全教委連発第111号
平成27年8月27日
文部科学大臣
下村博文様
全国都道府県教育長協議会
会長 中井敬三
「地域とともにある学校の在り方」に関する意見について
平成27年8月4日付け事務連絡で依頼のありました標記の件について下記の通り意見を申し上げます。
記
学校を取り巻く環境は複雑化・困難化しており、学校に求められる役割もかつてと比べて拡大・多様化している。こうしたなか、学校と地域との連携は欠かせないものとなっている。
そのため、「地域とともにある学校の在り方」については、今後とも実効ある取組を期待するとともに、学校が地域の核となって、地方創生を成し遂げる重要な役割を担うものといえる。
1 現状認識
○コミュニティ・スクール(以下「CS」という。)の制度創設から約10年が経過し、各地で様々な実践が進んでいる。その一方で、地域間で取組の差が生じていることや、学校運営の基本方針の承認が年度始めの授業開始以後になっているなど学校運営協議会が形骸化・形式化しているという問題が指摘されている。
○また、文部科学省では、CSを学校運営協議会の通称としているが、このことにより、学校運営協議会を設置していない学校では、「地域との連携」が進められていないとの誤解を生じかねない。
○法定の学校運営協議会を設置していなくとも、類似の取組を行うなど、実質的にCS同等の活動を展開し、地域との連携を図っている学校も少なからずある。こうした中、全ての学校に現行の学校運営協議会を必置とすることは、実現が困難であると考える。
○このような現況を踏まえ、今後、地域とともにある学校の取組としてCSを推進するには、従来と同様の「メリットを強調した情報発信」だけでは限界がある。学校現場からの生の声を真摯に聞き取り、顕在化している課題にしっかりと対応する必要があると考える。
2 顕在化している課題
(1)CSの導入は必ずしも学校現場において教職員が子供と向き合う時間が増えたといった成果につながっていない。それどころかCSが導入されていることが学校側の負担増につながっている側面がある。このことは、文科省が行った調査(注参照)からも明らかである。
(2)学校運営協議会の「教員人事に関する意見」への学校現場や教育委員会の抵抗感は、(1)の課題と相俟って、大きな障壁になっている。
(3)また、学校を支える地域側においても、学校運営に積極的に参画することについては、地域や住民によって意識に大きな差がある。したがって、国が定める画一的な学校運営協議会では、多様な住民の意識に対応できない状況にある。
3 提案
こうした「顕在化している課題」を踏まえ、今後さらにCSを推進していくために、下記の方策を提案する。
(1)情報発信の改革と支援措置の拡充
○CSが具体的にどんな活動をしているのか、例えば、CS指定校において教頭・教務主任等が実際に行っている学校運営協議会の事務の状況など、実際にCSに取り組んでいる現場の「生の情報」の発信が必要である。特にメリットとデメリットの実態こそが、未導入地域が求める情報であり、メリットのみならず、例えば、CSの指定を取りやめた学校の意見やその経緯についても明らかにするなど、デメリットも正確に発信することが重要である。
○CS導入による多忙化に対応するためには、人的措置が不可欠となる。具体的には、全てのCS指定校に加配教員やCSディレクターを配置するなど、十分な財政支援が求められる。
(2)制度改正
○学校運営協議会の「教員人事に関する意見」は、非常にデリケートな問題であり、依然としてこれを懸念する声も大きい。そのため、教育委員会の尊重義務を削除する改正を行うなど、教育現場からの要望に対応する必要がある。
○現行制度における、全ての機能を有する画一的な学校運営協議会を置くか置かないか、という仕組を改め、例えば、学校や地域の実情に応じて一部の機能のみを有する学校運営協議会を置くことができるなど、弾力的な制度設計とすべきである。あわせて、学校支援地域本部等の類似の取組を含めて、「学校の応援団」を増やすための包括的な方策についても検討すべきである。
○現状においても、CSが目指すところの学校と地域との連携は、学校支援地域本部等を活用して各地域で既に多彩に展開されている。そうした学校もCSに含めるなど、CSの概念を学校運営協議会に限定せずに広く捉えていく必要がある。
(注)コミュニティ・スクールに関する文部科学省委託調査研究結果(抜粋)
(1)コミュニティ・スクールの成果認識(指定校)【平成23年度調査】
・学校と地域が情報を共有するようになった・・・92.6%
・教職員が子どもと向き合う時間が増えた ・・・19.8%
※ 「当てはまる」「ある程度当てはまる」の合計
(2)CS指定前後の課題に対する認識の変化【平成25年度調査】
・学校運営協議会の成果が不明確である・・46.2% → 23.6%
・管理職や教職員の勤務負担が増える・・・61.2% → 51.8%
※ 「当てはまる」「ある程度当てはまる」の合計
初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付