教育課程部会 教育課程企画特別部会(第10回) 議事録

1.日時

平成27年6月23日(火曜日) 10時00分~12時30分

2.場所

東海大学校友会館「阿蘇の間」
東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビル35階

3.議題

  1. 初等中等教育の教育課程全体を通じた観点から改革が必要な事項について(意見交換)
  2. その他

4.議事録

 【羽入主査】  おはようございます。それでは,定刻となりましたので,ただいまから,教育課程企画特別部会を始めたいと思います。
本日はお忙しい中お集まりいただきまして,誠にありがとうございます。
まず,事務局から配付資料等について確認をお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】  それでは,配付資料の確認をさせていただきます。本日は,議事次第に掲載しておりますとおり,資料1から資料4及び平川委員から御提出いただいた資料5を配付させていただいております。
また,参考資料1から4を配付させていただいております。1から3につきましては,後ほど担当より御説明を申し上げます。参考資料4でございますけれども,教育課程部会の先生方におきましては連日恐縮ですけれども,昨日の教育課程部会で御審議いただきました国際バカロレア・ディプロマ・プログラムの導入を促進するための教育課程上の特例措置についての資料でございます。両方の課程を無理なく履修できるということを目指しまして,ごらんのような特例措置を設けるということで進めさせていただいているところでございます。また,本日は,学習指導要領の見直しに関しまして,各団体から届けられております要望の一覧ということを机上に配付しております。適宜ごらんいただければと存じます。
以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。それでは,議事に入ります。
本日は,初等中等教育の教育課程全体を通じた論点から,改革が必要な事項について意見交換を予定しております。
なお,それに先立ちまして,これまで議論されております文部科学省での検討状況,他部会での状況について,事務局から御説明いただきますが,主に3点ぐらいになるかと思います。
まず,教育に関する条件整備として,義務教育教職員定数に関する説明をお願いいたします。
【池田財務課長】  おはようございます。財務課長の池田でございます。
私の方から義務教育の教職員定数に関する動向について,御紹介させていただきます。参考資料1をごらんいただきたいと思います。後ろの方にございます参考資料1を使って御説明をいたします。
報道等で御承知かと思いますけれども,ゴールデンウイーク明けぐらいから,財務省の財務大臣の諮問機関である財政審という審議会の場で財務省の事務方から,教職員定数をもっと削減すべきであるという提案がなされております。この提案に基づいて議論をした結果,6月1日に財政審の建議という形で,少子化の時代なので,教職員定数の削減に関する建議,削減も含めた建議が出されております。文部科学省としては,これは財務大臣の諮問機関でございますので,財政審の場で反論をするという機会はございませんでしたけれども,下村大臣をはじめとして,国会審議の場や記者会見等で財政審に対する反論と,文部科学省の考え方をまとめた主張をしておりまして,それをまとめたものが参考資料1でございます。
1枚おめくりいただきまして,財政審というところは,財政健全化についていろいろな分野の提言をいたしますので,教職員定数についても,毎年削減すべきと言われておりますけれども,表紙の裏の1枚の一番上の方に書いてございますが,今年度の新しい指摘としては,加配定数の削減ということと,それも含めた教職員定数合理化計画を策定すべきという提案がなされております。これは昔やっておりました定数改善計画のマイナスの改善計画,合理化をして計画的に削減していくべきだというものでございます。文部科学省としては,これに対して,今の学校現場を取り巻く課題が複雑・困難になっているということと,それから,もう一つは,アクティブ・ラーニングをはじめとして,この部会で御審議いただいておりますけれども,新しい教育を進めていく。そのためにも教職員の指導体制は必要だということを主張しております。このページの一番下の2行がポイントでございますけれども,少子化だからといって,機械的に削減するのではなくて,加配定数をはじめとする教職員定数の戦略的な充実が必要ということで,いろいろな場を通じて訴えております。
もう1枚めくっていただき,次のページでございますが,ここ以降は少し各論ですけれども,かいつまんで御説明をさせていただきたいと思います。財政審の建議の内容をもう少し具体的に申しますと,一番上のオレンジの部分に端的にまとめておりますが,一つは,平成36年度までの9年間に3万7,700人の自然減がある。これは,教職員定数と申しますのは,現在,全国で約70万人おります。このうちの9割に相当する63万人は基礎定数と言っていて,これは法律に基づいて自動的に計算されて出てくる部分でございます。したがって,子供が減っているときには,基礎定数も計算式で減っていく。これはある程度やむを得ないところでございますけれども,文科省としては,これまでこの減る部分を本当に必要なところに振り替えて改善をしてきたという経緯がございます。
もう一方,70万人のうちの残りの1割弱が加配定数と言っておりまして,これが6万4,000人ぐらいおりまして,この加配定数というのは,先ほど申し上げた機械的に算定される基礎定数では対応できないような,下の左側に書いてありますような特別支援教育,通級指導などを行ったり,あるいは学校の状況に応じて,いじめや不登校の対応が非常に大変な学校であるとか,貧困世帯が多い学校,いろいろ教育指導上課題がある学校に特別にプラスで配置して,直面する課題に当たっていただくということで,これが加配定数ですけれども,今回,財務省は,9年間で4,200人,加配も削るべきだというような提案がなされております。
しかしながら,特に加配定数につきましては,右側の表にございますように,最近のトレンド,10年間でのトレンドをここで分析しておりますけれども,平成16年度にそれぞれの件数を100の指数にいたしますと,加配というのは確かに財政審が言うように,ここ10年で100だったものが120になっておりますので,約1.2倍に増えているわけですけれども,一方で,加配の理由になるような学校現場の大変な課題点。これは例えば障害児の数というのは,平成16年度は100だったものが218に増えている。したがって,10年で2.2倍ぐらいに増えている。あるいは学校の暴力行為であるとか,日本語指導が必要が外国のお子さん,こういった件数もそれぞれ1.8倍とか,1.5倍ぐらいに増えていますので,こういった直面する課題の方がはるかに増えている中で,加配はむしろ追い付いていないというところでございます。したがって,こういう状況も見ながら,加配定数はきちんと戦略的に増やしていく必要があるというのが私どもの考え方でございます。
もう1枚めくっていただきまして,次のページは,今申し上げたことも含めて,子供の減る減り方と教職員の減り方を平成に入ってからで分析したものでございます。詳しい説明は省略いたしますが,要は,通常の小・中学校の普通学級を担当する先生というのは,子供の減り方に応じて大体同じペースで減っているのですが,先ほど申し上げた加配定数,学校が直面する課題のための定数であるとか,あるいは特別支援学校とか,特別支援学級を担当する先生,これはお子さんが増えていますので,こういった先生方が増えている。したがって,子供の数ほどには先生は減っていませんけれども,今,学校が直面しているいろいろな課題に,財政審の言うように教員を減らすとなると,そういう課題に応えることができなくなってしまうという状況がございます。
それから,次のページをごらんいただきたいと思いますが,ここも詳しい説明は省略いたしますけれども,財政審は,財政支出の額や教員の給与を欧米諸国やG5の日本以外の国と比較して,日本も遜色ないということをしきりに言っておりますけれども,その大前提として,日本と他の国とでは,御承知のとおり,学校や教員が担当する職務の範囲が全然違っていると。例えば左下の円グラフで見ますと,イギリスは,基本的には学校の先生というのは学校に行って授業を中心にやればいいということで,授業以外の業務の比率というのは約3割にとどまっておりますが,日本は授業以外にも多数の仕事を持っております。生徒指導であるとか,部活動であるとか,そういったものが多いということで,授業以外の業務の比率が約6割になっている。トータルで見た場合には,右側にある,これはTALISという昨年,1年前に調査結果が出た国際調査ですけれども,OECD加盟国の週当たりの勤務時間の平均が38時間程度であるのに対し,日本は54時間近くになっているということで,日本の先生方,厳しい状況の中で非常に頑張っていただいていると,こういう前提を抜きにして,単に財政支出の額だけで比較したり,あるいは教員の給与の水準だけで比較するという,これは適切ではないということを申し上げております。
以下,具体的なエビデンスをいろいろこの資料では挙げておりますが,後ほどお目通しいただければと思います。
こうした私どもの反論につきましては,いろいろなところで御理解を頂けたと思っておりまして,一つは,国会の衆議院と参議院の文部科学委員会で,それぞれ決議が行われております。しかも,これは与野党問わず,全会一致で決議を頂いたということがございますし,それから,6月に入って,教育関係団体,あるいはPTAはもちろんですけれども,全国知事会や全国市長会,全国町村会といった首長さんの団体でも,財政審の提言に疑問を,懸念を表明して,教職員定数をきちんと確保するようにということで,緊急声明やアピールを採択していると,頂いているという,こういう状況でございます。
ちょうど先週,今週と,政府全体の骨太の方針というのを政府内で今,調整をしておりますけれども,この骨太の場でも,財政審と同じような教職員定数削減のということを明記されてしまうと,来年度以降の定数改善というのが非常に難しくなりますけれども,今,鋭意折衝をしている状況でございますが,何とかそういう最悪の書き方は回避できる見通しでございますけれども,今週掛けて与党内,政府内の折衝を引き続き行いまして,来年度以降の概算要求につなげていきたいと考えてございます。
以上でございます。
【羽入主査】  ありがとうございました。それでは,御報告を続けさせていただきます。
次に,チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会における審議状況についての御説明をお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】  担当の初等中等教育企画が別用重なりましたので,私の方から参考資料2に基づきまして,チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会中間まとめ,7月の頭に向けて取りまとめが進められておりますけれども,概要を御説明させていただきます。
参考資料2,1枚おめくりいただきますと,1ページ目,「チームとしての学校」が求められる背景ということでございます。(1)次代を生きる力を育むための教育課程の改革や授業方法の革新を実現するための体制整備ということで,例えば子供たちにこれから求められる力を身に付けさせるためには,学習指導要領改訂の動きも踏まえ,学校全体でカリキュラムマネジメントや指導方法,評価方法の開発・普及等に取り組むことができる体制を整備していく必要があるということなどでございます。
また,(2)でございますけれども,複雑化・多様化した課題を解決するための体制整備ということで,生徒指導上の課題や特別支援教育の充実など,学校が抱える課題は複雑化・多様化しており,教員だけで対応するのは質的にも量的にも難しくなってきている。その上,心理や福祉など教育以外の高い専門性が求められるような課題が増えてきているというようなことなどでございます。
また,(3)でございますけれども,子供と向き合う時間の確保等のために体制整備ということで,我が国の教員が事務的業務等に多くの時間を割いているという結果が出ており,教員が授業準備等により専念できるようにしていく必要があるというようなことなどでございます。
2番目が「チームとしての学校」の在り方ということでございますけれども,校長のリーダーシップの下,教職員や専門スタッフ等が子供や地域の実態を踏まえた教育目標の達成にチームとして取り組む体制を整備するため,以下の三つの方向性に沿って検討を行い,学校のマネジメントモデルの転換を図っていくということでございまして,(1)が学校のマネジメント機能の強化ということで,教職員や専門スタッフ等の他職種で組織される学校がチームとして機能するよう,校長がリーダーシップを発揮できるような体制を整備するとともに,学校内の分掌や委員会等の活動を調整して,学校の教育目標の下に学校全体を動かしていく機能強化ということでございます。
二つ目が専門性に基づくチーム体制の構築ということでして,教職員や専門スタッフ等が自らの専門性をそれぞれ発揮できるよう連携や分担の在り方を明確にするということでございます。
3番目が教職員一人一人が力を発揮できる環境整備ということでして,教職員一人一人が力を発揮し,更に伸ばしていけるよう,人材育成や業務改善等の取組を進める必要があるということでございます。
3ページ目以下から,「チームとしての学校」像ということがございますけれども,「チームとしての学校」像を構築のリーダーシップの下,カリキュラム,日々の教育活動,経営資源が一体的にマネジメントされ,教員,関係機関や学校内外の人材がそれぞれの専門性を生かして能力を発揮し,子供たちに必要な資質・能力を確実に身に付けさせることができる学校というイメージでございます。
4ページ目,3ポツ以降は,具体的な改革方策でございますけれども,学校のマネジメント機能の強化につきましては,学校が一つのチームとして機能するよう,学校のリーダーシップ機能を強化するとともに,学校の企画・調整機能や事務体制を強化ということの中で管理職の適材確保,それから,5ページ目ですけれども,主幹教諭制度の充実,事務体制の強化ということが求められてございます。
6ページ目以降,専門性に基づくチーム体制の構築でございますけれども,教職員や専門スタッフが自らの専門性を十分に発揮し,チームとして総合力を最大化できるような体制を構築するという中で,教職員の指導体制の充実。それから,教員以外の専門スタッフの参画ということで,スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカー,次ページ目以降,それぞれの専門家ということの活用がまとめられているところでございます。
それから,地域との連携体制の整備ということで,10ページ目でございます。
さらに,教職員一人一人が力を発揮できる環境の整備ということで,チームとしての学校において,教職員一人一人が力を発揮できるよう,人材育成や業務改善の取組を進めるということで,人材育成の推進,人事評価制度の活用や,教員表彰制度の活用,また業務改善,それから,教育委員会等による学校の支援の充実について,ごらんのように取りまとめられているところでございます。
以上,チーム学校についての作業部会中間まとめの骨子について御説明を申し上げました。
【羽入主査】  ありがとうございます。あと1点,御報告いただきたいと思います。教員養成部会における議論についての御報告をお願いいたします。
【大江教職員課課長補佐】  失礼いたします。教員養成部会の事務局担当をしております,教職員課の課長補佐の大江でございます。私の方からは,教員養成部会における審議の進捗状況について,御説明申し上げたいと思います。
昨年の7月の諮問以降,部会において13回の御審議を頂きまして,先般,6月19日に中間まとめの骨子案の審議を行っていただいたところでございます。本日は,こちらの骨子案を用いて御説明を差し上げたいと思います。
資料になりますけれども,参考資料3-1,それから,3-2になります。本日は,時間の関係もございますので,参考資料3-1,A3の概要版を用いまして御説明を申し上げたいと思います。主なものをピックアップさせていただきながら,御説明を差し上げたいと思います。
まず,背景でございますけれども,新しい教育基本法が改正されまして,第9条に,教員が常に研究,研修に努めなければいけないということが規定されたところでございます。また,そのための研修の体制整備,こうしたことについても規定されたところでございます。また,平成24年の中教審答申におきましては,「学び続ける教育像」,こうした理念を打ち出していただいたわけですけれども,こうした「学び続ける教員像」の具現化を図っていかなければいけないという要請が高まっているところでございます。
また,学校を取り巻く環境変化も,かつてとは大きく違っておりまして,大量退職,大量採用等におきまして,かつてであれば学校の中で自然と先輩,後輩の関係の中から学ぶべきものを学んでいったということが自然に行われていたわけですけれども,大量退職,大量採用におきまして,年齢の不均衡等々ございまして,意図的に学びの場を作っていかなければいけないのではないかといった背景があるということでございます。
また,こちらの部会でも御議論いただいております教育課程の改革,育成すべき資質・能力の明確化,あるいは教科・科目の在り方や教育目標・内容の見直し,それから授業方法の革新についても御議論いただいていると思いますけれども,アクティブ・ラーニングへの転換を図っていかなければならない。また,英語,道徳,ICTの活用等々,新たな教育課題にも対応していかなければならないという背景。さらに,先ほど事務局の方からも説明させていただきました,チーム学校への転換ということで,これからはチームの一員として,組織的,協働的に諸課題の解決のために取り組んでいかなければいけないという背景がございます。
こういった背景を踏まえまして,主な課題として,このようにまとめていただいたところでございます。まず,全般というところでございますけれども,教員の養成・採用・研修の全般的な事項でございますが,これまで養成については主に大学が,採用以降の研修については教育委員会や学校が行ってきたところでございますけれども,教員の長い教職生活は,養成段階からその後の長い人ですと40年近く教員をやっておりますので,そういった長いキャリアステージを見据えて,大学,それから教育委員会等々が協力をしながら,その教員を育成していかなければいけないだろうというような課題意識でございます。
ここに書かせていただいておりますのは,教員の養成・採用・研修を一体的に改革するために,大学と教育委員会の連携を図って,これは具体的な,制度的な枠組みが必要だろうということが課題に挙げられております。また,この際,それぞれの学校種ではかなり特徴,違い大きくありますので,それぞれの特徴,違いを踏まえて制度設計を進めていくことが重要であるというのが,全般的な課題がございます。
また,それぞれ研修,採用,養成,免許につきましての課題を挙げさせていただいておりますけれども,時間の関係がございます。主なものをピックアップさせていただきたいと思います。研修の丸の二つ目でございますけれども,新たな教育課題,こちらをアクティブ・ラーニングであるとか,ICTの活用等でございますけれども,こうした新たな教育課題に対応した研修プログラムの開発,全国的な普及,研修指導者の育成,教育センターや学校内での研修体制の充実が必要ではないかということ。
また,若干飛びますけれども,養成段階でございますが,丸の一つ目でございます。これは長い教職生活の中で,4年,あるいは6年という養成段階というものは,限られたものがございますので,養成段階というのは,教員になる際に必要な基礎,あるいは基盤的な学習を行う段階であるという認識を改めて持つ必要があるのではないかということでございます。
また,研修でございますが,丸の二つ目でございます。新たな教育課題に対応して,この養成のカリキュラムについても変えていかなければならないだろうということ。
それから,丸の三つ目でございますけれども,学校現場や教職に関する実際の体験を学生のうちにもう少ししておいた方がいいのではないかという問題意識でございます。こうした問題意識を踏まえまして,下の方にございます具体的な改革の方向性でございますけれども,全般事項につきましては,課題で具体的な制度的枠組みが必要であるといったことを受けまして,教員のキャリアの段階に応じて身に付けることが求められる能力の明確化を図る。これは,表現上はルーブリックであるとか,スタンダードであるとか,教員指標という言葉が幾つか出ておったところでございますけれども,要は,教員がそれぞれのキャリアステージにおいて求められる,身に付けなければいけない能力というのをしっかり明確化して,それを視座にしながら育成を図っていくべきだと,これは養成段階,研修段階にも通ずるものであるべきだということでございます。
こうしたものを明確化していくために,教育委員会と大学がそれぞれ協議・調整をしながら,教員育成指標といったものを全国的に整備をしていくべきではないかといった御議論を頂いております。また,その際には,当然それぞれの地方で自主的,自律性を重んじながら作っていただくわけでございますけれども,やはり国が,最低限身に付けていただきたいようなものを大綱的に示していく必要があるんではないかといった御議論を頂いているところでございます。
また,それぞれ研修,採用,養成,免許等々についても,別の具体的な方向性を頂いておりますけれども,研修につきましては,これは例えば公務員で申し上げますと,年次研修というのがございますけれども,そういった年次研修,あるいは年次研修のほかに日々の校内での研修,こういった継続的な研修を推進していく必要がやはりあるだろうということで,校内研修体制の充実・強化,あるいは研修指導者の育成,新たな教育課題への対応といったことが挙げられております。
また,養成段階でございますけれども,新たな教育課題への対応ということで,教職課程の改善,これはコアカリキュラム等を整備していったらいいんではないかということでございます。また,学校インターンシップの導入ということで,教職課程の位置付けをしてはどうかということで,学生の間になるべく教職体験を実際の体験を積んでおいた方がいいのではないかといった御提言を頂いて,御議論を頂いているところでございます。
以上が骨子案の概要でございますけれども,次回,6月30日に素案の審議を行っていただきまして,7月には中間まとめをおまとめいただくという予定になっているところでございます。
以上でございます。
【羽入主査】  ありがとうございます。ただいま御報告いただきました3点については,次回の7月8日の部会で議論の場を設けたいと思いますが,今,特段質問,御意見がございましたら,承りたいと思います。
【市川委員】  じゃ,よろしいですか。
【羽入主査】  どうぞ,市川委員。
【市川委員】  特段と言うとちょっと恐縮なんですけれども,私,この教員の教員養成のこれの99%賛成,非常にいいポイントがたくさん出ていると思っていますが,1%,この会議の当初の頃から言ってきたことで納得いかないことがあります。アクティブ・ラーニングへの転換です。アクティブ・ラーニングへの転換というのは,これまでの教育を180度変えて,アクティブ・ラーニングに展開しましょうというふうに読み取れます。学校でも大変な混乱を引き起こすおそれがあります。転換ではなくて,私は導入とか,充実という言葉にしていただきたいと思います。
アクティブ・ラーニング,もちろん結構なことで,今よりはずっと入れていかなくてはいけないと思いますけれども,教員が教材研究をしっかりやって,子供たちに分かりやすく説明をするということがあたかも古いこと,もうやってはいけないことのように思われがち。実際にそういう誤解が起きています。90年代,新しい学力が言われた頃もそのような雰囲気があって,当時,教員になった人たち,今聞いてみますと,教師がもう教えることはよくない,指導はよくないということをしきりに言われた。結果的に,先ほど申し上げたような教材研究をして子供たちに分かりやすく教えるということが批判されて,そういう力を教師が失っていったと。その90年代の再来になってはいけないと思いますので,是非転換ではなくて,表現をお考えいただきたいと思います。
【羽入主査】  ありがとうございます。大変貴重な御発言だと思います。ほかにはいかがでしょうか。
【天笠主査代理】  じゃ,一つだけ。一つ,お願いしたいのは,チーム学校と,それから,教員養成のこの2点,それぞれ御報告いただいたんですけれども,教育養成部会の方については,こちらの方の審議と,それから,せんだって制度化が法案化されました義務教育学校,そういうことへの動きとか,動線についての目配せが相応に入っているように受け止めさせていただきました。
一方においては,チーム学校については,一層こちらの議論ということと非常に親和がするというか,密接化する必要性というのがあるんじゃないかと思いますので,どうぞそちらの部会の関係の方に,こちらの議論の推移というんでしょうか,動きというのを目配せしていただいて,より接近をこれからそちらの方に図っていただくというか,この案文の中にも,それらのことが受け止められるような形でお願いできればと思います。
以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。情報提供していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
それでは,今日の議題でございます初等中等教育の教育課程全体を通じた観点から,改革が必要な事項についての意見交換を行いたいと思います。
先ほど私,申し上げるのを失念いたしましたが,本日も毎部会と同様,取材,それから,録音の申込みがございますので,そのことを御了承いただけますようにお願いいたします。
それでは,今回の議事について,まず事務局から資料に基づいた御説明をお願いいたします。その後に意見交換をいたします。
【大杉教育課程企画室長】  失礼いたします。資料1並びに資料2をごらんいただければと存じますけれども,資料1は,今後の論点整理に向けまして,検討事項を項目立てて整理をさせていただいたイメージでございます。これら項目に関するこれまでの御発言等を項目別にまとめさせていただいたものが資料2になります。
まず,資料1ですけれども,今後の論点整理に向けてということですけれども,六つの柱立てをさせていただいております。一つ目は,初等中等教育の教育課程に関する現状と課題ということで,社会の質的変化等と教育課程の課題,それから,前回改訂の成果と次期改訂に向けた課題ということでございます。
二つ目でございますが,新しい学習指導要領等が目指す姿ということで,一つ目が新しい学習指導要領の在り方について,二つ目が育成すべき資質・能力について,育成すべき資質・能力についての基本的な考え方等,資質・能力の構造の捉え方,それから,特にこれからの時代に求められる資質・能力とは何か,発達段階や成長過程のつながりはどのように考えていくべきかということでございます。
3点目が育成すべき資質・能力と学習指導要領等の構造化の方向性についてということでございます。一つ目が学習指導要領等の構造化についての考え方,在り方,二つ目が学習活動の示し方や,いわゆるアクティブ・ラーニングの意義等についてでございます。
大きな3点目,評価の在り方について。
4点目,学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策。これはアクティブ・ラーニング等の実現に向けて必要な支援方策や条件整備等,それから,カリキュラムマネジメントということでございます。先ほど主査からも御案内ございましたけれども,これらの条件整備等につきましては,次回,7月8日の企画特別部会においても御議論を頂きたいと考えております。
それから,5点目でございますけれども,各学校種,各教科等における改訂の具体的な方向性。これまで数回にわたって幼・小・中,それから高校について御議論いただいた中身でございます。一つ目が各学校種の教育課程の基本的な枠組みと学校種間の接続,二つ目が各教科・科目等の内容の見直し。
それから,最後に,今後の検討スケジュール等ということでございます。
資料2にお移りいただければと存じます。今申し上げた項目別にこれまでの御発言内容等をまとめさせていただいております。これまでの御説明とかぶる部分もございますけれども,少し学校種別の議論で間も空いておりましたので,改めて御説明を申し上げたいと思います。1ポツの(1)社会の質的変化と教育課程の課題ということですけれども,一つ目は,他者との関わりということ。二つ目は,人口減少社会への対応ということ。三つ目は,開かれた学校において子供たちが主体的・協働的に学ぶということ。
それから,次には,グローバル化の中で国際的な場でも自分の意見,自国の文化を語れるということ。
それから,基礎的・基本的な知識だけでは生きていけないという中で,問題が出されて解を作るのではなく,自分で問題を作ったり考えたりしなければいけないということ。
それから,地域社会や学級なども含む社会の中で,それを変えていける,高めていけるという実感を感じられる教育が必要であるということ。また,雇用ニーズを見た場合に,高い問題解決能力を有する仕事のニーズが高まるのではないかということ。
2ページ目へ参りまして,社会の変化のスピード感に対応できるかで格差が生じているのではないかということ。人工知能が人類を越えるというような,2045年というようなことも言われている中で,今まで存在した職業が消えていくかもしれないという時代において,子供たちにどのような準備をさせていくかということ。経済的背景の要因において,格差が開いて二極化が懸念されるということ。今後の社会的変容の中で,セルフコントロールということが求められるのではないかということでございます。
前回改訂の成果と次期改訂に向けた課題につきましては,丸の二つ目でございますけれども,学力向上の成果というものが現れてきている一方で,次の丸になりますけれども,様々な学習意欲,社会参画等々に課題があるということ。
それから,3ページ目でございますけれども,指導要領につきまして,学問的な体系は見える一方で,教科横断的にどういう力を育てるのかというのは見えにくいということでございます。
そうした中で,新しい学習指導要領の在り方ということで,終戦から70年という節目において,子供たちにどのような力を育成していくかという観点からの改訂ということ。
それから,学びに向けた子供の方向性,子供たちは元々学びたがっているというようなこと。目的・学習方法,評価の一貫性ということでは,大きな転換になるのではないかということ。
それから,子供たちが何ができるようになるかということが検討されるべきということ。人はどのように学ぶのかということの中で,対話をしながら相手の主張を取り込んで考えを広げていくということを学校というシステムの中で考えていく必要があるということ。
知識と活用力,学習意欲の関係をどのように考えていくかということ。子供たちは面白いと思ったらやるということ。また,4ページ目,人間はどのように学ぶのか,知識というのはどういうものなのかということを足場に議論していく時代ではないかということ。学校や地域社会,学校と地域社会がつながるという,そういったつながりを持った教育課程が必要であるということ。外の風ということ。
それから,アクティブ・ラーニングの充実など,日本が今の現状に満足するのではなく,次に進もうという中で単なるキャッチアップではなくて,それを越えるというようなことが必要であるということ。入試改革との関係性。
それから,専門高校も含めて外部で求められる人材との隔たりということ。様々な,特に普通科進学校においても,地域と向き合うということをやっていくことの必要性。他学年・異年齢との交流,様々な交流を通じて成長するということ。特別支援教育の必要性。オリンピック・パラリンピックを契機とした新たな文化を生んでいくということでございます。
5ページ目,育成すべき資質・能力についての基本的な考え方でございます。教育基本法に定める人格の完成並びに平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質の育成というようなことを目指すということ。また,二つ目以降は,諮問の内容でございますけれども,例えば主体的・自律性に関わる力,対人関係能力,他者と協働する力,課題解決能力等々,これらの今後,求められる資質・能力ということ。持続可能な社会作りなど,また,学習意欲や自立の意識,リーダーシップ,クリエイティブな能力,意欲や志等々について,検討が必要ではないかということでございます。
また,5ページ目の一番下でございますけれども,これから求められる資質・能力,他者と協働しチームが編成できる,異なる価値を統合できる,根拠等を明確に説明できる,深い知識と広い視野,人間関係の重視,グローバルな課題と地域の課題を関連付けられる,こういった点が必要なのではないかということ。また,こういった力について,評価の観点と合わせて明示していくということの必要性。これらを個々の持っている力をどのように伸ばすかという観点から見ていくことも必要であるということ。体育やスポーツの意義。
それから,資質・能力については,現場に下ろすということだけではなく,先生方自身が考えていく必要があるのではないかということでございます。
資質・能力の構造の捉え方,立方体的に,知識・技能,知識・理解,技能・能力,タイトルや価値ということを考えていく必要があるのではないかということ。
学力の三要素を出発点としながら,より情意的な部分も含めて広く考えていく。また,学力の三要素が各教科において具体的にどのような形なのかということを分かりやすくしていく必要があるのではないか。知識については,中心的な考えを基にネットワーク化されることが必要ではないか。
7ページ目ですが,三要素のつながりを付けていくことが必要ではないか。知っているだけではなく,社会で生きていく上でどう使われるかということがチェックできるということ。一方で,ベーシックスキルも大事であるということ。
それから,就学前の段階で様々な発達の素地を身に付けることの必要性,それから,学習意欲の重要性ということでございます。
特にこれからの時代に求められる資質・能力等ということで,シチズンシップに関する議,情報活用能力,自国の文化を語れる力,日本の良さを併せ持ちながら,高いコミュニケーション能力と主張していくということの両立。日本の歴史的な過程ということをしっかり語れる。近現代史の重要性。
それから,グローバル化というのは,自国とグローバルの双方の観点から様々な地理的・歴史的に考える力というのが求められるのではないか。また,自ら考える力をどの言語で獲得させていこうということなのか。また,国語の重視ということを更に捉えていくことの必要性。外国語の必要性,英語だけではなく,多言語の重要性。
それから,様々な運動経験不足の中から,スポーツについての重視の重要性。自己コントロールや,ルールの中で競い合っていくということの重要性。規範というものをクロスカリキュラムで行っていくことの重要性。様々な逸脱行動につながるようなリスクを抑えていくということの重要性。非認知的な能力ということについての考え方。
それから,自己効力感,思考スキルの育成,それから,いわゆる「○○教育」についての考え方ということでございます。
発達段階や成長過程のつながりということでございますけれども,18歳の段階で身に付けておくべき力は何かという見通しを持った上で,幼・小・中・高を考えていく必要があるのではないか。全ての教員が18歳で育っているべき資質・能力観を共有しておく必要があるのではないか。
幼・小や小・中などの校種間の接続の必要性。子供たち一人一人の発達課題や教育ニーズを捉えることの重要性。現場の先生方が,子供たちがどんな力を付けるべきかということを自分で再構成できることの重要性。
10ページでございます。中と高の先生方の交流など,連携の重要性。幼・小のカリキュラムのつながりの重要性。キャリア教育についての考え方。幼・小・中・高を通じて職業などについて考えるということの重要性などでございます。
10ページ目,指導要領の構造化の在り方ということでございますけれども,内容のみならず,それを使って何ができるようになるかという意味では大きな変化であるということ。
総体的な教育課程の姿ということを念頭に置いた上で,各教科の関わりや位置付けを考えていくということが必要であるということ。
どのような力を18歳のときまでに持つべきか。その上で小・中・高それぞれの段階でどのような力を身に付ける必要があるのかということ。
コンピテンシーについては,教科内容に依存しないようなものと,一方で教科の本質という二つが考えられるのではないかということ。
11ページ目でございますけれども,コンピテンシーを上のレベルで整理して,ブレークダウンするというやり方だけではなく,教科の本質を極めていって,それをコンピテンシーとして磨いていくという整理の仕方が考えられるのではないかということ。この部分は教科でないとできないという教科の本質を整理していくことが必要ではないかということ。
社会の要請に応える課題を扱うと学問的レベルが下がるのではないかと思われがちであるけれども,実際は学問的にも様々な正確を期したり,多面的・多角的な吟味が必要になるのではないかということ。
社会の要請に応える学習と教科の系統性ということをどう考えるかということ。
学習指導要領全体の構造といったときに,教科の構成ということがある一方で,12ページですけれども,解説書や指導事例集ということも含めて考えていく必要があるのではないかということ。言語力を含めて,多様な表現で物事を表すこと自体の意義。
それから,子供たちと一緒に,先生方も一緒に考えるということ。
それから,資質・能力をボトムアップで考えることも必要である一方で,出口のところで具体的にどういうことができるかということを考えていくことの必要性。また,学習指導要領が最低基準であるので,発展的なものができるということをもう少し分かりやすく示していくということでございます。
次に,学習活動の示し方やアクティブ・ラーニングの意義でございます。どのように学ぶかという学びの姿勢や深まりを重視していくということ。
13ページ目でございますけれども,教科の内容と学習活動をつなぐという構造化の観点は有効であるけれども,各学校の創意工夫を行えるようにしなければいけないということ。また,単なる手練手管やテクニックにならないようにしなければいけないということ。
一つの正答にいかに上手に至らせるかということではなくて,物事の多面的で深い理解に至らせるために表現と対話ということが重要であるということ。
子供たちが学ぶ喜びを体験するということの重要性。アクティブ・ラーニングにおける,社会で生きていくために大事なことを見付けるということの重要性。子供たちにシステム的な思考やクリティカルシンキングなどを育てていくことの必要性。
アクティブ・ラーニングに各教科共通する要素とともに,各教科ならではの物の見方を育成するプロセスということも必要ではないかということ。
言語活動の分析を踏まえた検討の必要性。総合的な学習の時間のプロセスを踏まえた重要性。浅い理解から深い理解に至るということの学習の重要性。その中で,教えて考えさせる授業ということの考え方。
それから,14ページ目ですけれども,ふだんの教科学習の中でもアクティブ・ラーニングを取り入れることが重要であるということ。探求のみならず,習得の授業の中でもしっかりと取り入れていくということ。一方で,習得の授業においては,先生による解説,説明,講義ということも重要であるということ。これらの組合せが重要であるということ。
それから,解説書,指導事例集を含める全体の中でアクティブ・ラーニングをどう示していくか。事例集をどう示していくか。発達の特性を踏まえた学習スタイルの違い。意欲,態度をアクティブ・ラーニングを通じてどのように高めていくか。社会とのつながり。授業者自身がアクティブ・ラーニングに意義を見いだすことの重要性。子供たちにいかに考えをまとめる時間や学びたいものを学び取っていく貪欲さを育てていくかということ。アクティブ・ラーニングについては,時数の確保が難しいとの見方もあるけれども,一方で,長期的に取り組むことにより効果的な学習が可能になるということ。
教科の学び方や本質を身に付けることを通じて,一方で,内容的には早く身に付くようになるのではないかということ。
アクティブ・ラーニングの授業を増やすということではなく,既にある各授業をインタラクティブにしていくことの必要性。
生徒たちを子供扱いするのではなく,主体性を育みつつ,様々な経験を与えていくということの重要性。家庭や授業外活動との連携ということでございます。
また,評価の在り方についてですけれども,自ら獲得していくための評価ということ。様々な新しい評価ということの在り方。日本固有の目的に準拠した評価ということをしっかりと高校も含めて展開していくことの必要性。
現行の4観点を3観点に捉え直して,分かりやすくしていくべきではないかというような御指摘。指導と評価の一体化ということを3観点から図っていくべきではないかということ。
評価を出口として考えられるだけではなく,その中でどのように伸ばすかということの必要性。それから,関心,意欲,態度の評価の在り方について御意見を頂いております。
それから,16ページ目,アクティブ・ラーニング等の実現に向けて必要な支援方策ということで,教育委員会の支援,教員養成・研修,様々なサポートスタッフの充実,教員の充実の必要性。また,リソースとして,様々な外部のリソースも含めて学習のデザインができるようにすること。外部人材の活用,ICTの活用,教科書等の在り方,教材の在り方,免許の在り方,福祉との連携について御意見を頂いております。
また,カリキュラムマネジメントにつきましても,17ページ下にございます。三つの側面ということをベースにしながら,18ページ目にございますように,先生方自身が自己のカリキュラムマネジメントをしていくということにいかにつなげていくか。校内研修の在り方なども含め御意見を頂いたところでございます。このカリキュラムマネジメントをいかに進めていくということが今回改訂において非常に重要であるという御意見を頂いております。
19ページ目以降は,各学校種ごとに頂いた御意見でございます。(1)各学校種の教育課程の基本的な枠組みと学校種間の接続ということで,幼児教育から高校教育までずらっと並べておりますけれども,幼児期にとって大事なもの,また,5歳児の学びの芽生え,小学校以上の自覚的な学びへの発展,様々な自己コントロール,規範意識等の必要性。幼児教育における評価の在り方。幼・小の円滑な接続のための行政的支援の在り方。
20ページに参りまして,小学校のスタートカリキュラムについてのより明確な位置付け。小中一環のカリキュラム開発の重要性,高校におけるレポートなどを含めた生徒の興味・関心を引き出すような学びの重要性。アクティブに高校生が学ぶことの重要性。地域に向き合うことの重要性。
普通科,専門学科,総合学科という枠組みの中で必ずしも整理し切れないような課題についても考えていくことの重要性。入試に合わせた理系,文系の分離ではなく,必要な力を学ぶという観点の必要性。教科の物の見方,考え方を身に付けることの重要性。
専門高校における協働的な学習の意義。高校においての教育課程としての一体性ということをしっかりと考えるということ。総合的な学習の時間の意義。また,学び直しの意義ということでございます。
また,21ページの上でございますけれども,個々の生徒の発達特性や学習スタイルの多様性。高校においてこそアクティブ・ラーニングの充実が必要であるということ。リーダーシップということ。高校における学校設定教科・科目の活用の可能性。
それから,特別支援教育ですけれども,全ての学校・学級に発達障害を含めた障害のある子供たちや可能性を持つ子供たちがいるということを前提にした対応の必要性。交流や共同学習についての意義。個別の指導計画に当たっての留意点等でございます。
また,(2)以降,各教科・科目の見直しでございますけれども,まずは,個々の教科等を教育課程の中で孤立させないような教科横断的な工夫が必要であるということ。総則をこれまで以上に各教科等と連動させるなど,記述の仕方の工夫が考えられるのではないか。
それから,二つ目以降は,英語の教科化,早期化について,小学校英語についてでございますけれども,についてはどのような力を高校卒業時点で持つべきであり,そのために小学校からどういうことを培っておくと,それができる可能性があるのかという観点から整理すべきではないか。小学校段階で母語以外の言葉でコミュニケーションするという体験が英語の言語能力育成の観点からも役に立つのではないか。小学校の外国語活動の成果を中学校に結び付けていくためには,高学年で教科にして,中学年で外国語活動を開始する必要があるのではないか。小学校に教科としての英語を入れるということについては,教育課程全体での関係性,連動ということも考えていく必要があるのではないか。
英語学習の効果を決める要因としては,トータルの学習時間,学校の授業時間,自分の学習時間,日常生活における接触時間ということではないか。語学の能力が定着されるためには,一定の時間が必要であるということ。週2ぐらいまであった方が伸ばす上ではいいのではないかということ。
英語の教科化など,増えていく社会の要請と教育課程全体の中でのバランスを考え,全体の枠について議論することは必要ではないか。
小・中・高を通じた長いスパンでの英語教育のCAN-DOリストをしっかりと用意し,次につながるようなカリキュラムを作っていく必要があるのではないか。
教科化するのであれば,教員の研修やADの配置,年間計画などの条件整備が必要ではないかということ。
家庭での英語教育の現状などについても前提とした議論。日本語でどのように物を考えということの重要性。英語を話せるようになると即主体的・協働的に活動できるということではなく,言語学的なトレーニングも重要ではないか。英語以外の外国語についての重要性ということでございます。
次からは高校でございますけれども,高校の各教科につきましては,知識のインプット重視から,主体的な思考・表現を重視していこうという方向性と,学問的な知識から,社会生活で活用していけるようにしようとする方向性,これが共通しているということ。これらを入試を含む評価の在り方などと連動させていく必要があるのではないかということ。
歴史教育については,自国のこととグローバルなことを総合的に捉えながら,その時代の人間がどのような問題に直面し,どのように判断したかという決定の積み重ねとして捉えていく必要があるのではないかということ。また,地理の空間的な認識等も併せて身に付けていくことが必要であるということ。歴史については,日本史と世界史の相互作用が学びの中心に置かれる。近現代史の学習も重要ということではないかということ。また,用語について一定の仕分が必要ではないかということ。
市民性に関する教育や主権者教育という観点から,高校生が地域や社会に関心を持って参画するということは重要であるということ。社会との関わりを充実させようという観点から,新科目の在り方は重要であるが,一方で,特定の新しい科目だけで必要な力を育むものではなく,クロスカリキュラムで育成されるという視点が重要ではないか。
SSHの取組を参考にしながら,数学と理科の知識を総合的に活用するような観点も必要ではないか。その際,総合的な学習の時間との関係性も整理が必要ではないか。
高校生の生活体験の少なさ。また,国語については,実社会・実生活に生きる国語の能力や,古典の面白さなどが現代につながるということを実感できる学習が必要ではないか。
社会の変化に合わせた学校体育・保健の在り方,幼・小・中・高と連携して神経系の発達に応じた運動環境を整えることの必要性。
コミュニケーション能力や自己をコントロールする力などなど,こうした学びが他教科にもつながるということ。
オリンピック・パラリンピックの題材を通じて,様々な障害のある方たちにどう寄り添っていくかということも学んでいけるのではないか。
また,次は芸術教育ですけれども,感性や表現力という部分はどの分野に進む際にも基盤となるという観点から,芸術教育の重要性を再認識するということ。生で見る,聴くということが重要であり,そういった機会を増やしていくということの重要性。また,情報活用能力ということの重要性。安全教育についての重要性。総合的な学習の時間についての重要性。特別活動の意義ということについて,様々御意見を頂いているところでございます。
最後に,今後の検討スケジュールでございますけれども,この論点整理,今後,夏に向けてお取りまとめいただいた後は,各学校種・教科別の検討を行い,その後,審議まとめを経た上で,28年度中をめどに中教審として答申を取りまとめられるよう検討を進めていくということでございます。
また,秋以降,各学校種・教科別の検討が行われるわけでございますけれども,その検討に当たりましては,教育課程企画特別部会の議論を踏まえつつ,各教科等に閉じた議論ではなく,カリキュラム全体としてどのような資質・能力を育成すべきか,その中で各教科等が果たすべき意義とは何かといった点を踏まえた上で検討を行うことが求められるのではないかといったことでございます。
以上でございます。
【羽入主査】  ありがとうございました。これまで私ども,9回にわたって議論してきたことをまとめていただきました。資料1にございます1枚紙で,柱が5本ございまして,まず,この部会においてどのような問題意識を持っているか。それから,2番目には,新しい学習指導要領に対してどのような姿を描くか。そして,3,4,5の点では,評価,あるいは方策,そして,各学校種・各教科等における具体的な方法,あるいは方向性についてという柱を立てていただきました。
これから御議論いただきますけれども,名札を立てて手を挙げていただきたいことと,それから,できましたら,どの観点についてということをお話しいただけると大変有り難く思います。
それでは,どなたからでもよろしくお願いいたします。
では,平川委員からでよろしいですか。
【平川委員】  横浜市立中川西中学校,平川でございます。ちょっと稚拙な文章で申し訳ないんですけれども,論点ペーパーを提出させていただきましたので,ごらんください。
私の本日の御提案は,4番の学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策というところに絞らせていただいております。
【羽入主査】  資料5ですね。
【平川委員】  資料5です。資料5に私の論点ペーパーがございまして,今後の論点整理に向けた検討事項の整理としては,4番の学習指導要領等の理念を実現するための方策ということで御提案させていただきたいと思っております。
一つ目に,どのようにカリキュラムマネジメントを各校で,学校で行っていくかというところでございます。それに伴います学習・指導方法及び評価方法をどうするか。改善点をどうするか。
それから,資質・能力というようなことで,それを踏まえた教育課程を編成していく上で,各校でどのような取組が求められるか。
それから,問題点としては,自己肯定感や学習意欲というようなことで,ここをどのように解決するかということで,私,民間人校長として6年目になりますけれども,様々なことをいろいろ行ってきて,倍以上失敗していることも多いんですが,その中で今回の学習指導要領をいかにスムーズに混乱なく現場に定着させるかということをポイントに絞ってお話させていただきたいと思います。
まず,1番の開かれた学校についてでございます。書いてあることは省略させていただきますが,学校運営協議会の設置を全校設置ということで文部科学省の方も推進していただいていますけれども,もっともっと推進していただきたいというふうなことでございます。チーム学校というのは,校内のみならず校外も含めた形で,外とどのような連携性を持ってつなげていくかということにも関わってくると思いますので,是非ともお願いしたい。
私から見た学校運営協議会というのは,辛口の友人でもあり最大の応援団というふうに思っております。実は私,今,中学校の学校長をやっておりますけれども,個人としては娘の小学校のPTA会長もやっておりまして,そこで今,私が在住している某23区の区は,学校支援地域本部はあるんですが,どうしても学校運営協議会の設置は認めないというふうなことでおっしゃるんですね。ここは地域連絡協議会というのもありまして,これはPTA会長として出席しているんですけれども,どうしても外部の方を入れて話の質を上げたいというようなことで2人入っていただいています。1人は東京都の指導主事を経験したり小学校の校長も御経験されている方を,今教授の方で1人,それからあと生涯学習の関係者の方を2人入れました。そうしますと,話の質が本当に上がります。今までは挨拶が少ないとか多いとか,そういう話が多かったんですけれども,例えば学力状況調査で,どうやったらこのB問題を,弱いというところを強めることができるかとか,かなり詳細にわたって話の質が上がりまして,法的な後ろ楯があるかどうかということは別なんですけれども,開かれた学校を目指すということで,学校運営協議会の設置をもっともっと進めていただきたいなというふうに思っております。
それから,2つ目に,4番に飛びますけれども,バカロレアのMYP活用の促進でございます。私は公立学校の校長ですけれども,前任校の市が尾中学校,今の中川西中学校でも,一般の中学校でもバカロレアを導入できるというふうに思っております。それは何かというと,今,論理的思考力ですとか,あるいは表現力・探究心を備えた人間育成を目指すというのが,このバカロレアなんですけど,それがぴたっと今度の新しい学習指導要領にはまるんですね。全ての学校がこれを導入するのではなく,起爆剤として,今,ディプロマ・プログラムの方を2018年までに200校設置というのを目標として掲げていらっしゃるので,ただ,2年間でこの力を育成するというのはなかなか難しいというふうに思っておりまして,これをMYPの方でも後ろ楯,下支えをして,6年間で仕上げていくというようなことが必要かなというふうに思っております。私も様々な学校を見学させていただいたりして,このバカロレア導入の一番のいいところは何かなというふうに思っておりましたら,どの学校もやらなければならない指導と評価の一体化であるとか,目標と評価の一体化,つまり授業ということと評価ということがきっちりぴたっとはまっていて,生徒をその都度,その都度やる気にさせて,リフレクションを多くとって,単元ごとにユニットクエスチョンを作って育む学習者像を設定するという,本当に基本的なことなんですけれども,なかなかこれがうまくいきません。1つは,時間がないということもあるかもしれません。ですけれども,先生方というのは,短期間でこの目標にいくぞといったら,その発揮する力というのは,またこれがすごいんですね。ぐわーっといくんですね。一部の教員からは反発が出るかもしれませんけど,「やるぞ」と言われたら,もう「はい」か「イエス」か「喜んで」というような形でやるのが教員ですので,これは子供たちのためだということが分かれば,つながってくるんじゃないかと思っております。
バカロレアで学習した後,日本の大学等々に行って,子供たちから授業改善を求める生徒も中にはいるということを聞いたことがあります。教員が子供からこういう授業じゃなくてああいう授業にしてくださいと言われたら,それは一番ぐさっときますけれども,一番のカンフル剤になると思いますので,こういうようなものをどんどん進めていくような施策をお願いしたいと思っております。
これが1番なんですけど,今の現状とバカロレアのようなものをつなぐのが何かというと,2番のキャリア教育でございます。キャリア教育につきましては,現在のところ,高校編にはキャリア教育という表現がございますけれども,小中学校編には直接的な表現がなくて,どうしても進路指導と間違えてしまう教員が多いです。小学校に多いんですけれども,進路,関係ないでしょうというような小学校教員も中にはまだまだおりまして,ここの整理を是非ともお願いしたいというふうに思っております。
何がキャリア教育がいいかというと,資質・能力が非常にしっかりと定まっているということでございます。2ページ目のキャリア教育の基礎的な4つの汎用的能力,1,2,3,4とございますけれども,ここに注力をして日常の指導,授業の中で,あるいは委員会活動の指導,部活動の指導ということを頭に入れてキャリア教育はできるというようなことで,キャリア教育のよさというものが私は物すごく今,実感値として考えておりますし,現場では相当入ってきていますので,ここの部分をより一層,はっきりと学習指導要領に記載していただきたいと思います。
もう一ついいところは,興味関心が上がるということでございます。授業と世の中が結び付いているというふうに思えば,100人いれば100人じゃないかもしれませんけれども,それの積み重ねが子供たちの学習意欲につながってくるのではないかと思います。
最後に3番目ですけれども,資質・能力を教員の方からボトムアップで上げていくというか,そういうような研修と思って,実際やっておりますし,これが効果的だということを思っております。現在,全国の状況は分かりませんけれども,横浜市の場合,どこの学校区,うちは1中4小ですけれども,大体夏休みに全部の教職員が集まって何かやろうというふうな会がございます。丸々1日,あるいは半日かけてやるんですけれども,ここで,いつも的を射ない話をすることも多いんですけれども,ここを資質・能力の9年間のものを決めていく場所にしたいというふうに思っています。
例えば,心豊かな人とか,あるいは問題を特定し問題を解決に結び付けるとか,知・徳体・公・開とか,抽象的な求める生徒像というのをどうしても打ち立ててしまうんですけど,それが小学校1年生,2年生,3年生,4年生,5年生,6年生,中1,中2,中3と学年ごとにどういうところを育みますかということを目標にして,2年生に受け継ぐ,3年生で受け継ぐ,4年生に受け継ぐというふうなことが必要じゃないかと思っています。
特に,中1ギャップと言われているように,小6までせっかく育んだものが中1でまた1からやり直しというようなところが見受けられまして,ここの分断を是非ともつなげていきたいというふうに思っております。是非こういった小中連携の研修の在り方,あるいは,もしかしたら幼・保・小・中・高というふうなつなぎ方もあると思います。分断がないような形で研修を行っていけるようなに御支援いただきたいなというふうに思っております。
以上です。
【羽入主査】  ありがとうございました。
ほかにどうぞ。荒瀬委員,どうぞ。
【荒瀬委員】  ありがとうございます。
カリキュラムマネジメントに関して申し上げたいと思います。学習指導要領というのは,私の理解では,生きる力をどのように育てていくのかということを体系的に具体化したものだというふうに思っているのです。ですから,生きる力とは単なるキャッチフレーズではなくて,生きる力とは何なのかということを常に考え続けるということは非常に大切だと思うんです。
ただいま平川委員が中学校のお話をなさったことに触発されてなんですが,高等学校ということを考えますと,多くの高等学校に校訓とか校是とか,そういったものが掲げられていまして,それらをどのように具体化していくかということを考えていくことがカリキュラムマネジメントにとって最も大切なことではないかなというふうに思います。
ちなみに,私がおりました京都市立堀川高等学校というところの校訓は,「立志・勉励・自主・友愛」という4つの言葉から成り立っていまして,どなたがお作りになったかとか,いつ作られたかとか,そういうことも全部分かっているんですけれども,ただ,そういう具体性とは別に,「立志・勉励・自主・友愛」という言葉を毎朝唱えても,志を立てて自らそれに取り組んで励み,かつ,また,そういったところから本当の仲間,信頼というのが生まれるというふうにはならないですね。この「立志・勉励・自主・友愛」という校訓を生徒も全て覚えているわけですけれども,この校訓をどのように具体化していくかということを考えたときに,最も取組やすいものが総合的な学習の時間だったということであります。各教科の分野からそういったところに迫っていくということは,当然,可能なわけですけれども,まずは総合的な学習の時間という,むしろ学校全体で取り組まなければならない,そこには当然のことながら校長が深く関わらなければならない,そういった取組が学校で育てるべき生徒像ということを明確にしていって,その後で各教科は何をするべきなのか,あるいは学校行事はどうするべきなのか,1年生,2年生,3年生はどんなふうにホームルームを展開していくのか,海外研修というのはやるけれども,それはどんな意味があるのか,体育祭はどんな意味があるのかというふうなことを考えていく,その途中で困ったときに学習指導要領に立ち戻るとヒントがそこには散りばめられているというような学習指導要領というのを願っています。実は学習指導要領を実際にヒントにしてきました。ですから,今回,学習指導要領が,先ほどの大杉室長の全体的なお話を聞いていますと,大体この会議のほぼ峠は越えて,あとはどのような宿をとるかというような感じかと思うんですけれども,この時点で,学習指導要領をどう使っていくのかということについても,是非提案ができるようにしていければいいなと思っています。
先ほど平川委員がおっしゃいました国際バカロレアの話なんですけれども,きのうの教育課程部会でも申し上げましたが,本体は学習指導要領である。いかに国際バカロレアがすばらしいということは,それはそれといたしまして,それに比べても学習指導要領はすごいというものを作らないと駄目だということと,それから,言葉の先行ですね。先ほど市川委員もおっしゃいましたけれども,アクティブ・ラーニングというのがひとり歩きしてしまって,言葉が先行して,アクティブ・ラーニング教徒でなければ駄目みたいな,そういうことになってしまっては本当に教育の大切なところを見失ってしまいそうな気がいたします。アクティブ・ラーニングは有効な方法ではあるけれども,今までの方法は全部駄目かというと,そこはきちっと,大切なものは大切であるという評価をすべきであるということだと思いますので,目新しいものを入れればよいということについては,十分に慎重でなければならないと思います。
最後に,芸術教育なんですけれども,前回でしたか,申し上げたかと思うんですが,今日まとめの中で,具体的に芸術教育は大切だとあるんですけれども,大切だと100万遍言っても大切にはならないので,具体的に,中教審としてできるのか,あるいは文部科学省から御発信いただくのか,あるいは有志でもって連名して出すのか。博物館とか美術館とかを,高校生までは無料にして開放するというふうな大きな動きを作らないと,行こうと思っても,高校生は行けません。細かい話で申し訳ありませんが,京都駅から国際会館というところまでは地下鉄で幾らかかるか忘れましたけれども,歩けば相当な時間がかかりますが,その国際会館で聞きたい講演があるというので,高校生が京都駅から歩くのです。生徒が歩いたと聞いて私はびっくりいたしまして,「どうしてそんなことをしたの」と言ったら,「いや,お金がありませんから」と言うんですね。高校生というのは,もちろん裕福な高校生もいるでしょうけれども,必ずしもそうではない,毎月もらうお小遣いを本当に削って,お昼も食べないといけないし,好きなものも買いたいしとなると,そこは社会がきちっと高校生1人1人を大切にするという観点から,美術館や博物館は開放していただきたいなということを,どこかで発信できないかなということを思います。
以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。今,お二方の委員の方々のお話を伺っていて,今回の指導要領が現実の先生方の具体的な活動にどのように生かせるか,そういうヒントになるようなものにしなくてはいけないのではないかというふうに感じております。
それでは,高木委員,天笠委員,続けてお願いいたします。
【高木委員】  検討事項の整理の番号に合わせて3つの大きな枠から話をいたします。1つ目が目指す姿のところです。育成すべき資質・能力について,小学校,中学校,高等学校それぞれにつきまして,求める姿を教科学習の枠を超えて明示化するように是非したいと考えております。
さらに,今,荒瀬委員も言われましたが,アクティブ・ラーニングについて色々と語るのもいいんですが,それは1つの学習方法であったり形態であったりします。学習指導要領が求める次代の学力の本質,それが教科内容における学力のみではなくて,全体的なところから語っておくというのが,2番目の目指す姿のところに是非必要なのではないかと考えております。
2つ目です。評価の在り方について,3つ述べます。1番目です。学習評価に関しては,観点別学習状況の評価項目を学校教育法30条の2項に合わせ,基礎的な知識技能の習得,思考力・判断力・表現力,主体的に取り組む態度,この3点を是非,評価の観点としていきたいと思っております。このことにつきましては,本日示されておりますこれまでの要点のまとめの中にも入っていることではございます。
2つ目です。各教科における評価内容は,各教科ごとに内容の中で示されている指導事項と整合性を持たせ,その指導事項における評価内容を学習指導要領の各教科の内容の中の項目として示すようにしたいと考えます。
3つ目です。指導と評価の一体化ということから,評価内容をカリキュラムマネジメントとして各教科との間で整合性を持たせていくことを考えたいと思っております。
それから,カリキュラムマネジメントについて,次に2つ述べたいと思います。今,お話ししたこととも関係しております。言語活動は,各教科等における言語活動というふうにあるように,20年答申においても,各教科等における言語活動の充実は,今回の学習指導要領の改訂において,各教科等を貫く重要な改善の視点であると示されております。各教科等を貫かなければならないということが明確に示されているわけです。現行の学習指導要領では,各教科ごとに指導事項の中に言語活動が示されています。そこで,今回,次の改訂ということになりますが,この言語活動をカリキュラムマネジメントの視点から現行のような各教科等の指導事項ではなく,指導要領の総則において各教科等を貫く活動として明確に規定することが考えられます。現行でも,総則において第2パラグラフのところに書かれておりますが,さらにそれを重点化していくということが必要かというふうに考えております。
2つ目です。現行の学習指導要領においても,見通しと振り返り,各教科等における言語活動の充実については,小学校,中学校,高等学校ともに学習指導要領の総則に示されております。それはいわゆるアクティブ・ラーニングとしての能動的な学習であり,この見通しと振り返りと言語活動の充実を図るために行われるものであることから,この内容を次の学習指導要領においても総則に規定することが大変重要であるというふうに考えております。
以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。
では,天笠委員。
【天笠委員】  幾つか失礼させていただきます。
まず1つは,資料1の,「(イメージ)」という形になっていますけども,1から6までの全体の構成についてなんですけども,そのうちの4の学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策についてなんですけども,このような構成の4に置いておくのがよろしいのか,むしろ4と5を入れ換えて,5を4にして,4を5にするということというのも考えられるけども,いかがでしょうかという,そういうことなんです。それは今,高木先生がおっしゃったことと非常に関わりがあります。ここにありますように,方策ということならば,私は今申し上げたように,4と5を入れ換えるべきではないかというふうに思います。片や,前回の各学校等を通しての理念的な,あるいは方法的な,そういうものを込めた,前回の場合,私はそれを,先ほどありましたように言語活動の充実というふうな,そういうメッセージとしてあったというふうに捉えております。もしそのカリキュラムマネジメントやアクティブ・ラーニングがそれに類するものだというならば,このままにすべきなんではないかというふうに思っておりまして,ですから,ここでいうところの方策というあたりの理解の仕方によるんじゃないかと思いまして,条件整備的な,そういう意味合いを持たせるというのもあり得る。これならば4と5を入れ換える。片や1,2,3を受けた,全体としての1つの理念的な性格を持ったメッセージとして各学校にお伝えするというならば,ここの4のところこそ,この位置付けになるんじゃないか。前回の答申文というのは,こういう構成をとっていたというふうに思います。そして,この5と6の間に条件整備的なことがいろいろ盛り込まれたというのが前回の構成だったかというふうに思いますので,そういう点でいくと,4の位置付けというのは,今回の学習指導要領の場合に,そういう点でまだ詰めなければいけない,そういうものを持っている現在の段階ではないかと,そんなふうにこれを現在の中で受け止めさせてもらって,少しまだ知恵が必要とされる段階かなというふうに受け止めております。
それから,2点目でありますけども,これはそれぞれ我々の発言をこういう形で丁寧に上げていただいて,こういうことであるので,現状としては,これを読み手側からするならば,非常に分かりにくい。こういう意見がそれぞれあったなというのが現在だと思うんですけども,今後,例えばより項目化していくとか,あるいは第1にとか,第2とか,第3とか,そういうことが付いてくるんだと思うんですけども,そこが非常に大変だと思います。当然,論理化が必要になってきますので,どういう論理を持ってこれらの発言というのを束ねていくか,作っていくか。そういう段階になって,初めて読み手側からするならば,一定のメッセージというか,ある程度分かってくるというふうなことであって,現在の段階は,それぞれの方々の意見を大きな柱として置いておくと,こういう状況だということで,ここへの詰めが検討の材料として必要なんだと思います。
最後ですけども,資質・能力に関わってということなんですけども,どうしてもこういう資質・能力というのは,これをまた読み手からすると,確かに1つ1つ,言われてみれば,これからの子供たちに,あるいは21世紀を生きる我々にとって必要だなというのは分かるわけですけども,1つ1つがとかく資質・能力の羅列になっていく,そういう傾向性を持っていきまして,結果としては,これを備えた人間はスーパーマンのような,架空の人間像みたいなものになりがちなところで,それをある程度歩留りしていくとか,あるいはより分かりやすい人間像にしていくのか,あるいは資質・能力の整理の仕方というんでしょうか,項目の仕方というんでしょうか,そこのところで一段,私は必要なんじゃないかなと思って。もちろん,今回,資質・能力で定義していくということの必要性はあるわけですけども,それをどういう形でお伝えしていくのかどうなのかというところに,もう一段必要だったと思うんですけども,例えば,先ほどの荒瀬先生の話とつながってくる部分ですけども,各学校には目指す児童像とか,目指す生徒像というのが掲げられているわけで,現場の立場からしたら,それでどうなんだと,今回のメッセージの応答関係からするとということになると思うんですけども,現在の学校の場合のそれらは,どちらかというと教育の理念的な表記の仕方ですとか,理念をそこに込めていくというふうな,多分にそういう性格が強いんだと思うんですけども,それをある意味でいうと,資質・能力と照らし合わせてみたときに,どういうふうにうちの学校の目指す児童像とか生徒像というものを,もう一度そこのところで見つめ直してみるとか,そういう営みが学校の中で起こってくるというんでしょうか,それが先ほどの荒瀬先生の言葉にするならば,それぞれの学校でどう具体化していくかという話のところにつながっていく,道を開く可能性を持つんじゃないかというふうに思うんですけども,ですから,そういう意味でいうと,資質・能力の定義の仕方ということも,またここでもう一段,これをリファインしていくときの1つの視点になるんじゃないかなというふうに思います。
以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。事務局でまとめていただいたのは,まだ非常にランダムな感じがしているというふうに,皆さん,事務局も含めて考えていると思います。これを構造化していくことが重要で,最初におっしゃっていただきました4と5の順序に関しては,もちろんこれから検討する必要があるかと思いますけれども,私の現時点での理解は,4と5はいわば一体になっていて,そして4のところで具体的な方向性を示すための共通な,先ほど理念的なメッセージというふうにおっしゃいましたけども,そういう位置付けかなというふうに理解しております。もちろんこれは議論の過程で変更していって構わないことだというふうに思います。
それから,今のところランダムでございますけれども,概念化し,そしてストーリー化するということが重要だと思いますので,どうぞ委員の皆様,積極的に御発言いただきたいと思います。
それでは,小川先生,荒瀬先生,齋藤先生の順でお願いいたします。
【小川委員】  失礼いたします。小学校の立場として,小学校教育の充実のためには,その入口である保・幼・小の連携,それから出口,その先にある小・中の連携というのは非常に重要だというふうに考えてこれまで学校経営に取り組んでまいりました。先ほどの平川委員のお話なども本当にうなずきながら聞かせていただきました。その両方の連携に関わっていて私が今思っていることをお話させていただきます。
今日の論点整理に向けた検討事項の整理(イメージ)でいうと,5の(1)学校種間の接続についてですが,4のカリキュラム・マネジメントにも関係してくるというような感じでございます。小中連携につきましては,中学校区の中で児童生徒の連携ですとか,授業交流ですとか,行事交流等々,行田市などもよくやっているんですが,教員同士も仲間意識を持ちやすいし,小から中へという学校生活のイメージもつきやすくて,かなりスムーズに進んでいるかなと。本当にここ1,2年なんですけど,パタパタパタというふうに進んでいるなというようなことを思っています。
逆に,幼・保・小の連携,こちらの方は,今は小学校の低学年の教科である生活科が中心になってスタートカリキュラムということで,小学校では生活科が重要な役割を果たしております。スタートカリキュラム(スタートセット)を文科省の方で作成していただいて,全国の小学校に配布されてはおりますけども,まだなかなかその理念が伝わり切れていないかなというようなことを思っています。
その理由を考えたときに,どうしても幼稚園は私立の割合が大変高かったり,また,保育園の場合は行政の管轄が違ったりして,なかなか一緒に研修会というようなことを,お声掛けしても難しい,2月,3月になって本校に上がってくるお子さんの様子を見に行かせていただいて,そこで初めてそちらの保育士たちと交流をするというようなことが精いっぱいというようなこともあったりします。
何が言いたいかというと,小中連携も大事な柱で,今後,カリキュラムマネジメントに入っていくと思うのですが,是非,幼保小の連携というものもしっかりと総則に規定していただいて,小学校のカリキュラムマネジメントの大事な柱だということで,今後対応していただけるとありがたいなというふうに思っております。
以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。
それでは,荒瀬委員。
【荒瀬委員】  何度も申し訳ありません。そもそも昨年11月の諮問の中で,高等学校教育に6点の注文があって,そのうちの1点目が,まさしく選挙権年齢の引き下げということを想定して,18歳で大人とみなしていくというようなことで,それに対してどのような新たな科目が必要かということでありました。新たな科目については,それはそれといたしまして,今回,特に選挙権年齢が18歳に引き下げられたということは,初等中等教育で学ぶ子供たちにとって政治とか社会が近づいたということではないかと思います。逆に言えば,子供たちのほうからも近づかなければならないのではないかということを考えます。選挙ということを考えますと,様々な要素が必要になってくるわけですから,当然のことながら,多くの教科科目とか活動とか,そういうところを通して得られる知識とか経験に基づいて判断して投票していくということになっていこうかと思うのですが,学習指導要領自体ができるのはまだ先の話ですけれども,この10年間,まさに大改革である選挙権年齢の引き下げというものを定着していくための10年間を見通した学習指導要領というのも必要ではないかなというような気がしております。
そういう点でいいますと,今後の教育課程の在り方についての要点のまとめの5ページとか7ページに書かれていることが,そこに相当するのかと思うのですけれども,先ほど天笠先生も,網羅的に書いてもなかなか理解が進まないのではないかという意味のことをおっしゃったかと思うのですが,5ページの最初に「教育基本法に定める教育の目的を踏まえれば」という,こういったことが掲げているのでありますから,選挙権年齢の引き下げということに対しての意識をもう少し強くして,本当に民主主義社会を担っていくことのできる賢い市民を育てていくんだということを強く強調できないかなということを思います。学校教育が政治的なことについてどのように取り扱えばよいのかというのは,教員からするとなかなか難しくて,教材でもって新聞なんかを使ったら,その新聞を使ったことの意味みたいなことを後から問われたりとか,そういったことも出てこようかと思いますから,学校の中で政治について話し合うということが大切なことで,必要なことで,するべきことであるということが,もちろん無原則ではありませんけれども,きちっと伝わるような形にしておかなければならないのではないかなということを思います。基本法の14条でしたか,政治的素養は教育上尊重されなければならないとされ,また一方で特定の政党を支持したり反対したりするための政治教育をしてはいけないということが明記されています。特に公立学校の教員はやや慎重,もっと言えば臆病になっている面があろうかと思いますので,将来の主権者を育てていくという点を是非とも強調しなければならないのではないかなと思う次第です。
以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。
では,齋藤委員,どうぞ。
【齋藤委員】  ありがとうございます。
今回のまとめを見て,24ページもあって,あと何回委員会があるのかを考えると,恐ろしい厚さになる気がして,これを現場に伝えて実現していく工程が大変だなと考えています。
ここまで来て,今はやりの言葉でKPI,文科省としてのこのミッションのKPIは何かと立ち戻って考えてますと,私は,生産性の高いこれからグローバル社会で戦っていける人材を育成することだと思うんですよね。この要点まとめの2ページ目に2045年の「シンギュラリティ」という言葉が出てきますが,心配なのは,今年小学校に入った子供が社会人になる頃,あと十数年先ですね。今世の中に存在している職業の65%が機械やソフトウェアに置き換えられる世の中に備えて,どんな準備をしていけるかいうことです。
先週,シンガポールの科学技術会議にて同様の議論をしてきましたのでここでシェアしたいと思います。今のコンピュータ技術というのは,ちょっと余談しますと,von Neumann方式というシステムなんですね。このvon Neumann方式は,プロセス化できるもの,数値化して測れるものに対しては,すごく強いシステムになります。ただ,現在,このコンピュータ技術でできることとできないことははっきり区別できて,そうだとすると,一つの正解を求めてパーフェクトなものを追求する,何かどこかで聞いたことがあるような感じですが,そういうコンピュータが得意な分野はコンピュータに任せて,コンピュータができないファジーなものに対して,人間の能力を発揮できる部分を育てていく。これからも進化し続けるコンピュータと競合してしまう,数値化されたデータを演算処理する分野でコンピュータと戦うための能力を鍛える教育というのは,私はどうかなと思うんです。
もう1点,是非まとめに反映してほしいと思うのは,失敗に対する負のイメージの払しょくです。クリエイティビティーとかフレキシビリティーを育てるためには,失敗を繰り返せる環境が必要です。やったことのないことにチャレンジすれば,うまくいかないことは当然あります。うまくいかなければ,人はその理由を考え,分析し,工夫して次のチャレンジに生かそうとします。そうするうちに,成功へとたどりつく。しかし,こうした失敗から学んでいく過程や失敗の生かし方を知らないまま大人になると,失敗するのが怖くなり,何もチャレンジできなくなってしまいます。そういう大人を見ていると,なかなか国際会議で発言ができないとか,チェンジとか変化に弱いとか,そもそもチャレンジを嫌がる。そして,日本で,すごく問題になっている彼女を作れないというようなことにも,失敗を恐れるメンタリティが関わっているんだと思うんです。これは結構根深くて,教育過程で変えていかないと,これから世界で活躍できる人材を輩出できなくなってしまう。チャレンジ数や失敗の数をプラスに評価すること,その観点がまだこのまとめには足りないかなという気がします。
以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。
では,神長委員。
【神長委員】  私は,幼稚園の立場から2点お話をしたいというふうに思っております。1つは,先ほど小川委員が発言してくださいました幼・保・小の連携というお話と関連しますが,この場は幼稚園教育要領の改善の視点を議論,考えるわけですけれども,幼児教育全体の質の向上という視点から,認定こども園や保育所における幼児期の学校教育も充実するような方向で,そういった視点も加味しながら改善の視点を書き込んでいただければと思っています。特に保・幼・小の連携などは,5歳児全体が,就学前の子供たち全体がそういった連携の視野の中に入ってくる支援が必要かなと思っております。
もう1点は,幼稚園における子育て支援です。これまでも家庭との連携とか地域の教育力の活性化ということでお話をしてきましたが,教育課程の基準の中に子育て支援が入っているのは幼児教育独特だと思っております。ただ,ここに入っている意味は非常に大きいかなと思っておりまして,これは現行の教育要領の中でも,平成10年から入っている内容だと思います。乳幼児期の子供を育てる家庭ということを視野に入れながら,孤立する子育てに対する,幼稚園ができることということで,幼児教育の発信という視点から様々な取組をしていくということが平成10年に入り,また,20年にさらにそれを充実する方向できています。いろいろな取組が,今,工夫といいますか,それぞれの園の目標に沿って教育課程を見直しという,カリキュラムマネジメントでしっかりやっているところでは,そこに子育て支援ということを視野に入れながら全体の運営を活性化している例がたくさんあります。子育て支援というと,どうしても園の側から家庭や地域に支援の手を差し伸べるような視点に受け止められますけれども,実際にうまくそれを運営の中に位置づけているところの実践等を見ますと,保護者同士のつながりがすごくよくできていて,例えば園に子供が通う保護者と未就園の子供を持つ保護者との交流が,子育て広場という中で交流できていて,もちろん園に通う保護者はボランティアのような形で参加しているんですけれども,そういった関わりがあります。
また,この保・幼・小の連携の視点から見ますと,その園を卒業した子供の保護者ですが,小学校の保護者が幼稚園の5歳児の保護者のところに入っていきまして,グループで話し合ったり,質問に答えてくださったりして,就学前の不安を解消するような取組などもあります。
こういった取組を見ていると,その場で終わるというよりは,これはいわゆる家庭と学校,学校と地域という,幼稚園ですと園と地域ですけれども,そういった人と人とのつながりを作っていく1つのきっかけになっていく,そういった事例がたくさんあります。乳幼児期において子育て支援をするということは,サービスでするというよりは人と人のつながりを作りながら,それは園を支えていく1つの力にもなりますし,小学校入学後であれば,学校のいろいろな取組を支えていくつながりになっていくのかなと思います。子供の場合には,幼稚園は子供が初めて出会う学校というふうに言いますけれども,乳幼児の保護者にとってみると,こういった交流の場が,これからの子育ての1つの仲間作りになっていくし,また,新たな親として社会に参加していくきっかけにもなっていくのではないかなという意味で,当初は,公園デビューという言葉があって,幼稚園を開放しましょうというようなところからスタートしていましたけれども,もっと積極的に地域の子育てを活性化するという,地域の人材を育てていくという視点から,また子育て支援の充実ということも大事ではないかなと思っております。
【羽入主査】  ありがとうございます。
渡瀬委員,お待たせしました。
【渡瀬委員】  よろしくお願いします。先ほど平川委員からIBのMYPのお話がありましたけれども,私もMYPは重要だと思います。IBのディプロマのプログラムだけを高等学校でやろうとするのはなかなか大変です。ディプロマ・プログラムは2年間ですから,その2年間で最後のDP試験に向けて勉強するだけで精いっぱいだと思うんですね。先ほど齋藤委員がおっしゃったように失敗を恐れないとか,失敗しても平気でその次にチャレンジできるようなところを育てようとすると,それは中学校段階から始めていく必要があって,だからMYPというのはとても有効だと感じます。
ただ,荒瀬委員もおっしゃいましたけど,最近,国際バカロレアとかIBという言葉がファッション化していることが気になります。私どもの学校はIBを実践していまして,昨年の11月にフォーラムを開きました。IBを導入しようとする学校の先生,教育委員会の方,いろんな方がいらっしゃっていました。授業公開では,Theory of Knowledgeという知識の理論という授業ですけれども,その授業の教室なんかは本当に大勢の方がいらして,立錐の余地もないほどでした。そして,その担当の教員が,今日生徒に配ったプリントだよと,それをぽんと置いた途端に,参観に来た方々がそれにわっと群がって,そのプリントを持っていって,これがすなわちアクティブ・ラーニングだみたいな,そういう違った雰囲気がありまして,そういうことが心配だと思います。
学力の3要素をバランスよく育てるということ自体がIBの理念そのものであって,それは私どもの玉川学園の全人教育ともつながるわけですけれども,それは普遍的なものであって,別に今取り立てて言うほどのことではないというふうに私たちは考えて,その実践をしているわけです。
今回整理していただいた検討事項の1番の初等中等教育の教育課程に関する現状と課題,それから2番の新しい学習指導要領等が目指す姿,その中に書かれている資質・能力について読ませていただくと,それはIBのMYPやDPのガイドブックに書かれていることと方向性はほぼ同じです。グローバルな世界の中でどういう資質・能力を持っていなければならないかというところは,別にIBであれ,日本の学習指導要領であれ,目指すところは同じだというふうに思います。ただ,学習指導要領の話の中に出てこないのは,IBの考え方に非常に影響力を及ぼした教育学者のクルト・ハーンという人の教育に対する考え方です。そのあたりは余り議論として聞いたことがありません。ですから,そういうことも参考にしながら,結局はどういう人間を育てなくてはいけないのかという非常に基本的なところへ立ち返ったうえで,今の時代背景を考えた時にどういう教育が必要かというふうに考えれば,そんなに取り立てて,特別なIBじゃなきゃいけないとか,アクティブ・ラーニングじゃなきゃいけないということではなくてもいいのではないかという印象を持ちます。
この論点の3番の評価の在り方についてですが,IBではかなり具体的に評価の在り方が示されています。例えば構成主義的な学習をして,それに対して観点別に全てルーブリックでやっていくというようなことです。ただ,このような評価をすると,非常に時間がかかります。ですから,以前,平川委員が教員の多忙さと課外活動についておっしゃっていましたけれども,IBの教員はなかなか課外活動には参加できないですね。それは,授業準備と評価だけでもういっぱいいっぱいなんですね。1番と2番を実現しようとして,それを反映した評価をしようとすれば,必ず評価に時間がかかると思います。そうなったときに,教員の仕事の範囲はどこまでなのか,課外活動はどうなってくるのかということが,この3番に関わっては出てくるだろうと思います。そうなってくると,正課外の活動をどうするのか,誰が指導するのかというところまで今度の学習指導要領で言及することが,この評価を成功させるかどうかというところと,かなり密接に関わってくると思います。
それから,4番の学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策というところですけれども,ここはいろいろな要素の影響を受けると思います。大学の入学者選抜とこの4番は切っても切れない関係にあるので,そこの議論なしに,ここに理想的なことだけを言ってもなかなか難しいと思います。それから,この4番は,非常に書き方によっては,前回も申し上げましたけれども,画一化を進めてしまう可能性がありますし,アクティブ・ラーニングと書けば,みんな,アクティブ・ラーニング,アクティブ・ラーニングというふうになる可能性もあるので,ここのところをどういうふうに読み取ってもらえるかというところをよく考えて書かなくてはなりません。そうしないと,みんなが同じような,これがアクティブ・ラーニングでしょう,それはアクティブ・ラーニングじゃないよみたいな違った話になってしまうのではないかということを心配しています。
ありがとうございます。
【羽入主査】  ありがとうございます。
では,山口委員,お願いします。
【山口委員】  新しい学習指導要領等が目指す姿というところで,育成すべき資質・能力について,あるいはこれからの時代に求められる資質・能力,もちろん時代の変化が激しい中で求められるものも違ってくるのかなというふうに思います。そこについては多くの議論がなされてきたかなと思うんですけれども,一方で,日本人として普遍的な,守っていなければいけない,例えば人間性ですとか,日本人としての美徳ですとか,そういった変えてはいけない部分ということも一度確認をしておかないと,新しいところばっかりが先行してしまって,時代が変わってきたために失ってきた部分というのも少なからず私はあるんではないかと思うんですね。そういったことが,学校もそうですし,青少年の問題行動とか,いろいろなことにつながってきていると思うんですね。ですから,そういったところで失ってはいけないものとか,守っていかなければいけないもの,特に先ほど幼・小の連携という話もありましたけれども,先ほどの資料のところで出ていたんですが,小学校,中学校教員の約70%が保護者への対応が増えたと回答し,保護者への対応をストレスと感じる教員が50%を超えている。恐らくこれは過去にはなかったというか,そして恐らくこれからさらに増えていくだろうというふうに予測ができますよね。この指導要領が家庭との連携にどうつながっていくかということは分かりませんけれども,ここで家庭教育と学校の教育が乖離ではないですけれども,違和感があるので学校に対して保護者はいろいろなクレームをつけたり,何かを言ってくる。要するに,学校教育の在り方というのが家庭教育に伝わっていない。伝わっていないのか,理解されていないのか分かりませんが,そこを少しやっていかないと,そもそも幼稚園,小学校ぐらいの年齢というのは,将来に向けての基準作りというか,人間は物差しがなければいいか悪いかというのは判断できないと思うんですね。そこのところはしつけという言葉にも置き換えられると思うんですけれども,そこをどこが担うのかというところは,もしかしたら先進国が抱えている問題なのかなと思うんです。親でもなかなかしつけ的なことができない,学校も親からのクレームとかいろいろあるから萎縮してしまって,しつけというところにどこまで手当をしていいのかという。ただ,そこのところがしっかりしないと,そこからいろいろな知識とか教養ということを与えていこうと思っても,本当に土台がなくて上に積み上げていけるのかというような危惧を持っています。国際社会の中で戦っていかなければいけない,それは本当にそうだと思うんですが,そもそも日本人としてのアイデンティティとか,自分たちが何かというものをしっかり持っていなければ戦っていけないし,ただ,それが私は限界,社会の中では少し希薄になってしまっていて,外にばかり目を向けて戦うという。これはスポーツの世界も同じで,競技成績を上げるという,金メダル至上主義じゃないですけれども,そこに向かい過ぎたがために失ってきてしまったものというのは,少なからずやっぱりあったんですね。それは恐らく社会の中でも似たようなところがあると思うので,この資質・能力という,これから求めなければいけないものと,そして立ち返って忘れてはいけないもの,守らなければいけないものというのを確認しておかないと,アクティブ・ラーニングというのが,はやりとは言わないですけれども,ついつい人間というと,新しいことが出てくると,そちらにばっかりに目がいって,そういう能力は当然大事ですが,そこの基礎的なところをもう一度確認をしておいていただきたいなと思いました。
【羽入主査】  ありがとうございます。
突然ですが,今の山口委員の御意見に齋藤委員,何か考えはありませんでしょうか。先ほどおっしゃっていたクリエイティビティーとか,これからのフレキシブルな人間の本来の考え方や思考方法というようなことについても注目すべきではないかという御発言だったと思いますけれども,それとの関連で,もし何かお考えがあれば。すみません,急に指名しました。
【齋藤委員】  日本の美徳や文化をなくすなどということは全然言っていなくて,世界で戦える人材の育成には,日本人としてのアイデンティティを育む教育も絶対に必要だと思うんですよね。ただ,少子化で人口が減っていく中,国内マーケットはどうしても縮小してしまうので,外に向かっていく,国際社会で活躍する人材を育てられる教育を目指さなければならない。もちろん,全員が世界で戦わないといけないとは思わないですけど,ただ,行きたい人には世界で戦える武器を教育課程で授けられるようにするということだと思うんです。
せっかくマイクを持って発言の機会をいただいたので,繰り返しになりますが,リーダーシップもアントレプレナーシップも失敗を恐れ,ジッとしている人には身につかない能力です。やってみて,失敗して,そこから何を学んで,次のチャレンジをする。うまくいくまで,失敗経験を積みながら動き続ける。社会に出る前に,失敗の活かし方を学べる機会を教育の場に用意するべきなんです。失敗をどう乗り越えるかという勉強をしておけば,社会に出て失敗してもなんとかなる,一度きりの人生やりたいことをやろうという気持ちになれます。だから,失敗を恐れない心を育てないと。なのに,日本の現状は
大人も子供も失敗しないようにしないように,前例主義だったり,マニュアル思考だったり,今までと違うことをひたすらしない,させないという空気がある。でもそれはグローバル社会の流れと逆行している気がするんです。海外でよく言われているのが,Fail Fast,Fail Often,Fail Early,そして学ぶという面でFail Forward,これがもう方針のようになってきている。その方向性と日本らしさの両方を求めることは,決して矛盾していないんじゃないかなと思います。
【羽入主査】  むしろ同じ方向性の御意見なのではないかというふうに思って,申し訳ありませんでした。
吉田委員,お待たせいたしました。よろしくお願いします。
【吉田委員】  今お話になった資質・能力ということと関連すると思うんですけど,これを見ていると,先ほど18歳選挙権の話もありましたけれども,行き着くところは,まず最初,どこまでの能力を伸ばすんだろうかということをまず考えた上で,そこに到達するまでに中学校をどうするのか,小学校をどうするのかというふうな形で定めていくというような,そういう方針が結構入っていると思うんですが,1つ,私,ほかの委員会も入っているので気になった点があるのは何かというと,この資質・能力のところで,例えば高等学校において,こういう能力を育成すべきであるというふうに学習指導要領の中で書かれていたものが,例えば私が所属しているもう一つの高大接続の方ですと,高校生に必要な基礎力を測定するためのテストをどうしようかという話を現在やっているわけですね。そことの関連というものが,ここに何も見えなくて,そこで図ろうとしているものと,この内容が一致していないとおかしいと思うので,その辺の手当というんですかね,その辺のものというのは少し必要なのかなというふうに考えたんで,それだけ申し上げたいと思いました。
【羽入主査】  ありがとうございます。先ほども渡瀬委員でしたか,大学との関係を考える必要があるというふうなことが御発言としてあったかと思いますけれども,同時にまた,高等学校の場合には,そこで社会に出るということもございますので,その2つの道を視野に入れてきちっとすることが重要ではないかというふうにも考えます。
品川委員,お待たせしました。
【品川委員】  ありがとうございます。
4点ほどお話ししたいと思っております。先ほど山口先生もおっしゃっておられたのですが,今改めて頂いた資料,今後の教育課程の在り方を拝読していて思ったことは,全体として〝どういう日本人になってほしいと考えているか〟がちょっと分かりづらいかもしれないという点でした。私としてはそういった目標を冒頭にしっかりと書いておく必要があると考えています。こういう日本人に育ってほしいという目標があって,初めて個々の教育現場は戦略を立てられ,戦術を変えていけると考えるからです。
と申しますのも,生産性を上げるとか,グローバル社会で協働し問題解決していくということはこれからの社会を生きていく上でものすごく大事でありますが,と同時に,日本人が持っている良さ,これまでの日本の教育が持っている良さというものがございます。それが実は戦後の我が国の発展につながってきたと痛感しております。ところが,最近の工業製品を見ていただければ分かるように,今までの日本製品では考えられなかったようなミスがあったり等して,どこかでこれまで大事にされていたような教育等が軽んじられてきているのではないかというような危機感を覚えます。そういうことを踏まえていくと,今までのよかった部分をいま一度しっかりと見直して,その中で地域や世界に貢献し協働して問題解決に当たれる日本人を育てるというふうにしていく必要があるのではないか。グローバル社会で生きるということはまず何人であるかということが大前提になります。そこを明確にする必要性を感じました。それがまず1点めです。
それから2点めは,各論になりますが,先ほど荒瀬先生もおっしゃっておられた芸術のところです。全体を拝読すると,どうしてもアクティブ・ラーニングや英語などが中心になっておりますが,グローバル社会で生きていくときほど問われるのは教養の部分だと私は考えております。教養とは,知識や情報があるのはもちろんのこと,そのうえでどういった感性を持ちバックグラウンドの異なる人たちと感情を共有していくかが問われ,それを育てるのが芸術教育だと考えています。ところが,現行の学習指導要領を拝見いたしますと,芸術教育は目的のところも内容も非常にさらっとしか書かれていないんですね。先ほど荒瀬先生がおっしゃっておられましたが,〝重要を再認識〟と抽象的に記述するのではなく,なぜ芸術が大事なのか,芸術を通して何を学ばせ,最終的にどういう力を身につけさせたいのか。そこを明記したいと考えます。
また,芸術教育は,教養の面だけでなく具体的な発達課題のトレーニングにも直結します。例えば小学校段階の図画工作は,実は発達段階を考えますと目と手の協応動作や巧緻性などといった手先の訓練になったり,注意・集中を上げたりすることに繋がります。発達課題をトレーニングしていく上でも,図画工作は非常に意味があるわけです。音楽でリコーダーを吹くことが不器用な子供たちのトレーニングにもなっていく。発達を踏まえた指導を芸術教育においてもやっていくことは,後の自立と社会参加の土台になりすごく大事なのです。
現状におきましても,学校によっては美大生が黒板にチョークアートを描く芸術活動を導入するなどといった取組をしているところもあります。ただ,学習指導要領に明記しなければ,芸術教育に力を入れるところとやらないところの差が開き,後の子どもたちの自立と社会参加に与える影響が大きく変わってきます。知識と情報だけがグローバル社会の土台ではない,いかにエモーションの部分を育てて他者と共有していけるかという視点を入れることが必要ではないかと思うのです。
それから,博物館を無料にするということも全面的に賛成です。それが学習指導要領にどのような形で反映されるのかは検討の余地があると思いますが,博物館にしても美術館にしても図書館にしても,学校教育がそういった生涯教育と連携し社会資源を活用していくことが子どもたちのメリットになります。少し脱線しますが,先日,国際子ども図書館の取材に行ったときにもそのことを痛感いたしました。と申しますのも,そこのレストランにいらしたのは全員団塊世代の方ばかりだったんですね。そこに,若いお母さんが乳母車を押しながら入ってきたのですが,その幼児が泣きだしたら男性の年配の利用者が「うるさい」と言ってお母さんを怒鳴ってしまって。同じ世代の女性にたしなめられていましたが,こういった現実が残念ながらまだまだありますので,まずは子どもたちの利用を保障していくことを制度的にもやっていく必要があると思っております。
それと,前回,体調を壊して欠席いたしまして申し訳ございませんでしたが,その際の議事録を拝見しておりましてどなたかが演劇教育について触れられていました。教育再生会議が開かれていたときに劇団四季の浅利慶太さんがよくおっしゃっていたことで私が強く共感したことに演劇教育の導入ということがございました。私は演劇教育を義務教育課程に入れていくことのメリットは大きいと考えております。議事録には,演劇教育は身体教育にもつながるし理科教育にもつながるとございましたが,それだけではございません。いつも申し上げるように,リスク要因とか保護要因という視点から考えますと保護要因の強化につながるツールとして非常に効果的であることがわかります。芝居を作り上げていく上でコミュニケーションや協働の練習ができますし,ロールプレイをやることで他者視点や他者の感情を考えるトレーニングができます。また,芝居成功のためには一人ひとりの分業と全体的な調整という作業が必要になってきますが,このときに個々の特性を踏まえた分業と調整をするという視点が指導者にあって,かつそうできればこれは組織強化,子どもたち同士の社会的絆な強化にも直結しいじめや不登校予防にもなります。つまり演劇教育は非常に豊かな学習の土台になり得るのです。
これまで我が国の芸術教育というのは,図画工作や音楽,そこに体育がメインで,演劇というものがございませんでしたが,これからの時代を生きる力は何かと考えていったときに,演劇教育を1つの柱に立てていくこともすごく大事なのではないかと考えております。
それから,3点めです。これは以前も少しお話させていただいたことですが,今まで我が国は,多様な課題を持っている子どもたちを伸ばす,あるいは定型発達でも今以上に伸ばすためにはどうするかというところの議論は繰り返しなされてきましたが,ギフテッド・アンド・タレンテッドや2Eの子どもたち,さらにはジーニアスな子どもたちへの指導についての議論はほとんどございません。ギフテッド・アンド・タレンテッドの子どもたちはWISCを取るとどうしてもアンバランスが出てきます。WISCⅢでいえば言語性IQが高くて動作性IQが低い,WISCⅣでいえば絵の抹消と符号が低くてほかが高いみたいなことがあるわけですが,そのギフテッド・アンド・タレンテッドな子どもたちのギフトの部分を伸ばしつつ,一方で,前回お話ししたように,そういう子たちにはますます苦手な面をトレーニングし,徹底して規範教育を行う必要があります。それから,全体的に能力が非常に高くアンバランスもない,いわゆるジーニアスという子どもたちが自分たちの優れた能力に応じた教育を受けられるような制度に変えていくこともものすごく大事です。現状では授業に飽きてしまってかえって逸脱することもあり,この子たちの教育権の保障にならずアンフェアです。
本来であれば,こういった子どもたちを指導するのもスペシャルニーズ・エデュケーション,つまり特別支援教育,特別なニーズのある子どもたちへの教育ですね。これからの学習指導要領にはそこを入れていくことが10年後,20年後,あるいは100年後の日本人を考えたときに必要ではないかなと思っています。単なる平等だけではダメで,そういった飛び抜けて優秀な子ども,あるいはアンバランスはあるけれど高い能力も持っている子どもたちの教育を行っていくことも教育の公平性と公正性の担保であり必要だ思っています。
それから,最後に1点。先ほど齋藤先生がおっしゃっておられた失敗をどうするかですが,これはまさに評価に関わることだと思います。今回もこの評価のところについての議論が全体の中でまだまだ少ないと申しますか,弱いと思っております。その評価の在り方こそが今後大変重要になってきます。学習指導要領を幾ら変えても評価が変わらなければ元も子もありません。国として評価の在り方を打ち出していくことはすごく大事だと思っています。実際,教育委員会や先生方に講演したり研修したりしても,最後はいつも評価のところで壁にぶち当たります。実に多くの教育現場が評価は一様にしないと公平ではないかえって差別になるとおっしゃるんですね。発達特性の多様性を踏まえれば一様な評価ということは非科学的でありえないわけで,そういった意識を変えていくためにも学習指導要領の中に書き込むことが大きな一歩になると考えております。
以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。
牧田委員,どうぞ。
【牧田委員】  ありがとうございます。
まとめられた資質・能力のことなんですけども,学校現場として,よくよく分かっているということが結構多くて,そうしたいんだと,そうしたいんだけども,その一歩が分からないというところが多く,頭からがんがんがんと,これが大事ですよ,大事ですよと言われても困るだけかなという感じがします。だからこそ,学校現場で今やられていることの中で,結構ここら辺を突破できている箇所があるわけですから,それを是非,例示をしてほしいなと思います。アクティブ・ラーニングも同様で,このようなことも結構行われていて,ただ,そういう意識じゃないというだけのことでありまして,結果的によくよく似ているようなことがたくさんありますから,その辺も書いていただけると,今一生懸命やっている先生方が元気を持って,勇気を持ってこのままやっていけるということになるかなと思います。
今後,各学校でこういうことを考えていくわけですが,なかなか校種接続が難しいということで,小から高まで全部あるのはというと,もちろん各教科あるのですが,総合なんかですと考えやすいと思うんです。考えやすいし,しかも,校種接続をしにくい。例えばこういうテーマで総合をやろうということになったときに,これ,どこどこの小学校のどこどこ学級でやったわとか,高校に行っても,どこどこの中学校ではこんなテーマをやったわとかいうことがあって,テーマでなくて総合でこそ求められる資質・能力の深さを校種をまたいでずっと系統的にある程度示せることなのかなと思われるんですね。一つそういうところで例を作っていただけると,各教科でも,この辺の深さまでをねらっているのだということが分かりやすいのではないかと思われます。
それと,学習指導要領に是非入れてほしいのは,今も書いてあるのですけども,学ぶ意味というか,なぜこの教科を学ぶのか,なぜ総合を学ぶのかも同じなんですけども,そのことを抽象的な言葉でなくて,例えばという形で,子供の目線で,こういう意味があるんだからこの教科をこの学年でやっているんだということが,ある程度明示されるとありがたいかなと思うんです。だけども,これも各学校でそれぞれの先生方が考えることとして,その1つの例として挙げていただきたい。
以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。今まで委員の方々から御発言頂きましたことは,今回の新しい指導要領の中には先生方が具体的に教育の場面に生かせるような,そういう表現が必要だということでは一致しているのではないかと思います。
時間が少しございますので,御発言頂いていない先生,どうぞ御発言いただければと思いますが,その間,私がまとめております。
例えば教育基本法の中にありますけれども,豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成といったときに,豊かな人間性って何なのか,創造性というのは何なのかというようなことが何か見えるような形にしておくのが重要なのではないかというふうに思います。そのときに,先ほど齋藤委員がおっしゃいましたけれども,仮に,失敗をどのぐらい繰り返したかというのが豊かな人間性の1つの指標なのだというようなことが書いてあれば,もしかしたら,先生たちも失敗を恐れず,教育をチャレンジングしていただけるのかもしれないなどと思いながら聞いておりました。
それから,どんな人間を,どんな日本人をというようなことも発言の中にございましたけども,どのような人間を育てようとしているのかということを,この部会の中で考える必要があり,また,それは日本の教育制度の中でどういうふうに考えていくかという,2つのことが必要なのではないかとも思って伺っておりました。
それでは,今村委員と上田委員,どちらからでも結構です。お願いいたします。
【今村委員】  大変な取りまとめをどうもありがとうございました。
ここに記載していただいた内容をこれから取りまとめに最終的に入っていくということなんですけれども,それを先生方にどう下ろしていくのかというところについても,先ほど平川委員から御提案がありました,中学校区の中で先生方が合同会議を開かれるような場で熟議するということを,例えばこの新しい指導要領をただ下ろすではなくて,これを使って,何がこれまでできていたことで,何を自分たちはこれまで先生として,教職員として取り組まれてきたことはどこの部分が評価できるポイントで,その上でここを変えていくんだということを先生方自身が議論の中から認識をし直して,その上で新しいことを取り入れていこうということを実感できるような会議を,これを下ろす際に提案する方が実態として先生方が納得感ある,そして変えていけるというものになるんじゃないかなと改めて思いました。
少し前に発表がありました子供たちの自己肯定感がないどころか,学校の先生方の自己肯定感が低い国だという点は,すごく大きな問いを投げ掛けているデータだと思います。先生方が自己肯定感が低い,先生方に社会との結び付きが乏しければ,子供たちに社会との結び付きを学びに変えていくことはできるはずがないことなので,それはただできている点が十分あるんだということも含めて,既に評価できるポイントはあるんだということも含めて,先生方に新しいものを武器として下ろせるといいなと,この点だけ発言させていただきます。
【羽入主査】  ありがとうございます。
上田委員,どうぞ。
【上田委員】  これから取りまとめていくということで,どうすればいいのかなというのをいろいろ考えていたんですけども,例えば今日の24ページのまとめ,それぞれ1項目ずつ見ると,それぞれ本当にもっともなことだと思います。でも,全ても見てどうすればいいかというと,何もイメージが沸かないんですね。ここがまとめるときの非常に重要なポイントだという気がしました。つまり,ボトムアップで全てをまとめると,多分現場にはメッセージが伝わらないものになるんじゃないかなと思います。なので,逆に,それぞれの段階で何が本当に必要なのかという一番重要なところがあって,そこの中で重要な項目がくるという,構想的なことが必要だと思うんです。
例えば小学校の低学年で,私だったらどうかというと,まずは全ての教育というのは頭を鍛えていくという,全て脳で情報処理されるわけですので,まずは学ぶことが楽しいということがあり,学ぶということがどういうことかというのを,最初に学ぶということが一番重要な気がします。例えば知識を教えて点数が取れても,その子が勉強が嫌いになったとしたら,その教育は失敗だと。たとえ余り知識を十分に習得しなくても学ぶことが好きになる生徒さんの割合が増えたら,低学年では,私は成功だと思います。そういう一般的な大原則みたいなものがそれぞれの段階であって,もちろんここに書かれているようなことは全て重要だと思いますけども,その原則に基づいて何が重要かというのを構造的に整理していくことが重要じゃないかなと思いました。
【羽入主査】  ありがとうございます。非常に貴重な意見をたくさん頂いておりますので,これをどのぐらい魅力的かつ効果的なものに仕上げていくかということが私どもの今の役割ではないかと思います。大変貴重な御意見を頂いてまいりました。
時間がそろそろ参りましたので,ここでひとまず締めさせていただきますが,まだ先生方,委員の皆様から御意見もあろうかと思いますので,ございましたら,どうぞ事務局の方にお知らせいただければというふうに思います。
また,次回の予定について少しお知らせ申し上げます。次回の会議は,会議の形式について,委員の先生からも御意見がございました。最初から感じていたことでもございますが,できるだけアクティブに議論したいということもございます。そこで,次回に限ってですけれども,少人数でグループ討議をする,そして議論を深めたいというふうに考えております。そのような形式でさせていただいてよろしゅうございますでしょうか。ありがとうございます。
それでは,テーマとしては,教育に関する条件整備等ということでもよろしいかと思いますけれども,それぞれのグループでまたテーマが特段設定されるかもしれませんが,そのようなことも含めて,次回はグループ討議ということをさせていただきたいと思います。
補佐官,一言,御発言頂けますか。
【鈴木大臣補佐官】  今日も本当に,私も参加していて大変勉強になりました。いろいろ考えさせられることがございました。ありがとうございました。
大体,卒論とか修論というのは,第1稿を書いたところで全部1回チャラになって,それで書き直すと,こういうのが常でございますので,恐らくそういうステージでこれから,今日提示させていただいたことはほとんど原形をとどめない状態で最終系になるというのが世の常だと思いますので,そういう意味では,まだまだお宿は見えないという,忘れ物を拾いに帰ったり,いろんなことがこれからあるのかなというふうに思っております。
今日聞かせていただいて改めて思いましたのは,学習指導要領とは何であるかという議論を改めてしないといけないのかなと。これまで概ね踏襲してきた学習指導要領が規定していくべきこと,規定してきたこと,規定をする構造,あるいは書いていることを現場に伝えていく,学習指導要領を文部科学大臣が告示として世の中に示す,そこに学習指導要領なるものが含んでいるいろんなことがあるわけですけど,その1つ1つをもう1回点検をしていかなければいけない,非常に大事な課題を今日皆さんに教えていただいた,我々改めて気が付かせていただいたというふうに思っております。
これまでは,我々も漠然と方向性については理解していたつもりですけども,単にコンテンツを書くだけでは,それは子供たちに習得,あるいは定着,獲得はされない。よって,そこはどうしていくかということなんですけども,本当にそのことが大事でありまして,逆に言うと,何を教えなきゃいけないのかということは,もうそんなことは現場は分かっている,もっともな御指摘。これだけの情報,本屋さんに行けば山ほど書籍があって,あるいはウエブで検索をすれば,山ほど情報があって,昭和20年代,30年代の文章に飢え,情報に飢えていたときに文部科学省が現場に下ろすものとは,それこそ状況が全く,180度違っていている。むしろあふれ返るばかりの情報洪水の中で,何をどうめりはりを付けて,あるいはちゃんと優先順位,あるいは段階を追って,順番を経てというところが非常に大事なんだろうと思います。学習指導要領の性格というのは,これまでもいろんな変遷があるわけですけれども,教員にとって,あるいは学校にとってこれは何なんだと。もちろんいろんな方針であり,参照すべき1つのものなんですけども,何を判断するときに,どういうよりどころにしていったらいいのかという役割が,あるいは性格がかなり変わってきている。もちろんそこでしっかりと踏襲していかなければいけないことと,新しい状況に対応していかなきゃいけないことということがあるのかなということで,改めてではありますけれども,学習指導要領論というものをしていかなければいけないのかなと思います。
それから,資料1で新しい学習指導要領等が目指す姿と,「等」というのが入っているんですけれども,今回,これは私がずっと個人的に事務方に申し上げていることなんですけども,学習指導要領も大事なんですけど,もっと大事なのは,学習指導要領の解説ではないかと,あるいは要録が大事だと,高木先生はずっとおっしゃっていた。大事な「等」が何なんであって,そこにどういうところを反映させていくか。恐らく学習指導要領の骨格は変わらないんですね。今日は何度も出たように,初等中等教育段階における普遍の学びというのがあるわけで,それをころころ変えるわけにはいかない。それはそこできちっと踏襲していかなければいけない。となると,一番変わっていくところというのは,「等」の部分がかなり変わっていって,それが,教科書がかなり変わったなという印象を現場に位置付けたり,あるいは,いわゆる教え方。教え方の中でも,今日も何度も御議論がありましたけど,評価というものが,そうするといわゆる評価の仕方,あるいは評価のフォーマット,評価のメソッド。例えば保護者からすれば,通知表というものが,今までのペラ2枚ぐらいのものが,今も既にいろんないい事例があって,いいところ見付けのように20ページぐらいのフィードバックがあるとかいう,いろんないい事例はあるわけですけども,それが世の中のかなりのボリュームで,そういったところはこういうふうに変わるわけねと。むしろ学習指導要領本体を読む人というのは世の中にほとんどいないわけで,ここに集まってきていただいている人はそうですけれども。ただ,世の保護者や,教員は読みますけれども,あるいは児童生徒が読むわけないわけで,児童生徒が触れるところというのは,まさに手に取る教科書であり,あるいは保護者は自分の子供たちはどんな教科書で,どんな授業で学んでいて,そしてどういう評価をもらうのか,そういうところが変わって初めて変わったな,あるいは大事なことが踏襲されていて新しい課題にちゃんと応えられているな,こういうことなんだろうというふうに思っておりまして,そういったことでもう1回,今日の議論を踏まえて,1からやり直しというか,いい意味でですね。これはどんな修論,卒論もこういうステージが,大学教員の方々はみんな御納得いただけると思いますが,そういうことをしていきたいと思います。
それから,そのことが例えば保護者対応,保護者にコミュニケーションコストがかかっている,それはそうだと思います。保護者に新しい学びというものがどういうものなのか,あるいは今の日本の社会における学びというものの問題がどうなのかということも含めて御理解を頂くことで,このコミュニケーションコスト,あるいはコミュニケーションストレスというものが解消されるわけで,ここに対してもどういうメッセージを出していくのか。結局,今の日本社会,あるいは日本社会を構成する保護者の問題でもあろうかと思いますけども,アクティブ・ラーニング協奏曲とか,何かそういう新しいメッセージや新しいものが出てくると,そこに猛進的に飛び付く,こういう日本人なるものが,これは別に日本人だけじゃありませんけれども,今の記号消費社会の中で,そしてまさに膨大な広告宣伝費というのを使って世の中に対して情報を持っていく。そこに対するある種のメディアリテラシーだったり,コミュニケーションリテラシーだったりというところなのかもしれませんけれども,そういうところに過剰に影響されてしまう,そこに対するある種のクリティカルシンキングとかそういうことが,要するに過剰であるがために,それに対して相当な批判力だったり,吟味する力だったりを持っていないとやっていけないというような問題なども,恐らく学校現場にも影響を与えているんだと思いますし,日本の教育の最大の課題ということであれば,そういうシンギュラリティだとかアクティブ・ラーニングとか,もちろん新しいメッセージに対して反応するのは大事なことなんですけど,それを何か余りにも過剰に,世の中に天変地異が起こるがごとく受け止めてしまうというところに実は問題があるのかもしれませんし,また,そういう人間をこれまでの日本の教育は排出してきたということも反省しなければいけないのかなというふうに聞かせていただきました。
いずれにしても,いよいよこれから胸突き八丁の山登りの8合目というところになろうかと思いますので,皆様方のさらなる御指導を頂きたいというふうに思いますし,次回は,先ほど主査の方からお話もございましたように,ここに芯を入れていくというか,今,網羅的にあるものについてどういうふうにきちっとそれをメッセージとして構成をしていくのかというところに入ってまいりますので,是非引き続きの御指導,御鞭撻をお願い申し上げまして,私のコメントに代えさせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。
【羽入主査】  ありがとうございます。
これまで9回,今日を入れて10回の議論が基盤になって,1からもう一度議論する。補佐官がゼロからというふうにおっしゃらなくてよかったなと思っているんですけども,1というのは重要なことでございまして,ここから積み上げていきたいと思います。
それでは,事務局から次回の御案内をお願いします。
【大杉教育課程企画室長】  次回,特別部会の日程につきましては,7月8日水曜日の13時から,場所は文部科学省東館の3階講堂になります。先ほど主査からも御案内ございましたように,少人数でのグループ討議形式ということで,通常,このロの字型ですけれども,この会に限りましてはグループごとにテーブルを用意させていただいて,そこで御議論を頂くということ,また,少しICTの活用なども検討させていただいておりますが,詳細につきましては後日御連絡をさせていただきます。
また,本日言い尽くせなかった御意見等をまたメール等で事務局にお送りいただければというふうに存じます。
以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。
本日も大変貴重な御意見を頂きまして,誠にありがとうございました。
それでは,これで部会を終了いたします。どうもありがとうございました。

── 了 ──

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