教育課程部会 教育課程企画特別部会(第21回) 議事録

1.日時

平成28年10月6日(木曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 3階第一講堂、3F1特別会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」に関する関係団体からの意見聴取
  2. その他

4.議事録

〈第一講堂〉
【無藤主査】    それでは、定刻となりましたので、ただいまより中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会教育課程企画特別部会の第21回を開催いたします。本日は、お忙しい中、御参集いただきまして、ありがとうございました。
  早速ですけれども、本日は、報道関係者より会議の撮影及び録音の申出があり、これを許可しておりますので、御承知おきください。
  本日でありますけれども、8月に取りまとめました「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」に関して、関係団体からのヒアリングを行います。
  まず、お手元の資料1-1に、今後のスケジュールというものがあろうと思います。そこにありますとおりですが、本日を含めて4回程度、合計で50団体からヒアリング等により御意見を頂戴したいと存じます。ヒアリング等を予定している団体につきましては、資料1-2にございますので御覧ください。
  なお、ヒアリングに御出席がかなわない団体につきましては、書面で御意見を頂く等の対応を予定してございます。
  その後でありますけれども、ヒアリング等で頂いた御意見、及び現在行われておりますパブリックコメントなどに出された御意見等を踏まえまして、11月中旬から12月にかけて、答申に向けた御議論を本分科会で行うということでございます。
  さて、本日のヒアリングの進め方でございますけれども、本日は九つの団体からのヒアリングを予定してございます。限られた時間の中で、各団体の御発表をしっかりお聞きするために、資料2、本日の運営(案)というものがあろうと思います。そこにありますとおり、会場を二つに分けて行いたいと思います。すなわち、この部屋ともう一つの部屋ですが、もう一つの会場の進行につきましては、主査代理でございます天笠先生にお願いしたいと存じております。
  なお、次回以降でございますけれども、団体の数が多い場合には、今回のように二つの会場に分けてヒアリングを行いたいと考えております。いかがでしょうか、よろしゅうございますでしょうか。ありがとうございます。
  それでは、各団体からのヒアリングに入りたいと思いますので、事務局より御案内をお願いいたします。
【西川教育課程企画室専門官】    ありがとうございます。
  資料2を御確認いただきまして、3F1特別会議室に御移動いただく委員の先生方、大変恐縮でございますが、係の者が御案内させていただきますので、御移動をお願いしたいと思います。その際、お手荷物と配付資料のみお持ちいただければと思います。机上資料については残しておいていただければと思います。よろしくお願いいたします。
  なお、傍聴の皆様におかれましては、事務局からまた御案内をしますので、それまでしばらくお待ちください。
  それでは、傍聴の方々も御移動される方いらっしゃいましたら、3F1特別会議室の方に御移動ください。
(  休憩  )
【無藤主査】    それでは、皆様おそろいということで、関係団体からのヒアリングを始めたいと存じます。
  各団体の皆様、本日はお忙しい中、御足労いただきまして、ありがとうございました。
  この時間帯にお見えになっている団体は3団体でございます。日本私立小学校連合会様、全国公立学校教頭会様、全日本私立幼稚園連合会様、以上でございます。
  それでは、各団体からの御発表を開始したいと存じます。各団体の発表は10分、そして3団体の発表全てが終了してから、委員の皆様方の御質問や意見交換の場というようにさせていただきたいと存じます。
  それでは、まず、日本私立小学校連合会様からお願いします。よろしくお願いいたします。
【日本私立小学校連合会】    よろしくお願いいたします。日本私立小学校連合会を代表しまして、会長の小泉がお話しさせていただきます。お手元にお渡ししておりますプリントの内容について、この順番で御説明をさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
  まず、今回の「審議のまとめ」を拝読いたしまして、様々な点で新しい教育の推進を感じておる次第です。その上で、更にここの部分についてということについてお話をさせていただければと思います。全体のものを否定するということではなく、非常にすばらしいものであるということを前提にお話をさせていただきたいと思います。
  まず、1点目ですが、「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」という表の中の言葉が非常にすばらしいと思いました。誰にでも分かる表現であるということ、ここの部分については大変分かりやすい表現ですし、できればメーンの言葉として使用していただきたいということが挙げられています。目標への迫り方が非常に明確になっていますし、現場の教職員もこれであれば理解がしやすいというように思っております。
  2点目ですが、中に「深い学び」という言葉が語られています。この深い学びは、「主体的・対話的で深い学び」という表現になっていますが、この深い学びに対する反対が「浅い学び」ということになるんだと思いますが、この浅い学びというのはどういうものであるのか。その裏側に深い学びがあるのではないかと推測をするわけですけれども、この深い学びを計る基準といいますか、今までのどこが浅くて、これからはどこが深いのかということ、これが明確になると分かりやすいかと思っております。
  3点目になりますが、全体、お渡しいただきましたものを読んでいる中で、やはり片仮名文字の表記が非常に多いということを感じています。私、実は英語の教師で、平成元年の指導要領のときに、初めて指導要領の中に「コミュニケーション」という抽象的な片仮名文字が出てきたと思っています。今でも、抽象的なコミュニケーションというものをどう捉えるのか、それぞれの人の捉え方になってしまうということが起こっていると考えられます。
  アクティブ・ラーニング、カリキュラム・マネジメント、プログラミング教育、このプログラミングというのもどうしても、ここでICTとの関係で語られていますが、ICTとの関係だけでないプログラミングというものが確実にもともとあるわけで、後から出てきたものがICTとの関連ではないかというように思っています。それをどう捉えるか。
  また、PDCAサイクルという言葉が唐突に使われておりますけれども、私、教育の中で、この言葉は余り聞くチャンスが今までにもありませんでした。文部科学省の方からの説明などをお伺いしたときに、この言葉が唐突に出てきたということ。そうすると、これは教育の場で通常、使われている言葉ではないのではないか。多分、経済や製品管理だとか、そういうものの中で使われている計画・実行・評価・改善という言葉で、かえってこちらの方が意味が分かりやすいということで、表現で抽象的なものになってしまっている。
  特に、こういう片仮名表現などにつきましては、抽象的で、結局、日本の文化的背景がないから片仮名語で表していることが多く起こり得るという、日本語に直しにくいものである。それならば、日本語に訳す翻訳語がないならば、細かい説明を明確にしておかないと、それぞれが取りたいように取ってしまうということがあるのではないかと考えています。この点についてはちょっと御検討いただいて、できるだけしっかりとした説明を付けていただければというように思っております。
  4点目です。様々な箇所で、余りに「アクティブ・ラーニング」という言葉が氾濫しているのではないか。先ほど申し上げましたように、「コミュニケーション」という言葉は、現行の指導要領の小学校の外国語活動の中には全部で19か所、実は2.5ページの中に19個のコミュニケーションという片仮名文字が入っております。ですから、アクティブ・ラーニングも同じ扱いになってしまって、一過性のものになった場合、それがどういうものであったのかという具体的なものが見えにくくなってしまうのではないかと思います。まさしくアクティブ・ラーニングは、最初に申し上げました「どのように学ぶか」の一例であって、これだけが独り歩きをして、全てのことの解決になるということではないように思います。余りに抽象的な言葉になっていないだろうか、これも説明を要する必要があるように思っています。
  次、5点目です。新しい考えや方法を提示する場合、今までの考え方や方法との関係を明確にし、何をどのように実施するかということについてです。現場の教員に分かりやすい説明をしていただけると有り難いと思っています。まず今までのものを堅持しようというのが現場の教員の体制にはなりますし、その上で新しいものを入れていくということが、教員の仕事量を増やしたり、両方、二つの概念を一緒くたにしてしまうような状況になったりしますと、教育現場での混乱が予測できると感じています。過去の教育の成果、あるいはよかったもの、それを新しい教育の中でどのように取り入れて、新しいものをどのようにそれに加えていくのかということ、この辺の具体的な示唆が頂ければ有り難いと思っています。
  6点目です。外国語教育において「聞く」「話す」「読む」「書く」に関する5領域だったでしょうか、「全ての領域をバランスよく育む」という言葉が出ていますが、言語活動における原点は、まずは十分に聞くことであるというように思っています。聞く活動の十分な体験が他の4領域の進展につながると考えています。そして、小学校でのメリット、中学校でのメリット、高校でのメリット、大学でのメリットというのは、多分、それぞれ違う状況が起こってくる。そのためには、小学校で全体のバランスをよくするのではなく、小・中・高・大の全部を通して最終的にバランスが取れるというのが、本来の言語の習得の形ではないかと考えております。
  小学校については聞くという、生まれたばかりの子供が3歳、4歳、5歳までのところで一生懸命にやる部分が一番重要であって、突然、3歳の子供に日本語の書き方を教えることはないということと同じような状況が生まれてくる。この「バランスよく育む」という言葉は、時間的にバランスをよくするのか、内容的なバランスを取るのか、あるいは全体を通してのバランスをよくするのか、この辺を明確にしていただきたい。
  同時に、もう一点は、小学生が持っている最大のメリット、聞いて理解ができるということ、このファーストステップにもっと力を入れる形が入ると有り難いと思っています。
  最後ですが、私立小学校における、あるいは私立学校における道徳教育については、私立学校の創立そのものが道徳教育であると私どもは考えております。私立学校への特別な配慮について、何かの形で明示していただけるものがあると有り難いと思っています。
  以上、御報告です。ありがとうございました。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、続きまして、全国公立学校教頭会様から御発表をお願いいたします。
【全国公立学校教頭会】    神奈川県川崎市から参りました全国公立学校教頭会会長、池端と申します。よろしくお願いいたします。
  全国公立学校教頭会として、今回の改訂において、「将来の予測が難しい社会の中でも、伝統や文化に立脚した広い視野を持ち、志高く未来を創り出していくために必要な資質・能力を子供たち一人一人に確実に育む学校教育の実現を目指す」との基本方針の下、知識の量や質と思考力等の両方を重視して教育課程を編成していくことについて、全面的に支援したいというように考えております。
  今回の「審議のまとめ」で、全公教として、全国公立学校教頭会の略称でございますが、注目するのは、「10.学習指導要領の理念を実現するために必要な方策」についてです。実現のためには、このまとめでも述べられておりますように、学習指導要領の実施に必要な人材や予算、時間、情報、施設設備といった資源を、どのように整えていくかという条件整備等についての検討は欠かすことができないというように考えております。
  私ども教職員は、日々、研修に努めております。中でも中心を成すのは、国際的にもレッスン・スタディーと呼ばれ、評価されている授業研究でございます。この授業研究を中心に、アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善、外国語教育等の新たな教育課題へ対応した教育研修、教員研修を実施していくことが大切と考えております。
  また、資質能力の三つの柱に基づき、カリキュラム・マネジメントの中で、学校教育目標や学校として育成を目指す資質能力を明確にし、家庭や地域とともに共有しながら教育課程を編成していくことが求められています。そのためには、教職員の指導体制を整備していくと同時に、研究、研修のための資料、時間的確保も重要であると考えております。
  まとめでは、次期学習指導要領等における指導や業務の在り方に対応するために、必要な教職員定数の拡充を図ることも求められています。小学校における外国語等の専科教員、研究等に必要な教員定数の充実、ティーム・ティーチングや少人数指導を実施するための定数確保、そして多様な子供たち一人一人の状況に応じた教育のための教員の基礎定数化等は本当に重要なものであると考えております。
  また、教育課程全体を通じたインクルーシブ教育システムの構築を目指す特別支援教育の充実も求められています。通常の学級に在籍する特別な支援を要する子供たちの増加が指摘されている中、一人一人の教育ニーズに応じたきめ細やかな指導や支援ができるよう努めなければなりません。そのための研修、それから特別支援教育コーディネーター等の人的配置も必要と考えております。
  文部科学省の「次世代の学校」指導体制実現構想、こちらの資料を拝見いたしましたけれども、横浜市を例として児童支援専任教諭の全校配置、私の所属している川崎市でも今年度までに3分の2の学校で配置が完了しておりますが、その配置によりまして、いじめ、不登校の未然防止、早期対応に効果を上げることができたとの報告がございました。児童支援専任教諭の配置、基礎定数化についても、今後、御検討いただけると有り難いと思っております。
  地域と学校の連携・協働に向けた、地域と一体となって子供たちを育む「地域とともにある学校」への転換、コミュニティ・スクール推進のためには、地域住民や学校との連絡調整を行う地域コーディネーター、こういう名称を使っていただいておりますが、コーディネーターの育成、確保などを行うことも重要と考えております。
  教員が誇りや情熱を持って、使命と職責を遂行できる環境が不可欠です。長時間労働の状況を改善し、子供と向き合う時間を確保するためには、教職員の業務の見直しや、統合型公務支援システムという言葉で表していただきましたが、公務支援システム等の整備が必要と思います。
  また、多忙化の一因として指摘されている中学校の部活動については、これまでの中学校の先生方の成果を是非評価していただきながら、その中でもやはり休養日の設定の徹底や、外部人材の活用などの運営の適正化が必要なのではないかと考えております。
  ICTを活用できる環境を整備していくことも必要です。教育効果が高く、教員にとって使いやすい機器や教材を学校現場に提供していただくことを願います。私どもは、そうした機器や教材のよさを生かした授業が展開できるよう、教員研修に努めていきたいと考えております。
  前回の改訂では、教員全員に学習指導要領が行き渡るようにし、保護者全員に改訂のポイントを分かりやすく解説したパンフレットを配付するなどの周知、広報活動を行っていただきました。これにより理念の共有が図られました。こうした取組の継続を希望いたします。
  最後に、社会に開かれた教育課程、チームとしての学校等の実現を通じ、複雑化、多様化した課題を解決に導いたり、教員が子供と向き合う時間、精神的な余裕を確保したりできることを全公教として切に願っております。同時に、学習指導要領の理念、実現に向けて、教育諸団体とともに、国への働き掛けを含め、尽力していきたいというように考えております。
  以上でございます。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、全日本私立幼稚園連合会様、お願いしたいと思います。
【全日本私立幼稚園連合会】    全日本私立幼稚園連合会、副会長の田中雅道と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
  全日本私立幼稚園連合会を代表いたしまして、三つの視点で意見を述べさせていただきたいと思います。レジュメは出しておりません。ここでの口頭のみの発言になります。御了承ください。
  今回の学習指導要領の改訂、前回、学校教育法の第1条で学校規定の順序が変わりまして、学校とは幼稚園、小学校、中学校という規定になって、実質的には初めての改訂であろうというように思います。事実上、20年の改訂もその範疇に入るわけですが、法律が定まって以降、落ち着いた議論をした内容としては初めてだと思っています。
  その中で、幼児期から一貫した学力観というものを貫いていただいた、まとめをしていただいたことに敬意を表します。幼児教育というのは、小学校の教育の下請ではなく、生涯の基盤を培うものという形を定義されております。長い目で見て、幼児期に何を育てるのかという視点をこれからも大事にしていきたい。我々、現場の者も大事にしていきたいと考えています。
  その中で、5歳の修了時までに育ってほしい具体的な姿という10項目が明記されました。これが到達目標という形にならないように、配慮した表現にしていただいたことを有り難く思っています。
  ただ、私の場合は幼稚園ですが、幼稚園で育っている子供たちというのは、例えば文字への関心を導くということに関しましても、ごっこ遊びを通して、そのメニューを書いていったりという形で文字へ関心を持っていく子もいます。スポーツが好きな子供の場合には、自分が体を動かし、その試合の経過の中で得点が分かり、そして憧れの選手の名前を通して文字を分かっていく。自分の名前、人の名前というものは、一つの名前から音に分けられていって、その音一つ一つに対応する文字があるのだという発見の過程が、実は幼児期にとって一番大事、重要な項目でございます。その道順は一人一人によって違うということが前提で幼児教育が組み立てられておりますので、何々ができるようになるという、そろったものを求めるような方向にならないように、これからも是非配慮をしていただきたいと考えています。
  当然、小学校は義務教育ですから、一定の教材があり、そして教科書があり、同じような内容を身に付けるということが重要な課題であることは事実ですが、幼児教育にとって重要なのは、それぞれが歩んでいく道順を自分の中で切り開いていっている、周りにある様々な事象を自分の中でルールとして意味付けていっている。実は、この流れの延長に義務教育の土台があるのだということを理解した形での応援を、是非お願いしたいと考えています。
  第2点は、全ての子供に「学びの表記」というものを行き渡らせる努力が、これからは必要であろうというように考えています。御承知のように、子ども・子育て支援新法ができまして、幼児期の環境は幼稚園、こども園、保育所という3省3元体制になりました。それぞれの体制の中で、今回の幼児教育部会の取りまとめの基本的な理念は全て引きずられている、そのことは間違いない事実であります。
  ただ、幼児期にとってもう一つ大事な要件は、環境による教育、自分が、自らが環境に関わった、その中で自然に興味を持つ者は自然に興味を持ち、人間関係に興味を持つ者は人間関係に興味を持つ、それぞれの道順が保障されていくには、豊かな環境は必要不可欠なものであります。他省庁の話にはなりますけれども、例えば保育所の場合、待機児童解消のために園庭が全くないビルの中でも4、5歳児が過ごしている。一方にそういう現実があるということは、我々はもう一度、認識しなければならないだろうと考えています。
  今回、文部科学省の幼児教育部会でまとめた、本質的な幼児期からの学びの一貫性を全ての子供に保障するということを、これから文部科学省としてどのような形で考えていくのかということについて、リーダーシップをとって進めていっていただきたいということを強く切望いたします。
  三つ目ですが、国の議論として様々まとめていただいている方向性というのは十分理解し、いい方向の中にこれからの教育の方向性を出していただいていると思います。ただ、地方に行きますと、今回の改訂を受けても、義務教育は変わらない、その義務教育に幼児教育が合わせてくれと、こういうような要望が現実にある、事実だということを是非御理解いただきたいと思います。全ての校種の中で、幼児期からの一貫した学びというものを広めていくんだというベクトルがない限り、変わらないところにひっついてくれと言われても、現場としては受け入れ難い部分が出てきてしまう。地方の伝達の中で、ここで議論されている本質がなかなか伝わりにくいということを是非御理解頂きまして、ここで議論した内容の本当の意味は何なのということを伝えていくことについて、文部科学省として十分な配慮をしていただきたいというように考えております。
  最後に、幼稚園教育要領では「領域」という言葉を使っています。小学校以降は「教科」「科目」という形になります。幼児期の未分化な情報、子供の視点でいくと情報の取り方がまだまだ未分化な中で、総合的な遊びの中から様々な要素があるという意味で領域という言葉を使っています。そして、一定整理された情報が入ることが有効であると考えられる小学校以降の義務教育では、「教科」という発想を持っているというように思っています。そのことが本当に一般社会の人たちに伝わるということが、非常に重要な要素であろうと思っています。幼児期も教科的な発想で、分けてやればいいということが現実的に起こっていることも一方では是非認識していただき、幼児期にとって本当に必要なものは何なのかということをもう一度、文部科学省でも発信していただきますよう、努力をお願いしたいというように思っています。
  以上でございます。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、三つの団体から御発表をいただきましたので、意見交換の時間に入りたいと存じます。ここからは、委員の皆様方から御意見、また御質問を頂戴したいと思いますので、いつものようにネームプレートをお立ていただければと思います。よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
  では、市川委員、お願いします。
【市川委員】    私の方からは、一つ、深い学びということなんですが、深い学びというのはアクティブ・ラーニングと関係して、今は主体的・対話的で深い学びという言い方がなされますが、どうも深い学びが一番分かりにくい。議論も、最初から一つの深い学びの規定になったわけではなくて、いろいろな議論を繰り返しています。確かに、深い学び、いろいろな意味に取れますが、少なくとも今のところはこのように私も理解しています。
  深い学びというのは、習得、活用、探究、全体に渡ってくることですが、まず習得ということから言えば理解を伴った習得ということです。それに対して、浅い学びの中での習得とはどういうものかというと、理解を伴わない、単なる反復、習熟して、断片的な知識を持っているだけ、これはやはり浅い習得ということになってしまいます。
  活用ということから言えば、せっかく習ったことはやはり広い活用を目指したい。前時に習ったことを活用して本時の学習に役立てると、これも確かに活用ではあるんですが、できればもっと広い活用といいますと、例えば相当離れた単年とか学年であっても習ったことが生かされるとか、ほかの教科にも生かされる。さらに、学校で習ったことが生活文脈の中でも生かされる。そういう広い活用が起こっているというのであれば、これは深い学びと言えるだろう。しかし、浅い学びということになれば、活用も非常に狭い範囲で、例えば算数・数学で数値を変えたくらいの問題にしか活用できないとなったら、これは広い活用とは言えない。活用の中にも、そういう深さ、浅さというものがあるだろう。
  それから、探究に関してですけれども、あることを学ぶことによって、更にそこから問題意識が湧いていて、自分なりの興味、関心に沿ったテーマを設定して、それを追求しようというようなことが起こってくるならば、これはかなり深い探究ということになると思います。
  一応、習った文脈で習得や活用はできるけれども、自分なりの問題意識が起こってこないとか、そこから興味、関心が湧いてこないというようなことになれば、そもそも探究に至らないわけで、習得、活用、探究それぞれの中で、深い習得、深い活用、そして深い探究が起こっていくこと、これが深い学びということになっていくのではないかと思います。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  今回については、御質問ない場合でも、最後にコメントの時間をもう一度差し上げたいと思いますので、よろしくお願いします。
  ほかにはいかがでしょうか。では、お願いします。
【今村委員】    失礼します。先生方のお話を聞きまして、ちょっと総論で意見を述べさせていただきます。
  今回、改訂を一番アクティブにしなければいけないという前提で、これまでアクティブ・ラーニングを最も導入というか、改善の観点にしていかなければいけないという、やはりメーンは高校だという前提が、この委員会のこれまでの議論の中にあったかと思うんです。それは、別に高校だけが変わらなければいけないというわけでないし、もちろん小学校、中学校、幼稚園についても深い学びを実現していくために、より改善をしていくということは必要です。やはりここ10年のOECDの結果などで、小学校、中学校については相当学力の改善も見られているという点もあるし、小学校の先生方などと話すと、どこに行っても既にアクティブだから、これ以上、何をさせるんだという声も頂くわけです。
  そういえば、この「審議のまとめ」の中に、これまでの学校種ごとの評価みたいなものが余り記載していないのかなと、4ページに一応、総論としての評価は書いてあるんですけれども、やはり高校入試がこれまで構造的に縛ってきた高校の学びを変えていくことがメーンなんだということを、ここにもうちょっと強めに、分かりやすく明記すれば、小学校や中学校の先生方が、これ以上、何をさせるんだという気持ちにならなくて済むのかな、なんていうことを思いましたというのが一つです。
  もう一つは、先ほどお話がありました、アクティブ・ラーニングという言葉、またカリキュラム・マネジメントという言葉などの片仮名が分かりづらいという点について、これは質問ですけれども、この資料でアクティブ・ラーニングという言葉が一番初めに出てくるのは23ページになっていまして、その中にそれなりには、「子供たちそれぞれの興味や関心を基に、一人一人の個性に応じた多様で……」ということは書いてあるわけです。さらに、学習内容、例えば対話的な学びにしていくんだということが書いてあるんですけれども、もっと具体的にされた方がいいということなんでしょうか。そうすると、型を絞ってしまうのではないかという懸念をしているんですが。
【日本私立小学校連合会】    よろしいでしょうか。
【無藤主査】    はい、どうぞ。
【日本私立小学校連合会】    この間、ある教育新聞の中である方が、アクティブ・ラーニングに「能動的学修」という言葉を使っていらっしゃったんです。そうすると、アクティブという言葉に対して、アクティブの反対にあるものがパッシブであるという感覚ではない人たちもいらっしゃる。要するに、アクティブというのは体を動かすことだと捉えるケースも、少なくとも小学校の教師だとか、私はたまたま英語の教師ですから、アクティブに対してはパッシブが反対語としてくる、それでよろしいわけですよねというように捉えているんですが、ある学会といいますか、研究会の集まりの中で、子供、特に幼児教育におけるアクティブ・ラーニングで、みんなで体を動かしましょうということが行われているわけです。私、実際にその研究会に出ましたけれども、大きな間違いをしているわけです。
  この間、ちょっと文部科学省の方からも説明があって、アクティブ・ラーニングを括弧の中に入れて、「主体的・対話的で深い学び」とここに書いてある。だから、主体的・対話的で深い学びというのがアクティブ・ラーニングだと、これは捉えられますよね。23ページにも書かれています。ただ、このアクティブというものを本当の意味でどう捉えるのか。要するに、主体的であるということでいいのか、その主体はどこにあるのかということや何かについても明確にしないと、この言葉そのものが独り歩きをしてしまうのではないか。私はそう捉えているんですが、もしかすると皆さん方と違うかもしれないという、いろいろな意味を持つ。
  私は、「コミュニケーション」という言葉にすごく引っ掛かって、今までのところを考えてきているんですが、コミュニケーションというのは言葉のやり取りをすることと捉えている人もいる。言葉のやり取りではなくて、もっと深い心のやり取りだとか、あるいは国同士の何かの対話であるとか、そういう考え方、捉え方をする場合もあります。浅い意味で言うと、「Hi!  Hello,  How  are  you?」でコミュニケーションかと、ただ言っただけがコミュニケーションのような英語活動が行われているのも事実です。
  そういう意味で言うと、コミュニケーションという言葉が危険であったのと同じように、アクティブ・ラーニングがもうちょっと説明なり、アクティブの説明をしていないように私は思うんです。主体的ということにあるんだと思うんですけれども、この主体的に対する反対側がどういうものであるのかということの説明が言葉での説明である。アクティブ・ラーニングというのは、もう言葉が先行していますので、それを否定しようとは思っていないんです。もう世の中でこの言葉が広がっていることも事実ですし、教育界の中ではかなりこの言葉がもう広がっている。ただ、それをみんなが違った視点で捉えてしまうと全く違う、体を動かしていればいいんでしょう?  ということになってしまうようなことが起こる可能性がある。それを危惧しているということです。
【無藤主査】    ありがとうございました。
【合田教育課程課長】    済みません、事務的な補足で大変恐縮でございます。
  先ほど、今村委員の御指摘の義務教育と高校教育についてでございますが、お手元の青い審議まとめの44ページをごらんいただきますと、これはどのように学ぶか、まさにアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善という文脈でございますが、44ページの下から2つ目の丸におきまして、義務教育におきましては多くの実践が積み重ねられてきたと。特に小・中学校ではということで、関係者の意識改革や授業改善に大きな影響を与えた、これは優れた実践を踏まえた成果であると。他方、高等学校、特に普通科におきましては、大学入試の影響などもございまして、小・中学校に比べて知識伝達型の授業にとどまりがちであること、卒業後の社会生活に必要な力の育成につながっていないといったような指摘がなされていて、義務教育の成果を確実につないで、一人一人に育まれた力を更に発展、向上させることが求められているという御議論を賜ったと思っております。これは非常に大事な、重要な、基本的なコンセンサスとして、更に議論を深めていただければ有り難いと思っております。
【今村委員】    済みません、見落としていました。ありがとうございます。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  アクティブ・ラーニング、カリキュラム・マネジメント等の片仮名語については、御指摘のことはいろいろな方面から同じような意見を頂いておりまして、「審議のまとめ」ではできる限り注釈も入れているんですけれども、今後は、指導要領本文にはなかなか詳しい解説は難しいでしょうけれども、解説書と、また、それ以外の方法や手だてで、より分かりやすくしていきたいと思います。ありがとうございました。
【牧田委員】    失礼します。今の質問の中の5項目めに、現場の教員の仕事量が増えたり、双方を生かそうとしたりすることで混乱が予想されると。私も現場の教員でして、そういう話はいろいろ聞いているんですけれども、今のアクティブ・ラーニングのことにもつながるのかもしれませんが、理念は、生きる力という面で言いますと、私は変更していないと思うんです。ただ、実際、今までの学校現場の動きとして、いろいろな問題が出てきていると。活用力が乏しいとか、議論ができないとか、自己肯定感が低いと。そういうことの反省は何かということを踏まえて、もう一度、目的を明確にしようという趣旨かなと思うんですね。
  目的を明確にするという意味で言いますと、「審議のまとめ」11ページ辺りに学校教育を通じて育てたい姿というのがまとめられているわけですけれども、それに近付くための今のいろいろな学習の方法でありまして、だから、そう考えますと、今までやっている授業の中でもこれに沿ったものが非常にたくさんあるわけです。その辺を、現象面だけではなくて、何を狙っているのかということを一旦ここで整理しましょうと、資質能力という形で整理しましょうと。そうすることで、いろいろな人が議論もできるし、今、やっている実践の意味が分かる。実際、そういうつもりで目的を持ってやるならば、子供への評価も変わるし、ただ目の前の試験を通過するだけではない。
  そういうことで考えますと、私、決して増えていくというものではなくて、これこそ言葉、表現は曖昧になるかもしれませんが、教育内容、教育方法が深まっていくと。そういうように捉えますと、決して負担になる、足し算、足し算で増えていくという感覚ではないと思うんです。そういう目的について、今、やっていることはどうかと教員が捉え直すいい機会かなと思っています。
  以上です。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  ほかに。どうぞ。
【品川委員】      少し感想を申し上げたいと思います。先ほどの小泉快調のお話、横文字が多いというのは私も全く同感です。今も、いろいろ各地の教員研修をやるときに、とにかくアクティブ・ラーニングはどうすればいいんですかというようなことを、それこそ集中的に言われたり、あとコミュニケーションについてもおっしゃるとおりで、コミュニケーションの定義がもう本当に人によって全然違うんです。でも、先生、それは横文字だけではなくて、日本語においても、現場の管理職だけではなくて教育委員会の方とお話をさせていただいても、例えば「自立」という言葉に対して、それぞれの方が考えているものが全然違ったりするんです。ですので、片仮名に至っては、よりそういうことが起こり得るだろうということは、本当に危惧されているとおりだと感じました。全くそのとおりだと思います。
  一方、これは私、いつもいろいろな先生方にお会いするときにお願いするんでが、やはり先生方もこの原点に当たるということを是非、習慣付けていただきたい。確かに、世の中に横文字が出ると、新聞、マスコミもばっと飛び付きますし、今、書店に行きますと、アクティブ・ラーニング、カリキュラムと物すごくいっぱい本が、既に氾濫しておりますが、ちゃんと元に戻っていただければ、いろいろなことが解決できるのではないかと考えます。
  先ほど幼稚園の先生の方から、地方では義務教育に幼児教育を合わせろと言われている現状があるという御指摘を頂きまして、私も実際に各地の幼稚園に伺いますので、それは痛感するところです。そのときにいつも何と申し上げるかといったら、では一体、国の法律は、あるいは通知は何を書いているのかと。これが本来の原点なので、これをベースに話すという習慣を是非、皆さんの方にもお願いしたいと、いつも思っております。
  広報は、確かに薄くまとめればまとめるほど、分かりやすくすればするほど、大事なことは細部に書いてあるので、どうしても漏れてしまうんです。だから、やはり原点に帰るという習慣を是非、学校の先生方、現場の教員だけではなくて、管理職の方々にもそこはお願いしたいというように思いながら拝聴しておりました。
  もう一つ、先ほど新しい単語の中で、PDCAサイクルという言葉は全然聞いたことがないとおっしゃっていました。これはいつから出てきたかといったら、平成19年の特別支援教育なんですね。特別支援教育を始めるときに、要は多様な子供たちの背景、実態把握のときには、しっかり実態把握をして、計画を立てて指導して、うまくいかなかったら更に変えていきましょうというところから出てきた、特に教育界に入ってきた言葉なんです。アクティブ・ラーニングやカリキュラム・マネジメントも、時間がたてばまたいろいろ浸透していくとは思うんですが、意外とそういう歴史的背景があることもこういう資料だと書いてあるので、読んでいただければいいかなというように思いました。
  どうもありがとうございます。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  ほかにいかがでしょうか。どうぞ、お願いします。
【三浦委員】      ちょっと御質問差し上げたいんですけれども、全公教の方から、2ページ目の上の方に、教職員の業務見直しは統合型公務支援システムの整備が必要だといったような記述があります。先ほどの牧田委員のお話とも関連してくるんですけれども、いずれにしても先生方が子供たちに対して深い学びに導こうとしたときに、今までのとおりにすごく忙しい中でずっと歩き回って、走り回っている中で、そういった教育に結び付けるというのは非常に困難といいますか、やはりどこかで立ち止まって考えるといいますか、精神的なゆとりが前提になってくるのではないかと思います。
  私が一番懸念しているのは、そもそも学校現場の先生方がこういった新しい教育の理念を受け止めるような状況といいますか、精神的な余裕があるかどうかというところでございまして、この業務見直しとか、統合型公務支援システムの整備云々をというところを、もう少し御説明いただけますと大変有り難いと思います。
【無藤主査】    では、教頭会から。
【全国公立学校教頭会】    現場の教員が一番負担に思う業務というのは、直接、授業とは関わりのない業務内容、端的に申し上げますと、給食費の徴収、未納対応、未納の部分はほとんど教頭が対応しておりますけれども、その他もろもろの子供たちの教育活動を側面から支える業務というのが多岐に渡っていることです。その部分での負担が何らかの形で軽減できないか。そのことは、実は「チーム学校」の中での、事務職員の仕事の見直しとかも関わっておりますけれども、先生方が子供たちと向き合う時間が少しでも増えればと思います。学校によって、それから地域によって業務内容がかなり違いますので一概には言えないんですけれども、これはトータル的な表現になってしまうわけですけれども、子供たちとの接する時間を増やしていきたい、これは願いでございます。
  それから、公務支援システムは、恐らくもう全国的にパソコンを通じて、教育委員会が中心になって事務の簡素化、成績処理等、学績の管理につきましてはコンピューター管理が進んでいるところかと思います。導入当初は、どうしてもトラブルがあります。情報のうまくいかないところがあるわけですけれども、実際、かなりいろいろな部分が効率よく、成績と学績管理がうまく結び付いて進んでいるところが、本市においてもその状況にございます。大変いい結果が出ているかと思っております。若い先生は非常に順応力があります。私のような年代になりますと、もうパソコンの画面を見ただけで、一体どこを押したらいいんだろうと途方に暮れてしまうところがあるんですが、先生方は非常に順応力がございます。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  では、油井委員、お願いします。
【油井委員】    私は、社会科の歴史分野の専門なんですけれども、全国公立学校教頭会には高校の先生方も関係されているんでしょうか。
【全国公立学校教頭会】    残念ながら、公立の小・中学校の教頭、副校長のみでございます。
【油井委員】    先ほど来、アクティブ・ラーニングが小・中学校では実現されているけれども、高等学校では不十分だというお話があります。高校の先生方ともいろいろ意見交換していると、従来、知識伝達型の授業がずっと行われてきた傾向が強くて、アクティブ・ラーニングへの転換といっても、なかなかイメージが湧かないというような不安を語られる方が結構多いんです。一部、アクティブ・ラーニングの講習などが始まっているようですけれども、そこでは、例えばプレゼンテーションスキルとか、ディスカッションスキルというようなスキルの講習が先行していて、特に歴史などの場合は知識の伝達と思考力の育成というのは車の両輪で、両方をバランスよくやらないと効果が上がらないと思っています。
  そこでちょっと質問ですけれども、小・中学校では現在でも比較的アクティブ・ラーニング的な教育方法は行われていると思うんですけれども、それはいつ頃転換されて、転換の過程でどういう御苦労があったのかというようなことを、もし御存じであれば教えていただきたいと思います。
【無藤主査】    教頭会の方からお願いいたします。
【全国公立学校教頭会】    私もこの仕事を始めて38年目になりますけれども、知識を植え込むだけでは駄目だ、それをいかに活用するかが大事なんだと考えてきました。それが学習指導要領の中に生きる力、生きて働く力とか、様々な形で表現されているわけです。私は教師になったときから、もう本当にそういう認識で、子供たちにどういう力を身に付けさせ、育てるかということで考えてきたつもりではいます。これは個人的な思いです。
【無藤主査】    では、市川委員、どうぞ。
【市川委員】    今の流れで言うと、今回のアクティブ・ラーニングというのは高校を対象にした話であって、小・中学校はもう実現できているからいいというように受け止められると非常に困ると私は思っています。確かに高校の方は、形としてもアクティブ・ラーニングらしいものはほとんど入っていなかった。これは事実ですから、まず高校に対して最も訴えたいということはあると思います。
  では、小・中学校ではどうかといいますと、私はやはり90年代の小学校が大きいと思います。一方的に先生が教えていくという形態から、もっと子供たちの協働的な学びを入れていくとか、自力解決、協働解決というようなことを入れていく。先生の方から、ただ知識を教え込んでいくのではないというのは、90年代の小学校から随分入っています。
  ただ、そのときにやや行き過ぎもあって、教師の方から学力の低い子も含めて分かりやすく教えるとか、教材、教具や指導法を工夫しながら教えるというようなことがむしろ放棄されてしまって、何でも子供に自力発見させるというような行き過ぎも90年代にはあったと私は思っています。高校では、割と従来型の講義形式の授業が多かった。中学校では混在していると思います。今でもかなり混在しています。
  ですから、そういう状況の中で、小・中学校ではアクティブ・ラーニングはもう実現されているからいいと、確かに実現されているところもあると思いますが、小学校、中学校のアクティブ・ラーニングもやはり点検していただきたい。その点検するときの視点が、主体的・対話的で深い学びになっているかどうか。いくら子供たちが活動しているとしても、先ほど先生おっしゃったように、ただ先生に言われたことを活動しているだけ、これは主体的とは言えないです。それから、子供たちがいろいろ発言して、対話的にやっているように見えても、深い学びに至っていなければ、きょうは何かいろいろ発言が出たけれども、例えば理解を伴った習得にも至っていないとか、広い活用にも至っていない。ましてや、何か問題意識が出てきて、次の自分なりの探究に結び付くようなことも起こっていないということであれば、一見、アクティブにやっているように見えますが、実はアクティブ・ラーニングの視点と言われる要件を満たしていないのではないか。うちの授業では、確かに子供たちが活発に活動しているけれども、この視点にあるような要件を満たしていると言えるかどうかという点から、小学校、中学校でも是非点検、改善をしていただけるといいと思います。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、時間が近付きましたので、最後に一言ずつお願いしたいと思います。私立小学校の方から、よろしくお願いします。
【日本私立小学校連合会】    今回の審議会のこれを読ませていただきまして、本当に新しい教育がスタートするという感覚を、これを拝読した状況の中で思います。ただ、それが現場にどのように入っていくのかということ、そして、それぞれの教師、例えば小学校ですと40万人の教師が同じ方向を向いて、それを理解しないといけないということは、やはりすごく時間が掛かりますし、努力が必要だと思いますので、できるだけ誰もが取り間違わないような表現、あるいは説明などをしていただければと。先ほどお話ありましたけれども、本当に目的、根幹の部分を私たちが理解できるような状況にしていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  では、教頭会の方から。
【全国公立学校教頭会】    先ほど市川先生の方から、常に点検、見直しという御指摘がございました。おっしゃるとおりだと思います。私たちは、ふだん、どうやってそれを点検、見直しをしているかといいますと、授業研究を通して行います。それは校内でも行いますし、近隣、又は市内のよその学校に行って授業を見て、本当に主体的・対話的な深い学びになっているか、アクティブ・ラーニングの視点から見てどうなのかということを、実際の子供の姿を見ながら、先ほどの点検、見直しを行っています。それが授業研究でございます。
  今度、総授業実数が、小学校の英語の分が35時間、週当たり1こま増えるわけです。そうしますと、市町村によって違いますけれども、川崎市の場合には月に一、二回、水曜日の午後を研究日としまして、よその学校へ行って、当然、その学校の子供たちは残って、全市の先生たちが集まって授業を参観して、研究、協議を行うという体制を取っています。従来どおり同じようにできるかどうか、その辺がこれからの課題になってきます。帯単位、15分程度ということでこちらに提案ございますが、それも含めて、今後、検討していきたいと思います。先ほど申し上げましたように、私たちにとっての原点は子供たちです。子供たちの姿を見ながら、授業研究、研修に努めてまいりたいと思っております。ありがとうございました。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、私立幼稚園からお願いします。
【全日本私立幼稚園連合会】    幼稚園、幼児期こそがアクティブ・ラーニングの原点であるということは誰もが承知していただけると思いますが、幼稚園の中でも、明治時代からそのことは大事にしていたと思いますが、途中では、例えば読み・書き・そろばんを大事にするのだという形が行われた時期も実はあって、その中での子供の育ちって弱いよねと、いろいろな振れがあったということも事実だと思います。ただ、高度な社会になればなるほど、幼児期に肯定感を持って自分で世界を切り開いていくと。この学びを我々の時代の中に持ち込まないと、やはり生涯、大人になってから役に立つ人材にはなっていかないということは、非常に重要な視点だろうと思っています。
  ただ、幼児教育の80%、幼稚園教育の80%は私立幼稚園に通っています。その中の私学の独自性という部分と、こういう公の部分で担わなければならない公教育としての役割と、このことを我々の組織としても真剣に考えていかなければならない。これからもサポートしていただきますよう、よろしくお願いします。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、前半のセッション、ここで終了とさせていただきます。御発表いただいた3団体の皆様、誠にありがとうございました。
  頂いた御意見につきましては、事務局において整理の上、答申に向けた議論に反映させていただくようにいたします。
【西川教育課程企画室専門官】    ありがとうございました。
  後半は、11時15分をめどに再開したいと思います。委員の皆様、少し御休憩いただければと思います。
  御発表いただきました団体の皆様、ありがとうございました。係の者が御案内させていただきます。本日は、これで終了でございます。
(  休憩  )
【無藤主査】    それでは、後半のヒアリングを開始したいと思います。
  各団体の皆様、本日はお忙しい中、御足労いただきまして、ありがとうございました。
  この時間帯にお見えになっている団体は二つでございます。日本経済団体連合会様、そして日本PTA全国協議会様でございます。
  それでは、各団体様からの御発表を開始したいと思います。それぞれ10分程度ということで御発表をお願いしたいと思います。委員の皆様方の意見交換の時間は、2団体の発表の終了後にお願いしたいと存じます。
  では、まず日本経済団体連合会様よりお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【一般社団法人日本経済団体連合会】    日本経済団体連合会の教育問題委員会企画部会長を仰せつかっております三宅と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
  経団連では、今後の教育改革に関する基本的な考え方という提言を4月に発表しております。お手元に、その概要と本文を添付させていただいておりますが、まず概要に沿いまして、どのようなことを申し上げたかを御報告させていただきます。
  概要の資料の3ページ目です。次世代を担う人材に求められる素質・能力といたしまして、一番下の囲みにありますこれからの時代に求められる素質・能力を三つ挙げております。自ら課題を設定し主体的に解を見出す能力、自らの意見を論理的に発信する力、外国語によるコミュニケーション能力、リベラル・アーツ、多様性を尊重して他者と協働して事業を遂行する能力というのが第一です。第二は、理工系であっても人文社会科学系を含む幅広い分野の科目を学ぶごとや、人文社会科学系であっても、先端技術や理数系の競争的知識を学ぶこと。第三は、質の高い情報を取捨選択し、情報を課題解決のために使いこなす情報活用能力。この辺りが産業界から見て必要な人材能力であると私どもは定義をしております。
  それを踏まえまして、4ページ目、教育改革に関しましては、まず(1)学習指導要領の改訂への評価として、囲みの中のマル1ですが、何ができるようになるか、何を学ぶか、どのように学ぶかという三つの視点で教育カリキュラム、学習指導法等を抜本的に見直しておられるということを大変高く評価しております。
  それから、5ページ目のスライドですが、英語に関しましては囲みの中の2段目にある、次期計画では、各学校段階で達成すべき英語力の目標を具体的に示し、各段階ごとに目標を着実に達成するための検証と改善の仕組みを検討すべきである、と提言しております。
  6ページ目ですが、教科・科目等についてです。囲みの上のチェックの所ですが、歴史総合、地理総合、数理探求は、いずれも仮称と聞いておりますが、グローバル人材、イノベーション人材に求められるリベラル・アーツの基礎となるものと考えております。
  その上で、そのページの下、学習・指導方法の改革では、囲みの中の一番上ですが、これからの時代に求められる素質、能力を育成する上でアクティブ・ラーニングを学習・指導法の中心に置き、大学のみならず、初等中等段階から一貫した取組みとすることが有効であると評価しています。
  それを踏まえまして、A4縦の1枚の紙でありますが、このような見解に基づきまして本日は3点申し上げたいと思います。
  一番上の黒丸の所、これは今の繰り返しになりますけれども、産業界としては正解がない世界で自ら課題を設定し、解決に導く力、自らの考えを発信する力、多様な価値観の人々と協働する力が必要と考えており、今回の検討の方向性は、これらの課題解決につながるものと期待しておるというのが第一でございます。これが大きな前提になります。
  具体的に重視している点としてはこれも繰り返しになりますけれども、「伝統や文化に立脚した広い視野を持ち、志高く未来を創り出していく力」という目標に向けて、必要な資質能力を具体的に記述してある点、発信力につながることが期待できる点、アクティブ・ラーニングをしっかり定義し、しかも、その展開が従来型の授業か、アクティブ・ラーニングかという二者択一ではなく、従来型の授業を強化するために使うという柔軟な展開が期待されるところや、英語教育を重点化している点、それから、言語能力、特に情報活用能力ですが、これも独立した科目というよりは、科目横断的な位置付けをしている点、それから、実施するために必要な留意事項にも触れておられる点などです。
  ただ、第二でございますが、それに向けてということですけれども、2点、御検討いただければ有り難いと思っております。第一は、教育現場が次期学習指導要領を実行するための支援や体制の整備ということであります。非常に多岐にわたる項目が提言されており、これが本当に実効あるものになるためには、現場への支援が相当必要ではないかと思っております。
  重視している点として書いておりますが、例えばで申し上げますと、現場の先生方が本当に働けるだけの環境を、このプログラム開始までに整備できるのかといった問題です。教員養成、教員研修、定数、カリキュラム・マネジメントを実施し得る体制の整備も必要ですし、あるいは、「チーム学校」を推進するために、多様な外部人材の支援を得ることで教員が教育に行き合う時間を確保してあげる必要もあります。それから、地方自治体ごとに大きな格差が出ないように、国のリーダーシップも必要ではないかと考えております。
  それから、御検討いただきたいことの第二は、効果測定のためのKPIであります。形式的に進みましたということではなくて、目的としたことが実現できるかどうかということを的確に捉える必要性があるだろうと思っております。重視しております点としましては、目標に対する達成度を適切に表すKPI、無理やり付けたKPIではなくて、本当に中身が測定できるためのKPIをどのように設定するか、これは結構難しいと思いますが、そういうことをお願いしたいと思います。
  第二に、単に数字がよくなった、向上したということだけではなくて、目標に届いたのかどうかということが大事だと思っています。目標に対して不足がもしあるとすれば、その中身が明らかになるようなKPIが必要であると考えます。
  それから、成果目標、指標ともに余りたくさん設定するのではなくて、厳選して、改善のためのPDCAを着実に回せるようなKPIの設定が必要だろうと考えております。
  第三、最後でありますが、社会に開かれた教育課程の実現に向けた産業界との連携を、産業界としても重視しているということを表明したいと思います。重視しております点は、一つは、企業による小・中学校、高校、大学等への教育支援活動をさらに推進、協力していくつもりであります。そのような支援活動を活性化し、連携を促進するための体制整備、ボランティアでやれと言われてもなかなか難しいところもありますので、長続きするための仕掛けが必要ではないかと捉えております。
  最後、企業は外国人留学生、女性、高齢者、障害者など多様な人材が活躍するための職場環境、あるいは人事評価制度を整備していきたいと思っています。これは我々の課題として認識しているということでございます。
  発言は以上でございます。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、引き続きまして、日本PTA全国協議会様からの御発表をお願いいたします。
【公益社団法人日本PTA全国協議会】    公益社団法人日本PTA全国協議会会長の寺本でございます。きょうは、貴重なヒアリングの機会を頂きまして、ありがとうございます。
  また、私どもの前会長、私、また他の私どもの会員をはじめ、この中教審の議論の中に委員として加わらせていただいて、その都度、発言をさせていただく機会も得ておりますので、余り細かくは申し上げませんが、そういった中での議論も踏まえて、今回の中でのポイントだけちょっとお話をさせていただこうかと思っております。
  先ほど経団連さんからもお話がありましたとおり、まず現場の方を考えてみますと、現場の教職員の方々の実情、今でも大変過重な労働ということが言われております。こういった新しい形になっていく中で、本当にそれぞれが要領の中に書いてあることを実現していくだけの人的な数、そして時間の確保ができるのかどうかということを一番懸念しています。一番教育を行っていただく現場の教員の数がしっかりと確保されていないと、絵に描いた餅になってしまってはいけないということを強く危惧しているところでございます。この点についても、是非しっかりと答申の中身が実現できるような、そんな方策を強く打ち出していただければというように思っているところでございます。
  また、教員自身の研修も更に必要になってくる中身になっています。教員養成大学等、現職教員の研修を、これまでの研修の内容より更に深まり、また多岐にわたる研修が必要になってくるというように考えています。その教員の研修の機会を与えるだけの代用教員を含めて、やはり教職員の数、これも先ほど申し上げたところに影響してくると思います。
  そして、学生の養成です。これから教職員になろうとする学生が大学等でしっかりと学べるようなカリキュラムが、高大接続の中身にも当然関わってきていますけれども、これを本当に実現できるのかというと、実際に大学で教える教員の方も変わっていかなければいけない、大学のカリキュラムも変わっていかなければいけないというところが本当にできるのかどうか。即戦力として各現場で働ける教職員を作り上げていくためには、その部分も大変重要になってくる。そのためには、教員養成大学自身もしっかりとしたカリキュラム、また、それなりの要件を具備していけるような人的、予算的なことも必要になってくるのではないかと懸念しているところでございます。
  そして、これは学校だけの問題ではなくて、社会との連携、協働ということになってまいりました。社会との協働ということになると、私ども社会教育関係団体のPTAといたしましても、社会の一員としてしっかりと学校と協働しながら進めていきたい、そんな思いでおります。そのためには、まず学校の方での連携、協働という協働がしっかりと理解されていないといけない。併せて、私たち保護者、社会にいる大人も、協働というものがどういった形で進んでいくのかということをまずしっかりと理解しなければいけない。そのためには、例えば今、行われているようなコミュニティ・スクールといった手法も一つでしょうし、その他の新しい手法があるのであれば、その部分についてもしっかりと明示して、具体的な事例を紹介しながら、こういった形で連携、協働が進むことが可能になりますという事例紹介。また、それについての細かな周知も必要になってくると思っています。
  先ほどお話があったように、企業から一生懸命支援を頂けるということですが、まさにICTを活用することになってきますと、各現場の方で相当なお金の面、いろいろな知識の面、技能の面等での不足が生じてくるところを、企業のCSR活動等を活用させていただきながら支援を頂く。人的にも、その他の面でも御協力を頂けるということも、大きい意味での社会との連携、協働につながっていくのではないかと思っていますので、私自身も一員として連携していきたいと考えているところであります。
  最終的に問題になると思うのは、平成18年の改訂のときを思い起こしてみますと、平成18年に指導要領を改訂したことが意外と周知されていない、知らなかったということが数字として表れています。平成18年のとき、更に言えば小学校、中学校、高校と学齢が上がっていくと知られていない確率が高まっている。ということになると、いかにこの部分で前回の轍を踏まないようにするかということが重要になってきます。
  特に、教員の方々は割と機会があって理解されることは可能かと思うんですが、今度は現場の方の教員から保護者や社会の方々に、大人に対して、こういったことで中身が変わりました、こういったカリキュラムでやっていきますと。また、小学校においては英語だとか、小・中カリキュラム・マネジメントという中身が変わっていく中において、きちんと周りの方々が理解していないと、どうしてこのように変わったのか、なぜやらなければいけないのかという議論に終始してしまうと、本来、私たちが考えていた中教審の答申の中身とは違った方向で、なかなか遅々として進まない状況になるのではないか。今、そういう懸念があります。
  このためにどうしたらいいかというと、広報活動ですね。具体的には、今まで作っているような冊子、ペーパー類も当然、必要だと思いますが、文部科学省が県教委などに任せて文書通知だけではなく、小・中を所管している市町村教育委員会等、それに関連する周りの方々に出向いてでもしっかりとした周知をして、そして、その方々から更に校長会や教頭会、また現場の教員の方々、保護者、地域の方々にしっかりと理解が進むような、そういった広報がかなり必要だろうというように思っています。
  これは、予算面で言うと、単年度の文部科学省予算の中に組み込んでということではなくて、やはり特別に組んで、特別に付加して広報していくという重要性がここにあるというように思っていますので、この点についても是非この会の中でしっかりとアピールしていただく材料をまたお作りいただいて、文部科学省はもちろんですが、財務省等へ働き掛けを強くしていただき、広報の重要性、条件整備が大変重要だというところを打ち出していただけると、きっとこのスタートラインからつまずかずに行けるのではないか、このように考えているところでございます。
  雑駁でございますが、以上でございます。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  2団体に御意見頂戴いたしましたので、委員の皆様方より御質問、御意見、お出しいただきたいと思います。またネームプレートをお立ていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
【今村委員】    失礼します。日本経済団体連合会様に質問をさせていただきます。
  効果測定のためのKPIを明確にすべきという御提案を頂いたところですけれども、先生方にKPIをどのような形で担っていただくべきかということを、もう少し具体的にお伝えいただくと、多分、ただ数値を、過剰に数値目標を追えということをおっしゃっているわけではないと思います。しかも、「『向上した』というだけではなく」というところに記載されているのは、やはりプロセスをきちんと評価してあげるとか、そういうところも重視されてのことだと思いますので、そこをもう少し、定性的なものをどのようにKPIに落とし込むのかという具体的なお考えをお伝えいただくと、参考にしやすいと思いました。
【無藤主査】    お願いします。
【一般社団法人日本経済団体連合会】    ありがとうございます。
  ここで私が申し上げたKPIは、先生方が教育の効果を測定するということで申し上げたのではなくて、文部科学省のいろいろな教育の改訂の趣旨がどこまで実現したのかを、どういう形で捉えていくのかということを測定すべきではないかと、そのつもりで申し上げました。
第2期教育基本計画の評価ということを一度お教えいただいたのですけれども、そこで取り上げている数字が、例えば英語力の評価であれば、ここまでの英語力を身につけさせるということを目標として設定しているのですが、実際の評価として、生徒の平均点が上がったので効果があったというような評価をされていたので、それはちょっと違うのではないかと思ったわけです。
  ですから、本当に達成すべきことを適切に表す目標を定めて、それをどう評価するかということをしっかりやっていかないと、数値が改善したので問題は解決しましたというように捉えるのはちょっと違うのではないかと思ったので、こういうことを申し上げた次第です。具体的にどういう指標を設定したら良いかというところまでは、まだ思いが至っておりませんが、趣旨はそういうことでございます。
【今村委員】    ありがとうございました。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
【品川委員】    私も、今の日本経済団体連合会様の御発言でちょっと確認なんですが、そうすると、国とか、地方の教育委員会の方がKPIを設定するというようにお考えだということでなんでしょうか。
【一般社団法人日本経済団体連合会】    具体的にどこがその目標を設定するのがふさわしいかは、何をやるかということに対して誰が責任を持つかということと対応すると思いますので、一概にどちらがいいということではないと思います。ただ、本当にやらないといけないことを、形式的な判断ではなくて、実質的に進展しているということをみんなでシェアしていきたいと、そのための指標作りが大事だということを申し上げました。これはかなり難しいと思っています。だからこそ、是非、御検討いただきたいし、我々もアイデアがあれば出したいと思いますが、そういうことが必要なのではないかということを申し上げました。
【無藤主査】    ありがとうございます。
  ほかにいかがでしょうか。では、お願いします。
【牧田委員】    日本PTA全国協議会の方に質問をさせていただきたいんですが、今回の改訂の趣旨で社会に開かれた教育課程ということで、おっしゃるように社会と目標を共有するということが強くうたわれているんです。特に、現在も結構、各学校では、PTA向けに学校通信であったり、学級通信であったり、学年通信、あるいはホームページ公開であったり、福井県ですと教育ウィークというものがあって、いつでも学校に来てもらっていいという期間がございまして、結構、目標を共有しているようには思うんですが、今、新しいところへ向けて出ていくというときに、一つの手を打っていくというときに、今、やっているところのどういうところがちょっと手薄で、どういうところにもうちょっと手を掛けていくといいかということを、ちょっと教えていただきたいと思うんですが。
    【公益社団法人日本PTA全国協議会】    今の牧田委員の御質問についてですが、どうしても働く保護者が多くなる中で、学校現場に足を向けたくても向けられないという現実も確かにあるので、そういった点では、例えばPTA活動自身も平日ではなくて、土日だとか、夜だとか活用していることもあるんです。
  また、学校で先生とお話をしたいとか、様子を知りたいという部分においても、そういった時間を活用する。特に、今回のように指導要領が変わります、学校の授業の中身が変わりますということについては、すごく興味の高い中身なものですから、こういったことのために説明会を開きますということを、先ほど申し上げた曜日だったり、時間の設定をしていただいて、直接、先生の口から、校長先生に限りませんが、学校の先生の口からお話を聞いて、クエスチョンがあったらお尋ねをする。そういった、まさに人と人とが向かい合ってお話ができるような機会を増やしていくと、学校のよき理解者であり、学校を支援する人材の育成につながっていくというように思います。
  我々も、同じようにペーパーだったり、ホームページだったり、いろいろな形でお知らせをしているんですが、本当に伝えたい方になかなか伝わらないという一般的な広報のジレンマもあるものですから、そういった中では、特に子供に直接、直結する中身なので、このことについて説明させてくださいという話をすると、きっとたくさんの方に来ていただいて、またいろいろなお話ができる機会になるのではないかと思います。
【牧田委員】    まさしく顔と顔を向かい合わせて、実際、直接お話しするということ。対話というのは、今度、非常に大きなキーワードになっていますけれども、そういうことが日本全国で起こってくるといいなと私も思っております。ありがとうございました。
【無藤主査】    ありがとうございます。
  ほか、いかがでしょうか。はい、どうぞ。
【三浦委員】    2点あって、一つは日本PTA全国協議会さんの方から頂いた、特に教員養成大学の対応につきましては、私、教員養成の仕事をしている関係上、非常に重く受け止めさせていただきました。
  それから、経団連さんの方ですけれども、最後に社会に開かれた教育課程の実現に向けた産業界との連携を充実するということで、非常に有り難い申出だと思うんですけれども、実は私、個人的に、産業界と一緒に教育プロジェクトを2年半ぐらい走らせたことがあって、その中で、やはり産業界と連携することがどれだけ大きな力になるかということを痛感したわけです。ただ、その反面、やはり学校と産業界というのは価値観といいますか、文脈といいますか、言葉の上では同じであっても、その背景となる様々な物事の考え方がやはりすごく違うということを同時に痛感したところもありました。私のプロジェクトで言えば、学校の先生方と産業界、企業のプロフェッショナルと同じような考え方でまとめるのに1年ぐらいかかったと私は感じているところです。
  そういう意味で、企業側からすればスピード感が必要で、できるだけ早く学校と連携してということもあるかと思うんですけれども、やはり学校側は企業の文化というものを知らなくてはいけないですし、同時に企業側も学校の現状であるとか、先生方の状況というものを、相互理解なしに連携というのはないと思うんです。せっかくお力添えいただけるにもかかわらず、企業側との交渉とか、その辺りの考え方のボタンの掛け違えで、かえって学校側にとって重荷になってしまうという例も一つ、二つ、私のところに届いているものですから、その辺りの相互理解が根底にあると思いましたので、一言申し上げさせていただきました。
【一般社団法人日本経済団体連合会】    ありがとうございます。私は、余り明確に目的感のずれがあるというのは認識していなかったものですから、大変貴重な御指摘を頂いたと思います。もったいないので、よく認識を共通にして、企業の良いところを是非御活用いただければと思います。それから、企業も、現役で動いている者もいれば、人材として多彩なOBがおりますので、幅広く御協力できるのではないかと思います。あと、おっしゃるとおり、コミュニケーションを緊密に持っていく必要があろうかと思います。ありがとうございました。
【無藤主査】    ありがとうございます。
  では、市川委員、お願いします。
【市川委員】    一つは、地域や保護者に対する広報という話で、私もこれは非常に大事なことだと思っているんでが、今年に入って私も、保護者が授業を見に来る参観日に合わせる形で、この学校は一体どういう方針で授業をやっているか、改善していくかみたいなことで、私の講演も含めて、学校からの説明も含めて聞いていただくということが2回あったんです。どちらも、これまでそういうことをやったことがなかったと言っていました。一体、今の教育がどういうような方向に動いているのか、あるいは、うちの学校はどういう方針の中でやっているのかというようなことを、なかなか地域や保護者の方に直接お話しする機会がなかった。今後は、それはすごく大事になってくると思います。
  まず、国レベルとして、今でもインターネットで見られますが、あれは非常にいい試みで、国としても今度の答申なり、指導要領という形になっていくときに、どういうものであるかということを、やはりインターネットがこれだけ普及した時代ですから、ネットを見ると各先生や保護者の方も、とにかく全国民が今の教育がどういう方向に行こうとしているのかが、その番組を見れば分かると。それから、教育委員会レベル、更に学校レベルでそれぞれ、インターネットでも見られるようなものを作っていただいて、当日、来られない方にも理解していただく。
  例えば、学校でそういう番組を作ってDVDで配布するとか、インターネットで見られるようにしているところはあるのかというと、残念ながらほとんどないのではないか。来てくださいと言っても、やはり全員は来られないんです。お忙しい保護者の方や地域の方は来られないのであれば、インターネットなどの媒体を利用して、今、学校はどういう方向に動いていくのかというようなことを理解していただく。これは国レベルから学校レベルまで、いろいろなところでやる必要があるのではないかと思いました。
  もう一つは、KPIという話が出たんですけれども、どのような成果指標を持って評価していくのか、これはすごく大事なことだと思うんです。学校の方も、ややもするとテストだけになりがち、特に高校、あるいは大学受験ということになるとなりがちです。これからは、やはりそれだけではまずいと。学習のプロセスであったり、どのような資質能力が付いたかということをきちんと評価して、指標としても出していくということがすごく求められていますが、物すごく難しいと思います。
  これこそ産業界との連携で、産業界の中では恐らく社員の方たちをペーパーテストだけで評価しているのではないと思います。いろいろな指標を持って、研修の後、それからOJTなどもやると、こういうように社員の方の資質能力を評価して、こういうように改善を図っているというようなことを、恐らく産業界の中ではやっていらっしゃるのではないか。では、どのような成果指標、どのような評価の仕方をしているのかということを出していただけると非常に有り難い。そこでどういうようにパフォーマンスとか、プロセスを評価しているのか。もちろん産業界で使われているものを、そのまま学校教育に持ってくるわけにはいきません。決して産業界で求められている資質能力と、学校の中で育てたいこととイコールではないんですけれども、そのやり方は非常に参考になると思いますので、是非それを協力して作っていく辺りから、連携の第一歩になるといいのではないかと思っております。
【無藤主査】    ありがとうございます。
  最後にまとめてということで。
  では、油井委員、お願いします。
【油井委員】    社会科とか歴史、知的分野を専門にしておりますけれども、日本経済団体連合会様にちょっとお伺いしたいと思います。
  配付していただいた概要の3ページですけれども、これからの時代に求められる素質、能力ということで、リベラル・アーツの重要性とか、文理融合を打ち出されていると思います。一方で、非常に専門、特に大学レベルだと専門教育を重視するような傾向が一時あったと思うんです。それから、むしろ理系教育に特化すべきではないかみたいな議論もあったと思います。そういう中で、経団連としてリベラル・アーツとか、文理融合とかいうことを改めて強調される意図をちょっと御説明いただけると有り難いと思います。
【一般社団法人日本経済団体連合会】    とにかくビジネス競争がグローバルになってまいりますのと、経済がどんどん成熟化していく中で、昔のように単純に物を作れば売れるという時代ではもうないわけで、やはりこれから先、イノベーションとグローバル化というのが経済界のキーワードになります。そうしますと、イノベーションというのはやはり新結合でありまして、既存の知識の延長で、そこを深めていくとイノベーションが起きるかというと必ずしもそうではなくて、異なるものと異なるもの、異質なものが結び合うことによってイノベーションが生まれると考えています。ですから、専門性を深めるだけでは駄目で、その土台として深いリベラル・アーツというのは必要だろうと思っています。それは文系も理系も同様でありまして、理系だけで、技術だけでやれば良いものができるという時代ではもうないと思っています。
  もう一つ、リベラル・アーツは、グローバルにビジネスをするとき、やはり海外の人たちはそういう知的な会話を求めてきます。コミュニケーションをするに値する人材かどうかを見るためにです。そういった意味で、日本のビジネスパーソンは初対面の人とビジネスの話から入ることが多くて、その辺が課題ではないかと思っております。イノベーション、グローバル化ということで、そういった人材が求められるというのが、私の私見も多分に入っておりますが、恐らく多くの人が共通している理解ではないかと思います。
【無藤主査】    ありがとうございます。
  では、品川委員、お願いします。
【品川委員】    ありがとうございます。
  実は私も、日本経済団体連合会様がおっしゃったKPIは非常に重要だと思っておりまして、先ほどあえてちょっと申し上げたのは、やはり提供する側、今までどうしても子供の方のチェックをしたり、教員のチェックはするんですけれども、組織としての確認をずっとして来なかったのが我が国の教育なのかなといつも思っていて、私は教育委員会こそKPIをやるべきだと。KPI、若しくはKGIかもしれませんが、やるべきだと思っておりましたので、非常に参考になりました。ありがとうございます。
  あと、寺本会長がおっしゃった、まさに社会をいかに巻き込んでいくかということだと思います。これは、先ほどからほかの委員もおっしゃっていますけれども、私はやはり広報のやり方を変えていく必要があると思っています。学習指導要領を各地に配布するだけではなくて、例えば新聞広告で一面広告をいっぱい打つとか、もっとより効果的なのはスマホの一行広告です。必ず初期画面の一行広告に「学習指導要領、変わりました。by文部科学省」と入るだけで、やはり認識が変わってくると思っています。
  そうやって保護者と社会が変わることが、実は学校、そして現場の先生を支えていくかと思っています。いくら教員養成を変えても、全部丸ごと学校にお任せとか、今ですと、もうPTAは要らないのではないかという意見まで出ておりますので、そこに介入していくためには、やはり先に地域とか、民間とか、一般の人々の意識も変えていく必要があるかと思っております。どうもありがとうございました。参考になりました。
  以上です。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  では、最後ということでお願いします。
【今村委員】    失礼します。これは難しいのかもしれないんですけれども、社会に開かれた教育課程というのは、次の学習指導要領というのは、やはり学校だけで実現していくものでもなければ、教育委員会だけで実現していくものでもないので、私はきょう初めて経団連がこういったペーパーを作られているのを知って、無知で申し訳ないんですが、この社会に開かれた教育課程、新学習指導要領の中に定められている目標を達成するために、経団連として日本企業はこういったコミットをするというKPIを設定されて、そこをコミットしていただくと、こんなつもりですぐらいのものでもいいんですが、書いていただくと学校も励まされるのかなと。これは、こちらに委ねられたものではなくて、社会みんなで実現していくものなのだと。それは、もしかしたらPTAの方々も同じかもしれないんですけれども、そのようになったらいいなと。一つのアイデアですが、思いました。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それから、時間でございますので、討議そのものはここまでにして、最後に2団体から補足なり、コメントなり、お願いしたいと思います。
  では、経団連の方からお願いします。
【一般社団法人日本経済団体連合会】    きょうは、貴重な機会を頂きまして、ありがとうございました。
  学校教育を終えた人材を受け取る側の、企業として見ますと、やはり先ほど言いました発信力の問題、もう一つは正解を求めたがるという傾向があります。ビジネスは正解がありません。それなのに、若い社員の傾向として、早く答えを教えてくださいという、待ちの姿勢というか、正解を誰かに求める傾向があることを強く懸念をしております。先ほど申し上げましたイノベーションといったような正解がないところにチャレンジするときに、正解があるということを前提とした考え方が身に付いていますと、やはり失敗を恐れてしまう、冒険をしなくなるということになります。
  今回の教育の改革で、アクティブ・ラーニングなどに期待しているというのは、実はそういう正解がないような議論もしてもらって、自分の意見をまとめて発信して、議論して、自分の意見をより高めるというプロセスが習慣化することを多いに期待しております。そういう意味で、いい方向に向かっていると期待しておりますので、是非、実現に向けての御努力をよろしくお願いしたいと思います。
  以上でございます。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、PTA全国協議会の方から。
【公益社団法人日本PTA全国協議会】    ありがとうございます。
  先ほど品川委員おっしゃったように、広告のやり方を変えた方がいいと、まさにそのとおりでして、それは文部科学省だけではないと私は思っています。どういった方法が可能かと我々も考えていたんですが、これは国を挙げて、例えば今、やっている政府のインターネットテレビはもちろんそうですし、先ほど市川委員が言われた各エリアでしっかりと学習できるような、DVDでも結構ですし、ダウンロードでも結構ですし、またPDFデータをダウンロードしてプリントするといった形でもいいんですけれども、最近、僕が一番思っているのは、働く保護者が増えてきた、働く大人が増えてきたということになると、どこかで雇用している企業があるわけです。そうすると、その企業向けにしっかりとPRして、企業から社員の方にまたPRをしていただく。これが一番、聞く側、見る側に、真面目にと言っては申し訳ないですが、しっかりと伝わる媒体ではないかと思っています。ちょうどきょう、経団連さんがお見えですから、こういったところへの協力を求めていくということも大変有効な広報になるのではないかと思っています。
  以上です。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、本日はここで終了ということで、御発表いただきました2団体の皆さん、本当に御足労、ありがとうございました。
  頂いた御意見につきましては、事務局の方で整理の上、答申に向けた議論に反映させていただきたいと思います。
  では、最後になりますけれども、事務局より今後の日程につきまして御連絡をお願いいたします。
【西川教育課程企画室専門官】    皆様、本日はありがとうございました。
  次回は、10月17日、月曜日、13時から15時、場所は虎ノ門のスタンダード会議室虎ノ門ヒルズフロント店になっております。次回は、冒頭より2会場に分かれての開始とさせていただきたいと考えております。詳細については、追って御連絡をいたします。
  本日の資料につきまして、郵送を御希望される場合は机上に残しておいていただければと思います。青い「審議のまとめ」の冊子をお配りさせていただいています。こちらについても、お持ち帰りいただいて結構です。郵送が必要でしたら、残しておいていただければと思います。
  以上でございます。
【無藤主査】    それでは、本日の教育課程企画特別部会を終了いたします。ありがとうございました。


――  了  ――




〈3F1特別会議室〉
【天笠主査代理】    それでは、予定よりも少し早めにスタートさせていただきます。これより関係団体からのヒアリングを行います。
  各団体の皆様、本日はお忙しい中、御足労いただき、ありがとうございます。この時間帯にお見えになっている団体は、指定都市教育委員・教育長協議会の方々です。それから、もう一つは、全国市町村教育委員会連合会の2団体です。
  それでは、各団体様の御発表を開始したいと思います。意見交換の時間は、二つの団体の発表全てが終了してから行いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  それでは、まず、指定都市教育委員・教育長協議会から発表をお願いしたいと思います。およそ10分前後ぐらいということでよろしくお願いいたします。
【指定都市教育委員・教育長協議会】    おはようございます。今年度、指定都市教育委員・教育長協議会の会長市を務めております神戸市教育委員会事務局教育次長の林と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。
  当協議会は、今回のヒアリングに向けまして、指定都市20市、全市の教育委員会に対しまして、「審議のまとめ」に関する意見の照会を行いました。結果といたしまして、様々な御意見がございましたので、協議会といたしましては、意見を一つの方向にまとめるという方向性は取ってございません。そのため、本日の意見表明は、各市の教育委員会の意見の概要を抜粋して述べる形で行ってまいりたいと思いますので、どうぞ御了承いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
  それでは、資料に沿いまして御説明をさせていただきます。資料の1ページをごらんください。子供たちの現状と課題を踏まえつつ、一人一人の学びを後押しできるよう、何を学ぶかという指導内容の見直しにとどまらず、どのように学ぶかに着目し、学びの本質として重要となる主体的・対話的で深い学びの実現を目指したアクティブ・ラーニングの視点から授業改善の取組を活性化していくという基本方針や、社会に開かれた教育課程の実現が理念として掲げられたことは非常に評価をしてございます。
  しかし、このような基本方針を効果的に推進していく上では、教育環境の整備、とりわけ教員数の増が必要不可欠だと考えます。教職員定数の改善や必要な財政措置等の実現に結び付きますよう、今後さらに具体的な審議を進めていただきたいと考えてございます。
  それでは、それぞれの項目につきまして、各市からの意見を抜粋して紹介させていただきます。
  まず、1「小学校外国語活動の教科化について」でございます。各市から最も多く意見が出されましたのがこの項目になりますので、本日の発表は、この項目に絞って意見をさせていただきたいと思います。
  小学校外国語活動に関しましては、教科化についての方向性が示されているところではございますけれども、授業時数をどのように確保するのか、誰が教えるのか、どのように教えるのか、教える教員をどのように養成するのかといったことについても、その詳細について早期に方向性を示していただきたいと考えております。また、その際には、教科担任制や専科制などの指導体制の構築や教員の負担軽減の観点から、教員定数の改善や加配措置を講じることが必要と考えます。
  以下、それぞれの項目につきまして、各市からの意見を紹介いたします。
  (1)「授業時数増加分の対応方法について」でございます。中学年と高学年では、年間35単位時間の授業時数増になりますが、「審議のまとめ」で示されております増時間への対応方法について、まずは課題点を挙げております。幾つか述べさせていただきますが、マル1のように、一律に週29こまとすることについては非常に難しいという御意見や、マル2のように、中学年の外国語活動については1こまの設定が必要であるという意見。マル3のように、長期休業中の実施は、日常の学習との関連や活動の内容を考えると難しいという御意見がございます。また、マル4のように、短時間学習につきましては、既に多くの学校が児童の発達段階や学習状況を踏まえながら実施しておりまして、45分授業との関連性や効果を検証した上で、指導方法や内容等を事例を示しながら明確にする必要があるという意見がございます。
  次のページのマル8まで、課題につきまして意見を掲げております。様々な学校現場の現状が挙げられております。これらの課題を踏まえまして、学習指導要領等の具体化に当たりまして御検討いただきたい内容でございますが、2ページのマル9のように、高学年における35時間の授業時数増につきましては、短時間学習の導入などカリキュラム・マネジメントを通じた弾力的な時間割の運用で対応することになりますが、そのためには、学習指導要領の内容そのものがカリキュラム・マネジメントの考え方に対応したものとして示される必要があるということと、内容の取り扱いにおいても、カリキュラム・マネジメントの考え方を踏まえた指導内容及び時数の取り扱い等について具体的にお示しをいただきたいという意見がございます。
  また、マル10のように、全国での教育の機会均等を保障できるように、国としての教育課程設定例を複数例示していただきたいという御意見がございます。
  マル11のように、授業時数増に関しまして、モジュール学習の導入が検討されておりますが、外国語科の導入に当たりまして、求められる資質・能力を身に付けるためには、最低限「こま」として授業すべき時数を示すべきであるといった意見がございます。
  このような中、あくまで一例としてでございますが、例えば神戸市におきましても、各学校の状況に応じてではございますが、既に多くの学校で学力向上を目的に、国語、算数、読書などの短時間学習に取り組んでおりまして、外国語活動を短時間学習で実施していくことは非常に困難な状況でございます。本市といたしましても、短時間授業の導入以外の方策事例について具体的にお示しいただきたいと考えてございます。
  次に、3ページの(2)「指導体制について」でございますが、小学校での英語の教科型学習の実施に当たりましては、中学校英語科の免許を有する教員が少ないなど、指導力に不安を抱く教員も多数おりまして、平成32年度の全面実施に向けまして、小学校の教員が安心して授業に臨めるよう、専科教員の配置、教員の研修の充実、外国語指導助手(ALT)の財政的支援等の具体的整備を行っていただきたいと考えます。
  具体的な内容につきましては、「教員の配置等」「研修等」「教材等」の三つに分けて意見を記載してございます。
  まず、「教員の配置等」のマル1のように、中高英語科教員免許を持たない小学校教員による教科指導を円滑に進めていくための環境整備(加配措置等)をお願いしたいという意見があるほか、マル2のように、中学校英語科教員の定数・加配等による乗り入れ授業の可能性などについても検討していただきたいという意見。マル4のように、JET-ALTへの財政措置だけではなくて、民間業者を活用している自治体への財政措置を要望する意見もございます。
  教科型学習の開始に当たりましては、5、6年生を担任する教員の誰もが英語の教科指導を円滑に行うことは難しいものと予測されます。高学年におきまして教科担任制を実施するといたしましても、英語科担当教員と5、6年担任との授業の持ち合いの調整が必要でございます。大規模校ではそれが困難である状況にございます。5、6年生の学級担任は仕事量も多く、学級経営能力など教員の質が求められる中で、更に英語を教えるとなると、教員の負担感が増し、指導の質が問われることになるため、やはり加配による専科教員の配置が望まれます。
  研修等につきましては、3ページ一番下、マル7のように、指導教員の養成について、中核となる指導者の伝達講習の充実を図るとともに、新たな専門研修の実施を要望する意見であったり、大学における教員養成の改善や現職小学校教職員の免許取得等について、国が主導となった抜本的な改革を求める意見もございます。
  4ページに参りまして、「教材等」といたしましては、マル9のように、英語を専門としない教員が外国語科の授業をストレスなく行えるよう、指導事例や教材を作成し、DVDやネット配信等で各小学校に提示願いたいという御意見。マル10のように、多様な授業を各学校において適切に実施できるように、これらに対応した教材や指導方法について具体的に示してほしいという御意見。マル13のように、先行実施に向けて、使用教材については、平成29年3月を前倒しして、できるだけ早く提示してほしいという御意見がございました。
  また、(3)「その他」の意見といたしまして、マル1からマル3まで掲げてございます。各市の状況は様々でございまして、課題、要望も様々な内容となってございます。「審議のまとめ」の中では、「小学校における多様な時間割編成の現状を考慮すると、全小学校において一律の取り扱いとすることは困難である。地域の学校の実情に応じて組み合わせながら、弾力的な時間割編成を可能としていくことが必要」と記載されておりますが、国として一律の取り扱いをしないというのであれば、それぞれの自治体で様々な対応を行うことになりますので、国といたしましても、様々な対応における導入事例やカリキュラム等につきまして具体的にお示しいただき、自治体によって教育の機会に違いが生じないようにしていただきたいと要望いたします。
  また、重ねての要望になりますが、指導体制につきましては、現状どおりの人員で担任が教えるのは非常に負担が大きいため、教科担任制や専科制などにおきまして、教員定数の改善や加配措置を是非ともお願いいたします。
  なお、指定都市教育委員・教育長協議会といたしましては、平成29年度予算編成に向けた要望書の中にも、教員定数の改善や加配措置につきましての要望文を記載しておりますことを申し添えておきます。
  5ページの2「年間授業時数・カリキュラム設定について」から8ページの15「業務の効率化について」まで、それぞれの内容につきまして意見を掲載してございます。また、8ページの16、「各教科等における改訂の具体的な方向性について」として、各教科ごとに改訂につきましての各市の意見を掲載してございます。
  時間の関係でこれで終わらせていただきますが、以上で指定都市教育委員・教育長協議会としての意見とさせていただきます。次期学習指導要領策定に向けました検討に当たりましては、このような各市の実情等にも御配慮くださいますよう、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
  以上でございます。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。
  それでは、続きまして、全国市町村教育委員会連合会様から御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【全国市町村教育委員会連合会】    全国市町村教育委員会連合会、小比類巻です。よろしくお願いいたします。
  それでは、早速、基本的な方向性についてから述べさせていただきます。これについては、何ができ、何を学び、どのように学ぶかということで整理し、生きる力と、これまで積み上げてきていることを評価しながら、実効性のある方向性を取っているものと考えられます。学習指導要領は教育課程の大綱を示すものであり、学習指導要領の基準の下、地域の実態を踏まえた特色ある教育が柔軟にできるものでなければならないが、より実効性のある学習指導要領とするならば、何ができ、何を学び、どのように学ぶかの次に来るのが、その実現のために誰が何をすべきかを明確にすることと考えられます。
  その点、国レベルにおいては、どのように学ぶかという学習指導方法を前面に打ち出し、さらには教員の資質向上等、教育再生実行会議の提言を受けつつも、環境整備を計画的に進めてきていることは評価できるものであります。
  一方、教育委員会、そして各学校、教職員、それぞれ何をすべきか、少しでも実効性のあるものにしていく上で大事なことであることから、ある程度具体的方向性を示すことがあってもよく、評価できるものであります。
  諮問にあります「それぞれが多様な経験を重ねながら、様々な得意分野の能力を伸ばし~一人一人の子供の可能性をより一層伸ばすこと」等に関わってですが、学習に遅れがある等の子供たちの支援は大事であります。一方、特別支援を要する子供の中にも、通常学級の中にも飛び抜けた才能を持っている子供たちがいるわけですが、もう一歩進んで、そのような子供にも特別な支援ができる幅広い考え方の方向性があってもよいのではないかと考えられます。
  その次に、「枠組みの改善について」であります。教育内容の削減を行わないとされた方向性は適切と評価できるものであります。その上で、実際に授業改善を進める中で、授業準備の時間の確保等課題も想定されることから、具体的な取組に資するよう実践例の提供などを進めていただきたいものであります。
  それから、「枠組みの改善」として示されたことに関して言えば、例えば、これまでカリキュラム・マネジメントやアクティブ・ラーニングについては、学校運営上重要な事項として研究されてきているものの、道半ばというか、これまで徹底されなかった向きもあります。今回、枠組みの見直しの中核として位置付けられ、また、「学校と家庭・地域と連携・協働の活性化」についても、「社会に開かれた教育課程」として示されたことにより、かなり明確となり、実効性が出てくるものと考えられます。ただし、コミュニティ・スクール化に伴う財政的確保やアクティブ・ラーニングの充実に向けた授業準備のための時間の確保等が重要になってこようかと思われます。
  特に枠組みの見直しで期待されることは、カリキュラム・マネジメントの実現かと思われます。今後、カリキュラム・マネジメントの実践例の紹介、校内研究がどのようなテーマの下、どのように進められているかの紹介と、それも含めて、誰もが検索できる開かれた仕組みが欲しいものであります。
  これからは、カリキュラム・マネジメントが学校経営にしっかりと位置付けられ、このことにより、よりよく授業改善が図られるようにすることが重要であると考えられます。そして、これからの学校は、学校経営か授業改善かではなく、相互が生きて働く体制作りが重要となってくるものと思われます。
  次、「主体的・対話的で深い学び」の実現、アクティブ・ラーニングについても、「枠組みの改善」により、より明確化したことは、今後の方向性として評価できるものであります。いわゆるアクティブ・ラーニングに関する捉え方は人それぞれにより、その人その人の経験値により少しずつ違ってくるものであり、ある人は一定の教科指導の中でイメージする人、総合的学習の時間を創意工夫しながら深めてきた中でイメージする人、様々であります。総合的学習の時間が創設された時期に、それぞれの学校が地域の実態を踏まえた総合的な学習の時間について研究をし始めたように、各学校において、今回はこの改訂で児童生徒の実態を踏まえた主体的・対話的で深い学びの実現に向けた様々な動きが出てくることを期待したいものであります。
  主体的・対話的で深い学びを志向するに当たって十分な準備が必要であり、そのための時間の確保が重要であることについても留意すべきであります。また、主体的・対話的で深い学びは、各教科の指導に関して数多く研究されつつありますが、総合的学習の時間は、創設されたとき未来の教育の本質を見た人が多く、今後ともよりよく実現されるということで大事にしていきたいものだと考えております。
  次に、「英語教育の教科化」でございますが、英語教育は、グローバル化に対応して、国際語であります英語を学ぶことは必要なことであると考えます。これまで、英語教育の重要性を認識し、早くからALTを導入する等、英語教育が定着しつつある市町村と、これから体制作りをしようとしている市町村があるわけですが、教科化に踏み切ったことで、これらの格差も解消してくるのではないかと思われます。今のところ、教科化に当たって、次の課題があろうとか思われます。
  まず、一つ目として、「指導体制の充実」です。現在でもぎりぎりの時間数となっている状況の中、これ以上の時間数の増が出てきますので、現在の体制で実現することは厳しいものがあろうかと思われます。時間に追われ、授業の計画・事前準備などがおろそかになり、学習指導要領の充実が図れなくなることは避けたいものであります。諸事務や会議等、効率よく進める工夫をしていくことになると思いますが、担任が学校事故や生徒指導の問題に対応せざるを得ない現状を考えると、今の指導体制作りの充実と教職員の増員、これは不可欠なものと考えられます。
  次の「担任の専門性の問題」が二つ目に挙げられるかと思います。英語を教科とすることにより、今以上に英語教育の専門性が問われてくると思います。全ての担任に英語教育の専門性を求めることは難しく、今後、教員免許法の改正と小学校での英語教育に対応する教員の養成は必須であろうかと思われます。
  ALTの配置等できる市町村とできない市町村が出てくると考えられますが、少なくともそれらに大きな格差が生じないような支援体制をお願いしたいと思います。いずれにせよ、国・県・市町村、それぞれ役割がありますが、そのレベルによる連携の取れたリーダー養成など、計画的な指導者養成が急務であろうと考えます。
  三つ目として、英語嫌いの子供を増やさない配慮等があろうかと思います。特に、通常学級において、特別に支援を必要とする子供がいる状況下、言語習得が苦手な子供にとっては、英語という別の言語が出てくることで、分かろうとする前に、もう嫌いになってしまうケースが出てきていると聞き及んでおります。教科としたことにより、早くから英語嫌いが増えることにならないように留意していくべきであろうかと思います。
  最後、プログラミング教育についてであります。プログラミング思考を育てるプログラミング教育は、ますますコンピューターを駆使した社会に生きていく子供たちにとっては価値のあるものと考えられます。しかしながら、プログラミング教育とは何なのかを理解し、その教育の具体的指導法等が共有されることが今後必要であり、次のようなことが明確とされるべきと思います。
  一つ目、どのような教材でプログラミング体験をさせるのか。二つ目、教材等に掛かる費用負担はどうなるのか。三つ目、学校はそのための環境整備に何を必要としているのか。四つ目、子供全員が一つの体験をするのにどれだけの時間を要するのか。五つ目、プログラミング教育に要する時間は、少なくとも年間何時間必要なのか。六つ目、教科別・学年別、いわゆる発達段階別のカリキュラムの作成の具体化は可能なのかどうかというようなところでプログラム教育についての共有すべき目途が挙げられようかと思います。
  とりあえず以上でございます。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。それでは、これより意見交換の時間に入らせていただきたいと思います。御質問、御意見のある委員の先生方は、例によってネームプレートを立てていただくよう、よろしくお願いいたします。
  それでは、まず私から、お二つの団体に共通してお伺いさせていただきたい点として、一つ、英語の導入に関わって、指導体制の在り方について、それぞれ困難点等々が今の御発表の中にあったかと思いますけれども、改めて指導体制の在り方として、学級担任がそれを持っていくというのが基本的な方向として、それをアシスタントするような形でいくこととしていくのか、それとも、いわゆる教科担任制という方向が基本的な方向であって、それでいろいろ関わっていくと、その他の方法があるという、そこら辺のところの、御承知のように、小学校の場合ですと学級担任制でやってきていますし、基本的な指導体制は基本的に維持されるんじゃないかと思っておりますけれども、その中で今回の英語の導入について、教科担任制の在り方はどう考えていったらいいのかどうなのか、そこら辺のところについて御意見がさらにありましたらお願いできればということと、併せて、その際、中学校の英語の教員の、今度、小学校の英語の教科化ということについて、どういう関わりというか、存在を求められるのかどうなのか、その点について御意見がありましたら、お願いできればと思うんですけれども、いかがでありましょうか。
  どうぞ、お願いします。
【指定都市教育委員・教育長協議会】    小学校の児童にとりまして、担任の先生というのは、発達におきまして非常に重要な存在でございますけれども、このように教科が増えたり、このような社会情勢の中で、たくさんの大人が子供たちに関わっていくというのは、子供の発達に応じて必要であろうと思います。そういう意味で、例えば、外部人材であったり教科担任制であったりというシステムで、たくさんの大人が子供たちを見守っていく体制は子供にとってはプラスになろうかと思います。そういう意味で、英語につきましても専門性がございますので、できれば教科担任制、あるいは外部の人材を使ってという形を取っていただきたいのですが、殊、英語になりますと、小学校の先生方は、大学の時代からそういう専門的な学習を全くしてございませんので、小学校免許だけをお持ちの方につきまして、新たに英語を教科として教えるという専門性を求められることに対して非常に高い壁を感じております。
  例えば、中学校、高校の英語の先生でも、大学以降、現場で長年教育実践を苦しみながら、やっと乗り切っておる状況でございますけれども、同じような教科として、新たに小学校の先生に、わずかな時間の研修で免許を与えたといたしましても、皆さんが御期待されるような、英語というものの効果を発揮できるような教科の指導ができるのかということに対しては全市が非常に不安を感じてございます。そういう意味からいきますと、サポートいただける人材、あるいは専門に教えることのできる人材を付けていただきたいというのが考えでございます。
  また、中学校英語教員につきましては、授業時数の絡みもございますけれども、小学校との小中連携が進む昨今でございますので、小学校へ出向いてのティーム・ティーチングを行うとか、あるいは小学校で英語を教えることは十分可能かと思いますけれども、中学校での定数の問題もございますので、全てを網羅するのは非常に厳しい状況でございます。そのように考えております。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございます。いかがでしょうか。
【全国市町村教育委員会連合会】    両方の考え方があると思うんです。教科担任制のような形にして、専門的な知識、技能等を身に付けさせるという、教科としての狙いを充実させることもあると思います。ただ、私、さきほど、3番目に申し上げた英語嫌いとの関係で、できれば今の外国語活動といったニュアンスのところを残しつつ、小学校の段階ではまだ英語の教科として成立させていった方がいいのかなということを考えます。
  そういう意味では、興味・関心等に重点を置いた指導ということで、できれば担任が実際に主になって授業を行いつつも、ALT、また社会人活用等のアシスタント等の形ではどんどん導入していただき、いろんな方と接触、交流ができるような活動を取り入れながら教科という形で持っていくのが、当分の間、いいのかなと。
  なぜかというと、多分、教員免許法が成立した後で、大学の時代に英語科の学習指導法を学んでくる教員が出てくるのはかなり先の話だと思うので、それまででも、そういう形でカバーして、柔軟的に、段階的に行く方向が私はいいのかなと感じております。
  それから、小中学校の件に関しましては、義務教育学校とは多分連携は取りやすいとは思うんですけれども、近隣の小中学校との関係では、英語教育とは多分つながりがないといけないので、小学校は小学校で完結するものじゃありませんので、小学校、中学校、中学校から高校というようなつながりを考えた上で、連携を取る時間は必ず各市町村で取り入れて、状況等がどうなっているのか、実態を知り合うのも大事かなと思います。
  以上です。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。ほかの委員の方。
  山脇委員、お願いいたします。
【山脇委員】    私、この次期学習指導要領を実効性のあるものにするには、環境整備が一番大切だという、肝だと従来から思っているんですけれども、そこでお伺いしたいのは、先生方が今、非常に忙しい状態であるということを言われておりますけれども、先生方の人数を増やすとか予算を増やすということ、これは努力しなければいけないことだと思っていますが、今、先生方の忙しい主な原因は何だと考えていらっしゃるかということが1点。
  それから、特に英語教育など、外部からの人材を迎えることで、学校の組織として何らかの混乱が生じることとかデメリットみたいなものが考えられるかどうかということをお聞きしたいと思います。
【天笠主査代理】    どうぞよろしくお願いします。
【指定都市教育委員・教育長協議会】    学校の教職員が何が一番忙しいかということでございますが、本来的には教材研究に没頭するという、これができればいいわけですけれども、大量退職・大量採用の時代でございます。ベテラン教師が一気に抜けていく、その中でどうしても若い先生方を大量に採用しなければならないという時代が、ここ何年か続いてございます。若い先生方が、ある程度独り立ちできるまでの支援をしていく体制が、学校としては現在非常に厳しい。そういった意味で、再任用であったり、あるいは講師としてOBを活用して投入したりしてございますけれども、若手が伸びていく時間の間、生徒指導にしても教科指導にしても少し手間が掛かっておるというのが1点ございます。
  それから、保護者対応等、あるいは生徒指導等の問題の多様化、それから、スポーツ活動等、社会的なものが学校教育の中にどんどん期待をされて取り込んでいってしまっている現状がございます。そういった意味でトータル的に多忙感として先生方の中にあるのではないかな。これは各自治体においても精査をして、役割分担をきちっとしていかなければならないと考えてございます。
  また、外部人材を組織としてお迎えする場合、これは「開かれた学校作り」という言葉がもう長年使われてございますけれども、保護者あるいは地域とともに、また、さらに専門性の高い外部の方を学校にお呼びして、中身を見ていただきながら、ともに子供たちの教育に携わることは、学校にとっては非常にありがたい制度だと思っております。
  一つは、閉鎖的な社会から開放的な社会に持っていくためにも、あるいは、先ほど申し上げました、子供たちをたくさんの大人の目で見守っていく意味からも、外部人材は学校の組織の一員として非常に重要な役割があると、このように考えてございます。
【全国市町村教育委員会連合会】    私、最初、教育内容の削減のところで、行わないことは適切であるということを評価するとお話ししたんですけれども、例えば、教育内容等の子供の発達段階を無視した形のものがどんどん出てきたことによる負担というのは、これはいけないと思いますけれども、それ以外に関しては、めり張りを付けた指導等でもって、学校の教職員はそれを消化していかなければならないと思います。
  忙しいのは、めり張りを付けて教育計画を考えたり、深みのある授業をするための教師間同士の話し合いとか、それから、学校運営をする上での話し合いと、これが現状なかなか取れないというか、短い時間にしか取れない状況があります。そういう意味では、今、ぎりぎりの状況でやっていますので、その中に例えば、事故、事件等が起きたり、生徒指導上の問題が起きたり、あるいは不登校、いじめ問題等、いろんな形の中で、保護者との対応、そういった時間がかなりいろいろ事務以外のところで起きてきます。そういうところから見ると、そういうのに対応することによって本来の仕事が消化できなくなるというものがありますので、それを心配する人が多くて、できれば余裕のある形といいますか、効率のよい指導体制の運営は必要なんですけれども、そういう意味では、忙しいというよりも、それを切ってしまえばそれで済む話なんですけれども、それを充実させる上では、そういった時間確保、物理的なものを含めて時間確保がされて、昔もそうだったですけれども、職員室から教室に行く間に、きょうの授業、何をやるかなんていう計画を立てる先生もいるという話も聞きますけれども、本来はそれであってはいけないわけでして、今、現状を見ますと、空き時間といいますか、授業をやっている時間はほとんど職員室に誰もいない。ほとんどの先生が授業に付いているという、小学校の場合だと給食の時間も含めて、そういう中で動いていますので、そういうことから多忙感等も生まれてくる。部活動の関係も出てくるわけですが、そういう多忙感の中で、なかなか深みのある授業に取り組めるところにいけないので言われているのかと私は思っております。
  それから、外部からのALT、あるいは社会人活用ですけれども、活用することは絶対いいことでありまして、今までは閉鎖的な学校と言われていましたけれども、こういった方をどんどん取り入れることによって、いろんな学校のことを知ってもらうこともできますし、学校の信頼を取り戻す上でも非常に役に立つだろうし、また、子供たちにとっても、いろんな人とコミュニケーションを交わせるということでは非常に有効なものだろうと考えております。
  以上です。
【天笠主査代理】    御意見よろしいですか、今の件。
  ほかの委員の方、いかがでしょうか。どうぞ、奈須委員。
【奈須委員】    お願いします。今、学校は忙しくて、もっといろんな方の手をかりたいということで、それに対して、ここのところずっと、加配とかいろんな措置で、ある種増えていることはあると思うんですけれども、その分、時間講師とか非常勤の対応が増えてしまって、「チーム学校」ということが出ていますけれども、組織としての運営をしていく上で、それがいいのか、かえって教頭先生なんかとか学校全体の運営とか研修ということでは難しかったり。例えば、低学年をもっと小さいクラスサイズにしようということで、各都道府県、市町村等で独自なお取組も以前からございましたけれども、そこをどう対応するかといったときに、講師で充てていくということをした場合に、やっぱり指導力等にいろいろばらつきがあったりして、かえって難しい問題が起きていたり、クラスサイズが小さくなったのに、例えば、学力の問題で言えば、必ずしも上がってこない。感触にすぎませんけれども、むしろ悪い結果が全体で出ているというようなことも伺ったりするのですけれども、人の数を増やしていくというので、数と質のことがあると思うんですけれども、その辺について、同じ財政的措置を使うとすれば、どういう配分、人事計画、あるいはそれに対する措置の在り方が原理的に望ましいとお考えなのか。いろんな場面、規模等によっても違うと思うんですけれども、お知恵を拝借できればと思います。
【指定都市教育委員・教育長協議会】    先ほど少し申し上げましたが、若い先生が増えている現在では、短時間でもいいので、OBであるベテランの先生方がピンポイントの授業の指導であったり保護者対応の指導であったり書類の書き方であったりを教えていただくことは非常に有効かと思います。そういう意味では、数がたくさんおられれば、また、退職者はたくさんおりますので、再任用希望も多いという中で、非常勤でありますけれども大量に投入することによって、個別に若い先生方が学べるチャンスはあると。ここでは非常に大きな成果がございます。
  ただ、組織全体からいきますと、全体の教員組織を統一するという意味で、全員の先生が集まる場という中に非常勤の先生がおられないであったり、こういった意思疎通をする場面においては、やっぱり常勤というのは非常に大きい存在かなと思います。
  場面によりますけれども、数が必要な、その数も質の高い数でないと意味がございませんので、誰でもというわけにはいかないんですけれども、たまたま今、ベテランの教育実践を積まれた方がたくさん退職された直後であるという、この現状から考えると、今は少時間であっても確保できますけれども、今後こういう状況はできなくなる。将来を見据えますと、定数の中できちっと配慮していただくのがベストだと考えます。
  以上でございます。
【全国市町村教育委員会連合会】    同じように、定数の中で配置していくことがベストだと思うんですけれども、なかなかそうもいかないところもあると思います。「チーム学校」として考えた場合、「チーム学校」としてのいろんな、臨時職員やら専門員やらの導入をするに当たり、それから、社会人活用もそうですけれども、それらのことを導入することによって何が必要になってくるか。それをまとめたり、それをうまく活用する役割をする人が必要になってくると思うんです。それが私の考えだと、管理職に近いというか、管理職がいいと思うんです。副校長のような方を、教員を増やすというよりも、管理職をうまく増やしていく方向、そういったものをまとめていくような、管理職を増やしていく方向も一つあっていいのかなという感じは受けます。
  その中で、教職員の資質向上も関係してくると思うんですけれども、大事なのは、指導者の養成といいますか、その学校で力のある先生が1人、2人いないと、なかなか。なぜかというと、先生方が質的に高まっていくというのは、いろんな研修がありますけれども、校内の中でいろんな研修をしていく中、実践を通して力を付けていくことが非常に多いと思いますので、そういう意味で引っ張っていけるような教員を、どこかできちっとした形で養成して送ってあげるというような策も大事なのかなという感じは受けます。
  以上です。
【天笠主査代理】    吉田委員。
【吉田委員】    いろいろ御意見ありがとうございました。本当に小学校英語に関しては、全ておっしゃっていることは問題点として我々も認識している点なんですが、一番大きな問題の一つは、いわゆる時数の問題です。短時間学習をどうするかという問題とか29にはなかなかできないとか、いろいろあると思うんですけれども、私もいろんなところを回っていて、この対応を学校ごとに任せるのかとか、教育委員会としてちゃんと一つの方針を作るのかとか、そのあたりの統一感、それがなかなか見えてこない部分があります。個人的には、やはりもう教育委員会できちんと一つの方針を立てていかないと無理じゃないかと思ってはいるんですが、その辺についても、まだ明確な指針が出てないところは非常に多いような気がするんですけれども、どういうところでどういう決定をしていくのかということです。それによって、例えば採用される教科書が変わってくるとか、最初は準国定のようなものが出てきたとしても、実際に20年以降は検定教科書になってくると思います。そうしますと、多分、出版社ごとにどういう想定をして、どういう教科書を作るかというのは、いろいろ考えてやっていくような気がするので、そのあたりとの関連性も含めると、時間数の問題もそうですけれども、どういう決定の仕方が一番いいとお考えか、お聞かせ願えればと思います。
【天笠主査代理】    お願いします。
【指定都市教育委員・教育長協議会】    政令市から出ておりました意見の中で、例えば、モジュール授業を行った場合に、どの程度の成果が上がっておるのかという実感がないので具体例を教えてもらいたいという意見が多数ございました。大体45分で、英語活動という形で取り組んできておりますので、先生方、あるいは子供たちはそのリズムの中で学習をしておりますけれども、それが15分、週3回に分かれた場合、どのような学習内容になるか。当然今、委員がおっしゃいましたように、教科書はどうなるのかという不安ばっかりあるのが現状でございます。
  基本的に、モジュールの本当に成果、効果が上がるという実例があれば何とか考えてみたいという意見がありますけれども、今、それがない時点で、特定の学年だけモジュール授業を取り入れるということは、小学校の場合、6年生までのそれぞれの学年の生活リズムを考えた場合に、特定の学年だけモジュールを取り組むのは非常に難しいという意見が多数ございました。
  結論から言いますと、45分というこまの中で、逆に60分という意見もございますけれども、じゃあ、小学生にとりましてこの60分の授業の効果がどのように上がっていくんだろうかという実例がございませんので、こういったこともよく分からない中で45分の中でどのようにしていけばいいのか、できるだけたくさんの情報が頂きたいというのが現場の意見でございます。
【天笠主査代理】    どうぞ。
【全国市町村教育委員会連合会】    非常に難しいんですけれども、1時間増えることによって、かなりの支障が出てくるというのは、みんな心配しているわけですけれども、これをさっき言ったモジュールのような形で解消すると、時間数を減らすことによってそれを解消するかというのは、これはおかしな話だと思うんです。モジュール化することはいいことでありますけれども、そのことによって全ての時間を、全体的な枠時間を、45分を40分にするとか55分の時間を40分にするとかというような形でやっていくこと自体は余りいい方向でないのかなと。
  ただ、時間、物理的な問題ですから物理的に解消せざるを得ないと思うんですけれども、これは教育委員会サイド、地域によって考えることだと思うんですけれども、土曜日の授業を増やしていくとか、夏休みを少なくするとかという形で対応するというような形が考えられてくるのかなという感じは受けるんですけれども、先ほど、教科書に関しては、問題はそんなにないといいますか、教科書が教えるわけじゃないのであって、教科書を使って教えるという先生方の構えがあれば何ら問題ない話であって、それはそんなに心配してないんですけれども、時間が1時間増えたこと、それをどうカバーするかというのは、今、それで困っているとなれば、物理的なカバーをするしかないという方向では、土曜授業を再開するかというような話になってくるのかなという、そういうことを各地方では考えてくるのかなという感じは受けます。
  済みません、よく分かりませんが。
【天笠主査代理】    今の御意見に、吉田委員、何か御意見ありますか。
  どうぞ。
【吉田委員】    1点だけフォローさせていただきたいんですけれども、先ほど、コマ45分というお話がありました。60分も可能だろうという話もありましたけれども、45分というのは、週2回45分があるうちの45分なのか、それとも、週1回の45分の中で何ができるかというふうにおっしゃっているのか、それはどちらなんでしょう。
【指定都市教育委員・教育長協議会】    高学年につきましては、週2回を45分という考え方でございます。
【吉田委員】    分かりました。
【天笠主査代理】    山脇委員。
【山脇委員】    実は次期学習指導要領の肝だと思うのが、アクティブ・ラーニングだと思うんです。この委員会でも結構、アクティブ・ラーニングについての話し合いの時間が長かったんですけれども、ただ、現場の皆さんが一番心配なさっていることが、小学校からの英語の教科としての導入だということが分かって、なるほどなと思うのと、こちらの考え方というよりも、現場との感覚が違うなというのが改めて分かったんですが、ここには記載は割と少なかったんですが、アクティブ・ラーニングについてはどのような反応があったのか教えていただきたいなと思ったんですが。
【指定都市教育委員・教育長協議会】    当然、「アクティブ・ラーニング」というネーミングが今回付いてございますけれども、教育現場でやはり行き詰まったときに、知識伝達型の授業が成立しないというのは、教員みんな分かっておりますので、そういう授業ではなくて、子供たちを主体に置いた、子供の学びに着目した授業改善をどうしていくか、あるいは発問をどうしていくかということはずっと研究テーマで既にございました。そういったことが、「アクティブ・ラーニング」という一つの文言の中で明確に打ち出されたことに対しては、政令市としては非常に期待をして喜んでおるところでございます。
  ただ、教科によって、それから発達段階に応じて、その深め方をどうしていくかというのがこれからの大きな課題でございまして、特に小学校の先生方にとりましては、1年生と6年生と、それぞれ担任をする場合に、自分自身をどう変えていかなければいけないかということ、これからの研究課題にはなってまいりますけれども、いずれにいたしましても、アクティブ・ラーニングの考え方につきましては、授業改善という視点で皆さんが向かっておられる方向だと、このように捉えてございます。
【全国市町村教育委員会連合会】    同じような感触を受けています。アクティブ・ラーニングについては、ネーミングはそういう形になっていますけれども、今までもこれに関しては、いろんな形で学校現場では研修されてきておりますので。ただ、それは表立ってきちっとしたものではないにしろ、今後、この形が、どんどん深い研究がこれから始まっていくのかなと思います。
  ただ、これは気を付けなきゃいけないのは、よく言われるのは、アクティブ・ラーニングということで、総合的学習の時間が出たときには、それが先生方、創意工夫によって作られるというものがありましたので、いろんな形で大いに盛り上がってやっていった時期があったんですけれども、ある程度定着してしまったらば、今度、逆に、それが総合的学習の時間も魅力のない時間。中には、ほとんど行事等に充てられたりして、なかなか動きが出てこないと。大事なアクティブ・ラーニングを、一番大事な使い道のある時間なのに、そういうところが出ていると。そういう意味では、各教科でアクティブ・ラーニングを進めるということで今までも研究はされてきているんですけれども、これはかなり気を付けないと、それに流されていって、大事な基礎的な学力のところをきちっと抑えるとか、めり張りを付けて、教科の中でどこでやるか、どうするかということをきちっとした形で計画的にやっていかないと、それこそカリキュラム・マネジメントがしっかり作用しないといけないのかなという感じは受けて、これ、とても大事なポイントとして、皆さん、受け止めておりますので、これは大事にされると思います。
【天笠主査代理】    そろそろ予定している時間が迫ってまいりましたけれども、今、上田委員からですけれども、ほかの委員の方、よろしいでしょうか。それでは、上田委員からということで指名させていただきたいと思います。上田委員、お願いいたします。
【上田委員】    ありがとうございます。私、英語教育についての質問なんですが、確かに先ほどからの御議論のように、英語を小学校で今までシステマティックに教えてこなかったということで、急に教えるということについては、やっぱり大きな、単に心理的なだけじゃなくて、技術的なバリアもあるとは思います。それを外部から人材を導入すれば単純に解決するかというと、必ずしもそんな単純な話ではないと私も思います。
  他方、退職された教員の方で、まだまだお元気で教育意欲を持った方がたくさんいらっしゃるというお話がありましたけれども、例えば、小学校でどんな英語教育をしていれば中学校にスムーズにつながるかということを一番よく御存じなのは中学校の先生ではないかと思うんですね。例えば、中学校の先生で退職された方に、小学校の先生としてサポートしていただくとかということは制度上は可能なんでしょうか。もしそれができると、本来、小学校の英語教育は中学校につなげていく、中学校の英語教育は高校、大学につなげていくことが目的であることを考えますと、中学校でスムーズにいくために何が必要かということをある意味熟知されておられる。しかも、生徒さんへの教育の経験も豊富な退職された方に小学校で更に御活躍していただくというのが、もし制度的に可能なのでしたら、これはかなり有力な手法になるのではないかと思いますけれども、そこら辺、もしよろしければ、御意見を。
【指定都市教育委員・教育長協議会】    今、御質問の内容は、中学校を退職した英語科の教員という意味でしょうか。
【上田委員】    そうです。
【指定都市教育委員・教育長協議会】    本市に限らず、退職者が増えておる状況の中で、英語の免許を持っておれば、小学校の英語を専科として教えることは可能だと思われます。ただ、全員が小学校へ希望されるかどうかという問題がありますし、中学校でも、先ほど申しましたように、若手の研修であったり、再任用で中学校、高等学校へ残るという英語の先生、たくさんおられますので、その方々全員が小学校に行ってという、総数で言いますと、十分足りていないという現状がございます。制度としては可能かと思います。
【全国市町村教育委員会連合会】    制度としては可能だと思いますけれども、私の考え方としては、中学校の英語教育を基にして小学校の英語教育を考えるというよりも、今まで積み上げてきた外国語活動というのでかなり実践を上げている学校等があります。そういったところから教科指導になった場合、技術、技能といろんな面のところへ入ってきますけれども、小学校での状況でどれだけ力が付いて、どれだけのものが出てくるかということを、中学校がそれを取り入れていくという、この逆の方向性が本当は大事になってくるのかと思うんです。それを見極める上で、例えば、そういう専門的な考え方。ただ、英語を教えたことがある経験じゃなくて、そういった知識のある人が現場に入っていって橋渡しをするとかというのは、きっとこれから有効なものになってくるという気はいたします。
【上田委員】    理想的には、多分、双方向の人材交流があると一番よさそうな感じがします。
【全国市町村教育委員会連合会】    はい。実は私、GELという形で、英語教育の始まった頃、もう十何年も前ですけれども、研究を2年間やったことがあるんですけれども、そうすると、やっぱり小学校だけやってられないんです。小学校をやると、どうしても中学校と関係しなきゃいけないので、必ず双方向の意見交換、実態把握やら、いろんな意見をもらいながらやっていかないと進まない状況がありましたので、絶対それは必要だと思います。
【天笠主査代理】    そろそろ時間が参りましたので、これで前半のセクションを終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。御発表いただいた団体の皆さんのそれぞれの意見につきましては、事務局にて整理の上、答申に向けた議論に反映させていただきたいと思いますので、きょうはどうもありがとうございました。
【石田教育課程企画室専門官】    どうもありがとうございました。後半は11時15分から開始いたします。委員の皆様は、少し御休憩いただければと思います。また、御発表いただきました団体の皆様におかれましては、本日はこれで終了となります。誠にありがとうございました。
(  休憩  )
【天笠主査代理】    それでは、これより後半を始めたいと思います。各団体の皆様、本日はお忙しい中、御足労いただきましてありがとうございます。
  この時間帯にお見えになっている団体は、全日本教職員組合様と全日本教職員連盟様の二つの団体でございます。
  それでは、各団体からの御発表を開始したいと思います。意見交換の時間は、二つの団体の発表、全てが終了してから行いたいと思います。
  まずは、全日本教職員組合様からお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【全日本教職員組合】    全日本教職員組合の副委員長の中村と申します。よろしくお願いします。
【天笠主査代理】    どうぞお座りください。
【全日本教職員組合】    それでは、私から意見発表させていただきます。教育は、憲法と子供の権利条約に基づき、子供たち一人一人の成長・発達を保障するため権利として保障されています。今、日本の子供たちが直面している諸困難を克服し、未来に向かって、その成長・発達を支えるためには、学習指導要領を策定するに当たっても、この立場を踏まえたものとすることが求められます。
  また、「審議のまとめ」では、子供たちに求められる資質・能力を規定し、そこへの到達を目指して教育課程、指導方法、評価を組み立てていくものとなっています。しかし、教育の目的は、一人一人の人格の完成にあります。社会や国が完成した人格を規定し、その定められた人格の枠に一人一人の子供を当てはまるように育て上げることではないと思います。「審議のまとめ」は、そもそもの出発点が逆転していると指摘せざるを得ません。
  次に、学習指導要領の在り方に関わって、幾つか述べたいと思います。第1に、学習指導要領はあくまでも大綱的基準であるべきということです。1947年版の学習指導要領では、各学校で地域や子供たちの実態に合った内容で、その方法を工夫してこそよくいくとし、あてがわれた型のとおりにやるのでは、かえって目的を達するに遠くなる、型のとおりにやるのなら教師は機械にすぎないとしていました。また、旭川学力テスト訴訟、最高裁判決においても、「教育内容に対する国家的介入は、できるだけ抑制的であること」とし、「子供が自由かつ独立の人格として成長することを妨げるような国家的介入は許されない」としています。学習指導要領の策定においては、これらを考慮することが求められます。にも関わらず、今回の改訂に当たっては、内容のみならず、指導方法や評価の在り方までも事細かに言及していることは重要な問題だと考えています。
  「審議のまとめ」は、具体的な目標の設定や指導の在り方について、学校や教員の裁量に基づく多様な創意工夫を前提として、特定の目標や方法に画一化されるものではないとしています。であるならば、法的拘束力を強調し、学校現場や教職員に機械的な実施を押し付けてきた、これまでの在り方を根本的に改めなければ、より硬直した指導が押し付けられることは想像に難くありません。改訂に当たっては、文字どおり大綱的基準として位置付けることが、まず求められると思います。
  第2に、アクティブ・ラーニングなど指導方法を押し付けないことです。今述べたように、「審議のまとめ」はアクティブ・ラーニングの視点を強調し、その指導方法でなければならないと受け取れるものとなっています。論点整理でも、指導法を一定の型にはめ、狭い意味での授業の方法や技術の改善に終始するのではないかといった懸念があるとの指摘があり、「審議のまとめ」においても、形式的に対話型を取り入れた授業や特定の指導の型にとどまらないとはしています。しかし、先行して実施されている各地の実態では、知識構成型ジクソー法に基づく研修が押し付けられていることや、教師が授業で説明しない方がいいとの一面的な理解が広がっていることなど、指摘されている懸念が現実となっています。
  第3には、評価方法を押し付けてはならないことです。評価について、主体的に学習に取り組む態度については、「学習前の診断的評価や挙手の回数などの形式的な活動で評価したりするものではない」としています。その上で、「子供たちが粘り強く知識・技能を獲得しようとしているかなどの意思的な側面を捉えて評価する」としています。しかし、そもそも子供の意思的な側面を評価することそのものが不可能であるとともに、内心の自由を侵す危険性があります。また、パフォーマンス評価など、多面的・多角的な評価そのものは否定するものではありませんが、特定の評価方法や画一的なやり方が押し付けられれば、評価項目ごとに数値化して積み上げるだけの形式的なものとなりかねません。さらに、教員の多忙化に拍車を掛け、一人一人の子供に寄り添った指導の妨げになることが懸念されます。評価についても、その方法を押し付けないことが重要だと考えます。
  第4に、教育課程編成は各学校で行うものであることを貫くことです。教育課程は学校教育の全体計画であり、子供たちの成長、発達を支えるものです。それは、1947年の学習指導要領にあるように、各学校で地域や子供たちの実態に合った内容で、その方法を工夫して、子供たちの実態に即して各学校で策定すべきものだと考えます。
  第5に、「カリキュラム・マネジメント」の名による押し付けがあってはならないと考えています。現場では、「カリキュラム・マネジメント」を名目に、教科指導の細部にわたって、専門外である学校長が指示をしてくるとの指摘があります。教育課程はトップダウンではなく、教育の専門家である教員一人一人が対等な立場から議論して策定することなしに、生きたものにはならないと考えます。
  第6に、真理・真実に基づき、科学に裏打ちされたものであることです。子供たちには、その発達段階を踏まえ、科学的で系統的な教材の配置が必要です。しかし、小学校での英語の教科化、歴史を「近代化」「大衆化」「グローバル化」という視点から見ることなど、教育学やそれぞれの学問分野の蓄積に基づかないものとなるのではないかとの懸念があります。子供たちが自然や社会について科学的な認識を持つことができるよう、子供たちに提供される教材は、真理・真実に基づくものであること、科学に裏打ちされたものであることが求められます。学習指導要領もそういう視点から作られるべきだと思っています。
  第7に、学校現場や教職員の自主性、教育の自由が保障されなければならないと思います。教員の地位に関する勧告は、第61項で、「教員は、職責の遂行に当たって学問の自由を享受する。教員は、生徒に最も適した教具及び教授法を判断する資格を特に有している」。62項で「教員及び教員団体は、新しい課程、教科書及び教具の開発に参加するものとする」。63項では、「いかなる指導監督制度も、教員の自由、創意及び責任を減殺しないようなものとする」としています。真の意味で主体的・対話的で深い学びを実現し、子供たちの成長・発達を支える評価を実施するためには、学校現場や教職員の自主性、教育の自由を保障することが必要です。
  以上述べたことと同時に、子供たちの学びを支えるためには条件整備が求められます。子供たちが主体的に学習に向き合い、知識、理解を深め、互いの働き掛けや問い掛けを通じて学びを深めること、そのために一人一人の個性に応じた多様で質の高い学びを引き出すことを意図することは重要だと考えます。
  しかし、それらを実現するためには、子供たちがゆったりと自由な雰囲気の中で学べること、教職員が子供たち一人一人に丁寧に向き合える条件整備が不可欠です。そのためにも、過大な学校の解消、30人以下学級の実現、教育費負担の軽減・無償化、教職員定数増など条件整備こそが求められていると考えています。
  続いて、学校段階や教科等に関わって、主な懸念すべき点について述べます。
  まず、幼児教育について。遊びを通じて、その後の学びや創造性が豊かになるのであって、数量・図形、文字等への関心感覚など、幼稚園で小学校教育の先取りをすることは、かえって小学校以降の創造性や深い学びを奪うことになりかねないと思います。
  小学校については、先行して小学校英語を教科としているところでは英語嫌いが増えている、熟通いが増える、家庭の経済力等による格差にもつながっていることなどが懸念されています。小学校段階では、母語をしっかり身に付けることが重要であり、発達段階に即したものにすべきです。また、時数増となるなど学習が過密となり、子供の学習負担が増えます。その上、多くの小学校教員が英語の教員免許を有していない下では、英語を教科とすることは適切ではないと考えます。
  中学校については、中学校で英語のみの授業を基本とすることについて、子供の実態にも合わず、学びを貧しいものにしかねません。外部試験の導入は教育内容を外から縛るものとなり、子供たちの実態にも合わないものと考えます。部活動について、学校教育活動の一環であるとしていることは自主的活動としての位置付けに反するもので、子供たちから自主性や自治的な能力を育む機会を奪うものとなりかねないと危惧をしています。
  高校においても同じだと思っています。高校においては、各教科の科目の再編は、学問分野の成果や教科の系統性などを壊すのではないかとの懸念があります。真理・真実に基づく科学的認識を形成する視点を欠かさないようにすべきであると思います。
  特に社会科では、グローバル化する社会で、国家及び社会の有為な形成者、公民など、権利の主体としての主権者ではなく、国や社会に役立つ公民の育成を目指すものとなっており、憲法の規定にも背くのでないかと懸念します。
  特別支援教育については合理的配慮を意識して、通常学級でも教育課程を作るように求めていますが、30人学級の実現などの根本的な条件整備を進めない限り実現できることではありません。子供個々の障害や発達に応じた教育活動が求められています。キャリア教育・職業教育の充実、自立活動の強調などは、結果的に機械的なマニュアルに基づく内容や指導となる懸念があります。
  プログラミング教育などについては、条件整備もなく拙速に導入すること、子供の発達段階を考慮せずにプログラミング教育を押し付けることは、かえって子供の成長を阻害するものとなる可能性があることを懸念しております。
  以上です。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。
  それでは、続きまして、全日本教職員連盟様からの発表をお願いしたいと思います。
【全日本教職員連盟】    全日本教職員連盟事務局長の郡司と申します。このたびは、このような貴重な時間を頂き、ありがとうございます。次期学習指導要領の目指す方向性や理念が子供たちの教育に具現化されるように、実際に学校現場を預かる教職員の団体の立場として、「審議のまとめ」に対する率直な意見を申し上げたいと思います。大きく5点に絞って申し上げます。
  まず1点目、社会に開かれた教育課程の実現についてです。社会との連携・協働というのが重視されてきて、今後、様々なレベルによる地域・社会との連携・協働がなされていくということが考えられます。学校においては、地域との連携を担当する教員がその窓口となっておりますが、現状では教員の多忙により、十分にその機能を果たし切れていない場合が多いと思います。特に、地域学校連携本部等が始動する初期段階においては、お互いに手探りの状態であることもあり、窓口となる教員への負担は更に重くなることが予想されます。今後一層、地域・社会との連携・協働を進めていくためには、そのコーディネート等に関わる教職員の増員が必要であるのかなと考えます。
  2点目に、主体的で対話的で深い学びの実現についてでございますが、教員というのは、深い教材研究に基づいた指導計画を立案し、必要な教材・教具等を準備する必要があります。また、実践に際しては、適切な支援や評価等によるフィードバックを行わなければなりません。しかし、現状では、教材研究や評価等を行う時間は明らかに不足しています。突発的な児童指導や報告文書等により、教材研究のほとんどないままに教壇に立たねばならないなんていうこともままあるというのが学校現場の実情です。評価についても、子供たちのノートによる振り返りを評価するということだけでも、一つの教科に1時間弱は掛かってしまうのが本音ではないでしょうか。教員1人当たりの授業時数を削減し、授業準備をするための時間を十分確保できるようにすることや、児童生徒一人一人の学びの過程を見取り支援するために少人数学級にすること、また、研修を行うことができる環境等、教職員の定数改善が必要であると考えます。
  3点目に、教科等を超えた全ての学習の基盤として育まれ活用される資質・能力についてでございます。プログラミング教育の実施等の一層の充実が求められています。しかし、学校現場における、例えば、教育用のコンピューターの総数は増加しているものの、都道府県別の整備状況においては、依然、大きな格差が見られます。また、情報教育に関わる支援員等の配置についても、自治体間の間での格差は歴然としております。
  子供が使用するだけに、パソコンなど、故障が頻発しますが、そのメンテナンス等にも数日掛かっていたり、1人の子供のパソコンのトラブルが授業を止めてしまうなんていうこともあります。このような中で、例えば、授業における教科の狙いを達成するために、また、他の業務との兼ね合いから、パソコン等情報機器を活用した授業のための教材研究に時間を費やして、新たな授業を構想するようなメリットが感じられない場合が多いのが進まない原因なのかなと思います。これらの現状を鑑みて、国は教育用コンピューター等の予算措置を十分行うとともに、義務教育に掛かる費用を全額国庫負担とすることを視野に入れながら、各自治体に対し財源等の情報提供を通して、本来の目的に合った予算配賦となるよう強く働き掛ける必要があるのかなと思います。
  4点目に、学習指導要領等の実施に必要な諸条件の整備についてでございます。主体的・対話的で深い学びを実現するための授業改善や教材研究、学習評価の改善・充実を行うためには、教員の資質・能力の向上は欠かすことはできませんし、そのための研修を充実させなければならないと思います。そのためには、繰り返しになりますが、現時点で教職員が足りていないという現状に鑑みて、まずやるべきことは、しっかりと定数改善を行って、教職員がゆとりを持って子供たちと向き合う時間を確保し、子供・保護者・地域との信頼関係をしっかりと築いていくことであると考えます。その上で、次期学習指導要領の理念を実現すべく、研修等の充実を図らなければ、崇高な理念は学校現場では実効性を持たず、学校現場はますます疲弊していってしまうことになるのかなと思います。
  5点目に、小学校高学年における英語の教科化についてでございます。まず1点目、時数の確保についてです。本「審議のまとめ」においては、15分の短時間授業の設定、60分授業の設定、長期休業期間における学習活動、土曜日の活用、週当たりのこま数増等が挙げられていますが、それぞれについて課題が考えられます。一応、表にまとめてみましたが、ここでは時間の都合上、一つ、マル1についてのみ述べさせていただきます。
  15分間の短時間学習の設定でございますが、朝の帯時間が一番想定されるのかなと思うんですけれども、現状ではその時間帯に各学校や地域の実態を考慮に入れ、国算等のドリル学習、学習が遅れぎみな児童への個別学習、読書活動、学校行事の練習等、多岐にわたる活動が行われています。それと同時に、教員は子供にドリル学習をさせている、まさに隙間を縫って、職員打ち合わせ、問題行動等への児童指導、不登校傾向児童への対応等、様々な業務を臨機応変に行っているのが現状です。つまり、この時間は教育課程上には表れない様々な教育活動を行う、まさにゴールデンタイムと言っても過言ではないと思います。非常に貴重な時間帯でございます。等々、様々な課題が考えられるのかなと思います。
  ですから、現状のまま、これらの例のとおりに導入をすれば、長期的に見ると、学級経営上、児童指導上、重大な影響が及ぶことになるのではないのかなと思います。つまり、英語に振り替えられる時間に、これまでどのような学習活動が学校で行われていたのかということに目を向けていただきたいと思います。
  したがって、グローバル人材の育成に向け、外国語学習がその狙いを達成するということと併せて、他の様々な教育活動に支障を来すことなく、各学校が安心して取り組めるように、先行研究や様々な実践が全国各地で行われているものと思います。そのような実効性のある時数確保の方策等を調査・研究し、その内容を各学校に提示し、各学校がその学校や地域の実情に合ったカリキュラム・マネジメントが行えるように提示してほしいと。また、それについて継続的な検証を行うことをやってほしいと思います。
  2点目、指導体制についてですが、「審議のまとめ」については、外国語教育の抜本的な教科のイメージが掲載されております。単語数で言うと、小学校段階で、現行の中学校での英語学習の半分以上を習得するようにイメージされております。全日教連としては、実施に際しては、研修を受けること等も含め精いっぱい努力する所存であります。しかし、多くの小学校教員にとっては、外国語活動の経験はあるものの、養成段階で教科としての英語を学んではおらず、十分な環境整備が整わない中での実施では、子供に対して無責任になってしまうと考えております。また、ALT等の配置に関して、自治体により大きな格差が見られます。研修のみならず、ALT等の一層の配置促進も含め、専科教員の大幅な拡充が必要であるのかなと思います。総じて、時数確保や指導体制について十分な環境整備がなされることを望んでおります。
  以上です。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。それでは、これより意見交換の時間に入りたいと思います。前半と同じような形で進めさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  それでは、平川委員、どうぞ。
【平川委員】    よろしくお願いいたします。大変すばらしい御意見、ありがとうございます。私も伺っておりまして、そのとおりだと思っていながら、少し御意見を頂きたいと思っておりますのは、今回、論点整理が出ましたけれども、もし御賛同いただけるという点があるとしたら、どのような点かということを御教授いただければと思っております。
【天笠主査代理】    どちらからでも結構なんですけれども、それぞれ御意見をお願いできればと思います。
  ではまず、お願いいたします。
【全日本教職員組合】    先ほども意見の中で述べたんですが、例えば、指導方法にあった点も、押し付けないということを一応書かれてはいるんですよね。そういう部分などはそのとおりだと思いますし、子供たちのために条件整備も必要だということは一応書かれています。そういう点などは、条件整備に触れられていることについてはいいことだなと思いますが、しかし、その中身においては、先ほど述べたような意見を持っておりますし、また、結果的に指導方法などが押し付けになってしまうことが懸念されると思っていますので、結局そこは両面があるかなと思っているということです。
【全日本教職員連盟】    基本的には、次期学習指導要領の目指す方向性や理念については賛同いたしております。カリキュラム・マネジメントをしっかりすることによって、地域とタッグを組んでやっていく。それによって「チーム学校」を更に一層進めていったり、アクティブ・ラーニングの推進により、子供たちに将来にわたっての資質・能力を付けていくという点について、それについて全く異存はございません。
【天笠主査代理】    御意見がありましたら、お願いします。
【平川委員】    ありがとうございます。子供たちのために、日本の先生方、本当に一生懸命努力されていると思いますので、どうにかこの理念が少しでも実現できるように、もちろん定数の是正でありますとか、あるいは条件整備とか環境整備は本当に事欠かせないことかなと私も思っておりますけれども、理念等々は、本当にみんなの目指すようなところで御賛同いただいているということは本当にうれしいなと思いました。ありがとうございます。
【天笠主査代理】    ほかに委員の方、いかがでしょうか。
  では、私から質問させていただきたいと思うんですけれども、それぞれのお立場で、言うならば、教師の専門性というんでしょうか、あるいは教職の専門性と言ってもいいかもしれませんけれども、御主張の立場からすると、やはり一人一人の教師の専門性というんでしょうか、それがその御主張を支える一つのそれになるんじゃないかと。その言葉の中には、子供から保護者から、あるいは地域からの信頼性の確保という、こういうことが文言の中にも入っているわけなんですけれども、そういう観点からしたときに、教師の専門性を高めていく、あるいは社会からの信頼を得ていく、その立場からどういう取組をというか、そういう立場からしたときに、今回の学習指導要領の改訂に向けてのこういう「審議のまとめ」等々というのは、どんな形で捉えられるのかどうなのかというあたりのところについて、お考えがありましたら聞かせていただければと思うんですけれども、いかがでありましょうか。
【全日本教職員組合】    私からよろしいでしょうか。
【天笠主査代理】    よろしくお願いします。
【全日本教職員組合】    二つあると思います。一つは、やはり意見でも述べましたが、長時間過密労働になっている教師の実態を解決しない限りは、教師の専門職性は高まらないというのが一つあると思います。もう一つは、教師にとっての裁量の問題です。先ほども教員の地位勧告のところでも述べましたが、様々な場面において、子供たちの実態に応じて、地域の実態に応じて教育課程を組むことになれば、教師の裁量がなければそういうことができないと思います。そういう意味においては、教員の教育課程編成に当たっての裁量や教育課程を組んでいく上での自由などが認められなければ、本来の生きたものにはならないと思っています。
  そういう意味で、指導体制としては、学校長によるリーダーシップという名によるトップダウンが今、各地では実態としてはあるわけですが、そうではなくて、やはり教職員の協働による学校体制を作ることが大事だと思っています。
  以上です。
【天笠主査代理】    いかがでありましょうか。
【全日本教職員連盟】    我々の団体は、教員を教育専門職と捉えております。その中で教育をするに当たって、現場の教員としては、それに向けて努力や苦労することについては基本的にはいとわないというか、全力でやるということで考えております。ただ、それを行う環境という点においては、一生懸命やりたいんだけれども、それをやる時間がなかったり、様々な研修に行って新たな資質・能力を付けたいんだけれども、その研修に行く時間が取れない、学校を空けるだけの人員が学校にいないという点から、やっぱりそこの環境整備を求めたいなと考えております。
  以上です。
【天笠主査代理】    山脇委員、どうぞ。
【山脇委員】    お二方に申し上げたいのは、私ども、さんざん環境整備が必要だということを本当によく話し合った経緯があることを是非お伝えしたいと思っておりまして、おっしゃることもそのとおりだと思うんですが、なかなか理想的なものにすぐならないのが現実でして、一番急がれることは教員の定数を増やすことでしょうか。そうすれば、かなりのことが解決すると思われますか。
【天笠主査代理】    どうぞ。
【全日本教職員組合】    条件整備においてということですよね。順番は、どの優先順位を付けるかを聞かれているということかも分かりませんが、私が先ほど申しました二つのことは、両方達成される必要があると思っています。要するに、条件整備としては、教職員定数を増やすということ、長時間過密労働を解消することにおいては定数を増やすことと、それからクラスサイズを縮小すること、それから、教員の裁量を認めることは欠かせない。これは優先順位を付けにくい問題だなとは思っています。
【全日本教職員連盟】    基本的な勤務時間がすごく超過しているなんていうことがいろいろ言われておりますが、それは個人的にいろいろ差があって、5時、6時で帰り、家で仕事をする人もいれば、夜遅くまで学校に残って仕事をしている人も。それは、その人のライフスタイルというか、それに合わせてやっていて、実質的にはより長時間に亘り仕事をしています。
また、誰にも変えられないものとして、子供が学校にいる時間があります。例えば、小学校教員の場合で言いますと、1日のうちで子供がいる時間帯、朝から下校するまでの間で、フリーになれる時間を1日でトータルすると、大体70分から80分と考えます。その間に、子供たちの宿題等に目を通す学習指導や、様々なトラブル等に対応、あるいは連絡調整する児童指導に関わること、それから、子供たちと一緒に遊んだり話をしたりという共遊の時間等々、そこでやるべきことを考えていくと、多分、七、八十分では到底できない内容になります。どこかで手を抜いているんです。そうでないと、1日回らないので。という現実があることを考えると、教員の定数が増えていけば、1日で空いてくる時間がもう1時間、45分増えるだけでも随分違うんだと考えます。例えば、そういうことだと思います。
  以上です。
【天笠主査代理】    いかがですか、今の御意見。
【山脇委員】    私はずっと主張している人間なので。
【天笠主査代理】    ほかにいかがでしょうか。
  奈須委員、お願いします。
【奈須委員】    今お話を伺った中で、やはり私もいい実践を作っていく中で一番大事なことは教員の裁量、やっぱり現場教師が自立性と創造性を持って、また、その自立性や創造性を持った個人の教員が自分たちの意思で、集団というかチームを作って学校を作っていくことが、結果的にいい実践を生み出すと思うんですけれども、それに対して国がどういう情報を提供するかというか、サジェスチョンをするかということだと思うんですけれども、多分今回の出し方はちょっと強いという印象だと思うんです。議論の中で、昭和33年以降、学習指導要領が法的基準性を持つ中で、教育方法についてはかなりもう現場に任せるという形で来たかと思うんです。今回、学力論を変える中で、教育方法について何らかの言及をせざるを得ないというか、その言及の仕方だと思うんですけれども、何らかのサジェストなり、いい意味での世論誘導はせざるを得ない、あるいはエンカレッジすることをせざるを得ないと思うんですけれども、多分今の出し方はちょっと強いとお感じになっていらっしゃったり、押し付けという言葉が出ています。
  押し付けではないけれども、何らかの情報提供とかサジェストとかサポートすることを考えると、例えば、どんな出し方。今後、「審議のまとめ」があって、答申、解説書、あるいは、いろんな形での指導情報の提供や事例の提供になると思いますけど、例えば、どんな展開をすればいいだろうということで、お知恵を拝借できればと思うんですが。
【全日本教職員組合】    では、私から。基本的に、学習指導要領だけの問題ではないと思っています。これまで作り上げられてきた指導体制が、今そうなっている。例えば学校教育法が変わって、それで校長の職務権限が大きくなったというようなことが、これまでも行われてきました。やっぱりそういうことなど、総体としてそういう体制になっていることがあると思うんです。だから、学習指導要領でそのことに言及できるのかどうかは分かりませんが、したがって、今回の策定に当たっても、本当に教師の裁量を重視するのであれば、これまでのそういう指導体制を見直すことが大事だとは思っているということです。
【全日本教職員連盟】    現行の学習指導要領等に書かれてあることが、逆に言うと余りにも大綱的過ぎて、人によって様々過ぎて、それが果たして狙いに到達しているのかどうかというのがどうなのかなという実践も多々あると。そういうことで言えば、そこをしっかりと示されることで、専門教科以外の教科を教える場合、ある程度明確になっていると授業は組み立てやすいし、やりやすいのかなというのが私の印象です。
【天笠主査代理】    今のを聞いて、何かありますか。よろしいですか。
【奈須委員】    はい。
【天笠主査代理】    ほかに委員の方。
  上田委員、どうぞ。
【上田委員】    今回の学習指導要領の変更点の一つの問題は英語の教科にあると思いますけれども、現場の先生方のお立場から考えて、こういうものに対処する上で、どういう御懸念があるとか、あるいはこういうことを要望したいとかという御意見がありましたら、是非お伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
【天笠主査代理】    どうぞ。
【全日本教職員組合】    先ほど、意見の中でも述べましたように、やはり子供たちの発達段階を考えたときに、英語を教科にすることが一つ懸念されるのは、結局、現場でどうなっているかというと、教科にするということは評価もされることになるんです。そこもあって、子供たちが結局、分からないとかいうことがあって、評価されて、英語が好きでなくなることが現実の問題として増えているのが、先行して教科にしているところでは実態があることが一つ。
  もう一つは、時数増の問題が負担として増えることがあると思います。やはり母語をしっかり身に付けることなしに外国語は身に付かないと私たちは考えていますので、小学校段階ではやはり母語をしっかり身に付けることを中心にすべきではないかと思っています。
【全日本教職員連盟】    これまで、先ほども述べましたように、外国語活動というのが5、6年であって、その実績というか、経験値というのは、小学校の先生、教員は持っているんですけれども、実際に教科としての英語を教えるとなったときに、大学を出てからしばらく真面目に英語なんていうものに触れてないわけです。何年にも亘って何もやってなかったものをやりなさいということ自体が、まずプレッシャーという。極めて当たり前というか、そういうところ。
  さらに、横並びで見たときに、やはりここでは私一人でやっているけれども、隣の市町村では多数のALTが授業に入ったり、日本人の方で優秀な方がサポートに入ってやられていたりということで、サポートがしっかり受けられるのかという不安というところもあるのかなと思います。本当にやったことがない、見たことがないという小学校教員がほとんどだと思うので、イメージがつかない。なので、授業の実践や評価に対して不安という部分が膨れ上がっていると考えております。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。そろそろ予定している時間が迫ってきましたけれども、何か御意見等々ありますでしょうか。よろしいでしょうか。
  それでしたら、最後に私から一つ御質問させていただきたいと思うんですけれども、中学校、高等学校の先生方は、もう少し御自身の教科を超えて、他の教科の授業をお互いに見たり、あるいは遠慮なく互いに意見を言い合う、そういうことがもっと増えてもいいのかなと。現実に、そういう教科を超えた研修会とか持っている学校、私も知らなくはないわけですけれども、どうも自分の御専門を教科に限定し過ぎて、そこでいろいろな物事を、学校のありようを組み立てていると来たのがここまでのところで、その専門性は大切にしつつも、他の教科とのお互いのやりとり、関係を、もう少し広く互いに受け止め合いながら、学校の在り方を追求していってもいいように思うんですけれども、そういうことについて、これは冒頭、僕が御質問させてもらった教師の専門性ということに関わる、もう一つの質問と捉えていただいてもいいかと思うんですけれども、その辺について何か。今回は教科横断という、それについては先ほど御見解等々も伺った次第ですけれども、それについて何か御意見がもしありましたら、お願いできればと思うんですけれども、いかがでしょうか。
【全日本教職員組合】    そのことそのものは否定するものではないと思っています。私も現場のときには、他の先生の授業を見させていただく、また反対に見ていただくことは。ありましたので、そのことそのものは否定するものではないと思いますが、しかし、それをしようと思ったときには、ゆとりがないとできない。今、本当に教師が多忙の中で、自分の目の前の仕事や課題をさばくだけで手いっぱいだという状況の中では、なかなか他の教科まで見に行くとか、そこに関わって、お互い話し合うとかいうようなところのゆとりはないんじゃないかなとは思います。
【天笠主査代理】    いかがでしょうか。
【全日本教職員連盟】    今回示されておりますアクティブ・ラーニングの視点に立った授業改善等というキーワードを基に教科を超えた話し合いはできると思うし、していかなくてはいけないのかなと考えます。
  以上です。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。それでは、時間になりましたので、これにて後半のセクションを終わらせていただきたいと思います。御発表いただきました団体の皆さん、誠にありがとうございました。頂きました御意見は、事務局にて整理の上、答申に向けた議論に反映させていただきたいと思います。
  それでは、最後に事務局より今後の日程について連絡等々、お願いいたします。
【石田教育課程企画室専門官】    皆様、本日は誠にありがとうございました。次回は、10月17日、月曜日、13時から15時、場所はスタンダード会議室虎ノ門ヒルズにて開催をいたします。次回は、冒頭より2会場に分かれての開始となりますので、よろしくお願い申し上げます。詳細は、追って御連絡を差し上げます。
  なお、本日の資料につきまして郵送を御希望される方は、机上に残しておいていただけましたら、後日お送りをさせていただきます。
  また、本日、机上に、8月におまとめいただきました「審議のまとめ」の冊子をお配りをしております。本日、机上に置かせていただきました。お持ち帰りいただいても結構でございますし、後ほど郵送を御希望される方は、机上に残しておいていただければと思います。
  以上でございます。
【天笠主査代理】    それでは終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。


――  了  ――

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