高等学校教育部会(第6回) 議事録

1.日時

平成24年3月9日(金曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省庁舎3階 特別会議室1

3.議題

  1. コミュニケーション能力や規範意識、社会参画等の態度の育成について
  2. 不登校や中途退学対策について
  3. その他

4.議事録

【小川部会長】
 では、定刻までまだ1分ほどあるんですけれども、全員そろったようですので、これから第6回の高等学校教育部会を開催したいと思います。年度末の本当にお忙しい中、御出席いただきましてありがとうございました。
 それでは、まず、配付資料について事務局から確認をお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】
 本日の配付資料は、議事次第のとおりでございまして、具体的には、資料1、2、3、7、及び8が事務局からの資料、資料4が本日御発表いただきます東京都教育委員会から御提出いただいた資料、資料5が同じく御発表いただきます学校法人日本放送協会学園高等学校から御提出いただいた資料、そして資料6が事前に委員の皆様方からいただきました資料でございます。不足がございましたら事務局までお申しつけください。

【小川部会長】
 今日も配付資料が少し多目ですけれども、よろしいでしょうか。もしも不足な資料がありましたら、事務局まで御確認、お声をかけていただければと思います。
 それでは、これから議事に入りたいと思います。資料1を参照していただきたいのですが、これまで検討課題(例)ということで、1から4にわたって議論をしてきました。今日はこの論点の最後の、残されたテーマである「3.個々の人格形成の場としての機能の再構築」ということで、コミュニケーション能力、規範意識、社会参画の態度をどうはぐくんでいくか、また、不登校・中途退学者を出さないための方策をどう考えていくか。今日、この2つの意見交換をしていきたいと思っています。よろしくお願いします。
 では、最初に、今日のテーマにかかわって、事務局から関係資料の説明をいただければと思います。よろしくお願いします。

【大金教育課程企画室長】
 失礼いたします。教育課程課の大金でございます。
 それでは、議題1の関係で、資料2について説明をさせていただきます。資料2では、資料の前半部分で、議題1の「コミュニケーション能力や規範意識、社会参画の態度の育成」に関連して、高校生を取り巻く現状を窺うことのできるデータ等を掲載させていただいております。
 まず最初は、コミュニケーション能力に関わるデータでございます。
 1ページは、日本経済団体連合会が、平成23年9月に、企業会員を対象に、「新卒採用者の選考に当たって特に重視した点」は何か、ということについて調査を行った結果でございますが、コミュニケーション能力は、企業が採用選考時に重視する要素の第1位となっております。
 このような傾向は平成23年に限ったものではなく、2ページを御覧いただきますと、1ページの調査結果について、平成16年から平成23年までの推移をまとめておりますが、コミュニケーション能力は8年連続で第1位となっており、コミュニケーションに関する能力の育成を求める社会的要請が高まっていることが窺われます。
 3ページからは、規範意識に関わるデータでございます。3ページは、小中学生のデータでございますが、全国学力・学習状況調査の質問紙調査における、「学校のきまりや規則を守っているか」という質問に対する回答でございます。御覧いただきますと、学校のきまりや規則を守っている児童生徒の割合に、若干の増加傾向が窺われます。
 4ページは、財団法人日本青少年研究所等が、平成20年9月から10月にかけて、中高校生を対象に実施した調査結果でございますが、学校での不良行為について、「頻繁にある」、「時々ある」と回答した者の割合を示しております。「殴る蹴るなどの暴力をふるう」については、日本の中高生は、各国と比較すると、高いとは言えない状況かとは思います。また、「悪口で人をいじめる」については、特に、日本では中学の方が高校より回答割合が大きくなっております。
 5ページ及び6ページは、内閣府が、平成19年11月から12月にかけて、18歳から24歳までの者を対象に実施した調査結果でございますが、「弱い者いじめはいけない」、「約束は守るべきだ」という質問に対して、「そう思う」、「どちらかといえばそう思う」と回答した者の割合が、それぞれ97.9%、98.9%であり、6ページに移りまして、「困っている人を見たら、頼まれなくても助けてあげるべきだ」、「他人に迷惑をかけなければ、何をしようと個人の自由だ」という質問に対して、「そう思う」、「どちらかといえばそう思う」と回答した者の割合がそれぞれ93.1%、29.9%でございました。
 7ページは、「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」のうち、「校内における暴力行為発生件数の推移」に関するデータでございます。平成22年度の高等学校の発生件数は約1万件、小中高等学校の合計は約6万件でございまして、前年度と比べ、ほぼ横ばいとなっております。
 8ページからは、社会参画にかかるデータでございます。8ページ及び9ページは、内閣府が、平成19年3月に、10歳から29歳までの者に実施した調査結果ですが、「ボランティア活動等に参加すること」について、「よくある」、「ときどきある」と回答した高校生の割合は15.9%、また、9ページに移りまして、「世代の異なる人たちとふれあうこと」について、「よくある」、「ときどきある」と回答した高校生の割合が46.5%であり、中学生、高校生となるにつれて、「ボランティア活動への参加割合」や、「異世代との交流」が減少してきていることが窺われます。
 10ページ及び11ページは、文部科学省が、平成22年度における体験活動の実施状況を調査した結果でございます。「ボランティアなど社会奉仕に関わる体験活動」について、小中学校では年間2時間程度、高等学校では年間5時間程度行われております。11ページは、「ボランティア活動など社会奉仕に関わる体験活動」の教育課程における位置付けをまとめたものでございますが、高等学校においては、こうした活動が学校管理下において、教育課程外に行われることが多くなっています。
 12ページは、「高校以外での学修成果を単位認定する学校数」でございます。高校以外の場におけるボランティア活動や就業体験については、平成10年度から、学校長の判断によって、単位として認定することが可能となっております。この制度を活用して単位認定を実施している高校の数は、平成10年度で20校だったものが、平成22年度では504校と、着実に増加をしております。
 13ページ及び14ページは、財団法人日本青少年研究所等が、平成20年9月から10月にかけて、中高校生を対象に実施した調査結果でございます。日本の生徒は、「社会や政治問題への参加」について、「参加する必要がない」、「参加しても無駄なことだ」という消極的態度を示している者が、調査対象の4か国のうち最も多く、また、「私個人の力では、政府の決定に影響を与えられない」、14ページに移りまして、「私の参加により、変えてほしい社会現象が少し変えられるかもしれない」、「社会のことはとても複雑で、私が関与したくない」という質問に対しても、最も消極的な態度を示しております。
 15ページでは、内閣府が、平成19年11月から12月にかけて、18歳から24歳までの者を対象に、「政治に関する関心度」について調査した結果でございますが、日本では「非常に関心がある」、「まあ関心がある」と回答した者の割合は58.0%で、調査対象の5か国で最も高くなっています。また、「非常に関心がある」、「まあ関心があると」と回答した者の割合は、前回調査より11ポイント高くなっております。
 16ページ及び17ページには、衆議院議員と参議院議員の年齢別投票率の推移に関するデータをつけさせていただいております。
 18ページ以降は、「コミュニケーション能力や規範意識、社会参画の態度等の育成」に関する高等学校における取組等について記載をしております。
 まず、コミュニケーション能力の育成についてでございます。平成20年1月の中央教育審議会答申では、言語は知的活動の基盤であるとともに、コミュニケーションや感性・情緒の基盤でもあり、豊かな心を育む上でも、言語に関する能力を高めることが重要であるとしています。このような観点から、新しい学習指導要領では、言語に関する能力を重視しており、国語科で培った能力を基本に、各教科等の目標を実現する手だてとして、言語活動を充実した学習活動の推進が図られております。
 19ページは、文部科学省が作成した「言語活動の充実に関する指導事例集」の抜粋でございますが、知的活動の基盤であるとともに、コミュニケーションや感性・情緒の基盤である、という言語の役割を踏まえた言語活動の指導の在り方と留意点を整理しています。
 20ページ及び21ページには、「コミュニケーション教育推進会議」の審議経過報告の概要を掲載しております。この会議は、子どもたちのコミュニケーション能力の育成を図るための具体的方策や普及の在り方について調査・検討を行うため、文部科学省が平成22年5月に設置したものでございます。
 20ページの(4)でございますけれども、この会議ではコミュニケーション能力を「いろいろな価値観や背景をもつ人々による集団において、相互関係を深め、共感しながら、人間関係やチームワークを形成し、正解のない課題や経験したことのない問題について、対話をして情報を共有し、自ら深く考え、相互に考えを伝え、深め合いつつ合意形成・課題解決する能力」と捉え、コミュニケーション能力を学校教育においてはぐくむための手法・方策等についてまとめております。
 22ページからは、高等学校における道徳教育についてでございます。高等学校の道徳教育については、「考え方」にございますように、公民科や特別活動のホームルーム活動を中心に、「人間としての在り方生き方に関する教育」を行うこととしています。「人間としての在り方生き方に関する教育」は、学校の教育活動全体を通じて、各教科・科目、総合的な学習の時間及び特別活動のそれぞれの特質に応じて実施するものであります。
 23ページ及び24ページに掲載をさせていただいておりますが、学習指導要領においては、特に公民科の現代社会及び倫理、特別活動にはそれぞれの目標に「人間としての在り方生き方」を掲げており、これらを中核的な指導の場面として重視し、道徳教育の目標全体を踏まえた指導を行う必要がございます。
 25ページからは、社会参画に関するものでございます。まず、ボランティア活動等に関することでございますが、12ページで御説明しましたように、高校以外の場におけるボランティア活動や就業体験については、平成10年度から、学校長の判断によって、単位として認定することが可能となっていますが、その関連の法令を25ページに掲載させていただいております。
 26ページ、27ページには、ボランティア活動に関連する高等学校の学習指導要領の記述を記載させていただいております。
 28ページからは、社会参画等に関する教育についてでございますが、平成18年に改正された教育基本法第2条の「教育の目標」、平成19年に改正された学校教育法第21条の「義務教育の目標」には、「主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと」が規定されたところでございます。29ページから30ページにかけましては、公民科や家庭科、特別活動などでございますが、高等学校の学習指導要領における社会参画等に関する主な記述を掲載させていただいております。
 資料2についての説明は以上でございます。

【小谷教育制度改革室長】
 続きまして、資料3を用いまして、高校生の不登校・中途退学の現状等について御説明をさせていただきたいと思います。
 まず、おめくりいただきまして、1ページを御覧ください。高等学校の不登校生徒の数は、平成22年度では5万5,707人で、60人に1人という形になっておりまして、2ページにございますように、そのきっかけとして考えられるものとしましては、「無気力」というのが約4分の1と最も多くなっております。
 1枚おめくりいただきまして3ページを御覧いただきますと、課程別・学年別の数を示しておりますけれども、全日制より定時制の割合が高い、また、学年制より単位制のほうが割合は高いということがわかっております。学年別では、赤字であらわしておりますが、1年生が最も多くなっております。
 その下、4ページを御覧いただきますと、中途退学者と中途退学率の推移をお示ししております。数、割合ともに、このように減少傾向にありますものの、平成22年度では依然として5万5,415人の生徒が中退しているということになっております。
 おめくりいただきまして、5ページを御覧いただきますと、中退者の理由の推移をお示しをしております。昭和50年代の後半と比較しますと、家庭の事情ですとか、経済的な理由といったものの割合が減る一方で、学校生活・学業不適応ですとか、進路変更といった割合が多く増えております。
 その下の6ページを御覧いただきますと、さらにその4割を占めます、上から3つ目の欄、学校生活・学業不適応の中の内訳を見ていきますと、もともと高校生活に熱意がないですとか、あるいは人間関係がうまく保てないといったことを理由としている生徒が約2割となっている状況が見てとれるところでございます。
 1枚おめくりいただきまして、7ページを御覧いただきたいと思います。課程・学科・学年別の中途退学者についてお示しをしております。在学者に占めます中途退学者の割合を、ここでは中途退学率という形で書かせていただいております。これを見ますと、定時制の中退率が非常に高いということ。また、全日制の学科別では、専門学科、総合学科、普通科の順に中退率が高いということが見てとれるかと思います。
 その下の8ページを御覧いただきますと、これは東京都教育委員会の調査結果を載せたものでございますが、こちらは先ほどの中途退学率と異なりまして、入学者に占める中途退学者の割合を「未卒業率」といった形で表しておりますので、先ほど御紹介しました中途退学率という数字よりも大きな数字となっておりまして、普通科は4.1%、専門学科は12.5%となっております。実に、普通科は25人に1人、専門学科は8人に1人が、入学しても卒業していないということが見てとれます。ただ、この場合におきましても、平均を出しましたら、先ほど申し上げましたように、普通科よりも専門学科のほうが割合が高いわけでございますが、その普通科の内訳というところを御覧いただきますと、同じ普通科においても、その未卒業率が10%を超えるという学校もこのようにございますので、同じ普通科でも、在籍する生徒の学力ですとか学習歴、そういったものによって異なってくるということが推測されると思います。
 続きまして、1ページおめくりいただきまして、こうした不登校や中途退学に対する対応について御説明をさせていただきます。まず、文部科学省では、学校における教育相談体制の充実を図りますために、スクールカウンセラー等活用事業におきまして、児童生徒の臨床心理に関して、高度に専門的な知識・経験を有してらっしゃる方をスクールカウンセラーとして学校等に配置するために、各都道府県や指定都市に対して必要な経費を補助しております。また、スクールソーシャルワーカー活用事業におきましては、教育の知識に加えまして、社会福祉などの専門的な知識や技術を用いていただいて、児童生徒のおかれた様々な環境に働きかけて支援を行っていただく方、こういった方をスクールソーシャルワーカーとして配置するために、各都道府県、指定都市、そして中核市に対して、必要な経費を補助しております。平成22年度の配置状況でございますけれども、スクールカウンセラーの高等学校への配置は、33の都道府県、14の指定都市で、1001校となっております。スクールソーシャルワーカーの高等学校への配置は、下の表にございますように、3名となっておりますので、その数だけ見ると、少ないのですけれども、学校そのものには配置していないものの、教育委員会に配置されたスクールソーシャルワーカーの方が高等学校に派遣されて、生徒の支援を行っているという自治体は23の都道府県、4の指定都市で行われているという実態もございます。
 続きまして、10ページを御覧いただければと思います。都道府県と市町村の教育委員会におきましては、不登校児童生徒の学校復帰に向けた指導・支援を行うための学校外の公的支援としまして、いわゆる適応指導教室と呼ばれているものですが、教育支援センターを設置しております。平成22年度では全国で1,265カ所が設置されております。この多くは小中学生を対象とする施設でございますが、例えば沖縄県の教育委員会の施設におきましては、高校生も対象としていると聞いております。また不登校児童生徒が教育支援センターや民間の施設など学校外の機関で、指導等を受ける場合には、これらの機関への通所が学校復帰を前提としていて、なおかつ保護者の方と学校との間で十分な連携、協力が保たれているといった、一定の要件を満たすときには、校長は指導要録上、出席扱いとすることができるようにしております。さらに、指導要録上、出席扱いとなった児童生徒につきましては、学校外の機関に通う際には、いわゆる学割の適用を設けられるといったことも措置しているところでございます。
 1枚おめくりいただきまして、11ページを御覧いただきたいと思います。この11ページでは、不登校児童生徒を対象としまして、その実態に配慮した特別の教育課程を編成する必要があると認められる場合、文部科学大臣の指定を受けた特定の学校において学習指導要領などの教育課程の基準によらないで、特別の教育課程を編成することができるという制度のことを示しております。こちらは、今、全国で11校が指定されていますが、そのうち高等学校は3校指定をされております。必履修教科や科目の一部を削減して、高等学校段階の学習の基盤となる基礎的、あるいは基本的な事項の学習を行う教科を自主的に設定するといった取組が見られているところです。また2つ目の丸にありますように、これも学校への復帰を前提としていただいて、通信の方法を用いた教育で36単位を上限として、単位認定を行うことを可能とする制度も設けておりまして、こちらは全国で4校の高等学校が指定されているところでございます。
 12ページを御覧ください。先ほど御紹介しました中途退学の理由の中には、経済的理由もございましたが、平成22年度からは公立高校の授業料を不徴収とするとともに、私立高校の生徒に対しては、授業料について所得に応じて助成を行う高等学校等就学支援金の制度を設けております。経済的理由によります高校中退者につきましては、平成21年度から平成22年度にかけて、36.7%減少しております。また高校を中退された方で、再入学される方がいらっしゃいますが、その割合も平成21年度から平成22年度にかけて、15%増加するなどの一定の効果が見られているところでございます。
 少し飛んで恐縮でございますが、15ページを御覧いただければと思います。教育活動を実施していただく教職員の先生方の定数についての資料でございます。まず、公立高等学校につきましては、いわゆる高校標準法という法律がございまして、こちらでは各学校に置くべき教職員数の算定につきまして、規定をしておりまして、都道府県や市町村になりますが、設置者ごとに置くべき高等学校の教職員の総数の標準を設置者が定めるということを求めております。算定方法の例を書かせていただいておりますけれども、まず定数算定の方法といたしまして、基礎定数ということで、生徒の収容定員ですとか、学科の種類などに基づきまして、学級担任や教科担任等の基礎的な教職員定数を算定しております。これらの学校の規模に応じた加算ですとか、専門学科についての加算が、注で書いている形でございまして、例えば全日制の場合でございますと、収容定員561から600、15学級というところを見ていただきますと、合計して普通科の先生ですと、43人が教職員の方。工業科の場合ですと、59人という形で算定されるということになっております。御参考までに右端に同規模の中学校の定数、緑のところですが、書いておりますけれども、その場合、27人ですので、中学校と比較して、手厚い定数算定基準という形になっております。
 注1のところに書いてございますように、定時制の場合も学校規模等が同じ場合であれば、全日制とほぼ同数程度の算定をしておりまして、通信制につきましては、薄い黄色で網がけしてあるところがございますけれども、こちらの場合は、例えば収容定員が875から941人であれば、24人といった形で算定の基礎定数の理由が決まっております。さらに加配定数と赤字で書いておりますけれども、こういった基礎定数に加えまして、学校が個々に抱える問題解決などのために特例的に定数を加算するということになっております。
 その下の16ページでは、これまでの定数改善の経緯を示しておりまして、参考としてございますように、後期中等教育における日本の教員1人当たりの生徒数は12.2人で、OECD各国平均13.5人よりは低い数字となっております。ただ、その一方で教職員の実数が高校標準法の算定ルールの基準を満たしていない県も21県あるという実情もございます。この関係につきましては、薄い水色のファイルを机上資料として、配付させていただいております。その中の233ページをおめくりいただきますと、会議資料第1回の前のページになると思いますけれども、これは第5期の初等中等教育分科会でご議論いただきました今後の学級編制及び教職員定数の改善についての提言の抜粋部分でございますが、その中では、下線を引いておりますように高等学校においては、一律の学級編制の標準の引き下げより、各学校の実情に応じて、必要とされる教職員定数を確保することが重要であること。また、(2)になりますけれども、高等学校教育の諸課題に対応するための教職員定数の改善が必要であることが提言されているという事実もございます。
 続きまして、また資料3にお戻りいただきまして、17ページを御覧いただければと思います。先ほどまでは、公立の話でございますが、国立、私立の教職員定数に関する基準をお示ししております。全日制、定時制につきましては、上のほうに下線を引いておりますけれども、教諭等の数につきましては、収容定員を40で除した数以上で、教育上支障がないものとすることになっております。また通信制につきましては、下のほうになりますけれども、副校長、教頭、教諭等の数が5人以上で、教育上支障がないものとすることとなっておりまして、先ほど御紹介しました公立高校の標準と比べて緩やかな基準となっております。ただ、実は国立、公立、私立を通じた最低基準ということになっておりまして、先ほど申し上げました標準を下回っております21県も、この基準は満たしていただいくことになっておりますが、国立、私立につきましては、公立のように別途標準が設けられていないことから、これが唯一の基準となる。そういったシステムになっております。
 それでは、18ページを御覧ください。不登校や中途退学者に関連しまして、定時制、通信制教育について御説明したいと思います。近年、全体の生徒数が減少していく中で、定時制、通信制課程の生徒数は増加傾向にございますが、編入学者、再入学者について見てみますと、中ほどに書いておりますが、学び直しをする高校生のうち実に約9割の方が定時制、通信制課程において、学び直しの機会を得られているという実情がございます。また、その一方で、下にございます、先ほども御紹介しましたように、定時制課程では、全日制課程に比べて、不登校の生徒、中途退学者の割合も大きくなっているという実情もございます。
 1枚めくって、19ページを御覧いただきたいのですけれども、こちらのグラフも東京都教育委員会の調査の結果を御紹介したものでございますが、下のグラフを見ていただきますと、年度進行とともに、青の就職されている方の割合が減少していって、逆に黄色の就職されていない方の割合が増加して、今では大半を占めているという状況になっております。このように、定時制、通信制高校というのは、本来、勤労青少年のための教育機関としての役割を持って、制度化されたわけでございますが、それだけではなくて、今では多様な履修形態による高等学校教育を提供して、高等学校教育の普及と教育の機会均等の理念を実現する教育機関としての役割が求められているということも言えるのではないかと考えております。
 その次の20ページでございますが、通信制高校の中でも、特に近年大きく増加しておりますのが、広域通信制高校でございます。この広域通信制高校は、概要を左側のところに線を引いておりますが、高等学校の所在する都道府県の区域内に住所を有する者のほか、他の2以上の区域内に住所を有する者をあわせて生徒とするということですので、すなわち3つ以上の都道府県の生徒を対象として、教育を行う学校でございます。右に書いてございますけれども、離島や僻地、あるいは最近では国外まで、通学範囲に高等学校が置かれていない地域に居住する方に対して、高校教育を受ける機会を提供いたしますとともに、多様な入学動機や学習歴を持つ方の再チャレンジの場としての意義も評価されておるところでございます。
 その一方で、1枚おめくりいただきまして、21ページを御覧いただきたいと思いますけれども、そういった広域通信制の場合、非常に広範囲にわたって生徒がいらっしゃるので、面接指導を行うために、面接時のための施設を複数の都道府県に設置したりしているわけでございますけれども、その場合、所轄庁である都道府県の知事が他県の面接指導施設の教育活動の実態を把握することが難しいといった課題も指摘されております。あるいは教育方法に関するものといたしましては、通信教育ですから、添削指導が大きな比重を占めるわけでございますけれども、その添削指導のほとんどをマークシート方式などの多肢選択式にしていたりだとか、あるいは添削に解説などを書かないで、単に正誤だけを表記しているといった、必ずしも望ましくない事例が見られるという課題も指摘されておりまして、改善が求められている状況もございます。
 私からは以上でございます。

【小川部会長】
 ありがとうございました。実に多方面にわたる関係のデータ、資料を提示いただきまして、ありがとうございました。私も初めて見るデータもあって、いろいろ学ばせていただきましたけれども、特に事実確認という点で、何かここで確認しておきたい点がもしもございましたら、先に受けても構いませんけれども。よろしいでしょうか。なければ、また後で、意見交換の際に出していただければと思います。
 これから、審議に入っていきたいのですが、審議のきっかけとして、今日、2つの報告を予定しております。1つは、特色ある高等学校づくりにいち早く取り組んでおられ、また規範意識との関係では、奉仕の履修を必修としている東京都教育委員会からの報告と、もう一つは、不登校、中途退学対策に関係して、通信制課程を置く高等学校であるNHK学園高等学校の取組、この2本を今日は予定しておりますので、よろしくお願いします。
 まず、最初に東京都教育委員会より教職員研修センターの金子一彦研修部長から御報告をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【金子研修部長】 
 東京都教職員研修センターの金子でございます。東京都教育委員会の取組を大きく3点御報告させていただきます。1つは、コミュニケーション能力の育成、2つ目は不登校、中途退学防止に向けてのエンカレッジスクール、チャレンジスクールにつきまして、3点目が教科、「奉仕」についてでございます。
 資料4を1枚めくっていただきたいと思いますが、まず初めに「言語能力向上推進事業」につきましてでございます。これにつきましては、今年度からスタートしてございまして、「活字に親しむ」ということがまず大きな狙いでございます。背景としましては、先ほども説明にございましたが、1つは新学習指導要領におきまして、言語活動の充実がうたわれておりますので、その観点から学力を高めていく。もう一つは、これは昨年度からスタートしておりますが、猪瀬副知事をリーダーとして、「言葉の力」再生プロジェクトという事業を始めております。言葉の力を教育の段階から育てる、大人から子供まで、読書の機会を拡充するということを通しまして、進めているものでございます。
 3ページを御覧ください。この言語能力推進事業では、全部で65の推進校を指定しておりまして、このうち12校が都立高校でございます。推進校のすべてで行われている2つの活動は、1つは読書活動、もう一つは書くこと、この2つであります。ここでいう読書活動は、単に本を読むだけではなくて、課題を追究するために、新聞や雑誌を調べたりすることなども含めております。また書くことにつきましては、これは考えをまとめて、書くということですので、これについては思考力、表現力を育む上で、非常に充実してございます。来年度につきましても、新たに65校を追加して、3年間の期間で推進する予定です。
 4ページを御覧ください。この推進校には、私ども訪問指導をしておるわけですが、ともしますと、言語活動さえやればいいという誤解がございまして、これはあくまでも学力を高めるということが言語活動の充実の狙いだということを徹底するために、ここではまず考えを持つために、読書をさせ、書くという活動を取り入れます。その考えを持ったものを踏まえまして、考えの交流を行う話し合いを行い、さらにその話し合いの結果を踏まえて、もう一度自分の考えを考え直すというところで、さらに読書と書く活動を位置付けるといった取組を推進校すべてで行っております。
 5ページには、進学指導重点校であります都立西高校の実践が紹介してございます。ここでは、ディベートを外国語の授業、あるいは地歴・公民の授業で実施しております。英語では、実際に英語で話す機会、さらにディベートの方法を学習して、討論につなげていく。地歴・公民では、3分間スピーチなども取り入れております。この西高校では、先日行われた卒業式など様々な学校行事の場面で、必ず生徒がスピーチをするということで、人前で話をする抵抗感を日常的に取り除いていくという取組も行っております。
 1ページめくっていただきまして、今度は都立荻窪高校の取組です。これは三部制の昼夜間定時制高校でございまして、この学校ではまず読書活動を熱心に取り組んでいるほか、右側にあります言葉の大切さを理解させるということで、専門の声優ですとか、あるいは落語家を招聘いたしまして、日本語の美しさ、コミュニケーションの方法などについて、子供たちに体験的に学ばせる取組を行っております。
 7ページは、都立葛飾商業高校の取組でございます。ここは、主に新聞に着目いたしまして、新聞を通じて、活字に興味を持たせるという取組、あるいは右側に書いてあります総合実践といった科目では、授業でお辞儀をしている写真なのですが、マナーの指導、あるいはお天気キャスターを招いての言葉のトレーニングなどユニークな取組を行うことで、コミュニケーション能力を高めているところでございます。
 めくっていただきまして、8ページには主な成果と方向性がまとめてございます。ここに書いてございますとおり、学校での取組によって、子供たちは話の構成を工夫したり、表現を工夫したり、あるいは学校生活以外の実生活においても、それを反映するなど成果を得てきておりますが、今後につきましては、例えば同じ1つの本を読んで、それに対する書評を闘い合わせる、いわゆる書評合戦ですとか、ディベートなどの討論する場を広く提供していくとか、あるいは先ほど触れました先進的な英語教育のコミュニケーション、こういったものもさらに東京都では取組を進めてまいりたいと思っております。
 続いて、大きな2つ目。チャレンジスクールとエンカレッジスクールにつきまして、御説明いたします。10ページをお開きください。このチャレンジスクール、エンカレッジスクールにつきましては、子供たちの進路の多様化、あるいは子供たちの能力、適性に応じた教育が必要だということで、平成9年9月に都立高校改革推進計画でその設置が示されたところでございまして、簡単に言いますと、チャレンジスクールというのは小・中学校までの間に不登校や、あるいは高校に入ったものの中途退学を経験しているという生徒がもう一度チャレンジする学校で、現在5校が設置されております。これは定時制の総合学科、三部制をしいてございます。
 一方、エンカレッジスクール、エンカレッジの意味は下に書いてございますけれども、こちらは全日制の普通科、あるいは専門学科でございまして、これにつきましては、小・中学校で持っている力を十分に発揮できない、あるいは基礎学力を十分に身に付けることができなかったという生徒を再度頑張って行かせるという学校で、これも5校ございます。
 まずチャレンジスクールから御説明します。11ページを御覧ください。特色は大きく4点書いてございますが、何よりも大きな特色は学力検査や調査書によらない入学者選抜を行っていることです。具体的には、作文や面接を通しまして、学ぶ意欲を重視するという特色がございます。さらに総合学科の特色を生かしまして、様々な選択科目、あるいは学び直しの科目なども設置してございます。また三部制ということで、朝、昼、夜、子供たちの生活のリズムに合わせた時間に授業が受けられるように編成してございまして、例えば朝の第一部に通う子は、その後の二部、昼の授業が受けられたり、あるいは昼の生徒は夜の時間帯の授業も受けられるなど柔軟に履修できるようになっております。またカウンセリング機能、教育相談の機能が充実しており、人的にも配置をしておりまして、複数の担任制などもしいてございます。
 12ページを御覧ください。今、御説明した話を図示したものでございます。それぞれが所属する部の前後にほかの選択科目も履修ができるということで、こういった単位履修によりまして、3年間で卒業する生徒が割合として大変高くなっております。
 13ページを御覧ください。具体的な特色のある取組でございます。これにつきましては、大江戸高校、桐ヶ丘高校、稔ヶ丘高校の3つの取組について示してございます。大江戸高校、1年次必修履修の生活実践。これにつきましても、社会のマナー、あいさつとか礼儀とかお客様をもてなすとか、おはしの持ち方などの授業を行い、ここに写真がありますけれども、さらに2年生では生活とマナーなどの取組をしております。大江戸高校も1、2年次は学級担任が2名で対応してございます。
 右の桐ヶ丘高校は教員全員担任制という特殊な教育相談機能を持たせておりまして、これはどの先生でも、だれでも、いつでも相談できるというのが、この学校の売りです。下に書いてございます、稔ヶ丘高校も特色がございまして、1年次に全員に履修させる「コーピング」という学校設定科目を設置してございます。大きく2つのねらいがありまして、1つはコミュニケーションスキル。これについては、早稲田大学と共同開発した認知行動療法に基づくプログラムを展開して、コミュニケーションスキルを学ばせる。もう一つは、学習のスキルでありまして、これは例えば話したことを箇条書きにまとめさせるとか、こういう基本的な取組をしてございます。
 これらのチャレンジスクールは、入学者選抜の応募倍率も非常に高くなっておりまして、例えば今年度の全日制の普通科の応募倍率は1.55倍でございましたが、チャレンジスクール5校の倍率は2.1倍という高い倍率を示すなど、生徒、保護者からも高い評価をいただいているところでございます。
 続きまして、14ページを御覧ください。エンカレッジスクールでございます。これにつきましては、先ほども申し上げたようにエンカレッジスクールは、小・中学校で力を発揮できなかった子供の学び直しの学校でございます。入学者選抜で先ほどと違うのは、作文、面接に加えまして、調査書を扱った選抜をしてございます。2人の学級担任制、あるいは体験授業ということで、ここの学校の特色は、ここに書いてございますが、国・数・英は30分授業、そして午前中は主に30分授業を行いまして、50分の授業を2つ加えて、お昼休み。午後は、体験活動で、ここに書いてあります、福祉、和太鼓、デザインなどの体験活動を行っております。このほか農業、園芸、奉仕、インターンシップなどの取組も進めているところが特色でございます。
 15ページには、教育課程の編成例を示してございます。「国語総合」と書いてございますけれども、右側に書いてある、カタカナ、漢字の読み書きとか辞書の引き方なども、この授業で行っております。数学や英語でも、小・中学校の復習といった学び直しに取り組んでおります。
 16ページを御覧ください。特色ある取組といたしまして、蒲田高校の農業体験、秋留台高校では、かなり厳しい生活指導、服装指導を徹底して、問題行動を減少させております。中途退学も大幅に減少してございまして、エンカレッジスクールにつきましても、今年度の応募倍率は2.32倍と非常に高い入試の倍率でございます。
 これら、チャレンジスクール、エンカレッジスクールの課題は、17ページにまとめてございまして、こういった取組をしているにもかかわらず、卒業時にまだ進路が決まらないといった生徒は、全日制の普通科の平均に比べますと、高い数字でございまして、これらを解決するために、18ページにございますけれども、これまでは中途退学防止と学校から離さないということをねらう視点を持っておりましたが、今後はこうした学校における卒業後の進路の実現をさらに充実していかなくてはなりません。
 大きな3点目、最後に「奉仕」について、説明いたします。めくっていただきまして、20ページを御覧ください。この奉仕を19年度から必修化するに至った経緯といたしましては、13年度の教育目標、それから16年度の教育ビジョン、これらにその考え方を示して、社会に貢献する高校生を育てていこうということで、19年度から全校で必修化してございます。今年で、5年目を迎えることになります。
 設定科目、奉仕の目標につきましては、21ページに書いてございますが、何といっても特色は、1単位でございまして、年間35時間、このうちの18時間、半分以上は実際に奉仕体験活動を行うことを条件としている点でございます。先ほどの資料では、高校生のボランティア活動は平均4.6時間といった報告を伺いましたが、ここでは18時間以上の活動をさせているということです。
 めくっていただきまして、22ページでは実際にどんな活動をしているのかということを円グラフで示してあります。環境保全の活動、あるいは福祉施設での活動、小学生の学習の面倒などが多くなってございます。また連携先といたしましては、学校、ボランティア協議会、あるいは官公庁、高齢者施設、商店街と多様でございます。
 23ページに特色ある取組を書いてございます。清瀬高校では、衣料品店と連携した衣料サイクル活動を通しまして、環境問題を考えるなどの取組をしております。荒川商業では、近所の保育園児を招いて、ジャガイモ掘りを実施したり、地域のお祭りに高校生が出向くなどしてございます。
 24、25ページには、主な成果が示してございますが、これらに共通して言えることは、何といっても、高校生は触れ合う大人が限られているということで、異世代の大人、社会人、あるいは世代の異なった子供たちから、感謝の言葉をかけられて、自分が社会に必要な人材なんだということを実感したというのが、どの学校もこの教科、奉仕の成果として報告されてございます。
 最後に26ページを御覧ください。今後の方向性ですが、こういった奉仕の授業を受けた生徒の約6割は、これからも社会貢献活動を行いたいという意思を示しております。今回の東日本大震災の経験を踏まえて、今後は奉仕を発展的に拡大いたしまして、防災に関する意識を高める、あるいは社会に貢献するといった活動も各学校で取り入れていく予定でございまして、例えば消防庁と連携した災害時の支援活動を実際に高校生が体験するとか、体育館に1泊2日して、宿泊防災訓練を実施するなどの取組を都立高校では展開していきたいということでございます。
 以上でございます。

【小川部会長】
 ありがとうございました。質問などがあるかもしれませんけれども、次の報告が終わって、一括して受けたいと思いますので、よろしくお願いします。次の報告は、NHK学園高等学校の賀澤校長先生、よろしくお願いいたします。

【賀澤校長】
 日本放送協会学園高等学校の賀澤でございます。日本放送協会学園高等学校というネーミングですけれども、NHKに高等学校があったのかと、どなたもびっくりされる話なのですが、私どもの学校は昭和38年に設立をされました。おそらく世界で初めてテレビ、ラジオの視聴を前提として、高等学校教育を展開する学校だという認識をしています。そして、日本最初の広域通信制高等学校でもあります。確かにNHKの名前を借りていますけれども、NHKの関連団体の1つでありますが、独立した学校法人、高等学校であります。そこで、私どもが放送視聴を前提として高校教育を展開して、今年の10月に50周年を迎えますので、50年間取り組んできたこと、そして今新たに始めていることについて、報告を申し上げて、御意見を伺いたいと思います。よろしくお願いします。
 レジュメにも書いてあるのですが、日本放送協会学園、我々はNHK学園と呼んでいますが、「いつでも、どこでも、誰でも」ということで、当時、これは正確ではないかもしれませんが、半ば国策として、勤労青少年のために高校教育を展開するためにつくった学校だと思います。当時、1万2,000人からの生徒が働き、学ぶ制度があり、私どもの学校に全国津々浦々で通っていました。今の我々のキャッチフレーズは、「いつでも、どこでも、誰でも」に加えて、「世界中、どこにいても」高校の教育を展開できるというキャッチフレーズのもとで取り組んでいるところでございます。
 生徒は、15歳、つまり中学校の新卒者から始まって、最高齢の85歳。昨年は93歳の方が在籍をされていました。今日のテーマが中途退学、不登校ということですので、我々が文部科学省の研究開発校に指定されて、取り組んできた「Do it コース」について、つぶさにお話を申し上げたいと思っています。
 50周年を迎えて、今、我々は放送と通信、ネットを融合して、ネット学習を確立しようという取組をしております。それはそのまま後ほど申し上げます「海外eコース」を展開することにつながるわけです。私どもの学校は決して、中途退学や不登校の子供たちを専門的に受け入れる学校ではありません。当然ながら、新卒で当たり前の進路選択として、NHK学園高等学校を選択しておる子もたくさんおります。一方で、青春時代に高校に通うことができずに、先ほど申し直したとおり、50代以上で二百数十人が、ここに三百数十人と書いておりますけれども、生徒が当たり前のように学校に通って、高校生活を送っているという状況がございます。そういった状況下で、決して不登校、中途退学を専門とする学校ではありませんけれども、やはり中途退学で本校に来る生徒の数は極めて多いということが言えます。
 中途退学で来た子たちの正確な統計はとっていませんけれども、私自身は都立高校の教員から出発をしておりますので、中途退学者をつくる、安易な特別指導はどうなのかと考えます。昨年の後半に私どもの学校に、ある公立高校から20人近くの子供が集団で転学をしてきました。問題行動を起こし、一挙に20人近い生徒が転校を私は強いられたと思いますが、さまざまな事情があるでしょう。そこは決めつけるわけにはいきませんが、特別指導のスタイルです。いまだに、スリーカウント制。たばこを3回吸ったら退学。たばこ3回目には、ほかに転校してもらう。転校しなければ、退学させる。そういうことが他県の例を見ても、やはりいまだ残っているという気がします。
 中途退学を防止する一番のポイントは、やはりその生徒が希望して入学した学校が責任を持って、卒業まで指導する、関わる、そのことが基本だと私は考えます。そういった意味で、学習継続の視点で十分に生徒にかかわり続けることが、やはり不足したのではないかという気がいたします。
 我々は、そういった生徒を預かって、あるいは不登校、引きこもりの子を預かって、我々のできるところから、その生徒にかかわり、通信制というのはなかなかなじみがないかもしれませんが、基本的に私どもの学校では、学習継続を第一とする、これが基本です。NHKの高校講座、これは学習指導要領に基づいて、ほとんどの科目が網羅されているテレビ講座、ラジオ講座であります。その視聴を前提とし、面接指導及びスクーリングに参加する。それによって、レポートを提出する。我々はリポートと言っていますが、リポートを提出する。それに丁寧な添削指導をして、子供たちは試験、テストに備える。テストで一定の点数をとれば、単位が認定される。こういったシステムであります。
 先ほどからの全日制の学習システムとは大きく違うだろうと、私は思いますが、このスタイルが特殊というよりも、このスタイル、この時間的なゆとりのある指導で、立ち直る子供たちがたくさんおります。そういったことを考えてくると、我々はその子ができるところから、一つ一つ階段を上らせるように、不登校対策をしていきたいと考えています。我々の学校には、現在3,700名の生徒がございます。3,700名の生徒を抱えていて、こういう言葉は合わないかもしれませんが、私は、個別指導をやろうと考えています。3,700人の生徒をどうやって個別指導するのか。その生徒が必要であれば、個別指導に切りかえる、そういった視点が極めて大事だと考えているところです。
 この間、我々は不登校あるいは中途退学の子供たちに対して、思い切った施策を展開する。NHK学園でしかできない、NHK学園しかおそらくやらないだろう。我々は公立高校でもありませんし、そして利益追求オンリーの広域通信制高校でもありません。そういった意味では、NHK学園しかやらない、NHK学園しかできない、そういう視点で様々なことをやってまいりました。その1つに我々が大きく力を入れてやっている「Do it コース」についてお話を申し上げます。
 平成16年から文部科学省の研究開発校となりました。「Do it コース」は、不登校対策で、入学できる子は中学時代に30日間以上の長期の欠席をした子たちだけです。私は、以前に4年間ですが、高校200校、300課程の教育課程表を見る立場で、様々な教育課程表を見てきました。このNHK学園高等学校に来て、まさに目が点になるような思いをいたしました。それが「Do it コース」であります。これで、高校が卒業できるのかという思いを私自身が思ったところです。しかし、中身を知るに従って、これは画期的な教育課程であると今は胸を張って言えるところです。今、申し上げましたとおり、不登校の生徒だけを扱っている。あるいは小中を通じて、全く人とコミュニケーションをとれなかった子が入ってくる。当然、入ってからもなかなか我々とはコミュニケーションがとれません。しかし、そういう子供たちがたったひとつのおはようございます、その言葉だけで、高校に足が向く。そういったことを私自身もたくさん経験しています。
 「Do it コース」の一番大きな特徴は、1年生のときに多くのスクーリング、例えば体育などに関しては、これは実技の科目ですので、スクーリングに出てこないことには話にならない。これを2年生、3年生に上げて、1年目、とにかく学校に1日来なさい。1日に来られない子もたくさんいるわけですけれども。そういった子供たちが、とにかく1年生の間に、通常の面接指導がなかなかできない状況でありますけれども、我々は補充授業をより一般のスクーリングとは違う形で、インターネットを使って双方向の授業を行います。
 例えば、情報という科目が、どの学校にもあると思うのですが、我々の情報の科目のときの補充授業を見ますと、教師が「皆さんは、検索エンジンは何を使っているの?」と聞く。子供たちのハンドルネールのわきに「グーグル」「ヤフー」、そういったことが適当に出てきます。ある子は「わからない」と書いてきます。20人ぐらいの生徒の中で、四、五人の子たちは全く書かない。わからないのがもう二、三人増えてきても、最後の1人が全く空白。どうして書けないのだろうと率直に疑問を持ったところですけれども、やがて50分の授業の終わりぐらいに「わからない」と書いたのです。これも私は異様な感じがして、教師に尋ねたのですけれども、おそらくこの子はこの場面で初めて人とコミュニケーションをとったのだと思います。翌日、その教師が言ったとおり、お母様から電話が来まして、他人と初めてコミュニケーションをとったと。それに私自身がびっくりして、そういう引きこもり的な生徒をどう指導していくのか、有効な手段になると考えています。
 この資料3に「Do it コース」の主なカリキュラムを書いてきました。当然ながら、高校ですので、教科型科目を置いています。国社数理英を中心とする科目。学校に来られない子供たちにどうするか。生活実習というものを各学年に2単位ないし3単位置いています。家庭を学校と見据えて、子供たちが日曜大工だったり、夕食のお手伝いであったり、そういったことを教師の指導のもとでテーマを設定し、10テーマぐらい取り組むことになります。その間、リポートを出し、教師とのやりとりを通じて、様々な指導をし、子供たちの学習を進めていくことになります。
 総合セッションは、教科と考えていただきたいのですが、コミュニケーションスキル、あるいはグループワークを学ぶための教科も置きました。子供たちがストレスとのつき合い方、コミュニケーションスキル、相手に配慮した主張行動等を学んで、グループワークによって、問題解決を実践的に学習していくものです。生徒同士の学び合いを大切にして、お互いがコミュニケーションを図る、コミュニケーション能力を伸長させる、そのための講座であります。
 3つ目に、職業技術。将来の進路を見据えた形で、自分の得意分野を探していただきたい。そういうことで、福祉、芸術、商業という3つの分野から生徒に選択をさせます。それら専門的な学習を通じて、子供たちが進路意識を確立することができればいいと考えています。
 2年目、3年目、スクーリングの数が増えるわけですけれども、平成22年度に「Do it コース」に入学した子供たちの7割が3年間で卒業を果たしています。繰り返しますが、中学時代に不登校であった子供たちが7割、「Do it コース」を通じて、高校を卒業していくことができました。これも私には、極めて驚異的な割合だと考えていますが、現在、62人の生徒が在籍をし、23年度末に卒業する生徒は8割に近いことになります。私自身は、今年度、大阪府に学習センターをつくり、大阪、つまり近畿地区を対象とした「Do it コース」を展開しました。状況を見て、できれば「Do it コース」を6大都市全部で展開したいと考えているところであります。いずれも、展開したにせよ、そのセンターの扱える総数は50人弱だろうと考えていますが、その学習センターでスクーリングをするわけにはいきませんので、そこが教育相談の場であったり、教師とコミュニケーションをとる場であったり、そういうふうな活用を前提として、6大都市全域で当然ながら、指導者も置いて、「Do it コース」を展開したいと考えているところでございます。
 時間がなくなってまいりましたので、先に進ませていただきます。先ほど、文部科学省の説明でもございましたが、平成21年の3月末日に全日制高等学校にあっても、定時制課程との併用のもとで、単位を認定して構わないということがございました。併修校システムを我々は、文部科学省の通知に従って、展開をしたところです。
 3つ目です。通信制高校においては、放送視聴でスクーリングの10分の6を減免されます。それにネット、インターネットを併用することで10分の8までスクーリングを減免することができます。これは仕事を持ったりということで、なかなかスクーリングに通えない生徒は、私の学校ではできるだけ有職者を対象としていますけれども、「eコース」を矢継ぎ早に導入いたしました。そして、今年の4月からは、これも文部科学省の通知に従ったわけですが、海外在住の日本人生徒に対して、海外在住のまま、高校教育を展開することができないか、当然ながら、スクーリングは学習指導要領に決められていますので、年に2回は、日本に帰ってきなさいと。空港近くの会場でスクーリングをいたしましょう。「eコース」を活用すれば、スクーリングで帰国するのは1回で済むことになります。当然ながら、ほかにテスト等もありますので、なかなか1回に凝縮することは困難でありますけれども、「海外eコース」に関して、手元に資料を置かせていただきました。
 資料7を御覧ください。昨年4月に募集を開始し、現時点で11カ国15名の生徒がおります。我々は数年前から上海の日本人学校を訪ね、日本人学校の生徒が東京等に帰ってくるときに、我々の学校に対する入学を勧めてまいりました。日本人学校の教師にあれこれ聞いてみますと、海外日本人学校には、いわゆる全国で起きている教育課題すべてがある。不登校もあるし、特別指導もある。そういう状況下で、私は海外の生徒が日本の通信制高校の教育を受けることで、現地にて、つまり、お父さん、お母さんと一緒にいて、たとえ不登校であっても、高校に学ぶことができると考えました。我々は、それを意図して、つまり不登校の子、引きこもりの子を意図して、特に上海、バンコク、シンガポールに宣伝をかけたわけですが、結果的には必ずしも不登校の子ではなくて、こういう子供たちがおります。
 例えば、中国に行っている3名の諸君は、漢方学・鍼灸学を学びたくて、父親の転勤、我々も今日知ったところですが、囲碁の修業に単身中国・天津へ、という子たち。あるいはイギリスでバレエダンサーになるためにとか、あるいはサッカー留学のために単身でドイツにとか、ベルギーでもバレエ留学の生徒がございました。そういう子供たちも海外で何らかの興味、関心を展開するために、日本の通信制高校を活用する。そういう子が十分いることがわかりました。これが我々が取り組んで、来年度に向けて、取組を強化している「海外eコース」であります。
 資料8を御覧ください。私たちは来年度入学生から、中学新卒者に向けて、推薦入学制度を導入いたしました。通信制高校が推薦入学制度を導入する意味がどこにあるのかと、よく言われることですが、決して入学金を半減するとか授業料をとらないとかスポーツに秀でた子供たちを集めるということではありません。たとえ、不登校の生徒であっても、全日制の子供たちが進路を確定する時期に、自分の選択として、通信制高等学校を選択する、つまり進路意識を高めて、進路確定を同時にさせる、そのことがねらいであります。新卒の中学生が全日制、定時制と一緒に通信制も選択肢においてもらう、その通信制課程に入学をしてくる、このことがたとえ不登校の生徒にあっても、私はその後の意欲的な高校生活に結びつく、そう考えたところであります。この制度のもとで、中学校の校長先生が51名の新卒の生徒を推薦いただき、我々が審査をし、入学を決定したところであります。
 6番目です。昨年の3.11、東日本大震災は大きなつめ跡を私たちに残しました。特に被災地の人たちの苦しみはいかばかりかと思います。私は、福島県のいわき市出身であります。その被害の大きさは、自分のふるさとを見ただけで、これは身に迫るものがございます。その岩手、宮城、福島の各教育委員会、そして各自治体の私学課等に働きかけて、被災を受けて、高校になかなか通えない子供たちがいるのであれば、我々が引き受けると。授業料はおろか教材等々についても、我々が負担するという話を説明に伺いました。結果として、41人の子供たちが現在、私たちの学校に通っております。私学協会をはじめ、様々な取組がございましたが、41人の生徒を被災地特待生として抱えているのは、おそらく私どもの学校だけだと思うところであります。
 こういった思い切った施策を展開し、1人でも多くの子供たちを、私たちのネットワークの中で救い上げたい。どの子もおそらく高校に通いたいという願望は強く胸の中に抱いているところであります。その子供たちが私たちのネットワークの中に入れたら、我々は寄り添う教育を展開して、子供たちを卒業まで持っていきたい、そう考えているところです。
 4番目、5番目はあまり時間がないですが、通信制教育の可能性について、少し話をしていきます。今の東日本震災被災者特待生、これは通信制であったからこそ、41人。全日制の高校で言えば、1クラス分、これをまさか1つの高校が行うことはできません。通信制の手段をとっているから、できるのだろうと思います。そこに「人生の忘れ物」というフレーズがあります。これは、50代を超えて、もう一度高校にチャレンジをしたい、あのときに15歳のときに行きたかった高校にチャレンジをしたい、そういう人たちに向けて、我々が発信したフレーズであります。
 「リメディア」、これは「リメディアル」ですけれども、10月ぐらいに大学の推薦入学が決まった子供たちは、入学するまでほとんど勉強をしないことが問題になっております。理系に行くにもかかわらず、物理、化学をとらなかった子等々に対して、補充授業をする必要がある。そういうことにも今、試験的にでありますが、チャレンジをしているところです。そして、不登校中学生に対して、来年度、高等学校の新しい指導要領が数学を前倒しし、数1入門という科目を設置することになります。資料11を御覧いただきたいのですが、これに伴って、NHK教育の高校講座に「チョー基礎から始めよう!ベーシック数学」「数1入門」を置いています。このネーミングが適切かどうか私は分かりませんけれども、分数から2次関数までを学習対象とする、学習内容とする科目が置かれます。これは中学校で学ぶ学習内容そのものであります。これを使って、私たち私立通信制学校協会が編さんしている数1入門という学習書がございます。これを使って、不登校の子たちに何らかの形で中学校の数学をおさらいさせられないかと、近隣の3つの自治体と組んで、やっているところです。我々にとっては、学校補充としては、定義できる話ではありませんので、こういったことにもチャレンジしていきたいと思います。
 最後のところの私立通信制高等学校の光と影です。特に影の部分は、先ほどの文部科学省の指摘もございました。とても高校教育とは思えないような実態が各地で指摘をされています。都内で幾つか起きているような状況は、これを早く是正をしなければならない。子供たちが犠牲になっている状況がございます。このことについて、是非とも議論を深めていただきたいところであります。持ち時間を優に超えてしまいました。私の報告はひとまずここまでとさせていただきます。失礼いたしました。

【小川部会長】
 ありがとうございました。2つの充実した報告でしたけれども、残りの時間が40分ぐらいしかないことになりました。約40分間の時間を前半、後半と2つに明確に分けて、やることはなかなか窮屈ですので、コミュニケーション能力、規範意識、社会参画の態度をどうはぐくんでいくかということと、不登校、中途退学者への方策等々について、これはかなり関係する問題でもありますので、2つを切り離して、前半20分、後半20分という細かく議論しないで、40分、この2つを一括して、意見交換させていただければと思います。
 また資料6を参照していただきたいのですけれども、今日のテーマにかかわって、3人の委員のほうから関係資料、文書も出ております。和田委員は今日、欠席ですので、これは後で各自読んでいただくとして、後ほど小杉委員と野上委員から、この資料に基づいて少し御発言をいただければと思います。それでは、残り40分ほど、このテーマについて意見交換をしていきたいと思いますけれども、最初に何か御質問等々ございますか。2つの報告について何か御質問等々がございますか。
 なければ、最初のきっかけということで、この文書をいただいております小杉委員と野上委員から。残された時間も少ないので、手短にいただければと思います。よろしくお願いします。

【小杉委員】
 ありがとうございます。では、ごく手短に。
 私の出しましたものは、コミュニケーション、規範、社会参画というような捉え方は非常に必要なのですが、これは基本的には社会人、職業人として、自立するために必要な高校時代にやっておかなければならないところということで出てきたのだと思います。いつも労働市場の側から、高校を見ている私としては、社会参画の一部ではあるのですけれども、中に労働者、使用者としての権利・義務についてのきちんとした知識、あるいは社会保障制度に対するきちんとした知識を、公民という形で授業を受けるという話ではなく、自分自身の問題としてしっかり考えるような過程を何とか高校時代に踏んでくれないか。
 この下の図表は、これは厚生労働省の研究会でやられた調査なのですが、残業と賃金の関係とか、そういう幾つか、ほんの少しのテストのようなものをやらせてみると、やはり図の2の一番左だけを見ていただくといいと思うのですが、やはり進路が労働市場にすぐ出ていく人、あるいはフリーターになるように、かなり労働市場規模の厳しいところに行く生徒、そういう生徒ほど権利・義務の話を全く知らないです。一番危険にさらされるタイプのブラック企業云々とかいろいろなことがありますが、労働市場の中でひょっとしたら、人権が守られないのではないかというところに近い生徒が一番こういうことを知らないという事態。アルバイトをしていれば、知っているのではないかという話もありますが、そうではないというのが現状なのです。
 次のページに行っていただきまして、社会保障制度に組み込まれているかという話なのですけれども、これは東京に住んでいる20代の若者を対象にした調査ですが、やはり学歴と社会保障、年金制度、保険制度の加入が、かなり関係がありまして、特に年金の場合、加入していないとかわからないという若者が高卒は比較的多いです。特に高校中退、高等教育中退、中退層に多いです。あるいは健康保険についてもやはり中退層はほとんどわからないという状態になっています。労働者の権利・義務について、例えば労働組合などに入ったりすると、しっかり教えてくれるプロセスがあるのですが、そういうものも基本的には入っていないことが圧倒的に多い。こういう形で、高校を出て、労働市場にはいる若者たちが、基本的な知識を自分のものとしてはわかっていない。公民で習うということとまた違って、実際に自分の問題として、アルバイト先で例えばレジが合わなかったら、「お前の給料から引いたよ」ということも平気で行われるようなことがあるにもかかわらず、それが自分の権利が侵されているという、そういう感覚が全くないまま労働市場に出されているという事実、これを何とかできるのが高校にいる間ではないか。ということで、高校教育に大変期待するというのが、最初のポイントです。
 中途退学については、これも労働市場側から見ていると、労働市場にうまく参加できない、ニート状態という形の若者たちの実態を見てみると、多くが学校時代に由来しているのです。在学中に不登校を経験したり、中途退学を経験したりという人が、半数ぐらいいる。ニート状態の若者支援機関に出てきた若者たちの過去を見ると、そういう学校に由来した挫折の経験を持っている。その子たちが学校から離れた後、どこにも所属するところがなくて、孤立化して、そして長い間、社会関係を失ってしまうという状態になっていく。こういう人たちが今、労働市場に入れなくて、労働市場の政策をやっている厚生労働省からも一生懸命手を出しているが、なかなかうまくいかない。最近、厚生労働省がやっている地域若者サポートステーションという、ニート状態の若者の支援のための仕組みなのですが、これは学校に根があるから、学校から出るところで、学校から離れるタイミングで、孤立化させないように、学校との連携のもとで、孤立化させないで、是非、ある意味で、うちに来てくださいと営業をかけるようなことを始めています。学校以外の社会的支援というのも、学校をうまくつかってくれないか。それが1つ申し上げたいところです。
 右側は、中途退学すると、その後、圧倒的にアルバイト・パートとか失業という比率が高くなっています。中途退学がどれだけ不利かというのが、非常にはっきり出ています。ここで高等教育中退も載せましたのは、高校での中途退学は、ある程度の部分は、中学の進路指導に1つの遠因があったように、高等教育における中途退学は、実は高校での進路決定プロセスに遠因があるのではないか。そういう意味で、後の学校段階との連携も必要ではないかということで、ここで触れさせていただきました。

【小川部会長】
 ありがとうございました。では、野上委員、お願いします。

【野上委員】
 本日の2つのテーマは、いずれも中央教育審議会が示し、現在もその理念が継続されている、生きる力、つまり法やルールの意義や、それを遵守することの意味を理解し、主体的に判断し、適切に行動できる能力を発達段階に応じ、身に付けさせるという目標は、残念ながら、社会の急激な変化等の影響とも相まって、計画どおりに進捗しているとは言いがたく、むしろ人間関係の希薄さや規範意識の低下が以前にも増して進んでいるのではなかろうかということで、本日の議題となったのだと思っております。
 ところで、私自身はかれこれ10年前からこうした傾向を懸念しておりまして、それは所属しております経営者協会の上部団体、経団連が2001年から実施しております調査に、先ほど文部科学省の方から御紹介がございましたが、新卒採用に関するアンケート調査がございます。この中で、企業が採用選考時に重視する要素を聞いているのですが、上位4つは、8年連続でコミュニケーション能力、主体性、協調性、チャレンジ精神、そのいずれもが変動なく、本来であれば企業のイノベーションにも影響を及ぼす専門性や創造性、そして学業成績はいずれの年も順位が低く、2011年度の調査では、専門性が7位、創造性が12位、学業成績が17位でございます。
 こうしたことから、見えてまいりますのは、企業として、必要な知識や技能は入社後に教育するので、社会生活を営む上での人間として持つべき最低限の規範意識については、社会に出る前に身に付けさせてほしいとの期待が、人材の受け手たる企業側にあるから、このような結果になったのだと思います。もちろん各地では、産業界などに言われるまでもなく、子供たちに生きる力を付与すべく、日々指導に当たっておられることは十分承知しておりますけれども、激動かつ大変革の時代を迎えている現在、次代を担う若者の育成にさらなる注力を図っていただければと思っております。
 それでは、埼玉県の資料6-2を御覧いただきたいと思います。1ページをあけてください。埼玉県では、生きる力や規範意識を高め、豊かな心を育むため平成21年度から1ページに記載されております事業を実施し、現在も進行中でございます。取組の中心は道徳教育ですが、特に高校では人間としての在り方、生き方に重点を置き、取り組んでいるところですけれども、この取組が県社会を挙げて、推進されているところに埼玉県の特徴があると思っております。
 我々産業界も社会の一市民ですので、現在、この取組に鋭意参加しております。県社会を構成するあらゆる主体が参加するには、それなりの理由がございます。この取組の先頭に県の教育長はもちろんでございますけれども、県のトップリーダーである県知事が長年にわたり、自ら先頭に立っているからでございます。知事就任以来、10年間、県づくりに人づくりが欠かせない、そのためには教育が最優先課題だとして、取り組んでいるものですから、多くの県民が知事の本気度を知っております。前々回の会議の時にも紹介いたしましたが、グローバル人材の育成のために10億円の基金を創設したときと同様に、この道徳教育の取組についても並々ならぬ決意で臨んでおりますことから、県社会を挙げての取組になっているのでございます。
 具体的には、1ページの中ほど平成22年度の左の写真があるところですが、規律やマナーを掲載した埼玉県独自の道徳教本を、小学校低学年、中学年、高学年用に3部作、そして中学校用、さらには高等学校用と計5種類を作成し、70万人の全児童生徒に配付しております。右の写真は、こうした取組をより効果あるものにすべく実践事例を掲載した教員指導用冊子を作成し、全教員に配付しております。そして、こうした取組には家庭での取組、なかんずく保護者の参加が欠かせないことから、本日、皆様のお手元に配付させていただいておりますが、「家庭用 彩の国の道徳」を児童生徒のいる全家庭に配付しております。そして、つい先週の3月2日には、東日本大震災の出来事をもとにした小中高共用の道徳教科書「心の絆」を発刊したところであります。こうした取組の経年ごとの施策や具体的な事業につきましては、2ページから6ページにかけて紹介しておりますけれども、御覧になってお分かりいただけますように、児童生徒、特に高校生には企業や福祉施設などでの体験活動を通して、問題解決能力やコミュニケーション能力、さらには他人を思いやる心や、事に当たって感動する心を醸成する機会が数多く提供されております。
 このように埼玉県では、小中高を通じて経験いたしますことから、少なくとも従前に比べれば、人間性、社会性が身についてきたのではと感じております。このような実感は、私だけではなく、児童生徒を受け入れたり、社会人講師を派遣するなど教育現場と接する機会が増えた多くの企業関係者が、異口同音に語っていることからも埼玉における県挙げての道徳教育は功を奏し、そしてそれが2番目のテーマ、不登校対策にもよい影響をもたらしているのではと思います。
 不登校対策についてですが、埼玉県では、高校1年のときに中途退学の生徒が多いことから、教育局では特定の課だけが単独でこの問題を担当するのではなく、関係課が連携し、7ページに掲げるような一連の事業を1年次の時に展開しております。その結果、8ページの右下を御覧いただきたいのですが、グラフにありますように中途退学者数は平成17年の2,321名から平成22年には1,261名と半減したわけでございます。グラフでおわかりいただけますように、決して一気に減少したわけではなく、継続して取り組んだ成果でございます。具体的に申し上げますと、7ページの算用数字の2にありますように、中途退学防止の手引を作成し、全高等学校教員に配付したり、算用数字の3にありますように、中途退学者の実態調査を実施し、高等学校中途退学追跡調査報告書を作成するとともに、その中にデータをもとにした的確な指導ツールをあわせて掲載し、高校をはじめ関係先に配付しております。
 そして、さらに算用数字の5にありますように、平成18年度からは中途退学の多い学校を中心に、「自分発見!高校生感動体験プログラム事業」を実施しております。どのような取組かといえば、9ページにありますように企業、商店、農家、福祉施設などで就労体験させるとともに、特に基礎学力が身についていない生徒や集団生活に適応できない生徒に対しては、別途、ステップアッププログラムといって、社会人講師などの手をかりて、学校になじめない子を指導するなど、早期退学の芽を摘んでいるところでございます。こうしたことがいかに効果があるかは、9ページの生徒、保護者、教師、そして企業などのコメントを御覧いただければ、一目瞭然であります。しかし、これで満足するわけにはまいりません。全国ベースでみれば、我が埼玉県はまだ低位にございますので、一層の取組が求められていることは言うまでもありません。
 ところで、この2番目のテーマにおいても、埼玉県では先頭に立って推進するのは、知事と教育長であります。11ページのグラフは小中学校のものですが、不登校児童生徒数の推移を示したものです。高校同様、こうした取組が功を奏しておりますことを証明したものであろうと思います。
 以上で私の話を終わらせていただきますが、要はこうした問題を教育界だけに委ねるのではなく、県であればトップリーダーである知事自らが我が事として取り組むことによって、産業界を含む県社会挙げての取組となることが、こうした問題を改善、克服に有効なのではと申し上げて、私の話を終わります。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 それでは、ほかの委員の御発言を受けたいと思います。どうぞ。どなたからでも、よろしくお願いします。では、長塚委員、よろしくお願いします。

【長塚委員】
 産業界では、求める能力としてコミュニケーション能力が第1番ということがわかりました。その次に、主体性、協調性とあるのですが、そもそもコミュニケーション能力が何で今必要とされているのかということの背景などを、ちょっと考えながら、それでまた、どういうふうにしてそれを高めていくかということを考えていく必要があると私は思うのですが。そもそも、産業構造の変化でしょうね。第3次産業、あるいはサービス産業というものがこの五、六十年の間に日本社会では3割から、現在7割ぐらいになっていると思うのですが、サービス産業というのは、まさにコミュニケーションをベースとした仕事になるということで、こういうことにつながっているのかなと、1つ思っております。
 もう一つは、社会の価値観がまさに変化して、教育界も自由化、多様化、個性化ということに沿って、高校も変わってきているわけですけれども、全体よりも個の力が強くなってきているという中では、その反面として個と個がつながるためのコミュニケーション力が必要になっている。そういう社会の変化に対応する基本的なところで、コミュニケーション能力が必要になってきている。そういうことなのだろうと思うのです。
 しかし、それはまた、どういうもので、どうすれば育てられるのかということが、一番の課題だと思うのですが、先ほど言いましたコミュニケーション力の次に、主体性と協調性というのが2番目、3番目に挙がってくる。コミュニケーション力というのは、自分の意見を言い、また、他者の意見も聞くという、まさに主体性と協調性がセットになっているようなものが、一言で言えばコミュニケーション能力。この3つが常に高いほうにあるということは当然なことなのだろうという気がするわけです。
 その中で、しかし、日本人のメンタリティとして、子供たちも含めて、協調性は比較的あるのではないか。どちらかというと主体性が足りないのではないか。自分の考えを発信するような場面が、学校でも、あるいは日常でも少ないのではないか。それがコミュニケーション能力を高められていない原因なのではないかなと思うわけです。とくにやはり、学校現場では一斉授業が中心であり、多様な学校が生まれてはいるけれども、共通して授業や学校教育の仕組み、方法論が一斉の一方通行の中であるということが、子供たちの自己発信型の主体性を高めることにつながっていない、受け身的な子供たちを育ててきてしまっているのではないかなと思うわけです。ですから、これまでの議論と重なりますけれども、参加型とか、あるいは双方向型というような学びの仕組みに変えるとか、そういうことが極めて大事で、すべての教育活動でそういうことが行われる必要があるのだろう。いろいろな内容の工夫は、先ほどのチャレンジとか、エンカレッジの学校などいろいろできるなと思いました。ただ、方法論が問題なのではないか、そういうことを強く感じております。
 以上です。

【小川部会長】
  ありがとうございました。非常に重要な指摘かと思います、ほかにどうでしょうか。眞砂委員、よろしくお願いします。

【眞砂委員】
 東京都教育委員会の取組、とても勉強になりました。コミュニケーション能力の話ですけれども、指導課程のポイントとして、自己の考え方を形成するときに、読書をし、書いてみる。そして、考えの交流を、これがコミュニケーションの中心だと思いますけれども、行い、最後に自己の考えを再構築する。ここまできちんとできるということがとても大切だと思います。
 今の高校もコミュニケーション能力をやはり高めることが非常に大事で、知識注入からコミュニケーション能力を高めるという方向に少し軸足を変えるべきではないかと私は考えています。そのためには何が必要かというと、やはり実体験、いろいろな経験をするということ、それと自分とは違ういろいろな人間、仲間と接することだと思います。コミュニケーション能力は発表するのが一番だと、すぐ思われがちですけれども、結局、それを聞いてくれる人、コメントしてくれる周りのいろいろな、多様な生徒、それから、教員がとても大切だと思います。そういう人たちがいる。それがまさに学校がやるべきことだと思っています。それは小さなグループではできないものなので、学校の大きな役割がそこにあると思っています。
 ただ、今の高校を考えた場合には、どうしても高校入試で偏差値の輪切りで、本当に似たような生徒ばかりが集まってくるような、そういう高校がたくさん日本にはできています。そこら辺を何とかしないと、多様性のある中のコミュニケーション能力が生まれないのではないかというのが、私の危惧です。ありがとうございます。

【小川部会長】
  ありがとうございました。
 ほかにどうでしょうか。では、アキレス委員、どうぞ。

【アキレス委員】
 まず、コミュニケーション能力と一口に言っても、人によって、何を指すかというところが統一されていないのではないかと思います。基本的には、先ほど御指摘がありましたように、自分の考えを端的に、論理的にわかりやすく伝えるという部分と、相手の言葉だけではなくて真意も含めて、きちんと聞いて、対話をしていくというところだと思います。
 企業の採用の基準となるコミュニケーション能力というのは、そうしたことだと思っていますが、一方で、特に新卒採用の場合はポテンシャル採用ですので、今までの経歴などを見ることはできません。そうなると、面接などをしても、コミュニケーション能力が一番見やすいところだということがあるのかもしれません。ですから、ただ単にコミュニケーション能力を身につけているかどうかを見るというだけではなくて、コミュニケーション能力を身につけた人たちに何を期待しているのか、というところを、企業側もクリアにするほうがいいと感じました。
 もう1点は、不登校のところですが、状況として、無気力というのが24.2%、ここはちょっと心配だなと思いました。それから、チャレンジスクールやエンカレッジスクールの課題については、一生懸命やっていただいている、すばらしい取組であるにもかかわらず、進路未決定者の数が比較的多いというお話でした。では、その進路未決定者はどこに行って、何をするのだろう。せっかく良い体験をして、もう一度やり直したり、もっと好きな勉強を見つけたりするにもかかわらず、進路未決定というところが、非常に気になりました。
 以上です。

【小川部会長】
 わかりました。
 ほかにどうでしょうか。
 その前に、今の東京都の方に質問ですが、先ほども御発言があったんですけれども、チャレンジスクールとかエンカレッジの取り組みという点に関して、学校にとどまって学習を継続するという点では、かなり成果を上げてきていますけれども、それがなかなか将来の進路に結びつかない、就職に結びつかないという御報告がありましたが、その原因と方策みたいなところは、どういうふうにお考えになっていらっしゃるんだろうかということを、再度、もしも答えられる範囲で何かあれば教えていただきたいということかと思います。

【金子研修部長】
 ありがとうございました。
 これにつきましては、実際のところ、例えばエンカレッジスクールでいいますと、150名の卒業生のうち、進路未決定というのは、蒲田高校の場合は156名のうち40名、この大半は実は受験準備です。いわゆる浪人です。大学進学が41名、専門学校が54名、就職が21名といった学校なのですけれども、ただ、浪人といいましても、専門学校に行こうと思ったり、それから、自分に何が向いているのかと考えたりしたいということで、次の年、卒業後、考えるということでありまして、これにつきましては、私どもとしましては、若者の再チャレンジということで、目的意識をさらに明確にさせるということを学校を挙げて取り組むようなこととか、あるいは職業的な自立に向けた教育プログラムを、今アキレス委員が御指摘されたような進路意識とか、職業的な自立というのを高めるための教育プログラムは、来年度から私ども東京都教育委員会は開発していきたいと考えております。
 以上です。

【小川部会長】
 アキレス委員、よろしいでしょうか。決して未決定ということではなくて、将来の進路を考えての、浪人が大半だという話もありましたけれども、よろしいですか。

【アキレス委員】
 本人が主体的に選んで、決めていないと理解してよろしいでしょうか。

【金子研修部長】
 まだ決め切れていない生徒は確かに、御指摘のとおりいるということでございます。

【アキレス委員】
 では、その方たちをフォローアップすると、例えば数カ月以内にはある程度進路を決めていくような方向にあるということでよろしいでしょうか。

【金子研修部長】
  はい。

【アキレス委員】
 了解しました。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では、渡邉委員、よろしくお願いします。

【渡邉委員】
 渡邉でございます。中途退学等について、若干私の考えをお話しさせていただきたいと思います。
 中途で退学していく生徒の中身を見ますと、大きく分けて2つのグループになるのかなと思っております。1つが、学習意欲に乏しい、無気力、若干規範意識に欠ける生徒の集団。最終的に単位認定にならずに中途退学、あるいは転校という形をとっていくグループ。それからもう一つが、先ほどからもお話が出ておりますけれども、不登校や様々な精神的な課題を抱えた生徒、学校に行けない、集団になじめないということで、いわゆる出席が足らずに、残念ながら学校を去っていく生徒、この2つのグループに分かれるのだろうと思うのですが。
 第1のグループのほうの生徒に対しては、一番大事なのは、先ほど埼玉県の野上委員からも、いろいろな取組の報告がなされましたけれども、最も大事なことは、厳しい生徒指導の上に、さらにその生徒を最後まで面倒を見ていくんだという職員の意識だろうと私は思います。先ほど賀澤先生からの報告で、安易な特別指導というお話がございましたけれども、入学させた以上はいろいろ指導しながら、最後まで面倒を見て、卒業させていくという、そういう職員、教員の意識、これが最も大事になってくるんだろうなと思います。
 では、そういう教員の意識を育てるためには、何ができるか。そういう方策について検討していく必要があるのだろうと感じております。
 それから、不登校等の生徒でございますが、文部科学省の予算でスクールカウンセラー等の配置はいただいております。ただ、これは小学校、中学校のほうが中心でございまして、なかなか高校のほうまでは回ってきていないのが現状だと思います。先ほどの資料にもございました。精神的な様々な課題を抱えている生徒ですので、カウンセラーの細かなアドバイス等が非常に重要な教育になってくるわけですけれども、これにつきましては手厚い配置を是非お願いしたい、と考えているところです。
 それから、これも先ほど賀澤先生からの発表にございましたけれども、学校に通えない生徒たちの1つのカバーとする方法として、通信併習というシステム、これも検討していく必要があるような気がいたします。ただ、教育の公平性、平等性という視点から考えたときに、いろいろな課題が出てくるのではないかと思うのですが、まだ指定校4校とかという先ほどの資料もございましたけれども、もうちょっと広げていく必要はあるのだろう。これによって不登校等の生徒の学校に行けない部分をカバーすることは十分に可能になってくるのではないかと思っています。
 それから、別の視点でちょっとお話ししたいんですが、中学校の進路指導が果たして十分なのか、そんな気もしております。往々にして生徒の適性、能力、関心、そういうものを十分に考えないで、行きたい高校ではなくて、入れる高校への進路指導が行われている気がしてなりません。もう少し中学生の1人1人の適性等を考えながら、進路指導をしていくべきだろうと思います。先ほどの資料の中で東京都の例がございましたけれども、専門学科の高校のほうが退学率が多うございました。これは、例えば工業に興味も関心もない生徒が工業高校に行く、あるいは農業に関心のない生徒が農業高校に行く、こういう事例があるのではないか、そんなふうに感じているところでございます。
 それからもう1点ですが、これはいろいろ調査はできているんだと思うんですけれども、転学した生徒の、その後については、どうなっているのかということも含めて少し調査する必要があるように思います。年度末になって、転校する生徒がかなりの数います。これは、退学者数の中には入ってきません。積極的な進路変更であればいいわけですけれども、進級が認められず、残念ながら学校を続けられなくて、次の学校に転学をするという実態がかなりあるのではないかと思います。こういうことに対しましても、少し検討する必要があるのだろう。中途退学の問題を考える上では、当然関係してくる内容ですので、考える必要があるのだろうと思います。
もうちょっとお時間よろしいでしょうか。

【小川部会長】
 はい、では。

【渡邉委員】
 私が通信制のほうに関係しているものですから、一言、通信制の要望という形でお話をさせていただきたいのですが。定時制、あるいは通信制の学校に、様々な課題を持った生徒が中途退学をして入学をしてきております。適切な言葉ではないかもしれないのですが、高校教育のセーフティネットの役割を果たしているのは現実だろうと思います。いわゆる昔からの勤労青少年の学びの場から、大きくその内容が変わってきているわけです。全日制の高校と比較しますと、様々な課題を抱えた生徒が数多く在籍しておりますので、職員定数、それからスクールカウンセラーの配置、この辺につきましても是非御検討いただきたい、手厚い配置をお願いできればありがたい、そんなふうに考えております。
 それから、定時制の学校には養護教諭が配置されているのですが、通信制の学校には配置されていない学校がございます。全通研の調査によりますと、配置されているのは約半数、半分の学校には養護教諭の配置がございません。この養護教諭の配置についても、是非義務づける方向での検討がいただけたらありがたい、そんなふうに思います。
 最後に、私どもの高校、通信制には、4,000名を超える生徒が在籍しています。先ほど、賀澤校長先生の発表がございましたけれども、生徒を個別にサポートする体制づくりが当然必要になってくるわけですけれども、通信制高校の適正規模についても検討する必要があるかな、そんなふうに感じているところです。
 以上、感想と要望という形でお話をさせていただきました。ありがとうございました。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 今、渡邉委員から出された専門職員の手厚い配置とか、教職員定数の見直し等々については、通信制だけではなくて、おそらく高等学校全般に関わる大きな問題かと思っています。先ほど、東京都からチャレンジスクールとかエンカレッジスクールの実践事例、報告がありましたけれども、私も幾つか東京都のそういう学校を見たときに驚いたのは、かなり手厚い加配の配置を東京都はされておりますよね。ああいう手厚い加配があることで、1人1人の子供の学力水準に見合った細かな指導が可能なんだろうなということを改めて感じました。この部会では、まだまだ授業内容の改善というレベルで、取り組むべき課題が非常に多いという意見がだされていましたが、そうした授業づくり、授業改善の1つの条件整備として、教職員定数の問題というのは重要な課題であると思いますので、今後この部会の審議の中では、そのテーマも検討してみたいと思っています。
 ありがとうございました。
 時間も残されていませんので、最後、では会長代理の安彦さんから、よろしくお願いします。

【長塚委員】
 すみません、1点だけよろしいでしょうか。

【小川部会長】
 では。ちょっとお待ちください。

【長塚委員】
 申し訳ございません。不登校、中途退学のほうの絡みで広域通信制の問題、これはNHK学園さんもそうですが、私ども私学にとって非常に関わる問題なものですから、一言ちょっと触れたいのですが。

【小川部会長】
 どうぞ。

【長塚委員】
 不登校と限らず、最初から定時制、通信制に入る生徒の割合というのは約4%いるわけです。しかし、高校生のその後の在学の人数というのは合わせて30万人いる、高校生全体で300万余のうちの1割弱、8%ぐらいいるわけです。ですから、決して小さい問題ではないということです。この子たちの指導をどうするのかということなのですが、たしかに主体的に入学する生徒も一部いる。ですから、先ほどの御提案のように、入学時にもう中学校から来ていただいている大変前向きな子もいるということも事実です。しかし、多くは、やはり途中から入ってきている。この子たちのケアは相当大変だと思います。自分で机に座って、さまざまな教材を用いて学習できないからドロップしたという子が、むしろ多いのであって、そういう子たちが放送教材を使ってレポートを書いて、主体的に勉強をするなんていうことは、ある意味考えにくいわけです。そこに大きな矛盾があるわけです。ですから、まさに個別指導のような学習センターをもっと充実させるようなことがない限り、年2回程の面接指導で成り立つはずがないと私は思うんです。
 しかし、そういう中で、本来ならばNHK学園さんとか、企業等の技能連携で始まった科学技術学園とか、全国規模で行っている広域通信制は、ある意味ではその数校で十分だったものが、例えば株式会社で広域通信制もありとか、制度を変更してしまった。そして、むしろそういう個別指導が必要だということを本人もわかっていますから、また、それを設置する者もわかっていますから、いわゆるサポート校絡みの、ある意味では学校ではないサポート校もこの広域通信制の学校を始めてしまった。そこには高額な授業料、学費がかかっているわけです。普通の全日制の学校に行くよりもかかっている。そういうことが、なければまたできないという実態もあるわけですが、そこで行われている指導、レポート指導が非常におそまつであったり、いろいろな問題があるわけです。今、文部科学省では3局の協力チームで検討というのでしょうか、実態調査と検討をすると伺っておりますので、今後改善されていくのだろうとは思うのですが、やはりここには大きな問題があるということは1点、申し上げておきたいと思います。
 以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。

【及川委員】
 すいません。

【小川部会長】
 では、ちょっと時間がオーバーになると思いますけれども、一言どうぞ。

【及川委員】
 申し訳ありません。規範意識、社会参画等の態度のことについて一言。
 先ほど、東京都の説明もあって、私も実感しているところなんですが、教科「奉仕」の活動を通して、社会参画の意識等というのは、やはり高まっているということを実感します。改めて規範意識とか社会参加の態度の育成という点では、体験活動というのが非常に重要であるということを再認識しているところなんですが、ただ、高校生の発達段階を考えたときに、やはりその体験を内面化するという営みが必要であろうと思います。それは、結局、高等学校における道徳教育の在り方にかかわってくると思います。資料2の22ページにありますように、高等学校の道徳教育というのは、「人間としての在り方生き方に関する教育」を学校の教育活動全体を通して行うということなんですが、「人間としての在り方生き方に関する教育」の高等学校における中核というのは、公民科と特別活動、特にホームルーム活動ということになっているんですが、とりわけて公民科について申し上げると、30ページに公民科(倫理)の内容項目が出ているわけです。そこを御覧いただくと、社会参加と奉仕とか、民主社会における人間の在り方であるとか、先ほど申し上げた体験活動を内面化するという意味では、教科指導として非常にふさわしい教科ではないかと私は考えます。
 ところが現在、公民科の履修形態というのは、現代社会または倫理及び政経ということになっているわけです。つまり、そういう意味では、倫理というのは、公民科の中で選択扱いになっているわけです。先ほど申し上げたような、規範意識だとか、社会参画の態度育成といった人間としての在り方生き方、あるいは道徳教育に密接に関連して、生徒に内面化を図っていくような教科・科目が、果たして選択の扱いでいいのかということを問題提起をしたいと思います。
 以上です。申し訳ありませんでした。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では、あと2人だけにします。北城委員、どうぞ。

【北城委員】
 資料3の19ページを見ると、定時制・通信制高校は、勤労青少年のための教育機関としての役割だけでなくという形で書いてあります。しかし、見ると、ほとんど就職していない人が大半なので、そういう意味では、就職しないで定時制・通信制高校に入る子供たちに対して、どういう教育をするかというのは、通常の勤労青少年に対する教育機関から、先ほどのチャレンジスクールとかエンカレッジスクールを含めて、別な体系を考えたほうが良いと思います。要するに、通常の全日制で進学を考える高校とは違った色彩の教育を考えていかないと、うまく対応できないのではないかというのが1点。
 もう一つは、今出た倫理とか道徳とか、あるいはコミュニケーション能力というものに関して言うと、大学との接続において、そういう教育がどれだけ大学入試の中で重視されているのかという点です。こうした能力は、ほとんど大学入試では考えられていないとすると、そこに進学を中心とする高校で十分な時間を使っているかというのも疑問です。大学入試に関しては高大接続の中で、こういったことも考えていかないと、机上の空論というか、本音と建前みたいな教育になってしまうのではないかと心配しています。この2点を述べておきたいと思いました。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では、最後、安彦委員、どうぞ。

【安彦部会長代理】
 いろいろなことがありましたけれども、全体としてちょっと方向性に対する私なりの感想を申し上げたいのですけれども。
 まず、コミュニケーション能力ですが、北城委員からお話がありましたが、私も含め、早稲田の大学に入ってくる新入生を見ていて、この数年、本当にコミュニケーション能力が年々落ちていっている。今、北城委員は、それは大学の入試、早稲田の入試がまずいんじゃないかというような御指摘だったんですが、それもありますけれども、しかし年々、ほとんど変わっていない入試の方法でありながら、以前は比較的、これならという力を持っていた学生がいたのに、本当にここ数年、ひどくコミュニケーション能力がなくなっている。現指導要領では、国語で伝え合う能力ということを言っていながら、ほとんどそういうことについて、どれほどの力がついているのかわからない、見えないという状況です。大学に入って、すぐにディベートをやらせようとしたら、周りをうかがって、様子ばっかり見ているわけです。いわゆるKY的な態度が非常にしみついていて、自分が下手なことを言うと何を言われるか、恥ずかしい思いをするんじゃないかみたいな態度で、ずっと周りをうかがっている雰囲気なんですね。
 これはやはり、むしろそういう意味では、一つは高校教育が受験なり何なりで、伝えるということに対する、あるいは表現するということに対して、むしろ中学校までである程度育てていながら、高校がかなりそれを奪ってきているということと、受験体制がでしょうけれども。それからもう一つは、やはり今のもっと大きな社会的な雰囲気ですね。KY的な、大人が持っている文化、あるいは価値観というのがすごく影響を与えているのではないか。これはまた後で言いたいんですけれども、社会参画の態度の各国比較で、子供たちが何々したいという、あるいは関心はあるというパーセントは高いんですけれども、実際には、どうも1人の力では影響を与えられないのではないかとか、変えられるかもしれないという部分については非常に無力感を感じていて、パーセントが低くなる。高校生ですと、中学校よりももっと、本当は社会を見始めているのに、中学生よりももっとそういう力がないのではないかと思えるほど、変えられないのではないかという、パーセントがぐっと下がってしまう。これはやはり非常に社会的な、いわば大人が持っている価値観みたいなものがすごく影を落としているような気がするんです。これが1点です。
 ですから、やっぱりコミュニケーションに対して、産業界がいくら要求していても、社会全体、あるいは大人が本当にそういう力を若い高校生に向けて、いわば前向きに子供たちが何か言えるような雰囲気にしているならいいですけれども、言うと、何かたたかれるとか、言われるんじゃないか、いじめられそうだとかという雰囲気がだんだんひどくなっているという気がいたします。
 2点目は、道徳教育なんですけれども、高校の道徳教育は、やはり小中とは違っていいはずです。先ほども小杉委員からありましたように、世の中が見え始めているわけですから、明らかに経済的な面での道徳性とか、あるいは法教育、法律との絡みでの道徳的な関心とか、そういうものをもっと入れていかなければいけないはずなのに、それが相変わらず小中と同じような学校教育の道徳教育を高校までやろうという発想が強い。この点はやはりしっかりと考えていただきたいし、同時に、全体の、この思春期、青年期ただ中の子供たちに対する道徳教育について、もっと広くトータルに見ていただきたい。
 同時に、埼玉の場合に、地域、家庭の道徳教育と一体になってというところがありましたけれども、これが非常に大きいはずです。道徳教育というのは、基本的に、私は学校だけでできるものではないと思っています。むしろ、学校で一生懸命やっても、外に出てみたら、外からいろいろなことをむしろ、せっかく身についた道徳性をはぎ取られるような思いをさせられている子供が多いわけでして、そういう意味では、建前ばかり言ってもだめな時期に入っていますから、これがそうではなくて、実際の社会が、家庭も地域も本当の意味で道徳性というのを大事にしているんだということを、ちゃんと見せていただかないといけない。そういう意味で、これは一体的に常に考えるべきことであって、どうも学校ばかりに道徳教育を求める雰囲気、風潮はおかしいと前から私は思っております。
 3点目ですが、これはやはり全体の、通信も全日制も含めて、定時制もですが、私の教え子が今、高校の教師をやっていますけれども、社会科で年金を教え始めたら、話がだんだん暗くなってしまって、要するに、子供たちに未来を明るく示せるような状況がないことですね。この点、やはり教える側としては非常につらいと言っておりました。この点は、私たちがそういう希望のない状況の中で、というか、大人がどんなに一生懸命やっているか、どういう工夫をいろいろ考えてやっているかということを、もっと努力の様子を示さないといけないと思うんですね。ただ、印象として何か暗い時代だ、右肩下がりになってしまってどうしようもない、そういった非常に感覚的な印象ばかりを語る。そういうのではなくて、私たちはその中で、いろいろな、あちこちで苦労、工夫をし、努力をしている。そういう姿で、子供たちを前向きにさせていくような雰囲気が社会全体にないと、学校の先生も子供たちに、特にこの時期の子供たちに希望を与えられないわけです。ですから、そういう意味で、何となく、高校生全体に生き生きとした姿を私たちが感じられないでいるということに対して、やはり反省もしなければいけませんし、同時に、やはり若い方たちに大きな期待を持っているということを、社会全体が心からそういう期待を持っているということを示す必要がある。それを示した上で、こういう努力を我々はしているから、君たちも引き継いでくれないかという、そういうメッセージを送らないと、ただ、本当に印象的な部分だけでジャーナリスティックにセンセーショナルに報じられると、ますます今の若い子供たち、この時期の子供たちはマイナス思考にいきそうな気がいたします。そういう意味では、私たち、この世代の子供たちに向かっての姿勢を、もう少しきちっと正しくして、そして、望ましい情報をもっとちゃんと与えていかなければいけないのではないか。この辺がちょっと難しいところだと思いますけれども、全体としてそういう、もっと大きな観点で、この時期の子供に対して何をしたらいいかを考えたいと思っております。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 まだ御発言ある方いらっしゃると思うんですけれども、もう10分オーバーしてしまいましたので、この辺で今日の会議は終わらせていただきたいと思います。今日、御報告いただきました金子研修部長、そしてNHK学園の賀澤校長のお二人には、お礼を申し上げます。ありがとうございました。
 次回以降についてですけれども、今日で一応、問題の洗い出しというか、そういうことについては今日で終了させていただきます。そして、今までの審議で明らかになったのは、やはり高校教育といっても非常に多様で、例えば普通高校と専門高校では違いがありますし、また、普通高校といっても、生徒の学力のレベルによって、また多様な問題がいろいろあるということ、また、高校教育のそうした現状に対して、どういうふうな方策を考えていくかといった際には、国レベルで責任を持って対応すべきことと、都道府県などの設置者が主体的に取り組むことと、また、個々の高校が努力すべきことと、そこでも取り組む主体ごとに課題を整理していかなくてはならないと思います。そうしたことを含めながら、何を優先的にこの部会として議論していくのかということを整理する作業が必要かと思っています。
 それで、4月以降、そういう整理を数回させていただいて、そこで全体でご了解いただいた後に、個別の重要な、主要な個別テーマについて深めていくような審議を進めていく。そういう手順で4月以降、進めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 では、4月以降のスケジュールについて、事務局から御説明があれば、よろしくお願いします。

【小谷教育制度改革室長】
 資料8で書いておりますけれども、次回第7回の高等学校教育部会につきましては、4月16日の13時から15時、旧文部省庁舎6階の第2講堂で予定しております。今、部会長から御指示がございました、次回以降、そういった形で進めさせていただくということでございますので、次回の会議では事務局で議論のたたき台となるような資料も用意させていただきたいと思います。その場合、部会長や部会長代理にも御相談させていただくわけですが、必要に応じて各委員にも個別に、これまで意見の御確認ですとか、その他整理の仕方などについて御相談させていただくこともあろうかと思いますので、どうぞ御協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
 以上です。

【小川部会長】
 では、次回、4月16日から、また第2ラウンドということで、よろしくお願いいたします。今日は、これで閉会したいと思います。ありがとうございました。

―― 了 ――

 

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