教育課程部会 言語能力の向上に関する特別チーム(第1回) 議事録

1.日時

平成27年10月22日(木曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

中央合同庁舎第7号館東館 文部科学省3階3F1特別会議室

3.議題

  1. 国語科及び外国語科・外国語活動を通じた言語能力の育成について
  2. その他

4.議事録

【平野教育改革調整官】
 皆様、おはようございます。定刻となりましたので、ただいまより中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会言語能力の向上に関する特別チームを開催させていただきたいと思います。
 開会に当たりまして、文部科学省初等中等教育局長の小松親次郎より御挨拶申し上げます。

【小松初等中等教育局長】
 皆様、おはようございます。お忙しいところにこのチームへの御協力をお引き受けいただきまして、また本日も御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 それで、御挨拶ということですけれども、時間ももったいないかと思いますので、簡潔にここのチームにお願いしたいことの趣旨等を申し述べまして、その説明をもって御挨拶に代えさせていただきます。
 まず、私ども文部科学省では、現在、教育課程学習指導要領の全面改訂に向けて、中教審において審議をしていただいているわけですが、これは昨年11月の中教審の総会において諮問させていただいたわけでございます。半年以上がたって、間もなく1年になろうかということでございますが、この諮問に基づきまして、中教審全体の中で初等中等教育を担当する分科会の中に、教育課程部会というものがございます。この下に特別部会を設けて、これまで14回の審議をして、今年8月に論点整理というものが、全体についてまとめられたということでございます。これは、いわば共通基盤とか、横串ということで、この教科を横断的に考えるものでございます。本日の資料の中にも、緑色の冊子でございますけれども、あろうかと思います。
 そこで、これを受けまして、この秋から各学校段階、それから各教科等における改訂等の基本的な方向性も含めて、大括りなところは示されていますけれども、それを掘り下げて、各部会やワーキングチームにおいて具体的な議論に深めていただくということをお願いするという段階に達したわけでございます。
 そこで、この特別チームでは、言語能力の向上という観点から議論をお願いしたいということでございます。
 併せまして、国語教育、それから外国語教育、それぞれの検討がワーキングチームで進められますけれども、その検討をいわばつなぐ結節点の役割を併せてお願いしたいと考えているわけでございます。
 今後のスケジュールでございますけれども、本特別チームの議論は、今年度末まで、来年の3月頃までに大体四、五回程度開催させていただいて、一定の方向性をお示しいただきたいと考えております。その御議論の結果につきましては、教育課程部会等での議論を踏まえて、最終的に中教審として来年度中、平成28年度中にお取りまとめを頂く全体の答申に反映させていただく、こういうふうに進めてまいりたいと思っております。
 委員の皆様方におかれましては、是非それぞれの御知見、御見識、あるいは御経験等を踏まえ、様々な観点から率直に忌憚のない御意見を頂ければ大変有り難く存じますので、是非よろしくお願い申し上げます。
 どうぞよろしくお願いいたします。

【平野教育改革調整官】
 失礼いたします。
 続きまして、議事に先立ちまして、本部会の主査及び主査代理について御報告させていただきたいと思います。
 資料2の初等中等教育分科会教育課程部会運営規則にございますとおり、本特別チームにおきましては、教育課程部会の決定により設置されているところでございまして、主査及び主査代理については、教育課程部会長が指名するということとされているところでございます。教育課程部会長と御相談いたしまして、本特別チームの主査には亀山郁夫委員を、そして主査代理にはロバート・キャンベル委員をお願いしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、次に委員の皆様の御紹介をさせていただきたいと思います。資料1として、本特別チームの名簿を配付させていただいておりますので、それに沿って御紹介させていただきたいと思います。
 まず、主査をお務めいただきます、亀山郁夫主査でございます。

【亀山主査】
 亀山です。どうぞよろしくお願いします。

【平野教育改革調整官】
 続きまして、主査代理をお務めいただきます、ロバート・キャンベル委員でございます。

【キャンベル主査代理】
 ロバート・キャンベルです。よろしくお願いいたします。

【平野教育改革調整官】
 続きまして、酒井邦嘉委員でございます。

【酒井(邦)委員】
 酒井です。よろしくお願いします。

【平野教育改革調整官】
 続きまして、酒井英樹委員でございます。

【酒井(英)委員】
 よろしくお願いします。

【平野教育改革調整官】
 続きまして、島田康行委員でございます。

【島田委員】
 島田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

【平野教育改革調整官】
 続きまして、高木展郎委員でございます。

【高木委員】
 高木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【平野教育改革調整官】
 続きまして、中村和弘委員でございます。

【中村委員】
 中村と申します。よろしくお願いいたします。

【平野教育改革調整官】
 続きまして、松本茂委員でございます。

【松本委員】
 松本です。よろしくお願いいたします。

【平野教育改革調整官】
 続きまして、矢原豊祥委員でございます。

【矢原委員】
 矢原でございます。よろしくお願いいたします。

【平野教育改革調整官】
 続きまして、山脇晴子委員でございます。

【山脇委員】
 山脇晴子と申します。よろしくお願いいたします。

【平野教育改革調整官】
 吉田研作委員でございます。

【吉田委員】
 吉田です。よろしくお願いいたします。

【平野教育改革調整官】
 福田由紀委員でございます。

【福田委員】
 福田です。よろしくお願いいたします。

【平野教育改革調整官】
 なお、本日遅れて出席される西辻正副委員、それから、本日御欠席でございます今井むつみ委員、田中牧郎委員、松川禮子委員が本特別チームの委員に就任されております。
 委員の紹介は以上でございます。
 次に、文部科学省の関係者を御紹介させていただきます。
 先ほど御挨拶させていただきました、文部科学省初等中等教育局長の小松でございます。

【小松初等中等教育局長】
 どうぞよろしくお願い申し上げます。

【平野教育改革調整官】
 文部科学省初等中等教育局教育課程課長の合田でございます。

【合田教育課程課長】
 どうぞよろしくお願い申し上げます。

【平野教育改革調整官】
 初等中等教育局主任視学官の清原でございます。

【清原主任視学官】
 よろしくお願いいたします。

【平野教育改革調整官】
 国際教育課外国語教育推進室長の圓入でございます。

【圓入外国語教育推進室長】
 よろしくお願いいたします。

【平野教育改革調整官】
 教育課程課教育課程企画室長の大杉でございます。

【大杉教育課程企画室長】
 よろしくお願いいたします。

【平野教育改革調整官】
 教育課程課の小林でございます。

【小林教育課程課課長補佐】
 よろしくお願いします。

【平野教育改革調整官】
 教育課程企画室の小野でございます。

【小野教育課程企画室専門官】
 よろしくお願いします。

【平野教育改革調整官】
 それから、私が平野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入ります前に、亀山主査、ロバート・キャンベル主査代理から一言ずつ御挨拶いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【亀山主査】
 グローバル化時代、そして少子高齢化時代という困難な時代にあって、いかに1人1人、日本人が頑張っていくかということが、恐らくは21世紀の我々の大きな課題であろうと認識しております。とりわけ、いかに1人1人が自分自身の持っている考えや、あるいは感じ方、感じたものを言語化し、それを他に伝えていくか、あるいは、いかに、たとえばグローバルな商取引のレベルで自分自身をアピールし、主張を展開するか。いずれも言語能力の根幹に関わる問題であると認識しております。
 ただ、一方で言語能力の向上といったものが、人間が本来持っているべき他者への共感力とでも言うべきもの、エンパシーとでも言いましょうか、そういったものと豊かに一体化して、初めて意味をなすものであると考えております。そういった視点を常に忘れないようにしながら、この言語能力の向上に関する特別チームでの議論をリードしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【キャンベル主査代理】
 このたびは、四、五回という短い回数ではありますけれども、言語能力、あるいは言語活動というものを小・中・高と、教育の中で見据え、あるいは見直し、いかにそれを強化できるかということを、ここで一番求心力といいますか、最も具体的に議論をし、打ち出し、答申すべき場であると理解しています。
 言語活動というもの、あるいは言語能力というものを1つの言語、例えば母語である生徒たちの日本語、国語教育ということを中心に据えられるだろうと思いますけれども、このたびの我々のチームに課せられているというのは、外国語、例えば英語を含めて、それをより俯瞰的に、統括的に言語の活動の根幹、そしてそれを国語と英語の間に、あるいはそれを通して、横断するような形で教育的な方法、手段、そしてそれを学ぶことによって、若い人たちが他者とのコミュニケーション――日本人はコミュニケーションが、特に他者に対して、あるいは他者とともに仕事をする、生きる中では、弱点だと言われて久しいわけです。それをより統合的なインタラクティブな形で考え直す、あるいは教育の現場で捉え直す大変貴重な希有な機会だと理解しています。具体的に、そして実際に結実する、実りあるチームに、あるいは報告ができるように進めていきたいと思います。是非よろしくお願いいたします。

【平野教育改革調整官】
 ありがとうございました。
 それでは、本特別チームの進行は、これより亀山主査にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【亀山主査】
 では、これより議事に入ります。
 初めに、本部会の審議等につきましては、初等中等教育分科会教育課程部会運営規則第3条に基づきまして、原則公開により議事を進めさせていただきます。また、同6条に基づきまして、議事録を作成し、原則公開するものとして取り扱いたいと思っております。どうそよろしくお願いいたします。
 なお、本日は報道関係者より会議の撮影及び録音の申し出がございます。これを許可しておりますので、御承知おきください。
 なお、テレビカメラによる撮影等につきましては、申し訳ございませんが、ここまでとさせていただきます。
 では、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【平野教育改革調整官】
 失礼いたします。
 本日は、議事次第に記載しておりますとおり、資料1から資料10、そのほか、机上に参考資料を配付させていただいております。1つ1つ確認はいたしませんけれども、議事の途中でもし不足等がございましたら、事務局までお申し出ください。どうぞよろしくお願いいたします。
 なお、一部の資料につきましては、メーンテーブルの委員限りの資料とさせていただいている資料がございます。色付きの附箋が張ってある資料でございますが、お帰りの際は机上に置いたままにしていただけますよう、お願いいたします。
 なお、机上にタブレット端末を置いてございますけれども、その中には本特別チームの審議に当たりまして、参考となります資料等がデータで入っているところでございます。それから、本部会の設置に係りまして、新たに中央教育審議会初等中等教育分科会の委員に御就任いただきました先生方におかれましては、机上に辞令をお入れした封筒を置かせていただいておりますので、御確認をお願いいたします。

【亀山主査】
 では、諮問、教育課程企画特別部会論点整理、改訂の検討体制、今後のスケジュール等につきまして、事務局から説明をお願いいたします。

【大杉教育課程企画室長】
 失礼いたします。
 それでは、私から今回御議論いただく内容の背景となりますことを、特に教育課程企画特別部会の論点整理を中心に御説明をさせていただきたいと思います。お手元に、先ほど局長から申し上げました緑色の冊子、それから、まずは資料5、資料6をお出しいただければと思います。
 まず、資料5、資料6から御説明させていただきますけれども、今回言語能力の向上に関する特別チーム、本チームでございますけれども、この位置付けにつきましてでございます。
 資料5、1枚おめくりいただきますと、体制図が掲載されてございます。ごらんのように、中央教育審議会次期改訂に向けて検討する教育課程部会、それから、全体を横串を通して見ていただいております教育課程企画特別部会の下に22の専門部会を設置させていただくということでございます。これら、それぞれ学校種別、教科別等の議論をこれから深めてまいりますけれども、それら全てを横串を通すような形で、教育課程企画特別部会、教育課程部会で取りまとめていくということになってまいります。
 本特別チームの位置付けでございますけれども、下の左側から3番目。ここに言語能力の向上に関する特別チームがございます。この特別チームに関しましては、後ほど御説明する論点整理の方向性に基づきまして、国語ワーキンググループ、外国語ワーキンググループ、それぞれの議論をつなぐような御議論を頂ければと考えているところでございます。
 スケジュールにつきましては、資料6でございます。今後のスケジュールということでございますけれども、ここに至るまでの経緯を、まず御説明申し上げますと、昨年11月に中教審に対しまして文部科学大臣から、次期改訂に向けた検討を開始していただく諮問をさせていただいているところでございます。それに基づいて、先ほど体制図にございました教育課程企画特別部会の方で14回にわたり御議論を重ねていただきました。本年8月26日におまとめいただいたのが緑色の冊子の論点整理になってまいります。
 この方向に基づきまして、先ほどごらんいただいた22の専門部会におきまして、それぞれ専門的な御検討を頂き、年度末、年度明けをめどに、それぞれの教科別、学校段階別の議論をお取りまとめいただくということとなっております。
 それを受けまして、さらに教育課程部会、又は教育課程企画特別部会におきまして、全ての議論をお取りまとめいただきまして、審議のまとめをお出しいただき、平成28年度内に中教審としての答申をお出しいただくというスケジュールでございます。
 一部、授業時数に関わる部分につきましては、年内から年明けに一度、取りまとめを頂くというような部分もございますけれども、大きなスケジュールとしては、このような形でございます。そして、このようなスケジュールで進めていただきました場合、幼稚園、小・中学校、それぞれ下の丸にあるようなスケジュールで実際の学校現場での実施という運びとなるというこでございます。
 それでは、緑色の冊子に基づきまして、論点整理の内容を時間の許す範囲内で御説明をさせていただければと存じます。
 論点整理、冊子をお開きいただきますと、まず目次がございます。目次をおめくりいただきました後、本文がずらっとございまして、それが53ページまでございます。その後、企画特別部会の委員名簿がございまして、1枚緑色の紙をおめくりいただきますと、企画特別部会を含めまして、8月の論点整理取りまとめに至るこれまでの議論の経緯を掲載させていただいております。
 さらに、1枚緑色の紙をおめくりいただきますと、先ほど申し上げた昨年11月の大臣の諮問がございます。これをまず少し振り返るような形ですけれども、ごらんいただければと思います。
 1枚おめくりいただきますと、理由という形で、今回次期改訂に向けた諮問をさせていただいております理由を掲載させていただいております。これからの子供たちが成人して社会で活躍する頃、ますます将来の予測ということが困難な時代になっていくであろうということ。1人1人の力を原動力としながら、新たな価値を生み出していくということがますます求められる。そのような中で、子供たちにどのような力を育んでいくべきか。また、その中で教育の在り方はどうあるべきかということでございます。これまでの前回改訂、現行の学習指導要領でございますけれども、確かな学力をバランスよく育てるということ。言語活動などを含めて、学校現場では真摯な取組が重ねられてきているということ。その成果の一端として、学力の改善傾向ということが指摘されていること。一方で、例えば社会参画の意識でありますとか、根拠を示しながら自分の考えを展開していくということに関しては課題が指摘されているのではないか。それから、これからの社会の在り方を考えれば、ますます自分の得意分野を伸ばしていくという教育も求められるのではないか。そのような中で、次のページになりますが、1人1人の可能性をより伸ばし、未来に向けて学習指導要領の改善を図っていくということ。これまでのESDなども含めた様々な取組の成果なども踏まえながら、何を教えるかという知識の質や量の改善はもちろんのこと、どのように学ぶか、そしてどのようにそれを力として身に付けていくのか、このような方向性での検討をお願いしたいという諮問でございます。
 主に具体的には3つということでございます。第1に、教育目標の内容と学習指導方法、学習評価の在り方を一体として捉えて、新しい時代にふさわしい学習指導要領の基本的な考え方がこの論点整理で方向性をおまとめいただいたということでございます。
 それから、次、おめくりいただきまして、それらを踏まえつつ、新たな教科課目の在り方、既存の教科課目の見直しについて、どのように考えていくか。これがまさにこれから具体的に各22の専門部会でお願いするということでございます。
 それから、最後に次のページの下になりますけれども、こうした理念を実現するためには、様々カリキュラムマネジメントという各学校での教科全体を見渡した学校運営、教育活動のマネジメント、それから評価方法や学習指導方法の改善、様々な教育環境の整備も必要になってまいりますので、これも併せて御検討を頂きたい。これが大まかな諮問の内容となっているところでございます。
 こうしたことを受けまして、14回にわたり御議論を頂き、おまとめいただいた論点整理が、この冊子の冒頭に戻っていただきまして、この内容になっているわけでございます。
 この冊子の冒頭にお戻りいただきまして、目次を1枚おめくりいただきますと、1ページということで、「2030年の社会と子供たちの未来」ということでございます。先ほど申し上げたスケジュールでまいりますと、小学校におきまして、新しい学習指導要領は2020年からの開始が予定されております。おおむね10年に1回の改訂ということでございますと、おおよそ2030年頃まで、新しい学習指導要領はその役割を担う。その頃の社会の在り方というのはどうなっているのかという御議論を重ねていただき、おまとめいただいております。
 その中で、重要な理念としてお出しいただきましたのが3ページ目、「社会に開かれた教育課程」ということでございます。学習指導要領、教育課程全体としてこの方向性を目指していこうということでございますけれども、3ページ目の下にございますように、「社会に開かれた教育課程」、世界や社会の変化を幅広く視野に入れ、よりよい学校教育を通じて、よりよい社会を創るという目標を社会と共有していくというための教育課程。
 それから、4ページ目の上でございますけれども、これからの社会に出ていく子供たちに求められる力をしっかりと育んでいく教育課程。それから、教育課程の実施に当たって、様々な地域と連携したり、学校教育を学校内に閉じずに、目指すところを社会と共有・連携しながら実現する教育課程。こういったことが大きな方向性として打ち出していただいているところでございます。
 5ページ目からが、そうした教育課程を目指すに当たって、「前回改訂の成果と次期改訂に向けた課題」ということでございますけれども、学習指導要領は時代の変化に応じて改訂を積み重ね、その積み重ねの上に現在の学習指導要領があるわけでございますけれども、直近の改訂、平成20年、21年に行われた改訂では、子供たちの生きる力の育成をより一層重視するという観点からの見直しが行われ、確かな学力をバランスよく育むということ。それから、今回の特別チームの御議論と一番関連の深いところといたしましては、この5ページの丸の4つ目にございますような、習得・活用・探求という学習過程の中で、学級やグループで話し合い、発表し合うなどの言語活動の重視ということを前回改訂で打ち出されたところでございます。
 この言語活動について、少し補足的に御説明させていただきたいと思います。資料7-1、A3の大きい資料になりますけれども、資料7-1をごらんいただければと思います。前回改訂での言語活動が取り入れられるに至った、それまでの議論の背景を少し御説明させていただきます。資料7-1「言語能力に関するこれまでの議論について」でございます。ここに、これからの時代に求められる国語力についての文化審議会答申、それから、言語力育成協力者会議の報告書、それから、前回改訂に向けた、平成20年の答申、この3つを抜粋させていただいております。
 本体は、この資料の後ろに付けておりますので、適宜御参照いただければと存じますが、その内容を簡単に申し上げますと、これからの時代に求められる国語力についてという文化審議会の答申の中では、個人にとっての国語という中で、知的活動の基盤をなすということ。それから、感性・情緒の基盤をなすということ、コミュニケーション能力の基盤をなすという3つについて、国語力ということの整理がなされ、また、その国語力の構成といたしまして、理解する力、特に考える力、感じる力、想像する力、表す力ということを整理していただいているところでございます。
 また、それらをしっかりと育んでいくための基盤となるものといたしまして、その枠の下にございます、考える力、感じる力、想像する力、表す力の基盤となる国語の知識、漢字や語彙、文法や表現に関する知識など、それから生涯を通じて形成されていく教養・価値観・感性など、こうしたものを基盤としながら、国語力が育まれていくという答申を出していただいているところでございます。
 こういったものを受けまして、平成19年に言語力育成協力者会議におきまして、言語の果たす役割と、その力を育んでいくための指導の充実につきまして御議論いただいたところでございます。言語の果たす役割につきましては、国語力に関する文化審議会答申を受け継ぐ形で、知的活動の基盤、感性・情緒の基盤、他者とのコミュニケーションの基盤ということ。それから、こうしたことを育んでいくためには、知的活動に感すること、感性・情緒等に関すること、他者とのコミュニケーションに関すること、それぞれごらんのような指導の充実を図っていく必要があるということ。そうして、こうした指導の充実は国語科を中核としつつ、全ての教科で育んでいく必要があるということ。こうしたことをおまとめいただいたところでございます。
 こうしたことを受けまして、中教審でおまとめいただいた前回改訂の答申の中では、言語の役割、議論を受け継ぐような形で、言語活動として丸1から丸6まで、主に丸1が中心的には感性・情緒に関すること。それから、丸2から丸5が中心的には知的活動に関すること。丸6の部分がコミュニケーションに関することということを主に念頭に置いたことでございます。丸1から丸6のような活動を国語科のみならず、全ての教科において行っていくということを言語活動の充実として打ち出し、現行の指導要領改訂に盛り込ませていただいたという状況でございます。
 長くなりまして恐縮ですけれども、論点整理の方にお戻りいただきますと、緑色の冊子5ページ目でございます。こうした経緯を経て、今回、現行の指導要領の中の言語活動ということが盛り込まれたということでございます。そして、そのページの下にもございますように、こうした学力のバランスの取れた育成、言語活動の充実、重視ということについては、学校現場で様々な成果が現れつつあるという認識でございます。
 一方で、「次期改訂に向けての課題」ということでございますけれども、6ページでございます。こうした取組が着実に成果を上げつつある一方で、諮問にもございましたような、例えば根拠を明確にして論じるということでありますとか、社会に参画していろいろなことに挑戦して変えていくということに関しまして、子供たちに課題が指摘されている。子供が自らの力を育み、能力を引き出し、主体的に判断し行動するというところまでには、必ずしも十分に達していないのではないか。それは、生きる力ということ、学力、体力、豊かな心をトータルで育んでいくということが教育課程への浸透、具体化というのが、まだ十分ではなかったということがあるのではないか。これをさらに今回の成果の上に、一歩進めていく必要があるのではないか。
 6ページの一番下でございますけれども、各教科等を貫く改善の視点として、言語活動の充実を掲げ、教科の枠を超えた具体的な展開を求めたことによって成果が得られつつあると。これをさらに教育課程の全体像を念頭に置いた教育活動の展開という観点から一層の浸透や具体化を図る必要がある。それには、学習指導要領や、それを基に編成される教育課程の在り方について、さらなる見直しをしていこうということでございます。
 続きまして、今回、子供たちに育むべき資質、能力ということにつきまして、どのような整理が論点整理でなされているかということでございます。12ページでございます。12ページ冒頭、将来の予測が困難な複雑で変化の激しい社会、グローバル化が進展する社会にどのように向き合い、どのような力を育成していくべきか、変化の中に生きる社会的存在として、様々な情報や出来事を受け止め、主体的に判断しながら自分を社会の中でどのように位置付け、社会をどう描くかを考え、他者と一緒に生き、課題を解決していくための力が必要となる。
 それから、13ページ目、グローバル化する社会の中で、言語や文化に対する理解を深め、国語で理解したり、表現したりすることや、さらには外国語を使って理解したり、表現したりするようにできることが必要である。こうした言語に関する能力を向上させていくととともに、古典の学習を通じて、日本人として大切にしてきた言語文化を積極的に享受していくことなども必要である。こういった力が求められていくのではないかというまとめをしていただいているところでございます。
 このように資質・能力、様々あまたあるところでございますけれども、指導要領にこれを構造化していくということに当たりましては、少しこれを構造的に捉えるという整理をしていただいているところでございます。これが後ろの方にいろいろ補足資料という形で、後半、いわゆる私どもがポンチ絵と呼んでおりますカラー刷りの様々な図が載っているところでございます。その後半部分のスライドの27というところをお開けいただければと思います。大体冊子の真ん中あたりになりますけれども、スライドの27というところでございます。ここで育成すべき資質・能力ということを、この三角形のような形で、スライド27の下の部分、何を知っているか、何ができるか、知っていること、できることをどう使うか、そしてそれを基にどのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るかということで整理を頂いているところでございます。こうしたことをベースにしながら、これから様々な教科の検討を進めていくということにさせていただいているところでございます。
 また、その検討に当たりましては、行き来して恐縮ですけれども、本文の方にお戻りいただきまして、15ページでございます。「学習指導要領の構造化の在り方」ということでございますけれども、資質能力全体につきまして、各教科と各教科横断的な視点、その双方を充実させていく必要があるということでございます。
 15ページの下に「教育課程の総体的構造の可視化」ということでございますけれども、国語や外国語といった各教科の文脈の中で指導される内容事項、これをしっかりと明確化し、充実させていくということ。一方で、またそれらが社会的に活用できる汎用的な能力になるような教育課程の構造上の工夫が必要であるということ。すなわち、16ページ目の1つ目の丸にございますように、教科を学ぶ本質的な意義ということと、各教科で育成される資質・能力の関連付けや内容の体系化を図り、資質・能力の全体像を整理していくことが必要である。こういった観点から全体を整理していこうということでございます。ここまでが総論的なことでございます。
 続きまして、各学校種別、それから国語、外国語のそれぞれに関しますことについて、若干触れさせていただきまして、私からの説明を終わりにしたいと思います。まずは学校段階別のところ、28ページをお開きいただければと存じます。
 28ページ目のところ、小学校でございますけれども、「特に」とございますけれども、このページの丸の4つ目でございます。ただし、特に国語や外国語を使って理解したり、表現したりするための言語に関する能力を高めていくためには、国語教育と外国語教育のそれぞれを充実させつつ、国語と外国語の音声、文字、語句や単語、文構造、表記の仕方等の特徴や違いに気付き、言語の仕組みを理解できるよう、効果的に連携させていく必要があるということ。国語教育については、次の丸にあるような充実を図っていくということ。それから、29ページ目の1つ目の丸、外国語活動、外国語科につきましても、ごらんのような充実を図っていく必要があるということでございます。外国語科につきましては、後ほどまた触れさせていただきます。
 1つおめくりいただきますと、中学校、高校もございますけれども、これらにつきましても、同じように言語の力ということはしっかりと育んでいく必要があるということでございます。
 それから、おめくりいただきまして34ページでございますけれども、国語科でございます。34ページの下、「実生活で生きて働き」ということでございますけれども、充実が図られてきているところでございますが、35ページにありますような伝えたい内容を明確にして表現したりということに様々課題があるということ。こうしたことを、今回しっかりと育んでいくためにはどうしたらいいかということ。また、特に高等学校につきましては、科目構成に踏み込んだ改正が必要ではないかということでございます。
 それから、外国語につきましては、42ページからになります。これにつきましては、少し大きい図がございますので、簡単に触れさせていただきます。資料10でございます。資料10をごらんいただければと思います。資料10の1枚目の大きな図で、新たな英語教育のイメージ、論点整理で文章で書かせていただいておりますことを図にしたものがございます。
 この背景といたしまして、資料10の束の一番後ろに、最近の英語教育改革に関する経緯という大きな1枚紙が付いてございますので、まずはこれをごらんいただければと思います。この論点整理に至る前の背景といたしまして、ごらんのような様々な議論が積み重ねられてきているところでございます。第2期教育振興基本計画におきましても、小学校英語早期化や教科化、充実、中学校における英語授業の実施について検討を開始し、見直しを行うということ。また、それを受けまして、平成25年12月には文科省がグローバル化に対応した英語教育改革実施計画ということを発表いたしまして、小学校における英語教育の拡充強化、中・高における高度化といったことを出させていただいております。
 それから、英語教育の在り方に関する有識者会議というところにおきましても、ごらんのような提言をおまとめいただき、小学校中学年からの外国語活動の開始、高学年からの教科化、中学校における充実、高校における充実、それぞれごらんのような御提言を頂いているところでございます。そして、先ほど御紹介させていただいた昨年11月の諮問という中でも、この有識者会議の報告書の提言を踏まえながら御議論いただきたいということが記されていたところでございます。
 こうした背景を踏まえた中で、論点整理をおまとめいただいた中身が資料10の一番頭の紙、これが論点整理の補足資料ということになりますけれども、小・中・高それぞれの充実を図り、成熟社会にふさわしい英語力を育んでいこうということ。中・高におきましては、PDCAサイクルをしっかり回して、資質の向上を図っていくということもございますけれども、こうした小・中・高の全体像の中で充実を図っていくという方向性を打ち出していただいているところでございます。
 小学校につきましては、特に子供たちの知的欲求、現在、聞く・話すを中心とした外国語活動でございますけれども、読む・書くも含めた学習に対する子供たちの知的欲求が高まっているということも様々な調査で分かってきておりますので、これを踏まえて小学校高学年では、聞く・話すに加えて、読む・書くということを年間70単位時間を使ってやっていくということ。それを踏まえて、中学年からなれ親しみの外国語活動を年間35単位時間程度やっていくということ。こうしたことを論点整理としておまとめいただき、今後外国語ワーキングにおいてさらなる議論を深めていただくということになってございます。
 駆け足で恐縮でございますけれども、こういった議論の中身でございまして、論点整理の冊子にお戻りいただき、48ページをごらんいただきますと、今後の検討スケジュールということで、先ほど御説明させていただいたスケジュールを載せてございますけれども、様々なワーキングの検討におきましては、この論点整理を踏まえつつ、教科や学校などに閉じた議論ではなく、カリキュラム全体としてどのような力を育むかということを踏まえながら御議論いただくということになってございます。本特別チームにおきましては、国語と外国語をつなぐという議論を頂くという意味で、この論点整理を踏まえた、かなり象徴的な御議論を頂く大変重要な役割を果たすチームであると受け止めてございます。
 大変長くなりましたが、議論の背景を御紹介させていただきました。ありがとうございます。

【亀山主査】
 ありがとうございました。
 かなり充実した議論がこれまでなされていて、その総括が今なされたわけなんですけれども、今の総括に関しまして、御意見あるいは質問等がございましたらお願いいたします。何でも結構ですので、よろしくお願いいたします。
 続いて、本特別チームにおける検討事項、国語科、外国語科、そして外国語活動における目標、指導内容について、事務局から説明をお願いいたします。

【平野教育改革調整官】
 失礼いたします。
 それでは、資料8-1をごらんいただけますでしょうか。資料8-1につきましては、本特別チームにおいて検討をお願いしたい事項を簡単にまとめさせていただいたものでございます。今回予定しております次期学習指導要領の改訂におきましては、学習指導要領に基づく指導、すなわちそれぞれの教科学習を通じて、あるいは教育課程全体を通じて、子供たちが何を身に付けるのか、何ができるようになるのかということを明確にするとともに、それを実現していくために学校教育において、何をどのように学んでいくべきか、その指導内容と学習の過程、プロセスといったものを明確にしていくということを目指しているところでございます。
 このため、国語と外国語も含めまして、全ての教科等におけるワーキンググループにおきまして、こういったものを明確化していくための議論を並行して進めていくということでございます。一方で、言語能力の育成という観点からは、特定の教科においてのみ育成が図られるという性格のものではございませんで、教育課程全体を通じて育成していく必要があるところでございます。
 この言語能力の育成につきましては、先ほど大杉から説明させていただきましたとおり、これまでにもいろいろと議論を積み重ねてきたところでございまして、こういった議論の成果を踏まえて現行の学習指導要領が作成されているという状況でございます。現行の学習指導要領においては、各教科を通じた言語活動の充実という形で、これが重要な視点として盛り込まれているというところでございます。
 本特別チームにおきましては、これまでの取組をさらに推し進め、言語能力の育成の一層の充実を図っていくという観点から、特に中核を担う国語科と外国語科を通じて育成されるべき言語能力というものを中心に御議論を頂きまして、ここに掲げてございますような個別の知識・技能、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力、人間性等といった3つの柱に沿って言語能力の構造化、可視化というものについて、御議論を賜りたいと考えているところでございます。これがまず1点目でございます。
 2点目でございますけれども、言語能力というものを育成していくという観点からは、国語科、外国語科それぞれにおいてどういった内容を指導していくべきか。その際、どういった言語活動を通じて指導していくのかということが必要でございまして、この点については現行の学習指導要領においてもかなり意識をして記述させていただいているという状況でございます。これをさらに推し進め、整理、構造化していただきたいというのが2点目の検討事項でございます。
 本日、今後の御議論に資するようということでございますが、資料9、資料10ということで、国語科、外国語科に関する資料を御用意させていただいております。ごく簡単に御紹介だけさせていただきます。
 資料9の方は、現在の学習指導要領の記述内容につきまして、ある程度構造的に示させていただいたものでございます。
 また、資料10につきましては、先ほど大杉から説明させていただきましたけれども、こちらは現行のという形ではなくて、次の学習指導要領では、小学校3年生からの外国語活動の導入、それから小学校5年生からの外国語の教科化というものを予定しておりますので、現行という形ではなくて、改訂後の姿をイメージして書かせていただいているものを資料として配付させていただいているところでございます。
 特に英語につきましては、そういったことでかなり諮問前から議論、検討が進んでおりましたので、先ほど大杉から説明させていただきましたとおり、それぞれ小学校、中学校、高校の卒業の段階でどういった能力を身に付けさせるのかという議論が進んでいるわけでございますけれども、こういったものを国語も含め、全ての教科においてこれから議論していく必要があるという状況にございます。
 それから、またこれを身に付けさせるための言語活動というものは、今の学習指導要領にも書いてあるわけでございますけれども、どういった学習課程、プロセスを経てそれぞれ細分化された能力を身に付けさせていくかというところについては、必ずしもまだ十分に整理し切れていないところがございます。こういったところを各ワーキングにおいて検討を進めていただくとともに、こちらの特別チームでも御意見を賜りながら、行き来しながら進めていきたいと考えているところでございます。
 今ほど学習のプロセスということを申し上げましたが、特にイメージが湧きにくいと思いますので、こちらの国語で申し上げますと、資料9の国語の資料の最後に附箋を付け、委員限りの資料として配らせていただいているものでございます。これは、高等学校の国語をイメージして、現在、事務局で検討しているものでございます。例えば、話すこと、聞くことに関しましては、目的の理解、課題発見、話題設定、取材、構成、音声表現、対話、交流評価、振り返り、音声表現の活用といった形で、ある程度学習の過程を細分化していって、それを身に付けさせるためにどういう学習活動をさせていくかということを検討していこうとしているところでございます。
 同様に外国語科につきましても、こういった身に付けるべき資質能力と、それを身に付けさせるための学習課程という議論がこれまでも進めているところでございますし、本日、御参加の委員の皆様方の中にも、この検討の過程に御参加いただいている先生方、たくさんいらっしゃいますけれども、これを今後、外国語科のワーキンググループなどでも並行して進めていくという状況にございます。
 本特別チームにおきましては、国語科、外国語科それぞれのワーキンググループにおける検討の状況も踏まえながら、それぞれの教科の指導内容が言語能力の育成という観点から見た場合に、十分な体系性を備えているのかどうか。それから、学習課程について、適切なものとなっているのかという点についても、俯瞰的に見ていただいて御意見を賜りたいと考えているところでございます。
 それから、3点目の連携というところでございますけれども、国語科、外国語科それぞれの教科における体系性に加えまして、この両教科の指導内容ですとか、学習の過程というものについて、十分に連携が図られていて、相乗効果を生むようなものが期待できるものになっているのかどうかということについても御意見を賜りたいと考えております。これまでそういった対比をしながらという検討はやったことがございませんで、基本的にはそれぞれの教科ごとの議論ということでございますので、これは新しい取組ということでございます。
 先ほど大杉から御紹介させていただきました緑の冊子の論点整理におきましては、特に音声、文字、語句や単語、文構造、表記の仕方などの言語の仕組みについてということで言及されているところでございますけれども、そういった事項に関わらず、全体的な連携の在り方についても御議論いただければと。文法的な言語事項に限らずに、もう少し幅広い目で見ていただければと思っているところでございます。
 実際、どういうことをやるのかというところで、これも委員限りの資料として配らせていただいておりますので恐縮でございますが、A4の小さい表が席上に置いてございます。これは、作成途中のものでございまして、とりあえず小学校段階におきます言語事項、言葉・言語の仕組みについて記載内容の主なものを取り出して、比較できる形で掲げさせていただいたものでございます。例えば文字として認識、あるいは単語として認識、文章としての認識というものがどういう過程で教えられていくかというものでございます。こういったものをきちんと順序立てて、あるいは相互に行き来しながら、さらに深めていけるようなものになっているかという作業を事務局でやっていきたいと思っておりますし、またワーキングなどでの御意見も踏まえながら整理させていただいた資料をこの場に出させていただいて、皆様方から御意見を賜りたいということでございます。
 それから、併せて関連する事項といたしまして、特にローマ字学習などについては、少し特出しで御意見を賜りたいと考えているところでございます。
 それから、最後4点目といたしましては、今申し上げました3点についての整理検討も踏まえつつ、これを効果的に実施していくための指導の在り方についても御意見を賜りたいと考えております。例えば、教科担任制となっております中学校、高校における教科間の連携の在り方といった課題、それから、確実な理解、定着を図っていく観点から、短時間学習の活用、あるいはICT等の機材の活用についても御意見を賜りたいと考えているところでございます。
 以上、4点につきまして、次回以降、順次御議論を頂くということを予定しているところでございます。
 事務局といたしまして、本日この後の意見交換で頂きました御意見なども踏まえながら、改めて検討のための資料を準備させていただきまして、御議論を進めていただきたいと考えているところでございます。
 また、本特別チームの議論の状況につきましては、国語科、外国語科の両ワーキンググループに対しましても、検討の状況をお伝えするとともに、両ワーキンググループにおける検討状況などもこちらの特別チームで適宜御紹介させていただきながら、キャッチボールをしながら御議論を進めていただければと思っているところでございます。
 委員の皆様方におかれましては、大変お忙しいところ恐縮でございますけれども、何とぞ御協力のほどよろしくお願いいたします。

【亀山主査】
 今、事務局から本特別チームに課された検討事項についての説明が、4項目にわたってございました。
 まず、第1番目が言語資質能力の構造化・可視化の問題です。言語力とは一体何なのかということをこの3つの項目に分けて、より可視的なものとして提示するということ。
 2つ目が、国語科と外国語科、この2つの教科に関わる、いわゆる横串と呼ばれるものであり、これを目標、指導内容等全体に関して、あるいは言語の仕組み等に関して、より俯瞰的な視野からこの問題、意味をしっかりと提示するということ。
 3つ目は、言語能力を向上させるための相互連携です。相乗効果への期待ということで、どんな方法が考えられるかということ。
 4つ目が、具体的に指導上、様々なアイデアとでも言ってよいのでしょうか。中・高における教科担任の別制の連携の在り方はどうあるべきかということ。ICTの活用等、その他、現代のグローバル化時代のこうした様々な言語環境の変化に照らして、様々な工夫、指導の在り方等についての御意見を頂きたいという趣旨でありました。
 では、きょうは第1回目であり、初めての顔合わせということもありますので、皆様から御自由な御意見を頂きたいと思っております。先ほどの説明にもありました、教育課程企画特別部会論点整理や本特別チームにおける検討事項を踏まえて意見交換をお願いしたいと思っております。先生方の御専門に関連して、特にこの4つの検討事項に関連いたしまして、日頃お考えになっていること、あるいは取り組んでおられることを自由に御発言していただいても結構です。
 また、御意見のある方は、名札を立てていただきまして、発言が終わりましたら元に戻していただきますようにお願い申し上げます。限られた時間でありますが、1人当たり約5分の発言を頂戴できれば幸いです。
 では、よろしくお願いいたします。まず、どうぞ御自由に。私の方から名指ししてもよろしいでしょうか。松本委員からよろしいでしょうか。

【松本委員】
 今回、このような委員会が設置されたこと自体、大変喜ばしいことだと思っております。先ほど来、事務局から御説明がありましたように、国語科と外国語科の少なくとも教育の目標、あるいは連携についてのすり合わせが非常に重要だと以前から思っておりましたけれども、具体化されるということで大変期待もしているわけです。
 外国語教育の方では、先ほど御説明がありましたが、CANDOということに取り組んでおりまして、県によってはほぼ全ての学校が設定し終わって、それに関連した指導計画が立てられ、指導され、そして評価もしているという状況で着々と進んでいると考えております。
 それに併せまして、国語科の方でも単に理解しているということではなくて、言語を使って何ができるようになるのかということについて記述して、亀山主査がおっしゃったような可視化するという方向に動いていくというのは、大変すばらしいことです。それから、以前の学習指導要領にも記載されていたことでありますけれども、全ての教科において言語能力をどうやって育んでいくのかということについて、ドライブが掛かるということは大変うれしいことだと思います。
 特に緑の冊子の5ページの一番下に書いてあるように、言語活動や体験活動の重視ということで、言語活動だけではなくて体験活動ということを明記しているということに対して、我々は着目すべきかなと思っております。やはり体験中心の学習にしていくということが、現場の授業を見ていくといかに難しいことかがひしひしと感じられるわけです。ですから、言語活動を重視といったときに、以前と同じように先生が全てを準備して、「このとおりやりなさい」「はい、スピーチができるようになりましたね」みたいな流れにならない、要するに生徒がその中で自由に体験できるような環境作り、あるいはカリキュラム作りというものができるといいなと思っています。
 ですから、その点、どういう活動内容を英語科と国語科ですり合わせていくのか、あるいは授業及び授業を超えた形での体験活動をどう用意したらいいのかということについて検討していく必要があるのかなと思います。特に言語活動も体験活動もそうですけれども、例えば日本語でスピーチをやった後、英語でスピーチを行うとか、日本語でディスカッションした後、英語でディスカッションするという流れが作られればすばらしいことです。それから、その内容についても、社会科の授業で行ったものについて、国語科でディスカッションする、英語科でディスカッションするという流れができれば本当にいいことですので、そういう意味でも活動及び指導の内容のすり合わせということも今後期待したいと思っております。
 以上です。

【亀山主査】
 ありがとうございました。
 ただいま、西辻委員がいらっしゃいましたので、簡単に御紹介。

【平野教育改革調整官】
 ただいま到着されました西辻委員でございます。

【西辻委員】
 どうも遅れまして申し訳ございません。

【亀山主査】
 では、矢原委員、お願いします。

【矢原委員】
 失礼いたします。
 私は、今回、中学校の教頭として参りました。昨年度までは国語科の教員として授業をしていたのですが、本校でやっていることをこの会で少し紹介させていただければと思っております。
 本校は併設型の中高一貫教育校でございます。その中学校に私は所属しているんですが、本年度、スーパーグローバルハイスクールの指定を受けて取り組んでおります。中学校のところには、教育課程の特例をいただきまして、言葉科という教科を設定しております。年間、各学年60時間なんですけれども、この言葉科という教科は、国語の教員と英語の教員がメインとなって、チームティーチング等を行っています。もちろん、年間全てがチームティーチングではないんですけれども、部分的には数学科、理科、社会科の教員も入ってきてチームティーチングをしています。
 その中では、きれいに理論的にはそんなに整理は十分ではないのでございますけれども、例えば、中学校2年のときには国語科と社会科を中心とした日本語のディベートを徹底的にやり、それを受けて、現3年生では、今度は国語科と英語科の教員が英語でディベートを作り上げていくという、今回の検討事項の中では、主に4点目の連携の在り方に少し関わることかと思うんです。そういった中で、ただ単に国語科と英語科を足して2人いるというわけではなくて、相乗効果が少し生まれてきているというところもあります。
 もちろん、国語科も英語科も必修教科として教科書等を使った授業は行っておりますが、成果の1つとして、例えば学力調査等のB問題等では、非常に高い数値が出ていたり、また、英語の調査においても、4技能のバランスが非常にいいという、考えてみましても、非常にバランスのいい学力というか、言語能力が身に付いているのかなと思います。中学校段階では、そういう1年生から3年生まで年間60時間の言葉科というものが週に2時間行われております。
 そして、中高一貫教育校でございますので、高等学校ではそれが総合的な学習の時間に接続しております。総合的な学習の時間では、高校1年生、2年生では、課題別研究といって、まずは高校1年生では、例えばグローバル課題について、いろいろな社会の問題を取り上げて、学び方を徹底的に学んでいくという学習をするんですけれども、2学年に向けてそれぞれのテーマ別に分かれていき、第2学年の後半ぐらいからは卒業研究、卒業論文の作成に入っていきます。中学校で培った言語能力の基礎を使って、社会的な課題に取り組んでいきます。大体3年生の6月ぐらいに完成を迎えておりますが、例えば、その卒業研究、卒業論文を使って、今回、東京大学等の推薦入試に臨んでいく生徒もいるところでございます。
 私の方からは、こういった場では、自らの学校でやっていることをお伝えできればと思っておりますので、機会がございましたらよろしくお願いいたします。
 以上です。

【亀山主査】
 大変示唆的な、先進的な試みの紹介ありがとうございました。
 では、山脇委員からお願いいたします。

【山脇委員】
 私は長い間、新聞記者をしておりまして、新聞記者の仕事というのは、非常にこの言語能力が必要な固まりのような仕事だったなと、今振り返っているところです。
 例えば、取材に行く前に資料を読む。それを理解する。人からものを聞く。それも理解して、そして最適な言葉で書くということですが、自分のことを棚に上げて、若い記者たちの書いたものなどを見ますと、確かに取材したことを書いているけれども、ちょっとしたニュアンスが違うとか、もっと最適な言葉があるのではないかということを非常に感じる事が多いのです。
 日本語というのは、本当に豊かなもので、例えば一人称の「私」というものをインタビュー記事で書くときも、その人が「私」と言ったんだろうか、「僕」と言ったんだろうか、「俺」と言ったんだろうか、「おら」と言ったんだろうかということで、本当にニュアンスが違ってきます。また語尾を1つ入れるか、入れないかということでも変わってくるということもある。そういった意味で、本当に豊かでむずかしく美しい日本語というのを、これからの人たちにも引き継いでいってもらいたいというのが、本当に私の一番の望みです。
 そのために一番必要なのは、読書ではないかなという気がしておりまして、今後、どういう議論になるか分かりませんが、今ここで考えたことはそういうことです。

【亀山主査】
 ありがとうございました。
 では、吉田委員、お願いいたします。

【吉田委員】
 私も以前から言語力の重要性というものをずっと考えていましたので、こういう形で日本語と国語、外国語を何らかの形で連携させていくというのは、もう大賛成です。先ほど松本委員もおっしゃいましたように、日本語でもきちんと論理的にものを構成して発表できないのに、それをいきなり英語でやれというのは非常に難しい。その国で育っていれば、例えばアメリカに小さい頃からいれば、それはできるかもしれませんが、日本という国の中では、英語を教室以外の場面で実際に活用する場面がほとんどないわけですから、そうすると、それを補っていくためには、やはり同じ言語力である日本語をいかにうまく補完していくかということが、非常に大切な役割を果たしていくと思います。そういう意味で、こういう連携が取られるということ自体、非常に私としても期待していますし、大切だなと思っています。
 ただ、1つ懸念することがあるとするならば、先ほどの検討事項の4番目、短時間学習というところに関しては、非常に懸念しております。なぜかというと、短時間学習というのは、練習、繰り返しを中心とする場面であって、それは現実にその言葉を使う場面があってこそ練習が役に立つのであって、その教室を離れたところで使う場面がないところで練習をしても、それはほとんどモチベーションにつながらない、語学力につながらないんですね。
 つまり、きちんと英語に関しても、活用する場面を設定するという条件で、こういう短時間学習をやるのであれば、意味もあるかもしれませんが、それがないところではほとんど意味がないだろうと思っています。国語の場合ですと、もう当然日常生活全て日本語ですから、教室を離れて、当然使う場面はわんさとあるわけですね。ですから、その中で、あっ、ここが足らないなと思ったらそこを練習すればいいわけですが、英語の場合はここが足らないなという経験をする場面がないんですね。ないところで、「はい、これだけ練習しましょう」と言っても、ほとんど成果は上がらないと思います。ここのところに関しては、私は非常に大きな懸念を抱いています。
 特に小学校において、中学、高校の場合は、まだ時間数の問題、それから、矢原先生が今おっしゃった、ほかの特別な時間を設けて、総合的学習の時間だとか、そういうところでさらに英語なら英語という時間プラスアルファで何かそういうものに取り組めるような時間があるのであれば、それはそれで私はすばらしいと思うんですが、果たして小学校でもそういうことが可能なのか。そういう場面を作っていただけるのであれば、短時間学習というのは、それなりの効果を示すことがあるかもしれませんが、それがないような状態でやるとすると、これは非常に私としては問題が大きいのかなと思います。余り否定的なことは言いたくないんですが、この短時間学習を強調され過ぎているような気がして、先ほどの大きな表を見ても、それがざーんと出ていますので、そこは私がかなり大きく懸念している点だということだけ申し上げたいと思います。
 以上です。

【亀山主査】
 ありがとうございました。
 では、福田委員からお願いいたします。

【福田委員】
 私は2点ほどお話ししたいと思います。専門は言語心理学ということで、言語力ということに関しては、もうずっと研究、実践をしてきたんですけれども、緑色の論点整理の12ページのところで、特にこれからの時代に求められる資質ということで、「変化の中に生きる社会的存在として」という見出しが付いております。これに関して、私たちは1人で生きているわけではないので、そして言語というのはもともと他者とのコミュニケーションの道具、それが内化していって、思考に使われているというところから考えると、とてもいい観点ではないかなと思います。この他者とのやり取りの中で、言語力がどんどんスキルアップしていく、あるいは自分のものとなっていくということで、アクティブ・ラーニングのような考え方、やり方というのが取り沙汰されているんだろうと思うんです。
 校内研修とかに参加をして、現場の先生方とお話しするときに、少し気になることがあります。それは、例えばいろいろなグループ学習などをした場合に、どうも成果が見えないと。本当にこれでいいのか、これで学力が付いているのかという声をよく聞きます。そのときの先生方がおっしゃられている成果というのはどういうものなのかというと、やはり学力テストによる点数。そうなると、もしかしたら学力テスト、全国学力検査などというもので測られているものが、この「社会的存在としての」というところをうまく測れていないのかなという気がします。
 このワーキンググループのチームの中でそこまで踏み込んでいけるのかどうか分からないんですけれども、そのような成果を見据えたいろいろな活動というもの、あるいは学習指導要領の見えるようなというときに、少し念頭に置いた方がいいのかなと思いました。
 それから、2番目なんですけれども、国語科と外国語活動の連携というところで、事務局の方々から机上資料として連携のイメージを出していただいております。非常に分かりやすくて、なるほどと思ったんですけれども、小学校の国語の指導内容に、例えば文や文章にはいろいろな構成がある。これは、大学で大学生に教えていて常々思うんですけれども、日本語の論文を読む、指導する、あるいは英語の論文を読む、指導するときに、英語の場合にはこういうように文章が構成されていて、トピックセンテンスがこうあるよとか、日本語の場合には、段落の後ろの方に重要なことが書いてあるよねということを言いながら、確認しながら、大学生のレベルでもやっている。そういうことを考えると、外国語でも当然そのような指導が出てくるんだろうなと思うんですけれども、そうなると多分外国語では、中学校、高校といったレベルになるのではないかなと思いました。
 そのときに、校種を超えた連携というのも、少し考えた方が、同じ言語を理解するという上では、より効果的なのかなと感じました。
 以上です。

【亀山主査】
 ありがとうございました。
 では、西辻委員にお回しいたします。

【西辻委員】
 他の会議と重なってしまいまして、遅くなりましたことをおわび申し上げます。
 ここまでの発言を聞いてということにならないので、重なる部分があればお許しいただきたいと思いますけれども、今回、言語能力の向上に関する特別チームということで、国語科、外国語科合同で言語能力を考える機会があるということは、非常に大切なことだと思います。本日の資料にもありますけれども、前回の改訂時におきましても、言語力の育成方策という視点では、一定議論されたところではございますが,十分ではなかったと私は認識しています。
 今日の資料に出ております本特別チームにおける検討事項、先ほど吉田先生から短時間学習の活用ということについての御発言がありましたけれども、私も大体につきましては、これで検討する課題はそろっているのかなと考えております。
 しかし、私自身がずっと課題として持っておりますのは、先生方の「教科」というものに対する意識を大きく変えないことには、やはり物事は動かないのではないか。特に中・高等学校等は教科担任制ですので、先生方が自分の教科の枠に閉じこもるのではなく、自分の教科を軸として、より広々と他の教科とつながっていくという思いを持たないといけないのではないかということです。
 国語科としては、現行の学習指導要領の改訂の基本方針の1つとして、各教科等の学習の基本ともなる言語の能力を育成するのが国語科なのだという姿勢を鮮明に打ち出しているわけですけれども、実際の授業の場でそういうことが本当に意識されているだろうか。そういうことも考えないといけないのではないかと思います。
 したがって、小学校での英語教育、現在、外国語活動ですけれども、それに対して、当然、国語科はその学習の基本となる言語の能力を育成しているという視点でやっていかなければいけない。だから、そういうところをもう一度、きっちりと考えを整理し、先生方の意識を改革していっていただくということが大切だと考えます。
 母語をしっかりとした形で身に付けておかないと、それは単に外国語教育だけではなく、それ以外の各教科等の学習も基本的にはうまくいかないのです。その考え方は、言語活動の充実という枠組みの中で、現行の学習指導要領にも鮮明に入っているわけで、それは次の学習指導要領へのステップになっていくだろうと思ういます。けれども、枠組を作っても、魂が入っていないと結局、枠組があるだけということになります。だから、魂を入れるという点で、先生方の意識改革が望まれると考えております。

【亀山主査】
 ありがとうございました。
 では、酒井邦嘉委員からお願いいたします。

【酒井(邦)委員】
 私は脳科学の科学者の立場からお話をしたいと思います。4つにまとめてみます。むしろ新しい論点といいますか、問題点や懸念を表明する方が後の議論に役立つと思い、あえてそういう点を選んでみました。
 まず最初に、確かに我々の言語能力とは、表面的にはコミュニケーションとか、自発的に我々の脳から出てくる行為だということなんですが、一足飛びにそういうものができるわけではありませんで、やはり我々の感情とか意識とか、心が支えているわけです。ですから、いかに言語能力を支える心を育むかという視点を是非強調していただきたいというのが1点目です。
 つまり相手、聞き手は複数、若しくは1人の場合ももちろんありますが、相手の心を想像する能力がないと、どんなに言語能力で表面的にいろいろ言葉が運用できるようになったとしても、それは何も伝わらない。ですから、いかにフィードバックを掛けて、そのようなやり方では伝わらないのかということを分からせる教育、実践も必要だということです。
 特に昨今の風潮ですと、ブログとかラインのように一方的に大量に発信するという時代を迎えています。ですから、人が文章をどう読むか、これでどういう誤解が生じるのかということを全く考慮せずに、一方的に書いても世の中に発信できるという非常な危険性が今あるわけです。ですから、それに対する考え方、もちろん情報をうのみにしないということも大事ですが、相手を常に想像しながら発信するという能力を、特に小学生から高校生に至るまで常に考えていかなければいけないというのが1点目です。
 2点目は、グローバル化ということに関して一言申し上げたいと思います。やはり多様な言語を使うのであるということを、是非念頭に置いていただきたい。つまり、外国語ワーキンググループなのであって、英語だけではないわけです。ですから、そこら辺のフィードバックを是非入れていただいて、確かに英語が中学の必修になってしまいましたが、日本語と英語という二極化は非常に懸念されます。つまりグローバル化では英語を身に付ければいいということではなくて、地球には極めて多様な言語があるということを知る必要があります。様々な考え方や文化や見方がさらに広がっている。ですから、もっと英語圏以外の人たちにも通じるような発信の仕方や考え方の伝え方を学ばなければ、表面的に英語を学んだだけでは決して伝わらないわけです。
 ですから、グローバル化を本当に目指すのならば、多様な言語を何らかの形で入れる。それは、やはり日本語と英語では非常に足らないわけであります。英語だけでもこんなに大変なのに、3つ目、4つ目を入れるのはナンセンスだという意見も当然あると思いますが、我々の脳というのは、小さいときから多言語に触れていればトリリンガル、マルチリンガルになるような能力を備えています。それが最初の、特に小学校に入る段階でどのくらいそういう環境に触れたかという要因で、実は我々がマルチ言語が使えるのか、モノリンガルになるのかということが決まってしまう。学校教育の役割というのは、その後に行われるわけなんですが、そうであっても、やはり多様な言語の環境を何らかの形で確保するということは、常に頭の隅に置いておかなければいけないというのが2点目です。
 それから3点目は、今回の参考資料と挙げられている1番目に、「『思考力・判断力・表現力等』についての整理のイメージ」という資料がございますが、論理的な思考が大切だということです。私は「論理的な思考力」を調べる全国調査で、国立教育政策研究所の委員として活動しました。論理的な思考というのは、決して理数系に限ることではありませんで、人文系を含めて、どういう分野に進むのであれ、言語能力が基礎となっています。筋道をいかに論理的に組み立てて考えるのかという意味では、言語としてさらに人に伝えるための中間の段階として、思考、論理化というところが大切だということで、この点を是非組み入れていただきたいというのが3点目です。
 最後の点は、ほかのワーキンググループがいろいろある中で、特に言語能力の向上に関わるのは国語、外国語でよいということなんですが、あえて入れるとすれば、芸術ワーキンググループのフィードバックでしょう。芸術としては一体何を捉えているのかということを、是非少しは入れていただきたい。芸術というのは、そもそも言語以外の方法で伝達をしようとする能力を高めていくわけですが、決して言語が要らないというわけではありませんで、その中に我々の持っている非常に深い意味での言語化の能力に支えられているわけです。
 ですから、そういう手段を通じて、人に何かを伝えるということが、むしろ最初の1点目に関係するんですが、心がきちんと育まれていれば、それを題材にできるでしょう。例えば英語の表現とか、日本語の表現の時間で、絵画や音楽、書を見たときに、それをどういうふうに作者が伝えようとしたのかとか、若しくは歴史的にゴッホはその絵を描いたかということを議論したりするのも、非常に具体的でよろしいと思うんですね。そういう中で、なかなか言葉で伝えにくいものを、別のチャンネルで伝えているということが、実は最終的には我々が目指している言語能力の向上につながるのだということを、是非考慮していただければと思います。
 以上です。

【亀山主査】
 貴重な御意見ありがとうございました。
 では、酒井英樹委員、お願いいたします。

【酒井(英)委員】
 よろしくお願いします。英語教育を専門にしているという点から話させていただきたいと思います。
 まず1つは、言語活動の充実ということで、特に外国語教育の中でも言葉を使う活動というのが重視されてきました。その中で、いかに子供たちが英語を使って考えを伝え合ったり、情報を伝え合ったり、あるいは読み取ったり、書いたりということをしていくわけですけれども、反省点というか、なかなかそれをした結果、どういうことができるようになったのか、あるいはその力はどういう活動を組み合わせて経験していくと、どういう力が付くのかということを、なかなか考えてこなかったという経緯があります。もちろん、そこはとても重要で、評価や目標というところで考慮してきたわけですけれども、いざ授業や単元という話になってきますと、なかなか子供の成長、あるいは知識、技能獲得というところまで、長い目で目標設定ができていなかったということを感じています。
 そういう意味で、外国語教育では、松本先生がおっしゃったようにCANDOリストの形の目標設定ということが実施されてきたわけです。その中で、言語活動をした結果、どういう力を身に付けているのかということを議論していくということは、日本語であっても、英語であっても、とても重要なことかなと思っています。
 例えば、英語でCANDOを考えていきますと、これはある例ですけれども、文を書くときに、自分の考えたことを理由とともに述べることができる、書くことができる、こういう力を付けようということで、先生たちは授業を組んでいくわけです。これは、日本語だとできないのか、英語だからできないのか、あるいは英語で育てるべき文と文のつながりなのか、国語教育でできることと英語教育でできることのつながりであるとか、あるいは補強するという立場で、両教科で行っていくべき、あるいはほかの教科でも同様の言語行為というのは出てきますので、ほかの教科でも強化をしていくべきことなのか。この点について整理ができると、各教科での言語活動というものがもっと有効的になるのかなと感じているので、この委員会の課題はとても大事なことだと思っています。
 もう一点ですけれども、国語と英語、外国語の相互の連携の中で、言語の仕組みについて挙げられています。小学校の外国語活動で考えますと、音に触れる。これは日本語の母語の音と違うわけです。子音であるとか、母音であるとか、この組み合わせを意識する。この意識することが、今度は書くことにつながるという指導の連携があります。このときに、例えばローマ字学習。後で特にということで取り上げるということですけれども、国語の音声教育の中で、子音と母音の組み合わせという意識が明確になるようでしたら、そこがもしかしたらスムーズに行く可能性がある。
 音に限らず、日本語を習得している子供たちが英語を習得しようとするときに、日本語の背景を基にしながら、第2の言葉を学んでいきますので、学びやすさという観点から、この仕組みのつながりを考えていけるといいのかなと期待しています。
 そういう意味で、福田先生がおっしゃったことも、まさにそのとおりと思いますが、ここに書かれていませんが、文構造、表記の仕方、この上のレベルになると思いますが、文と文のつながりに関する談話構造に関しても、日本語で書く場合、英語で書く場合、これは当然その先のグローバルな社会での意見を述べるときの構造の違いに影響を及ぼしますので、広い点で日本語、国語と外国語の連携ということを考えていけたらいいのかなと考えています。

【亀山主査】
 ありがとうございました。
 では、島田委員、お願いいたします。

【島田委員】
 島田でございます。私は国語教育を専門にしております。
 今回、教育課程の改訂に際しまして、言語能力の向上という視点を持つんだということ、非常に楽しみにしていた次第です。そういう思いを持って、論点の整理なりを読んでみますと、気になったことなどもございました。
 例えば、28ページです。「小学校」のところでありますけれども、3つ目の丸です。国語教育と外国語教育のそれぞれを充実させつつ、国語と外国語の音声、文字、語句、単語、文構造、表記の仕方等の特徴や違いに気付くと。そして、その言語の仕組みを理解するんだということが挙げられてございます。本日お配りいただいたこのチームにおける検討事項の中にも、言語の仕組みということが指導内容というところに挙がってございます。
 果たして、日本語の仕組み、音声、文字、語句、単語、文構造、こういったものの仕組みを理解することが、日本語の運用能力の向上に一体どういうふうに役に立つんだろうかということが、私はもう一つピンと来ていなかったというところがあります。
 ただ、今、酒井先生のお話なんかも聞いて、少しずつ分かってきたところでもあるんですけれども、実は仕組みの理解のほかにも大切なことがあるのではないかなと思っております。国語科と外国語科とどのように連携するのかというイメージの表がありますけれども、確かに仕組みの様々な要素について、国語と英語とこういうふうに対照されていて、こうなっているんだということが分かりやすいんですが、実はもう一つ、左側の国語の現行学習指導要領の中で言われていることがあるんです。
 それは、言葉の仕組みではなくて、言葉の役割、働きということです。小学校の低学年、一番下のポツには、言葉には事物の内容を表す働きや、経験したことを伝える働きがあるということです。国語において、低学年で言語の役割、あるいは機能としての表出や伝達ということが、ここには入っているわけです。中学年には、言葉には考えたことや思ったことを表すと、こういう表現ではありますけれども、言語の機能、役割として、思考するということが入っているわけであります。
 このような言語の役割や働きというものを、仕組みのみならず、今回の連携の中でどういうふうに考えていったらいいんだろうかということが、今のところ疑問に思いつつあるといいますか、これから考えていけたらいいのではないかと思っている次第です。
 以上です。

【亀山主査】
 ありがとうございました。
 では、高木委員、お願いいたします。

【高木委員】
 少し大胆に言ってしまえば、言語教育史上、こういう会がもたれるというのは、とても画期的だなと思っていまして、この会の役割というのは大変重要と思っています。
 学力としての言語能力というのは、一体何なのか。これまで言語能力を授業として育成してきたのか。実は、これまでも言語能力という言葉はあったし、それから学習指導要領にも示されてきました。だけど、平たく考えてみると、大人になったときに、例えば学校の国語の授業でどんな言語能力が育成されたか、なかなか答えられないんですよね。例えば「何をやった」と言ったら、「『ごんぎつね』をやってきた」とか、「『故郷』を読んだ」とか、「『羅生門』を読んだ」、国語で言えば、作品が出てくる。それで、一体そこで何をやってきたのかなという、やはりそこを考えていかないと、言語能力ということ、せっかく今、国語と英語、さらには他教科を超えた資質能力として考えていくときに重要かなと思います。
 そういうことを考えたときに、茫漠とした荒野に言語能力を解き放つのではなくて、きょうの検討事項のところで言うと、2番と3番に関係するんですけれども、言語能力の育成を図る評価をどうするのか。その評価の観点をきちんと考えていきませんと、広がるばかりになってしまう。これは、学校教育の中だけの話になります。ですから、例えば、現行の国語の観点は3領域の活動領域なんです。能力領域ではないんです。となると、能力領域として、言語能力というのをどういうふうに評価の観点を示せるかが私は課題だと思っていますし、さらに英語で言えば、これから4技能をどうするかとか、CANDOリストを用いたものを他の観点とどういうふうに関係しながら評価として定義していくかとか、そういったことをきちんとやっていかないといけないのではないか。
 その指針は、実は緑の論点整理の20ページをごらんいただけるでしょうか。20ページの上から4つ目の丸なんです。ここに評価のことが書いてありまして、まさに学力の重要な3要素としての学校教育法第30条第2項に示されている3つの観点といったことをきちんと国語や英語でも考えていきませんと、他教科との関連性は出てこないのかな。是非そのあたりも検討事項として考えてまいりたいなと、今思っております。
 以上です。

【亀山主査】
 ありがとうございました。
 では、中村委員、お願いいたします。

【中村委員】
 失礼します。
 具体的に学習指導ということを、外国語と国語の連携を考えるときに少しイメージしたんですけれども、先ほど松本先生から最初に御発言がありました、やはり経験を通して、あるいは言語活動を通してという大前提は揺るがないと思います。一方で、現場の先生方と共同研究をやる中で、言語活動を通して教師の教えるべきこと、あるいは教科の指導事項を教えるんですけれども、言語活動は言語活動でして、指導事項は指導事項で明示的に教えるという形の授業に、どうしてもなりやすい傾向にあると思います。
 つまり、教えるべきことを直接的に教えないで、活動を通して教えるというのがデザインの基本のはずですけれども、そうするためには、子供が活動を通して教師が教えようとしているところに一歩ずつどうやって近付いているのかと、頭の中を教師が想定できないと授業が組めませんし、そのためにはワンステップ、ツーステップ手間が掛かりますし、子供を見る目も必要です。それがなかなかうまくいかないと、活動を求められているのでするわけですけれども、一方で教えるべきことも求められるので教えると。そうすると、両者が分離されてしまうということが起きた場合に、この国語と英語の連携といった場合に、同じようなことが起きないような工夫が必要だろうということを思います。
 机上資料のところに、小学校段階の国語と外国語の連携イメージの図があって、このように言語要素的な部分は2つを比較することで、小学校段階でもこんなところが共通だとか、ここが違うんだというところは気が付いていくと思いますが、それを教師が教えてしまうのではなく、子供が国語の学習を通して英語との比較をしたり、英語の学習を通して国語との比較をできるような言語活動を具体的にどういうふうに組むことが必要なのかなと。
 例えば、そのための足場掛けになるような教材なり、テキストなり、やはりそういうものがないと、この2つの連携というものがそれぞれのことを教えて終わりということにならないだろうか。そういう工夫が、1つ必要かと思います。
 もう一つは、問題解決学習のような学習指導過程を国語と外国語、英語でどういうふうに重ね合わせていくかということであります。国語の机上資料の方で、高等学校の国語科の学習過程の整理に向けたイメージというのが資料9の一番後ろに付いておりました。
 小学校段階から国語科も課題解決、問題探求の学習過程に変えていこうという中で、英語はどういう課題や問題を追究していくプロセスの中で、コミュニケーション能力なり、言語要素的な知識を身に付けていくのかというのを、国語の過程とも合わせながらやれると、1人の児童生徒の中に、言語は違っても問題を追究するプロセスというのは同じであったり、あるいは英語を使うからこそ見えてくる地域の問題とか、あるいは英語という学習のきっかけがあるからこそ、国語の学習の中で世界のほかの言語はどうなっているかとか、英語を使っているある国のある地方にはどういう問題を抱えているかを国語の学習で考えていったりというように、お互いがこの2つの要素を含み込むからこそできる学習のテーマというものが見えてくるだろうと思います。
 そんなふうにして、2つの領域をつなぐときのその先にいろいろな可能性があると思いますので、その可能性を考えつつ、一方でそれを具体的に教室場面に置いたときに、どういう困難さが想定されるのかという2つのバランスを取りながら考えたいなと思いました。

【亀山主査】
 ありがとうございました。
 では、副主査のキャンベル先生、お願いいたします。

【キャンベル主査代理】
 私は、高木委員と同様、この会議が開かれるということ自体が非常に画期的なことであると思います。
 資料5に最初に示していただいたように、検討体制というものが私たちの特別チームが外国語と国語をまたぐような形で、それを俯瞰する形で、それぞれのワーキンググループの中で我々の議論が活用され、何か力を発揮するように進めるということだと思います。
 そうしますと、これは恐らくではなくて、絶対に国語や外国語に限らず、例えば考える道徳、特別の教科 道徳でありますとか、先ほどもお話がありましたように、芸術でありますとか、公民ですとか、理科もそうだと思いますけれども、ほかの教科の中で思考や情操、情感というものが発達していく中で、言語が非常に中心的要素であり、我々も短い回数ですけれども、それぞれのワーキンググループの中でもどういった議論がなされるかということをある程度目配せをしながら、あるいはそこへフィードバックができる形で進めていくということも必要ではないかなと思いました。
 少し具体的に何人かの方がおっしゃられたように、資料8-1ですけれども、検討事項の4点に関して、特に3の国語科と外国語科の相互の連携というところが最も新しい取組で、志といいますか、試みとして最も評価すべきところだと思います。
 そうしますと、具体的にどのような何と何が連携するのかということを、私も特別部会で何度も連携が大変重要であるということを、英語、あるいは外国語と国語を別々に従来のように進めて、教育法を含めて材料を選びということを没交渉にしていくことが、特にこれから強化されていく小学校の教育の中では非常にもったいないと思いますし、いかがかということを提言してきました。考えてみますと、あるいはこの論点整理を見ましても、具体的にどのような連携があり得るのかということが、まだ私たちはそこまで煮詰めていなかったということだと思います。逆に、この場でそういったことを考えなさいという付託だとも思うわけです。
 そうしますと、委員限りの机上資料のたたき台のところを拝見しますと、少し具体的に例えば小学校の国語教育の中で、節、文、段落がどのように成り立っているかという足場を意識する。メタ言語的な感覚や気付きを促す、教えるということは、先ほどほかの委員がおっしゃられたように、これは非常に重要な、外国語を学ぶときには、そのまま活用できるスキル、あるいは感覚になると思いますし、大事だと思います。しかし、具体的にそれがどういったものなのかということは、1つあると思います。
 どこまでそういう装置としての言語というものを小学生に教えることができるのか。つまり、昔から言われているように文法ばかり教わっていて、それが全然活用できない、使えないとなってはいけませんし、スムーズに低学年から上の方に行くにしたがって、英語と連携ができるように、例えば英語の語順でありますとか、指示語でありますとか、時制、数の確定、様々なことを考えるために準備期間として、あるいは1つの土俵として日本語の文法というものが重要だと思います。
 もう一つは、島田委員がおっしゃったように、言語の働きがどういうものかを1つの連携の軸、接点として設定できるのではないかなと思います。例えば国語の中で、これは中学校、高校の段階になるかと思うんですけれども、いろいろな作品を読み、その中の情景でありますとか、何を作者が伝達しようとしたのかということを考えるときに、日本語ではよく曖昧と言われることが、それは本当に曖昧なのか、あるいは解釈の余白をあえて残しているのかということを見える化、可視化するために英語をそこで使う。翻訳を並列して使ってみるということがあると思います。
 若山牧水に有名な、これは中学校の教科書に出ますけれども、「白鳥はかなしからずや空の青海のあをにも染まずただよふ」という歌がありますけれども、私は一度、小学生10人ぐらいに、どういう情景かというので絵を描かせたことがあります。みんなばらばらなんですね。1羽の人も、2羽の人も、群れをなしている鳥を描く生徒もいますし、「ただよふ」というのは、空の中に低飛行しているのか、波の上にたゆたっているのかということもばらばらなんですね。
 それを英語に置き換えることによって、まず鳥の数を決めないといけない。その鳥が、どこに、どれぐらいの高度にいるのかということを、ほかの言語であればそれは違うかもしれませんけれども、その差異を示すこと、あるいは気付かせることによって、日本語の特徴も、それこそ可視化できると思います。
 少し時間がなくなりましたけれども、1つだけ論点整理の中にも、きょうの資料の中にも、国語教育の中で読むスキルの中に、見る、あるいは見える、つまり視覚リテラシーということが特別部会のときから取り上げられているわけです。私は何となく分かるんですけれども、それはイメージだけであって、具体的にそれが国語教育、あるいは外国語教育の中で視覚リテラシーというものを挙げる、あるいはそれを具体的に方法、方便としてどういうことができるかということは、まだ議論は尽くされていないように思います。ここでできれば、是非それも大変興味深い連携の1つの可能性を秘めていると思いますので、考えていきたいと思います。
 少し時間がなくなりました。

【亀山主査】
 主査にも発言の機会が許されているのでしょうか。一、二分、私から雑感として申し上げたいことがあります。
 グローバル化時代は、まさにICTの時代でもあるわけでして、ほとんどの言語活動がコンピュータを前にした、ネット上でのコミュニケーションであるわけですね。実際、一種の無声のといいましょうか、非音声的な空間の中でのコミュニケーションが中心をなしつつあり、逆に我々がこのようにテーブルを挟んで議論しあうというのは、場としては、むしろなかなかまれな部類に入るのではないか。先々日、平野啓一郎という芥川賞作家が、いわゆる分人主義という言い方をして現代におけるコミュニケーションの在り方を規定していたのが印象的でした。つまり、個人すなわちIndividuumを、複数に分けられる個人として定義しよう、そしてそのような個人の在り方を積極的に受け入れていこうということをおっしゃっていた。
 つまり、日常変化する社会の中でのコミュニケーションということもありましたけれども、まさに日々我々が接している全く別の人、あるいは別の文化的な背景を持っている人たちと、絶えず自分自身の「ペルソナ」というものを変えていかなければならないという状況にあるわけですよね。そうした場合に、我々は1つのスタイルではなくて、いろいろな複数の、あるいは数知れずと言いませんけれども、かなりの数の多くの他者に対応できる分人=ペルソナを持たなければならないということがあると思うのです。そこにおいて初めて、個々の非常にきめ細やかなコミュニケーションというものが成立するということを念頭に置いておく必要があります。端的に言うなら、他者があってのコミュニケーションであるということです。同時に、分人化された他者に対する想像力を持った人間を育てないと、正しい受信・発信はできないだろうということ。この点を、まず1つ強調しておきたいなと思うことです。
 もう一つは、多言語の問題です。今は国語と英語をつなぐ原理的なものを追求していこうということですが、10年後、20年後、恐らく中国語というのが英語と変わらないくらいの重要性を秘めていくことは間違いないわけですね。その中で、英語教育とは一体どうあるべきなのかということ、あるいは国語教育はどうあるべきなのかということも、一定程度視野に入れておく必要があるのかなと。
 例えば、「こんにちは」という一言もたくさんあるわけですよね。それは大学の教育に任せてしまえばいいという考え方もあるかもしれないんですが、世界の多様性に向かって目を開くということにおいては、例えば英語の教科書なども一定の多言語的要素を取り込んでいく。たとえば「ニーハオ」といった言葉でもいいと思います。それは英語のみならず、国語の教科書の中にも何かそういった多言語性というものを、あくまでアイテム、材料の問題ですけれども、保障して担保していくという視点も必要なのかと思います。
 もう一つは、ロジカルであるということと、非ロジカルであるということの定義というものを、やはり我々はしっかりと持って臨むべきだと思うんですね。世界というのは、結構非ロジカル的な論理で動いているところがあって、多くの人が非常に非論理的にしか行動できなかったり、発話できなかったりする。そうした非論理性を読み解く能力も、言語能力の1つの大きな能力であろうかと思っているわけです。
 最後、もう一つは、よく「耳のよい子」という言葉がありますよね。耳がいい子というのは、別に音楽の微妙なイントネーションとか、リズムとか、あるいはメロディーを聞き分ける能力というわけではなくて、相手の言っていることを正確に、なおかつ情感豊かに経験できる子を、恐らく「耳のよい子」と言うんだと思うんですね。これからの議論の中で、委員の皆様が、例えば「耳のよい子」というのをどんなイメージで捉えているのかなということを、少し何回かの議論の中でお聞きできればよいななどと考えながら、きょう、司会を務めてまいりました。
 さて、時間となりましたので、限られた時間でしたけれども、様々な貴重な御意見を賜ることができました。また、補足的に何か御意見を提案したいということがありましたら、メールあるいはペーパー等で事務局にお送り願えれば幸いであります。
 本日、予定されていた議題はここまでであります。
 最後に、次回以降の日程などについて、事務局から説明をお願いいたします。

【平野教育改革調整官】
 本日は、大変ありがとうございました。
 次回は12月18日、金曜日、10時から12時、場所は文部科学省3F2特別会議室、この隣の会議室になりますけれども、そちらで開催させていただきたいと考えております。
 また、今ほど主査からお話がありましたように、ペーパーによる御意見等も頂戴したいと考えておりますので、ファクス又はメール、郵送等で頂ければと思っております。
 また、繰り返しになって恐縮でございますが、色付きの附箋が付いている資料につきましては、お帰りの際に机上に置いていただければと思っております。
 なお、本日の配付資料全体について、御希望される場合は郵送いたしますので、机上に残しておいていただければ、郵送させていただきたいと思います。
 以上でございます。

【亀山主査】
 では、これをもちまして、本日の言語能力の向上に関する特別チームの会議を終了とさせていただきます。ありがとうございました。

―了―

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課教育課程第三係

電話番号:03-5253-4111(代表)(内線2076)

初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室

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