教育課程部会 総則・評価特別部会(第4回) 議事録

1.日時

平成28年1月18日(月曜日) 13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省 東館3階 3F1特別会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 論点整理を踏まえた総則の改善・充実及び今後の学習評価の在り方について
  2. その他

4.議事録

【羽入主査】  それでは、ただいまから総則・評価特別部会の第4回を開催したいと思います。
足元の悪い中、また、交通機関が大変乱れております中、お集まりいただきましてまことにありがとうございます。
まず、事務局から配付資料について確認をお願いします。
【大杉教育課程企画室長】  失礼いたします。本日、天候が荒れ模様の中、まことにありがとうございます。
本日ですけれども、議題の中に情報ワーキンググループに関する検討事項が含まれていることがございますので、情報ワーキンググループの主査であられます堀田龍也先生にお越しいただいておりますので御紹介を申し上げます。
それから、次に、配付資料の確認をさせていただきます。本日、議事次第記載のとおり、資料1から6-2、参考資料の1から3、その他、机上参考資料という形でございます。机上にいつものようにタブレット端末も置かせていただいております。不足等ございましたら事務局までお申し付けくださいませ。
【羽入主査】  それでは、本日の議事に入りたいと思います。本日は、各ワーキンググループの検討状況の報告を受けた後に、先ほど御紹介がありましたように、情報ワーキンググループ、それから体育・保健体育、健康・安全ワーキンググループの検討事項のうち総則、各教科等で検討が必要な事項について御報告を頂きます。その後、前回に引き続きまして、学習評価に関する検討事項を中心に意見交換を行いたいと思います。
本日、報道関係者から会議の撮影及び録音の申出がございまして、これを許可しておりますので、御承知おきくださいますようお願いいたします。
それでは、事務局から資料に基づいて、他のワーキンググループ等の検討状況について御説明をお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】  失礼いたします。お手元の資料1をごらんいただければと存じます。毎回お出しさせていただいております学校段階等別・教科等別ワーキンググループの検討状況についてまとめさせていただいているものでございます。時間の関係もございますので、個別に御説明は差し控えさせていただきますけれども、いずれの教科等におきましても資質・能力、三つの柱に沿って各教科において育成すべき資質・能力の整理、特にどのような学問分野、職業に進むとしても求められる資質・能力の育成という観点からの各教科の意義を考えるという観点から御議論いただいております。また、そうした資質・能力を育成するための学習活動の要素、プロセスの在り方、また、そういったものを幼・小・中・高、どのようにつないでいくかという観点から御議論を頂いているところでございます。
また、地歴・公民特別チームにおきましては、12ページ、13ページ辺りにございますように、新科目の構造の在り方ということを御議論いただいているところでございます。
いずれのワーキング、特別チームにつきましても、前回、年末の総則・評価特別部会におきまして御了承いただきました特別支援の観点からの見直しといった、教科横断的に御検討すべき事項ということに関しては、しっかりとつながせていただき、御議論いただいているところでございますので、御報告を申し上げます。
簡単でございますけれども、以上でございます。
【羽入主査】  ありがとうございます。
ただいまの御説明、御報告について御質問や御意見がありましたらどうぞ。この非常に大部な資料を用意してくださっていますので、また、ごらんいただいてお気付きの点がありましたら事務局の方に御意見、御質問などをお寄せいただいても結構かと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、続きまして情報教育、健康・安全に関する検討状況について御報告をお願いします。
【大杉教育課程企画室長】  失礼いたします。本日、情報教育に関する事項、それから健康・安全に関する事項について御議論いただく予定とさせていただいてございます。これらの事項に関しましては、総則又は各教科において具体的な検討が横断的に必要な事項ということでございます。本日は、私の方から各ワーキングの検討状況を事務的に御説明させていただきますとともに、情報ワーキングにつきましては堀田主査にもお越しいただいております。また、体育ワーキングの方には副主査の野津先生がメンバーであられますので、併せて議論の状況の報告をお願いしているところでございます。
それでは、まず、情報ワーキンググループの検討状況につきまして、私より資料2-1、それから資料2-2、2-3に基づきまして一通り御説明をさせていただきます。
資料2-1をごらんいただければと存じますけれども、「情報に関わる資質・能力について」ということでございます。大まかに申し上げますと、大きな点、本日ごらんいただきたい点は二つでございまして、一つはアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善、学習の改善ということを各教科を通じて図っていくところでございますけれども、その中でICTを活用していくということの意義と具体的な在り方ということが一つ目でございます。
二つ目は、情報活用能力という形で整理されています情報や情報技術に関する育成すべき資質・能力を論点整理の柱も踏まえまして、どのように整理していくべきか、そして、それを各教科等にどのようにつないでいくべきか、これが二つ目の論点でございます。
まず、一つ目につきましてでございますけれども、資料2-1、一枚おめくりいただきますと、2ページというところでございます。各教科の学習活動の中で、これからはこれまで以上にICTを活用していくという視点も求められるわけでございますけれども、それをどのように図っていくかということでございます。このためには、まずICT活用の特性・強みということを学校現場を含めて共通理解を図っていく必要があるということでございます。2ページには、平成26年8月に懇談会でおまとめいただいたICT活用の特性・強みということをまとめていただいておりますけれども、一つには、多様で大量の情報を収集、整理・分析、まとめ表現することなどができ、カスタマイズが容易であるという特性があるところでございます。ここから、例えば、データの入力、グラフの作成など、繰り返し行ったり試行錯誤するということ、調べ学習、ドリル学習、プレゼン、情報共有などにおいてカスタマイズが容易であるということの特性を生かした学習が可能になるという視点が一つでございます。
二つ目は、時間や空間を問わずに音声・画像・データ等を蓄積・送受信できるという時間的・空間的制約を超えることができるという特性でございます。これによって距離や時間を問わずに子供たちの思考の過程でありますとか、結果を可視化できるという強みがございまして、これが思考の可視化、学習過程の記録ということにつながってくるわけでございます。
三つ目の特性が、距離に関わりなく情報の送信・受信ができるという双方向性を有するということで、瞬時の情報の共有化でありますとか、インタラクティブな学び、遠隔授業、メール送受信といったところの強みがあるわけでございます。
こうしたことが下にございますように、アクティブ・ラーニングの視点に立った深い学び、対話的な学び、主体的な学びの実現に大きく貢献できるのではないか、また、個々の能力や特性に応じた学びの実現に大きく貢献できるのではないか、離島や過疎地等の地理的環境に左右されない教育の質の確保に大きく貢献できるのではないかというような御議論を頂いているところでございます。
こうした観点から、3ページ目でございます。先ほど、教科別の議論を簡単に御紹介させていただきました際に、各教科において学びのプロセスについて議論いただいているということを御報告申し上げましたけれども、3ページ目の真ん中辺り、理科の例とございますように、教科ごとに育成すべき資質・能力と学習プロセスの在り方について御議論いただいているところでございます。例えば、そこでは自然事象の中から問題を見出して、予想や仮説を立て、実験計画を実施し、分析をし、次の学びにつなげるというようなプロセスをイメージしていただいているわけですけれども、こうしたこととICTの効果的活用の在り方について、各教科等に御議論いただく必要があるのではないかということでございます。
ICTの効果的活用はアクティブ・ラーニングの視点であります、深く、対話的で、主体的な豊かな学びの実現ということ、また、情報活用能力の育成にもつながっていく。問題の発見や解決にICTを活用したり、コンピューターを操作する基本的な技能の習得ということにも支えられながら、こういった力に結び付いていくという効果があるのではないかということをおまとめいただいております。
より具体的にイメージを作っていただきましたのが4ページ目でございます。教科によっていろいろプロセスは様々でございますけれども、仮に、そこにございますような問題の発見、解決のプロセスをイメージした際に、ICTの効果的活用の例ということでございますけれども、比較的、対話的な学びということに近いものでは、他校との交流でありますとか、協働での意見整理、発表、プレゼンテーションや話し合い、協働制作等々。また、深い学びという観点からは、課題の把握、調べ学習、シミュレーション、自らの学びの振り返り。また、そういった自らの学び振り返りという点は主体的な学びというところにもつながっているところでございます。
一番下には、上記のプロセスの全てに当てはまる活用ということで、個に応じた学習でありますとか家庭学習、遠隔教育、障害の状況等に応じた指導等ございますけれども、留意すべき点にございますように、あくまで例示ということでございまして、これに限られるものではないということ、学習活動のつながりと学びの広がりを意図した、単元の構成の工夫が求められるということでございますけれども、一般的なイメージとしては、汎用的なイメージとしましては、こういったイメージが考えられるということをベースに、各教科においてより効果的にICTを活用するためにはどういった場面で活用できるかというふうな議論を各教科において深めていただいたらどうかということが情報ワーキングにおいて議論をしていただきました一点目でございます。
続きまして、二点目の方でございます。5ページ目に、資質・能力の三つの柱から整理した、全ての生徒に育むべき情報に関わる資質・能力のイメージということでございます。資料2-2を少しおめくりいただければと存じますけれども、資料2-2の2ページでございます。情報教育の目標としての「情報活用能力」の育成ということがございます。情報及び情報手段を主体的に選択し活用していくための力ということでございますけれども、これまで情報活用の実践力というもの、それから、情報の科学的な理解というもの、それから情報社会に参画する態度というもの、この三つをベースに整理を、この三観点から整理をされてきたところでございます。これを少し分解して再構造化することによって、今回、論点整理で整理されておりますような資質・能力の三つの柱との関係性を明らかにしていきたいということで御議論を頂いたところでございます。
元の資料の2-1の5ページ目にお戻りいただけますでしょうか。5ページ目の上にございますのが、情報活用能力のこれまでの三つの観点ということでございますけれども、これを基に企画特別部会の論点整理の方向性も踏まえて、下のローマ数字1、2、3にございますような、個別の知識・技能、思考力・判断力・表現力、学びに向かう力、人間性等の観点から、再構成をしていただいたものが5ページの図でございます。
まず、個別の知識・技能というところでございますけれども、情報を活用して問題を発見・解決したり、考えを形成したりする過程や方法についての理解、あるいはそういった過程において活用される情報手段の特性についての理解とその操作に関する技能ということでございます。また、一番上の点線の中にございますように、そういった過程の中では教科の学習を通じて身に付ける知識等がまさにその基礎的な情報として生きてくるということもございますので、その関係も併せて記載していただいたところでございます。
また、加えて、アナログ情報とデジタル情報の違いなど、情報の特性の理解、コンピューターの構成や情報セキュリティーなど、情報手段の仕組みの理解、社会の情報化と情報が社会生活の中で果たしていく役割、及ぼしている影響の理解、情報に関する法制度やマナーの意義についての理解などでございます。
二番目でございますけれども、情報を活用して問題を発見・解決し、新たな価値を創造したり、自らの考えの形成や人間関係の形成等を行ったりする能力。もう少し細かに申し上げますと、そこのバーで三つ整理しているような力などでございます。また、そういった形成の過程において情報手段を活用する能力というものも含まれるというふうに整理をいただいております。
最後の柱でございますけれども、情報を多角的・多面的に吟味し、その価値を見極めていこうとする情意や態度。自らの情報活用を振り返り、評価し、改善していこうとする情意や態度。情報モラルや情報に対する責任について考え、行動しようとする情意や態度。情報や情報技術を積極的かつ適切に活用して、情報社会、すなわち情報の果たす役割が一層重要になっていく社会に主体的に参画し、より望ましい社会を構築していこうとする情意や態度ということで再整理をいただいたところでございます。
6ページにございますように、これまでの三観点を三つの柱の観点から整理をし直していただいたところでございますけれども、これらはばらばらに育まれるということではなく、相互な関連付けをしながら育まれるということに留意をする必要があるということでございます。
そして、これを発達段階に応じてどのように育成すべきかということを整理していただいたことが7ページ目でございます。小学校におきまして、問題の発見・解決の学習を経験しながら情報や情報手段を活用されていること、身近な生活と社会の情報化との関係性を学んでいく。情報や情報手段に良さや課題のあることに気付くということ。情報手段の基本的な操作ができるようにするなど、発達段階に応じた資質・能力を小学校教育の本質的な学びを深める中で身に付けるということ。
中学校におきましては、ごらんのとおり、情報を効果的に活用して問題を発見・解決したり、自らの考えを形成したりする経験、その過程で情報手段を活用する経験を重ねつつ、より小学校段階より抽象的な分析等も行えるようにするなど。
また、高校段階におきましては、さらに情報社会への主体的な参画に向けて問題を発見・解決したり、自らの考えを形成したりする過程や情報手段についての知識と経験を科学的な知として体系化していけるようにするなどでございます。
こうした中で中学校におきましては、技術・家庭科の技術分野「情報に関する技術」の中で、現在、計測・制御に関するプログラミングを学んでおりますけれども、加えてコンテンツに関するプログラミングも学べるようにすることなど、デジタル情報の活用と情報技術を中心に扱った学びを深めていくということ。また、今回、高等学校の情報科におきましては、新たに共通必履修科目を作ることといたしておりますので、その中で情報に関わる資質・能力を育てる中核の科目として情報や情報技術を問題の発見と解決に活用するための科学的な考え方を基礎的なプログラミングということも含めて学んでいくということを充実させていくという方向性でございます。
また、こうしたことはなかなか学校だけでは、教える様々な条件ということで制約がある部分もございますので、社会との連携、外部が提供する学習プログラムとの連携や社会人講師との連携など、こういったこともしっかりと充実させていく必要があるということでございます。
8ページ目以降は、これは事務局の方で、こうした方向性を踏まえて具体的に総則や各教科、どのような改善・充実が考えられるかということでまとめさせていただいたものでございます。全体の方向性につきましては、教育課程全体を通じて、情報に関わる資質・能力を発達の段階に応じて育成することができるよう、教科特性に応じた指導内容の充実とアクティブ・ラーニングの視点に立った学習活動におけるICTの効果的活用を進めていくということ。特に、小学校段階において情報手段の基礎的な操作、文字入力やデータ保存などを、例えば3学年の国語におけるローマ字学習や総合的な学習の時間における学び方を学ぶという中、あるいは社会科における資料の収集・活用・整理など、算数における図形やグラフの作成、理科における観察・実験の記録等の学習とも関連させながらしっかりと育むことができるよう、カリキュラム・マネジメントの中で明確に各学校がしていくということを求めていくということ。また、先ほど申し上げましたように、外部社会人講師の活用や外部が提供する学習プログラムとの連携など、社会との連携をしっかり図っていくこと。こういったことを全体の方向性として考えていってはどうかということでございます。
また、各教科につきましても記させていただいておりますけれども、例えば国語におきましても、様々なメディアによって表現された情報の理解でありますとか、様々なメディアを用いて表現したりするために、情報を多角的に吟味して構造化する力、活用する力などを育んでいったり、出典の明示など、必要な決まりを身に付けたりすることなど。また、社会科系科目におきましては、観察や調査を通じて情報を集め、読み取り、まとめていくために必要な力、取り出した情報を基に考察・構想・説明・議論するために必要な力、社会における情報化の意味や影響。
9ページ目でございますけれども、高校の新科目におきましても様々な情報を活用する力ということを育んでいくということ。また、算数・数学におきましては、数・式、記号、図、表、グラフなどを理解したり、数理的に問題を処理したりするために必要な力、統計的な内容の改善。アルゴリズムに対する理解を深めさせるために問題解決の後、その過程をしっかりと振り返って、同様の問題に活用していくこと。理科におきましても、自然事象の中から情報を抽出したり、それを基に考察・推論するために必要な力、科学技術と日常の関係。生活科におきましても身近な人との関わりの中で情報を伝え合う。芸術系科目におきましても、音楽を形作る要素、芸術を形作る要素などの視点でしっかりと捉えて、活用して表現したり鑑賞したりできるようにすること。あるいは、知的財産の意義について理解すること。
10ページ目、家庭、技術・家庭にございますように、生活の課題を解決するために必要な情報収集、選択、判断など。また、消費生活における情報化の進展に対応した意思決定に基づく消費行動。技術分野におきましては、先ほど申し上げたようなコンテンツに関するプログラミングについての充実も含めた情報に関する技術の役割や、影響についての理解と必要な力の育成。それから、体育におきましても、必要な情報を基に、スポーツと関わったり、健康に関わる情報を収集して、意思決定、行動していくために必要な力。外国語におきましても、外国語に必要な情報の抽出、それを基にした思考の形成、表現。情報科につきましては、共通必履修科目の新設に伴う情報に関わる資質・能力を中核的に育てる科目としての改善。職業に関する各教科におきましても、各職業分野の課題を解決するために必要な力ということの育成。道徳、総合的な学習の時間、特別活動などにつきましても、それぞれ情報モラルに関する指導や、情報の集め方、調べ方なども含めた学び方の育成、情報化が進む中での責任ある行動をとっていくために必要な力、キャリア形成に必要な力などの育成を図っていく必要があるのではないかということでございます。
また、全ての教科におきまして、アクティブ・ラーニングの視点に立った学習活動において、ICTをより効果的に活用した学習が行われるようにすることが重要ではないかということでございます。これにつきましては、11ページ目下にございますように、こういったこと、ICT機器の開発など、ICT環境の整備と一体的に進めるということが不可欠でございます。また、学校によって環境整備の状況が異なるという実態も踏まえた対応が必要であるということでございます。また、二つ目の米印にございますように、小学校部分で特に記させていただいておりますコンピューターにおける文字入力やデータ保存などの基礎的な操作。例えば教育の情報化ホームページ、既存のものがございますけれども、これに練習用教材を載せるなどして、各学校が安心して活用できるような教材を開発、普及していくことなども求められるのではないかということでございます。
事務局からは以上でございますけれども、堀田主査の方から議論の状況などを御紹介いただければと存じます。
【羽入主査】  お願いいたします。
【堀田情報WG主査】  情報ワーキンググループの主査をしております、東北大学の堀田でございます。きょうはよろしくお願いいたします。
今、事務局の大杉室長から随分詳しく御説明いただきましたので、私の方としては、情報ワーキンググループで特に議論の中心になっていることにつきまして、皆様にこの資料を用いましてお伝えしたいと思います。
まず、情報に関わる資質・能力といったときに、扱うものは二つございます。一つは情報手段と言われる、ICTをはじめとする様々な情報手段ですね。それともう一つは、その情報手段を経由してやってくる情報。情報そのものをどういうふうに読み取り、どういうふうに整理し、どういうふうに構造を考えて相手に伝えていくかという、情報そのもののことと、情報手段のことがあります。ICTを各教科で使うというのは、情報手段の話になりがちですけれども、それを使うことによって情報の取り扱いをしているという意識を子供たちにしっかりと身に付けさせたいなということを考えております。
まず、この分野の現状につきましてですが、先ほど資料2-2が配られましたが、ちょっと4ページをごらんいただけますでしょうか。4ページに、文部科学省が行いました情報活用能力調査というのが、結果が載っております。これは小学校と中学校に行われた結果で、高等学校向けは今年度、実は動いているところです。子供たちに情報活用能力がどういうふうに身に付いているかということを調べた結果なのですけれども、一つは、整理された情報を与えると、それを読み取るということはできるのだけれども、ホームページを渡り歩いて、関連させながら読み取るみたいなことがなかなかできていないということが分かっています。したがって、少し複雑な、文章だけでなく図表も含めた少し複雑なものを、しかも実際に調べるときはウエブで調べることが多いわけですけれども、そういうシチュエーションの中でしっかりと読解するというのはまだ十分ではないということがあります。
もう一つ、下の方に書いてありますけど、ローマ字入力が極めてうまくできないということが分かっています。小学生で言うと5.9文字。これは5年生ですけど、10秒に一文字ぐらいのペースだと。これが平均でございます。もちろんできている学校はみんなできている。できていない学校は著しくできていない。非常に学校間格差、つまりこれは指導の格差がございます。こういう現状があります。
5ページ目に行きまして、左側に赤で大きく、「2010年前後からスマートフォンやSNSが」と、こう書いてありますが、前回の学習指導要領の改訂の時期に比べますと、非常にスマホ等の発展は著しくて、これに伴う様々な情報モラル上の課題が起こっていて、しかもそれが低年齢化しているという現実がございます。また、その少し上に「ブラックボックス化」と書いてありますけれども、人工知能等がこれからどんどん出てきて、どういう処理をしているのかというのが私たちが分からないまま進んでいく可能性というのはありますので、例えば高等学校の教科情報においてはもう少し科学的なことをしっかりとやる必要があるだろうという、そういう気持ちがございます。
さらに少し飛んで申し訳ないのですけれども、同じく10ページです。10ページは、高・大接続の部分で、大学入学者選抜の話が書いてありますけれども、ここでCBTの導入ですね。コンピューターで試験をするということが議論されておりまして、それは単にコンピューターでチェックボックスをクリックして選択するとかいうレベルではなくて、ちゃんとコンピューターで自分の考えを書き、それを採点するという形で進んでいることを考えると、キーボード入力ができないというのは、多分、恐らく入試の問題等とも関係してくるだろうという現実がございます。
今のような現実を踏まえ、現状の総則にはどう書いてあるかというと、例えば小学校の配慮事項のところの(9)に情報の指導のことが書いてありますが、そこには、「コンピューターで文字を入力するなどの基本的な操作や情報モラルを身に付け」と書いてあります。「身に付け」というのはかなり強い言い方かなと思うのですけれども、ここにも文字の入力のことは総則に書いてあるんですが、現実は先ほど申し上げたような現状がありまして、総則に書いたことがしっかりと実現するようなカリキュラム・マネジメントに私どもは非常に強く期待するところでございます。このことに少し附帯して申し上げますと、スマートフォンが出てきたり、あるいはタブレットが学校に入ってきたりしまして、生活の中でもキーボード入力の機会というのは、生活だけではちょっと失われつつあります。今、大学生でもスマホでレポートを書こうとしたりしますが、現実の世の中では、まだしばらくの間はキーボードから文字を入力してレポートするとか、プレゼンテーションを作るとかいうのは、恐らく当面なくならないだろうというのが私どもの考えでございまして、そういうふうに考えたときに、こういう基本的な操作についての指導をどういうふうに教育課程に位置付けていくのかということは大切なことだと考えております。
もう一つ、情報モラルと申し上げましたけれども、情報モラルというのは大きく分けて二つのことをやっているんですね。一つは、ICTとかを使うときにコミュニケーションの相手を大事にするという、いわゆる本当のモラルみたいなことと、もう一つは、この世の中ですから非常にセキュリティーをはじめ情報安全みたいなことをやっているわけですが、その情報安全みたいなことについては道徳ではちょっと取り扱いにくい部分でございまして、そうすると低年齢化したスマートフォン保持みたいなことと、この情報モラルの、とりわけ情報安全の部分をどういうふうにやっていくかというのは、これまたカリキュラム・マネジメント上、非常に重要なことかというふうに考えているところでございます。
最後に、資料2-1、先ほど大杉室長に御説明いただいた8ページのところですね。各教科等のところにつきまして、私どもの議論の中からちょっとポイントを押さえておきたいところだけお伝えしまして、私の説明は終わりにしたいと思うのですが、まず、全体の方向性、総則のところで申し上げますと、先ほどもお伝えしたように、情報手段の基本的な操作及び情報セキュリティー、情報安全のところをカリキュラム・マネジメントで明確にするということを学校現場にしっかりと確実にやっていただく仕組み、仕掛けをお願いしたいということでございます。
国語については、様々な情報がメディア経由でやってくる現実と、それをちゃんと読解できるかどうか、そしてそれをメディアを使って表現するということが多くなっている現実を考えると、国語の指導の中で、例えばプレゼンも含めた、そういうメディアの特徴や効果と、相手に伝える、あるいは相手から伝えてもらうということの関係をしっかりと押さえることができないかと期待しているということ。
さらに、社会科のところで申し上げますと、一番下の白丸に書いてありますが、人々の意思決定に情報が使われているということですね。それが情報社会なわけですけれども、こういうことを確実に理解したいなと、させたいなというふうに考えているということです。
あと、時間の関係もありますので少し飛ばしますが、10ページに、下の方に体育・保健体育がございます。体育・保健体育の三つ目の丸のところに、「様々な情報機器の使用と、欲求やストレスを含めた健康の関わり」と書いてありますが、私どもとしては結構心配なのは、ネット依存です。子供たちがネットから離れられない、スマートフォンから離れられないという現実があって、そのことが彼らの可処分時間をかなり食っているという現実がございます。こういうことに対して、基本的な生活習慣の観点から指導するという方法もありましょうし、生徒指導の観点からということもあるかもしれませんけれども、若干、中毒性の強いこういうものに対して、自分の健康を考えてどういうふうにやっていくかということは、ネット依存のことも、保健の教育内容として押さえられる部分も多少あるかなというふうに期待するところでございます。
続いて11ページ、総合的な学習の時間ですが、ここではまさに情報をどう取り扱うかという学び方のことと、そのときに情報手段をどううまく使うかということがありますので、ここは今後も期待するところです。
あと、特別活動ですが、特別活動は非常に直接体験を大事にする分野かと思いますけれども、そういう人間関係上のつながり、集団のつながりにネットが頻繁に使われる、そういう時代ですので、そういう社会現状を踏まえた特別活動の書きぶりになるとありがたいと思うところでございます。
少し長くなりました。私の説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【羽入主査】  ありがとうございます。
事柄が事柄だけに多岐にわたることと、それから、多角的な問題がございますので、大変分かりやすく御説明いただきましてありがとうございました。恐らく委員の皆様から多くの御質問があろうかと思います。ひとまず今の時点で何人かの方に御質問いただき、続いて健康・安全ワーキンググループの検討状況についても御説明を頂きまして、その二つを合わせて少し時間を取りたいと思いますが、現時点で御質問、御意見などがございましたら、どうぞおっしゃってください。今の方がよいかもしれないと。
【黒上委員】  2-1の8ページに、総則にどういうことを盛り込むかというのが、丸が三つありますね。それで、まとめていただいていますけど、丸の二つ目が、各教科と情報の関係について書かれているわけですよね。それが今のお話を聞いていると、情報教育に関しては情報の手段と、それから情報そのものの二つの側面から育てるという話がありまして、三つの柱との関係のページもありましたけど、そこの下の二つの柱に関しては、必ずしも情報手段と関係がない、人間の頭の中のことについて書いていますよね。そういうことを考えると、この二つ目の丸が最終的に落ちていくところから情報手段の基本的な操作をどのようにできるようにしていくかをカリキュラム・マネジメントの中で明確にすると書いてあるのですけれども、ちょっとそれだけでは足りなくて、やっぱり各教科の中で子供が学習する情報をどのように、情報教育として処理のプロセスを見ていくかというようなことが、もう1個丸を増やすか、この中に書き込むかするかで何か入ってくるといいなというふうに感じました。
【羽入主査】  では、続けて奈須先生、鈴木先生の順に。
【奈須委員】  総則そのものではなく、教育課程全体としてということなのですけれども、カリキュラムの議論というのはどうしても各領域、各教科でやっていくと、どんどん盛り込むものが拡大して、カリキュラム全体が膨れ上がってしまうということがあろうかと思うのです。今の資料2-1の各教科別のポイントのイメージで言うと、アクティブ・ラーニングの視点を入れることでICT利用を進めるということは、方法に関することで、これはむしろ時数的には従来のことを質を上げつつ、時数を圧縮して効率化できるという方向に働く可能性があって、なおかつ、情報活用能力が身に付くという一石二鳥的な方法でいいなと思うのですけれども、一方で、各教科に新たなコンテンツをお願いしているということもかなりあると思うんですよね。例えば、芸術関係の教科で、各美術とか書道について、知的財産の意義について理解するということがあって、ああ、なるほど、とても大事だなと思うんですけど、図工とかってすごく時数がないところに、これがまた入ると、多分、図工や美術の人としては、そんな御無理な、っていう話があるんじゃないか。またそれでじゃあ絵画を減らすのか、みたいなことにもなりかねな。また情報の方で御議論いただいたり、また、ここ全体でも考えることだと思うのですけれども、いろいろな時代の変化とか、新たな要請の中で、コンテンツはどんどん追加事項として増えてくる。これは時数をむしろ増やす方向に行くと思うのですけれども、例えばICTとか情報というコンテンツを新たにに入れることで、従前、図工なり書道なり国語なりでやっている教科のある部分がむしろ不要になるとか、あるいは何らかの形で圧縮できるとか、あるいは部分的に代替できるとかっていうことが出てくるといいなと。つまり、スクラップ・アンド・ビルドということができるといいなと思うのですけれども、例えば情報なんかすごく可能性があるので御議論いただけるとありがたいなと思うのです。それも各教科ごとというよりも、例えば情報やICTを入れることで原理的に従前、つまりアナログにやっていた、あるいは手でやっていたものも、この部分がコンテンツ的に置き換えられるとか圧縮できるとかっていう、何か原理的なものとか方針的なものっていうのはお示し可能なのでしょうか。
例えば、先ほど話題に出た、ローマ字入力というのは、とても大事だと思っています。現在の国語のローマ字指導というのは本当に傍流というか、本当にちょっとしかやっていないのだけれども、つまり、国語の中でローマ字指導の意味が全く情報が入ってくることで変わってこざるを得なくなるのだろうと思うんですね。それは僕はいいなと思っているんですけれども、と同時に、だったら何かの部分を圧縮できないか。ローマ字入力になっていくのであれば、もう手書きということが減ってくるという、そこは反対意見が飛んできそうなんですけど、と考えれば、例えば漢字の書き取りとか漢字の指導について何らかの方針転換とか部分的な割愛っていうのは可能なんだろうか。こんなことを言うと国語の人から猛反対受けそうなんですけれども、でも、可能性をやっぱり考えてみるという方向に行かないと、どんどん増えていくんですよね。例えば、漢字のとめ、はね、はらいの指導というのは、今後もあの丁寧さでやり続けていくのかとか、あるいは、再生できなきゃいけないのか。再認でいいんじゃないかと。もちろん再生できた方がいいんですけれども、必ず再生できる程度ということに対して、再認でいいと。つまり、候補が出たときに適切な漢字を選べるという学習ではいけないのか。ちょっと大胆過ぎる意見かもしれませんけど、でも、今回もそうですけど、長期的にICTとか情報が入ってきて、まさに僕らの暮らしが変わっていくとか、リテラシーそのものの概念が変わっていく中で、やっぱりそういうことまで一度考え始める時期なのかなと。これは情報のワーキンググループで御議論いただいて、御提案いただけるのかどうなのか、総則の部会でしかきっとこんなことは議論できないので、と思って申し上げました。
【羽入主査】  ありがとうございます。
では、鈴木委員に御発言いただいて、後でまとめてお願いします。
【鈴木委員】  各教科と情報の関連のことについて言及されましたけれども、これを読んでみますと、結局、情報に関わること、もっと広く言うと、データや資料の収集に関わることが情報だけではなくていろいろな教科に関わってくると。前々回も申しましたけれども、やっぱり中間的な目標、例えばデータの収集、選択、そしてその価値の判断というような、そういう中間的な目標は、例えばこの情報から出てくるのを見ても、いろいろな教科に関わって、目標としてやはり掲げる必要があるんじゃないかなと。要するに、中間的な目標のようなものが必要ではないかなと。
それから、高校生を見ておりますと、インターネット等で得た情報をそのまま信じてしまうと。もちろん、いろいろな部会の資料にもありますけれども、情報の審議、価値の判断ということをもっと強調された方がいいのではないかと思います。
以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。
ひとまずここまでの御意見で、堀田先生。
【堀田情報WG主査】  まず、黒上委員のおっしゃった件については、情報そのものの扱いをどういうふうに各教科の中で、あるいは総則でしっかりとっていうのは、私としても同じ考えでございます。各教科の様々な学習活動の中で、教科としての目標のみならず、情報の扱いについてちょっと取り立てて際立たせるようなことができればと、私も考えております。
二つ目の奈須先生のスクラップ・アンド・ビルドについては、全くよく分かる議論でございますが、私どものワーキングでまだ十分にそこをお示しできるほどのことはないのと、もう一つは、各教科のことの内容まで、実はこうやって意見をいろいろ書きましたけど、これは各教科で議論されることなので、何か余り私どもが言い過ぎてもいけないなと思いながら、実は書いた部分ではございます。しかしながら、ローマ字の指導等、おっしゃっていただいたように、各教科で今行われている指導とつなげることでうまく時数が、その部分で減らせ、かつ、その後の学習活動がよりやりやすくなることによって、全体の指導時数が減っていくということは十分に考えられることだというふうに思っております。今、ICTが余り活用されていませんので、教師の提示としては活用されていますけど、子供の学習の道具としては余り活用されていませんし、教科書のデジタル化等も、子供の端末にそれが十分に使いやすく入っているという状況には今のところはありませんので、そういうものが備わってくることによって指導が効率的に進み、全体の時数がというのは考えられることだと理解しております。
最後の鈴木委員のおっしゃった、中間的な目標、ちょっと私は分からないので、ネット情報をうかつに信じるということについては、本当にそのことが様々な生徒指導上の問題になっていますが、何で信じるのかというと、相手を信じましょうという学習が一方ではされているわけですから、一方で情報については安全教育の観点からこういう点は大事ですよということをしっかりと知識として子供たちに伝えていくということが、どこかで教育課程上ないと、やっぱり今のことが続くのかと。生活の中だけでは学べないことかなというふうに思っております。
以上でございます。
【羽入主査】  ありがとうございます。
渡瀬委員が挙げていらっしゃいますので。
【渡瀬委員】  それでは、二つお願いいたします。一つは、アクティブ・ラーニングが今後、大事にされる中で、思考・判断・表現の評価ということが必要になってきます。以前から思考・判断・表現の評価には、形成的な評価が必要だということは私も述べさせていただいています。先ほどのICTの活用が思考の可視化ですとか学習過程の記録にたけているということからすると、ICTを活用することそのものが子供のデジタルポートフォリオのような形になって、形成的な評価にそのままつながっていくような、そういう強みがあるんじゃないかと思います。そういうことが強みとして記述されていくとよいと思います。
もう一つは、鈴木先生もおっしゃった、目の前の情報をうのみにしないということです。論点整理でも話題になっている批判的思考力というところと、この情報活用能力というところの関わりが上手に説明されるといいのではないかと思います。
以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。
堀田先生、何かありましたら。
【堀田情報WG主査】  全く同感で、そのような方向でお願いしたいと思います。
以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。
ひとまずそれでは情報に関しての議論はここまでにさせていただきますが、先ほど堀田先生がおっしゃっていましたが、情報としてここまで各教科に要望する立場ではないというようなこともお考えかもしれませんが、問題意識として、問題提起をしていただくということはとても重要なことだと思いますので、どうぞおっしゃっていただきたいと思います。
それから、一つだけ、情報と言ったときに、当然のことなのかもしれませんけれども、今ここで議論しているのはデジタル情報だけのことを言っておりますし、そうであるのが当然なのかもしれませんけれども、情報という教科の中で情報はそもそも何かっていうようなことはどこかに記しておいてもよいのではないかという気がしますが、余りにも素人的な発言ですみませんが、ちょっとそんな感想を持ちました。
それでは、ひとまず情報に関してはこれまでとしまして、次に移らせていただきますが、堀田主査はまだおいでくださるということでございます。
続きまして、体育・保健体育、健康・安全ワーキンググループの検討状況について、事務局からお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】  失礼いたします。それでは、体育・保健体育、健康、安全ワーキングにおいて御議論をいただきました、健康・安全等に関わる育成すべき資質・能力について、これも教科横断的に、あるいは総則の中で検討が必要になってくる事項でございますので、御紹介をさせていただきます。資料の3-1、それから3-2を御参考にごらんいただければと存じます。
資料の3-1を一枚おめくりいただきますと、1ページでございますけれども、体育に関する指導、健康・安全及び食育に関する指導ということで整理をさせていただいております。真ん中の枠にございますように、総則におきまして学校における体育・健康に関する指導は、生徒の発達の段階を考慮して、学校の教育活動全体を通じて適切に行うものとする。特に、学校における食育の推進並びに体力の向上に関する指導、安全に関する指導、及び心身の健康の保持増進に関する指導については、保健体育科はもとより、家庭科、特別活動などにおいてもそれぞれの特質に応じて適切に行うよう努めることとするとされているところでございまして、体育・健康に関する指導は、保健体育科のみで行うものではなく、カリキュラム全体の中で行うものということとされているところでございます。
その要素としましては、下にございますように、体育に関する指導、健康・安全教育に関する指導、食育に関する指導ということがございます。学習指導要領は当然のことながら学校教育法に基づくものでございますけれども、それ以外にも、例えば体育に関する指導につきましては、スポーツ基本法に基づく取組の方針、あるいは食育に関しましては食育基本法、学校給食法、それから健康教育・安全教育に関しても様々な法制度が関わっているところでございます。こうしたことが相まって、一番上にございますような一人一人の生活の質的向上、かつ、社会の活力の向上につながるということでございます。
今回は、こうした構造をより分かりやすくするということと、それぞれの中身の充実をいかに図っていくか。特に安全に関しましては、前回改訂の後、東日本大震災など、様々なことがございまして、防災を含む安全に係る記載の充実ということが求められているところでございますので、こういった観点からも、どのような充実を図っていくかということでございます。
それでは、2ページ目からは安全に関わる資質・能力の育成ということでございます。学校における安全の取組ということでございますけれども、学校安全に関しましては、当然のことながら、学習指導要領も大変重要でございますけれども、学校保健安全法に基づきまして、各学校は学校安全計画というものを策定、実施するということになっているところでございます。これをベースに、子供たちに必要な資質・能力を育成するとともに、学校の環境を整える、児童・生徒の安全を確保するために必要な環境を整えること、この双方を狙いとしているところでございます。
したがいまして、安全教育と安全管理、それをつなぐ組織活動ということが重要になっているところでございまして、安全教育に関しては安全学習と、個別指導も含む安全指導、それから安全管理に関しましては、安全点検の実施でありますとか、要領の作成など、そしてそれらを校内の協力体制・研修、家庭及び地域社会との連携の中で図っていくということとされているところでございます。こうした学習指導要領と学校安全計画の関わりということもひとつ明確にしていく必要があるというところでございます。
具体的に改善の方向性でございますけれども、4ページ目にございますように、論点整理の中で安全な生活や社会づくりに必要な資質・能力を育んでいくということ、そして、教科・科目の見直しの中で総則の関係部分、あるいは各教科の関係部分の充実を図っていくということにされているところでございます。
5ページ目には、具体的にどのような資質・能力をということで整理をしていただいておりますけれども、自助を前提とした共助、公助に関する能力の育成ということで、安全な生活を送るための基礎的・基本的な知識・技能、安全確保のための的確な思考・判断、安全で安心な社会づくりに参加し貢献する情意や態度、そのような資質・能力を実践的・探求的な学習プロセス、アクティブ・ラーニングの視点から充実させる中で育んでいくということ。そして、教科にまたがる事項でございますので、これもまた教科横断的なカリキュラム・マネジメントが重要だということでございます。
6ページ目には具体的に三つの柱に照らして整理をしていただいておりますけれども、何を知っているか、何ができるか、安全な生活を送るための基礎となる知識・技能、あるいは安全で安心な社会づくりの意義の理解、知っていること・できることをどう使うか、安全確保のための的確な思考・判断に基づく意思決定。これは従来、志の方で使われているところでございますけれども、今回、思考・判断・表現の柱を踏まえてどういう整理をしていくかということも重要でございますけれども、意思決定、それから行動選択(危険予測・回避)、そして一番上にございますような、進んで安全で安心な社会づくりに参加し貢献しようとする情意や態度等ということ、それを、右側に法令等と関係法令がございますけれども、こういったことも踏まえながら図っていく必要があるというところでございます。
より具体的には7ページ目にございますように、安全教育に関わる資質・能力ということを育んでいくということ。それをアクティブ・ラーニングの重視の中で主体的な行動に結び付ける。単なる知識ということではなく、主体的な行動に結び付ける形で図っていくということ。安全で安心して生きるための資質・能力の中核となる資質・能力は、保健科あるいは体育科で育まれるということでございますけれども、特に先ほど申し上げた防災の充実、社会科をはじめとした関連教科で図りつつ、教科横断的なカリキュラム・マネジメントを実現していくということ。生活安全、交通安全に対応した資質・能力ということ。あるいは、生涯にわたって安全で安心な生活を送るための実践力ということにつながるような力を保健体育科を中心に充実させていくこと。あるいは、様々な自然災害のリスクに対応した知識・技能というようなことを社会科、特別活動を中心として充実させていくこと。また、地域、家庭との連携も重要であるということでございます。
8ページ目に具体的に各教科においてどのような充実が考えられるかということを整理していただいておりますけれども、これらを構造的に見ますと、9ページ目にごらんいただけますように、安全で安心して生きるための中核となる力を育む青い部分の体育科あるいは保健体育科ということと、主体的な行動に必要な力を育む特別活動ということ、あるいは安全・安心な地域社会づくりに必要な力を育む社会科、地歴・公民科、そして、自然現象について理解する理科というようなことを生命を尊重する心を育成する道徳教育や総合的な学習の時間の防災・安全に関する、まさに地域の実情に応じた探求的な学習ということも関連付けながら充実させていくということが重要ではないかということでございます。
10ページ目には、総合的な学習の時間における防災・安全に記させていただいております。
続きまして、同様に食育に関する充実でございます。食育に関しましても、学校給食法に基づきまして、各学校は食に関する指導の全体計画ということを作る中で、子供たちに必要な資質・能力と、必要な学校の環境整備、あるいは校内の協力体制、組織的な活動ということを一体的に進めているところでございます。
13ページ目にございますように、食育に関しては、健全な食生活を送るために基礎となる知識・技能、食生活を適切に判断し、食に関する課題を解決していく、食の大切さ、健全な食生活の実現に向かう情意や態度等を、これは共通でございますけれども、アクティブ・ラーニングの視点から育み、教科横断的なカリキュラム・マネジメントを実現していくという視点でございます。
14ページ目には、具体的に何を知っているか、何ができるか、健全な食生活を送るための基礎となる各教科の知識・技能、知っていること・できることをどう使うか、自らの食生活を適切に判断し、食に関する課題を解決する力、そして一番上にございますような、食の大切さ、健全な食生活の実現に向かう情意や態度等、これらを右側にございますような法令の規定も踏まえつつ図っていくということでございます。
15ページ目には、次期改訂に向けた検討の方向性ということで、食育に関わる知識・技能をアクティブ・ラーニング、あるいはカリキュラム・マネジメントの実現の中でどのように育んでいくか。食事の重要性や感謝の心を食文化など、各教科の知識・技能も充実させつつ、また、特に近年、20代、30代を中心とした若い世代で健康や栄養に配慮した食生活の実践などで課題があることを踏まえて、18歳までに育むべき力という観点から、高等学校の家庭科の食育の充実が必要ではないかということ。また、発達段階に応じて、食物アレルギーなど、現代的課題を踏まえた内容について充実を検討していくということでございます。
16ページ目にございますように、食育に関しましても、家庭科、それから体育・保健体育、生活科、社会科、地歴・公民、特別活動、道徳、その他教科ということを関連付けながら総合的に育んでいくということが必要であるということでございます。
17ページ目には、保健、心身の健康の保持増進に関する指導に関する資質・能力の育成ということでございますけれども、18ページ目にございますように、保健教育と保健管理、これも学校保健計画というものを各学校が作ることになっておりまして、これと学習指導要領との関係性ということもしっかりと考えていく必要があるということでございます。
19ページ目をごらんいただきますように、この保健教育につきましても、健康な生活を送るための基礎となる各教科の知識・技能、自らの健康を適切に管理し改善していく力、健康の大切さ、健康の保持増進に向かう情意や態度をどのように育んでいくか、アクティブ・ラーニングの視点ということとカリキュラム・マネジメントの実現ということが重要になってくるということでございます。
20ページにございますように、健康な生活を送るための基礎となる知識・技能、また、自らの健康を適切に管理し改善していく力、また、健康情報ということは数限りなくあるわけでございまして、果てしなく全てを学校教育で扱いきるということは難しいわけでございますので、自ら健康に係る情報を収集し、意思決定、行動選択していく力ということが必要になってくるということでございます。また、一番上にございますように、健康の大切さ、健康の保持増進に向かう情意や態度等ということでございます。
21ページ目でございますけれども、同様に資質・能力の育成、アクティブ・ラーニング、カリキュラム・マネジメント、体育・保健教育、特別活動などにおきまして自分の健康を維持管理していくための力ということをしっかりと育んでいくということ。現代的な課題や疾病構造の変化に対応した学習内容の充実ということも求められるということでございます。
22ページ目にございますように、体育・保健教育科を中心としつつ、同様に特別活動、道徳、総合的な学習の時間、それから特に保健教育に関しましては一番右側に個別指導というところ、ここも重要になってまいりますけれども、こういったことを一体的に考え、進めていく必要があるということで整理を頂いたところでございます。
23ページ目、24ページ目は、関係法令、防災、食育、食品安全、アルコール健康障害、がん、少子化、口腔衛生、健康増進法などなど、熱中症、少子化なども含めて様々な法令、各種計画がございますけれども、先ほど申し上げましたように、これらを資質・能力という観点からどのように育んでいくかということを各教科においてしっかりと取り組んでいただく必要があるということでございます。
事務局からは以上でございます。続きまして野津先生からお願いできたらと思います。
【野津委員】  ただいま大杉室長から説明があったとおりでございますが、私の方からは、特に強調しておきたいポイントとして二つほど述べさせていただこうと思います。
まず、安全・食育・心身の健康のいずれも様々な社会の変化や、それに対応すべく整備されてきた法律、基本計画等を踏まえますと、また、これから先のおよそ10年間の変化を見据えますと、学校教育全体を通して指導の充実を図るという必要性があるという認識はワーキンググループにおきましても強く共有されているところでございます。
その上で、まずは総則の書きぶりにおいて、これまで一つの柱として、こうした安全・食育を含む健康と体力について書き込まれているわけですが、この改訂における総則におきましては、さらにもう一歩踏み込んだ書き込みが必要ではないかという意見が強くあったと思います。学校教育全体でという表現というので、とてもいいのですけれども、とかく現場では通り一遍で受け止められてしまいまして、結局、どこも何を責任を担って評価していくのかというようなことが見えないままに、結果的に保健体育を中心にというフレーズの中で、その保健体育の保健のところでやる程度で終わっていたり、あるいは特活等々でも頑張ってはいただいているのですけれども、そういう状況を打開する状況があろうかというふうに思いますので、そういった通り一遍でうたっているようなふうに受け止められないように、それを回避するような各学校でのカリキュラム・マネジメントというところにおいてしっかりとこれらの教育が位置付けられるような記述が求められているというふうに思います。
そのためには、具体的に、本日の資料でございます、資料3-1の安全で言いますと9ページになりますでしょうか。また、食育に関しましては16ページ、心身の健康の保持増進では22ページに特に記載されているような絵が、総則を読んで描けるような、関係性が描けるような書きぶり、分かるような書きぶり。特活、道徳を含めて各教科、あるいは個別指導も含めまして、そうした特質、独自性を十分考慮した内容を教科横断的にできるだけ明確に示すということが課題としてあろうかと思います。
それから、もう一つです。これは保健体育の教科のワーキングの中の議論ということになろうかとは思いますが、小学校体育、中学校及び高等学校の保健体育における保健と体育という中での保健学習の配当時間は極めて限られております。ここで改めて述べるまでもないとは思いますが、小学校では保健学習は三、四年生で8時間程度です。それぞれの学年でいいますと、各学年4時間、そして五、六年生が16時間程度、すなわち各学年で言いますと8時間ずつ、そして中学校では3年間で保健体育315時間あるわけですが、その3年間のうちで48時間が保健学習。わずか48時間です。そして、高校は1年生、入学時といいますが、1単位35時間。2年次におきまして1単位35時間、計70時間。こうした限られた時間の中で、今、重要だと言われる安全、食育、心身の健康というのに関わって、あれもこれも入れ込むというのはあり得ないわけです。その際によくよく教科としての、保健体育としての特性、独自性という視点からどういう内容がそこにふさわしいのか、そして安全、食育、心身の健康の共通性という視点も精選の上では重要かというふうに思います。それから、さらには発達段階ということを踏まえて健康課題というのもある程度絞れていく可能性はあります。
そういった点、ほかにもまだあろうかと思いますが、そういったことからプライオリティーを十分考えて精選していく。先ほど、スクラップ・アンド・ビルドのお話もありましたけれども、そうした作業が今後の非常に大きな重要な課題になってくるかと思っております。情報教育においてもほぼ共通するような総則の書きぶりのところは共通すると思いますが、情報教育からもネット依存のことがきょう具体的に投げられたわけですが、ネット依存自体はWHOではまだ病気というような認識、位置付けではなくて、アルコール依存等々、そういった依存という文脈で巻き込むことができればある程度可能かもしれませんが、いずれにしましても非常に慎重にそこの辺りは検討していかなければいけない。
以上、二点がここの総則の委員会におきましても共有して課題意識を持っていただければと思っております。
以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。
いずれも非常に広い分野にわたる重要な問題を含んでいますので、是非先生方の方から御意見を頂きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。ただいまの御報告について鈴木委員、では、まずお願いいたします。
【鈴木委員】  ちょうど昨日、イギリスの科学教育はどうあるべきかという論文を読んだばかりで、その中に、科学教育の中でアルコールについて、ドラッグについて、やはり教えるべきではないかと。これまでの科学教育は余りにも大学で科学の分野を専攻する向けの教育になっていたと。もう少し一般市民向けの科学教育ということを考え、例えばアルコールの問題やドラッグの問題を科学教育の中に入れるべきではないか。奈須委員も前々回そういうことをおっしゃったと思うのですが、やはりイギリスにもそういう意見がかなり出てまいりまして、先ほど、情報がいろいろな科目にお願いすると言いましたが、健康・安全の方でもそういうことを、例えば生物の中で、やはりイギリスでもそのことが問題になっておりますので取り上げる必要があるかもしれないと思います。
【羽入主査】  ありがとうございます。
ほかに。天笠委員。
【天笠委員】  御説明どうもありがとうございました。少し御質問させていただければと思うのですが、総則における書きぶりということについてなのですけれども、御承知のとおり、今、きょうの、とりわけ健康・安全等々の部分については総則の一般方針のある意味で三つ目の固まりのところに出ている。御承知のとおりです。極めてそういう意味で言うと、位置付けもかなり重要なところに位置付けられていると。また、こういう表記で書かれているという意味では、かなりそういう意味で言うと、教育課程上、総則としての位置付け等々は相応のプライオリティーを既に認めて、そしてそれを明示しているというふうにも捉えることができるのではないかというふうに思います。その上で、さらに書き込むという場合の書き込み方とか、あるいは現行のそういう位置付けとか、そこら辺のところを、こういうふうに動かしていこうとか、さらに変えていこうとか、何かもしそういうことが部会の中で意見が出ているということでしたら、その辺りのところについて加えて御説明をお願いできればと思うのですけれども、その件についてよろしくお願いします。
それから、加えて、きょうのこの情報、あるいは今、御説明いただいた健康等々というのは、俗に言う〇〇教育の、それについての扱いを総則上どういうふうに扱っていったらいいのか、それについての一つの提起でもあったというふうに私は聞かせていただきました。それで、現行の学習指導要領は、御承知のとおり、きょう御発表いただいた保健・安全のところには出ているのですけれども、例えば情報教育については配慮事項というところに位置付いていたりですとか、場合によってはそのほかについては書いてあるようなないような形の扱いになっていて、本来的には〇〇教育、現代的な課題からすると、その部会のそれも含めて改めて総則上の位置付けというのも検討しなければいけない課題としてあるんじゃないかと。そういう点において御説明いただいた、この安全・保健等々の部会の御発言というのは、私はそういう意味で言うと提起に富んだことだったかというふうに聞かせていただきましたので、ついては、先ほど申し上げましたように、書きぶり等々について、さらに何か御発言等々があったら、その一端を聞かせていただければと思います。よろしくお願いします。
【野津委員】  ありがとうございます。総則の中で三つ目のところにしっかり健康等に関しては書いてあるということですが、教育基本法の第一条のところに、心身ともに健康な国民の育成という、そこにうたってあるものですので、そういったところにしっかりと一つの柱で書かれていて当然しかるべきことだというふうに私としては思っております。
そのレベルの書きぶりにもかかわらず、実際の授業の実践、教育の実践といったときに、そこにもかなりギャップがあるということで、むしろそういった意味で問題意識を強く持っているところでございます。
具体的な書きぶりということに関して、ワーキングの中で具体的に意見が出てきたりまとまっているわけではございません。私の個人的な意見にはなりますが、総則を読む範囲ではこのことに関して、この教科を中心に、そしてこういったことも関連しながらというところにとどまっているがゆえに、総則を見る範囲で学校教育全体で、この食育にしろ、安全にしろ、心身の健康にしろ、どういうふうに全体で進められるか、具体的にやられることになっているか把握できない。小学校は全教科ということがあるかもしれませんけれども、教科担任制の中・高になりますと、保健体育の教師は保健体育の保健の中は分かって、中心になって、これに関わって何をやるかというのは分かるのですが、じゃあ家庭科で食に関してどうなっているかというと、家庭科まで行かないとなかなか。もちろんそれを手元において見るということもすればいいわけですが、せっかく総則というものの冊子があるわけですので、そこで全体の枠組みが見えるような書き込みが必要というか、できれば具体的にさらに見にいこうという、一体細かいところではどう違うんだというようなことも探求、関心も高まるのではないかなと思います。そういう書きぶりが一つ考えられると思います。
【羽入主査】  ありがとうございます。
では、根津委員。
【根津委員】  失礼します。まず前提というところになるかと思うのですけれども、きょうの議事次第の3の議題の(1)の、今は丸3のところかと思うのですが、先ほどの丸2、情報教育に関することもそうなのですけれども、「検討事項のうち総則及び各教科」、これは「等」が落ちているのではないでしょうか。「各教科等」ではないかと。となりますと、先ほどの御懸念のところは、本来それはどこかの教科が中心になって例えば安全教育を担当するようなものではない、と主張されたいのではと考えるわけです。
今度は資料3-1の7ページのところですが、安全という言葉で真っ先に思い浮かんだのは、特別活動の中で安全のことがあったはずで、その7ページの左側のところで小・中・高、抜粋して書いてあるわけです。そこには健康という言葉と安全という言葉とが結び付けられた形で、「心身ともに健康で安全な生活態度の育成」、と。中学校でも同じで、「心身ともに健康で安全な生活態度や習慣の育成」。高等学校になると、若干書きぶりが変わってくるわけですけれど。それに関連してのお尋ねですけれども、健康との結び付きがどれぐらいワーキンググループでは御議論されたのでしょうか。先ほどお話がありました防災のような面まで含めると、どうも一般に考えられる健全、健康・安全というところとは切り離して扱うことも必要なのではないか、そうも聞こえるのですけれども。健康教育と安全教育との接点が門外漢には分かりにくいのですが。お願いします。
【羽入主査】  それでは、黒上委員にもお話を頂いてからお願いします。
【黒上委員】  今、御指摘がありました、特活のところの「心身ともに」という文言の中に入っているのかなと思うのですけれども、全体としては、安心・安全を脅かされる存在の子供というイメージを強く受けるんですよね。逆に、これ、情報教育とか道徳教育とか特活に関わって、ほかの子供の安心・安全を脅かす可能性みたいなものが余り見えてこないんですよ。それは心の健康が保たれればそういうことは起こらないという、そういう意味で「心身ともに」を読めばそうなんですけど、何かそういう視点が入ってくることによって、またいろいろなところとのつながりが強くなるような感じがするなというふうに思いました。
【羽入主査】  ありがとうございました。その場合、脅かすというのは物理的のみならず心理的なこともということですか。
【黒上委員】  そうですね、心理的に。具体的に言うといじめの問題とかの話です。
【羽入主査】  ありがとうございます。
では、野津先生、よろしいですか。
【野津委員】  ちょっとお答えになるかどうか分かりませんが、根津先生の健康教育と安全教育の関係っていうところなのですが、少なくとも健康教育、いわゆる保健教育の中に安全がこれまで含まれている、位置付けられてきたゆえんは、安全教育そのものというよりは、安全が侵されたときのけが、命を守るというところで保健が引き取っている。したがって、けがの防止であり、障害の防止なんですね。例えば防災教育といったときに、自然災害自体を防ぐことは保健教育では内容としてきちんと位置付けるんではないんですね。それに伴って引き起こされるけがとか感染症とかもろもろ、健康、病気に関わるところが保健が引き取るということですので、自然災害、防災のところは今回、社会科や理科ということで、その対策なり防ぐこと自体というのは位置付けられるんでしょうけど、じゃあ、交通事故、それから生活安全の防犯も含めまして、それ自体を防ぐことを保健体育の中の保健学習として引き取っていくというのは、これはとても守備範囲外になってくるのだと。現行のところは一応そういう考え方でやっているのですが、これまでは教科横断的なことの強調はされながらも、十分そういったことを踏まえて、より厳しい精査というのはできていなかったところがあろうかと思いますので、今回、非常に保健の内容もたくさんになってきましたので、これまで以上にその辺はシビアに精査して、教科横断的なカリキュラムという発想できちんと整理をする絶好の機会だろうと思っております。
【根津委員】  すみません、言い落としたかもしれないのですけど、特別活動の中に学校行事というものがあって、学校行事の分類の一つとして「健康安全・体育的行事」って、やっぱり健康と結び付いて語られるところがこれまで強かったなと思って、お尋ねさせていただきました。
以上です。
【羽入主査】  奈須委員、どうぞ。
【奈須委員】  御質問というよりは、今の御議論を聞いていて、感想というか今後ここで議論できればいいなと思っていることなんですけれども、先ほどの鈴木先生の御提言を受けて、こういった、いわゆる天笠先生が以前からおっしゃられる〇〇教育をどう入れていくかというのは大きな課題だということですけれども、きょうの二つもある意味でそういうところだと思うのです。鈴木先生のお話で、科学ですね、理科教育という、既に在来存在しているコンテンツの取り扱い方ですよね。つまり、トピックを変える。あるいは教材を変える、方法を変えることで〇〇教育が結果的に実現される。つまり、一石二鳥的にやれる部分。むしろそれによって在来の教科を学ぶことの意義も深まり、教科の定着も深まるという、アクティブ・ラーニングとオーセンティック・ラーニングに行くと。これはコンテンツを増やさないやり方ですよね、多分。コンテンツを増やさないでやれる。さっきから時数のことばかり言っていますけど、多分それはすごく大事なので、コンテンツを増やさないでやれるやり方と、いや、これは今入っていないんだと。これは新たにコンテンツとしてやっぱり入れていかなければいけないんだという部分がそれぞれの〇〇教育にはあるはずで、それを腑分けができるといいなと。在来の教科のトピックや教材でできるものであれば、むしろそれでやっていくということはどこかで考えていいのかなと一つ思いました。
もう一つは、今の議論で、例えば安全・健康・食というのはかなり違うんだと。そうだと思います。だから、同じ、いわゆる心身に関わるものでも、安全・健康・食・防災と、かなり違う。その違うという、つまり領域固有知識ということですね。領域ごとに違うものであると。つまり、問題解決の一般方略を身に付けてもだめで、領域特殊的な知識とか経験とか構えというのは重要だという面が一方にあると。でも、それをするとまたカリキュラムが膨大に膨れていってしまうし、ばらばらといっぱい頭に入っただけということになる危険性もあるので、多分、一つのやり方として、そういう各領域ごとの問題解決的な何か教育をしつつ、子供たちがその共通性というのが一方であるわけですよね。形式とか論理とか追究の仕方とか構えということでは、きっと共通項はかなり幅広くあるわけで、今回、資質・能力と言っているものの一つはそういうことじゃないかと思うんですよね。健康であるとか安全であるとか環境を保全するとか、もっと言うと異文化と触れ合うとか、そういうことに共通するような何か身の処し方、社会との関わり方、自分の見つめ方、情報の取り扱い方、処理の仕方って、何かそういう、また余り一般的にしちゃうとだめなんですけれども、一定程度、一般化可能な、市民として自分がよりよく生きていくための問題解決方略であるとか、情報との向かい合い方とかっていうのは多分、抽出可能で、それを多様な領域、多様なトピックについて繰り返し繰り返しやっていって、結局、似たようなことをやってるじゃんって子供が思うということが多分大事なのだろうと。
その辺のことを、多分、総則のカリキュラム・マネジメントの示し方っていうんですかね、どのようにカリキュラム・マネジメントして、どのような質の学びを実現するかという議論は、きっと今回、総則でやるのだろうと思うのですけれども、その仕方の戦略をこれからこの部会ではかなり精緻に考えていかなければいけないのかなと思いました。
以上です。
【羽入主査】  では、藤田委員、高岡委員、続けてお願いします。
【藤田委員】  今、カリキュラム・マネジメントの話がございましたし、コンテンツを増やさないという話がございましたけれども、きょう資料3-1で御説明いただいたもの、先ほど野津先生も御指摘いただいたところですが、例えば9ページを拝見しますと、もう既にカリキュラムコンテンツとして「そこにあるもの」がここにまとめられている。こういった一覧性の高いものが、今まで学習指導要領の総則の解説を見ても、学校現場の先生方の手元には届いてこなかった。つまり、こういうふうなコンテンツの中に既に入っている要素を見出すところから各学校や先生方に任されてきたところがあると思うんですね。今回は学習指導要領そのものは多くの方々が読んですぐ分かることを目指し、簡略なもの、明解なものということになりますので、その分量を増やしていくことは難しいにせよ、今現在の解説に相当する資料に関しては、カリキュラム・マネジメントを前提として、既にあるコンテンツをしっかり体系化して、一覧性の高い資料にしていくことの重要性について今回のこの資料3-1から私は大きくヒントを得ました。こういったものが各学校に行くと、カリキュラム・マネジメントの一つのきっかけになっていくのかなということを強く感じました。
付言いたしますと、例えば私が関わっておりますのはキャリア教育なのですけれども、そのキャリア教育も年間指導計画、全体計画を立てましょうというキャンペーンを行っております。また、道徳教育も当然のことながら立てなくてはいけない。そういった全ての教育活動を通して行うものの計画を立てるということが、先生方にとっては非常に大きな負担となっている。特に経営を担っていらっしゃる校長先生、あるいは教務を担当しておられる教務主任の先生方には非常に負担であると。ただ、これは前回申したことですけれども、指導計画と育成すべき力が立案されていないうちに評価は当然できないわけですから、評価を求めていくということは、やっぱりこういった計画や育成すべき力を想定していくことが必要だろうと。ですから、そういったものをしやすくするような資料をどう私たちが作っていくのかということの大きなヒントが今回の資料3-1にあったのかなと、そんなことを感じた次第です。
以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。
高岡委員。
【高岡委員】  ありがとうございます。非常に素人感覚の感想を申し上げることしかできないのですが、実は、この分野について私どもの教員研修センターでも結構な時間を費やして、指導者養成研修というのをやっております。そこで、今、思い出しますと、分類としてはどっちかというと体育に関わって体力向上指導者養成研修。それから、健康・安全・食育は、三つのコースを一つにまとめて健康教育という概念。もう当然、御承知のことだと思いますが、安全教育といえば生活安全、交通安全、防災という、この三つの領域を満遍なく認識してもらう。そういう枠組みの中で、具体的に申し上げると、例えば健康教育のコースには保健及び養護教諭が大半参加する。食育はもちろん栄養教諭が参加すると。安全についてはやはり震災以後、教頭先生クラス、あるいは生徒指導なんかも、大分広がってきたような気はするのですが、昔の感覚で言うと、やっぱり体育なんですね。体力向上は体育の先生中心で、どっちかというと早く柔道場へ行きたいという、そういうメンタリティーの研修になっているので、やっぱり保健体育あるいはその周辺の教諭の職種が縦に割られていて、学校全体としてのカリキュラム・マネジメントというところまで、私どもの研修も頭が行っていないし、そこに参加する人たちもどうも見えていないだろうという想定ができるんです。
そのことを何とかしなければいけないということは認識としては大分前から私も思ってはいるのですけれども、教科縦割りということと職種縦割りという、これは結構大きいですよね。そこがこれからしっかりやっていかなければいけないことだろうなというふうに思いますし、部会の方でも是非、カリキュラム・マネジメントにまで展開できる、学校を挙げてという辺りの論拠、あるいは総則にどう書かれるかという御提案は今あったわけですけれども、そのこともこの総則部会で検討していっていただければ、私どもの研修ももうちょっと質のいいものになるかなというふうに思っております。
以上です。
【羽入主査】  ありがとうございました。
梶委員、どうぞ。
【梶委員】  本日は健康・安全等に関しての資料の3-1ではかなり整理が進んでいるということを実感させていただきました。その中で、今、総則での書きぶりとなると、現行でも教育課程編成の一般方針のところ、先ほど藤田委員が御指摘のとおり、今、高校ですと四項目に分かれて書かれています。私も、藤田委員の指摘指摘のとおり、この部分、体育・健康に関するところは、やっぱり学校教育全体でどういう取組をしているかという、やはり道徳教育と同様に学校としての全体計画があって、学習活動を通じて評価を行い、改善に務めていくべきではないかと考えています。
最近、心身の健康の保持増進について、学校教育においても、中学校や高校でも非常に関心が高まっています。昨今、少子高齢化が進み、また様々な病気が医学の進歩によって明らかになってきたことで、それに伴って疾病構造も多様化、複雑化しており、この健康保持・増進を目指しての自らの健康管理や疾病予防について、また、疾病予防についてということ、基礎的また実践的な知識を吸収し、理解を深めていくためには、生徒の関心が高いという時期に学校の方で私なんかも見させてもらっています。
今回、アクティブ・ラーニングの視点で協働学習を通じて、こうした複数の生徒による協働的な活動を行うことで、現代的な健康のみならず、安全や食育にも関連付けを図りながら、様々な課題の発見、あるいは解決に取り組むと。生徒が自ら自主的、主体的に学習していくこと、こういうことがますます求められていると強く感じています。
また、健康保持増進に関してですが、これは食育とも関連させる必要があるのですけれども、やはりちょっと学校現場での教育活動を見てみると、健康と病気を明確に二つに分ける概念として捉えて、非常に不思議に思っている生徒たちがいるんですね。むしろ、二つに分けられる概念ではなくて、最近、未病なんていう言い方をされています。心身の状態は健康と病気の間を連続的に変化していくものというふうに捉えていく。この全ての変化の過程を表すというような使い方で未病ということが言われていますけれども、こんなことも学校教育においても少し、いわゆるコンテンツを増やさずにコンパクトに行うには、健康と病気という二項対立的なものではなくて、一体化したものとして捉えていくこと。また、薬物濫用の防止、これも実は非常に学習活動の中で重要で、これは理科とも関連付けなどを図りながら、薬学に関する学習ということも学校として取り組んでいく必要がある。
いずれにしても複数の教科にまたがった取組が行われているので、最初に戻りますけれども、やはり道徳教育や、あるいはキャリア教育のように学校全体での体系的な教育計画を学校として位置付けていく必要があると考えています。このことは、やはり同じように、先ほどの情報活用能力の部分も全く同じだと思っております。教育課程編成の一般方針の中で、この部分をどのように表現していくのかということも、今回、改めて総則の冒頭の部分に明記すべきであると考えております。 以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。
野津先生、コメントはありますでしょうか。
【野津委員】  今の、健康と病気が裏表、あるいは二極ということではなくて、今も保健の中ではそこは区別できなくて、健康の連続性というような概念の捉え方で教えるようになっているとは思います。リスクということが健康教育では最近、注目されていまして、安全も共通する部分があろうかと思います。一過性の過激な反応、社会的な反応等々を見ていても、リスク概念の教育というのがうまくいっていなくて、その辺が今の健康と病気との関係、安全、食育も含めて、リスク概念というものをしっかり位置付けて健康教育でもやっていく必要があって、その辺が現行の内容から次のステップに向けた、一つ大きな内容的な観点になろうかと思っております。どうも御意見いろいろありがとうございました。
【羽入主査】  ありがとうございます。
では、藤田委員に御発言いただいて、それでこの二つの部会の御報告を少しまとめていきたいと思います。藤田委員、どうぞ。
【藤田委員】  きょう情報と健康・安全を中心にお話をお伺いして思ったことは、やはり学校現場の先生方、特に中・高の先生方ですけれども、教科のプロとして免許を持っていらっしゃることの再認識が必要ではないかという点です。その教科の中にもちろんコンテンツとして既に入っている部分があるわけですけれども、やはり地域社会との連携というものの枠をどう活用していくのかということが大きくこれから問われていくのかなと思いました。
学校教育との連携を図ろうとしている団体がたくさんあると思います。そういった中で、学校の先生方がそういった教育リソースを有する団体や組織とどう連携をとりながら、ともに子供を育てる力にしていくかというようなノウハウが十分積み重ねられていない。そういう中で学校外の教育リソースがなかなか学校の中に入りづらい状況がある。このような現状をどう変えていくのかということが問われてきているのかなと。同じように健康・安全についても、特に3.11以降、東北3県を中心として様々な連携方策の知見が得られてきている。日本全体が、南海トラフも含めれば大きな危機に瀕している中で、そういった地域社会で積み重ねた知見が学校内外を問わず子供たちに提供されるべきだろう。このような視点から地域社会との連携の在り方ということが、総則全体、カリキュラム全体を考える中でもう少し議論を深めていければいいなということを感じた次第です。
以上でございます。
【羽入主査】  ありがとうございます。
堀田先生、何か一言、全体の意見を。
【堀田情報WG主査】  皆さんのお話を伺っていて、私ども、コンテンツをお願いしているみたいな部分がやっぱりありまして、そのことに対して私どもも全体の時数が増えない中で大変恐縮している思いだというのが先ほど申し上げたことでございます。とりわけICTについては、それが学校現場に入ってきて子供たちの道具に一旦なれば、学習の効率化とか、あるいは深まりとか、そういうことは十分考えられるわけで、そこに至るまでの初期段階の、整備も大事ですけれども、初期指導をどういうふうにするかというのが、それは教育課程でしっかりと担保しなければいけないことかなと思いますので、このことが私は気になっていることの一つでございます。
もう一つは、コンテンツを増やさないでどうするかという、そこのところをもう少し私どもとしても、各教科の中に既にある、さっきの知的財産は実はもう芸術の中にはあるのですけれども、そういうものの関連を、もっと全体性を持った形でお示しできるようにして、総則の中でそれを表していただけるようなお手伝いをできればと思っているところでございます。
以上です。
【羽入主査】  ありがとうございました。
今回、御報告いただきました情報と、それから健康・安全という、これは恐らく今の時代、特にキーワードとして注目すべきことではないかと思いまして、時間を少し取らせていただきました。総則の書き方についての議論もございましたけれども、ただ書いてあるということではなくて、どのような形で先生方が、それぞれの教科に反映できるか、教科を超えてまた反映させることができるかということを示すに当たって、今回の御報告はとても重要なものではなかったかと思っております。情報の変化や、それから安全というものがどのように変化しているかということもありますので、これまでの教科に加えて、そういったことが広く意識された総則の記述が望まれているのではないかと思いました。お二方の先生方どうもありがとうございました。
それでは、評価についての議論を進めたいと思いますが、今回は事務局から御説明を頂き、十分な議論はできないかもしれませんけれども、これまでの取りまとめもしてくださっていますので、それを伺って、時間のある限り先生方から御意見を伺うというふうにしたいと思います。よろしくお願いします。
【大杉教育課程企画室長】  失礼いたします。それでは、資料の6-1をごらんいただければと思います。適宜、資料の6-2をお手元に置いて御参照いただければと思いますけれども、もともと資料4として総則評価部会の検討事項全体像がございますけれども、その評価の部分の論点をさらに膨らませていただいたもの、前回までの御議論を踏まえまして、膨らませていただきましたものが資料6-1になってまいります。大きく四つの柱があるかというふうに理解をしております。
一つ目は、今回、議論の中心となっております、育成すべき資質・能力、これと学習評価、これをいかに効果的につなげていくか。育成すべき資質・能力に基づく教育課程の構造化、これをまさに今、各教科ワーキングにおいて進めているところでございますけれども、これと学習評価の改善を一体的に進めていくためにはどのような改善が必要かという点でございます。一つ目には、教科目標、現在の教科目標を育成すべき資質・能力を三つの柱から構造化していくという方向性でございまして、これと学習評価の関係、これがより密接になりますと、目標に準拠した評価という、現在もそういうことを行うということにはなってございますけれども、これをさらに実質化していくことができるということではないかと思います。
それから二つ目でございますけれども、資質・能力の三つの柱、知識、技能、思考・判断・表現、それから学びに向かう力、人間性と、三つの柱がございますけれども、それぞれの性質を踏まえたふさわしい評価についてはどのように考えていくべきか。学習状況を分析的に捉えるという面では観点別評価ということでございますけれども、一方で特に三つ目の柱、人間性等に関しましては、こういった分析的に捉えるよりも、その一人一人の良い点や可能性、進歩の状況について評価するという個人内評価として捉えていくべき面もあるかと考えられますので、そういったふさわしい評価の在り方ということを踏まえて評価の全体像をどう考えていくかということ。
そして、次に、そういった資質・能力と学習評価の関係性を踏まえた指導要録の在り方ということでございます。指導要録につきましては、資料の6-2をごらんいただければと思います。指導要録についてということで7ページ目にあるところでございます。指導要録、既に総則評価部会で御説明させていただきましたとおり、在学する児童生徒の学習の記録として作成するということで、学籍に関する記録と指導に関する記録からなるものでございます。そして、指導に関する記録としましては、行動の記録、それから教科・科目の学習の記録、総合的な学習の時間、特別活動の記録、文章で記載されるような総合所見及び指導上参考となる諸事項などが記載されているところでございまして、その右ページ目から次のページにかけてございますようなところに、このような形で参考事例が示されているところでございます。
特に8ページ目の行動の記録というところがございます。この項目が少しずつ改訂もされているところでございます。21ページ目をごらんいただければと思いますけれども、行動の記録の変遷というところがございます。昭和36年に「行動および性格の記録」となっていたところから、現在「行動の記録」となっているところでございますけれども、左から右の現在のようなところに至っているところでございまして、こういった変遷を経てきているところでございますけれども、今回、御議論いただいている資質・能力の在り方なども踏まえつつ、行動の記録も含めて、この指導に関する記録の記載事項についてはどのように考えるかというところが一つ、論点としてはございます。
それでは、資料の6-1にお戻りいただきまして、1の一番最後の丸でございますけれども、前回までにも構造をごらんいただきましたが、学習評価に関しましては指導要領、解説、それから教育課程部会の答申とは別途の報告でありますとか、指導要録の改善に関する通知、それから国立教育政策研究所の参考資料を出しているというような、こういった様々な関係資料があるわけでございますけれども、これらの意義ですとか関係性を再整理した上でより分かりやすい形で示していくためにはどうすればいいかというような論点も一つあるところでございます。
次に、学習評価のうち、観点別学習状況の評価の在り方についてということでございます。現行の評価の観点は「知識・理解」「技能」「思考・判断・表現」「関心・意欲・態度」の四観点ということを基本とされておりますけれども、この背景には学力の三要素、知識、技能、思考力・判断力・表現力、主体的に学習に取り組む態度、この三要素がございまして、四観点でありますけれども、基となる考え方の要素は三つでございます。8月の論点整理におきましても、観点別学習状況評価につきましては、知識、技能、思考・判断・表現、主体的に学習に取り組む態度の三つで整理をしてはどうかという御提言を頂いたところでございまして、こうしたことを分かりやすく示しながら評価の観点と資質・能力の関係をより構造化していくためにはどのような改善が必要かということでございます。
これにつきましては、先ほど御紹介した論点整理の考え方に加えて、教科等の特性も踏まえた整理が必要になってくるかと考えられます。次のページをごらんいただきますと、三つの観点で整理することについて考えられるメリットということでございますけれども、教科との目標と評価の観点の対応性でありますとか、指導と評価の一体化、教員の負担軽減、学力の三要素との関係性とそのバランスという観点、また、教科・校種を超えて共通の整理ということで、全体的な組織的取組が行いやすくなるということが一つあるところでございます。
一方で、各教科におきまして、例えば表現といった場合に、学力の三要素における思考・判断したことを表現するといったことを超えて、音楽による表現でありますとか、体育による身体表現でありますとか、そういった大きい概念としての表現を使っているところもございますので、そういった概念の整理が必要な部分もございます。また、国語ですとか芸術系教科におきまして、思考・判断・表現が一体的であるということで、一体的に設定している教科に関する考え方、あるいは保健分野で技能ということが示されていないということでありますとか、芸術系教科におきましても知識ということは思考・判断・表現の中で一体的にということでなっていること、こういった教科の特性ごとの観点の示し方の違いということも踏まえつつ、全体の在り方ということを議論していく必要があるのではないかということでございます。
また、三つの観点それぞれにつきましては、知識の意味について、事実的知識あるいは概念的知識ということの御議論も論点整理の中で頂きましたけれども、知識を習得し構造化していくということと発達の段階を踏まえた知識ということに関する評価の考え方について、あるいは思考・判断・表現、前回スタンダード評価という御意見も頂きましたけれども、具体的に評価していくに当たっては先生方もいろいろ悩む観点でございますので、これをいかに分かりやすく示していくかということ。また、主体的に学習に取り組む態度ということ、現行、関心・意欲・態度でございますけれども、これの関係性を整理した上でなかなかその評価が思ったようにこの観点がなされていないという反省も踏まえて具体的な評価の在り方を分かりやすくどう示していくかということでございます。
それから三点目でございますけれども、各学校における学習評価の質を高めていくために必要な取組、学習評価の取組をより活性化していくためにはどのような考え方の整理や取組上の工夫が必要かということでございます。今回も御議論いただいておりますカリキュラム・マネジメントと学習評価の関係性をより分かりやすくどう整理していくか。あるいは、学校が立てる年間計画と単元、授業の組み立て方と評価の場面の在り方についてどのように整理をしていくか。子供たちの学習前の状況を診断する診断的評価、それからプロセスの中で評価していく定性的評価、最後のまとめの総括的評価の意義と在り方をどのように分かりやすく説明し、様々な工夫を促していくかどうか。多様な学習活動や学習成果の評価、高・大接続の中でも言われておりますけれども、こういった取組をどのように促していくか。アクティブ・ラーニングの視点との関係性。あるいは評価というものが教職課程や研修の中においてより重視されるためにはどのようにしていったらいいか。それから、本日もございましたけれども、ICTの活用について。こういった視点から御議論を頂ければと思っております。
最後に、これが学習評価の究極的な目標と言っても過言ではないですけれども、学習評価を子供一人一人の事後評価につなげ、学習意欲を高めていくために必要な取組について。資質・能力の柱の一つでもございますけれども、学習評価を子供一人一人の学びに向かう力の向上につなげていくためにはどのような工夫が必要かということで、論点整理にもございますようなメタ認知ということの重要性と学習評価の重要性をどのようにつなげていくかということ。また、この部分、まだまだ論点はたくさんあると思いますけれども、子供一人一人が自らの学習状況やキャリア実現を見通し、振り返ることができるようにするための何らかの仕組みということを考えていく必要があるのではないかということでございます。
本日はお時間が限られた範囲でございますけれども、また次回引き続き御議論いただければと思います。
以上です。
【羽入主査】  今、全体的な御説明がありましたけれども、これについて、では、鈴木委員、髙木委員の順でお願いします。
【鈴木委員】  前2回の改訂で、指導要録に関連した評価に関わってきた者として、これまでの経過をちょっと付け加えて御説明したいと思います。
やはり、これまで前2回やってきたのはどこが問題になったかと申しますと、まず四観点、科目によって多少違いますけれども、似通った観点が多くて区別がつきにくいと。これを整理しようと。前回、今、御提案があるような三観点にしたらどうかというところまで行きかけたのですが、そこまで行かずにストップしたと。今回は三観点にまとめるというのは、私自身は賛成なのですけれども、そういうことがやはり観点の区別がつきにくいということが問題になってきました。
それから、思考・判断・表現の観点の評価が難しいということです。これは先ほど、前回も申しましたけれども、やはり短期的に変化するものと思考・判断・表現のような長期的に変化する能力を同じ評価の方法でやってきたのが問題であるというのが私の意見です。とりあえず思考・判断・表現の評価についてが問題になってきたということです。
それから、三番目に、関心・意欲・態度の評価が、いわゆる信頼性のある、一般的には客観性という言葉が使われておりますが、信頼性のある評価がなかなか難しいということ。これに関しても前回のワーキンググループの児童評価、学習評価の在り方について、違う方法について提案したのですけれども、それも提案で終わっております。特に目立っていい点があった場合に丸を付けるというか、そういう、もう少し簡略化したらどうかということを前回、一応、意見として報告には出してあります。
それから、実はここがほとんど前回も余り議論されていないのですけれども、ここまでの議論で先生方、形成的評価にかなり力点を置いて議論なさっていらっしゃいますが、残念ながら中学から高校に来るとき、学習評価は形成的ではなくて総括的評価。結局、いわゆるハイステークスな評価になっているのです。ですので、その点の問題がずっとここでも議論されておりませんので、いわゆる専門的に申せば評価の統一、コンパラビリティー、訳者によっては比較可能性と。やっぱりコンパラビリティーの問題が議論されていないのが非常に問題ではないかと。当然、中学校で問題になることです。国立教育政策研究所に参考資料を作っていただきたいというのも、少しずつそういう評価のコンパラビリティーを高めていくということを願って、国立教育政策研究所に参考資料を作ったらどうですかということを前々回からずっとお願いしてきているわけです。その評価のコンパラビリティー、これは形成的評価とは違う問題が絡んでおりますから、それについても取り組まなければいけないのではないかと思っております。
次に、総合学習に関しては、新しい問題ですけれども、前々回、総合学習ができたときに記述方式になったわけですけれども、結局やってみますと、今どうなってしまっているかというと、パターン化してしまっている。幾つかの文章を組み合わせて、パターン化した記述ができてしまっていると。ですから、このままではパターン化した記述が増えるだけで、それを読んで生徒の実情が分かるという状況にはないというのが新たに出てきた問題ではないかと受け止めております。
それから、評価のコンパラビリティーの問題は高・大接続に関わって調査書の信頼性の問題として今後、かなり重大な問題になってくるのではないかと思います。
以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。
では、髙木委員、お願いします。
【髙木委員】  お願いします。日本の評価は、多少、外国の評価と私は違うという立場で評価のことを考えてきておりますが、ここで考えなければいけないのは、学習指導要領の各教科の内容との関わりの中における評価ということを考えていかなければいけないと考えております。そういった点から二点申し述べたいと思っております。
観点別学習状況の評価、現行行われているものにおいては、次回というか、今回の学習指導要領改訂の際には、指導事項の中に具体的に評価を行いやすい、特に知識・技能の部分、それから思考・判断・表現、これは指導事項の表現をそのまま引用すると、各教科の単元の目標、単元のそれぞれの内容の目標になるような具体的なものを各教科で取り上げていく必要があるだろう。それは小学校、中学校、まあ、高等学校は各学校で作らなければいけないのですが、指導目標そのものが先生方が作れないような現状にあって、教科書会社から出ている教科書の目標に合わせて指導事項が決定されている。そうではなくて、学習指導要領にきちんとその内容を明記し、それを目標として授業が行われるような構成を学習指導要領で作る必要があるだろうと考えております。
二点目です。主体的に学習に取り組む態度は、学校教育法の30条の2項というふうに先ほど室長からも説明がありましたが、現行ではこれも関心・意欲・態度と同等に学力の重要な要素として取り上げられております。ただ、これは、昭和55年から関心・態度で取り上げられて以来、辞書的な意味の興味や関心や意欲みたいなものとして取り上げられることがありますので、今回は平成22年3月の児童生徒学習評価の在り方報告で示されている、そこの内容における関心・意欲・態度の説明を踏襲しながら、知識・技能、それから思考・判断・表現の重要となる課題を取り上げて、そしてそれをある意味でコピーペーストで主体的に学習に取り組む態度の方へ持っていき、それを、その単元の中で実現しようとしているという、そういった評価の仕方をすると、学校の先生方は関心・意欲・態度、言い方を変えれば、今回の場合には特に主体的に学習に取り組む態度の評価をどのようにしたらいいかが明確になり、評価しやすくなると思います。
要するに、学校の先生方は、目の前にいる子供たちに向かって、どういう評価をするか、それが具体的に学習指導要領の内容を読むと明示化されるような、そういった構成にすることによって指導と評価の一体化が非常に分かりやすくなるのではないかと考えております。
さらに、その中で、例えば主体的に学習に取り組む態度が、なかなか単元の中で行えない要素、例えば情緒であるとか感性であるとかということもございますので、それは長期的な評価として、学期や学年末、そこできょうの中にも出ておりますが、個人内評価として一人一人の良い点や可能性、進歩の状況に対して評価するという、そういった二段構えの評価も必要になってくると考えます。
以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。
恐らく多くの意見がおありかと思いますけれども、時間の都合で議論はここまでにさせていただきます。評価については、これからさらに本格的に考えていきたいと思っております。また先生方の御意見を事務局の方にお寄せいただければと思います。
今、何人かの方に御指摘いただきましたけれども、その前の議論も踏まえて考えますに、やはり具体的に記すということが可能な限り重要であるというふうに思いますのと、それから、それは評価に関しても同じように言えるのではないかと思います。先ほどの二つのワーキンググループの御報告でございましたけれども、そこで何が目標とされているかによって評価がなされるのではないか。手順としてやはり各教科等の関係が、目標が明確にされるということが何よりも重要であり、また、それを現場の先生方に分かりやすく伝えるということをしなければいけないのではないかと強く感じました。
大変短い時間でございましたけれども、きょうは堀田先生にもおいでいただきまして、大変有効な議論ができたのではないかと思います。
それでは、今回の議論はここまでとさせていただきますが、きょうの議論もまた各ワーキンググループに御報告いただいて、またこちらにも戻していただければと思います。
では、事務局から御説明をお願いします。
【大杉教育課程企画室長】  ありがとうございました。
次回でございますけれども、2月24日、水曜日、13時から15時の開催を予定いたしております。場所は文科省旧庁舎の6階、第二講堂を予定しております。
また、主査からお話がございますように、御意見等ございましたらファックス、メール、郵送等でお寄せいただければと思います。
また、本日の資料は机上に残していただけましたら後日、郵送でお届けをさせていただきます。
【羽入主査】  それでは、どうもありがとうございました。

── 了 ──

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