資料7-7:岩城節子氏 提出資料

【合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループ(第3回)】資料
重症心身障害児をもつ保護者の意見

平成23年8月18日
全国重症心身障害児(者)を守る会 岩城 節子

1 子どものプロフィール

 強度の仮死で誕生した娘は、脳性まひの重い障害を負って今日に至りました。現在の状態は、視力障害を併せ持ち明るさがわかる程度です。話すこともできません。一人では寝返りも移動もできません。食事はミキサー食です。排泄はオムツを使用し、着替えや入浴などすべてに人の手を借りながら全介助の生活です。

 ただいま娘は32歳、両親と三人在宅で暮らしています。耳が大変よく効き、音楽、歌、話を聞くのが大好きです。人とのコミュニケーションは難しく、親やよほど慣れた人でも娘の快・不快がようやくわかる程度です。性格は穏やかで、いつも笑顔を見せてくれており、楽しい毎日を過ごしております。

 2歳から6歳まで、都内の『あけぼの学園』に母子通園後、12年間の養護学校を経て、重症心身障害児(者)通園事業施設の『あけぼの学園』にお世話になっています。

(1)子どもの成長のために学校教育に期待すること

 重症心身障害児(重度の肢体不自由と重度の知的障害が重複した状態)には、多くの場合、医療的ケアが必要な状態にあります。

 この子らも、学校教育を受けることによって、社会性とともに、豊かな感性が育まれ、自らのパーソナリテイを確立していくことができるのです。

 通常学校に重症心身障害児が通学できることはありがたいことですが、医療的ケアが必要な児童のためには、合理的配慮として、医療的ケアの体制(看護師の配置、教員の研修)が整備される必要があります。しかし、人材確保には困難があるので、より専門性を充実した教育、支援体制をもって対応できる特別支援学校の機能の充実と、教育に期待しております。

(2)早期からの教育支援についての配慮事項

 重症心身障害児の場合には、乳幼児期からの早期療育によって、障害の軽減や発達の支援が行われていますが、就学にあたっては、その経験が効果を上げています。

 一般的には、幼児教育としての幼稚園教育(重症心身障害児には困難)は行うべきです。

(3)教育内容・方法についての配慮事項

 重症心身障害児に対する教育の内容には、生命の維持(たんの吸引、摂食・経管栄養など)、排せつ介助などの生活支援までが含まれるという特別な教育内容であり、医療的ケアとして、「たんの吸引などの行為」が実施される必要があります。このため、看護師の配置と、教職員による医療的ケアの実施が安全に行われるように配慮されなければなりません。

(4)学校における支援体制についての配慮事項

 障害に対応するため次の専門性の確保が必要です。

  看護師の配置
  教員の専門性向上のための研修
  パラメディカル職員(理学・作業療法士等)の配置

(5)施設・設備についての配慮事項

 バリアフリーは当然として、最近では、ユニバーサルデザインによる施設・設備は整える必要があるという意見があります。

 学校は、児童のためばかりではなく、社会資源として誰でも利用できる施設設備を持つことが決して不自然ではないのです。先般の東日本大震災に見られたように避難所に当てられる場合が多いことを考えれば、新しい学校施設を造る場合には、誰にでも優しい学校設備であって欲しいと思います。

 既設の学校では、どういう障害の子どもが来るかの判断もあるので、全てに合理的配慮を施すとすれば、財源がどれほどのものになるか。にわかに整備することは慎重に対応する必要があるものと思われます。

(6)学校外における支援体制についての配慮事項

 重症心身障害児の場合には、通学が自力ではできないので、通学の送迎が必要です。この役割を父兄が行うのではなく、通学バスでの送迎を配慮されることを願っています。

 また、放課後や課外活動には、ボランティアや、福祉関係者と連携しての支援体制をとることが必要であります。

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初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)