教育課程部会 外国語ワーキンググループ(第3回) 議事録

1.日時

平成27年12月11日金曜日9時00分~11時00分

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.議題

  1. 外国語教育の改善充実について
  2. その他

4.議事録

<未定稿>
【吉田主査】  それでは,定刻となりましたので,ただいまより中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会外国語ワーキンググループ(第3回)を開催いたしたいと思います。
前回まで2回,私の方で,ほかの会議とぶつかったり,私用とぶつかったりで出られませんでしたが,今日からまた御一緒させていただきますので,ひとつよろしくお願いいたします。
本日は,前回に引き続き,ワーキンググループの検討事項に沿って御検討いただきたいと考えております。
まず,事務局より,総則・評価特別部会の議論について,小・中・高等学校一貫した目標設定の在り方など検討事項に関する説明を頂いた後に,投野委員から小・中・高校一貫した目標設定の在り方に関する御議論に関して,CAN-DOリスト利用の方法と課題について御説明いただきたいと思っています。その後,意見交換の時間を設け,本日の検討事項に関する論点等について御議論いただければと思っております。
それでは,まず,事務局より資料確認をお願いいたします。
【圓入室長】  それでは,資料の確認をお願いしたいと思います。第3回の議事次第をごらんいただければと思います。
資料1でございます。外国語ワーキンググループ,前回と前々回までの主な意見を配らせていただいております。
資料2は,前回と同様でございますが,外国語ワーキンググループにおける検討事項,全体にわたって御検討いただきたい,取りあえずの検討事項のペーパーをお配りしております。
資料3は,これも前回と変わっておりません,小・中・高校を通じて一貫した目標設定の在り方に関する資料でございます。
資料4は,本日,投野委員から発表いただくCAN-DOリスト利用の方法と課題。
資料5につきましては,前回お配りしたものに少し追加の御報告がありましたので,ほとんど同じものでございますけれども,これまでの英語教育強化に関する取組についてというものをお配りしております。
資料6は,今後のスケジュールでございます。
机上の方に,現行学習指導要領のポイントですとか,今回も左上の方に黒いタブレットがありますが,第2回までの資料が入ってございますので,適宜御参照いただければと思います。
不足等ございましたら,事務局までお知らせいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【吉田主査】  よろしいでしょうか。資料はそろっていますでしょうか。ありがとうございました。
それでは,まず1番目,総則・評価特別部会での議論について,教育課程様より説明の方をお願いいたします。
【大杉室長】  失礼いたします。それでは,先日開催されました総則・評価特別部会における御意見といいますか,各教科別ワーキンググループにお伝えいただきたいということで主査から言付かっております。大きく5点ございます。
まずは,外国語ワーキンググループを含めた各ワーキンググループの審議状況を,前回の総則・評価特別部会において御報告をさせていただきました。主査及びメンバーからは,論点整理に沿った御議論を頂いているということへの感謝の意が述べられますとともに,以下申し上げます5点を,各ワーキンググループにお伝えいただきたいということで言付かっております。
1点目でございますけれども,特に御議論のうち,他の教科等に関わるような重要な内容に関しましては,可能な限り早い段階で議論を行い,総則・評価特別部会及び教科別部会,若しくは各校種別部会において,しっかり検討できるようにしていただきたいということでございます。
2点目でございますけれども,今後,学習指導要領の具体的な内容の書きぶりということにも議論が及んでくる可能性もございますけれども,学習指導要領の法的な性格を踏まえつつも,先生方はもちろんですけれども,例えば教員養成で教職を目指している学生たちでありますとか,地域で学校に関わる方々にも,学習指導要領を読んで,その趣旨が十分伝わるような構成や文章とすることに心掛けていただきたいということでございます。
3点目でございますけれども,各教科の御議論を進めるに当たり,発達に応じた目標,内容の系統性という縦の軸と,様々な現代的な課題への対応という教科を超えた横の軸ということを意識しながら,育成すべき資質能力全体像の中で,それぞれの教科の意義を明らかにしていくという視点から御検討を頂きたいということでございます。
4点目でございますけれども,社会に開かれた教育課程という観点から,子供たちが卒業後,特定の学問分野や職業に進む場合だけではなく,どのような職業に就くとしても生かすことができるような教科の本質的な学びということを重視しながら,資質能力の在り方を御検討いただきたいということでございます。
最後,5点目でございますけれども,教科別ワーキンググループにおきましては,各教科の独自性を踏まえた御議論を進めながら,総則・評価特別部会におけます全体的な構成に関わる議論でありますとか,年明けからは小学校部会等も含め校種別部会が議論を進めてまいりますので,そういった議論の状況を踏まえながら御議論を進めていただきたいということでございます。
以上5点を言付かってまいりましたので,御報告を申し上げます。以上です。
【吉田主査】  どうもありがとうございました。
ただいまの御説明に関しまして,何か御質問とかございますか。よろしいですか。松本主査代理,どうぞ。
【松本主査代理】  2番目の書きぶりに関係するところで,法的な性格云々ということなのですけれども,我々で何か特別に考えておくべき必要なことがあるのであれば教えていただけると幸いです。
【大杉室長】  総則・評価特別部会において議論になりましたのは,例えば今の教科目標の在り方です。40年代におきましては教科目標が割と箇条書き的に書かれていたものが,かなり内容が増え過ぎたということで内容の精選ということで,50年代からは1行で表すような形で進んできていると思います。その1行の中にいろいろな要素をしっかりと盛り込んでいこうということで,改訂を重ねるごとに文章的に長くなってきているような傾向がございます。これに関して,正直,解説を受けないと,教科の目標がなかなか読み取りづらいということでありますとか,そもそも英語に訳したときにどう訳すのかということでありますとか,そういうことがございますので,なるべく簡潔な文章で,例えば文章の区切りも短くしていくような形で考えられないかという御議論を頂いております。現在,外国語ワーキンググループの方では,かなり目標の在り方,分かりやすく指標形式でということで御議論を進めていただいていると思いますので,恐らくこの延長線上で問題ないかとは思いますけれども,こういう御議論がございました。
【松本主査代理】  何か余計問題あるように思うのですが。
【大杉室長】  指標形式の目標をいかに示していくかということは,恐らく外国語ワーキンググループでかなりしっかり御議論いただく必要があるかと思います。御指摘いただいた法的性格ということを踏まえますと,学習指導要領,大綱的基準として,子供たちに最低基準,最低限度しっかり身に付けさせたいことを示していくという法的性格がございます。一方で,指標形式となりますと,幾つか段階別ということが考えられると思います。そこの法的性格と,今後,外国語ワーキンググループが目指している方向性の理論的な詰めということは,しっかり御議論いただく必要があるかと思います。
【松本主査代理】  ありがとうございます。
【吉田主査】  ほかの方はいかがですか。取りあえずよろしいですか。これから気を付けながら議論するということになるかと思いますが。ありがとうございました。
次に,投野委員より,CAN-DOリスト利用の方法と課題ということで御説明を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。では,先に投野委員。
【投野委員】  それでは,パワーポイントの資料を印刷したものがございますので,それを御覧になってください。
パワーポイントの資料の最後のところには,幾つか添付資料がございます。21ページからは,私たちが作っているCEFR-JというCEFRを基にした枠組みのリスト,24ページには,CEFR-Jが今,小学校で用いられている「Hi, friends !」との対応が可能か,A1レベルぐらいまで分析した表があります。25ページ以降は,これからお話しする,もう少し具体的な言語材料とCAN-DOを結び付けるときの様々な資料類を,今,作っているものの御紹介です。
では,ちょっとお話をしたいと思います。20分と言われていますので,大体9時半ぐらいまで。
ずっと指標形式という話が出てきている裏側には,ヨーロッパで使われているヨーロッパ言語共通参照枠「CEFR」というものがあります。このCEFRは,もう既によく御存じの方もいると思いますが,2001年に欧州の外国語政策部門というところで,欧州評議会の方で正式に,全ての外国語教育の設計とコンテンツの作成,そしてシラバスをやった後の評価,そういうものは全てこの枠組みでやると決まりました。
CEFR自体は汎用枠と言われていまして,参照枠ですので,いろいろなものに使える枠なのです。ここに出ていますように,ラーニング,ティーチング,アセスメント(学習,教育,評価)という3つの文言がCEFRのタイトルの最後に出ているのですけれども,そういうそれぞれのセクションに利用してくれという形のものです。ですから,必ずしも到達度指標だけで使うわけではないのですけれども,逆に言えば到達目標のように,これを基に作っても構わないというものなのです。今,いろいろな利用がヨーロッパではされてきています。これは,アジアとか,オセアニア,アメリカの方にもどんどん広がっているというのが現状です。
CEFRレベルは,全体的にA1からC2まであります。ヨーロッパの方では大体どんな感じでやっているかというと,A1とA2レベルは公立とか公教育では大体,小・中学校でされている内容になります。それから,B1,B2レベルは高校から大学教養です。B2レベルは,大学に入って,その言語圏の大学の教養レベルをやれる程度の知識と言われています。C1,C2は大学専門,あるいは専門職,そういう仕事で使うようなレベルということです。
日本は,現状では,カリキュラム的に比較的これに沿って考えますと,A1,A2レベルが大体中・高で行われていて,B1,B2が高校上位から大学,大学はピンからキリまでありますが。C1からC2は,現状ではきちんとした形で教えているところは余りなく,企業とか,それぞれ専門分野でやっているという感じになります。
一番下には,この間の達成度の高校3年生のレベルとか,私の同僚の根岸先生が企業の全数調査をした結果があるのですけれども,日本人は大学を卒業して社会人になっても8割がAレベルであると言われています。Cレベルに関しては,もう数%しかいないということです。
数年前,ガイドラインが作成され,今,中・高で様々なCAN-DOリストの作成が行われていますが,CAN-DOリストを用いた場合,現状のそれぞれの中・高の実践はかなり,CAN-DOリストを使ったいい面と悪い面がいろいろ出てきています。特に問題だと思うのは,黒い所に四角で書いてありますが,各学校が割とそれぞれ,どうぞ,やってみてくださいということでガイドラインを基にやっているのですが,自分たちが目標設定するときにイメージがそれぞれかなりばらばらという感じで作っていることが多く,目標設定の仕方が学校ごとに少し恣意的になってしまうときがある。それから,自分たちで作ったCAN-DOがいいのかどうか,どう評価するかというところが非常に難しい。ほかの学校のCAN-DOと比較や共有をすることが,自分たちだけで独自に作るとかなりずれていたりしてしにくい。小・中や中・高の連携も,全然違うCAN-DOのセットを持っていって話そうとすると,何かよく分からないというようなことがあるわけです。
実は,ヨーロッパなどでやっているのは,下の図にあるように汎用枠というものを利用して,汎用枠の中で自分たちの学校のCAN-DOはここにあるのだと,共通の物差しで言うようにしているのです。ある程度こういう共通の大きな枠組みがあって,その中でそれぞれが目標設定をきちんと位置付けることができる共通言語みたいなものがないと,CAN-DO設定というのは非常に難しいわけです。
ですから,やはり文部科学省として,こういうような学習指導要領の位置付けの階段の中に,言葉を使って何ができるのかというCAN-DO的な発想の指標を上手に設けることによって,今までかなりばらばらだったようなCAN-DOを,我々のものはここに当たるんだみたいな形で整理していくことが,今後,できるように思います。そういった意味でも,汎用枠的な使い方の目標を設定するのはかなり重要なことだと思います。
2点目ですが,CAN-DOリストの運用や課題ということでいきますと,今回,文部科学省で作っていただいているものは,CEFRのいろいろな要素とか,我々が作っているCEFR-Jのエッセンスを非常によく取り込んで,文言もよくなっているのです。ただ,指標形式のCAN-DOは非常に大ざっぱなものです。大変大きな目標です。例えば,A2のCAN-DOの中にこういうやりとりの文言がありますけれども,この文言は実は本物のCEFRの方では,もっと細かい様々な,具体的なCAN-DOのできることに細分化しないといけません。
例えば,やりとりで,日常のタスクで身近な話題や活動について話し合えるというようなことが書いてあるのですけれども,それで実際,何をするかというと,例えば相手に安否を問い合って元気かとか,新しい出来事を聞いて,ああ,そうと応答できたりするとか,仕事は何か,余暇に何をするかとか聞いたりする,誰か招待したり,誘ったりできる,いろいろなことを計画して簡単にプランニングすることができるとか,こういうことがみんなCEFRの中に,それぞれレベルが不一致にならないように,お互いに統一感を持てるようにということで,文言として規定されているのです。
こういう部分をCAN-DOにうまく具体的に落としていかないと,教科書のレッスンを作ったりするのにとても作りにくいです。大きな指標のCAN-DOの下に,より具体的なCAN-DOがあり,それが様々なレッスンのところで扱われ,1つのレッスンからより高度な,もうちょっと複雑な表現にだんだん移行していくようにスパイラルに教え,かつ同じことを,習ったことを繰り返し教科書の中で定着させていくというか,そういう仕掛けみたいなものを上手に教科書で実現すると,このCAN-DOの具体化が非常にうまくいくわけです。
このために,CAN-DOは,実は発信型のCAN-DOと受信型のCAN-DOに分ける必要があります。発信型は,自分からする方の行為なので,「何々できる」という具体的な言語機能を伴うものが多いです。つまり,賛成するとか,依頼するとか,感謝するとか具体的な,賛成するなら賛成するときの表現を張り付けやすいわけです。こういうところに言語材料だったらどんなものが来るかと,あてがいやすいわけです。
ところが,受信用のCAN-DOというのは,形式は全て,CEFRそのものも「何々が分かる」となっているのです。そうすると,その「何々が」というところの内容はテキストの種類になるわけです。長さや,複雑さや,語彙レベルですので,受信型のCAN-DOはテキスト特徴というものを明らかにして,CAN-DOのレベル設定をする必要があるわけです。ですから,我々もCAN-DOの指標を作った後,その指標のレベルしか作っていないと,それを各学校や教科書会社などが具体化するときに非常に分からないのです。もっと細かい資料を一緒に添えて,このように作るのですよと言ってあげないといけないということです。
これを是非満たすためには,ヨーロッパでも必ずやるのですけれども,CAN-DOの枠組みを作った後は参照レベル記述という,どんな文法やテキストの特性が,あるいは語彙の特性が各レベルのCAN-DOに張り付くかという作業をするわけです。
その作業には,実は一番基になっているものがあります。CEFRが作られる随分前から,「スレッショルドレベル」というB1レベルに当たる文献がカウンシル・オブ・ヨーロッパにあります。これは,公教育を終えて一定の閾値を超えたユーザーは何ができるかを記述した語彙や文法のインベントリーなのです。これには概念と機能のセットがありまして,細か分けているものがあるのです。これを全てデータベースにしたものをうちの研究室で作っていまして,それが皆さんの資料の最後の27ページに,ほんの最初の部分が載っています。A1からB2のレベルまで,一応,こういうセットがずらっとあるわけです。
また,各国で様々な英語に関するRLDの試みもされています。コアインベントリー,それからケンブリッジのイングリッシュプロファイル,こういうものがあるので,これを上手に使っていくことによって,現状の指標レベルの目標から,教科書をだんだん作っていく具体的なタスクに落とし込むようなものを上手にやれば,学校で作っているCAN-DOもこのようにできることと結び付けて,自分たちの今までやっていたタスクなどが実現できるのだというイメージが浮かびやすいと思うのです。
現状の教科書は,こういうような作り方をするには,いろいろまだまだ改善の余地のあるところがあります。例えば,現行の教科書は文法中心のシラバスなのです。ですから,文法ではかなり整理されているのですけれども,先ほど言った「できること」ではかなりばらばらなのです。「できること」を実現するような課題のレッスンが十分に練って作られていないとか,いろいろなことがあります。それから,CAN-DOを実現するタスクのバリエーションがとても狭い。高校などはリーディング教材中心になってしまっていますから,やはり今までの教え方に寄り添った教科書作りがだんだんと変わっていく必要があります。
私たちの科研でも,現在,グラマーのプロファイルを作っております。各国でやっているものは,教員の経験や教科書の質的な分析が中心なのです。ですので,我々はもっとデータインテンシブなやり方をしていまして,ヨーロッパのCEFR準拠のイギリスのコースブック100冊をコーパス分析して,300ぐらいの文法特性の配列を,それぞれのコースブックがどのぐらいたくさん出てきているか,それから,どのくらい満遍なく出てきているかということについての指標を作っています。それで,頻度と分散,分布を絡めた有用度指標というものを出すのです。各文法事項が各レベルでどのくらい効いてきているかが分かると,そういうものの配列をセットにして提案すれば,このレベルだとこういうものを教えるだとか,それがこういう機能と結び付いて使われているだとか,そういうことが分かりやすいわけです。
もう一つは,テキストの方です。テキストプロファイルということで,先ほど言った受容関係のCAN-DOはどのぐらい複雑なテキストなのかということが重要です。ですので,我々としては,各CEFRレベル別のテキストのこのような様々なテキスト特性や,複雑さの指標,どのぐらい複雑な構文で,難しい単語や長い単語が使われているのかみたいなことを指標にして,そういうものでレベルごとに与えるべきテキストの特徴みたいなものを規定しています。こういうものが分かってくると,自動でテキストを分析して,例えばB1レベルのテキストを抽出するとか,そういうことが機械的に将来できるようになれば,リーディングのプログラムを作ったりするのが非常に楽になるわけです。このようなことを上手にやっていくことで,科学的にカリキュラムを改善していくということができます。
時間があと5分しかありませんが,現状,教科書はどうなっているかという話をちょっとしたいと思います。これは,2008年の教育再生懇談会のとき,私が小池先生と一緒にレポートした当時のアジアの教科書比較のデータです。異語の比較で,韓国,台湾,中国の教科書と日本の教科書,これは代表的なものワンセットを比べているのですけれども,日本は異語数も,それから総語数,テキストの分量もとても少なかったのです。
その後,学習指導要領が改訂になり,今回,平成28年度の中学校のテキストを検査したところ,このぐらい増えています。先ほどのこの例は,どこも異語が1,000語に行っていません。ところが,新しい平成28年度のものは,このぐらいまで増えています。韓国,台湾のものとほぼ同等ぐらいのレベルに,現在の中学校の教科書は分量が増えました。語彙も,中学3年で,規定は1,200語なのですけれども,平均2,000語が出ています。ですから,かなり分量も多くなっているのです。
そういう意味では,小学校が変わっていない割に中学校が急に難しくなってしまっているみたいなところがちょっとあって,接続が少し問題なのですけれども,隣国の教科書ベースでいくと,ほぼ均等な質や量を確保しつつあると思います。
ただ,ここで一つ問題なのは,増やしただけで,まだ語彙の統制は余りできていないのです。例えば,語彙は900語から1,200語になったのですが,2,000語ぐらい出てきています。ほかの教科書もそのぐらいなので,小学校が充実してくれば別に悪くはないのですが,ちょっと難易度の高い単語が中学校レベルでかなり出てきてしまっています。我々のCEFR-Jのワードリストを基にすると,B1やB2レベルの単語などもかなり出てきているのです。
逆に,精選された単語がちょっと少ないのです。中学校で出てきてほしいA1レベル1,000語ぐらいが我々で規定しているものがあるのですけれども,7種の教科書で共通して出てきている単語は300語ぐらいしかありません。問題なのは,最初,300語でもいいじゃないかと思うのですけれども,中3まで行っても400語ぐらいしか共通語がないです。ですので,2,000語ぐらいまで出てきているのですけれども,教科書のボリュームを増やすということを主眼に改訂したので,語彙の選定などがちょっと緩くなり過ぎてしまって,難しい単語がかなり出てきている状態で中3の教科書になってしまっているという感じなのです。この辺はもう少し,先ほどのCAN-DOのことや語彙のことをきちんと,もう少し品質管理をして教科書をよくしていく必要があるというのが私の意見です。
この辺は時間がありませんので少し飛ばしますが,CAN-DO以外,CAN-DOだけだとやはりどうしても抽象的な文言になってしまうので,語彙のイメージ,つまりすごく重要な100の単語で,教科書3,000セット分ぐらいをまとめた1億語ぐらいのコーパスを作ると,7割近くをカバーしてしまうのです。これはもう内容語はほとんどなく,文法中心の単語です。基本の動詞2割と機能語7割,そして残りの2,000語ぐらいで書き言葉の8割,話し言葉の9割になります。この残りの2,000語に1,000語ぐらいの名詞が入るのです。ですから,100の単語ぐらいで文の中核,骨組みを作っている,この作り方をしっかり学ぶということ,あと1,000ぐらいの単語でいろいろなことを入れて2,000語ぐらいだと,話し言葉の90%ぐらいをカバーするような力,そこら辺が核になるような言葉の力なのです。
この2,000語以上を覚えても,ここに出てくるように,次の2,000語と重ねていってもカバー率は極端に落ちてしまうのです。ですので,4,000語,6,000語,8,000語と覚えていっても,次の単語を知っていることの重要度というのはがくんと落ちてしまうのです。逆に言うと,高校ぐらいまでにこの2,000語が使いこなせていないから弱い力なのです。だから,ここら辺がスカスカなまま上の方のことを勉強しても駄目だということなのです。こういうしっかりとしたデータを基に,教科書作りやタスクをきちんとしていかないと駄目だということなのです。
ですので,イメージとしては,繰り返し100の単語と2,000の単語を組み合わせて,チャンクみたいな形にして表現が出てくるようにする,これを高校の最後ぐらいまでに活用語彙にするという考え方です。語彙は,全部意味だけ知っているという形のイメージでみんな覚えているのですけれども,そうではなくて,出てくるようにする語彙と,知っていればいい語彙を分けるということが非常に重要なのです。この辺のイメージを教授法でもきちんと教えていく必要があります。
指標形式のCAN-DOから具体的なCAN-DOに下りて,そのCAN-DOに張り付く表現類のセットを先ほどのような資料を基に作ることによって,このセットを教科書会社に渡せばかなり具体的なレッスンを作ることができるのです。そして,こういうレッスンで作ったものを基にシラバスをチェックしていきながら,どのぐらいできているかのパフォーマンスを見る。そういうものがかみ合ってくれば,だんだんとCAN-DOのここができた,ここができないということをはっきり言うことができるようになり,それによって受け渡しが可能になり,診断も可能になるわけです。
まとめになりますけれども,現在はインプットがとても限られている状態で,単に増やそうとしているのですけれども,やはり学習材をきちんと精選してあげるということが重要です。教科書は,単に量が多ければいいというものではなく,環境によって,これだけ日本語中心の国なのですから,英語に触れる機会が少ないわけですので,触れるコンテンツもちゃんとしてあげた方がいいです。
そのために,CAN-DOと言語タスクのセットをきちんと作ってあげて,それを下支えする語彙や表現のインベントリーもきちんとデータとして持っておく,そういうものを基に教科書を作るということが大事です。
言語活動としては,その下支えする語彙や表現をきちんと仕込むという部分が大事です。単体の単語をただ覚えるのではなくて,これは出てくるようにする単語,これは覚えておけばいい単語という感じの仕切りを,レベルごとにだんだんと上に上げていくように設けて,有意味なチャンクをまとめた素材で,これは表現して,できるようになるために必要なものなのだということできちんと覚える。
その練習の部分は,マルチモーダルで,チャンクから文になるような練習をICTとかでやるととても効果的だと思います。そういうものを使ってみるような部分は授業でやり,それ以外の部分はうまくICTなり,モジュールの授業の一部などを使って仕込むということです。この仕込みという部分は必ず入れないと,現状のコミュニケーション活動をただやっていれば身に付くというものは下地作りが弱くなってしまうのです。ですから,下地をしっかりした上で,コミュニケーション活動に持っていくという部分をきちんとやることが大事だと思います。
最後は,教える側のCAN-DOと学ぶ側のCAN-DOということについて言いたいと思います。シラバス構築のためには,現状,我々が提示しているのは教材提示用のCAN-DOですので,インプット側の方のレベルはちょっと高めに設定することがヨーロッパでも多いのですけれども,それは即できるようになるという意味ではないのです。ですので,学習用のCAN-DOは,現実的にそれが身に付くのはこの辺ということを,ある程度発達レベルに適した形で把握しておく必要があります。ただ,余り低いレベルに設定してしまうと,出てくるものも低くなってしまいますから,そこら辺は難しいです。
あと,「できるようにする」という表現はCAN-DO的に言うと教師側の目線なので,学習用は「できる」という形で提示するのがよろしいと思います。
このように,今まで言った感じの新指導要領の新しいシラバスが,先ほどみたいなことをうまく盛り込んで指標化されれば,それを具体的に作った教科書でやってみて検証していく。今の全国調査みたいなことを繰り返していけば,科学的にある程度フィードバックを基にして,改善していくみたいなことを上手にできるのではないかと思うのです。
このようなことをやっていかれるといいのではないかというのが,現状での我々の研究から示唆されることになります。
以上です。
【吉田主査】  非常に示唆に富んだ内容だと思います。ありがとうございました。
委員の方々から,何か御質問,御意見などございますか。後でまた全体の質疑応答,議論の場も設けますけれども,今の投野委員の意見に。松本主査代理,どうぞ。
【松本主査代理】  先生のお考えですと,その100語と2,000語を文部科学省としても明示して,どのレベルの教科書において教えるべきだという方向性をお考えなのでしょうか。
【投野委員】  どの程度というか,先ほどの法律的な縛りという意味で出すべきかちょっと分からないのですが,ある程度そういうような語彙に関する,出てこなければいけない,使えるようにならなければならない語彙のイメージと,それから周辺の認識語彙だけでいいものとの仕分けみたいなイメージは,解説などに盛り込めればと思います。そうしないと,やはり出てくるようにするためのトレーニングを研修とか,そういうものでも重視していかなければならないと思うのですけれども,そこの部分の根拠みたいなものが漠然としたままですと,先生方も,今までのトラディショナルなやり方とどう変えればいいのかという辺が,余りよく分からないまま進んでしまうような気がします。
それから,ディスカッションとか活動形態だけを提案していると,その内容の言語の部分のイメージが余りはっきりないまま研修しているのもどうなのかというのは,ちょっと私はあります。
【松本主査代理】  今のお話の中で,教科書によって,7社ばらばらだというところがかなり強調されたような気がするのですけれども,その問題を解消するに当たって,学習指導要領の記載はどのように変えるといいという,もしお考えがあれば教えてください。
【投野委員】  昔の指導要領には,語彙のリストがある程度載っていました。語彙リストに関しては,各国とも指導要領の一部に載せているところはかなり多いですので,見識として,こういうものは最低載せるべきであるとリスト化するのは一つの方法だと思います。ただ,基本の100語というのは,単にリストしてあっても非常に使い方が,レベルがあるのですね。単に「メーク」という単語が載っていても,それが載っていることの意味合いというのは余り,ただリストとして載せているだけだと意味がないと思うのです。もう少し具体的な資料類を,参照資料として何か見るようにするとかいうことを教科書会社にやってもらうとか,そういうことをしていかないとよりよい,例えば「メーク」のより進んだ使い方みたいなものをA1レベル,A2レベルでだんだん深めていくみたいな部分が最初の100語では重要なのですけれども,その100語の深化みたいな部分をちゃんとカリキュラム上も担保してあげるみたいな感じになっていると,本当はいいと思います。
【松本主査代理】  続けていいですか。
【吉田主査】  いいですよ。
【松本主査代理】  中学校の語彙サイズが格段に増加したことについては,先生はプラスとお考えになっていて。
【投野委員】  はい。
【松本主査代理】  今後,小学校で増えれば,接続という意味では小・中の接続がよくなるということですけれども,お考えとして,例えば小学校で英語が教科になったときに,現状で与えている語彙よりも,小学校6年生の語彙数というのは今より多い方がいいとお考えでしょうか。
【投野委員】  この間,アジア圏と日本との教科書比較をしたときに非常に特徴的だったのは,語彙のレベルは資料としてありましたっけ。
【圓入室長】  参考資料1ということでお配りしている中に,1ページ開いていただくと,3ページ目にアジアの英語教科書レベルの比較というものが付いておりますので,御参照いただければと思います。
【投野委員】  資料4,参考資料1の3ページ目に,大分前なのですけれども,平成20年にやったときの大まかな分析なのですが,ここで非常に面白かったのは,アジア圏の韓国,台湾,中国辺りの小学校の教科書を学習指導要領的に見て,PreA1,A1よりもちょっと前辺りの内容と一応規定して語彙を見たところ,三,四年分の授業を小学校ですると1,000語ぐらいが教科書で出てくるのです。ところが,中学校1年の各国の教科書を見ると,ほとんど増えていないのです。つまり,中学校1年では,小学校で出てきた語彙をほとんど再生して活動しているのです。その後に,ぐっ,ぐっと載せるようにしているわけです。ですので,現状の「Hi, friends !」辺りの内容を,教科化することによって少し増やしたとしても,やはり中学校1年の接続は少し似たような語彙で行って,2年,3年と伸ばすことで現状ぐらいのレベルになるという感じで作ると,ちょうどよくなるかと思います。
【吉田主査】  最後の質問。語彙を定着させるための指導という点から見て,現在の学習指導要領でほかに何か問題となることがあれば教えていただきたい。
【投野委員】  問題になるというか,やり方のことだと思うのですけれども,発信する語彙の場合にはやはり出てくるようにする機会ですね。そういう発信用の語彙を使うための機会を与えるという意味で,現在,英語で行うということをしていますよね。カリキュラム的に,新しい素材の導入の方に焦点ばかりが行ってしまって,毎回,新出文法事項の導入ばかりしているという感じで,ウィンドーショッピングみたいな感じで教えてしまっているというのが今の文法の授業の中心なのです。だけど,そうではなくて,既に習っていることを使って自己表現するやりとりの機会をたくさん与えることが大事です。
ですから,新しい表現を学ぶことをきっかけに,それを知っている表現で言い変えたり,それは何かをお互いに分かるように話し合ったりということで,新出の文法事項は全体の4分の1ぐらいの量で,全体の半分ぐらいは恐らく既習事項を使うことを中心にした授業をすることが大事だと思います。そこのところで語彙のリサイクルが行われるのです。そうすると,単に毎回,レッスンで新出の単語が出てくるだけではなく,それを様々な機会で再び使ってみるという機会を,どういうように組み込むかということをちゃんと設計することが大事だと思います。それがうまくできていくと,先ほど言ったようなコアの語彙は,当然,表現するときに何度も使わなければならないので,そこに定着ということがだんだん出てくるのではないかと思います。
【松本主査代理】  今,おっしゃった75%ぐらいは同意できるのですけれども,最初の部分の文法の導入というか,教え方というのは,私が見ている授業とは若干イメージが違います。でも,いずれにしてもリサイクルの必要性というのは同意できる部分です。
【吉田主査】  ありがとうございます。
多分,まだいろいろ御議論はあるかと思いますが,今日,まず情報として共有しておくべきことをしてから全体の議論に進めていきたいと思います。
それでは,これから小・中・高一貫の目標設定の在り方に対する追加意見の説明,それから小・中・高を通じた英語教育強化の取組に関する報告について,事務局の方からお願いいたします。
【圓入室長】  すみません,少し手短にさせていただきたいと思います。
まず,資料1を御覧いただきたいと思います。これは,これまで先生方から頂いた御意見を整理したものですけれども,前回,会議で頂いた御意見は,ちょっとお開きいただきますと,小・中・高一貫した目標設定の在り方ということでございましたので,2ページから4ページぐらいに追加をさせていただいております。基本的には,目標の設定の意義,位置付け,必要性,期待される効果,留意点ということにわたっていたかと思いますけれども,まだ足りないと思われるところは,本日,是非御意見を頂ければと。それから,投野委員から御発表いただいたことにつきましても是非御意見いただいて,こちらの方にまた整理していきたいと考えております。よろしくお願いいたします。
それから,小学校のことにつきまして,前回まで御議論いただいたわけでございますけれども,ページでいきますと6ページから御意見を整理させていただいております。追加をさせていただいたのは8ページ以降でございます。特に,論点整理でいろいろと御指摘ありました短時間学習について,たくさんの御意見を頂いておりましたが,本日は,そもそもの目標設定の在り方から,先ほど大杉室長の方から総則・評価特別部会のお願いということでお話がございましたようなことも踏まえながら,是非御意見を頂ければと思います。
また,会議終了後に頂いた御意見をちょっと御披露しますと,短時間学習の議論をするに当たりましても,前回,説明させていただきました,例えばこれまでの拠点授業などでの取組でいきますと,「Hi, friends !」をベースに3・4年生,5・6年生の取組をしているということですが,9ページにちょっと追加をさせていただきましたけれども,もう少し具体的なイメージを提示していってはどうかということで,その枠組みとなるような資料を提供して,検討していただいたらどうかということを頂いております。
基本的に短時間学習の意見につきましては,その意義付けといいますか,効果,それから研修など指導体制の在り方も含めて少し整理していくべきではないかということ,きちんと45分の授業との系統的な関連性を明確にしたものということで,打ち出しをすべきではないかというような御意見を多く頂いておったかと思います。具体的には,短時間学習のよさを生かした活動ということで,幾つか例示を挙げていただきながら,留意点としてのコメントを多く頂いたかと思います。かなり共通性があったかと思いますけれども,本日,また足りないところがあれば御意見を頂きたいと考えております。
今日までいただいた御意見につきましては,先ほど大杉室長から案内もありましたように,年明け以降に小学校部会をはじめとした関係の会議に報告をさせていただきたいと考えております。次回の会議でこれまで頂いた御意見を一旦整理させていただきますので,その報告のための論点の御議論を頂きたいと思っておりますので,そういった意味で,今日は是非御意見を頂ければと思います。
そのほか,資料として御用意させていただきましたのは,先ほどの投野委員の関係の資料でございます。参考資料1ということで,ちょっと前後して申し訳ありませんが,CEFRの参考資料も御参照いただければと思います。海外の状況ということで,1ページ,2ページに添付させていただいております。4ページ以降は,CEFRということではないのですけれども,例えば中国ではどういった形で設定しているか。それから,今日,教科書のお話が出ておりましたけれども,どのように教科書で生かされているかという事例ということで,これはオックスフォードさんに御了解いただいて,教科書の絵を少し紹介させていただいております。具体的に,どのようにCEFRとの関係が教科書に表れているかという資料も配付させていただきました。
参考資料2といたしまして,先ほど投野委員からも御案内ありました平成20年の小池先生の科研の御報告からも,今後の日本のCAN-DOへの示唆ということで少し御紹介する資料も配付させていただいてございますので,こちらの方も適宜御参照を頂ければと思います。
そのほか,今日も同じように資料3をお配りしておりますが,最初のページは論点整理でお示ししたイメージということでございますので,外国語ワーキンググループで御議論いただくときに,こういうように少し工夫をした方がいいのではないか,求められる資質,能力ということでこのように整理した方がいいのではないかという御意見を,この資料を基に是非頂ければと思っております。
1枚,見ていただきますと,外国語教育の目標と学習過程ということで,先ほどスパイラル,リサイクリングというお言葉も頂きましたけれども,例えば英語の目標の下に英語の学習過程,プロセスということも少し,大ざっぱでございますが,明示しております。こういった学習過程におきましてどのようなことが必要なのかということも,もし必要であれば,目標と併せて御意見を頂ければと思っております。
それ以降のものは,前回と同じ,事務局の方でたたき台として指標形式の目標を提示させていただいておりますので,御意見を頂ければと思います。
前回の会議以降,3名の先生方から御意見を頂いておりまして,資料1の別紙の後ろの方に付けさせていただいておりますが,後ほど是非先生方からも,その資料を基に御意見を頂ければと思っております。
最後の資料でございますが,資料5につきましては少し事例を追加させていただいております。ページでいきますと,事例が14ページ以降にございます。例えば,小学校の例ということで,教科化に向けた「読む」・「書く」に重点をおいた取組の事例でございますとか,ページでいきますと18ページ,ちょっと中学校の方に入ってくるのですけれども,言語能力を効果的に高めるための外国語教育と国語教育の連携に関する取組ということも御提示させていただいております。国語との連携ということが論点整理にもございましたので,小・中・高を通じた目標設定の在り方ということの中で,もし何か御意見がございましたら,こういった視点も踏まえて御意見を頂ければと考えております。
補足的な説明としては以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【吉田主査】  ありがとうございます。
かなりたくさん,いろいろなテーマがあるように思いますけれども,最初の大杉室長の説明から始めて,圓入室長の今のお話,それから投野委員のお話,全て含めて,これからできるだけ皆さんと御議論を進めていきたいと思います。
まず,小・中・高一貫した目標設定の在り方について御意見がおありでしたら,そこから始めていきたいと思います。その後,小学校の外国語教育の在り方について御議論いただきたいと思うんですが,最初に小・中・高一貫した目標設定の在り方についてというところで,今までの資料,御意見なども参考にしながら,いかがでしょう,何かございますか。
どうぞ,石鍋主査代理。
【石鍋主査代理】  今,資料3の大きいものを見ているんですが,中学校のところの目標を見て,丸などを読んでみると「身近な話題について理解や表現,情報交換ができるコミュニケーション能力を養う」,そして赤字では「互いの考えや気持ちを英語で伝え合う対話的な言語活動を重視した授業を英語で行うことを基本」とするなっています。これは大変よく分かるんですけれども,今,CAN-DOの話が非常に話題になっていたりしたときに,教員ですとか,一般の人がぱっと初めてそれを見たときに,やはり「何々ができる」という技能の面が非常に前面に出ていくような感じがあります。
それはそれで大事だとは思うんですけれども,やはり教育をしていくという観点から見ると,英語で伝え合うためのベースとして,コミュニケーションのベースとして,一つは心情的な部分も意識する必要があるのではないか。例えば,相手を思いやるとか,相手を尊重するとか,そのようなところが,以前,何かの会議でも議論になっていたんですけれども,そこが抜けてしまうと,英語が単なる技能のみのものになってしまって,教育とちょっと離れていってしまうかなという気がするんです。その辺りの文言が入ればいいのか,ニュアンスをどこかで解説すればいいのかはちょっと分からないんですけれども,一つイメージとして持つべきだと思っています。
そうなってくると,当然,小学校の方の目標も,これ,目標例だけ見てしまうと,最後は「友達に質問したり質問に答えたりできるようにする」で終わってしまっているんです。この辺りが改訂の大きなポイントの一つになるのではないかと思ったので,まず発言をさせてもらいました。
【吉田主査】  ありがとうございます。
心情の面だかと,言葉は単なる情報伝達だけではないですから,そういう観点も重要だというのはよく理解できると思います。
ほかに何か御意見ございますか。では,酒井委員。
【酒井委員】  お願いします。資料1の16ページから書かせてもらったことの繰り返しになりますけれども,発言させていただきます。
資料1は,その後,宿題として提出した意見ですけれども,大枠,今,見させていただいている指標形式の目標設定は適切かなと感じました。特に小学校から中学校への接続,PreA1からA1,A2ぐらいのところですけれども,トピックであるとか,言語構造であるとか,かなり段階的な,徐々に発展をしていく要素がありますので,スムーズに円滑が行くのではないかと思っています。
特に,PreA1において,簡単な語句,アルファベット,定型表現といった表現が入ってきたのはとてもよいことだと思っています。従来の中学校は,文を構成するところで,文法的に正しい文でないと発言できないという生徒も多くいたわけです。自己表現という様々な要素を使ってコミュニケーションする態度を育成するという意味では,このPreA1の設定はいいかと思います。
ただ,先ほど投野委員の方からあったように,教育用のCAN-DO,それから学習用のCAN-DOという違いについては私も同様に思うわけですけれども,語句やアルファベット,あるいは定型表現が学習到達目標だったとしても,指導としてはもう少し上の部分を行く,あるいは扱う工夫ができるような,そういう学習指導要領上の留意点等の記載等が必要になってくると思います。全ての学校がそうではないんですが,例えば今日はアルファベットと言うと,英語としては1時間中アルファベットしか出てこない,定型表現ですら出てこないような授業もあります。つまり,教えたことを全て身に付けるという感覚で,様々な経験をさせながら,徐々に発達をしていくという発想が理解されづらい部分もあるかと思いますので,そこの扱いをポイントとして記載する必要があるのと思いました。
中学校から高等学校の接続は,トピックにしても,文構造,それから機能面にしても,特にA1からB1ぐらいですか,急遽,複合的に難しくなっている段階と思います。もし,これをスムーズに,円滑に接続しようと思うと,中学校レベル,その下の小学校レベルですけれども,十分に経験を積んでいて,先ほど投野委員からもやはり同じような指摘があったかと思うんですが,縦の発達だけではなくて,一つの段階の充実した活動経験とか,あるいは繰り返しスパイラルに学ぶような,そして技能を身に付けていくような,そういう工夫がやはり必要になってくると思いました。
あと,1点,17ページのところで細かい表を出したんですが,これは例として挙がってくる分にはいいと思いましたが,実は書くこと,メモを取るということについてちょっと書かせてもらいました。前後のレベルで言うと,メモを取るというのはちょっと特異な働きをしていて,意見を書くとか,説明文を書くというところとちょっとずれる部分があるんです。実際,私が平成18年度と24年度の教科書を分析したときに,このメモというジャンル,あるいは活動がほとんど中学校の教科書の中に出てこない,つまり扱いづらいものになってきているので,こういうように一番主要な目標というんですか,形式で出てくるところについては要検討かと思いました。
以上です。
【吉田主査】  ありがとうございます。
それでは,藤村委員,お願いします。
【藤村委員】  先ほどの石鍋主査代理の話なのですけれども,たしか外国語教育に求められる資質能力云々の資料にあったと思うのですけれども,小学校では相手を意識しながら,中学校では他者を尊重し,高等学校では他者を尊重し,聞き手,話し手,読み手,書き手に配慮しながら,というようなことがあったと思うんですけれども,私もこれは非常に大事なことだと思っています。やはりいろいろな子供が公立高校にはおりますから,なかなかうまく,相手を攻撃するような子供もいるし,やりとりすることも難しい子供も現実はたくさんおります。そういう中で,相手を大事にしながらやりとりするという,そこがやはりコミュニケーションの一番大事なことだろうと思いますので,小学校からそれを大切にしたコミュニケーションをすべきだと私は思っています。
【吉田主査】  ありがとうございます。先ほどの補足という形での説明ではないかと思います。
ほかの方,別の点でもいいですが,何かございますか。では,佐々木委員。
【佐々木委員】  続けてですけれども,高等学校においてもやはりそういった情意面というものは非常に大事なところなので,それが小・中・高と培われていくことで,更に高い意味での思いやりだとか,人間関係を構築できるというような書き方がいいと思います。
資料3で,先ほど石鍋主査代理から出た中学校の上,高校のところで目標例がありますが,やはり討論,議論が強調されてくると,今,言われたような相手を攻撃するとか,そういった感覚で捉えるリベートの意味合いとは違うというところを,もうちょっと明記した方がいいと思うのと,この例ですとコミュニケーションという言葉が出ていないですよね。我々からするともう当たり前のことなのかもしれないけれども,コミュニケーション能力を養うという現状で押さえられているところは,次回でもやはり押さえるべきところで,更に高いコミュニケーション能力を養うといったところにつながるのではないかと思うんです。コミュニケーションを取った意図が何かあればまた別ですが。
【吉田主査】  何か意図はあるんですか。
【圓入室長】  ございません。
【吉田主査】  ないですね。
ほかの方で何か。では,平岡委員。
【平岡委員】  今の意見に私も続けて言わせてもらうとすると,資料3の2ページ目に小・中・高を通じた目標及び内容の主なイメージというものが出ていて,小学校高学年も,中学校も,最後の部分は「コミュニケーション能力の基礎」と「コミュニケーション能力を養う」になっていて,小学校は「聞くことや話すことなどの」が付き,中学校は終わりの部分だけ取ると「簡単な情報交換ができる」となっています。無機質な,ただのやりとりで終わるのではなくて,やはり論点整理にもあるように,2つ目の思考力,判断力,表現力のところにあったと思うんですが,相手の考えに共感するという部分とか,協力しながら問題を解決するという情意的な面があってのコミュニケーションだと思いますので,やはりそういうところを含めていくべきではないかと考えます。
【吉田主査】  ありがとうございます。
主査という立場でどこまで発言していいか分かりませんが,コミュニケーションという言葉が独り歩きするということもちょっと心配なので,今,皆さんおっしゃっているように,お互いがお互いを理解し合うということを含めてコミュニケーションになるので,一方通行だとコミュニケーションにならない。ですから,お互いが本当に思いやりながら,お互いの考えていることを相手に伝えようという努力,そういう気持ちが含まれないとコミュニケーションにならない。今,いろいろな方がおっしゃっている部分は非常に大事なので,場合によって解説書なり何なり,その辺りもきちんと明記する必要があるのかもしれません。今のところ,コミュニケーションと言うと,しゃべっていればコミュニケーションになるという感覚がどこかにあるような気がしてしようがない。今,お話しされていることは非常に大事な点ではないかと思います。
ほかの方で何か。では,渡部委員,どうぞ。
【渡部委員】  今のことに関連すると思うんですが,そういったコミュニケーション能力というのはとても大切なことで,それから子供たちの情意面ということを考えていく必要があるんですけれども,このCAN-DOで求めるものをどういうように設定するかというところをきちんと整理しておく必要があるのかなと。つまり,これは英語を身に付けさせるスキルとして考えておく。その周辺にコミュニケーション能力,あるいは情意面がある。いわゆる学力の三要素,主体的に学ぼうとする態度,あるいは思考・判断・表現,それから知識・技能,そことどういうようにリンクしているかということも考えておく必要があるのかなと。そうすると,CAN-DOで示す枠というのは,技能の部分なのか,あるいは思考・判断・表現なのか,そこのところの整理をしなければいけないんですが,CAN-DOで示すところは英語の付けるべき力であると的を絞ってもいいのではないかと思います。
そう考えたときに,冒頭の,学習指導要領というのは法的なものであり,全ての生徒に身に付けさせるものであると考えたときに,学習指導要領と,今,議論されているCAN-DO形式での指標というものがどのように関連するのか。つまり,そこでは全ての生徒に与えるべきものとして書かれるべきなのか。投野委員が言われたように,いわゆる汎用的な枠と捉えれば,学校の中である程度付けることもできる,別々のものを作るという形もできるんですが,そこのところの整理も必要なのかなと感じました。
【吉田主査】  どうもありがとうございます。
CEFRのCAN-DOの中に,今まで出てきているような情意面だとか,そういうものに関する記述というのはあるんですか。
【投野委員】  CAN-DOリストの前提になるような,どういうように能力を捉えるかという解説部分に出てきます。バーティカルとホリゾンタルというディメンションがあるというんですけれども,ホリゾンタルの方に様々な,構成上,CAN-DO自体にはホリゾンタルの方は5技能しか出ていないんですけれども,そこにもっと内容面であるとか,先ほどの文化や異文化への理解とか,互いに対する,何ていうんでしょう,そういう関係を作っていくような気持ちとか,そういうような側面は書かれているんです。ただ,CAN-DOとしてああいうように二次元の表にしてしまうと,そこに全部を盛り込めないという形なので,別にいろいろな文言の説明があるという感じにあの本自体はなっています。
あと,言語機能を見ると,その中に言葉の機能として,例えば相手に同情を示したり,残念だと言ったりという機能があって,かなり情意面と関係するような表現類も言語機能的には入っておりますので,その辺りなどは逆に先ほどおっしゃったような面を強調するとすれば,うまくそういうことを表現としても身に付けていくことが可能かと思います。
【吉田主査】  ありがとうございます。
そういう点が入っていると,よりCAN-DOも汎用性を持った形で適用できるかと思います。
ほかの方で何か御意見。では,松本主査代理。
【松本主査代理】  幾つかあるんですけれども,1点目は教科等の目標のところですが,毎回出ているこの案というのは,現状の目標がいわゆる方向目標というか,こちらの方に向いているだけで,到達点が見えないという点で曖昧な部分があるのではないかということがあると思うんです。
大杉室長がおっしゃったように,一文にいろいろなことが書いてあるから分かりにくいというのもありますけれども,小・中・高でよく見ていると,素地,基礎,基本と変わって,身近な話題,幅広い話題は何が違うのという部分がありまして,そういう意味での分かりにくいさ。素地と基本を英語にすると同じファウンデーションではないのかとか,そういう言葉遊び的なものが現状ではある。ですから,オレンジの方の紙ではより具体的に書かれているのではないかと思います。もしコミュニケーション能力という言葉を使うのであれば,それはどういうことなのかということがどこかで注書きされていないとまずいのではないか。ですから,皆さんが御懸念されているようなことはその部分で書けるので,必ずしも目標の中に書き込む必要はないのではないかと私は思います。
そういう意味で,シンプルにするというのは,そういう言葉遊びでシンプルにするのではなくて具体性を持たせてとなると,やはりどこかでCAN-DO的なことが,この中で書き込むのは難しいにしても,どこかにちゃんと説明がないと,教員養成課程の学生に分かるようにはならないと思います。
それから,2番目,こちらの方の表なのですけれども,全て「できるようにする」という書き方になっているのが私は気になっています。今,アクティブラーニングという話がありますので,教師用のCEFRレベルの記述であっても,主語は「生徒が」というニュアンスで書かれた方が,「できるようになる」という書き方の方がいいのではないかと私は思います。
3番目は,受信型CAN-DOの書き方ですが,投野委員のお話ですとCEFRでも「何々が分かる」という書き方になっているということですが,「何々が分かる」というのはどういうレベルなのか測定するのがすごく難しいので,やはり「概要を説明できる」とか,「詳細を説明できる」みたいな,そういうアクションワードを使うことは可能なのではないかと思います。その方が現場の先生には分かりやすいのではないかと思います。
4番目は,先ほど投野委員に御質問した点に近いんですが,緑の方の表ですと,A1とPreA1のギャップの大きさというのがどうしても気になるんです。ですから,中学校1年生のレベルを少し下げるのか,あるいは逆に小学校6年生のレベルを上げる,それで読み・書きが小学校6年生でかなり導入されないと,このギャップは埋まらないのではないかという気がします。私の勘違いかもしれませんけれども,その辺を是非御検討いただきたいということ。
最後,5点目ですけれども,先ほどの投野委員の御説明で,日本の英語の教科書は薄いということで2008年のデータが出ておりました。これは私も前から思っていて,多分,現状でも,少なくとも中学校,高校の教科書はかなり総語数が少ないと思うので,できれば次の学習指導要領では,最低限,総語数何語以上と,小・中・高で提示するような方向性を是非考えていただきたいと思います。
以上です。
【吉田主査】  ありがとうございました。
もし,ほかの委員の方の意見についても御意見ございましたら,それも併せてお話しいただければと思いますが,ほかにもありますか。では,酒井委員,どうぞ。
【酒井委員】  すみません,今,松本主査代理がおっしゃった3番目のことに関することです。CEFRが5技能に分けていること,現状の学習指導要領及び評価の観点でいくと外国語表現,外国語理解と分けているかと思うんですが,実際のコミュニケーションで言うと,4技能の統合的な活用というものが言語活動の中では重視されてきます。これ,目標としては,あるいは指標形式としては5技能で示しておいて,その組み合わせの活用で言語活動を工夫するというような書き方もあるかと思うんですけれども,技能の統合的な活用についても十分配慮する必要があるのかなと,松本主査代理と同様に思いました。
【吉田主査】  ありがとうございます。
では,江原委員。
【江原委員】  宿題で私が書いてきたものがありますので,それにもちょっとだけ触れながらコメントさせていただきたいと思います。資料で申しますと資料1の14ページですけれども,別紙とあって,そのまま印刷されると思っていませんでしたので,割とメモ的なものですから失礼します。
私,コメントはどうですかと聞かれて,もうちょっとフォーカスしようと思って自分で別の質問を立てたんです。その課題の一つとして,この議論の一つの大きな課題は,きちんとデータに基づき,理屈をきちんとした上で段階付け,小学校から高校までのカリキュラムを作っていくという一つの目標があると思うんです。それは課題1で,実は私,もっと難しいと思っているのは,課題1をやりながら,同時に課題2を考えないと,課題1の議論が無駄になると思っているんです。
具体的に何かというと,課題2は指標形式の全般的な目標の見せ方をどうするかということなのです。高校の先生方の研修をやっている立場からすると,例えば何かを見せられたとき,目標を見せられとき,自分のフィルターで見るわけです。私も私のフィルターで見る。そうすると,結局,このカリキュラムはどうなのかといったときに,酒井委員がおっしゃった複合的なものが余りあると見えにくいんです。どうなるかというと,例えば語彙の判断があって,語彙リストが見せられて,ああ,そうかというように割と単純化して見てしまう危険性がある。
何を申し上げたいかというと,先ほどの投野委員のお話の中で,CEFRも結局,大きな目標の次のタスクと語彙,それから文法,紐付けされたものができてこないと教科書にもしにくいし,先生は何をしたらいいか分かりにくい。こういったときに,それをどう見せるかなのです。14ページの一番下のところですけれども,表があったときに,一貫して流れる骨格は何なのかということがぱっと見えるようにした方がいいと思ったんです。理想的にはタスクベースですけれども,そこまでは無理だと思うので,例えば語彙,文法リストがあると,恐らく皆さんはそこに目が行ってしまう。
どうなるかというと,語彙の勉強の仕方として,今,高校生は単語リストを電車の中で読んでいる。先生の高校の授業を見ても,最初の5分で「OK, please repeat」と言って単語だけを文脈なしでリピートする。それが大きな問題なのは,先ほどの100語をきちんとやりましょうといったところにもつながっていて,その100語をきちんと学ばせるには,私はやはり英語で授業をやるしかないと思うんです。なぜかというと,一方的に100語を使ってプロダクションしましょうと言ったところで身に付かないと思うんです。もうちょっとやりとりをしながら,ほかの生徒がその単語を使うのを聞いて,自分が使うのを自分で聞いて,先生が言うのを聞いて,いろいろな方向からやりとりしないと学ばないのではないかと,自分の体験をもっても感じます。
何を申し上げたいかというと,課題2のどう見せるかということ。それから,先ほど情意面のところを何とか入れられないかというお話ありましたけれども,もし強調するのであれば是非入れたい。例えば,14ページの課題2のすぐ上のブリットポイントの下から2番目なのですけれども,「簡単に話す」という代わりに「相手にわかりやすい表現を用いて」とか,だからこれは「相手を思って」ですよね。それから,書くときには相手が分かりやすいようにとか,どういう表現になるか分かりませんけれども,それをちょっと入れ込むことによって,解説を見てというのはありなのですけれども,私,研修講座をやっていますけれども,先生方はどうやって研修を選ぶかというと,タイトルしか読んでくれないんです。せっかくいろいろ説明しても読んでくれない。ということは,見る側がどう見るかということも想定しながら,この指標を見せることを考えないと,やはり私たちが議論したものがうまく伝わらない。
ちょっと取り留めがないんですけれども,100語を学ばせるということについては,その指標というかガイドライン,あるいは学習指導要領の中に,テキストとか教科書でこういうタスクをやるのではなく,教員がこういうことをしてくださいという規定の仕方をしないと駄目だと思うんです。テキストにあっても,やるのは先生ですから。私,教員がマテリアルだと思っているんです。そういう規定の仕方をしないと伝わらないかと思います。
すみません,まとまりませんが。
【吉田主査】  どうもありがとうございました。
ほかの方はいかがですか。では,大杉室長,どうぞ。
【大杉室長】  ありがとうございます。事務局から申し訳ございません。今の御議論を拝聴しておりまして,全体的な立場から,一つこの点をということを申し上げたいと思います。
今日,外国語ワーキンググループの関係資料というドッジファイルがお手元にございまして,一番上に論点整理が付けられてございます。論点整理,半分より後ろはカラー刷りの補足資料となっております。この会の1回目のときにも御説明を申し上げましたけれども,補足資料,後半のカラー刷りのところをめくっていっていただきますと,27と書いてあるところがございまして,三角形の図になっております。
3つの柱ということで,今,全教科はこの3つの柱に沿って資質能力を整理しているところでございます。本日,御意見があった情意面というのは,一番上「どのように社会・世界と関わり,よりよい人生を送るか」というところに大いに関係してくる部分であろうと思います。
現在,指標形式の目標を御議論いただいておりますけれども,これと併せてなのか,これとは別になるのか,英語における3つの柱の資質能力がどのような形になるのかという整理は,各教科とつないでいくという観点からも重要になってくると思います。本日,渡部委員からも御意見ございましたけれども,この3つの柱を考えていくこと。そして,御議論いただいている指標形式の目標は,この3つ全部をのみ込むような形で作っていくのか。それとも,知識・技能の部分と思考力・判断力・表現力の部分を考えていくと,このような形になるのか。そのような整理を是非御議論いただきたいということが一つでございます。
もう一つは,冒頭申し上げた法的性格といったことと絡みまして,指標形式の指標の下から上までで表現されているもの全てが,ある意味,指導要領で示すべき最低限度の基準に該当するのか。それとも,指標の上の部分は,それよりも少し上の部分ということになってくるのか。仮に上の部分が出てくるということであれば,それを指導要領に盛り込んでいくことの意義は何なのかという説明が必要になってくるということでございます。その辺り,今日ということではなくて,順次,御議論を頂ければ有り難いと思っております。すみません。
【吉田主査】  ありがとうございます。
今,お話いただいたように,いろいろなレベルの考え方というか,そういうものが入ってくるわけですけれども,CAN-DOの中にも情意面だとか,そういうものをファンクション的な形で取り入れる可能性はあるわけですから,具体的なCAN-DOの中にも何らかの形で触れるということは可能かと思います。
では,種村委員,どうぞ。
【種村委員】  今,大杉室長からお話がありましたように,私もちょっと感じているのは,先ほどの「できるようにする」とか「できる」という表現については,英語だけではなくて全教科に共通するものがあります。できれば,英語だけではなくて全教科で考えていかなければいけないものなので,これは英語の部会というよりも総則・評価特別部会なのか,小学校部会なのか分かりませんが,その辺を統一していただけると大変有り難い。
ここでの議論は持ち帰っていただいてということはあるんでしょうが,小学校は1人の担任が全教科を指導する場合がありますので,そのときに一つ一つの表現が違ったり,細かいことがあったりすると,担任レベルでなかなか消化できない部分があります。これは,今,ありましたように心情面もそうです。コミュニケーションというのは全教育活動,早く言えば徳育は全教育活動を通じてやります。英語だけではありませんので,例えば今,お話がありましたように,ある単元のこの部分については心情面のコミュニケーションを図るというなら分かるんですが,全教科を通じている部分についてはもっと大きなレベルで御議論いただいた方がいいと,私はちょっと思いました。
あと,先ほどもお話がありましたように,CAN-DOリストについてしっかり整理して,その中でどうしても心情面ということであれば,そこはそこでまたちゃんと御議論することが必要かなと。全部組み入れていくと複雑化してしまって,現場に下りてきたときに先生方に全く見えなくなるという現状が時々あるんです。特に小学校については,全教科をやっていくときにどれがどれだか分からなくなることがあるので,そういう部分もひっくるめてちょっと御議論いただけると有り難い。特に小学校の立場でそう思いました。
以上です。
【吉田主査】  ありがとうございます。
小学校は特にそうだと思います。全教科,全て一括してやっておられますから。
それでは,話題を,今,ちょうど小学校ということも出てきましたので,小学校の方の外国語教育の在り方,前回までもいろいろ皆さん御議論いただいているようなのですが,そちらの方の御意見にそろそろ移っていきたいと思いますが,いかがでしょうか。モジュール型の話であるとか,いろいろあると思うんですけれども,何か。では,投野委員,どうぞ。
【投野委員】  先ほど十分しゃべれなかった部分で,私の資料4の24ページに,現状の「Hi, friends!」とCEFR-J,私たちが作っている枠組みのPreA1からA1.3のレベル,つまりA1レベルぐらいまでがどのように対応しているかを調査した表がございます。
先ほど松本主査代理も,PreA1とA1の関係がちょっと気になるとおっしゃっていたんですが,実際のCAN-DOで「Hi, friends!」の項目にどういうように対応するかを調べてみますと,これはどういう表になっているかというと,左側のオリジナルのCAN-DOというのは我々CEFR-Jの一般的な記述としてディスクリプターを書いているものです。右側の表は,小学生でも分かるように書き直している,小学生用に具体的に提示するとしたらこんな感じかなという例です。左側の方で黄色くハイライトされているのは,「Hi, friends!」で実際に扱われている,緩やかにという点もちょっとあるんですが,余り細かくCAN-DOベースでは作られていないので,言語活動的に対応すると思うところを張り付けた結果です。そうしますと,汎用枠的なものを基に考えると,やはり聞くことと,やりとりと,発表に黄色が多いです。ですから,そういうオーラルスキルというか,そういうものを中心にやっていて,読むことと書くことはほとんどされていないということが現状で分かります。
ただ,一つあれなのは,もう小学校5・6年で活動としてやっているのに,内容としてはA1のいろいろなCAN-DOの項目がかなり幅広く取り上げられているんです。我々,中国とか韓国とかの教材の調査をするときに,小学校レベルはPreA1と規定したんですが,CEFRの方ではPreA1という規定がはっきりはなくて,A1レベルのことを様々に,いろいろやっているうちに大体あのぐらいになるみたいな感じなので,ゼロのポイントからどうやるかという具体的なイメージはCEFRの方も余りないんです。そういう意味で,現状では,A1レベル全般のことを取り上げて教科書が作られてしまっている,活動の「Hi, friends!」が作られてしまっているということが見えてきます。
この辺をもう少し学年配当みたいなことで考えると,少しバランスを考えるのと,最初はオーラル技能から,だんだんと文字を入れるみたいなことを,こういう指標形式の汎用枠を基にまずは考えて,どういう段階で出すのがいいかみたいなことが,今後,考えられていけばいいと思いますが,現状は大体こんな感じだということです。
【吉田主査】  ありがとうございます。
言ってみれば,そんなに乖離していないという部分ですね。相当オーバーラップやっているということですね。
【投野委員】  まあ,そうですね。いろいろ「Hi, friends!」でやっていることも,我々がCAN-DOで指定していることの具体例にはかなりなっているということです。
【吉田主査】  ただし,やはり今,おっしゃったように,書くこと,読むことに関しては具体的にほとんどやっていない。だから,その辺がどうしても記述的に見ると,小学校,PreA1の場合は,中1との間にかなりギャップを感じるかもしれませんね。その辺に関しては,これから5・6年生も入ってくるわけですから,記述的にももう少し別のものが入ってくるのではないかと思います。
ほかの方は。では,太田視学官,どうぞ。
【太田視学官】  発言ではなくて,意見をお願いしたいというか聞きたいんですが,先ほど小・中・高をやりましたし,これから小学校に行くんですけれども,技能の部分と情意的な部分がありました。結局,外国語を習得していくとなると,学校の中だけではなくて,学校の外に出ても英語とお付き合いしよう,卒業してからも触れていこうとしない限りは,多分,身に付いていかないと思うんです。
そのときに考えるのは,語彙とか文法とか表現というのはインフォメーション,そのインフォメーションの流れで今,指導要領のことを語っているんですけれども,それプラス,例えば小学校で動機を起こして,動機を中学校でもずっと維持していって,高校までいろいろな誘惑から動機を守っていくというモチベーショナルフローというんですか,分かりやすく言うと,好きだとか得意だと思わせるような仕掛けについて指導要領に何か書けないか。というのは,アクティブラーニングと言いながら学習指導要領なので,一応,子供たちに得意かなと思わせるとか,好きだと思わせるような指導と評価,そういうものが何かうまく指導要領に書けたらいいなと個人的に思っているんです。この会議の中で,小・中・高の連携とか,小学校の内容を考えていくには,多分,小学校は動機を起こさなくてはいけないので,モチベーションという流れ,一本の筋で小・中・高の外国語教育が書けたらいいと思うので,その書き方とか,何かいろいろお知恵を頂けたらいいなというお願いです。すみません。
【吉田主査】  かなり難しいという気はしますが,何か,ぱっと思い付きでも構いませんが,御意見ある方おられますか。では,投野委員,どうぞ。
【投野委員】  CAN-DOのヨーロッパでの実践でいくと,それはポートフォリオという形で実現して,指標という形式で小・中・高全体に一貫する何かができたときに,それをもう少し生徒向けに分かりやすい言葉やイメージで,言葉はこのように身に付いていって,将来,あなたはこのようになりたいかなみたいな,言葉を身に付けてコミュニケーションできるようになっていく,英語でできることのロードマップみたいなものをもう少し上手に見せてあげるというのが一つだと思います。例えば,自分はどこまで行きたいかとか,どのようになりたいかみたいなことを含めて,目標のイメージをちょっと膨らませてあげる。でも,自分は現状ここにいるから,どんなことをしなければいけないかということを,太田視学官がおっしゃったみたいに,英語の授業以外にも自分でプランニングしていくような力というか,そういうものを将来的に付けていくことが望ましいかと思います。
【太田視学官】  確認だけ。
【吉田主査】  はい,どうぞ。
【太田視学官】  今の先生のお話はすごく示唆に富んでいると思うんですけれども,そうすると評価の在り方も,例えばこれまでの5・4・3・2・1とか記述というよりは,計数的な評価,あなたは話すことではこういうことができるようになりましたというような学習履歴が残っていて,それが小・中・高でつながれていくという形もありという感じですか。
【投野委員】  おっしゃるとおりです。つまり,CEFRの場合によくやるのは自己評価です。まず,ああいう大きな枠を基に,自分はどこまでできるようになったかという自信というんですか,そういうようなものをCAN-DOベースで自己評価します。それが一つと,あとはパフォーマンスの実際の評価を組み合わせて,そういうものをポートフォリオの中で整理して受け継いでいくんです。ですから,できれば小学校から中学校はそういうものを,個人的に私はこんなものを勉強してきましたということを先生が受け取って,あなたは大体このぐらいのところにいるのね,じゃあ,こういうところはちょっと弱いから補強しましょうとか,ここから先は今のカリキュラムで大丈夫ねとか,そういうことを受け渡していくことができれば一番いいと思います。
【吉田主査】  ポートフォリオが本当に,小・中・高とずっと受け継いで引き渡していければ最高ですね。どこまでの内容を,どこまできるかというのは非常に大変だと思うけれども,少なくとも自己診断に関するものではある程度できるかもしれない。ただ,やはり自信度の問題を考えるとね。しかし,学習指導要領に書けるかどうかは別として,教育の一つの流れとして十分考える必要性はあると思います。
それでは,ほかの方,また小学校英語の方に戻りたいと思いますが,いかがでしょう。何かございますか。では,松本主査代理。
【松本主査代理】  やはり先ほどから話が出ている小・中の接続をどうするのかが気になっていて,同じことは中・高でも言えることなので,やはり高校卒業段階で平均的な生徒さんはこういうことはできるようになって,あるいは他人への思いやりも含めてですけれども,そういうことができるようになるという設定がまずあって,下ろしていかないと,高校は高校,中学校は中学校,小学校は小学校とやってしまうとまずいので,どういう接続の仕方がいいのかということも考えるべきだと思うんです。先ほど投野委員がお話になっていたように,ほかの国の場合,中学校1年生と,日本で言えば小学校6年生の接続で,同じレベルの単語が出てくるけれども,使い方の深度が中学校では深まるみたいな,そういう理念的なというか,ビジョンがあって話をしないと,何かまずいなという気がするんです。
【吉田主査】  ありがとうございます。
確かに,まずボトムアップよりもトップダウン的に明確な最終目標があって,そこから下ろしていくというやり方の方が,実質的に目標を達成しやすくなるのかもしれません。これは大事な点だと思いますが,ほかにも何か御意見ございますか。
【松本主査代理】  多分,同時に教科になるのは初めてなので,小学校の先生がすごく戸惑われるということも考慮して,トランジションのピリオドとして何か考えるということも同時に必要だと思うんです。例えば,小学校でつまずいた子が中学1年生でやり直しが利くと,単語のレベルは同じだけれども,活動が変わってくる中学校1年生の知的レベルに合わせた活動になるというのは理想的だと思うので,その辺,上から考えていくのが原則であり,今度,初めて教科になることについても考慮することが必要なのかなと思います。
【吉田主査】  その辺の特別な配慮は,どうしても必要になるとは思います。
ほかに何かございますか。では,どうぞ。
【渡部委員】  私もすごくそう思うんですが,実際,学校で先生とお話をしていると,小学校の先生は中学校の英語で何をしているか余り御存じない,中学校の先生でさえ高校の学習指導要領を読んだことがないという状況があって,それぞれがばらばらで上のところを目指しているという状況があって,中学校の上の部分と高校の下の部分が接続されていないということがよくあります。
なかなか難しいと思うんですけれども,僕らは中学校の先生には小学校や高等学校の学習指導要領をきちんと読みましょうねというお話をさせていただいているんですが,学習指導要領作成の段階でやはりそういうことを想定して,ある程度一体的な内容になっているものという形で,英語教育でどこを目指していくかというところは,小学校段階,あるいは中学校段階でも,きちんとゴールが分かるような示し方ができればいいのではないかとも思います。
【吉田主査】  ありがとうございます。
ただ,私が気になる点は何かというと,上になればなるほど個人差が物すごく出てきてしまって,共通の,高校を卒業したときにはこういうことができるようにしましょうと言ったって,それに当てはまる生徒が一体何人いるんだろうかということはすごい大きいですよね。そうすると,そこに当てはまらない生徒は一体何を目標にしてやっていくのか。結局,ボトムアップ式に,そこで先生が設けた目標を達成するしかなくなってしまうのではないか。その辺の問題をどういうように考慮しながらやっていくか。だから,理想は当然,ここが目標なのだから,そこまで行くのには高校でここ,ここまで高校でやるんだったら中学校はここ,そこまでやるんだったら小学校はこことやっていくべきでしょうけれども,なかなかそれは難しいかなと思います。
もう一つ,高校になると商業だとか工業だとか,いろいろ分かれますよね。中学校まではみんな同じ一つの義務教育の中でやって,目標もそれほど変わらないかもしれないけれども,高校になって変わっていったときに,果たしてどこに目標を設定するのかということもまた難しくなってくる。その辺のことも全部考慮しないと,上で設定したものがそのまま下におりてくるというのは保証できない,難しい点であると思いますが,何らかの形でその辺がクリアできれば,私はすごく理想的でいいとは思います。
ほかに何か。はい,どうぞ。石鍋主査代理。
【石鍋主査代理】  今,小学校の話と言いながら小・中接続なので,ちょっと接続の話になってしまうかもしれないんですが,学校現場を見ていて,やはり小学校の教員が中学校の実情を知らない,その逆も,もうどこへ行っても強いですね。私,1回,小中一貫校の校長をやっているときに,本当に簡単なことだったんですけれども,どういう題材を扱っているかを各教科で小学校1年から中学校3年まで,本当に一言,二言ずつですけれども,書き出させていくと,例えば算数と数学は小学校3年で扱ったものが,中1でもう一回発展的に出てくるということが見えてくるんです。そういったものが何か学習指導要領にあるのかなと思って見たら,理科の解説には載っているんです。道徳はありますけれども,理科以外を見ると余りない。あのような一覧表形式のものを一つ学習指導要領の中で組み込んでいくことができると,接続の意識は変わってくるだろうと思います。ただ,そういうことができるのかどうか,ちょっと分からないんですが。
【吉田主査】  大杉室長。
【大杉室長】  失礼いたします。現行ですと,理科と国語,系統表ですとか構成表というものがございます。今回,学習指導要領が目指しておりますのは,縦のつながり,横のつながり,小・中・幼稚園も含めてなのですけれども,幼稚園で学んでいることが高校にどう生きているのかということを,できれば幼稚園から高校の先生まで共有してほしいということ。それから,例えば英語ではない先生が英語を見て,英語ではこういう力を養っているんだと分かるようにすることを目指しております。先ほど申し上げた3つの柱というのは,単に整理として出しているのではなくて,それをつなぐつなぎとして出している。これに基づいて各教科の構成表を整理していくことによって,それを共有していくということが今回の大きな方向性でございます。
失礼いたしました。
【吉田主査】  ありがとうございます。
ということは,英語の中でもちゃんとその辺の継続性,継承の文言だとか,そういうものもきちんと整備していくことが絶対必要ですね。
ほかに。では,松本主査代理。
【松本主査代理】  今の点で言うと,英語の場合,この表を小・中・高の学習指導要領に何らかの形で添付していただければ,要するに自分たちがどこにいるかとか,例えば小学生がこれを見たときに,自分は小学生だからここまででいいというわけではないですよね。僕は今,高校レベルという家での学習ですね。そういう意味ではできると思うので,これを小・中・高に,それぞれの学習指導要領に載せれば問題はすぐに解決するような気がするんですが。
【吉田主査】  載せたときに,先生がそういう説明をできるかどうかで,問題が解決するかどうかが決まるのかなと。ただ,これは連続性があるので,非常にいいリストにはなっていると思います。今,おっしゃったことは非常にすごく大事な点だと思います。
では,佐々木委員,どうぞ。
【佐々木委員】  今の点で,学習指導要領の法的な関係で,最低基準ということで示されてしまうと,高校レベルの文言が本当に最低基準と捉えられるとちょっと誤解を招くので,どういう入れ方をするか,小学校からの流れを可視化するというのは非常に大事だと思うんですけれども,入れ方は非常に難しいという感じがします。
【吉田主査】  僕,いつもちょっと疑問に思っていたのは,学習指導要領,最低基準と言うけれども,例えばコミュニケーション英語1と2とありますよね。大枠の目標は共通していても,それぞれの科目の目標は違いますよね。あの科目の目標はどういう捉え方をすればいいんですか。
【大杉室長】  高校で申しますと,高校は共通性と多様性というところで,共通性として確保していく部分と,多様性に応じて,個人の深度でありますとか,興味に応じて伸ばしていく部分ということで整理をさせていただいております。科目のレベル感というところはそこの整理となっておりまして,その科目の中で最低限,何を確保していくかというところでの最低基準という位置付けと考えております。
【吉田主査】  圓入室長,お願いします。
【圓入室長】  すみません,議論の進め方をもう少し補足させていただきたいんですけれども,今,一斉に各ワーキンググループで議論が始まっていて,大杉室長の方で横串の全体の話を適宜こちらの方にお示しいただきながら,我々としては3月末か,4月にかかるかもしれませんけれども,順番に小・中・高それぞれの段階も個別に御議論いただきたいと考えております。ですので,高校のところは今,たくさん御意見が出ておりますが,恐らく1月か2月にしっかり,今,大杉室長がおっしゃったようなことを踏まえながら,外国語につきましては科目全体の見直しの方向性が論点整理に出ておりますので,そこで再度,今日頂いたような御意見も含めてしっかり議論いただければと。それで,最後の会でもう一度,小・中・高の全体構成を,目標だけではなくて学習指導要領全体をどうするのか,そのほかのメッセージをどうするのかということに戻らせていただきたいと思っております。今日,お時間残り少しありますが,できれば小学校のところの御意見を是非頂ければと思います。すみません。
【吉田主査】  では,少し戻って小学校。平岡委員。
【平岡委員】  今,小学校のお話になりましたので,小学校の立場でお話をさせていただきたいと思います。
第1回のときにも申し上げたんですが,現行の学習指導要領によって5・6年生に外国語活動が入り,「Hi, friends!」を中心に飛躍的に小学校の外国語は進歩したと思います。教員は,初めて外国語ということで非常に戸惑いもありましたが,子供たちに何としてでも力を付けたいということで,しっかり取り組んできています。子供たちも,論点整理にもありましたように,大きくは意欲と絞られていましたが,意欲だけではなくて,先ほどもありました情意面,友達のよさに気付くとか,日本語と比較してよさを気付くとか,伝え合った喜びとか,言葉の大切さにも気付いてきているというところは大きな成果だと思います。
これを踏まえて,更によりよい小学校の英語にしていくための可能性として,今,短時間学習というお話も出ていると思います。小学校は現在,漢字とか計算だけではなくて,本校は言葉の学習というものも短時間学習に取り入れています。それは,そこだけを無機質な漢字で繰り返すのではなくて,本体の45分の国語の授業であるとか,他教科等のことも踏まえて繰り返すという意味での短時間学習ですが,本体の45分の授業を更によくしているという特質が,やはり短時間学習にあるということを肌の感覚で感じています。こうしたよさを生かして,小学校高学年の英語科の短時間学習もあり得るのではないかと考えています。
ただ,そのときに,45分の本体がやはりメーンであって,短時間学習はあくまでもそれを補充的に扱うということであれば,圓入室長からもありましたように,やはり大きな,ベースとなっている「Hi, friends!」を生かした短時間学習,それから45分の授業,この70時間の枠組みを出していただいて,それを基に議論していくことが大事かなと感じています。
以上です。
【吉田主査】  ありがとうございます。
では,藤村委員,どうぞ。
【藤村委員】  私も今のことに関わるのですが,モジュールも含めて大枠70時間ということが出ているわけですけれども,具体的な時数については検討ということで,他教科との関連が当然あるわけですが,現在の「Hi, friends!」は非常にいい教材だと小学校の現場は思っています。その教材を基にモジュールを使うとすれば,45分間との関連でどう考えていけばよいのかということを,具体例を基に検討していくことがまず必要なのではないかと思います。
それと,短時間もいろいろな取り方があって,学校の実態によってかなり差があると思うんです。ですから,一律にこうあるべきだ,モジュールはこうだと限定をしてしまうのではなくて,ある程度幅を持たせた,例えば45分プラス15分,60分授業があったりとか,朝,帯学習の中に10分,あるいは15分というモジュールが入ったりとか,いろいろなモジュールの取り方もあろうかと思いますので,どういうモジュールの使い方をすることが非常に効果的であるのかというのは,拠点校もあると聞いていますので,そういう事例からちょっと具体例を出していただいて,検討できれば,より皆さんの共通の理解になるのではないかと思っています。
【吉田主査】  ありがとうございます。
モジュールは,ほかの教科と違って,やはり英語の場合は特殊なので,英語は英語という授業時間以外にほとんど全く出てこない。それを果たしてモジュールという形でやったときにどうなるのかというのは,下手すると本当に逆効果になるということははっきりしていると思います。ですから,本当にそれが有効なのか,また,今,お二人がおっしゃったような形で,どういう使い方をすれば一番いいのか。事例,少しずつ集められているとは思うんですが,それをきちんした形で整理していかないと何とも言えないのかなという気がします。
もう一つ,教科書の使い方が,モジュールの設定の仕方がいろいろ変わったときに,果たしてどういう使い方になるのかがなかなか見えてこないので,教科書が1つだとしたら,ある学校はこう使っている,ある学校はこう使っている,こうだったらうまくいかない,こういうようにうまくいくという,そういう点まで含めてきちんとした形で整理していかないと,なかなか難しいかと思います。
では,種村委員。
【種村委員】  委員でありながら,ほかの委員の方にちょっとお伺いしたいと思うんですが,先ほど小学校から中学校に行くに当たって,レベルの差がちょっとあるというお話がありましたが,例えば今,ここに書かれていますPreA1の部分が70時間必要なのか。もし70時間取れるのであれば,もっとプラス,こういうことまで盛り込んだ方がいいのではないかということも私はちょっと知りたい。というのは,正直言って,モジュールを小学校現場に全部やりなさいというのは無理だと私は思います。いろいろな使い方を小学校でしている中で,英語でモジュールをやってくださいと言うのは,特に1週間に10分×3コマを入れてくださいというのはかなり困難性があると思います。ただ,学校によってはできます。できないところもあるかもしれない。
そういう中で,モジュール云々ありきで持っていくとかなり心配だなと。これは,多分,小学校部会とか,いろいろな関係が出てくるでしょう。今回の教育課程実施状況調査でも短時間学習の使い方については調査をされていますので,その辺の関係がちょっと出てきますので,ある一部分だけで持っていくのではなくて,全体的な視野でモジュール,若しくは今の内容をよく検討して,70時間が本当に活用できるのであればいろいろな活用の仕方もありましょうし,もしこの内容でPreA1が簡単であれば,週1時間で大丈夫じゃないかという現場がもし出てきた場合,それに私どもはどうやって応えていくのかということがあります。もし70時間活用できるのであれば,もうちょっと内容的に膨らませたらというギャップがあるのであれば,もしかしたら膨らませたらという意見も出てくるかもしれないので,その辺も総合的に考えないと,ある一断片だけ進んでいくとちょっと心配だなという感じがします。
以上です。
【吉田主査】  非常に大事な意見ではないかと思います。
酒井委員,どうぞ。
【酒井委員】  お願いします。今の70時間に関わることですけれども,資料1の18ページから,小学校英語で1つ目の丸に書かせていただいたことです。先ほど松本主査代理もおっしゃったように,PreA1は,今の小学校の現状からいくと実はギャップがあるだろうと感じています。それはどういうことかというと,35時間,5年,6年で行っているところ,プラスで実施をしているところもありますが,このPreA1の聞くこと・話すことに加えて,書くこと・読むことまで含めたときに,この時間数ではなかなか力として身に付いていかないのではないかという捉え方をしているということです。
具体的には,19ページのところに2つ資料を付けましたけれども,1つはある小学校の5年と6年の自己評価の結果です。ここは週1回,5年生はALTとのTTで,6年生は5年時には学級担任が「Hi, friends!」を中心にしながら行っていて,6年生のときにはALTとのTTというところなのですが,おおむね満足できる子供たちがほぼ全員だといいなと考えたとき,子供たちの自己評価として,9割を超えている項目はそうそう多くないというか,9割を超えていない項目もたくさんあるわけです。そうすると,35時間の2年間で,聞くこと・話すことでもかなり十分な繰り返しであるとか,言語活動の経験,スパイラルな活動の繰り返しが必要だろう。
その下,ベネッセ教育総合研究所の2015年の小学生の英語学習に関する調査でも,これは広範囲に分析をしたものですけれども,同様の結果が出ています。実施状況は様々ですので,一応,5・6年生が週1回行っていて,始めた時期は中学年から始めた人,高学年から始めた人と2種類に分けました。3・4年時にどれぐらいやっていたかについてはまだ聞いていないので,そこはばらつきがあると思いながらも,一番裏,これは5・6年生をまとめたデータですが,実は「できる」と答えている子供たちが9割を超えた項目は1項目だけなのです。英語の挨拶ができるということです。ほかについては,時間数であるとか,指導の系統性であるとか,目標の明確化による指導の充実というのは,実はもっと求められるであろう。そういう意味では,35時間,週1こまよりは週2コマは必要になるであろう。ここに書くこと・読むことという指導が系統的に入ってくるとすると,やはり2時間の確保,週2こま程度の確保は必要であろうとちょっと考えたりします。
週3コマ必要かどうかということですけれども,英語の経験とインプットの質と量が問題であるということですので,量が多ければ多いにこしたことはないと思うんですが,週3というと,私,以前,中学校の教員だったんですけれども,かつて中学校の外国語科は週3の時期があったわけです。そうすると,教員側もかなり専門的な知識を持った上で指導に当たる必要が出てくるなど,いろいろな課題が出てくるだろうというような感想を持っています。
以上です。
【吉田主査】  ありがとうございました。
では,江原委員。
【江原委員】  私,昭和40年代に,小学校英語の学校に通っていた人間として感じるのは,前回の議論にも出ましたけれども,公教育としての小学校英語の場合に問題になるのは平等性と質の確保ということだと思うんです。そういう観点からすると,いろいろな事例がありますけれども,全ての学校でほぼ平等に均一にできるかどうかということを視野に入れた方がいいと思うんです。そうすると,モジュールで心配なのは,前回もありましたように,機械的な練習だけになってしまうとか,下手をすると,もしかしたら小学校が単語帳の練習になってしまうかもしれません。それを避けるためにも,先ほど情意面のというお話もありましたけれども,これは思い付きなのですけれども,例えば投野委員からありました100語,非常に限られた語だけれども,それをきちんと使えるようになるのが大事だとすれば,無理のない形で,相手への思いやりをきちんと学べるような形で機能と言語材料を入れていくみたいなもので,ほぼ全国的にみんな小学校卒業までにできるようになると。そういうようなものが目標にも,それから教材を作る上での指導にも入ってくるといいなと思いました。
【吉田主査】  では,藤村委員。
【藤村委員】  先ほど,こま数の話で70時間必要ではないかという話がありましたけれども,聞く・話すという活動を今,5・6年生で週35時間しているわけですけれども,聞く・話すだけであれば何とかその時間でクリアできるのかなと思いますが,読む・書くという学習が入ってくると週35時間ではやはり無理だと思います。ですから,先ほど投野委員から見せていただいた中にも,聞く・話すはあるけれども,読む・書くという部分がほとんどないという話がありましたけれども,やはり読む・書くということが高校,中学校,小学校の英語科という中で必要だと考えるならば,やはり週,あるいはトータルで70時間という確保は絶対必要であると考えます。
【吉田主査】  時間もあれですけれども,では渡部委員,最後に。
【渡部委員】  関連するんですが,読んだり,書いたりすることが入ったから35時間増えたんだ,という発想でいいのかというところを考える必要があると思います。つまり,4技能を含めて展開をしていく,言語活動を充実させるというのがプラス35時間の意味ではないか。現場の先生方が,プラス35時間になったのは書くことと読むことが増えたからという発想になってしまうと,恐らくそういった教材が売られ,モジュールに適した様々な教材が飛ぶように売れ,それをたくさん使う学校が出てくるというのはもう見えているのではないか。やはりその70時間は言語活動の充実であるというところで,もちろん読むこと・書くこと,どういうことをするかということも示さなければいけないんだけれども,今までの「Hi ,friends!」と何が違うのか,どういった言語活動の充実があるのか。例えば,これまでの「Hi ,friends!」のレッスン5に,書いたり,読んだりする言語活動がこのように入ってくるんだ,だから時間が増えてくるんだという発想で捉えていく必要があるのではないかと感じました。
【吉田主査】  ありがとうございます。
今,おっしゃったことと関連するのは,先ほど酒井委員が示してくださったデータだと思うんです。やはり単なる読み書きが入るからということではなくて,本当に充実した言語活動を行うためには,今の35時間の体験授業だけでは無理だという発想だと,私としては理解をしています。
まだいろいろ御議論はあると思いますけれども,時間にもなりましたので,本日はここまでとしたいと思います。
本日お出しいただいた御意見については,事務局の方で検討事項ごとに,その趣旨を整理していくようにお願いしたいと思います。なお,教育課程企画特別部会の論点整理において,小学校について時数の在り方を含めた教育課程全体にわたる検討を行い,平成27年内から28年当初をめどに一定の結論を得るとの指摘がありますので,外国語ワーキンググループにおいても何らかの一定の論点を報告できるようにしたいと思いますので,次回,今までの御意見を事務局の方で整理したものを基に御議論を頂きたいと考えております。よろしくお願いします。
本日の検討事項については次回も議論を深めていただく予定ですが,限られた時間内での討論でしたので,更に御意見など,お気付きの点がありましたら,ペーパーで事務局の方にお送りいただければと考えております。
最後に,次回以降の日程について,事務局の方から説明をお願いいたします。
【圓入室長】  それでは,資料6を御覧いただきたいと思います。
次回は,12月21日,月曜日,15時から17時でございます。場所は,15F特別会議室でございます。先ほど吉田主査からお話ありましたように,内容といたしましては,第3回会議までの御意見等の一旦のまとめを御用意させていただいて,御議論いただければと思っております。
また,最後に種村委員から挙手があったのを,お時間がなくて申し訳なかったんですけれども,この後,月,火にかけて,皆様方からも御意見あれば追加で,ペーパーでもメールでもお電話でも結構でございますので,是非お伺いをさせていただいて,まとめにさせていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
【吉田主査】  失礼しました。ちょっと見えなかったので,申し訳ないです。
それでは,本日の外国語ワーキンググループを終了させていただきたいと思います。お忙しいところ,今日はお集まりいただきまして,ありがとうございました。

―― 了 ――

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