資料6-4 委員提出資料

幼保連携認定子ども園保育要領の食育・食事の提供に関する意見

東京家政学院大学 酒井治子

 幼保連携認定子ども園保育要領の検討にあたり、下記の内容を盛り込むことを期待する。
 また、幼保連携型認定子ども園における食育を考えた時、給食の提供との関連なくして、意見を出すことができないため、一部、教育・保育の内容以外の認可基準にも触れ、子ども・子育て会議基準検討会に対しても要望を出させていただく。 

A 食育について

1.食育の位置づけ

 食育基本法及び食育基本計画を踏まえて幼稚園教育要領、および、保育所保育指針に食育の推進が盛り込まれたことから、幼保連携型認定こども園においても食育を推進していく。その推進にあたっては、幼保連携型認定こども園でも、教育・保育の全体計画と連動した食育の計画・評価を実施することを保育要領に位置づける。幼稚園教育要領、および、保育所保育指針はもちろんのこと、「保育所における食育に関する指針」および「保育所における食事の提供ガイドライン」を参考にする。

2.食育の内容

 教育・保育のねらいと内容の中で、健康、人間関係、環境、言葉、表現の5領域にまたがる総合的な活動として位置づける。教育・保育の内容の取扱い(配慮事項)に関して、0~2歳の乳児及び低年齢幼児の対応を十分に配慮し、授乳・離乳食、また、幼児食の提供とその援助方法を盛り込む。

3.食育の環境

 子どもの「生きる力」の基盤となる「食を営む力」の基礎を培う観点から、食育の人的物的環境を構成することの意義を盛り込む。具体的には、食と命の関わりなどを実感し、豊かな体験ができる環境、情緒の安定のためにもゆとりのある食事環境、食を通した人とかかわる力を育む環境をつくる。これらを、教育・保育の内容の取扱い(配慮事項)にも盛り込む。

4.一人ひとりの子どもの食へのきめ細やかな対応

 子どもの成長・発達が最も著しい時期における食の意義を重視し、保育時間の長短に関わらず、体調不良や食物アレルギー、障害のある子どもなど、一人ひとりの食への対応の重要性を盛り込む。食物アレルギー児への対応については、学童期以上に0~3歳未満の子どもの最も多い実態をかんがみ、現在、文部科学省での「学校での食物アレルギー対応に関する調査研究協力者会議」での検討を踏まえつつ、その対応策についても保育要領および解説書に盛り込む。

5.食を通した子育て支援

 保護者の子育て力の向上のために、食を通した支援を行うことを盛り込む。給食として食事を提供することが、保護者が子どもの食事に責任をもつことにとって代わるものであってはならない。あくまでも給食が保護者にとって最も身近な教材であり、その食事の提供をめぐる園での配慮や教育意図が家庭に十分伝えられ、家庭での食事づくりに寄与できるようにしていく。さらに、在園児の保護者に対する支援のみならず、地域の子育て家庭に対しても園が持つ資源を有効に活用し、食を通した子育て支援を行っていく。

6.食育を推進するための体制づくり

 上記の7までの実施にあたっては、園長の責任のもと、保育教諭等の教諭や学校医、看護師、養護教諭、栄養教諭、及び、栄養士、調理員らが連携して、認定こども園での食育を推進していく。

B 食事(給食)の提供について

1.食事の提供

 児童福祉施設として福祉を保障する観点から、第十一条の5の「児童福祉施設は、児童の健康な生活の基本としての食を営む力の育成に努めなければならない。」の規定に基づき、幼保連携型認定こども園では3歳以上児を含めて、原則、食事の提供をすることを望む。

2.学校給食法に準用した食事の提供の意義

 幼保連携型認定こども園で学校保健安全法が準用されるならば、同様に、食事の提供については学校給食法を準用していく。家庭から弁当の持参ではなく、同一の食事を分かち合うという教育的意義は大きい。学校給食法の目標が示すように、適切な栄養摂取、望ましい食習慣の確立と共に、協同の精神を養うこと、地域の優れた伝統的な食文化についての理解や生命及び自然を尊重する精神並びに環境を保全に寄与する態度を養うこと、食料の生産、流通、消費についても正しい理解の基盤が持てるように導くこと等、給食は学校教育の目的を実現するものでもある。 

3.学校給食の一部としての実施

 学校教育法の第一条に幼稚園も学校として位置づくのであれば、幼稚園、幼保連携型認定こども園での給食は学校給食法に準じるのではなく、学校給食の一部として給食を実施できるように整備すべきだと考える。その位置づけをより明確にし、学校給食実施基準の中に、幼児期(3~5歳)を新たに加え、認定子ども園及び幼稚園で給食を提供する場合の幼児の栄養量等を規定する。同様に、衛生管理についても、学校給食衛生管理基準を用いる。具体的な基準については「特殊支援学校の幼稚園部及び高等部における学校給食実施基準」の幼児の一人一回当たり基準値、また、児童福祉施設における食事摂取基準を活用した食事計画について」などの基準を活用できる。

4.職員配置と責務の明確化

 幼保連携型認定こども園法での職員配置は、調理員が必置、栄養教諭が置くことができることとなっている。しかし、現在の保育所からの移行した場合、看護師同様に、栄養士の職務が全く位置づけられていないのはあまりに現実性に欠ける。学校給食法との整合性を考慮すれば、任意で配置できる栄養教諭(教育職員免許法)と、栄養士(栄養士法)の双方が学校栄養管理の責務を果たすことができるように設計することを望む。

5.給食費

 現行の幼保連携型認定こども園でも基本は給食が実施されている。3歳以上児の給食費の家庭での負担について、同一の食事を提供されるにもかかわらず、保育を必要とする子ども(長時間保育)は保育料の中に給食費が含まれ、保育を必要としない子ども(短時間保育)は別途、給食費を家庭が負担するというのは、今回のシステムの趣旨から外れると考える。子どもが共通の食にかかわる体験が得られるためには、給食が実施できるしくみの整備、保育を必要としない子どもに対しても給食費を公費で負担することを望む。

6.給食施設の設置のための補助など支援

 既存の幼稚園が幼保連携型認定こども園に移行する場合、0~2歳児の保育を考えた時、給食を全く提供しないで実施できるとは考えがたい。調理室の設置のために、設備のための補助金の整備と共に、また、栄養士や調理等の研修体制、保健所等での栄養・衛生面での指導体制等にも配慮願いたい。

7.3歳未満児の給食の外部搬入の容認

 保育所でも、平成22年以降、3歳以上児については給食の外部搬入が容認されたのであって、それが標準ではない。幼保連携型認定こども園の各園での体制づくりも始まったばかりであることを考え、食中毒や食物アレルギー児への対応などのリスクマネジメントを考えても、3歳未満児の外部搬入の導入については、保育所以上に検討を要するべきである。

お問合せ先

文部科学省初等中等教育局幼児教育課

指導係(池田、大西、北村)
電話番号:03-5253-4111(代表)(内線2376)

(文部科学省初等中等教育局幼児教育課指導係)