資料5 言語能力について(整理メモ)

資料5言語能力について(整理メモ)

1.言語能力について

言語の果たす役割は、これまでの各種会議等の議論の成果を踏まえ、以下の三つの側面から捉えることができる。
1 創造的思考(とそれを支える論理的思考)の側面
2 感性・情緒の側面
3 他者とのコミュニケーションの側面
→言語に関する資質・能力には、この三つの側面があり、これらの側面から「言語能力」を整理してはどうか。

※本整理メモにおいて、「言語」は、日本語(国語)及び外国語のことを指す。広義の「言語」に含まれ得る、数字や音符などの言語記号以外の言語、グラフ、式、表などを指し示すときは、その都度、それらを明記することとする。
※言語には、具体的な発声や文字による言語活動である一般的な言語(外言語)の機能のほか、音声や文字を伴わない、思考や概念、それらの体系の獲得・操作を行う内なる言語(内言語)の機能があり、三つの側面のいずれにおいても、これらの機能が働いていることに留意する必要がある。

2.資質・能力の育成と言語能力との関係について

・子供は、乳幼児期から身近な人との関わりや生活の中で言語を獲得していき、発達段階に応じた適切な環境の中で、言語を通じて新たな情報を得たり、思考・判断・表現をしたり、他者と関わったりする力を獲得していく。このように、言語は、子供たちの学習や生涯にわたる生活の中で、極めて重要な役割を果たしている。
・言語能力は、国語科や外国語科のみならず、全ての教科等における学習の基盤となるものである。例えば、「論点整理」が提示した資質・能力の三つの柱に照らせば、以下のように考えることができる。

1 個別の知識・技能

・学習内容は、多くが言語を用いて表現されており、新たな知識の獲得は基本的に言語を通じてなされている。
・言語を通じて、知識と知識の間のつながりを捉えて構造化することが、生涯にわたって活用できる概念の理解につながる。
・具体的な体験が必要となる技能についても、その熟達のために必要な要点等は、言語を用いて伝えられ理解されることも多い。

2 思考力・判断力・表現力等

・教科等の本質に根ざしたものの見方や考え方の獲得は、各教科固有の学びのプロセスを通じて行われる。このプロセスにおいては、情報を読み取って吟味したり、既存の知識と関連付けながら自分の考えを構築したり、目的に応じて表現したりすることになるが、いずれにおいても言語を通じて行われる。

3 学びに向かう力、人間性等

・子供自身が、自分の心理を意識し統制していく力や、自らの思考のプロセスを客観的に捉える力(いわゆる「メタ認知」)の獲得は、心理や思考のプロセスの言語化を通じて行われる。
・言語を通じて他者とコミュニケーションをとり、相互の関係を築いていくことにより、思いやりや協調性などを育むことができる。
→言語は、全ての教科等における資質・能力の育成や学習の基盤として重要な役割を果たしており、言語能力の向上は、学校における学びの質や、教育課程全体における資質・能力の育成の在り方を左右する、重要な課題として受けとめる必要がある。

3.他の様々な資質・能力との関係について

○コミュニケーション能力との関係

・コミュニケーション能力については様々な定義があるが、文部科学省の有識者会議においては、「いろいろな価値観や背景をもつ人々による集団において、相互関係を深め、共感しながら、人間関係やチームワークを形成し、正解のない課題や経験したことのない問題について、対話をして情報を共有し、自ら深く考え、相互に考えを伝え、深め合いつつ、合意形成・課題解決する能力」と定義されている。
・この定義を言語の果たす役割に照らして整理すれば、コミュニケーション能力については、3 他者とのコミュニケーションの側面を軸としつつ、他の側面(1 創造的思考(とそれを支える論理的思考)の側面、2 感性・情緒の側面)にも支えられた能力として育成される必要があることが分かる。
・コミュニケーション能力は、話す・聞く・書く・読むといった言語活動のほか、非言語による伝達手段(イメージ、音、身体)も含めた広範な活動に関わるものである。このため、「コミュニケーション能力」の向上には、言語能力のほか、非言語能力の向上も必要である。

○非言語能力との関係(イメージ、音、身体)、言語の限界について

・人間のコミュニケーションや創造的思考などの諸活動は、言語によってのみ支えられているものではなく、言語以外にも、形や色などのイメージや、身体の動き、音の強弱やリズムなどの多様な手段が関係している。
・こうした多様な非言語的な手段による諸活動に関する資質・能力を、言語能力と相互に関連させながら高めていくことは、感性や情緒等を豊かなものにしていくことにもつながる。このため、学校教育を通じて、芸術教育や体育等の充実を図ることも不可欠である。

○言語活動と体験活動との関係
・言語能力の育成のためには、実際に言語を用いて行う言語活動を各教科等において充実させるとともに、体験活動を通じて、実社会の中で様々な事象に触れたり、多様な他者との交流の機会を持ったりすることも重要であり、アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善の中で、それらの充実を図っていく必要がある。

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初等中等教育局 教育課程課/国際教育課

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