総則・評価特別部会(第1回、平成27年11月2日)における主な意見

1.学習指導要領等全体及び総則の構造に関する考え方

○ 論点整理で示された、評価の三つの観点、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」、これを各教科等において、どのような内容、指導事項とするのかが大変重要になる。特に、高等学校における観点別学習状況の評価と、多様な高等学校における教育課程の編成、カリキュラム・マネジメントによる教育内容の充実が求められている。この点を総則の中にきちんと盛り込んでいかなければいけない。

○ これまでの総則を見ていると、硬い感じがする。今回、論点整理では、最初に今の社会の流れ、教育の流れのようなことが書いてあって、そのためにこういう方向の改訂をしていく必要があるのだということがかなり説得的に述べられている。こういう改訂の趣旨や理念のようなものを学習指導要領の総則でも表に出せば、読む人からすると、今回はこういうところに重点を置いて改訂がなされているんだということが分かると思う。ストーリー性があってもいいのではないか。

○ 書き方として、バランスに注意しないと、読む方は自分の考えに合ったところだけ取り入れるという読み方をされてしまうことがある。前回の改訂においても、バランスや統合ということにかなり気を配った改訂になっている。今回も、アクティブ・ラーニングというのは一つのトレンドではあるが、決して一つの型を普及させるものではない。それから、教師の教授活動ともバランスをとるというような、そういうことは盛り込まれていると思う。論点整理でバランスに配慮して教育の方向を打ち出そうとしているということが、指導要領の中でも生かされるといい。

○ 「どのように学ぶのか」というところについての記述を総則の中にも盛り込まれなくてはいけないが、その書き方がとても大事。現場からすると、アクティブ・ラーニングという言葉がかなり独り歩きを始めている。こういう形の授業がアクティブ・ラーニングですといったように、イメージが固定化していかないように記述しなくてはいけないと思う。その時に言語活動や思考スキルなど、非常に基本的で押さえなくてはいけない部分については、そのように記述する必要があると思う。その上でどういうふうにすれば本当に個々の生徒・児童がアクティブに学べるかということを示唆するような記述をしなければならない。これは難しいが大事だと思う。

○ 新しく目指そうとすることを、ポジティブでない形で教員が受け止めてしまうと、結局学習指導要領が変わっても、その後、子供たちに、何ができるようになるか、どういうふうに学ばせるか、何を学ばせるかということについても、余り効果が出てこないと思う。教員が読んだときに、将来社会で役に立つ子供を育てるためにこういう力を付けて、そのためにこういう内容を、そして、こういうふうに指導していけばいいんだということが前向きに受け取れるような書き方というのが必要。

○ 現場の実践レベルでバランスが正しく引き取れるように丁寧に吟味して書き込むことはできないか。例えば現行の中学校のところなどで、知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成のバランスということがいわれているが、決して均等にそうしたことを教えろという趣旨ではないような気がする。内容によっても、そこの割合が違ったりもするだろうし、場合によってはどちらをよりベースにというようなことがあろうかと思う。その辺の書きぶりが少し足りないのではないか。

○ 総則に書くことと、各教科で書くことのつながりは読みやすくしていただきたい。その際、重要なことは2つある。一つは、論点整理の部分の中心的な考え方は、三つの柱ということと、それを具体化する指導として、三つの学びというのを提言しているので、それは当然総則には何らかの形で書くのだと思うが、その部分を中心にそれが各教科、あるいは教科間、あるいは校種間のつながりとして現されるということが必要。もう一つは、総則に書かれていることが関連する教科などにおいて何らかの形で言及されていて、教科の部分を見たときに、対応する総則の方を読んだ方がいいよという感じに分かるようにするような書き方がよい。結局、現場の先生方は各教科の専門を持っている方が多いので、自分の関係する専門しか読まないというケースも多いので、何らかの形で総則を読み、それから、総則の本文から今度は解説書にいくというような読み方をなるべく誘導していただきたいと思う。

○ 現場の教員からすると、指導要領を読みこなすということはなかなか難しいところがある。そういった意味では、総則等はシンプルで分かりやすいものであるということが前提になると思う。

○ 活性化していて、子供たちが意欲的に学び、そういった場を提供する教職員が元気にやっているような学校というのは、カリキュラム・マネジメントという言葉のなかった頃から、カリキュラム・マネジメントの内容を現実としてやってきたということが言える。具体的には、ある一つの取組がそれで終わらず、そこで得た力がどのように次に展開していくかということを教職員が関心を持って見守っているというふうなことかと思う。それが児童生徒や保護者とともに共有されている。このような段階でこういった力が、こんな取組をしたことによって、このようにまた伸びましたとか、この部分がまだまだ不十分なので、こういった点をもう少し強化していきたいと思いますといったようなことがつながって関わって、共有されているという点かと思う。また、公立学校の場合、教育委員会との関係が重要。カリキュラム・マネジメントの三つの側面のうち三つ目の、様々な条件整備などをしていこうとすると、教育委員会との関わりなしには不可能。そういった点でどれほど具体的にそのことをこの総則に書けるのかというのも非常に重要な点ではないか。

○ 新しい学習指導要領をイメージすると、これは、先生たちは相当大変だなというのが第一感。もともと教師という職業人は、既知の伝達ということをまず職業の中心に置いていたんだと思う。正しいと認定されていることを子供たちにどう伝えていくか、そこの伝える中身と一部伝え方について学習指導要領というものが国の基準として決められている。その状況が少し変わってきて、何を知っているかということを超えて、何ができるかということが教育の目標であるという認識に今、立たなければいけない。そういう社会状況についての読み、科学や技術の進歩、グローバル化という、そういう新しい時代の中で未来の大人がどう生きていくのかということが、学校教育の大きな目標になる。今、教師をやっている人たちがそこへ発想を転換させてどう思考を変え、行動を変えていくかということが重要なんだという、そのことがこの論点整理にたっぷり書かれている。そうだとすれば、論点整理の22ページ以降のところ、必要な方策というあたりがどんな形で総則編の中に盛り込まれていくのかということが重要。これまでの総則編ではそのあたり十分に触れ込まれていないという感じがしている。それは、具体的にカリキュラム・マネジメントというものをどう学校全体として検討する体制を作っていくのか。あるいはアクティブ・ラーニングという学習指導法の哲学をどのように学校全体として取り組んでいくのかということについて、ある種の組織マネジメントの問題だというふうに私には見える。したがって、何を教えるか、どう教えるか、目指すべき資質・能力というものを支えているのは、学校組織のマネジメント、このことが相当大きな影響を及ぼすのではないか。つまり、教師の力量という問題を、一人一人の教員がどう新しい学習指導要領を読み込める能力を持っているかという力、それを結集した学校の組織としての力量ということ。期待されているのは、そういった組織のマネジメントなんですよということがどこかで表明されると、現場に対する社会の期待というものが少し伝わりやすくなるのではないか。

○ 学校教育がどのように行われているのかを、生徒・保護者をはじめ地域の方々に理解してもらい、教育活動の充実に向けては地域の教育力の活用という観点から、尚更、学校教育の理解を深めてもらう工夫が求められる。今、学校評価を行っている中で、学校としては説明責任ということも出てくるので、そのことも含めてトータルで考えていくことが大切である。そこで、具体的な取組の一つとして、たとえば、学校のグランドデザイン、いわゆる基本構想図のようなものを作成して示していくということが、すでに幾つかの県や市町村の教育委員会での取り組みが見られるので、カリキュラム・マネジメントの一環として創意工夫していくことも指摘させていただく。

○ 学校として、編成した教育課程全体において、一体児童・生徒にどのような資質・能力を育むのか、そのために何をどのように学ぶのかを明確にしていく必要がある。高校の教育課程を編成してきたが、従前の個性化と多様化に対応したものとして、様々な学校設定教科・科目を設置し、また学校外の学習なども用意し、選択幅の広い状況になってきた経緯がある。そのため、各教員は自らの教科・科目の編成上の在り方や指導に注目して取り組んできたものの、学校の総体で見て、生徒にどのような資質・能力を育てるのかという教育課程の全体像とかそれに伴う教育活動の展開という観点からの見通しが、上手くできていない状況にある。このことからも学校が教育課程全体の構造の中で、育成すべき資質・能力を考え、総体としての役割と意義、教育課程の存在を明確にするものとなるよう、総則が編まれればと考える。

○ 学校のカリキュラム・マネジメントを相談・支援していく体制づくりとして、すでに幾つかの県や市町村などの教育センター等に整備されてきたカリキュラムセンター機能に注目している。神奈川県の場合を例にあげると、平成13年に県立教育センターにカリキュラムセンター機能を設け、県内学校の教育課程の編成や運用、授業づくりや授業改善に、各教員の相談や支援に指導主事が対応しており、現在も取り組まれている。今後、総則にカリキュラム・マネジメントが位置づくと、益々その役割と効果が期待されることと考える。また、各学校が多様な地域の教育力を活用する点では、地域の大学や企業など関係機関と、教育行政機関が包括して協定を結ぶなど、学校の教育課程を支援する環境づくりに取り組むなど色々な仕掛けを考えて、生徒の学習機会の拡大にも努めていく必要があると考えている。

○ チーム学校という発想の場合、やはり学校内という発想に周知してしまうところあるので、その発想の場を広げるという意味での総則の内容が必要。

○ 「生きる力」というキーワードに関して、これだけ変化の激しい社会、将来予測困難な社会という中で、もう少し生きるということに関して積極性のある書きぶりにできないか。これだけ豊かな国の中でこんなにたくさんの人たちが自殺に至りなんていう中で、もう少し積極的に書けないか。生き抜く力、レジリエンスという表現も出ていたようだが、そんな書きぶりを一つ考えてみてはどうか。

○ 東京オリンピックの開催の時に新しい学習指導要領がスタートする。これからこの国はどういう体育、スポーツ教育をやろうとしているのかというのはそこに現れるので、よほどしっかり書き込んでいいのではないかと思う。また、安全に関しても、3.11というのは、20年、21年の改訂の後の話なので、このタイミング、もっとその分を書き込む必要がある。現行のものを見ると、量的にも少ない。もう少し充実した書きぶりをすべきではないか。
 
○ 学習指導要領、解説書、指導事例集、この三点セットで学習指導要領を表現するという、日本の学習指導要領に関わる歴史的な所産として、そういった形態をとっているのだと思う。ただ、読み手からすると、無味乾燥な側面がある。今回理念や考え方等を伝える場合の手法の在り方については、検討の余地があると思う。指導要領解説については、抜本的な検討が加えられる素地があると思う。これを読み通すときにはよほどの体力を必要とするし、一人の読み手が全体を読み通すということよりも、むしろ学習指導要領のそれぞれに沿って、それについて説明を加えるというふうなことを基本にしてきたので、なかなか読みづらい。これをどう修正・改善していくのかということがある。 例えばカリキュラム・マネジメントについて、学校全体で検討していく体制を整える、そういうことを進めようとするときに、指導要領解説がどれほど誘因・ヒントがあるかとなると、足りないのではないか。そういったところは指導資料にあるのかもしれないが、それでは指導要領解説は中途半端なものとしてあるように思う。

○ 高大接続との関連は非常に重要。前回の学習評価のワーキンググループでも、高等学校は非常に問題が多いと指摘されたが、高等学校の教育は大学入試に大きく影響されているので、その改革なしに高等学校だけを取り出して評価や学習指導をといわれても大変困ると申したが、今回、高大接続が議論になっている中で、そちらの方との関連を図って、どういうふうに改善を図るべきか、その点が非常に重要ではないかと思う。

2.発達の段階や成長過程のつながりを踏まえた総則の在り方

○ 選挙権年齢が引き下げられることによって、高校三年生の全員ではないが、選挙権を得るということを考えると、こういった大きな節目にあるときに変えようとしている学習指導要領の在り方、とりわけ、それを総則の中でどのように書いていくのかというのは非常に重要ではないかと思う。これが地歴公民科や社会科だけの話にならないようにしなければならないということを思っている。その意味でも、高等学校三年生の段階でどのような力を付けているのかという時に、主権者としての意識をどのように喚起していくのかということは、高等学校教育だけでは当然のことながら不十分であり、初等中等教育全体を踏まえて考えていかなければならない。

○ 校種間の接続の部分については、学校段階等別部会があるが、校種を超えて全体見渡すのはやはりこの総則部会なので、大事な部分になる。特に今回新たに入ってきたのは義務教育学校、小中というものをもう少し踏み込んで示していきたい。義務教育学校の問題は、いわゆる法律上の義務教育学校ということともに、小中の連携とか、接続という形で、別々の小学校、中学校だけれど、つなぐという形は多いので、そういう意味でも、義務教育学校という狭い定義の中のつなぎだけではなく、いろいろな形での接続というのがあると思う。また、幼児教育と小学校教育のつながりも重要。この10年近く、幼と小の間の連携、接続の検討が現場で進んだので、それを何らかの形で反映する方がいい。接続については、資質・能力というものの中核部分としてどうつなぐかということが中心になりながら、各教科等で、具体的にどうやるかということまで含めながら、総則に書く部分と各教科に書く部分、両方言及する必要がある。

○ つなぎという部分から言えば、幼稚園から発想して、出口として高校という話があり、おそらく社会に出てからというところまで到達する。その幅広い内容を盛り込むという意味で、この学習指導要領改訂の視点という、この図がもう一つのみ込めないところがある。この上の図と下の図の関連性についてはもっと練って、教員はもちろん、一般の方にも分かるようなものを目指すなら、いま一度ここのところをどのようにして言葉として表現していくか、そこが非常に重要な視点になるかと思う。

○ 特別支援学校にも学習指導要領が三つあり、それぞれに総則がある。総則・評価特別部会では、特別支援学校の総則も踏まえながら議論していただけると有り難い。

○ 特別支援学級に在籍する子供や通級による指導を受けている子供は年々増加している。また、小中学校の通常の学級に在籍していて発達障害があるかなと思われる子供も顕在化している。こうしたことから、今回の学習指導要領においては、特別支援学校に限らず、小中学校等の学習指導要領において、特別支援教育に関わる記述がどういうふうになされていくかということが一つ大きな関心事。学習指導要領に書くとか、あるいは解説書にお書きいただくということを考えた場合に、特別支援教育の内容をできるだけ分かりやすく、具体的に親御さんも含めて読んで理解していただけるような形で今回記述できるといい。

○ 我が国が障害者権利条約を批准し、来年の4月からは障害者差別解消法が施行されるということで、小中学校でどういうふうに障害のあるお子さんに対して配慮して対応していけばいいかということが話題になるのではないかと思う。これは、我が国の特殊教育から始まって、小中学校との兼ね合いで進んできた特別支援教育が世界に誇れるまでに発展してきた結果ではないかと思う。障害者理解や共生社会の実現を目指すということを踏まえて、具体的に今、行われている学校現場での活動は何かというと、障害のある子と障害のない子が共に活動するような交流及び共同学習ということ。それをいかに行いやすくするか。先生方がそれの必要性なり意味というものを考えられるようなものを今回の総則の検討の中で一緒につくっていけると有り難い。

○ (高等学校の卒業時にどのような学力を身に付けているのかという観点から小学校・中学校との系統性を図るということについてどう考えるかと尋ねられたのに対し、)障害のある子供の場合、一人一人の実態が異なるので、高等部といってもかなり個人差が生じている。子供に合った教育を行っているというのが実態。そういう点で考えると、個別の指導計画とか、個別の教育支援計画というものが今特別支援学校で模索されていて、それをどういうふうに活用するかということが大事だが、その流れの中で発達段階に応じた教育の在り方を考えていくというのも一つの方策かと思う。

3.社会とのつながりについて

○ 論点整理にある、新しい教育課程が目指す理念の共有について。新しい教育課程が単に学校の中だけでとどまらなくて、社会全体で共有されているという状態が社会に開かれたという意味であろうし、社会で生きていく上で必要な資質・能力を育てていくという点でも、この理念を共有するためには、夢のあるものでなければならない。だから、それぞれの学校が地域とともに本当こういった教育活動をやっていこうという時に、そういった意欲的な行動を支える、後押しするような、そういった姿勢でもって書かれなければならない。

○ 社会に開かれた教育課程が新しく出された時に、その理念の実現に向けてその推進方策と親和性があるのが、コミュニティースクールや学校支援地域本部の活動。そして、チーム学校という発想で学校を動かし、何よりも教科を動かしていくことが必要だと思う。まず学校内がチームに、次に専門家、特別な立場の方、さらに地域とともにチームになっていかなければ、この開かれた教育課程は実現しないだろう。そこで必要なのは、先生方が日々忙しい中で全てを担うというより、コーディネーター、地域連携担当教諭を置くなど、コーディネート機能をどこかにかませる必要がある。今までの学校と地域も連携してきたが、それはある先生がいたからとか、熱心な校長がいたからとか、たまたまこういうことがあったからということで、それが組織化され、継続的ではないのが現状。ある意味でイベント的な側面もあり、根を張るものではなかった。今後は、各学年、各校種で地域と連携し、子供の学びを地域にひらくことが明記されると良いと思う。

4.学習評価の在り方について

○ 高等学校の卒業時にどのような学力を身に付けているのかという観点から、学習指導要領の各教科等の内容については、高等学校三年生を到達点として、中学校、小学校との系統性を図り、今回の評価の在り方と併せて考えていくことが重要。これまでは、小学校で学習指導要領の内容を決め、その次に中学校というふうに積み上げてきているので、教科によっては、中学校三年生の内容が大変難しい内容となっている。高等学校での出口をまず決め、それを段階的に、系統的に育成し、評価する方向性を総則として考えていくということが重要だと思う。

○ 今回、指導要領改訂の議論の中で評価も検討するのは大変な進歩だと思う。今回は各教科の目標と教育課程全体の関わりという横の関係、また、高等学校段階、中学校段階、小学校段階で育成すべき資質・能力の系統化を図るという縦の関係が重要。縦の観点を重視するという観点からは、発達段階に応じた評価をどう見込むかということが重要。

○ 今回の論点整理をみると、資質・能力の要素をもう少し教育課程に入れていこうという転換が図られてきている。評価の在り方は、これまで学習内容を中心としたカリキュラムに適合した評価のシステムを考えてきたが、資質・能力を育成することを目標として重視する場合には、学習内容を中心に作られた評価のシステムでは不十分。その点で評価の基本的な考え方を一部転換する。特に資質・能力に関する評価の在り方を一部転換する必要があるのではないか。

○ 指導要領改訂の議論の中で評価についてもセットにして議論していくべきであろうと思う。前回の改訂の後の評価の議論で意見が分かれたのは、四観点と学力の三要素、これをどう整合的につなぎ合わせるかということであった。四観点を維持したいという意見と、三要素の方に収れんさせていく方がいいのではないという意見があった。結果的に、両方をつなぎ合わせたようなものでやってきたが、読んでも分かりやすく、また、学校の先生にとっても付けやすく、そして、学校教育法とも整合的というふうにしていった方が、分かりやすいのではないかと思う。

○ 評価については、前回改訂時、意見がかなり分かれた部分もあった。一つは、学力の三要素と四つの観点との関係。四つの観点というのは、学力の三要素のうちの一つの知識・技能を二つに分けた四つということだが、それをもう少し新しく資質・能力という発展的な形で検討する必要がある。2つ目は、関心・意欲・態度。これが三要素で言えば、主体的に学習をする態度にあたるが、この部分は大事であることは誰も反対しない。しかし、十分客観的な形で評価できるかということについていろいろな意見があった。現場でそういう観点をもって授業することは大事だという意味で、残すべきだという意見とともに、なかなか客観的には評価しにくいのだから、むしろ、他の観点の中に織り交ぜた方がいいというような意見もあったので、その辺をどうするかということ。主体的に学習する態度が今回、資質・能力の観点の考えの中で広げているので、もう一度見直し、検討する必要がある。三つ目は、思考力等の部分。この10年、随分研究も実践も進んだので、このあたりについて踏み込むことは可能かもしれない。また、パフォーマンス評価もかなり日常的に使われるものになってきたと思うので、そのあたりをどうするかも検討課題。その上で、評価に当たって、評価というものは、授業内、あるいは単元内で用いるような、かなり形成的な評価というものと、それを生徒の特定の教科、単元を通して形成される学力の総括的な評価、大ざっぱに言えば二つに分けられる。そして、総括的な部分が、例えば入試とか、あるいは内申書とか、成績にまとめられる場合もある。そういう意味で、指導と一体的に使われる部分の評価と、生徒自身にとって重大な結果をもたらし得るような総括的な評価の在り方とは、かなり性質が異なるかもしれないので、それを含めて是非御議論いただきたい。

○ 当部会での検討内容として最も注目しているのが、観点別学習状況の中の評価の観点が重視すべき三要素と一体化して、四観点から三観点に改善されること、またもう一つは、高校に特化して、従前の指導要録の記載として残されてこなかったが、進路に関する調査書には記載されてきた評定平均値のことであり、他の委員からも発言があったが、この調査書には評定平均値が記載されることで、目標に準拠した評価による学習評価の定着という点で課題として認識しており、この改善に非常に関心を抱いている。

(主査のまとめ)
 大きく分けて三つの内容の話があった。一つは、指導要領の総則については、今回、教育課程という一つの構造と同時に、その運用の仕方が重要なのだというふうな問題意識で論点整理がなされたかと思うが、他の教科、あるいは他の学校種との関係というのは、一つの視点になっている。また、組織マネジメントの問題が重要であることと。それはカリキュラム・マネジメントという形で論点整理に記してあること。 
二つ目は、評価について。高校卒業、あるいは社会に出るときにどういう能力を備えておくべきかということが一つの基準になるのではないかというようなことがあった。同時に、特別支援学級などで考えた場合には、個人個人の能力の達成度というものも考えていかなくてはいけないだろうということがあった。
 三つ目は、書き方の問題。これに関しては、個人的には、読める指導要領、分かる指導要領、伝わる指導要領、使える指導要領といったように、読み手を考えた指導要領であることが好ましいか思う。それと同時に、総則を常に立ち戻れる場にしておくということが重要。
 オリンピック・パラリンピック、あるいは震災があり、確かに教育の場において非常に多様なことが課せられていて、多様なことができる状況なのかもしれないことを踏まえると、少し時間軸のことを考えて、長期的かつ短期的な在り方、教育の在り方を盛り込めたらとても充実したものになるのではないかと思う。同時に、注意しなければいけないこととして、バランスということがあった。いろいろな意味でバランスが必要であるということと同時に、これまでの指導要領と全く違うものがここに記されているのでないと示して、一つの継続性を記すことも、現場の先生方の混乱を避けるために重要ではないか.


(以上)

 

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課教育課程企画室

電話番号:03-5253-4111(代表)(2369)