学校段階間の連携・接続等に関する作業部会(第11回) 議事録

1.日時

平成24年1月30日(月曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省3階 特別会議室1

3.議題

  1. 小中連携、一貫教育の成果と課題について(聖ウルスラ学院英智小・中学校からのヒアリング)
  2. その他

4.議事録

【小川主査】定刻になりましたので、ただいまから、第11回の学校段階間の連携・接続等に関する作業部会を開催したいと思います。お忙しい中、お集まりいただきありがとうございました。審議に入る前に、文部科学省で人事異動があったということですので、まず、事務局の方から、その点について御報告いただきたいと思います。

【小谷教育制度改革室長】それでは、御報告させていただきます。文部科学省の人事異動につきまして、新たに就任いたしました者のみ、御紹介をさせていただきます。初等中等教育局長の布村でございます。

【布村初等中等教育局長】布村でございます。どうぞ、お世話になりますが、よろしくお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】大臣官房審議官初等中等教育担当の関でございます。

【関大臣官房審議官】関でございます。よろしくお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】教育課程課長の塩見でございます。

【塩見教育課程課長】塩見と申します。よろしくお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】教育課程企画室長の大金でございます。

【大金教育課程企画室長】大金と申します。よろしくお願い申し上げます。

【小谷教育制度改革室長】この外、遅れての出席となりますが、文部科学審議官に山中が、政策評価審議官に德久が就任をしております。以上でございます。
 今、参りました、文部科学審議官の山中でございます。

【山中文部科学審議官】山中でございます。よろしくお願いいたします。

【小川主査】それでは、今日の審議に関する配付資料について、事務局から御説明をお願いします。

【小谷教育制度改革室長】本日の配付資料は、議事次第のとおりでございますが、具体的には、資料1~4、6、7が事務局からの資料です。また、資料番号は付しておりませんが、資料5として、本日のヒアリング資料を2種類、お配りしております。不足等ございましたら、事務局にお申し付けください。

【小川主査】ありがとうございました。では、これから議事に入りたいと思います。前回の作業部会では、今日配付した資料1にもありますとおり、主に教育課程の在り方について御審議をいただきました。今日の検討事項として、資料2にあるとおり、2つございます。1つは、前回から引き続いて、教育課程の在り方について御審議いただきたいと思います。特に、前回は、教育課程の事項の中で、主に最初の丸のところ、教育課程の区切りについて、学年との関わりで、特に4-3-2の区分の問題について、かなり論議が集中しましたので、2つめ3つめの丸についてはあまり御意見を頂くことができませんでした。今日は、教育課程全体を引き続き議論するわけですが、積み残しになっていた、2つめ3つめの丸についても、御意見を頂ければと思います。更に加えて、下の方にありますように、小・中学校教員による乗り入れ指導、教員免許の在り方についても議論をしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。進め方ですが、今日は、教育課程特例校の制度を活用して取組を行っている事例として、聖ウルスラ学院英智小・中学校から報告を頂きます。その御報告の内容を踏まえて、先程、資料2でお示ししたような教育課程の在り方と、小・中学校教員の乗り入れ指導、教員免許の在り方等について、皆様から御意見を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
 では、まず事例報告を行う前に、今日の審議の論点に関わる資料等を、事務局から御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】それでは失礼いたします。前回は、研究開発学校制度ですとか、教育課程特例校制度の概要について御説明いたしまして、それぞれの事例について御審議いただきました。前回、天笠委員に、研究開発学校や教育課程特例校の実施校について少し検証してみては、という御指摘を頂きましたので、事務局において、それぞれから提出されている報告書を調べまして、どのような形で、学習指導要領の特例が設けられていることが多いのかを調べてまいりましたので、御報告させていただきます。資料3-1を御覧ください。資料3-1の1、取組の状況に書いておりますが、研究開発学校については52件、教育課程特例校については32件の報告書を基に、教育課程の特例について調べてまいりました。その教育課程の特例でございますが、大きく分けて2つの類型がございました。1つめが、2の(1)にございまして、こちらが大半を占めているわけではございますが、総合的な学習の時間や教科等の時数を削減して、学校や地域の特性を生かした新しい教科等を設置するものでございます。研究開発学校につきましては、52件中51件。教育課程特例校については、全件において、そのような内容がございました。もう1つのパターンは、指導内容を、小・中学校間、あるいは学年間で、入れ替えたり、移行したりするものでございます。こちらにつきましては、研究開発学校については52件中5件。教育課程特例校につきましては、32件中11件ございました。このような特例と合わせて、小中連携や一貫教育を推進するために、小6と中1の合同授業を行うとか、小学校における教科担任制の導入等、これは、教育課程の特例ではなく、方法ではございますが、このような形での実態がございました。具体的な取組につきましては、資料3-2と資料3-3におきまして、概要を各校について載せておりますが、時間の問題もありますので、それぞれ1件ずつ、御紹介させていただきます。
 まず、総合的な学習の時間や教科等の時数を削減し、学校や地域の特性を生かした新しい教科等を設置するものの例でございます。2ページ目でございますが、こちらは、国立大学法人広島大学附属の三原幼稚園・三原小学校・三原中学校での指定の内容でございます。指定年度は、平成15~20年度までとなっております。以下は、20年度の実施報告書からの内容でございます。こちらでは、幼小中一貫の教育力を生かした社会のグローバル化・高度情報化・超少子化の進展に対応する国際的コミュニケーション能力の育成を中心とした21世紀型学校カリキュラムの研究開発を行うという形で、国際的コミュニケーション能力、共同的創造力、人間関係力の3つを重視して、取り組まれておりました。具体的には、その基準の特例といたしまして、小学校・中学校に係る事項を抜粋しておりますが、小学校1~6年生では、年間70時間程度、また、中学校1~3年生までは、年間105時間ほど時間を設けて、「国際コミュニケーション」という新しい教科を設けられております。その際には、小学校1~6年生まで、70時間程度に相当する分、国語・生活科・総合的な学習の時間の時数を削減されており、中学校においては、105時間程度に相当する分、全ての教科と総合的な学習の時間の時数を削減されているという形でございます。削減される時数については、平成20年度の実績ということで、小学校1~6年生までと、中学校1~3年生まで、このように、授業時数を標準授業時数から削減して実施されているという例でございました。
 続きまして、3ページでございますが、指導内容を小・中学校間、学年間で入れ替えたり、移行したりしているもの。これは、教育課程特例校の長野県上田市立菅平小学校・中学校の例でございまして、平成20年4月から実施をされております。こちらでは、地域の特性を活かして、「スキー科」という新しい科目を新設されておりますが、その他にも、内容の入れ替え、移行を申し上げますと、中学校1年生の理科の「大地の変化」で学ぶ内容の一部を、小学校6年生の理科の「大地のつくりと変化」の方に移行して指導すると。そして、移行して指導した内容につきましては、中学校では指導しないという形を取っております。また、同じく中学校1年生の理科の「植物の世界」で学ぶ内容の一部を、小学校6年生の理科の「植物と日光」に移行して移行すると。こちらも、移行して指導した内容については、中学校では指導しないという形をとられておりまして、この資料には書いておりませんが、このために、小学校理科の授業時数を、標準授業時数からプラス2時間する形で、23年度は107時間実施するという形で取り組んでおられます。このような制度の活用によりまして、既に小中の一貫教育や連携を目的とした教育課程の特例は実施されておりますが、先程も主査からお話がありましたように、教育課程に関連しまして、制度的に改善を要する点があるかということについて、この後御審議を頂ければと思います。
 続きまして、小中連携、一貫教育における教員免許について、御説明いたします。資料4の2ページを御覧ください。ここでは、小学校と中学校の両方の教員免許を有している教員についてまとめております。全教科を担任いたします小学校の教員と特定の教科を担任いたします中学校の教員では、免許状を取得するまでの養成課程も異なっておりますので、小学校教員のうち、中学校の教員免許を有している者は、全体の63%程度。中学校のうち、小学校の教員免許を有している者の割合は、27%程度となっております。参考までに掲げております、中学校と高等学校の両方の教員免許を有している者の割合と比較すると、低い割合となっております。このような状況の中、小中連携ですとか、一貫教育の取組におきまして、免許を持っていないことによって、中学校教員による小学校への乗り入れ指導が困難となっている実態があるというお話を伺うところでありますが、文部科学省においては、既に、各学校段階間の連携を一層強化するために、平成14年度に、隣接校種免許取得のための制度の創設や、小学校等の専科担任制度の拡充のための制度改正を行っております。
 具体的には、3ページ以降を御覧いただきたいと思います。3ページが、教職経験を有する者の隣接校種免許状の取得促進についての内容でございます。これは、平成11年の中央教育審議会答申におきまして、各学校段階間の連携を一層強化する必要性が指摘されたことを受けまして、小・中学校段階においても、児童生徒の発達に応じて、一貫性のある指導を行う必要があることから、相互の連携・接続が重要であって、隣接学校種への理解や教員の複数校種での交流を促進し、現職教員が他校種の免許状を取得できる機会を拡大するために、隣接校種免許状の取得を促進する制度の創設について、提言がなされたということで、平成14年度に制度を創設しております。具体的な内容につきましては、3ページ、下の表1を御覧ください。例えば、中学校の教諭が、小学校教諭の免許状を取ろうとする場合、あるいは、小学校教諭が、中学校教諭の免許状を取ろうとする場合は、それぞれ各科目で、通常黒字で示した単位数を取得する必要がございます。例えば、小学校で見ていただきますと、教科に関する科目が4、教職に関する科目が18、教科又は教職に関する科目が2で、計24ということになっておりますが、3年以上の教職経験を有する教員であれば、その教職経験を評価することによって、青字で示した数まで要取得単位数を軽減することを認めておりまして、4が0、18が12、2が0、計24単位から12単位に軽減されているということであります。
 教職に関する科目の具体的な内容につきましては、4ページに記載しております。この平成14年に創設した制度におきましては、要取得単位数の軽減と併せまして、大学での単位取得のみならず、都道府県の教育委員会などが開設する免許法認定講習ですとか、大学が開設する免許法認定公開講座等によっても、そこでの単位取得を大学の単位取得とみなす措置が講じられておりまして、現職教員が働きながら隣接校種の免許を取りやすい仕組みとなっております。この免許法認定講習等の開設状況については、平成24年1月現在で、下の四角囲みにありますように、91大学等、そして、開設科目数は816科目となっております。
 このような制度の活用実績でございますが、5ページを御覧ください。それぞれ科目区分ごとに、平成14年から21年までの実績を表にまとめております。小学校教諭が、中学校教諭の免許状を取得した件数については、平成21年度で85件、制度創設時からの累計では588件。そして、中学校教諭が小学校教諭の免許状を取得した件数につきましては、平成21年度で504件、制度創設時からの累計では、3,746件となっております。
 続きまして、6ページを御覧ください。こちらが、小学校等の専科担任制度の拡充についての資料になります。この専科担任制度とは、中学校教諭の免許状を有する者が、小学校において、担当する教科等の教諭等になることができる制度です。先程御紹介いたしました平成11年の中央教育審議会答申におきまして、小・中学校間の連携・接続が求められ、小学校における専科指導の充実も含めた指導方法の在り方等について研究を進めることが課題とされたこと、あるいは、平成14年度から実施された教育課程におきまして、総合的な学習の時間が導入されるとともに、国際化や情報化等、多様な課題への対応を踏まえつつ各教科の指導を行うことが求められまして、小学校においても、教科に関する専門分野について深い理解を持ち、多様な教授技術を備えている教員の確保が必要であり、そして、その積極的な活用を促進するということで、それまで音楽等の実技教科に限定されておりました専科担任制度を改めることが要請されたこと、そのような状況を踏まえまして、それに対する対応として、平成14年に本制度の拡充をしております。
 具体的には、7ページを御覧ください。まず対象教科でございますが、小学校の全教科、外国語活動、総合的な学習の時間に拡大をしております。中学校の免許状との対応関係につきましては、左下に載せております表を参照いただければと思いますが、こちらに掲げておりますのは、想定し得る対応関係ということでありまして、具体的には、都道府県の教育委員会におきまして、免許状の教科に相当する教科等をどうするかという判断を行っていただくことになっております。そして、この実績ですが、中学校教諭免許状所有者による小学校専科担任数につきましては、平成21年度で3,679人となっております。
 最後に、8ページを御覧ください。今後の取組の方向性についての資料でございますが、こちらは、昨年の1月31日にまとめられました、中央教育審議会の、教員の資質能力向上特別部会の審議経過報告の抜粋でございます。教員の免許、あるいは養成、研修等につきましては、今、こちらの特別部会で精力的に御審議いただいております。その議論の過程では、四角囲みの中にもありますように、子どもの心身の発達に応じて一貫性のある指導を行うためには、教員が隣接する学校種においても指導できる力量を、養成段階において身に付けることが必要となることから、例えば、小学校教諭免許状と中学校教諭免許状を併せ、「義務教育免許状」とすること等、複数の学校種をまとめた免許状創設の是非について、今後検討を進めていく必要がある、とされております。本日の御審議におきましては、小中連携、一貫教育を推進する観点から、このような義務教育免許状等に関して、どのように考えるかといった御意見、あるいは、教員免許に関する、更に考えられる措置につきましても、御意見を頂戴できればと思っております。以上でございます。

【小川主査】ありがとうございました。後で、この資料3、4についても考えたいのですが、審議に入る前に、今の資料3、4の御説明に関わることで、何か確認したい点や御質問等はございませんか。よろしいですね。それでは、これから、聖ウルスラ学院英智小・中学校について、御報告いただきたいと思います。よろしくお願いします。

【伊藤聖ウルスラ学院英智小・中学校長】おはようございます。聖ウルスラ学院英智小・中学校校長の伊藤でございます。よろしくお願いいたします。本日の資料3-3の30番に記載されているものでございます。それでは、本日、提出しております資料に沿って、説明させていただきたいと思います。まず、本学院で小中連携を導入した経緯とねらい、について説明をさせていただきます。本校は、16世紀に、聖アンジェラ・メリチによって、初めての女子教育のための修道会が開かれたということから始まります。全世界71か国165校に広がっております。時代の変化が激しい21世紀の今日、漫然と伝統教育に縋りつく教育姿勢では、学校教育を衰退せざるを得なくなる、という事実がございました。本校では、この点に気付くと同時に、教育改革の背中を押してくださったのが、理事長の梶田叡一でございます。幼稚園から高校までの15年間の教育の宝を生かしきれていない教育活動に、新たな教育改革の風を起こすことの必要性に迫られていたという現実があります。折しも、当時の構造改革特別区域法の制定、カリキュラム・マネージメントの実践等は、時代のニーズを読む教育改革への願いに対する火付け役を果たしてくれたと感じております。私たちが、子どもの成長に目を向け、その背景にあるものを検証しつつ教育マネージメントする教育情熱を、教育科学を駆使して、具体的教育設計に落とし込む、教育アクションが必要だろうと考えました。教育の連続性ということに注目をいたしました。
 学校運営における小中連携の範囲でございますが、小学校から教科担任制を導入いたしました。セカンドステージから始まる、教科担任制の導入でございます。ただし、ファーストステージにおいても、英語科、図工科、コンピューター科、宗教科など、一部導入しております。
 児童生徒の交流ということですが、これは、後の資料にもありますが、4年生の10歳の壁、中1ギャップ、高校入学生徒の学力問題などを、連続性の教育で成長エネルギーへ変容させられないだろうか、ということがキーワードでございました。学年としての体系的・体験的な学習を組み込みつつ、ステージとしての成長を確認する教育の実現の中に、児童生徒の交流の在り方を検証し続けております。それから、小学校課程・中学校課程、それぞれの入学式がありますが、これを一体化させ、小学校課程・中学校課程入学式。それから、卒業式の方も、小学校課程・中学校課程卒業式を行ってきました。ただし、卒業式においては、9年間の義務教育というところから、また、校舎一体型の教育が24年度から始まるというところで、24年度から義務教育卒業式としての式典を行っていきたいと考えております。このステージ教育によって、様々なことが展開できるということが、実践の中で分かってきております。週1回のファーストステージ朝礼、セカンドステージ朝礼、あるいは、リーダー学年のリーダー研修など、様々なことが様々な形で成果を上げてきていると、お伝えできるのではないかと思います。例えば、セカンドステージの英語リステーション・スピーチコンテスト等も1つの事例であろうと思います。ステージ教育の意識付けとしましては、4年生、7年生には、進級認定式も含む、二分の一成人式、立志式などを行っております。子どもたちの成長の節目を大切にする教育、これは確かに、教育効果を上げるものだと思っております。続きまして、2ページの丸3、教員の兼務発令ですが、校長、教科担当教員、これは、言語技術科、英語科、社会科において、教員の兼務発令が出ているものでございます。それから丸4、小中一貫した教育課程の編成については、折り込みの資料1を参照していただければと思います。教育課程の基準の特例を実施して、9年間の教育課程を作成いたしました。
 それから、小中連携の推進体制とその評価でございます。小・中学校における校長の数ですが、これは、1人体制で行っております。最初から1人ではございませんで、小学校の校長、中学校の校長がおりましたけれども、人事異動の中で、小学校の校長が退任しまして、特例校になってから2年目でしたが、ここで1人体制を取ろうという学校法人の理事会での決定により、私が、小・中学校、高等学校1人で校長を執り行っております。もちろん、そこには、副校長という立場の者を置いてのことではございますが、1人体制というのは、やはり、効果的となる時期があると考えます。いつまでも、ということではないのではないかと思っております。ただ、小・中学校においては、校長1人制の方が、より効果的であると思っております。副校長については、小学校と中学校の校舎が別地域にあるため、キャンパスごとに副校長を配置いたしました。ただし、平成24年度より校舎一体型の教育が行われますので、小・中学校副校長1人という形になります。それから、特別の教育課程に基づく教育の実施については、実施体制として、資料2に示しましたように、小・中教育研究推進委員会及び英智公開研究会実施委員会を設置し、研究を重ねております。
 それから、学年区分ですが、4-3-2制度を採用いたしました。資料3に、その4-3-2制度をチャート化したものを載せております。時代の急激な変化と子どもの成長過程を見据えた効果的教育の科学的実証的研究開発をしたい、ということで、子どもたちの成長を様々な角度から検証し、本学院では、4-3-2制度を採用いたしました。「4」、ファーストステージ、4年生までです。それから「3」、セカンドステージ、中学1年生を7年生と呼称しております。「2」は、中学校の2年・3年、本校では8年生・9年生と呼称しておりますが、サードステージと名付けております。サードステージは前青年期、セカンドステージは思春期、そして、ファーストステージを児童期というような形で、子どもたちの成長を区分けし、連続的な教育を展開しようという試みでございます。サードステージの方は、本校に高校もございますので、サードステージと高校教育を併設学校という形で連続性の教育を展開しております。それから、教育課程上の特例活用については、資料4に、特別の教育課程の編成について示しております。それから、23年度の教育課程、公立と比較した教育課程表を載せております。本校では、土曜日も学校の日と決めております。もう1つの資料を御覧いただきたいのですが、基本コンセプト、基本概念を示しながら、次のページに、これを実現するためのコンセプトを掲げました。その2、土曜授業等による、授業時数の確保ということです。先取り学習として、授業において、小学校で中学校の教科書を使用しながら学習を行っております。
 その次、施設一体型校舎についてですが、1月24日に完成いたしまして、24年度から、校舎一体型の小中義務教育の学びが始まります。8年前に、小中連携(4-3-2制度)の教育設計に取りかかった時に、校舎一体型を目指して企画いたしました。セカンドステージ教育は、この教育改革のキーワードであることから、必要不可欠と考えた次第です。すなわち、セカンドステージの最上級生である7年生を、中学1年生という位置付けをしますと、キャンパスが違うということで、様々な弊害が出てきておりました。これは、設計の段階から分かっておりましたので、校舎一体型の校舎を建てられたということは、私どもの学校教育が一歩前進したということになります。ただし、一体型の校舎になるまでの7年間は、重要な準備期間であったと評価しております。すなわち、小・中学校文化の独自性を保ちつつ、新しい9年間の義務教育学校文化を生み出すための必要性と、新教育文化を創り出させる自信を、教師に持たせたいという期間でもあったと思います。24年度の新生活のために、残された3か月を慎重な準備期間として、教師の希望と志を持って、子どもたちに語りかけていきたいと、今、教職員たちは、小学校・中学校一体となって、その作業に入っているということです。
 7、異校種教育による学習指導、生徒指導、部活動指導の有無について。小中学校授業研究会を設置し、毎年公開研究会を実施し続けたことが、教師たちの教育の連続性の在り方を認識できる絶好のチャンスとなったと振り返っております。この小・中学校、9年間の学校を開設してから、毎年1回、公開研究会を実施し続け、今年度で7回目を終わりました。この中で、やはり教師たちの教育の連続性の在り方ということを、深く学ぶことができたのではないかと思っております。24年度より、セカンドステージ、思春期の一つの教育の在り方として、5年生、6年生、7年生が、必修クラブ活動を週1回実施しようという計画が出来上がっております。よって、部活動は、サードステージの8年生からの実施となります。ただし、7年生にとっては、やはり地域の中学校の総合体育というところもありますので、7年生の中には、原則を曲げて、という子どもたちも出てくるかと思います。
 8、小中連携の取組の特色、成果及び課題です。私立学校として、公教育の一旦を担う教育開発は、財務経営と教育経営の学校経営をリードする理事会が教育ベクトルを示し、リードし得るか否かというところに帰結すると考えております。もちろん、これを支援する県の教育行政の在り方にもよることは大であります。この2つの内容が、本校としては、大変恵まれていたと実感しております。そして、何よりも、子どもたちの可能性の開花にかける教育創造のパッションを、現場の教師たちが持っていたこと、そして、子どもたちの教育に喜びを感じているということが大きいのではないかと思っております。学校現場は、年齢別、性別、経験別、文化別等、様々な人々によって構成されているのですが、我らの学校づくり、という意識で教育に情熱をかけられる、仕掛けをしていくことが大切であると気付いております。成果としては、子どもたちの成長が顕著であります。一方、何が必要なのか、ということも、学校評価から見えてきております。これらについては、課題として改善中でございます。課題の1つとして、今お話を聞いていて大変勉強になりましたが、教員養成というところでございます。この教員養成につきましても、先程説明がありました、3年間の実務経験を生かして、ということで、中学校教員が小学校課程の教職免許を取るという複数の存在が確認されております。課題の2、兼務発令による給与整備が急がれるところであります。校舎一体型になった時に、様々な給与整備の課題が出てきておりますので、急ぐことが望まれます。それから、義務教育9年間の新しい教育文化を構築するという考え方を求めております。教育理念をベースとして、一体型の校舎による新教育文化創設のため、校長の諮問機関として新教育プロジェクト委員会を設置し、稼働し始めております。校長は、義務教育職員室文化の構築と名付けました。この文化を創り出し、変容成長する教職員の姿が、私にとっては大変楽しみでございます。高等学校教育18歳の志を高く掲げる、いわゆる尚志を実現するための義務教育の教育成果につなぐ、9年間の義務教育の成果をつかみたいと願っております。5、教員採用に関する問題がございます。やはり先程の説明にもありましたように、小学校・中学校の教員免許、更に加えて、幼稚園の教員免許を持つ教員を採用したいという願いがあり、また、高校まで一貫した教員としての学びを積み重ねてきた、教員養成大学出身の教員を採用したいと思っております。単に、教員免許を取るための教科勉強だけでは、義務教育の連続性の成果を上げられるものではないと思います。様々な角度から、大学時代に学びを深め、教員になることが願いであると思っております。それから、もう1つ、私学という点では、保護者の経済力の継続性ということが、大変難しく、途中で離れなければならないという現状も、昨年の東日本大震災等からも増えてきていると感じております。7、これまでの7年、これからの7年という分水嶺に立つ者の意識を、教職員の中にしっかりと根付かせて行きたいと思います。
 それから、教育課程における制度的障壁の有無ですが、これは、特に問題を感じておりません。教員免許による制度的障壁は、教員養成大学においても、小中高の教員免許が取得できることが望まれると考えております。
 それから、小中連携が地域とともにある学校づくりに資するかどうかという問題ですが、これは、本来一貫性のあるべき小学校教育と中学校教育が断絶されている側面を持つことによる諸問題の解決や、確かな学力向上を図る施策が求められていると考えております。本校として、これに応えるために、独自の工夫を施した教育課程を編成し、本校の様々な特色を活かしつつ諸問題の解決を図った総合的な一貫教育計画を策定しました。この教育課程は、人間的な成長と確かな学力向上を目指す小中一貫教育を実践する上で必要と考えられたものであり、教育制度上途切れることのない仕組みが、子どもの成長の円滑な持続をもたらし、個性の安定した発展を期することができるとの見地から立案されております。児童生徒の成長段階の変化に対応した教育の提供により、確かな学力向上と人間成長の教育の充実を図ることができるのではないかと見据えております。また、小学校と中学校の教育内容が高密度に連携されることにより、それぞれの教員の研鑽の場が増え、教育力の向上にもつながるとの観点も有するものであります。この新しい教育課程は、当時の文部科学省からの御指導を頂いた上で認められ、「みやぎ私立学校教育特区」の実施主体として、本学院が平成17年度から実践を始めております。引き続き、地域社会の御期待を頂戴していると考えているのは、教育視察の御訪問を受ける機会が大変多くなったことによります。平成18年度には、宮城県の公立中学校の校長研修会に呼ばれ、発表講演をさせていただきました。平成23年度、宮城県公立高等学校私立高等学校校長会にて、研究発表をさせていただきました。また、少子化と公立志向の強い本県にあって、本校の在学児童生徒の増加現象は、地域社会の賛同の現れだと考えられると思います。
 12、9年間の義務教育学校の制度化に関する考え方についてでございます。知性あるもの、ホモサピエンスというように、教育においては、生涯連続性がなければならないのではないか、特に、幼小中高においては、教育の高密度の連続性の必要性があると考えております。
 それから、本校の教育連続性を実現する制度と、その構築の年譜ということで、資料6に載せておきましたので、御覧いただければと思います。現在の制度の中で育っている子どもたちの評価については、資料5に示させていただきました。教育改革の経緯ということで、資料6に、本校がこの教育に取り組んだ経緯を示しております。
 二つ目の資料の方ですが、3ページ目に、教育課程編成上の視点ということで、小学校課程・中学校課程を、連続性をもたらすということで、英智型というものが描かれておりますが、本校では、このような形で展開しております。それから、ファーストステージ、セカンドステージ、サードステージという考え方を、そこに示しております。
 7ページには、聖ウルスラ学院英智小・中学校の人間形成の構想図を示しております。このように考えながら、教育課程を作り上げたというところです。
 8ページ目は、我々のキリスト教ミッションスクールとしての考え方ですが、キリスト教的人間観に基づく、品格のある人格形成をどうすればいいのか、ということで考案したサークルでございます。人格形成は、知性と心と理性のバランスある育みによって生されるものであります。では、そのためには、どのような教育が必要なのかということで、知性を育むということでは、抽象的、概念的、総合的認識という精神的能力であるならば、ここには、分析力、思考力、判断力、論理力、表現力の育成が必要であると。そのために、私共はランゲージアーツという言語技術の教育を独立させて、教育を展開していくというものです。
 それから、次の9ページは、やはりホモサピエンスとしての自己統制のメカニズムを、子どもたちにしっかりと教育しようと、品格ある教育とは、どうあるべきなのかということを考えております。
 10ページ目のところは、何故4-3-2と区切ったのかということでして、子どもたちの直観的思考力から、論理的・概念的思考力に移行する9歳・10歳期に注目し、授業の作り方でも参考にしようということであります。
 11・12ページ目では、文科省が示しておられる知識基盤社会、21世紀型スキル、これらを意識しながら、子どもたちの教育に携わりたいと思っているというところでございます。これで終わらせていただきます。

【小川主査】ありがとうございました。では、今の報告の内容について、皆さんの方から何か確認したいことがあれば、お聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。

【向山委員】どうもありがとうございました。大変興味深く聞かせていただきました。この資料3ページについて、2つお教えください。3ページ8の課題3のところですが、3行目に、名付けて「義務教育職員室文化の構築」というものを目指されたというお話がありました。2ページの中にも新しい文化を創りたいということがあったわけですが、職員室を一体化して、小学校・中学校の先生が同じ職員室でお仕事をすると、その中で新しい文化が構築されているという想定で、何かお考えがあるのだろうと思いましたので、少しお聞かせください。2点目は、同じ3ページの10「教員免許の制度的障壁」という項目の中で、上の課題とも関係するのですが、教員養成大学において、小・中・高の教員免許が取得できることが望まれるというお話でした。これは、現在でも教員養成大学で取れるわけで、1人の学生が、小・中・高3つとも取ることも可能だろうと思うのですが、恐らく、先程のお話の中で、教科を学ぶだけではない、学びを深めるためという御説明がありましたので、そのような意味での、例えば、児童生徒幼児たちの発達段階、あるいは学校種別ごとの生活指導等々を含めた教員免許と考えられたのだろうかと自分なりに考えたのですが。以上2点について、教えてください。

【伊藤聖ウルスラ学院英智小・中学校長】では、2点目の方からお答えします。今、お話いただいた内容のとおりでございます。そのような形で学ぶ大学があれば良いという考えでございます。それから1点目ですが、学校法人の中に、幼小中高というものがずっとあったのですが、やはり、小学校は小学校、中学校は中学校というように、キャンパスが違っていたということもあるのでしょうが、独立性が非常に強いところでございました。これが、小中一体になった時にスムーズにできたのは、教員構成が変化期であったということだと思っております。すなわち、これまでの教職員たちが定年期を迎えて、お辞めになっていくと、そのような人事構成が変わっていく時であったわけです。それで、新しいものに抵抗なく進められる教員の数があったということです。ただ、そのような形で小中学校一体型の学校づくりを始めましたが、やはり、教員たちは、小学校の子どもたちはこうしなければならない、中学校なのだからそうなのだと、単純に小学校課程と中学校課程の教員たちが、子どもたちと一緒にドッキングした形だけでは、問題は残っていくだろうと思いました。最も手っ取り早いのは、やはり授業研究です。授業というのは、連続性の中で展開されていきますから、授業研究をすることによって、中学校教員たちが、あるいは高校教員たちが、小学校の子どもたちの成長段階に触れる機会が多くなってきました。そのようなわけで、小学校・中学校という独自性を乗り越えて、一体型というところで新しい文化を創ることが必要なのだということを、7年間で徐々に教員たちが抵抗なく受け入れられるようになってきたわけです。小・中学校の教職員たちの職員室、これは小学校も中学校もなく1つになりましたので、その中で、どのような問題が引き起こされるだろうか、どのような問題を解決しておかなければならないだろうかと、そのようなことを、理念の実現のために、様々出てくるだろう問題を整備しておこうということで、昨年から、このプロジェクト委員会が稼働し始めたというところです。

【小川主査】ほかには、よろしいでしょうか。
 では、この後の、教育課程の在り方、小・中学校教員による乗り入れ指導、教員免許の在り方等に関わって、御発言等々の中で、御質問等があれば、その際に出していただければと思います。どうもありがとうございました。
 では、今日のテーマに入っていきたいと思います。再度確認ですが、資料2を御参照ください。今日の会議の中では、初めにお話したように、前回から引き続いて、教育課程の在り方、小・中学校教員による乗り入れ指導、教員免許の在り方等について御意見を伺いたいと思います。どちらからでも良いのですが、後1時間程時間がありますので、前半部分では教育課程の在り方を中心に御意見を頂ければと思います。いかがでしょうか。

【無藤委員】聖ウルスラ学院の取組は、非常に先導的だと思います。ほかにも、研究開発学校その他で、小中の連携や一貫、いろいろな事例があったのだろうと思います。研究開発学校なり教育課程特例校なりでかなり工夫されている面があるわけですが、現況の学習指導要領の枠組みで、かなり充実してやっていける部分が多いと思います。その上で、具体的にやはり特例でないと困ることについて、細かいことまで、事務的に洗い出せるのではないかと思います。その上で、私はできる限り、現場の教育委員会など学校で選べる仕組み、どちらかでなければならないということでなく、その方が実情に合うように思います。このような小中連携、一貫で私も関わりがある場合があるのですが、例えば、実情ということで言えば、小中の子どもの移動と言いますか、学区の重なりがスムーズに行く場合と、そうでない、幾つもの公立小学校が公立中学校につながっていく場合。それから、東京その他、私立中学への進学が盛んな場合には、小学校で先取りして中学の教育内容に踏み込む、別の中学に行った時に、その保証をどうするのかというと、非常にややこしい。それらに対して、中学まで同じ子どもたちが教員と一緒にいる場合。事情が相当違いますので、やはりそこは、実情に合わせた在り方が求められると思います。今の制度の枠組みでも、小中の先生方が一緒になって、いろいろな指導の工夫をするということは、可能だと思うのですが、何とかそれをもう少し後押しできるように。今、全国的に、小中の連携ということは、非常に広がっているとは思いますが、教育内容であるとか指導の在り方、生徒の情報の共有については、お互いに時間が取れないとか、あるいは校舎や敷地が離れていると、なかなか教えられないという問題もあります。やはり、先程の職員室の文化というところでしょうか、なかなか歩調が合わないところがある。それは、実は、一歩でも二歩でも踏み込めば、数年経てば、改善できる。このような実践を全国に広げていかなければならないと思います。

【小川主査】ありがとうございました。ほかにはどうでしょうか。今の無藤委員のお話は、前回からの議論にもあったと思うのですが、小中連携、小中一貫を進めていくために、もう少し制度的な改善を前向きに検討してみてはどうか、という御趣旨の発言だったと思いますが、ほかにどうでしょうか。

【角野委員】教育課程に関しては、基本的には、現行の学習指導要領をベースに、それぞれの学校で議論がなされるのだろうと思っております。今日の報告でもございましたが、7年間かけて、このカリキュラム、樹形図とも言えるような詳細なものを作り上げられている。これと、現行の学習指導要領の上に立ちながら、各校の特色を出すための特例制度なりを活用していると。
 その意味では、小学校・中学校というのは、恐らく小中の段差だけでなく、小学校段階の中でも、先程は抽象的という表現をされていましたが、そのような段差を乗り越えなければならない部分が出てくる。また、小中においても、お互いの接続するところに、何らかののりしろの部分がありまして、そののりしろの部分に、各市区町村や各学校がスペシャルなものを付加していこうとしている。この時には、いわゆる不易なものとしての今日的な課題、あるいは、現代の社会的な課題に対する挑戦のようなもの、そのようなことで、スペシャルなカリキュラムを付加したり、更なる指導の一貫性、子どもたちの成長の一貫性に一本筋を通していきたいという時に、新たなカリキュラムが生まれてくると思っております。
 そういう意味では、いかにそれらをスパイラルして、中学校に歩んでいくかということが大きな問題だろうと思っております。様々なことに果敢に挑戦する場合に、制度として行使するようなものが、例えば、授業時数の問題でも、特例校制度というものが現状では必要である。確かに、学校現場では、年間総授業時数を確保するために苦しんでおります。35週7日、実際には、37~38週ぐらいあって、各学校では、様々な工夫をしながら時間を捻出しています。そのような苦労をしながらではありますが、やはり必要な制度というのは行使するべきだと思いますので、私は、現行の上に立って、更に特例校制度等を上手く活用すれば、各学校は独自のカリキュラムを作っていける、あるいは独自の指導観や評価観を構築できるのではないか、と思っております。

【小川主査】ありがとうございました。ほかにはどうでしょうか。

【村上委員】小学校と中学校の接続というところで、そのつなぎをどうしていくか、ということが重要であると思っております。今、御発表を聞いたり、これまでのお話をお伺いしたりして、接続というところについては、1つは、小学校と中学校の系統性というものが、大切なことであると思っております。まず、小・中お互いの教育課程について、理解するということ。例えば、小学校4年の理科で習ったものが、中学校1年で出てくる。そのようなものもありますので、子どもたちは忘れていきます。そこで、4年で習ったものが中1で出てくるので、中学校ではどのように指導していくかなど、そのようなことが進めば、教育課程をどうするかということにもつながりますので、お互いにカリキュラムを理解することが大切だと思います。そして、学力観、指導観を一貫したものにするということ。6年間と3年間の9年間で、学力観と授業観を一貫したものにすることが、接続の系統性を大切にするということであると思います。
 2つめは、小中の独自性を重視していくということ。例えば、学級担任から教科担任になっていきますけれども、発達の中で、専門性を高めていく上で、必要なことであると思います。それを、今の子どもたちの現状を見て、いつ頃から実施するのが良いのか、ということを考えていくと、今日もお話がありましたように、発達による学年の区分というものは必要だと思います。それが4-3-2、5-4というところもありますが、区分は必要であると思っております。
 これら2つのことが、小中一貫教育の中で必要だと思いますし、これは、どこの学校でも、現状を考えると、基本的にはしなければならないことであると思います。どこの学校でもやっていける仕組みを作っていかなければならないと思っております。実際に、分かっていても、なかなか動かないという状況もありますけれども、先日、学校訪問をした際に、中学校の校長先生にお話を伺ったのですが、京都市では、確認プログラムやジョイントプログラムという取組(テスト)をしておりまして、その結果を各学校に知らせていく。ある中学校の校長先生は、学校の結果を見て、今の教育状況なども考えられて、中学校では、まだまだ一斉講義型の授業が多い、それでは駄目だ、やはり教育課程のところに力を入れてやらなければならないということで、指導主事の指導を受けて、授業改善をやっておられます。その中で小学校との連携は必要であると。やはり小学校と中学校で、お互いに考えてやることで、子どもの力を更に伸ばせるのではないか、ということをおっしゃっています。中学校の校長先生がそのように考えられると結構進みますので、教育委員会としても、中学校ブロックでこの考え方を広げられるようにしたいと思っています。先日、貝ノ瀬委員もおっしゃったのですが、学校が、教員が主体的に取り組むようにしていくことが大事だと思います。その1つとして、コーディネーターを配置して、小中に1~2人ずつぐらい、指導的な役割の人を配置して、小中一貫の重要性と役割を明確にして進めていくことで、取組が進んでいくのではないかと考えているところでございます。

【小川主査】ありがとうございました。はい、長谷川委員どうぞ。

【長谷川委員】小中一貫教育の教育課程でございますが、学習指導要領に準じて行う、あるいは、特例を導入して小中一貫教育を行う、これ一つには、教育の目的があるのだろうと思うのです。例えば、国際感覚を子どもたちに身に付けさせたいと、先程の三原小中の例もありましたが。あるいは、長野県はスキー科、あるいは市民科とか、特別なものを入れて、子どもたちが身に付けると。これを小学校から中学校段階までやることによって、そういった「目指す教育」を展開したいということは分かるのですが、公立学校で、果たして、あれほど効果があると言われて鳴り物入りで導入された総合的な学習の時間をどんどん削っていって、あるいは、小学校・中学校で感性を育てていかなければならない音楽の時間等を削って、そのようなことをやっていくことは、いかがなものかという思いで私は見ております。 呉市の場合は、いわゆる小中一貫教育をやった時には、小学校から中学校に上がる時の、いわゆる中1ギャップというものが非常に顕著でありまして、中学生の自尊感情が育っていない。ですから、暴力行為、いじめ、不登校というものが増えている。この現状の中で、小中一貫教育、中学生と小学生を交わらせることによって、教育効果と言いますか、まさに子どもらしい中学生、健全な心を持った中学生を育てることができるのではないかと、そのような目的でやっております。
 つまり、今、小中一貫教育を全国で展開されておりますが、目指す目的によって、随分と違ってきていると思います。この一番の目的、課題となったのは、小学校の先生と中学校の先生の考え方の違い、いわゆる縄張り意識と言いましょうか、私はそう思いました。ところが、今の発表を聞きますと、このようなことをおっしゃいました。「新しい教育文化を創り出す」と。いわゆる小学校教育と中学校教育の分離というのは、明治以降に小学校制度ができ、やがて、戦後、中学校制度ができ、小・中の学校教育が隔離された中で行われてきております。そういう制度あるいは感覚を払拭して、小学校・中学校の先生が、義務教育として9年間育てていくという感覚に持っていきたいが、今の40~50歳の先生方の感覚をそこに持っていくことが、本当に難しいことであると感じています。新しい教育文化を創り出していく、その中に無意識のうちに身を置くことができる教員たちが増えた時に初めて、この小中一貫教育というものが、普通の教育として行われるようになるのだろうと思います。現在、そのために、教師の交流をどんどんやっていく中で、随分と意識を改革することにおいて成果が出てきております。
 呉市の現状としては、カリキュラムについては、各教科において、いわゆる中学校での課題を明らかにして、義務教育9年間を見据えて、小学校からの年間計画をずっと立てていこうとしています。特に、5~7年生の中期の子どもたちのために、いわゆる乗り入れ授業をやる。そして一部ではあるが、教科担任制を導入する。そのことによって、中学校教育とはこのようなものだ、中学校ではこのような教え方をするんだ、ということを小学校の先生が見る。もちろん、次の免許制度に関わってくるのですが、小学校と中学校で兼務発令をかけて、そしてTTの形をとっている。そのようにしながら、中学校の教え方、小学校の教え方をお互いが学んでおります。19年度から進めておりますけれども、前にも御報告しましたが、例えば、中1の暴力行為が、19年度では40件あったものが22年度には21件に減っている、いじめは、31件であったものが10件に減っている。そのように推移していることを見れば、小中一貫教育の呉市における目的、中1ギャップをなくし、中学生に自尊感情を持たせようということの成果の表れだろうと思います。そのように、目的をきちんと整理して、どこに持っていくかということを整理する必要があると思います。

【小川主査】ありがとうございました。ほかにはどうでしょうか。では、井上委員お願いします。

【井上委員】本日は、いろいろと文部科学省の方で調べていただいた各校の取組を見て大変興味深かったのですが、今、長谷川委員がおっしゃったように、国際感覚を養う教育が小中連携の9年間の中で必要なのだろうか、という疑問が私にも若干あります。疑問というよりも、私どもの経団連は、最近よく新聞紙上で、グローバル人材の育成で最前線に立っているような報道をされておりますが、やはり高校生から大学にかけて、職業により近くなった段階で、あらゆる職業分野において、このグローバル化ということを意識し、自分の学ぶべきものを考えてもらいたいと思っておりまして、むしろ、高校から大学にかけて加速させるような形が恐らくよいのではないかと考えております。現実に、経団連でも奨学金制度を幾つか持っておりますが、高校2年生対象のもの、これはインターナショナルバカロレアを取るための海外留学に対する奨学金、大学3年生から4年生にかけての交換留学に対する奨学金、そして研究者向けとして、大学院向けの留学生奨学金を持っているわけですが、どちらかと言うと、高校から大学にかけて、国際感覚を高めるために使っていきたいと考えております。小中学校の連携の中で、そのような国際感覚を身に付けることがいけないというわけではないのですが、少し早いのではないか、もう少し有効な時間の使い方があるのではないかと考えます。その理由は、やはり、より基礎的なものをしっかりと学んだ上で、日本のことをまずしっかり理解し、その上で自分たちが羽ばたく場所を見つけてもらいたいということです。それが国際的な舞台ということであれば、そのような方向があるかもしれませんし、もう少し地道な、地域に根差した仕事になるのかもしれませんが、そのように羽ばたき、着地するところを高校や大学で考えるためには、やはり基礎的な勉強を義務教育の段階でしっかりとやってほしいと、思っております。もちろん、各地域の取組は非常に興味深いと思ったのですが、果たして、その子どもたちが、その地域にずっといて、その地域の実情に合わせた職業を選ぶかとなると、疑問に思うわけです。大学進学の状況も考えますと、都会に出てくる可能性が非常に高いわけですから、そうすると、地域に戻って地域に貢献できるような形を取れるかどうかは、わかりません。子どもたちの自由度ということを考えると、もう少し普遍的で基礎的な教育を、この連携の中で整えてもらうことの方がよいのではないかと考えます。

【小川主査】ありがとうございました。では、酒井委員お願いします。

【酒井委員】初回の議論に戻ってしまうのですが、小中連携のねらいがどこなのか、という確認が必要なのだと思います。先ほども何名かの先生方がおっしゃったように、小学校と中学校の間のつなぎをどうするのかということや、いわゆる中1ギャップの問題をどうするのか、ということに焦点を当てて考えていく必要があると思っておりまして、その観点から何ができるのか、現行の範囲で何ができるのかをまず考える必要があると思うわけです。学習指導要領、教育課程全体を改訂するということは、いろいろなところで影響が出てくると思います。それは最後の手段として、その前に、現行の範囲でいろいろとできることがあるだろうと。今のお話の中で、お互いに授業を見合うですとか、交流し合うですとか、いろいろなところでの工夫、情報交換を密にするですとか、そうした先に、教育課程の問題があると考えておりまして、そこを飛ばして教育課程の問題に踏み込んで議論するというと、順番の問題という意味では、まだ先にやるべきことがあるのではないか、と考えております。以上です。

【小川主査】ありがとうございました。では、野木委員お願いします。

【野木委員】小中一貫の目的ということについてお話しされているのですが、やはり確認をしっかりとしなければならないと思うのです。ただ、それについては、既にこれまででほぼ答えが出ていて、中1ギャップ、肉体と精神の不統一とか、そのようなところで4-3-2が良いとか、大体4年のところで切るということが良いのではないかというように、ほとんど回答が出ているのではないかと思うのです。そのようなことを踏まえると、かなりいろいろなところで効果が出ている。もちろん、効果が出ているところのみが発表されているのかもしれないのですが、その効果というものに納得がいくわけです。ですから、その部分は、既に回答が出ている。それを更に全体に進めていく、あるいはそのような選択肢を当たり前に取ることができる、そういう制度を作っていくことが、この作業部会の役割なのではないかと思うわけです。ですから、その議論はこれまでも随分とやってこられているので、それよりも、どうやって進めていくか、どうやって全体に持っていくかということが重要なのではないかと思います。先ほど、村上委員もおっしゃっていましたが、押し付けられる制度というのは、絶対に嫌であるわけです。それが絶対に良いと分かっていても、恐らく皆反発してしまう。ですから、いろいろな選択肢を作って、その中から教育委員会等が選択できるようなもの、幾つかのメニューを作っていくということが良いのではないかと思います。
 もう1つは、ずっと思っていることなのですが、小中連携というものが良いということは、大体分かったと、しかし、大きな問題として、先生が足りないこと、あるいは、場所が離れていることによる移動の難しさがある。ここにこそ、ITの活用を是非やっていただきたいと思うわけです。今、ネットによる授業は、小学校では授業と数えられないとか、そのようなことを耳にしました。大学等は講座がいろいろございますが、小学校や中学校では、授業にはならないという話を聞きました。そのような点で、今はこのような時代ですから、授業になり得るような特例等を考えていただければと思います。

【小川主査】今の小中一貫の取組があるレベルまで達していて、それを更に進めるために、制度的な見直し等々が必要であるということは、議論のとおりでして、それに関わって、いろいろな立場からの御意見があったと思います。もう少し時間がありますので、あとお二人の方の御意見を伺って、まとめた上で次のテーマに移っていければと思います。では、向山委員と天笠委員お願いします。

【向山委員】今日のテーマが教育課程の在り方と教員免許の在り方ということですので、それに関わる話をしようと思います。まずは、小中一貫教育も含めて、我々が今後の学校教育を考えていく時に大前提になるのは、大変な少子高齢社会をどのように克服していくか、ということだろうと思います。現在、約1,000万人いる義務教育の子どもたちが、10年後には1割減って900万人程度になってしまうわけです。一人一人のマンパワーを上手く開発していかなければ、我が国は持続していけないわけです。そのような意味では、この教育課程も、小・中学校の中で、無駄な部分、重複している部分というものを再度検証して、省いて、それを新たな資質を育てる時間に配当していくということは、基本的な戦略として捉えなければならないのだろうと思います。このようなことは、これまで文科省もいろいろとやってきたわけです。今ちょうど、国立教育政策研究所の工藤部長もいらっしゃいますが、14~15年前でしょうか、工藤部長が社会科の室長の時に、小・中学校の社会科について、どのように小・中学校でカリキュラム編成をしていって、重複した部分を削除していって、いかに良いものを作っていくかということを、2年程かけて報告していただいたわけです。しかし、その後も、例えば、学習指導要領の作成会議になると、どうしても小学校は小学校部会で、中学校は中学校部会でと、作業チームも大変ですから、その中だけで進めていくことになってしまうというところがありました。今後、小中一貫教育の成果も踏まえて、次の改訂の時には、その辺をもう少し連動させていけないだろうかと思います。
 今日は、聖ウルスラ学院から貴重な御提案を頂いたので、この事例を基にしてお話をさせていただきますと、資料のA3のページの中に、社会科の聖ウルスラ学院のカリキュラム概要とあるのです。聖ウルスラ学院は、F2という2年生のところから、「仙台市のようす」ということで、現行3年生を1年前倒しで入れているわけです。上の方を見ますと、S5は5年生、S4は4年生ですが、4年生で、いわゆる産業学習という我が国の農業生産等々、かなり抽象的な学習を入れていて、5年生は産業学習のうちの残りである工業を取り入れて、しかも歴史を5年生で入れているわけです。我が国の戦後の、例えば社会科で見ていくと、歴史というものは、50年も前から6年生でやってきているわけです。例えば、このようなカリキュラムを作った時に、中学校の先生は、もしかすると初等の早い段階でいろいろなことをやってくれて有り難いと思うかもしれませんけれども、逆に小学校の側から見ると、まだまだ具体的な状態を入れた方が良いという意見もあるかもしれない。いろいろな議論の中で、聖ウルスラ学院は、このような1つのものを作っていったのだろうと思います。例えば、先ほどの教員免許の方にも関わってくるわけですが、中高の方から見ると、小学生の心理学的な理解というものは、もしかすると弱いのかもしれない。具体的な教材をもっと配置してほしいとか、このような教材をやってほしいというのは、小学校の方の教員が思うかもしれない。中高の方は、もっと系統的な知識、1つのものをやっていこうと言うかもしれない。その辺のところで、恐らく小学校の教師、中学校あるいは高等学校の教師が、意見を戦わせ、より良いものを作っていくと、そこに小・中学校の一貫教育の、あるいは新しい職員室文化の創造という良さがあるのだろうと思います。そのような議論が、これまで以上に、今は局地的なところではあると思いますが、いろいろなところでなされていくと、教育課程については、小学校は小学校、中学校は中学校というところで、なかなか乗り越えたものが出てこられなかった、そこを乗り越えて、次の10年を考える1つの方向、と言うと少しオーバーですが、何か突破口が見えてくるのではないかと思います。以上です。

【小川主査】ありがとうございました。では、天笠委員お願いします。

【天笠委員】前回も4-3-2カリキュラム云々ということについて、話が出ましたけれども、私はこれは、現場からの実践を通して培われた、いわゆる実践知の集積とでも言うのでしょうか、そういうものが、この4-3-2カリキュラムの姿ではないか、という受け止め方をしているわけです。それを、どのようにこの場で受け止めて意義付けるか、あるいは、これから先を見通した時に方向付けるものとして捉えるかどうか、ということが一つのポイントになると思っております。その意味では、この4-3-2カリキュラムに代表されるような小学校と中学校の連携・接続の取組というのは、随分といろいろな姿を見せながら、先へ行っている状況にあるのではないか、ということが私の認識です。そのような点からすると、むしろこの場での議論が遅れを取っているような、後追いのような形になっているような印象を持たざるを得ないと。再度、その辺りのことも含めて、先の見通しを持って、現場から発信されたシグナルを受け止めて、こういう実践がより発信されるような、培われる環境づくりについて、どうしていったらいいのかということを議論していく必要があるのではないかと思っております。
 その点では、先ほども目的云々とありましたが、小中連携・一貫は、目的が極めて複合的であり、複雑であり、それぞれの自治体や地域関係者によって、いろいろな思惑が絡んでいるということがあります。ですから、カリキュラムの研究と言えば研究に、小中の不登校の改善対策と言えばその部分に光が当たりますし、極めて複合的、多面的な形で状況が展開しているということで、その面だけを切り取って、事柄の是非ということも、議論として可能ではありますが、総合的・複合的に捉えて議論を進めることが大切であると思います。その中には、被災地において、学校再建に当たって、小中の一貫というところに1つの方向性を求めて、プランを出そうとしている、あるいは進めようとしている動きがあるように、それぞれの地域、自治体での取組、環境づくりを積極的に支援していくような方向性で議論を進めていくというのが、また1つの方向ではないかと考えております。
 そうした場合に、私がポイントになると思うことは、1つは学習指導要領であり、1つは教員免許ではないかと思っております。今の学習指導要領については、向山委員が言われたことと同様の認識です。今回の学習指導要領は、合冊にはなりましたけれども、そのプロセスは小学校と中学校で、それぞれ作っていったものを合わせただけということですから、9年間全体を通して検討するという点では非常に弱い。それが、研究開発学校で様々に出てきている背景になっているのではないかと思います。その点では、次回の改訂の際に、9年間を通した学習指導要領をどのように作成していくことが良いのか、その辺りについて議論が必要なのではないかと思っております。
 それから、やはり、教員免許が1つの大きな鍵を握っているのではないかと思っております。既に、義務教育免許状について云々ということは、先ほども御説明があったのですが、一体どこまでその話が具体的に進んでいるのか。掲げただけなのかもしれませんし、これまでの成果や実績の数値も上がっていましたが、その程度のものなのか、それを更に促していくためには、何をどう考えていけば良いのか、その辺が教員免許状をめぐっての1つの課題なのではないかと思います。当然、それは、教員養成の在り方とも関わらざるを得ない部分があるのですけれども、次は、教員免許についての議論になるかと思いますので、またその部分で意見を述べさせていただければと思います。どうもありがとうございました。

【小川主査】前回から、教育課程について、かなりいろいろな議論がありまして、多くの委員の方々に、それぞれのお立場から御意見を伺っているところです。重要なテーマですので、まだ御発言されておらず、どうしてもその件について御発言したい方がいらっしゃれば。では、清水委員、新井委員ということでお願いします。ほかには、いかがでしょうか。もしなければ、このお二人の発言で、1の柱、教育課程の件については、今日は閉めさせていただきます。

【清水哲雄委員】教員免許の件をお話しようと思ったのですが、最後に出ましたので、1つだけ短く。教育課程の在り方を、この場でかなり議論するべきだという意見もあったかと思うのですが、その場合、現況の6歳で小学校に入るという点は変えないという前提なのでしょうか。それは、国際的に見れば、6歳である必要はなくて、それぞれの国の実情でやっている、ヨーロッパでは、ボローニャ協定のように、大学と大学院の改革の中に、これを押し込んで、全体の教育政策を考えているはずだと思うわけです。この4-3-2で切るというのは、とても良いアイデアだと私も個人的には思っておりますが、スタートをどこにするかによって、全体の流れが違ってくると思うのです。ここでは、前提をどこに置くかという問題をもう少し大きな目で見なければ、大学院までつながってくる話だと思います。ですから、この会議では、現状のスタートは維持しようという前提を作っていただかないと、さてどうするかという問題があると思います。
 最後にもう1つ、私は私立学校の代表なのですが、私立学校で小学校を持たない、中学校からの私立は、どう対応するのか、少数民族の悲哀を味わうことになるのではないかと思っております。

【小川主査】ありがとうございました。では、新井委員どうぞ。

【新井委員】この教育課程の区切りのところで、前回からのお話を聞いていますと、やはり中1ギャップをどのように乗り越えるかということが、各地域の事情によって違うので、その乗り越え方については、弾力的に話し合えば良いのではないかと思っております。もしも、4-3-2が主流になるとか、5-4が主流になるような方向になっていくとすれば、一方で今の小中の6-3という考え方自体や、前提をどちらに置くかということを確認して議論をしていくこと、小中の免許についても、全体を9年で考えるのかなど、教育自体をどのように考えていけば良いのか、その前提をどこかで確認しながら議論していくということが非常に重要だと思います。
 それと弾力的な運営をしていく時に、仮に4-3-2が良いと思ってスタートしたら、上手く行かないので5-4にするというわけにはいきませんので、導入時点でどのような配慮が必要かということを考えていかなければならないと思います。

【小川主査】ありがとうございました。初回にも、先ほどの酒井委員からの御指摘のような御意見があったのですが、いろいろな点に関わって、皆さんからお伺いした話を整理しますと、1つ大きな捉え方をすれば、小中連携、小中一貫と言っても、やはり義務教育という段階での取組で考えた場合に、あまりその独自性や特色性を強調して、教育課程の編成等々が大胆に進んでいくということはいかがなものかと。そのような教育課程の課題に入る前に、もう少し、中1ギャップ、小1プロブレム等の問題等々について、小中段階でやることがあるのではないかということで、小中連携、小中一貫を更に推し進めるための次のステップとなるような制度的な改善や見直しには慎重に対応すべきであるという御意見があります。もう一方では、小中連携・一貫教育の様々な成果ということを考えた場合には、むしろそれを、一歩でも二歩でも後押しするような制度的な仕組みや改善があっても良いのではないか。次の学習指導要領の改訂では、小中連携・一貫の成果を踏まえて、小中の壁をもう少し乗り越えるような、学習指導要領の見直しも視野に入れても良いのではないか。少し簡単すぎる整理の仕方かもしれませんけれども、そうした御意見があるのではないかと思います。この部会では、そのどちらかを多数決で決するというやり方はふさわしくないと思いますので、大方今のような御意見があるということを踏まえながら、まだ時間がありますので、その辺のところをどのように整理して詰めていくかということについては、もう少し皆さんの御意見を伺いながら、審議を継続させていただければと思います。
  時間が20分ほどしかなくなってしまったのですが、もう1つ、教員免許等々の問題について、少し御意見を伺えればと思います。では、無藤委員お願いします。

【無藤委員】2つほどあるのですが、1つは、免許についてです。隣接校種等を含めて、養成課程で取れるようにすると、これも1つあると思うのですが、それとともに、現職教員になってから隣接の免許を取るということも、広がりとしてあると思います。私は、それに加えて、免許は取らないけれども、十分に隣接校種等について知るという意味での研修もありうるわけだと思います。要するに、養成校として大学で取得するということと、現職で免許を取るということと、研修で実際的な知識を得ることの3段階と言いましょうか、そのように考えていくべきだと思います。現実に、大学の4年間で例えば幼小中高の全てを取ろうということは、恐らく不可能ではないかと思いますし、大学教育として、望ましくない部分もかなり出てくるように危惧しております。それから、例えば、免許の更新等で今30時間というものがありますが、そこでももう少し、そのようなことを念頭に置きながら、特定の免許を持っている、担当している方が、どのようなことが必要か、というある種のモデルのようなものを提示されて、10年かけて必要なところを加えていくとか、あるいは、小、中、幼稚園、高校まで広げたどの部分とか、どの教科とか、そのようなことは、はっきりとさせた方が良いと思います。私は、常々、小学校なども、小学校の指導を6年間一律のものと扱うよりは、低学年・中学年・高学年と分けた方が、指導技術としてかなりレベルが上がるとも思っております。そのように幾つかの組合せを明示した研修、マッチングが必要だと思います。もう1つ付け加えですけれども、先ほどの議論を聞いて少し思うのですが、私どもの作業部会に与えられた任務は、学校段階間の連携・接続等ですが、全体としての目的は明確だと思っておりまして、要するに、義務教育9年間で教育すべき事柄、これを確実に保証するために何をするかという際に、恐らく幾つかの障害があって、この小中の間も、いろいろなところで見られる大きな障害の1つだろうということだと思います。その意味で、大目的はそこにあるということです。
 もう1つは、先ほど、教育課程特例校や研究開発学校の例が出たわけですが、そこで、それなりに良い成果が出ているということでした。ただ、私は、やや冷たく言えば、そのようなやり方を全国に広げた時に、成果が出るということはあまり保証できないだろうと思っております。それは、過去50年間の様々な学校教育の試みが示しているということがあるからなのです。要するに、先進校というのは、頑張ってやっているわけですよね。そのようなところでの取組を広げた時に、それほど頑張るなと言っているわけではないのですが、効果というのは、大体薄まるのです。ですから、濃くやっているところも、全国でやると、あるようなないようなものになるという懸念があります。それを防ぐにはどうすれば良いかということを、よく考えなければならない。その意味では、個別事情に配慮して選ぶということも1つですけれども、もう1つは、やはり、それぞれの先進的な事例の具体的なプログラム、細かいことを含めたやり方を、はっきり出していかなければ、結局はできないということになります。
 もう1つは、時間や校務など、効率化をセットにしていかないことには無理だと思います。私は既に、小中連携等々でいろいろなところに行ったり、現場の方とお話ししますが、相当の苦情や愚痴が出ています。小中の授業を見合いましょうと言うわけですが、時間が足りないし、面倒であるし、ただでさえ授業時間が増えるのだからと、そのような苦情も影にはかなりあります。それは当然だと思いますので、特に、文科省のやる改革の方向というのは、仕事を増やすのではなくて、仕事の中身のスクラップアンドビルドと言いますか、片側で減らしていくなり、校務を効率化するなりしていただけなければ、根付かない。流行って終わってしまうと思いますので、そのようなことを含めての検証と普及が求められると思います。

【小川主査】ありがとうございました。では、清水委員お願いします。

【清水哲雄委員】私の手元に、独立行政法人科学技術振興機構が平成22年度に行いました「小学校理科教育実態調査」というものの集計結果があります。これは、恐らくネットで見ることができるかと思いますが、これを見ておりましたら、問題点を整理するのに良いのではないかと思いましたので、ほんの一部ですけれども、御紹介させていただきます。これは、理科に限定したものですが、小学校の先生のうち、どのような教育を受けて小学校の先生になっているか、ということなのですが、この中で最も多いのは、教育系の大学を出ている人で、理数系以外の先生が53.57%で半数以上を占めていて、理科・数学・算数を専攻して先生になった方は非常に少ない。理科が10%、算数・数学を専攻した人が6.8%程度しかいない。このような状況の中で理科が行われているのだから、大変だということになり、専科の先生を入れなければならないという議論に当然なるかと思うわけです。それはそうだと思い、ずっと見ていきますと、そう簡単に事が進んでいないことが分かってきました。
 例えば、理科の専科の先生を未配置にしているところ、専科のみの配置のところ、支援員を配置しているところ、支援員と専科を両方配置しているところでそれぞれ分けまして、児童に、将来理科の勉強を活かした仕事をしたいですか、ということに関しては、ほとんど差異がないのです。つまり、専科を置くか置かないかということでは、全く差異がない状況になっております。
 それから、例えば、理科の授業がどの程度分かりますか、ということに関しても、今申し上げた未配置、専科、支援員、支援員と専科、それぞれパターン分けをしても、ほとんど差異がありません。つまり、専科の先生を上手く入れて、免許状を更新してやっても、本当にそれで何とかなるのかということを表すデータは、実は生まれてきていないわけです。更に進めた方が良いという意見も私は分かります。しかし、もう少し何か加えたカリキュラムの問題とか、今の議論の流れで言えば、小学校・中学校両方を捉えたカリキュラムの中で、小学校では何をするべきか、その中で、この部分には専科を入れるということについては、もう少し踏み込んだ議論をしておかなければ、単に免許制を更新してやることで済むのか、実際にはそれほど簡単ではないのだということが、今回これを見て分かりました。先ほど、最初の資料の説明の時に、専科を持っている先生がかなり多いというデータがありましたよね。資料4のところで、お話をしていただきました。例えば、2ページに、小学校の教員のうち、中学校の教員免許を有している者の割合は、全体として62.8%であると出ておりました。しかし、5ページを見ると、その中の数学・理科に関して言えば、人数的に非常に少ない数だということが分かります。ですから、免許状を持っているかどうかという問題、専科の問題も、それだけではなく、もう少し複合的に考えていかなければ、免許状の在り方だけを議論しても、問題は簡単には解決しないのではないかと思い、少し紹介させていただきました。もし必要であれば、別途にお配りした方が良いかと思っております。

【小川主査】では、今の資料については、少し事務局の方と相談させていただきたいと思います。では、天笠委員お願いします。

【天笠委員】教員養成の立場からすると、例えば、学級経営という授業の場合に、小中学校いずれの教員を目指すにしても、小学校1年生から中学校3年生まで全体を扱うような形の授業を進めていくことも、あるいは、小学校の教員を目指すなら小学校だけで、中学校の教員を目指すなら中学校だけで、という選択肢もあり得るわけなのです。私は、9年間を対象にして授業を展開していった方が、小中いずれの教師になるにしても、両方を俯瞰できるような在り方が大切なのではないかと思っております。しかし、現状は、小学校と中学校を、それぞれ判然と分けて、特化して進めるべきだという方向のみが強く出過ぎており、ここで議論している9年間を見通せる教員養成ということに逆行する方向で動いています。やはり、義務教育に携わる教員の育成には、9年間の子どもの発達段階や9年間を通した物事の見方考え方ができる教員の養成が大切であり、カリキュラム開発が展開されなければならないのではないかと思います。それが、現行の制度の運用上でもできると思っているのですが、小中を判然と区分しようという舵の切り方については、もう1度、この会議の議論を踏まえていただいて、検討をお願いできないかと思っております。

【小川主査】ありがとうございました。では、赤沼委員お願いします。

【赤沼委員】今日の資料4の2ページのところに、現状が紹介されておりましたが、その表題を御覧になってお分かりのように、中学校教員のうち小学校の教員免許を有している者の割合は、全体で27.5%、それに対して、参考で示されている中学校教員のうち、高等学校の教員免許を有している者の割合は、全体で78.9%となっております。この現実は、中学校の学校現場では、明らかに授業の中にも表れています。先生たちは、高校になるとこのようなことを勉強するから、中学校ではここまで押さえておかなければならないという意識があります。中学3年生については、高校になるとこのような勉強をするからと発展的内容も扱ったりします。つまり、中学校の教員は、高校の方のカリキュラムも含めて、指導内容について、かなりの理解を持っているわけです。ところが、小学校の内容については、残念ながら、高校のそれに比べて、理解が足りないように思います。
 それに対して、小学校の先生のうち、中学校の教員免許を有している者は、全体の69.8%ということですので、小学校の先生は、逆に中学校の学習内容についてのかなりの理解を持っているのだということが、この数値から想像されます。
 今、議論になっております、小・中学校教員による乗り入れ指導ですとか、教員免許の在り方ですけれども、乗り入れ指導というのは、現実に本校でもやっておりまして、かなりの手応えは感じております。しかし、ここで問題となるのは、免許がないのでTTでなくてはならないということです。ティームティーチングでなければならない、単独で授業ができないのです。したがって、小学校の先生がそこにいて、T1、T2で打ち合わせをしながらやっている。これが結構、時間的にも非常に厳しく、なかなか乗り入れ指導が実現できない1つの壁になっております。それが制度上の壁だとすれば、隣接免許の取得というのは、私としては大切なことであると思っております。現職の教員がそれを取得するための単位の軽減などは進んでおりますけれども、例えば、免許更新時にもっと簡単に――と言うと語弊がありますが――、できるような形にできないか。それから、教員養成段階で、義務教育免許というお話も出ているようですが、大学側の取得するための単位数が異様に多くなると、今度は教職を取れなくなる学生も出てくるように思いますので、そこの考え方も深めなければならないと思っております。
 もう1つ、それでは、実際に小学校中学校両方の免許を持った教員が、単独で授業を行っても、中学校と小学校の教員で文化の違いがかなりあるものですから、効果的なのは、私は人事交流であると思います。新規採用教員の人事交流の中で、中学校で採用されても何年かは必ず小学校で働くとか、そのようなことがあることによって、お互いの文化の違いというものも乗り越えられるように思いますし、また、元の学校種に戻った時の効果が非常に大きいのではないかと思っております。

【小川主査】ありがとうございました。では、角野委員お願いします。

【角野委員】少しだけ教育課程について触れたいのですが、学校教育現場にとって教育課程とはどのようなものかと考えた時に、恐らく、教科書の中の教科指導の組み立てとは捉え難くて、例えば小学校では、教科指導の中で生徒指導もやってしまうと。よく言われているように、問題解決のための対応策を生徒指導とする捉え方がありますが、大切なのは、やはり学校教育課程全体の中で、いわゆる子どもたちの自己指導能力を上げるような生徒指導、自分の将来を展望するような進路指導であると。教育課程全体の中に、それは組み込まれているわけでありますから、当然、各学校においては、独自のカリキュラムが編成されてくると。ですから、例えば、今日的な問題、今日的な社会的ニーズを取り上げていることについて、これは別物だというようなことではないのかな、というのが私の捉えなのですが。 このような特色ある教育課程を進めていく中で、先ほどから免許の問題が出ておりますが、大学での学びについては私は分かりませんが、現実問題として、乗り入れ授業をした時に、指導力や授業力があるのかどうかと考えた時に、免許の問題なのかどうなのかということが結構あります。免許法の改正が平成14年ですから、その時に大阪で250名ぐらいが兼務発令で異動しました。今もそれぐらいのメンバーが乗り入れをしていますが、最初は中小が五分五分でしたが、今は、中から小へというものが9割です。小学校の教員は、免許併有率が60数%ありますが、中学校での教科指導、実は授業中の生徒指導に対応できていない者が、不適合を起こしているという現実があります。私は、どちらかと言うと、免許法の改正は、それはそれでやっていただければ良いのですが、OJTの中で指導力向上のための学びの場と、OJTの中で実践力を培う小中による授業研究というものが、現実的な、歩み出す最初の一歩ではないかと思っております。
 ただ、現状を是認するとするならば、このような乗り入れをサポートしていくのは、やはり教育行政だろうと思います。行政の財政力によって、非常勤が配置できない、教員を措置できないという問題が多々あるわけですけれども、例えば、国の方から、指導と工夫改善等の加配が提供されておりますが、この間随分と専科教員等で幅広く活用できるようになってきたことは、事実なのです。ただし、まだまだ縛りがありますから、このような小中一貫に関して、コーディネーターが必要であるという話も出ておりますし、いわゆる何らかの措置で授業軽減が可能となるような柔軟性を持たせていくこと。都道府県というのは、リーディング事業として、このようなことを打ち出しますけれども、数年後には立ち消えになってしまうという問題がありまして、最終的に、市町村が一義的に責任を持つ必要が出てきますので、恒常的に制度として支援するならば、現在の定数をどうするか、あるいは、現在都道府県に配置されている基本教員の中でどう活用していくか、これは、都道府県の知恵の出しどころではないかと思っております。

【小川主査】ありがとうございました。では、最後、酒井委員お願いします。

【酒井委員】短時間でまとめます。確かに、全ての校種の免許を持っている教員の方が、優秀と言いますか、知識が豊富で指導力も高いことが予想されるということは良く分かるのですが、ただ、そうしていきますと、教員養成系大学、あるいは学部のみの養成にどんどんなっていく、開放制が形骸化していくことは十分予想されるわけで、そうしますと、各教育委員会での採用倍率が下がっていき、かえって質の低下が起きるのではないか、いろいろなところで影響が出てくるのではないかと考えます。ですから、最初に無藤先生がおっしゃったように、3段階で、採用後に異種免を取らせる、あるいは研修で隣接校種についての学習をさせるということでも、十分対応できるのではないかと思います。

【小川主査】ありがとうございました。他にも御意見があったとは思いますが、時間になりましたので、この辺で終わらせていただきたいと思います。教員免許の問題については、教員免許制度だけにとどまらない課題が多くあるということを改めて皆様の御意見から確認できたように思います。作業部会としての整理については、また改めて御議論させていただきたいと思います。
 今日の部会はこれで終わりたいと思いますが、次回以降の予定については、配付資料にあるとおり、次は2月21日、第13回が3月13日という予定になっておりますので、御確認いただければと思います。それでは、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。


―― 了 ――

 

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