事務職員の在り方に関するこれまでの答申・報告等(抜粋)

事務職員の在り方に関するこれまでの答申・報告等(抜粋)

1.平成10年9月21日 中央教育審議会 「今後の地方教育行政の在り方について」

第三章 学校の自主性・自律性の確立について

五 学校の事務・業務の効率化

 子どもの数の減少により学校の小規模化が進行しているが、その一方で、「総合的な学習の時間」の導入や選択教科の拡大、あるいは学校予算を各学校の要求や実態に応じて編成するなど、学校裁量権限の拡大に応じて、学校の責任において判断し対応することが必要となる事務・業務が今後増えていくことが予想される。また、校長や教職員が子どもと触れ合う時間をより一層確保することも必要である。このため、国や教育委員会等においては、学校が処理すべき事務・業務に係る負担軽減を図るため、調査統計の対象と方法、教職員の研修や研究指定校等の在り方の見直しを含めて、学校が外部から依頼される様々な事務等の軽減を図るための措置を積極的に講じる必要がある。
 また、地域社会と連携した開かれた学校づくりや地域の活力の学校の教育活動への導入・活用、さらにコンピュータ処理や書類の電子化の推進、校内LANや学校と教育委員会を結ぶ情報網の整備など情報化の進展を踏まえて、従来のような事務・業務をすべて校内で実施、処理することとしてこれに必要な組織を整備するという考え方を見直すことも必要である。
 その際、地域や学校の状況に応じて、それぞれの学校や学校を設置する地方公共団体の教育委員会が、事務・業務の共同実施や教諭以外の専門性を有する者の活用等に積極的に取り組むことが求められる。また、地域の教育行政機関である市町村教育委員会が、市町村立中学校と都道府県立高等学校など設置者が異なる学校についても積極的な連携を推進し、地域における学校が一体となってお互いの教育機能を活用することが大切である。
 さらに、教育委員会と学校の役割分担についても各学校の事務・業務を軽減する観点から見直しが求められる。すなわち、学校の自主的取組に委ねるべきと判断される事務は学校に任せ、教育委員会は各学校ごとの対応では限界がある地域全体の教育課題に対応した施策の推進や先導的な研究や実践事例の提供、学校ごとの教育課題に沿った指導・助言等を重点的に行うなど、その施策や事業の実施の在り方等を工夫することが必要である。
 以上のような観点から、これに関連する制度等について以下のように見直し、改善を図る必要がある。  

具体的改善方策

(学校事務・業務等に係る負担軽減)

ア 第一章二の具体的改善方策タで述べたように、国の行う調査統計については重複を避け、学校基本調査など真に必要なものに精選するとともに、各種の業務調査について廃止又は整理を進めること。また、都道府県、市町村が実施する調査統計についても精選に努めること。

イ 国、都道府県又は関係機関等による各種の業務の委嘱、照会事務の精選に努めること。特に、学校に対する作文コンクールや絵画コンクール等への参加依頼などのいわゆる持ち込み行事については、教育委員会において、一部の学校に過重な負担がかかることのないよう調整を行うなど、学校の負担軽減に配慮すること。

ウ 授業時間内に実施する研修については、その実施主体である国、教育委員会、民間教育団体等において、可能な限り削減する方向で研修の実施の在り方を見直すこと。

エ 国、都道府県の研究指定校については、国、都道府県において、研究の趣旨・目的を踏まえ、先導的な調査研究を行うものと奨励的なものとを区別するとともに、今後先導的な調査研究に重点を移すなどして、その精選を図ること。

オ 各研究指定校においては、研究授業や発表会の在り方、研究集録のまとめ方等を工夫し、研究の進め方について抜本的な簡素・合理化に努めること。

 

(学校の事務・業務の共同実施)

カ 地域全体の教育力の向上を図り、多様な教育活動を推進するため、地域内の小学校、中学校、高等学校が共同して学校行事や野外体験活動、部活動などの教育活動を実施するなどの工夫を講じること。

キ 地域の状況や学校の実態に応じて、第三章二の具体的改善方策クで触れた教職員の兼務を積極的に推進することにより、地域内の小学校と中学校、中学校と高等学校など学校間の連携・協力を促進することに努めること。

ク 学校の規模や実態に応じて、学校事務を効率的に執行する観点から、特定の学校に複数の事務職員を集中的に配置して複数校を兼務させることや学校の事務を共同実施するセンター的組織を設置すること等により、学校事務・業務の共同実施を推進するための方策を検討すること。  

 

 (専門的人材の活用)

ケ 養護教諭、学校栄養職員、学校事務職員などの職務上の経験や専門的な能力を本務以外の教育活動等に積極的に活用するとともに、学校教育相談や進路相談などの分野において学校内外の専門的知識を有する者を活用し必要に応じて校内の生徒指導組織等との連携を行うなど学校内外の多様な人材を積極的に活用する方策を検討すること。

コ スクールカウンセラーやALT(外国人外国語指導助手)などが本務以外の学校の教育活動にも参画することができるよう、学校の職員として置くことができるようにするなどの工夫を講じること。 

2.平成16年12月20日 中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育行財政部会 学校の組織運営に関する作業部会「学校の組織運営の在り方について(作業部会の審議のまとめ)

(2)学校の組織体制の再編整備

3 事務処理体制の整備
 学校の権限の拡大などにより、学校が自ら責任を持ってその事務、業務を執行することが必要となる。そのなかで、事務職員は、より効果的、効率的な事務処理を図り、事務執行や渉外などにおいて学校経営の専門スタッフとして中心的な役割を担うことが期待される。しかし、特に小・中学校については、事務職員の配置が1人のところが多く、十分な組織体制が取れず、教育行政サービスに差が生じたり、安定性に欠ける場合もある。また、上司、先輩の指導助言も得られないなど、職員自身の資質や意欲の向上を図りにくいという問題がある。また、高等学校等も含め、事務組織の職務権限が必ずしも明確でなかったり、一層の権限の委任が効果的であると考えられるものもある。
 このようなことを踏まえ、人的措置を含め事務処理体制を整備し、前述の教育活動を支える領域として明確に位置付けることが必要ではないか。これにより、効率的で安定的な事務処理が図られるとともに、指導時間の確保など教員が教育活動により専念できる環境づくりにもなり、教育活動の領域にも好影響を与えると考えられる。
 また、教育委員会事務局と学校との間において、学校事務に関し適切な役割分担と協力が大切である。

○ 事務処理体制が必ずしも十分でない小・中学校については、事務処理の効率化、標準化や職員の資質向上のため、事務の共同実施を推進する必要があると考える。具体的には、拠点校に共同実施組織を置き、各校の事務職員が定期的に集まって共同処理を行う方式などが考えられる。

○ その場合、共同実施組織に事務長を置くことができるようにするなど、その制度化についても更に検討する必要があると考える。これにより、学校への権限委譲を更に進め、状況に応じ共同実施組織に予算を示達するなど、一層の効果が期待できるのではないか。

○ 高等学校等においては、事務長や事務室の職務権限の明確化、一層の機能強化について検討する必要があると考える。

○ また、事務局と学校の事務職員の人事交流なども考えられる。

○ マネジメント研修も含め研修などにより、事務職員の事務能力のみならず教育活動への理解や学校運営に参画する意欲の向上を図るとともに、管理職や教員の事務に対する理解を進め、相互に刺激し合うようなことも大切ではないか。

○ これらに関連して、事務処理も含め学校運営面のIT化を進める必要があると考える。

 

3.平成19年3月29日 中央教育審議会「今後の教員給与の在り方について(答申)」

第二章 教員の校務と学校の組織運営体制の見直し

1.教員の校務と学校事務の見直し

○ 教員勤務実態調査暫定集計の結果によれば、7月、9月、10月、11月の通常期の小中学校の教諭の残業時間が1日あたり平均約2時間となるなど、昭和41年の勤務状況調査の結果と比べ、残業時間が増加しており、まずはこの事実を認識する必要がある。その上で職務内容を分析すると、子どもの指導に直接かかわる業務以外の、学校経営、会議・打合せ、事務・報告書作成等の学校の運営にかかわる業務や保護者・PTA対応、地域対応等の外部対応といった業務に多くの時間が割かれている。教育の質の向上を図っていくには、何よりもまず、教員が子どもたちに向き合い、きちんと指導を行えるための時間を確保することが重要である。

○ このため、教員の校務について見直しを行い、校長、教頭、教諭、助教諭、講師や事務職員などのそれぞれの職に応じた役割分担の明確化を図り、教諭、助教諭、講師(以下「教諭等」という)が子どもたちの指導のための時間を十分に確保できるようにすることが必要である。
 また、校長及び教頭は、学校組織のマネジメントをしっかりと行い、特定の教員の勤務負担が過重にならないよう、教員の時間外勤務の縮減や勤務負担の適正化等を図る必要がある。

○ 教員の校務を整理をした上で、なお教員が行う必要のある学校事務については、以下のような方策を通じて軽減・効率化を図り、時間外勤務を縮減していくことが必要である。
  (1) Eメールや電子掲示板の活用などを通じて会議・打合せの回数・時間を縮減する。このため、教員に1人1台パソコンを整備することやICT活用を支援できる職員の確保など学校のICT環境の整備・充実を図る。
  (2) 国・都道府県・市町村等が行う調査の縮減・統合を図る。
  (3) 業務日誌、学校運営関連書類等の様式の簡素化・統一化を図る。

○ あわせて、教員が抱える事務負担を軽減するため、事務職員が学校運営に一層積極的に関わるとともに、そのサポートにより、教員の事務負担を軽減することができるよう、事務の共同実施の促進、事務職員の質の向上のための研修の充実などを行うとともに、教育委員会の判断により大規模な学校や事務の共同実施組織に事務長(仮称)を置くことができるように制度の整備を行うなど、事務処理体制の充実を図っていくことが必要である。
 また、アウトソーシングが可能な業務については、専門的な能力を持った民間人や退職教員等を活用して積極的にアウトソーシングしていくことも必要である。

○ 学校をより地域に開かれたものとし、地域全体で支えていくため、地域対応に関連する活動や放課後・週休日の活動について、放課後子どもプランの推進などを通じて地域住民や退職教員等が積極的に参画するようにし、地域社会との連携を通じた教育の活性化や教員の負担を軽減するサポート体制の構築を図っていくことが必要である。

○ 学校を取り巻く社会環境は日々変化し、それに伴い、子どもたちが抱える背景も複雑化・多様化しているため、現在の教員には、いじめ、問題行動、不登校並びに被虐待児童及び外国人児童生徒への対応、発達障害も含めた特別支援教育といった様々な教育課題に取り組むことが求められている。
 これらの教育上の諸課題に対応するため、教員の職務の見直しや学校事務の軽減・効率化を図るとともに、教職員や外部人材の配置の充実、又は様々な教育課題に対応できるような研修の充実を図ることが必要である。
 なお、これらの諸課題は、必ずしも教育だけで解決するものではないことがあるため、外部専門家の活用や、福祉や医療等関係機関との連携を促進することも必要である。 

 

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(初等中等教育初等中等教育企画課教育公務員係)