資料5 平川委員御提出資料

平成27年6月23日
教育課程企画特別部会

初等中等教育全体を通じた観点から改革が必要な事項について

横浜市立中川西中学校
校長 平川理恵

  • 学習指導要領等の理念を実現するための、各学校におけるカリキュラム・マネジメントや,学習・指導方法及び評価方法の改善を支援する方策
  • 育成すべき資質・能力を踏まえた教育課程を編成していく上で、どのような取組みが求められるか
  • 判断の根拠や理由を示しながら自分の考えを述べることについて課題が指摘されることや、自己肯定感や学習意欲、社会参画の意識等が国際的に見て低いことへの課題解決

 上記の諮問事項を踏まえ、公立学校現場を預かる一校長として、方策・解決方法をご提案いたします。

1、開かれた学校へ

 文部科学省としては、「開かれた学校」へ向けた学校運営協議会の設置を進めていただいているところですが、より一層の推進をお願いしたいところです。
 地域・保護者・学校だけでなく、外部有識者を入れることにより学校運営の話の質が変わります。また、自治体によってまだまだ設置ゼロのところもあり、全国で「開かれた学校」に関する格差が出てきているのが現状です。この格差はゆゆしき問題であると思います。
 また、まだまだ「開かれた学校」に対して理解が浅い校長がいるのも事実です。より一層、開かれた学校への周知と施策をお願いしたいところです。

2、キャリア教育

 次期学習指導要領における小・中・高を通じた「キャリア教育」の位置づけをより明確にすることが解決方法につながると思います。特に、学習指導要領高校編にはキャリア教育という表現があるものの、小中学校編には直接的な表現がなく、違和感があります。また、キャリア教育と進路指導という表現の混在が学校現場の理解を遅らせている(特に中学校よりも小学校)ことから、この整理をお願いしたいと思います。
 何のための資質能力の育成か、アクティブラーニングの実施か、ということを全ての学校・教職員がしっかりと認識する必要があり、その根幹は現在のところ「キャリア教育」の実現と置くのが現場に理解されやすいと強く感じております。学校教育を通じて、子供たち一人ひとりに、1.人間関係・社会形成能力、2.自己理解・自己管理能力、3.課題対応能力、4.キャリアプラニング能力が育成されるよう、教員の目的意識とカリキュラム編成能力を引き出すべきだと思います。
 キャリア教育とは、ただやみくもに出前授業や職業講話を行う事では全くなく、いかに教科・単元と世の中を結びつけたものになるかが肝心であると思います。その時に注意したいのが、導入にあたるのか、深化・発展にあたるのかという事。世の中との結びつきは、企業・地域・NPO・個人等々さまざまな人たちが考えられます。そこをマネジメントし、「つなぐ」ことが今後の学校の役割ではないでしょうか。もちろん、学びにリアリティーを持たせる上で、職場体験活動やインターンシップの一層の充実と、事前事後指導を含む質の向上は重要です。
 キャリア教育を行うことにより解決できる大きな点については、子どもたちの学習に対する「興味関心」が少しでも上がるという事です。やはり世の中と各単元での学びがどのように結びついているかを知ると学習意欲も高まるものです。

3、資質能力を教員からボトムアップで ~小中連携の研修のあり方

 小中連携の研修を通じて、校区ごとに、子どもたちが9年間で身に着けるべき資質・能力(スキル)について考える研修方法をご提案します。全国のことはわかりませんが、昨今、中学校をベースとした小中学校全体の教職員が、夏休みなどを活用し一堂に会す機会が多くなっているかと思います。
 議題のイメージとしては、学区ごとに21世紀を生き抜くために「弱い資質・能力」とは何か?を決めます。そして、例えば「コミュニケーション力」と置いたとして、小学校1年生から中学校3年間までの9年間を学年ごとの先生に集まってもらい、各学年で身に着けさせたいコミュニケーションとは何かを具体化してもらいます。その後、全体で共有し微調整します。これにより、小中合同の授業研究等でもお互い見合う観点が定まります。
 この他、例えば、「心豊かな人」になってほしいなど、どうしても育てたい子ども像について抽象的な目標を立ててしまいがちなのが学校文化ですが、「心豊かな人とは一体どんなスキルを持った人ですか?」を具体的にかつ学年ごとに話し合っていくことによって、育むべき資質・能力について教員同士の共通認識が生まれます。

4、バカロレアMYP活用の促進

 論理的思考力や表現力・探究心等を備えた人間育成を目指す国際バカロレアのカリキュラムの公教育導入により、アクティブラーニングの促進が行われることを提案いたします。今や世界でも、私立ではなく、公立学校でのIB導入が進んできており、現在、世界でIB導入をしている公立学校は私立学校を抜いて56%を占めるに至っています。
 DPについては、導入を促進するための教育課程の特例措置が設けられることになりました。これにより、DP認定校の拡大が見込まれます。それとあわせて、MYPについても活用が広がることを強く望みます。中学校におけるMYPの活用が促進されるよう、教育課程上の課題について早急に検討すべきだと思います。
 このための施策として、MYPに関する調査研究の実施や、予算措置(国際バカロレア機構への申請料ならびに教員養成費)の検討が必要になります。学校運営協議会の広がりもそうですが、各都道府県に1~数校DPとMYPができれば、それらの学校を拠点にかなりアクティブラーニングは推進されるものと思われます。

バカロレア導入のメリット

  • 授業と評価の一体化が実現できる。単元ごとにユニットクエスチョンを作り、育む学習者像も設定し、リフレクションを多くとることにより、生徒の評価への納得度が深くなる。
  • バカロレアからの外部評価があり、その基準値はかなり明確なので先生たちに理解されやすい。また、教職員集団は明確な短期的かつ具体的目標を与えるとものすごい力を発揮する。バカロレアを取組むことにより、教職員集団も論理的思考力や表現力、探求心を備えた教師に成長するはずである。人材育成の観点からも有効である。

バカロレア導入のデメリット

  • 打ち合わせ時間や考える時間が多くなるので、時間の確保が必要。(部活との整合性)
  • バカロレアをやりたくない先生にとっては苦痛
  • 評価評定の基準が違う。学大付属国際は5段階評定と7段階両方つけている。
  • バカロレアで学習した後、高等学校にて旧式の一斉授業を受けるとその落差に学習意欲を削がれるかもしれない

以上、ご検討のほどよろしくお願いいたします。

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