理科ワーキンググループにおけるとりまとめイメージ(案)

1.現行学習指導要領の成果と課題

○ 理科においては、小・中・高等学校を通じ、発達の段階に応じて、子どもたちが知的好奇心や探究心をもって、自然に親しみ、目的意識をもった観察・実験を行うことにより、科学的に調べる能力や態度を育てるとともに、科学的な認識の定着を図り、科学的な見方や考え方を養うことができるようにする観点から、その指導の充実を図ってきたところである。
○ その結果、OECD生徒の学習到達度調査(PISA)(2012年)では、科学的リテラシーがOECD加盟国中1位となるほか、読解力、数学的リテラシーを加えた三分野すべてにおいて、平均得点が比較可能な調査回以降、最も高くなっているなどの成果が見られる。
○ 一方、理科を学ぶことに対する関心・意欲や意義・有用性に対する認識については、国際的にみても、また国語や算数・数学と比較しても肯定的な回答の割合が低い状況にある。
○ また、小学校、中学校ともに、「観察、実験の結果などを整理・分析した上で、解釈・考察し、説明すること」に課題がみられることが明らかになっており、高等学校については、実験、観察をはじめとした探究の過程が十分に取り入れられていないなどの指摘がある。
○ 今回の学習指導要領の改訂においては、これらの課題に適切に対応できるよう改善を図っていくことが必要である。

2.育成すべき資質・能力を踏まえた教科等目標と評価の在り方について

(1)教科等の特質に応じ育まれる見方や考え方
○ 理科においては、従来より「科学的な見方や考え方」を育成することを重要な目標として位置付けてきたところであるが、その具体的な内容については必ずしも明確になっておらず、改めて整理することが必要である。
○ 理科の学習においては、この「科学的な見方や考え方」を働かせながら、知識・技能を習得したり、思考・判断・表現したりしていくものであると同時に、このような学習を通じて、「科学的な見方や考え方」がさらに成長し、重要な資質・能力として獲得されていくと考えられる。
○ また、理科において育成すべき「学びに向かう力や人間性等」についても、「科学的な見方や考え方」を通じて社会や世界にどのようにかかわっていくかという点が大きく作用しており、「科学的な見方や考え方」は資質・能力の三つの柱である「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」、「学びに向かう力や人間性等」のすべてに働くものであり、かつすべてを通じて育成されるものとして捉えることが適当である。
○ この「科学的な見方や考え方」のうち、見方、すなわち様々な事象等を捉える各教科等ならではの視点については、理科を構成する領域ごとに違いを有しており、「エネルギー」領域では、自然の事物・現象を主として量的・関係的な視点で捉えることが、「粒子」領域では、自然の事物・現象を主として質的・実態的な視点で捉えることが、「生命」領域では、生命に関する自然の事物・現象を主として多様性と共通性の視点で捉えることが、「地球」領域では、地球や宇宙に関する自然の事物・現象を主として時間的・空間的な視点で捉えることが、それぞれの領域における特徴的な見方として整理することができる(資料○参照)。
○ また、理科の学習における考え方、思考の枠組みについては、課題の把握(発見)、課題の探究(追究)、課題の解決という探究の過程を通じた学習活動の中で、事象の中に何らかの関連性や規則性、因果関係等が見出せるかなどについて多面的、総合的に考えたり、既習の知識・技能等を関連付けながら発展的に考えたりすることであると思われる。
○(以下、26日の議論を踏まえて記述予定)

(2)小・中・高を通じて育成すべき資質・能力の整理と、教科等目標の在り方
○ 今回の学習指導要領の改訂に際しては、幼稚園教育及び小学校低学年における生活科等において育成される資質・能力との関連について十分に意識するとともに、これらの基礎の上に立って、小学校、中学校、高等学校それぞれの学校段階において、理科でどのような資質・能力を身に付けさせるのかを明確にしていくことが必要である。
○ 本WGにおいては、学校段階ごとに育成すべき資質・能力について、以下とおり整理した(資料○)。学校段階ごとの理科の教科目標についても、このような資質・能力の整理に基づき、今後検討していくことが求められる。
(小学校)
◎ 自然の事物・現象について、問題を見いだし、より妥当な考えを導き出す過程を通して,科学的な見方や考え方を養う。
【1】 自然を大切にし,生命を尊重する態度,科学的に探究する態度,妥当性を検討する態度を養う。
【2】 見通しをもって的確に観察,実験などを行い,問題解決の能力を養う。
【3】 自然の事物・現象についての理解を図り,観察・実験等の基本的な技能を養う。
(中学校)
◎ 自然の事物・現象について、問題を明確にして課題を設定し、根拠に基づく結論を導き出す過程を通して、科学的な見方や考え方を養う。
【1】 自然を敬い,自然の事物・事象にすすんでかかわり,科学的に探究する態度と根拠に基づき判断し表現する態度を養う。
【2】 目的意識をもって観察・実験し,得られた結果を分析・解釈する力を養う。
【3】 概念や原理・法則の基本的な理解や観察・実験等の基本的な技能を養う。
(高等学校)
◎ 自然の事物・現象について,問題を明確にして課題を設定し,根拠に基づく結論を導き出す過程を通して、意思決定を行うことができる力を育てるとともに,科学的な見方や考え方を養う。
【1】 自然に対する畏敬の念を持ち,科学の必要性や有用性を認識するとともに,科学的根拠に基づき,多面的・総合的に判断する態度を養う。
【2】 目的意識をもって観察・実験し,科学的に探究したり,科学的な根拠をもとに表現したりする力を養う。
【3】 概念や原理・法則の体系的な理解と科学的探究についての理解や,探究のために必要な観察・実験等の基本的な技能を養う。
○ また、これらの資質・能力について、「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」、「学びに向かう力や人間性等」の三つの柱に沿った整理を行い、資料○のとおり本WGとして取りまとめたところである。これらの資質・能力が確実に育成されるよう、学習指導要領の記載内容に適切に反映されることが必要である。
○ なお、小学校の「思考力・判断力・表現力」については、学年ごとに記載しているが、これは当該学年において育成することを目指す力のうち主なものを示したものであり、実際の指導に当たっては、他の学年で掲げている力の育成やそのための主な学習活動(比較、関連付け等)を行うことについても十分に配慮することが必要である。

(3)資質・能力を育む学習過程の在り方
○ 上記(2)に掲げた資質・能力を育成していくためには、学習過程の果たす役割がきわめて重要である。理科においては、資料○に高等学校の例を示しているとおり、課題の把握(発見)、課題の探究(追究)、課題の解決という探究の過程を通じた学習活動を行い、それぞれの過程において、同じく資料○に掲げてあるような資質・能力が育成されるよう指導の改善を図ることが必要である。
○ この学習過程の例で示されている資質・能力については、「思考力・判断力・表現力」として掲げてある探究の過程を実施するための力を中心に、「知識・技能」についても加えた上で、それぞれの過程において主に必要とされる資質・能力に細分化して示したものである。
○ なお、この学習過程については、必ずしも一方向の流れではなく、必要に応じて戻ったり、繰り返したりする場合があること、また、授業においてはすべての学習過程を実施するのではなく、その一部のみを取り扱う場合があることに留意する必要がある。
○ また、意見交換や議論など協働的な学びを適宜取り入れていくことが必要であるが、その際にはあらかじめ自己の考えを形成したうえで行うようにすることが求められる。
○ 小学校及び中学校においては、それぞれの発達段階に応じて、ここに掲げている学習過程の一部を省略したり統合的に取り扱ったりすることはあり得るものの、基本的には高等学校の例と同様の流れで学習過程を捉えることが必要である。

(4)「目標に準拠した評価」に向けた評価の観点の在り方
○ 「目標に準拠した評価」の実質化を図るとともに、教科・校種を越えた共通理解に基づく組織的な取り組みを促す観点から、観点別評価の観点については、資質・能力の三つの柱を踏まえたものとすることが求められている。
○ このため、本WGにおいては、上記(2)に掲げた資質・能力を踏まえつつ、資料○のとおり観点を整理したところである。
○ この点に関し、「知識・技能」については、事実的な知識のみならず、構造化された概念的な知識の獲得に向かうものであることや、一定の手順に沿った技能のみならず、変化する状況に応じて主体的に活用できる技能の習熟・熟達に向かうものであることまでも含めた広範な意味で用いられていることに留意することが必要である。
○ また、資質・能力のうち「学びに向かう力、人間性等」の部分については、「主体的に学習に取り組む態度」として観点別評価を通じて見取ることができる部分と、観点別評価や評定にはなじまず、個人内評価を通じて見取る部分があり、ここでは観点別評価として見取るべきものを掲げていることに留意する必要がある。
○ なお、これらの資質能力を主にどのような場面で評価すべきかについては、資料○に示したとおりである。実際の評価に際しては、資質・能力の三つの柱について、毎回の授業ですべてを見取るのではなく、カリキュラム・マネジメントの考え方のもと、単元や題材を通じたまとまりの中で、学習・指導内容と評価の場面を適切にデザインしていくことが求められる。

3.資質・能力の育成に向けた教育内容の改善・充実

(1)現代的な諸課題を踏まえた教育内容の見直し
○ 次期学習指導要領の改訂においては、別途「高等学校の数学・理科にわたる探究的科目の在り方に関する特別チーム」において検討が行われている新科目「理数探究(仮称)」が、現行の理科における「理科課題研究」、数学科における「数学活用」及び理数科における「課題研究」の内容を踏まえ、発展的に新設されるものであることから、「理科課題研究」については廃止するものとする。
○ 高等学校理科における他の科目については、各高等学校における開設状況や履修状況が望ましい方向に向かっていることから、現状通りとすることが適当と考える。

(2)資質・能力の整理と学習過程の在り方を踏まえた教育内容の構造化
○ (資質・能力の三つの柱の考え方について学習指導要領へ反映することについて記載予定)

(3)現代的な諸課題を踏まえた教育内容の見直し
○ 上記2.(2)に掲げた資質・能力を育成していく観点から、それぞれの学校段階において、以下のような学習活動が充実されるよう、学習指導要領の内容を見直ししていくことが必要である。
○ 小学校においては、
・ 観察・実験の結果を整理し考察し表現する学習活動を充実する。また,日常生活や他教科との関連を図る。
・ 問題解決の能力,例えば,3年:差異点や共通点に気付き問題を見いだす力,4年:既習事項や生活経験を基に根拠のある予想や仮説を発想する力,5年:質的変化や量的変化,時間的変化に着目して解決の方法を発想する力,6年:要因や規則性,関係を多面的に分析して考察し,より妥当な考えをつくりだす力を育成する学習活動を充実する。
・ 目的を設定し,計測して制御するという考え方の学習活動を充実する。
○ 中学校においては、
・ 小学校で身に付けた,比較,分類,関係付け,条件制御などの資質・能力をさらに高め,自然事象の把握,問題の設定,予想・仮説の設定,検証計画の立案,観察・ 実験の実施,結果の処理,考察・推論,表現等の学習活動を充実する。また,日常生活や他教科との関連を図る。
・ 例えば, 1年:自然の事物・事象に進んでかかわり,その中から問題を見いだす。2年:解決方法を立案して実行し,結果の妥当性を検討する。3年:問題解決過程のすべての過程を振り返り,その妥当性を検討する。
○ 高等学校においては、
・ 中学校で身に付けた資質・能力を活用して,科学的な探究のプロセスを体験させる「観察・実験」や「探究活動」を充実させる。また,日常生活や他教科(数学,情報,保健体育,地理など)との関連を図る。(必履修科目)
・ 「観察・実験」や「探究活動」を一層充実させて,科学的な探究能力の育成を図る。また,日常生活や他教科(数学,情報,保健体育,地理など)との関連を図る。(選択科目)

4.学習・指導の改善充実や教材の充実

(1)特別支援教育の充実、個に応じた学習の充実
○ 現行学習指導要領においては、総則において、「個々の児童の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的、組織的に行うこと。」(小学校学習指導要領の例。中学校、高等学校も同様)と記載されているところであるが、今後は、各教科等における指導の場面における適切な配慮が一層充実されるよう工夫を講じる必要がある。
○ このため、各教科等における具体的な学習の場面で考えられる困難さに対する配慮の例について、以下のような形で学校現場に明示していくことが適当である。
※理科における配慮の例
実験を行う活動において、実験の手順や方法が分からなかったり、見通しが持てなかったりして、学習活動に参加することが難しい場合には、学習の見通しが持てるよう、実験の手順や方法を視覚的に表したプリント等を掲示したり、配付したりするなどの配慮をする。また、燃焼実験のように危険を伴う学習活動において、衝動性や多動性のある場合には、教師の目の届く場所で活動できるようにするなどの配慮をする。
・ 自然現象としての雲を観察する活動において、雲の変化等の時間を要するような観察をすることが難しい場合には、変化に着目し、理解することができるよう、観察するポイントを示したり、雲の変化を短時間にまとめたICT教材を活用したりするなどの配慮をする。
○ (ICTの活用について、26日の議論を受けて記述予定)

(2)「深い学び」「対話的な学び」「主体的な学び」に向けた学習・指導の改善充実
(26日の議論を受けて記述予定)

(3)教材の在り方
(26日の議論を受けて記述予定)

5.必要な条件整備等について

(26日の議論を受けて記述予定)

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初等中等教育局教育課程課教育課程第二係