平成27年8月31日
全国国公立幼稚園・こども園長会
「地域とともにある学校づくりの在り方に関する作業部会」における意見
1 学校と地域の連携・協働の推進に当たって必要な方策について
(1)子どもと地域との関わりをつなぐ
○幼児期に家庭や地域の人など、様々な人に愛情をもって関わってもらうことが、幼児期の豊かな体験となり、地域への愛着や誇りをもつ基盤となると考える。また子どもが地域で活躍する活動や場をつくることで、自己肯定感も育つと考える。園が仲立ちとなって、地域の祭りや行事に積極的に参加する機会をつくり、園と地域の信頼関係をつくることが大切である。
○地域とのコミュニケーションは、子どもが学校に通うようになってから急にできるようになるわけではない。日常的に地域の人々と触れ合ったり、行事に活動する機会をつくれるよう、園から家庭へ情報を発信していく。幼児期から親と一緒に子どもが地域の行事や活動に参加し、体験できるようにしていく。
(2)コーディネーター・人材づくりを行う
○子どもたちの健やかな成長のために園・家庭・地域がそれぞれの役割と責任を自覚し、地域全体で教育に取り組む体制づくりを行っていくためには、それぞれをつなぐ役割をする専任のコーディネーターの存在が重要である。
○新潟市では、地域教育コーディネーターが市内全小中学校に配置され、地域連携の窓口になっていることが定着しているが、幼稚園には配置されていません。これは幼児教育段階での地域連携の重要性が認識されていないのではないかと感じます。(1)であげたように、幼児期だからこそ親子で関わりをもつことができるので、幼児期に着目した取組をお願いしたい。
○園・学校に入っていただく地域の方々の育成システム(研修)の整備充実をお願いしたい。また事業を推進する人材の養成、人材バンクを作るなど、効果的効率的な運営管理がなされるとよい。
(3)教育ビジョンの明確化
○育てたい子ども像、目指す教育のビジョンを共有し地域の子どもを同じ思いをもって、育てていくことが一番重要である。公立幼稚園は地域に開かれた教育を推進してきているが、なかなか社会全体が安定していかないと感じる。従来の取り組みより双方とも一歩踏み込んで、子どもたちをどう育てたいのか、そのような社会にしていきたいのかを共に考え合っていかなければならないと考える。
(4)情報発信の工夫
○限られた人の考えだけで進められることがないよう、管理職以外の教職員や地域全体の意識を高めていくとともに、みんなが同じ方向で進んでいくようにするために情報を共有することが大切である。
○地域の方々が園に足を運びやすいような環境をつくることが大切であると考える。その際に、園の教育方針についての理解を図り、一緒に子どもを育てていこうとする気持ちをもっていただくよう働きかけることも大切である。
(5)幼稚園・こども園の位置付け
○学区制でない幼稚園は、地域住民との接点が少なく活動を組むことが難しい状況がある。そこで、学区の中にある小学校・中学校を核としたコミュニティーの中に位置付けてもらうとよいのではないか。
○幼稚園が地域と連携・協働して行うことの目的や子どもたちへの教育的意義などについて明確に提示し、地域の方にも納得していただいて実施するようにしていかなければならないと考える。
○幼稚園・こども園が地域の中で学校と認められるようにしていただきたい。
○幼稚園は広域からの通園者が多いので、園の地域と異なる生活圏の幼児も多いのが現状。通園している期間は、幼稚園のある地域とともに子どもを育てるのだという共通認識をもつ必要性があると考える。
(6)組織・仕組み作り
○PTA等既存組織との関係調整や複数の会議を一つにまとめるなど、運営組織の一本化が必要である。
○学校・園が中心になって進めることは有効と思うが、学校・園の負担となっては継続していかない。市町部局と教育委員会との連携の下で行っていくことが大切であると考える。市町村の中に拠点校を作り、実践研究を進めていく中で、成果や課題を明らかにしていくことも必要ではないか。
2 全ての学校のコミュニティ・スクール化を目指すに当たって考慮すべき点
(1)地域の特性を生かす
○地域のコミュニティーがある程度できている地域と、都市部では課題が異なると思われる。ぜひ地域の実態や特色に合わせて取り組んでいくとよいと考える。コミュニティー化率といった数値上の評価にならないよう配慮していただきたい。
○学校評議員制度を実施していない地域もある。無理なく推進していくことは必要と考える。
(2)コーディネーターの設置など人材の配置及び育成
○学校運営委員の組織が大きくなるほど、各家庭の個人情報等の取り扱いが難しくなると思われる。きちんとしたソーシャルワーカー等の責任をもって対応する人材が求められる。
○学校の管理職に仕事の負担が増えないようにしなければ、学校運営が多忙化し、教育の質の低下につながる危険性もある。学校と地域を結ぶコーディネーターの役割が大きいと感じる。
○地域に園長の経営方針を理解してもらうこと、園を学校と認識してもらうことがまず第一である。園が組織として確立するためには園長・教頭・主任・地域連携コーディネーター等が配置されることが大切あると考える。
(3)就学前から高校までの連携
○学区内の幼保小中高の交流・連携を進めていくことが、コミュニティーの中で基盤となると考える。
(4)学校支援体制の構築
○教育委員会等、行政が学校・園に手厚い支援体制を図っていただきたい。
○学校運営協議会と学校支援本部の二つの組織が別々に動くのは負担が大きい。一体化をしていくことが望ましいと思うので、そのために行政のバックアップをお願いしたい。
○園は教育の場であることをしっかり理解していただきたい。最近は、保育時間の延長・拡大が求められる傾向があるので、コミュニティースクール化によって、この役割を地域にもになっていただけるとよいと考える。
○地域に開くことによって、いろいろな人が出入りする可能性も増えてくる。園の安全の確保という視点も重要である。
○園の実態として、特別な配慮を要する幼児の増加、子育て支援、幼小連携の推進、教育の質の向上等、幼稚園の役割が拡大している。教職員の多忙感、負担につながらないような支援体制を期待する。
○実施したことをPDCAサイクルで、点検していくことが重要であると考える。
(5)推進体制作り
○学校ごとにコミュニティーをつくろうとすると、地域の負担が増えてしまう。小学校区、中学校区が単位となり、進めていくことがよいのではないとかと考えます。幼稚園・こども園もそこに位置付けていただけるとよいのではないかと思う。
○神戸市では中学校を中心として「区域別教育」の組織がある。学校評議員制度も定着し、園・学校運営について協力体制が構築されている。また「教育フォーラム」が数年前から教育委員会主催で開催されていて、地域住民に教育現場の様子を伝える機会もつくっている。こうしたすでにある体制を生かして取り組んでいかれるとよい。ぜひ国の研究拠点を決めて、研究・検証をしていっていただきたいと思う。
○行政機関と連携を図り、基本方針と長期計画を示していくことが大切なのではないかと思う。
初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付