小中一貫教育特別部会(第2回) 議事録

1.日時

平成26年9月8日(月曜日)13時~15時

2.場所

文部科学省「第二講堂」(旧文部省庁舎6階)

3.議題

  1. 小中一貫教育の制度化の在り方について

4.議事録

【小川部会長】  それでは定刻になりましたので、ただいまから小中一貫教育特別部会、第2回目を開催させていただきます。
 本日は大変お忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。
 きょうは、小中一貫教育の取組について、三つの教育委員会からヒアリングを予定しております。なお、現在、小中一貫教育の制度化に当たって、教員免許制度の在り方について御検討いただいている教員養成部会の委員にもオブザーバーとして御参加いただいております。
 また、前回御欠席で、今回より出席されている委員、お二人いらっしゃいますので、最初に紹介させていただきます。矢崎委員です。
【矢崎委員】  よろしくお願いいたします。
【小川部会長】  貞広委員です。
【貞広委員】  よろしくお願いいたします。
【小川部会長】  それでは、まず配付資料について、事務局の方から御説明をお願いいたします。
【小林教育制度改革室長】  本日の配付資料は、議事次第にございますとおり、資料1として、これまでの主な御意見をお配りしております。これは前回お配りしたものに、前回の御意見を更に追記させていただいております。
 次に、資料2として、検討すべき事項(案)をお配りしております。これも前回お配りしたものに、前回頂いた御意見を追記しております。
 それから、資料3から5として、本日御発表いただきます自治体から御提供いただいた資料を配付しております。
 また、埼玉県教育委員会、入間市教育委員会、品川区教育委員会から、参考にリーフレットやパンフレットを御提供いただいておりますので、併せて机上に配付させていただいております。
 万が一、不足等ございましたら、事務局の方にお申し付けください。
【小川部会長】  資料、よろしいでしょうか。
 なお、本日、報道関係者より会議冒頭の撮影及び会議内容の録音を行いたいという申出がありましたので、これを許可しておりますので、御承知おきいただければと思います。
 それでは、本日の議題に入りたいと思います。
 きょうは、小中一貫教育の制度化に当たって、現行の小中一貫教育の様々な取組について、主に三つの視点から、御報告、ヒアリングを行いたいと思っています。
 一つは、小中一貫教育の具体的な成果、課題、二つ目は、その課題の解決ないしは課題の解消に向けての取組の進捗状況、三つ目は、小中一貫教育で指摘されるデメリットに対する考え方や対応状況などについて、呉市、埼玉県及び入間市、そして品川区の教育委員会からヒアリングを行いたいと思っております。
 それぞれのヒアリングの後に、10分程度、質疑応答の時間を設けます。そして、三つのヒアリングが終わりましたら、最後、二、三十分ほど時間があるかと思いますけれども、最後に全体的に意見交換をしたいと思います。よろしくお願いします。
 それと、ヒアリングに入る前に、前回の第1回目の会議で出された御意見や御質問に関わって事務局の方と整理しましたので、少し御説明をさせていただければと思います。
 先ほど事務局の方から御説明のあった配付資料2として、検討すべき事項(案)が配付されているかと思いますけれども、これが前回の第1回目の部会で出された御意見を踏まえて、現時点での本部会の検討の視点ということになっております。
 前回の部会では、本部会における検討の対象として、一つ、小中の連携まで含めて議論するのか、検討するのか。二つ目には、高等学校まで含めて区切りなどを検討するのかどうかというふうなお話もあったんですけれども、あの後、文科大臣からの諮問の内容も踏まえまして、事務局と相談して、次のように進めていきたいと考えております。
 最初の小学校、中学校の連携に関しては、学習指導要領の総則にも「指導計画の作成等に当たっての配慮事項」として記載もありますし、全ての小・中学校が連携とか交流を図るものとされています。
 また、今回の諮問は、小中一貫教育の制度化及びその推進方針に関するというふうなことですので、本部会とすれば、基本的に小中一貫教育の制度化を中心に議論をしていただくというふうに考えております。
 ただ、小中一貫の取組と小中連携の取組には、当然皆さん御承知のとおり重複するというか重なる部分もありますので、審議の中で小中連携の更なる推進とか、高度化に資するような知見が得られれば、必要に応じて答申案の中に盛り込んでいくというふうな形にしていければと思います。第1点目は、そういうことで御了解いただければと思います。
 二つ目は、やはり小中の一貫といった場合、高校の問題もどうしても避けて通れないのではないか、どうするのだという話も前回出たのですけれども、高校教育の取扱いも含めた、例えば4・4・4制などの新たな学校段階の区切りの在り方については、今回の諮問の前提となっている教育再生実行会議の提言においても、小中一貫教育学校を制度化した上で、その実施状況を見ながら将来的に検討すべき課題とされています。そのために、小中一貫教育の推進に関しては、こうした将来的な検討を見越して、留意すべき事項、ないしは留意すべき検討課題があれば、必要に応じて答申案にそうした点も盛り込んで、最後の最終的なまとめにしていきたいと考えております。
 一応、前回、第1回目の会議の際に出された小中連携のテーマについてはどういうふうに扱うのだとか、高等学校等々を含めた学校の段階間の区切りの問題はどうするのかという御質問等々も出ましたけれども、一応今お話ししたように、本部会では今言ったような扱い方で、これから審議を進めさせていただければと思います。その辺御了解よろしくお願いいたします。
 それでは、これからヒアリングに入りたいと思います。
 最初に、平成12年度から小中一貫教育を導入して、ある意味で小中一貫教育のパイオニアというか、そういうふうな取組をしてきている広島県の呉市の教育委員会から御報告をお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【呉市高橋課長補佐】  広島県呉市教育委員会学校教育課課長補佐の高橋と申します。
【呉市二宮教頭】  呉市立呉中央中学校の教頭の二宮と申します。よろしくお願いいたします。
【呉市高橋課長補佐】  どうぞよろしくお願いいたします。それでは、座らせてもらって発表させていただきます。
 これから呉市が進める小中一貫教育についてお話しします。御覧の図は、呉市内の小・中学校と中学校区です。赤い丸が小学校、緑の丸が中学校、オレンジ色の線で囲まれた部分が中学校区です。
 呉市には、現在26の中学校と39の小学校があります。呉市の小中一貫教育は、文部省から小中連携の研究開発の指定を受けた平成12年から始まりました。その研究の成果を平成16年に中央教育審議会で報告しています。呉市では、平成19年から順次、全中学校区を研究指定し、今年度は、その二巡目の最終年となります。
 次に、呉市の小中一貫教育について説明します。大きく四つの特徴があります。一つ目は、学習指導要領にのっとっていること。二つ目は、全ての中学校区で実施していること。三つ目は、義務教育9年間を発達段階に応じて、4・3・2区分に分けていること。四つ目は、中学校区の特色を生かした取組を進めていることです。
 呉市の小中一貫教育の特徴の一つである4・3・2区分の根拠について説明いたします。ここにお示ししました折れ線グラフは、6・3制が始まった頃の昭和25年と平成23年の男子と女子の年齢別の身長を比較したものです。昭和25年の12歳の身長は、平成23年の9歳から10歳ぐらいと同じであり、2年から3年ほど体の発達が早くなっていることが分かります。
 このグラフは、「自分は周りの人から認められていると思いますか」という質問に対する回答の結果です。小学校4年生までは肯定的な回答が多いのに対して、5年生から明らかに否定的な回答が多くなっています。その中で、「全く思わない」と回答した子供の割合も増えています。このような心の変化から、子供たちは小学校5年生の頃から自尊感情の急激な低下が見られる思春期に入ると考えられます。心と体の発達がアンバランスな時期であることに加え、体の発達もますます早くなり、中期は不安定な時期にあると言えます。
 このほか、生徒指導上の課題です。これは小中一貫教育の研究を始めた頃、平成13年度の学年別問題行動の発生率のグラフです。全国的に見ても同じ傾向が見られますが、中学生の問題行動の発生率は大きく増加しています。しかし、4年生から5年生にかけても緩やかな増加傾向が見られます。このことから、小学校5年生ぐらいから問題行動につながる要因は潜在的に存在し、それが環境が変わる中学校入学以後に表面化するのではないかと考えることができます。
 不登校についても同じ傾向が見られます。これらのことから、不安定な思春期の時期で、小学校と中学校の接続期である中期の指導を工夫することで、生徒指導上の課題を解決することができるのではないかと考えたのです。
 前期4年、中期3年、後期2年の中では、特に中1ギャップ解消のため、中期に重点を置いて指導しています。
 この中期の指導を充実させるため、一部の中学校区に計画的な乗り入れ授業を行う市費の小中一貫教育推進加配講師を措置しています。この講師を措置することにより、学校間の移動に時間が掛かって、十分乗り入れ事業の時間を確保することができなかった学校区も、計画的に乗り入れ授業を実施することができるようになりました。
 平成22年度には4名であった加配講師も、平成23年度からは9名措置しています。このほか呉市では、定数配置内で各学校に1名、小中一貫教育推進コーディネーターを指名しています。コーディネーターの役割は大きく二つで、一つ目は中学校区内の学校と学校をつなぐこと。もう一つは、中学校区内の学校と外部をつなぐことです。コーディネーターは、小学校と中学校を一つの組織として取組を進める下地作りをしています。
 また、呉市では小中一貫教育推進コーディネーターを中心に、小中一貫カリキュラム、呉型カリキュラムの作成を進めています。このカリキュラムは、各中学校区で課題を分析し、付けたい力を明確にして、各教科の領域別に系統的な学習を進めることができるようになっています。本年度は、呉市全体で教科の幅を広げたカリキュラムの開発と、昨年度作成したカリキュラムの実践検証を進めており、来年度以降の取組につなげていきたいと考えております。
 呉市では、立地条件の違いによって、中学校区を一体型と分離型の二つに分けて取組を進めています。一体型とは、中学校と小学校が一体となっているもので、26中学校区のうち4中学校区が一体型です。分離型とは、中学校と小学校が離れている中学校区で、残りは全て分離型です。
 画面下の写真は、一体型の呉中央学園です。
 また、既存の施設を活用して一体型にする工夫もしています。御覧のように、警固屋学園は、もともと隣接していた赤い枠の中学校と青い枠の小学校の黄色い部分を渡り橋でつないで一体型としました。広南学園では、渡り廊下を付けて一体型としています。これらのおかげで、靴を履き替えずに自由に校舎を行き来できるようになりました。
 このほか、倉橋学園のように廃校となった高等学校の校舎を改築して、一体型としたものもあります。
 次に、一体型と分離型の取組について、少し説明します。学校経営においては、一体型と分離型では特に違いはありません。どの中学校区も、教育目標、研究主題の共有化を図り、中学校区としての学校経営を行っています。しかし、分離型では、子供や教職員の交流、合同行事等を行うに当たって、一体型に比べて地理的要因によって制限される部分もあります。そのため限られた回数の中で内容を精選しながら、次のような取組を行っています。
 夏休みの前の時期に合わせて、中学生が小学生にラジオ体操の指導を行う合同授業や、小中一貫教育推進加配校では、計画的な乗り入れ授業を行い、夏休みの補充の授業に小学校の教員が参加して中学生を指導したり、地域の公園などを清掃するクリーン活動を地域の行事に合わせたり、学年を限定して行ったりしています。
【呉市二宮教頭】  ここからは小中一貫教育の取組の具体として、呉中央学園の取組を紹介いたします。呉中央学園は施設一体型の学校で、児童生徒835名、各学年ほぼ3学級ずつの規模の学校です。職員室も小・中学校で一つです。
 小中一貫教育の取組の1点目は、小・中学校一貫した授業作り、指導体制についてです。中期5・6年生の児童に、中学校からの乗り入れや専科教員、担任同士の交換授業などによる一部教科担任制を導入しています。特に乗り入れ授業は、教員の授業改善の大きなヒントになっています。
 異校種の授業は、見学するだけでも、その違いに驚くことがありますが、実際に自分が授業を進めてみると、その反応の違いに更に驚き、児童生徒理解にもつながっています。
 次に、児童生徒の課題を9年間で解決していく試みを紹介します。ここでは三つの事例について紹介します。
 まず一つ目は、家庭学習習慣についての取組です。当初は、小学校と中学校の宿題の目標時間に段差があったため、全体としてなだらかに増加するような目標時間を設定し、5年生からは個別に自主勉強などの課題を設定するようにしました。
 また、学年ごとに「まなびのすすめ」を作成し、全ての学年の保護者や児童生徒に家庭学習の大切さや方法を示していきました。
 家庭での保護者の関わりを増やしてもらうためのノートも、学校独自で作成し、使用しています。
 二つ目は、5年生からの定期テストの導入です。この図は、小学校卒業時と中学校に入ってすぐの評定を比較した相関表です。6年生のときに「十分満足できる」という評定をもらっていた児童は35名でしたが、そのうちの約半数に当たる17名は、中学校では5段階の2や3の評定になっていることが分かります。
 これらを検討した結果、中学校になったら急に勉強が難しくなり、できなくなるという声は、評価テストの違いに起因するのではないかと声が上がりました。そこで計画的に学習する習慣を付けるために、5年生から学期に1回の定期テストを実施することにしました。小・中学校でテスト問題を検討し合うことで、それぞれの授業改善のヒントになっていきました。計画的な学習を丁寧に指導できるメリットがあります。
 三つ目は、学力調査の分析です。小中合同で分析することで課題がはっきり見え、その解決策を全学年で実施することも可能になりました。このことが授業改善につながっていきました。
 これらの取組は、少しずつ児童生徒の学力向上につながっていきました。全国学力調査の結果からも、その成果を見ることができます。
 2点目は、9年間を一貫した進路指導、キャリア教育についてです。呉中央学園では、学園独自のカリキュラムを作成しています。各教科の中では、9年間の学びのつながりを意識して、指導上の留意点を示しています。特に、生活科と総合的な学習の時間は、9年間を一貫した進路指導、キャリア教育を軸とした内容にしています。
 小学校低学年で、あんなお兄さん、お姉さんになりたいという憧れを持ち、その後の様々な人との出会いの中から、その人の生きざまに触れることにより、働くこと、学ぶこと、生きることの意味を考えさせるようなカリキュラムにしています。
 子供たちは、出会った多くの大人の生き方に目を向け、憧れの将来像を見付け出します。その積み重ねの学習の中で、子供たちは夢や志を育んでいきます。その夢や志が学習意欲の背景となっていくと考えています。
 3点目は、自尊感情を回復させる異学年交流についてです。下の学年の子供にとっては、自分の近い将来のモデルとして憧れを持つことができるような、上の学年の子供たちにとっては、頼られる存在として自尊感情が向上できるような、そんな活動にする必要があります。
 現在は、1年と2年、3年と8年、4年と9年の組合せで実施しています。このほかにも7年生が5年生に職場体験で学んだことを発表したり、6年生の外国語活動と9年生の英語科で交流授業を実施したりという異学年との学習も試みています。
 異学年交流は、特に中期、後期の落ち込んだ自尊感情の回復に効果があることが、本校の研究の中で確認できました。また、取組によって意見の違う人とも協力して活動ができると答える児童生徒が増えてきていることが分かります。
 4点目は、新しい小中一貫教育文化の創造についてです。呉中央学園では、現行の制度の中で小中一貫教育を実施しているため、6年生で卒業式を実施し、4月には入学式を実施して7年生がスタートします。6年生と7年生の教室は隣同士ですが、その生活は授業時間の違いや部活のスタートなど、随分違ったものになります。
 中学生になったら、勉強や部活をしっかり頑張ろうという成長に必要な段差は、あえて残そうとしています。
 さらに、4・3・2区分の区切りの部分を意識して、学校行事として2分の1成人式と立志式を実施しています。式の中では、自分の夢や志を発表し、これから頑張ろうとすることをみんなに聞いてもらっています。自分の思いを発表することは、子供たちを新たなステップへと押し上げる効果があります。
 また、運動会を合同運動会としています。学園としての一体感を出すための大切な行事となっています。
 呉中央学園は一体型小中一貫教育校となり、これまでの学校生活では見られなかった風景が見られるようになりました。この風景の一つ一つが、教職員や子供たちの意識を変化させる力となっています。呉中央学園では、全国に先駆けた学園作りを目指し、新しい学園文化の創造を研究主題に位置付けて取り組んできました。小学校と中学校がそれぞれの発達段階に応じて取り組んだ方がいいもの、一緒に取り組んだ方が双方にとって成果があるものと、それぞれの内容、場に応じて取り組んできました。
 教師が変われば子供が変わり、保護者や地域が変わる。まずは教職員が校種を越え、9年間で育てるという意識に変わり、そのことによって授業改善がなされることが重要だと考えてきました。
 最後に、実践を重ねてきた中で考えた留意点について、7点述べたいと思います。
 最も重要なことは、小中一貫教育を目的にしないことです。小中一貫教育は、児童生徒への取組のための手段、ツールであると捉えることが大切です。
 2点目は、小中の文化の違いを非難するのではなく、良さを認めて伸ばし、課題を認めて改善するという必要があることです。
 3点目は、児童生徒の課題を共通認識し、その要因を分析し、共に解決する方法を考えることです。
 4点目は、乗り入れ授業や異学年交流など、常にこれは何のための取組かを考えて実践することが大切です。
 5点目は、やってみて効果があったことについては、きちんとカリキュラムに残していくことです。改善が常にできるようにすることで、効果が大きくなると思います。
 6点目は、小学校と中学校、それぞれの取組の良さを9年間の学びに広げていくことです。
 7点目、小中一貫教育は、はっきり目に見えるものではありません。成果も同じく見えにくいものです。異校種での取組のため、複数年で成果が見取れるように成果指標をきちんと定めることが重要です。
 いずれにしても、教職員がやらされる小中一貫教育ではなく、前向きに子供たちの変容を楽しみながら取り組むことで成果が出ると思っています。
【呉市高橋課長補佐】  ここからは幾つかのアンケート調査等を基に、呉市の小中一貫教育の成果と課題とをお話しします。
 このグラフは、小中一貫教育推進加配講師を配置した中学校区の小学校5・6年生児童に対する「乗り入れ授業はよく分かりますか」という問いに対する回答です。90%以上の児童が「当てはまる」と答えました。また、小学校5・6年生児童、中学校1年生、生徒の保護者に対する「乗り入れ授業は効果があると思いますか」という問いに対しては、87%の保護者が「効果がある」と回答しました。
 グラフは、市内のある中学校区の生徒への意識調査の結果です。中学校に入学するとき「不安だった」と答えた生徒は、年々減少し、逆に「楽しみだった」と答えた生徒が増えていることが分かります。
 交流活動や小中合同行事によって、小学校の児童は中学校の生徒の姿に憧れの気持ちを持つことができ、中学校の生徒には小学生と接することで、自尊感情の向上を図ることができるようになりました。
 次に、生徒指導上の成果です。中学校1年生の暴力行為、いじめ認知件数、不登校の推移を見ると、小中一貫教育を全ての中学校区で初めて実施した平成19年度と比べて減少しています。当初狙いとしていた、いわゆる中1ギャップに対して効果が見られます。
 次に、学力向上の成果についてです。このグラフは、今年度の全国学力・学習状況調査の平均です。青が全国、赤が呉市の平均正答率です。全教科で呉市が全国の平均を上回っていることが分かります。
 また、広島県では小学校5年生と中学校2年生を対象に学力調査を行っています。このグラフは、今年度の広島県の基礎・基本定着状況調査の結果です。青が広島県、赤が呉市の平均ですが、この調査でも呉市は広島県を上回っていることが分かります。
 最後に、小中一貫教育に関わっての課題に対する対応について述べます。小中一貫教育を進めるに当たっての課題として、これまでよりも教職員の負担が増えるのではないか、義務教育9年間を4・3・2と区分することで、小学校では最高学年として活躍する6年生のリーダー性が発揮できにくくなるのではないかというようなことが挙げられます。確かに、教職員にとっても負担は増える面はあるかもしれませんが、市としても、説明の中にありましたように、分離型の中学校区に小中一貫教育推進加配講師を配置、提出書類の削減など、業務改善にも取り組み、負担軽減にも努めています。
 また、6年生のリーダー性についても、分離型の中学校区では、これまでどおり6年生は最高学年のリーダーとして活躍し、一体型でも呉中央学園の取組にありましたように、学校行事や様々な取組の中で、意識してリーダーとしての活動を取り入れていっています。
 以上、お話ししましたように、呉市が進める小中一貫教育は、中1ギャップの解消、自尊感情の育成、この二つを目的として推進しております。
 これらのことが機能することにより、児童生徒の規範意識と社会性の定着、学力の向上、そして最終的には将来、社会で自立して生きていくことができるということにつながっていくと考えております。
 以上で呉市の取組の紹介を終わります。ありがとうございました。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまの呉市教育委員会の発表内容に関して、御質問がある方は自由に御発言いただきたいと思います。意見交換等々については、三つの教育委員会からのヒアリングが終わった後に、30分程度、時間をとって、そこで意見交換しますので、できましたら、この時間帯は主に質問を中心としてお受けしたいと思います。
 なお、きょう、人数が多いので、御質問のある方は失礼ですけれど、名札を立てていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、どなたからでもどうぞ。秋田委員、どうぞ。
【秋田委員】  東京大学の秋田です。大変興味深い御報告をありがとうございます。特に詳しく知りたいと思いましたのが、小中一貫教育推進加配講師の措置の在り方です。確認をしたいのですが、分離型のみに、この加配がなされるのか。また、この方たちがどのようにして選ばれ、小学校免許と多分両方併有だと思うのですけれども、どういう教科の先生が、どういう形で、その加配というようなところでの方針でしょうか、そこの乗り入れ授業をするときの決め事とか、そういうものを市がどのような形で構成されたのかを、今後の鍵にもなると思いますので、少し詳しく御説明いただけたらと思います。
 以上です。
【小川部会長】  ありがとうございました。最初に質問を受けて、一括してお答えした方が時間の節約にもなりますので、そうさせていただきます。
 今、挙がっているのが、西川委員、橋本委員、そして貞広委員、若月委員、そして吉田委員、時間がありませんので、この5名にさせていただきたいと思います。
 では、橋本委員からどうぞ。質問は手短にお願いいたします。
【橋本委員】  長年の実践、そして呉市全体でやっているということで、すばらしいお話を伺いました。
 質問ですが、限られた時間の中でしたので、中学校の先生が小学校に乗り入れ授業に行っていることを紹介していただきましたけれども、小学校の先生が中学生に対して、日常的なものというのは、なかなか見えませんので、一緒にいることによって、どのような成果というか良さがあるのかを伺いたいと思います。
【小川部会長】  では、西川委員、どうぞ。
【西川委員】  失礼します。私は、管理職の体制についてお尋ねいたします。私、昨年調べましたところ、全国の施設一体型の小中一貫教育校でも管理職の体制は10通りあるのです。呉の場合、施設一体型の学校で、校長先生はお一人でしょうか。多分お二人だったと思うのですが、その管理職体制につきまして、お二人いらっしゃることのメリット、デメリット。あるいは、お一人校長ということは考えられなかったのかどうか教えてください。
【小川部会長】  では、若月委員、貞広委員、お願いします。
【若月委員】  ありがとうございます。大きく2点あります。
 きょう頂いた資料の最後の課題のところですけれども、教職員の負担増という課題があります。この負担増についてですが、現在、呉市の皆さん方は、この負担増は解消できる負担だと考えていらっしゃいますか。それとも一貫教育に付きまとう運命的なと言ったらいいでしょうか、そうした負担だというふうに捉えていらっしゃいますか。これが1点。
 それから、2点目は、いろいろと工夫されて、様々な試みをされていらっしゃいますけれども、こうした実践を通して、教科指導、あるいは学級経営上、免許証の種類による困難性はあったでしょうか。いや、現在あるでしょうか、ないでしょうか。この2点を教えていただければと思います。
 以上です。
【貞広委員】  ありがとうございます。私の質問は西川委員とほぼ同じ御質問でして、お話を伺った限りは、複数、2校以上の学校に、それぞれ教頭先生と校長先生がいらっしゃるということだと思うのですけれども、運用上の位置付けとして、この学園全体のマネジメントを統括する方はどちらかの校長先生かということを決めていらっしゃるのかどうか。又は、決めていらっしゃらないとするならば、それぞれの学校にそれぞれ校長先生がいらっしゃる中で、一つの学年として運営をしていく課題とか難しさ、そのあたりを認識されているとするならば、何らかの手立てを取られているのか。それとも、やはり一人校長、若しくはどなたかエグゼクティブヘッドというか、ヘッド校長のようなものを置いた方が、学園全体としての運用というか経営がやりやすいというような認識を持っていらっしゃるのかどうか、そのあたりを伺いたいと思います。
【小川部会長】  最後に吉田委員、どうぞ。
【吉田委員】  ありがとうございます。私も2点お尋ねしたいのですが、今、全ての中学校区で小中一貫をやっていらっしゃるということですけども、だとすれば制度化する必要性というのには何があるのか。現状、既にもう12年からやっていらっしゃるのに、その必要性を聞きたい。
 それから、もう一点は、とすると、わざわざ制度化されている中高一貫教育校があるわけですけれども、それは県と協力とか、そういうことがあるのでやってないのか、その辺のところをお尋ねしたいと思います。
【小川部会長】  質問、かなり多いのですけれども、答えられる範囲で、またお願いします。
 それで、あと意見のやり取りについては、また後で30分ぐらい時間がありますので、そこでやらせていただければと思います。
 まず、質問にお答えいただければと思います。
【呉市高橋課長補佐】  それでは、ちょっと順不同になるところはありますけれども、御質問の方にお答えさせていただけたらと思います。
 まずは、小中一貫教育推進加配講師がどのように配置されるかというところの問題でございますけれども、分離型の方に配置しているというお話をしましたけれども、要領の方には中学校区内の小学校5年生と6年生を合わせた学級数が、原則7学級以上の中学校に配置するという大原則を取っております。そこを取ると一体型は含まれずに、分離型の中学校区にだけ措置している状況です。
 あと、免許証等に関わりましては、これは乗り入れ授業をする、例えば中学校の数学の先生が算数に乗り入れ授業をするというような形で、中学校の免許を所有している者を採用しております。これは、この乗り入れ授業をする講師が、この講師が中学校から小学校へ行ってするだけではなしに、一番の狙いは、中学校の先生が小学校へ乗り入れ授業ができるようにするために講師を措置するということで、その中学校の先生が小学校に行っている間、その講師の先生が中学校で授業をする。講師の先生は、それだけではなしに、小学校に行っても授業をする。そういう授業スタイルを取っておりますので、免許証としては中学校の免許を所有していて、小学校に兼務発令をかけております。
 次に、管理職の体制についてでございますけれども、呉市では、学園におきましても、それぞれ校長1名、教頭1名という形を取っております。メリットとしましては、もちろんそれぞれの講師の学校が機能的に運営できるというところがメリットで、デメリットとしては、学園として動いていくときに、いわゆる一番上の所属長が2人いるというのはどうかというところがあります。一番は、やっぱり人間関係です。小学校の校長先生と中学校の校長先生がうまく学園としてやっていけるかというところになりますけれども、任命権者は県ですけれども、呉市としましては、そういう運営体制ができる校長先生、教頭先生を県と連携しながら、その学園の方に配置していただけるようにお願いして、今のところ、そういう人間関係のところでのデメリットで大きく困っているということはございません。
 ただ、では校長1名という考え方はないのかというお話がありましたけれども、市の方は校長会、教頭会も、今も合同で開いております。ですから小学校校長会、中学校校長会という形ではなしに、合同校長会を開いておりますので、学園長という形ができても、そこには対応できるのですけれども、県全体とかを考えてみますと、まだ、そういう組織的なものが全部整っておりませんので、呉市だけで学園長を置くというのは、ちょっとまだ難しさが残っている状況です。
 次に、教職員の負担増のところでありますけれども、新しいことを手段としてやるので、どうしても仕事は増えるというふうに考えてはおります。ただ、それは解消できるかというと、それをフラットにすることは難しいとは思っておりますけれども、できるだけ、先ほど申しましたように業務改善を図っていったり、今まで研究指定をしていたときも、うちの学校は国語でやりたいです、うちの学校は算数でやりたいですという、その希望に応じて研究指定をしていたりもしたのですが、今はもう小中一貫教育研究指定校として、小中一貫教育を指定するところの中に研究指定をしているように、選択と集中というところも図っております。
 ですから、何でもかんでもたくさんやっていこうということではなしに、小中一貫教育に一本化しながらやっていくという中で、負担軽減を図ってはいますけれども、最初の答えに戻るのですが、負担増は間違いないところで、ただ、それは解消できるというよりも、乗り越えていくというふうな思いでおります。
 教科、経営上のところはあとで言ってもらうとしまして、免許証の部分は最後の質問とも一致するのですけれども、制度化する中の必要性としまして、今一番、呉市として県の方にも要望して、国の方にもというところは、義務教育学校の設置と、それに合わせて免許制度の方も一緒に考えていただきたいというふうに考えております。一番困っているのは、やはり、中から小へ、小から中へ乗り入れ授業をするときに、まず免許が必要なことで、県に申請を出して、兼職発令がないと自分一人で授業できないこと、自分の授業時数にならないこと、そういったことがありますので、なかなかそこが円滑に進んでいるということになると、少しまだスムーズではないなというところがあります。
 ですから、義務教育学校というところは非常に切望するところですけれども、併せて免許制度についても一緒に考えていただけたら、運営していく上でもスムーズにいけるのではないかというようなところを呉市としては考えております。
【呉市二宮教頭】  続きまして、重なるところもあるかもしれないのですけれども、管理職のところでお話しさせてください。
 管理職2人の校長、1人の校長というお話が出ましたが、学校のサイズによっても、1人の方がいいのか、2人の方がいいのかというのがあろうかと思います。校長先生それぞれの小の校長、中の校長、それぞれ職務がありますので、大きな学校だと1人というのは、仕事の内容でも難しいかな、でも、小さな学校だと1人でもいいのかなと思いますけれども、どちらにしても呉中央学園は2人の校長がおります。決裁事項などは、小学校は小学校、中学校は中学校の方で決裁しますが、学園全体として決め事をするときには、校長同士の話合いはもちろんするのですけども、最終的などちらにするかという決断については、どちらが学園長をするかというのを2人で決められますので、決められた学園長さんの方が最終的には決断を下すという形でうまく回っております。
 私も研究の中で、15年間研究してきまして、いろんな校長先生と教頭先生方の管理職の組合せでやってまいりましたけれども、校長先生方がスムーズに意見交換、そしてお互いが譲り合う、新しいものを作っていくという意識が持てなかったときというのは、非常に厳しい、小中一貫教育が進みにくい時期がありましたので、管理職の校長を1人にするか、2人にするかというところは、本当にどちらがいいではなくて、学校によって重要なところかなと思います。2人にするならば、2人でうまくやっていけるような人間関係の持てる管理職がいいかなと、私の方は研究をしていて感じました。
 それから、別の話にいきます。小学校から中学校への、中学校から小学校ということですが、研究の中でも小から中、中から小、両方の乗り入れをやってみました。でも、小から中の乗り入れも、これも良かったのですけれども、小学校は学級担任制ですので、学級担任を持っている先生が中学校に乗り入れ授業に行くというのは、物理的に困難さがありました。それから無理してやったときもあるのですけれども、子供に対して、やはり良くない影響もあるということで、できるときにということで、現在は長期休業中の補充学習のときに、しっかり個別に関わっていただくために、たくさんの小学校の先生方に中学校に行ってもらい、子供に関わっていただくという形の乗り入れにしております。
 ただ、子供たちにとっては、小学校のときの先生に自分の成長を見てもらうというのは、非常に大きなメリットがあります。子供たちにとっては、いつもこわばった顔をしている子も、小学校の先生が声を掛けてくれると穏やかな顔になるなど、やはり精神面でも大きいものがありますし、特に小学校の教員にとっては、自分が卒業させた子供がどういう成長をしているのかというのが見えますので、通常の自分の取組に授業改善、あるいは指導の改善の参考になるということでメリットがございます。
 それから、最後に負担増ですが、確かに乗り入れ授業などに行くと、行く時間は増えます。増えるのだけれども、特に中学校は、小中一貫教育は中学校にメリットがあると思います。小学校でしっかり一緒に取り組んできたことが、中学校になって花が開くといいますか、ですから成果が見取れるのは中学校なのです。中学校が先行投資のような形で小学校に行かせていただく。小学校の子供の姿を早く見ておくことで、必要な力も付けられるし、課題も早く解決できるということで、中学校の方としたら、負担増ではあるけれども、成果があるので行かせてもらいたい。だから、決して負担はゼロになることはないけれども、意欲的に取り組むことができる内容だということになります。
 長くなりました。失礼しました。
【呉市高橋課長補佐】  すみません、少し落としているところで言えば、先ほど出ました学園長については、市として、こう位置づけなさいということはしておりません。それぞれの学園で話し合われて、視察対応とか学園として動くときに、校長先生のどちらかが学園長としての位置付けをされているということです。
 あと、中高一貫教育についての部分につきましては、市町教育委員会ですので、義務教育所掌というところで、今そこまでの範囲の考え方はしておりませんけれども、所掌している呉高校というのがございます。そこについては小中高一貫した取組ができるようなところは進めていっているところでございます。
 以上でございます。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 委員の方から再質問とか御意見あるかと思うのですけれども、それは最後、終わった後に、また受け付けたいと思いますので、呉市への質問はこれで終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、次に県が積極的に方針を打ち出して、小中一貫教育を推進していらっしゃいます埼玉県の教育委員会と入間市教育委員会から御発表をお願いしたいと思います。
【埼玉県大江課長】  それでは、ただいま御紹介を頂きました埼玉県教育委員会の義務教育指導課長、大江でございます。本日は大変貴重なお時間を頂きまして、発表の機会を頂き、ありがとうございます。
 本日は、埼玉県から課長の大江と指導主事の佐藤、それから埼玉県の事業で協力頂きました入間市の教育委員会から村野教育長と北野副参事が説明させていただきます。大変失礼ながら、着座にて説明を差し上げたいと思います。
 お時間が限られておりますので、早速中身に入らせていただきたいと思います。
 埼玉県は東京のお隣にありますので、皆さん御存じかもしれませんけれども、市町村の数が63ございます。この63というのは、全国的にも非常に多い県でございまして、具体的には3番目なんですけれども、市に限って言えば40市ということで、これは全国一番多い県でございます。
 埼玉県は、東京のベッドタウンという位置付けでの非常に人口の密集した都市部、それから郊外に点在するような中小の都市、あるいは秩父方面などもそうなんですけれども、過疎などの課題に取り組む山間地域など、様々な地域を抱えている県でございます。
 産業も、農業、それから工業、サービス業までバラエティーに富んでおりまして、これは埼玉県の上田知事がよくお話をすることなんですけども、海に面していないということを除けば、埼玉県はまさに日本の縮図であると。日本の課題を埼玉県で何とか解決できれば、それは日本の課題解決にもつながるのだという気持ちでやってほしいというようなことで、日々我々も指導を受けながらやっているところでございます。
 我々埼玉県でございますけれども、これはほかの、恐らく都道府県さんの方でも課題を持ちながら取り組んでいただいていると思うのですけれども、やはり義務教育段階の内容というのは、一義的には市町村に責任、権限があるわけでございまして、県としてどのように取り組んでいくのかと。まして63という非常に多様な市町村を抱えた県として、県で何ができるのかということは常に考えながら、いろんな行政を進めているところでございます。
 今回の小中一貫についてのお話でございますが、これは国、全国的にも同じような傾向があると思いますけれども、この背景でございますが、これは県の方で独自の調査をやっております。一つの調査の項目のうち、分からないことでも自分の力で答えが見付けられるよう勉強したいという、ある意味で学習意欲的なアンケートをしたところ、小学校3年生、4年生、5年生、6年生と当然下がってはくるのですけれども、やはり小6と中1で大きなギャップが出てきてしまうと。学習意欲の面で、若干中1ギャップというようなところが見られるのかなというのが一つの背景でございます。
 また、これも全国的に同じような傾向だと思いますけれども、不登校の数も小6から中1に3倍に跳ね上がり、いじめの認知件数なども3倍弱跳ね上がるということで、これはどこでも認識は同じかもしれませんけれども、いわゆる中1ギャップというのが見られるのを何とかしたいというようなことで始めたのが、埼玉県の事業でございます。
 先ほど呉市さんの方からも非常にすばらしいお話を頂いたわけですけれども、埼玉県の小中一貫というのは非常に歴史が浅いわけでございます。我々が取り組み始めましたのは、平成24年からの2年間、実質的にここからのスタートということで、まだ非常に歴史が浅いわけでございます。
 ほとんどの地域では、小中一貫というものについて、それまではほとんど取組がなされておりませんでした。そこで県では、まずはやってみようではないかということで、モデル地域を八つ、これは小中一貫については取り組んだことがないという地域をモデル地区に指定いたしまして、いろんな研究を、この2年間でしてまいったわけでございます。
 モデル地区の取組につきまして、これだけは必須で取り組んでもらいたいといったものがございます。一つは、9年間を見通したカリキュラムの作成でございますが、その前提となるのが、やはり中学校区で目指す児童生徒像を共通で認識しようということでございますので、まず目指す児童生徒像を共通で話し合い、設定していただくとともに、重点目標も共通のものを設定すると。それを実現するために9年間のカリキュラムの作成を行うという流れで、これは必須メニューで取り組んでいただきました。
 また、小中の教員によるティーム・ティーチング、これも全てのモデル地区には取り組んでいただきましたし、小学校高学年での一部教科担任制、これも取り組んでいただきました。
 それから、当然のことながら小中教員の乗り入れを含め、教員の交流、児童生徒の交流というのは、これは当たり前のこととして取り組んでいただいたわけでございます。
 一番下に書かせていただきましたけれども、我々の県で冒頭申し上げましたように、それぞれの市町村の独自性、自立性というのがあるわけでございますので、県としてどういうところが進められるかということで考えまして、一つの非常に先進的な取組を作るということではなく、今のままでもできるような取組を何とか小中一貫という理念の下に進めていこうではないかといったことが、この取組の検討の始まりでございました。
 早速ですけれども、まず成果に入りたいと思います。実は、今回御用意いたしました小中一貫推進ガイドというものを県で、後ほど、また御説明いたしますけれども、この中に細かいことは書かれておりますので、後ほど御覧いただければと思うのですけれども、八つのモデル地区で事業の実施に当たって、これは先ほど呉市のお話の中でも出てまいりましたけれども、中学校に入学する際に非常に不安を感じたことというのは、実は一番は中学校の授業で教科によって先生が変わることだということでございました。これは我々も若干意外だったのですけれども、中学校に入ると、先輩、後輩関係があるとか、新しい友達関係ができるとか、そういうものの方が不安が多いのではないかと思ったのですが、実はアンケートを採ってみると、教科によって先生が変わるというのが一番不安が高かったわけでございます。
 ただ、これはたった1年なんですけれども、モデル事業を実施しまして、小学校6年生のときに、いわゆる小中一貫というものを体験した子供たちに翌年聞いたら、不安が、がくっと下がったわけでございます。24年では72.5%の子供が、こういったことに不安を感じていたわけですが、翌年は15%になったということでございます。また、ほかにもいろいろ不安はあるけれども、不安は特にないよといった子供たちも非常に増加したと。これが一つの成果でございました。
 それから、冒頭申し上げました、分からないことでも自分の力で答えを見付けられるよう勉強したいというようなことで、平成23年から24年にかけては、やはり中1ギャップと言われるところでしょうか、小学校6年生のときに91%の子供が、このように思っていたところが、中1になり、86ということで、がくんと5%ぐらい下がったわけでございますけれども、このモデル地区に限っては、いわゆるギャップがほとんどなくなったということでございました。
 それから、成果は幾つかあるのですけれども、教員の意識というのは、これは非常に大きく変わりまして、冒頭に申し上げましたように、モデル地区の学校というのは基本的に小中一貫というのに、ほとんどなじみがなかった先生方なんですけれども、やってみたらどうかということで聞きましたところ、学力向上における課題解決に非常に効果的だと思うという先生方が88%、それから生徒指導における課題解決には効果的だということで、これはやってみたら95%近くの教員が、これは効果があるというふうに認識をしたところでございます。
 小中一貫、県としての課題認識でございますけれども、先ほどの呉市の御発表の中でも出てまいりましたけれども、先ほど来、子供たちの学習意欲、あるいは教員の意識も含め、基本的にはメリットの方が多いのではないかというのが我々の感触でございます。あえてデメリット、あるいは課題を挙げると、ここに書かせていただきましたように、小中一貫教育を導入する負担感でございます。これは導入した後の負担感というよりも、導入するというのは大変だよねと、小中一貫をやったらいいのだろうけれども、いざやるとなると、どこから始めていいのだろうかという、この負担感、なかなか重い腰が上がらないというのが、これは県として一番の課題ではないかというふうに思ったところでございます。
 こういったことを踏まえまして、昨年末、この2年間の事業の総まとめといたしまして、このガイドを作りました。63の市町村の皆さんに、このガイドを見ていただきながら、できるところから始めていってくださいと。埼玉県は、こういう小中一貫をやりますということで、一律に何かを定めるのではなくて、これを参考にしながら、できるところから手を付けていっていただきたいという、そういった認識で、このガイドを作らせていただきまして、またあわせて、埼玉県は小中合わせると1000校を超えるわけでございますけれども、1200校近くの小中の校長先生に一堂に集まっていただきまして、この小中一貫だけのセミナーを行いました。きょういらっしゃっていますが、酒井先生にもお世話になりましたし、ここにおります入間の村野教育長にも参加していただきまして、校長先生に小中一貫の話を差し上げたところでございます。
 全校長に、このセミナーの後にアンケートを採りましたところ、既に小中一貫を推進しているというふうな答えをしていただいた人が3割ぐらいいるのですけれども、残りの7割のうち、小中一貫、まだ全然手を付けてないという校長先生のほとんどが、小中一貫を推進してみたいというふうに思っていただいたところでございます。
 こうした意識も踏まえまして、今年度からでございますけれども、県では市町村が支援する、県が出前講座をやりまして、小中一貫を取り組んでみたいのだけれどもというふうに思っているところに県が出向いていって、ガイドなどを使いながら、どういうふうにやっていったらいいのかということでアドバイスをしているところでございます。
 このガイドの中身、お時間が限られておりますので、かいつまんでになりますけれども、埼玉県が考える小中一貫ということで、先ほど申し上げましたカリキュラムを編成するというのは当然なんですけど、それの前提として、目指す児童生徒像、重点目標を設定し、9年間を見通したカリキュラムを編成して、それに基づく系統的な教育を行っていただければ有り難いということで考えていることを書かせていただいております。
 先ほど申し上げましたように、一律にということではなく、いろんな側面から、できるところからやっていただいて構わないのですよということで、六つほど、こういったカテゴライズをさせていただきまして、どこからでも取り組んでいただいていいですよというような形に、このガイドブックを作らせていただきました。
 本日は時間がありませんので、2番目のところだけ、ごくごく簡単に触れたいと思いますけれども、この重点目標なり、目標を設定するということで、まずはしっかり現状分析、各種の学力テスト、あるいはアンケート調査、学校評価等、アセスメント等を踏まえて、しっかり子供たちの実態を見て、この重点目標なり、目指す生徒像を設定してほしいということを、このガイドに書かせていただいております。
 大変足早で恐縮でございますけれども、こういった今、取組を進めているところでございまして、平成24年度の事業の実施当初には、ほとんど小中一貫というのは埼玉県にはなじみがなかったわけですけれども、63市町村のうち、今15の市町まで取組が進められるようになりました。今後、実施をしますと言っている所が2、それから実施を検討している所が5ということで、徐々に徐々に埼玉県の中では小中一貫が進んできているというところでございます。
 大変足早で恐縮でございますけれども、この後、実際にモデル地区で御協力いただきました入間市の取組について説明を差し上げたいと思います。
【入間市村野教育長】  それでは、入間市の教育長の村野と申します。本市の小中一貫教育について、説明を申し上げさせていただきたいと思います。
 本市は、埼玉県西部に位置しまして、人口は15万、首都圏40キロ圏で東京のベッドタウンとして発展をしてまいりました。主に地場産業はお茶でございまして、ブランド名は狭山茶でございます。
 本市の学校数でございますけれども、小学校16、中学校11、計27校、1万2000人の子供たちを680名の先生方で教育をしております。
 標榜(ひょうぼう)している目標は、ここに書いてあるとおりでございます。「ふるさとを愛し、21世紀を心豊かでたくましく生き抜く子の育成」、これに取り組んでおります。
 実は、本市は平成20年に子ども未来室事業というのを立ち上げました。この事業は、0歳から20歳までの全ての子供の自立支援を図ろうという取組でございます。その中の一環で小中一貫を取り上げているところでございます。
 簡単に全体像を説明しますと、5年スパンで第1ステージの保幼小の連携、第2ステージを小中、中高の連携、今、体制を作って取り組んでおります。きょうは時間の関係で、中高の連携は省かせていただきたいと思います。そして、26年度から文部科学省の委託を受けて、小中一貫の教育を展開しているところでございます。そして、最終ステージの第3ステージとしては、自立支援、この体制を作っていこうと考えているところでございます。
 実は、なぜ子ども未来室事業を立ち上げたのか。19年度までは、本市は大変荒れている学校でございました。気になる行動の背景は何なのか。ひょっとすると、発達障害の2次障害ではないか。ならば、まず学校を落ち着けるために、発達障害の子供を早期発見、早期支援する必要があるだろうということで、このように幼稚園、保育園に専門家を派遣して、発達障害の子供の発見に取り組みました。昨年あたりは、年間400回ぐらい出ております。
 そして、市独自で就学前に通級指導教室を設け、ここで療育をし、小中とつなげていきまして、ここで学んでいる子供の数が、これだけになっております。今年も、もう現時点で250名を超えております。その分、学校は落ち着いてまいりました。
 その落ち着いた中で、障害のない子供への支援ということで、なめらかな接続を図っていこう。これが平成20年度から始めました小1プロブレムの解消に向かっての施策でございます。具体的には、本市で独自に作りました「遊びと学びの手引き」、これを使って、全ての保育園、幼稚園、保育所で、小学校入学前に教育をしていきました。
 そして、小学校は、近所の保育園、幼稚園、生活科との交流を図って、7年になります。おかげさまで、小学1年生の入り口がとても落ち着いて入ってきているところでございます。
 そして、平成23年から小中の連携、並びに中高の連携、この体制づくりに励みました。具体的には教員同士の交流、そして子供同士の交流、更に平成24年、25年から市内の東町小中に、小中一貫の研究の依頼をいたしました。具体的には、教員同士の交流、連携を一歩深めて事業交流まで、そして子供たちの授業を一緒にして、中学校の不安感をなくす、こういう取組をしてまいりました。保護者同士の交流、この研究をしていただいたところでございます。
 こういう取組をしてまいりまして、課題の不登校の数でございますけれども、本市8000名子供がいますが、平成25年度、不登校はゼロでございます。今日の小学校の不登校はゼロでございます。そして、中学校の不登校も年々減っておりますし、そして暴力行為も減少して、大変学校が落ち着いている、そういう体制になりました。
 この図を見ていただきたいのですけれども、実は平成20年度は、ここで私ども白梅大学の無藤先生に御指導いただいて、保幼小の連携を始めたのです。この保幼小の連携を始めた学年から、不登校は全部ゼロになっています。
 中学1年生の、ここの段階が、この年度の子供たちが学校に来ています。今日、中学1年生、2名不登校がおりますが、この2名は中学生になっての他市からの転入生でございます。そして小中の連携は23年度から始まりました。この学年が中学に行ったときに、不登校は激減している。こういう意味では、大変連携という効果はあるなと感じております。
 そして、学力の面では、東町中学校ですけども、連携も一貫も何もしてないときには、秋田・全国の平均よりもはるか劣っていた学力ですが、3年後に連携一貫をした子供たちの学力は、全国平均を超えて、ほぼ秋田と同じぐらいの状態になっている。小中の一貫の教育というのは、学力向上にも大きな力があるなと感じたところでございます。
 そこで、教育委員会としては、子供たちの更なる自立を図るために、市内全校に平成24年から小中一貫の教育による制度を導入したところでございます。
 まず狙いは、一番は教員の意識の向上を図りたい。資質の向上、とりわけ授業力の向上を図ろうということで、教師同士の交流をメインにいたしました。呉市さんとは、ちょっと違って、私どもは小学校16校に、全校に小学校の先生が中学校に行っても大丈夫なようにサポーターを入れました。そして、小学校の先生が中学校に出やすい工夫をしておりまして、現在1週間に6時間から10時間ぐらい、その先生が中学校に出向いております。
 イメージとしますと、私どもは幼児期から高校まで連携をしていたわけですけれども、この小中一貫を成功させるかどうかのキーポイントは、私は校長のリーダーシップだと思っております。特に校長には、先ほど県の大江課長が申しておりましたけども、中学校区の目指す子供像を確立しろとお願いをしまして、小中の先生が集まって、この中学校区の子供像を確立したところに、私ども連携から一貫にシフトが変わったな、そういうふうに思いました。
 その中で、とりわけ5・6年と中学1年の、この接続期を重点に、先生の交流、子供同士の交流を図る計画を立てております。そして、保幼小の連携で成功いたしました「遊びと学びの手引き」を使って、そして中学校版の「遊びと学びの手引き」を使って、中学校に入れたいな。
 そして、もう一つは、知的情緒障害のある子供たちを、やはり一貫して連携して支援をしていきたい。地域コミュニティーの支えによって、こういう活動を展開していきたいなと思っているところでございます。
 学年区分につきましては、呉市と同様に子供の発達を考えて、4・3・2の体制を考えて推進したいと思っています。
 これが、小学校の先生がここに入っている様子ですが、4年前は学校が荒れていて、廊下まで来たのですが、教室の中に入れなかった。ここから小中の先生の交流は始まっております。とりわけ免許の関係で、数学の時間ですが、6年生で学んだ算数の振り返りのところを、この先生がメインになり、続いて中学校区の内容を中学校の先生が指導していく、こういう体制をとっております。
 こういう交流を通して、この先生は中学校の先生の専門的な指導法を学ぶことができ、いろんなものを感じておりますし、この子供たち、特に中学校の4月、5月の子供の心理状態を考えると、元の担任、なれ親しんだ先生が教室にいるということは、子供にとって大変効果のあることだな、そういうふうに感じているところでございます。
 そして、中学校の先生も同様かなと思っているところでございます。子供同士の交流、実は夏休みの補習ですけれども、この子供は、2年前はこの立場だったのです。中学校に行って、そして再び後輩を教える喜び。この子供は、分かったという喜びと同時に、中学生になったら、ああいうお姉さんになりたいという憧れ、こういう異年齢間の中での大変いい人間関係が醸成される。これが中学校、地域まで、東町中学校の場合には広がっている、そういうことを感じているところでございます。
 生徒といたしましては、4年間、小中の連携はしましたが、この意識は育ちませんでした。でも、わずか6か月、小中一貫を図ったところ、この意識が大幅に高まっております。そして、また先ほど県のデータでもありましたけれども、一番不安感が軽減されたところが、ここでございます。非常に大きな成果であるというふうに思いました。
 今後の課題としては、まだ始まったばかりですが、幾つかの課題が残っておりますので、順次解決してまいりたいと思っております。
 今後の展望としては、今取り組んでいる内容に、私どもは、学級にはいろんな障害がある子供がいますので、インクルーシブの教育を意識したユニバーサルデザインの教育を展開して、子供たちの自立を図っていきたい。特に、0歳から20歳まで連続支援ということですので、幼児期には学ぶ喜びを、児童期には学びの充実を、そして義務教育最終年度には、確かな学びの定着を図って、21世紀を心豊かでたくましく生き抜く子を育てていきたい、そんな思いで教職員と一緒に今、取り組んでいるところでございます。
 以上で説明の方を終わりにさせていただきます。以上でございます。
【小川部会長】  発表ありがとうございました。それでは、今の埼玉県の教育委員会、入間市教育委員会の発表に関して、御質問のある方、名札を立てていただきたいと思います。では、天笠委員から、どうぞ。
【天笠委員】  どうもありがとうございました。一つ質問をお願いしたいというふうに思います。
 子供の学習意欲が、小学校の段階から中学校に行くと随分低下すると。ですけど、この取組をすることによって、そこのところが随分カバーされていくという、そういう御発表、大変興味深く伺わせていただきました。
 そういう取組の中で一つ御質問させていただきたいのが、小学校5・6年生の先生方の指導の体制についてですけども、もう少し申し上げますと、教科の分担の仕方ということについてですけども、一部教科担任制ということですけども、今回取り組んでいるそれぞれの学校、モデル地区等々で、分担の仕方についての工夫ですとか、何か特色があるような取組があったとしたら、そのあたりのところを御紹介いただけると有り難いかなというふうに思うのですけども、県の説明としては、現行制度からスムーズな小中一貫の実施という、そういうことも、また一つのスタンスとすると、5・6年生の教科の分担の仕方というのが一つのポイントになる部分もあるのではないかと個人的には思っているところがありまして、そういう点からして、それと取り組んでみて、どんなことであったかどうか、あわせてお話をしていただけるということで、よろしくお願いいたします。
【小川部会長】  ありがとうございました。ちょっとお待ちください。質問を一括して受けたいと思います。油布委員。
【油布委員】  簡単な質問です。一つは、この取組をするに当たっての、前の呉のような教員の増員とか加配とか、そういうものがあったかどうかということが1点です。
 それから、もう一つは、最後に小中のときには余りうまくいかなかったけども、一貫にしてうまくいったというふうにおっしゃったと思うのですが、それの具体的なことが余りよく分からなかったのです。それで、例えば施設分離型の一貫教育なのか、施設一体型の一貫教育なのか、そういう施設的なところではどうなのかと、この2点について質問させてください。
【小川部会長】  ありがとうございました。ほかにいらっしゃらないですね。では、安彦委員、どうぞ。
【安彦副部会長】  一つだけ伺いますが、どちらかというと前半では、入間市の場合ですけど、発達障害のお子さんたちの特別支援教育的なアプローチが先行して行われて、先行したのか同時なのか、ちょっと分かりませんが、そのことと小中一貫のところの関係といいますか、二重に効果が生まれているのか、それとも別々に視点をお持ちになった上で、両方の成果というのを別々に捉えておられるのか。また、全体として相互関係というのは、かなり重要な関係なのか、その辺を一言お願いします。
【小川部会長】  3人から御質問があったのですけども、どうしましょうか。質問の内容によっては、県と入間市、それぞれ対応いただければと思います。
【埼玉県大江課長】  ちょっと順番、前後してしまうのですけれども、県の方から、まず加配でございますけれども、このモデル事業をやるときには、8モデル地区には一人ずつの加配を配置いたしました。これは先ほど申し上げましたように、導入する際の負担というのは、ちょっとあるのかなと。そういった意味で、導入する際の負担をなるべく軽減してあげるという意味合いから、1人加配を行いました。
 それから、小学校5・6年の先生の指導体制ということで、教科の分担ですけれども、これも埼玉県の方では非常に歴史が浅いので、とにかくやってみようということで、きょうお配りしました一貫ガイドの方の44ページ以降、それぞれのモデル地区の取組について記述させていただいていますけれども、教科は様々でございます。例えば、算数、数学が一番やりやすければ、まずそこから取り組もうとか、理科でやっている所もありますし、これはそれぞれの学校にお任せをして考えていただいたというところでございます。
【入間市村野教育長】  続いて、施設の分離型か一体型かということでございますが、私の方の教育委員会では、全部分離型でございます。
 それから、発達障害の特別支援の観点と一貫教育の関係の御質問でございますが、基本的には小中一貫の制度を導入しても、学級の中が落ち着いていなければ、この制度は導入、学校はできません。生徒指導に追われていて、幾らいい制度といっても、導入はできない。基本的には、私どもは、まず学級の荒れている原因の発達障害の2次障害の子供たちの、まず体制をきちっとケアして、落ち着かせた上で、この導入をすると、より効果が出るだろうという考えで、第一に発達障害のところのアプローチをし、そして次の段階に入ってきたというところでございます。
 以上でございます。
【埼玉県大江課長】  すみません、埼玉県の方でございます。1点補足でございまして、八つのモデル地区は、全て基本的には分離型で行いました。一体型のところは、一つもこのモデル事業ではございませんでした。
【小川部会長】  時間もありませんので、追質問とか、また御意見あるかと思うのですけれども、ここで終わらせていただきたいと思います。
 最後に、施設一体型校舎の整備、また教育課程の特例の積極的な活用などを試みられている品川区の教育委員会から、御報告をお願いいたします。
【品川区渋谷課長】  失礼いたします。品川区教育委員会指導課長の渋谷でございます。よろしくお願いいたします。座って説明させていただきます。パワーポイントは使用いたしません。お手元の資料に沿って説明いたします。若干、字が小さくて見えにくいですが、御了承いただければと思います。
 品川区の小中一貫教育の取組について、大きく四つに分けて説明いたします。はじめに、全体的な概要、次に品川区の公立小・中学校の現況、3番目に施設一体型小中一貫校について、最後に成果と課題について簡単にお話しさせていただきます。
 まず、全体的な概要を説明いたします。お手元の品川区の小中一貫教育というリーフレットをお開きいただければと思います。
 品川区は、平成18年度より全ての公立小・中学校で小中一貫教育に取り組んでおります。義務教育9年間を4・3・2のまとまりで捉えて、系統的、継続的な教育活動を行っています。そのために、学習指導要領を基に、区独自で作成した品川区小中一貫教育要領による教育活動を全区で展開しております。
 品川区独自の9年間の教育活動を行うために、独自の教科書や副教科書も作成しております。
 小中一貫教育のカリキュラムの特徴として、市民科、ステップアップ学習、小学校からの英語科などについて、見開きについてまとめてありますので、御覧になっておいてください。
 続いて、裏面を御覧ください。品川区の小中一貫教育は、小学校と中学校を一体化施設で行う施設一体型と、近隣の小学校、中学校が連携して行う施設分離型の二つのタイプで行っております。特に施設一体型については、平成18年度に開校した日野学園から、平成25年に開校した豊葉の杜学園まで6校の施設一体型小中一貫校があることが大きな特徴となっております。この施設一体型の一貫校については、後ほど詳しく御説明いたします。
 では、次に品川区の公立小・中学校の現況について、御説明いたします。
 資料1ページの資料1、品川区立学校関係図を御覧ください。品川区には、小学校37校、中学校15校がございます。各ブロックに1校ずつ、計6校が施設一体型小中一貫校となっております。連携関係にある小学校と中学校を線で結んで示しております。小学校の児童数は全部で1万3627人、中学校生徒数は4867人です。
 区全体を4色で示したブロックに分け、居住地のあるブロック内の小学校を選ぶことができるブロック内学校選択制を小学校で平成12年度から導入し、翌平成13年度から全区から中学校を選ぶことができる中学校の学校選択制を開始しているところでございます。
 続いて2ページ、資料2、入学希望申請の状況を御覧ください。学校選択制による入学希望申請の状況をまとめた資料になります。ちょっと小さいですが、表の左側のナンバー1、品川学園(品川小)を例に見方を御説明します。
 品川小学校の学区域に住んでいる1年生の住民基本台帳にある入学予定者が76名、隣の95名は品川小学校の学区域の居住者以外で、先ほど地図で示した品川・大崎ブロック内の居住者で、品川小学校に希望申請を出している人数になります。隣のマイナス17人は、品川小学校区の学区域に住んでいる方で、品川小以外の小学校を希望した人数になります。以上の合計154人が品川小への入学希望者になります。
 品川小学校は4学級対応の校舎のため、受入れ枠を125名としており、抽選の結果128名が入学したということを表しております。
 小学校は、赤色のセルになっている12校が抽選を行いました。施設一体型一貫校は、6校中4校が小学校段階では抽選となっております。
 中学校については、一貫校を含む2校が抽選になります。
 ちなみに、23区平均と同程度の2割強の生徒が国公私立、都立の中学校に進学しているという状況でございます。
 続いて3ページ、資料3、平成26年度品川区立学校教職員配置状況を御覧ください。
 こちらは教職員の配置人数を示したものでございます。特に施設一体型小中一貫校の管理職の配置でございますが、表の一番下の米印でお示ししたとおり、最後にできた豊葉の杜学園以外の施設一体型小中一貫校は、校長1名、副校長3名の配置になっております。
 続いて4ページ、資料4、品川区立学校固有教員配置状況一覧を御覧ください。
 品川区では、平成21年度より小中一貫教育など、独自の施策をしっかりと継承していけるように、区固有教員を採用しております。現在18名の固有教員を配置しているところでございます。
 今後、各中学校区、15校ありますので、2名配置をめどに、30名採用していく予定でございます。
 1枚おめくりいただいて、5ページ、資料5、平成26年度区費非常勤講師の配当時数一覧を御覧ください。
 小中一貫教育や各校の特色ある教育活動を充実させるために、区費の非常勤講師を1校当たり平均して週10時間程度配当しております。活用方法は、連携校に教師を派遣するための後補充や、小中一貫教育の特徴である5年生からの教科担任制、また小学校英語の実施など、各校の実態に応じて活用されているところでございます。
 続いて6ページ、資料6、品川区小中一貫教育要領の概要を御覧ください。
 小中一貫教育校全区展開した平成18年度当初は、内閣府の構造改革特区として、また平成20年からは全校を文部科学省の教育課程の特例校として独自の教育課程による小中一貫教育を行っています。
 国語、社会、算数、数学、理科、英語では、学習指導要領に示された指導事項にプラスした内容に取り組むために、独自の副教科書を作成しております。
 また、英語は1年生から教科として取り組み、道徳、特別活動、総合的な学習の時間を統合した市民科、児童生徒一人一人の個性、能力を伸ばすためのステップアップ学習などに全校で取り組んでいます。
 子供たちの学力差が大きくなってくる5年生から、ステップアップ学習の時間を位置付けたことは、小中一貫教育のカリキュラムの特徴の一つであります。
 年間の授業時数は、全学年、国の標準時数より週当たり一こま分、多く設定しております。ちなみに、授業時数の確保のため、平成24年度より原則、第1、第3土曜日を授業日に設定しております。
 では、続きまして大きな3点目として、品川区の施設一体型小中一貫校について説明いたします。
 7ページ、資料7-1、施設一体型小中一貫校 学校運営組織一覧を御覧ください。
 まずはじめに、ハード面の違いから簡単に触れておきます。八潮学園は既存の隣接する小学校、中学校の間を増築して一体型としたもので、1から6年生用校舎と7から9年生用の校舎に分かれています。
 豊葉の杜学園は、道路を挟んで1から4年の校舎と5から9年の校舎を空中廊下で接続する形になっております。
 ほかの一貫校は同一の建物で、4・3・2のまとまりでフロアを分けるなどの構造になっているところであります。
 管理職の配置状況ですが、ちょっと細かいですが、日野学園は校長が中学校籍、副校長は中学校籍2名と小学校籍1名、伊藤学園は、校長、中学校籍、副校長は中学校籍2名と小学校籍1名、八潮学園は、校長が中学校籍、副校長は中学校籍1名と小学校籍2名、荏原平塚学園は、校長が中学校籍、副校長は中学校籍が2名、小学校籍が1名、品川学園は、校長が小学校籍、副校長が中学校籍2名、小学校籍1名、豊葉の杜学園は、統括校長は中学校籍、もう一人の校長は小学校籍、副校長は小中一人ずつという配置になっております。
 一貫校の複数配置の副校長の役割分担の仕方には、幾つか特徴があります。一つ目は、統括副校長を位置付けているということ。二つ目は、4・3・2のまとまりの学年団を担当するということ。そして、三つ目は、分掌ごとに担当副校長を置いているということでございます。
 最後にできた豊葉の杜学園を2人校長の配置にしたのは、この豊葉の杜学園は、小学校2校、中学校2校を母体とした、統合も同時に行った施設一体型一貫校であったため、時限的な特例措置として校長2人体制としているものでございます。
 続いて、8ページ、資料7-2、一体型一貫校の諸会議を御覧いただければと思います。
 左から縦に見ていくと、日野学園の学校経営会議は学期に1回、伊藤学園、運営委員会、八潮学園、主幹管理職会議は週2回、荏原平塚学園、品川学園、豊葉の杜学園の経営会議は毎日。
 2列目の主任などを交えた学校運営会議等については、毎週実施しているのが日野学園と豊葉の杜学園、そのほかは月に1回となっています。
 3列目の日野と豊葉の拡大運営会議は月に1回の開催、4列目の全教職員が参加する職員連絡会等は、どの学校も月1回開催になっております。
 そのほか特徴的なものとして、4・3・2のまとまりによるブロック会というものを全ての一貫校で実施しております。
 続いて、9ページ、資料8、施設一体型小中一貫校の教員免許所持状況を御覧いただければと思います。
 施設一体型一貫校で、小中両方の免許を持っている教員は、平均38%ということになっております。
 続いて10ページ、資料9、施設一体型小中一貫校の6年生の内部の進学率、それから7年生の内部生の在籍率を御覧ください。
 上の表は、施設一体型小中一貫校の6年生が、そのまま7年生になる割合を示しています。中学受験者が多い日野学園と、小学校と中学校とで学区域に違いのある荏原平塚学園の内部生の進学率が低くなっています。
 先ほども申し上げましたが、区内平均で24.8%が私立中学等に進学している状況と比較すると、日野学園以外は私立等に抜ける割合は低くなっています。
 下の表は、7年生の内部進級者の割合を表したものです。例えば、伊藤学園の母体校は原小学校、伊藤中学校になります。伊藤中学校の学区域には、近隣の大井第一小学校、山中小学校という所が含まれているため、伊藤学園そのものは小学校段階は学年3学級規模ですが、中学校段階では学年が5学級規模となり、7年生から一貫校に通い始める生徒が約半数在籍するということになっています。
 一貫校の中でも八潮学園は、小学校と中学校の学区域が完全に一致しているため、約9割の児童生徒が9年間、一貫校に在籍するというような、一貫校によっても違いが出ているところであります。
 続いて、11ページ、資料10、施設一体型小中一貫校の特徴的な行事一覧を御覧ください。
 施設一体型小中一貫校として、単独校とは異なる特徴的な行事について説明いたします。
 一つ目は、7年生の入学式の扱いです。伊藤学園は、9年間の学校という学校の特徴を重視して、入学を祝う会という形式で実施しています。
 二つ目は、6年生の卒業式の扱いになります。一貫校としての開校年度や地域性などにより対応が異なっております。
 1校目の日野学園、2校目の伊藤学園は、時間を掛けて保護者等に説明をして、小中一貫校としての連続性を重視して卒業式を実施していません。品川学園は、母体となる品川小学校は区内で最も歴史ある小学校で、地域の思いも強いことから、従来どおりに卒業式を実施しています。
 三つ目は、運動会です。1から4年と5から9年のまとまりごとに、それぞれ実施しているのが日野学園と豊葉の杜学園。1から6年と7から9年のまとまりで行う従来型は、荏原平塚学園と品川学園。1から9年の全校で実施しているのは伊藤学園と八潮学園になっております。
 1枚おめくりいただいて、12ページを御覧ください。文化祭等の取組です。全学年同日実施は、八潮学園と荏原平塚学園、それ以外は1から4年と5から9年に分けて実施しています。
 その下のその他の欄を御覧ください。施設一体型小中一貫校では、特に1から4年のまとまりを重視して、4年終了時に一〇(いちまる)式、立志式、2分の1成人式など名称は様々ですが、独自の行事を位置付けているところでございます。
 また、勉強合宿を、8年生を全員対象として、日野学園、八潮学園で実施しました。実施校の生徒、保護者、教員からの評価が高い行事です。他校の一貫校でも導入を今後検討しているところです。
 そのほか、単独校と異なる取組としては、5年生からの定期考査、5年生から参加できる部活動、生徒会、委員会活動の参加などが挙げられます。
 学園別に見ると、日野学園は異学年交流や学力重視の独自のカリキュラム、伊藤学園は5年生、8年生の合同移動教室、八潮学園は近くにある都立産業技術高専と連携した9年間のものづくり事業の実践、品川学園は4・3・2のまとまりを強く意識した特別活動の実施など、それぞれ特徴のある活動に取り組んでいるところであります。
 おめくりいただいて、13ページ、資料11、6校の一貫校の中から品川学園の教育課程をお持ちいたしました。施設一体型の一貫校は、このフォーマットで全て教育課程を編集しています。ざっと見ていきたいと思います。
 教育課程の方のページで、最初に1ページ、1として小中一貫教育に対する基本的な考え方、2ページに、2、教育目標として小中一貫教育目標、そして(2)に4・3・2の学年のまとまりごとの指導目標、3ページには(3)小中一貫教育目標を達成するための基本的な方策。ずっとおめくりいただいて、8ページには、3、指導の重点として、各教科の取組。また、それをずっとおめくりいただいて、11ページには、小中一貫カリキュラムの特徴である(2)ステップアップ学習、(3)英語科、13ページには(4)市民科、更におめくりいただいて、18ページには特別支援教育、19ページにはその他など、このような項目で小中一貫した教育課程を編成していただいているところでございます。
 続いて、36ページ、資料11-2を御覧ください。これは品川学園の時程表になります。1年生から4年生は45分授業、5年生以上は50分授業で授業を行っているところであります。
 次の37ページ、資料11-3は、品川学園の5年生以上の授業受持ち一覧です。大変小さくて見にくくて恐縮ですが、学年、教科ごとに、誰がどのクラスを担当するのかを表したものです。
 品川学園は、一部教科担任制を実施しています。一番上の5年生を例に説明をいたします。5年生は2学級になります。表の一番上、5年1組の担任、アルファベットが小さいですが、HA先生を例に見方を御説明します。
 HA先生は、5年の国語を1組と2組、全学年2クラス分、週10時間と、それから市民科を3時間。3行目を見ると、5年1組です。自分のクラスの社会を3時間担当し、5行目の算数の所を御覧いただけると、5年生は2学級を三つに分けて、3展開をした授業展開をしています。そのうちの一つを5時間担当し、12行目には英語ですが、これは自分のクラスを1時間担当し、この5年1組のHA担任先生は、22時間の授業を持っているということが分かります。教科担任として5年の国語を担当していますが、あと、そのほか東京では通常、専科教員が音楽、図工を担当しています。それ以外に、ここでは理科と体育はほかの先生が5年1組の授業を担当していることを示しています。
 ちょっと見にくいですが、下の方の黄色で示してあるIZ先生、9年所属、それからNB先生、8年所属は保健体育の先生ですが、5年生と6年生の体育の授業を一部担当している、そういった中学校の先生が乗り入れているというのが分かると思います。
 続いて、資料12、38ページ、品川区立学校児童・生徒指導要録です。品川区立学校の指導要録の様式です。これは全校で使っている指導要録で、9年間の記録ができるようになっています。
 指導要録は、電子化して品川区役所内のサーバーに保存してあります。全校に、またホームシステムが入っておりますので、区内の小学校から中学校に進学する場合は、要録を送付する必要がないというような事務作業の軽減化を図っているところであります。
 では、最後に品川で取り組んできた小中一貫教育の成果と課題について、簡単に御説明いたします。児童生徒、保護者、教員の観点から、アンケート等で見ていきたいと思います。
 41ページを御覧ください。資料13、学力・不登校に関する経年変化です。はじめは、児童生徒の学力の状況ですが、全国学力・学習状況調査で全国平均を上回った学校数の推移を見ると、小学校は平成20年度以降、全国平均を超える学校が、若干ですが増加傾向にあります。中学校でも平成24年度以降は、全国平均を超える学校が微増傾向にあります。
 その下は、中学校の不登校の出現率です。全国、東京都と比較すると、品川区は低い状況にあると言えます。経年で見ると、平成20年以降は減少傾向にあります。
 続いて、42ページ、資料14、保護者アンケートを御覧ください。これは平成19年度に全児童生徒の約3分の1の保護者を対象に実施したデータと、一昨年度、平成24年度に全児童生徒の保護者を対象にしたアンケート結果を比較したものになります。
 品川区が教育に力を入れていると感じている保護者は86%で、前回調査より若干増加しています。しかしながら、小中一貫教育は良い取組だと思うという質問に対しては、肯定的な保護者は前回の48%から39%に減少しています。
 施設一体型の保護者に注目してみると、肯定的な保護者は55%いることから、小中一貫教育に対する厳しい見方をしているのは、小中の単独校の保護者であることが分かります。
 同様に4・3・2のまとまりで考えることについても、同じような傾向が見られます。
 43ページ、資料15、教員アンケートを御覧ください。平成25年度末に区内の施設一体型の一貫校と中学校の教員を対象として、小中一貫教育の取組に対する意識調査を行った抜粋になります。在籍している学校で実践している取組について、「効果が出ている」、「やや効果が出ている」を合わせた割合で比較すると、分離型の中学校の先生は、児童生徒の中1ギャップの解消が最も多く、72.6%、一体型では、全ての先生、中学校籍ともに児童生徒の基礎的、基本的な学力の定着、児童生徒の異学年交流を通じた成長で効果を感じていることが読み取れます。
 以上のことから、小中一貫教育の取組は、多くの教員はその効果を感じており、義務教育段階の教育の質の向上に寄与しているというふうに考えているところであります。しかしながら、施設分離型として小中一貫教育に取り組んでいる単独の小学校、中学校の保護者の認知が低いということは、これは引き続き課題であります。このことは施設が分離しているという学校間の距離の問題というより、品川区固有の問題として、学区域の関係で、単独小学校と中学校との接続関係が明確にできないことが大きな要因になっていると考えられます。品川区で小中教育一貫校として法制化されたものが開校する場合については、一人の子供が同一条件で9年間学べる環境をどのように担保していくのかということが大きな課題になると考えているところでございます。
 説明は以上でございます。
【小川部会長】  ありがとうございました。それでは、余り時間がないのですけれども、今の品川区の発表に対して、何か御質問があれば。油布委員、佐藤委員、そして酒井委員、貞広委員。ほかによろしいですか。なければ、この4人でお願いいたします。では、油布委員の方からお願いします。
【油布委員】  まとめのところで聞こうと思ったのですけど、一つ大きな質問があります。小中一貫教育ということと学校選択制ということは、基本的に制度として矛盾するのではないかという気がしているのですけれども、しかも、この表を見ますと、小中一貫教育というけれども、基本的には7年生になる段階で、一貫校であっても半分変わっているというような状況になっていると思います。その辺について、どういうふうに品川の方ではお考えになっているのかということを、ほかにもあるのですけど、とりあえず、これに関しては、そういう質問をさせてください。
【小川部会長】  では、佐藤委員。
【佐藤委員】  ありがとうございます。たくさんのデータ、ありがとうございます。
 特に目を引いたことで、10ページのデータについてお尋ねしたいと思います。10ページの上のデータです。表なんですけれども、私学へ中学段階から、いわゆる流出する数値が書いてあります。区内平均で約4分の1強ということでしょうか。これらの数字は、小中一貫教育を実施する前と後で顕著な差があるのかどうか、これが一つ。
 それから、現在も学園によって大きな差があるのは、これは単なる地域性の問題なのか、それとも小中一貫教育の推進と何か関係があるというふうにおとりになっているかどうか。
 三つ目として、区外の他校に流出するところが、一つの学園について非常に大きな数値になっております。このことについても単なる地域の問題なのか、それとも中高一貫教育との関係なのか、どういう御見解かお尋ねしたいと思います。
【小川部会長】  酒井委員、どうぞ。
【酒井委員】  ありがとうございます。非常に詳しい資料が載っておりますので、余計にいろいろお聞きしたいことがあるのですが、二つだけ。
 1点目は、保護者アンケートについてですが、先ほども報告がありましたように、平成19年度と比べますと、平成24年度で全体としての評価は低くなっていると。その中で一体型は非常に良い評価をされる方が多いようですから、反対に一体型でない分離型のところの評価の保護者の方が、ちょっと評価が悪いのではないかと。その背景は何かというのが、教育委員会としてのお考えをお聞きしたいというのが1点。
 それから、随分前の資料になります。資料2になりますが、非常に細かい入学希望者の状況のところですが、これを拝見しますと、実際に入った数で、一方では非常に児童生徒数の多い学校、多分これは概算なのですが、日野学園は多分1200人ぐらいの小・中学生がいるのではないかと思うのですが、一方で、小学校の中で単独校の中で入学者が14名ぐらいの所がありますので、100名切ってしまう小学校ができると。こういうアンバランスの中で、教育委員会としては、どういうふうな形で教育の全体としての充実をお考えなのかということをお聞きしたいと思います。
 以上です。
【小川部会長】  ありがとうございました。では、小原委員、そして貞広委員。
【小原委員】  特段、品川区というだけではないのですけど、小中一貫校の施設の面で少し質問させていただきます。
 小学生と中学生が一緒に生活する場、ですから5・6・7・8年生が一緒に生活する所というのは、小学生と中学生の行動が交差しないように出入口をそれぞれ設ける。また職員室や保健室も設置基準上別個に設ける。さらに階段の高さ、(小学校と中学校は高さが違う)にどのように対応してきたのかを少し質問させていただきました。
【貞広委員】  ありがとうございます。私からは1点、小中一貫教育、小中一貫学校の規模の問題に関して御質問を申し上げたいと思います。
 今回、話を整理するために施設一体型の6校についてだけで結構ですけれども、6校についても、規模について大分バリエーションがあります。日野学園が一番大きいようですけれども、先ほど週の時間割を見せていただきましたが、非常にこれは恐らく立てるのが大変なのだろうなと思われます。大きな学校はスタッフが多くて、スタッフのバリエーションもあるという一方で、時間割の柔軟性であるとか、交換授業、また子供の交流とか、先生方同士の交流や打合せなど、なかなかかえって難しい面もあろうかと思います。
 現場で、こういう小中一貫教育の学校規模で大き過ぎるからやりにくい、小さ過ぎるからやりにくい、又は、これぐらいの規模がいいなどということが、現場の経験値として意識されているのかどうか。そのあたりに課題があるとするのであれば、何らかの手立てが取られているのかどうか。又は、手立てを講じても無理な側面もあるのかどうか、そのあたりをお聞きしたいと思います。お願いいたします。
【小川部会長】  では、最後、天笠委員。
【天笠委員】  連携教育と一貫教育を同居させざるを得ない品川区の現状と課題ということについて、私も少し関わりを持たせていただいていますので、そこら辺のところは、よくきょうの御発表の中にも出ていたのではないかと思っておりますけども、今後、小中一貫を制度化といった場合には、どうしても連携と同居というふうな、連携と一貫というのを、ある程度エリアの中で同居一体化せざるを得ないと思っておるのですけども、そういうところから何か得られた知見等々があったらということなんですけど、とりわけお尋ねさせていただきたいのは、そうした場合に四つのブロックというのが、そのあたりのところについて、どういう意味をなしているのか、なしてないのかというあたりのところについてお尋ねさせていただきたいと思うのですけれども、いろんな歴史的等々の文脈の中から、あるいは現実的な地理的な、それからブロックを作っているということも拝察されるわけですけども、そういうことが小中一貫と連携ということを共存させていくというか、連携させていくに当たって、このブロックということがどういう意味合いを持つのかどうなのか、お尋ねさせていただければと思います。
【小川部会長】  たくさん質問が出たのですが、答えられる範囲で構いませんので、よろしくお願いいたします。
【品川区渋谷課長】  まず1点目、一番大きな難しい……。
【小川部会長】  すみません。時間が3時終了の予定なんですけども、今の質問の数からいって、3時ちょっと過ぎますので、その辺は御了解いただきたいと思います。よろしくお願いします。どうもすみませんでした。
【品川区渋谷課長】  まず、油布先生から御質問いただいた学校選択制と小中一貫教育の矛盾ということですが、品川区の小中一貫教育の考え方として、学校選択制が大前提になりますので、品川区として小中一貫教育の教育要領に基づいた実践を行うということで、品川の小中一貫教育というものを担保していこうというのが基本的な考え方で進めているところであります。
 ただ、最後の課題で申し上げたとおり、では子供の9年間の学びをどうするのかというときに、品川区の子供はどこで学んでも、品川区の学校のどこを出ても9年間のカリキュラム、同一の教育内容、同一の教育水準を担保できるというところを説明しているというところでございます。
 二つ目、私学への進学率24.8%で、これは小中一貫教育導入前と変化があるのかという御質問ですが、基本的に大体25%前後で変化はございません。これは大体、東京都の水準とほぼ変わっていない状況でございます。
 それから、学園の違いがあるのかというのは、これはどういう質問だったか、すみません……。
【小川部会長】  私学への進学というか、流出というか、それが学園によってかなり差があるのですけども、それはどうしてかという質問です。
【品川区渋谷課長】  これは、品川区の地域性の問題だというふうに考えています。この学園だからということでなくて、元からその学園ベースの地域で進学志向が強いということでございます。
 それから、荏原平塚学園が学校選択制で、自分のところに進まないで他校に流出している割合が若干多いというのは、荏原平塚学園の母体の小学校が平塚小学校になっているのですが、その本来の荏原平塚学園の平塚小学校の学区域の約3分の2が、7年生になると荏原第一中学校の学区域になっているという、小学校と一貫校で、学園で学区域のねじれがあるということが大きな要因になっているところでございます。選択制のこと等があって、まだ学区域のところの改善に、手を付けることができないので、この矛盾が生じているというところでございます。
 それから、保護者アンケートで、小中一貫に対しての全体の評価が低くなってきたのはというのは、特に施設分離をしている小・中学校の保護者に、やっぱり小中一貫教育として実際の子供の関わるものが目に見えにくくなってきている、あるいは今までやってきたことが、それが当然のこととして新たな小中一貫の取組として、なかなか理解されにくくなってきたというところが大きな背景なのかなというふうに考えております。品川区の場合は、英語ですとか、市民科ですとか、ステップアップ学習ですとか、そういった日々の取組が小中一貫の取組として取り組んでいるところであるのですが、もうそういったものが当然になってしまったので、なかなか認知が低くなってきている。これは今、教育委員会としても大きな課題として捉えているところでございます。
 それから、資料2で規模のアンバランスの御質問がありました。これについては、学校選択制をやって、各品川は大きく地域ブロックで六つのブロックに、それぞれ小中一貫校を建てたというのは、選択制をする中で保護者の希望で、小規模な学校がいいという保護者、大規模な学校、中規模がいいという保護者、あるいは、また小中一貫がいいという保護者、そういった選択のニーズに応えるために、様々な学校のバランスがあって良かろうというような考えでいるところであります。
 それから、小・中学校5・6年生の生活する場所で、行動が交差するか等々の御質問ですが、施設一体型の八潮と豊葉の杜以外の所は、5・6・7年生は、呉さんの説明にもありましたが、同じフロアになっています。ですから、隣の教室に移動するだけで学年進行になっています。あえて交差をさせないとか、接触をさせないということではなくて、積極的に関わるような形をあえてとっていると。
 ただ、教員の目が行き届かないとか等々の問題がありますので、フロアごとに先生方が常駐できるような場所を設けていて、休み時間等々は職員室に戻らずに、学年担当の先生がそのスペースにいて、子供たちに注意を払っているというような環境を作っているところでございます。
 階段の高さだとか、そういった設置基準の詳しいことは、ちょっと今お答えしかねますので御了承ください。
 それから、学校規模の問題についての御質問がありました。大き過ぎること等々で課題はあるのかという点でございますが、小中一貫教育校を作ることの、まさに規模のメリットということが大変ポイントになるのかなというふうに思います。学校が小規模化することにより、分掌等の負担、一人当たりの教員の負担も非常に大きいです。また、若い教員が増えてきて、OJTを進める上でも、単独校よりも施設一体型の一貫校等で教科ごとの部会などでOJTを検証するということで非常に大きな効果を上げています。
 また、管理職も複数いることによって、校長の資質能力に関わらず、組織としてのマネジメントがしっかりできると。4人の管理職が相談をしながら学校経営を考えられたりするということで、規模のメリットということは、小中一貫校を法制化して考えていく上では、非常に大きなポイントになるのかなというふうに思っています。
 最後、天笠先生の御質問は、大変難しい御質問で、今後の品川の小中一貫教育の在り方を、まさにどういうふうにしていくのかという御質問になってくるかと思います。まだ詳しい議論は進めていないのですけれども、今後、法制化になったときに、具体的に品川のどの学校、どの一貫校を具体的に法制化に基づく小中一貫教育校にするのか、それとも全部をするようなことを考えていくのか、その辺のことになってきますので、ここは今後の検討課題ということで御容赦いただければと思います。
【小川部会長】  たくさんの質問に対して、御回答ありがとうございました。
 それで、もう既に予定の時間を過ぎてしまったのですけれども、本来であれば、三つの委員会からの御発表を受けて、小中一貫教育の制度化の検討に当たっての様々な論点、示唆等々について、少し委員同士で意見交換する時間を当初とっていたのですけれども、時間がオーバーしてしまいましたので、どういたしましょうか。どうしても今の三つの報告を聞いて、きょう、是非発言しておきたいという委員の方がいらっしゃれば、一、二、受けたいと思いますけれども、もしもなければ、次回、次々回以降ですか、そういう意見交換の時間がありますので、そこで時間をとって議論をしていく予定ですけれども、きょうのところはよろしいでしょうか。
 三つの委員会からの報告が非常に充実していましたし、あと、皆さんからの御質問も非常に多く出されたということで、最後の意見交換の時間を確保できませんでしたことは、御容赦いただければと思います。
 それでは、きょうの会議はこれで終わりたいと思いますけれども、次回も引き続きヒアリングと、あと事務局が小中一貫に関する実態調査等々を今進めていまして、今、分析を進行中ですので、それが次回の会議ではまとまるということですので、事務局から実態調査のデータを出していただく予定です。ヒアリングは、西委員から京都市の取組、そして理論的なというか総括的な問題整理をしていただくということで、安彦委員の方から御報告、次回はその三つの発表を予定しております。よろしくお願いいたします。
 では、次回について事務局の方から御連絡いただきたいと思います。
【小林教育制度改革室長】  次回は、9月19日金曜日の10時からを予定しております。追って正式な御案内を送付いたしますので、御出席のほど、よろしくお願いいたします。
【小川部会長】  次回は9月19日金曜日、10時からということですので、よろしくお願いいたします。
 それでは、きょうの部会を終わりたいと思います。ありがとうございました。

                                                                  ―― 了 ――

お問合せ先

初等中等教育局 初等中等教育企画課

教育制度改革室 義務教育改革係
電話番号:03-5253-4111(内線2007)

(初等中等教育局 初等中等教育企画課 教育制度改革室)