資料10 全国特別支援学校長会 発表資料

中央教育審議会初等中等教育分科会「地域とともにある学校の在り方に関する作業部会(第7回)」における意見発表について

全国特別支援学校長会
平成27年8月31日

 「共生社会」とは、これまで必ずしも十分に社会参加できるような環境になかった障害者等が、積極的に参加・貢献していくことができる社会である。それは、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様な在り方を相互に認め合える全員参加型の社会である。障害のある子どもが、その能力や可能性を最大限に伸ばし、自立し社会参加することができるよう、医療、保健、福祉、労働等との連携を強化し、社会全体の様々な機能を活用して、十分な教育が受けられるよう、地域住民との連携・協働により、障害のある子どもの教育の充実を図ることが重要である。障害者理解を推進することにより、周囲の人々が、障害のある人や子どもと共に学び合い生きる中で、公平性を確保しつつ社会の構成員としての基礎を作っていくことが重要である。コミュニティ・スクールを通して次代を担う子どもに対し、学校において、これを率先して進めていくことは、共生社会の構築につながる。

【地域の活性化と安全な学校つくり】
・コミュニティ・スクールは、地域に開かれた学校をまちづくりの核として、地域活動を活性化させ、それを通じて、住民の「顔見知りの関係」「学校・地域への関心・理解」「課題を共有する関係」を深めていくことができる。また、まちづくりへの関心を高めながら「地域の安全・安心を支えるコミュニティ」を育て、学校の安全・安心に結びつけることによって、「地域に開かれた安全・安心な学校」が実現する。しかし、一般的に学区域が広域な特別支援学校においては、地域住民が必ずしもその学校の卒業生ではないことがあり、「私たちの学校」となるための努力は、より一層必要となる。

○学校と地域の連携・協働の推進に当たって必要な方策は、特別支援学校に通う一人ひとりの児童生徒の居住地における学校との「お互いに顔が見える」交流及び共同学習を進める。そのためには、担当の専任コーディネーターをおき、受け入れ先である地域の小中学校教職員、児童生徒の障害者理解を進めることが重要である。一人ひとりの取り組みが、共生社会へつながる障害の理解、一人ひとりを大切にする気持ちを育てることができ、障害のある児童生徒一人一人が地域とのつながりを深める絆となることができる。

【地域防災】
・東日本大震災以降、より一層地域防災の必要性が高まっており、コミュニティ・スクールを通して地域と学校が連携・協働していくことにより、学校としては一人一人の児童生徒の命を守る力強い応援団を得ることになり、地域としては、万一の際に安心して避難できる防災の拠点の一つともなる。

○学校と地域の連携・協働の推進に当たって必要な方策は、地域の消防、市町村防災担当、自治会長等で組織する防災教育推進委員会を組織し、学校と地域が合同で行う防災訓練を実施する。

【高齢者・障害者スポーツの拠点として】
・2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、障害者スポーツが大きく広がりを見せている現在、健常者と障害者が一緒に楽しむことができる多様な場を創出するためには、各地域において教育、スポーツ、福祉等の分野の関係者の連携による取り組みが重要である。コミュニティ・スクールをとおして、例えば特別支援学校施設を障害者スポーツの拠点とし、地域の子どもたちが早い時期から障害者スポーツに親しみ、障害があってもなくても、スポーツに親しむことができるということを理解させていく。また、アダプテットスポーツの観点からいえば、地域の高齢者にとっても、誰もが楽しむことができるレクレーションスポーツの創造拠点ともなりうる。

○学校と地域の連携・協働の推進に当たって必要な方策は、チーム学校として障害者スポーツ指導員の導入、アダプテットスポーツ研修会の実施、学校施設開放委員会の設置等、学校教育を担う教員以外のマンパワーが必要である。

【キャリア教育の推進】
・障害のある人の雇用状況は、10年連続で過去最高を更新し、一層進展している。今後、障害のある方が、地域で自立した生活を送るための就労を実現していくためには、コミュニティ・スクールの取り組みを活用し、より一層の障害者理解を進めることが肝要である。

○学校と地域の連携・協働の推進に当たって必要な方策は、例えば、地場産業への就労を目指す教育課程の工夫や地域の特産品を活用した作業製品の開発・販売をすすめる。また、地域の商工会議所との連携により、障害者雇用率報告義務のない従業員数49名以下の事業所においても、障害者理解を進め、さらに障害のある方の雇用促進につなげていく。

◆全ての特別支援学校のコミュニティ・スクール化を目指すに当たって考慮すべき点は、以下の3点。
 (1)特別支援学校は、学区域が広いため、地域も広範囲となる。そのため、学校運営委員を地域のどの地区からからどのような方を選出し、学校の活性化に取り組むかは課題である。
 (2)障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律が、平成28年4月より施行されるなかで、地域の方々が特別支援学校に通う一人一人の児童生徒の障害についての理解をどのように深めていくかが課題である。
 (3)学校に対しての様々なニーズがある現在、「チーム学校」としてコーディネーター、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、臨床発達心理士、作業療法士、部活動指導員、障害者スポーツ指導員等を置くことで、地域から「障害に関する専門的な学校」としての認知を受け、どれだけ興味・関心をもってもらえるかが課題である。

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初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付

(初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付)