれいに作られておりますので,それと同時に,そういった,議論するですとか考察するですとか協働するといったようなところも習得し,活用していけるような発展的・段階的になるようにするとよいのかなと考えております。
そして,もう1点なんですけれども,現在,ちょうど,先ほども資料12-3の(2)でありましたけれども,具体的な授業というところでは,現在,ちょうど18歳選挙権の真っ最中というところで,本校でも事前学習が進んでおります。本校では,事前学習,3時間で組んでおりまして,2時間目ということで,今日も政党を作ろうという。政党を作って,党首討論をしようというところをやってきました。生徒自身が興味ある政策を挙げて,それに基づいて政党を作って党首を選んで党首討論をするというところ,最終的にというところで,今日,授業が終わったんですけれども,次回はそれに基づいて,自分の挙げた,自分が大切だと思う政策について,各政党が具体的にどういう立場を取っているのかというのを比較検討していくところを考えています。
そういう中で,思うところとしては二つありまして,一つは,生徒自身も政治が分からない,分からないと言っておきながらも,中には根強く,社会課題に関心がある,そして,知識を十分に持っているなというところは非常に感じておりますので,やはり今回の「公共(仮称)」に関しても,そういった部分をしっかりと引き出してあげられるような授業にしていきたいなと考えています。
もう1点としては,非常に気になるところでは,消費税ですとか待機児童の問題は非常に挙がりやすく,また,しっかりと「現代社会」ですとか「政治・経済」で勉強している生徒なんかは,集団的自衛権の問題ですとか憲法改正の問題ですとかアベノミクスの問題も取り上げてきておるんですけれども,どうしても若者向けの政策というのが,なかなか興味を持てていない現状というか,どういったものがあるのかどうかというのが理解できていない。これはまた,私の指導の問題なのかもしれませんけれども,例えば,給付型の奨学金の問題ですとか大学の授業料の問題ですとか,そういった,いわゆる人生前半の社会保障のような部分に関して,なかなか興味を持てていない現状があることを考えると,そういったところも,例えば,今回,(2)の「自立した主体として国家・社会の形成に参画し,他者と協働するために」というところで,若者が主体として政治・経済,また,その他に参画したことによって,どういうメリットがあるのかというところ,自覚できるようにしてあげた方がインセンティブが働くのかななんていうところは感じたりはします。

【田中主査】  黒崎先生,貴重な御意見をありがとうございました。
3点頂いていますけれども,最初の点の資質・能力についてはおっしゃるとおりだと思うんです。資料7のワーキングの取りまとめという案がございます。この5ページのところに,そこのところがかなり明確に出ていまして,以下の三つの柱に分かれる資質・能力ということで,それが全て結び付いてということなんですが,資質・能力の第1が獲得するべき知識・技能であると。それから,第2が思考力,判断力,表現力と考える力。資料7の5ページ目ですが,第3の資質というのが人間性なんですけれども,こういった問題について主体的に学習に取り組む態度とか多面的・多角的に考える,それから,深い理解を通して涵養される自覚や愛情というような,かなり学びに向かう力,また人間性という,学ぼうという気持ちというような,知識・技能,思考力,判断力,表現力,そして人間性といったところで資質が3本の柱とされています。これが全ての社会科科目,地理歴史,公民に通して共通であるという,資質として描かれておりますが,今の第1点目の御指摘はまさにそこのところだと思いますので,この三つの柱と資料12-1の左側のところが対応して分かると分かりやすいのかなという気はいたしますけれども,いかがでしょう。

【梶山主任視学官】  確かにマルの数が1個多いので,知識と理解と技能を一緒にします。申し訳ございません。

【田中主査】  ありがとうございます。あと,2点目については,18歳投票年齢の低下で,分からないと言いながらも意欲がある。それから,第3点目は,さらにそれと関連すると思いますが,給付型の奨学金など,生徒に非常に直結しているような身近な問題というものがあるけれども,なかなかそれが政治・経済の問題と関連していると思えないというようなところで,非常に重要な御指摘を頂いておりますけれども,このあたりについては,土井先生,ワーキングの方ではいかがでしょうか。何か,御意見あれば。

【土井主査代理】  特段,ワーキンググループでは,若い世代が本来関心を持つべき,自分たちに関わってくる課題を是非取り上げようという,そういう議論があったわけではありませんが,今御指摘いただいた課題等は,社会保障や,教育制度の在り方等々に関わる部分ですので,当然この中に,(2)の題材例の中に含まれているとは理解しております。もし何かうまく表現ができれば,具体化の段階でいろいろと調整ができればと,今,御意見を伺って思いました。

【田中主査】  ありがとうございます。それ以外ではいかがでしょうか。
磯谷先生,お願いします。

【磯谷委員】  ちょっと初歩的な質問をしてしまうんですけれども,例えば,資料12-2の,先ほど主査も取り上げられました1行目の「グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者」という場合の「国家及び社会の」という,この「社会」というのは,憲法的に言うと,国家の下に地域社会というか,そういうのがあるんですけれども,その中にはグローバル社会みたいのは入っているんでしょうか。

【土井主査代理】  社会はできるだけ広く理解するということで,国家も広い意味では社会の一つ,国家社会ということですので,特に社会を地域社会とか,国家よりも小さな範疇に限定するという趣旨ではございません。それを明らかにするために,「グローバル化する国際社会」というのを明記しているということでございます。

【田中主査】  ありがとうございました。いかがでしょうか。
辻中先生,いかがでしょうか。

【辻中委員】  「公共(仮称)」の学び方なんですけれども,「歴史総合(仮称)」なんかのところで,先ほど,座長も言われた,比較という問題と因果的説明という問題がありましたが,先ほど,若者がなかなかそういう問題意識が出てこないというところ,今日,たまたま私も授業したんですが,例えば奨学金だとか大学の授業料の問題も,比較をするとすごくあからさまになるというか,かなりの国では現在でも大学の授業料,無料です。どうしてもアメリカとか特定の国を念頭に置くので,そう見えないんですが,大学の授業料の問題にしても奨学金にしても,教育費に国がどれだけ出しているかということに関しても,それから,公務員の数がどれぐらいかということに関しても,比較の視点を入れると,一挙に様々な問題が噴出してきて,日本の公共の在り方がというか,公共セクターの在り方がなぜこうなんだろうかということを考えながら,こういう「公共の扉」であるとか探究,いろんな主体の問題を考えていただくと,かなり違うと思うんですよね。ここに書かれていること,非常によく整理されているんですが,そこの出発点となる,なぜというのがなかなか出てきにくいような,何かいいことをしましょうという感じの規範的なニュアンスが非常に出ていて,そもそも出発点として,日本の公共の在り方がどうなのかというところは,もう少しどこかでしっかり置かないと,そもそも日本だけ見ていると疑問は出てきません。その辺が,どこら辺に入れればいいのか分かりませんが,歴史なんかだったら,それが比較と因果ということで十分出てくるんだけど,その辺がどの辺に入っているのか,お伺いしたいなと思いました。

【土井主査代理】  先ほどの歴史と地理,「歴史総合(仮称)」,「地理総合(仮称)」との関係でもそうなんですけれども,基本的には「歴史総合(仮称)」,「地理総合(仮称)」,「公共(仮称)」というのは全て必修科目で,いわば,この三つの科目を通じて現代社会の在り方を全体として考えられるようになるのだと思います。歴史が時間軸,地理が空間軸という形で整理をされてきて,今,辻中先生が御指摘になったような観点は,当然,歴史からも出てくることになります。どうして今のような在り方になってしまっているのかを解明しようと思えば,歴史的因果を考えることが必要になってきますし,それを空間の中で比較するという視点は,当然,地理の方で学んでもらっているわけです。そうした学びが,この「公共(仮称)」の中に含まれてきて,いろんな題材の中で,例えば,先生方が資料を提示される中に歴史的あるいは各国間での比較が入ってくることを当然前提にしております。
ただ,地理や歴史との比較において,公民科の科目を特徴付け要素としてどういうものがあるかと言えば,やはり個人,社会,制度といったものを基軸にして議論をしていくことになると思うんです。ですから,今,辻中先生がおっしゃったような教育制度というものが,個人あるいは社会にとってどういう意味を持っているのかとか,そういう観点が,恐らく公民科に固有の視点として出てくる。その教育制度の在り方について,なぜ,そういう教育制度になっているのかというのは,歴史的視点での分析があるでしょうし,各国,どういう形になっているのかという比較もある。それは当然,前提にして取り扱っていただくべきことと整理をしています。ただ,ここでは,公民科の科目に特有といいますか,固有のものを比較的前面に出していますので,そういう部分が直接は出ていませんけれども,当然の前提だと理解しております。

【田中主査】  ありがとうございました。よろしいでしょうか。御議論が大分進んできていますので,「公共(仮称)」も必修科目だけでなく,次の選択科目,資料で言いますと12-4から12-6までも含むことになりますが,12-1の必修科目の(仮称)「公共(仮称)」,資料12-2,12-3,さらに12-4,12-5,6と進んでいただいて,倫理が12-5になりますけれども,それから,12-4のところに,必修科目の「公共(仮称)」と新選択科目の倫理,新選択科目の「政治・経済(仮称)」の関係がありまして,12-5に選択科目の「倫理(仮称)」,12-6に選択科目の「政治・経済(仮称)」がございます。このあたりも,今の御議論もかなりこちらと関連がありますけれども,このあたり,全体を通して,こちらの「公共(仮称)」,「政治・経済(仮称)」,倫理の分野について御議論いただければと思います。この点についていかがでしょうか。
私からも感想を申し上げると,資料12-2の一番下に出ておりますけれども,「公共(仮称)」の必修科目のところですけれども,ここで必修科目ではございますけれども,やはり内容は相当レベルが高くなっている。先ほどお話ししたところなんですが,最後のところに,下から2番目の四角,米印の後に,「指導のねらいを明確にした上で,囚人のジレンマ,共有地の悲劇,最後通牒ゲーム等の思考実験や,環境保護,生命倫理等について概念的に考える学習活動を取り入れること。その際,(3)『持続可能な社会づくりの主体となるために』で取り扱う課題と連動した課題を取り上げるようにする」ということであります。環境とか生命倫理というものを,具体的な「持続可能な社会づくりの主体となるために」という課題と連動して取り上げるということもあるんですけれども,さらにその前の,本日,大竹先生は御欠席でいらっしゃいますが,囚人のジレンマ,共有地の悲劇,最後通牒ゲームと,いわゆる経済学でもかなり高度な概念であり,まさに大学で学ぶところですよね。このあたりについても,もう「公共(仮称)」のところで入ってくるということは,かなり画期的なことだと思うんですが,これがこの後,御議論いただくことになるんですけれども,高大接続の入試との関連でも非常に重要なことを意味していると思います。
ある意味では,高校生が大学生でも学ぶ,若しくは,大学生によっては学んでいないような概念までも身に付けることが求められてきている。それだけ幅広く教育を進めるという大胆な御提言になりつつあるので,このあたりについても。先ほどの池野先生の御指摘でも,これらの関連性をどう付けるのかという。先ほどは,歴史の総合と「日本史探究(仮称)」,「世界史探究(仮称)」との教え方の違いをどう明確にするのかという御指摘でしたが,さらにおっしゃっていたのは,三つの「総合科目」である「歴史総合(仮称)」,「地理総合(仮称)」と「公共(仮称)」との関連をどう付け,どう切り分けて,めり張りを付けて教えるのかという御指摘も先ほど池野先生からございましたので,このあたりとも絡めて御議論いただければと思います。
一ノ瀬先生。

【一ノ瀬委員】  今,主査からありましたが,環境保護,生命倫理などもそうなんですけれども,私自身も,この特別チームやワーキンググループで実は何度も発言したことなんですが,しつこいようですけれども,もう一度申し上げると,やっぱりこの「公共(仮称)」あるいは公民科目全体を通じて,死の問題をもうちょっと表に出していく場面があったらいいのではないかなと思います。
今日頂いた資料の中の資料14の一番最後のページの高等学校公民の倫理の中に,「人間としての在り方生き方を捉える視点」の「考えられる視点例」として「生死」というのが入っていて,これを入れていただいたので,一応,現場の先生方にも,死の問題が例になり得るんだということ。資料14の一番最後のページの,A3の大きいものですね,最後のページの高等学校公民,倫理の「考えられる視点例」の中の視点の一つの例として「生死」というのが入っていて,これで一応,伝わることは伝わると思うんですけれども,やっぱり人間というのが死ぬんだということを,もう少し若者の段階から知らせる,あるいは意識させることは倫理の基本なので,「death education」という言葉もありますので,やっぱりこのあたり,何らかの形でもうちょっと言及されるように表現を工夫できないかと思います。とりわけ今回,今日では,戦争ゲームなどでサイバー空間で,ぼんぼん,ぼんぼん人を殺していくというようなことがあるので,生身の人間が死ぬことに対する感覚が少し鈍麻している可能性もあると思うので,やっぱり死というのは避けがたいことだし,それがある意味じゃ,文化の原動力,倫理の原点でもあったので,死という問題をどこかで,もう1か所ぐらい触れていただければいいんじゃないかなというのを,それはずっと以前から私が言っていたことなんですけれども,そういうふうに思いました。

【田中主査】  いかがでしょうか,ワーキングの座長として。

【土井主査代理】  一ノ瀬先生からそういう御意見を頂いていることは重々承知しております。ただ,死だけを特出しするということが,ほかとの均衡との関係でなかなか出しにくいところです。例えば,「人間の尊厳」という言葉が出ているわけですけれども,必ずしも人間の尊厳は生命の尊厳だけに還元されるわけではないんですけれども,やはり人間の尊厳を考える上で生命の尊重を考える必要は当然出てくるわけです。そして,生きることを考える際には,一ノ瀬先生がおっしゃっているように,死ぬことと表裏一体で捉えざるを得ないわけで,なぜ生命が,かけがえがないのかといえば,それは死ぬ可能性があるからです。やはり,ある存在が今,現にここにあることをどう受け止めるかをしっかり考えさせる必要があるわけですので,当然そういうことになりますし,また,幸福を考えさせる際に生きることを考えていくわけですから,その反対として死をどう受け止めるのかという議論は当然に入ってくるということを前提にしております。
ただ,人間の尊厳とか平等とか共同の利益といったような抽象的概念が並んでいる中に,いきなり死だけを入れるのがなかなか難しいので,表現ぶりはこうなっておりますけれども,おっしゃっている趣旨はそのとおりだと思いますし,取り入れられるものだと理解しております。

【田中主査】  ありがとうございました。大分御議論を進めていただきましたので,「公共(仮称)」について,「公共(仮称)」の全体でございますけれども,必修科目,選択科目,「倫理(仮称)」と「政治・経済(仮称)」も含めて,御議論いかがでしょうか。
そうしますと,少しお時間があれば御議論いただきたいと思うのは,私が伺っていてそう思ったんですけれども,先ほど梶山主任視学官から御説明がありました資料7の最後のページ,27ページの一番下の黒ポチですけれども,「地理歴史科,公民科の学習内容と大学入学者選抜との関係については,高大接続システム改革会議における,『学力の3要素』を多面的・総合的に評価する入学者選抜への改善等に係る具体的方策の進捗状況を勘案すると共に,高等学校においても指導の在り方と一体となって,評価の在り方を見直すことが一層求められる」ということです。これは,ずっと御議論いただいてきております「歴史総合(仮称)」,「地理総合(仮称)」,「公共(仮称)」の,いわゆる2単位科目であると思うんですけれども,こちらの最初に学ぶべきものが,かつてのような,「世界史B」に対する「世界史A」のような易しい科目という位置付けではないというのが今回の改訂の非常に大きな位置付けだと思います。人間として生きていく上で,その三つの必修科目は必ず必要である。それを学んでこそグローバルな社会人になり得るのだということを高校生に学んでもらいたいということが骨子だと思うんですね。
ともすると,進学校とか学習塾といいますか,いわゆる受験産業の側では,Bの方というか難しい方,ここで言えば探究ですね,を教えればいいのだと思いがちであろうということなので,それを何とか払拭していただきたい。それは,こちらの学習指導要領をうまく見直していくだけでは進まない問題だろうと思います。大学の先生方に出題をするときに,そこのところをよく理解していただく必要がある。
例えば,場合によっては,入試で世界史を選択しようが地理を選択しようが「政治・経済(仮称)」を選択しようが,「歴史総合(仮称)」,「地理総合(仮称)」,「公共(仮称)」のどれをも知らないと解けないような問題というものが出てもよいのかもしれないでしょうし,もちろん世界史を取っても,「歴史総合(仮称)」を知らなければ分からないというようなこともあり得る。倫理を取っても,「公共(仮称)」が分からなければ答えられないというような,そういう関係が必要だろうと思うので,大学の先生方が出題する際に相当御注意いただくべきことだと思います。そういうことについては,かなりメッセージをこちらの特別チームからも発信するべきだろうとは思っているんです。
私の同僚にも,高大接続の方でいろいろ考えている者もいるんですけれども,やっぱりそういう視点を,私の同僚などにもインプットしなければならないと思っておりまして,そこが欠けてしまうと,結局,理想は高いんですが現実が伴わないという,絵に描いた餅のようになってしまうと危惧しておりまして,いわゆる高等教育局と初等中等教育局との連携も重要だと思いますが,そればかりでなく,現場の,高校の先生方と大学の教員との連携も十分必要だろうと思っておりますので,このあたりも,少しお時間はありますので,御意見を頂ければと思います。
辻中先生。

【辻中委員】  今,先生が言われたとおりで,入試の大改革がもう迫ってきておりますよね。そこで大体問われているのは,創造性であるとか問題提起をする力であるとか,そして,非常に学際的,学融合的な発想ができるようなもの,オリジナリティーがあるような発想を養ってほしいということですから,そういう問題を作るのは大変難しいんですが,そういう観点から言うと,「歴史総合(仮称)」とか「地理総合(仮称)」とか「公共(仮称)」という科目がそういうことをしっかり学生に付ける,そういうような科目になるというような位置付けではないかと思いますので,この三つの科目をしっかりやって,常に現状に対する自分なりの問いといいますか,そういうのを出せるような形で全体を作っていくのが一つの大きなやり方ですし,大学もそういう形で,今,入試の改革を構想しているということだと思います。

【田中主査】  ありがとうございます。そのほかに。ほかにはいかがでしょうか。
大分御議論いただきまして,かなり御議論も煮詰まってまいりまして,先生方の御意見を十分に伺いながら,方向性としてはかなり固まってきたと存じますので,時間も大分迫ってまいりましたので,最後のまとめに入りたいと思いますが,全体を通して,何かこれだけはということがあれば伺っておければと思います。いかがでしょうか。

【辻中委員】  余り言うべき内容ではないのではないかと思って控えていたんですが,やっぱり「公民科」という全体の名前が,僕,大分違和感が昔からありまして,何度か申し上げたところなんですけれども,これは,今,何とかできるという問題ではないと思うんですが,今,「公民科」という名前が,公民という概念自体が,日本で使われているのが公民科であるんだけれども,実際は教科書の中には「公民」という言葉は出てこない。歴史の中に「公地公民」って出てきますけれども,それであるということと,それから,公民という概念は,ヨーロピアンに言うところのシチズンシップで,使っている国は中国と台湾と北朝鮮であると。そういう事実を,「公民」という言葉を,この漢字を使っている国がこの三つであることを考えて,将来的に「公民科」という科目のくくり方を考えるのが,僕は次のステップではないかなと思っています。

【田中主査】  かなり大きな宿題ではございますので,今回は難しいかもしれませんけれども,シチズンシップという概念である。パブリック・アフェアーズとかシチズンシップという概念。それをうまい日本語で何かないかということかと思いますけれども,これは少し長期的な課題として承りたいと思いますが,それでは,今までの御議論で相当固まってまいりましたので,おおよその合意がそれぞれの科目について得られたのではないかと思います。議論もかなり尽くされてきたと感じております。本日はここまでで御議論を終了させていただきまして,本日お出しいただきました御議論は事務局でその趣旨をまとめていただきたいと思います。最初から私もいろいろと注文を出しましたし,各先生方からもいろんなコメントを頂いておりますので,それをまとめていただきたいと思います。
また,社会・地理歴史・公民のワーキンググループとして,最終的な表現文につきましては,各教科,各学校段階別の部会の御議論も踏まえまして,必要に応じては主査の私にも御相談いただきますが,主にはワーキンググループの主査でいらっしゃいます土井先生,また,主査代理でいらっしゃいます原田先生のお二人におまとめいただいて,こちらの本日までの御議論,本日,第5回ですけれども,5回の御議論をまとめていただければと思いますけれども,いかがでしょうか。御異論なければ,そのように御了承いただきたいと思います。ありがとうございます。
それでは,取りまとめの資料につきましては様々な御意見を頂いておりますので,本日,言い尽くせなかったとか確認ということもあれば,メールでも結構ですので頂ければと思います。お気付きの点がありましたら,事務局にメールで御連絡いただければと思います。
それでは,今回の議論をもちまして,本特別チームの検討は一応の目途を付けたと存じておりますので,委員の先生方の御尽力,精力的な協議の参加にお礼を申し上げまして終わりとしたいと思います。
浅田審議官がいらっしゃっていますから,御挨拶をいただければと思います。

【浅田大臣官房審議官】  審議官の浅田でございます。
特別チームのまとめに当たりまして,私からも先生方に一言お礼の御挨拶をさせていただきたいと思います。これまで,田中主査,土井代理をはじめとして,委員の皆様方には大変お忙しい中,この特別チームの委員をお引き受けいただいて,かつ,これまで,去年の秋から今日まで,5回にわたって大変密度の濃い御議論をいただけたと思っています。
おかげをもちまして,新しい科目の内容,あるいは科目間の関係の調整,小中高を通じた系統性といったことについてしっかりとした方向性を頂けたと思っています。これから教育課程部会,最終的には中央教育審議会で年度内に答申ということで,我々もそれを目指して頑張っていきたいと思っていますが,本特別チームで頂いた御議論を,新しい学習指導要領あるいは教育現場で生かせるように,事務局としても引き続き努力をしてまいりたいと思います。委員の皆様方には,今後とも御指導,御鞭撻を頂けますようにお願い申し上げ,これまでの御参画,御協力に改めて御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。

【田中主査】  浅田審議官,どうもありがとうございました。
それでは,最後に事務局から何かありましたら御連絡をお願い申し上げます。

【大内学校教育官】  失礼をいたします。長時間にわたりまして,ありがとうございました。先ほど田中主査からもお話がございましたけれども,最後にペーパーによる御意見等につきましては,今週の木曜日,6月30日になりますが,を目途に教育課程課総括係,開催案内を発出してございますけれども,こちらに御意見等ございましたら,是非お寄せいただければと思ってございます。頂きました御意見につきましては,先ほど主査から御紹介いただきましたとおり,土井主査代理,原田副主査とも御相談させていただきまして,また最終的に,各学校段階別の部会,そういった状況も踏まえまして,全体をまとめる部会に話を上げていきたいと考えてございます。
以上でございます。

【田中主査】  大内教育官,どうもありがとうございました。
それでは,ワーキングチームの皆様には大変にお世話になっておりますが,本日は全員の方にお目にかかれませんけれども,お礼を申し上げます。
それでは,これをもちまして,第5回高等学校の地歴・公民科科目の在り方に関する特別チームを終了させていただきたいと存じます。本当に長期間にわたりまして,皆さん,どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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