理科ワーキンググループ(第3回)における主な意見

1.理科を通じて育成すべき資質・能力について

(1)理科を学ぶ本質的な意義や他教科との関連性について
○子供たちの生活体験というのが乏しくなってきている。電化されて、火を使わないという生活が普通になって、人類の進化のあかしであった火が、もう子供たちの周りになくなっているというようなこともある。子供たちに聞くと、理科とは関係ないが、お節料理を食べたことがない、あるいは、トイレがオール電化なのでトイレで自ら水を流す習慣がないとか、小学校低学年になるほど強くなってきている。そういう子供たちにとって、日常生活との関連というところと、理科を学ぶ意義というところはすごく深い関係があると思う。

○高校では、他の教科に比べて理科が大切だと思う生徒が少ないとか、あるいは、小・中・高となるにつれて、理科の有用感がどんどん減ってしまっている現状の反面、OECDの調査で、なぜあれだけの高い結果が出てくるか。子供たちは理科の勉強をしているのだが、それほど大切とは思ってない。何が彼らを勉強に向かわせる力になっているのかと考えたときに、中学三年生の子供を見ていると、入試が大きいとは思う。理科を学ぶ本質的な意義を、我々は理解しているけれども、子供たちがつかんでない。そのためにどうすればよいのかということを科学的な探究云々も含めて、最初に詰めておく必要があると思う。

○学ぶ意義が分かれば、子供たちは調べていく。例えば、中学生では、ゲームについては、探究的に取り組んでいく。それは面白いとか、有用感はないにしても、彼らの魂を揺り動かす何かがあるのだろう、そういうものを理科教育の中でも明らかにする。これまでも日常生活の関連だとか有用感だとかをずっと議論し、現場の先生方もよく分かっているが、それをどう授業で実際に反映するかというところで悩んでいると思う。

○理科は暗記科目と思っている子供が多い。そうではないのだよと言っても、覚えることが多いと言う。教材に対して面白いと感じさせることが大切であると思うが、学習内容に関して、子供たちの関心や意欲が持てるような整理をしていく必要があることと、探究の過程の面白さを感じさせる、こういうふうにやっていくと、考えることは面白いじゃないかということを伝えていく。これら二つのことが探究活動をする上で重要で、理科の有用性を認識するための解決の方策になるのではないかと思う。

○現場の先生は、観点別評価の場合で、関心、意欲、態度の評価に非常に悩む。何に基づいて関心、意欲、態度を評価するか。関心、意欲を引き出す指導方法とか、子供たちがそれを身に付けたというものをどうやって測るかがなかなかわからない。理科を学ぶ本質的な意義を引き出す、子供たちに科学の有用性を実感させることの困難さがある。これを最初に解決していかないと、二番目の「育成すべき資質・能力の明確化」というところに行くのが難しいと考える。具体的な探究の方法を子供たちに伝えたからといって、それで子供たちが積極的に進むかというと、そうではない。その子供の心を突き動かす部分をどうするかということに対して何らかの提案があるとよいのかなと思う。

○中学校理科の地震の学習に関する内容を、学習を終えた高校生と指導を担当した中学校の理科教員にアンケート調査を実施したところ、生徒と教員の間でギャップが見られた。高校生に何を学びたいか聞くと、「地震防災のことを学びたい。」「どのようにして地震の災害、あるいは津波の災害から逃げるかということを学びたいと」あった。一方、中学校の理科教員は、「地震のサイエンス(科学)を教えたい。」「理科を何のために学ぶのか。」とあり、中学の理科を学んだ高校生たちには伝わっていなかったことが大変気になっているところである。理科を学ぶ意義を、どの時点で子供たちに認識させるかということが気になった。

○なぜ学びたいのかということ、そして周辺にある身の回りの現象、自分たちの将来などに結び付けられるような働きかけ、表現、プログラムの工夫が教員や教科書や学習指導要領の中にあることが必要だということの示唆なのだと思う。

○授業設計として、日常生活の中にはこんな問題があるのだよと、これを解決するためには、こういう理科の知識が必要だよねという形で授業設計をしていくことによって、日常生活の中の問題を解決するために必要な理科の知識が身につく。そういう授業設計のヒントみたいなものが学習指導要領の中にも、あるいは解説の中にも表れてくると、少し変化が生まれるのではないかなと思う。もちろん理科も必要だけれども、理科だけで解決できる問題なんていうのは、世の中にはないので、その時点で他教科とのつながりも必ず出てくると思う。

○小学校と同じ課題を中学校でもう一回やったときに同じ答えだろうかというと、恐らく違うと思う。それはなぜかというと、それまで得た知識とか、それを調べる技術というか方法とか、そういうものがどんどん深化しているからである。高校も更に知識を増やせば、それだけいろんなことがもっと分かってくる、もっと課題が解決できる能力があるということが出てくると思う。同じ課題解決と書いて、実際には同じスパイラルで、もっと深く学んでいく。様々な知識だとか方法だとかを教えていくというのが、それぞれの段階であると思う。

○一回解決したと思ったことを、もうちょっと深くやると、違う見方ができるのだというようなことを分かるのが、私は実は科学の一番大事なところだろうと思う。自分の主張だけをずっと貫かないで、科学的に、ほかが正しいということが分かったら、それを素直に認めて、自分の考えを変えてもよいと思う、もしくは変えるべきだと思う。要するに、相手の言ったことは非常に論理的で正しければ、それを素直に認めていく。これが理科で科学的な考え方を教えるという意味じゃないかなと思うので、社会、世界との関わり、よりよい人生を送るかというところにつながるのではないかなと思う。

○日本は、学習することに対する学習者の責任を余り強調していない。一方、欧米の研究では学習者の責任ということがすごく問われており、「自分は今、何を勉強しているのだろうか。」、「自分が分かったことは何なのだろうか。」そして、それをどう評価してあげると、そこがうまく明らかになっていくのか、そんな研究も行われている。我が国でも学習している本人に学習の責任を持たせて、それが学習する際の、「理科を学ぶ意義」とか、あるいは「自分がどれくらい変わっていったのだろうか」に結びつけられると良いと思う。そもそも自分は何を学習しているか、どう学習しているかということを考えさせるきっかけをきちっとどこかで与えておく必要があると思う。

(2)幼稚園・小学校・中学校・高等学校を通じた理科において育成すべき資質・能力の系統性について
○資料4(幼・小・中・高等学校を通じた理科教育のイメージ(案)【たたき台】)、資料5(小・中・高を通じて理科において育成すべき資質・能力(案)【たたき台】)の高校の部分で、現行の目的にこういうのがちゃんと書いてあるので、基本的には同じであり、これでは高校は変わらないのではないか。

○理科、数学が嫌いで必要だとも思ってない、それを続けるような高校理科教育を大幅に改訂する必要があるので、資料4(幼・小・中・高等学校を通じた理科教育のイメージ(案)【たたき台】)や資料5(小・中・高を通じて理科において育成すべき資質・能力(案)【たたき台】)の高校のところとして、生徒が自分から理科を学びたいというのが今回うまく入れば改善されるだろうし、今回の諮問に入れるアクティブ・ラーニングも高校理科でかなりできるのではないか。

○資料4(幼・小・中・高等学校を通じた理科教育のイメージ(案)【たたき台】)で、小・中・高、幼稚園と整理されており、中学校では、マル2として、「自然事象の中に問題を見いだして」とある。これは、中学校のところだけにあるが、これは幼稚園から高等学校までずっと続く大事な視点ではないかと思う。

○資料4(幼・小・中・高等学校を通じた理科教育のイメージ(案)【たたき台】)で幼稚園から高等学校まで、どういう資質・能力が必要なのかということが整理されているが、それを支える一番要素になるようなものを洗い出したら、参考資料2(プロセス・スキルズを精選・統合して開発した「探究の技能」(小林辰至委員提出資料)で示しているような「観察する技能」とか「分類する技能」とか「仮説を立てる技能」「変数を制御する技能」「測定する技能」「解釈する技能」「推論する技能」、ここに尽きるのではないかと思うし、こういったものを横目でにらむことによって、小学校、中学校、高校、全てを貫く問題解決、探究する技能の整理ができるのではないかなと思う。

○今までの、理科教育の歴史をたどってみると、問題解決というプロセスを重視してやってきて、本当に問題解決をする力が付いているのか、仮説を設定する、あるいは予想を設定する力が付いているのかと言われると、付いてないという現状がある。問題の立て方を育成するには、立て方のスキルを探さなければならないし、問題を問題として把握するためには、一体どういう心的状態、あるいは、どういう教材とか環境を設定してやるかということを作ってやらなきゃいけないと思う。問題を問題として意識するためには、知っていることと知らないことを明確にすることが必要であり、そのようなことを探す時代に来ているのではないかと思う。

○資料4(幼・小・中・高等学校を通じた理科教育のイメージ(案)【たたき台】)で、理科を学ぶ本質的な意義について、柱を立てて考えていただくとよいと思う。具体的には、人生とかキャリアに生きるという観点からすると、大きく二つの柱があると思う。
一つは、観察の力や観察の質というようなものと記録の方法ということである。人生やキャリアに生きる能力やスキルとして理科教育で育成していくことが大事なのではないかと思う。私の知っている料理人は専門は和食ですが、洋食の全てのレシピ等を頭の中にたたき込むために何十冊にも及ぶノートの記録を作ってまとめている。そういう記録が力になって、新しい料理ができたりするようなことがあるので、観察するのと記録することをしっかり学んでおくことは、キャリアにおいてもすごく大事なことだと思っている。もちろん自分の問いを立てる、学ぶ楽しさを持つ、これも大事だが、全ての教科で必要なことなので、理科としては観察の質、記録の仕方、これが一つ、大事な柱だと思っている。

○もう一つの柱として、「条件を意識して仮説検証をする」という見方が大事なのではないかと思う。具体的に言えば、新たに農業をしようとした人は、おいしいお米を作ろうとするときに、いろんな条件を制御しながら、どういう条件だったらおいしいお米ができるのかというようなことを、条件を意識しながら、実際に育てて、おいしいかどうかというのを自分で決める。こういう生き方というか考え方は、自分が会社を起業して何かをやろうとするときにも必ず生きる方法である。このようにまずは柱を立てて整理した後に、再び校種ごとに見ていただくとよいのではないかと思う。

○資料4(幼・小・中・高等学校を通じた理科教育のイメージ(案)【たたき台】)などに、小学校、中学校で日常生活や他教科との関連を図るという項目が入ったことはとてもよいと思っている。

(3)三つの柱に沿った育成すべき資質・能力の明確化について
○資料4(幼・小・中・高等学校を通じた理科教育のイメージ(案)【たたき台】)には、中学校に「日常生活」という言葉があり、資料5(小・中・高を通じて理科において育成すべき資質・能力(案)【たたき台】)の小学校には、「学びに向かう力」のところに、「日常生活などに適用する態度」というのがあり、中学校には「有用性の気付き」という言葉があるが、まだまだ中学校でも「日常生活」という言葉を使った方が分かりやすいのではないかなと感じているところである。

○理科を学ぶことによって、子供たちの生活体験が豊かになるというようなところも理科を学ぶ意義として大事なのではないかなと思っているので、資料5(小・中・高を通じて理科において育成すべき資質・能力(案)【たたき台】)の小学校にある「理科を学ぶ意義の理解」というところを、もう少し詳しく入れていただいたり、項立てをするとか例を入れるなど、もう少し丁寧にするとよいなと思っている。

○資料5(小・中・高を通じて理科において育成すべき資質・能力(案)【たたき台】)の各学校段階にある「科学的に問題解決を行うために必要な観察・実験等の基礎的な技能」について、全国の学力調査でも課題になっているのが、器具の操作の意味理解というところで、操作の手順は分かっているが、実際の実験・観察の場面で意味が理解されておらず、うまく使えていないという課題があるので、括弧の中に、操作の意味理解というところを小学校からしっかり位置付けておく必要があるのではないかなと思う。特に操作ができるということは、子供たちが予想や仮説を持って、それに基づき実験や観察を計画するときに、操作のイメージがないと、計画の具体的なイメージがつかめないと考えているので、そこにも、もう一つ加えていただきたいと思っている。

○資料5(小・中・高を通じて理科において育成すべき資質・能力(案)【たたき台】)のスペースに「社会との関連」、「自分の将来とか身の回りの現象」について知りたいと思わせる、是非教えたいと教員にも感じてもらえるような表現や言葉が必要であり、ここにいる方々だけではなく、全国の先生方に伝わるような文言にするための工夫が必要である。

○資料6(理科の内容における主な見方や考え方の整理例(案))の生命では、全体と部分というのが通してあるが、分子や細胞、個体などがあるわけで、全体、部分という関係の言い方をしてしまうと、そこが曖昧になってしまうので、例えば、機能と構造の関係で通すというようなのが一つかなというのがある。

○資料6(理科の内容における主な見方や考え方の整理例(案))の生命のところで、原子、分子のレベルというのは違和感がある。高校レベルでは、生命の機能は分子に基づいているのだという、それが高校レベルでは必要であり、ただ、それだけでは足りなくて、分子、細胞、個体、生態系、それぞれのレベルでの相互作用、その四つのレベルで相互作用というのは必要な見方や考え方の要点になるのではないかと思う。

○子供たちが、今日取り組むべきことは、何か原因と結果の関係がありそうだから実験で確かめる。原因と結果の関係がなさそうだから、よく色や形や性質を調べるのだと腑に落ちたときに、子供たちの取組は変わるはずであり、そのあたりが、この三つの柱に非常に大きな可能性を秘めているのではないかなと思う。

2.アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき理科の指導等の改善充実の在り方について

○自分の問いをみんなに説明したいというために、実験・観察するというところまで追い込まないといけない。これはもう小・中・高一貫して指導に当たらなければならない重要な観点かなと思う。

○三つの柱の「学びに向かう力」に関して、公立の中学校五校の全校生徒に理科の有用性についてのアンケート調査を物理、化学、生物、地学の領域に分けて比較をしたが、結果として地学領域に対して肯定的な反応が高かった。内容は、中学一年生で地震について勉強したこと、中学二年生で気象について勉強したときに、理科は大事であるという考えだろうと推測でき、防災に役立つから理科は大切だと考えている節がある。

○三つの柱の「知識」に関して、全国の高校生を対象に中学校理科の実施に関するアンケート調査を行った。高校生が中学生のときに勉強した内容、三年前から五年前に高校生が学習した内容についてで、教科書に書かれていた内容を理解していない、あるいは、全くアイデア、概念を持ってないという割合が高い割合となった。数年たつと、学習内容を忘れており、中学校のときには、短期的に知識として持っているのかもしれないが、それが高校生まで理科の学力として受け継がれていないのが残念に思う。これが、思考、判断、探究活動を通じて、地震に関する概念を身に付けるということを理科の教員としては期待するが、うまくいかない場面が見られるような気がする。

○理科の授業というのは、子供たちに素朴概念ではなくて、科学的な概念に変容させることが大事だと考えており、その中で、役に立つ指導の方策の一つがアクティブ・ラーニングである。小学校、中学校もアクティブ・ラーニングを積極的に取り入れた授業展開をされているが、本質的に子供たちが概念を変えているかどうかといったところは検証の必要があると思うし、国際的に活躍する高校生、中学生、小学生を育てるとき、科学的な概念がきちんと身に付くような、そうした指導をしたいと考えている。

○高校生が防災について学びたいと考え、理科の先生は、地震のメカニズム、サイエンスについて学ばせたいと考えている。3・11も大きく関連していると思うが、社会的に非常に大きな出来事や課題があり、身の回りに起こっている現象、使用している技術といったものが目に見えるような形になって、子供たちの心に大きく響いた。それをきっかけにして学びたい、知りたいという気持ちを喚起したと読み取ることが可能だと思う。

○三つの柱に沿った育成すべき資質・能力の明確化という観点で、一つ目の「何を知っているか、何ができるか」、二つ目の「知っていること、できることをどう使うか」ということを考えたときに、子供たちが、どういう問題についてどのように考えて解決していけばよいのかというプロセスをメタ認知的に振り返ることができるような指導をしていかないと子供自身がなかなか一般化できないし、一般化できないと、リフレクションして語れない、説明できない、他者にも説明できない気がする。

○内容理解、あるいは科学的な概念の理解は重要なのだが、それに加えて、問題解決をするときの問題の立て方、解決の仕方ということを、いま一度整理する必要があるのではないかなと思う。

○探究活動がなかなか学校でやられていない現状があって、それは、指導の方法が分かりにくいのが一つの大きな原因だと思う。資料7(アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき理科の指導のプロセス(案)【たたき台】)では、「協働的な学びの例」ということで、学習の活動として、生徒同士の意見交換や議論が学習のスタイルになるというようなことが書かれていると思うが、指導者の関わり方とか、指導する者がこの中でどういうふうに生徒たちに何を提示していくのかという部分が書かれていないので、学習活動としての探究活動というものの流れは、この資料からでは必ずしも明らかでないのが気になるところである。

○資料7(アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき理科の指導のプロセス(案)【たたき台】)は生徒の視点で書かれており、画期的だと思った。今まで、教員の視点で書かれるのが多く、前回の学習指導要領で「理解させる」と書いてあり、個々の単元まで教員が全部教え込む作りになっているが、この資料はそうなってないのがすごくて、資料7(アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき理科の指導のプロセス(案)【たたき台】)に合うような学習指導要領や解説にしていければよいと思う。

○資料7(アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき理科の指導のプロセス(案)【たたき台】)で、自然事象の把握が大事だが、少なくとも高校に関しては、「情報収集と分類」が今の場所であると旧態依然になってしまうので、「情報収集と分類」は外してほしい。最後の問題解決のところで、「情報収集と分類」を場合によっては入れて、それを自分がやったことと統合するという、そういう作りにしてほしいというのがある。


○資料7(アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき理科の指導のプロセス(案)【たたき台】)で、実験・観察できて探究できるところは限られるので、実験・観察による探究と、もう一つ、例えば、実験・観察はしないけれど、今まで習ったこととか自分の経験とか、そういうことを踏まえて探究する過程というのがきっとできると思う。その二本柱にすれば、場合によっては、全部それで済んでしまう。つまり全部の授業をどっちかでやるということで通せるのではないかと思った。

○資料7(アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき理科の指導のプロセス(案)【たたき台】)で、「課題把握(発見)」は課題解決、問題解決の過程の出発点として非常に大事な段階であり、ややもすると、ここのところが学校現場の授業ではスキップされてきたのではないのかなと思う。

○資料7(アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき理科の指導のプロセス(案)【たたき台】)で、「課題把握(発見)」の「自然事象の把握」の中に、因果関係があるか、原因と結果の関係があるかないかというような文言を少し入れていただけると、先生たちの理科指導、理科の観察・実験の指導が随分やりやすくなるのではないかと思う。資料は、観察も実験も観測も全部要素を集めればこうなるとは思うが、観察と実験の問題解決の方略が違うという前提を置くならば、少なくとも観察の系統と実験の系統と二系統になるはずである。

○グループで実験をしたときに、代表者が実験を主導して結果を短く述べるような形の実験が多いのではないかなと想像されるわけだが、資質・能力の育成を図るためには、グループ全員で協力して取り組むというようなことや、あるいは、話し合いでは、結論ではなくて理由を考えることを教員が明確に意識して指導することが大切である。毎回の実験・観察の中でこのような指導を周知徹底していくことで授業そのものが変わっていくはずだと思っている。

○資料7(アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき理科の指導のプロセス(案)【たたき台】)で、「自然事象の把握」というところから入っているところは非常によいと思うが、それをするのには、「理科の時間になったから、考えましょう、身の回りに疑問に思うことを探しましょう」ということでは成り立たない。日常的に何か観察するような視点を持っていて、そういう態度で暮らしていることが必要で、その部分の指導力が問われるのだろうと思う。

○現行の地学基礎を教えている高校の理科の先生にアンケート調査をしたデータで、指導に困難を感じる場面というのは探究活動のところだった。教材として探すところに、もしかしたら非常に困難を感じて、なかなかうまくできないというところが現行の地学基礎ではあるのかなと想像するので、こういったプロセスを議論すると同時に、また学習指導要領に落とし込むときに、どのような教材が可能なのかも含めて、想定しての議論が、地学の基礎からは欲しいなと考えている。

○今回の改訂のポイントの一つである「アクティブ・ラーニング」の意義を明確にする必要があり、これまでも意識のある先生方は、「こういうことはこれまでもやってきた。科学のアプローチとして当然のことである。」と受け止めると思う。新しく「アクティブ・ラーニング」という概念を導入するのであれば、何をもってアクティブ・ラーニングで、そして、これ以上のどの自由度が先生たちに与えられるのか、どういった指導の裁量が与えられるのかということまで考えて、提示する必要がある。

○資料7(アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき理科の指導のプロセス(案)【たたき台】)の新しさは何かというと、左側のプロセスから能力・資質に移したということで大きな一つの成果だと思う。
ただ、そのときに、「アクティブ・ラーニングというのだったら、今までのものと何が違うかというのをはっきりさせなきゃいけない」となると、問題発見するためにはどんな能力を育成しなければいけないのか。あるいは、解決方法を自分で見出すためには、どんな能力を育成しなければいけないのか。あるいは、協働的学びだったら、みんなで役割を分担したり話し合ったりするときに、どんな話し合い方をしなければいけないのかを論じないと、新しさは出ないので、それをこの会議でやるのか、あるいは、もっと具体的なレベルでやるのかという問題である。何が新しいのかということを明確にしないと、これまでとまた同じような形になるのではないかと思う。

○資料7(アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき理科の指導のプロセス(案)【たたき台】)で「課題把握(発見)」の一番最初に「自然事象の把握」とあり、生徒にとってみればとても大きなハードルになっている。つまり、自然事象の中から問題を発見することは、中学生、高校生にとっては非常にハードルの高いことだと思う。アクティブ・ラーニングの議論であるのであれば、自然事象の把握の前に、もうワンステップあるとよいのではないかなと思う。日常生活にこんな問題がある、その中にどういう自然現象が含まれるのかというところにつながると、ここにつながっていくのではないかなと思う。結局、こういう形でやっていくと、生徒が課題発見できないから、教員が課題を提示し、あるいはお勧めするような形でスタートしてしまうことになり、大きな変化につながらないのではないかと危惧している。

○資料7(アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき理科の指導のプロセス(案)【たたき台】)が、資質・能力とそれを育成するための活動という形で示されているところが非常によいと考えている。ただし、少し心配なのは、今、若い教員がどんどん増えており、資質・能力を育成するためにこういう活動をするというふうに明確に何か示されたものがないと、この活動をやればよいのだというような向きに行きはしないかなと心配しているところがある。

○「アクティブ・ラーニング」という言葉が非常に躍っており、特に若い教員がこれに非常に敏感に反応している。そういう状況で、資料7(アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき理科の指導のプロセス(案)【たたき台】)で示されている活動が資質・能力の育成にどう結び付くのかというのをできるだけ分かりやすく示していく必要があるのではないかと考える。

○資料7(アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき理科の指導のプロセス(案)【たたき台】)は、大変分かりやすくてよいと感じた。また、資質・能力の視点も新しさを感じたところであるが、学習過程だけを見てしまうと、この形が、形骸化して伝わってしまうのではないかと思われる。また、どのように教えるのかといった教員の指導方法のメッセージとして伝わってしまう可能性も考えられるので、出し方を慎重にしなければならないと思う。

○資料7(アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき理科の指導のプロセス(案)【たたき台】)の学習過程が何をもってアクティブ・ラーニングかという視点がなければ、これまでの学習過程と同様に感じてしまうことになると思う。これまでの学習過程とは違い、形骸化しないためは、アクティブ・ラーニングの視点として、子供がどのように学ぶのかという視点が大切だと思う。例えば、その視点のキーワードとして、子供自身が学習に対して、何のために行うかという必然性、それから自覚化。もう一つが、自分の考えたことや行動について責任を持って行っているかという、自己責任である。このような視点が学習過程に示されたならば、子供の視点に立ったアクティブ・ラーニングになるのではないかと考える。

○資料7(アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき理科の指導のプロセス(案)【たたき台】)の「自然事象の把握」について、用語の整理をしていただきたい。それは疑問と問題と課題であり、これは学校現場でも混乱があるところである。「問題」という言葉が子供の疑問のことを指しているのか、すでに課題化されているものを指しているのかが曖昧である。資料で「課題解決」となっていることからすると、「問題を見いだす力」は「疑問(問題)を見いだす力」となるべきところである。子供たちはいろんな疑問を持っているが、それを理科の時間で扱えるような問い(課題)に変えることができないので、観察や実験が進まない部分があると思う。だから、ここの「自然事象の把握」のところに、「疑問(問題)」を課題に置き換える力」というのを加えると、課題発見で、今まで余りなかった視点が一つ明確になるのではないかと思う。

○資料7(アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき理科の指導のプロセス(案)【たたき台】)の「課題・予想・仮説の設定」で、一番後ろに、資質・能力の例として「結果の予測」と書いてあるが、「検証計画の立案」に移動してほしい。

○資料7(アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき理科の指導のプロセス(案)【たたき台】)の「考察・推論・結論の導出」には、「次の課題を発見する力」というのを置いていただきたいと思う。なぜかというと、下に、次の課題の「プロセス」とは書いてあるが、「力」が書いてない。課題を一生懸命に探究していくと、多くの場合、次の課題が自然と出てくるものであるので、「次の課題を発見する力」というのを「考察・推論・結論の導出」のところに入れていただきたいと思う。

○若い先生たちに対する資料というものを、我々は考えていかないといけないと思う。文部科学省は、あるパターンで資料を作られる。それを解説する様々な本が出版され、また、様々な資料が出てくる。それはそれでよいとは思うが、特に図は独り歩きしてしまうので、その図のブラッシュアップがすごく大切な作業となる。

○アクティブ・ラーニングに関して、アクティブ・ラーニングの本質論を議論したい気持ちは重々分かるが、この会議では、それが昔やっていた理科の問題解決とどこが違うのか、探究とどこが違うのかを見極めることが課題であり、理科としては、ここが違うのだというのを示しながら、一回一回の会議を積み重ねて、分かりやすい図にしていく必要がある。さらに、委員の意見を集約し、その図自体が独り歩きしても誤解が生じないようなものにしていくことも大切と考える。

○児童・生徒の立場から描かれた図があったが、そういう図の場合は、タイトルにそこを明記した方が良いと思う。図のタイトルと図の中心に誰がいるのか。例えば、「教員がいるのか、児童・生徒がいるのか。」あるいは、「両者がアクティブにやっているのか、両方が混在しているのか。」そういうところがうまく分かるような資料にしていくとよいと思う。

3.資質・能力の育成のために重視すべき理科の評価の在り方について

○評価課題の設定の仕方というのも具体的に授業設計とともに学習指導要領などに示されると、より、道筋を教員が立てやすくなるのではないかと感じている。

4.必要な支援(特別支援教育の観点から必要な支援等を含む)、条件整備等について

○理科教育は、まず実験があって、観察があって、児童・生徒は目で見た事象を自分たちで考えることからスタートをするのだと思う。理科の授業というのは、理科室若しくは観察の場である教室の外で行わなければいけないと思っており、そのためにも、小・中・高共通して、先生が実験しやすい、あるいは生徒が学びやすい、そういった理科室の環境を整備することは並行して必要なことだと思っている。

○資質・能力の育成を図るための問いというものが非常に重要だと思う。教科の内容と日常生活や実世界との関連を深めるような問い掛けや、教科の系統性の中で中心的な内容の理解を深めるような問い掛け、あるいは、これら二つを融合するような形のものがあるかと思うが、こういった本質的な問いについて事例が示されていると、指導の中で生かされていくのではないかなと思っているし、新しい教育内容なので、解説書や事例集というものの充実を図っていくことが大事だと思う。

5.その他の論点について

○問題解決の力を子供たちに身に付けさせるというのが、小学校、中学校それぞれの学習指導要領解説に書いてあるのだが、書きぶりの印象が違っており、教員養成で教える方としては、小学校の理科の学習指導要領解説があり、更にその上位の校種の中学校の理科の学習指導要領解説へとつながったような解説の書き方をしていただくと、学生の方は、小学校でどのような探究の能力あるいはスキルを身に付けさせ、更に中学校でどのように伸ばしていくかというのが分かりやすいので、学生も読みやすいし、教える方もやりやすいかと思うので、留意していただきたい。

○こういった場で非常に高尚な議論がなされているわけだが、特に若い教員に本質が伝わるような表現の方法を工夫していく必要があるのではないかと感じている。

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