チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会(第8回) 議事録

1.日時

平成27年4月28日(火曜日) 15時~17時

2.場所

中央合同庁舎第7号館東館(文部科学省庁舎) 5階5F7会議室

3.議題

  1. 主幹教諭等の在り方について

4.議事録

中央教育審議会初等中等教育分科会

チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会(第8回)

平成27年4月28日

 

 

【小川主査】  定刻になりましたので、ただいまから、チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会の第8回を開催いたします。本日も大変お忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。

前回、第7回は、学校や管理職に求められるマネジメントの在り方、管理職の資質・能力の問題について議論いただきました。きょうはそれを踏まえまして、スクールリーダーの中核である主幹教諭等の在り方について、これまでどおり有識者の方々に意見発表いただいた後、意見交換を行いたいと思います。よろしくお願いします。

最初に、きょう意見発表いただく方々を御紹介させていただきたいと思います。埼玉県教育局小中学校人事課管理主幹の岡田英行様です。

【岡田管理主幹】  岡田でございます。よろしくお願いします。

【小川主査】  よろしくお願いいたします。

次に、徳島県教育委員会教職員課人材育成担当総括管理主事の藤田完様です。

【藤田統括管理主事】  よろしくお願いいたします。

【小川主査】  よろしくお願いします。

最後に、筑波大学人間系教育学域の教授である浜田博文様です。

【浜田教授】  よろしくお願いいたします。

【小川主査】  よろしくお願いいたします。

それでは、まず本日の配付資料について、事務局から説明いただきます。

【福島補佐】  本日の配付資料につきましては、議事次第にあるとおりでございますが、資料1から資料3-3まで、これが本日御発表いただく先生方から御提供いただいた資料でございます。それから、参考資料といたしまして、管理職や主幹教諭等の現状について事務局において作成した資料をお配りしております。

不足等ございましたら、事務局にお申し付けください。

【小川主査】  本日も報道関係者から傍聴の希望等があり、これを許可しておりますので御承知おきください。

それでは、まず事務局から、きょうのテーマであります主幹教諭の現状について、資料を使って説明をお願いいたします。

【福島補佐】  管理職や主幹教諭等の現状についてという参考資料をごらんいただきたいと思います。

1枚お開きいただきまして、2ページでございます。ここに、学校教育法の規定の抜粋でございますけれども、管理職や主幹教諭等に関する職務規定について抜粋を付けております。赤字の部分が管理職と、平成19年に設けられた新たな職でございます。主幹教諭につきましては、第37条の第9項でございますけれども、「主幹教諭は校長及び教頭を助け、命を受けて校務の一部を整理し、並びに児童の教育をつかさどる」というものでございます。これの具体的な職務内容につきましては、49ページをごらんいただきたいと思います。法律ができた後、平成20年1月に出した関係政省令を整備する際の通知でございまして、副校長等の職の設置に関する留意事項についてというものを併せて出しております。ここでそれぞれの職に関しまして、もう少し詳しい説明を加えてございます。

主幹教諭については、49ページの下3分の1のところに、2番で、「主幹教諭に関する事項」という所がございます。(1)は、主幹教諭を置く場合には、各小中学校は市町村教育委員会において学校管理規則に位置付ける必要があるということ。その上で、主幹教諭の職務につきまして、(2)というところで、「命を受けて担当する校務について一定の責任を持って取りまとめ、整理し、他の教諭等に対して指示することができる」ものとしております。続きまして、50ページをごらんいただきたいと思います。主幹教諭が担当する具体的な校務の例といたしまして、(3)に例示しておりますけれども、1は学校の管理運営、2が教育計画の立案・実施と、こういう形で5つ例示をしております。こういったものにつきまして、学校運営上基本的な校務のうち任されたものを整理することを主幹教諭の職務としております。

5ページにお戻りいただきたいと思います。主幹教諭の現在の配置状況でございますけれども、平成25年度の人事行政状況調査の結果によれば、67ある都道府県・政令市のうち、55都道府県市で設置されておりまして、設置人数は1万9,742名というのが現状でございます。県によりまして義務だけ、県立だけなど多少の差はございますけれども、こういう配置状況でございます。それから、6ページから8ページは前回お配りした資料でございまして、9ページをごらんいただきたいと思いますが、校長等に登用された者が直前にどんな職にいたかという資料でございますけれども、例えば、左側の縦の欄で主幹教諭を見ていただきますと、副校長登用者数が325、教頭登用者数が1,534ということでございますので、要は、教頭登用者のうち1,534名が主幹教諭から登用されたということでございます。ですので、例えば教頭登用者数を見ていただきますと、一番多いのは教諭が大体3,000名でございますけれども、それ以外に主幹教諭から1,500名、それから教育委員会の事務局から1,500名、こういう形で今登用が行われているという状況でございます。

続きまして、10ページから22ページまでは細かい資料でございますが、管理職選考の受験資格について、各県ごとにまとめたものでございます。23ページから29ページは主幹教諭の受験資格等につきまして、各県ごとに状況を整理したものでございます。30から43ページは前回配付したものと同じでございますので、説明は省略させていただきまして、44ページをごらんいただきたいと思います。ここは主幹教諭と主任の違いということで書かせていただいております。45ページに表にしておりますけれども、まず位置付けでございますけれども、主任はあくまで職務命令による校務分掌であるいうことですので、服務監督権者であります市町村教委又は校長と、この命課の仕方につきましては市町村によって若干異なる状況がございます。教諭、指導教諭をもって充てるという省令の規定がございます。それに対しまして主幹教諭につきましては、教育委員会が承認する別の職ということでございますので、任命権者が任命するというものでございます。したがいまして、主任については、学校が替われば、新しく主任を命ずる必要があるわけでございますけれども、主幹教諭につきましては職でございますので、学校を異動しても身分は変わらないということでございます。

設置状況でございますけれども、主幹教諭は、先ほど見ましたとおり、全国で約2万人ということでございます。それに対しまして主任につきましては、教務主任、学年主任といろいろあり、原則必置のもの、任意設置のものがございますけれども、全国で約27万人いるということでございます。職務につきましては、先ほど見ましたけれども、主幹教諭につきましては管理職の補佐、校務の一部を整理する、それから児童の教育というのが職務でございます。それに対しまして主任につきましては、教諭、指導教諭の職務に、教務主任であれば教育計画の立案に関する連絡調整、指導、助言といった職務が付加されるということでございます。それから処遇でございますけれども、主幹教諭は別の職でございますので、別の級で処遇と、2級と3級の間の級で大体処遇するのに対しまして、主任につきましては、級は教諭と同じでございますが、手当で処遇をするということでございます。こういう形で主幹教諭と主任は異なっているという状況がございます。

続きまして46、47ページですが、これは、現在、小、中、高、特別支援学校でどのような主任が置かれているかといったものと、学校種別の主任等の数についてまとめた資料でございます。

参考資料につきましては、以上でございます。

【小川主査】  ありがとうございました。何か質問等があれば、後で意見交換の際にお出しいただければと思います。

それでは早速、有識者からのヒアリングに入っていきたいと思います。

きょうは3人から意見発表を頂くわけですけれども、前半後半に分けて進めさせていただければと思います。最初に前半は、教育行政の現場からということで、埼玉県と徳島県の主幹教諭の配置や方針、またその効果等々について発表いただき、それを踏まえて、後半は研究者の立場から、学校や管理職、スクールリーダー等の在り方について発表いただくことにしたいと思います。よろしくお願いいたします。

それでは、まず前半ということで、最初に埼玉県教育局、そして徳島県教育委員会の順番で、20分程度で収めていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

それでは最初に、岡田管理主幹の方から、よろしくお願いします。

【岡田管理主幹】  それでは、失礼いたします。埼玉県教育局の岡田でございます。右肩に資料1としていただいている資料を基にお話をさせていただきたいと思います。1ページ、2ページとありまして、その後、資料ということで何点か付けさせていただいておりますので、時折そちらの資料も見ていただきながら進めさせていただきます。

では、1ページの上から参りますが、まず1、埼玉県における主幹教諭配置状況というところでございます。(1)配置の目的につきましては、先ほどお話がありましたように学校教育法の規定を法的根拠といたしまして、本県におきましては、学校マネジメント機能の中核を担う存在という捉え方をしております。その下に丸を付けて、4点ほど並べさせていただいております。どんな分野で、どんな面でその中核を担っていくかというと、まず学力向上、生徒指導、家庭・地域との連携、その他ということです。主幹教諭を配置するに当たりまして、この人をこの学校に配置する目的はこれであるというのをまずはっきりさせることを心掛けて取り組んでおります。その他というのは何かといいますと、例えば本校においては人権教育に少し力を入れてやっていきたいので、それを主幹教諭に担当させたいとか、異校種連携、幼保、小中高といった連携を進めていく中で主幹教諭をそれに当たらせたいとか、特別支援教育に力を入れていきたい、あるいは外国籍の子供が多いので日本語指導をうまく円滑に進めていくために力を発揮させたい等々が、その他の内容でございます。

(2)の発令要件等でございますけれども、まずアについて、教頭候補者名簿登載者の中から埼玉県教育委員会が発令していくということです。ですから場合によりますと、1つの学校の中に教頭選考に合格した者が複数いる場合、片方が主幹教諭で、片方が教諭であるという学校もございます。続いて、イでございますが、教頭と教諭の間に位置付けられる特2級を給する。教頭3級、教諭2級の間ということで、おおよそですけれども年間30万ぐらいの差となります。そして、ウにつきましては、免許状更新講習受講を免除するということになっています。法令上は、養護や栄養をつかさどる主幹教諭も可能なわけですが、本県におきましては教諭を充てるということで進めております。

(3)の配置の方針でございます。アのところで、標準学級を超える規模の学校への配置を原則とするということです。限られた数の主幹教諭しか配置できませんので、原則としてはなるべく大きな学校への配置をしていくということを考えています。具体的に言いますと、小学校は19学級以上、中学校は13学級以上を目安にしています。これは原則ですので、それを下回る学校に配置している場合もございます。次に、イとしまして、1校について1人の配置とし、可能な限り全市町村へ配置するということです。つまり、1つの学校に主幹教諭は、いても1人ですということです。現状では、全部の市町村への配置を行うことができております。

続いて、ウです。主幹教諭の職務は省令主任の職務を包含するため、省令では当該主任の担当する校務を整理する主幹教諭を置く場合は、当該主任を置かないことができるとしています。なお、原則として主幹教諭は教務主任の職務を担当するということで本県は取り組んでおります。ですから主幹教諭が配置された学校は、その方には教務主任の担当するポジションに就いていただく原則を取っています。仮に、学年主任ですとか保健主事、進路指導主事の職務に当たらせたいという場合につきましては、事前に協議をさせていただくことで対応しています。

最後のエですが、配置の目的を明確化し、組織的取組により効果を高めていくということです。冒頭申し上げましたとおり4つの項目、学力向上、生徒指導、家庭・地域との連携、その他のうち、主幹教諭自身が、私がこの学校で主幹教諭として発令されたのはこれが目的であると本人が自覚すること、そして管理職もそれを理解していること、市町村の教育委員会も分かっていること、これらを確認しながら配置を進めております。

(4)の配置数でございますが、平成21年度から本年度までの数を入れてございます。上の段、下の段とございまして、上の段は埼玉県内の配置の人数、下の段は政令市であるさいたま市、これは内数として入れております。見ていただきますと、24年度から400、400、400と続いておりましたのが、関係者の御理解も頂きながら、今年度プラス40と若干増やすことができたというのが今年度でございます。

では、2ページに参ります。主幹教諭に対する研修についてまとめてみました。(1)、(2)、(3)、(4)とございますが、研修会のような形で行っているものは(1)、(2)になります。

まず3月末に、翌年度の新任主幹教諭の辞令交付式を行います。本県では教育事務所が東西南北、4つございまして、それぞれの教育事務所ごとに新任主幹教諭辞令交付式を行っております。その際に各教育事務所の事務所長、あるいは副所長が講義するという形で研修を行っております。資料1とありますのが、その内容です。これと同じ資料を使いながら、4つの教育事務所で研修を行っております。内容としますと、法的根拠から入りまして、分掌上、教務主任との違い、あるいは具体的な職務内容の例、新たに主幹教諭に充てられた方が自分のこととしてイメージしてもらいやすいようにということで、この資料を使いながらの研修を行っているところです。

それから(2)といたしまして、その教育事務所別に、新任主幹教諭を対象とした研修会を行っております。おおよそ例年10月頃行っております。資料2としているのが、その一例ということで持ってまいりました。各教育事務所で、若干やり方に差はあるのですが、おおよそこのような内容のことを行っております。所長あるいは副所長からの講義、それから実践発表ということで、実際に主幹教諭として活躍されている、いわば先輩をお呼びして、そこでの、このようにやっているという具体的なお話を伺う。1人、あるいは複数来ていただいているという事務所もございます。そしてその後は、班別の協議を行っております。当日はレポートを持ち寄って、そのレポートを基にしてグループごとでの協議、そしてそれに対しての事務所の管理主事、あるいはお招きした先輩主幹教諭から指導をしていただくという流れがここ数年の内容でございます。

また、(3)として挙げたのは、主幹教諭は教頭候補者でもございますので、教頭候補者研修にも参加いたします。その中で管理職としての視点を高めていく、視野を広げていくという機会になっていると思います。そして(4)番とすると、やはり日々のOJTというのは大きいと思います。各学校には校長、教頭がおりますから、それぞれの校長、教頭からの指導を受けるということもございますし、また、みずから進んでの研さんということもございます。あるいは、例えば保護者、地域からの学校に対する要望や苦情を実際に体で受け止めながら、生きた勉強をしながら鍛えていくという面はあると考えております。

3番といたしまして、主幹教諭配置に係る成果と課題ということで、おおよそまとめさせていただきました。

まず、(1)成果でございます。ア、組織的・機動的な学校運営の充実。どういうことかといいますと、学校運営上の課題への組織的対応、あるいは特色ある教育活動の推進、地域との連携等における対応力が増す。特に即座の、迅速な対応が可能になってくるというのが挙げられるだろうと思います。イとしましては、主幹教諭及び教職員の経営参画意識の高揚。よく言われるのが、管理職と教職員のパイプになってくださいということです。つまり、校長の経営方針を周知し、逆に教職員の意見を取りまとめて校長へ進言するという働きが期待されています。これによってみずからの立場や方向性が明確になり、本人のやりがいも湧きますし、また学校の活性化にもつながります。ウといたしましては、教育指導体制の確立ということです。教職員個々への働きかけや、校務の進行管理の徹底が図れ、人材育成等とともに、組織力を高めることができるというのが成果であろうと思います。

別紙資料3では生徒指導、学力向上、保護者・地域対応についてビフォー、アフター、こういう状態がこんなふうになるということをまとめております。組織的な対応を図ることによりまして、管理職とすると学校としてのいろいろな実態を明確に掌握することができる。職員とすると、多忙感や孤立感から解消される。保護者・地域、そして児童生徒には手厚い対応がとれるといったことを御理解いただいて、プラス40人という今年度の成果につながったのだと思います。

最後、(2)の課題でございます。ア、イ、ウ、エとさせていただきました。大小の課題取り混ぜて挙げているのですが、まず一番大きな課題といったらば、主幹教諭の配置数をさらに拡大していきたいということです。市町村教育委員会等から主幹教諭の数を増やしていただきたいという要望も頂いているところでございます。イとしますと、主幹教諭の授業持ち時数の削減をもう少し図ってあげられないかということです。主幹教諭に時間がとれれば、校長、教頭との打ち合わせも、今よりももっと十分にできますし、校内を回って児童生徒や教職員の実態を直接把握する機会も増えます。また、外部との対応にもしっかりと取り組めます。現在、マネジメント加配ということで配当いただいているところですが、この加配をもっと欲しいという声も大変多く聞くことがございます。

課題のウですが、主幹教諭という職に対する学校内外の理解促進ということです。主幹教諭のよさというのを一番分かっているのは、やはり管理職ではないかと思います。管理職だけではなくて、一般の教職員の方も、それから保護者、地域の方々も、主幹教諭という職に対して理解を深めていくようなことが必要か考えております。

最後、エですけれども、一般教職員人事の中で組まれる人事異動についてです。主幹教諭は定数の中で置いているものでございます。教員定数の中で主幹教諭に充てています。ですから、人事異動につきましては一般教職員の中で行っていくことになります。そうしますと、主幹教諭に充てたい人を、充てたい学校に、充てたいときに、なかなかうまくいかないという場合もあります。例えばということですけれども、この人を主幹教諭としてこの学校に充てたいと考えたときに、その学校にはもう教務主任さんが、今五十八、九でいるんだと。その人を無理やりほかの学校へ動かしてというわけにもいかない。あるいは校内人事との絡みで、その人をほかのポジションに移して主幹教諭を配置していくということもなかなか難しいところがある。あとは、中学校ですと教科の関係があります。主幹教諭も授業を持ちます。ですからその教科、何の先生かということで、なかなか思ったように人事が組めないといった難しさも持っているのが現状でございます。

以上、よろしくお願いしたいと思います。

【小川主査】  ありがとうございました。

それでは続けて、徳島県教育委員会から藤田統括管理主事、よろしくお願いいたします。

【藤田統括管理主事】  失礼いたします。資料2を使いながら、通し番号で1ページの部分がレジュメになりますので、これを中心に、あと参考資料を折々見ていただきながら、進めさせていただきたいと思っております。

「はじめに」の部分でございますけれども、ここはもう既に御案内の内容になりますが、近年の学校を取り巻く環境の変化ということで、本県におきましても、もう非常に様々な問題が生じておりまして、2段落目のところにありますように、学校の管理運営や外部対応に関わる業務が非常に膨大に増えてきていると。そういうことで、結果として、やはり教員の子供たちに対する指導の時間に余裕がなくなってきているという現実が、もうここ十年来あるということでございます。このような学校教育現場の状況を踏まえて、校長を補佐し、校務を整理するとともに、教職員の資質・能力の向上に努めるために、ここには書いてございませんが、本県では平成20年度より副校長、それから主幹教諭、指導教諭という職を設置して、組織体制や指導体制の確立を図っているところでございます。

通し番号2ページに、資料1ということで、本県の新しい職ということで、3つの職についての配置状況を、本年度、それから過去5年間分について示したものでございます。非常に本県は規模が小さい、学校数も少ないということで、配置数も2桁というようなことではございますが、本県では、この主幹教諭については教頭任用希望者の中から審査を実施し、主幹教諭として任用、配置をするという方法をとっております。この表において、配置者数あるいは配置校数というのが増減してございますが、これは各年度における教頭登用者数が異なるというようなことから生じているところでございます。

それではレジュメに返っていただきまして、続いて主幹教諭の役割についてということでございます。これにつきましては先ほど来御説明も頂いておりますが、法的定義を受けまして、大きく2つのことを主幹教諭には職務として遂行してもらうように考え、また伝えているところでございます。白丸の1つ目になりますけれども、1つは、校長、副校長及び教頭の補佐役ということで、教職員に対する校長の学校運営方針の具体化及び意見具申、さらには緊急時における管理職の補佐、また地域や関係機関との連携等、これを1つのくくりとして、役割として考えてもらっております。もう1点は担当する校務の整理ということで、校務に係る目標設定、あるいは達成状況の取りまとめと進行管理、そして教諭等に対する指示、そして指導助言及び連絡調整という、チームや組織作りの一翼を担ってもらうということも主幹教諭の大きな役割と捉え、伝えているところでございます。

続きまして、3番に参ります。主幹教諭設置の効果と課題というところで、本県では職務研修ということで、先ほどの埼玉県のお話にもありましたが、主幹教諭研修を平成20年度より実施をしておりまして、研修終了後、全ての主幹教諭から実践報告等を得ております。今回は資料2-1から2-3までということで、3人の主幹教諭の方の報告書を示させていただきました。具体的にどういうふうに主幹教諭が取り組んだかということで、実践報告書を載せさせていただいております。

まず資料2-1を見ていただければと思います。この2-1から2-3までは、下線部あたりに主幹教諭配置の効果とか、そういったものが考えられるのではないかということで、この下線部につきましてはこちらの方で後から、きょうのために入れさせていただいたものになりますけれども、まずこの2-1の主幹教諭は、県内に3校ありますけれども、中高一貫校の中学校の主幹教諭として任用、配置されている方であります。真ん中あたりになりますが、この主幹教諭は、この学校で、特に組織力向上と人材育成の2点をみずからの役割と捉え、職務に当たった報告がされております。真ん中より下の方になりますけれども、組織として取り組んだとか、目標に向かって協働することの大切さを知ったとか、そういったことで、マネジメントによる学校教育活動の推進が報告されているところでございます。

続きまして通し番号の4ページ、ここでもそういう2つの自分の役割を考えながら、主幹教諭として、真ん中より下になりますが危機管理、そしてもう一つは学力向上への取組ということを自校の課題として挙げ、危機管理においては学校内外の情報集約に努めること。また、学力向上への取組につきましては、先ほど申しましたように中高一貫校ということで、求められるものは一体どういうものか、中高一貫校のあるべき姿を検討していく、その取組状況というものが報告されているところでございます。

続いて、通し番号の8ページになりますが、これは資料2-2ということで、小学校の主幹教諭の実践報告になってございます。この主幹教諭は、真ん中より下に、自校の課題として3点ほど挙げておりますが、まず1点目は、特別な支援が必要な児童の指導における協同体制を、いかに図っていくか。そして2点目は、校舎改築工事に伴って、学校の環境が非常に大きく変わった。その変化に対して、主幹教諭としてどのように関わっていくかといった点。そして3点目は、この学校における教職員の年齢構成の二極化による、次のページの1行目にありますが、若手教員の育成と中堅教員のリーダーとしての育成、これをどのように図っていくかという、この3つの課題を捉えて、実践しておる報告がなされております。

1点目の特別な支援が必要な児童の指導における協同体制の必要性においては、特に入学後の二、三週間の時期をスタートプログラムという形で位置付けて、校内における専科教員やTT教員の協力の下、担任とのTT体制を組み、連携を図りながら指導に当たった点。あるいは、2のところにもございますが、定期的に会議を開き、共通理解を図るために自分が関わっていくといったように、チームとして動くことを意識した取組が報告されているところでございます。

さらに、通し番号10ページになりますけれども、ここでは2点目の課題である学校環境の変化への対応というところでございますが、ここにおきましても、まずは全職員で話し合いを持ち、課題等を出して、ある程度の解決に向けての方向性等をまず出すというようなこと。さらには人材育成の視点も踏まえながら、OJTを意識した関わりを進める中で、個と、それから校内におけるチームと、そして学校職員による組織と、そういう3つの視点を常に持った関わりを進めていくといった報告がなされているところです。

最後の11ページのところには、終わりの部分で2年間の取組について振り返っているわけですけれども、真ん中あたりのところでございますが、やはり自分がまだ十分できていない部分についての反省も出しながら、一つずつ課題を克服していく姿というものがこの報告の中には表れているかと思います。

最後の2-3の報告でございます。12ページになりますが、この主幹教諭は9年間同じ学校に在籍して、最後の2年間、主幹教諭として勤務された方で、その報告が示されております。この2番のところは、また時間がありましたら後で見ていただけたらと思うのですが、ここでは学校長が主幹教諭に大きな関わりを持っていただいて、主幹教諭としての役割の明確化や意識の向上というものが図られた報告が載せられています。やはり管理職自身が主幹教諭の働きについてしっかりと捉えるというところから主幹教諭の力が発揮される部分が、この実践報告からは見てとれるかと思います。

続いて13ページですけれども、実際にたくさんのことに取り組んでいるわけなのですが、まず一つは組織運営体制ということで、風通しのよい職場作りに向けた取組ということで、真ん中より下の線を引いているところの後段になりますけれども、養護教諭とか事務職員とか技能員とかALTの人とか、そういう一人職との連携も図りながら、チーム学校を意識した取組もしっかりと進めている報告が出ております。

次の14ページになりますけれども、ここでは、役割の大きな一つであります教頭業務のサポートの取組もありまして、特に教頭に非常に業務が集中している現状、そういう中で教頭の指示を仰ぎながら、生徒指導において軽微なものについては主幹教諭が対応し、担任に指示を出し、解決までサポートといったような形で、役割を分担し進めていくことによって、一定の責任と権限を持ちながら、スピード感を持って業務に当たることができたといったような報告もなされております。

この報告の最後になりますけれども、成果と課題といったところにありますが、この学校が、多少なりとも職場の風通しがよくなったことが一番自分が感じたところだということで、その中でも、特に学年団での協働体制がより確固なものとなり、協力して課題に対することができるような組織になってきたということを一番の成果として挙げているところでございます。

また時間がありましたら、この3名の主幹教諭の方の報告も読んでいただけたらありがたいところでございます。

レジュメにお戻りいただけたらと思います。先ほど説明させていただいたことからも分かりますように、主幹教諭等を設置することにより学校運営における権限と責任が明確化され、校長のリーダーシップの下、学校の抱える課題に対して組織的に、迅速かつ的確に対応ができるようになっていること、これがまず一番の成果だと考えます。また、教頭等の補佐を積極的に進めていくことにより、教頭等の負担軽減が図られ、教頭が管理職としてのモチベーションを維持しながら、機動的な取組が進むことにつながっている、そういった点も効果の一つかと思われます。さらに、主幹教諭が管理職と、そして教諭等々をつなぐパイプ役になることによって、スピード感を持った情報の共有化が図られるとともに、教諭等のマネジメントへの参画意識の醸成にもよい効果をもたらしている、そういったような成果が考えられるところでございます。

逆に課題ということで、本県では1点挙げさせていただいておりますが、本県の場合、教頭任用審査というような形で、その中から主幹教諭が任用されておるというような形でございまして、基本的に、任用審査を受けた、その籍を置いた学校で、次の年も、任用されてもとどまるというような形を原則としておりまして、課題を持った学校、当然どの学校も課題はあるわけなのですけれども、課題を持った学校にすぐさま異動という形で配置することができないという現状がございます。そういった点についての対応も考えていく必要があるといったところが課題でございます。

最後、今後の取組についてでございますが、18ページから、実際、研修の在り方を本年度から見直したということで、資料を付けさせていただいております。今年度から鳴門教育大学との連携を、今まで以上に深めていくということで、一昨年の冬から足掛け1年半ぐらい掛けて、この主幹教諭、もう一つ指導教諭も含めてなんですけれども、研修の抜本的な見直しを図りました。今回の研修で特に意図したことは、主幹教諭等のRPDCAサイクルを通した課題解決への取組の意識化という点と、あと、何回か行われる研修の中で、ラウンドテーブルによる情報共有と意識の転換を図った点にございます。

まず、18ページを見ていただいたら分かるのですが、主幹教諭としては、自校の実態からの課題という形で、AからEのような5つのテーマの中から取り組むべきテーマを選ぶことからスタートするわけなのですけれども、その後、通し番号21ページに飛んでいただきますが、1年間の流れということで、新任主幹教諭については4月から翌年3月までの間に、自校の課題について分析をするところから始まり、分析、把握、解決に向けた取組の立案、そして実践、評価という流れを、年間を通じて意識をしながら取り組んでいくということを研修スケジュールとして、組み替えたところでございます。さらに、次の22ページから実際のレポートの形式を入れさせていただいておりますが、4月の現状分析から始まって、レポートを仕上げていくというプロセスの中で、大学側の教官の方々の協力も得ながら、実際のテーマによって付いていただく教官とのやりとりの中で、自分の取組等についてのサジェスチョンとかアドバイスをもらいながら改善していくという方法を、新たに導入したところでございます。

これらのことは、先ほど申しましたように、意識の途切れがない中で、主幹教諭としての業務遂行を、研修という枠組みを活用する中で目指したものでございます。さらに、大学教官や県の指導主事等とのラウンドテーブルにより、ほかの方との情報共有を図りながら意識転換をしていくというような点も期待するところでございます。

今後は、先ほどの実践報告にもありましたが、やはり校長が主幹教諭の役割を十分理解し、組織の中での位置付けを明確にすることによって、主幹教諭の働きというものがより効果的になるものだと考えておりますので、管理職に対し、今も働き掛けはしておりますが、さらに主幹教諭の重要性とか、きょうの成果のようなあたりについても繰り返し伝えながら、今以上にそういった働き掛けを重視していくことをさらに進めてまいりたいと考えております。

以上でございます。よろしくお願いいたします。

【小川主査】  ありがとうございます。

それでは、今の2つの発表に対して質問や意見をお聞きしたいと思いますけれども、まず徳島県の教育委員会の方に補足していただきたいのですけれども、主幹教諭の配置方針について少し教えていただければと思います。埼玉県の場合には、原則として小学校は19学級以上、中学校は13学級以上で、原則教務主任の職務を担当するとか、幾つか配置方針があったのですけれども、徳島県の場合にはどういう配置方針であるのか、補足いただければと思います。

【藤田統括管理主事】  徳島県の場合、特に学級数等について、標準学級以上というような規定というのはございません。全市町村に配置するというような方針もなくて、本年度までのところで申しますと、本年度については全市町村数のちょうど半分です。半分の市町村に配置をしているところでございます。さらに教務主任との兼任ということも、それも結局、学校の実情に応じてということになっておりまして、教務主任等をしておる主幹教諭もいるというようなところであります。ですので、配置基準について明確な方針というものがあって、それを示しながらというような形はとっていないところが現状でございます。

以上です。

【小川主査】  ありがとうございました。

それでは、委員の方から御自由に、質問、御意見があればお出しいただければと思います。いかがでしょうか。

それでは、大久保委員、どうぞ。

【大久保委員】  お二人に同じような質問になります。先ほど,主幹教諭について主任との違いの説明がありましたが,これまで学校に主任が置いてあったときに比べると、主幹教諭という職を新たに置いたことによって何が違ったかということについて、もう少し丁寧に説明していただけないでしょうか。特に,顕著な違いについて、ポイントを置いて説明いただけたらと思います。

【小川主査】  では、お二人にということでよろしいでしょうか。今の質問は、法令上の主任と主幹の違いということではなくて、実際主幹を置いたことによって、主任だけとどのように学校運営、組織の編成等々で効果が違って出ているのかということを、もう少し実際的に教えてほしいというふうなことだと思います。では最初、岡田さんの方からよろしくお願いします。

【岡田管理主幹】  まず本人の意欲が違うということを真っ先に挙げたいと思うのですけれども、主任でいるよりは、主幹教諭の方が意欲が増すということがあるかと思います。それから、主幹教諭であれば、命じられた校務の一部については、調整役となり指示もできます。目指す方向に向けた指導性の強さというのが挙げられるかと思います。

主幹教諭配置校にどんな効果があったか聞いてみますと、教職員間の意思疎通がうまく図れ、校務が円滑に推進できるようになったとか、管理職からの指示が教職員によく伝わるようになったといいます。また、学力向上で伸びが見られた地域連携の点からは、学校支援ボランティアの数が増やせたとか、生徒指導上の問題行動が減ったとか、不登校の生徒が減った、保護者の苦情、相談の数が減った、等の声があります。

ただ、それが果たして主幹教諭を配置しただけの理由なのかどうかということについては、検証がなかなか難しいところでございます。

【小川主査】  藤田管理主事、お願いします。

【藤田統括管理主事】  実際1回目の研修で、私の方から職務についても、主幹教諭、指導教諭について話をさせていただいたのですけれども、その折には、様々な主任が学校には分掌としてあるわけなのですが、主幹教諭というのは、そのおのおのの主任を束ねる役割があると。もっと言えば、横断的、縦断的にというか、何かしら一つの分掌で処理できないような課題等が現在たくさん学校の中にはありますので、そういう横断的な課題に対応するためにも、校内における組織を編成する、臨機応変にスピード感を持ってやらなければいけないときにも、主任を束ねる役割があるということで話をさせていただいたところでございます。

主任とやはり違う位置にある、役割もあるということで、主任も含めて教諭と教頭との間を取り持つ部分ということで、本県では職務命令ということは実際には、主幹の方に話していませんけれども、指示、指導助言をするというような形で、主任に対しても、そういった権限、役割を果たしていってほしいということも伝えているところでございます。

以上でございます。

【小川主査】  では、青木委員、どうぞ。

【青木委員】  まず徳島県の藤田さんに、主幹教諭の持ちこま数の状況について教えていただきたいということと、それから、お二人に共通して伺いたいのは、教頭先生の持ち時数が主幹教諭配置校でどのように変化をしたのか、していないのかということについても併せてお尋ねしたいと思います。

【小川主査】  では、今度は逆に、藤田管理主事、岡田主幹という順番で、今の質問にお答えいただければと思います。

【藤田統括管理主事】  主幹教諭自体の持ちこま数でございますけれども、特に県内で共通して、これだけの時数をとか、あるいはこれだけの時数を減らしてとか、そういったようなことは実際のところ、伝えているところではございません。やはり、先ほど申しましたように、学校の規模や実情等もありまして、主幹教諭というものは当然、時数的には若干減らされたような形で校務に当たっているということはございますが、それが明確に、5時間ほど減らしてとか、そういったようなことは、県の方から指示はしておりません。ただ、今具体的な数字は申し上げられませんけれども、持ち時間については、他の教諭に比べて当然減じられていることが多いかとは思います。ただ、担任を持ちながらの主幹教諭というような配置もございますので、そういった場合には、なかなか総時間を減らすことができないような場合もございます。

また、教頭の持ち時数と主幹教諭の持ち時数であれば、やはり相対的に見ると、全体的には教頭の持ち時数の方がやはり少ないということがあります。ただ、これも具体的な数字というのは調べ上げておりません。

【岡田管理主幹】  私も具体的なデータを持ってきておりませんけれども、教頭が授業を持つということ自体が余り多くないのかなと、持ったとしても数時間で、主幹教諭が配置されたことによって教頭の持ち時数が変化するかどうかというのは、何とも申し上げられないところだと思います。

【小川主査】  青木委員、何か意見はありますか。

【青木委員】  質問の趣旨は、後の議論に入ってしまうのですけれども、主幹教諭が配置されることがマネジメントにとってプラスになるだろうという構図が御発表から浮かんできています。マネジメントを特に学校の中でこれまでやってきて、特に労働時間の観点でも一番長いのは教頭先生ですので、主幹教諭が配置されることで教頭先生の仕事が量的にどう変化したのかという問題意識を今持って、それでお尋ねしたわけです。後の議論で、質的にどうなのだろうかということはお話ししたいなと思っています。

【小川主査】  ほかにいかがでしょうか。

では、竹原委員、どうぞ。

【竹原委員】ありがとうございました。ミドルリーダーがとても大事で、そこにミドルリーダーがいると間に立って組織が動くという話を伺った中で、主幹教諭というのを一般の先生方はどう捉えているのか、その研修なり伝え方というのに工夫があるのかということをお聞きしたいと思います。そうでないと、突然、私が主幹ですといって動き出して、リーダーシップを発揮したときに、チームとして動くのかどうか、そこが心配なのでお二人にお聞きしたいと思います。

【小川主査】  教諭の受け止め方とか評価なんかはどうですかということですけれども。では、岡田主幹、そして藤田管理主事、お願いします。

【岡田管理主幹】  とても大事なところだと思います。先ほど申し上げましたけれども、同じ学校の中で教頭登載者でありながら、一方は主幹教諭、一方は教諭、そんな学校もございます。その中で主幹教諭として期待される職務を果たしてもらうためには、やはり本人の配慮といいますか心掛けに負うところは大きいと思います。登載者でありながら、教諭の方にも配慮、心配りをしながら、期待される主幹教諭としての働きもしてもらわなくてはならない。的確なお答えになりませんけれども、そういう意味でも主幹教諭としての職の理解を広げていくということは、必要なのかなと感じているところでございます。

【藤田統括管理主事】  教諭等に対する様々な研修の中で、主幹教諭や指導教諭についての計画は今まで特にありませんが、委員の御指摘があったように、主幹教諭は一体どんな仕事をするのかということは、主幹教諭自身も、最初任用されたときにははっきりしない面があったり、それにも増して、やはり教諭等、同じ組織の中の人たちも、不明確な部分、今までの教務主任さんと何か違うんだろうというような声も踏まえて、主幹が置かれた学校における周知は非常に重要なことであると考えています。本県の場合、小・中、義務においては、主幹教諭配置校の校長に対して、ヒアリング等の中で、必ず主幹教諭について、あるいは指導教諭について取り上げて、それを校内の中でもしっかりマネジメントの中に生かしていくようにということについて話をしていくことには取り組んでいるところでございます。ですので、研修自体の計画はございませんが、校長を通じての周知等は図り始めているところでございます。

以上です。

【小川主査】  ほかに。それでは、坪内委員、お願いします。

【坪内委員】  ありがとうございます。お話を伺って、この主幹教諭の方々がミドルポジションということで、すごく重要な役割を担っているという状況が分かったんですけれども、果たして現場の教員の方々からしたときに、この非常に重要な役割を担いたいと思うモチベーションというのがどのようになっているのかというところを知りたいと思いました。先ほど藤田様からお話があったように、例えば教員の方自身も主幹教諭になられたときには、まだそれがどういった役割か分かっていないでスタートするケースもある中で、まだ主幹教諭ではない方にこの役割を担ってもらうためには、主幹教諭になるとこういったことができるんだというわくわく感のようなものがあると、よりなりたいと思う教員の方が増えていくのではないかと思います。先般よりこの作業部会でも、現場の先生の負担の重さ、大きさ、残業時間の長さですとか、いろいろな課題が出ていると思うのですけれども、その通常業務で非常に大変な思いを既にされていらっしゃる教員の方々が、さらに追加的な負担になるかもしれないけれども、主幹教諭という役職を是非担いたいと思ってもらうためのモチベーションを持ってもらう仕掛けのようなもの、若しくはこういったことがモチベーションになり得るというようなポイントがありましたらお伺いできればと思いました。お願いいたします。

【小川主査】  ありがとうございました。それでは、藤田主事、そして岡田主幹の順番でお願いします。

【藤田統括管理主事】  今の3名の実践報告にもあったように、やはり主幹教諭が働き掛けをして、その組織自体が変わっていくというところの積み重ねが、まず重要になってくるのかなと考えております。やはり主幹教諭が働き掛けたことによって学校の組織自体が本当に大きな課題を解決したとか、一つずつ着実にステップアップしているという実感が持てるようなところから、そういうわくわく感というかモチベーションというのは次第に高まっていくという気がいたします。ただ、全ての教諭が主幹教諭になりたいと思うわけでは当然ないのが学校組織でありまして、逆に言えば、フォロワーシップというか、実際こういうリーダーに付いていって、協力をしながら物事をやり遂げていくという、受けの立場の方も、当然そういう役を望まれる方も組織の中にはいるということであります。やはりリーダーを目指すという、行く先には教頭とか校長になって組織を動かしていきたい、子供のために運営をしていきたいと、そういうところのワンステップ目が主幹教諭等の段階になるのかなということでありますので、そういう組織、学校自体がよくなれば、そういうことを考える教諭が一人でも増えてくるということ、それがやはり一番近道というか、大切なことではないかと考えております。

以上です。

【岡田管理主幹】  一般教職員に対してアドバイスしたりフォローする姿は、恐らく兄貴分、姉貴分という存在なのかなと思います。それで、そういった姿に憧れるというのはひょっとしたらあるかもしれませんけれども、主幹教諭は教頭候補者なものですから、一般教職員が憧れるというのはやはり管理職を目指していこうという、その志向に乗っかったときに、それが憧れとなり、あんなふうになりたいなという希望になってくるのかなと思います。管理職として学校の父になり母になりたいと、そちらの希望を育てていくということが、その一つの過程として主幹教諭に私もなりたいというルート設定になっているのかなと思います。

【小川主査】  ありがとうございました。では、小栁委員、そして加藤委員の順でお願いします。

【小栁委員】  発表ありがとうございました。学校という組織が民間とか市役所と全然違う中で、主幹教諭という制度化がされて、大変学校風土が変わったと思います。市役所だと、係長試験を受けると次の年から係長になります。教えるプロであった教員がリーダーになる、管理職になる、すぐ次の年というのは難しいですよね。ですから埼玉県では2年間ぐらいたって、3年目から教頭任用という、そういう単層構造というか、なべぶた組織の中で主幹が導入されて、その間、登載者が主幹教諭に任命されて、リーダーになるための実践的な研修的な意味合いがかなりあって、そこでやがて管理職になるための非常にいい制度だなと感じております。先ほどスピード感があるとか、パイプ役が非常に機能する、同輩中の首席、兄貴分という意味合いが主幹教諭で、教頭や校長と違い、非常に潤滑油として機能しているんだろうと感じております。

そこでお聞きしたいのですけれども、全部の学校に配置することは、財政的にいうと難しいのですけれども、具体的に、単学級の学校の校長などから、やはり主幹をどうしても配置してほしいというような声はあるのかどうか。あるいは、単学級クラスならば、小学校だと一人親方の校長さんが全部仕切って、回りますので、そういう点は必要ないというのかどうか。組織的、機動的な学校運営というならば、どこの学校にも必要なのかどうか、その辺を教えてほしいと思います。

【小川主査】  では、岡田主幹、そして藤田主事、お願いします。

【岡田管理主幹】  どの学校にも課題はあると認識をしております。埼玉県では一定の学級以上の学校に原則として配置していくということでやってきておりまして、それを下回る学校に配置する場合もあります。それについては、こういう課題解決が必要なのだということを、明確に示していただいております。単学級の学校、この学校についてもやはり課題はあると思います。ただ、財政との関係上、大規模校にまずは配置させていただきたいというお願いの仕方をしてきています。ですから将来的に目指すのは全校配置なのですが、その一つの過程として大きな学校への配置を完成させたい、その延長線上に全ての学校に主幹教諭を、そんな流れで持っていきたいと考えているところです。

【藤田統括管理主事】  徳島県の場合は、先ほども申しましたように、教頭任用に向けたものが、まず主幹教諭からというような形になっておりまして、特に単学級だから配置をしないとか、そういう方針を示しているわけでもございませんので、単学級でも主幹教諭が配置されることはあるかと思います。逆に単学級である学校の管理職、校長が主幹教諭を希望するかということについてでございますが、これもやはり20年度から、今年で7年目に入ってきておりまして、主幹教諭あるいは指導教諭等の職についての理解も進んできておりますので、そういう中でやはり主幹教諭と他の主任との違いも、徐々にではありますが、知っていただいていると理解しております。そういう意味で、配置を希望するような校長先生も出てきているのではないかと理解しております。

以上です。

【小川主査】  では、加藤委員、どうぞ。

【加藤委員】  2つほど質問させていただきたいのですが、1つ目の質問は埼玉県の岡田先生に、2つ目の質問は両方の県にお聞きしたいのですけれども、1つ目の質問なのですが、教頭候補者名簿登載の私の考え方が間違えていたら直していただきたいのですけれども、例えば2年間登載されていた場合、一方の人はその2年間主幹だと、一方の人は教諭だと、同じ2年間名簿登載で、主幹と教諭で、3年目、同時に教頭になるとか、こういうのは当たり前のことなのかということです。あるいは、ある人は先に名簿登載されたと、2年、3年主幹で、1年後に登載されて教諭だけど2年間で教頭になれるとか、追い越してしまうというような感じのことがあるのか、ないのかということと、その場合は本人の業績というか、能力以上に、学校に配置しなくてはいけないとか市町村に配置しなくてはいけないとか、そういう配置の妙というか、そういうもので影響がそういうところに出てきてしまうのかといったところを埼玉県の方にお聞きしたいということが1つ目です。

2つ目、両方の県にお聞きしたいのは、きょうは数字とかの話が多分出てきていないと思うのですが、女性の登用の数に関する影響で、要するに主幹になってもらう、あるいは教頭候補者名簿の登載というところで、女性のパーセンテージに対する目標設定とか、そういう考え方を持っておられるのか。もし今、主幹の方で何%女性みたいなのがあれば、教えていただければ幸いなのですけれども、要するに、私の考えるところだと、ここで女性が限られてしまえば、当然教頭にも限られてしまうし、さらに校長にも限られていくと。こういう制度を入れていった場合に女性を増やしていくことができるのか、減らすとなってしまうのかといったところにどういう影響があるのかというようなところの関心で質問させていただきました。

以上です。

【小川主査】  では、最初に岡田主幹、その後、藤田主事、お願いします。

【岡田管理主幹】  教頭登載者の中から実際に教頭になっていくのは、原則的には登載の古い順です。その登載のうちに教諭であるか主幹教諭であるかというのは、原則的にそんなに問題にされないことだと思います。中には行政の方へ行ってしまう方もいらっしゃいますし、複雑な、いろいろなルートができてきてしまうということです。行政へ行ったがために、さらに教頭になるのが何年か先になってしまうということもあり得ますし、一概に主幹教諭になったから、ならないから、その後教頭になるのが影響を受けるとかということはないと思います。

女性についてですけれども、確かに女性の管理職登用というのは大きな課題ですし、それに関わって主幹教諭の女性への発令というのも関わりがあると思うのですけれども、具体的な目標というものは特に設定はございません。特に中学校なんかを見ていますと男性の主幹教諭が多いですね、女性の方はかなり少なめな感じを持っております。

【小川主査】  今、数字的には分からないということですね。

【岡田管理主幹】  それは、きょうは持ってきてございませんので。

【小川主査】  後で、文科省の方で調べてみてください。では、藤田主事、お願いします。

【藤田統括管理主事】  女性の任用率について、本県は、本年度につきましては、小・中に関しましては男性の主幹教諭ということ。高校の方につきましては女性も配置しておりますが、これは教頭の任用の傾向も、またここしばらく女性の任用希望者というのが減っておるような状況がありまして、本県も具体的に数値目標を出しておるわけではございませんが、女性管理職につきましては常に意識をしながら取り組んでいるところでございます。非常に率としては低いのが現状でございます。

以上です。

【小川主査】  ほかにもあると思いますが、予定よりも時間をオーバーしていますので、お二人の意見発表に対する質疑応答、意見交換は、これで終わりたいと思います。

続けて、後半ということで浜田先生に発表をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【浜田教授】  それでは、「意見発表」ということでお話をさせていただきます。資料は3-1と3-2と3-3とまとめていただきました。レジュメが3-1です。

レジュメについて全て話していくととても時間が長くなるので、飛ばしながら行きますが、まず1番のところです。「チームとしての学校」という表現は、非常に優しくて、曖昧で、取っ付きやすい表現ですけれども、考えてみると、そこに含まれる課題が非常に複雑で大きいと思います。先ほどの御議論にあったとおりではないかと思っております。

(2)ですが、学校スタッフの多様化ということについては、この部会での一番大きな課題だろうと思うのですけれども、実態から見ますと、例えばスクールカウンセラーにしろソーシャルワーカーにしろ、それからその他の様々な人員配置にしろ、現実としてかなり全国的にも進められてきたところかと思います。ただし、その中で、結局学校という場で管理すべき内容は増えてしまって、特に教頭先生の業務内容というのは大変幅広くなり、量も増え、先ほども青木委員からお話がありましたように、非常に管理的な業務が大きくなった。特に、ここには書きませんでしたけれども、要するにパートタイマーのスタッフをパッチワーク的につなぎ合わせるような形の学校の組織に向かっていると思います。OECDのTALIS調査の取り上げられ方もそうだったと思いますけれども、果たしてそういう形でいい学校ができるんだろうかということと、「だから学校はチームとして機能しなければいけない」というのはそのとおりなんだけれども、それをチームとして本当に機能させるには、かなり難しいことが学校の中に要求されているように思います。

(3)には外部との関係ということを書きましたけれども、外部との関係もいろいろと別の文脈で必要になってきているわけですが、大きな2番のところに参ります。(2)で、新たに生じつつある課題ということを幾つか挙げました。今申し上げましたように、勤務管理が非常に複雑になっていると思います。フレックスタイムも一部導入されていたりして、正規の採用をされている教員も学級担任をきちんと持てないような状況で動いていかなければいけない。そのような中で、勤務時間とか雇用形態とかが異なる人たちで学校を動かしていくということが必要になっているということにはしっかりと目を向けておかないといけないだろうと思います。それから、例えば情報の共有や校内での研修というのはとても重要で、それこそが大事だと言われるんですけれども、今申し上げたような勤務態様の中で情報を本当に共有するということは、かなり工夫の要ることであります。それから研修も、共同で、同じ時間にみんなで研修しようと考えても、これがなかなか難しいということが実は学校の中では進行しているのではないかと私は思っております。きちんとした調査をしておりませんが、私の経験上、そのように受け止めております。これは実際、学校現場の先生方にも御意見を頂きたいところです。特にやはり、先ほどのお話にも出てきたように、校長、教頭のマネジメントの力量というか、そういう機能がとても重要になっているなということです。

それと、この部会でのこれまでの御議論の資料を少しだけ拝見させていただきましたが、こうやって「専門家」と言われるほかのスタッフが入ってきたときに、教員に対しては、「専門家が入ってきたのだから、あなた方もちゃんと支援を受けて、助言を受けて、そういったアドバイスを受けて働きなさい」ということを言っているわけではないと思うんですけれども、そういう雰囲気ができている。これは、先ほど「わくわく感」というお話が出ましたけれども、学校の先生方にとって実は大変難しいといいますか、遠慮しなければいけないような部分が出てきたりして、現実として学校の先生方の「わくわく感」をそいでしまうような要素がありはしないかと私は思っております。

実際そういう多様な人たちが入ってきた上で学校をチームとして機能させるときに、果たして学校組織をリードするのは一体誰なのだということですけれども、私はやはり、結論的に言うと、教育の「専門職」として、「プロフェッショナル」としての教員がしっかりリードしていくというような雰囲気を作っていかないと、学校は動いていかないのではないかなと危惧しております。これも文字にはしておりませんが、先日、大学院のゼミの時間に議論したときに、ある養護教諭の経験を持つ院生が、こういう言い方をしておりました。地域の実情に左右されないで教育力を発揮できるような専門家集団として学校がしっかりしないといけないのではないかと。そういうプライドといいますか、そういう力を学校が発揮するのだというような気持ちを学校の中に作っていくということを前提として、様々な教員以外の「スペシャリスト」というか、「専門家」や、外部の方々を一つ、チームとしてまとめていくというような、そういう発想が私は欠かせないと思っております。しかし現実、学校の先生方はどうも、あるいはそれを取り巻く社会の論調というのが、そういうこととは違う方向を向いている部分があるような気がしてなりません。これが2番目の実態という部分です。

そして3番目のところ、きょうのメインのところですけれども、先ほどの御議論を聞きながら、一つ、自分でもよく分からなくなったのは、主幹教諭はミドルの中に入るのか入らないのかということです。少し食い違うような御意見の場面があったような気がして、私としてもよく分からないのですけれども、最終的には学校の実情によって考え方が異なるということになるのかもしれませんが、いずれにしてもミドルのリーダーシップというものが、このところ研究者の議論の中では注目されてきておりますが、果たして学校の現実の中でそのミドルに当たる者がどういう人たち、どういう層に相当するのかということについては、必ずしも明確ではない部分がありそうな気がいたします。

きょうの資料3-2は、私が書いた文章で、32ページ、33ページ、34ページというところのあたりに、学校組織の固有性といいますか特徴というものを踏まえて、その中で学校がうまく機能するということはどういう動きなのだろうかということについて書いた部分がございます。

私は学校組織を「クモの巣」型で捉えると、よりリアリティーのある学校の捉え方になるのではないかと、いろいろなところで書いたり言ったりしています。私以外の人はほとんどそういうことを言っていないのですが、こういう捉え方をしたときに、先ほど来出てきている学校の中の様々な方々同士の関係性の協働作りというか、コミュニケーションというもののありようというものが、より分かりやすいのではないかと私は思っているところです。例えば主幹教諭について、確かに学校教育法に基づく職務の規定がありますけれども、私は、学校の中の実態からしますと、例えば「なべぶた」型で、管理職の意思がなかなか通りにくいので、それを、円滑な情報伝達ができるような機能を果たすということは、確かにかなり大きな学校ではとても重要なことだと思っております。しかし、余り大きくない学校の場合、本当にそれが本筋のところにあるのかというのは疑問に思っております。むしろ管理職と一般教職員というよりは、教職員同士の間の多様なコミュニケーションを促進していくような位置に、先ほどの徳島県の方の資料でしたでしょうか、いろいろな主幹教諭の先生方の実践報告にございましたけれども、そういうものが実はとても大きなウエートを占めているのではないかなと思いますし、それをやりやすくするために主幹教諭という制度を用いるというようなことになっているのではないかなと、そんな気がしております。

縦の関係を学校組織の中に作るということが全ての学校にとって有効に機能するというような考え方を余り振りかざさない方が、むしろ一般の先生方にとっての主幹教諭の受け入れ方もスムーズにいくだろうし、主幹教諭になられる先生方御自身も、その職務に対する意欲を高めやすいのではないかなという気がしております。

それから、(2)のところですけれども、これが先ほどの議論で、随所に出てきました。主幹教諭という制度は多面性を持っていて、やってみると結構扱いづらい部分がありはしないかということです。もちろんいい部分もあるし、悪い部分もあるというのは、何事にもそうですけれども、主幹教諭の有効性を議論する際には、「ある条件の下で」というようなことを考えていく必要があるのかなと思っております。例えば埼玉県と徳島県といいますと、明らかに人口規模も違いますし、学校の数も違いますし、教職員の数も違いますし、学校の規模も、先ほどのお話に出てきたように、かなり違いがあるということになって、そういう中で、では主幹教諭という制度をどんな形で入れると、どんないいことがあるのかという話なのではないかと思っております。

さっき、難しい、扱いづらいところとして私が受け止めた部分は、この(2)の黒丸の2つ目の部分です。「管理職候補者のストックとステップ」と書いたのですが、結局学校の数が少ない自治体であれば、管理職候補者のストックというのも余り大きくはとれないということになって、主幹教諭という職が、「職」であるために主任とは異なって、動かしようのない数になってしまう。そうすると、どこにしわ寄せがいくかといいますと、やはり人事異動が非常に窮屈になっていくということだろうと思います。人事異動が窮屈になるということに、やはりそれぞれの自治体や学校、特に人事担当の教育委員会の方々は頭を悩ませるということもありますし、管理職になろうとしている人材の方々としても、ちょっと何か複雑な要因が一つ絡んできたぞというような現実にあるのではないかなと思います。これはいたし方のないことだということかもしれませんけれども、ですから余り、「東京都や神奈川県や大阪や埼玉である程度うまくいっているから、ほかの県でもこういういいことがあるよ」という議論をするべきではないだろうと思っております。

(3)ですけれども、全国的に学校の小規模化が進行していて、私の住んでいる茨城県においても、現職の先生が大学院へ来て、どんなことをやりたいかというときに、とにかく学校の小規模化が進んで、単学級の学校が非常に多いと、近隣の市内の学校みんなそうだと。つくば市ではございませんけれども、そうすると、その中で学校をうまく動かしていくというのはとても難しい。つまり人的なリソースが非常に限られていて、年齢にも偏りがあると、そんなことが実は全国的に進んでいるわけです。そのことももう百も承知でここでの御議論がなされていると思うのですけれども、そういう中で次代の管理職、すぐれた管理職を育成するということが、やはりとても難しい状況にあるということです。それと連動して、今申し上げた主幹教諭制度ということで管理職候補者のストックという部分が固定されていることによって、学校間の異動というものが難しくなったりすると、やはり教育委員会としても、とても頭を悩ませることが出てきているように思います。この辺も十分に、私も詳しいデータを持ち合わせておりませんけれども、議論しなければいけないのではないかなと思っております。

一番気が重いのは4番で、(1)については、ミドルが重要で、校長のリーダーシップが重要だということを盛んに、誰もが口にするわけですけれども、最初のところでデータの御紹介がありましたが、実は校長、教頭の登用年齢が上がっていて、若手を採用するというふうに教育改革国民会議がその昔言っていたようなことは全く進められていないような状況です。では校長、教頭についてどんな施策が行われてきたかと考えますと、この15年間ぐらいの間、「資格要件の緩和」と「組織マネジメントの研修」ということに尽きるのではないかということです。

「資格要件を緩和したら質が上がる」というようなことは誰も言えないと思いますし、むしろ質を根底から高めるための策が何もなされていないということに等しいというふうに思います。組織マネジメントの研修ももう10年ぐらい、全国で行われてきました。効果はある程度あったと私も思いますけれども、これが果たして本当にスクールリーダーに求められる本質的な力量の部分をどう追求してきたんだろうかと、自戒を込めて言うんですけれども、なかなかここは難しいところだなと思います。

私は、やはり「教育の専門性」というものを重視した学校の中のリーダーシップという考え方をもっと主張していかなければいけないのかなと最近思っているところです。たとえどなたの支持もないとしてもです。それは資料3-2のところで、31ページのあたりに、私の過去の研究で、アメリカの校長の役割がどう変遷してきたかということの研究を基に、かいつまんで整理した部分がございます。日本では「民間の発想でマネジメントをしていかないと学校の自律性はできない」というふうに盛んに言われてきましたけれども、でも、それだけで本当に学校の自律性が成り立つかというと、非常に疑問符が出てくるわけです。アメリカの経験を見てみても、やはり「教育の専門組織としての学校」の質というものが「教育実践」の質だというふうに考えられるとしたら、そこに焦点付けたリーダーシップの在り方を追求しなければいけないのではないかなと思います。ミドルと呼ばれる層の方々にそんな力を、ある程度の長期にわたって育成していくような考え方をしていかなければいけないのではないかなというのが(2)の方に書かれております。

(2)のところですけれども、資料3-3の拙稿の中で、これは決して新しい議論ではないのですが、1970年代の非常に素朴な、シンプルな考え方ですけれども、36ページのちょうど中ほどのところに、カッツという人の、組織の経営管理者に必要とされる能力というものを3つのスキルで構成して捉えた枠組みを紹介しております。特にこの中で経営管理者にとって重要なのは「コンセプチュアル・スキル」だというふうに言われております。実際やはり、これは学校に限らずですけれども、コンセプチュアルな内容というものがとても大きいのではないかなと。先ほどの主幹教諭がどんな力を身に付けていくかというときに、視野を広げて、自分の目の前のことをただ遂行するということではなくて、学校全体の今後の方向性をどうすべきかというようなことを自分の頭で考えていけるというようなことだと思うんですけれども、そうやって少し学校のリーダーの育成というものを、長期間のスパンで、教諭の時代から主幹教諭、そして教頭、副校長、そして校長という、在職期間全体を通じた職能の向上というもののデザインを、それぞれの都道府県でもっと明確に描いていく努力をしていかなければいけないのではないかなと思います。そういうことを、「教育の専門性」というものを軸にしてやっていくことがないと、恐らく主幹教諭に対して教諭が「わくわく感」を持つとか、主幹教諭が教頭や校長に「わくわく感」を持つとか、そういったようなことができないのではないかという気がしております。

最後の黒丸は、先ほど話題になった女性管理職の比率、これはとても重要な問題だと思います。書かなかったのですが、小学校で大体教員で男女比が4:6でしょうか、中学校だと6:4ですね。ところが校長は10%に満たない女性比率だと、この現実をどう捉えるかということです。単に「女性が多くなるべきだ」という話ではなくて、管理職になっていくプロセスの中で、一般教員には女性の割合がこれほど多いにもかかわらず、管理職になっていくプロセスに乗れないという学校の中の職務の現実があるということだと思うんですね。とても優秀な女性の教員なのに管理職にはなっていけない、途中で脱落してしまうという、非常に語弊のある言い方ですけれども、そういう現実があるということをもっと議論していかなければいけない。実は学校という組織がチームとしてうまく機能するということは、学校の中の教員の働き方の部分が、男性であっても女性であっても力のある人たちがリーダーになって引っ張っていけるような職場になるということではないかなと思うんです。

非常に抽象的な話で、具体策にはほど遠いのですけれども、意見ということで以上申し上げました。

【小川主査】  ありがとうございました。

残り10分ほどしかないのですが、残りの時間、目いっぱい使いたいと思います。今非常に刺激的な浜田さんからのお話がありました。御質問、御意見、自由にお願いします。

では、田村委員からどうぞ。

【田村委員】  質問というか、感想のような形になるかもしれません。本当に根本的な御議論をしていただいたと思っております。今のお話をお聞きしまして強く感じましたのは、主幹の制度にしろ校長のリーダーシップにしろ、いつも議論に上がってきます。それから、これまでこの部会で議論された多様な専門職の導入といったことにしろ、いずれにせよ魔法のつえのようなものはないのだろうというふうに感じております。

きょうの浜田先生のお話の中で非常に印象的であるというか、浜田先生のお話から考えたことは、日本の教員がゼネラリストであるよさというのがやはりあり、様々な場面で、学習指導だけではなく生徒指導、あるいは家庭環境のことについても関わってきた、そういった丸ごと子供の成長に関わってこられた日本の教員の専門性であるとか喜びであるとか、そういったところと、しかし職務を担い過ぎていて、そういう関わりが非常に難しくなってきているという現実、ここのところをどのような形で整合性を付けていくのかというところが本当にこれから議論のしどころかなというふうに思いました。

最後に一言だけ、先生がおっしゃいました教育の専門性を核にしたリーダーシップの必要性、私も、強く賛同するものでございます。

どうもありがとうございました。

【小川主査】  ありがとうございました。

私からも、これは小栁委員にもお尋ねしたいのですけれども、浜田先生のお話を聞いて、一つのポイントは、主幹教諭というのは管理職候補者としてのストックでありステップであるという仕組みを強固に作るということは、人口規模が大きい県と小さな県ではかなりその作用が違った形で出てくるのではないかと。大きい県は余裕があるから、そういう主幹教諭というふうなプールで将来の管理職候補者をストックし、ないしはステップとする。そして小栁委員が言うように、それは一種の管理職の研修期間として非常にいい意味を持つという話もされているのですが、もう一方では、確かに小さい県では主幹教諭の数が増えれば増えるほど、管理職登用ないしは人事異動についての制約条件をシステムとして作ることにもなるので、そのあたりは本当に微妙な問題をはらんでいるんだなということを改めて、今の浜田先生のお話を聞いて認識したんですけれども、その点についてはどう見られますか。小栁委員、あと埼玉県とか徳島あたりでは、そういうことはどう認識されていますか。何かあればお願いします。

【小栁委員】  主幹教諭を配置することによって人事異動の制約とか、そういうお話ですか。

【小川主査】  はい。

【小栁委員】  私の市では小・中学校29校ありまして、13人だか14人、今年1名プラスしてもらったのかな、主幹教諭がおります。人事異動の制約性というのは感じていませんね、29分の14でありますので、もっと欲しいというのが実情であります。いずれにしても、プレーイングマネジャーですよね、小・中学校の管理職というのは。とにかく実践に裏付けされた人が尊敬され、リーダーシップを発揮していくと、こういう現実があります。ただ、本当に教えるのが上手で、子供から慕われ、保護者から慕われても、管理職選考に受かって、教頭になってうまくいくとは限らない。それはもう教諭としての実践と、いわゆる教頭、管理職としてのこれは全く違いますから、先ほどの繰り返しですけれども、2年間ぐらいいろいろ研修させて、それで3年目に教頭として登用していく。こういう実態があるときに、主幹教諭というのが位置付けられ、そこで管理職なのか教諭なのか、特2級という、宙ぶらりんですけれども、そこでの勤務がまさに、繰り返しですけれども、同輩中の首席で、教諭からは非常に親しみがあり、管理職側からも大変手足となってやってくれる、その主幹としての実務が管理職としてソフトランディングするのに非常に効果的であるなというのは、見ていて感じるということです。

なお、女性教諭の絡みですけれども、埼玉県の場合は大体教頭が10%から12%、校長は9%ぐらいです。やはり女性にとっての魅力がどうなのかということですよね。埼玉県は残念ながら、教頭がオーバーに言えばセブン-イレブン、朝7時から夜11時ぐらいまで、これでは無理ですよね。実際分かりませんけれども。文科省が出している統計ですと、埼玉県は常にいつも38位ぐらいで、低いのですね。栃木とかは、小学校、とても多いですよね。そういう学校風土ができているというのですね、そんなに遅くまでやらないで。ですから、そこの問題です。今リーダーは教頭を経験して、自分が朝早く夜遅くまでの、オーバーな表現をすればセブン-イレブンだから、新しくなる人もそういう感覚で捉えてしまうともうだめなので、校長、教頭にいつも言っているのは、自分がやってきたからといって同じようにやってはだめですよと、そこの意識改革、変わらないとだめでしょうということです。

【小川主査】  ありがとうございました。

あと1人。では、青木委員で最後ということで、お願いします。

【青木委員】  きょうの議題を考えると、この作業部会の全体のテーマから位置付けると、何かの目的のために主幹教諭を考えようということで私は捉えるのですが、その際に先ほども申し上げたとおり、教頭が長時間学校の中にいて、校長先生は外回りなどする中で、学校の中のマネジメントの最前線にある教頭をどう支える仕組みを作るかというお題の中で主幹教諭をどう位置付けるかということだったと思います。

きょうの2つの県からの御発表を伺うと、やはり教頭のマネジメントに関わる業務の量の削減につながるというよりは、質の向上につながると捉えました。学校管理職の一般的な性質としてのプレーイングマネジャーというお話が小栁委員からありましたが、やはり教頭は現場仕事をするのではなく、マネジメント業務に集中することが求められるわけでして、その意味で、主幹教諭というのを手段として捉えた場合に効果があると思った次第です。

なお、これに関わって言えば、手段の一つですので、手段は複数あっていいわけですので、例えば事務職員を増やす、あるいは非常勤の事務補助的な職員でもいいから増やすという議論は、東京都の高校の業務縮減委員会に私はお手伝いで昨年度入りましたが、そのときの議論でもこれは出ています。いずれにしても教頭をどう支えていくかということを考えた場合に、以上のようなことが言えると思います。

以上です。

【小川主査】  ありがとうございました。

ほかにも意見があるかと思いますけれども、時間がもう来てしまいましたので、きょうはこれで終わらせていただきたいと思います。

お忙しい中、意見発表いただきました岡田主幹、藤田管理主事、そして浜田先生、きょうはありがとうございました。

それでは、次回の予定について、事務局からお願いします。

【福島補佐】  次回は5月19日の15時からを予定しております。追って案内を送付させていただきます。

【小川主査】  そのようになっていますので、よろしくお願いいたします。

きょう予定していた議事は全部終了しましたので、これで閉会します。ありがとうございました。

 

── 了 ──

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