資料7-3 委員提出資料

幼保連携型認定こども園保育要領(仮称)の策定にあたり、食育・食事の提供に関する意見

東京家政学院大学 酒井治子 

 幼保連携型認定こども園保育要領(仮称)の検討にあたり、下記の内容を盛り込むことを期待します。また、幼保連携型認定こども園における食育を考えた時、給食の提供との関連なくして、意見を出すことができないため、教育・保育の内容以外の認可基準にも触れ、子ども・子育て会議基準検討会に対しても要望を出させていただきます。

A.教育・保育の内容としての食育について

1. 教育・保育の一環としての「食育」の位置づけ

  養護的側面を基盤に、教育・保育の一環として、こどもの「食を営む力」の基礎を培う『食育』を位置づけ、0~6歳を通した食に関わる体験を積み重ねていくことを重視する。推進にあたっては、保育所同様に食育の計画・評価を実施することし、保育要領に位置づける。食育の内容については、教育・保育のねらいと内容の中で、健康、人間関係、環境、言葉、表現の5領域にまたがる総合的な活動を重視する。

2. 教育・保育の内容の取扱い(配慮事項)における食事に関する留意すべき事項

 養護と教育の双方の観点から、子どもの成長、食機能及び食行動の発達に対応し、0歳から6歳までの食事の提供(3歳等の年齢軸で、子どもに用意する環境が途切れることがないよう)を行うこと。授乳・離乳食、また、低年齢幼児の食事の提供にあたっては、個人差への配慮や感染症への抵抗力が弱いこと等を考慮して十分な配慮が必要であることを盛り込む。
 特に、食物アレルギー症状を呈する子どもが学童期以上に、0~3歳未満の子どもの最も多い実状を踏まえ、現在、文部科学省での「学校での食物アレルギー対応に関する調査研究協力者会議」での検討を参考に、その対応策について保育要領(解説書)にも盛り込む。 

3. 食を通した子育て支援

 保護者の子育て力の向上のために、食を通した支援を行うことを盛り込む。給食が保護者にとって最も身近な教材であり、その食事の提供をめぐる園での配慮や教育意図が家庭に十分伝えられ、家庭での食事づくりに寄与するものであることを明確にする。家庭での食事づくりの主体性を育成する観点から、家庭から弁当を持参することの意義も確認し、そうした活動を期待したい。 

4. 職員配置と責務の明確化

 1~3の実施にあたっては、園長の責任のもと、保育教諭等の教諭や学校医、看護師、養護教諭、栄養教諭及び、それに準じる栄養士、調理員が連携して関わる。新たな幼保連携型認定こども園法で規定されている食事の提供に係わる職員配置では、調理員は必置、栄養教諭は置くことができる。しかし、現在の保育所からの移行した場合、看護師と同様に、栄養士の職務が全く位置づけられていないのはあまりに不自然である。学校給食法との整合性を考慮すれば、任意必置の職員の一人に栄養士も位置づけ、栄養教諭(教職員免許法)と、栄養士(栄養士法)の双方が、栄養管理の責務を果たすように設計することを望む。

 

B.認可基準をめぐる食事の提供(給食)について

1. 食事の提供(給食)の意義(学校給食法の準拠)

 幼保連携型認定こども園が学校保健安全法を準用するならば、食事の提供についても同様に、学校給食法を準用することを望む。学校教育の一環としての給食をとらえれば、家庭から弁当の持参ではなく、同一の食事を分かち合うという教育的意義は大きい。こうした教育的側面のみならず、児童福祉施設として「福祉」を保障する観点から、第十一条の5の「児童福祉施設は、児童の健康な生活の基本としての食を営む力の育成に努めなければならない。」の規定に基づき、幼保連携型認定こども園では、3歳以上児を含めて、原則、給食の提供をすることを望む。

2. 3歳未満児の給食の外部搬入の容認はできない

 3歳未満児の給食の外部搬入は次の点でリスクがあまりに大きい。3歳未満児は個人差が大きく、同月齢であっても咀嚼の差は大きく、一人一人の成長段階に合わせた給食の提供が必要である。特に、前述したとおり、食物アレルギー児が多いため、それぞれの子どもの様子をきめ細かに把握しながら給食を行う必要がある。味覚や咀嚼機能の発達期であるため、どのような食に関する経験をするかが将来に与える影響も大きいことを忘れてはならない。食事を外部搬入したとしても、食事の配膳、子どもの咀嚼機能等に合わせた再調理等を保育士が担当しなくてはならず、保育士の業務量が増すばかりである。

3. 給食費

 現行の幼保連携型認定こども園では基本は給食で、短時間保育の子ども(保育を必要としない子ども)は家庭から給食費を支払っている。または、給食か弁当持参かを保護者が選択できる施設もある。同一の学校・福祉施設の食事を提供されるにもかかわらず、保育を必要とする子ども(長時間保育)は保育料の中に給食費が含まれ、保育を必要としない子ども(短時間保育)は別途、給食費を家庭が負担するというのは、幼保連携型認定こども園の設置の趣旨に反すると考える。
 子どもが共通の食にかかわる体験が得られるよう、保育を必要としない子どもに対しても給食費を公費で負担することや、給食施設の設置のための仕組みづくりを望む。

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(文部科学省初等中等教育局幼児教育課指導係)