教育課程部会 教育課程企画特別部会(第3回) 議事録

1.日時

平成27年3月11日(水曜日) 9時30分~12時00分

2.場所

文部科学省 東館3階 講堂
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. これからの時代に求められる教育目標・内容,学習・指導方法,評価等の在り方について(報告及びヒアリング)
  2. その他

4.議事録

【羽入主査】  皆様,おはようございます。それでは,定刻となりましたので,始めさせていただきます。新幹線の遅れがあるようで,少し委員の中に遅れていらっしゃる方がおりますけれども,始めさせていただきます。中央教育審議会初等中等教育分科会の教育課程企画特別部会を開催させていただきます。本日はお忙しい中お集まりいただきまして,まことにありがとうございます。
まず事務局から,配付資料の確認をお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】  それでは,配付資料の確認をさせていただきます。本日は議事次第に掲載しておりますとおり,資料の1から6,それから参考資料を配付させていただいております。不足等ございましたら事務局までお申し付けください。
また,中央教育審議会第8期となりましたけれども,8期委員としての辞令につきましても,クリアファイルに入れてお配りしておりますので,よろしくお願いいたします。
簡単に補足資料の追加分の御説明をさせていただきます。お手元資料6の補足資料を御覧いただければと思いますけれども,前回からの追加分になりますけれども,15ページ目をお開きいただきまして,右下に15とスライド番号が振ってあるものですけれども,PISA2015及びPISA2018で測定する協同問題解決能力及びグローバル・コンピテンシーについて少し資料を追加させていただいております。
それから,同じく資料6の32ページ目の下の部分になりますけれども,これは既に30ページ等にアクティブ・ラーニングに関連しまして,必要な学習プロセスのイメージをつけさせていただいておったところでございますけれども,それに関連しまして,学びのプロセスということで32ページに,これは国立教育政策研究所の論理的な思考の調査に関するものでございますけれども,論理的思考に関する過程ということで,1から6の過程を評価するという調査を行っておりますので,これも学習プロセスの参考例として示させていただいております。
また33ページ,34ページ,議論の中でも学習意欲という部分について,アクティブ・ラーニングとの関連性で少し御議論いただいておりますけれども,また学習意欲は市川先生はじめ御専門の方からいろいろ御意見をいただければと思いますけれども,参考まで,33ページ,34ページに資料を抜粋してつけさせていただいております。34ページになりますけれども,動機付けと学習,それから成果の関係ということで,表面的アプローチ,外発的動機付け,お小遣いをあげないというような動機付けに基づく表面的アプローチ。それから,自らが課題内容へ興味を持つというようなことに基づく洞察的なアプローチ。それから,競争的な達成動機付けに基づく攻略的アプローチということで,動機付けと学習プロセスの関係を整理したものになります。
それから,本日OECD,ESDなどプレゼン,ヒアリングに基づき御議論いただくことになりますけれども,OECDのキーコンピテンシーでありますとかSEDの枠組み,国際バカロレアの枠組みなどにつては,お手元机上に緑色のファイルがあると思いますけれども,この中に過去の企画特別部会の資料が入ってございます。第1回の資料の中に参考資料としまして,諮問関係の様々なデータがついておりますけれども,その中にキーコンピテンシーの説明でありますとか,国際バカロレア,SED等の概要につきましても掲載してございますので,併せて参照いただければと思います。以上になります。
【羽入主査】  ありがとうございます。
それでは,本日の議事に移ります。まず本日は3月11日でございまして,東日本大震災から4年を迎えます。ここに改めまして,震災により被害を受け,また犠牲となられた全ての方々に対して,心から哀悼の意を表したいと思います。また,いまだに困難な生活をされている方々に対してお見舞いを申し上げたいと思います。
本日は,次第にございます4件の御報告を頂きます。また,国際的な動向として,鈴木文部科学大臣補佐官から,OECDとの政策対話を行っていらっしゃいますことについて,後ほど御報告いただきます。その後,質疑応答と意見交換の時間にしたいと思いますが,今回,必ずしも十分な時間をおとりできない場合もございますので,次回第4回で意見交換の時間を十分にとりたいと考えております。御了承いただければと思います。
また本日は,報道関係者等より,会議の撮影及び録音の希望がございます。これを許可しておりますので,御承知おきくださいますようお願いいたします。
それではまず,次第の順に従いまして,宮城教育大学の見上一幸学長から,ESD・ユネスコスクールの取組について御発表いただきます。見上先生は都合で11時30分過ぎに御退席されますので,見上先生に関しましては御発表が終わり次第,一度質疑応答の時間をとらせていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。では,よろしくお願いいたします。
【見上先生】  皆さん,おはようございます。このような機会を与えていただきましてありがとうございます。まず御説明をさせていただく前に,今回のテーマに触れまして,私自身のどうしても偏った見方もあろうかと思いますので,このテーマとの関わりを簡単に申し上げたいと思います。
私自身は元々動物発生学,生物学の研究者で,教育大学に職を得たものですから,環境教育に携わっておりました。それで環境教育をより発展の方向に向かわせるということでESDに関わっております。また同じ時期に,宮城教育大学附属小学校の校長の役割がございまして,あるとき子供たちを集めましたら,外国の車でお父さん,お母さんが迎えに来るというケースが非常に多くて,こういう状況でアジアの子供たちのことも分かっていて欲しいと痛切に感じ,ユネスコスクール,ユネスコを通じてそういうことを子供たちに理解をして欲しいという気持ちで環境教育とESDに取り組んでおります。
ちょうどその頃,大震災の起こる数年前でございまして,宮城県,東北の地域に大きな地震が99%の確率で間近にくるということで,正に附属小学校で防災教育を始めようと先生方にお願いした時期でもございました。
それでここでは気仙沼をテーマに,例に挙げさせていただいておりますが,気仙沼市というのは宮城教育大学と非常に,特に環境教育の観点で御縁のある地域でございまして,10年来こういった環境教育をはじめとしたESDに関わる事業に,お互いに力を合わせて活動してきたという経緯がございまして,本日そういったことで御説明させていただきたいと思います。
ESDは分かりにくいという話がいろいろ出ます。ただ,それはいずれにしてもサスティナビリティ,持続可能性ということ,持続可能な社会を作ろうということがゴールでございまして,その入り口は,今私の方で申しました環境教育の場合もありますし,平和教育の場合もあります。国際理解教育の場合もございます。ゴールはESDということで,ずっとそれぞれの分野を進めてまいりますと,ばらばらであった分野がかなりつながってくると言えるかと思います。そこで,今日御紹介する学校の事例は,環境教育,あるいは食の教育,こういったことからサスティナビリティに近づこうというようなものでございます。
まず,ユネスコスクールとESDの関わりということなのですが,先ほどのような経緯で,環境教育とユネスコスクールのドッキングというのは,ユネスコスクールの概念がESDに非常に近く,重なるということで,せっかく世界にユネスコスクールというネットワーク,現在9,500ぐらいあると聞いておりますが,日本の国内でも900校を超えております。そういうネットワークがあるならば,それを生かさない手はないだろうということで,ESD・ユネスコスクールを中心に,そのネットワークを強くするという活動の中でESDを進めております。
このユネスコスクールの中では,学校間の交流をユネスコスクール・ネットワークといいますので学校間の交流が非常に大事なのです。ですから,学校間の交流を通じて相手のよさに気付き,自分たちのよさにも気付く機会にするということ。それから,このネットワークは国際ネットワークですので,是非学校間の交流も進めていって,子供たち自身がグローバルな視点を持って欲しいというような活動。このためには非常にいいシステムなのだろうと思っております。
具体的な例でございますが,これは気仙沼市の面瀬小学校の取組でございます。細かい資料はお手元の印刷物として冊子になってございますので,後ほど御覧いただければと思いますが,4年生では,近くにある小川である面瀬川の生き物を勉強する。その川が海につながっているということで,次に川から海につなげた学習を5年生でする。6年生になって,そういう環境のいろいろなことを考えた上で,自分たちの気仙沼市の町をどう未来を描いていくかということでございまして,現在は震災後の状況でございますので,震災後の気仙沼市の復興ということを,子供たちが自主的に考える機会となっているようでございます。
6年生で具体的な形としては,「ひびけ! ぼくらの声」というような形で,70時間の総合的な学習の時間を活用して進めておられます。あとは必要に応じてそれぞれの関連の教科に結び付けて,この中身を充実させていくということでございました。余り無理やり全体的に,全教科と結び付けるとかという形で意気込み過ぎると,狙いが何であったか分からなくなってしまうので,そのあたりの判断,これが先生の腕の見せどころであるというようなことを,教育長はおっしゃっておられました。この取組を通してESDの概念のうちどういうものが育成できるかとか,重視する能力などが示されております。
10年来,ずっと面瀬小学校はこういう形で進めてこられまして,今でも内容が充実してきつつあるのと,それからもう一つは震災というのを契機に,中身が少し変わってはきておりますが,10年来ずっとこれを続けておられる。教育長さんのお話では,面瀬小学校がこういったことにしっかり取り組んだことによって,ここで経験した先生が,異動で別の学校に行くと。飛び火したような形で,移動先の学校でまたその先生を中心に発展するというような状況が見られるということでございました。
気仙沼市は,既に全市の幼稚園から中学校まで,全部をユネスコスクールに指定し,ESDに取り組んでおりますが,同じような事例が,最近は白石市もそういうような形をとるといったことで,市を挙げてやるところが増えてきております。
それから,面瀬小学校の中身の問題では,まずこの授業を進めるに当たり大事な点は,言語活動をしっかりやることであると思う先生方のお話でございました。ただそのときに,書くということと考えるということが要素としてあるのだけれども,書くということに捕らわれてしまうと,書くことだけに夢中になってしまって,思考がおろそかになる。どちらかというと思考の方を重点的にやってちょうどいいような感じであるというような感想を持たれておりました。
授業を進めるにあたり,先生方は地域の新聞記者のサポートを受けているようですが,思考を深めるというところでは,子供同士のディスカッションを重視する。その中で,先生の役割として最も大事なのは,よきファシリテーター,ファシリテーション能力である。子供たちの疑問を発展させてあげて,そして育ててあげるというのですかね,質問の中身を,課題を膨らませてあげるということが大事だと。分からなくなったら専門家,あるいは身近な助言者の意見を聞くというようなことでした。
そして,次は階上小学校。これは食を通じた事例でございますが,これも1年生から6年生まで,食についての課題を勉強しています。そもそも気仙沼市がスローフード宣言をしたということをベースに,階上小学校スローフード宣言というふうなものをみんなでやっておられるようで,1年生から6年生までの取組ということで,一番下を御覧いただきますと,茶豆の収穫から始まって,岩手県との協働といったことに発展させておられるということでございます。
階上小学校の中で,これも総合的な学習でやっておられるのですが,ここでの特徴は,課題設定を重視しておられるということで,一番下に書いてありますが,子供たち一人一人が全部違うテーマに取り組んでいます。「リアス式海岸の秘密」だったり,「マグロはえなわ漁」だったり,それぞれ子供が行き着いた課題,これについて取り組んでいます。最後には簡単なレポートをまとめる。ある種,大学の卒論のミニチュア版みたいなものをイメージしたのですが,先生は大変忙しくて,給食を食べながらも子供たちが質問に来るのに対応しておられると。ただ,これは非常にユニークで,子供たちにとっては大変いい教育になっていると教育長さんは評価されておられました。
最後に中学校の方の事例ですが,一般的に小学校の総合的な学習の時間でのESDはうまくいくのだけれども,中学校はなかなか難しい。それはやはり受験があったり,教科ごとに分かれていたりするので,なかなか教科の壁を打ち破りにくい。だから,考えを実行に移したり,地域貢献に生かしたりするということでは非常に気仙沼でも成果があると。特に今回,震災もありまして,消防士になるというのは競争率が激しくて非常に大変なのだそうです。でも,この学校の卒業生の中に,女の子でも消防士になったという子がいるということで,そういう意味では中学校におけるESDの在り方の一つを示すものだろうとおっしゃっておられました。
私自身はESDを進める上で,基礎的な能力として,ここに書いてあるような能力が大事と考えています。特に実体験がかなりないと,特に子供の小さい頃の感性の育成というのは非常に大事なのではないかと思います。自然体験とか,そういうものをとおしての感性の育成が大事だろうと思います。それから,言葉の問題。仙台市では,市立の学校で,言語技術をやっている学校で非常にいい成果を上げていらっしゃるところもございます。そういう意味で,基礎として言語技術はとても大事だろうと思います。それから,忘れてはいけないのは教科の力。こういうものを重視しながら,その上に先ほどの総合学習があるのだろうと思っております。
ここで,私自身が考えるESDで培われる力というのを挙げてみましたが,感謝する心の醸成です。これは気仙沼市の白幡教育長がおっしゃったことなのですが,私も予想もしてなかったのですが,教育長さんがおっしゃるには,ESDの活動の中で,感謝する心の醸成ができてきている,これが一番目立つとおっしゃっていました。私も考えてもいなかったものですから,そういうことかと大変勉強になりました。
学校におけるESDの成果として宮城教育大学の市瀬教授を中心に調査いたしました結果がございます。これは全37校,資料には 33校と書いてありますが,37校の間違いございます。アンケート結果でございまして,外部との連携の力が進むとか,児童生徒の変容の中では,特に「児童生徒の学習に対する興味関心が向上した」といったところが成果として目立っております。それから,ESDコンピテンシーと言われるもの中で,コミュニケーションを行う力が付いたという成果があります。そういうものがあります。ただ気になりましたのは,批判的に考える力というのが,意外と身に付いていないということです。この理由を聞いてみましたところ,やはり相手を批判するとかというのは,今の日本の意識,先生方の意識では非常に苦手であり,余りそういう指導ができていないということです。これは指導の方法の問題かもしれないということでございました。
それから,教育・学習方法の変容でございますが,体験学習とかICTが進む一方で,まだ外国語の活用というのがございません。これが先ほど申した学校間の国際ネットワークが進めば,こういうものが進むのだろうと思います。それから,学校の変革についても示してございます。
それから,ユネスコスクールを支援するネットワークとして,大学間ネットワークというのがございまして,これは少し古い資料ですから,例えば岩手大学は人が交代され,今は余りネットワークに入っておられないかもしれませんが,ネットワークに入る大学の数は増えてまいりましたので,こういった大学が専門的な知識でユネスコスクールを支援するという形をとっております。
そして,例えば国際プロジェクト。日本の学校とアジアの学校が交流するので,例えばお米をテーマにした交流。これは大崎地区での事例でございますが,こういったことがより学校のグローバル化に結び付くと思います。このような取組を,各学校が自由に活発にやってくれたらいいなと思います。とにかくイベントになりがちなものを,日常の地域の勉強から,国際交流に積み上げていくということが非常に大事だろうと思います。また,このESDとユネスコスクールの関係はそれができるいいシステムだと思います。
最後は,いい先生を養成なければならないということを,私自身が非常に実感しております。ですから,私の自戒も含めて,教育大学はもう少ししっかりしなければならないのではないかと思っております。ここにお示ししましたようなことを中心に,これからも一生懸命努力しなければならないと思います。
以上でございます。
【羽入主査】  ありがとうございます。それでは,委員の皆様から御質問や御意見を受けたいと思います。御質問,御意見のある方は,どうぞお手を挙げて,札を立ててください。どうぞ。では,品川委員,どうぞ。
【品川委員】  済みません,ありがとうございます,品川です。今,最後に先生がおっしゃっていた点を,もう少し詳しくお伺いしたいのですが,現状,気仙沼の取組はすごくいいプログラムだと,私も全く同感なのですけれども,やはりこれを行うには,ものすごく先生の質というか,力がものすごく左右するのだろうなということを少し痛感しておりまして,現状,気仙沼市でも結構なのですが,どのように先生をトレーニングされているのか。何かそういうプログラムがあるのか,あるいは宮城教育大学の方から何か提供されているのか,もし何かあれば教えていただければと思います。
【見上先生】  気仙沼市では年1回,ESDの円卓会議というのを開いておりまして,全学校がそこに参加します。また,私どもの大学も呼ばれておりまして,そこでいろいろな各学校の評価をさせていただいて,どういった課題をどう進めればいいかというようなことを議論しております。
それ以外にも,ESDで教員免許状更新講習,こういったものも気仙沼を会場にやるというようなこと。もちろん大学でもやっているのですが,仙台でもやっています。あるいは今,COCの経費を頂いておりまして,知の拠点形成事業ですが,これは気仙沼に限りませんが,全体でそういった情報の提供を進めております。まず感じますのは,大学のカリキュラム,ここのところがまず大事かなということで,今,カリキュラム改定に向けて研究しているところでございます。
【羽入主査】  よろしいでしょうか。では,齋藤委員,どうぞ。
【齋藤委員】  プレゼンありがとうございました。すばらしいプログラムだと思います。教育の大事なステークホルダーである親の意見が気になりますが、親御さんの反応はどうですか。
【見上先生】  親は割と賛成というのですかね,子供たちが非常に元気にやっておりますものですから。ただ,地域に目立てばいいということではなくて,本当の意味での学力がつかなければ意味がないのですが。ただ小学校の場合,例えばやったからといってすぐ県の中でも群を抜いて学力調査の点数がよくなるかというと,必ずしもそう言えない。だけれども皆さんがおっしゃるのは,10年前に比べると中学校に行ってから,自分から何かやるとか,少しのびのびしているように,感じるというようなことはおっしゃっておりました。
それで父兄の方たちも割と歓迎でございまして,これは当初の頃なのですが,一部のまだ全体に浸透していないときに,どうして一部の学校だけでそういうことをやるのだと。父兄が聞きつけてきて,どうして自分のところもやってくれないのだということで,自然と全市に広がったということはございます。
【羽入主査】  ありがとうございます。では,吉田委員,どうぞ。
【吉田委員】  大変すばらしい御発表ありがとうございます。1点,先ほど先生も触れられましたけれども,教育・学習方法の変容のところで,外国語の活用に関して余り成果が上がっていないとありましたが,小学校も中学校も両方とも同じような傾向ということですが,中学校の方が英語の学習はよくやっているのではないかと思うのですが,このあたりはどういうふうに解釈したらよろしいのでしょうか。
【見上先生】  恐らく指導者する先生のせいだと思います。総合的な学習の時間を担当される先生が,英語がある程度堪能ですと,例えば外国の学校との交流をするということになります。そういう学校の方がほとんどでして,多いのですね。それで本学として,留学生を派遣したり,大学の先生が訪問したりしながら,学校間の下準備のところでいろいろサポートしていき,ある程度自信がついてくると,子供たち同士は結構現地の言葉と,こちらは日本語だったりしながら,必ずしも全部英語でなくても結構盛り上がっていろいろな交流ができるようになります。
例えば,お米のプロジェクトでも,タイ,フィリピン地域と行ったときに,子供たちは日本の子は,お米は1年に1回だけ作るものだと思っているのですが,3回も4回も作るというと,えっとびっくりするのですね。いろいろなことで子供たちが驚きの体験をしているようでございます。そういうところに英語を生かすといいなと思っています。
【吉田委員】  ありがとうございます。
【羽入主査】  ありがとうございます。牧田委員。
【牧田委員】  ありがとうございました。一つ質問なのですが,総合的な学習の時間を中心に行われていますけれども,ESDで求められる能力の中に,教科の力ということが書かれております。総合の力と教科の力の往還というのは,今,これから非常に大事になってくると思うのですけれども,今回の教科の力と総合の関係について,少し教えていただきたいと思うのですが。
【見上先生】  先ほども少しお話し申し上げたかと思いますが,気仙沼の経験ですと,しっかりした教科というのが非常に大事であると。ただ,総合的な学習の時間で,子供たちが自分で考えた課題を解決する中で教科を生かしていくような形にしなければいけないだろうと。無理やり先生の思わくで,例えば総合的な学習時間のこの部分は社会科と結び付ける,これは理科だ,これは算数だというように思い込みで子供たちを指導すると,子供たちはとんでもないところに行ってしまうということなので,子供たちの考え方を先生がいいアドバイザーになって教科で習ったことを生かすことが大事だろうというような趣旨のことをおっしゃっておられました。
【羽入主査】  ありがとうございます。では,荒瀬委員,次に山口委員お願いします。
【荒瀬委員】  ありがとうございます。13ページのESDコンピテンシーの獲得というところで,批判的に考える力というのが必ずしも伸びていないというお話でございましたが,これは具体的には先生方に伸びたか伸びなかったということの観察を,アンケートとして聞いていらっしゃることなのでしょうか。
【見上先生】  グラフの方ですね。
【荒瀬委員】  そうです。
【見上先生】  そうですね,子供たちがどうなったかということを聞いていると思います。
【荒瀬委員】  その際に,例えば9ページに,ESDで培われる力ということで,クリティカル・シンキング,批判的思考とあって,あらゆる情報に対して批判的な思考を働かせて分析する習慣という御説明をお書きですが,この批判的思考力という言葉の意味について各学校の先生方の共通認識,共通理解の程度が影響しているのかなと私は思いながら承ったのですけれども,そういったことはいかがでしょうか。
【見上先生】  御指摘のとおりであると思います。どうしても日本の文化の中では,相手に文句をつけるとか,少し批評すると,何か人格まで否定したような感じがする。そういう受けとり方がどうも学校現場でもあるようで,批判することを避けてしまう状況があるということと関わっているような気がいたします。
【荒瀬委員】  なるほど。そういたしましたら,この批判的思考力という言葉自体の持っている性格,共通認識を妨げるような性格というのでしょうか,そういったことを考えますと,これからいろいろな取組,たとえば総合的な学習の時間の一層の深化といったことを進める上でも,批判的思考力という言葉の意味の共通理解を,しっかりとしておかなければいけないということでしょうか。角度を変えて見るとか,立場を変えて見るとか,時間を変えて見るとか,それが批判的思考力の重要なところですよね。
【見上先生】  そうですね,おっしゃるとおりだと思います。私自身はそういうこともありまして,批判的思考とは書かずに,わざわざ片仮名でクリティカル・シンキングというふうにいつも言っているのですが,先生御指摘のとおりだと思います。やはりそこのところを指導者がちゃんと理解していくことが大事だと。
【荒瀬委員】  ありがとうございました。
【羽入主査】  ありがとうございます。では,山口委員。
【山口委員】  ありがとうございました。分かる範囲で教えていただきたいと思うのですけれども,すばらしい活動だと思うのですけれども,成果とか評価というのをどのように出していくのか。また,それが短期間で出るものなのかどうかというのは非常に難しいと思うのですけれども,この表を見ますと,例えば協調性が高まったとか,リーダーシップ能力が上がったとかというふうに全体的に評価をされているのですが,これはどのような評価に基づいてされているのか。あるいは,先生の考えなのか,生徒自身の意識なのかというのが分かれば教えてください。
【見上先生】  今,これはデータとしては37,幼稚園から中学校の37校のデータなのですが,お答えになったのは,研究主任の先生ということでございます。ですから,先生の目から見て,子供がどう変わったかという結果だと見ていただければと思います。それから,私自身が思うのは,授業のやり方で,多分このデータはかなり変わってくると思っていますので,何度も繰り返しになりますが,先生方の能力というのですか,資質がものすごく大事になってくると思います。
それから,評価をどうするかということですが,これはESDの仲間でもいつも悩ましいことなのですが,なかなか数値的にこうだという数値が出せなくて,会うたびにそのあたりをどのように具体化しようかという議論をしているところでございます。
【山口委員】  もう一つ,分かれば。子供たち自身が経験した意識の変容というか,例えば自信がついたとか,そういったデータというのは何かございますでしょうか。
【見上先生】  今私がすぐ即答できる具体的な例はないのですが,例えば中学校の場合に,女生徒が消防士になったとか,そういうことから見ても,かなり自分の将来とか,自分の行動とか,そういうことに結び付いた形というのはあるのかなと思います。
【羽入主査】  ありがとうございます。では,天笠委員で最後にさせていただいてよろしいでしょうか。
【天笠主査代理】  失礼します。気仙沼市等々の実際例,大変興味深く聞かせていただいたのですけれども,私からの質問は,地元の教員養成大学,学部とそれぞれの県下,あるいはその地域の各市町村におけるカリキュラム開発との関係において,今日の御発表等含めて,全体としてそういう各小学校,中学校のカリキュラム開発に当たっての地元の教員養成大学,学部の役割,あるいはその関係作りということ等,どう考えていったらいいのか。そういうことを含めて,御発表いただいた全体の中で,地元の地域に対する教員養成大学,学部の在り方とか,その関係作りというあたりのところについて,全体を通して御発表いただいたことについて,何か考えられたこと,お感じになったことありましたら,聞かせていただければと思います。
【見上先生】  大学としましては,地域の教育委員会との連携を非常に大事にしておりまして,宮城県内に全市町村でどのぐらいでしょうか,既に8ないし9の教育委員会と連携協定を結びまして,そしてESDもその一つなのですが,そういった形で教育委員会との連携,協議会も作っておりまして,いろいろな情報交換をさせていただいております。中には大学の先生が,今御指摘の地域のカリキュラム開発に直接委員として加わっているような場合もございまして,自治体によっていろいろではございますが,非常に深い連携をとっております。また,そういったことが大学の授業についてもかなり影響がございまして,特に今,COCを進めておりますが,そこでは非常にそれが重要な一つのシステムになっております。お答えになりましたでしょうか。
【羽入主査】  ありがとうございました。まだ御質問したいことがたくさんございますけれども,このあたりで,済みませんが次に進ませていただいてよろしいでしょうか。では,簡単にお願いいたします。
【神長委員】  申し訳ございません。大変興味深いお話,ありがとうございます。神長と申します。1点だけ。幼・小・中で取り組んでいらっしゃるということのお話で,興味深く伺っておりました。小・中の違いということは,先ほどの発表の中にございましたけれども,幼・小・中と見たときに,それぞれの学校段階で大事にしていることなど,特に幼児期からということでは,幼児期の問題で,もし先生がお感じになっていることがありましたらお願いいたします。
【見上先生】  これも正確な見方ができているかどうか分かりませんけれども,幼稚園も含めて低学年ではいろいろな,ここにも茶豆の栽培とかございましたけれども,そういった体験を非常に大事にされているようです。川に入って実際に川遊びする,魚,生き物をとるといった体験を重視しながら,高学年ではそれらを知識として学習し,さらには中学校では,それらの知識をある特定の教科において更に深めるという形の取組が多いようでございます。
【羽入主査】  ありがとうございます。では,恐縮ですが,先に進ませていただきます。見上先生,ありがとうございました。
続きまして,2030年を見据えた教育の在り方について,3月初旬にOECDとの政策対話が行われまして,そこに御参加されました鈴木文部科学大臣補佐官から御報告いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【鈴木大臣補佐官】  おはようございます。鈴木でございます。それでは,早速御報告をさせていただきたいと思います。
今,主査に御紹介いただきましたように,2014年の4月にグリアOECD事務総長と下村大臣の間でイニシアチブが取り決められまして,それに基づきまして,日本の文部科学省とOECD教育局との政策対話というものが始まりました。これは定期的にこれから行われていくことになりましたけれども,3月3日にパリでございました。出席者は御覧のとおりでございますが,皆さん御案内のAndreas SCHLEICHER氏が実質上のトップということで,私たち文部科学省。そして,今回は東京学芸大学にも加わっていただきましてやってまいりました。
政策対話の議題でございますけれども,大きく分けまして二つございまして,今,OECDが2030年に向けた教育というものを,OECD教育・スキル局のメーンのプロジェクトとして位置付けております。2030年にどういう社会になって,そのためにどういう資質が必要なのかと。そのためにはどういう学習モデル,メソッドを開発したらいいのか。それからまた,そういった能力がどのように獲得されているのか,どうかということを評価するのか。それから,今,日本も大学改革を進めているわけでありますけれども,高大接続の改革を進めているわけでありますが,大学側はそうした高校教育を通じて獲得した能力をどう評価するのか,こういったことについて議論を交わしてまいりました。次に行ってください。
皆さん御案内のように,PISAの2015年は,これまでのPISAの評価項目に加えて,協同で問題を解決する能力というものをメーンに図っていくということが,PISA2015の特徴であるわけであります。さらに,2018年に向けてOECDは,世界で生きるためのグローバル・コンピテンスというコンセプトを掲げまして,これについてはまだ議論がOECDの中でも行われていますし,今回の政策対話の中でも議論がなされました。そこには当然グローバルコミュニケーション力,あるいは文化横断的・相互的な物の考え方とか,多様性の尊重とかシチズンシップと,こういうことでありますけれども,その中の非常に大事なキーワードとして,アクティブ・ラーニングというコンセプトがOECDでもメーンに据えられているということでございます。
そして,これからアクティブ・ラーニングというのは,言葉はありますけれども,それをもう少しきちっと定義付け,理解を共有していくということが必要ですし,アクティブ・ラーニングに向けた次世代の教育モデルというものを具体的に作っていかなければいけない。それから,日本においてはとりわけ,これから公共,あるいはシチズンシップ。18歳の選挙権引下げということもありまして,こういったものを涵養していかなければならないわけでありますが,じゃあそれをどういうふうにしていくのか。これはOECD加盟国の中でも,非常に歴史をしっかり教えながらシチズンシップ教育をやっていく国もあれば,具体的な身の回りの課題からそういったものを掘り下げていくというアプローチもあるし,いろいろ多様でありまして,これを日本においてどのように作り上げていくのかということであります。
それから,グローバル・コンピテンシーということがこれから重要になっていくわけでありますが,そうしたときに近現代の歴史や社会というもの,現代社会というものをどういうふうに教えていくのかということについての議論でありますとか,あるいは,問題を解決していくための能力というもので,やはり教科横断的な探究活動というのが非常に重要ではないかという議論がございました。
それから,当然そうなりますと,カリキュラム作りも非常に重要なのですけれども,それに加えて,それにも増して,そういったアクティブ・ラーニングを教えられる,指導できる,あるいは問題解決力を指導できる教員の資質というものが決定的に重要になるというお話でございます。
それで我々からも,この中教審でいろいろ御議論いただいております学習指導要領の改訂の議論,あるいは高大接続改革の方向性を御紹介申し上げ,OECDからは,極めて高い,この部会のアクティビティも含めて評価を頂いたということであります。この後,恐らく三浦先生からお話があろうと思いますが,OECD東北の成功以来,我が国のOECDにおけるプレゼンスは極めて高くなっておりまして,正にOECD東北スクールで成功をおさめた日本と,2030年の教育をOECDが一緒になってアクティブ・ラーニング,あるいはプロジェクト・ベースド・ラーニングといったものを具体的にカリキュラムやメソッド,あるいは評価法,指導法,こういったものを確立し,それをOECD各国に,さらには新興国に広げていきたい,こういうことになりました。次,お願いします。
それをEducation2030という事業に,まず我々日本とOECDの政策対話が終わりまして,この後,加盟国に提案するということであります。それから,PISA2018について,先ほど触れましたけれども,これは今,割と議論が分かれていまして,割とエンプライアビリティに非常に絞った方向性と,やはりそうではなくて,グローバルに生きていくというのは,雇用の問題もとても重要でありますが,それ以外にも様々な民族対話の問題だとか,そういうものがありますから,そういうことにもきちっとスコープを広げていくべきではないかという議論などもございました。
あとは主な意見ということでございますけれども,これは是非後で御覧いただければと思いますけれども,ここで議論しているようなことが,OECDでも正に議論になっているのだなということが確認をできました。後で御覧いただきたいと思いますけれども,やはりいろいろなスキルというもの自体が変わっていると。13ページの丸が三つになっている表があろうかと思います。
これはテクノロジーの進歩と,教育の中でSocial painが起こっているという話なのですけれども,これは大丈夫だと思いますが,TechnologyとEducationのギャップというものの中で,いろいろな社会的なpainが起こっているということをいっているのですけれども,その次のページをお願いします。
一番コアとなりました議論がこれでありまして,原典はハーバード大学のポピュラムセンターから出ているものでありますけれども,OECDの議論もこれをベースにいろいろな議論がなされておりまして,これまでの正にKnowledge,これを教えるということではなくて,正に我々が知ったことをどう使うのかというskills,ここまでは日本においてもいろいろな議論は行われております。それをどう現場に定着していくのかというところが非常にチャレンジだと思いますが。議論としては,三つ目のCharacter,これの中に,例えばCuriosityとかCourageとか,そういったものがあるわけであります。LeadershipとかEthicsとかいうのも含まれていますが。日本においては道徳の教育が始まったということや,これから「公共」というものを入れていくというような話をしたわけでありますけれども,こうした三つの輪に基づいて,そして何よりもそれを支えるのは,正にメタ認知であるというようなところで,OECDもいろいろ議論を今,深めているところであるということでございました。
正にこの特別部会におきましても,こうした議論を深めていただくということで,OECDと非常にシンクロナイズした議論を進めていけるのではないかということで,またこの部会での議論の成果を,今年の6月の末か7月の頭に第2回の政策対話が行われますので,そのときにまた議論を深めていきましょうということでございました。
ちょうど10分になりましたので,とりあえず私からのプレゼンテーションとさせていただきます。ありがとうございます。
【羽入主査】  ありがとうございました。すぐにいろいろと質問をさせていただきたいと思いますが,後ほどまとめて質問をさせていただくということでよろしゅうございますか。
【鈴木大臣補佐官】  はい。
【羽入主査】  それでは次に,三浦委員から,OECD東北スクールの取組とその教育効果について,御発表をお願いいたします。
【三浦委員】  福島大学の三浦でございます。どうぞよろしくお願いします。
私は,OECD東北スクールの取組について御報告させていただきたいと思います。OECD東北スクールは,2012年から2014年にかけて実施した,大震災の被災地復興の担い手を育てるプロジェクト学習でございます。OECD,そして文部科学省の協力を得て,本学,福島大学が実施したプロジェクトでございます。このプロジェクトは,極めて多様な側面を持つプロジェクトであるわけですけれども,本日は,学習指導要領の改訂に関わる部分,すなわちカリキュラム,指導法,評価を中心に述べたいと考えております。プロジェクトの実践そのものにつきましては,お配りしました青い報告書と,赤い生徒たちの手記があるかと思いますけれども,こちらを御参考にしていただければと思います。
OECD東北スクールは,東北の中高生約100人が参加するプロジェクト学習でございます。東北復興を支えるイノベーターを育成するために,パリから世界に向けて東北をアピールするイベントを自分たちの力で作り上げるというミッションをOECD側から下され,それに向かって生徒たちがそのイベントの中身を考えたり,あるいはそのための資金を自分たちの力で集めたり,そのためのPR活動を展開したりと,様々な活動が組み込まれております。
そのプロジェクトの特徴ですけれども,このスライドの青色の部分,すなわちテーマにおきましては,地域の将来を考える。それから,「実社会」におけるプロジェクト「実践」。手法においては,多様なプレーヤー,つまり学校の先生だけではなくて,企業のプロフェッショナル,あるいはNPO,場合によっては政府関係者とか海外の方とか,そういった様々な方々と協働していく。未知への挑戦,失敗の許容,そういったものを挙げることができます。そして,これらはルーブリック評価を行って,リアルタイムに,つまりプロジェクトの中でフィードバックして,カリキュラムの改善につなげたということでございます。
2年半にわたる取組の,先ほど申し上げた特徴に対応するポイントを1枚にまとめたものがこれでございますが,非常に見にくいと思いますので,一部分だけピックアップしたいと思います。例えば,未知への挑戦という部分ですけれども,失敗の許容も含めてですけれども,プロジェクトの当事者としての自覚。LLというのはローカルリーダーの略でございまして,これは各地域での指導者,つまり先生であるとか,あるいは場合によってはNPOのスタッフ,さらには教育委員会の方などを指します。EPというのはエンパワーメントパートナーと我々が呼んでいた方々で,いわゆる応援団ですね。我々のプロジェクトに賛同してくれて,力になってくださった方々。こういった方々と議論して,地域のイベント,そして主体的にプロジェクトを推進していくということがポイントになって,その結果,例えば生徒の主体性,自立性が高まって,自らアクションを起こすことの重要性に気付いたであるとか,あるいはプロジェクト全体へのコミットメント,あるいはモチベーションを維持することができたとか,さらには教科横断型のプロジェクト。
例えば,ドミノ倒しのドミノですけれども,これを生徒たちはパリの下のシャン・ド・マルスという非常に広いところでやりたいということになって,規模の問題であるとか,お金の問題であるとか,あるいは屋外であることによる風の影響であるとか,ドミノのデザインであるとかといったことを一つ一つ解決して,2年間にわたって考え続けて,最終的にエッフェル塔の下で大成功させたといったことがございました。
概して三つの観点。先ほど,大臣補佐官からの御提言と重なるところかと思いますけれども,人格形成面において,打ち上げ花火のようなワークショップではなくて,復興に必要なレジリエンスの核とも言える,長期にわたる粘り強さが形成されたということが言えるかと思います。また,コンピテンシーにおいては,生徒自身がプロジェクトをデザインするということで,当事者意識を持って行動することができるようになったと言うことができるかと思います。そして三つ目に,教科的な知識ですね。これは先ほど申し上げたような,一つの小さなアトラクションを成功させるために,様々な力,それまでの既習事項を総動員しながら役立てることができたと思います。詳細な成果につきましては,資料に添付させていただきましたので,参考にしていただければと思います。
当初,このプロジェクトはOECDキーコンピテンシーに基づく評価を行ってまいりました。しかしながら,やはり先生方の中からプロジェクトの目的に対応した独自の評価指標が必要ではないかという意見が出て,このプロジェクトに参加した教師であるとか,先ほどのNPOのスタッフとか,企業のプロフェッショナルの方々でKPI(Key Performance Indicator)という評価指標を作りました。
具体的にはここにありますとおり,少し上の方に,好奇心,発想力,チームワーク力,マネジメント力,問題解決力,巻き込み力,発信力,地域力,グローバル力という,こういった9つを設定しました。特に重要なのは,最後の地域力とグローバル力というものを表裏一体と捉えたという部分だと思います。どうしても地域は地域,グローバルはグローバルと考えてしまいがちなのですけれども,新しい能力の中では,これらを一体的に捉えることが必要と考えました。五つの段階に分けてルーブリックを作りましたけれども,下位レベルでは受け身であり,個人内の作業に終わってしまう。それが中位レベルであれば,自主的で,積極的で,集団的で,かつ対人的に様々なアクションを起こすことができる。更に高いレベルになりますと,大局的に見る,あるいは戦略的に見る,組織的,あるいは対社会的に見るということで,恐らくクラスに1人いるかどうかぐらいのレベルに設定しました。
これは皆さんにお配りした資料の部分を拡大したものです。これが生徒たちの自己評価の平均でございます。一番内側が一昨年の3月の自己評価,そして青が昨年の3月の自己評価,そして緑が最終的な自己評価となっています。実は昨年夏,8月にパリでイベントを行った際も自己評価をさせているのですけれども,それではほぼ平均が4レベルであり,非常に高い評価だったわけですけれども,その後2か月ぐらいかけて精察することによって,かなり自分に対して厳しく評価して,大体平均が3ぐらいに落ち着いていると言うことができるかと思います。
それぞれそこにあるとおりなのですけれども,例えばグローバル力であるとか,あるいは巻き込み力であるとか,マネジメント力あたりはまだまだ伸びしろがあるなと考えております。また,好奇心であるとか,あるいはチームワーク力であるとか,発信力,地域力などは大きく向上しているということが見てとれるかと思います。こういった生徒たちの成長ですけれども,どのような内容がうまく働いたのかといったときに,これは先日の部会の中でも若干報告させていただきましたけれども,一番大きく生徒たちが指摘したのは,他地域の生徒との交流でございます。二つ目が,地域の未来に対する議論や活動。三つ目が,異学年の生徒との交流ということで,いずれも既存の学校が非常に不得意としていることを挙げているということが興味深いと思います。
このプロジェクトは,福島から岩手まで9つの地域が参加しておりまして,その参加形態というのはかなりばらばらです。例えば,地域Aと地域Bの生徒の自己評価を対比しますと,かなりAチームの生徒たちは自己評価が高い。Bチームは自己評価が低いということになりますけれども,客観的に見れば,二つのチームとも非常に熱心に活動していて,パリでも大変大きな成果をおさめています。ただ,その違いを挙げると,Aチームの方は継続して,つまり2年半にわたってずっと継続して生徒たちを指導してくれた条件が整っていたと。それに対してBチームの方は,地域の事情によって半年ごとに先生方とか指導者が変わらざるを得なかったということが,一つ大きな原因かなというふうに考えているところでございます。
また,他地域との交流が多かった地域は,成長の幅が非常に大きいということが言えるかと思います。また,参加の度合いですね。このプロジェクトは集中スクール,全校生員が一堂に会して行う合宿と,あと各地域での取組の二つが大きなアクティビティになっているわけですけれども,それらにどの程度参加しましたかということと,あと自己評価を重ね合わせましたところ,このような結果になったと。コンスタントに参加している生徒たちの方が,ずっと評価は高いということになります。
生徒とのコンピテンシーの向上ということで,少しまとめたものでございます。これは少し飛ばしたいと思います。
そのほか,コンピテンシーの成長にとどまらない人格の形成というのが,このプロジェクトの中で明確に出てきていると思っております。2年半の中高生とのつき合で,我々大人と会話できるような生徒たちが増えてきています。多分そこには震災からの復興という極めてリアルで深刻な課題があって,そのバックグラウンドの中で生徒たち一人一人が成長の物語をつづってきたということが言えるかと思います。また,興味深いことに,先ほど地域ごとの変化ということを申し上げましたけれども,自己評価の高い生徒は例外なく,例えば大人であるとか,外国の人たちとか,あるいは他地域の生徒たちと非常に積極的に,異質な方々とのやりとりがあると。逆に地域の指導者が外を出すことを嫌ったり,あるいはチームの中だけの活動にとどめてしまったりする地域は,生徒の成長というのが余りかんばしくないということが言えるかと思います。いわば生徒たちの成長にとって,この異質性との出会いというのは非常に大きな要因になっているということが分かります。
この生徒たちは,様々な大人との協働作業によって,いわば進路選択に決定的な影響を受けている生徒も少なくありません。例えば,学ぶことの意味が見いだせず就職を希望していたという実業高校の高校生が,東京の某有名大学に進学して学ぶことが決まっていますし,また多数の生徒たちが外国への留学を決めております。
こうした現実社会の中で繰り広げられるプロジェクトというのは,生徒たちの学習意欲を大きく向上させます。プロジェクトのために外国の文化を調べたりとか,自分の地域の歴史を調べたり,英語やフランス語を勉強したり,あるいは学校でできないことを学べたとしていますが,実はこのプロジェクトを通して,学校で学ぶ知識がとても重要だということに気付いてもいるわけなのです。
これも先ほどの大臣補佐官が示された図と同じかと思いますけれども,いわば三つの軸,スキル,コンピテンシー,知識,そして人格形成という,この三つがそれぞれ直交する,こういった立体的なカリキュラムモデルを想起する必要があるかと考えておるわけで,次期スクールの中では,このそれぞれの関係を学校現場で明らかにすることによって展開したいと考えているところでございます。
また,もう一つこのプロジェクトでは,教師も非常に重要なプレーヤーでございます。単なる引率ではなくて,正に子供たちと一体になって様々な地域活動を展開してまいりました。例えばある先生は,原発の被災を受けた地域ですけれども,100%の果汁ゼリーを生徒たちと一緒に開発して,それを販売して,地域の方々に大変な勇気を与えるという実践を行った方もいらっしゃいます。またその反面どうしても,私は元々現場で長く働いていたので自己反省的に申し上げますけれども,どうしてもプロジェクト学習と学校の枠組みというのが異なると。その段差をなかなか埋められない先生。あるいは,自分が知らないことやできないことに対して,非常に拒否感を持ってしまう先生など,そういった先生方とどう対話していくのかというのが,次期のプロジェクトでは重要になってくると思います。
「解のない問い」へのチャレンジと,このスライドのタイトルを載せておきましたけれども,そのカリキュラムにおいて,いわばコンテンツベースであるとか,あるいはコンピテンシーベースとか,そういった様々なことが今,課題として挙げられているわけですけれども,それらをどのように実証的に整合性を作っていくのかというのが大きな課題であるだろうと思います。また,指導法におきましても,そういった新しいカリキュラムを実施できる先生をどのように育てていけばいいのか。生徒の評価におきましても,特にコンピテンシーとか,あるいは人格形成というものをどういうふうに評価するのかということがとても重要な課題かと思います。
最後になりますけれども,OECD東北スクールは終わりましたけれども,地域創生イノベーションスクール2030というプロジェクトを今,構想しております。これはこの4月から始める予定のプロジェクトでございますけれども,まず世界とフラットに生徒たちが協働するということがベースになります。東北スクールは震災からの復興ということをメーンテーマにしたわけですけれども,この新しいプロジェクトでは,先進国が直面するであろう2030年の様々な課題を生徒たちと一緒に考えていくと,そういった内容になっておって,既に東北のほかにも和歌山県とか,あとこの後御報告いただきます広島県さんとか,あるいは高等専門学校なども参加が予定されているところでございます。さらには鈴木大臣補佐官にも全体を見ていただいたり,齋藤委員にもいろいろとアドバイスを頂戴することになっております。
このプロジェクトを通して,OECDと共同研究を進めて,そのOECDキーコンピテンシー自体を再定義するというのも非常に大きなミッションになっております。そして21世紀型のピダゴジー開発,21世紀スキルアセスメントの開発等々を行っていく予定でございます。
済みません,時間が超過してしまいました。以上で私の報告とさせていただきます。ありがとうございました。
【羽入主査】  どうもありがとうございました。
それでは,引き続きまして渡瀬委員からお願いいたします。国際バカロレアプログラムとアクティブ・ラーニングについて,お願いいたします。
【渡瀬委員】  玉川学園の渡瀬でございます。今日はこのような時間を与えていただきましてありがとうございます。
今回の学習指導要領の改訂では,世の中のグローバル化,それに伴う大学のグローバル化の中で,児童生徒のどのような力を,どのように育てるかということが大きなテーマになっています。そして,そうしたグローバル社会で活躍できる人材を育てるためには,中等教育・初等教育の段階でもアクティブ・ラーニングのような学び方を目指す方向が示されています。
玉川学園では国際バカロレア,今後略してIBと呼びますけれども,その実践を積んできております。私はIBの教壇に立っているわけではありませんけれども,日頃IBの教員と話をすることがありますし,それから,近くでIBの生徒を見ていますことから,今日はIBのどのような点がアクティブ・ラーニングであるのか,そして学習指導要領の改訂に向けて,IBがどのように参考になりそうなのかということについてお話をさせていただきます。
最初に,玉川学園についての簡単な紹介をさせていただきます。小原国芳が1929年に全人教育を教育理念に創立した学校であります。初等中等教育段階では,2006年から学校制度をK-12一貫教育という形で6・3・3ではなく,幼稚園と4年・4年・4年の区切りで実施しております。2007年にIBのMYPクラス,2011年にIBのディプロマ・クラスをスタートいたしました。このMYPもDPも,どちらも学習指導要領にのっとりながら,一条校としてのIBのプログラムの展開をしております。
それから,高校生が玉川大学の科目を履修してその単位を取得することができる,高大連携のプログラムというのを,玉川学園と玉川大学との協定の中で行っております。高校の段階ではSSHとSGHの指定を受けさせていただいております。それから,Council of International Schools(CIS)という認定団体のメンバー校でありますとともに,日本で唯一ですけれども,Round Squareという国際的な私立学校の連盟に所属をしております。
国際バカロレアの詳細については,もう皆様いろいろ御存じだと思いますし,ここに記したとおりですのでお読みいただきたいと思いますが,3歳から19歳の生徒を対象にした四つのプログラムを展開しておりまして,その中で今後,急速に進むであろうグローバル化の社会を生き抜く上で,学んで働き続けるために必要な知性,人格,態度,社会的なスキル,このあたりのくくりは先ほどのOECDとほぼ同じだと思いますけれども,こういうところを身に付けていくことがプログラムの目的となっております。
生徒たちには,こういう姿を目指そうということで,Learner Profileと呼んでいますが,10の学習者像を示しています。そして,一人一人の生徒がこういう姿に近づけるように学んでいこうということが目指されます。IBというと何か大学に入るための資格ですとか,英語を強化するプログラムのように思われることもありますけれども,IBというのは非常に全人教育的なプログラムだと言えると思います。
IBの四つのプログラムですけれども,年齢によって,PYPという3歳から12歳を対象にしたプログラム。それから,MYPという11歳から16歳を対象にしたプログラム。ディプロマ・プログラム(DP)という16歳から19歳を対象にしたプログラムがございます。それから,最近一番下のCPという,16歳から19歳を対象にしたキャリア形成に役立つためのプログラムが展開され始めましたけれども,これは大変新しく,日本の中ではまだこれが余り実践されておりませんし,玉川学園でもこれは導入しておりません。
このIBのプログラムに共通している特徴というのは,教科と,それから教科をまたいだ概念を学んだり,学び方を学んだりするような教科横断的な学び方を総合的に学ぶことだと思います。例えば,教科を縦軸で,教科横断的なものを横軸と考えた場合に,その縦軸と横軸をマトリックス的に学んでいくというのが,PYPからDPまでの特徴と言えると思います。MYPを例にとって説明しますと,今,MYPもカリキュラムがIBオーガニゼーションの方で改定が進んでおりますので,少し古い話になるかもしれませんけれども,MYPの中には八つの教科がございます。言語A,言語B,人文科学,理科,数学,芸術,体育,テクノロジーの八つの教科です。そして教科横断的な学習の方法,コミュニティと奉仕活動,人間の創造性,多様な環境,保健体育と社会性という五つの学びの分野があります。これらを縦軸と横軸のように配置しまして,マトリックス的に学んでいくという形がMYPではとられております。
出口のところのDP(ディプロマ・プログラム)では,所定のカリキュラムを2年間履修して,最終試験で所定の成績を収めますと,国際的に認められる大学入学資格である国際バカロレアの資格が与えられます。最終試験は原則として英語,フランス語,スペイン語で実施されますけれども,一部教科は日本語でも実施されるようになっております。
この上の方にある1から6までの中の領域で,右側に教科が書いてありますけれども,赤い字で書いたところは日本語でも履修できるようになって,最後の試験が日本語で受けられるようになった教科です。ディプロマ・プログラムでは,この六つの青字の領域から1科目ずつ計6科目を履修しなくてはいけませんが,その6科目で全てきちっと学習を修めることに加えて,下にあります1,2,3の三つの要件。一つ目がExtended Essayという課題論文。二つ目がTheory of Knowledgeという,頭文字を取ってTKOといいますけれども,これは学び方を学ぶ,いかに学ぶかについての学習。例えば,いかに知るかとか,いかに考えるかとか,いかに学んだことを基に構成するかというようなことを学んでいく学習です。それから最後にCAS。Creativity/Action/Serviceの頭文字でCASといいますけれども,このような実際に社会の中での実践力を養うために奉仕活動を行ったり,自分たちで行事を運営したりというような活動。これも含めた3要件が全て合格になったときに初めて大学入学試験である国際バカロレアが与えられることになります。
私はよくIBの教室をのぞきに行きますけれども,私から見てIBのクラスというのはどのようにアクティブ・ラーニング的なのかということをお話しします。まずどこへ行っても生徒主体で,生徒がただ話を聞いているという受け身的なことがない。それから,常に探究する姿勢というのが大事にされていること。もちろん友達同士でディスカッションをしたり学び合ったりする協働の姿勢が見られること。それから,教員と生徒の間の双方向。生徒同士の双方向の活動が多く見られること。それともう一つは,学んでいるトピックが,例えば今回の期末試験のために学んでいるというような話題がほとんど授業の中で聞かれません。大学入試のために勉強しているのだということもほとんど聞かれず,将来自分が社会で役に立つためにという形で学びが行われるということで,学び続けるという姿勢が非常に大事にされます。これは教科横断的な,先ほどお話ししたTOKですとか,Extended Essayの中でも同じようにそれらのアクティブ・ラーニングの姿勢が大事にされます。
玉川学園は,中学,高校段階でIBのクラスを各学年に1クラスずつ設置しております。それ以外の一般のクラスでは,IBと全く違うことをしているかというとそういうわけではなくて,例えばTOKになるべく近づきたいという思いから,学びの技という,学び方を学ぶ時間,それから自由研究の中では最後に全員がExtended Essayを書くような展開をしております。
それから,OECDの方でもありましたけれども,IBも学力といったときに,その中には人格を高めることでありますとか,国際性を身に付けるということが含まれます。これが実践されているのがCASということになりますけれども,これは一般クラスの中では,私たち玉川学園では労作と呼んだり,また一般的によく知られている委員会活動であったり,国際交流活動であったりいたします。
IBの生徒たちは一体何が違うのか。私は何かデータを持ってということで今日はお話できませんので,私の感想になりますけれども,試験を受けた直後にヤマが外れたというような発言がない。テストの前に,これ,テストに出ますかと先生に聞いて,出ないのだったら覚えなくていいやというような,そういう学び方もほとんど見られません。それから,何かを一夜漬や丸暗記で覚えてこようといっても,なかなか試験では答えられない。では,どういう課題が子供たちに示されるかといいますと,教科の中でもExtended Essayでもそうですけれども,例えばディプロマの段階で,芸術に絡めたTOKのところでは,「まるでごみ袋にも見える芸術作品と,本物のごみ袋とをどのように区別するのか。どんなものでも芸術となり得るのか。そうだとしたら,何をもって芸術作品となるのだろうか。」というようなことを子供たちは2時間以内に論文で書かなくてはいけないというようなことの積み重ねをしております。数学でも理科でも,ただ結果を覚えるだけではなくて,そのプロセスを大事にしたり,学び終えた数学の証明の後,そこから物事の考えを深めるというような活動をしたりすることが積み重ねられていきます。
そのようにして育っていった子供たちは,一般のクラスと何が違うか。これはとても難しい問題ですけれども,一つエピソードでお話しいたします。私どもの学校が加盟しております,Round Squareという国際的な私立学校の協会がございます。この協会が年に何回か世界的な生徒のカンファレンスを開きます。今回は中学生をオーストラリアの国際会議に送るということがございまして,私たちの学校からも多くの志願者が出ましたので,決められた人数しか送れませんので,代表者を決める面接を先日いたしました。
私がそのときにした質問は,こういう質問です。「Round Squareの六つの理念の一つを挙げて,それを実際に自分がオーストラリアの学校に行ったときにどのように実行してくるかを説明してください。」このRound Squareの活動は,主に高校生が中心に行っている活動でして,私どもの学校では,高校生はほとんどこの六つの理念というのを知っていますけれども,多分中学生はまだこの理念を聞いたことがないだろうと思って,私はこの質問をいたしました。
そうすると,多くの子はやはり案の定,その六つの理念を知らないので,そのときの反応というのは,下を向いたまま,駄目だという顔をしたり,「ごめんなさい,覚えていませんでした。」と答たりする子がほとんどですけれども,IBのクラスの子たちは,ほとんどが違う反応をします。IBの子供たちはそこで大体が,「済みません,それは覚えていませんでした。ただ,その六つを教えてくれたら,私が何をしてくるかは答えられる。」と言うのですね。その子たちは,IBのコースに入ってまだ2年ですけれども,そこで覚えていなかったということが致命的な失敗だと思わない。そういうふうに育っているのではないかなと思います。
それはやはり,覚えてなければバツだという評価を受けてきていなくて,探究的な学習を積み重ねて,形成的な評価を受けてきたことが,自己肯定感や自信につながっていて,探究心を育てることにつながっているのではないかなと私は感じています。
先ほどのスライドの左側に載っているのは,英語の教科の観点の一つ。8年生の生徒が,試験が終わった後自己評価をして,それについて先生が評価をして,生徒のコメントと教員のコメントが書かれたものです。生徒は1回の試験期間に,一つの教科からこういうものが5枚も6枚も出てきますので,全部の教科で何十枚もこういうものが集まってきて,自分の評価を知ることになります。
最後に,世界に通用する人材を育てるために,アクティブ・ラーニングを充実させる上で重要なことをお話しします。一つ目。先ほどからお話に出ているように,優秀な教員を養成するということが必要だと思います。それは私自身も教員ですから,私たち教員が一人一人自分のレベルアップを図らなくてはいけませんけれども,やはりアクティブ・ラーニングのような方法で学ぶことができるように教員を育てるための研修。それから,大学での教員養成の在り方が必要です。それから,場合によっては特別免許の有効な活動ということも必要かもしれません。
二つ目。今までお話ししてきたような子供たちの探究的な学びが積み重なって得られた学力が評価されるような大学の入試制度の改革。IBを始めるようになって,世界の多くの大学の,アドミッションオフィスのスタッフが玉川学園までやってまいります。そしてどういう生徒が欲しいかという話をしていかれますけれども,私たちの生徒を見ていますと,みんながみんな海外の大学への進学を考えているわけではありません。実際問題,海外の大学に行くというのは,とても費用がかかって,なかなか実現するのは難しいということもあります。そう考えますと,こういう学び方をしていった子供たちが,日本の大学で自分たちが学びたいと思う学びをすることができるような,そういう入試になっていくことが必要かと思います。
もう一つは,IBの学校を増やすという目標がもちろんあるわけで,200校という目標も出ていますけれども,なかなかこれもすぐにそこへ到達するのは難しいと思います。ですから,やはり一般のクラス,一般の今ある学校の中に,このIB的な学びの手法をどう取り入れていくかということが必要になるわけです。そのためにはやはり今回改訂される学習指導要領が大事だと思います。今回の学習指導要領は,学びの内容と方法と評価を一体として捉えるということが明らかにされていますけれども,これはとても大事なことだと思います。そして,今日お話しさせていただいたように,いかに考えるか,いかに知るか,いかに探究するかというような学び方を学ばせること。また,いかに言語技術を活用してコミュニケーションをとるかということや,学んだことをどう実践するかという活用の仕方を学ばせることが必要になります。これらは,特定の教科で学ぶことは難しく,先ほどもお話ししましたように,縦軸になる教科に対して,このようないかに学ぶかというのは横軸になると思います。この横軸が何なのかということを今回の学習指導要領の中では明らかにしていきながら,それをどのように学ばせるかということが検討されていくとよいのではないかと思います。
最後に,先ほどのユネスコスクールのところでもお話が出ましたけれども,英語というのは,英語の時間だけで学ばなくてはいけないのかどうか。英語以外のところでも英語を学ぶことはできるかもしれないということや,幼稚園から大学までの一貫したK-16という発想で,その縦のつながりを大事にしながら,今後のカリキュラムを考えていくのがよいのではないかということを申し添えさせていただきまして,私の発表を終わります。ありがとうございました。
【羽入主査】  ありがとうございました。
それでは続きまして,広島県教育委員会の下﨑邦明教育長から御報告をお願いいたします。広島県における「学びの改革」に向けたチャレンジについてです。どうぞよろしくお願いいたします。
【下﨑教育長】  広島県の教育委員会教育長の下﨑でございます。まずは本日,このような機会を与えていただきましてまことにありがとうございます。
広島県では,グローバル化する21世紀の世界を,子供たちがたくましく生きていくための新しい教育モデルの構築を目指しまして,昨年の12月19日に「広島版『学びの変革』アクション・プラン」というものを策定いたしました。本日はその内容を中心にこれまでの経過,本県教育の現状,そして今後の方策などについてお話をさせていただきたいと思います。
お手元に資料をお配りしてあると思いますので,これを基にお話をさせていただきたいと思います。まず表紙,非常ににぎやかに写真が出ているのですけれども,子供たちと私の姿が映っているものでございますけれども,実は本県では,子供たちの頑張りを多くの皆さん,県民の皆様にも知っていただきたいという思いがありまして,機会があるごとに子供たちを教育長室へ招いております。そして,その様子を県のホームページに掲載したり,テレビや新聞などにどんどん取材をしていただいたり,また記者会見をしたりして,そういう姿を見ていただいております。また,私が下手な字を書いて,色紙を記念にお渡ししております。それで学びの在り方とか生き方などの話をしながら交流するというようなことをしております。
そして,タイトル上にございますように,本県では,「広島で学んで良かったと思える日本一の教育県の創造」,これを合い言葉に,みんなで力を合わせて進めているところでございます。これは,子供たちが10年,20年,やがて社会のいろいろなところで生きていくわけですけれども,そのときに「ああ,今自分があるのは広島のあの学校で,あの先生に学んだおかげだ。よかった」と思って,どうだと自慢ができる。全ての子がそうなってもらいたいという思いからであります。そういう思いで,教育の充実を図ってきております。
それでは,資料1ページを御覧いただきたいと思います。少し簡単に,本県の学力向上の経過と現状を図にしたのですけれども,御存じの方もおられると思いますけれども,本県は,平成10年の5月に,当時の文部省から是正指導を受けた経緯がございます。法令法規をきちんと遵守しない,学習指導要領を遵守しないという状況が多くあったということで,指導を受けたわけでございます。教育内容,学校管理運営に関する計13項目にわたって指導を受け,そしてその状況を報告するようにと求められた経緯がございます。平成13年には一応の報告をお出ししましたけれども,その後もしっかり経過を報告するようにと指導を受けているところでございます。
これを学力面から少し整理をしております。正に是正指導までの状況というのは,そこにありますように,学力否定の時代とか,学力向上軽視の時代,こういうふうに言っていいのではないかと思っております。もちろんそうではない市町や学校もありましたけれども,当時,多くがこういう状況にあったと。それは当時の職員団体が,こういう主張をしておりました。「差別,選別のエリートを作る教育に反対する」と,こういう主張があって,「学力を付けるということは,差別の教育をするのだ」と,こういうことから多くの学校では学力向上ということが,言葉すら使えないという状況で,一生懸命取り組む教師の足を引っ張ると,そういう状況も見られ,できるだけ授業を早く切り上げるとか,短縮授業をするとかというふうな,非常にみっともない恥ずかしい状況がございました。
これが是正指導を受けて,まず法令にのっとって当たり前のことをするようにということで,学力を付けるということについても,当たり前のことを徹底しようということが,この平成10年から起こったわけです。それで学力復権の時代としておりますが,県教育委員会の方も,学力向上対策,今まで全然こういうことができなかったわけですけれども,そういう施策も開始いたしました。また,小・中学校では基礎・基本の定着状況を調査するということを,本県独自でも進めましたし,また高等学校におきましても,基礎・基本の状況を調査しようということで,共通テストを入れて確認をしながら,PDCAを回しながら進めていくということをしてきました。まず基礎学力を重視し,基礎・基本の徹底をしたわけでございます。
資料の2ページを御覧いただきたいと思います。この結果,これは一例なのですけれども,県立高等学校の大学進学実績ということで挙げておりますけれども,御覧のように平成13年当時から見て,平成20年頃までぐっと上がっております。ほぼ倍に上昇しているということが見ていただけると思います。しかしその後は停滞気味というか,そういう状態になっております。
続きまして3ページでございますが,またここにありますように,学力調査などの結果を踏まえますと,要素1,つまり基礎のところですけれども,これは様々な取組によりまして,基礎的な知識・技能,これは概ね定着しつつあると考えています。しかし,その下の要素2という活用,すなわち,全国学力・学習状況調査におけるB問題などについては依然として課題があるのではないかと見ております。さらに,要素3としておりますが,学習意欲の問題ですけれども,これも年齢,学年が上がるにつれて低下する傾向があると,こういう現状がございます。
続きまして資料4ページでありますけれども,今申し上げましたような本県教育の現状,それから昨今の急激な社会の変化などを踏まえまして,本県の教育,今こそ次なるステップへと考えております。次のステップへ上がろうと。現在のような停滞感を突破して,更に突き抜けていくということでは,これまでの基礎・基本の徹底という取組に加えて,その上に新たな取組,新たな変革をしていかなければならないと思っております。これが「学びの変革」ということでございます。
基本的な考え方としましては,知識の量と同じように,知識の質,知識の構造化を重視していきたいということであります。知識がないということには話はなりませんけれども,量が幾らあってもそれだけではいけない。知識が構造化されていかなければならないと考えております。このようなことから,この4ページの図は,校長会などでお話をする材料として私なりに整理をしたものです。キーワードとして,「受動的な学び」に対しまして「能動的な学び」。「教師基点の学び」に対して「学習者基点の学び」。「浅い学び」に対して「深い学び」と,こういう三つの要素を中心にしながら説明をしております。
私も10年ほど前,高等学校の校長を務めていたわけですけれども,よく授業を見て回ったわけです。教師主導の知識や解き方などを単に暗記させるという授業,これはよく見られたという状況がありました。それで授業をしている先生に「授業していて面白いのですか」と尋ねますと,大体どの先生も「いや,面白くありません。しかし,この授業,生徒に好評なのです」と,こういう答えが返ってくるわけです。確かにこういう授業ですけれども,生徒に授業評価もさせているのですけれども,授業評価も悪くないのですね。いいのです。なぜかというと生徒にとっては,定期考査に向けて非常にいい授業なわけです。何をどれだけ覚えたらいいかってはっきりしているわけですから,それを一生懸命勉強すると。こういうスタイルをこれまで続けてきたので,こんな授業でも,面白くないような授業でも評価はまあまあ高いということがあったのではないかと思っております。
しかし,それは本当の学びになっていないので,高等学校におきましては,センター試験で点が取れないと。また,志望校にも入れないということになってあらわれてきたのではないかなと思います。今も学校訪問をできるだけさせていただくのですけれども,大分いい授業に出会うことも増えました。特に小学校あたり,中学校も変わりつつありますけれども。ただ,相変わらず依然としてこういう授業をまだまだ見るということが多い状況です。
生徒の学びを受動的にさせるのは何かという点について考えますと,教師が量的な評価テスト,これに関心を集中させると。そして,そうしたテストを反映した指導方法を採用すると。そういうことで,学習そのものというよりは,テストそのものに焦点が当たるということになってしまうと。生徒の方も1回限りの成績を重視すると。教師もそうです。したがって,伝達型,ひどいものは穴埋め式の授業と,そんなものができ上がっているのではないかと思います。正に教師がいわゆる指導者基点ということで,児童生徒が今,何ができていて,何ができていないかということを考えずに,自分が教えたいこと,教えたいスキルを教師主導で勝手に決めてしまっているということに問題があるのではないかと思っております。
学習者を基点にするというのは,子供たちのこれまでの経験や既有の知識というものと,学校での学びを結び付けていくということだと思います。知るということは,子供自身が知識を構成すること,構造化することではないかと思います。そして,学習するとともに,よく言われている,学習すること自体について考えていること,いわゆる認知プロセスに意識的であると,この辺が大切ではないかなと。こういう学習者を基点とした深い能動的な学びに変革をしていかなければならないと,我々は考えております。
続きまして5ページ,6ページをあけていただきたいと思います。このような問題意識をもちまして,広島版「学びの変革」アクション・プランの検討を開始いたしました。まず5ページにございます学識経験者の方々,産業界,あるいは国際機関の関係者の方々など,様々な分野の方にお集まりいただきました。これには知事も入っていただきました。有識者との意見交換会というのを開催しております。
そしてその後,県議会の方でもこのアクション・プランについては集中協議などをしていただきまして,そして6ページにありますようなアクション・プランを12月19日に策定いたしました。これは別冊でつけておりますので,また後ほど御覧いただければと思います。
それでは,7ページを御覧いただきたいと思いますが,ここからはアクション・プランの内容を簡単に説明させていただきたいと思います。まず育成すべき資質・能力について,社会の変化という観点から整理をしております。つまり,左側のように,これまでの産業化社会においては,何を知っているかというところが特に重視されたのに対しまして,これからの知識基盤社会,あるいは知識創造社会におきましては,知識を活用し,他者と協働して新たな価値を生み出せるかという点がより重視されると考えております。また,その下にありますように,グローバル化が進展する変化の激しい社会では,学校で学んだ知識や技能はすぐに通用しなくなってしまうということから,こうした知識・技能を定型的に適用して解ける問題は少ないということです。そういうことで,一番下にありますように,生涯にわたって学び続ける力,これを育成していくことが極めて重要になると考えております。
このため,8ページの右下の方ですけれども,このような学び続ける力を育成していくためには,知識のみならず汎用的なスキル,意欲・態度,あるいは価値観や倫理観など,様々なコンピテンシーを育成し,その好循環を図っていかなければならないという整理をしております。
続きまして,9ページをお開きいただきたいと思います。こういった観点から,右側にありますように,今後,コンピテンシーの育成を目指した主体的な学びを重視していきたいと考えています。左側に「知識ベースの学び」「何を知っているかを重視」と書いてありますが,これを完全に否定するのではなく,これに右側を加えていくようなイメージを持っております。知識の量と同様に,知識の質,さらには汎用的なスキルなど,様々なコンピテンシーを重視していきたいと思っております。
そして10ページにありますように,これを実現していく施策ということで,「課題発見・解決学習」,そして「異文化間協働活動」,この2点を柱として掲げまして,小・中・高等学校と系統的に取組を進めていきたいと考えております。
具体的には,次の11ページに整理をしております。全部で施策を六つ掲げております。中でも施策の2,これが「課題発見・解決学習の推進」ということですが,育成すべきコンピテンシーの評価とも関わりますので,施策の1の「育成すべき人材像の具体化」とセットで取組を進めていく予定でございます。具体的には,小・中・高等学校においてモデル校を指定して,実践事例の研究開発を行い,その普及を通じて平成30年度には県内全ての公立学校で実践が行われている状態にしたいと考えています。
また,施策の3ですけれども,これはもう一つの柱であります「異文化間協働活動の推進」であります。こちらに関しては,実は本県,既に特別支援学校を含む全ての県立学校97校で,海外の学校と姉妹校提携を完了しております。今後,今も随分進んできておりますけれども,この姉妹校との交流活動を更に活性化していきたいと考えています。
さらに,高校生の海外留学に関しては,現在諸外国の自治体と教育協定を順次締結しております。これまでに3自治体と締結をいたしました。台湾の桃園市,オーストラリアのクイーンズランド州,それからカナダのブリティッシュコロンビア州と結んでおります。今後,マレーシアやニュージーランドやメキシコなどとも締結できればと考えておりますので,事務局内では環太平洋教育協定パートナーシップ,TPEPなどともひそかに呼んでございますけれども,そういうようにネットワークを広げていきたいと考えております。そして,このようなネットワークを活用しながら,安全安心で教育効果も高く,そして低コストの短期留学プログラムを民間企業と連携して開発をしていきます。
これによりまして,県立高校生の海外留学数,短期,長期合わせて本年度は既に160名を超えておりますけれども,これは一昨年度の81名と比べますと倍増しています。こうした取組を進めまして,近い将来,年間1,000名の高校生が海外留学をしている状況を作りたいと考えております。
また,このほかにも学校の体制整備でありますとか教員の採用育成方針の整備,これも着々と進めておりますが,さらには県全体の機運醸成など様々な取組を総合的に進めていきたいと考えております。
12ページでございますが,来年度における主な取組を載せてあります。国内外の先進事例の調査研究を行い,その成果も活用しながら小・中・高等学校それぞれにおいてパイロット校を指定し,各教科,総合的な学習の時間,この双方におきまして「課題発見・解決学習」に関するカリキュラム等を開発していきます。また,小・中学校におきましては,2の学力向上チャレンジ事業ということで,基礎的な知識・技能の定着に課題が見られる地域におきまして,小・中学校が一体となって探究や活用の視点を取り入れた習得の学習活動の研究も行っていく予定にしております。すなわち,機械的な反復の学習を行うというのではなくて,より実社会に即した観点から,知識習得の必要性を子供たちが感じられるような新しいアプローチの指導方法を開発していきたいと考えております。
最後に13ページでございます。今後の課題ということになります。私たちは,このようなプロジェクトを進めていくということは決して簡単なことではないと思っております。特に一つ目に記載をしておりますように,各学校・各教職員が「型」にはまる,特定の形にはまるということがなく,多様な子供たちの状況に応じた創意工夫を行えるよう,どのように支援していくべきか,この点が大きな課題だと考えています。どうしても現場というのは,手法に走りがちで,育成すべき資質・能力の全体像・構造を認識しないで,これだけやればいいと,いわゆる上滑りになってしまうということがあります。このため,そういうことがないように最低限押さえるべきポイントは教育委員会としてしっかりイメージを示しながら,あとは各現場の主体性を尊重していくという必要があるのではないかと考えております。
これは例ですけれども,14ページに参考として,課題発見・解決学習のプロセスのイメージを入れております。御覧のとおり,いわゆる探究のプロセスに加えて,我々といたしましては「実行」,そして「振り返り」と,こういう二つのプロセスを大切にしていきたいというように考えておりますが,このようなポイントをしっかりと示して,一方でこれに現場が拘束されすぎてしまうということのないような,そういう支援をしていきたいと考えております。
13ページにお戻りいただきまして,2点目が評価の問題です。この問題も同様に,大変大きな問題,課題であると考えております。特に知識の深まりや汎用的スキルをどのように評価していくかということにつきましては,取り組ませる課題の内容,評価の観点・切り口,課題解決のプロセスをどう評価するか,また,でき上がった成果物とどう関連して評価をするのかといった問題,ルーブリックやポートフォリオなど評価の客観性を高めるための方策でありますとか,評価の主体の問題など,様々な論点があろうかと思います。このような点につきまして,今後この特別部会におかれまして御議論いただければ有り難いなと思っております。また本県においても来年度以降,様々な先生方の御指導いただきながら検討を進めてまいりたいと考えております。
以上,御説明を申し上げましたが,当然このアクション・プランを策定して終わりということではなくて,これからが勝負だと,これを実行に移していくのが勝負だと考えております。基本的には今回の学習指導要領改訂の御議論と,先ほど説明させていただきました本県の「学びの変革」は,同じ方向を目指しているものだと考えております。今後,本県の取組が,できれば一つの先行モデルとして注目いただけるようなものになるように,しっかり教職員と一緒に進めていきたいと考えております。
現在,このような方向で,教育委員会事務局の職員や各学校の教職員など,関係者が皆,いわゆるわくわく感というのですか,それを持って,取組を進めております。今後も正にわくわく感を持ちながら取り組んでいきたいと思っております。どうも御清聴ありがとうございました。
【羽入主査】  ありがとうございました。
それでは,しばらくの間,質疑の時間にしたいと思います。平川委員,どうぞ。
【平川委員】  市ヶ尾中学校の平川でございます。非常に示唆に富むというか,本当に刺激的なお話を頂き,私どものような普通の公立中学校でもこういう実践ができないかなと思ってわくわくいたしました。ありがとうございます。
一つ,鈴木大臣補佐官からございましたけれども,OECDの協同問題解決能力でありますとか,あるいはグローバル・コンピテンシーに大いに現場の中学校としてもチャレンジしたいと思いますし,そのような政策等推進するための事業をこれから出されると思いますけれども,なかなか一般の学校というか,学校は法人格がありませんので,こういった事業のお金をもらうことができません。いろいろ申請を出したいと思って動いておりますけれども,個々のこういった思いというのがなかなか通らないというようなことがございますので,制度上御配慮いただきたいなと思っております。
先日も鈴木大臣補佐官から,今回の学習指導要領の改訂にあたり,本当に一から考えてほしいというような御依頼がありました。余りにも時代の変化のスピードが速くて,OECDですらいろいろ変化をしていて,国レベルで教育の内容とか方法論について検討,議論をして現場に下ろすというやり方が間に合わないのではないかと私自身も感じております。つまり,何を教えるかという部分は簡素化し,満たされるべき目的は一体何なのかとか,どういう能力,資質を培うのかということにフォーカスすべきじゃないかと思います。
そういう点においては,渡瀬先生に教えていただいた国際バカロレアに関しては,シラバス自体は分量は多いと思うのですけれども,カバーする内容に加えて,どのようにアセスメントするかという記述が非常に多く,知識だけではなく,知識をどう咀嚼(そしゃく)して,それを応用できるか,どういう力の育成をいかにはかるかという,この部分が非常に定義されているので,是非渡瀬先生には,これを学習指導要領に生かすとしたらどういうことが言えるのかということを教えていただきたいと思っております。
それから,下﨑先生の方から,この構想は本当にすばらしいなと思っておりまして,私がもし広島の中学校に勤めておりましたら,是非実践したいと感じたのですけれども,教育長が現場で実践するために,先生たちとの心のつながりというかモチベーションアップのために,どのような工夫をされているか。それから,先生たちのスキル向上のためにどのようなことを施策としてなさっているのか。これをやるためには,絶対先生方のリフレクションということが肝になってくるのかなとお聞きしながら感じたのですけれども,その部分をどのようにやっておられるのか。現場の方でまた生かしたいと思っておりまして,是非御教授いただければと思っております。以上です。
【羽入主査】  ありがとうございます。では,鈴木大臣補佐官,それから渡瀬先生,下﨑教育長の順でお話しいただけますでしょうか。よろしくお願いします。
【鈴木大臣補佐官】  御質問ありがとうございます。いろいろお答えをしたいことがあるのですけれども,確かに学校は法人格がございませんので,なかなか単独の動きというのは難しいというのは,原則としてはそうだと思いますが,元横浜に関わっておられた伯井さんがいらっしゃいますので。ただ,そこも教育委員会と御相談されると,いろいろなソリューションが実はある。一例を申し上げますと,例えば三鷹第四小学校というのは,NPO法人夢育支援ネットワークというのが学校の中にあって,職員室の隣にその事務局があるのですね。そうすると,これはNPO法人夢育支援ネットワークが受け皿になる。あるいは,例えば杉並区立和田中学校も,多くの寄附を和田中学校として受けていました。これは杉並区の教育委員会と協力をしながら,御案内のように,地方公共団体というのは寄附を受けた場合には,正に無税になりますから,その行き先をどの学校にしていくのかと。先ほどの夢育の場合は完全に夢育にきますから。
それからもう一つは,大学と共同研究をすれば,逆に言うと大学にいろいろなものを受皿にして,そのリソースを学校で展開していくなどなど,いろいろと知恵はございますので,また個別に御支援申し上げたいと思いますが。
ただ,結局教育委員会側からすると,いろいろある学校の中で,そこを特別にセレクションしていくということについての関係者の理解が得られるケースと,なかなか難しいケースということになりますので,最初の話になりますが,教育委員会,地元の市町村教育委員会とのコミュニケーションということになりますが,横浜などは要するに市町村教育委員会が最もカバーしなければいけない学校が一番多い市町村が横浜市という事情もあるのかなと思います。一般の市区町村教育委員会の場合,もう少し小ぶりのものになりますので学校とのコミュニケーションがとりやすいということになります。
あともう一つは,やはり研究開発校を受けてしまえば,これはある意味で何でもできると言ったらおかしいのですけれども。このアクティブ・ラーニング,あるいは今日いろいろすばらしい御提案がありましたし,OECDで考えていること,これはかなり試行錯誤を現場でやりながら,そしてもちろん教員養成に関わる大学などとも相当コラボレーションしながら,現場で試行錯誤を積み重ねていくということが必要だと思います。枠組みとしては研究開発校として,アクティブ・ラーニングだとか,こういったグローバル・コンピテンシーだとか,コラボレーティブ・プロブレム・ソルビングだとか,こういうことをやっていく枠組みはできるわけでありますが,問題は,いわゆるフレームワークの問題というよりも,それをやれる人材。校長先生も相当忙しいと思いますし,そういう人材なりをどうやって集めていくかということだと思っておりまして。
これも例えば,私の研究室が関わったケースでいうと,横浜にあります白幡小学校などは相当一緒に,これは当時の伯井教育長にも御指導いただいてやりましたけれども,そういうことを具体的に仕込んでいく,それこそいろいろな多種多彩な人たちのヒューマンネットワークを作ってサポートしていくということが必要なのかなと思いました。その辺のノウハウは門川市長がお持ちでございますので,逆に何か補足があればと思います。
【羽入主査】  ありがとうございます。では,渡瀬委員。
【渡瀬委員】  どう知るかとか,どう考えるかとか,そういうことをどのように学習指導要領の中に盛り込んで,しかもそれをどのように評価するかというのはすごく難しいことだと思います。私が最近目撃した場面を紹介します。私どもの小学校1年生が動物園の見学に行きまして,動物園で自分の気に入った動物をずっと見つめて帰ってくるのですね。帰ってきた後で,その動物について三つ,何か自分でトピックを選んで,1枚の紙の上にその絵を描いて下に文章を書く。
例えば,その子はシマウマを選んだのですけれども,シマウマのシマというテーマで絵を描いて,そのことについて自分が見てきたことを文章でまとめる。シマウマのエサということでまとめる。それから,シマウマとキリンを比べて書いてくる。その三つの作品が仕上がったのですけれども,その担当していた教員は,その三つができた子は,みんなの前で発表だよと言いました。その発表の方法ですけれども,発表の最初に,自分がシマウマを見てきて,こういうふうに思ったから,この三つのことを調べてまとめたのだと言いなさい。そして三つの内容を話しなさい。最後のところで,自分がシマウマのことを調べてどう思ったかということのまとめをしなさいと説明しました。教室にはその発表の方法がステップチャートを用いて書いてあるわけです。
しかもその教員は,1年生の子にそれを3分で発表するように要求するのですね。私は,それは無理だろうなと思いました。ただ,自分がまとめてきた作品はもう手元にあるので,その三つはその作品を読めばいいわけだし,自分がずっと見てきたことだからよく分かっているので,最初の頭の部分と最後のところを考えれば,それで一つのスピーチが成り立つ。私が見ている前でその男の子は,2分45秒で見事に話しました。
国語の,動物の赤ちゃんという単元の学習でもあるし,それから,生活科の中での生き物を観察するだとか,観察したことを表現するだとかという活動でもあると思うのですけれども,それを指導した教員の頭の中はにファイブパラグラフエッセイがあるのだと思うのですね。筋道立ったパターンを1年生なりに何となく身に付けさせようとしている意図がそこにあったのだと思うのです。
このように,今の学習指導要領の中に書かれている内容を超えたどういう学び方を学ばせようとするかということが,今度の学習指導要領の中に盛り込まれるとよいと思います。スピーチには頭と終わりがあって,自分の言いたいことが幾つというように自分でちゃんとデザインして話ができるということを,どのように評価するかが検討されていくと,その教科の今ある内容を学ぶだけではない学習が展開されるようになるのではないかと思います。
【羽入主査】  ありがとうございます。下﨑教育長,お願いします。
【下﨑教育長】  「学びの変革」を本当に実施,実現していくためには,正に実際に指導に当たる教師,これが非常に大切だと思っております。まず教師のモチベーションややる気ということに関してですが,本当に本県の教員はすごく真面目で,真剣に取り組みます。だからぐっと学力等も回復したわけです。だからこそ,できるだけ先生方には,シンプルで分かりやすく話をしていくということが大事だと思います。しかし,シンプルにするということは,相当大変な作業が伴います。現在,事務局の中でも侃侃諤諤と議論しており,非常にシンプルで分かりやすく,それがきちんと根幹を捉えており,先生方に理解をしていただけるような,そういう提示の仕方をまずしようと考えております。余りたくさんのことを欲張って伝えようとすると,難しいことという印象を持たれることになり,先生方は真面目ですので,逆に混乱をしてしまうとか,うまくいかないということがあろうかと思います。ですので,できるだけシンプルで分かりやすく取り組みやすいような形にしていきたいと考えています。また,それを伝えていくためには,あらゆる研修を活用していきたいと思いますし,本県では,実践研究会という,全県のいろいろな先生方が一堂に会する場もあります。それから,先生方と具体的に討論したり対話をしたり,そういう場も次年度から増やしていきたいと思っております。
それからもう1点,指導力向上については,来年度,パイロット教員というのを指定しようと考えております。先導役となる教員を指定して,その人の実践を各学校で取り組んでいけるようにしていきたいと考えています。
それからもう一つ,取組を行う環境作りで言えば,先生方は大変業務が忙しいということがあると思います。教員の力をしっかり「学びの変革」へ向けられるようにするため,今,業務改善プロジェクトということで,先生方が子供と向き合える本来の時間をいかに作るかということを進めております。次年度の予算の中にもそれを入れて,具体的に先生の雑用を減らすためのサポーターを配置するとか,ICTをうまく使うということをしながら,環境作りを進めております。こういうものを併せて進めていきたいと考えております。
【羽入主査】  ありがとうございます。では,油井委員,それから荒瀬委員,そして次回ディスカッションしますが,御欠席の予定のある方がいらっしゃいましたら,どうぞおっしゃってください。では,油井委員,荒瀬委員の順で。
【油井委員】  先ほど鈴木補佐官のお話の中で,OECDとの政策対話の中で,歴史的アプローチと身近な問題からアプローチしていくという,二つのアプローチの違いが紹介されたと思うのですけれども,それはアクティブ・ラーニングを進めていく上でのアプローチの違いということで出たのか。それから,OECDの加盟国の中で,教育方針として,一応重点の置き方が違うという形で出たのか。さらにはその二つのアプローチは対立的というよりは,両方並行させるということも可能だと思うのですけれども,どうしてそういうアプローチの違いとして浮き彫りにされてきたのかというあたりを少し説明していただけると有り難いと思います。
【鈴木大臣補佐官】  御質問ありがとうございます。今のお話は,アクティブ・ラーニングの話ではなく,むしろシチズンシップ教育のところでございます。そして加盟国の中に,割と2パターンあるなと,こういうことが御紹介されました。もちろんどちらかということではなくて,両方組み合わせるのが一番いいわけでありますが。むしろ身近な問題からシチズンシップ,あるいは社会参画ということを考えながらやっていくという手法に重きを置いている国と,割と歴史的なシチズンが形成されるプロセスを教えていくというアプローチをとっている国等があると,こういう紹介がなされたということでございます。
【羽入主査】  ありがとうございます。では,荒瀬委員,どうぞ。
【荒瀬委員】  ありがとうございます。三浦先生にお尋ねしたいのですが,頂いた資料の後ろの方に,非常に具体的な各教育委員会の動きが書かれていて,当初の課題,うまくいかなかったこととか,失敗したこととかが書かれていて,それを解決した事例であるとか,結果であるとかが書かれているわけですが,資料の1ページですね。1ページというのは後ろの方のルーブリックの更に後ろにある1ページです。ここの下半分のところに,参加する地域,教育委員会と目指すゴールを共有し,プロジェクトを進める中で,具体化し,軌道修正も行ったという解決策が書かれています。新しい学習指導要領についてこれから考えていくわけですが、現行の学習指導要領の理念は,とてもすばらしいと私は思っているのですね。ところが,これがなかなか現場に定着しない。よって,今日の御発表の中でも優秀な教員を確保しないといけないとか,あるいは養成しないといけないといった御意見になると思うのです。
やはり指導する側,アクティブ・ラーニングといっても生徒が勝手に動くわけではなくて,それを仕掛ける側の力量というのは非常に重要になってくると思うのです。少し具体的に教育委員会名を言って記録に残るとよくないような気がいたしますけれども,これは相当踏み込んだ記録で,どこの教育委員会はどのような対応であったかということが書かれています。1番目に書かれている解決した事例というのは,うまくいった教育委員会のことが書かれているので,うまくいかなかった教育委員会がその後どうなったかというのは書かれていないのですね。書きにくいのだと思うのですけれども。現場で,こういったところをどのように強化していくのかということが重要です。先日,福島大学の非常に意欲的なお取組を実際に見せていただきました。あのようなことをしていかれる際には,教育委員会という組織,教育委員会の中にいらっしゃるそれぞれの担当者,あるいはもう少し踏み込んで言えば,下﨑教育長のような意欲的な教育長もいらっしゃいますけれども,教育長さんのお考えとか意欲とか,そういったことが非常に大きな意味を持つことになってくると思います。
それを学校現場ということで考えると,それこそ教員なのですね。相似形であるような印象を持ちます。教育委員会の動きについて,福島大学としては今後プロジェクトを進めていかれる上で,特に2030年に向けて進めていかれる中で,教育委員会間の力量の差と言ってしまってもいいのかもしれませんが,教育委員会間の力量をどのように高めていこうとなさっているのかをお尋ねしたいと思います。
【三浦委員】  きちんと質問にお答えできるかどうか少し分からないのですけれども,今回,先ほど申し上げましたように9つの地域が参加していて,そこには教育委員会として参加しているところもあれば,ほとんど教育委員会は関与しない形で参加した地域もございます。初めはやはり教育委員会と学校現場と,あと大学とが三つのセットできちんと共通の認識を持ちながら進んでいこうと考えたのですけれども,なかなか震災直後のこともあって,それぞれの地域の事情に応じて教育委員会として参加できるところとそうでないところが生じてしまったということなのです。また,それが逆に分析を行う上では非常に興味深い結果を生むことになったわけなのです。
一つは,教育委員会が関与したところは,初めはプロジェクトと既存の教育委員会,あるいは学校教育の立場といいますか性格というのがあって,かなりうまくいかなかった時期がありました。やはり子供たちは現場の学校にいるわけですし,我々はプロジェクトを何とか成功させたいということで,学校現場にいる子供たちをいろいろな形で,言い方は悪いですけれども,借り出さざるを得ないことがあって,それで実は教育委員会さんにお叱りを受けたりとか,校長先生にお叱りを受けたりして,私はそのたびごとに謝罪に行ったり,話し合いをしたりしたのですけれども。しかし,そういうことを2年間ぐらい続けていく中で,教育委員会とか学校現場にもかなり大きな変化があらわれるようになってきました。
特に後半になるほど,一定の成果が見えるようになってきたということで,やはり自分の学校の生徒が国内で,あるいは海外でこんなことをやっているというのは,教育委員会にしても校長先生にしてもとても誇らしいことであるし,そういう意味で,初めお叱りばかり受けていた学校が,後半は是非次のプロジェクトもあるのであれば,参画させてもらいたいというところが半分ぐらいになりました。
一時で関係というのは形成できなくて,やはり大学と教育委員会にしても,大学と学校にしても,すごく長い時間での本音の付き合いというのができないと,本当の意味での教育を変えていくような意欲的な関係というのが生まれないのかなと思っています。その意味でこれから,また先日,宮城県の県教委にも行っていろいろお話しすることができたのですけれども,また福島県とかいろいろなところに行く予定なのですけれども,とにかく継続的に話を続けるというのがすごく大きなポイントになっていくかなと思っています。質問のお答えになっているかどうか分からないのですけれども。
【羽入主査】  ありがとうございます。では,天笠委員。
【天笠主査代理】  今の質問と少し関わりがあるのですけれども,次の学習指導要領の一つのポイントは,現場の先生方がそれをどう理解して受けとめてくれるかという,古くて新しいテーマであって,やはりその中には教員養成のカリキュラムの在り方等々も,やはり視野におさめていかざるを得ないということが今後想定されるわけなのですけれども,そういう点で,鈴木補佐官に御質問を1点させていただきたいのは,OECDのやりとりの中で,先ほど御紹介の中にも教員養成についてということが話題にされているような,そういう御報告があったのですけれども,そのあたりのところについて,これからのこの場におけるカリキュラムの在り方を考えていく,学習指導要領の在り方を考えるに当たって,教員養成のカリキュラムの在り方とか,そういう点を踏まえたときに,この場ではどんな議論がなされたのかどうなのか,少しお話を聞かせていただけますでしょうか。
【鈴木大臣補佐官】  OECD各国とも相当同じ問題を抱えていて,正に先ほど教員文化を変えなければいけないというお話が三浦先生からありましたけれども,いずれの国も,やはり教員文化を変えるところに相当な課題というか,チャレンジがあるなというのがOECDのオブザベーションでした。まだまだOECD諸国においては,教員組合がいろいろな抵抗やネゴシエーションに,日本以上に相当エネルギーを割いていると,こういうお話がございました。
ただ一方で,先ほどのシチズンシップの議論にもなりますけれども,OECDが2015年に出している,正に協同問題解決力ですね。やはりこれがある意味,シチズンに身に付けてもらいたい能力でもあるし,これをどういうアプローチで教えるかはいろいろあるにしても,目指すところは正に直面している,顕在化している,あるいは潜在的な課題に対して,どういろいろな立場の人と協働して問題を解決していくのかということ。となると,これはもちろん教員にそのことを理解してもらうということは必要ですし,もちろんそのことをリードしてもらうということは必要なのですが,教員だけでこうしたことを養成できるわけではないので,少し手前みそになってしまいますけれども,やはりコミュニティによってそういう人材を育成していくことが必要だと思います。
そうなると,教員の役割といいますか,そういうものが変わっていくということも理解をしてもらわなければいけないなと思います。しかし,日本よりも他国の方が,そこの壁はむしろ厚いですよと,こういうお話でありました。
【天笠主査代理】  どうもありがとうございます。
【羽入主査】  ありがとうございます。門川委員。
【門川委員】  ありがとうございます。先進的な地域や学校での実践とその結果に,改めて大きな刺激を頂きます。特に広島,本当にすばらしい取組をされているなということで,改めて敬意を表したいと思っております。これらがどの地域でも,どの学校でも,とりわけ困難な地域で実践できる,結果が出せる,そんな仕組み,支援体制,環境を整えていく,これが大きなことですし,現場の教職員の意識と行動改革,同時に政治や行政の環境作りの覚悟が必要ではないかと,こんなことを実感しています。
荒瀬先生出席ですけれども,堀川高校の変革は,普通の先生が始められました。そのために特別な先生を配置したわけではありません。荒瀬先生も20年ほど堀川にあって,どん底の堀川の責任も荒瀬先生にあったと。改革した結果も荒瀬先生はじめ多くの先生が。だから,あの堀川でもできるからということで,今,京都の教育がよくなってきたと。だから,そのときの仕組み作り,きっかけ作り,環境作り,こういうことを,これは行政の責任でもあるし,それと同時に失敗はします。新たな挑戦をするときに。前向きなときの失敗は,日本はぼろかすにマスコミも含めて書きますけれども,包容力というようなものが新たな挑戦のために必要だなと,こんなことを思っています。
そこで申し訳ないです,次回年度末でどうしても出られませんので,感じていることを端的に申しておきたいと思うのですけれども,私,改めて実感するのが,今の学校教育,日本の教育の最大の課題は何だと。学校での問題と社会生活がかい離している。学んだことが生活に生かされていない。したがって,大人になってからも生かされない。典型的な例が民主主義,選挙制度を学び,投票率はどんどん下がっていきます。いろいろな食育であろうと何であろうと言えると思います。それからもう一つは,家庭での学びの減少です。一緒に親が子供と学ぶ。家族の絆ができる。そして,家族から地域社会,ここがまだ隔離されている,かい離している。ワーク・ライフ・バランスということが言われていますけれども,ワーク・エデュケーション・バランスを真剣に考えていかなければならない。大人の働き方も含めて,ここから提案していく必要があるのではないかと思います。
京都市の取組ですけれども,学校教育と社会生活を結び付けるための様々な取組をしてきました。鈴木補佐官御出席ですけれども,コミュニティスクール,京都方式でやってきた。これも一つです。今,子供の10倍大人がいます。お年寄りがたくさんいます。ものすごい時間があります。それぞれがどう関わっていただくか。そのことによって,地域社会,大人のモチベーションが高まる。子供は夫婦のかすがいと言われたけど,それが今生きているかどうかは別にしまして,子供が地域社会のかすがいになる。子供のためならいろいろな人が協力できる,学校のために貢献できる,こんな仕組みも大事ではないかと思います。
それで子供が学んだことを実践できる社会にする。ここが大きなキーワードではないかなと思います。そのためにどういう仕組みを作っていくのか。今日はペーパーを用意していませんので,次回はペーパーを出したいと思っています。もちろんここで教えるべきことは徹底的に教える。これは大きな要素として外してはならないと思います。具体的なことを一,二言っておきたいなと思うのですけれども,例えば食育というのがようやく定着してきました。しかし,それが食生活の充実から感謝の心,いただきます,ごちそうさま,あるいは環境,あるいはごみを減らすとか,あらゆる生活につながるような取組。あるいは,敬語の学習ではなく,敬語を使う生活。外国語教育ではなく,外国語を使える生活。外国語を使って人を助けられる生活。何ができるようになったかという,この提言のポイントだと思います。
3点,学んだことを使う。そしてもう一つは,地域住民としての子供。子供を子供扱いしない。小さな大人として扱い,参画させる。最後は,教師の学び,その支援。視野を広げるということだと思います。こんなことが最近,京都では出ていました。高校生が博物館において英語で子供に教える。子供が,小学生が,今度留学生に英語で教える。こう回転するのですね。あるいは,天文台で学んだ高校生が小学生に教え,また天文台は今,文部科学省の支援が少なくてがたがたなのですけれども,高校生が寄附を一生懸命集めだすという流れ。こういうような学びが生かされて,モチベーションが高まるという循環,こういう仕組みを作っていくべきだなと。あるいは,地域で親と一緒に大人たちと清掃活動をする。これほど実践的な道徳教育はないと思います。そういうことをやはり地道にやっていくということが大事ではないかと感じています。
また少しペーパーでまとめて御提案したいと思います。ありがとうございます。
【羽入主査】  ありがとうございます。まだお手が挙がっていますけれども,時間でございますので,大変恐縮ですが,ここで議論を閉じさせていただきます。
本日は,非常にリアルな課題に直面して,そして具体的な取組をしておられる方々から御説明いただき,また他方,OECDの動きについても御紹介いただきました。ここで私たち,ある程度共通認識としてできているのではないかというふうに考えますことは,もちろん根本的に考えていく,基本方針を示すということが重要であり,同時にこの過程で使われる様々な概念を明確化するということが必要ではないかということでもあると思います。例えば,アクティブ・ラーニングもそうですが,クリティカル・シンキングについても,やはり明確な共通認識が必要であろうと思います。
それから,先ほどから議論がございますように,どのようにして教員を育てるか。あるいは,教育にどのように関わる人を育てるかというようなこともあるかと思います。同時にまた先ほど御議論ございましたけれども,社会が著しく急激に変化している。それを,どのようにして今回の改訂に反映させるか。あるいは,その議論の過程でどのようにして情報を獲得していくかということが今回の議論で多く聞かれたことではないかと思います。
次回は,今後の学習指導要領の在り方全般について,皆様の御意見を伺ってまいりたいと思いますが,この論点を整理して,事務局からペーパーを用意していただくことにしたいと思います。もし事前に配付できるようでしたら,皆様の方にお送りしておきたいと思います。
それでは,次回は皆様の御意見を拝聴し,議論することを中心に,アクティブな審議会にしたいと思っております。では,事務局から御説明をお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】  本日は,限られた時間でありがとうございました。質問をし尽くせなかったという部分もあると思いますので,事務局の方にお寄せいただけましたら,また先生方とつながせていただきたいと思います。
次回の特別部会の日程でございますけれども,3月26日の10時から,文部科学省の隣にあります霞が関ビル内の東海大学校友会館阿蘇の間におきまして開催を予定しております。御発表につきましては,もし書面等を事前に御用意いただけるようでありましたら,事務局の方にお寄せいただければと思います。以上です。
【羽入主査】  では,ありがとうございました。本日は御多忙のところ,また少し時間が遅くなりましたが,どうもありがとうございました。

── 了 ──

議題1.の詳細は以下のとおりです。
【報告】
OECDとの政策対話について
(鈴木寛・文部科学大臣補佐官)
【ヒアリング】
(1)ESD・ユネスコスクールの取組(見上一幸・国立大学法人宮城教育大学長)
(2)OECD東北スクールの取組とその教育効果(三浦浩喜委員)
(3)国際バカロレアプログラムとアクティブ・ラーニング(渡瀬恵一委員)
(4)広島県における「学びの変革」に向けたチャレンジについて(下﨑邦明・広島県教育委員会教育長)

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課教育課程企画室

電話番号:03-5253-4111(代表)(内線2369)