資料2-2 委員提出資料

幼保連携型認定こども園保育要領(仮)の策定にむけてお願いと意見

2014年1月15日 委員 汐見稔幸

1.乳児保育の大事さと原則について、1項ないしは1章をもうけて記述していただきたい 

理由と要望

  • 0,1,2歳児の保育は、3,4,5歳児の保育に比べて経験がまだきわめて少ない。とくに0歳児の集団的な保育の経験は諸外国でも少ない。
  • また、親との心理的距離が近いことが必要であることが多い段階の子どもを一定時間親から離し集団の中で育てることがその子の一生にとってどのような意味を持つのか、それが子どもの心理的負担にならないようにするには何が必要かということについて、十分な実証的データがない。
  • 乳児の集団保育が必要ないとか無理だといっているのではない。乳児期から保育所で育った子どもと、そうでない子の育ちに基本的な差はないというデータもある。しかし、それは現場の努力によって一定の保育の質が保たれてきたからである可能性が高い。その努力の内容を乳児保育の原則としてていねいに伝えることが、本要領のミッションであると思う。
  • 現状は、乳児保育の対象者の数の増大を追求してきた施策のために、その質の担保のための条件が不鮮明になっている印象がある。ある乳児保育研究会で10ばかりの園の0歳児保育の実際を撮影して検討したとき、それぞれが異なる、10通りの保育をしていて驚いたし、首をかしげる保育をしている保育所、騒がしくて保育者の声も聞き取れない保育所もあった。
  • 今回の要領の課題のひとつは、そういう現状にある乳児保育の質をきちんと担保することにあると思う。要領に記述される乳児保育の原則が不鮮明で経験も不十分であると、3歳以上児の保育を「うすめて」集団として扱うこども園も出てきかねない。
  • 現行の保育所保育指針も、乳児の保育については十分なスペースを割いて原則を述べているわけでない。乳児保育の経験の少ないところが保育指針を参照しようとしても、それだけでは不十分になる可能性もある。また5領域で目標を記述することが乳児保育にふさわしいかなどの問題もあるが、さしあたり5領域の目標呈示であっても、その具体的な内容には3歳以上児とは異なる、乳児期にこそ大事と思われることがもっと書かれるべきと思う。
  • 一人一人の乳児が、いつもその子らしくいることができ、それぞれの子どもの思いや気持ちが保育者によって深く共感され受けとめられ、その思い・気持ちにていねいに応答してもらえる、そうした保育を具体化するための環境構成や対応の原則をぜひ積極的に呈示していただきたい。

2.用語上の簡素化、わかりやすさを重視していただきたい。

理由と要望

  • 前回も発言したように、現状では、たとえばある日満3歳に子どもがなると、午前中は「学校教育」を受け午後は「保育」を受けるようになる、としなければならないのか等の問題が出てくる。クラスを変えるのか、担任は?カリキュラムは?等々が現場では次々と悩ましい課題になる。技術的に解決できる問題もあるが、根本には法制的に保育とか教育という用語が未整備な状態にあるということが背景にある。
  • 教育基本法の「教育」は最も広い定義になっているが、下位法が逆に限定的な定義になっている。しかも「保育」という用語は、支援法では、児童福祉法における「一時保育」を規定した項を定義として採用しているため、ここでも混乱が起こりかねない。今のままでは、支援法における「保育」とは「一時保育」のことを指す、といっても違法ではないことになる。
  • 急いで法整備をしなければならなかったために十分な検討の余地がなかったためと理解したいが、このままでは現場は、ここでいう「保育」とは何?この「教育」は何法の「教育」?等と混乱することは目に見えている。
  • そこでこの保育要領では、はじめの部分で、「関連各法で定義にややずれがあるので、混乱をふせぐため、この要領では、明治以来の慣例に従い「乳幼児期における広義の教育」を「保育」と総称することにする。ここでいう「広義の教育」とは、乳幼児の発達への直接・間接の援助の全体を指している。要領の名称も「保育・教育要領」ではなく「保育要領」とする。」というような文言をきちんと書き入れて、すべて要領の中では「保育」で統一して記述していただきたい。

以上

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