資料1 高校教育の質保証に関する高大接続特別部会での意見について

1.高校教育の質保証について

 1)高校教育の質保証一般

  • 高等学校教育部会におけるコアの問題のところで,今まで「確かな学力」という部分が押し出されていたが,その中に知・徳・体ということで,「豊かな心」,「健やかな体」が入ってくるようになり,学力の3要素とともに、社会性を身に付けさせるということが高等学校以下では必要である。
  • 高等学校は入学試験の段階で選別されているが,偏差値が下の方の高校には,アルファベットが書けないとか,九九ができないような生徒もおり,そこに学力のコアを求めて,本当にそれが保証できるのか。特に今の義務教育は学齢主義で,学力がなくとも卒業でき,質保証がなされていないのに,高等学校3年間で急に保証ができるのか。
  • 高等学校において社会性を身に付けさせるといっても,一部では,生徒指導ができないところもある。もっと勉強させる雰囲気を作って欲しい。

 2)高校生の学習意欲・大学教育とのマッチング

  • 高校教育,それから,大学教育に関する部会の方でも共通して出ているのは,学習時間の低下という問題であり,それは,例えば各教科の動機付けができていないのか,あるいは大学入学段階でのマッチングの問題なのか。
  • 高校生の意欲や入学後の大学生の意欲を問題にするのであれば,早い段階に本当に行きたい大学,学部とのマッチングを行い、カリキュラムや本当に自分の将来の生きていきたいコンセプトが一致するような取組を進める方がよい。
  • 高校生の質を考えていくと,学力が低下しているところは本当に心配されるところである。また,高校に入る段階でグループ分けがなされており,入りやすい高校だったから入ったけれども,本当は自分はこんなことをやりたかったというミスマッチが起きていると,大学に入っても,そのまま社会へ出ていっても長く続かない。もう少し子供たちの本当にやりたいものは何なのかというところを見きわめていくことが必要。

3)大学入試と高校教育の質保証

  • 98%が高等学校に進学する現状で,入試でモチベーションの上がる生徒達が何%いるのか。高校教育においても自らが学びたいと思えるものを提供するべきではないか。
  • 大学入試に求められていた学習意欲の喚起,幅広い学びの確保,学力の状況の把握,この三つの機能は高校教育が担うべきであり,この三つが高校教育の質保証である。
  • 選抜の問題で大きいのは,高校教育の質保証という基盤が崩れていること。高校教育修了段階の質保証の問題がもっと安定すれば,大学はもっと楽に入試ができるようになるかもしれない。
  • 大学に入るという最低限のコアの部分の学力の審査というものも必要。それがあれば,3割が勉強しない層の高校生たちも,勉強しなくてはいけないという動機付けにもなる。

4)到達度テストの在り方

  • 例えば工業校長会が作っているジュニアマイスター制度など,その専門高校の生徒の修得状況を証明するようなものが一定の生徒の学習意欲の向上に結びついているということを考えると意味があることであり,到達度テストも生徒の学習意欲の向上につながっていくように生徒の学習の修得状況を証明する機能を持たせるとともに,就職やAO・推薦入試等に生かされるそういう仕組みにしていただきたい。
  • 高校教育のコア部分を何らかの意味で測る際に,どのように大学入試,センター試験,AO・推薦入試その他と分担するか,つなげるか,いろいろな使い方があり得る。もう一つは,高校教育の成果として高等学校学習到達度テスト(仮称)の結果を位置付けるなら,高校卒業段階での教育成果の自己証明書として,就職先での活用ももちろん大学4年間で入学時の学力をどう伸ばし,補うかを学生自身も考えられ,大学側もそれに基づき学習指導できる仕組みも考えられる。
  • アメリカなどでは,K-12とかK-16という形で積み重ねでできることを見ており,日本でも到達度をきちんと見ていく必要がある。
  • 高等学校学習到達度テストのAO・推薦入試等での活用について,これまでの高等学校の多様化の取組に大きな影響を与えないような配意も必要。

2.その他(大学入学者選抜等について)

  • 高等学校の教育にも目を配らなければならないが,やはり大学入試をきちんとやることによって入りたい学生が発奮し,勉強するような仕組みをつくれば,おのずとすそ野にもつながっていく。
  • 大学入学者選抜は大学教育で学ぶことに必要な資質を持っているかどうかを測定するものであり,高校教育と重複する部分は非常に大きいが,それに限定されるものではない。
  • 高校の達成度を測るという趣旨から,高校の学習指導要領に対応するため,現行の大学入試センター試験は、試験科目を学習指導要領の科目と同一にしていると考えるが,センター試験で出題される約30科目のうち総受験者数の0.5%以下しか受験していない科目が10科目程度もある試験を今後も続けていくことが必要なのか検討が必要。
  • 社会が期待するような能力育成をする基盤を大学入試で測るため,基礎がしっかりしていて,汎用的な活用能力を持っているかどうかを測るような入試に変えなければいけない。その中にはパフォーマンス評価の要素も入れなければいけない。
  • 大学入学者選抜を一生懸命やっても,大学側が壁を下げてしまえば,幾らでもいろいろな人達が入学することになるので,大学在学中の教育の仕方のレベルが相当強く関係。

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