教育課程部会情報ワーキンググループ(第7回、平成28年4月20日)における主な意見

(情報科における評価の在り方について)
○ 思考・判断・表現が「適切かつ効果的に活用している」でとどまっているが,育む資質・能力の「複数の情報を結び付けて新たな意味を見いだす力」とまではいかなくとも,新たな意味を見いだす,新たな考えを表現するなど,少し踏み込んでもよいのではないか。

○ 知識・技能について,身に付けた技能をどのように活用するかというところを含めてもよいのではないか。

○ 思考・判断・表現について,「捉え」と「活用している」の間に,判断し思考するというもうワンステップがあるとよいのではないか。

○ 知識・技能の理解の上で,思考・判断・表現では,まず事象を情報とその結び付きの視点から捉え,さらに問題の発見・解決に向けて情報技術を適切かつ効果的に活用し,最後に情報社会との関わりについて考え,問題の発見・解決に向けて主体的に情報及び情報技術を総合的に活用して,自ら評価し改善しようとしているというような全体的な構造と考えると,よくできているのではないか。

○ プログラミングがもう少し見えやすいような,例えば,事象を分解してというようなことが示せるとよいのではないか。

○ 情報セキュリティがプログラミング同様に示されておらず,「情報と情報技術」に含まれているという認識であればよいが,どこまで含まれるというのが少し見えにくいのではないか。

○ 育む資質・能力に示されているものが,評価の観点のどの辺りに整理されているか,関連されているのかということが示されると,たいへんわかりやすくてよい。

○ 思考・判断・表現について,思考がどの部分,判断はどの部分,表現はここというのがわかりやすく示されると,更にかみ砕いて各指導項目について観点別評価を作り上げていけるのではないか。

○ 教育と評価のガイドラインとしての議論と,これをどのようにブレークダウンし,かみ砕くかという,両方を進めていき,抽象度の高いレベルで,知識・技能,思考・判断・表現,主体的に学習に取り組む態度の3つを合わせてどのような教育が可能になるかというイメージが描けるとよい。

○ 主体的に学習に取り組む態度の「活用し,自ら評価し改善」の目的語が情報及び情報技術だけになってしまうと,現在の情報社会を是とし,その変化に対応するような活用の仕方ができているかを評価して改善していくだけになるのではないかと懸念される。育む資質・能力には「主体的に参画し,より望ましい社会を構築していこうとする」とあるが,こうした情報社会を作り替えていくというようなエッセンスを,評価の主体的に学習に取り組む態度にも残すと,思考・判断・表現でも,新しい意味を見いだすといったことが生きてくるのではないか。

○ 情報モラルや情報セキュリティは,児童生徒の態度や心の持ちようの問題に帰着され矮小化されてきたきらいがあるが,「情報の科学的な理解」という知識・技能に基づいた,裏付けされた情報モラルや情報セキュリティの教育をしっかりやっていくということを考えると,この分野でも,知識・技能が重視され、その活用を通して思考・判断・表現をさせる,そこでアクティブ・ラーニングが関係してくる。

○ 育む資質・能力には,影響,制度,責任,情報社会の発展に寄与といった大切な言葉がある。寄与したかどうかは評価できないが,そうした方向感は重要であり,そうした言葉の理念をしっかり残しつつうまく整理していく,細かくなりすぎないガイドとしてしっかり作っていくというのは難しい作業であるが,そういう方向で整理していきたい。


(情報ワーキンググループとりまとめについて)
《現行学習指導要領の成果と課題》
○ 卒業後の進路を問わず情報の科学的な理解の裏打ちが必要ということについて,ブラックボックス化しておりセキュリティが必要ということしか述べておらず,なぜ全員に必要なのかということをもう少し強く述べる必要がある。

○ 小・中学校の情報活用能力調査の結果のポイントを載せて,情報技術の利用が力の育成に役立っていることがわかってきているといったことを書けると,説得的になるのではないか。

《育成すべき資質・能力を踏まえた教科等目標と評価の在り方について》
○ 基本的な操作技能の習得について,発達の段階だけでなく,学習環境である情報社会の進展も踏まえるということも併記するとよいのではないか。

○ 基本的な操作技能については,中学校の技術分野でではなく,小学校段階である程度の機器操作をというメッセージを是非残したい。

○ 情報活用能力の3観点について,指導内容や学習活動の視点から役立ってきたが,資質・能力の視点からの三つの柱による整理とうまく融合させながら使っていけるとよい,といったトーンにするとよいのではないか。

○ 「プログラムや作品の(協働)制作」とあり,プログラムや作品の制作については協働的にというイメージが強く出てしまっているが,例えば統計的分析でもデータを根拠とした話合いといったことがあるので,「協働」がほかの学習活動にもかかるように示せるとよい。

○ 「抽象」という言葉は捉えにくく,また重いので,なくてもよいのではないか。

○ とりまとめの文案は,小学校や中学校ではどのようにすればよいかということについて、まだ記述が甘く,とりわけ,小学校における各教科の授業で必要になるような情報機器の基本的な操作技能の習得については,きちんとカリキュラム・マネジメントの観点から各学校で行うということを明確に示してはどうか。小・中学校,高等学校の他教科においても情報活用能力,情報に関する資質・能力は重視されるべきであり,そのことはしっかり示したい。

○ 情報科を中心とすると情報技術が前面に出るが,情報に翻弄されているという現実を考えると,テレビの情報,ネット上の情報などを適切に判断するようなことは,早い段階から必要に応じて育てなければならないというメッセージを明確に示したい。

《資質・能力の育成に向けた教育内容の改善・充実》
○ 情報Ⅰ(仮称)について,モデル化とシミュレーションを「コンピュータとプログラミング」に入れて4項目に整理したのは,学校としては,モデル化とシミュレーションとプログラミングとを行ったり来たりすることも考えられ,授業づくりがしやすくなるのではないか。

○ 中学で学んだ計測・制御が高等学校で生かされないのではないかということを危惧しており,IoTというキーワードは中学校の技術分野と近い内容であるが,高等学校でも計測機器の活用のようなことが可能性として含まれているとよい。

○ 計測・制御との関わりについて,コンピュータの中だけでのシミュレーションではなく,実際に計測する制御するということも高等学校でやっていくとよい。

○ プログラミングに関し懸念されるのは,小・中学校でやったことを高等学校でやり直すような授業になってしまうことであり,そのことにも触れておくとよい。

○ 情報Ⅱ(仮称)を例えば4単位にして課題研究をしっかりやる,2単位で軽くやる等の自由度があると,情報Ⅱ(仮称)を置く学校が増えていくのではないか。

○ 情報Ⅰ(仮称)においても,何らかの新たな価値を創造する課題研究のようなことに取り組める余地を示せるとよいのではないか。

○ 問題の発見・解決の過程や手法そのものを学ぶとなると,生徒も苦手なところなので教えなければというイメージを抱くが,「新科目のイメージ」ではその部分が少し見えにくい。

○ 育む資質・能力には「情報モラルや情報に対する責任について考え行動しようとする情意や態度等」があり,とりまとめでは,SNSの普及に触れているので,その使い方にももう少し触れるとよいのではないか。

○ IT関係の用語は早く廃れていくので気を付けなければならず,「データサイエンス」については,急にはやりだしたが,急速に廃れる可能性もあり,また,バズワードという意見も見られる。

《学習・指導の充実や教材の充実》
○ 特別な支援が必要な子供でも,データ入力などの分野では,丁寧にまじめに早くできるようになれば就業のチャンスがあり,そうしたことにも言及できるとよい。

○ 「深い学び」「対話的な学び」「主体的な学び」について,プログラミングは「対話的な学び」でのみ言及されているが,「深い学び」においても,プログラミングによってより深く学べるということが示せるとよいのではないか。

○ 「協働的に」という文言が少ないが,問題解決は主体的・協働的にやるということをもっと打ち出さないと,一人ひとりが黙々とコンピュータを触っているような授業がイメージされてしまうので,工夫が必要である。

○ プログラミング等は学校外でも多く取り組まれており,社会に開かれた教育課程の観点から,それらとの連携もメッセージとして示してよいのではないか。良質な教材が求められるだけではなく,NHKの小学生向けのプログラミングの番組のように,わかりやすい教材が出てくるように推進するというような,少し具体的に踏み込んだことも示せるとよいのではないか。

《必要な条件整備等について》
○ 大学進学の準備を始めたり文理のコース分けをしたりする前に,情報Ⅰ(仮称),情報Ⅱ(仮称)を学ぶ機会があるとよい。

○ 中学校との接続,全ての教科の基本となる情報活用能力を身に付けさせる教科であることを踏まえ,第1学年での履修が実現するようになるとよい。

○ 小学校や中学校の免許状を取得する際にも,情報の取扱いについて学ぶ機会を組み込むといったことを示してもよいのではないか。

○ 教員免許を取得するときにプログラミングを必須にするとか,採用試験でプログラミングを意識したものが入ってくるとか,小学校の教員について入り口段階でスキルアップするという手段もあるのではないか。

○ 情報科だけでなく他教科の免許状も有している者を採用するという動きが見られ,情報科を教えたいのだが他教科の免許状をもっていないから採用されないとか,他教科を教えたいのだが情報を担当させられるといったことも起きているのではないか。情報を教える意欲のある者が採用されることが望ましく,また,情報科で採用されないと,初任研や法定研修で情報科の授業づくり等の研修が受けられないことにもなる。

○ 小学校でもプログラミングをとなった場合,小学校の教員を対象としたプログラミングに関する研修なども必要であるということを示すとよいのではないか。

○ プログラミングについてはサポートの存在も大きく,外部人材の登用も含め支援する人について触れるとよい。

○ 40人の生徒を相手にプログラミングを指導するとなるとやはり不安があり,外部人材など人的なフォローについて少し示してもよいのではないか。

○ ICT環境整備について,高速無線LANとあるが,校内に高速無線LANを敷いてインターネットにあまりアクセスさせないセキュアな環境を作ることも考えられてしまい,それではあまり意味がなく,安全で高速なインターネットアクセスというようなことを示したい。

○ アクティブ・ラーニングや反転学習のベースとなるのは,学習の続きを家庭でするなど,クラウド環境は切り離すことができないので,家庭からでも学校でもセキュアにアクセスできる環境整備を示すことができるとよい。

○ 教員が使うネットワークについてはある程度の基準等が整理されているが,授業で使うネットワークについては,自治体によりばらついており,クラウドを利用した場合のセキュリティの基準のようなものも,どこかで示されるとよいのではないか。

○ 学校で整備している機器だけを使うのではなく,高校生は日常的に様々な機器を使っており,クラウドの活用にもつながってくるので,それらの活用についても何らか触れる必要があるのではないか。

○ 状況に応じて個人の情報機器の利用(BYOD)が認められるということについて,一言触れるといろいろな環境下で情報機器が使いやすくなるのではないか。


(その他)
○ 統計について,数学で難しいから情報でとか,情報で扱わないから数学でといような押し付け合いにならず,相乗効果でやっていくような建設的な議論を進めてほしい。

○ 高等学校情報科以外では,テクノロジーに限らず,情報を扱うということといろいろな経路で情報を得るというようなことで「情報手段」と,情報科では,特に「情報技術」にフィックスし注目して捉えるという方向で,用語の整理がされてきているのではないか。

○ 次の次の改訂に向けた議論においては,小学校段階での教科化についても議論してほしい。


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