チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会(第3回) 議事録

1.日時

平成27年2月3日(火曜日) 16時~18時

2.場所

中央合同庁舎第4号館 12階1208会議室

3.議題

  1. 委員からの意見発表
  2. 有識者からの意見発表

4.議事録

中央教育審議会初等中等教育分科会

チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会(第3回)

平成27年2月3日

 

 

【小川主査】  皆さんおそろいですので、始めさせていただきます。お忙しい中、本日も御出席いただきましてありがとうございました。

今回の議題は、前回に引き続いて学校や教職員の現状について、委員及び有識者から意見発表をしていただきたいと思います。

今日は藤原委員のほかにもう一人、新潟県学校事務研究協議会の佐野公則会長にお越しいただいております。今日はよろしくお願いいたします。

一言、御挨拶よろしくお願いいたします。

【佐野会長】  初めまして。新潟から参りました、新潟県学校事務研究協議会の会長をさせていただいております、新潟市立黒埼中学校主査の佐野公則と申します。本日はよろしくお願いいたします。

【小川主査】  よろしくお願いいたします。

それではまず、配付資料について、事務局から説明をお願いいたします。

【福島補佐】  本日の配付資料は、議事次第にありますとおり5つでございますけれども、資料1は佐野会長から御提出いただいた資料、資料2は藤原委員から御提出いただいた資料でございます。それから、参考資料1として事務職員の現状について。2としまして事務職員の在り方に関するこれまでの答申・報告等、3としまして、これは企画課で作ったものですが、これまでの主な意見をまとめた資料をお配りしております。万が一不足等ございましたら事務局にお申し付けください。

【小川主査】  よろしいでしょうか。今お話があったとおり、今日は学校事務職員制度の仕組みや現状を中心にしながら、学校現場の問題を考えていきたいと思います。よろしくお願いします。

それではまず、最初に今日のテーマである学校事務職員の制度、またその現状について事務局から参考資料1に基づいて説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【福島補佐】  参考資料1を御覧いただきたいと思います。

事務職員の現状についてと書いております。これを使いまして簡単に説明をさせていただきたいと思います。

まず1ページを御覧いただきたいと思います。

事務職員につきましては、学校に置かなければならない職といたしまして、学校教育法に規定されております。学校教育法では、事務職員の職務につきまして、事務職員は事務に従事すると規定されておりますけれども、具体的にどういった業務に従事をしているかの例示として、資料にまとめさせていただいております。左下に主に教員が従事している事務、事務職員が従事している事務という形でそれぞれ書かせていただいています。

公立小学校、中学校、中等教育学校の前期課程、特別支援学校の小中学部の事務職員につきましては、義務教育費国庫負担法に基づきまして、国庫負担をしているところでございます。

続きまして、2ページを御覧いただきたいと思います。

2ページは、公立の小・中・特別支援学校における事務職員数の推移を示したグラフでございます。平成26年度のところを見ていただきますと、上の赤い丸と青い丸で点線がございますけれども、小中学校につきまして、大体一校当たり県費の職員が1名程度配置されております。特別支援学校につきましては、一校当たり3.46人程度が配置されているという状況でございます。

続きまして、3ページを御覧いただきたいと思います。3ページ以降はこのような事務職員が、特に小中学校につきましては、学校に約1名程度配置されているという状況を踏まえまして、事務職員の職務範囲の明確化等の活動の充実のための取組を例示させていただいております。

3ページは、事務職員の職務範囲の明確化に関するものでございます。これは事務職員に対する期待を受けまして、役割や職務の領域の明確化を図るための取組でございます。まず上のグラフにつきましては、都道府県を対象にした調査でございますけれども、都道府県から市区町村教育委員会に対して、標準職務表等を作るよう要請をしていることについて、通知をしているところが57.4%となっております。下のグラフは市区町村を対象とした調査で、標準職務表を作っているところが16.5%ということで、まだまだ低い状況にとどまっております。

続きまして、4ページを御覧いただきたいと思います。

4ページは学校事務の共同実施の状況でございます。小中学校事務職員は、1校1名ということでございますので、平成10年の中央教育審議会の答申等におきましても共同実施について指摘されたところでございます。現在取組は進められておりますが、実施率といたしましては、一部地域で実施をしているというところも含めまして、上のグラフでございますが、48.8%という状況でございます。また共同実施の目的、その目的をどのぐらい達成しているかというのがその下のグラフでございますが、共同実施によりまして事務処理の迅速化、あるいは適正化といったような効率化が図られているというデータが出ておりますけれども、下の方にありますとおり、学校マネジメント力強化といった効果はまだ十分でないというような状況でございます。

続きまして、5ページを御覧いただきたいと思います。

これは事務職員の方々の研修、資質・能力の向上に関する取組でございますけれども、市区町村立学校における事務職員研修の体系化、あるいは実施率というものにつきましては、策定しているところが7.4%、下の実施率についてもまだ低い水準にとどまっているという状況でございます。

下の取組事例は三重県教育委員会で、共同実施を中心に事務職員の研修体系を整理して取り組んでいるという事例をまとめさせていただいております。

このチーム学校の作業部会の議論におきましては、学校の組織運営体制あるいは事務処理体制の充実のために事務職員の役割が極めて重要だということ、また、教員以外の専門性を持つ方が学校の教育活動に参画する中で、どういう役割を事務職員の方が期待されるかということ、また、その役割を果たすにはどういう仕組みが求められるかといったようなことが問題となると考えております。

本日は、佐野会長、藤原委員の方から意見発表いただき、チーム学校の下での事務職員の在り方について御議論いただければと思います。

よろしくお願いいたします。

【小川主査】  ありがとうございました。今、事務局から説明のあった内容の質問等々については、これから2つの報告がありますので、それが終わった後、一括して議論していただければと思います。よろしくお願いします。

それではこれから佐野会長、藤原委員の方から続けてそれぞれ報告を20分から25分程度行っていただきます。そして、2つの報告を受けた後、一括して50分ぐらい時間が確保できると思いますので、そこで質問、意見交換をしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

では、最初、佐野会長からよろしくお願いいたします。

【佐野会長】  私の方からは、学校事務職員の現状ということで、取組内容や、事務職員の仕事の中身についてお話したいと思います。

まず、新潟県は、共同実施を平成20年度から導入しております。学校を取り巻く環境の変化、学校教育に対する期待の多様化、学校教育が抱える課題の複雑化、このほかに教員の多忙化というような背景がありまして、そのために事務処理体制の整備が必要だということを背景に、共同実施がスタートしました。

また、新潟県は今後10年間において、事務職員の約半数が入れ替わるという世代交代を迎える現状がありました。その中で事務処理の制度の確保や事務職員の資質の向上を図る必要がありましたので、共同実施の導入という形になりました。

共同実施の目的につきましては、共同で複数校の事務を行うことによって、資料にありますように、まず適正かつ円滑な事務執行、事務機能の強化、事務処理体制の確立を目指しています。そして、学校経営全般に係る支援を行うことによって、最終的には学校教育の充実を目指すという中身になっております。

今、お話にあったように、基本的には学校事務職員の配置は1人であります。その中でいろいろ改善していく中でも、1人ではなかなかなしがたい部分がありました。その部分を、複数校の事務職員を組織化することによって、幅広い知識と経験を持つ者とのOJTを加味して、学校事務職員の役割を組織の力によって、より効果的で効率的に実現しようとして考えたところであります。

そして、学校運営の改善に必要な事務を行って、個々の学校経営参画の実現を組織として支援していこうという考えがあり、そこに意義を感じております。

具体的にその活動内容でありますが、これは、開始当初から大体三本柱にはなっておりますが、まずやはり行政の要請にも応える部分がありますので、事務処理の適正化が第一であります。そして、効率化を進めるというところであります。学校における教職員の諸手当の認定、点検審査、認定といった部分がこれまでも権限の移譲で校長には下りてきていました。共同実施の開始に伴って、事務主幹に専決権限を与えるということが新たに加わっております。このほかに旅費の請求の内容審査や服務関係の表簿の相互点検、こういうところで適正化が大きく見られています。

市町村によっては、財務会計の端末機を集中的に配置し、その入力作業を行っているところもあります。

次に、学校管理運営全般に係る支援として、各学校でまちまちだった様々な取扱規定の制定や、手引きの作成を市町村ごとで対応して支援している部分が見られました。

そして、事務処理を効率的に進めるために、作成フォームの開発や提供、また、そこでの事務処理のシステムを構築する部分が見られていました。

先ほどお話しましたように、新潟県は毎年のように二、三十人の新採用者を迎えております。その中で、臨時の事務員、経験の浅い者への資質の向上も目的の一つになっております。OJTを繰り返しながら、仕事を一緒に行いながら、留意点とか注意すべき点等を確認し、また、現場に出向いて実地指導を行う、そういうことが見られています。

共同実施の開始から六、七年がたちますが、最近では学校事務の改善検討、これは私個人のグループでもやっておりますけれども、教頭先生方と事務職員とで各学校における学校事務の課題や問題点について共有して、その改善する方策にも当たっております。これは、共同実施の進化の部分があると感じております。

次は、共同実施がもたらす効果や成果であります。

やはり顔を見合わせて一緒に仕事をしていく中で、学校間、事務職員間の情報共有が強化されておりますし、その中で連携の強化が図られています。そして事務処理の進め方の標準化・迅速化・機能の向上が見られています。それを通して事務職員個々、全体の力量の形成が図られています。これは資質能力の向上につながっていると思っております。

そして一番大きなことは、やはりこれを主導しています県教委や市町村教委との連携の強化が見られています。規則、体制の整備に当たっては、やはり教育委員会の果たす役割は多いと感じておりますので、この部分の連携強化が今の形を作っていると思っております。

事務職員の連携によって事務機能の強化、共同実施での研修、OJTによって資質の向上、県内では未配置の学校もありますので、新採用事務職員への支援の充実が図られています。

そして、進めていく中でやはり課題も見受けられています。まず、共同実施に対する理解から始まりますが、事務職員の中の意識改革もまだまだ課題として残っている部分であります。

そして、開始当初はやはりいろいろなことをグループ長、いわゆる責任者に業務が集中しまして、業務量の多さ、それに伴う負担がかなり聞こえました。これをどのように改善していくか、軽減を図っていくかというところが課題となっています。現在ではこの部分は、大分抑えられてきていると思っております。

そして、県内ではやはり執務を行うところ、学校とは限らず市町村教育委員会の建物や市役所の建物で集まり、実施している部分もありますので、その中でICTの設備を含めて整備がなされていないという課題も聞こえております。

次は、今現在もやはり次の段階に進むときに見受けられる部分ですけれども、教員の事務負担軽減にどのように取り組んでいくか、教育活動の支援にどのような取組を考えていくか、新採用者、経験の浅い者への対応、特に最後の方ですけれども、新採用者に対して業務の滞りがないように、どのような支援方法がいいのか、また、その教え方もどのような形がいいのかという部分がありますし、この人たちに対してどのようなキャリアを形成させていけばよいかというところが課題として残っています。

4番目の教員の負担軽減については、一つ例を挙げれば、負担と感じている部分を事務職員が支援しながら進めていく部分で、会計の処理であったり、転出入の児童生徒の事務であったり、こういう部分も考えられますし、教育活動の支援としては安心・安全な教育を受けられる場、いわゆる施設環境の部分の整備、教材教具の整備に当たって、授業するときに使える状態に提供していく部分で加味できないかという部分を考えています。共同実施が進められる中、最近では、その中で県内、新潟市においても各グループ、地域において進みの度合いが変わってきました。その中で、一定の共同実施を推進する中で、やはり全県的な視野での総括やグループ長の資質向上を図る必要が見受けられてきました。

そうした中で、平成25年度から総括事務主幹職というものが設置されました。目的に書いてありますように、全県的に共同実施の推進をどう考えるか、グループ長の資質をどのように向上させていくかというところが目的であります。役割としては4つ挙がっております。まず、複数のグループ長を総括という部分であります。市町村によってグループ数は違いますし、そこの部分で活動の状況を掌握して進め具合を指導していくという部分が必要になってきています。課題や問題点について必要な助言、指導を行うという部分があります。そして、各々推進協議会を設けていますので、そこで教育委員会の職員とともに企画運営に当たる事務局的な役割を担うという部分であります。そして、グループ長の資質・能力の向上にもつながりますが、この先リーダーをどのように育成していくか、必要な研修の企画運営に当たるという部分であります。さらに県全体又は市全体の共同実施を推進していく中で、いろいろな施策が打たれますけれども、そこで必要な意見具申を行うという役割を担っています。

次に、政令市の新潟市においては8行政区がありますので、その中で、地域の学校事務支援室というものを組織しております。私は、一番右側の西地域学校事務支援室に所属しております。場所としては、西区の第3グループというところですが、このような組織図の中で活動をしております。

新潟市の総括事務主幹は、この中の地域学校事務支援室長の職務を請け負っております。県と同じように複数のグループ長の統括や、地域内の事務の指導助言のほかに、事務主幹のいないグループの専決、手当の決裁等を行っておりますし、地域連携のコーディネーター業務というものを新たに追加されております。

この六、七年で様々な部分で、やはり全体で協議する場が必要だという声が聞こえてくる中で、平成25年に共同実施要綱も改正されました。その中で、全県で協議する場として、全県の共同実施推進協議会、全県のグループ連絡会というものが新たに組織の全体の中で設けられていきます。これが共同実施に係るこれまでの流れと活動、効果、課題であります。

そして、次に事務職員に関わる部分の職務の範囲、役割についてであります。

平成14年に分掌事務通知という形で、それまで各学校で関わる部分が様々だったものが一通り示されました。それから、事務主幹職の設置、共同実施の開始、そして総括事務主幹職の設置という、この10年間の変化の中で新たな見直しが行われました。この中で学校事務職員は、学校組織マネジメントを成立させるための重要な学校経営職員だということが示されております。教頭とともに校長を補佐し、学校経営を担い、学校事務、共同実施の経営及び企画運営を行うことが、標準的職務の通知で示されています。

その具体的な内容でありますが、最初に出てきているのが、学校事務職員として積極的に参画する範囲が示されています。この範囲については、これまでよりもかなり広い分野、いわゆる領域として示されております。個々の関することよりも更に広く関われる部分を視野に入れています。

このほかに職位に応じた職務が細かく明示されました。主事、主任、主査の職務でありますが、これまでの分掌事務通知に主に掲載されていた中身がここに反映されております。その中でやはり機能として捉えていくということが考えられております。予算執行に当たる部分、就学支援に関する部分、施設環境に関する部分、それから情報管理に関する部分とか、このほか、これまでもやっていますが、職員の任免、服務、給与、旅費、福利厚生といった部分がこの中に更に細かく示されております。

次に、事務主幹の職務では、今お示しした主事、主任、主査に掲げた職務のほかに、これらを総括的に捉え、更に共同実施も視野に入れて進む部分がこの中に盛り込まれています。個々の業務のほかに共同実施の経営に関すること、決裁に関すること、研修、企画、運営に関すること、それから他の機関との連絡調整、そして未配置校における執行監督といった部分であります。

さらに、この上に総括事務主幹職の職務が示されております。先ほど役割としてお示しした中身がここに具体的に示されております。

それでは、各学校における事務職員の位置付けとはどうなのかというところでありますが、学校管理規則が改正され、新潟市においては平成25年度から小中学校に事務長、事務主任の位置付けを行っております。事務長、事務主任を置く趣旨や役割については、そちらにお示ししたとおりでありますが、校長の監督を受けて当該校の事務職員、その他の教職員が行う事務を総括するということです。そして、これらを含めて当該校の事務をつかさどるという中身であります。また、学校事務の共同実施の促進、事務職員の資質の向上、研修の充実といった部分で処理体制の強化を図るところが大きいと思います。

事務長に充てられる職としては事務主幹、総括事務主幹、そして事務主任に充てる職としては主任以上の主任・主査で、いわゆる学校の校務分掌図における管理事務部の主任として位置付けているかどうかというところを教育委員会としては承認の基準として考えております。

主な職務について、具体的な数値としましては、新潟市において平成26年度のデータでありますが、事務長は100%、事務主任においては71.2%、主査のみで考えれば88%の承認になっております。

次にお示ししたのは、いわゆる事務長、事務主任といった部分で校務分掌の組織モデル図が示されています。このような形で学校における事務をつかさどるという中身になっておりますし、共同実施で組織的に支援していく部分が基盤になるということであります。

最後に、これらを進めていく中では、今までもお話ししたように、事務職員の資質・能力の向上が求められます。研修制度については、新潟県はなかなか遅れていた部分が多いですが、まず政令市の新潟市が研修の充実を図ってきました。そして、新潟県の方も、この平成26年、研修の全体計画を見直し、示されております。標準的職務の通知や共同実施の進み具合に伴い、研修制度や研修内容の改善が図られてきております。さらに、標準的職務に示された業務をもっと実現することによって学校教育の充実が図られると考えています。研修についても今、何が必要なのかというところを改善しながら、また充実していくことが必要と考えられております。

簡単ではありますけれども、私からの発表を終わらせていただきます。ありがとうございました。

【小川主査】  ありがとうございました。

それでは、続けて藤原委員、よろしくお願いいたします。

【藤原委員】  どうぞよろしくお願いいたします。

私の方では、国立教育政策研究所が行ってまいりました研究も踏まえながら、御説明申し上げたいと思っております。

まず、1ページお開きいただきたいと思います。通し番号下の1ページのところでございます。

まず、今回議論するこの学校事務が、このチーム学校の審議事項の中でどういう位置付けにあるのかということをまず確認したいと思います。これからの学習指導要領の改訂を見据えながら、教員が専門職としてより教育活動に専念できるためにはどうすればいいのかというのが我々の問いでございます。そういう問いに対して、まずは学校の中の仕事というものをカテゴリーに分けてみたのがこの資料でございます。分けますと、まず1つ目が教育活動でございます。2つ目が、より教育に付随したような指導事務と言われるものでございます。それに加えて学校運営事務という、3カテゴリーというのがあるわけです。ですから、教員が教育により専念できるためには、それぞれのカテゴリーに手を打つことができるということでございます。まず1つ目のカテゴリーでございますと、例えば今、TALISの調査によりますと課外活動が多いわけですから、その役割体制を見直すとか、あるいは前回議論ありました、例えば小学校の教科担任制を検討するとか、そういうところのアプローチがこの1つ目のところ可能なわけでございます。

次に2つ目は、例えば図書館司書の配置や理科支援員の配置、そういうところが非常に学校現場では評価が高いとお聞きしております。これらの指導事務に関するサポート体制、分担体制を組むというアプローチもあり、これが2つ目の着地点でございます。

今日のテーマはこの3つ目でございます。学校運営事務というところでございますが、教員が教育活動に専念するためには、いろいろな総合的な手を打つ必要があって、その中の一つだという理解をまず確認する必要があると思われます。学校運営事務に関わって学校事務の共同実施をしたからといって、全て教員が何とかなるというものではないけれども、手を講じることによって貢献できる可能性はあると理解すればよろしいかと思います。

この学校運営事務という領域でございますけれども、大きく1から8ぐらい想定されるわけでございます。今現在、日本の事務職員が担当していますのは6から8、予算とか人事とか今現在、施設にも何らかの形で加わっている事務職員が多く、この5番までを県費負担の事務職員が実は担当してきたわけでございます。

その際に、まず一つ確認しておかなければいけないのは、この6、7、8、5を入れましても、これは行政系でいうと庶務と呼ばれる仕事でございまして、これは非常に細やかな仕事がかなり含まれております。ですので、かなり実務上の知識が必要とされる領域であるということは確かでございます。

こうした仕事の性格から、今現在、県教育委員会、政令指定都市教育委員会が事務職員に求める資質・能力をお尋ねしますと、第一にはこの6、7、8を確実、正確にやってほしいという期待が非常に強いわけでございます。

学校運営事務については細かい実務上の知識がいるということはまず確認しておいた方がよろしいかと思います。これは後ほど採用区分の在り方で議論いたしますけれども、例えば行政の中にもいろいろな仕事がございます。例えば企画系の仕事とか事業系の仕事、そういうものとは少し違う要素がここにはあるということを踏まえておく必要があろうと思います。

しかしながら、それらの仕事をしっかりとこなしながら、今後危機管理、学校評価、あるいは渉外という事務領域が膨らんでくることが想定される際に、その事務業務をどう遂行すればよいかということを検討したのが、平成10年の中教審「今後の地方教育行政の在り方について」答申でございました。そこでは、まずは6、7、8の領域をしっかり共同実施という形で処理しながら、同時に1から5の領域へと事務職員が学校運営へ参画するような方向を促していったと理解することができようかと思われます。ですから、この矢印が上にいくような方向で中教審では議論してきたという経緯がございます。

次のページを開いていただきたいのですが、実際に平成10年の答申以降、実際に幾つかの職務の再定義の例を挙げながら、学校事務職員の職務の再定義に取り組んだかどうかということを67都道府県、政令指定都市教育委員会に年末にお聞きした結果を示しています。今現在67政令指定都市のうち、41教育委員会が取り組んだと回答しております。更に再定義に取り組んだ年度の累計でございますけれども、これを見て分かりますとおり、平成17年あたりから次第に増えてきているということがお分かりだと思います。

職務の再定義とは、共同実施ですとか、学校事務職員の職務内容の明確化という取組により学校事務職員の職務を見直すことでございます。共同実施と申しますのは、先ほど申し上げたいろいろな学校運営に関する事務などを学校という枠を超えて共同で実施するものでございます。共同実施について説明します前に、学校運営事務について説明いたします。学校運営事務とは、教育の質の向上に役に立つものでございまして、例えば危機管理がしっかりしていないと子供を守ることはできません。しっかりと危機管理をしたり、あるいは地域との信頼を確保したりするという仕事が行われるから、先生たちは保護者との信頼関係の中で良い教育ができるという関係にございます。ですから、学校運営事務というのも、決して教育と関係ないわけではなくて、関わり方によっては教育の質を高めることができますし、その土台であるということは申し上げておきたいと思います。小中学校におきましては,学校事務職員が単数で配置されているところが多く、学校運営事務の改善には限界がございます。その限界を克服するために、チームで学校運営事務を実施するというのが共同実施でございます。

学校事務職員の職務の見直しのもう一つとして、学校事務職員としての職務内容を明確化するために、県教委が任命権者として通知を出すような取組がございます。そういう取組等もやってきた県がこのようにだんだん増えてきているということでございます。についても記述を求めたのですが、平成10年の中教審答申が契機であった回答する教育委員会が非常に多いという結果でございます。ですので、この平成10年の中教審答申というのは、一定のインパクトを持ったのだろうと思われます。

次のページでございます。以上のように、これまでの事務をしっかりと行いつつ、危機管理ですとか、学校評価という学校運営に深く関わる事務を学校事務職員が担うような方向で学校事務職員の職務の見直しが進められてまいりました。そういう方向で学校事務職員の職の見直しは進められているわけでございますけれども、3ページでお示ししているとおり、職務の再定義の実態といたしましては、共同実施は広く取り組まれておりますが教育委員会が担当してきた業務、教頭とかあるいは教員が担っていた業務を県として見直すような方向へと取り組んでいるかというと、全面的に今うまくいっているわけではない。だから、学校事務職員の職務の再定義は進行途上であるだろうと認識しております。

しかしながら、次の4ページをご覧ください。そのようにだんだん平成10年答申というものをきっかけとしながら、学校運営事務の見直しが進められてまいりました結果、教育委員会の間で、例えば先ほど御報告ありました新潟県のように職務の見直しに取り組んでいる県と取り組んでいない県の間で差が生まれてきているという実態がございます。

各教育委員会からのお話で全国的に学校事務の現状に差が生じているということは理解しておりました。どのように各県で差が生じているのかということを調査した結果がこれでございます。このほか幾つかの分野でもかなりの違いが出るわけですが、まず1つ目、事務職員に求める資質・能力観が、平成10年以降改革に取り組んでいた教育委員会とそうでないところでは異なっています。つまり新潟県のような学校事務職員の職務の再定義に取り組んできた自治体においては、学校事務職員は、庶務事務はやるが、学校教育目標や教育課程を踏まえて仕事を遂行する力がいるということを、取り組んでいない自治体より強く求めているということでございます。あるいは人事の面も異なります。例えば優秀な学校事務職員を将来の学校事務のリーダー候補として、行政や特定の学校に異動させて経験を積ませるというところも差が見受けられるということでございます。人事上でも、取り組んでいるところはリーダーを育てようとしているという違いはございます。

さらに、次のページでございます。例えば取り組んでいる教育委員会は事務長や事務主幹等に、これはより幹部級の事務職員でございますが、校長、副校長、教頭等と同じ研修を受講させているといいましょうか、統計的にはやってない方はそういうことに取り組んでいないということが言えます。あるいは経験年数に応じた研修体系も再定義に取り組んでいない教育委員会の方が取り組んでいないという傾向が見出せるわけでございます。ですから、このように取り組んでいるところと取り組んでいないところで差が生まれているというのが今の状態であるということになります。

次のページでございます。都道府県・政令指定都市教育委員会が現在、学校事務職員に能力と今後、特に求める資質・特に求める資質・能力について質問し、対比した結果でございます。現在、学校事務職員に求める資質・能力は庶務系の仕事を正確・迅速に処理する能力などです。これに対して今後どうかといいますと、学校全体を見渡し、問題を発見し、解決する思考力、あるいは教育委員会、保護者、地域などと渉外・交渉・連携する力、あるいはチームとして成果を出す力、学校教育目標・教育課程を踏まえた仕事を遂行する力、更に危機管理に関する知識が必要であると考えているという傾向でございます。ですので、平成10年からの中教審の議論を契機として、各県で取り組んできた実績を踏まえ、国として、この事務職員が学校運営を担う職員として、積極的に活躍できるよう何らかの手だてが必要かどうかを法令上の改正も含めて検討すべきだろうというのが1つ目の主張でございます。

1つ目の主張に関連して、市町村費負担の事務職員についてお話いたします。職務の見直しというのは、決して1つの職種だけでは見てはならないというのが今の様々な分野の職員研究の見方だろうと思います。県費負担の学校事務職員が庶務系事務に加えて学校運営により関与するようになりますと、一方では重要ではあるが軽微な仕事を誰がやるのかという問題も派生してくるわけでございます。そうなると市町村費負担の事務職員、だんだん減ってきておりますけれども、地方交付税措置をしておるわけでございます。そういうような職員も含めて検討していくことが必要だろうと思われます。

2つ目主張でございます。7ページ目でございますけれども、学校運営事務というのは、子供の安全に貢献し、保護者との信頼関係も構築することによって教育の質を高めることが可能でございます。

そういう学校運営を担う事務職員を確保し、育てることが大事です。その際の一つの大きな論点点が採用区分でございます。この採用区分が、学校事務職員の職務意識に及ぼす影響について、国立教育政策研究所では調査を実施しております。これからお話する学校事務職員は県立学校の学校事務職員に関するものです。県立学校の学校事務職員の採用区分は大きく一般行政タイプと教育行政タイプに区分されます。前者は、一般行政をいろいろなところを回っていくような採用区分をとっている県でございます。これに対して学校とか教育委員会、県立教育機関等々、社会教育機関等々を含めて回るところが教育行政Aタイプでございます。もちろん一般行政タイプ内部、教育行政タイプ内部で見たらそれぞれまた細かい人の差があるのですが、大きく層として、教育行政の形で採用しているところと、一般行政で採用しているところの職務意識の差に注目したのが今回の調査です。結果として、一般行政タイプのほうは、今後特にこれからは庶務系の知識、技能というのが必要であると答える傾向が強い。これに対して、教育行政で採用されているところは、学校教育目標を踏まえた仕事の遂行量、所属する自治体の教育行政に関する知識、学校全体を見渡し問題を解決し、解決する力、そういうことは学校運営を企画的に担うという志向性が強いということでございます。採用区分の在り方は、それぞれ各自治体の主体性に基づいてなされるべき事柄でございますけれども、それぞれの採用区分のメリット、デメリットについては十分議論する必要というのがあるというのが2つ目の主張でございます。

次に、3つ目でございますけれども、共同実施の推進におけるリーダーの権限の明確化についてお話したいと思います。共同実施をやってうまくいっているのかという御指摘を頂くことがございます。実は、今回は時間的な制約からお示ししておりませんけれども、国立教育政策研究所では、別途全国の小中学校事職員から約2,000人を抽出してアンケート調査を実施し学校事務職員の職務実態と職務意識を調査しております。その中で勤務校が共同実施を行っている学校事務職員と行っていない学校に勤務する学校事務職員の事務従事の範囲と質について調査しています。その結果によりますと、やはり共同実施をやっているところは職務領域が広く、学校運営に関わる事務の従事率も高いことがわかっています。また、同時に県教委が標準的職務の通知を出している県で働く事務職員は、職務領域がそうではないところよりも広いこともわかっています。ですから、こういう制度は事務職員の働き方に影響力を与えることは想定されるわけでございます。また、ここでの議論に関連して申し上げますと、共同実施は学校事務職員の職務の再定義にとって有効な手段であるということが言えます。今後は、より効果を生み出している共同実施とそうでない共同実施との違いを分析することが必要だと思われます。8ページをご参照ください。実は多くのところで共同実施のリーダーに実は権限が与えられていないケースが多いわけでございます。

そこで全国の県で分類いたしまして、リーダーの権限が強いタイプと権限が弱いタイプの県のリーダーの意識に注目して、実際にデータ的には限られた数でございますけれども、実際にリーダーになって感じたこととリーダーとしての効力感を調査し比較しております。

次のページを御覧いただきたいのですが、権限が強いタイプの県、こちらの県は新潟県と同様に県教育委員会が学校事務職員の職制を作っている県の一つでございます。そういう県におきましては、例えば実際になってみて何を感じるのかといいますと、一番上位を御参照いただきたいのですが、教育委員会や校長・教員からの本人に対するまなざしが変化するということでございます。つまり事務長になったという形で周りのまなざしが変わってくるということでございます。したがいまして、まなざしが変わるということは、すなわち活動のためのあるいはコミュニケーションのパワー基盤が変わる、つまりより言いやすくなる、動きやすくなるということでございます。

これに対しまして次の10ページでございます。権限が弱い県でございますと、変わったのかといいますと、一番下を御覧いただきたいのですが、教育委員会や校長・教員からの本人のまなざしの変化といいますとゼロでございます。したがいまして、まなざしというものが共同実施を多くやっておりますけれども、まなざしが変わらない中でリーダーをやっているところもあるということでございます。したがって、そういうところのリーダーになりますと、共同実施内部の仕事の割り振りや管理の難しさを指摘する方が多いという傾向を示しております。

その上で11ページでございますけれども、事務職員の質の向上に関して自分は変えられるのかということをお聞きしています。データをご覧いただけますと明確なとおり、権限強タイプの方がリーダーシップ効力感が高いということでございます。

こうした結果を踏まえまして、事務長の権限の明確化を図る必要、あるいは学校教育法上において事務長をどう規定するのかということを検討する必要があるというのが三つ目の主張でございます。

次の12ページでございます。最後になりましたけれども、これは都道府県、政令都市教育委員会に今現在事務職員の職務の明確化や人事・人材育成に関してどういう自己認識をしているのかということでございます。

これを参照いたしますと、12ページでございますけれども、どちらかといえば課題が多いというのが非常に多いことがお分かりいただけると思います。事務職員の職務内容を理解し、職務を設計し、研修のプログラムを組むことが各県では現実的には難しい、なかなかこの領域は分かりづらいということが言えるかと思います。学校運営事務は教員も教頭になると初めて分かる領域だと言われております。ですから、一般教員も学校にいるからこの学校運営事務のことを知っているかというとそういうわけではございません。以上のような現状を踏まえますと、国の支援が必要な領域だろうと考えております。

極めて興味深いのが、本作業部会でも校長については議論するでしょうけれども、参考のところで校長等の任用・育成についての都道府県、政令指定都市教育委員会の現状認識についてお示しています。これは国立教育政策研究所が別途行った調査結果でございます。

校長等につきましては、うまくいっているという割合が高いということがお分かりだと思います。校長についてはうまくいっているが、事務職員についてはうまくいっていないということが示されたデータでございます。

続きまして、13ページでございますけれども、それではどうすればいいのかということです。都道府県、政令指定都市教育委員会は国に対して何を期待するのかということでございます。定数もしかりながら、独立行政法人 教員研修センターに対する期待が大きい結果となっております。現時点でも、やはり事務職員に関しましては、教員研修センターでの研修が県教委の人材育成あるいは人事上の大きな手段の一つとなっておりますが、今後、ますます大きな期待が寄せられているということです。

更にプログラムのモデルの国による開発を求める声も多いという事実を示しています。

大変興味深かったのが平成10年の答申以降、学校事務職員の職務の見直しに取り組んでいる自治体はそうでないところに比べて「b.学校事務職員の配置における都道府県・政令指定都市の裁量の増加」及び「f.人事・研修等担当者の全国的なネットワーク形成支援」を求める割合が高くなっております。つまり配置の在り方について裁量が欲しいと改善を取り組んでいるところではより答えているということでございます。ですので、例えば事務長クラスの人ですと学校よりも教育委員会にいてシステム設計したり、研修のプログラムを組んだりした方がいいというふうな御意見もあるわけでございます。果たしてこれが国庫負担制度の下で整合的なのかどうかは詳細な検討が必要でございますけれども、bを求める傾向が強い。

さらに、fでございます。これは取り組んでいるところは情報交流してもっと高めたいという希望を国に求めています。これは例えば、イギリスのリーダーシップカレッジもそうですけれども、国の機関がやるべきことはやはり地域のネットワークのハブを作っていくのが一つの在り方として提案されております。ですので、いろいろな各地の取組をハブセンター、ネットワークを作っていく、そんなことを求めるところが多いということでございます。

以上のようにお話し申し上げますと、今回議論する学校運営事務の事務職員は全体の中の一部でありますけれども、重要な領域であるということをご理解いただけましたなら幸いです。

最後14ページで結論を申し上げます。まず、学校運営事務を担当する事務職員につきまして、各地の動きを踏まえまして、より職務の明確化を図るため、学校教育法における位置付け等々につきまして、あるいは学校運営を担当する職員であることを明確化する在り方を検討してもいいのかというのが1つ目でございます。

2つ目に、地方交付税で措置されている事務職員の配置促進につきまして、留意する必要があるだろうという点でございます。

3つ目に、そういった学校運営事務を担当する事務職員の採用区分の在り方について、緻密な議論が必要であろうと思われます。あるいは都道府県や政令指定都市教育委員会に対する情報提供が必要であろうと思います。

4つ目に、事務長の権限の検討が必要だろうと思われます。今現在、学校教育法上は事務職員という形でございますけれども、事務長の職は一般の事務職員とは違うのではなかろうかと思います。そうすると権限の在り方、学校教育法上の規定の在り方も検討する必要があるように思われます。

5番目が、先ほど御説明しました配置形態の柔軟化の検討です。

6番目に国レベルの教職員の人材育成体制の検討、そしてネットワーク化です。今のICT時代の教員研修としてはネットワーク化、ハブ化が一つの大きな起爆剤になるだろうと考えています。そういうところを踏まえた体制作りが検討課題になるのではないかということでございます。こうした国レベルの教職員の人材育成体制において、独立行政法人 教員研修センターへの期待が大きいこともお示しさせていただきました。

以上、手短でございますけれども、国立教育政策研究所の調査を活用しながら御報告させていただきました。

【小川主査】  ありがとうございました。

事務局の方から学校事務職員制度の現状についての説明があった後、今、佐野会長と藤原委員の方から御報告いただきました。学校事務職員制度は学校関係者、研究者でもなかなか見えないところがあって、非常に難しい制度ですので、今日の報告をお伺いして、まず質問等々からでも構いませんので御発言いただきたいと思います。何かございますか。大久保委員どうぞ。

【大久保委員】  伺った意見発表の中に、事務職員の意識改革を図っていくことが必要だという話がありました。また,学校事務職員や学校事務の共同実施組織の職務範囲や質を再定義する。具体的には,これまでの庶務管理や予算管理,人事・給与・福利厚生等に加え,学校経営・評価や危機管理,人的資源管理,地域連携などを学校運営事務に含めて再定義するということでした。これらの話は、私には非常に興味深いものでした。そこで,質問ですが,実際に,学校にいる事務職員は、このような意識や知識を既に持っているものなのでしょうか。また,このような職務が求められていることを知っているものなのでしょうか。私は,まだこのあたりが,十分に認識されていないように感じるのです。佐野会長の所属される新潟県学校事務研究協議会の皆様の,実際の状況を聞かせてください。

【小川主査】  今の質問は、お二人に対してですか。

【大久保委員】  佐野会長にお願いします。

【小川主査】  今の質問に加えて、私もお二人にお聞きしたいのは、先ほど藤原委員が、最初の1ページ目の学校運営事務の中の6、7、8の庶務系の事務が、本来の学校事務職員の仕事として捉えられていたが、それが学校経営参画ということで1から5までを含めて再定義する方向で動いているという話は、非常によく分かります。共同実施の本来の狙いは6、7、8の業務を効率化することで、浮いたエネルギーと時間を1から5に注いでいくという構図かと思うのですが、共同実施について全国のいろいろな事例を見ていくと、共同実施によって先ほど藤原委員や佐野会長が言ったように、6、7、8をベースにしながら、共同実施によって効率化した時間とエネルギーを1から5にうまく流し込んでいくような自治体があるかと思うと、共同実施したにもかかわらず、6、7、8でずっととどまっているような自治体もあって、それを分ける分岐点、何がどういう要件がそういう違いを生んでいるのかというのは、なかなか分からないのです。

大久保委員の質問と同じことですけれども、佐野会長と藤原委員、そのあたりどう考えていけば良いかというのを教えていただければと思います。それでは、佐野委員の方からお願いします。

【佐野会長】  まず、学校事務職員がそういう意識を持っているかどうかというところでありますが、私は今、学校事務研究協議会という組織にも入っていますけれども、そういうところの役員は、やはり意識が高いです。一般の事務職員はどうかというところですが、共同実施を進めながら、また標準的職務の通知も出てきましたので、研修の折にもここをベースに研修を受けていますので、変わってきております。やはり年代層によって意識が違うというのは、実感としてあります。

以前の形のデスクワーク中心の、年齢の高いところはなかなか意識の変化が見づらいですけれども、採用されたときから共同実施に組み込まれている若い事務職員は、そういう意識はもう最初から理解していると思っております。

もう一つ、分岐点になっている部分はなかなか難しいのですが、やはり共同実施を進めていく中で、事務の効率化や処理の正確という部分は、ある程度この六、七年で定着してきたと感じております。そこからまた次の段階、先ほど課題としても少しお話ししましたが、複合的な部分、やはり学校の中にいて学校の運営、経営にどう関わっていけるのかというところを考えています。したがって、ただ単に事務の効率化した時間をスライドさせてというところではなく、効率化しながらその中でもできる部分、逆にこういうところは連携させながらなど、いろいろつなぎ合わせながら考えていく部分は見えてきているのかなと思います。ただ、こういうことをしていく中には、やはり事務職員だけではできませんので、学校においては管理職、校長の支援とかバックアップ、教育委員会の支援のベースの整備が必要であると感じています。

【小川主査】  それでは、藤原委員。

【藤原委員】  実際にその意識がどうなのかというと、庶務事務でいいという方もいらっしゃいます。今日は提出しておりませんけれども、2,000人対象のデータの中では出ております。やはり庶務系の仕事でいいと方もいることは事実でございます。ですので、何がこういった職務の再定義に影響を与えるかといいますと、一つは県教育委員会、任命権者の考え方が確実にあるだろうと思っています。

職務の再定義等々をやっているところは職務も変わっております。県教委として姿勢を示しているもちろん校長会等の理解も当然現場では必要とされますけれども、やはり任命権者が示せば、校長会も御協力されるのではないかと思われます。まず1つは県教委の考え方があると思われます。

2つ目に、やはりそういう事務職員内部の考え方の違いがございます。ですので、今現在、それ自体今後の制度の在り方を検討するので、非常にこういう庶務的な仕事から、例えば学校経営に参画し、教頭と並ぶような仕事をしている人というのを今、同一の職として扱っているわけでございます。ですので、当然事務職員という人の中にはいろいろなレベルの仕事をしている人が含まれざるを得ない。だから共同実施等々を進めるのが難しいのは、そういう様々な意識、質を持った人を束ねなければならない。しかも、それを権限がない中でやっていると。その調整コストが非常にかかっているということが言えるだろうと思います。もともと小中学校、特に小学校は共通理解を重んじるので非常に会議が重いわけです。そういう文化がそのまま行政職員に来ますと、非常に会議の調整に時間がかかっているということが推測されます。

ですので、私自身はここに分析してございますけれども、制度化されているところはより変わっているのではなかろうか、つまり権限がよりあるところ、あるいは市町村レベルでより管理規則で明確に定めたり、細かいところまで決めたりしているところほど変わっているということが言える可能性があると思いながら分析をしているところです。

【小川主査】  ありがとうございます。

今のお話はすごくおもしろく聞いていて、もう一つ確認したいのは、藤原委員の報告の7ページで、今の事務職員の仕事の志向のタイプ、一般行政採用枠で学校事務に配置されている方と、学校事務ないしは教育行政職というような採用枠で採用されて、学校に配置されている事務職員のパターンを見てみると、確かに教育行政とか学校事務採用枠の方が、学校とか教育、教育行政ということにこだわりながら仕事をしているということでした。

それに対して、一般行政職というのは一般行政職採用枠なので、恐らく短期で人事異動があり、学校配置も大体数年で出ていくという人事なので、恐らく学校や教育行政に対するこだわりというのは余りなくて、先ほど藤原委員が1ページのところで言った、いわゆる庶務系事務に限定して学校事務の仕事をしているというような整理が藤原委員の報告から見えてきます。私も藤原委員が7ページで指摘しているような、一般行政職採用で学校事務に配置している県を幾つか見て、そういう方々の意識を聞くと、庶務系事務にすごくこだわりがあって、学校や教育行政についてはかなり淡白ということも感じました。

ですから、先ほど最後のページのところで藤原委員が今後の課題ということで、検討課題の3のところで事務職員の採用区分の在り方の検討ということも書かれているのですが、学校事務職員のそういう職務内容の領域を学校経営、学校運営の方に広げて再定義するといった場合に、どちらかといえば教育行政職や学校事務という枠のところで採用する方が、より適合的だと捉えていいものかどうか。それとも、一般行政職の採用枠であっても、先ほど藤原委員が言ったように、要はそういう一般行政職で採用した学校事務配置職員をどう使うかは県や市町村の教育委員会の戦略によって変わるので、一般行政職か教育行政職かという採用枠にこだわらないで、あくまでそれをどう使うかの教育委員会の戦略こそポイントだから、余りそういう採用枠にこだわる必要がないのではないかという話に持っていくのか。どちらで整理した方が良いのか、私も迷うのですが、藤原委員の方で何かあれば教えていただけたらと思います。

【藤原委員】  この調査におきましては、それぞれ自分の資質能力についての習得度についても調査しております。そうしますと、一般行政職タイプの場合ですと、いわゆる一般的な思考力、つまり戦略的な思考については自信を持っております。また、同時に社会人としてのマナーについては自信を持っていると。広く回りますと、一般的な行政で言う「裁く力」は確実に付くだろうし、さらに、自分たちはいろいろなところを経験しているという意味で、一般社会を知っているという自信は持ち得る可能性が強い。ですから、そういう方が例えば係長を経験した方が来られて、「さばく力」を持って働いている事例は現実的にございますし、そういう可能性というのはあるだろうと思います。

ただ、今回のこの調査で言えますことは、全体を層として見た場合に、やはり教育行政でくくったほうがより学校運営職員としてハイレベルなところを志向しやすい傾向はあるということがうかがえると思います。

【小川主査】  ありがとうございました。

では、ほかに御意見。米田委員どうぞ。

【米田副主査】  お二人の説明で、共同実施という言葉が出てくるのですが、私は佐野会長の資料での共同実施というのは、学校事務職員が小・中に関しては大方各学校1名であるという状況を乗り越えて、複数の学校で1つの組織を作って効率的に事務処理を行っていくところに出発点があると。それで始まった1つの組織であると。それに関していろいろ課題なり成果なりがあったと受け止めて聞いていました。これについては、具体的にどういう組織で共同事務をやっているのか、多分委員の方もはっきりとしたイメージを浮かべることができないのではないかと思いますので、そこを具体的にもう少し触れていただければありがたいと思います。

それから、藤原委員の発表での最初のところで、学校事務の業務のカテゴリーで、学校運営事務で今までの主な職務は庶務管理、予算管理等だったものを、もっと学校の経営危機管理、人的資源管理の方に広げていって、そこを共同で実施していくという観点に立って事務職員の職務の再定義に触れて、お話をされていたと受け止めましたが、それでよろしいでしょうか。共同実施という言葉が両方に重なって使われているような気がしましたので、そこをまず整理できればと思いました。

かつての中教審の作業部会等の審議のまとめで出ている、そもそもの事務処理体制の整備というのは、事務処理の組織化はまず事務の内容をしっかり組織的に、効率良く、しかもミスなく正確に行って、サービスにも差が出ないようにというところが出発点だったのではないかと思います。今、新しい学校、チームとしての学校という視点に立って考えなければいけないこの段階で、学校の運営の中で事務職員がどう関わっていくかというところが、そこに新たに加わってきたと捉えておるのですが、そういう捉え方で良いのかどうか、そのあたり確認できればと思います。

【小川主査】  それでは、最初に佐野会長、お願いいたします。

【佐野会長】  共同実施の具体的なイメージでありますけれども、まず形としましては基本的には1つ、2つの中学校区にある学校を1つのグループとして、約5から10ぐらいの学校の事務職員を、1つのグループとして束ねて仕事をしております。その活動内容については先ほどお話ししましたが、頻度は週1回から月一、二回というところがあります。

新潟市の場合は一、二回が多いのですが、その中で通常必ず行っているのが、諸手当の認定関係などであります。あと、重要な連絡事項を含めてスタートしますが、やはり年間の経営計画を年度当初に立てます。今月この時期にはこういう業務があって、こういうことをしますと。そこの中で役割分担も割り振ります。グループ長1人で行っているわけではなく、副グループ長を作ったり、業務の担当を決めたりして、その者にも仕事の責任を与え、また充実感を与えさせるために計画をしております。その計画については年度当初、グループ内の各学校の校長先生に説明をし、了解を得ながら進めております。そして、進める中で年度末には評価を行っていただいております。そして、また改善を加えながら次年度へという形になっておりますが、その中でやはりグループを組んだだけでは意味がないということで私自身も進めております。

やはり、集まったからには力を発揮していくには1つの事務職員のチームという形も考えながら進めております。ただ、その中では新採用から30年経験した者という経験差もありますので、その特性を生かし、良さも引き出しながら進めております。

業務については様々な緊急対応的なものから年間の計画に沿ったものを行っております。認定関係については突如出てくる場合もありますので、そういう場合はグループ長のところにまず持っていく、連絡を入れるという形で進めております。

具体的なイメージを持っていただけましたでしょうか。

【小川主査】  よろしいですか。それでは、藤原委員お願いします。

【藤原委員】  ありがとうございます。

今回、チーム学校ということで新たにというよりは、98年答申でも学校自主性、自立性を確立する中では、例えば渉外あるいは経営的な事務業務が肥大化するであろうと言われておりました。したがって、事務職員も学校経営の専門スタッフに、という文言はこれまでもございました。また、地域連携に関しましては加配等でもこれまでも措置してまいりましたし、様々な加配におきましても例えば新たな危機管理ですとか、学校経営評価等についても言及してきたという経緯がございますので、全く新しい部分はより今までの成果を踏まえて、今後更に拍車をかけていくという形で説明させていただいたつもりでございます。

【小川主査】  米田委員、お二人のお話を伺って何かございますか。

【米田副主査】  私は秋田県の小学校や中学校をイメージしているものですから、小規模の学校で事務職員が1人、その1人の事務職員も主査であったり、あるいは主任であったりいろいろいるわけです。そういう人が学校運営事務にどれぐらい関わっていけるかということを考えたときに、その経験の差によって違いはもちろん出てくるのですが、いろいろ難しい点が出てくるのではないかということをまず一つ感じました。

県立学校や高等学校のように複数の事務職員がいれば様々な形、様々な分野で関わっていくことは可能です。これはできると思うのですが、小・中をイメージすると、地方の県の学校が頭に浮ぶものですから、なかなか厳しい気がしました。もちろん、実際にこういう形でいろいろと関わっていくことが大事だということは分かっておりますが、そういう感じを持ったのでお聞きしたところです。

それから、学校事務の共同実施に関しては、秋田県は例えば小学校はみんな1人、中学校も基本的に1人ですが、1つの中学校区に事務職員、正規の職員を2人ないし3名置いて、あと小学校が例えば4つあれば、そこに1人ずつ非常勤職員を置いて、そして、そこでチームを組んで中学校の正規のベテランの職員も配したところで、兼任発令してその職員に小学校にも出向いていってもらって相互チェックをしたり、様々な指導をしたりということで行っていくという形で、幾つかはやっているのですが、そういうところがそれぞれの学校の運営に個々にどう関わっていくかということに関しても、また難しさもあるような気がします。

【小川主査】  ありがとうございました。ほかにいかがですか。

では、貞広委員。

【貞広委員】  ありがとうございます。どの御報告も、日頃学校調査などに行っていて感じていることが非常に明確化して、整理していただいて勉強になりました。先ほど教育行政職での採用か一般行政職の採用かというお話がありましたけれども、どちらの採用にしても大分バリエーションがあって、お話を伺っていると庶務的なところにとどまって気持ちが教頭先生とだけ共同しているタイプの事務職員さんと、藤原先生が挙げてくださっている例えば学校教育目標等を踏まえた仕事であるとか、学校全体を見渡しても問題を積極的に解決していこうとする校長先生とともに仕事をしている感触を持っている方と大きく2種類いらして、それは採用枠だけではないと思います。

そうなるとやはり、どちらの再定義の膨らみを持たせていくのか、庶務で極めていただくのか、それとも学校教育目標等を踏まえた仕事の遂行力や学校全体を見渡す力を付けていただく方に再定義していくのかどうか、どちらが望ましい方向性かというのは、それは都道府県のやることですではなくて、ここで示していかないと職能の開発という意味でももろもろ問題が発生すると思います。

私自身は、チーム学校というからには校長先生とともに学校を経営していくという再定義が必要だと思いますので、例えば学校経営参画とか教育支援という言葉が出てきているのですが、そうではないだろうという気がするのですね。学校経営の本丸であろうし、教育は支援するのではなくて、より良い教育をしていくための当事者でいらっしゃると思うので、この時点からの再定義が必要なのではないかと思います。

それでも、そうした意味で非常に示唆的なことを今日幾つも出していただいていると思います。まず1つ目は、職務の再定義を明確に行うということです。事務職の方に伺っていると、自分たちは免許がないのでとすごく遠慮されていて、また、業務も学校によって例えば私費の管理を誰がやるのか、教頭先生がここの学校をやって、転勤になったらここは事務職員がやることになっているという感じで、学校によって相当まちまちで一体どこまで関わったらいいのかということ自体手探りしていらっしゃるところがあるようなので、やはり明確化が必要であろうということが一つです。

もう一つは職能開発に関わって1人職の限界性、自分1人だけで職能開発していくことはできないですし、また、職能にいろいろ差異があることを埋めていけないので、そこでいかに共同設置をうまく使っていくか、その枠組みをうまく使っていくかということがもう一つあるかと思います。

それともう一つは、これは藤原先生の中のお話でも出たのですが、事務職員さんがいかに学校経営にとって重要かということは教頭先生になられると分かるのですが、一般の先生方は余り御理解がないのですね。でも、日頃の教育活動の例えば教材一つにしても非常にサポート力が実はあるけれども、なかなか事務職員さんの方が遠慮して、そのサポートを実際にやっていないというところがあるので、実はすごくパワーがあって、私たちをサポートしてくれる存在なのだと、普通の学校の先生たちにより知っていただくようなチャンスが必要かと思います。

例えば、自分たちの近くのことで恐縮ですけれども、千葉市は新任の教務主任の先生と事務職員さんの共同の研修会をやっています。そうすると学校の庶務的なことがどう教育活動をサポートするのか、一つ予算の立て方についても学校教育目標とどう関連をさせてお金を使っていくと、一つ一つの教育活動や行事がうまくいくかということを、お金のことなんて全然考えたこともなかったという教務主任の方が、そこの中でそういう思考を持つことも重要だし、事務職員さんと共同することも重要だということを知っていくチャンスがあるのですね。例えばそういう行動研修を行っていくことによって、まさに学校経営の当事者であるということを御本人だけではなくて、周囲の方が分かってくださる。その業務の明確化によって周囲の目が変わる。それによってより学校にコミットしていただくということが重要だという大変示唆的なことを教えていただいてありがとうございました。

最後に1点ですが、なぜ事務職員さんの職務の再定義の取組にこれだけ差があるのか、何か地域特性などはあるんでしょうか。

【小川主査】  2人にお聞きになりますか。

【貞広委員】  もしありましたら。

【小川主査】  それでは、佐野会長、藤原委員、お願いします。

【佐野会長】  一つは地域におけるいわゆる文化といいますか、前からそうなんだというなかなか踏ん切れない部分というか、思い切れない部分があるとは感じております。そこで後押しをする何か転機があれば変わるのかなとは思いますけれども。

【小川主査】  藤原委員、何かあるでしょうか。

【藤原委員】  28ページに分析しておりますけれども、学校事務職員の職務の再定義をなぜ行ったのかと聞いて、その理由としては平成10年の中教審答申がインパクトとして大きかったということでございます。また、ここで言及された共同実施という学校事務改善ツールの導入の促進を契機として記入している教育委員会が多いです。だから、この平成10年答申というのはやはり事務職員の在り方について大きなインパクトを持った。このほか教員の事務負担の軽減をやろうと教育委員会サイドが強いモチベーションを持った県、さらに、事務職員を育てなければいけないとか、事務所の廃止とか市町村合併とか学校統廃合が進む中で、新しい事務体制を組む必要性を教育委員会が認知したような、教育委員会側の認知というのが効いているというのが一つと、もう一つは、7県ほど記載がありますけれども、事務研からの要望。つまりいろいろな考え方がある事務職員が1枚にまとまって要望してきたと。それを受けて検討の中で進めたという、教育委員会側と事務職員側の意思統一及び要望の中で起きているということがデータから言えると思います。

【小川主査】  よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。

はい、田村委員。

【田村委員】  失礼いたします。藤原先生が1ページにお示しになっている事務・業務のカテゴリーにつきましてですが、最近、全事研の研究開発部の皆さんと一緒にカリキュラムマネジメントに事務職員がいかに関わるかということについての研究を一緒にさせていただく機会を頂戴しているのですけれども、そこで研究開発部の方々が考えていらっしゃるのは(2)の指導事務にいかに関わっていけるだろうかということを追求していらっしゃいます。

研究開発部の皆さんが考えていることは、大きく3つあります。一点目は、カリキュラムを実施するための諸資源、予算や地域の情報といったものを、例えば年間指導計画を立てるときや、単元指導計画を立てるときに学校の先生方が意識しながらやっていけるのか、それをいかに事務職員がサポートできるのか。それから、2点目としましては、たくさんの評価の情報というのが、学校評価に限らず学習評価にしてもたくさんありますので、そういったものを管理するということ。それから、3点目としまして地域保護者等と情報をお互いに共有する。情報を発信したり、受信したりする。そして、子供の姿をみんなで共有化していく、そういったところで何か役割を果たせないだろうかといったようなことで研究を進めていらっしゃいます。

そういったことを考えたときに、先ほどの貞広先生の御指摘と非常に重なるのですが、教員の側の体制とか意識があるかないか、それによってせっかくのこういう研究が生かされるかどうかということに関わってくるのではないかと思います。

なかなか(3)の1、2、3、4、5の方に行くかどうかも大きな差があり、さらに、(2)の方に行くとなるとまた更に大きな差があるのかなとは思います。佐野会長の資料の12ページで、事務職員の方々が教育活動面の情報管理にかなり関わっていらっしゃることもこの情報の中にありましたが、そういうことが現実に実施されているのでしょうか。

その際、先ほど藤原先生の資料の9ページで、権限が強いタイプの共同実施の場合には教育委員会や校長、教員等からのまなざしが変化したという結果が示されたのですが、それは結果として変わったと受け止めました。では、例えば佐野会長の資料の中にあった、実際に教育面にまで関わっていらっしゃる共同実施の自治体の場合、そういう体制をつくっていく過程に校長や教頭といった教員サイドが関わっていったのか、そういった教員サイドの関わりの面で自治体の間に差があったのかどうかについて教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。

【小川主査】  佐野さんに対する質問でいいですか。

【田村委員】  はい。

【佐野委員】  まず、教育課程に関わっていきましょうというスタンスで今、共同実施は取り組んでいる部分が増えてきています。共同実施で学校の課題を見つけ、教育活動をよく見て、そこの中で、学校でどうしていくか、各学校で事務部の経営計画を作りましょうという話を私のグループでもしています。ただ、何のためにするのだというところからスタートする部分もあります。ただ、今までやっている部分を見せながら、また一緒に作っていこうというスタンスで研修を深めながらやっています。まずは学校の教育目標を確認し、学校の経営方針を確認するところからスタートしています。

私自身も、グループ内の各学校の教育目標や経営方針のようなものをまとめてみました。やはりベースは一緒なのですが、表現の仕方や見ている部分が違うと思っています。今度グループの支援委員会というところで、校長先生方とまた評価についてお話をする機会がありますが、そういうところをやはり取り組んでいますし、また校長先生もよく見ていただいて、事務職員にもそういう場面で登場していただき、うまく話をサポートしていただくというようなお話をしていこうかなと考えています。

【田村委員】  といいますと、やはりそのような領域まで踏み込んで事務をされているグループの事務職の方々は、校長先生といった教育職員の管理職とのコミュニケーションがかなり密であると考えてよろしいでしょうか。

【佐野委員】  はい。

【田村委員】  ありがとうございました。

【小川主査】  今の田村さんの質問に加えて具体的に教えてほしいのですが、佐野さんのレポートの11ページの標準的職務で、学校事務職員が積極的に参加する範囲ということで、教育目的の経営領域で、中でも授業研修等に関することということで、教材選択等々も学校事務職が関わると書いてありますよね。教材選択や教材活用研修等の企画・実施というのは、具体的にどういう取組、活動でしょうか。

【佐野委員】  まず教材選択はこれまでもやっている部分は多かったと思います。やはり教育課程、教育活動に何が必要なのかということに、財務、お金の面で一番関わっていますので、予算要求が出てきたときにこれが本当に必要なのか、学校にはどれぐらいあるのか、それが有効に使われているのかというところを見ながら進めていく必要がありますので、ただ単に買ったはいいけれども、担当の先生が転勤してしまったらそのままになっているという実態も今まではありましたので、そういう有効活用を考えていかなければいけないですし、すべてしているわけではありませんけれども、授業研究とかを実際に見ている事務職員は多いですので、どう活用されているか、お金がなければ一緒にどう作っていけるか、そういうところまで余裕のある事務職員はやっております。

【小川主査】  分かりました。

ほかに。小栁さん。

【小栁委員】  お二人の発表を聞いて、随分差があるのだなと、全国レベルだとこんなに差があるのだなと、非常に頑張らなければいけないのだなという気になりました。現場的な話をして恐縮なのですが、共同実施はいいことですよね。つまりベテランや若手の強み、弱みがそこでうまく融合して、例えばベテランの経験、しかしITには弱い、若手はその逆、一緒にやることによって切磋琢磨し、非常にいい効果が出ている。佐野さんの発表の中にもありましたとおりだと改めて感じます。

それで、そうしたときにこの会議で何を重視すれば良いのかなと。私自身は今の小学校、中学校の学校現場を踏まえたとき、何としても教員が授業に向かうため、つまり子供と向き合う機会、時間をとにもかくにも確保していかないといけないだろうと。そのために共同実施することによって、事務的な処理の効率化は図られるだろうと。

でも、間接的には子供と向き合う時間の確保にはいくのでしょうけれども、学校現場の先生方が何を事務の方に求めているか。非常に全く現場的なことで恐縮ですけれども、例えば学級担任、教科担任等は本当に例えば学級会計とか学年会計、お金の処理、そうしたことを支援してほしいなと、あるいは給食費を徴収するに当たって支援してほしいな、あるいは理科備品を毎年チェックしますが、そういうときに一緒になってやってくれればいいなと、そういうレベルですね。

校長サイドからすれば、例えばPTAの事務局が連合会の中で回ってくると大変ですよね。そういうときにも教頭さんが忙殺されては困りますのでそうしたこと、あるいは渉外的なことをやってほしいとか、そういうことですよね。

ですから、埼玉県内で共同実施やっているところを見ると、例えば学級会計、学年会計のフォーマット、市内で統一して示してうまくやっているところもあります。あるいは消耗品を一括購入して、コストカットを図るなどございます。ただし、県立学校と違って小中学校は一人職ですよね。いわゆる教育行政タイプ、一般行政タイプといっても採用するときにはみんな小中学校は一般行政タイプ。つまり、庶務的な実務に精通したいという方ですよね。その中で平凡さの中に価値を見出しながら一生懸命やっているのが多くの事務職員です。

そういう方の意識改革をどう図るかということだと思うのですが、再定義することによって図ることもできるでしょう。あるいは埼玉県で今3人いますけれども、ロールモデルです。事務職の方で教頭、市教委の課長、教育事務所の主任管理主事等々をやっている方が3人いますね。そういう方を紹介する中で、ロールモデルを示しながら意識改革を図ることも必要でしょうし、もう一つは共同実施の中で意識改革を図ることが必要だろうと思います。

庶務的な実務に精通することを目的としながら受験して採用された方々の意識改革をどう図るかということだと思いますし、共同実施等が教員への支援に結び付かないとなかなかそれはそれで単なる効率化にいってしまう、その辺の懸念等もあるということを申し上げます。

以上です。

【小川主査】  何かありますか、佐野委員、藤原委員。

【佐野会長】  今、お話をされた中で会計事務とかフォーマットの提供については、先ほどお話したように実施しています。特に新潟、私の勤務している中学校では、会計事務は事務職員が今は学級担任に任せずにやっている部分が多くなっています。小学校もある程度数が多い場合は会計担当を決めながらもサポートはしていると思っております。会計報告の作り方とかそういう部分では統一を図っておりますので、そういうところのサポートはできているかなと思っています。先ほどの庶務一本やりの意識改革という部分でありますけれども、やはり共同実施、新潟のスタイルとしましては事務職員だけの共同実施にはしたくないという部分がありますので、やはりいろいろな話をしながら、ほかとの関わりを持ちながらやはり自分たちを自主性、自律性と言いますけれども、評価をもらいながら、また自分たちを律しながら、また次に進めていこうという部分がありますので、より学校にいてどういうことができるかという部分を重点に考えています。

以上です。

【小川主査】  藤原さん、何かありますか。いいですか。

【藤原委員】  確かにこのいろいろな庶務管理、予算管理、人事管理などの庶務系の仕事も、教員が現実として担っています。ですから、それをどうするのかが学校現場の課題だというのはよく分かります。事務職員と教員や教頭との間でどの仕事を担当するのかということで、地域によってはそこでいろいろな課題が発生してきたということも事実だろうと思います。ですから、そのあたりの事実も踏まえながら、これからの職務を明確化していかなければいけないだろうとは思っています。

学校運営事務を誰が担うのかということについて答えは一つではありません。現在は、教頭先生が担われていることも事実です。しかし、学校組織の文化多様性という観点が必要だと私は考えています。私は、外部環境がますます多様になってくると、学校内部も多様性を持たないと学校は持たなくなるという認識の下で、教職員の分業体制の研究を進めてまいりました。

ですから、そういう意味で今回の検討においては外部環境の変化に応じてどういう文化を作っていくのかということを検討する必要があると思いました。

【小川主査】  ありがとうございました。

竹原さん。

【竹原委員】  私は1つの学校に10年間おりまして、事務職員の方とも仕事をしてきました。コミュニティスクールの学校運営協議会で年に一、二回事務職員の方が予算執行状況や学校マネジメントの中で事務職員がかかわっているフィールドでの課題を話されると、地域の方は学校をより理解されます。こんなに学校はお金がないとか、こんなに工夫しているのかということを知り、応援団が増えていきます。それは学校の全容を見て、学校が今どういう状態かというのを分からないと語れないと思います。

また事務職員が学校運営協議会とどのようにかかわっているかということで、各地から事務職員の方の視察があります。先生方は毎年学年が変わりますが、事務の方は学校の全容を今見ているだけではなく、長い時間の流れの中でどう変わってきたかを見ていらっしゃいます。データを持っていることと全容が見えるという強みを活かし、チーム学校の力になるのだろうと思っています。

そして新人であろうとマネジメントされたチームの中の一員であるという視野が必要で、是非これからの研修や採用に入れていただきたいと思いますし、その重要性を伝えるのは校長先生や教育委員会の仕事ではないかと思います。ひっそりとどこにいらっしゃるのか分からないことも、印刷室に机が一つあって、あの方は誰ですかとたずねたら事務職だったという学校もありましたが、座る位置も重要で、情報がきちんと入り、いつでもコミュニケーションがとれることが望ましいでしょう。支援や参画というのではなく、事務職員は学校を作る大事なメンバーの一人になり得るのではないかと思います。

【小川主査】  ありがとうございました。

ほかに。坪内委員どうぞ。

【坪内委員】  どうもありがとうございました。

私から簡潔に申し上げたいと思うのですが、藤原委員の資料の6ページに今後重視される学校の事務職員の資質・能力というのがまとめてあるのがすごく興味深く拝見しました。やはり右側の今後特に重視するところを左側に比べて見てまいりますと、学校事務職員の方にとても高いプロフェショナルな資質が求められていくというのが一目瞭然かと思います。これまでのイメージで学校事務職員という言葉がありますと、やはり補助的なイメージがどうしてもあって、呼び方にもあると思うのですが、事務というよりは運営やマネジメントのプロフェショナルというイメージを今後描いていくという考えであれば、場合によっては呼称の問題も含めて考えていく必要があると思いました。どうしてももちろん全員がそうだというわけではないでしょうけれども、必ずしも積極的なキャリアの選択肢として学校事務職員を目指すというよりも別の事情でお仕事に就かれる方も場合によっては多いのかもしれないなと思いますけれども、やはり学校を作っていくという職業選択として、もっとやりがいや意義、価値を見せていくことも重要なのではないかと思いました。

先ほど小栁委員がロールモデルというお話をされましたけれども、やはりそれはすごく重要だなと思っていまして、いかに口で言っても、本当にこの職業について意義あるお仕事をされていらっしゃる方を見るというのは、何よりも大きな理由になるだろうと思いますので、やはり学校事務職員として運営、マネジメントのプロフェショナルとして活躍されている方を積極的に見せていく取組は重要なのではないかと思いました。

最後に思いましたのは、この事務職員の方々の意識改革という言葉が何度か出てきているんですけれども、場合によっては教員の方の意識改革もすごく重要なのではないかと思いまして、やはり良いパートナーシップを教員と事務職員の方に築いていくためには、教員の方々が事務職員の職業、プロフェショナルに対する理解とか尊敬、リスペクトの意識が構築されていくことが非常に重要なのではないかと思いました。なので、意識改革については総合的なところを取り組む必要があるかなと思いました。

以上です。

【小川主査】  ありがとうございました。残りも時間がありませんが、あと1人、2人いらっしゃればいかがでしょうか。

よろしいですか。それでは最後に、佐野会長と藤原委員、今までの議論を聞いて、言い残していることがあればお話いただきたいと思います。また、藤原さんのお話の最後の検討課題のところは、簡単にお話されていましたが、この作業部会にとって非常に重要なテーマを含んでいるので、もう少し何かこの検討課題のところで補足があれば説明いただければと思うのですけれども、最後に佐野会長と藤原委員の方から、今までの議論を聞いて一言ずつ御意見を伺えればと思います。よろしくお願いします。

【佐野会長】  私の方は、学校事務職員とはどういうものかをまず御理解いただけたのであれば、すごくありがたいです。新潟の学校事務職員は特に頑張っているということをここでお話したいと思いますし、全国の同じ職にある方たちも違いはありますけれども、頑張っているという部分は感じております。

今、呼称の問題という部分もありましたけれども、私も事務主任を頂いていますけれども、やはり保護者等への文書などそういう部分では、ただ主査とかの職名よりも、事務主任の佐野ですと電話したり、文書で出したりすると、もっと事務長の方が分かりいいのですが、保護者等の理解が深まっている現実はあります。いろいろな部分でサポートしながら、また組織の部分で変わっていけばより力を発揮できると感じておりますので、またよろしくお願いいたします。

以上です。

【小川主査】  ありがとうございました。

では、藤原委員。

【藤原委員】  皆さんのお話を聞きながら、やはり今、各地の取組が多様でございますので、取組を見ながら望ましいやり方、制度の在り方について検討する必要があると思いました。さらに、学校事務職員の呼称のお話もありましたけれども、学校運営事務を担う職として新しい名称を法的に検討するというのも大きいと思いました。

採用区分も大事でございますし、6番の人材育成は国レベルで研修センター等の御尽力でプログラムを組むことはできるのではないかと思っております。今現在、事務職員は三十数年学校で働き続けているわけです。そうしますと教頭職を数年やる人よりも学校運営事務について実は様々な知識を持っていて当然なのではなかろうかと考えております。文化という観点でも是非検討が要るということを確信しながら終わらせていただきます。ありがとうございました。

【小川主査】  ありがとうございました。

少し早目の終了となりますけれども、本日お忙しい中、佐野会長、新潟からおいでいただきまして本当にありがとうございました。また藤原委員、御報告ありがとうございました。

では、今日はこれで終わりたいと思います。次回以降について、事務局、いかがですか。

【福島補佐】  また追って連絡をさせていただきます。

【小川主査】  次回以降については、また委員の日程調整を図って、確定次第、御連絡をしたいと思いますので、よろしくお願いします。

それでは、議事が全部終わりましたので、今日の会議を終わりたいと思います。ありがとうございました。

 

―― 了 ――

 

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