チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会(第7回) 議事録

1.日時

平成27年4月21日(火曜日) 10時~12時

2.場所

中央合同庁舎第4号館 12階1208会議室

3.議題

  1. 管理職のマネジメント

4.議事録

中央教育審議会初等中等教育分科会

チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会(第7回)

平成27年4月21日

 

 

【小川主査】  おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから、チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会の第7回を開催したいと思います。本日も大変お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。

本作業部会では、これまで、第2回が教員の勤務実態、そして第3回から前回、第6回までは、事務職員とかスクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラーなどの支援スタッフ、専門スタッフの在り方について、ヒアリングを実施してきました。きょうは、それらを踏まえまして、学校や管理職に求められるマネジメントの在り方、また管理職の資質、能力の問題について議論していきたいと思います。

きょうも、有識者4名の方々に意見発表いただいた後、意見交換を行っていきたいと思います。きょう意見発表いただく方々を最初に紹介しておきたいと思います。

最初に、千葉県習志野市立谷津小学校の校長である米満裕様です。よろしくお願いします。

【米満校長】  よろしくお願いします。

【小川主査】  次に、兵庫教育大学教職大学院教授、浅野良一先生です。

【浅野教授】  浅野です。よろしくお願いします。

【小川主査】  よろしくお願いいたします。

次に、鳴門教育大学教職大学院教授、久我直人先生です。

【久我教授】  よろしくお願いいたします。

【小川主査】  最後に、高知県教育委員会人権教育課課長補佐の飯田泰明様です。

【飯田課長補佐】  飯田です。よろしくお願いします。

【小川主査】  よろしくお願いします。

それでは、きょうの配付資料について、事務局から説明をお願いいたします。

【福島補佐】  本日の配付資料につきましては、議事次第にあるとおりでございますが、資料1から資料3-3まで、それぞれ本日御発表いただきます米満校長、浅野先生、久我先生、それから飯田先生から御提供いただいた資料でございます。それから、参考資料といたしまして、学校管理職の現状について、事務局で作った資料をお配りしております。学校管理職の登用状況、それから、国立教育政策研究所でおまとめいただいた、教育委員会における学校管理職の育成・確保の状況、学校管理職の勤務実態、それから学校管理職に関する答申等を載せてございますので、御参照いただければと思います。

万が一、不足等ございましたら、お申し付けください。

【小川主査】  きょうも報道関係者から傍聴の希望があり、これを許可しておりますので、御承知おきください。

それでは、きょうの議事に入っていきたいと思います。

きょうは、4名の方の意見発表ということもありますし、少しテーマも違いますので、前半、後半に分けて進めていきたいと思います。前半は、米満校長から、チームとしての学校の在り方や管理職に求められるマネジメントについて意見発表いただき、質疑応答、意見交換を行います。その後、後半として、兵庫教育大学、鳴門教育大学、そして高知県教育委員会から、管理職養成に関する大学や教育委員会の取組などについて意見発表いただいた後、意見交換を行っていきたいと思います。最後に、時間の余裕があるようでしたら、全体を通して意見交換ができればと思っています。よろしくお願いいたします。

それでは、まず、米満校長の方から意見発表いただきたいと思います。時間は15分から20分程度で収めていただければ助かります。よろしくお願いいたします。

【米満校長】  皆さん、おはようございます。

まず、学校現場の声を聞いていただけることに関して、心より感謝申し上げます。私も校長を6年やっておりますけれども、その前は文部科学省へお邪魔したり、全国公立学校教頭会で会長をさせていただいたりしておりましたが、是非、きょうはいろいろな部分で教育現場の生の声をお伝えしたいと思っております。現場ですので、実践を通した具体的な話になると思いますけれども、御理解いただきたいと思います。

うちの学校は、児童数1,000人の大規模校でございます。職員が、臨時を含めて51名おります。まず、学校が組織全体の総合力を高め、発揮していくための学校運営の在り方についてということで柱立てがありましたので、そこからお話しさせていただきたいと思います。やはり今、学校の管理職に求められているのは、誇りと責任だと思います。管理職としての誇りがだんだん薄くなってきているのではないかと思います。1つ例を挙げますと、管理職の登用試験の倍率等にはっきりと表れていると思います。幸い千葉県はまだ高うございますが、全国いろいろ聞きますと、管理職への希望が非常に少ないという声も聞いております。

そうしますと、管理職の質は、だんだん落ちてきているのが現状ではないでしょうか。管理職の質が落ちるということは、将来的には学校の教員全体の質が落ちることにつながってくると思います。私は教頭時代、夜9時半ぐらいに職員室で、若い職員と将来について2人で話したときに、「おまえも管理職はどうだ」と言ったら、「いや、私は先生を見ていたら、絶対になりたくありません」と言われまして、すごくショックを受けて、それから管理職というのはどうあればいいんだろうということをずっと考え続けております。

そう言った教員も、やっと今年、教頭試験を自分から受けてくれまして、「ああ、いい見本になったのだな」と思ってはいるのですけれども、やはり管理職の魅力が全体的に薄れてきているということは紛れもない事実なのですね。これは、それなりの処遇という問題もありますし、学校現場が抱えている様々なものに対応している姿を見て、教員が感じていることではないかと思っております。

ただ、その中で、輝ける管理職、これからの教育界に必要な管理職というのはどういうものかと考えたとき、やはりまず、しっかりとした自分なりの教育ビジョンを持っていない人間は、なってはだめなのです。それが校長1人だと、絶対にできない。教頭や副校長と一緒に共有しないと、学校現場は回っていきません。実際に、今忙しくて会議をする時間がない、だからなかなか共通理解ができないという声が聞こえますけれども、時間が多くても、それはできないですよ。できないものはできない。やはり校長、教頭がしっかりと「こういうふうな学校にしていく」「こういうふうに職員、子供を育てる」という理念を共有していれば、実践の中できちんと指導していけるわけですね。ですから、やはり校長、また教頭が共有する教育ビジョン、学校経営の在り方をしっかりと共有できる、その大切さが実感できる研修等も考えていただければと思っております。

例えば、教頭と校長が一緒に研修をして、マネジメントについて考えていく、同じ学校の校長、教頭、2人が出てくる。そして同じ場で同じ研修を受けて、意見を自分たちで話し合って、それをまたプレゼンするとか、そういう部分がこれからは絶対必要ではないかと思います。なぜそれが必要かというと、今の学校はいろいろな教育課題、様々な問題等を抱えており、ある意味で防戦一方でございます。打って出るというよりも、降りかかってくる火の粉を払っているという状況で、なかなか自分たちの創造力のある学校経営というところまでは進んでいかないのですね。そのためには、様々な教育課題に対して、理解はしますけれども、それをどう実践に結び付けていくか。こういうことがあった、やらなければいけない、すぐ研修をやればいい、では研修をやった報告書を出そう。それで終わりではないのです、学校現場ですから、どのような実践にこれを結び付けて子供たちに伝えていくかという部分は、やはり教育理念の共有なくしてはなかなかできないと考えております。

それから、今教育現場はワイングラス現象で、上がどんどん辞めております。そして真ん中が細くて、下がまた膨らんでいるという状況が、どこの学校、どこの現場でも起きていると思います。それを考えますと、やはり若い管理職の長期的な育成は是非進めていかなければいけない。管理職の条件として幾つかあるのですけれども、これを全部身に付けさせて育てていくというのはなかなか難しい。そうすると、その中の一つは、民間なり行政なり、様々な経験をさせて管理職に育てていく。どうしても経験が人を育てますので、学校現場の中だけではなくて、行政での経験、それから民間社会での経験、海外での経験とか、そういうきちんとした経験を積ませて管理職にしていくシステムをきちんと制度として構築していくことが必要です。と同時に、学校現場にはやはりたたき上げも必要なのですね。現場でずっと子供とともに歩いて、そして日々の教育、授業実践をしっかりとやってきた人間、これもやはり管理職として学校現場では貴重だと思います。だから、この二層でこれからの管理職をしっかりと育てていく。

また、それを選ばせてもいいと思うのですね。「おまえはどっちに行くのだ」と。どちらも管理職にはなる、ただし歩む道は違う、そういうシステムがあってもいいのではないかなと思います。様々な経験を持つ人と、現場で鍛え上げられた人材、この2つがこれから必要になってくるのではないかなと考えております。

そして、あとは管理職の、技術というよりも能力の方なのですけれども、教育界ではVSOPとよく言われます。20代はバイタリティー、30代はスペシャル、40代がオリジナリティー、50代がパーソナリティー、これをしっかりと身に付けていかなければならず、管理職はやはり50代でも40代でも、バイタリティーから全てなければだめなのですよ。ですから、教育に掛ける情熱から始まって、自分を磨いていく努力を続けさせる。管理職が一番学ばなければ、絶対にだめです。

あと、今学校現場で管理職に求められているのは、やはり問題解決能力だと思います。様々な事態、予想が付かないようなことがたくさん起きます。その中できちんと課題を把握して、解決策を考えて対応し、処理していく、そのような問題解決能力というのは絶対に必要不可欠ではないかなと思います。

それから、あとは学校全体のことですけれども、やはり授業を大切にできる。授業だと思います。道徳とか外国語活動、いろいろな課題等が入ってきていますけれども、研修を幾ら受けても、それを具現化して子供に伝えていくのは授業なのですね。その授業の在り方、授業力、これが今だんだん落ちてきています。これは、さっきのワイングラス現象もそうなのですけれども、大切なのはやはり日本独自の授業研究です。同僚として学び合って、見合って、そして評価し合っていくという授業研究、日本独自のこの学びの在り方が、だんだん薄くなってきている。50代の、今辞めていく人たちは、それを厚くやっていた時代なのですね。やはり授業を通して私たちは子供たちにいろいろなことを伝えておりますので、授業をもっときちんと、学校全体でしっかりと取り上げていかなければいけない。授業技術、これは喫緊の課題だと思っております。

それと同時に、やはり、研修だけでは授業技術は向上しません。現場の中でやってみせて、そしてやらせてみてと、これがないとなかなか技術は高まっていきませんので、授業研究をきちんと義務付けるとか、年に何回は講師を呼んでしっかりと行う、やはりこういうようなことを徹底してやっていく必要があるのではないかと考えております。

それから、教職員と事務職員の役割の連携ですけれども、ここでのキーワードは教頭だと思います。教頭は学校の要といいますけれども、何が要といいますと、やはりうまく動かしていくということなのですね。事務職員と教頭の仕事の間というのは、非常にどっちがやってもいいグレーゾーンがあります。教頭の事務量の負担軽減は大きな課題です。でも、事務職員の協力を得ることによって、それが回るようになるのですね。そうすると、学校の要と言われている教頭の本来の業務、教員に役割を与えて、それを関連付けて回していく、そしてそれを評価していく、それを教頭は繰り返していくことができます。学校の専門性を回していけるわけですね。役割を持たせて、行動目的を持たせて、そして意欲を持つことによって仕事をし、そしてまた教頭や校長がそれを評価して、これを繰り返していくことによって、職員が自信を持って仕事ができるようになる。その中で充実感とか達成感とか、それから組織としての一体感が生まれるのですね。ですから教頭がいかに回していくか、これがやはり要だと思います。職員の専門性を生かすも殺すも、教頭の力というのは大きいのではないかなと考えております。校長はこれをしっかりと指導しなければいけない部分だと思います。

それから、教員の評価と処遇につきましては、やはり仕事にふさわしい処遇をお願いできればと考えております。大量採用の時代を迎えて、その採用者の希望数がどんどん減っております。これは大変言いにくいことですけれども、教員の質が徐々に落ちているのではないかと考えております。実際に小学生の子供たちの将来なりたい職業を聞いてみますと、先生が極端に少なくなっております。これは私たちも本当に考えなければいけないことだと思うのですけれども、今後、ボディーブローのように効いてきますので、質の確保というのは大きな課題になってくるのではないかなと考えております。

それから、管理職や主幹教諭、指導教諭、主任等の在り方についてですが、やはり主幹教諭という制度について、学校現場では非常に重く受け止めております。これは学校を大きく改革させる制度になるのではないかと考えておりますし、本校でも今年1人頂いて、今その活用をしっかりと考えているところでございますが、やはりまだまだそれが浸透していっていないというのが現状でございます。是非主幹教諭の在り方について、全国から実践報告等を集めて、もっと主幹教諭制度を浸透していく必要があるのではないかと思います。これは組織の総合力を高めるという点でも、連携の在り方についても、教員の処遇についても、せっかくできた新しい職である主幹教諭というのは、大きなキーワードになると考えております。現場は、どう使ったらいいのだろうか、どのようにすればいいのかというのを今模索中の部分だと思いますので、やはりしっかりとした指標を、具体的な実践事例とともにどこかで示してもらえれば、非常にいい、有効な制度になって、学校が変わるのではないかと考えております。

少しだけ、学校と地域の連携の在り方について、地域が学校に求めているものと、学校が地域に求めるものは全然違います。そして今、若年層が非常に増えております。彼らは、そこの教員でなければ、地域に入ればただの若造なんですね。それが教員として、地域で大切にされている。学校現場はそれをしっかりと自覚しなければいけないと思います。その中で、地域と学校の連携のために若い力は必要不可欠だと思います。

例を挙げると、祭りや何かに見回りに行くのではなくて、一緒に入る、一緒に企画の段階から関わって、地域の祭りに入っていく、そういう実践を本校では行っております。そうすると、地域の学校に対する見方が変わります。ただ参加するのではなくて、一緒に運営していく、一緒にやっていく。これから学校防災等様々な部分で、地域との関わりは今まで以上に学校の教育にとって欠かせないものになっております。学校から地域へ飛び込んでいくというような学校経営が、これからは求められてきており、これも校長の資質であると思います。

時間になりました。ありがとうございました。以上です。

【小川主査】  ありがとうございました。

それでは、今の米満校長の意見発表について何か質問、御意見があれば、皆さんからどうぞお出しいただければと思います。いかがでしょうか。

では、米田委員。

【米田副主査】  先生、どうもありがとうございました。私は、今、校長先生のお話を聞いて、非常によく理解できたと思っております。私は高校籍でずっと歩んできましたけれども、最初に教諭としてある学校で12年余り勤め、それから35歳の前に教育センターに入りまして、それから本庁の高校教育課に入って、それから43歳で教頭に一回出していただいて、また本庁に戻って管理系の仕事をやり、その後学校に出て、海洋関係の専門高校の校長をやりました。それから定時制、通信制関係の高校の校長をやって、さらにまた本庁に戻って、英語教育を推進する班の班長をやって、それから課長をやって、また校長で2校、その間、全県の高体連の会長、高文連の会長をやらせてもらって、それから今の職におります。そういう意味で私は、ほとんどの人が経験できないような様々な経験を積んだ形で管理職になった方に入ると思っています。一方で、今、管理職等を配置する側にいて、やはり学校の現場をきちんとやって、様々な学校を経験し、子供たちの実態を熟知できる、そういうルートをたどった管理職は本当に必要だとも大変強く感じております。

そういう意味で、校長先生がおっしゃいました二つのタイプは、大体同じだという印象を持ちました。最終的に、1の最後でおっしゃいました、授業が学校にいると一番の柱になるということは、まさにそのとおりです。授業をさらによりよいものにするためにどうすればいいかということは、自分一人ではなかなかできません。それぞれの授業をどう向上させていくかということを、学校全体、チームとしてお互いに関わっていく、そういうことによって組織力を上げていくということ。これは恐らくかなり多くの学校でやられていることだと思うのですが、できれば全ての学校でこういうものをきちんとやるような形にしていかなければいけないと思います。

私は、バイタリティーから最後のパーソナリティーまで、VSOPは本当によく分かりまして、最終的にリーダーとしてはパーソナリティーが一つの大事なポイントになると思っています。ただ、時によっては、50歳、60歳になってもバイタリティーも必要だし、もちろんオリジナリティーも必要だし、専門分野での強さも必要だということで、いろいろな面で、若い頃からいろいろな経験をさせて、校内でも、あるいは学校以外でもいろいろな経験をさせて鍛えていくということは本当に重要だと思っています。そういう意味で、このような点を共有していければと思っております。

ありがとうございます。

【小川主査】  ありがとうございました。いかがでしょうか。

今の米田委員の御意見にも関わって、教えていただきたいことが幾つかあります。私も県の教員人事のいろいろなパターンを研究しているのですけれども、確かに県によって、将来の管理職の候補を教育委員会事務局、つまり教育行政の職に異動させるということをすごく大切にして、教育委員会に入って教育行政職の仕事をやって、また現場に入るというパターンで将来の管理職を養成するところもあれば、ある県では、そういう教育委員会事務局に入るルートを全くとらないで、学校現場だけ回って、将来教頭、校長になるというパターンもあります。私自身も管理職については、いろいろなパターンの養成の在り方があって、いろいろなタイプの管理職がいることは良いと思うのですが、この行政経験を組み入れて管理職になる管理職と、学校現場だけのたたき上げで管理職になる方は、管理職のパターンとして決定的に大きな違いがあって、それぞれの管理職に対してどういう役割を期待してそういう育成をしているのかということについて、もう少し説明いただければと思うのがまず1つ目です。

2つ目、きょうのお話にはなかったのですけれども、このチーム学校の作業部会で常に議論されているのが、やはり時間管理の問題です。教育委員会レベルでも学校レベルでも非常に多忙化が進んでいる中で、しかし求められている課題も非常に増えてきている中で、いかに効率的に時間管理していくかというのは、このチーム学校の作業部会としてもすごく大きな課題なのですが、実際、学校の管理職として勤められていて、学校レベルでもそういう効果的な時間管理のありようというのはいろいろ実践されていると思うのですけれども、例えば会議の持ち方とか校務分掌の在り方とか、あと教職員にそういう時間管理の意識を持たせるとか、実際、米満校長のこれまでの経験からして、そういう学校現場における時間管理を効率的に進めていくための肝というのは大体どういうところにあるのかということも、経験を踏まえて教えていただければと思います。

【米満校長】  最初にお話しいただいた管理職の在り方ですけれども、やはり行政を経験された管理職は視野が広い。どちらもメリットはあると思いますが、行政という立場で学校を見ますので、その経験というのは視野が非常に広いというのと、教員以外の方を相手に仕事をしていますので、そういう人への対応力はあると思いますね。あとは、ポジションにもよると思いますけれども、広い視野から自分の学校を客観的に見ることができることが、やはりメリットではないかと思っております。

それから、たたき上げの方は、具体的な指導ができるというのがメリットですよね。「この場合にはこうしなさい」という、実践に即した、説得力のある指導ができる、あともう一つは、自分の身をもって示せる。授業一つにしても、自分がやって見せていく、それだけの授業力を持っている。それがやはりメリットではないかと思います。

それから、勤務時間の問題ですけれども、これはずっと以前、多忙化解消ということで、文部科学省でもいろいろお考えいただいたと思うのですけれども、やはり正直な話、今学校現場では、そんなに多忙化は解消されていないのが現状だと思います。うちの学校は、担任の平均年齢は20代です。その中では、どうしても時間のロスは非常に多い。ただ、子供を帰して、下校を徹底させて、それで会議といっても、勤務時間を考えると、45分の会議しか組めないのが現状です。では45分の中で、それを週2回組んでも、それが終わったら、もう勤務時間は終わってしまうのですね。そうした後、あしたの授業の準備、テストの丸付け、それから保護者への対応、休んだ子への電話連絡、不登校児は家に行って声を掛けるなど、これを5時までに終われというのは、絶対無理な話なのです。

ですから、まずそこからスタートしないと、5時までで終わって帰れといったら、バッグにいっぱい物を持って家でやると、逆に非効率的な部分になってしまいます。ですから実際のカリキュラムを考えると、小学校の中学年、高学年だと、6時間授業が週2回か3回ありますよね。そうすると帰るのがもう3時過ぎ、3時半ですよ。出張等も入ってきます。ですから本校では、事務仕事は5時以降にやっているというのが現実です。

では、その中でどういうふうに時間を有効に使う工夫をしていかなければいけないかというと、これも組織力だと思います。校長のマネジメントは、すごく大きいと思います。例えば打ち合わせの時間を省略するために、うちでは日報を出しています。教務主任に、みんなに伝えたいことを文書で、本当はもうパソコンで送りたいのですけれども、今の段階では文書で渡して、それを教務主任が、週報も出しますけれども、毎日の日報をレターケースに入れて、職員にあしたのことを全て伝える。これによって打ち合わせの時間が削れます。それが、子供に向き合う時間になる、朝の打ち合わせで、子供が子供たちだけで自習をする、朝読書をする、これも大切ですけれども、そこに教員が入っていける、その時間が確保できます。もちろん会議も、事前に文書を読んでから参加することによって、職員会議等の時間が削減できます。

あと、一番大きな課題は事務ですね、様々な事務をどう削減していくか。これはやはりある程度お金を掛けて、システムを作っていく。例えば出席管理とか、それから様々な連絡等、また文書作成等が簡単にできる、そういうシステムを真剣に考えていかないと、授業は削減できませんし、昼休みとか何かを削るということもできません。実際に昼休みには子どもと遊んだりしますし、給食は給食指導があります、清掃中は清掃指導もしなければいけない、放課後は下校指導もしなければいけない。実際の話、教員は個別の児童、後れている子供の対応もしたい。ただ、その時間すらなかなかとれない。そういう現状を考えますと、やはり大きいのは事務軽減です。アンケートも必要ですし、書類も必要なものゆえに上がってきているわけですから、いかにこれを効率的に、事務処理を簡略化するか。出席簿の例で言えば、児童の出席状況を入れれば、それが一覧表になって、すぐ作成されて出てくるようなシステムが全学校に配置されれば、それだけである程度事務を軽減できます。若い世代が多いということは、パソコン機器を駆使する力は非常に持っていますので、やはりそういう事務処理の簡略化できるシステムをきちんと構築してもらうことが、一番の勤務時間の軽減になると思います。

あと、部活の問題。やはり、職員はやりたいのですよね。ですから、非常に前向きな仕事は、時間が掛かっても、教員は一生懸命やるのです。自分の創造力や専門性を発揮できる仕事であれば、それは非常に喜んで一生懸命、遅くまで夢中になってやるのですね。ただ、事務等の作業は、なかなか意欲的にも高まっていかない部分でありますので、その辺を変えていくことによって、部活の関係も、子供たちに向き合う時間の確保もできていくのではないかなと思っております。

【小川主査】  ありがとうございました。ほかに。

では、稲継委員、次に小栁委員ということでお願いします。

【稲継委員】  どうも貴重な御報告をありがとうございました。

きょう配付されている資料の中に、文科省の方で用意していただいた学校管理職の現状についてという資料がございます。このデータも踏まえながら、先生に御質問したいのと、それから文科省の方にデータの確認をさせていただきたいと思います。

まず16ページの勤務実態調査の結果で、平均残業時間ということで、2段目の教頭・副校長さんが約63時間と突出しています。それから、18ページのところに、教頭が実際に費やす職務内容ということで、これも突出しているのが各種調査依頼への対応というところです。その下の19ページには、費やしたい職務内容ということで、職場の人間関係づくりとか教職員の評価・育成、あるいは校内研究・研修といったあたりが多くなっています。他方で、一番たくさん時間を費やしている各種調査依頼への対応が非常に少なくなっている。教頭としては、こちらの下の方には費やしたくないけれども、実際はそれに時間を多くとられているのが現状であるということが、このデータから読み取れます。

同様に、学校財務・会計処理についても、費やしている現状と費やしたい中身との間にギャップがあるところで、先ほど校長先生がおっしゃったように、お金を掛けてシステムを導入すれば、解決する問題の一つになっているのかもしれません。他方、その各種調査依頼への対応ということでいうと、これは群を抜いて多いわけですが、実際に、本当に教頭先生が書類作成の全てに当たる必要があるのか、あるいは事務職員とうまく分担する可能性があるのか、その辺のところについて御教示ください。

それから、事務局にお尋ねしたいのは、まず3ページの登用率の推移ということで年次比較が出ておりますけれども、この登用率は、受験者が分母で、合格者が分子になっているという理解でいいのかどうか。これだけ見ると、減少率が顕著ということでは余り見られないのですが、私の理解が間違っているかもしれませんので確認させてください。

それから、4、5ページのところなのですけれども、年齢別登用状況で、校長も教頭も、時代とともに登用の年齢がどんどん高齢化してきているという現状が見られます。この点について何か文科省としてお感じになっているようなことがございましたら、御教示いただきたいと思います。よろしくお願いします。

【小川主査】  では、まず事務局の方からお答えいただけますか。

【福島補佐】  登用率は、分母としては全体の校長先生の中で、毎年の4月1日時点で、どのぐらい校長先生が新しく登用されたかという割合で出しております。

それから、その後の登用状況の推移の部分でございますけれども、これは先ほど米満先生の方からもワイングラス型というような話がございましたけれども、平成11年の段階で一番教員の層が多かったゾーンが管理職になり始めて、それが、年度が上がるごとに少しずつ高い方に推移をしていった結果としまして、新しく校長になる、あるいは管理職になる割合の最初の年齢が少しずつ遅くなってきているという状況が、ここから見えるのではないかと考えております。

【小川主査】  では、よろしくお願いします。

【米満校長】  この教頭が費やしたい職務内容は、まさに、管理職として、要として、自分の専門性を生かしていきたい、やはり教頭としての本来の在り方だと思っております。そして、事務職員との連携ですけれども、アンケート等様々な依頼文書の作成とか、これは相当事務職員の方に振れるものはたくさんあると思います。指示はするかもしれませんけれども、実際そういう作業とかは、正直、教頭がやるよりも事務職員の専門性を生かしてやった方が、計算とか何かも早いのがいっぱいあるのです。正直、私、自分のことを言っているのですけれども、学校事務職員の専門性をもっと生かすことはできると思いますし、それによって、この一番大きな調査依頼への対応等も軽減できる、相当、これはあると思います。まだまだ考える余地は残っていると思います。

【稲継委員】  ありがとうございます。

【小川主査】  よろしいですね。

【稲継委員】  はい。

【小川主査】  それでは、小栁委員、どうぞ。

【小栁委員】  まさに地に足を着けた学校経営の様子がよく分かりました。私も平成10年、11年と小学校長をやったのですけれども、その頃と比べて今の忙しさというのは、比べようもないほどです。先ほど校長先生がおっしゃった事務処理能力、事務の関係ですけれども、今年は校務支援のため、出席簿は全て電子化しました。3年掛けて校務支援委員会を立ち上げて、指導要録や通知表を電子化して、指導要録と通知表だけで年間46時間ぐらい、時間が短縮できました。ただし、530万ぐらいお金が掛かりました。ですから市長にお願いして、何とか、元気な教員づくりに資するということで、お願いしてやりました。一般財源でやるので大変苦しいです。これが先ほどの1点です。

それから2点目ですけれども、先生の方でワイングラスという、すばらしい例えがございました。ちょうど10年前の平成16年、埼玉県では、教頭選考が17倍でした。この数年は、2倍を切るような状況です。そういう中でどうプライドを持たせ、一生懸命やってもらうかということで、私ども大変苦慮しております。どう若手を育成して、将来の管理職になってほしいかということなのですけれども、昨年度から私の市では、20代の教員を含めて、700人ぐらい教職員がいるのですけれども、約150名集めて、時間外に年3回ぐらい、学びの会を立ち上げて、校長さんたちに中心になってもらって、いろいろなことをやっております。そういう中で将来の管理職を育てたいということでやっております。

2点目で申し上げたいのは、習志野市も同じだと思うのですけれども、人事評価がありますよね。そこで若手の育成が相当できるという感じを、私は持っております。校長は、学校教育のビジョンを語る教育者としての面と、経営方針を示して学校運営を語る経営者としての面の両方を持っておりますけれども、それが集約され示せるのが人事評価の機会です。目指す学校像、ミッションを教職員に示し、教頭がそれを受け、教職員がさらにそれを受けていく、その目標の連鎖の中で、目標による管理が徹底しております。ですから、その面談の中で教職員を育てていく、個人の能力伸長が図れるのではないかという感じを持っておりますので、年度当初、中間面談、最後の面談、そういう場を活用すれば、人材育成という点から非常にいいのではないかと思います。その点で、千葉県の実態はよく分かりませんが、人事管理をして、処遇改善につなげていくという面もありますけれども、個人の能力伸長、人材育成という点で非常に良いというのが2点目です。

3点目は、いわゆる単層構造である学校の鍋蓋を重層構造化していくため、埼玉県でも始めました。主幹が入っている学校はやはり良いです。校長は、先ほど申し上げましたように、教育者としての面、あるいは経営者としての面の両面から、自分の学校のミッションを一生懸命考えて、戦略を立てていくわけですけれども、主幹制度導入によって、その時間が生み出されてきます。何でもかんでも校長が考えてすぐ対応していくという、一人親方的な小学校現場にしてみると、主幹がいることによって、自分の時間が幾らか持てる。そういった点からも、主幹が手足となって学校に配置されている学校は、組織的、機動的な学校運営が図れているという感じがします。したがって、申し上げたい3点目は、もう少し主幹職を増やしたい、そういう財政的な援助があればありがたいという気を持っています。

学校現場に一番近い教育委員会として感じた点を申し上げました。以上です。

【小川主査】  ありがとうございました。

少し時間がないので、米満校長の意見発表についての質疑応答と意見交換はこの辺で切らせていただいて、後半に入っていきたいと思います。後半の方で時間的な余裕がありましたら、また全体を通じての質疑応答、意見交換をしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

米満校長、ありがとうございました。

【米満校長】  ありがとうございました。

【小川主査】  それでは、これから後半の方に入っていきたいと思いますけれども、報告、意見発表の順番は、浅野教授、久我教授、そして飯田補佐という順にさせていただければと思います。時間も大体1人15分ぐらいで収めていただければと思います。よろしくお願いいたします。

【浅野教授】  兵庫教育大学の浅野です。今回ご報告しますのは、私どもの教職大学院学校経営コースにおける管理職養成、教育委員会の幹部養成の取組です。まず、2年間のフルタイムの教職大学院で、どのように管理職を育てているかをご報告します。そしてもう一つは、本学教職大学院の学校経営コースは、兵庫県教育委員会と連携して、毎年、兵庫県内の全新任教頭に対する研修を実施しています。今年度で12回目になり、3,000人を超える研修実績があります。大学院での管理職養成と、兵庫県と連携して行っている管理職養成の2つをご報告します。

まず、資料の2~3ページをご覧ください。本学のミッションの再定義で、兵庫教育大学は、大学院における現職教員の再教育・研修(管理職研修)の拠点として位置づけられています。

次に、3ページをご覧ください。本学大学院の学校経営コースは、1学年定員20名です。2学年で、4月現在の在籍者数は、それぞれ14名、23名の37名が在籍しています。校種別にみますと、バランスよく、いろいろな校種や教育委員会事務局に勤務していた者が来ています。また、私学在籍者もいます。さらに、新構想大学ですので、兵庫県だけではなくて、8道府県3政令市、私学3法人から学生が来ています。

このような特色を持って管理職養成をしているわけですが、具体的には4~5ページにありますように、カリキュラムは、3つの群に分かれております。1つが、共通基礎科目です。これは学校経営コースに限らず、授業実践コースや生徒指導コースの全員が受講します。共通基礎科目には、5つの領域があって、幅広い科目を履修します。2つ目が専門科目です。専門科目は、当然ながら学校経営に関する科目と教育行財政に関する科目を必修で受講します。そして3つ目が、実習科目です。8週間の現場実習があり、学校管理職を目指す者は学校経営の専門職インターンシップ、教育行政を学ぶものは、教育行政職インターンシップのどちらかを選びます。

授業科目はこの3領域ですが、それを5ページのように関係づけて実施しています。1年の前期から2年の後期まで、4つのブロックに分け、図の中央部の黒い部分が、学生が自分の学校や教育委員会を対象に、現状分析から課題発見、改善策検討等、深掘りするプロセスです。1年の前期には、学校や教育委員会の現状把握・分析をし、課題を抽出・形成し、1年の後期には、改善のラフなプランを作ります。

そして2年前期の授業等を経て、後期にインターンシップ、いわゆる実習を行い、最後の2月に、その学校や教育委員会の改善のプランを作成・発表します。これが修士論文に相当するもので、教職大学院では、このように実際の学校・教委幾委員会を題材に、実践的な経営を学びます。

改善プランを検討するに当たっては、新しい知識や理論がないと、新たな発想や方法論が付加されません。したがって、図の右の方にある共通科目や専門科目を授業で学ぶわけです。ただ、授業の理論的なことだけでは、実践に活用しにくいということで、右に向いた矢印の内にある学校の「事例研究」を行います。

この「事例研究」は、2年間で、先進的なケースを約60事例扱います。そして院生自身の学校もありますので、それもまた事例として扱います。したがって、1年生のときは、上級生の2年生がいますので、学生は、1つ前の学年と、1つ下の学年、都合3学年分を学びます。定員20名ですから60名分あり、合計すると120の事例を学ぶことになります。

先ほどの話にありました現場でのキャリアパスを経て管理職になる以外に、教職大学院では、自分の経験した学校だけではない、いろいろな事例を模擬体験することで、よりスケールの大きい総合力のある管理職を育成できると考えています。

この「事例研究」は、私どもの大学院では、ハーバード式の「ケースメソッド」で実施しています。事例研究とは、比較的小事例で、答えがあるものがあります。これをシカゴ式「ケーススタディ」といいますが、ハーバード式の「ケースメソッド」では、20ページから30ページの長文の事例で、学校のトータルな経営について考えさせる点に特徴があります。したがって、今回のテーマである学校の総合力をどのように発揮していくかを学ぶにふさわしい手法ではないかと思います。

具体的には、毎年、先進的な取り組みをしている学校や教育委員会の事例集を20ほど作ります。これは、学生が1人1校ずつ調べて作成する事例で、これを2年間にわたって教材として使います。20ページと21ページをお開けください。これが事例集の目次です。左の20ページが、2012年度と2013年度に使った事例です。全部で16事例あります。学校の事例が13事例、教育委員会の事例が3事例で、学校も小、中、高、特別支援、そして私立の学校の事例も含まれています。

学校の事例の焦点課題は、「コミュニティースクール」、「小中一貫教育」、「キャリア教育」、して「高等学校における総合学科の経営革新」など、いろいろな学校課題があります。このような事例を学んで、管理職としての学校経営の総合力を養います。

このケースメソッドの進め方は、23ページから24ページをごらんください。23ページは、学校の「問題点」を探って改善策を考える進め方を示しています。また、24ページは、成功要因を探索して分析をする方法です。したがって、授業での学びを現実の学校経営に橋渡ししていく目的で、このようなケースメソッドを活用するのです。これは、先ほどの文脈でいいますと多様な経験です。つまり様々な校種の、いろいろなパターンやテーマについて、うまくいっている事例、うまくいっていない事例、それを学びながら総合的な力量を形成するのです。

それに加えて、本学教職大学院の学校経営コースにはフィールドワークがあります。これは、実際に学校や教育委員会に出向いて行う学びの場です。

25ページをご覧ください。先ほど説明したケースメソッドは、現実の事例ですが、紙上の事例です。ところがフィールドワークは、実際の事例に触れて学ぼうとする取組です。これは、今年度の学生のオリエンテーションで示したものですが、昨年度は100件ぐらい用意し、学生が自由に選ぶようにしました。そして今年度用意しているのが、25ページに示したものです。例えば1の1は、教育行政に関するフィールドワークです。事業点検・評価を教員と一緒に検討するものです。また、1の1の(2)は、教育委員会が推進する様々な事業で、「小中一貫の推進」、「学力向上プロジェクト」、あるいは「若手教員養成」、「幼小中連携」、「ベテラン教員活性化」等、いろいろあります。それらに対して、教職大学院の教員と一緒になって参画し、実践的な経験を通じて学んでいきます。

学校経営に関するフィールドワークは、さらに充実しており、まず第1に、学校評議員会・学校関係者評価委員会への参加があります。それらの会合に参加し、学校の経営を実践的に学びます。

第2に、高校の各種研究指定である「SSH」「SGH」「SPH」等に関わります。

第3に、教職大学院の教員が単位学校に入って、その学校の活性化を指導するという場面に、一緒になってそれを体験し、サポートすることがあります。

第4に、学校への視察訪問などがあり、昨年度も秋田県大館市と美郷町の学校数校と県の総合教育センターにも訪問し、県・市の教育委員会や学校の管理職の皆さんにお世話になりました。これ以外も、いくつか実施しました。

第5に、学校以外の経営の経験として、県の知事部局のリーダーはどのように養成されているについて、管理職研修に参加して一緒に学んだり、あるいは公立病院の財政健全化に関わったりもしています。

第6に、学校の第三者評価を実施しています。これは、年間2~3校実施しており、今年度は、小学校1校、中学校1校、高等学校1校を予定しています。26ページと27ページが、昨年度実施した学校の第三者評価の概要です。26ページの下がスケジュールで、朝7時半に学校に伺って、登校風景を見て、そして校長や幹部から学校経営の方針等を聞き、そして皆で手分けしてミドルリーダーのヒアリングをし、そして生徒や若手の教員のインタビューをします。評価者としては、本学経営コースの教員が2名行き、現職教員の院生が評価員となります。実施後は、評価報告書を作成し、学校に出向いて報告会で実施します。このように、授業以外のカリキュラムであるフィールドワークによって、現実の経営の姿を体験させながら学ばせるシステムになっています。

それともう一つ重要なのは、先ほどのお話でもありましたように、修了後のキャリアパスです。そこで29ページをご覧ください。派遣元の教育委員会にご配慮いただいていることがわかります。修了生の多くは、修了後1年間、在籍していた学校に戻すことが多いことが見て取れます。つまり修論に代わるもとして「学校・教育委員会改善プラン」を作成しますので、それを在籍していた学校戻って1年間実践する機会をいただいています。そして、その後、管理職に昇任するケースが多いように思われます。例えば2013年度修了生では、高校の教諭がそのようなパターンです。あるいは、若手の修了生は、1年戻った後、教育委員会等に配属になっています。

このように修了後、2年目に異動あるいは昇任をさせていただいていることがわかります。つまり、本学で学んだことを、より実践的に活用することで、さらに深い学びにつなげるご配慮を教育委員会に頂いていると理解しております。

最後に30ページをご覧ください。兵庫県教育委員会と連携した管理者研修の内容です。今年度も、兵庫県の全新任管理職、小学校は150名、中学校・高校で150名の約300名を「対象に実施します。今まで2,800人ぐらい本研修を受講し、トータルで3,000人弱が修了しており、兵庫県内の管理職はほとんど全て、兵教大との連携研修を受講している状態になっています。

研修は、5日間の研修です。そして講師は、本学の教員と県教委が一緒になって、小グループに分かれて研修するようになっています。元々、1回目から5回目までは10日間の研修でございましたが、現在では5日間で実施をしています。

以上、大学院の学校経営コースで実施している管理者養成と、兵庫県と連携した管理者養成についてご報告いたしました。

以上です。

【小川主査】  ありがとうございました。

では、続けて久我先生、お願いします。

【久我教授】  よろしくお願いします。鳴門教育大学の久我です。

本日は資料3-1を中心に、効果のある学校づくりの理論と実践について報告させていただきます。特に、高知県教育委員会と連携をしながら、この理論を県教委の事業として運転しておりますので、飯田課長補佐と2人合わせておおむね30分で報告させていただければと思います。

まず、チームとして子供たちの健全な成長を生み出す学校づくりということを考えた場合、2つの問いが含まれています。その1つは、「子供の変容を生み出す効果のある指導とはどういう指導なのか」という、指導論についての問いです。それともう一つは、「その指導をどのようにチーム学校として、つまり全教職員の組織的な取組とできるのか」という、組織論についての問いです。この2つの問いに答える実践研究を、鳴門教育大学教職大学院の院生の学校や、共同研究を進める学校で進めてきました。また、この効果のある指導を組織的に展開する仕組みを、高知県教育委員会が学校活性化事業として事業化してくださいました。本日は、この3年間、この事業を推進されてきた高知県教育委員会の飯田課長補佐と、報告させていただきます。

これら理論の展開の方法について、私からまず説明させていただきたいと思います。資料の1枚目をめくっていただいて、1ページをごらんください。4枚のスライドがありますので、順次指示をしながらお話しさせていただきます。よろしくお願いします。

右上です。時代の潮流と学校に求められる2つの課題です。先ほどから出ていますけれども、やはり1つは、学校の組織化というのは喫緊の課題だと捉えます。それともう一つは、評価の時代に入りました。学力、不登校数、あるいはいじめの件数等を機能的に改善する、あすの評価に耐え得る学校づくりということが非常に求められています。つまり、すぐに役立ち、ずっと役立つ教育の在り方、その「効果のある学校づくり」というものを今標榜しなければならないということです。

しかし、私は今、たくさんの学校に入って、校長先生のヒアリングをしますと、この組織化と効果のある学校づくりからは遠のいている現状が見えます。校長先生から聞き取った内容を整理すると、3つの課題が浮かび上がってきます。1つ目は、やはり学力低下の問題、いじめの問題など、子供の学びと生活の課題です。2つ目は教師の指導の質的な問題。これは、「教え込み型」の授業からなかなか脱却できないという課題意識です。3つ目は、先ほどから報告にありましたとおり、学校は大変忙しい現状があり、その中で組織化しなければならないはずなのに、教職員の意識と行動は個業化の方向に行っています。つまり「負の組織化」が進行しているということです。

では、この3つの課題を同時に解決する3連立方程式の解の求め方とはどういうことかと考えました。やはりまず必要なのは、子供の意識と行動に適合した効果のある指導、つまり「小さなエネルギーで大きな子供の変容を生み出す、効果のある指導とはどういうものか」ということを抽出する必要があるというのが1つ目です。そして、その効果のある指導を組織的に展開し、一点突破の取組で教職員の協働を生み出していく。そして、そのことを通して教職員の指導の質そのものを転換していくという流れを構想しました。

まず、その子供の変容を生み出す効果のある指導について、説明させていただきたいと思います。2ページ目をごらんください。そもそも我々は、学校教育で子供たちの何を育てるかというと、2つあります。1つは、やはり「学力保証」です。もう一つは「社会性の醸成」があります。これを子供の側から見ますと、自分の中にある能力を伸ばす、つまりIを伸ばすために努力する、その「頑張りの軸」が1つです。それともう一つは、人とつながる、人と社会と関わりながらWeの世界を広げる、これは「優しさの軸」です。このことを通して、将来にわたって生きて働く力を培っていくという機能があると思います。

ところが、実際に学校を回ってみますと、授業中、中学生だと伏せてしまっている子供たちがいます。また、生活の中で暴言を吐いてしまう子供たちもいます。では、この子たちは能力がなく、優しさがないのかというと、そうではありません。何かが欠如しているのだと思います。2ページの右下ですけれども、その子供たちの目に見える問題、つまり学力低下やいじめの問題に振り回されるのではなく、子供たちのその行動を生み出している子供たちの内面と結び付けながら、子供の意識と行動の構造を探って、どうすれば子供が頑張り、「Iを伸ばし」、優しくなるのか、「Weの世界を広げる」ことができるのか、その条件は何なのかということを可視化しました。

今日の学校教育の課題として、実はこの目に見える問題に依拠して、学力低下には学力向上プラン、いじめにはいじめ防止システム、不登校には不登校未然防止システム等、学校の中にシステムとプランが乱立しております。実際にそれが本当に教職員一人一人の頭の中に浸透しているかという、大きな疑問があります。そうではなくて、子供たちを変える、根っこから変えるような仕組みというのができないかということで,その構造を可視化しました。

3ページ目をごらんください。きょうのキーシートの1枚目です。少し大きくしたものがあります。これは実は小学生約6,000人、中学生約5,000人に聞いたアンケート結果浮かび上がってきた、子供の意識と行動の構造です。最終的には我々は、学力向上、「Iを伸ばし」、社会性の醸成、「Weの世界を広げる」ような、つまり子供たちの頑張りと優しさを引き出すような教育を実現するという使命があります。このデータを分析した結果、それを生み出す源泉は何かというと、「私は一人の大切な人間である」という、「自分に対する信頼」でした。これがない人間に、頑張りも出なければ、優しさも出ないということです。もう少し踏み込んだことを言いますと、実はこの自分に対する信頼を支えているのが、保護者からの愛情です。昨今、ネグレクトや虐待、今日的な課題で言うと貧困の問題もあります。そういうものが子供たちの自分に対する信頼をむしばんできている状況があります。この中で子供たちの頑張りや優しさが十分に引き出し切れない、そういう現状があるということです。

では、この子たちを救うパスはないのかと探りましたら、1つだけ救いのパスがありました。家ではだめだけど、学校に来ると先生や友達からは承認されているという感覚があったときに、「自分に対する不信」が「自分に対する信頼」に変わって、頑張りや優しさを引き出す可能性があるということです。

今、「自分に対する信頼」が非常に重要だとお話ししました。4ページ目右上です。これは16歳のデータです。日本の教育は成功しているのかということを申しますと、多分1つは成功しています。それは何かというと、これだけの高い識字率や規範を作っているのは日本の教育の力だと思います。しかし一方、小学校1年生から高校3年生まで、学習履歴の中で、自分に対する信頼にかかるいろいろなデータがありますけれども、例えば自尊感情、自己肯定感、自己効力感、自己有用感等がありますけれども、自分に対する信頼のデータを見ますと、学習歴の中で年ごとに下がっていく、そういう共通した傾向があります。つまり、この日本の教育の構造的な課題があるということです。左下は、OECDのTALISデータです。一番左を見ますと、日本の教師が「子供たちを勇気付けているか」、「自信を持たせているか」というと、日本の先生は17.6%です。日本人の謙虚さを差っ引いて考えても、これはやはり低過ぎる問題だと思います。

それで、先ほどの「子供の意識と行動の構造図」を指導マップとしてとらえ直し、効果のある指導を考えました。それが4ページの右下です。自分に対する信頼に対しては、勇気付けのボイスシャワーです。それと、実は自分に対する信頼が高まっても、ここ(規範意識)だけ、自分に対する信頼からの矢印がないのです。つまり生活規範は、自分に対する信頼が高まっても、高まらないのです。これはどういうことかというと、やはり是々非々の指導で、いいことはいい、悪いこと悪いということを「しつけ」なければ、規範というのはできないということです。つまり自分に対する信頼を高めるボイスシャワー、母性です。そして生活規範は、是々非々の指導、父性です。この母性と父性のバランスの中で子供たちは安定して学べるようになっていくという構造が、この図から読み取れるということです。

今申し上げましたとおり、4ページ右下、自分に対する信頼を生み出すボイスシャワー、そして聞くことのしつけ、そして主体的な学びを生み出す目標設定、そして子供のエネルギーを活用した活動づくり、こういう取組が子供たちのIを伸ばし、Weの世界を広げることに、構造的に機能する効果のある指導として読み取れました。

次、5ページです。この小さなエネルギーで大きな成果を生む効果のある指導について、1つずつ説明していきます。まず、勇気付けのボイスシャワーです。左下の図がイメージ図ですけれども、特に自分に対する信頼を失いやすい、問題を起こしやすい子供たちには、合理的配慮の中で、厚めにこのボイスシャワーを掛けています。右下の図は、その成果を表したデータです。たかが声掛けですけれども、されど声掛けです。全職員で組織的に勇気付けの声を掛けていくと、大きな子どもの変容の力を生み出していくということが読み取れます。

6ページをごらんください。組織的なしつけの取組です。これは、聞くことのしつけということを明示しています。実は、先ほどの子供約6,000人、5,000人のデータと併せて、その担任の指導行動のデータを、マージファイルで結び付けました。それで、どのような指導をしている先生のクラスが規範意識が高く、学習意欲が高いのかの相関を見ましたところ、最も効果のあるしつけが、「人の話を大切にして聞くこと」の指導でした。このことにこだわって指導しているクラスは、非常に優しくて、頑張れるクラスになっているということです。

右上の図をごらんください。実は、これは当たり前のことのようなのですけれども、人のことを大切にして能動的に聞くことが学習の内実を生み出します。また、生活の中で人のことを大切にした、寄り添いの傾聴ができることが、優しさを生み出します。つまり人のことを大切にして聞けるということが、学校教育の機能である、Iを伸ばす、Weを広げる、原点的な指導であるということです。特にそういうしつけを徹底するチャンスはいつかというと、やはり年度初めです。特に左下の図は、初期指導をベースにして、この「人の話を大切にして聞くこと」について組織的にこだわって、4月は指導することを示しています。右下の写真は、高知県の事業化のきっかけとなった学校の写真です。実は前年度、非常に荒れた学校でした。床で寝転がって授業を受ける生徒、授業中伏せてしまっている生徒、私語をしている生徒、クラスの半分以上が授業に入っていませんでした。その学校が、勇気付けのボイスシャワーと、そしてこの聞くことのしつけを組織的にやったことによって、その5月に撮った写真です。子供たちのキーワードは何かというと、「人の話は目で聞こう」です。このことが、この姿を生み出したということです。

次、7ページをごらんください。目標設定に基づく主体的な学びづくりです。子供の主体的な自学を生み出すものは何でしょうか。左下の図にありますように、勇気付けも大変大きな力になるのですけれども、やはり最終的には本人自身が自己の成長目標を持つことなのです。目標のない人間に、努力は生み出せません。目標が人の本気を生み出します。実は、右下の写真は、高知県の事業で入っている学校の写真です。生徒の写真ですけれども、実はこの子たちはエスケープ組の子でした。その子たちを校長先生以下、複数の先生で1人ずつ、深い面談をしました。「あなたはどうしたいのかな」と、「将来はどうなりたいのかな」と、「あなたは高校へ行きたいのかな」ということを問いました。その中で、彼らが言いました。1人ずつが、「高校へ行きたい」と。「それでは、あなたは今から授業に入れるの」と言ったら、「いや、数学と英語は全く分からない」と。「それでは、本当にあなたが、本気で学ぶ気があるのだったら、先生が努力してあなた方を個別に指導する時間を設けるけど、あなたはやりますか」と聞いたら、「やりたい」と。そして、やっている姿です。実は、非常に、この教室に入ったときに、貴い空気を感じました。がらがらと扉を開けて入っても、この子たちは振り向きもしません。非常に集中していました。しかも苦手な英語をやっているのですが、苦手なものに取り組む彼らの後ろ姿に、貴いものを感じました。つまり、人は目標を持ったときに努力が生み出される、その姿を、この子たちから教わった気がしました。

8ページ目をごらんください。この仕組みの中で生徒が自己の成長目標を持てるように設計したのが、この左上、「学びのポートフォリオ」です。「あなたのよさは何ですか」という問いと、2番目が、「そのあなたのよさを生かした目標は何ですか」という問い。そして、「その目標達成のために、あなたは何を努力しますか」という問いを掛けています。実際に書いたもの、これは私のゼミ生の学校の生徒が書いていますけれども、書きながら生徒たちが、「楽しい」「うれしい」と言います。つまり何かというと、自分の努力を書いていく、自分はこう頑張ったということを書いていくことがうれしい、楽しいと言います。

左下の図です。子供たちの能力を発揮させる大きなファクターは2つです、自分に対する信頼と目的意識。それに直接的に、機能的に刺激するような仕組みを入れています。特に、右下の写真は、学びのポートフォリオを媒介とした勇気付け面談です。これは非常に大きな効果を2つ上げています。1つは、明日の目標設定を促し子供たちの努力を生み出す力、もう一つは、その勇気付けてくれる先生に対する信頼が非常に深まって、教師と生徒の信頼を深める効果です。これも大きな効果のある指導です。

9ページ目をごらんください。右上の図を中心にお話をしたいと思います。学び合う授業づくりの展開イメージです。実は私、年間5、60校、7、80校、学校に入っています。そして、およそ1,000を超える授業を観させてもらっています。残念ながら、非常に強い課題意識を今持っています。何かといいますと、9割を超える授業に課題が見えてこないのです。つまり子供目線で、この授業を通して追求したいとか、解決したいと思えるような課題が見えてこないのです。9割を超えて、説明型の授業です。今アクティブラーニング等で方法論の改善を求めていますけれども、恐らくその成功の鍵は、この魅力ある学習課題を設定できるかどうかだと思っています。

次に行きます。10ページ目をごらんください。今、小、中、高、いろいろなところを回っていますけれども、私がもう一つ課題意識を持っているのは、「子供たちが、自分の学校は自分たちの手でよくするのだ」という、自治的な場が十分に設定されていないということです。そのような自治を生み出すような教師の指導ビジョンが弱いということです。右上、ゼミ生の学校です。平成26年3月15日、これは5年生たちが、次の年、6年生になったときに、どんな学校にしたいか、ワークショップしている姿です。そして下の写真は、4月当初に、僕たちはこんな学校にしますという宣言をしている写真。そして実際に、心をつなぐ挨拶としてハイタッチ挨拶とか、次の11ページを見ていただきたいのですけれども、子供相互の勇気付けの仕組みを作ったり、それから、生活プロジェクトでボランティアの清掃、地域清掃を企画し、子供たちのアイデアで学校を活性化している姿がありました

12ページへ進みます。以上の取組の効果を、高知県の事業のきっかけとなった学校のデータを通して確認していきたいと思います。12ページ右下のデータです。グラフが3本並んでいますけれども、一番上がビフォーです。真ん中がアフターです。一番下がX県のY市Z区に協力いただいて、全区的に集めたデータです。それを平均的データ、標準的データとしています。目安となるようなデータとして置きました。自分に対する信頼は、4月、5月の二月取り組んだ、6月にとったデータですけれども、大きな変容をもたらしました。13ページをごらんください。上の段、学習意識と教師の信頼も変わっていました。そして下の段、これは教師のデータの変容です。勇気付けのデータが左下で、これも変わっています。そしてもう一つ、教師の生徒へのまなざしの変容と書いてありますけれども、ボイスシャワーは子供たちを変える大きな力のある指導です。実はもう一つ効果があって、教師のまなざしを変える力を持っています。教師というのは、どうしても子供たちのできないところに目を奪われて、それを指摘して、指導したいという意識があるのですけれども、このボイスシャワーを通して「子供たちのよさを見付け、そして勇気付けましょう」という、この仕組み、取組を通して、先生方の子供たちを見るまなざしをネガティブでなくて、ポジティブへ変えていきます。つまり、子供たちの変容を生み出す大きな力になるとともに、教師の子供の見方を変える力があるということです。

14ページをごらんください。象徴的な言葉が子供たちのワークショップでありました。右上の図です。24年3月から25年1月に、2回、生徒会の子たちとワークショップをやりました。24年3月がビフォーです、25年1月がアフターです。右上の図の中で25年1月を見ていただきたいのですけれども、「A中学校はどんな学校ですか?」といったときに、生徒たちが、「うちの学校にいじめはないよ」と言いました。そして、「困っている子を助けるし、教え合うよ」と、「先生とすごく仲がいい」と言いました。つまり、我々はいじめ防止のためにいろいろな施策をしますけれども、最終的に子供がみずからが、このように「うちの学校にはいじめはないよ」と言える学校にすることが、最終ゴールイメージだと思っています。これは非常に大きな意味のある言葉だったなと思いました。

次、15ページをごらんください。この取組のもう一つの効果について、説明させていただきます。右上の図です。実は私は、学校経営も研究していますけれども、もう一つ、学級経営も研究しています。昨年まで荒れていた学級が、この先生が持つと一気に変わって、非常に潤いのある学級になるという教師がいます。そのようなすぐれた教師の特徴を複数の事例から読み解いたら、3つの視座が浮かび上がってきました。まず,第1の視座で、上からきっちりしつけられる、これはすごく大事な視座。2つ目は、しつけるだけではなくて、子供たちにじっくり考えさせて、自学・自治を促す視座。そして3つ目の視座は、上からでもなく下からでもなく、人対人として、子供たちに、あなたの立派なことはここだよねと価値付ける視座です。

実は,左下のこの4つの取組は、しつけが「第1の視座」、主体的な学びと子供たちの自治が「第2の視座」、そして勇気付けのボイスシャワーが「第3の視座」です。つまり、子供たちを成長させるこの4つの取組が、実は教師たちにこの3つの視座を獲得させるような、人材育成の取組にもなっているということです。このような中で、子供の成長と教師の成長を同時に実現することを狙っています。

最後になりますけれども、このような効果のある取組をどのように組織的に展開するかということが問題です。16ページをごらんください。右上にもありますけれども、やんちゃな子供たちを学ばせるよりも、個人レベルの指導論、パーソナルティーチングセオリーと言いますけれども、持論を持った教師たちを束ねることの方が、よほど難しいです。この持論を持った教師たちをどのようにすると束ねることが、できるのでしょうか。その束ねること、つまり組織化の難しさを16ページには書いています。組織化の可能性について、2枚目のキーシートになります。17ページをごらんください。

ポイントは、組織的な教育意思形成の過程にあると思っています。学校アセスメントデータを元に、そして先ほどの子供の意識と行動の構造図を手掛かりにしながら、「うちの学校の子供たちの強みと弱みはどこなのか」、「課題は何なのか」ということを共有できたとき、さらにその課題に応える夢づくりや学びづくりや活動づくりの具体的取り組みを、先生たちの手で作ったとき、そのときに組織的な協働を生み出す可能性が高まると捉えています。

18ページをごらんください。その流れが左上の図です。学校のアセスメントデータを基にして、全職員で課題を洗い出すワークショップをします。そして、その課題に対して「うちの学校としてこういう取組をしていこう」という、取組の表明をしていく、この流れです。そのことによって個人レベルの指導論から自校の課題、子供たちの課題を共有した、スクールベースの指導論を形成して、組織的な協働を生み出す可能性が高まると考えています。実際にそのことが生み出されていることが実践研究を通して検証されています。

最後、19ページです。このような取組を高知県教育委員会の方が事業化してくださいました。その事業化の中で、推進校における人材育成が図られています。スクールリーダーとしての校長、教頭、ミドルリーダーのファシリテーターとしての力、そして全職員の指導の質的転換が実際に生み出されています。ただし、1校ずつ変えても、全国でいうと3万5,000校あります。高知県でいっても何百校とあります。それをどのように汎化するかを、高知県教育委員会の方で考えてくださいました。

下の図です。校長研修会等の集合研修と、この推進事業を連動させています。効果のある学校づくりの理論と、推進校の実践事例の紹介を通して、効果のある学校づくりの枠組みの認知を促します。そしてそれを踏まえて自分の学校の課題を俯瞰し、自分の学校の課題は何だろうか、そしてその課題に応える効果のある取組を設定する。そして実践し、検証していくような、そういう集合研修を設計しています。

続けて高知県教育委員会の飯田補佐から、その具体的なシートと、それから効果、成果等についても付け加えていただきます。

【飯田課長補佐】  高知県教育委員会課長補佐の飯田といいます。よろしくお願いいたします。

高知県教育委員会では、先ほど久我教授の説明にあった、自分に対する信頼を高めるということ、そしてそれは児童生徒の自尊感情を育成して高める取組ということで、これを学校経営の視点から事業化しております。資料3-2をごらんください。

まず1ページを開けていただきたいのですけれども、その事業の概要をポンチ絵として示させていただいております。高知県教育委員会では、推進校として中学校の11校を指定しまして、各校に推進リーダーを配置しております。統括アドバイザーである久我教授の御指導の下、研究を進めております。

学校では、様々な教育活動が4月当初より一斉に開始されます。全ての教育活動を全力で取り組んでいくことは大切なことではありますけれども、これを全て全力で取り組むということになると、教師も生徒も非常に疲弊して、多忙化の中で過ごしていくということになってきます。そこで本事業では、学校の教育活動を、右の方の図を見ていただきたいのですけれども、夢、イベント、学び、生活という4つのプロジェクトに整理をしていきます。この事業では、整理をした後、時期ごとに特に重点的に実施する活動を絞っていきます。先ほどの話にもありましたように、父性である学校の規律というものは、どうしても4月にきちんと付けておかなければならないということで、4月には授業研究も必要ですし、遠足などのイベントもありますが、この規律を最重要課題として取り組んでいくということをやっております。そこで、この学びと生活のところの4月の欄に、学習、生活、規範づくりというところに丸囲みを付けています。4月はこれを重点的に取り組んでいくということで設定をしているものでございます。

そして5月になりますと、今度は重点的な取組が変わっていきます。つまり4月に子供たちはだんだんと学級になれてきて、そのときに改めて仲間づくりをしていきたいということで、今度はイベントというプロジェクトの方が仲間づくりを実施していくというふうに、年間を通じてそれぞれ月ごとに、重点的に取り組む内容を決めていきます。そうすることによって、学校の教職員が一体となって重点的に取り組んでいくことができるようにしております。なお、ほかの活動を軽視するというわけではなくて、重点的に取り組む内容を教師みんなが柱として取り組んでいくということにしております。このような学校の年間計画を立てて、取り組んでいくということになっていきます。

それでは、具体を見ていただきたいんですけれども、3ページをお開けください。これは私たちの推進校の1校である中学校の展開計画です。4月から3月までの展開計画をお示ししております。一番上には、先ほど久我教授の話にもあったようにボイスシャワー、つまり声掛け、勇気付けです。これは重点的というよりも、年間を通してそれぞれの教職員が掛けていくべきものですので、年間を通じてやるという意味で青い色を付けております。下の方はそれぞれの4つのプロジェクトで、青色の網掛けがされている部分が重点的に取り組んでいく内容ということになっていきます。このような形で展開計画を各学校別に立てて、実施をしていっているところでございます。

続きまして、次の4ページをお開けください。この展開計画を立てる以前に全ての教職員でワークショップを行いまして、本当に各学校にとって効果的な取組は何かということで、全ての教職員から出てきたものをお示ししております。このような効果的な取組を基にしながら、展開計画を立てていくということになってきます。

さらに、次の5ページをお開けください。先ほど重点的な取組ということをお示ししましたけれども、それぞれ月が進んでいくごとに、最初に立てた展開計画というのがだんだん薄れていきますので、ここでは、それぞれの月で重点的な取組はこれだというのを毎月、ミドルリーダーが各先生方にお示しをしております。その示している実際の用紙をここに掲載させていただいております。このような形で各月ごとに、各教職員に配っていくという形をとらせていただいております。

次の6ページをお開けください。このような取組は、地域に、又はその他の学校に発信していくことが必要になってきますので、これもミドルリーダーの方が、通信の形でホームページにアップしている内容をここにお示ししております。6ページ、7ページとして載せておりますので、また見ておいてください。

そして最後の8ページですけれども、推進校を11校指定させてもらっておりますけれども、高知県には中学校が107校ございます。全ての学校にこういう取組を広めていきたいということもあって、校長研修会の場を通して、各学校の校長先生にもこういう取組を広めるというところもやっておるところでございます。

以上、簡単ですけれども、志育成型学校活性化事業の説明をさせていただきました。

【小川主査】  ありがとうございました。

それでは、今の浅野先生、久我先生、そして飯田補佐の3名の意見発表に対して、何か質問、御意見があればお願いします。

【田村委員】  失礼いたします。岐阜大学の田村でございます。久我先生、飯田先生の御発表、非常に共感を持って聞かせていただきました。ありがとうございました。

先ほどの米満校長先生のお話との共通点を考えますと、どちらも対症療法的ではない、久我先生のお言葉をお借りしますと「枝葉の闘い」ではない、根本的な学校づくりの必要性ということをお考えだと受け止めました。そのための条件整備とはどうあるべきかというお話であったと思います。

2グループのお話に共通することとしまして、これから私たちが子供たちに付けていかなければならない力は、大きく分けて2つありまして、1つは学び続ける能力、高次の思考力といったような、知識社会を生きていく力というのが1つ。それから2つ目が、そのような知識社会は、非常に厳しい、格差の広がっていくような社会でもありますので、その中で、いかに社会の中で思いやりを持ち、信頼関係を構築し、温かいコミュニティーを作っていくかということ。こういった2側面が、久我先生の御発表でいいますと、1つ目が「I」のところで、2つ目のところが「We」、優しさというところ、そのように整理することができたかと思います。

そういった教育を推進していくということを考えた場合、やはり学校の先生方御自身が、子供の一つの学びのモデルといいますか、学びの共同体という言葉もありますけれども、先生方御自身が学び続けていく、しかも協働的に学び続けていくことが必要かと思います。高次の思考力を育成する、授業が今根本的に変わろう、変えられようとしているのですが、ある意味先生方は、自分たちが学ばなかった方法でこれから教えていかなければならないことになっているのですね。

それから、2点目の話でいいますと、やはり社会の中で信頼関係を構築していく。信頼感のある中、子供を認めて、ボイスシャワーを掛けていくというお話もありましたけれども、そういった力が学校の先生方に必要です。しかし一方で、先生方は今、例えば様々な社会的な批判を浴びせられ、管理もいろいろとあり、学校を消費の対象として見られるという社会的な風潮もあり、そういった中でなかなか厳しいものもあるのではないかと思います。米満校長先生は、お話の中で、校長に誇りが必要だとおっしゃいましたが、教員にも誇りが必要なのではないかというふうに強く思っています。

そうした2点から考えたときに、1つ目の「I」の能力を育てる、当然授業研究というものが、日本の大変いい教師文化であるのですが、これをますます活発にしていかなければならないけれど、米満校長先生のお話の中では、これがだんだんと薄くなってきているという話があったかと思います。それからもう一つ、社会とのつながり、地域との連携も重要なのですけれども、難しくなっている。その中で、米満校長先生には、若手の教員たちを地域の中に積極的に送り込んで、一緒に地域づくりをしていくというお話があったと思います。これに加えて、私の持論ですけれども、子供も大人と一緒に、子供が一緒に作っていくべきということもあるかと思います。

ほとんど意見のようになってしまいましたが、これから質問も交えてさせていただきたいと思います。このように、するべきことは非常に多く、しかし一方で厳しい条件というのがある中で、久我先生のお話にもありましたが、いかにして、先生方のエネルギーが出るようにしていくことができるのかということをお聞きしたいのが1点。

それからもう1点ですけれども、やはり先ほどの御発表、エビデンスに基づいて、大変効果的な指導方法というのを考えて、構築されたと思うのですが、どのようなものも完成版を学校に持ってくると、それは例えば形だけが残って、理念というものがなかなか伝わりにくく、やらされているように感じることもありますよね。そこはもちろん、先ほどのワークショップ、自校化のステップというのが効果的なのだと思うのですけれども、そのほかにもございましたらお願いします。いかにして先生方のエネルギーを持続し、拡大していくことができるのか、それから形だけではない、本当に理念が伝わって実践化につながっていくにはどうしたらよいとお考えか、そういったところについて教えていただければと思います。

以上です。

【小川主査】  よろしいですか。お願いします。

【久我教授】  ありがとうございました。先生方の自負を育てる、期待感、エネルギーを蓄えていくには、大きく2つの力が必要です。1つは、「組織化すると学校が変わりそうだ」という期待感を持たせることです。そのときにいろいろな学校の変容事例を見せながら、「我々が組織的に効果のある指導を入れると、この学校でも変わりそうだ」という期待感が先生方を動かす力になります。これが1つ目です。

2つ目、最も大きなエネルギー源は、やってみたら子供が変わったという、子供の変容です。やはり子供の変容が全ての先生方のエネルギーを生み出していきます。だから私が非常にこだわるのが、先生方の成功体験です。先ほどの子供たちもそうなのですけれども、先生方は今いろいろなバッシングの中で、失敗体験ばかり積み重ねている先生もいないわけではないです。だけど、「そんな先生も大丈夫だよ」と、「組織でやって、みんなでこうやって規範を作り、勇気付けしていけば、うちの学校もみんなの力で変われるよ」という、組織の中で先生方にも勇気付けながら、展開していきます。ボイスシャワーは生徒に対してもありますけれども、先生方へもボイスシャワーを掛けながらやっていくということは、すごく大きな力になっていくのだと思います。

2つ目の質問で、完成版を持っていくと、自校化することがなかなか難しいのではないかという話がありましたけれども、おっしゃったとおり、私自身の設計の中でも、自校のオリジナルの取組を先生方の手で生み出していく、このステップ、つまり組織的な教育意思形成の段階が大切で、命だと思っています。これが1つ目です。

もう一つは、実はそれがすごく大きな効果があったと思っているのですが、高知県教育委員会はいろいろ、あの手この手を考えてくださっています。例えば推進校における授業研究発表会というのがあります。あるいは推進校同士の連絡協議会というのがあります。その中で、うちの学校はこうやったらこうなったよという、自分たちの学校の自慢発表ではないのですけれども、自分たちがこうやって取り組んできたという、先ほどの誇りと自負ではないんですけれども、そういうものを主張する場面をふんだんに設計して、入れてくださっています。そのことが、先生方の自負を育て、また見に来た人たちが、ああ、こうやれば変わるのだという、期待感を高め、そして、実際に取り組むことで子供が変わることによって、さらに自分たちが勇気付けられる。そしてお互いの取組を見ながら、自分たちのオリジナルをさらに作っていこうという、創造的な志向を生み出していくという、そのメカニズムが上手に今動いている感じがします。

以上です。

【小川主査】  田村委員、よろしいですか。

【田村委員】  はい。大変勉強になりました。

【小川主査】  ほかに、いかがでしょうか。

竹原委員、どうぞ。

【竹原委員】貴重なお話をありがとうございました。2つの大学の事例と現場の事例から、気が付いたことは、やはり子供を中心に据えて、その子供の時間軸と空間軸、そしてIとWeをいかにチームで支援するか、伸ばしていくかということで工夫されている。その中で、兵庫の事例や鳴門教育大学のご発表のように、プロセスをきちんと丁寧に伝えていただくと、学校や教室で生かせると思います。結果だけだと、すばらしい、けれど少し難しい、ということになってしまいますので。小さな成功体験を重ねることが、先生たちを元気付けて、さらに大きな声になっていくというのがよく分かりました。

もう一つ、ボイスシャワーという効果を初めて聞かせていただいて、とてもよかったです。子供をよく見る、よく聞く、子供をよく観察をして、心を傾けるということがなければ、ボイスシャワーを浴びせることができないのですね。

【久我教授】  おっしゃるとおりです。

【竹原委員】それを1年間通じて表にしてあるということは、常にこれがベースであると可視化できているということだと思います。この表はどこかに張ってあるのか、皆さんの頭にあるのか分かりませんけれども、学校がチームとして子供たちを1年間でどう育てるかを可視化され、とてもすばらしい。こういうシンプルで、共通のベースがあるということが力を持つのではないだろうかと思いました。

最後に、子供の自己肯定感ですが、もしかしたら教師の自己肯定感にもつながるのですが、周りの人から認められる、それは地域の人だったり企業だったり、違う行政の方だったり、保護者や学校関係者だけではない人からも認められることが大きな力を発揮するのではないかと思います。私たちは地域の立場ですけれども、改めて御一緒に歩みたいと思い、とても感動して聞かせていただきました。ありがとうございました。

【久我教授】  ありがとうございます。

【小川主査】  ほかにいかがでしょうか。

では、藤原委員、どうぞ。

【藤原委員】  御報告ありがとうございました。

お聞きしたいのが、まず管理職の在り方について考える際に、日本の管理職を育成し、任用するのは、任命権者が責任を持っています。したがって、まず任命権者の認識を押さえないと前に進めない部分というのがございます。そういうところがあって、国研といたしましては、政令指定都市や都道府県教育委員会に対して、どういう課題を持っているのかということを調査しております。それによりますと、実際になった後の研修というよりも、なる前に課題というのを強く感じております。つまり、これは先ほどの御報告にもありましたけれども、なってほしい人に受験してもらうというステージ、つまり人材確保のステージに大きな課題を感じているということでございます。さらに、そのステージにおいては女性管理職、女性に管理職を目指してほしいのだけれども難しいという課題に直面しております。これが今、任命権者、本庁サイドの課題、したがって、マネジメントに魅力を感じて、目指してほしいという願いというのを持っております。

もう一つ、教育委員会サイドで、教育センターがございますけれども、ではセンターサイドがどういう課題に直面しているのか、これもやはり新任管理職研修とかそういう段階ではなく、なる前の研修に課題を感じている。つまり主幹研修とかミドルリーダー研修とかのステージに課題を感じています。それはどういう課題に直面しているのかというと、質の保証について課題を感じている、つまり、いっぱい、結構研修は打っているのだけれども、この質というものを高めることに課題を感じているというのがセンターの課題であるということでございます。つまり新しい校長像に即して研修プログラムを組むというのが、結構課題を感じていらっしゃるというのが現状でございます。

こういう現状の下で、大学院がどう貢献できるのかというのが一つの課題なのだろうと思うのです。両大学の御発表を聞いて、教職大学院がその大きな可能性があるということを深く実感して、感銘いたしました。それと同時に、両大学で、育成すべき校長像というのは微妙な違いもあるのではないかと感じながら、お聞きしていた次第でございます。

そこで、両大学にお聞きしたいのが、教職大学院というのはそういう効果がありますので、今後拡張していくことが望ましいのだろうと考えています。それを前提としながら、先ほどの教育委員会、任命権者の課題、つまり、管理職になりたい人にマネジメントの魅力を感じてもらって、忙しい人に研修に参加してもらって、マネジメントの基礎的な力量を身に付けるためにはどうすればいいんだろうかという課題に対して、大学院が今どういうような貢献が可能なのかどうか。そのために国としてどういうような支援とか制度というのが可能なのか、そういうことについてアイデアがあれば、今の任命権者の認識の課題からしたときの大学院の貢献可能性、そのための国の支援、制度の在り方についてのアイデアというのを頂けたらと思います。よろしくお願いいたします。

【小川主査】  浅野先生と久我先生、両方ですね。

【藤原委員】  はい。

【小川主査】  では、浅野先生、よろしくお願いします。

【浅野教授】  藤原委員からのご質問ですが、教職大学院として、管理職の人材確保にどのように貢献できるかについてお話します。教職大学院のカリキュラムには、共通基礎科目があり、その中でマネジメントを扱う領域があります。その科目の内容を、ただ単に学校をマネジメントするという観点ではなくて、マネジメントを学ぶことによって、自らの仕事がしやすくなるとか、組織の動きをよく知ることによって、自分の教育活動がより効果的なものになるとの視座を持ってこの科目を提供するのが、ひとつの貢献だと思います。つまり、マネジメントを「より身近」で「役に立つ」「面白いもの」だと実感してもらうことです。

次に、教職大学院で一番定員の多い我々でも、100名にしかすぎませんので、兵庫県との連携研修といった外部の研修会での貢献が考えられます。管理職に限定せず、その対象ミドルリーダーの層に拡大し、マネジメントの魅力をアピールすることが考えられます。

以上です。

【久我教授】  資料3-3をごらんください。まず大学院の指導についてお話をします。5ページを開いていただけるでしょうか。

これが、鳴門教育大学教職大学院のOJT型のスクールリーダー、あるいは実践力育成のカリキュラムの構造図になっています。1年目に、前期共通科目をやり、後期専門科目をやります。それと同時に、2年目の実習科目に向けた現任校アセスメントを展開します。そしてアセスメントをしながら、現任校の課題解決プログラムを構築して、2年目に実際に学校の課題を解決するOJTのトレーニングをしていきます。実際にやった、そして学校を変えたという事実を院生たちに実感させるということが、一つ大きな目的になっています。

6ページから、実際に私のゼミ生が展開したある高校の改善事例を載せてありますけれども、大学院生は、現任校実習を通して学校の課題を俯瞰的に捉えながら、そして学校の課題に適合した改善プログラムを構築し、そして教職員の組織化を生み出しながら展開しました。そのことに,すごく手応えを感じていました。つまり、先ほど組織マネジメントの魅力、マネジメントをすることの魅力化といいますか、組織化するとこんな大きな成果が生まれるということを、院生自身が体得します。だから、そういうような実習を通した中で院生の力を蓄えていくということが、なりたい人を登用していくというときに大きな力になるのではないかと考えます。

一方、これは1つ、鳴門教育大学からの強いお願いなのですけれども、うちの大学は8年目を迎えて、やっと今年度、定員を充足しました。もう少し派遣定数に対して財政的な支援を頂けるとうれしいなと思っています。いい内実はあると思っているのですけれども、なかなかそれが外部から評価されていないというところがあります。

2つ目の大学の管理職養成研修への貢献について言います。大学の貢献は、今の資料の1ページ目をごらんください。1ページ目から4ページ目です。これは鳴門教育大学と徳島県教育委員会との連携の中で、今年度4月から始動した主幹教諭、指導教諭の研修会です。各県のセンター研修等、いろいろ形成されていますけれども、我々から見ると、本当にこのセンター研修で管理職が養成されるのかという疑問がありました。それで、大学とセンターが、センター研修を全部洗い出して、見直して、主幹教諭、指導教諭の研修を今年スタートさせました。

まだこれについては、何のエビデンスも出ていません。スタートしたばかりですけれども、その指導教諭、主幹教諭に、我々教職大学院のスタッフ14名が講義もしますし、それから、その講義を基に課題設定した自己研修を促します。さらに14名のスタッフが、随時個別支援をします。そして定期的に集まって、ラウンドテーブルもやります。このような流れで管理職を養成していこうということです。管理職として組織をマネジメントすることのダイナミックなおもしろさを、是非こういう研修を通して味わっていただきたいと思っています。やはり管理職の魅力化ということが一つ大きなテーマになっています。

以上です。

【小川主査】  藤原委員、追加で何かありましたらお願いします。

【藤原委員】  ありがとうございました。今、センターで行っているセンターの高度化を図りながら、一挙に単位を取るのではなくて、数年間掛けて蓄積するような単位蓄積システムもあるのではないだろうかと感じた次第で、現実的な形で、忙しい優秀な管理職が研修を受けられる仕組みが必要であることを痛感いたしました。ありがとうございました。

【小川主査】  ありがとうございました。米田委員、どうぞ。

【米田副主査】  専門職大学院についてでありますが、教育委員会サイドとして、やはり派遣する側の余裕のなさという悩みがあるということは、先生方も十分御承知のことと思います。発表していただいた大学院についてですが、カリキュラムが大変充実していて、魅力的だということを感じております。だからこそ本当に多くの先生方に研修していただきたいという思いを、私も強く持っております。私の地元、秋田大学でも28年4月から教職大学院がスタートする予定でありまして、それがある意味で一つのジレンマにもなっているのですが、今まで兵庫教育大学の方の大学院と宮城教育大学、それから上越教育大学の方に結構お世話になっているのですが、この後、地元で教職大学院がスタートしますと、さあどうしようかということで、実は悩んでいます。この後いろいろなところでスタートしていきますと、どこも同じような内容ではアピールできるものがだんだん欠けてくるのかなと思います。そういう意味で、この後一つ一つの大学が、うちの方はこれだというものを強く持っていないと、なかなか全てが生き残るというのは難しいのかなという感じがいたします。それが一つです。

それから、この重要性に関しまして、やはり全員が研修できればいいのですが、それは無理ですので、その研修したことをいかにして、駅伝に例えればたすきのようにつないでいくかということが大事です。何とか、それぞれの年代ごとに研修を受ける人がきちんといて、それがまた次の人に伝わっていくような形にできればと思っております。そういう意味では教職大学院の先生方に、またこの後いろいろ期待したいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

以上です。

【小川主査】  ありがとうございました。

もう時間が過ぎてしまいましたので、ほかにも御意見があるかと思いますけれども、きょうはこれで終わらせていただきたいと思います。米満校長、浅野教授、久我教授、そして飯田補佐、本当にきょうは貴重な意見発表をありがとうございました。

それでは、次回の予定について、事務局からお願いします。

【福島補佐】  次回の日程につきましては、4月28日の15時からの開催を予定しております。議題としては、主幹教諭等を予定しております。よろしくお願いいたします。

【小川主査】  次回、28日15時からということですので、またよろしくお願いいたします。

それでは、本日の会議はこれで終わります。ありがとうございました。

 

── 了 ──

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