教育課程部会 言語能力の向上に関する特別チーム(第2回) 議事要旨

1.日時

平成27年12月18日(金曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

中央合同庁舎第7号館 文部科学省3階3F2特別会議室

3.議題

  1. 国語科及び外国語科・外国語活動を通じた言語能力の育成について
  2. その他

4.議事要旨

1.「国語科」及び「外国語科・外国語活動」を通じて育成すべき言語能力について

(1)育成すべき資質・能力の可視化について

個別の知識や技能

 これまで国語科においては、知識・技能と思考・判断・表現は、截然とは分けられないと言ってきているが、例えば、思考・判断・表現のうち、何ができるかといった基礎的な部分については、知識・技能に移すことがあり得るのではないか。

 文化的背景によってコミュニケーションがうまくいかないことが多々生じることを考えると、文化という側面についての知識・理解が必要と思われる。

 既に生徒たちが持っている各教科の知識や、文化や社会における既有知識を、「個別の知識や技能」に位置付けた方が、それらを使って思考・判断・表現をどう行うか、ということを前面に打ち出すことができると思う。また、列挙されているような知識については、概括的にまとめて記載した方がよい。

思考力・判断力・表現力等

 「感性・情緒」や「コミュニケーション」を含めて「知的活動」と捉える人もいるため、「知的活動の側面」については、クリエイティブにものを考えるという「創造的思考」を前面に出して、下位項目として「論理的思考に支えられた」と整理してはどうか。

 発信者の適否や情報の信憑性をはかる力、相手の言説・言論を妄信しない姿勢を育成する力を加えて欲しい。

 学校現場では、批判的思考力をどう育成していくかが議論されている。その点では、情報を吟味する力、情報を比較する力や、表現するときに具体化、抽象化、階層化していく力が必要だと考える。

 「感性・情緒の側面」に、自由にイメージを思い描く“イマジネーション”の想像力を入れていただきたい。

 「感性・情緒の側面」に「言葉によって自分の思いや感情を意識化し」を記載し、自分の感情をコントロールする働きが読めるようにして欲しい。

 コミュニケーションの基本は、自分が話したときに相手の心は一体どうなのかと、人の心を理解することなので、「コミュニケーションの側面」のところは、「他者の心を想像する力」というふうにまとめてはどうか。

 テクスト・情報の理解として、書き手や話し手の言いたいことを捉えるとともに、その述べ方や語り方が、分かりやすいのか分かりにくいのかといった価値付けしていく力も必要だと思う。

 新しい情報と既知の事象・経験の中から、自分で新たな問いを立てる、問いを見出すということが非常に重要なので、言説の中から、新たな思考が生まれる、問いが生まれるということを組み込んでいただきたい。つまり、起承転結の「転」にあたるような、パラダイムを変える力、概念枠を仕切り直していく力といった、新たな展開を示す力を、もう一つの柱として位置付けるべき。

学びに向かう力、人間性等

 「心を豊かにしようとする態度」には、自分の感情をコントロールする働きも含まれていると思う。

 知識基盤社会が進んでいく中で、常に言葉の力を伸ばしていかなければならないことを考えると、学校教育が終わってからも、言語能力そのものを豊かにしていく姿勢も必要である。

 言語の機能というのは人を傷つける機能もある。いま、学校で最も問題になっている、いじめやコミュニケーションに困難を抱える子がいるという問題は、この言語に関する資質・能力に関わっている。言葉がネガティブに使われた時の耐性などについても、何らか形で記載して欲しい。

 言葉という道具を使うことで、情報が理解できたり、他人と理解し合えたりできるのだという、諦めない態度というものも加えて欲しい。

 ネットなどには様々な言葉が飛び交っているが、そのような言葉の有り様に絶望したり、軽視したりするのではなく、それでも言葉を信頼し、言葉を使って社会に関わっていこうとする態度を加えて欲しい。

 「言語文化に対する関心」の「言語文化」が何を意味しているのか分かりにくい。国語や英語で言葉そのものを学んだとしても、その背景にある社会的・文化的な規範を理解してないと、生活の中で言語を適切に使っていくということは難しい。こうした社会的能力としての言語スキルという視点も考える必要がある。

三つの柱の関係について

 個別の知識や技能に位置付けられるものは、小学校低学年が多く、発達段階が上がるにつれて段々少なくなっていき、逆に、思考力・判断力・表現力等に位置付けられるものは、発達段階が上がるにつれて段々多くなっていくと思われる。

 「個別の知識や技能」はコンテンツベースの能力を、「思考力・判断力・表現力等」はコンピテンシーベースの能力を示していると思われるが、この両方をバランスよく付けていくことが大事である。

 まず知識を覚え、別の段階で、知識の運用を学習するというような印象を与えてしまわないよう配慮して欲しい。知識は、運用を通じて獲得されるものであるという知識観を伝えたいと思う。

 「学びに向かう力、人間性等」は独立してあるものではなく、「個別の知識や技能」と「思考力・判断力・表現力等」をバランスよく育成しながら、最終的にはそれを統括する形で、実社会・実生活に向き合える能力として示されるものである。

認知と思考のプロセスのイメージについて

 資料のような時系列的な図示は、教室の中で教科書を前にした時などにはリアリティがあるが、実際の私たちの日常では、共時的に色々なことが起きたり、何度も繰り返されていたりすることが分かるように、丸い構図あるいはらせん状の構造など、図示を工夫して欲しい。

 テクスト・情報の理解において、構造や内容を把握するのは、左から右へのボトムアップのプロセスであり、解釈したり仮説を形成したりするのは、右から左へのトップダウンのプロセスだと考えると、認知と思考のプロセスとして図示することができるのではないか。

 思考の深化を考えた場合、「推敲」は、単に誤字や言い回しの修正という低レベルなものだけでなく、内容や文章の再評価という大きな変更もあるように、非常に重要なことなので、もっと強調してはどうか。

 発達段階を考えた場合、その質的な変化は、認知の自動化と思考の深化という形で捉えることができるのではないか。

(2)他教科における言語能力の育成との関係について

 全ての教科において、教え込みではなく、生徒の気づきを通して、いかに教科の本質に根ざした深い学びをしていくかを考えたときに、この認知と思考のプロセスは、全ての教科で働いている言語的な学習を下支えしているプロセスと捉えることができるのではないか。

2.言語能力を向上させるための、「国語科」及び「外国語科・外国語活動」相互の連携について

 文字や語の意味などの言語を構成する要素は大切ではあるが、それぞれの要素を独立して覚えることが言語能力の育成になるのではない。それらの要素全体がシステムとしてダイナミックに働いていることに気付くこと、また、気づきに導けるようなカリキュラムや教え方の工夫が必要だと思う。母語では無意識に行えているが、外国語の学習には、こうした意識を国語と連携して育てていくことが、個別の知識を覚えることよりも重要である。

3.その他

 コミュニケーションは、言語だけで行われているものではないため、言語という枠組の中に、コミュニケーションの全てを入れ込むことは難しいのではないか。「コミュニケーション」という言葉自体に解釈の違いを感じるので、どこかで統一的な見解を示した方がよい。

 「言語能力」や「コミュニケーション」という言葉の定義が曖昧だと思われるので、議論するための共通理解が必要である。

以上。

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