学校段階間の連携・接続等に関する作業部会(第10回) 議事録

1.日時

平成23年12月26日(月曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省3階 特別会議室1

3.議題

  1. 小中連携、一貫教育の成果と課題について(船橋市立若松小・中学校及び品川区からのヒアリング)
  2. その他

4.議事録

【小川主査】定刻になりましたので、ただいまから第10回の学校段階間の連携・接続等に関する作業部会を開催したいと思います。年末のお忙しい中御出席いただきまして、ありがとうございます。今日は御承知のとおり大寒波がありまして、新幹線が雪で遅れております。そのため、京都の村上委員、新潟の國定委員、広島県呉市からの長谷川委員が、1時間程遅れて御出席ということですので、御了解いただければと思います。
 それでは、本日の配布資料の確認を事務局からお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】本日の配布資料は、議事次第のとおりでございます。具体的には、資料1から6、資料9が事務局からの資料。資料7、8が本日のヒアリング資料でございます。また、本日は机上ファイルと、教育課程についても議論が出ていますので学習指導要領等の資料も出させていただいております。こちらの机上資料につきましては、次回以降にも使わせていただきますので、後程、元の位置に戻していただければと思います。どうぞよろしくお願いします。

【小川主査】ありがとうございました。
 では、これから議事に入りたいと思います。前回の作業部会は、今日配布しております資料1の「本作業部会における検討事項」のうち、主に「小中連携、一貫教育の推進体制の在り方」、また「校地・校舎、通学区域面の制約を克服する工夫の在り方」について御意見をいただきました。
 今日は前回に引き続いて、先行の事例として船橋市立の若松小・中学校、品川区教育委員会から、それぞれ発表していただきたいと思います。
 今日は、主に資料1の検討事項のうち、検討していただきたいものは、資料2にありますとおり、教育課程の在り方、小中連携、一貫教育の推進体制の在り方を中心にして行っていきたいと思います。前回も「小中連携、一貫教育の推進体制の在り方」について御意見を伺ったのですが、時間もそんなにありませんでしたので、今日はあらためて教育課程の在り方を中心にしながら、そういう推進体制の在り方についても御意見があればお伺いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、事例発表の前に事務局から今日の審議事項の教育課程の在り方と推進体制の在り方が関わった資料、実態調査等について、御説明いただきたいと思います。

【小谷教育制度改革室長】資料2を御覧いただきたいと思います。ただいま小川主査からお話がございましたように、本日は前回の検討事項でございました、「小中連携、一貫教育の推進体制の在り方」に加えまして、「教育課程の在り方」について御審議いただければと思います。具体的には、教育課程の在り方につきましては資料に明記しておりますように、教育課程の区切りとしての学年区分は、どのような理念に基づいてどうあるべきか、といったこと。あるいは、今日、事例発表でお話しいただきますけれども、教育課程上の特例を活用した方が、小中連携、一貫教育の目的の達成を図りやすいのか、又は学習指導要領の範囲内においても小中連携、一貫教育の目的の達成は十分に可能か、といった点。また、教育課程に関連いたしまして、小中一貫教育、連携教育の推進の観点から制度的に改良を要する点があるか、といった内容につきまして、御審議いただければと思います。
 それでは、資料3を御覧いただきたいと思います。これは本作業部会で小中一貫の議論を開始するときに事務局からお示しいたしました実態調査の中で、教育課程に関連する部分を抜粋したものでございます。2ページを御覧ください。2ページにございますように、市町村の教育委員会に聞きましたところ、小中連携を推進するために、小中9年間を通じた教育課程の編成方針を定めているところは、全体の3%と少なく、「定める予定」と回答したところを合わせても1割に満たない状況でございました。3ページを御覧ください。教育課程の実施に関連いたしまして、小中連携を推進するために、教科担任制を実施した学校数について見ますと、1年生から学年が上がるにつれて増えていき、6年生では1割の学校で実施したことがあるとのことでございました。実施校数及び教科といたしましては、1、2年生では音楽・体育・図工。3、4年生では音楽・理科・図工。5、6年生では音楽・理科・家庭という形になっております。4ページを御覧ください。小中学校の連携を推進するために、市町村の主催により、小中学校の教員が合同で参加する授業研究のための会議等を恒常的に設けている教育委員会。これについてお聞きしましたところ、4割近くございまして、設けている場合の実施回数でございますが、年間1~3回といったところが多いようでございましたけれども、中には御覧いただきますと25回以上と、非常に多くの回数を行っているところもございました。5ページ以降のスライドでございますが、これは前回お示ししました小中連携、一貫教育の導入の狙い、成果、課題について再掲をしているものでございます。説明は割愛させていただきます。
 続きまして、本日は教育課程の特例を活用していらっしゃる事例についてヒアリングを行っていただきますので、教育課程の特例について御紹介させていただきたいと思います。資料4を御覧ください。本日お越しいただいております、船橋市立若松小学校・中学校は、研究開発学校制度を活用されております。この制度は2の趣旨にございますように、現行の学習指導要領によらない教育課程の編成・実施を認める研究開発学校を指定し、新しい教育課程、指導方法等についての研究開発を行うものでございます。原則として3年間指定いたしまして、案件にもよりますが年間200万円程度の予算措置を行って取り組んでいただきます。平成23年度は67件、199校指定しておりますけれども、このうち小中連携に関する取組を行っていらっしゃるのは、9件34校となっております。続きまして、品川区が活用されていらっしゃいますけれども、もう一つの特例である、教育課程特例校制度であります。こちらは、文部科学大臣が学校を指定しまして、学習指導要領等によらない教育課程を編成して実施することを認める制度でございまして、そもそも構造改革特別区域制度から生まれた制度でございまして、平成20年度より現行の形となっております。研究開発学校とは異なりまして、設置者の自由な発案で教育課程の特例について申請していただいて、文部科学大臣が一定の要件を満たしていると認めるときに指定するものでございます。その要件といたしましては、こちらに書いておりますが、学習指導要領において全ての児童又は生徒に履修させる内容として定められている内容事項が、特別の教育課程において適切に取り扱われているということ、また、総授業時数が確保されているということ、また、児童又は生徒の発達の段階並びに各教科等の特性に応じた内容の系統性ですとか、体系性に配慮がなされているということ、また、保護者への経済的な負担への配慮その他の義務教育における機会均等の観点から適切な配慮がなされているということ、また、児童又は生徒の転出入に対する配慮等の教育上必要な配慮がなされていること、というふうになっております。こちらの教育課程特例校制度の指定でございますが、今年度は180件2,511校にものぼるのですが、このうち独自の教科の新設等によりまして、小中連携を推進する取組の数は32件778校となっております。この数は英語科の新設などの外国語教育の充実のみに係るものを除いても、これだけの数にのぼっているという実態でございます。
 続きまして、資料5を御覧ください。これまでの作業部会で事務局から御紹介いたしました、あるいは事例発表していただきました学校の教育課程の区切りとしての学年区分について簡単にまとめさせていただいております。こちらを御覧いただきますと最も多く見られるのは、小学校4年生と5年生までで区切って、また小5から中1までを一つのまとまりとして捉える、4・3・2という組み方が多かったようでございます。しかし、三鷹市のように各中学校区ごとに設定されている、あるいは下から2番目の欄になりますが、熊本県の産山村のように小6と中1のつながりに着目して5・2・2と区切っていらっしゃるところもございました。これらは、教育課程の特例を活用していらっしゃるところもあれば、現行の学習指導要領の範囲内で実施されているところもあったということです。
 続きまして、資料6を御覧ください。本日御審議いただきたい内容として更に具体的に申し上げますと、1に記述しておりますように、現行の教育課程の特例制度では不十分な点があるのかという点でございます。先ほど御紹介いたしましたように、教育課程特例校制度では、要件を満たしていれば理論上は、(2)にマル1からマル4まで書いてございますが、小学校段階と中学校段階の学年間における指導内容の移行ですとか、小学校と中学校の指導内容の入れ替えですとか、あるいは小学校から中学校への指導内容の移行、先送りということだと思いますが、あるいは中学校から小学校への指導内容の移行、前倒しということでございますが、これは一応制度上では可能という形にはなっております。しかしながら、1枚めくっていただきまして色刷りの資料、別紙を付けさせていただいておりますけれども、中高一貫教育校制度というものが既に平成11年度から設けられておりまして、中等教育ではこういった一貫教育の学校制度ができているわけでございます。中高一貫教育校制度におきましては、一つの学校として一貫教育を行う中等教育学校――図の一番左側でございます――それから、同一の設置者が中学校で入学させた生徒を無選抜で高校に進学させて、一貫教育を行う――併設型と呼んでおりますが、左から2番目の制度でございます――併設型の中高一貫教育校につきましては、下の図に書いてございますように、中学校と高等学校の指導内容の入替え、中学校から高等学校への指導内容の移行、高等学校から中学校への指導内容の移行が認められております。さらに、この学校段階間の連携・接続等に関する作業部会で中高一貫教育につきまして夏まで御審議いただきましたが、その意見等の整理を踏まえさせていただきまして、注で書いておりますが、平成24年度からは中学校段階内においても指導内容の移行ですとか、前倒しあるいは先送りといったものも可能になるという特例を設けているところでございます。こちらにつきましては、中等教育学校を実際に設置していただく、あるいは設置者の方が、公立学校であれば教育委員会規則、学校法人であれば学則を変更して、併設型の中高一貫教育校であるということを明記していただければ、私立学校の場合は変更された学則を都道府県の知事に届け出ていただく必要がございますが、教育課程特例校のような形で文部科学大臣に申請いただくまでもなく、可能という形になっております。したがいまして、小中一貫教育を行うために必要な指導内容の入替え等を、設置者の判断でできるようにするような、新たな制度を創設する必要や意義があるのかということ。中等教育段階の中等教育学校と義務教育段階の違いなども当然あると思いますので、その辺りにつきましても御審議いただければと思っているところでございます。
 私からは以上でございます。

【小川主査】ありがとうございました。
 資料3から資料6まで、今日の審議事項に関わる資料について御説明でありました。特に事務局の方から、資料6、小中連携、一貫教育推進のための教育課程基準の特例の創設の必要については、是非、掘り下げた検討をしていただければということがありましたので、少し意見交換をしていきたいと思います。よろしくお願いします。
 では、早速事例発表に移っていきたいと思います。まず、船橋市教育委員会から、船橋市立若松小中学校について御説明をお願いします。

【生井教諭】船橋市立若松中学校研究主任の生井と申します。

【峯川教諭】若松小学校の峯川と申します。本日はよろしくお願いいたします。

【生井教諭】それでは、本校の研究開発について説明させていただきます。
 本校では小中学校の円滑な接続や、人間としての在り方生き方の自覚、コミュニケーション能力の育成などの課題解決に向けて、9年間を通した教育課程の開発に取り組んできました。本日はその概要を発表させていただきます。 (資料7(以下同じ)・2ページ)内容についてですが、初めに、船橋市の小中連携教育の推移。本校の一貫教育の構想。そして、取組の成果、データ、具体的な取組。最後に、課題について説明いたします。
 (3ページ)船橋市の小中連携教育の推移について触れます。船橋市の小中連携教育は、平成17年度にプロジェクトを立ち上げました。中教審の教育課程部会において、小学校高学年の教科担任制、中学校教員による小学校での指導について検討する必要がある、と述べられているところでした。これを受けて、平成17年度より本校を含む3地区で実施。平成18年度には5地区に拡大しました。平成21年度からは、文部科学省から研究開発学校の指定を受けました。研究開発学校への応募の段階では、学級数が小学校14学級、中学校6学級である小中一貫校の構想もありましたが、本年度小学校に特別支援学級も開設され、現在、小学校21学級、中学校6学級。来年度は、小学校24学級になる予定であり、当初の構想を変更せざるを得ない状況にもなってきています。船橋市の場合、急激な人口増加により学区が複雑になっており、小学校と中学校の連携が取りにくい状況がありますが、義務教育の9年間は地域の子どもを地域で育てる意味からも、小中が連携し、教育活動を組織的、一体的に行うことで、より高い教育効果が期待できると考えています。
 (4ページ)本校の小中一貫教育の構想です。学校段階間の円滑な接続が行えるよう、小中での共通理解に基づく指導ができるようにしていくこと。学ぶ意欲や楽しさ、自信を持たせていくと共に、肯定的な人間関係を築けるようにしていくことを大切にしたいと考えました。
 (5ページ)そこで、どのような子ども像を目指すのかについて検討し、「夢や希望を持ち、よりよい自分づくり・社会づくりを実践できる児童生徒」、と設定しました。そして、その具現に向けて、本校の一貫教育体制について、4・3・2の区切りに変更し、小学校高学年より、小中教員のコラボレーションによる授業を実施し、併せて人間としての在り方生き方教育の視点から、新設領域、英語科、全ての教科の小中一貫カリキュラムを編成してきました。
 (6ページ)研究の成果です。1つ目は、学校段階間の円滑な接続が図れたということです。生徒は中学校入学直後から、意欲的に中学校生活を過ごし、学校生活の満足度も高いという結果が得られました。2つ目は、系統性を意識した学習指導の充実です。児童生徒は、既習事項の振り返り、そして、先の学習を見通して学ぶことができるようになってきました。また、教師も児童生徒の将来を見据えた指導という意識が高まり、授業づくりの改善が進みました。3つ目は、小中の教員間の連携・協力意識が醸成されたことです。目標や手立てを共有し、実践していく中で、小中の両者で児童生徒を育む意識や、相互に良さを取り入れようというとする姿勢が出てきました。
 (7ページ)学校段階間の円滑な接続についてのデータを示します。児童生徒実態アンケートより、「学校生活は楽しいですか」の設問では、現小学4年生の第1期ではほぼ横ばい傾向。現中学3年生の第3期では5ポイントの増加が見られました。現中学1年生の第2期においては、13ポイントと高い上昇が見られました。
 (8ページ)「何事にもやる気を持って取り組んでいますか」の設問においてもほぼ同様の結果として、現小学4年生の第1期ではほぼ横ばい傾向。現中学1年生の第2期においては11ポイントの増加が見られました。現中学3年生の第3期では、17ポイントと高い上昇が見られました。
 (9ページ)学級満足度及び学校生活意欲を見取るQ-U調査の結果です。研究当初の平成22年度と比較すると、全ての学年で上昇していることが分かります。特に、小学5年から中学1年の第2期の赤で示した部分は、23ポイント増と、上昇傾向が顕著となっております。これらのことから、小中一貫教育における手立ては、小中学校間の段差を適正な段差にすることができたと考えています。
 (10ページ)次に、9年間カリキュラムについてのデータです。教師アンケートの結果です。「9年間を見通したカリキュラム作成における各教科の系統性を考慮した学習指導ができたか」の問いに対し、80%が系統性を意識し充実が図れたという回答を得ました。
 (11ページ)また、小学6年生の児童アンケートの結果ですが、「現在の理科の学習がこれから自分にとって役に立つ、今後の自分の生き方に関係しているという意識を持つことができたか」と聞いたところ、学習前は全体の61%が肯定的な回答でしたが、授業の終了時では91%と30ポイントも増加する結果となり、学習内容が今後の自分のために重要であるという意識を児童が持ったことが分かりました。教師が系統性を意識して児童生徒の先を見据えた指導を行うようになったことで、児童生徒は先の見通しを持ち、将来にわたって役に立つ学習という意識を持つことができることが分かりました。
 (12ページ)小中の連携・協力意識についてのデータです。教師アンケートを実施したところ、8割の教員が連携・協力意識の高まりを実感したと回答しました。カリキュラム作成や連携授業、合同研究会を多数重ねることで、小中両者で児童生徒を育む意識や、小中相互の良さを取り入れる姿勢が生まれました。
 (13ページ)さて、従来の6・3制においては、中学進学時において、学習内容が質・量共に増え、小学校の学級担任制から一気に教科担任制へと移行し、それに適応できない中1ギャップの問題が指摘されています。そこで、若松小中では、小中を円滑に接続するために、義務教育9年間を、いわゆる「10歳の壁」と社会に出る準備期間を意識して、2つの区切りを設定しました。これにより、小学校高学年と中学校1年においては、小中教員のコラボレーションでの学びを充実するように考えました。
 (14ページ)4・3・2の区切りに変更し、第1期を小学校第1学年から第4学年、第2期を小学校第5学年から中学校第1学年、第3期を中学校第2学年、第3学年としました。第2期において、小学校の学級担任制と中学校の教科担任制を組み合わせ、緩やかに教科担任制へ移行していけるようにしました。さらに、小中における指導方法や学習スタイルに大きな差異が生じないようにしました。
 (15ページ)学習活動の重点として、第1期では基礎的・基本的な知識・技能の習得、「話す・聞く」を重視したコミュニケーションに取り組みました。第2期では、第1期で身につけた基礎的・基本的な知識・技能などを活用し、課題解決に必要な思考力・判断力・表現力の育成、また、「討論」を重視したコミュニケーションに取り組みました。第3期では、自らの課題を設定し、解決していく主体的な学習態度の育成に加え、「説得・納得」を重視したコミュニケーションに取り組みました。
 小学生への教科指導が適切と考えた教科ですが、理科、英語など授業準備に時間がかかり、ある程度の専門的な技能が要求される教科。そして、図工、音楽など、感性を育む教科。これらについてはより専門性が高い教員が指導を行った方がよいと考えました。そのため、小学校5年生では、英語、図工、音楽の3教科。6年生は理科を加えて4教科で教科担任制を実施しました。5年生の理科を小学校学級担任の指導とした理由は、生命に関する内容を含むなど、児童の実態をしっかりと捉えて指導した方がよいと判断したからです。
 (16ページ)これらの考えの下、小中教員の動きを可視化した表を作成しました。いつ、どこで、誰が指導を行うかについて一覧できるようになっています。
 (17ページ)表を拡大したものです。例えば、中学校教員が小学校の理科や図工の指導をしているとき、小学校教員は自分の学級にTTで入る時間と、さらに中学校数学のTTに入る時間を設定しました。
 (18ページ)具体的にはこのような形です。小学校の指導に当たっては、小学校の学級担任と、中学校の理科、英語、美術の教科担任が協力し、また、小学校の授業の補助としてTTの中学校教員が入ります。中学校の指導に当たっては、小学校音楽の教科担任、数学などでのTT及び部活動指導で小学校の教員が中学生に教えます。そのため、小学生については、小学校の学級担任がいる中で安心感を持って、中学校教員の専門的な指導を受けられる体制を作りました。また、中学生にしても、小学校時代に慣れ親しんだ教員からの指導を受けることになり、中1ギャップの解消につながったと考えています。実際に、中学校1年生で中1ギャップが原因となる不登校生徒は、本校では出ておりません。
 (19ページ)9年間カリキュラムです。教科別、学年別にカリキュラムの一覧表を作成しました。小学校1年生から中学校3年生までの系統を色別にまとめ、また、新設領域の7つの内容の関連について各単元に番号を振り、一覧表にしました。1時間1時間の授業づくりから、単元を中心とした9年間の系統を意識する授業づくりへと転換を図ることができました。
 (20ページ)指導する単元の系統について、学習内容を図のようにまとめました。教師が9年間のつながりを意識して指導が行われるようになりました。また、児童生徒も先の学習の見通しを持ちやすくなったと言えます。
 (21ページ)新設領域との関連についてです。新設領域で目指す7つの内容を、各教科でどのように展開できるかについて、教科ごとに解釈を試み、授業づくりを行いました。新設領域との趣旨を活かした教科の授業づくりを行うことにより、教科学習を通して豊かな人間性を育成することを目指そうとしているものです。
 (22ページ)実際の指導例です。小学校6年生の理科においては、電気の単元を扱う際、手作りエジソン電球の製作を行いました。普段の生活で当たり前かつ便利に使える電気も、その始まりは灯りを灯そうとした人々の努力があったことを、自らエジソン電球を製作し、感動体験をした上で学習を進めようと考えたからです。このように、生活の中の理科や科学の先駆者の話題を積極的に取り上げ、理科が社会に役立っていること、理科室の中だけでなく、社会との関わりがあることを意識して指導に当たってきました。

【峯川教諭】(23ページ)次に、英語科の年間カリキュラムについてです。小1から英語授業を週2回実施するとともに、継続的な文字指導とドラマ活動をカリキュラムに位置付けています。指導体制として、1期、小1から小4では、学級担任、ALT、コーディネーターの3名で、2期、小5、小6では、専門性の高い中学校英語科教員、学級担任、ALTの3名で行っています。このような取組を通して、児童のアルファベットへの興味関心が高まるとともに、積極的に英語で表現しようとする態度が育まれてきました。
 (24ページ)これは、ドラマ活動実施後の質問紙調査の結果です。「見ている人に伝わるように発表できた」「みんなの前で英語を話すことに慣れた」と回答する児童は8割強となるなど、積極的に英語でコミュニケーションを図ろうとする態度が向上してきたことが分かりました。
 (25ページ)次に、新設領域「在り方生き方」の年間カリキュラムについてです。在り方生き方は、夢や希望を持たせ、より良い自分づくり、社会づくりを実践できる児童生徒の育成を目指し、課題解決力、人間形成力とともに、自己形成の視点を最重視した新領域です。本年度の主な取組の写真です。
  (26ページ)新領域「在り方生き方」を中心とする9年間カリキュラムを開発してきたことで、児童生徒のアンケートにおいて、本校で最も重視してきた一つである、「将来の夢や目標を持っていますか」の設問では、全体で8%の増加が見られました。
 (27ページ)「人の役に立つ人間になりたいと思いますか」の設問では、中1で約4ポイント、中3で22ポイントの増加が見られました。
 (28ページ)「難しいことでも失敗を恐れず、挑戦していると思いますか」の設問では、中1で約5ポイント、中3で18ポイントの増加が見られました。これらのことから、本校のカリキュラムにおける学びは、児童生徒に夢を抱かせ、より良い自分や社会を築こうとする態度の育成につながったと考えています。
 (29ページ)9年間を見据えたカリキュラムの作成や実施のためには、小中合同の会議が不可欠です。本校では各部会の開催日を明確にして位置付けることで、合同研修時間を確保しています。
 (30ページ)小中合同行事・活動も、本校で大切にしてきた取組です。これまでの実践から、小中合同で行事や活動を実施する場合、新設行事、つまり0から作り上げていく行事を取り入れていることで、小中の文化の違いが克服しやすくなったと考えています。一方、既存の行事に相互参加するケースでは、それぞれのやり方を主張してしまいがちになり、ねらいと役割を十分に検討していかないと上手くいかないことが分かりました。
 (31ページ)まとめです。4・3・2の区切りと、小中教員のコラボでの指導体制によって、安心感と専門的な学びを実現し、学級担任制から教科担任制へ緩やかに移行していくことができたなど、小中学校間の円滑な接続が図れました。また、人間性育成の視点からの9年間カリキュラムの展開によって、学習内容の系統性を意識した授業づくりや、小中合同行事・活動の協議と実践が活性化されるなど、系統を意識した指導の充実が図られました。このように、小中の教員が、一緒の場で一緒の作業を、苦労や喜びを共にしながら行ってきたことで、小中教員間の連携・協力意識が醸成されてきたと考えています。
 (32ページ)最後に、課題です。小中で乗り入れ授業を行っていますが、実際、連絡や打合せの時間は、ほとんど取れない現状です。隣接している校舎であっても建物が違うと顔を合わせる機会が減るため、授業の前や後ろに打合せを行っていくことが必要だと考えています。また、本校の乗り入れ授業は、中学校教員の持ち時数の余裕から可能になっているものであり、学級数の増加に伴い今後の実施については難しい面が予想されます。継続していくためには、教員の増置が不可欠であると思われます。そして、小中で合同行事を行う場合には、お互いが従来の考え方ややり方など、固有の文化を主張すると調整が困難になります。小中の文化の違いを超えて、新しい文化を作っていく姿勢が何よりも重要だと考えています。
 以上で終わります。御清聴ありがとうございました。

【小川主査】ありがとうございました。
 品川区の教育委員会からの御報告の後に、一括して質疑応答と意見交換をしたいのですが、今の発表について5分程度時間を取りますので、何か、今この場で御質問等々ございましたらお伺いします。いかがでしょうか。
 では、向山委員。

【向山委員】どうもありがとうございました。興味深いお話をいただきました。
 細かいことなのですが、2つ程教えてください。スライドの16ページの、小中教員の動きの可視化なのですが、ちょっと見方が分からないので。若松中学校の世間瀬先生が、6-2と6-1の図工を担当すると。するとこれで見て、若松小学校の6-2の方は、図工、1Bと書いてあるのですね。恐らく読み取り方としては、1Bというのは、空き時間だから中学校へ行って担当すると。そうすると、図工というのは世間瀬先生と6-2の担任がTTで行うのかな、と解釈したのです。同じように、6-1に図工、図工と入ってきていて、6-2に理科、理科と入っている。これは中学校の1Aとか1Bとか、3Aとかないので、このまま空き時間になっているのかなと、そういう解釈でいいのかどうか。となると、6-2は図工をTTでやっているけれども、6-1は図工がTTじゃないというふうになるわけですよね。あるいは、6-1は1回理科のTTとか・・・つまり、クラスによってそういう違いが出てきてしまうのかどうか、それが1点です。
 もう1つは、29ページ目の合同研修に関わることなのですが、前回も私が申し上げたように、とにかく学校の多忙感、残業時間が大変多い。加えて、勤務時間が7時間45分制になったというところで、勤務時間の割り振りが非常に難しくなっているわけです。この辺りを見て、木曜の委員会、各部会の時間設定です。何時何分から何時何分くらいにしているのか。小中運営委員会も同様です。そうした、木金にやった場合の、若松中学校のいわゆる部活動の開始は、いったいどれくらいでやっていくのか。その2つを教えてください。

【生井教諭】はい。1点目の質問ですが、16ページのスライドの拡大図が17ページの方にあります。先ほど言っていただいたとおりなのですが、例えば、世間瀬教諭が、図工の指導で6年2組、6年1組の方を2時間連続で行うのですが、そこの時間は小学校の先生も基本的には同じ場所に来る。中学校の校舎で指導を行っておりまして、同じ場所に小学校の担任の先生もついてくる形になります。その内の、2時間の内の1時間については、中学生の数学の授業にTTとして入っていくという形でやっております。片方のクラスだけ2時間つきっぱなしになることもあるのですが、基本的にはその辺りは時間を空けたりしながら、中学校の方に控室を用意しまして、小学校の先生に何かあったらそこにすぐ話しに行けるような形。ですので、2時間全てずっとついているというわけではありません。このような形で実施していると、お互い連絡がすごく取りやすいということで、この形でやり取りをしています。
 もう1点、合同研修日ですが、木曜日、基本的には4時から4時40分。4時40分までが勤務時間なので、その時間帯で実施してきました。ただ、実際の話その時間内で終わらないこともありましたが、原則はその時間でやっております。部活動については、中学校を会場とした場合、校内に顧問の先生がいるということで、あとは空いている先生に見てもらいながら、という形で、基本的には4時に部活動開始という形をできるだけ取りましたが、全ての先生が会議という場合については、部活動は中止という形を取ってやっていました。小中運営委員会の方は金曜日に設定されておりますが、それは1、2時間目の時間帯に、関連する教員の時間割を空きコマにしまして、それで実施しております。 以上です。

【向山委員】どうもありがとうございます。

【小川主査】ほかにも質問はあるかと思いますが、品川区の教育委員会の報告が終わった後、一括でまた審議がありますので、その際にお願いいたします。
 一応、これで船橋市を終わらせていただいて、次に品川区の教育委員会から、品川区の取組について御説明いただきたいと思います。

【和氣学務課長】品川区教育委員会、和氣と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 小中一貫教育の必要性について、特に私の方からお話をさせていただきたいと思います。
 (資料8(以下同じ)・2ページ)まず、品川区の教育改革なのですが、この間ずっと長い間、「学校は変わらなくてはならない、教育改革は絶対必要である」と言いながら、いまだに常に教育改革が問われている。そういった、変わりたいと思っている学校が変わって来られていないのではないか、ということが、そもそもの始まりでございます。そうした教育改革を進めていく中で、小中一貫教育が位置付いてきたということでございます。
 (3ページ)現在の学校の制度でございますが、小中学校とも自己完結型の教育活動であり、小学校は楽しい学校生活に終始し、中学校は受験最優先、そのような状況がございます。その意味で、成長の連続性が意識されていない。独善的にお互いが小も中も知らないままに、小学校では、小学生を手塩にかけてしっかり丁寧に育ててきたのに、中学校に行ったら中学校の乱暴な指導の下で、せっかくのいい子たちがだめになってしまう、中学校は中学校の方で、小学校で基礎・基本、基本的な生活習慣や学習習慣も身に付けずに上げてきた、小学校からやり直せ、いくら中学校が頑張ってもだめだ。このように、小学校は今の子どもたちの現状を中学校のせいにし、そして中学校は小学校のせいにしてしまう、こんな構造が、実は今まで学校の中で起きていたと私どもは考えておりますし、今もこの構造は色濃くあると考えているところでございます。
 (4ページ)そういう意味で言いますと、この6・3制度というものを自明の理としてきたことにより、学校教育が硬直化してきたのではないか、と考えているわけです。義務教育9年間に私どもは責任を持っているのに、義務教育9年間という発想が弱くて、小学校は小学校、中学校は中学校、自分たちの文化の中だけで子どもたちのことを考えてきた、ということがあります。では、6・3制というのは本当に自明の理で、これが理想的な区分けなのかと言えば、何の証明もありません。6年と3年に分かれている制度が既にあることを前提にして、それを言い訳にしながら、小学校と中学校の文化の違いと言われるような、放置された指導観、発達観の相違があっただろう、と考えているわけでございます。
 (5ページ)教員の意識の問題で言いますと、机上の教育課程の編成に止まっていて、なかなか本当の子どもたちの実態に即せていないのではないか。さらに、極めて閉鎖的な、これで良い教育をやっているという、そういう独りよがりの教育に終始してきてしまったのではないか。そういう意味で、学校自体が組織というより個人営業の集まりだと。よく言われる話でありますが、徒弟制度のように技術を伝授してくる、そういう傾向が残念ながら非常に強くて、その中で、狭義の学力観から広がっていかない。ペーパーテストのみで学力を測り、学力観を広げようとしない体質があった。そして、テストでは子どもを測れないと言いながら、では何をすればいいのかという具体的代案も出さない。中学校では、受験があるということを理由にして、いろいろやらないことを全部正当化してしまう。そういう意味で、それぞれの小学校・中学校の文化が長い間硬直化し、そのまま放置されてきて、その中で、子どもたちの実態に即して、今の子どもたちは何をしなければいけないのかということが十分顧みられない、若しくは顧みる契機を作れないままきたのではないかと思っているところでございます。
 (6ページ)さらに管理職で言いますと、品川区もやっと学校経営という話が身に付き、若しくはカリキュラムマネジメントという話ができるように、今ようやく到達しているところですが、管理職自身が十分進行管理、教員育成も含め、しっかりとやりきれていない、そんな実態があるわけでございます。そういうことも含めまして、公立学校の信頼が低迷し、都市部では、中学進学時は3割以上の、4割近い子どもたちが私学を選択している、そんな実態がある。品川区としては、そうした実態を克服して、公立学校の義務教育の復権を図っていきたい。そんな「プラン21」の改革の中で行きついたのが、1つの方向としての小中一貫教育でございます。
 (7ページ)現行の制度ではどういうところが課題であるのかといいますと、まず基本的生活習慣やルールに関する繰り返しの指導が欠如しているのではないか。さらに、基本的生活習慣やモラルに関する系統的指導の内容が極めて希薄である。中学校に上がるときに、急激な環境変化に対応できず不登校になる児童生徒。中学校に行ってからのことを意識しない小学校での生徒指導。小学校の段階から、中学校ではどういうふうになるのか、ということを踏まえながら指導することができていない。そして、全体としてスパイラルな指導が十分できていない、ということが課題だろうかと思っております。
 (8ページ)さらに、先ほども言いましたが、小学校からの意識的な準備が不足しているために、分数や基礎的公式の未定着。この部分はどうしてもやっておかないと、ここは理解させないと、中学校で必ず学びでつまずく、という辺りをしっかり押さえきれていない。だからこそ、中学校に行ったらまた小学校の学習からやり直している。そんな実態があると思うのです。学習意欲の低下と言えば、児童生徒の立場になって共通認識がされていない。先ほどから繰り返しますが、今の現実の子どもたちにどこまで即して教育を展開できているのか。小学校段階の学びが中学校でこうなるのだ、ということを意識しながら、どれだけ子どもたちを先生たちが教えているのか。さらには、中学校の先生たちが、子どもたちが小学校でどんなふうに学んだかということをどこまで意識しているのか。そこが極めて不透明だと考えております。その中で小中一貫教育をやってきまして、本当に驚いたのが、近隣の小学校中学校が連携していると言っても、実際に授業を見たことは初めてである。私どもが小中一貫教育を始めたときに、初めて小学校の授業を見て驚いている。なぜ子どもがこんなにじっと前を見ているのだろう。そんな残念な実態があったわけです。そういう意味で、児童生徒の身体的・心理的変化に対応しきれていない。教育における「母性原理」と「父性原理」の円滑な接続が欠如しているのではないか、ということでございます。
 (9ページ)こうした様々な課題、そしてこれからやっていくことを、私どもは展開していくために、品川区の教育改革「プラン21」を立ち上げたわけでございます。平成11年から準備して12年から本格的に進めて参りました。
 (10ページ)その中で私どもが目標にしたのが、教員の意識改革であり、管理職のリーダーシップ・ガバナンス能力の向上であり、学校教育の質的転換、「規則基盤型」から「成果基盤型」へ、ということで着手したわけでございます。それが、教育改革「プラン21」ということでございます。
 (11ページ)平成12年度から、教育改革の3つの視点ということで、通常言われている指導内容、指導方法、指導形態、教材の開発や改善、これは通常言われていることです。私どもはそれに加えまして、学校の社会的位置付けに関する見直し、これは学校選択制ということになります。また、学校教育制度の在り方に関する見直し、小中一貫教育となりますが、そのようなものを展開して参りました。
 (12ページ)このように、平成12年度に小学校、平成13年度に中学校で学校選択を行い、さらに平成14年度には外部評価者制度、平成15年度には学力定着調査、そして平成18年度から小中一貫教育を全ての学校で実施したわけです。さらには、外部評価者制度をさらに進化させるために専門外部評価制度というものを取り入れまして、学校職員の意識改革と学校教育の質的転換を図ってきた、というところでございます。
 (13ページ)そういう中で、私どもが考えた「プラン21」の小中一貫教育というのは、学校制度の見直しをし、小中一貫した学力観が必要だ。小中学校の文化の違いによる弊害もあるかもしれないけれど、公立学校への不信を何とかしよう。連携ではもう変わらない。つまり、連携はずいぶん叫ばれているのに、実際には連携では変わらないということを私どもは痛感し、意識を変える状況を作るためには小中一貫ということで、小学校中学校がそれぞれ自分たちを意識せざるを得ない、そういう状況にするしかない、ということで考えているわけでございます。それを実現するために、平成18年度には、私たち独自の小中一貫教育要領というカリキュラムをしっかりと作りまして、これを基に全ての小中学校で展開しているということでございます。ここで私どもが目指している一番大きなものは、教員の意識改革であります。教員が9年間という眼で子どもたちをしっかりと育てていく。これが一番大きな目標でございます。

【冠木指導課長】(14ページ)それでは、私の方からこれまでの成果について御報告いたします。
 (15ページ)まず、教員の意識につきまして、これは平成19年度のデータなのですが、上のグラフを見ていただきまして、「連携している学校の授業や生徒指導の様子を把握しようと努力しているか」という質問に対して、「そう思う」と答える教員が、18年度に小中一貫教育を全校展開しまして19年度でやっと50%を超えたと、そういう切実なデータと思っていただければありがたいと思いますが、そういう状況だということでございます。その下の「小中一貫教育が始まって、以前よりご自身の指導観や評価観が変わりましたか」という質問については、「どちらとも言えない」というのがまだまだ4割少しいるという状況があります。この状況を教員がいかに認識をして、変えていかなければいけないのだと、そういう環境づくりをしていくことによって、初めて教員の意識が変わってくると、そういったところが垣間見られると思っているところでございます。
 (16ページ)保護者についても同様でございまして、真ん中が平成18年度の値でございます。設問としましては、「学校選択において、特色ある教育活動の一つとして、「小中一貫教育」という選択肢を選ばれた保護者の割合の推移」ということでございます。平成18年度に導入し、実際にそういった教育を品川区は進めていくのだよ、という意思表示をした19年度に、ぐっと上がっているというデータとなっている、と御理解いただければと思います。
 (17ページ)あとは、実際18年に導入してどういうふうに変わってきたかというところでございます。学力については、これは国の学力調査でございますが、20年度と22年度を比較して、赤い部分でございますけれども、全国平均を上回った学校数が、例えば6年生の国語Aにおいては平成20年度で24校だったものが、22年度には28校になったと。そういうふうに見ていただければと思います。9年生というのは中学校3年生でございますが、国語Aにおいては20年度で6校だったところが、22年度には11校になった、というふうに見ていただければありがたいと思います。しかしながら、残念ながらなかなか数字が伸びていない、特に活用の算数、数学、国語のB。国語のBは、中学校の方は8校から9校になっておりますけれども、6年生についてはなかなか厳しいデータも現実としてございます。こういったところで、いかに小中の教員が、教科においても、小中一貫という考え方の中で教育課程を組んで、カリキュラムマネジメントをしていかなければならないか、基本的な問題についての効果は表れやすいのですが、活用等の問題について本当に力をつけさせていくには、そういった努力が今後も必要であろうというデータでございます。
 このデータはお手元の資料にはございませんが、私どもの小中一貫学校ピックアップ校の、日野学園の学力の経年変化、国語科ということでございまして、平成15年度から19年度まで、こういった形で少しずつ伸びてきているというデータでございます。まだお子さんがいらっしゃるので、ペーパーではお渡ししておりませんので、これを見ていただければと思います。同じ日野学園でございますが、算数、数学科においても、こういった形で平成15年度から小中一貫教育が全校展開された18年度、日野学園については実際には18年度以前から研究学校でございますので、ずっと小中一貫の研究に取り組んできているわけですけれども、このような形で推移しているということでございます。
 (18ページ)基本的な生活習慣については、午前7時以前に起床している子どもたちの割合ということで、上段が小学生でございます。19年度から22年度まで、基本的な生活習慣については良いデータになっていると認識しております。下段が中学生のデータでございます。中学生についても、肯定的な回答をした子どもたちの割合が増えているということでございます。
 (19ページ)次は規範意識についてです。「学校のきまりを守っていますか」には「守っている・どちらかと言えば守っている」という肯定的な回答がブルーの方でございまして、小学生については19年度から22年度まで肯定的な回答をした子どもたちが増えている。下段が中学生でございまして、これについても肯定的な回答をした中学生が増えている、というデータでございます。
 (20ページ)これは不登校の実態でございます。小学校6年生の出現率を1としまして、発生率の状況がどうなっているかということで、ブルーが全国値でございます。中1、中2となるに従って、出現率が高くなっているというのが見てお分かりになると思いますけれども。黄色が東京都でございます。品川区はその右側の白い棒グラフですが、このような形で品川区の不登校の実態については抑制をされているということでございます。これは20年のデータでございますけれども、私どもが継続的に調べておりまして経年記録しておりますので、20年、21年、22年と白い部分の立ち上がりについてもさらに抑制がかかっているという状況がございます。
 (21ページ)不登校の発生率の推移ですが、一番上が東京都、真ん中が全国値、それから私ども品川区の不登校の発生率の推移がピンクになってございます。このような形で、18年度に小中一貫を全校展開しまして、お陰様で少しずつ下がっているという状況がございます。
 (22ページ)そういったところで、私どもが中心になってやらせていただいている小中一貫教育の全国サミットには、現在41都道府県から前回7月の大会には約2,100名が参加をしていただいたということでございます。

【和氣学務課長】それでは最後です。私どもは先程言ったように、義務教育は9年間で継続性・系統性の確保をしっかりすべきであるという考えでおりまして、やはり、小中の教員が共同して、カリキュラムマネジメントができていく。そんな仕組みを作っていきたいということでございます。そのために、1年生から9年生まで一貫して子どもたちの社会的に生きる力を育てるための「市民科」という教科も作ってございます。こうしたものを中心にしながら、9年間というスパンで、子どもたちの育ちをしっかりコーディネートしていくということが重要だろうと考えております。
 (23・24ページ)そういう意味で言いますと、特例措置というのはあくまでも特例ですので、継続性が担保されていないということはあります。そういう意味でしっかりと法整備をしていただいて、継続性を確保したいということ。それからもう一つでございますが、実際に私たち小中一貫教育に取り組んできて、それでも埋まらない小中の教育の壁というのを、大変感じております。特に中学校では、小学校がしっかりすればよい問題を自分たちがなぜ手を出さなきゃいけないのか、と多くの教員がまだ怒っております。そのぐらい実は小中一貫教育は、私は逆説的に必要だろうと思っているわけです。その壁がなくならない限り、共同して子どもたちの育ちを、9年間という視点できっちり系統的にサポートしていくことはできていかないと思っています。また、保護者、地域にやはり法的な整備ではない、あくまでも特例だということがあるということと、もう一つはやはり校種として、義務教育学校を見ていただくことによって、器が人を作ることもございます、そういう点で器という意味でも、制度をしっかりと確保していただきたい、というふうに思っているところでございます。
 (25ページ)教育再生懇談会の中でも、明確に小中一貫教育を位置付けるべきではないかというような御意見も頂いているところでございます。そういう意味で、是非法整備をしてもらって、私どもはまだまだ小中一貫教育はこれから先、質的な充実を図ってまいりたいと思ってございますが、まだまだ課題もたくさんある、それを一つずつ克服することが子どもたちの義務教育一貫における育ちを保障することになるというふうに考えてございます。以上御清聴ありがとうございました。

【小川主査】はい。ありがとうございました。今の品川区教育委員会の報告内容に関して、何か今質問、確認したいことがあればお伺いしますけれども。ございますでしょうか。
  はい。野木委員。

【野木委員】簡単な質問ですけれども、20ページと21ページ。学年別不登校の実態というデータですが、全国が一番多くて、次に東京都で、そして最後に品川区であると、これが20ページですね。21ページの不登校の発生率の推移では、東京都が一番多くて、次に全国で、そして品川区が一番低いという。ちょっと私、どのように見ればよいのか分からないのですが、矛盾しているような気がするのですが、ちょっと教えていただけますでしょうか。

【冠木指導課長】まず21ページの方は、18年から20年までの不登校の発生率の推移でございますので、これは生活指導の調査であるとか、問題行動調査であるとか、そこで発表されている数値と変わらない数値に対して、これは素の数字ということで、御理解いただきたい。20ページの方は、21ページの19年度の部分だけを、今度は学年ごとにデータを広げまして、それを小学校6年生を1として計算し直したものでございますから、ちょっとこの20ページと21ページを比べてしまうと少しわかりづらいかもしれませんが、そういった意味合いがございます。

【野木委員】確認ですが、要するに比率的には全国、東京都、品川区の順番だと、そういう意味ですね。比率的には。違いますか。

【冠木指導課長】抑制状況はそのとおり、出現率、発生率につきましては、東京都、全国、品川区と、いうこの21ページのグラフの順番になっております。

【小川主査】よろしいでしょうか。また後で。では、酒井委員どうぞ。

【酒井委員】どうもありがとうございました。、ここで先生方が連携ではなくて一貫教育が重要だということをおっしゃったのですが、ここでおっしゃっている「一貫」という意味をちょっと教えていただきたいのですが。日野学園のように、完全に一貫型の小中一貫教育というのは非常に良く分かるのですが、それ以外の学校での一貫について、少し説明していただきたい。

【和氣学務課長】私どもは先程説明したように小中一貫教育要領というものを作っておりまして、そういう意味でカリキュラムとして全部の学校で使っていますので、そういう意味での一貫です。子どもの一貫ということではなくて、教育課程の一貫ということです。

【酒井委員】そこが多分一番ポイントだと思うのですが、今回学習指導要領が変わった中で、学習指導そのものも、ある種一貫性を持たせて作っているのだと思うのですけれども、それ以上に一貫的なカリキュラムという、そこの差はどこにあるというふうにお考えになっているのでしょうか。

【和氣学務課長】私どもは品川区の子どもたちの実態を掴んでですね。具体的にどの部分をどうすれば良いかということを具体的に協議会で検討して作ってございますので、そういう意味では品川の子どもたちの9年間の育ちに合わせた、そういう取組ができるという意味で言えば、指導要領とは違う形で、それをそのまま受け付けてそういうような学年でやるというんじゃなくて、私どもは、小、中学校が合わさって一緒にそのことをしっかりと作っていくという意味で、意味合いが違います。

【酒井委員】地域の実態に、子どもたちの実態に合わせて9年間を連続させたカリキュラムの構成。そういうことですね。

【和氣学務課長】そうです。

【小川主査】よろしいでしょうか。

【酒井委員】はい。

【小川主査】では、今回の検討事項の議論に入っていきたいと思います。今日御報告いただいた二つの事例では、小中一貫、連携の全体的な問題をカバーしながら御報告いただきました。そういう点で、改めて小中一貫の必要性や成果、目的等々についていろいろ御検討するのは当然ですけれども、今日は、特に、教育課程の在り方について御検討をお願いしたいと思います。今日の二つの報告は4・3・2という区切りで、やっておられていますが、そうした区分の在り方、どういう理念で、どうあるべきかということ。また、今日の二つの報告は、いわゆる教育課程特例校、研究開発学校ということで、かなり大胆な教育課程の取組をされているわけですが、小中一貫の目的を達成する上で、やはりこうした教育課程の特例というのは必要か。あるいは先程もちょっと意見交換がありましたが、現行学習指導要領をベースにしても小中の連携は可能なのか。やはり小中一貫、ないしは小中連携の教育を進める際、教育課程の制度上の見直しというのが必要かどうか。これも少し率直な意見交換ができればなと思っています。あと資料2、下の方の黒丸の「小中連携、一貫教育の推進体制の在り方」。これは前回も少し意見交換しましたけれども、今日の御報告にあるように、中学校の先生方が空き時間を活用して、小学校に行くとかですね、やはりいろいろな面で先生方の負担というようなこともありますので、そうした点を工夫しながら、より一貫教育を推進していく上で、どういう校内体制、又は教育委員会の支援が必要かというようなことも、改めて議論できればと思います。なお今日の品川区の御報告では、小中一貫教育の必要性という点に力点を置かれた内容となっておりましたが、品川は御存じのとおり、市民科を始め教育課程作りではかなりいろいろな試みをされています。今日の報告ではそういう品川区の教育委員会の教育課程作りのところは、あまり御報告がありませんでしたので、また意見交換の中で、品川区の方からその成果や取組の課題、評価についてもお話いただければと思いますので、その点はよろしくお願いいたします。では残り50分程ありますが、教育課程の在り方、推進体制の在り方について議論していきたいと思います。まず初めに、教育課程の在り方から少し時間を取りたいと思いますので、御自由に御質問を含めてお願いします。はい。では清水委員。

【清水哲雄委員】大変素晴らしい取組を御紹介いただきましてありがとうございました。船橋市の方の取組について、今回の検討事項に関連することですので、もう少し詳しく教えていただきたい点がございます。それは資料で言いますと5ページに当たる部分なのですけれども、理解が浅かったのかもしれませんが、「4・3・2の区切りと」という題がありまして、この4・3・2というのはどこから出てきたものなのかというのが1点目です。それからこの4・3・2の区切りを子どもたちにどのように説明をしているのか、また保護者にはどのように説明をしているのか。この区切りがないとなかなか9年間の一貫教育ができないのか。この辺りの議論があっただろうと思うのですが、その辺をお聞かせいただきたいと思います。

【小川主査】他に何か関連するような質問ございますか。では酒井委員。

【酒井委員】私もこの部分についてお聞きしたかったんですが、4・3・2の区切りの「3」という部分が、一体中身は何なのかというところを教えていただきたいと思います。TTで小学校、中学校の先生が共同で教えるということが分かったんですが、それ以外にその「3」独自のカリキュラムというものが、どういうふうにイメージされているのか詳しく教えていただきたい。以上です。

【原委員】失礼します。1点だけ。4・3・2の教育課程を踏まえていくことと、いわゆる教科書の使用との関係について、具体的にお教えいただければと思います。

【小川主査】今の御質問は品川も含めてですね。

【原委員】そうです。

【小川主査】ではまず、船橋市の方から。質問が三つ出ていますが、よろしくお願いします。

【大江若松小学校長】それでは、4・3・2の区切りについてですが、一つは教科担任制をどこから導入しようかというところから始まりまして、10歳の壁と言うのですか、そこのところでとりあえず小学校5年からが適切であろうという判断をしました。もともと教科担任制は、船橋市の小中連携プロジェクトから始まったものでございまして、教科担任制をどこで導入するか、そうしたら高学年で関わりを増やした方が中学校への流れにスムーズだろうということで始めました。それからカリキュラムの方につきましては、基本的には新しい指導要領に沿って行っております。特に、新設領域の「在り方生き方」について、9年間を見通した内容を編成しております。

【清水哲雄委員】保護者への説明については。

【大江若松小学校長】保護者に対しましては、4・3・2というところは説明しているのですが、実際子どもたちも校舎が分離されておりまして、4・3・2といっても基本的には各学年それぞれの意識しかないというのが現状でございます。

【小川主査】もう一つ、4・3・2と教科書の使用との関係についてはいかがでしょうか。

【大江若松小学校長】新しい指導要領に沿っていますので、特に9年間その指導要領の教科書に沿ってやっているということです。

【小川主査】分かりました。おそらく今のような質問は、品川区に対しての質問もあるかと思います。今日の報告では品川区の教育課程の問題が触れられていませんでしたが、同じような取組、4・3・2で品川区もやっていますので、品川区からも御説明いただいてよろしいでしょうか。

【和氣学務課長】私どもが、最初小中一貫教育を始める時に、子どもたちのアンケートをやってみたり、川島隆太先生の脳科学の話なども聞かせていただきました。あと、実際に学校の先生たちが作っていますので、実際に5年生というのは非常に大きな変わり目であるという実感を先生方自身が持っておられます。そういう意味では最初の4年というのはすっきりいきます。それから真ん中の3年でございますが、ちょうど8年・9年になってきますと受験なんかも意識しますし、かなり自立が進んでまいります。そういう意味で、私どもは、ある種の大人の入口に入るというところで真ん中の3年を考えているところでございます。これは実際の子どもたちのアンケート、先生たちの実際の声、それから科学的知見によって決めたということでございまして、そういうデータから教育課程を編成してございます。これに合わせまして、私ども独自の副教科書を作ってございます。単元の入替えがございますので――新しい学習指導要領になって若干いらなくなったものがあるのですが――算数、理科、国語それから社会については、私ども独自の副教科書を作り、先程いった市民科の方も新しい教科書を作って、それを併用して使っています。
 保護者への説明ですが、一応私どもも説明していますが、なかなか理解していただけないですね、4・3・2は。まだ一貫校ですと、かなりすっきり分かるのですが、分離型の学校であるとか連携型の学校ですと、実態が6年生と3年生になりますので、なかなか理解しづらいですね。一貫校では本当にすっきり理解していただいている。英語も副教科書を持っているのと、あと各学校では4年から5年に上がる時に、立志式とか、二分の一成人式とか、いろいろな儀式をやっているということでございます。

【小川主査】今二つの教育委員会からお答えいただいたのですが、ほかにございませんでしょうか。では長谷川委員。

【長谷川委員】呉市でございます。今の4・3・2の区分についてですが、呉市もこの4・3・2区分を取っておるのです。なぜこういう4・3・2区分にしたかということなのですが、前に御説明しましたように、この6・3制をひいた時の子どもたちの体力というものが、この時期に来て、随分前倒しになっておる、成長が非常に早くなっておると。それで、中学校1年生の子どもたちの体力と、2年生・3年生を比べてみますと、そこでボーンと体力が上がっておる。ということになると、やはりここは、小学校5年、6年、中学校1年をひとくくりにして生活させた方がより近い感じで生活できるのではないかなということが一点。もう一つは呉市の場合は4年生までの間に、基礎的な規範意識をきっちりと身に付けさせようとしています。これは森信三先生がおっしゃいますように、「つ」の付く間に、挨拶、返事、靴揃えをやらせるというのがありましたけれども、これは確かにあの時期、一つ二つ三つ四つ五つ六つ七つ八つ九つという、つまり六つから九つ、1年生から4年生までの間に、小学校においてしっかりとそのルール、そういったものを身に付けさせようということで、まずこれが大事なのではないかと考えています。これを実際にやってみますと、確かに5年生でやるよりも、小さい時からしっかりとそれを徹底させるという。そういったことも含めて、もちろん教科担任制を入れるという、1、2の教科担任制を5年生、6年生からやっていこうということがあって、4・3・2制度というものを入れております。そういう面で比較的効果が上がっているのじゃないかなということでございます。以上でございます。

【小川主査】ありがとうございました。他に何か、今4・3・2の区切りのところにテーマが集中していますが。はい、では清水委員、酒井委員ということで。

【清水哲雄委員】小学校5年生10歳というのはクリティカルポイントであることは、多分皆さん知っていると思いますし、私の経験則から言っても、この10歳というのは大変大きなポイントだと思っています。小学校4年生が終了した時点で一つの区切りを迎えるというのは一つの大きなポイントだろうと思っているのですが、問題はその後だと思っています。小学校5年生辺りになりますと、本格的に比の概念が入ってきて、これは単純な一つの数ではなくて、二つの数を合わせて一つの状態を表すという抽象的な意義があるわけです。こういうふうなところ。それからあるいは小学校の、女の子は特にそうですが、非常にグループ化が進みます。放っておきますとそこにクローズドなグループを作って排他的になり、そのまま行きますと、いわゆるいじめの温床を作っていくようなことにもなる。こういう問題は小中一貫教育をやる、やらないに関わらず、厳然として存在する問題だと思います。したがって、そういうところをなんとか解消するために小中一貫教育をやらなきゃいけないというのは、どうも私は理解が進まないのです。やはり発達段階とか教育課程の中身とか、そういうものを考えた中で、どのような義務教育の制度が良いのかということを考えると、これは非常に大事だと思っておりますけれども、何か小中一貫教育をやることが、今までの問題を全部解消するような感覚にはどうしてもちょっとなれないのです。それで一生懸命お話を伺っているのですけれども、一部は理解できるんですが、どうしてもまだ「3」のブロックで分けるというのも、あえて申し上げれば中学校1年生の女子生徒と中学校1年生の男子生徒の発達段階は全く違います。ですから中1で切るというのもよく分からないのです。その辺、今議論でも一番大事だろうと思いますけれど、いろいろこういう取組を伺って、すごく頑張ってらっしゃるのは大変よく分かるのですけど、今言ったことはよく分からないというのは現状です。

【小川主査】またその点については御意見というか今までの経験の中で、いろいろ考えられることがあると思います。酒井委員の方はいかがでしょうか。

【酒井委員】何度も申し訳ございません。今お話を伺っていますと4・3・2の「3」の部分の、「3」のカリキュラムの中身は何かということが、いろいろなことが入っていると思うのです。内容の一貫性で小中一貫のカリキュラム、9年間一貫のカリキュラムの中での3年分という意味。それから呉市の先生のお話では、生活ということで、要するにそこに生活の場をそこに設けるという意味で使われる。それから教科担任制というものをそこに導入するという意味での取組。それから中学校の入学時期を乗り入れるという意味での3年間の取組。そういうものが教育課程という言葉の中に含まれている。それぞれはおそらくそれぞれに効果を持っているのだと思いますが、ちょっと区分けをして考えるべきことなのかなと思います。先程ちょっと申し上げましたが、指導要領そのものの体系化といいますか、9年一貫化を図っていくというのは、全国レベルで多分できることだと思いますし、あるいは教科担任制の話はそれぞれやはり個別に検討すべき課題も多いかなと思います。以上です。

【小川主査】4・3・2の区切りに関する議論ですが、これはまだきちんとした検証が出来ているわけではなくて、一つの試みとして、取り組んでいくということで、先程の清水先生のような御意見もあるかというのは分かっています。これは今後いろいろ取り組みを検証しながら、その意義、成果とを考えていくというスタンスで、進めていくということになると思いますけれども、今の時点で、先程出ていたような御質問があるわけですが、船橋市と品川区でまた何かその辺で御意見があれば出していただきたいと思います。

【和氣学務課長】私は一貫で全て解決するとは思ってはございません、私たちがいろいろ教育改革をやる中での手段であると思うんです。9年間という長いスパンを見た時に、先程言ったように、前半の4年、あと後半の5年という分け方をしておりますので、その後半の5年が非常に長いので、どこで区分けをしようか、と考えた時に、後半の部分の前半の3年という意味で分けています。確かにおっしゃるように女の子と男の子で発達が違いますし、どこで区切るのかということでいいますと、大変難しい所はありますが、一つの学習のまとまりとして、若しくは生活集団のまとまりとして、それぞれ位置付けているということでございます。ですから私どもとしては、9年間という枠でカリキュラムマネジメントしていけるのか、そういう体制をどう作っていけるのかというところで言うと、一貫でないと残念ながら日本の小学校、中学校、連携を散々やってきたにも関わらずできていないし、私どもが一貫教育を実際に始めて、やればやるほど小・中学校の文化の違いといいますか、指導観の違いといいますか、この壁の厚さと相互不信とですね、相互責任転嫁が如実に見えてくるわけで、とにかくここを何とかしなければならないというのが実は一番大きな問題です。そういう環境を作りながら、じゃあそれぞれ小学校中学校の先生が机を寄せながら子どもたちのそれぞれの発達状況に応じて、個に応じた学習をどれだけ丁寧に構築していけるのか。そのためにどう連携しながら、新しいカリキュラムを、若しくは単元を開発していくのか、というようなことを、進めていくことは重要だろうと。そのための枠組みとして、若しくはそれをやらざるを得ないと言ったら変でしょうが、やらざるを得ないような枠組みとして、小中一貫を作ってですね、その中で先生方はそこに向かっていただく、そんな環境を作りたいというのが一番大きな目標です。

【小川主査】ありがとうございました。船橋市の方は何かございますか。

【大江若松小学校長】船橋市の方ですが、教科担任制ということから考えた時に、最初4・5という区切りも考えたわけなのですが、実際に研究をやってみた段階で、教科担任制を早い段階からやるのが本当に良いのかどうかという部分で、最初は9教科の内7教科ぐらいまで考えていたのですけれども、だんだん後退してきまして、5年で3教科、6年で4教科となりました。もう一方では中学校1年も学級担任への依存というのは結構高いんだなという部分も出てきましたので、ちょうどグレーな部分と言いましょうか、そういう意味で中1のところで区切ったというような感じでおります。

【小川主査】はい。ありがとうございました。少し、他の質問があればお受けします。では國定委員、新井委員、お願いします。

【國定委員】大変ありがとうございました。今回、教育課程を中心とした話なので、私、立場上あんまり聞けるような立場ではないかなと思いながらも聞きますが。今回の検討事項の二つ目のところが、私の中ではかなりポイントになっているかなと思っているのです。それは学習指導要領の範囲内において小中一貫教育の目的の達成は十分に可能か、という質問でありまして、学習指導要領の範囲内であるかどうかというのは、薬のように見えて反作用がすごく大きいのかなと。私どもも、先進自治体から御指導をいただきながら、今小中一貫教育を進めているのですが、先生方、議会、あるいは地域の方々に、「これは学習指導要領の範囲内ですよ」というような説明をするわけですね。一方で、学習指導要領の範囲内とはいえども、何か違うものがあるはず。とりわけこれまでもずっと議論の中にあったように、最終的には教職員の先生方の意識の改革というものが非常に大きな柱の一つでもあるということを考えると、学習指導要領の範囲内という言葉はものすごく日本人的で、少し別な論点であるような気がしているんです。ここまでが僕の一方的な、私的な見解なのですが、私が船橋市さんと品川区さんにお伺いしたいのは、その学習指導要領の範囲内で小中一貫教育というものが進められるのでしょうか、という素朴な疑問と、おそらくそれがイエスという答えが返って来た時に、その学習指導要領の範囲内であっても、普通の学習指導要領に従ってやっている市町村教育委員会とは違う、ここが違うから一貫教育として成り立ちうるのだというところについてのアドバイスというか、これまでの御経験がありましたら、御示唆を与えていただきたいなと思います。

【小川主査】先程の酒井委員の質問を更に確認する意味での御質問かと思うのですが、新井委員も関係するような御質問でしょうか。はい、ではどうぞ。

【新井委員】どうもありがとうございます。私も船橋市さんと品川区さんの両方のお話を聞いておりまして、一つの大きなポイントとして系統性ということをかなり強調されたような気がしました。そうしますと、9年間の系統性ということでかなり独特な取組をされているのかと思いましたが、先程のお話ですと船橋市さんは教科書を使っている、それから品川区さんも教科書を参考にされているということは、主にだいたい指導要領内でできることなのかなというふうに推察をしたんです。では、なぜ一貫が必要かと言いますと、お話をお伺いしますと、制度上の違いとか文化の違いを非常に感じたわけで、むしろ文化のギャップを埋めるために3年か4年を置いているというような、発達段階も含めてですが、そんな理解でよろしいのか、という確認でございます。

【小川主査】國定委員と新井委員の御質問、趣旨は同一のようですので、船橋市そして品川区の順でお願いします。

【牛島副主幹】先程の御質問のうちの最初の部分、まず指導要領の範囲内でできるかどうかというところなのですが、基本的には私ども「実態に応じて」というような見方をしております。今お二人の先生がおっしゃっていた、例えば小・中の制度の違いだとか文化といったような言い方であると思うんですが、それはまた子どもとの違いというのもあるでしょうし、そういう意味ではまずその「実態に応じる」ということは両方の教員が会わないとその実態を把握できないということもあります。系統性については指導要領の範囲内で十分なのですが、だからと言って、その指導要領だけを小中学校の先生がそれで進めていくと、より具体的なものはできていかない、ということがあります。そういうことがありまして、船橋市としては若松小中学校で研究開発学校の指定を受けたと同時に、各教科、領域について、小中一貫カリキュラム試案という形で、各教科若しくは領域、総合学習で、全市の中心的な先生方を集めて委員会を作成して、3年間かけて一貫カリキュラムを船橋版として作っているところです。この中で中学校区に下ろして、各小・中学校で検討していただこうとしています。やっぱり頭突き合わせてですね、顔を合わせて話さないといけないかなという部分があると思います。
 もう一つの、一貫と連携とはどう違うかということですが、これについては船橋市として、やっぱり一貫、一貫といっても、実態として一つの中学校区で全て小学校が全部その中学校に行くわけではなく、一つの小学校から二つの中学校に行くような場所がたくさんあるのですね。そういうことになると、一貫教育といっても、中学校と小学校が集まって共通の目標について会議しようよといっても、もう一つの中学校に集まって、もう一つの中学校にも小学校の教員が集まって、もうぐちゃぐちゃになってしまう。そういうような状況の中で、まずは一貫教育ができるところから進めましょうと。例えば若松小は一つの小学校から一つの中学校に行く。こういうところは一貫教育がやりやすい。船橋市は小中一貫教育を、「小・中学校が目標を共有し、その達成に向け小・中9年間を通して系統的な活動の展開を要する教育」とし、とりあえずの定義としています。そしてもう一つ小中連携というものは、それよりも多少緩やかな部分で、「小・中それぞれの課題解決のために、小・中学校が連携をして行う教育。また児童生徒、教員の交流や合同の活動を通して、小学校から中学校への円滑な接続を目指す教育」というような定義で、とりあえず小・中が共通理解を取りながら連携を進め、でもできる限り一貫教育を目指せるところは目指していこうよというような形で取り組んでいかないと、なかなか難しいなというのが正直なところではございます。以上です。

【小川主査】品川区、お願いします。

【和氣学務課長】学習指導要領の範囲内かどうかというと、私ども逸脱させていませんと言いますが、ただ、範囲内と言った途端に、基本的に現状肯定型になってしまう可能性が非常に高いと私は思っています。そういう意味で逸脱をすることはできませんが、やはり私どもは大胆に取り組んでおりますし、一番最初に小中一貫教育をやるときに、全て学習指導要領を分解して、改めて私どもが再構築をしております。それ以降全ての教科において各教科部会を作ってございまして、そこで仔細に検討をしながら、実際学習指導要領で示されていても、今の私たちの子どもの実態、学力調査の実態を踏まえてどう変えていけばいいのか、不断の努力をしているところでございます。さらにですね、まだまだ充分ではありませんけれども、小学校と中学校が一緒になって、それぞれの学校の目標、グループの目標、一貫校の目標を、具体的に実現するためのカリキュラムを、どう再構築していくのか、常にリニューアルしていけるのかという、仕組みづくりを常に持っていきたいと思っておりますし、さらに言えば私どもは市民科という全く新しい教科をやっています。これは特例措置でやっているわけですが、これなどはほかには全くないものです。そういう意味では私ども独自の、私たちの考えで、私たちが育てたい品川区の子どもたちを実現するためのカリキュラムという考えでありまして、そのようなものがなければなかなかやっぱり説得力もありませんし、もう一つやはり先生方の、改革をしていこう、若しくは今の子どもたちをどうしていこうというですね、そういう一つの機動力がですね、なかなか湧いてこないのかなという気がします。残念ながら長い歴史の中で極めて保守的になっていたんだと思いますので、そういうのを一つの機動力にしながらやっていって、今現実にあるべき教育、今いる現実の子どもたちをどうしていくのかと常に問題意識を持っていく。そういうことが切実なわけで、学習指導要領はそのための一つの指針でしかないと考えているということでございます。ですから連携ではだめなのかと言いますと、私は一貫でなければこういうことにはならなかったし、こういうことはできないだろうと思います。連携連携と言っている場合には、いつまでも表面的な、何か、こうやりました、研究会をやりました、行事を一緒にやりました、これでずっとお茶を濁されてしまうのかなと考えております。

【小川主査】この件は少しまた時間を取って意見交換をしたいと思います。無藤委員と貝ノ瀬委員から今の問題について少し御意見があるようですので、では無藤委員から。

【無藤委員】意見というか、参考資料的な話なのですが、私、学習指導要領の改訂に少し関わっておりまして、そこでの議論を御紹介したいのです。一つは船橋市の取組、品川区の取組、あるいは前回の事例等、指導要領改訂におおいに参考にした事例の一つですので、当然つながりがあってということです。今回、学習指導要領の改訂においては、特に小中の関連では、教科ごとの一貫、一貫までいくかどうかは分かりませんが、つながりがかなり丁寧にされているはずだと思うのです、それ以前のものに比べてですけれども。ただ、やはり学制としての大きな違いがありますので、小学校の教育課程と中学校の教育課程が、完全に綺麗につながったとは言いにくいんでございますが、それが一つです。それから指導要領を議論する中で、中教審その他で、発達の切れ目その他についての資料、あるいは議論が幾つかありました。私が専門でもありますので、覚えておりますけれども、結局、発達段階で完全に綺麗に「この学年」と切るわけにはいかないんですね。個人差も大きいですので、2年ぐらいの誤差を入れれば入れますけど、2年の誤差があったら、学制も何もないので。ですから、大きな発達の区切りがあって現在のものもあれ、小学5年生でという考えもあると思いますが、半ば便宜的というか、あるいは「文化」という言葉を使えば一つのまとまりとしてできているということと、それからもう一つは、この作業部会でこれの前は中高をやったわけですが、高校をどれぐらいの射程に入れるか。あるいはこの作業部会の課題ではありませんが、幼児教育を射程に入れるとまた低学年になりますので、その辺をどう考えるかということがあります。
 もう一つは、また全然違うことになりますが、学習指導要領の枠でできる、できないということに関わっているのですけれども、今回の改訂で「学習指導要領は最低基準である」ということが明確になったわけです。そういう意味で全て現在の学校現場のあるいは教育委員会の課題というのはむしろ学習指導要領+αのそのαという部分を広げるかだとか、どの辺にαのところを持っていくか、ということではないかと、そういうふうに思います。そういう意味で学習指導要領の枠でがあってできるということよりは、義務教育ですので9年間全体では当然ながら学習指導要領が目指すものを実現するけれども、それに加えてどうするのかということだと思います。特に一貫というふうに踏み込むかどうかについては、小学校と中学校の区切り目というものがあることのプラスと同時に非常に不具合があり得るのですが、その辺りで融通の利かせ方を、するべきか否か。現実問題としては現在の指導要領の枠で言えば、小学校6年生で教えることと、中学1年生で教えること、簡単に交換はできないのですが、その辺をどうするか。その時に制度改革まで踏み込むべきなのか、あるいは特例、特に教育課程特例校というのである程度できることがあるのですが、それでできる課程があると思います。これはやはり丁寧に議論する必要があると思います。

【小川主査】丁寧に議論を再整理していただきました。ありがとうございました。

【貝ノ瀬委員】連携と一貫ということから言いますと、今、無藤委員がおっしゃられたように、現在の小学校、中学校の学習指導要領の連続性というのはある程度考えられている、という中で、しかし小学校は小学校、中学校は中学校、それぞれの教育は別々なのですよね。それが前提となって今教育が行われているわけですが、そういう意味からしますと、小中一貫というのは、いわゆる小学校のカリキュラム、中学校のカリキュラムを教えることをいったんチャラにすると言いますか、連続性はある程度考えられていますけど、まさにそれは「ある程度」じゃなくて、限りなく連続性がいくように、先生方自らが自分たちで試行錯誤をしながら、それを作っていくという中で、15歳でどういう子どもを育てて卒業をさせていくかいうことなのですよね。ですから少なくとも連携はそれぞれ別々だという前提の上で、例えば教育目標なりカリキュラムなりには共通しているところを協力してやりましょうと、そういうことになるとは思います。それが一貫となりますと、もう教育目標も小中で一緒に作りましょう、そしてそれに応じて目指す子ども像も一緒に作りましょう、カリキュラムも作りましょうという話になってきますので、そこがやっぱり小中一貫と連携とでは違うのじゃないかと私は思っています。本質ではそういうふうに思っています。
 それから、先程区切りの話が、4・5とか、4・3・2とか出ていますよね。ですからいろいろ出ているということは「これだ」という必然性がないということですよね、今のところ。そういう検証もされていませんし。今のところは。清水委員がおっしゃったように、じゃあ本当に必要なのかどうかという根本的なところを考えた時に、私は、絶対これでないといけないというものは必要ないと思っているのです。けれども、教員たちや学校の現場が子どもたちの発達の段階を考えて、やはりここでまとめて重点的に指導しましょうとか、何年間はこういうことについて重点的に指導していきましょうとかということで、自分たちで話し合っていけるように、教育委員会が、今のところこういうふうに考えられるから、4・3・2でとか、4・5とかということを、結果的に何年かしてそういうことになるかもしれませんが、今のところは新しい試みですので、私の場合言わないのですよ、はっきりと、そういうことを。つまりこれは教育委員会のマネジメントの問題なのです。押し付けないということです。自分たちの教育課程を、自分たちが、学校が作らなきゃいけないのだから、それをこちらの方で全部、こういうはずだとかいうことで、保護者にもなかなか説明が難しいようなことを、押し付けるというと変ですが、そういうふうに、先生方にこうだということをむしろしない方がいいのじゃないか。そういうことで、三鷹の場合は、先生方にできるだけ自分たちの学校の実態、子どもの実態に合わせて取り組んでもらおうという中で、そういう区切りというのが必要になってきたら自分たちで作って実践してみなさいと、それで効果があるという検証があれば、それが本当の区切りになるんでしょうから、ということでやってもらっている。まだこれは始まって、品川区さんだって平成18年でしょう?うちも18年なんですから、歴史が浅いわけですよね。そこであんまり「これだ」というようなことはやはりいかがなものかなというところですよね。これはだから教育委員会のマネジメントの問題ですね。つまり先生方が当事者意識を持って、いかにしっかり取り組んでくれるかということに重点を置いた時に、どうしたらいいか、という判断ですので。ですからそういう意味からすると、例えばこの小中一貫教育を取り組む時にいろいろな問題意識があると思いますが、今の、例えば現状の学習指導要領っていうのはダメなのか、今の教育システムは全部ダメなのか、全否定なのかと。ない、ない、ない、ダメ、ダメ、ダメっていうところで始まっていく、そういう教育改革と、そうじゃない、やっぱりこれは良いことだ、先生方の意識もここは良いところがあるんだよと、そういうところをもっと伸ばしていって、そして問題をどう克服しようかという、そういうシステムを知恵を出して考えていきましょう、ということをやはり模索すべきじゃないかなと思いますよね。ですからあまりそういう全否定的な形で進むということについては、やはり当事者意識を失わせますよね、先生方のね。本当に大事な良い改革だとなれば先生方も納得するでしょうから、それを実感して自分たちが当事者意識を持ってやっていただけるように、マネジメントしていくような、そういう仕組みを考えるということが大事じゃないかと思いました。

【小川主査】連携、一貫に関わる話と、あと、学習指導要領の問題について。かなり大事な議論だと思いますが、意見交換の中でそれについては整理できてきたなと思います。時間もないので、少し、今日の検討課題の三つ目のところ、教育課程特例上の政策も含めて、その是非についても、少し議論を進めていきたいと思います。向山委員どうぞ。

【向山委員】資料2の今回の検討事項の教育課程の在り方の1番上と3番目について2点申し述べたいと思います。3点目の教育課程の制度的な改善を要する点があるかということで、結論を言えばですね、小学校と中学校が教育課程について相互理解できる、仕組みというか制度というか、それをどう作るかということが大事だろうと思います。自治体によっては小中学校部会とか、小中研究会とかやっているところもありますけれども、その程度ではなかなか理解が深まらないという気がいたします。今日、資料4の一番最後に学校教育法施行規則の別表を付けていただきました。この表で見ると分かるんですが、例えば中学校の社会科の教員でいくと、教科350時間持っています。中学校の先生というのはこの350時間と合わせて、せいぜいあと特別活動、道徳で500ぐらいの持ち時間があるんですが、中学校の他の教科の2,500時間の内容は分からないわけですね。小学校では約6,000コマあります。例えば私は小学校の社会科を研究してきましたけれども、それでも、中学校の社会科をどれぐらい分かるかというと、なかなか分からないのが現実なんです。実は私、品川区の教育委員会の指導課長をやっていて、この平成11年にプラン21を作った時に指導課長をやっていたんですが、その時の小中一貫教育を進める時の初発の課題意識でこういう現状を出しました。ある中学へ行ったら、中学1年生の理科の先生が、顕微鏡を置いて、子どもたちを前にして、ずっと接眼レンズとか倍率の話を30分延々と講義しているのです。子どもたちはもう既に小学校の時にそんな使い方は知っているのです。目の前にある顕微鏡を使って早く観察したいと待っている。ジリジリしてつまんながっている。しかし先生は一方的に講義形式で喋っている。ここに小と中の断絶、あるいはお互いのカリキュラムを知っていないという問題点がある。これは連携どころではやっぱり収まらないだろうというところから、もっとそれをすすめて小中一貫教育を考えていったという経緯がありました。したがって、教育課程については、お互いに分かり合う仕組み作りというものが必要なのではないかと思っています。
 それから2点目、教育課程の在り方の一つ目の学年区分なのですけれども、確かに6・3制が成長等々の変化に対していろいろなことを露呈しているのは事実だろうと思います。しかし現在の例えば社会科の指導要領の調査協力者で作って来たんですけれども、これは小学校の3、4、5、6年の中で仕上げてきているわけです。これをもし区分として切ってしまったら、私がやってきた社会科を3・4年と5・6年を区分として切ってしまったら、どういうカリキュラムになっていくか。つまり現在の小学校6年間というものの一つのゴールの中で、教育課程を作ってきていますから、なかなかその先、果たしてどういう効果的なものがあるかというのは見えにくいので、よく議論をしないと、この教育課程の学年区分は難しいのかなと思っています。以上2点です。

【小川主査】ありがとうございました。では天笠委員よろしくお願いします。

【天笠委員】先程の4・3・2の議論に関わってなんですが、議論をするに当たっては、研究開発学校ですとか、特例校の今日の二つの事例のほかにも、これまででもう少したくさん事例がありますので、機会があったらそれらを少し整理していただいて、ということも一つの方法かなと思います。というのは、小6と中1の接続の在り方、あるいは小学校と中学校の接続の在り方から話に入ったところ、そういう取組もあれば、そもそも4・3・2から入ったところもありますし、いろんなアプローチの仕方があって、それで現場の取組の一つの蓄積の方向として、おおよそ4・3・2辺りでというところが現状なのかなと思います。ですから、10年間ほど遡って、いろいろな研究開発学校の取組がありますので、そのほかのカリキュラムの取組の経緯について、研究開発学校の例を掘り起こしてみると、今議論があったところについての知見を加えることが十分出来るのじゃないか、あるいは議論の参考になることがいろいろあるのじゃないかなと、そういうふうに思いました。4・3・2、あるいはまた4・5ですとか、そういう区切り方等々があると思うんですが、私はそれはそれとして現場の知見の蓄積ということとともに、義務教育の目標を達成するという、そこが大目標だと思います。義務教育の目標が今のシステムでは充分達しきれてないのではないか、という問題提起に、6・3とかそれぞれの立場の関係者はどう答えていくのか、という一つの模索と言うのでしょうか、その取組が、このカリキュラムの学年区分の在り方のところに置かれているというような、そんな捉え方をしております。改めて9年間の義務教育の目標を達成するためのカリキュラムの在り方という、そういう観点からのカリキュラム開発の取組ということを考える時に、一つの方向として、やはり、小中の関係者がもっとミックスされて、9年間の教科の積み重ねですとか、くくり方についての研究開発の余地というのが充分まだあるのではないかと思っています。ですから、研究開発学校といえども、各学年で配列させた学習指導要領の中身を上下入れ替えるとか、そこまでなかなか踏み切れない、そこまでなかなかやりおおせないという現実がまた一方にあるわけですが、改めて9年間の中で教科の配列を今のままでいいのかどうかということを、現有の勢力のそういう先生方に知恵を絞っていただくという、こういうことがこれからの学習指導要領開発の過程の中に非常に必要になって来ているのではないかということがあります。そういう点では、私も現行学習指導要領に関わりを少し持たせてもらっていましたので、その立場からしますと、今回の学習指導要領というのは付録付きになっていまして、これは大変画期的だと思っております。1冊で幼小中が全部一覧できるというのは、今回、国の立場から初めて提起されたわけです。ただ私の目からすると残念ながら従来の小中高の枠を前提にしてありますので、まだその辺りの検討の余地が多分にあるのが今回の課題だったと思うわけで、やっぱり9年間でその在り様を考えていくという、そういうことが僕は必要だと思うんです。ですからそういう点からしますと、これは制度的という言い方になるかどうか分かりませんが、そういう意味で言うと、小学校と中学校がそれぞれがそれぞれでやっていたところをもうちょっと小中一貫、小中つないで一緒にやれるような仕組み、そういう安定的な仕組みを考えていく、構想していくというのも、一つの検討すべき課題ではないかと思います。例えばどういうことかと言うと、学習評価については、今回かなり学習評価の在り方について、小学校と中学校で検討したわけでありますが、結果としてはやっぱり小学校と中学校それぞれがそれぞれで評価の冊子にまとめるというような形になっています。もう少しこの辺りを一段二段踏み込めばまた新たな在り様というのもあったのではないかと思うわけです。そういうことを進める上において、小学校と中学校の相互の理解を背負わすような、そういう仕組み作りというのは更に検討を重ねていってよいのかなと思います。以上です。

【小川主査】はい。ありがとうございました。今日の検討事項の1つの教育課程の在り方については、かなり時間を費やしていただきました。まだまだ議論、御意見あるかと思いますが、今日の段階では、論点もかなり整理ができたのかなと思います。ただ、時間の関係もあって前回積み残してあった、推進体制の在り方については、また今日も時間がとれませんでした。品川区から問題提起された義務教育学校の話については、これは私たち作業部会でまた時間をとって、少しその必要性や是非については意見交換をしたいと思います。まだ御意見いろいろある方いらっしゃると思いますが、今日のこの場は閉じてよろしいでしょうか。ではこれで今日の作業部会を終わります。では次回以降の予定について、事務局の方からお願いします。

【小谷教育制度改革室長】次回の日程でございますが、資料10で御紹介してございますとおり、1月30日の10時から12時で、また同じこの3階特別会議室1で予定しております。

【小川主査】ではまた、1月の下旬からスタートしますのでよろしくお願いします。今日はありがとうございました。良いお年をお迎え下さい。

 

―― 了 ――

 

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